1 :
名無しさん@ピンキー:
2 :
名無しさん@ピンキー:03/09/08 16:42 ID:spbvaLS7
前スレ消えたの?謎なり。
即死判定というやつか?
125氏のSSの後半部が投下されてたので油断してたけど、
容量的には不足してたようだな。
5 :
名無しさん@ピンキー:03/09/08 19:14 ID:ASD/6C8P
即死回避するためにあげ
(´・ω・`)ショボーン
7 :
長レス:03/09/08 19:24 ID:7aI787Cu
8 :
長レス:03/09/08 19:26 ID:7aI787Cu
はいはい、晒されてますよとw
まぁ、ドンマイ>俺ってことでw
あぼーん
>>8 先頭のhを抜いても無駄なのだな、これがw
とりあえずキーワードであるADULTをスペースでぶった斬るのが安全策。
物陰|ω・`)陰ながら応援しておりますわ
12 :
長レス:03/09/08 21:08 ID:7aI787Cu
>10
アドバイスthx
こんどからは・・・
ところで、ココは125氏見つけてくれるよね・・・?
・・・・も、もちろん見つけてくれるさ!!
・・・・・・・・・125氏〜〜〜はやくきて〜〜
>>13 容量的にはそれをコピペしても足らないと思うが
15 :
長レス:03/09/08 21:43 ID:7aI787Cu
とりあえず、stage06のApartを全貼りしてみる?
>>16 では僭越ながら私がstage06のApartの全貼りを致したいと思います。
玄関のチャイムが鳴らされる。
まどろみかけていた意識が呼び戻され、原田梨紗は玄関まで駆けていった。
「梨紅っ!」
ドアを開けると同時に帰りを待っていた人の名前を口にした。
そして、そこに立っていたのは原田梨紅ではなく、彼女を背負った丹羽大助だった。
「丹羽くん、梨紅、梨紅は?!」
「大丈夫。気を失ってるだけだから」
彼は微笑むが、身体中あちこち刻まれている切り傷が痛々しい。
「その傷……」
「そんなことより早く梨紅さんを。雨に打たれて身体が冷えちゃってる」
「でも、丹羽くんだって傷の手当てしないと!」
「僕は平気。だから梨紅さんをお願い」
梨紗の言うことをそっと断り、梨紅を床の上に降ろした。
「服を着替えさせて身体拭いて、しっかり暖めてあげて」
「う、うん」
「じゃあ僕は帰るよ。それじゃ」
「あ、待って」
玄関から出て行く大助の背中に呼びかけるが、彼には聞こえないのか、そのまま扉を閉めて
姿を消してしまった。
「…………ありがとう」
彼女は彼に言えなかった台詞を口の中で小さく呟いた。
痛い。身体中がぎしぎしと悲鳴をあげている。
ここまで歩いてこれたのは原田さんに梨紅さんを探すという約束をしていたおかげだ。
それが終った今、僕にはもう歩くほどの気力も体力も残されていない。
玄関を出ると倒れそうになるのを堪え、雨の止んだ世界を踏みしめて歩き出した。
「終ったか?」
フラフラと危な気な足取りで歩く僕を支えるように、鏡――ではなく、
盾を抱え、剣を背負った少女がぴったりとくっついてきた。
「うん、帰ろうか」
ウィズを呼ぶとさっちゃんの肩からひょっこりと顔を覗かせた。
「いける?」
「キュッキュッ」
身体が乾いたおかげですっかり元気を取り戻したみたいだ。元気に返事をしてくれた。
「じゃあ帰ろう。さっちゃん、掴まって」
ウィズが黒翼に姿を変え、さっちゃんが前から腰にしがみついてきた。
「うんん、すりすり」
「……さっちゃん」
「なんじゃ」
「どうして股間に顔を埋めて頬擦りしてるの?」
「おお、悪い。久々の生の男を前に少し自制できなんだ」
「まあ、いいけどさ」
ぶわっと翼を扇ぎ、上空へと飛翔した。
「ねえさっちゃん」
「どうした?」
前にしがみつかれると飛びにくいと言うと、渋々背中に乗ってくれたさっちゃんに訊いた。
「どうしてそんな姿になっちゃったのさ」
「そのことか。説明してなかったな」
「うん」
「レムから魔力を譲り受けた時にその量が多くてな、一時的に実体化することでその魔力を
外へ逃がしたのだ」
「どうして外に逃がしたの」
「そうせねば短剣という器に収まりきれぬ魔力が漏れてしまい予測できぬ事態が起こること
があるからな」
「そっか。じゃあどうして短剣は崩れちゃったの?」
「おそらく我の魔力の増強が急すぎて耐え切れなかったのだろう。それにもともと戦闘には
向かぬ代物であったしな」
「へー。あ、それともう一つ訊いていい?」
「何でも訊いてみろ」
「蒼月の鏡……じゃなくて盾、かな。とにかくさ、今も言ってたレムっていうのは」
「ああ。察しの通りこれに宿る精霊の名だ」
盾をこつんと叩いて答えた。
「ちなみにレムはゴーレムと呼ばれる種族の一人だ。主も聞いたことくらいはあろう?」
「ゴーレムって、なんかごつごつしてるあれ?」
「そう、それだ」
「へー。でもさ、僕が夢で見た女の子はそんなのとは全然違う細い娘だったよ」
「見た目で判断するな。現にこやつはあの紅円の剣の一撃を防いだだろう?」
「それって関係あるの?」
「精霊が宿った物にはその精霊の特性が少なからず影響する。だからこれも盾として機能し
たのだ」
「へー」
「勉強になったか?」
僕より幼い女の子が得意げに聞いてくる。ちょっと複雑な気分だ。
でも僕には魔力やそれに関する類の知識がまったくない。さっちゃんに頼ってしまうのも仕
方がないことだ。
さっちゃんと話しているとすぐ家に着いた。
家を出たときと同じように部屋のベランダから自分の部屋へ戻った。
ベランダに足がつくと途端に身体が重くなり始めた。
「うっ……」
ふらっとからだが揺れて窓にどんともたれかかった。
「本当に大丈夫か?今日はもう休んだほうがいいぞ」
「う……ん、そうするよ」
窓を開けて部屋へ入った。
「お帰り」
「ただいま」
のそのそと二段ベットに上りごろんと寝っ転がった。
「その様子だと大分疲れたようだね」
「うん……」
天井を眺め、すぐに瞼が重くなってくる。
「ん?そっちの少女はどちらの娘さんかな?」
「我は主に仕える精霊だ。今は訳あってこのような姿をしている。で、貴様は誰だ」
「僕は丹羽小介。そこで寝ている大助の父さんだよ」
「って父さん!!?どうして僕の部屋にいるのさっっっ!!」
がばっと跳ね起きた。
「やっと気付いたのか」
ははっと僕に笑いかけてくるのは紛れもなく僕の父さんだ。椅子に腰掛けている。
「どど、どうして父さんが?っていうかいつ帰ってきたの?」
「ついさっきだよ。ちゃんと帰るって手紙出したんだけど、笑子さんに聞いてなかったのかい?」
「全然。そんなこと言ってなかったよ」
「笑子さんも意地悪だね」
「あー……、親子水入らずのところ悪いが」
僕と父さんが話しているところにさっちゃんが口を挟んできた。
「主よ。我のことが見つかったが、それは構わんのか?」
それから父さんにさっちゃんのことを話した。
どうして僕に仕えているか、どうして今こんな姿をしているかを。
もちろん恥ずかしい部分は伏せてだけど。
「ふむ。それは少しまずいかもしれないな」
「どうして?」
さっちゃんがこの姿になったことを話すと、父さんの表情が曇ってきた。
「この実体化は一時的なものなのだろう?」
「その通りだ」
「なら、君は時間が経てば元の鞘に納まらなければいけない」
「うむ」
「でも、その短剣はすでに消滅している」
「あ、そうか」
「短剣の代わりを見つけてあげないとさっちゃんがどうなってしまうかわからない」
「代わり、代わりの美術品か」
「ふふん、その心配ならせずともよい」
頭をひねって考えようとしていたらさっちゃんが自信満々といった感じで言ってきた。
「これを使えばよかろう」
彼女が掲げたのは、
「紅円の、剣?」
「それでいいのかい?」
「うむ」
大仰に頷いた。
「でも、美術品は母さんに」
「いいではないか。これはもともと主が手に入れたものだ」
「さっちゃん……」
「父さんもいいと思うよ。盗んでこいって言われたわけでもないんだしね」
「父さんまで……」
「そういうことだ。我の新しい器はこれに決めた」
「じゃあ寝る前に傷の手当てをしないとね」
「え……」
「そんなぼろぼろの格好で明日は学校に行く気かい?」
「あ、そっか」
「救急箱を取ってくるから待ってて」
父さんが腰を上げて部屋から出て行った。
「いい親父殿だな」
不意にさっちゃんがそう言ったので照れくさくなった。
「うん。僕もそう思う」
ふわふわと身体が軽い。――夢だ。
「今日もするのか」
実体化しているときくらい夢には出てこなくてもいいじゃないか。
そう思いつつ辺りを見回した。
「あれ?」
いつものように梨紅さんが現れる。そう思っていた僕は間抜けな声を上げた。
なぜならそこにはメイド服でショートヘアで眼鏡っ娘の女の子がぐったりと倒れてい
たからだ。
昨日の夢に出てきた女の子、つまり蒼月の盾に宿る精霊のレムさんだ。
「君、大丈夫?」
側に駆け寄って身体を揺すってみると、声を漏らして目を薄っすらと開けてきた。
「……あ」
目が合った。すると、
「ご主人様だーっ!」
がばっと抱きつかれた。
「うわわわわぁっ!?」
僕はそのまま、身体の小さな女の子に押し倒されてしまった。
「んふぅー」
嬉しそうに頬擦りをしてくる。
「ま、待って待って!」
「ふにゅ?」
そう言うと目をぱちくりさせて首をひねった。
「あのね、どうして僕が君の主人になってるの」
僕が訊ねると彼女ははじけるような笑顔で答えてきた。
「さっちゃんにあれを吸われてる時にいろいろ見えたのです」
「あ、あれって……」
「それでわかったのです。あなたがさっちゃんのご主人様で、だから私のご主人様にな
ってもらうのです」
「いや、そんな一方的に決められても……」
「私のことはレムちゃんと呼んでください」
「あのさ、だから……」
「それにさっちゃんに吸われた魔力も補給しなくてはならないのです」
「それって、つまり……」
「それでは今日はさっちゃんに代わって、僭越ながら私が奉仕させていただきますよー」
「そんな……ああッ」
舌で胸をくすぐられて素直に反応してしまった。
「ご主人様、敏感ですねー」
レムちゃんの目がぎらぎらと光っている。明らかに楽しんでいる。
それに敏感なのはさっちゃんのせいだ。すっかり性に対して貪欲になってしまった自分
が情けなく感じる。
「敏感なのはいいことなのです。やるほうもやられるほうもびんびんになるのです」
可愛い見た目とは裏腹にとても過激なことを言っている。きっと彼女もさっちゃんに汚
染されたのだろう。
でもこんな可愛さが溢れる感じの娘は、ちょっと虐めてみたくなる。
「じゃあさ、レムちゃんも敏感なのかな?」
「ふぇ……きゃッ!」
上に乗っていたレムちゃんと身体を入れ換えた。
手を押さえつけて、さっきされたことを返すように頬擦りをした。
「ひゃうッ、くすぐったいのですぅ」
「くすぐったいのはいいからさ、服脱がせてもいい?」
「も、もう本番ですか!?もっとゆっくりとしてください」
「ダメ。もしかしてレムちゃん、言うこと聞いてくれないの?」
「そんな悲しそうな目で見つめないでください。胸がぎゅぅってなっちゃうのです」
「じゃあ脱がせてもいいんだね」
「あうぅ……どうぞ」
涙ながらに背中を向けてきた。じゃあ遠慮なく脱がしてみよう。
さすがにメイド服の脱がし方なんて知らないけど、なんとなくでやってみた。
背中についていたボタンを三つ外すと、さっちゃんと同じくらい白い彼女の肌が露にな
った。
上をはだけさせて、ぷくっと膨らんでいる胸を優しく揉んであげる。
「んうぅッ」
「レムちゃんも敏感だね。可愛い声」
「は、恥ずかしいですよ、ァンッ!」
始めは僕のほうが喰われちゃうかと思ったけど、やっぱりこんな娘は虐めるほうがいい。
調子付いた僕はふにふにとした小振りな胸を揉む指に力を加えていった。
「はぁんッ、ご、ご主人様、とっても上手ですぅッ!」
思った以上の感じ方だ。この娘、本当は受けのほうだなと直感した。
「そんなにいい?」
「はいぃッ、き、気持ちよすぎて死んじゃいそうですぅッ!」
レムちゃんの感じ方は本当に死んじゃいそうな程だ。
まだ胸しか弄っていないのに、僕の胸に触れる彼女の背中は熱く、汗もどんどん噴き出
している。
「息も絶え絶えだね。苦しいかな」
「あ、ああッ!く、るしいですッ、早く、イかせて欲しいのですッッ」
さっちゃんでは見ることがほとんどできない喘ぎまくる姿にどんどん興奮してきた。
「……あ」
そこでちょっと思い当たることがあった。
「ねえレムちゃん」
「あぅ……なんですか?」
胸を弄られるのをやめられたせいか、物寂しそうな表情を向けてきた。
「君もさっちゃんみたいに、魔力がなくなってるから感じやすくなってるの?」
そんなことがあったと思い出した瞬間、自分の実力で喘がせているんじゃないのかと不
安になった。
「それはさっちゃんだけですよ。私は普段からこんな感じなのです」
でもレムちゃんの口からそう聞いたら、さっきまで抱いていた不安がすっきりと消えて
いった。
「そうなんだ。じゃあ僕は、自信持っていいのかな?」
「はいです。だからお願いです、早くご主人様の、入れてください」
入れます。
不安の代わりに興奮がどんどん溢れてきてもう我慢できない。
「お尻出して」
突き出されたお尻にかかるスカートをぺろりとめくると、水色の縞々のストライプのシ
ョーツを穿いていた。
ショーツの股間部が、筋がわかるように湿っている。
膝までショーツを下ろすと、小さなお尻に皺のよった蕾、粘膜で光る秘裂が姿をみせた。
「きれいなお尻してるね」
すべすべしたお尻を撫で、すぐさま割れ目に僕のを押し付けた。
そういえば昨日無理矢理入れたときはとてもきつきつだったけど、今日は入るのだろうか。
(なんて考えるよりまずは動かないとね)
「ひぐッ、んんッ!」
ぐにっとレムちゃんの中へ押し込んだ。すると昨日はあんなに挿入を拒んでいたそこにす
るすると入っていった。
膣がぐちょぐちょに濡れているせいだろうか、呑み込まれるように最深部まで到達した。
彼女の膣壁は中ほどの圧迫感が強い。もともと狭い道がさらにきつくなっている。
堪能するようにゆっくり腰を引くと、その狭いところで雁首が圧迫されて気持ちいい。
「は、はぐぅッ、い、いいですッ」
「僕もだよ。ほら、ほら」
バックからぱしぱしと出し入れを繰り返すと、そのたびに快い鳴き声が耳に届いてくる。
さっちゃんとは違う挿入感に、もう果ててしまいそうだ。
でもまだ堪えることができているのは、レムちゃんをもっと虐めたいという虐待心のおか
げだ。
「はうッ、あう、んぎッ、ぐッ」
突くたびに上げる声が性欲を煽ってくる。
久々の攻めに酔いしれ、今回の夢はさっちゃんとやる時より長く、多くしてしまった。
「ふいー」
起きてまず出たのは欠伸ではなく、満足からくる悦びの声だった。
(今日はちょっとしすぎちゃったかな)
反省しつつトランクスの中へ手を伸ばした。
「あれ?濡れてない……」
でも今日はなぜか精子が出ていない。いつもと違っていることを訝しく思っていると、
「おや、起きたか」
僕の横でさっちゃんが寝ていた。驚いて身体が強張った。
「いやしかしこう口が小さいと奉仕もしにくいな」
「え、えっ?なに言ってるのさっちゃん!」
「しかし現実で久々にあれを飲めたのだ。満足満足」
「あれ!?あれってあれのことなの?!」
自分でも何を言ってるかわからなくなってきた。
「ふいー。今日は疲れた。もう少し寝させてもらおうか」
そう言ってさっちゃんはまたベットに潜り込んでいった。
「現実でも、弄ばれてたんだ……」
なんだか急に身体がぎしぎしと痛み始めた。
朝食は家族四人でテーブルを囲んでとった。
母さんもじいちゃんも楽しそうに父さんと会話していた。
僕は父さんがさっちゃんのことを言ってしまわないかどうかはらはらしてたけど、そん
なことはなかった。
ついでに家を出る前に、部屋で寝ているさっちゃんのことを父さんに頼んだ。
父さんは簡単に了解してくれた。父さんに感謝しながら、僕は学校へ向かった。
教室に入ると、
「あ」
僕の顔を見るなり原田さんが腕を引いて僕を廊下に連れ出した。
「なに、なんなの?」
腕を引かれると痛みが走る。傷が開いてしまうかもしれない。
「丹羽くんっ」
両手をぎゅっと握られた。原田さんの柔らかな指の感触にどきっとする。
「昨日言えなかったんだけど、梨紅を連れてきてくれてありがとう」
「あ……うん、気にしないで」
手から伝わる感触にぼうっとしていた意識を連れ戻した。
原田さんがにっこりと笑いかけてる。頭がくらくらして吹っ飛んじゃいそうだ。
「それでね」
また意識を連れ戻す。気付いたけど、原田さんはずっと手を握ったままだ。
「梨紅、今日は風邪でお休みなの」
「梨紅さんが……そっか」
昨日はあれだけ雨に打たれたんだ。気も失っていたし、仕方ないことだと思う。
「あの娘のこと、気になる?」
「へ?う、うん、当たり前だよ」
「そう…………」
「あの、原田さん」
なんだろう、突然しゅんとしてしまった。
「ううん、なんでもないの。梨紅のお見舞いに行ってあげて。きっと喜ぶから」
そう言って原田さんは教室へと戻った。
僕は、未だにどきどきと高鳴る胸をひとなでして気分を落ち着かせた。
「うん……」
ベットの中でもぞもぞと動いているのはさっちゃんだ。
「ふぁ、ん……、少し寝すぎたか」
首をちょこんと出して辺りを見回す。
「ん?おい主、どこだ」
大助を呼んでも返事は返ってこない。部屋の時計を見ると時刻はすでに十一時を回
っていた。
「しまった、寝すぎたか。おいウィズ」
「キュ?」
ベットからもぞもぞとウィズが這い出してきた。
「主の元へ行くぞ。一刻も早くだ」
「あー、さっちゃん出かけるのですか?私も連れて行くのですっ」
「レム、もう魔力が回復したのか」
「はい。ご主人様からいっぱいもらったのです」
「なにっっ!?貴様、何を勝手なことをしている!主は我だけのものだ。貴様には渡
さん!!」
「そんなー。ひどすぎですよぉ」
さっちゃんとレムちゃんががみがみ言い合っていると、そこに小助が現れた。
「やあ。もう少し静かにしたほうがいい。今はお父さんも笑子さんもいるからね」
「親父殿、ちょうどよかった。我はこれから出かけるのでこれを頼む」
「これって私のことですかぁっっ!?」
抗議の声を上げるレムちゃんは無視して小助に押し付けた。
「へぇ、これにも精霊が宿ってるんだ。はじめまして、かな」
「あらら。ご丁寧にどうもなのです。レムちゃんとお呼びください」
「……ちょっと待て」
ウィズを黒翼に変身させようとぽくぽく叩いていたさっちゃんがある違和に気づいた。
「親父殿。レムの声がどうして聞こえるのだ?」
違和の正体はそれだ。普通の人間では決して聞くことのできない声を小助は聞いてい
た。
「ああ。世界中を旅してるとね、いろんなものに出逢うんだよ」
小助が左手をさっちゃんに見えるようにした。
「中指にはめている指輪があるよね。それが僕にちょっとした力を貸してくれてるんだ」
「さすがは親父殿だ。そんなものを持っているとは」
「それで、君はこれから出かけるんだよね」
「ああ、そのつもりだが」
「でもできればその格好で外に出るのはよしたほうがいいよ」
小助が指摘したさっちゃんの格好は、身体の恥ずかしい部分しか隠せないようなきわど
い服装だ。
「我は構わないのだが」
「大助のほうが構うと思うよ」
「ううむ。そういったものか」
「ちょっとここで待っていて」
小助が大助の部屋を出て、そしてすぐに戻ってきた。
「これを着るといいよ」
小助が差し出したのは小学生中学年サイズのセーラー服だった。
「ふむ」
さっちゃんが着ている服の上からそれを身につけていく。
「ほお、これは動きやすくてなかなかいいものだ」
「うんうん、よく似合ってるよ」
手にしたカメラでさっちゃんのセーラー服姿をパシャパシャと撮っていく。
「親父殿はこんな服をどこで手に入れたのだ?」
「世界中を旅してるとね、いろんなものに出逢うんだよ」
そう言って小助はさっちゃんが出かけるまでずっと写真を撮り続けた。
昼休み。
「おい大助」
いつもの四人で机を囲んで弁当を食べていると冴原が名前を呼んできた。
「なに」
「最近、原田妹と何かあったのか?」
いきなりの質問に口からご飯粒を噴き出し、前に座っていた日渡君にかけてしまった。
「ど、どうしてそう思うんだよ!?」
「いんや、この頃さ、原田妹がちらちらお前のほう盗み見てるんだよ」
「そんなこと……」
「俺も証言しよう」
関本が口を挟んだ。
「今も見てるぞ」
手にした箸で僕の後ろを指し示した。関本の箸に導かれるように僕は後ろを振り返った。
「っ……」
原田さんと目が合った。と思ったらすぐに反らされた。
「な。見てただろ」
「そんなこと言われても、ただの偶然かもしれないし」
「お前なあ、どうせ考えるなら前向きに考えろよ。まだ脈ありなんじゃないのか」
冴原がにやにやしながら言った言葉に思わず顔が赤くなるところだった。
「からかうのもいい加減にしろよ」
「オレは親友としてお前にだな……」
「いや、ただの偶然に決まっている」
僕と冴原が言い合いを始めようとした時に日渡君が眼鏡を拭きながら呟いた。
「なぜなら丹羽、君は一度ふられているじゃないか」
僕は五のダメージを受けた。
「君は原田梨紗の好みではない。そういうことだ」
僕は十二のダメージを受けた。
「そう、そうだ!希望的観測はやめておけ。あくまで悲観的に悲愴に生きていくんだ
丹羽っ!」
あ、もうダメ。僕は戦闘不能になった。
「完っ全に落ちたな」
「日渡も容赦ないな」
「当たり前だ。丹羽の支えになってやるのは俺だけで十分だ」
「それ以上喋りたいなら801に行ってこい」
関本が理解不能な突っ込みを入れている。
僕の心はしばらく鬱がはいりそうなくらいへこんでいた。だから教室の雰囲気が変わ
ったことに気付くのが遅れた。
「……ん」
教室が異様な沈黙に包まれていることにようやく気付いた僕は顔を上げた。
みんなの視線が僕に、いや違う、僕のすぐ傍らに集中している。
ふっと横を見ると、そこには今朝ベットの中で見たのと同じ顔の娘が、セーラー服を
着て僕を見つめていた。
(んな、なんで学校に来ちゃってるのっっっ!!)
その女の子の名前が反射的に口から出そうになったのをぐっと飲み込んだ。
クラスのみんなの前で、いろいろと面倒なことを起こしたくないと思ったからだ。
(そうだ、すぐに教室から連れ出して、それから、それからぁぁぁっっっ)
頭の中が混乱して何をしていいのかわからなくなってきた。
「パパ〜〜」
さっちゃんが突然、甘ったるい鼻にかかる声でそんなことを口走った。
一瞬、何を言われたかわからなかった。そして僕がその言葉の意味を理解した瞬間、
『えええぇぇ―――――――――――っっっ!!?』
クラスの空気が一斉に震えた。
以上でApart終了です。
125氏の降臨が楽しみです。
p.s.
改行を多少弄らせて貰ったことをお詫びします。>125氏
でも125氏だけじゃなくて他の職人さんももっと来て欲しいなあ。
前スレの655氏の視姦される梨紅なんかハァハァもんだったんだけど。
即死したのだな、探したよ。
ほんと、災難だった。
さて、125氏の降臨でも待つか。
即死なんて初めて見た・・・。
pink板じゃよくあることなの?
漏れも初めて見たよ
書き込もうとしたら出来なかったんで気がついた
自分は793までの取得で500kbの表示
書き込もうとすると512kbを超えていますになって書き込めないよん
最初のスレは容量をオーバーしたので書き込めなくなった。
レス数が1000を越えたのと同じ扱い。
2番目のスレは即死判定に引っ掛かった。
詳しい基準は知らないが、スレが立って、一定の期間内に、
一定数以上のレスか、一定量以上の書き込みがないと即dat行きらしい。
48 :
名無しさん@ピンキー:03/09/09 18:15 ID:5bVExZfL
職人さ〜ん!
俺達はここにいるぞ〜!!
49 :
125の人:03/09/09 22:24 ID:3uWuK1/p
>/XcuQLRhさん
貼らせてしまうとは申し訳なかったです。
即死防止乙ですた。
50 :
長レス:03/09/09 22:40 ID:zvmh2EpC
これは、とりあえず即死回避成功かな?
だとしたら、うれしいな〜
まぁ、落ちない程度に125氏のBpartマターリ待ちですな。
125氏〜ここだよぉ〜
あーんど
他の職人さんもうぇるかむ!
現在、ほのぼのしたのは結構足りてるけど、エッロイのが不足してま〜す。
52 :
長レス:03/09/09 23:41 ID:zvmh2EpC
>51
そだね。
一発濃い〜の来てもらってもいいねw
濃いのかあ。
どういったのがここの住人には需要があって許容されるんだろう?
とりあえず待っているだけでは駄目だ
自ら書いてみようではないか
で、書いてみた。
濃いのということで四sh(ry ((((;゜Д゜))))
だめだ・・・初投稿でんなもん投下できるかよ・・・
56 :
125の人:03/09/10 17:38 ID:NQruzRel
>>55 ぜひぜひ投下してください。
今はエロ成分が不足してるのでぜひぜひ。
57 :
125の人:03/09/10 17:39 ID:NQruzRel
「お兄ちゃん、あーんっ」
「あ、あーん……」
「美味しい?」
「うん……」
僕の向かいに座って僕の弁当にあった玉子焼きをさっちゃんが食べさせた。
さっきまで一緒に席を囲んでいたみんなは遠くに移動している。
クラスのみんなには親戚の子が学校まで来てしまったと、涙ながらに弁護した。
一応信用してもらえたみたいだけど視線が、特に女子からのものが痛い。
「俺と丹羽の子だ」
いきなり日渡君がそう口走ったので、訳も分からないまま張り倒して教室の窓から捨ててしまった。
(でも日渡君なら大丈夫だよね)
そう納得しておこう。そんなことより今問題なのは、
「お兄ちゃん、あーんっ」
「……あーん」
こっちのほうだ。
「キュウキュウ」
「ウィズは出ちゃダメ」
さっちゃんの胸の谷間、というほどふくよかなものではないけど、そこから顔を覗かせようとするウィズに注意した。
何故ウィズがいるか聞いてないけど、さっちゃんが勝手にウィズを使ってここまで飛んで来たに違いない。
どうしてウィズはさっちゃんの言うことを聞いてしまうんだろう。
「はぁ……」
また僕の幸せが逃げてしまった。
とにかく今日はさっちゃんが変なことをしでかさないようにしっかり監視しておこう。
どうも僕を困らせることが目当てみたいな気がしてるけど、それなら傍から離れることはないから好都合だ。
午後は長くなりそうだ。
58 :
125の人:03/09/10 17:40 ID:NQruzRel
「丹羽くん!」
昼休みも残り数分というところでトイレのために席を立った。
幸いなことにさっちゃんの周りには人がいっぱい集まっているので、彼女が自由に動けない。
(今のうち今のうち、っと)
みんなに変なことを吹き込んでも後で弁護すればいい。
(一度も二度も変わらないってね)
そう思って教室を飛び出した途端、廊下で原田さんに捕まえられた。
「ど、どうかした?」
聞いてはみたけど、何の事を訊かれるかは大体察しがついている。
「あの女の子、丹羽君の親戚なの?」
ほらやっぱり。
「うん、そうだよ」
「ホントにホント?」
「うん」
「ホンットーに、ホントなのね?」
「そうだってば。他に何があるって思うの?」
「そ、それは……ッ!」
急に俯いてぼそぼそ声を出し始めた。
「に、わくんが……ろ、ろろ――で、あの娘がこ、こ、恋――」
ところどころで聞き取ることができない。
「鯉がどうかしたの?」
「どうもしてないっっ!!それじゃね」
顔を真っ赤にした原田さんに怒鳴られてしまった。彼女はそのまま教室へ戻っていった。
「なんだったんだろ……」
僕は原田さんの行動を怪訝に思いながらも、トイレへと足を運んだ。
59 :
125の人:03/09/10 17:40 ID:NQruzRel
「しかし原田さんの心配も分かるな」
「んはぁっ!?」
背後から日渡君の声。振り返ると奴がいた、みたいな。
制服に付いた土埃をさっさ、と払いながら日渡君が立っていた。
「わ、わ、分かるってなにが?」
激しく動悸を繰り返す胸を撫で下ろしながら訊いた。
「丹羽、君は乙女心というものが分かっていない」
「そんなの、分かるわけないよ」
「俺には分かる」
「えぇっっ!!」
「彼女は不安なんだ。君があの幼女に手を出していないかとっ!」
「そ、そんな……」
「はっきり言ってお前の守備範囲が分からない。この俺にもだ!!」
「いや、そんなの教えてもいないし……」
「だが俺は信じている。お前はロリなんかじゃない、やお」
「そこまでだっっっ!!」
颯爽と突っ込み担当の関本が現れて日渡君を廊下の窓から蹴り落とした。
「日渡君っっ!」
「まあこれくらいじゃ怪我もしないから安心しろ」
「そうだね」
納得したので再びトイレへと向かった。
60 :
125の人:03/09/10 17:41 ID:NQruzRel
午後の授業は五時間目と六時間目だけだ。でもその二つが今日は特に長く感じられる。
「絶対帰る気はないからな。しっかり面倒を見るのだぞ」
そう耳打ちされてしまっては追い返すこともできない。それに無理に追い返せば後が怖い。
さっちゃんは授業中ずっと僕の膝の上に座っているだけだ。
本当なら教室から出されてしまうところだが、僕の必死のお願いと先生の恩情でこうしていられる。
五時間目が始まり、そして信じられないことに何事もなく終ってしまった。
終始さっちゃんに何かされると身構えていた僕にとってそのことが以外だった。
(でも気は抜けない。いつ、何をされるか分かったもんじゃないからね)
固く決心した。
61 :
125の人:03/09/10 17:42 ID:NQruzRel
六時間目、数学の時間。
序盤は何事もなく過ぎていた。
僕もさっちゃんが膝の上にいることに大分慣れてきていた。
そのせいで気が緩んでいた。そしてことは始まった。
もぞもぞと膝の上でさっちゃんが動いた。それ自体は別にどうってことのない動きだ。
今までも授業中に何度か身体を動かしていたから別段不自然ではない、はずだった。
「っ!」
今までと違うのはさっちゃんの揺れるお尻が僕の下半身の、股間に擦り寄ってきていることだ。
注意しようにも今は数学の時間でクラスのみんなが静かに問題と向き合っている。
シャーペンがさらさらとノートの上を動く音以外聞こえない中では、どんなに小声で言っても話の内容が聞こえてしまう。
どう対処すればいいのか考えている間にも彼女のお尻は音も立てずにすりすりと動く。
さっちゃんの背中が僕の身体にぴたっと密着する。
小さな息遣いと柔らかな肌とそのぬくもりが制服という布越しに伝わってくる。
僕は幼女にはそれほど興味はない。決してロリコンではないはずだ。
なのに、その時はとても彼女の身体に興奮してしまった。
いつもあんなことをしているせいかもしれないけど、この状況ははっきり言ってまずい。
面には出さないけど股間部がテントを張りかけている。
数学の問題に向かって必死に理性を保とうと努力した。
けど、僕の股間の変化を感じ取ったのか、さっちゃんのお尻が優しく優しく擦りつけられる。
幼女のお尻という新たな性欲の境地に足を踏み込みかけている。
勃起寸前にまで追い詰められた僕は最後の手段に出た。
「先生」
「なんだ丹羽」
挙手した僕を指して訊ねてくる先生に答えた。
「トイレに行っていいですか」
「ん。早く言ってきなさい」
はい、と言って席を立ち、少し前かがみ気味で申し訳なさそうに教室から飛び出した。
62 :
125の人:03/09/10 17:43 ID:NQruzRel
廊下を音を立てないように走りながら男子トイレの個室へと駆け込んだ。
「っはぁー……」
安堵の溜め息が漏れた。股間の興奮が収まるまではここで待つしかない。
「うむ。なかなかよい場所だな」
「いいって何が……、さっちゃん!?」
聞こえてきた声に慌てて視線を下ろすと、さっちゃんがズボンの膨らみをさすっていた。
「あまり声を出すな。見つかって困るのは主のほうだぞ」
「んぐ……」
僕が声を呑み込んだのを満足気な表情で見届けると、ズボンのチャックが下ろされて半勃ちのペニスをつまみ出された。
「さすがにまずいって。時間だってないし」
「案ずるな。一分で済ませる」
小声で囁くと自信満々に言い切られた。
さっちゃんに咥え込まれた僕のは、いつもと違う小さな口内の感触のおかげでどんどん血液が集まった。
63 :
125の人:03/09/10 17:43 ID:NQruzRel
口の中で全開になったペニスがさっちゃんの粘膜に触れる。
唇の締めつけはいつも以上にきつく、それが幼い女の子のものだと感じさせる。
幼い女の子にしてもらっているということが興奮を強め、本当に一分でイッてしまいそうだ。
だが彼女のほうは大きいペニスに苦心しているらしく、頭の動きも全然スムーズじゃない。
まどろっこしい。
そう思った僕はさっちゃんの頭を両手で掴んで乱暴に前後に動かした。
「んッ?!ん、んん、ん……」
きっとやめて欲しいと言いたいんだろう。
でも、今の僕は早く出してしまいたいという気持ちでいっぱいだった。
さっちゃんをこんな風に扱ってしまうのは信じられない。
けど、それは多分、今朝レムちゃんという受け手の女の子とし、さっちゃんがこんな姿をしているせいだと思う。
幼い口を蹂躪する感覚に酔いしれ、僕は喉奥までペニスをねじ込んだ。
そのタイミングで先端の穴から白濁の液が堰を切って飛び出した。
口内で暴れて脈打ち、喉へ精液を流し込んだ。
「ちゃんと飲み込んで」
僕が言ったことに、顔をしかめながらもさっちゃんは喉を鳴らしてそれをごくごくと飲んでくれた。
徐々に硬度を失っていくペニスをさっちゃんの口から抜き取ると、急いで唾液をふき取って便器に流した。
「さっきは妙に強気でなかったか?」
「ん、まあいいからいいから」
「気に喰わん」
「いいからいいから。教室に戻ろ」
64 :
125の人:03/09/10 17:44 ID:NQruzRel
学校にいる間にさっちゃんから受けた、というかさっちゃんとしてしまったことはこれだけだった。
後は何事もなく、平穏無事にすごして放課後を迎えた。
「お兄ちゃん、帰ろー」
と、まだ面倒を見なくちゃいけないこともあるけど、帰れるということでかなり気が楽になった。
「丹羽くん」
と、話しかけてきたのは原田さんだ。
「な」
に、原田さん。と言いかけた。
「なにおばちゃん」
そこで僕の言うことを遮ったのはさっちゃんだ。
「おば……」
原田さんの眉間に皺がよってる。明らかに気に障ってる。
気のせいか、二人の間にとてつもない闘気が渦巻いているように見える。
これ以上はいろいろとまずいと直感的に悟った僕は急いで二人の間に割り込んだ。
「何か用かな原田さん!」
「あ、丹羽くん」
僕の顔を見ると原田さんの表情がいつものものに戻った。
「ちっ」
後ろからさっちゃんの舌打ちが聞こえたが、とりあえず聞かなかったことにした。
「うん。今日も一緒に帰ろうかと思って」
不安の色が濃く現れた。無理もない。世間的には未だに女性を襲う犯罪者が町をうろついているんだから。
僕は即答して一緒に帰ることにした。
さっちゃんがいろいろと不平不満を言っていた気がしたけど、やはり聞かなかったことにした。
65 :
125の人:03/09/10 17:45 ID:NQruzRel
さっちゃんが僕の腕に巻きついている。これは、まあいい。
原田さんが僕の手をそっと握っている。これは、すごいことだ。
今朝も少しだけ握られたけど、今はずっと握られっぱなしだ。
(手を握って歩いてるなんて、まるで……こ、恋ぃ……)
どきどきしっぱなしで授業の時のように今すぐ逃げ出したい気分になった。
ここにさっちゃんがいなかったら絶対に大変なことになっていたと思う。
さっちゃんがここにいてくれているのはそのためか、それとも、
(ただ単に困らせるつもりでいるんだと思う……)
意地悪い彼女の子とだ、きっとそうだろう。でも、おかげで今は助かっている観がある。
「ねえ」
原田さんの声にそちらを向いた。
手を握っているせいでいつもより近いところに顔がある。
「梨紅のお見舞いにはいつ来るの?」
「梨紅さんの……」
「あの子もきっと喜ぶし、それに」
「それに?」
「今はまだ内緒」
そう言ってえへっと笑う彼女の笑顔が眩しい。
66 :
125の人:03/09/10 17:46 ID:NQruzRel
「お兄ちゃん」
その時、原田さんとは逆の方の腕をぐいっと引かれた。
見ると、さっちゃんがさぞかし不満そうな顔で僕を見上げていた。
「私行きたくなーい」
じゃあ帰っていいよと言いたいけど、原田さんの前でそんなことは言えない。
それにみんなが犯罪者がいると思っている現状で女の子一人を行かせることはできない。
「一人じゃ危ないわ。それに今日丹羽君が来るって決まったわけじゃないし」
原田さんが合いの手を入れてくれる。
「おばちゃんには訊いてないよ」
「おば……」
原田さんの手に力がこもる。ちょっと痛い。
「今日は行けないみたいだし、明日まだ体調がよくなかったら行かせてもらうよ」
「ん、そう」
僕がそう言うと原田さんの手から力が抜けて普通に戻った。
「ふふん」
さっちゃんの勝ち誇った笑みが聞こえたけど、とことん聞こえなかったことにする。
67 :
125の人:03/09/10 17:46 ID:NQruzRel
「よお」
三人で仲良く、はどうかわからないけど一緒に歩いているところに声がかけられた。
前方から聞こえてきた声に僕らの視線が集中した。
「父さん」
優しい微笑を浮かべて手を挙げているのは僕の父さんだ。
父さんが原田さんに笑いかけると、彼女もぺこりと会釈した。
「どうしてこんなところに?」
今いるところは家から少し離れていて、散歩にしては少し遠い気がする。
「さっちゃんを迎えに来たんだよ」
「えー。私、まだお兄ちゃんといたいのー」
「わがまま言って大助を困らせちゃいけないだろ。さ、行こう」
「……そういえば、今朝、さっちゃんのこと、父さんに任せるって言わなかったっけ?」
そう言った瞬間、少しだけ父さんの身体がぴくっとした。
「どうして、学校に来ちゃったの?」
「さ、帰ろうか」
「うん、パパ」
「ってもういないし!!?」
いつの間にか父さんとさっちゃんは遥か前方を仲良く手を繋いで帰っていた。
「……」
「……」
後には僕と原田さんが手を繋いだままぽつんと取り残された。
68 :
125の人:03/09/10 17:47 ID:NQruzRel
結局そのまま原田さんの家まで行ってしまった。
手を繋いだまま無言で歩いていた男女なんて、傍から見れば妙なものだったに違いない。
「じゃあ私、先に行くから。すぐ来てね」
玄関の前でようやく原田さんが手を放して先に家の中に入っていった。
ぬくもりが残る手を眺めていると顔が熱くなってくる。
頭を振ってから家の中へお邪魔した。
「お邪魔します」
靴を脱ぎかけた時にリビングの方から原田さんが顔を出した。
「こっち。ソファに座ってて」
「うん」
原田さんの家に普通に来たことに多少萎縮しながらリビングに入り、腰を下ろした。
リビングには原田さんの姿は見当たらず、僕一人だけだ。
緊張のせいできょろきょろと落ち着きなく室内を見回してしまう。
(は、早く梨紅さんの様子見て帰りたい)
無言の重圧が家中から僕にかけられているみたいで押し潰されそうだ。
「丹羽くん丹羽くん」
重圧を吹き飛ばすように元気な声がリビングに響いた。原田さんがドタドタと足音を立てて入ってきた。
「はいこれ」
何の前触れもなく目の前にお椀が突き出された。
「……なに?」
「お粥だよ。私が作ったの」
「作った……お粥を……原田さんが!」
「うん」
僕の脳裏をよぎったのは以前口にした原田さんお手製のおにぎりだ。
(あ、あれと同じような代物をまた食えと……)
ダメだ。少し気が遠のいてきた。一人で食えと言われても食える自信がない。
69 :
125の人:03/09/10 17:48 ID:NQruzRel
「どうしたの?」
心配そうな表情で僕を窺っている。
「どうって、な、なんで僕にお粥を出してくれたの?」
「それは、丹羽くんに……、味見てもらおうと思ったの、うん、そうそう」
「どうして僕が……。それにこれって梨紅さんのために」
「いいからいいから!男の子なら文句言わないで食べるの」
ずいっとスプーンを突き出された。
少し躊躇ったが、突き返すこともできずにスプーンを手に取り、お粥を掬い、口に運んだ。
(僕ってバカだ)
そう思いながらお粥をしっかりと噛み締めた。
「……」
「……どうかな」
「…………うん、美味しい」
意外すぎる。普通に食えた。
特に美味いというわけじゃないけど警戒するほどひどい味じゃない。
「ホント!よかったー」
原田さんが大きく息を吐いて安堵の表情を浮かべた。
「梨紅ってひどいんだよ。あんたの作ったのなんか口にできない、って言って食べてくれないんだから」
「そっか」
それを聞いて納得した。どうやら僕はさっき言われた味見のために呼ばれたみたいだ。
「でもいつの間にこんなに料理が上手になったの?」
「あのね、あの料理対決があった日からずっと練習したんだよ」
「へえ、すごい努力したんだね」
「うんっ!」
心底嬉しそうに笑ってる。
料理の毒見、じゃなくて味見だけでこの笑顔が見れるなら安いものだと思う。
「これから梨紅の部屋に行くんでしょ」
「うん。お見舞いに来たんだしね」
「じゃあお粥、持って行ってあげて。昨日の夜から何も口にしてないはずだから」
「分かった」
「私、もうちょっとすることあるから、終ったら声かけてね」
お粥とスプーンの乗ったお盆を受け取り、教えられた梨紅さんの部屋に向かった。
70 :
125の人:03/09/10 17:49 ID:NQruzRel
言われた部屋の扉を二回、軽くノックしてから開けた。
「失礼しまーす」
小声でそう断ったけど返事はない。
中に入るとベットの毛布が膨らんでいて動く様子はない。寝ているみたいだ。
ベットの傍らに椅子が出してあったのでそこに腰掛けた。
そこからは梨紅さんの無防備で、熱で赤みを帯びた寝顔が見える。
昨日のことが何事もなかったように眠る顔を見ると安心した。
(そう、昨日のことが……って、ああ!!)
そうだった。梨紅さんには昨日のことを見られていたんだ。
黒翼で飛翔してきて暴行犯を食い止めたり、壁を駆け上がったり、他にもいろいろしたかもしれない。
(どど、どうしようどうしようっ)
こういうときに限って助言をしてくれる人もいない。
梨紅さんのすぐ傍で独り懊悩としてもがき苦しんでいた。
「……ん」
(うわあぁぁぁっっっ)
さらにタイミング悪く、梨紅さんが起きてしまった。
「……丹羽くん?」
うんともすんとも言えずに、ただ椅子に座っているしかない。
いろいろと考えなければいけないところがあるのに何をどう考えればいいかまとまらない。
(そうだ。まずは昨日の言い訳を……)
「そっか。じゃあまだ夢、見てんだ」
「え?」
突然梨紅さんがそう口にしたので反射的に声を出した。
「丹羽くんってさ、なんでもできるすごい人なんだね」
「え、え?」
「空とか飛んじゃうし、壁を蹴って跳ね回るんだもん」
事情がよくわからないけど、あり合わせの情報を組み立てると、梨紅さんは夢だと思い込んでるみたいだ。
しかもその中での僕はなんでもできる人になってるらしい。
昨日あったことと夢がごっちゃになってるんだ。
71 :
125の人:03/09/10 17:50 ID:b3339ph1
「あたしのこと必死に守ろうとしてさ、結構かっこいいんだね」
顔を半分毛布に隠して、恥ずかしそうにしている梨紅さんが、なんだろう、とても……。
(この感じ……、胸が苦しくって、でも、どきどきして……)
知ってる、この感じ。でも、違う。梨紅さんにこんな気持ちを抱くなんて、何かの間違いだ。
「梨紅さんこれ。原田さんがお粥作ってくれたんだよ」
自分の中の気持ちを必死に押し殺しながら、話を逸らすためにお粥を出した。
「梨紗が?いい、いらないよ。夢の中にまで出てこないでよ」
「でも食べないと。風邪、よくならないよ」
「うー……、分かった」
よっこらしょと上体を起こす梨紅さんの背中を支える。
「よいしょっと。じゃあ、はい」
梨紅さんが目を閉じて口を開いて顔を突き出してきた。
「はい……って、なに?」
「もー、分からないの?食べさせて」
「ええっ!」
食べさせるっていうことは、今日僕がさっちゃんにやられたあれを梨紅さんにするっていうことか。
「いや?」
「い、いや……そうじゃないけど」
(参ったな)
風邪のせいか、夢と思い込んでるせいか、梨紅さんがわがままな気がする。
しょうがなく、スプーンでお粥を掬って彼女の口へ運んであげた。
もぐもぐと気だるそうに口を動かし、
「はい」
そう言ってまた口を開いた。口に合わないということはなく、結構気に入ってくれたみたいだ。
72 :
125の人:03/09/10 17:51 ID:b3339ph1
梨紅さんはお粥が無くなるまで食べてくれた。やはりお腹が空いていたんだろう。
「ごちそうさま」
げふっと息を吐きながら言う姿を見ていると、いつも学校で見る彼女とは違っていて新鮮だ。
「それじゃ横になろっか」
起こしたときと同じように彼女の背中に手を添えてゆっくりと横たえていく。
寝巻きの薄い布越しに伝わる体温、呼吸するたびに動く身体、近づいた顔にかかる熱い吐息、
そのすべてを意識し始めている自分に驚いた。
(違う違う違う!僕は、僕は……)
これは間違いだと何度も自分の頭の中で繰り返した。
でも拭っても拭っても、その思いは湧き出すように続いてくる。
僕の顔を見つめている梨紅さんと目が合った。
「あ……」
間近で笑いかけられ、明らかに僕の胸はどきんと高鳴った。
「僕、もう行くよ!」
これ以上ここにいたくないと思った僕は急いで部屋を飛び出した。
後ろで僕を呼び止めようとする気配が聞こえたけど構ってあげられない。
ここにいると、僕の気持ちがおかしくなってしまいそうな気がした。
73 :
125の人:03/09/10 17:52 ID:b3339ph1
地に足がついていないような気分で原田さんのいるリビングまで転がっていった。
「お見舞い、終ったの?」
することがあると言っていた彼女がソファに腰掛けてテレビを見ていた。
「うん。原田さん、することがあるって言ってたけど終ったの?」
「終ったよ。ちょっとキッチン片付けただけなの」
「そう」
かなり顔が赤かったと思うけど、原田さんには突っ込まれなかった。
それからそろそろ帰ると彼女に伝えると、少し声のトーンを落として頷いた。
「あら、丹羽くん、お盆置いてきちゃった?」
「……あっ」
しまった。慌てすぎていて忘れていた。
「ごめん、取ってくるよ」
と言ってから、また梨紅さんの部屋に行くということにひどく抵抗があった。
「いいよ。後で私が片付けるから」
原田さんのその一言に、とても救われた気分になった。
「帰るんでしょ?そこまで一緒に行っていい?」
よく考えもせず、首を縦に振っていた。
玄関から出て、家の前の道まで並んで歩いた。
他愛もない話しかしてないけど、それだけで僕は満足だ。
彼女が僕を好きだと言ってくれなくても、一緒にいられるだけで素直に嬉しいと思える。
「じゃあここで」
「うん。また明日、学校で」
そう言って僕らは別れた。となるはずなのに、僕も原田さんもその場から動こうとしない。
「……」
「……」
一度お別れを言った後のこの沈黙には、なんとも不快な重圧がある。
「…………ね、丹羽くん」
「うん?」
この沈黙を先に破ったのは女の原田さんのほうだった。男としてちょっと情けない。
「十秒でいいから、目、閉じてくれる?」
「うん、いいよ」
言われるままに目を閉じて十秒数え始めた。
74 :
125の人:03/09/10 17:53 ID:b3339ph1
十、九、八、七、六、五……。
その辺りで、僕の頬に暖かなものが触れた。熱い、さっき梨紅さんから感じたのと同じような風がそっと頬を撫でる。
鼻にはさらさらとした、優しくて甘い匂いのする糸状のものが触れた。
それが離れたと思うと、とたとたと地面を駆けるような音が聞こえた。
……?、三、ニ、一。
ぱちっと目を開くと、そこには原田さんの後ろ姿が遠くに映っていた。
何が起きたのか理解できないで呆然と立っていた僕の方を原田さんが振り返った。
「丹羽くーん」
少し離れた位置だったので耳を澄まさないと聞き逃してしまいそうだ。
原田さんの声に集中して言葉を聞いた。
「私、丹羽くんのこと好きだから!!」
好きだから。そう言われた僕の心臓は大きく脈打った。
その好きがどのくらいの好きかは分からないけど、僕の体温を一気に上げるには十分すぎる言葉だ。
原田さんにそう言ってもらえるなんて、すごく嬉しいことだ。
(…………でも)
素直に喜べない。
僕の胸はどきどきしている。
けどこのどきどきは、梨紅さんにも反応してしまったから。
僕は、梨紅さんも好きなんだ。
気がつくと、原田さんの姿は無かった。
次回、パラレルANGEL STAGE-07 瑪瑙の予告状
125さん、GOODJOB!
まさに小悪魔なさっちゃんが素敵です。
さてさて既に三つ又をやっちゃってるのだ、ここに1人加わるくらい平気平気!
76 :
長レス:03/09/10 21:55 ID:KwSz7FCj
ひゃっほう!!
お疲れ様です!!
えっえっ!!もしかして、このタイトルってことは・・・
瑪瑙タンが出てくるんですか!?
ひゃっほう!!
まぁ、なにかといざこざも終わったし、
一介の名無しに戻るかな・・・
125氏続き期待してまぁす!!
125氏お疲れー。
>僕は、梨紅さんも好きなんだ。
「も」っていうのが激しくすばらしいですw
パラレルなんだから梨紗も好きで二人とも・・・でもいいじゃん!
三角関係ネタだってできるし。
続き待つとするか。
78 :
125の人:03/09/12 17:20 ID:RyR0pG+X
夢の中。
「……」
「……」
やることをやるためにここにいるんだけど、そんな気分になれない。
「……」
「……」
二人を好きになってしまった自分に嫌悪感を抱いていた。
「なあ、主」
「ご主人様ぁ」
座り込んでいた僕の頭上で、さっちゃんとレムちゃんが心配気な顔をしていた。
「なに?」
なるべく普通に答えたつもりだったけど、力がこもっていないのが自分でも分かる。
二人が困ったように顔を見合わせてからまた声をかけてきた。
「主が悩むのも、まあ、なんだ」
「分かりますけど、しょうがないのですよ」
「しょうがない、のかな……」
僕は原田さんと梨紅さんの、どちらも好きになってしまうなんて事実を認めたくない。
「そう、しょうがない。あの娘らは双子ではないか」
「そうですよ。だから、どっちも好きになっちゃったのですよ」
「双子、だから……」
そんな安直な理由で二人を好きになるなんて、絶対に間違っている。
頭を振って、それ以上話をする気はないという意思を示すと、二人が小さく息をついた。
79 :
125の人:03/09/12 17:21 ID:RyR0pG+X
しばらくの間、静寂がその場を支配し、さっちゃんが軽い調子で口を開いた。
「さて。悩みは悩み。行為は行為で割り切ってやろうではないか」
「うんうん!それがいいですっ」
「行為は……って、今日もするの!?」
さすがに今日はやる気も何も起きない僕は断固として拒否した。
「何を言うか。主が精を注がなければ我らは餓死するのだぞ」
「そうです、死んじゃいますよ」
「一日くらいしなくても餓死なんてしないよ。それに今日はそんな気分になれるわけないし」
「だからその悩みごと我らにぶつければよかろう」
「そうです、ぶつけるのです」
「ぶつけるとかそんな、……うわ、わあぁっっ」
僕の気持ちなんてお構いなしに二人が抱きついてきた。
じたばたともがいても人外の力――ただの馬鹿力かもしれないが、その力で押し倒された。
「は、放してよっ!」
「ええい、暴れるな。主の一物を噛み切るぞ」
「ひっ……」
さっちゃんの脅し文句に一瞬怯んでしまった。
その間に彼女は僕のふにゃふにゃのペニスを舌で優しく愛撫する。
「さあさあ、こっちの相手をお願いします」
「んんうっ!?」
レムちゃんの腰が顔に座り込んできて隙間なく密着した。
甘酸っぱい刺激臭が鼻腔と口内に拡がる。
完全に股間に覆われていた顔をなんとか呼吸ができるように鼻のところまで引きずり出した。
唇が彼女の陰唇と触れ合う位置にきた。
「あぅんっ。しっかりクンニしてください」
どいてほしいと言うつもりで口を動かすが、それが気持ちよかったのか、さらに股間が吸い付いてきた。
「い、いいのですっ!」
ほんの僅かしか動かしていないのに、レムちゃんはすぐに悦んだ。
「ふふ。元気になってきたではないか」
僕のペニスを見ていたのか、さっちゃんが嬉しそうに言う。
ぎゅっとそれを握られる感覚に思わず身体が仰け反った。
80 :
125の人:03/09/12 17:22 ID:RyR0pG+X
なんだかんだ言って結局は女性の身体に興奮させられてしまい、ひどく惨めな気分になってきた。
ペニスを擦られるたびに声が漏れ、それがさらにレムちゃんに快感を与えていく。
肉棒が硬くなり、快楽を求めるように強く脈打つ。
口の中にはレムちゃんの秘壺から溢れる愛液がとろとろと流れ込んでくる。
早く、もっと強い刺激が欲しいと願う自分がいる。
さっきまでの暗い気分はどこへ行ったのか、すでに性欲しか頭の中にない。
しかしさっちゃんはそんな僕を焦らし、玉を唇で挟んだり舐めたりしかしてこない。
焦らされて溜まる欲求をぶつけるようにレムちゃんの秘唇に強く吸い付いた。
その刺激が激しすぎたようで、彼女が逃げるように腰を浮かせた。
僕はそれを逃がさないように両腕を彼女の腰に回して顔のほうに引き寄せた。
この娘の反応は可愛い。やはり虐めたくなる。
舌をいやらしい割れ目に這わせ、愛液を掬い取るように舐める。
けどそこからは粘液がなくなるどころか次々に溢れ、口の周りをべとべとにしていく。
舌を秘穴に突き入れると、熱い柔肉が舌先に絡みついてきた。
膣口から尿道、そしてその上にあるクリトリスを舌で擦りあげた。
彼女がびくびくと震え上がるのがよくわかる。
硬くなりつつある陰核を形が変わるほど激しく舌で弄り回した。
一際激しく背中を反らし、熱い体液が肉壺から僕の口へと垂れ流されてきた。
レムちゃんの上体が崩れ、お尻を突き出す格好でぺたんと地面に倒れた。
「なんだ、もうイッてしまったのか。情けない」
未だに焦らし続けているさっちゃんが嘆息混じりにそう言った。
「いや、構わないし」
僕のペニスを弄っている彼女の肩を掴んで一気に押し倒した。
「こ、こらっ!いきなり何をするかっっ!」
驚いて喚き散らすさっちゃんを、今度は僕が力で押さえつけた。
「いいんだよ、もう。やらせてよ」
心の中はとても無気力なのに、下半身だけは異様にいきり立っている。
「やら……っ!待て待て、まだ我の準備ができて」
「いいから、さ」
とにかく今は行為に没頭したかった。
煩わしいことを考えるのは、また後にしよう……。
81 :
125の人:03/09/12 17:23 ID:RyR0pG+X
目を覚ましていつものように処理と着替えを済ませてキッチンへ下りた。
夢の最後、さっちゃんとレムちゃんがぐったりとして、それでも僕は二人を攻め続けていた。
(なにやってんだろ、僕……)
あれじゃあ本当に二人に対して僕の悩みごと性欲をぶつけたみたいだ。
最低なことをした気がして、暗い気持ちのまま食卓についた。
「おはよう大ちゃん」
「よお」
母さんと父さんに返事をして目の前に置かれた食パンを齧った。
しばらくすると、いつものように母さんが今日の仕事の話をしてきたけど、半分以上聞いていなかった。
「――わかったよ。それじゃ行ってきます」
食事を終えた僕が席を立ち、鞄を手にした時、
「大助」
リビングでソファに腰掛けてテレビを見ていたじいちゃんが声をかけた。
「すまんのう」
「え?」
何故じいちゃんが謝罪の言葉を口にしたのか、その時の僕には分からなかった。
82 :
125の人:03/09/12 17:25 ID:e4RWmyge
U-Bの教室に入るとすぐに関本が話しかけてきた。
「よー」
「ん、おはよう」
「ちょい、こっち来い」
呼ばれるまま関本の傍へ歩み寄るとがしっと首に腕を回され、
「あれ見ろあれ!!」
「あれ?」
「冴原だよ!!」
指で指し示されたほうを見ると、冴原が席に座って頬杖をついて窓の外を眺めていた。
「……何やってんの」
「知らねーよ。ずーっとああなんだよ」
「……」
ずっと窓の外を見ていたかと思うと、その視線を落として深い溜め息をついた。
「き、奇行だ……ッ」
「怖い、怖いんだよあいつが!!」
関本と抱き合って教室の隅で震えていた時に不意に気付いた。
「そういえば日渡君は?」
「ん、ああ。まだ見てねー。欠席じゃねーの?」
(欠席、か)
頭をかすめたのは昨日欠席した梨紅さんのことだった。
それに連鎖するように原田さんの顔も頭に浮かんでくる。
(今日は、二人ともきてるのかな)
二人のことを思うだけで胸が焼けるようになり、刺されるように痛む。
「昨日ちょっとやりすぎちまったかもな」
関本が言ったことに笑い、なんとか気持ちをごまかした。
83 :
125の人:03/09/12 17:25 ID:e4RWmyge
その日、僕は不自然なほど原田さんと梨紅さんから距離を置いていた。
極力二人のほうを見ないように、思い浮かべないように一日を過ごした。
放課後も原田さんに捕まらないように早々に教室を飛び出した。
「だ、大助ぇぇぇっっっ!!」
とても苦しげな声で名前を呼ばれ、はっと振り返った。
そこには、まるで蛸のような冴原に絡みつかれた関本が息を荒らげて立っていた。
「な、なんだよそれ!」
一種異様な光景に僕も声を荒らげた。
「俺の、俺の一生の頼みだっ。助けてくれっっ!」
「――で、助ける方法っていうのが」
「ああ。ここに来ることだ」
冴原に絡みつかれたままの関本が言ったこことは、今僕らの目の前にある邸宅のことだ。
「なんで、日渡くん家なのさ」
ここに住んでいるのは、クラスメイトの日渡くんだ。
「さーな。冴原がどうしてもここじゃないとダメだっつってな」
関本が日渡くんの家のチャイムを鳴らした。
軽い呼び出し音が響き、すぐに玄関扉が開かれた。
「はい……」
顔色が悪い日渡くんがぬっと顔を出した。
「こんにちは」
「よっ」
「元気かー?」
思い思いに声をかける僕らを、彼は家の中に招き入れてくれた。
84 :
125の人:03/09/12 17:26 ID:e4RWmyge
「そういえばさ」
「なんだ?」
日渡くんの部屋にお邪魔してから彼に訊いた。
「両親とか家族はいないの?」
彼の家に上がってから、家族の姿は見ていない。それどころか他に人がいる気配もない。
「家族は両親だけだ」
「父さんと母さんはどこに?」
「外国だ。二人とも奔放とした性格でね、家に帰ることは稀だ」
そう聞いて、僕は父さんのことを思い浮かべ、似ているところがあるなと思った。
「病院には行かないの?」
「もう行った。どうも当たり所が悪かったようだ」
ぽんぽんと自分の頭を叩いてみせる。一歩間違えば洒落にならないところだ。
「関本も反省してるしさ、怒らないでやってよ」
「丹羽がそう言うならそうする。ふふふ」
「は、ははは……」
最後の笑みが余計だ。
「おーい。メシできたったよ」
関本の声が僕と日渡くんに聞こえた。
冴原がキッチンを借りて料理を作っていたが、終ったみたいだ。
ラーメンを持った冴原と関本が部屋に入ってきた。
85 :
125の人:03/09/12 17:27 ID:e4RWmyge
「というわけで、だ」
ラーメンを食い終わって箸を置くと、冴原が僕ら三人の前で口を開いた。
「今度はオレ様の相談を聞け!!」
頬を赤く染めてそう言う冴原は、言っちゃ悪いけどちょっときしょい。
「そういやさ、なんで日渡を頼ってきたんだ」
関本が口にした疑問を僕は初めて気になった。
「俺を頼ってるのか?」
冴原が頷く。
「お前の力が必要なんだ」
「そうか。俺が出来ることなら力になろう」
「すまねえ、日渡っっ!!」
がしっと二人が手と手を取り合った。熱い友情の灯火が見えた気がした。
「んでだ。これを見ろ!!」
冴原が懐から取り出した写真を僕らの前に突き出した。
「女の子の写真……?」
写っていたのは、髪の長い、なかなか可愛い女の子、歳は僕らとそう違わないようだ。
「昨日ダークから予告状が着ただろ?」
冴原の口から、その女の子のことが語られた。
86 :
125の人:03/09/12 17:28 ID:e4RWmyge
(原作どおりなので略)
「だから日渡!!」
冴原が日渡くんに向き直り、頭を下げた。
「この女の子がどこの誰か、お前の力で調べてくれっっ!!」
一息置いて、日渡くんがノートパソコンを引っ張り出した。
「力が必要って、それのことか?」
「おお。こいつならこの街のいろんなことを調べてくれるからな」
「いろんなことを……」
それは便利だなと僕らで話していると、日渡くんが結果を伝えてきた。
「この街の住人じゃあないようだな」
「マジかよ……」
冴原ががっくりとうな垂れた。
「それに妙なこともある」
「なんだ」
「冴原がラガリス美術館に行ったという時刻の、そのすべての監視カメラの映像を盗み見たんだが」
ふっとそこで息をつき、パソコンの画面から顔を上げた。
「そんな女の子はどこにも映っていないんだ」
日渡くん以外の三人が、その言葉に息を呑んだ。
女の子がいない。その不可思議な現象の前に、僕らは何も言えなかった。
87 :
125の人:03/09/12 17:29 ID:e4RWmyge
夜。八時二十分過ぎ。
「それが事実なら、なんとも奇妙な話だな」
「うん……」
「今日盗む予定の美術品に、そんな力があるのでしょうか?」
「分かんない。母さんからも聞いてないし」
「考えるだけ損だな。行けば分かる」
「そうだね、それが一番だね」
足元で転がっている警官隊の間を縫って、僕は今日のターゲットが寄贈されているところへ急いだ。
黒髪の青年姿。背中には翼。右手には紅く光りを放つ剣。左腕には蒼く周囲を染める盾。
二人を連れて盗みを働くのは今日が初めてだけど、驚くほど順調に進んできた。
「ご主人様、今夜もちゃんといたしてくれるのですか?」
「いたすって、そんな……」
「拒否は認めんぞ。昨日はさんざん可愛がってくれたしな」
「あ、あれは、その……」
『今日は二人で可愛がって』「やるぞ」「あげるのですっ」
「……死なない程度に」
『とことんっ!』
二人揃って辱められたのが堪えたのか、今日はいやに気合が入っている。
(もてば、いいけどね)
今日のところは腹をくくった。
88 :
125の人:03/09/12 17:30 ID:e4RWmyge
「ん?」
「あわわっ!?」
「あれは……」
僕らは、目の前のあらぬ光景に声をあげた。
今日のターゲットの展示台の上に、少女が腰掛けている。
金色のロングのポニーテールとおとなしい感じのドレスが、風もないのになびいている。
女の子が僕のほうを向き、そこではっきりと確信した。
「あの子だ、冴原が見たのは」
「ほお」
「かわいこちゃんですねぇ」
僕は美術品の方に、彼女の方に足を進めた。
「……これを、盗りに来たの?」
「うん」
彼女の表情が悲しげに翳る。
「だったらお願い!もう一日待って!そうしたら、渡すから」
目に涙を浮かべながら僕に懇願してくる。
「……ダメ?」
そう言われて盗れるほど、僕は非情になれなかった。
89 :
125の人:03/09/12 17:30 ID:e4RWmyge
「主は可愛い、可愛すぎるぞ」
さっちゃんが今日のことをけらけらと嬉しそうに話してくる。
「う、うるさいっ!!」
「お願いですぅ。もう一日待ってくださいぃ……ダ・メ?」
「ふふ、君みたいな美人のお願いは聞くぞ?」
「そそ、そこまで言ってないだろ!!」
「同じようなものであろう」
「そうなのです、同じなのです」
家に帰り着いてからずっと二人にからかわれていた。
美術品を取ってこなかったことで母さんに怒られると思っていたけど、
じいちゃんが母さんをなだめてくれたおかげで事なきを得た。
「二人ともうるさい!まったくもお」
「ふ、それだけ元気があれば、昨日よりマシだな」
「うんうん、昨日はひどすぎでした」
「ぐっ……。もういいよ、勝手にして」
夜のことを楽しみにしている二人は放っておいて、ベットで仰向けになってあの子のことを考えた。
「……どうやってあそこまで入り込んだのかな?」
「気になるか、あの娘のことが」
「そりゃあね」
「そうですか……」
それっきり二人は黙り込んでしまった。僕もそれ以上口を開こうとしない。
(そうだ、冴原……教えてあげなきゃ……)
90 :
125の人:03/09/12 17:32 ID:e4RWmyge
一旦休止です。
姉妹出せーヽ(`Д´)ノ
瑪瑙キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
いったん休止ってのは、
もしかしてApartはまだ続くって事ですかね?
125乙ですぅ〜
んでは、続きがんばってください。
キタ―――(・∀・)―――イ!!
なんか、誰も来てないので、保守〜
125氏がんばってね!!
97 :
名無しさん@ピンキー :03/09/17 20:35 ID:Xt6JA8+G
だれもこない・・・
このスレは前から
125氏SS落とす→うわぁぁい→閑散→125氏・・・
だからしょーがないw
他の職人さんでも来ればねぇ。
あぼーん
100ゲットーヽ(`Д´)ノパンパカパーン
>>98 一応ネタはあるのだがレヴォかコミケ(受かったら)で
出そうかと思っているから出せそうに無い。
保守、ほしゅーーーーーー!!!
105 :
125:03/09/21 16:12 ID:UZ0KzCgU
「で、冴原とかいう小僧に昨日のことを教えるのか」
「そのつもりだよ」
学校へ行く準備をしている間、さっちゃんと昨日のことを少し話していた。
「いいのか。話せばいろいろと根掘り葉掘り訊かれるのではないか」
「その辺は……騙し騙しいくよ」
「今の間は何も考えてなかったとみていいですね」
「だな」
「……」
二対一。口で勝てるわけはなく、僕は言われ放題だ。
救いといえば、学校に連れていかないでよくなったことだ。
(でもそれだけで大分マシだけどね)
学校に着いて冴原の姿を探したけど、その日、冴原は学校を休んでいた。
昨日見たあの子のことを教えられなかったことを気に掛けたまま、約束の時間になった。
106 :
125:03/09/21 16:12 ID:UZ0KzCgU
昨日と同じ時間、同じ場所に向かった。もちろん姿は青年のものだ。
「結局冴原には何も言えないまま、か……」
「仕方あるまい。間が悪かったと思うしかなかろう」
「ですねぇ。今回ばっかりは、どうにもならないですよ」
「……」
釈然としない面持ちのまま、僕は今回のターゲットであったエゲートリングスが展示されているホールへと、
「待ちやがれっっ!」
やってきた時、その場に反響する大声とともに、展示台の影から一つの影が飛び出した。
「てめえには渡さねーぜ!!」
「――さッ!?」
冴原だった。
安全用ヘルメットと金属バットという装備で僕とエゲートリングス、あの子の間を遮るように立ちはだかった。冴原がこの場にいることに軽い混乱を起こした僕に向かって冴原がバットを振り回して突っ込んできた。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「問答無用ォォォ!!」
制止しようとする声に耳を貸すことなく、冴原にバットで殴りかかられた。後ろに跳んで間合いを取り直すが、さらにしつこく追ってくる。
(しつこいな)
(しつこいですねぇ)
(他人事みたいに言うなぁ!!)
脳内で二人に突っ込みつつ大きく跳びあがり、無防備な彼女の背後に降り立った。
「あ……」
「ごめんね」
小さく驚きの声を上げた彼女の首からエゲートリングスをそっと外し、外しかけたところで、
「借りるよ」
『え?』
間抜けな声を出したのは僕と彼女。見ると、冴原が強引にエゲートリングスを引き千切って逃亡していくところだった。
「絶対、盗られねーからよ!!」
「くっ……」
ホールから伸びる通路に姿を消す冴原の後ろを急いで追いかけた――。
107 :
125:03/09/21 16:13 ID:UZ0KzCgU
「倉科瑪瑙?」
その名前を聞いたのは、これから昨日の美術館に行こうとしていた時だった。
「それが、あの女の子の名前なの」
「うむ」
じいちゃんがようやく今回の仕事の、秘密にしていた部分を僕に話してくれた。
エゲートリングスはじいちゃんがあの子にプレゼントした物だということ。
今回の予告状を出したのが偶然美術館でエゲートリングスを見つけたじいちゃんだったこと。
あの女の子がエゲートリングスという美術品に囚われていること。
そして、その子、倉科瑪瑙さんをその呪縛から解放してもらいたいということを。
僕は思ったことを素直に口にした。
「……じいちゃん、その子のこと」
「それ以上言うでない。恥ずかしいではないか」
じいちゃんが僕の言葉を遮って可愛らしく照れる姿を見て、少し吐き気を催してみたりした。
108 :
125:03/09/21 16:15 ID:UZ0KzCgU
「――解けた?」
階段を駆け上がりながら、僕はさっちゃんとレムちゃんに向けて訊いた。
「まだだ」
「身体から離れたくらいでは解けないようですね」
「やはり破壊するしかないと思うぞ」
「分かった」
冴原が逃げた方に向けて走った。行き着いた先は美術館の外壁から突き出した急な屋根
であり、その上を冴原が綱渡りでもするように不安定に進んでいた。
「冴原っ!」
呼びかけると、まるで敵でも見るようにきつく睨みつけてきた。
「しつけーな!渡さねえって……!!」
僕に気を取られたせいで足元の注意を怠った冴原が足を踏み外した。
「ウィズ!!」
言葉に反応したウィズが僕の懐から高速で飛び出し冴原へ向かった。
「おわあぁぁぁぁぁっっっ!!!」
重力に従い落下していく冴原の身体が、地面に到達する前に運良く木の枝に引っかかった。
衝突の勢いで木の枝は折れたけど、それがクッションとなって落下の速度が遅くなった。す
かさずウィズが冴原の下へ潜り込んでその身体を受け止め、木の下の茂みの中へと姿
を消した。
「危機一髪といったところか」
「危なかったですねぇ」
「心臓に悪いよ……」
109 :
125:03/09/21 16:16 ID:CDHk0D3L
倉科瑪瑙はエゲートリングスを持って逃げていった少年を追いかけて外に出ていた。
彼女の耳に少年の絶叫と木の枝が爆ぜるような音が聞こえた。急いでそちらに駆け寄ると、
茂みの一部が奇妙に荒れていた。
「死守」
茂みの中から人の拳が突き出し、それから人影が現れた。
それはエゲートリングスを守ってくれた少年の、擦り傷だらけの姿だった。
「……したんだけど、さ。」
少年が突き出した拳を広げると、
「悪い……壊れちまった」
そこには片翼を欠いた鳥のような形をしたエゲートリングスが乗っていた。
「ごめん……」
偉そうに守るといい、その結果それを壊してしまった自分の不甲斐なさのせいで、
その声にはまったく覇気がなかった。瑪瑙はそんな彼の手を優しく握り、そっと囁いた。
「……ありがとう」
それだけで消沈していた少年の心は驚くほど軽くなり、張りっ放しだった気が抜けると同時に気を失った。
「……」
自分のために一生懸命、我が身を省みず頑張ってくれた少年を見て、彼女は生前、小さ
な恋心を抱いた落ち着いた少年の姿と重ね合わせた。
君のために……盗ってきたんだ
生きていれば直接彼から渡されるはずだったそれを握り締め、瑪瑙は切なさで胸が強く押し上げられ、
身を屈めて小さな嗚咽を漏らした。
「もう一度……彼に……」
「これ、壊れてるけど……」
彼に会うことなくすべての終わりを覚悟しかけた彼女の頭上から穏やかな、力強い声が降ってきた。
「これは君が持ってる方がいいと思う……!」
声の主がしゃがみ込み、彼の手が欠けたエゲートリングスを握る瑪瑙の手を優しく包み込んだ。瑪瑙が彼の顔を見、
その瞬間、四十年以上前、死の影が近づいている自分と時間を共有した少年との日々が鮮烈に甦った。
今、手を握っている少年は、彼女が永い間待ち望んでいた少年だった。
110 :
125:03/09/21 16:17 ID:CDHk0D3L
最後に巡り会えた事に、少女の募った思いは堰を切って溢れ出した。抑えられない恋心
は目の前の少年が彼女の思い人とは別人だと認識できなかった。大助の首に腕を回し、
彼が疑問に思うより早く唇を重ね合わせた。
「ッ……!」
「ノワッ!」
「ハワワァ!」
瑪瑙のいきなりの行動に三者三様の反応を示した。大助は瑪瑙の肩を掴んでばっと引き
剥がした。
「ちょ、あ、の……」
どうしてこんなことをされたのか訊ねようとするが巧く舌が回らず、しどろもどろして
しまう。身体を離された瑪瑙の表情が傷付いたように曇った。
「私のこと、嫌いですか……?」
涙で潤んだ眼で哀願するように言われ、大助は言葉につまった。
「きら、嫌いとかじゃなくて……、なんでこんなことを……」
「そんなの決まってるじゃないですか」
瑪瑙が顔を朱に染めて大助に詰め寄った。
(やられるな)
(やられますねぇ)
「や、やられるって……」
相変わらず他人事のように言う二人に対して大助は怒鳴りつけたい気分になった。しか
しその間も瑪瑙はずいずい詰め寄ってくる。
「消えてしまう前に、私に最後の思い出ください……」
そう言って再び唇を求めてきた。大助はまた拒もうとしたが、直前に彼女が言った台詞
が頭に残っていた。
111 :
125:03/09/21 16:18 ID:CDHk0D3L
(最後の、思い出……)
エゲートリングスが壊れた今、瑪瑙がこの世界に姿を留めておける時間はあまりない。
言葉どおり、彼女にとってはこれが最後になるのだ。
しっとりと潤った瑪瑙の唇を優しく受け容れた。
(やる気だな)
(やる気ですねぇ)
(まあこれで娘も解放されるだろう)
(やっちゃってくださぁい)
いい加減二人の冷やかしに対して拗ねるように怒りが湧いてきた大助は、紅円の剣と蒼
月の盾をまとめて脇に放り投げた。
(あ、こらーー)
(ひどいですぅーー)
後で二人に小言を言われることを覚悟しながら、瑪瑙の唇を味わうように吸った。
「はッ、んむぅ、くん……」
入念なキスで緩んだ瑪瑙の唇を割って入り、舌を腔内に滑り込ませる。進入した異物に
対し、瑪瑙も積極的に舌を絡ませる。呼吸をするたびに鼻から漏れる息が二人の頬をく
すぐる。舌が痺れるほど激しく絡み合わせる。大助の舌が瑪瑙のそれだけでなく、歯茎
や口蓋を優しく撫でる。
空いている両手で瑪瑙の緩やかに膨らんだ胸にそっと触れる。
「ン……ッ」
瑪瑙の身体がぴくっと震え身体が仰け反り、互いの唇が僅かに離れた。すかさず唇を貪
りにいく。胸を触られ興奮したために呼吸が荒くなっている。甘い吐息が伝える振動が、
唇を通してはっきり分かる。
112 :
125:03/09/21 16:19 ID:CDHk0D3L
「服、脱いでくれる?」
どうやって脱がせていいか分からない構造の服だったので大助が服を脱ぐように促がす
とすっと腰を上げて服を脱ぎだした。目の前で行われる瑪瑙のストリップに興奮し、思
わず大助は喉を鳴らした。透き通るように白い肌に彼の眼は釘付けになった。
服を脱ぎ終え、ブラジャーとショーツだけの姿になった瑪瑙が大助の腰の上に座り込ん
だ。
目の前に迫る双房をブラジャーの上からそっと撫でる。ブラジャー越しでもはっきりと
分かる形のよさ。同じ程の胸のサイズの梨紅と比べて幾分柔らかい。揉む指を押し返す
ような弾力性はないが吸い込まれるほどに食い込む。
彼女の胸を直接嬲るべく、ブラジャーのホックを外して蒼白に近いと言ってもいいほど
の肌色の乳にしゃぶりついた。
「あぁ……」
乳房の先端を口に含み、瑪瑙の敏感な部分を舌で押すように愛撫する。ぞくぞくと快感
が身体を巡り、雷撃に打たれたように震える。
大助が彼女のショーツへ指を伸ばし、恥丘の茂みがある部分を調べる。薄っすらとした
恥毛のしょりっとする感触が指を通して分かった。さらに下へ指を這わせると、生暖か
く湿り気を帯びた濃厚な空気が漂っていた。ショーツの脇から指を滑り込ませ、直接彼
女自身に触れた。
「んぅ…」
快楽に漏れる声を聞き、大助はたまらない悦びを感じた。指に粘りつく体液を舌で舐め
ると、酸味を含んだ刺激臭が鼻を突き抜けた。
113 :
125:03/09/21 16:19 ID:CDHk0D3L
大助が張りつめたテントの中から屹立するものを取り出し、腰に跨る彼女の陰部に亀頭
を擦りつけた。充血した大陰唇が吸い付くように亀頭に絡み付いてくる。瑪瑙の腰に腕
を回し、奥まで一思いに貫いた。
「んぐッ!」
反射的に股を閉じて大助の挿入を拒もうとするが、その時にはすでに全体の半分以上が
瑪瑙の中に挿されており、ペニスを強く締めつける結果となった。
「はぁぁ……ッ」
それほど発育していない少女の締めつけが熱い。媚薬の中に突っ込んだような錯覚に陥
りながら、大助は奥までペニスをねじ込むと、瑪瑙がかすれ声で喘いだ。処女の障壁を
感じたようだったが、気にせず腰を打ちつけ出した。
「ん、ん、ん、ん……ッ」
腰の動きにあわせて瑪瑙の断続的な息が響き渡る。中ほどからの締まりはそれほどでも
ないが入り口付近の締まり具合はかなりきつい。搾りつくされるような感覚に襲われな
がらも、何とか射精を堪え瑪瑙を攻め続けた。背中を曲げたかと思うと、大助にしがみ
つき、小刻みに身体を痙攣させた。大助が塞いでいる穴からマグマがどろどろと流れ出
し、肉茎を伝い内腿までべっとりと濡らした。
「イッたの?」
耳元で囁くと、脱力感に見舞われる身体を大助に預け、恥ずかしげに頷いた。
大助の背にぞわっと寒気が走った。それは恐怖から来るものではなく、もっと彼女と愉
しみたいという、果てることのない欲望からくる興奮のためだった。そんな自分に酔い
しれ始めた。
「はぅッ!?」
挿入したまま瑪瑙を押し倒し、正上位に移行する。両足を肩に乗せ、激しく彼女を串刺
しにした。
一際甲高い声を上げる瑪瑙の身体はピンク色に染まり、ただただ与えられる快楽に身を
委ねていた。
114 :
125:03/09/21 16:20 ID:CDHk0D3L
眼を覚ました時、瑪瑙さんの姿はなかった。
「起きたか」
転がったまま顔を横に向けると、剣と盾も同じように地面に転がっていた。
「瑪瑙さんは?」
体力を消耗して重くなっている上体を起こしながら二人に訊いた。
「主が眠りこけている間に逝った」
「三十分くらい前でした」
「……そっか」
「なんだ。浮かぬ顔をしてるぞ」
「何か気にしてることでもありますか?」
今度は二人に訊かれたけど答えなかった。
(僕は……)
本当にあれでよかったのか疑問に思っていた。彼女が勘違いしていたとはいえ、僕は身
体を重ねてしまった。そのことが胸をきつく締めつけている。
「あー、そういえば」
僕の気持ちが沈んでいるところにレムちゃんの軽い声が聞こえてきた。
「瑪瑙さん、ご主人様にありがとうって言ってましたよ」
「瑪瑙さんが……」
お礼を言われるようなことをしたとは思ってない。けど、その一言だけで胸につっかえ
ていたものがすっと引いた。彼女が笑顔でそう言う姿を思い浮かべ、胸の奥がほんの少
しだけ暖かくなった。
「何を思っておるかしらんが、早く帰るぞ」
「そうですねぇ。あまりここにいるとあの少年が眼を覚ましますよ」
「……あ、冴原は」
その言葉で思い出した僕は茂みの上に落下した冴原の傍へ駆け寄った。まだ気を失って
るけど、酷い怪我はしていない。ほっと胸を撫で下ろした。
「ウィズ」
冴原の下からウィズがずるずると姿を現した。しんどそうにしていたけど僕を見るとキ
ュッと鳴いて前足を振った。
「帰ろう」
そう言うとウィズが黒翼へ姿を変え、僕の背中へ装着された。
115 :
125:03/09/21 16:23 ID:CDHk0D3L
黒翼を羽ばたかせて対空へ飛翔した。自宅へ向かい風を切っている間、ずっと冴原とじ
いちゃんのことを考えていた。
二人とも、瑪瑙さんのことを思っていたに違いない。そんな二人を差し置いて僕がして
しまったことは本当に許してもらえないことだと思う。でも、それ以上に二人が真剣に
彼女のことを好きだったということが羨ましかった。今の僕には、自分の気持ちさえは
っきりしない状況だから。
「……僕は、どうなんだろう……」
さっちゃんにもレムちゃんにも聞こえない小さな声を口の中で発した。
原田さんと梨紅さん。二人の間で想いが揺らめいている僕は、どうすればいいんだろう。
答えを見つけることはできるんだろうか――。
次回、パラレルANGEL STAGE-08 バービキュー・パニーック
神がキター!
ではじっくり読ませて貰いますね。
117 :
名無しさん@ピンキー:03/09/21 20:03 ID:6EEdsD//
125氏最高だー!
あぼーん
125氏きてたーーーー!!!
瑪瑙編お疲れ様っす。
バービキューにワラタ。
125氏乙でつ〜
そこから、そのように持っていくとは・・・
いやはや脱帽脱帽・・・
バービキューですかww
だいじょうびですか?ww
ではでは、次回もきた〜いしてますぞ
iiii━━━━━━(。A。)━━━━━━タキ
125さん、結婚してくれ!!
122 :
125:03/09/21 23:42 ID:CDHk0D3L
うーん・・・最終的に梨紅と梨紗のどちらと付き合わせるか、まったく予想できませぬ・・・。
両方キボンヌ。
それと125氏はこのスレでも125をがんばって取るようにw
125 :
125:03/09/22 06:53 ID:+ZkQUKzL
ゴァアアア フォン
三ニ 三三 - ― ニ´_ゝ`) それじゃあ高速で通りますよ・・・
ニ-三 ニ-三 ニ- ―ニ -ニ三三
三三 三ニ三 ― ニ-三三
- ―ニ―三三
おめw
さすがww
125ゲトおめw
はぁい♪
廃れてますよ〜〜
やっぱココの住人は薄情すぎる・・・
いや、まぁ重くしてもアレだけどさ・・・
ほかに職人さんはいないのかなぁ・・・
ちゅーわけで、定期保守
廃れてるなぁ・・・
じゃあとりあえず
>>55で言ってた奴投下してみるか・・・?
漏れは職人でもなんでもないド素人だから
はっきり言って全く期待できないが(´・ω・`)
131 :
名無しさん@ピンキー:03/09/25 15:59 ID:OCH4/AJu
保守
132 :
弧慮:03/09/25 17:29 ID:WxaBtejn
素人ですけど投稿していいですか?
133 :
125:03/09/25 17:41 ID:YCExMRZ+
134 :
弧慮:03/09/25 17:54 ID:WxaBtejn
大助「梨紅さんに言われて体育館裏に来たけど…何の用かな?」
ダーク「さーな!しらねーよ!」
大助「ダークに聞いてないよ!!」
ダーク「へっ!ひねくれてるな大助!」
大助「そうじゃないよ・・・」
ダークと大助の会話は周りから見ると明らかに変だ
そんなことはお構いなしに大助とダークは喋っている
135 :
弧慮:03/09/25 21:56 ID:cI6rVsjw
こんなんですけどいいですか?
136 :
名無しさん@ピンキー:03/09/25 22:19 ID:Qe/JbAMp
いいですよ〜
んでは弧慮氏のが終わった後に
四sh(ry 行って見ますか
いろいろ期待!!
なんか、急に活発に・・・・てアレ?
今日初の書き込みって・・・・
もうちょっとさ、アニメ最終回だったし、ゲームも出たんだし・・・
や、もちろんそれで容量食ったら元も子もない気がするけど・・・
まぁ、格方々キタ―――(・∀・)―――イ!!してます
っていうか梨紗(アニメ)逞しすぎ、原作とのギャップが
おっw来たww
原作はぁぁ〜〜〜・・・まぁ、しょうがないよw違うのはねw
ほら、題名にテレビアニメーションシリーズとか書いてあるしネw
141 :
125:03/09/26 22:00 ID:h0KU4h7a
FINALSTAGEはラスト萌えたから・・・
恥らいキス(・∀・)イイ!!
142 :
弧慮:03/09/26 22:09 ID:SUMqlGnf
梨紅「ごめん!丹羽君!部活で遅れて!」
丹羽「ううん自分も今来たとこ」
ダーク「けっ!30分も前に来てたのに何が今来たとこだよ」
丹羽「ダーク!静かに!」
丹羽「で、大事な話って何?」
梨紅がまわりを見渡したあと真顔で
梨紅「丹羽君って・・もしかしてダー・・・」
冴原「よー!大助&原田姉!何してるんだこんなところで?もしかして・・・・
SEXか?いや〜若・・」
ドゴッ!
冴原の顔面に梨紅のパンチが飛んだ
梨紅「邪魔しないでよね冴原!」
しかし冴原は気絶していて聞いていない!
キーンコーンカーンコーン
梨紅「あっ!もう下校の時間だ」
丹羽「そうだね・・大事な話は?」
梨紅「ごめん!今日坪内さん居なくて私が料理作んなきゃいけないから
明日でいい?」
丹羽「いいよ(笑)」
二人が帰った後冴原は夜中の12時まで居たらしい
エロなくてすいません
ここからじょじょにエロだしていくので
あぼーん
144 :
125:03/09/27 08:52 ID:3tVP8+pO
>弧慮さん
期待しとります。がんがってください。
あと、広告がついてしまうのでsageでいきませんか?
145 :
125:03/09/27 08:53 ID:3tVP8+pO
夢の中で弄ばれることにも大分慣れてきた。息を荒げる僕の眼下にはさっちゃんとレム
ちゃんが重なり合うかたちで力なく、汗を肌に滲ませて崩れている。
今までの永い性活のおかげか、先日の瑪瑙さんとの交わりのおかげか、とうとう一度も
暴発することなく二人を絶頂へ導くことができた。
でも僕自身もかなり無理をした。未だ精を吐き出していないペニスがそのはけ口を求め
るようにびくびくと律動する。
さっきまで結合していたせいで二人の秘裂は真っ赤に染まり、その奥でだらしなく開く
口が行為の興奮を思い返させた。行き場のない欲望はそこに向けられた。レムちゃんの脚
を掴んで股を大きく開かせた。
「はわぁッ!な、なんですかぁッッ」
驚いて僕に目をやる彼女に、
「入れるよ」
それだけ告げて幼い肉道へ自分のペニスを突き入れると、レムちゃんが苦痛とも快楽とも
つかない声を漏らした。
ぱっくりと弛緩していた穴とは思えないほど僕の陰茎にがちがちと噛みついてくる。け
ど一度イッたおかげで多量の愛液で潤っていたので、レムちゃんの内壁をずりずりと擦り
あげることができ、スムーズな動きで攻めた。
最奥を突き上げるたびに呻きに似た声が耳に届いてくる。苦痛か快楽が判別できなかっ
た声が、はっきりと艶を含んだ声に変わっている。
146 :
125:03/09/27 08:54 ID:3tVP8+pO
いつもの感じ――背筋がぞくぞくと泡立ってくる。さらに快感を貪りたい僕は、大きく
開いたレムちゃんの脚を抱え込んだ。
「はんんッ!」
ペニスにかかる摩擦がさらに強くなる。雁首にびりびりと痺れるものが伝わり、ごしご
しと肉壁を削るほどの勢いで腰を動かし続けた。
快感が駆け上がり頭へ到達すると同時、それに入れ替わるように頭から下半身に血液が
集中し、自分の欲望の塊をレムちゃんの中へ注ぎ込んだ。
性交後に訪れる倦怠感と、満足感からくる余韻に身を浸し、繋がったままペニスが萎え
きるのを待った。レムちゃんの胎内で萎縮していくと、栓が緩んだために結合部の隙間か
ら僕の精液と幾らかのレムちゃんの愛汁が混ざり合った体液がとろりと流れ出した。
「あふぅ……はうぅん……」
悦に入るさっちゃんの顔で、また僕の背中にぞくっとするものが走った。
「く……ッ」
ゆっくりと引き抜く時にレムちゃんと擦れ合い、思わず呻いた。完全に栓を失った秘穴
からはどんどんと体汁が逆流し、肛門までを穢した。
レムちゃんの上に倒れ込むように身体を重ねた。薄い唇を求めて口を塞ぎ、犬がミルク
を舐めるように舌を絡ませ合った。
五感が薄らいでいくのが分かる。砂糖が水に溶けるように、僕の意識は徐々に霧散して
いった。
147 :
125:03/09/27 08:55 ID:2zltlsJC
しぱしぱする目を擦りながら事後処理を済ませた。一回しか出していないおかげで量は
今までよりかなり少ない。
(これも成長の証かな)
などと思い学校へ行く準備を始めようとし、伸ばしかけた手を止めた。
今日は七月十八日水曜日。本日から夏休みだったんだ。今日一日何をするか、手を引い
て腕組みをして考えた。このところ少し忙しかったから自分の時間があまりなかった。
やりたいことを考え、そして決めた。
組んでいた手を再び動かし、服を着替えてキッチンへ向かった。
148 :
125:03/09/27 08:57 ID:2zltlsJC
「……あうー」
ごろん。
「んー……」
ごろん。
「うー……っきゃ!?」
どすん。派手な音を立ててベットから落下した。
「いったー……」
床にぶつけた鼻をさすりながら原田梨紗は目を覚ました。まだしっかり開かない眼を擦
りながら階下へ降りた。
「おはようございます」
使用人の坪内が大仰な仕草で梨紗にお辞儀をする。
「うん、おはよーおはよー」
手をひらひらさせ、まったく気の入ってない挨拶を返してテーブルへついた。坪内はま
だ寝ているのではないかと思えるほどだらしない顔をしている梨紗の前に朝食を運んだ。
サンドイッチ、スクランブルエッグ、コーンスープと洋の雰囲気たっぷりの朝食を目を
閉じたまま器用に口にする。
「坪内さん、梨紅はー?」
もしゃもしゃと咀嚼しながら訊ねた。
「梨紅様は部活へ行かれました」
「今何時?」
「八時半でございます」
「……あの子も頑張るなー」
などと感心しつつ、今日一日何をするか、回らない頭で考え始めた。
149 :
125:03/09/27 08:58 ID:2zltlsJC
「行ってきまーす」
玄関先で家の中に向かって声を出した。
今日はスケッチブックと鉛筆、消しゴムなど、必要な画材を入れたバッグを肩にかけて
絵を描きに行くことに決めた。
「行ってらっしゃい。今日は六時までに帰ってきてね」
母さんが送り出す。夏休みに入ったばかりなのに、いきなり仕事を入れられた。母さん
が言うには、七月いっぱいでできるだけ多く仕事をして、八月になれば普通の夏休みに入
っていいわよ、ということだ。
(普通の夏休み、か)
その日が早く来ることを願いつつ、僕はある場所へと走った。
家から通りへ続く道を抜け、さらにそこを進み、一つ小高くなっているところにある噴
水広場に着いた。
「よし」
噴水の縁に腰を下ろし、バックの中からスケッチブックと白い塊と鉛筆を取り出し、そ
こから見える風車のある岬と広大な海の景色を――
「ウィズっっ!?」
――描こうとした時、さりげなく流してしまいそうだった事実に気がついた。バッグか
ら取り出した物の中に、一つだけ予定にない物があったからだ。
「キュッ」
無邪気な声をあげているのは入れた覚えのないウィズだった。
「勝手について来ちゃったのか」
「キュゥッ」
「まったく、しょうがないなぁ」
遠くに行っちゃダメだよと付け加えておいた。分かったのかどうか、相変わらず嬉しそ
うに笑っている。
溜め息を一つ吐き、スケッチを始めた。
150 :
125:03/09/27 08:58 ID:2zltlsJC
無限に広がる水平線。岬に屹立する四基の風車。眼下に僅かに見える街並み。
空彼方で鳴くカモメ。打ち寄せる漣が立てる音。街が奏でる人々の生きる証。
鼻腔をくすぐる磯の香り。肌を撫でる海の息吹。
感じることができるすべてのものをスケッチブックに描き表そうと試みる。目で見える
ものだけじゃなく、今この場で感じているものを。
どのくらい没頭していただろうか。白紙だったスケッチブックには一面を覆い尽くすほ
ど描き込まれた風景画が描かれている。
「ふぅ」
息をすることも忘れていたかと思うくらい空気を求めて深呼吸した。張りつめた感覚が
失せていくと、今度は全身を疲労感が襲ってきた。だるくなってきたし、お腹も空いてき
た気がする。広げていた画材をバッグの中へ詰め込んだ。
頭上には燦々と輝く太陽。ちょうど正午くらいだと思う。家に帰ろうとした時、横に人
の気配を感じた。
「終ったの?」
思いがけない人だった。
「原田さん!」
飛び退いてしまいそうなほど身体をびくつかせて大声をあげてしまった。
「どど、どうしてここにッ?」
「暇だから散策してたの。そしたら丹羽くんの姿が見えたからつい」
原田さんがパッチリとした目を少し不安そうに翳らせ、
「迷惑だったかな」
そんな表情で言われて身体中がかっと熱くなった。
「全然そんなことないよ!」
両手を振って否定する。途端に原田さんの顔から不安の色が剥がれ落ちた。彼女の様子
に安心した僕は、その時ようやくウィズのことを思い出した。
「ウィズ。……ウィズ? どこ行ったの」
呼びかけてもウィズは応えてこない。僕が目をつけていなかった間に何かあったんじゃ
ないかと心配しだした。
151 :
125:03/09/27 09:00 ID:3tVP8+pO
「ウィズならここにいるよ」
原田さんの声に僕が振り向くと、彼女の上着の首のところからウィズがちょっこりと顔
を出していた。
「キュッキュッ」
「あんッ! んもう、くすぐったいからあまり動かないの。メッ」
ウィズがもぞもぞ動くとそれにあわせて原田さんも身体を捩じらせる。
(んな、なな、なんて羨ましいことしてるんだよッッ!!)
僕も動物になりたいと思った瞬間だった。
「ねえ、今日はもう帰るの?」
いけない妄想をしかけて勃起してしまうところだったのを彼女の声に呼び戻され、ウィ
ズを胸に抱きしめたままの彼女の問い掛けに頷いた。
ぎゅるるぅ
「あ……」
僕のお腹が鳴いた。
原田さんの顔を見ると、最初はぽかんとしてたけど、次第に肩を震わせてくすくすと笑
い出した。恥ずかしさでまた身体中が熱くなってきた。
「ご、ごめんなさい……ははッ。お腹、空いてるんだ」
「う、うん」
「そっか。じゃあお昼一緒に食べよっか?」
152 :
125:03/09/27 09:01 ID:3tVP8+pO
さらっと、自然にそう言われて少し、いやしばらく、いや結構な時間理解するのに時間
を要した気がした。
「な、なんで黙っちゃうのぉ?」
ずっと言葉を発しない僕に焦れたのか、原田さんが苦笑いしつつも、ちょっときつい口
調で言ってきた。
「へ? あ、うん。いいよ」
反射的に答えてしまった。
「そ、そう! じゃああっちにできた新しいハンバーガーショップ行ってみよう」
立って立ってと言って背中をぽんぽん叩いて僕を急かす。そんな原田さんの態度に困惑
しつつも、嬉しくてついついにやけてしまう。
「さ、行こっ」
「うん」
原田さんにリードされ、僕らは目的の店へ足を進めた。
153 :
125:03/09/27 09:02 ID:3tVP8+pO
そこから先はよく思い出せない。
ただ二人でハンバーガー、フライドポテト、ドリンク、いろんなものを口にして、いろ
んなことを話したはずだ。
その後は二人で通りの店を覗いたり買い物をしたり、まるでとても親密な男女といっ
た感じで、少なくとも僕はそう思って一緒の時間をすごした。
緊張のせいか、浮かれていたためか、あっという間に時間は過ぎていった。
「うわ、もう四時だ」
公園内を並んで歩いていた原田さんが腕時計を見て驚いた。
「結構時間潰したね」
「うん」
「こんなに引っ張りまわしちゃって迷惑だった?」
「全然そんなことないよ」
一緒にいれて楽しかったよ。という気の利いた台詞は恥ずかしくて言えなかった。
「じゃあ、今日はここで」
はっと気づいた時にはもう公園の外にいた。生返事をするだけで精一杯だった。
「また付き合ってね。それじゃ」
手を振りながら去って行く彼女に僕も手を振り返した。
あっさりした別れに名残惜しい気がしたけど、今日一日、一緒に過ごした時間を思い
返せばそんな気持ちもすぐに払拭できる。
「また、か……」
意識して口にしたんじゃないとは思う。けど、僕はそこに淡い期待を少し、本当に少し
だけ抱いていた。
154 :
125:03/09/27 09:03 ID:3tVP8+pO
家に着くと母さんがリビングから顔を出した。
「お帰りなさい。遅かったのね」
「うん。いろいろあったんだ」
「お昼は?」
「食べてきた。六時まで部屋にいるから」
分かったわ、と言って母さんが顔を引っ込めた。僕は階段を上がって部屋に入り、肩か
ら提げたバックを机の上に置いた。
「遅かったな」
「遅かったですね」
「いろいろあったんだよ」
自然と欠伸が出た。今までの疲れが押し寄せてきたみたいだ。ベットに上って少し横に
なろうと思ったとき、下から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
「大ちゃん、電話よー」
「はーい」
一階に舞い戻り、母さんから受話器を受け取った。
「冴原君からよ」
受け取ったと同時に母さんが教えてくれた。
「冴原?何か用」
「おぉ、大事な大事な用だともっっ!」
受話器の向こうからかなり気合の入った声がして、思わず耳を離した。
「一体何さ?」
「明日な、クラスの何人か誘って河原でバーベキューするんだけどよ。お前も参加する
だろ?」
「そんな、一方的に言われても困るんだけど」
「へー、お前参加しないってのか?」
「いや、しないとは言ってないけど」
「残念だよなぁ。せっっっっっかくお前のために原田妹にも約束させたのになぁ」
「原田さんが!?行くの?」
「来ないお前には関係ないだろー」
「行くよ行く行くってば!!」
「うっしゃ。んじゃあ明日の三時に――」
冴原が伝えてくる明日の詳細をメモして電話を切った。
155 :
125:03/09/27 09:04 ID:3tVP8+pO
「何のお話だったの?」
母さんが訊ねてきて、そこではっと思い出した。七月いっぱいはずっと仕事を入れる予
定だったはずだ。
(完全に忘れてたよ……)
言いにくい僕をよそに、母さんはどうしたのどうしたのと僕を急かしてくる。
「あ、あの……――」
156 :
125:03/09/27 09:05 ID:3tVP8+pO
案の定怒られる。
と思っていたけど、八月一日にまで予定をずらすという母さんらしからぬ寛大な処置を
してもらった。
「母上も主のことに気を回しているのだろうよ」
「そうですねぇ。母親とは寛大な生き物なのですよ」
大空を滑空しながら二人の言葉に耳を貸していた。母さんがそんな風に気を回してくれ
るなんて、ちょっと嬉しかった。
「仕事仕事って、そればかり大事な母さんだと思ってた」
ついぽろっと本音が出てしまった。
「息子である主に感づかれぬよう苦労してることだろう」
「そうですねぇ。気を回してるなんて知られたくないでしょうねぇ」
二人揃ってうんうんと頷いている。何の気なしに訊いてみた。
「なんでそんなこと分かるの?」
「女だからだな」
「それも年増の、ですねイタイイタイさっちゃんぶたないでぇっっ!」
「そんなことを言うのはこの口か?」
目に見えない二人の喧嘩に自然と笑みが漏れた。
「おぉ。そうそう主よ」
多分レムちゃんを組み倒してマウントを取って虐めているさっちゃんが話しかけてきた。
「今夜は昨晩のような失態はせぬからな」
「わ、私もしまふぇむほっふぇいふぁいいふぁい!」
「お前は喋るな。うりゃうりゃ」
「……失態って?」
多分レムちゃんの口を引き裂こうとしてるさっちゃんに訊ねた。
「うむ。昨日は妙に力強い主にイかされてしまったからな。今日は全力でその精を搾り取
るつもりだ」
「し、搾り……」
「ふぉうふぇふ。ふぁふぁふぃもふぇふ!」
「ちゃんと喋ってね、レムちゃん」
とはいえ全力で搾り取られるとは物騒な言い方をされてしまった。明日に影響がなきゃ
いいけどと思いつつ、今日の仕事場へ降り立った。
157 :
125:03/09/27 09:06 ID:3tVP8+pO
朝からApart終了です。
改行の仕方が変わりましたが、読みにくいという方がいればもどしますので。
朝からグッジョブ!!
125氏乙です!!
バービキューはいつ始まるのかとどきどきしてましたw
改行のほうは、比べてみると確かにこの方が読みやすいです。
読者のことも心配してくれる、寛大な125氏。
次も期待してます!!
ところで、レムちゃんはなんと言っているのでしょうか?
一回目は「わ、私もしま〜〜〜〜痛い痛い!」ですよね?(いや、聞き取りきれてないけど)
二回目は「そうです。私もです!」
ですFA?
160 :
弧慮:03/09/27 20:22 ID:WLh8Xwre
夜・原田家
梨紗「何丹羽君に話さなかったの?あんたは本当に大馬鹿ものね!」
梨紅「ごめんなさい!梨紗様!(一体いつから梨紗とこんな関係になったのだろう・・)
梨紗「さあ早くしなさい!性欲処理係!」
梨紅「はい・・・(そうだ半年前・・私が部屋でオナニーしてる時写真撮られて・・)
161 :
137:03/09/27 22:36 ID:DJukH8ZG
どうも投下するタイミングを逃してたんで、
ジュラシックパークやってるうちに投下しときます。
・・・ほんとド素人なのでお目汚しになる悪寒
162 :
137:03/09/27 22:36 ID:DJukH8ZG
天井から滴る水滴、怪しげに揺らめくオレンジ色のランプの炎。
そこは、薄暗い地下室だった。
どこからか奇妙な匂いが漂い、意識は朦朧としている。
私はその地下室の一角に全裸でつながれていた。
少しでも体を動かそうものなら激痛が手足に走る。
いや、手足はもうない。ここにつれてこられた時、
四肢の付け根の少し先をのこぎりで切られてしまった。
麻酔もなしにいきなりのこぎりの刃が手足に当てられ、鮮血が噴出し、
私は激痛で恐怖に悲鳴を上げる間もなく意識を失ったのだ。
163 :
137:03/09/27 22:38 ID:DJukH8ZG
再び意識を取り戻した時は既に手足は失われ、
その切断面からは血がこびりついた鎖がのびて私を束縛していた。
切断面から激痛が走る。私は痛みと絶望に悲鳴をあげる。
すると、突然何人かの男が部屋に入って来た。
全員目だけを覆う仮面をつけている。
彼らの口は笑いに歪み、仮面から覗く目は血走っていた。
その視線は私を舐めるように動く。
「ひっ・・・た、たすけて・・・・!」
無駄と分かりつつ私は助けを求める。
それを無視した彼らの視線は一点で止まる。私の股間の上で。
私は濡れていた。どうして、こんな状況で・・・?
164 :
137:03/09/27 22:38 ID:DJukH8ZG
四肢に激痛が走るたびに、男たちがそこを凝視するほど、愛液があふれ、
どんどん熱くなり、じんじんしてくる。
私はこの異常な状況に興奮していたのだ。
見られているにもかかわらず思わずそこに手を伸ばしたくなるが、
既に失われた手を伸ばす事など出来ない。
私はいつの間にか息を乱していた。
しばらく無言で凝視していた男たちが突然動き出し、
一人が私の足の付け根から撫で回す。
もう少しのところでじらされ、私は我慢できなくなる。
「いいたい事があるんだろ?はっきり言えよ。」
男の一人が初めて声を出す。
165 :
137:03/09/27 22:39 ID:DJukH8ZG
「はぁ、はぁ・・・わ、私の・・・」
「私の、なんだ?」
「私の・・・おま○こをいじってください・・・・。」
助けて欲しいはずなのに何故か出た言葉。
男たちは顔を見合わせにやりと顔をゆがめる。
その後男の指が私の無毛の敏感な部分を直に刺激しはじめる。
「んはぁっ・・・も・・・もっと・・・!」
恐怖も忘れ、私は更に求めていた。他の男たちが私の未熟な胸にしゃぶりつく。
私があまりの快感に身をよじらせると切断面から激痛が走る。
その激痛すら、すでに私には快感に感じられた。
「ひぁ・・・お、おかしくなるぅ・・・っ!」
あっさりと私は絶頂に達した。
頭が真っ白になり、もう何がなんだか分からなくなる。
「舐めろ。」
いつの間にか男たちは下半身をさらけ出し、
膨張させたものを私の顔に近づけている。私は何の抵抗もなく、それを舐め始めた。
166 :
137:03/09/27 22:40 ID:DJukH8ZG
もちろんそんな事したこともなければ、成長した男のモノを間近で見たこともない。
それでも私は一心不乱に舐め続けていた。
おぼつかない舌使いが更に男たちを興奮させ、口の中にまで突っ込んでくる。
他の男たちは自分のものをしごき始めている。
私の口でしごく男の間から、私の股間にモノを近づける男が見える。
それが擦り付けられ、私は再び快感に身をよじる。
男がゆっくりと私の中に入れてくると、男はにやりと笑う。
私はまだ処女だった。男が一気に押し込むと、
ブチッと股間に痛みが走った。
私は顔も名前もよく分からない男に処女を奪われた。
「んん〜っ!」
口は既に男のもので埋められていたので声に出す事が出来ない。
167 :
137:03/09/27 22:41 ID:DJukH8ZG
うめき声の振動で限界に達したのか、私の口の中に大量の液体が放出される。
「飲め。」
私は命令どおり美味しいとはお世辞にも言えないそれを飲み込む。
男が口から引き抜くとむせる間もなく他の男が口に入れてくる。
股間に走る痛みは四肢の痛みと比べればたいしたものには感じられず、
ピストンの快感と痛みが入り混じって更に快感に感じられる。
私は初めてなのにどうしてこんなに感じているのだろう。
そんな考えが一瞬浮かぶが、その後はもう何も考えられなかった。
周りで扱いていた男たちが私に向かって射精する。
体中精液まみれになり、傷口にワザとかけるものも居た。
「ひぐぅ・・・もう、らめぇ・・・!」
168 :
137:03/09/27 22:41 ID:DJukH8ZG
私は2度目の絶頂に達した。膣が激しく収縮しているのが自分でも分かる。
それと同時に男が膣内に精液を放出する。
熱いものがいきわたり、私は意識を失った。
それから何度も何度も色々な男たちに犯された。
地下では時間の感覚がなく、何日たったのかも分からない。
放置されている間は忘れていた恐怖が蘇る。
私はもう助からない。そう諦めていた。
鍵とドアが開く音が聞こえ、また犯されるのかと思う。
「原田さんっ!!」
「丹羽・・・くん?」
一瞬どういうことか分からなかった。
169 :
137:03/09/27 22:42 ID:DJukH8ZG
一度は振ってしまったけど、心のどこかで気になっていた少年が、
助けに来てくれた?彼は、私を見て目をそらす。
そうか。私、こんなになっちゃったんだ。
手足を切断され、彼の前に全裸を晒している。
助かった。でも、もう普通の生活には絶対戻れない。
私は涙を流しながら気を失った。
170 :
137:03/09/27 22:42 ID:DJukH8ZG
真っ白な部屋。窓からはやわらかい光が注ぎ、カーテンが揺れている。
「ここは・・・?」
「梨紗っ!」
「梨紅・・・?」
「心配したんだから・・・丹羽君が梨紗を見つけてきてくれたの。」
梨紅が私に抱きついてくる。私は梨紅を抱きとめた。
「え・・・?」
手がついている。起き上がり、足を見る。
「どうして・・・?夢だったの・・・?」
「え・・・なにが?」
私は不思議そうに病院の一室で手足を眺めていた。
「まったく、危ないところだったぜ。」
「今回ばかりはダークが居てよかったかもね。」
「今回ばかりはだとぉ?」
「じょ、冗談だってば・・・ウィズ、帰るよ。」
「キュッ!」
青空に、黒い羽が舞っていた。
171 :
137:03/09/27 22:49 ID:DJukH8ZG
これで終わりっす。
ちなみに漏れはこういうのが趣味というわけじゃないんで(汗
初めて書いたのが四sh(ry・・・逝ってきまつ
あんまりそう言う感じが伝わってこない気も大いにするがナー
172 :
125:03/09/28 01:27 ID:zHffcj0O
>137
乙であります。
初めてで四肢〜に挑戦とは・・・
173 :
名無しさん@ピンキー:03/09/28 09:31 ID:/ZSVAgno
ダルマ羽ちょっと、、、かなりひきますた
・・・・・・・・・・
濃いですな・・・
しかも、どうやら夢オチではない様子・・・
(((((;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
や、まぁ一、二回吐いた程度ですんだんで
大丈夫ですが・・・[ダイジョブなのか!?]ww
175 :
137:03/09/29 10:13 ID:S47VWzwo
(´・ω・`)ヤッパリスベッタカ・・・
や、でも文章は読んでて結構伝わってくるよ。(何かが)
そのおかげで、読んでて頭の中にイメージが出てきて、
吐いたんだから!!(だから最後のは嘘w)
え、夢オチじゃないの?(;´Д`)
スベッテナイ、意外だっただけ。
お疲れ。なんか続き見たいぞ。まだ物語の構成が見えないもんで。
179 :
125:03/10/01 08:21 ID:pQRjW/pt
相変わらずエロ分が少ないであります。
ご容赦ください。
180 :
125:03/10/01 08:22 ID:pQRjW/pt
朝起きて、トランクスの中の気持ち悪さに声が出た。少し動くたびにナニがバリバリと
トランクスから剥がれる。
「うー」
剥がれる痛みを堪えてトランクスの中を覗き込んだ。体外に放出されて熱を失い乾い
たザーメンが腹から内腿までこびりついている。
さっちゃんもレムちゃんも気合い入れすぎだ。
すっかり重くなった腰を上げていつものように処理を済ませた。
181 :
125:03/10/01 08:23 ID:pQRjW/pt
「大助ーっ。こっちだこっち」
午前十時。時間通りに集合場所の河原近くの土手に行くと、すでに参加者の多くが集ま
っていた。冴原に呼ばれ、石が敷き詰められたそこに下りていった。
男子は冴原、日渡くん、関本、西村。女子は原田さん、梨紅さん、石井さん、福田さん
がいる。
僕を見つけた冴原が男子の輪から外れて傍に来た。
「おはよ。すごいねこの荷物。どうやって持ってきたの?」
河原に広げられた鉄板にテーブルにガスコンロ、食材のすべてを指して訊いた。
「原田姉妹んちの坪内さんに運んでもらったんだよ。感謝しとけよ」
そうなんだと言いながら、視線はテーブルの側にいる原田さんたちの方へ向いていた。
石井さんと福田さんと一緒に食器の準備をしていた。
「おい冴原」
僕と冴原の間に西村が割って入ってきた。
「沢村がまだ来てないんだけど、どういうことだ?」
「ほほー。西村くんは沢村のことが気になるのか?」
「んばっ……!そんなことないぞ」
西村の気持ちを知っている冴原が意地悪い顔で西村を虐めている。西村自身は気付かれ
てないと思ってるんだろうけど、沢村さんのことが好きだということはすでに冴原を通し
てクラス中のほとんどの人が知っている。気付いてないのは当の本人と沢村さんくらいで
ある。
「ちっと用があるって言っててさ、十一時くらいに来るってよ」
「ん、そ、そうか。ならいいんだけどな」
あっはっはと不自然な笑い声をあげて西村は離れていった。見ると、日渡くんと関本と
一緒に炭火をおこそうとしているところだった。
「っしゃ。オレ達も手伝うぞ」
冴原の言葉に頷いて三人の元へ近づいた。
182 :
125:03/10/01 08:24 ID:pQRjW/pt
ちらちらと、他の女子にはばれないように視線を向けていた。
「梨紗、どしたの」
一通りの準備を終え、時間が来るまで暇をもてあましていた梨紅達が梨紗に声をかけた。
幸い、視線の先に何を見ていたか気付かれた様子もなく、何でもないと言って女子の輪に
入った。
「ねえねえ、梨紗はどう思う?」
そう切り出したのは石井真理だ。何を聞かれているかまったく分からない梨紗は訊き返
した。
「どうって何が?」
「今回のバーベキューのことだよ」
「それがどうかしたの?」
「分かってないなあ。いきなりこんな企画持ち出すのなんて決まってるでしょ」
石井の目が、誇張でも何でもなく本当にぎらりと輝いた。
「合コンよ」
「…………」
その台詞に梨紗は言葉を詰まらせ、梨紅と福田に救いを求めるように視線を送った。目
を合わせる前に、二人は首を振った。すでにいろいろと諦めたらしい。
「それでそれで男どもは飢えた野獣のように私を舐め回すように目で犯してそれでそれで
とうとう我慢できずに彼が私に襲い掛かって」
「ちょっと真里。彼って誰?」
そこだけ単数形なのが気になった梨紗が訊ねてもまったく気にするようすもなく石井の
妄想は進んでいった。
「そいでそいで(ピー)が(ピーー)で(ピーーー)なんてことになって最後の最後は(ドーーーーン)ってなってしまうのよぉぉっっ」
石井真理、十四歳。多感なお年頃であった。
三人は気付かれないようにそっとその場を離れた。
183 :
125:03/10/01 08:24 ID:pQRjW/pt
遅れていた沢村さんがようやくやってきた。西村は悪態をついてたけど、内心では嬉し
がってるんだろうな、と思った。
「うっし。んじゃあそろそろ焼くか」
料理の達人・冴原の言葉を皮切りに、みんなわいわいと思い思いに騒ぎ始めた。
「野菜だ、野菜を焼け」
「ねえ肉は?」
「後だ後。まずは硬いもんから焼くんだよ」
「これもう焼けたんじゃないかな?」
「ンノォォォォウッッ!」
『吼えたっっ!!?』
「分かってねえな!バーベキューっつうのはだな」
ばんッ、と鉄板を叩き熱弁しようとする冴原だけど、
「熱いぃぃっっ!!」
「馬鹿かお前は!さっさと冷やせ!」
「冴原がああなった以上、俺たちだけで好きにやろう」
『さんせーい』
「わあ、このお肉美味しいかも」
「それ、わざわざ坪内さんが用意してくれたんだよ」
「野菜も新鮮でいいかも」
「ふ、ではそろそろこれを入れるか」
『ウミウシッッ!?』
「やめろ日渡!死ぬ気か!?」
「そうだよ。そんなの食う人なんかいないよ」
「ここにいる」
びっと自分自身を示して告げた。
『とりあえずやめてっっ!』
女子全員のナックルが日渡くんの身体にめり込んでいった。
184 :
125:03/10/01 08:25 ID:pQRjW/pt
(ふ、ふふふふふ)
気絶しそうな痛みが掌に走っているが、心の中で彼はほくそえんでいた。
(誰も気付いていまい。飲み物の中にオレがこっそりとアルコールを入れたことを)
そう、今回彼がこんなことを企画したのもこれが目的だったのだ。
(そして酔って乱れた女子とあんなことやそんなことを……)
期待に胸膨らます冴原だったが、未だにひりひりと痛む掌を川に突っ込んだまま動けな
いでいた。
185 :
125:03/10/01 08:25 ID:pQRjW/pt
変だ。さっきから妙に身体がふわふわしてる。本当に浮いてるわけじゃないけど、どう
も身体が軽くなっているような、そんな不思議な気分だ。ぐるッとみんなの様子を見回し
てみると、みんな一様に紅い顔をして、いつもより陽気な感じがする。
「どぅおした大助ぇ」
関本が僕の首に腕を回して絡んできた。おかしい。明らかにおかしい。
「関本、大丈夫?」
「ぬぁにがぁ?」
「なんか、様子変だから」
「変ッ!?おっかしなこと言ってんな」
けたけた笑いながら僕から離れていった。何かがおかしい。そう思っていると、
「にに、西村ぁっ!?」
とんでもないものを見てしまった。西村がうつ伏せのまま川に顔を突っ込んでいた。あ
れじゃ息ができずに死んじゃう。慌てて駆け寄ろうとすると、
「待て丹羽」
なぜか日渡くんが僕の前に立ちはだかった。
「そこどいて!西村が」
「どうしてだ、どうしてお前がナチュ……西村の味方をする!?」
「み、みか……?」
「戻って来いキ……丹羽!」
日渡くんがまったくもって妙なことを言っている。もしかしたら僕と同じように身体が
変調しているのかもしれない。顔もかなり赤い。
「でも、西村は友達なんだっっ!」
あ、なんだろう。こんな感じの会話どこかでした気がする。呆然とする日渡くんの横を
すり抜けて西村の顔を川から引きずり出した。
「西村、大丈夫!?」
「…………ぐぅ」
「寝てるのっ!?」
気持ちよさそうににやけながら眠っている。もしかして助けなくても平気だったのだろ
うか?
186 :
125:03/10/01 08:26 ID:pQRjW/pt
(ふふふふふ、そろそろ頃合いか)
一人アルコールを口にしていない冴原はとうとう行動を起こそうとした。
(女子の中から適当に一人選んで、それで……?)
立ち上がろうとした時、がくっと膝が崩れ落ちた。その拍子に川に身体がドボンと落ち
てしまった。もう一度立ち上がろうとするが、やはりうまく立てずに川に身を沈める結果
となった。
(な、なんだ……。まさかっ!!)
はっとして顔を上げ、そして彼は見てしまった。自分が隠しておいたはずの焼酎を片手
に勝ち誇った表情で見下す日渡の姿を。
(や、られた……)
その光景を最後に、冴原は川に全身を浸し、夢の世界へと旅立っていった。
187 :
125:03/10/01 08:27 ID:pQRjW/pt
「はいはーい!原田梨紗、モノマネやらせてもらいっまーっす!!」
超ハイテンションな原田さんがノリノリでそう言い、その場にいた僕と梨紅さん、福田
さんと沢村さんに、後からやってきた日渡くんが腰を下ろして彼女を見守った。
「んんっ、ごほん。……鳴海さんっっ!」
『誰それ!?』
全員で突っ込んだ。
「知らないの?みんな後れてるぅ」
「いいよもう。梨紗、交代」
「えー。私まだモノマネできるよ」
いいからいいからと言って原田さんと入れ代わりに梨紅さんがでてきた。
「んじゃ、あたしもモノマネー」
あの梨紅さんがモノマネなんて、ちょっと想像できなかった。それだけ何かが壊れ始め
ているのだろうか。
「ん、んん。……祐介くん、二人なら運命だって」
『なんだその萌える声はっっ!!?』
普段の梨紅さんの調子からは想像できないほどの萌え声にみんながみんな突っ込んだ。
「あたしだってこれくらいできんだからね」
ぎろっと原田さんを睨みつけた。なぜ?
188 :
125:03/10/01 08:28 ID:pQRjW/pt
「ねえ、丹羽くんも何かやってよ」
僕の横に沢村さんがちょこんと座ってきた。
「で、でも僕、モノマネとかできないし」
「えー、やってよ。ねえ」
(う、わわわっ!)
沢村さんの頬が僕の肩に擦り寄ってきた。沢村さんも壊れている。どうにかして離れよ
うと思ったとき、
「鳴海さん!」
原田さんが僕を掴まえて沢村さんから引き剥がした。彼女はそのままこてっと倒れ、眠
り込んでしまった。
「なる……って僕?!」
「そうです!さあ、私と一緒にエスケープしましょう!!」
強引に僕の腕を取って連れて行かれそうになったところを、今度は逆の腕をがっしりと
掴まれた。
「祐介くんはあたしと一緒なの!他の子と一緒にいたらダメなの!!」
「ゆ……違うって、やめてよ梨紅さん!」
今度は梨紅さんだ。姉妹そろって壊れている。
「鳴海さんは私のものです!」
「違うもん!祐介くんは私の運命の人だもん!」
「ちょ、い、痛い、痛いってば!!」
左右から腕を引かれ、このままだと脱臼しかねない。肩がみしみしと悲鳴をあげ、少し
ずつ目に涙が溜まってきた。
189 :
125:03/10/01 08:28 ID:pQRjW/pt
「ちょぉぉっと待ったぁ!!」
辺りに響いた大声に、その場の全員の動きが止まった。いや、一人だけ動いている。そ
の人影が駆けてきて、僕の前で右手を差し出して止まった。
「丹羽くん、私と付き合いなさい!!」
「ふ、福田さん?」
福田さんまで奇怪な行動をとりだした。だとすれば、もうまともな行動がとれる人間は
この場にはいない。
「待って!丹羽くんは私とお付き合いするのよ!!」
言葉遣いだけ元に戻った原田さんが福田さんの横に立って同じように手を差し出した。
「ちょっと、一度ふっておいてそれはないでしょ!あたしと付き合うんだからね!」
二人に続いて梨紅さんまで手を差し出してきた。
「待ちなさいっ!委員長としてこんなところで異性交遊を認めるわけにはいかないわ!」
と言って沢村さんも同じことをした。
四人が同じ格好で、上体を九十度に曲げて右手だけ差し出すという格好で僕の前に並ん
でいる。
「え、えと、これは」
『選びなさいっっ』
綺麗なハーモニーを聞かせてくれた。
(みんなおかしい、おかしいよ!!)
心の中で声を大にして叫んだ。どうもこれは、一人を選ばないと進めないようだ。
(……えぇーいっっ!!)
硬く目を閉じ、今一番好きな女の子の手を握った。
190 :
125:03/10/01 08:29 ID:pQRjW/pt
むぎゅっ
彼女の手を優しく握りしめた。その手は思っていたより大きかったけど、細くて、少し
冷たかった。
(これが、彼女の手……て…………ん?)
悪寒。本能が鳴らす警鐘。僕は恐る恐る瞳を開いた。
「ふ、ふははははっっっ!!かかったな腰抜けぇぇぇぇぇっっっっ!!!」
凶気を孕んだ声で叫ぶ日渡くんがいた。すぐ目の前に。
僕の手をがっしりと掴み、まったく離そうとしない。
「丹羽、ありがとう!俺を選んでくれるとはさすが俺の」
そこで言葉が途切れた。四人の女の子がどかばきと日渡くんに蹴りや拳を見舞った。
「なに考えてんのあんた!?」
「最っっっ低!!」
「せっかく勇気出して告白したのにぃぃ!!」
「消えろ、この、バカ、バカッッ!!」
「痛い、痛いぃぃぃぃぃぃっっっっっっっっっ!!」
日渡くんの手が力なく僕の手から抜け落ちた。
191 :
125:03/10/01 08:30 ID:pQRjW/pt
そんなこんなで僕らのバーベキューは瞬く間にすぎ、夕刻になっていた。
「片付け終わったかー?」
川の中から息を吹き返した冴原が元気にその場を仕切っている。みんな、多少体調が悪
そうだったけど素直にそれに従っていた。
「終ったよー。ゴミもないし、ばっちりだよ」
みんな死にそうな顔をしている中、何故か石井さんだけは非常に弾けている。明らかに
来る前より元気だ。
「何があったんだろうね」
横で後片付けを一緒にしていた関本に訊いてみた。
「……あん?」
振り向いた関本の顔を見て小さな悲鳴をあげた。まるで生気を抜かれたかのように頬が
こけている。明らかにバーベキューで得たエネルギー以上のものが抜け出ている。
「どうしたのその顔?」
「丹羽、世の中には知らない方がいいことがいっぱいあるんだ」
頼むから訊かないでくれ、と懇願され、気になりつつもそれ以上の追及は断念した。
192 :
125:03/10/01 08:31 ID:pQRjW/pt
来た時よりも美しく。綺麗に片づけを終えた。
「じゃあな」
「さよなら」
「またね」
思い思いに挨拶を交わし、僕らは別れていく。
(今日は楽しかったな。また、機会があったらいいな)
思えばこうやって集まることは夏休み中はほとんどないんだ。今日という日は本当に貴
重なものだったんだと改めて思い知らされる。
(手、握りたかったな)
それだけが、今日僕が思い残したことだ。今度は日渡くんの邪魔が入らないことを切に
願い、自転車を思い切りこいで家路を急いだ。
次回、パラレルANGEL STAGE-09 School War
125氏乙です。
いやぁ・・・パニックしてますなぁ〜(しみじみ)
冴原もなかなか策士で・・・
まぁ、日渡のほうが一枚上手だったみたいだけど・・・w
あと、石井さんのキャラがやっと開いた気がする。www
そういうキャラだったとは・・・・
そういえば、途中から石井さんと関本の姿が見えなかった気が・・・www
モノマネははじめ何のことかと思ったけど、
そうですか、中の人関連ですかw
気づいたのは、やはり「鳴海さん」でしたけどww
とりあえず、stage8乙でした。
なんか次回のタイトルがすごいことになってるんですけど・・・w
・・・・ラグビー?とだけ言っておきます。
次回もキタ―――(・∀・)―――イ!!
125氏乙ですw
普通に笑ってしまった…
アニメじゃまったく立たなかった石井さんや福田さんのキャラがこれと同じだと思いながらビデオ見て見ますw
で、関本くんはおいしい思いを一人でしていたのだろうか…妄想は広がるw
ナチュから分かった私はガンオタ・・・
鳴海さんで笑った私は声オタ……
祐介くんで爆笑した私はエロゲオタ………
次回タイトルを見る限り学校が舞台ですかね?
ムッシュ宮本にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━イ!!
みんなものまねがものまねじゃないよ・・・だって本(ry
爆笑してしまった。
な、中の人祭り……(笑)。
>>「戻って来いキ……丹羽!」
アニメ放映前のドラマアルバムを聴いていたお陰で、大助の中の人がコーディネーターの人にあっさりシフト。
愛は奇跡を〜信じる力〜♪
乙です。
中の人祭りですか。ムッシュがでてこなかったのが惜しかったw
梨紅の中の人がエロゲに出てたとは知りませんでした。
そういえば大助はコンドーム作戦あきらめたんですか?
始めまして、lovelessです。
いつも楽しく(?)見ております♪ d(⌒o⌒)b♪
まだまだ詳しくないですが、いつか小説を書いてみたいと思いますかなりへぼへぼですが
良いですか???_(・・ ))キョロ(( ・・)キョロッ
ということでこれからも皆さん(^○^)ふぁいと!!です ではまた会う日まで (。^_^。)/
広告はいってるので200ゲット
続き(*´д`*)ハァハァ
201 :
ゼィア:03/10/02 21:06 ID:TZ2p9d1m
初めまして!!
前から、よくここで読ませていただいていましたvv
125氏!!あなたの小説は、最高デすタよ!(.。^_^。)
惚れ惚れしますでぇ★
今度、ゼィアもここで小説を書かせてもらってもイイですか??? あんまーエロく
ないと思いますのですが・・・。
>ゼィアさん
エロパロなのに、全然エロくなくても
おっけぃなスレなんで、どうぞどうぞ・・・・
まぁ、DNで801ノミのネタ禁止を守ってもらえれば・・・
職人さんについては、来るものは拒まずですから・・・
来る者は拒まず、
去る者は地獄の果てまで追い掛けますぞw
新人さんいらっしゃ〜い
地獄の果てまでって…どっかのヤクザ屋さんみたい(;-o-)
205 :
137:03/10/02 23:56 ID:Zc6gjkj9
コ、コエエ・・・
さて、続きキボンヌとか言うお方が居られましたので
全く考えてなかったのを暇を見つつ頭を抱えて執筆中・・・
いや、さすがにもうぶった切りませんが(多分
皆さんガンガレ。今回線がプロキシ規制なるものを喰らっているのでしばらくウプできませぬ。
ぬぉ!?
規制ですか・・・お疲れです。がんばってください。(いや、一個人ができることはない気が・・)
ともかく、規制解除まで、マターリと・・・
>203
じゃあ、紫さんと迷作SS書きさんを、地獄の果てまで(ry
>137
ガンガッテ!!
208 :
125:03/10/03 13:36 ID:TY1TG/9/
解除キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ッ!!
キタ―――(・∀・)―――!!
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ッ!!
キタ―――(・∀・)―――!!
210 :
loveless:03/10/03 21:20 ID:x8Q8GXyU
まず・・ごめんなさい小説出すって言ったのに1日経ってしまいました。
1つ質問してもいいですか?801って何ですか・・・ごめんなさい・・こういう言葉知らなくて。
小説は早く出せるように頑張ります・・・・・でも今の所あんまエッチじゃないかも(^_^;)
212 :
loveless:03/10/03 22:00 ID:x8Q8GXyU
>>211 なるほど!!ありがとうございます!!!。
まだまだ初心者ですがよろしくです<(_ _)>
(←しかも童貞(^_^;))
213 :
sage:03/10/03 22:04 ID:VbUTdVim
>212
大丈夫
そんなこと気にしてたら小説なんてかけないさ!!
別に体験談書いてるわけじゃないんだし・・・
215 :
loveless:03/10/03 22:14 ID:x8Q8GXyU
そうかもしれないけどやっぱりセックスは小説書くには必要だと思うなぁ(^_^;)
ごめんなさい生意気なこと言ってm(__)mペコペコ
あと返事も遅くてすいません小説と並行進行中(@_@)
125さんもガンバです!!!(僕もあなたみたいに書きたいなぁ)(^_^;)
216 :
125:03/10/03 23:02 ID:TY1TG/9/
目標とされるほど立派ではありませぬ。
lovelessさん、ゼィアさん、137の人、ガムバッテください。
あと、sage推奨じゃないですけど広告くるとウザイのでなるべくsageで・・・
217 :
loveless:03/10/03 23:33 ID:x8Q8GXyU
125>>
いえ・・あなたは凄いですよ!!
あなたの初作品見ました感動もんでした!! (。^_^。)/
僕の初作品を見たら多分唖然・呆然するかと((((((^_^;)
所でsageって何ですか??? (~ヘ~;)ウーン
(ごめんなさい実はこういうことまだ殆ど知らなくて((((((^_^;))
218 :
125:03/10/03 23:39 ID:TY1TG/9/
●原田梨紅さんによる下げ方講座
____ ________ ________
|書き込む| 名前:| | E-mail(省略可): |sage |
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ,'´ `ヽ 。 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ここ重要だよ |. {(〈从ノ))) / | よく聞いてね
ちゃんと聞いてないと > Vl ゚ ヮ゚ノ| / < ここには半角で「sage」って
怒っちゃうんだから .| ⊂)Hlつ | いれるといいの
__________/ ∠VVゝ \______
し'ノ
>>217 メール欄に半角でsageと入力すると、スレの順位が一番上に行かないのです。
上に行かないことで生じるメリットは、
コピペや宣伝、荒らしの絨毯爆撃から逃れられる。
これに尽きます。
新しく立ったスレなら、職人さんを呼び込むためにage進行(メール欄にsageと入れない)でいくこともありますが、
エロパロ板では基本的にsage進行です。
218>>
219>>
なるほどありがとうございます!!!_(._.)_
実はパソコンを買ってから2日しか経っておらず全くパソコンに関する事を知りません
↑実は3日だが起動は2日あり3日だった気も?!
これからもご迷惑をかけるかもしれませんがよろしくです。_(._.)_
・・・・・・小説の方は何か徐々にエロクなって来ました、でもまだまだ稚拙ですなぁ。
221 :
137:03/10/03 23:50 ID:20Hsa8O8
222 :
137:03/10/03 23:54 ID:20Hsa8O8
あ、クリックすると違うとこ飛ぶかも
223 :
125:03/10/04 00:05 ID:NbLfzthd
このスレの人はエロが薄くても乙と言ってくれるので本当嬉しいです(つд`)
自分も次はエロを入れるのでお待ちください。
その前に↓
224 :
125:03/10/04 00:06 ID:NbLfzthd
STAGE-00 LITTLE DAYS
幼い子どもたちの話です。
四人の少年が公園でサッカーボールを蹴って遊んでいました。
赤髪の少年と青髪の少年、黒髪の少年と金髪の少年です。
黒髪の少年が思いっきりボールを蹴りました。
それは赤髪の少年の頭上を越え、道の向こうまで飛んでいきました。
偶然、本当に偶然、ボールが向かう先に二人の幼い少女がいました。
クマさんのぬいぐるみを抱きかかえた短髪の少女。
ウサギさんのぬいぐるみを抱きかかえたツインテールの少女。
黒髪の少年が蹴ったサッカーボールがツインテールの少女に当たりました。
少女の手からウサギさんのぬいぐるみが弾きだされ、通りに面した屋敷の庭に落ちてしまいました。
そこは高い柵で囲われた、近所では幽霊屋敷と呼ばれて有名なところでした。
少年たちが駆け寄ります。少女は怒った口調で少年に取ってくるよう言いました。
でも彼らもまだ子ども。気味悪がって近寄りたくないようです。
そこに屋敷に住んでいるらしいお爺さんがやってきました。
ウサギさんに気付いたおじいさんはそれを持って館の方へ去っていきます。
ツインテールの少女は懸命に声を出して呼びかけますが、どうやらおじいさんには聞こえないようです。
ツインテールの少女が柵を前に涙を浮かべています。
それを見た短髪の少女が自分のクマさんをぎゅっと強く抱きしめ、それを渡しました。
お姉さんのように接する短髪の少女の行為に、ツインテールの少女は泣くのをやめました。
ウサギさんが気になりつつも、二人の少女はそこを離れました。
それを見た少年たちもその場を離れます。
でも赤髪の少年は、去り行く間際の少女の寂しそうな顔を見てしまったのでした。
少年の胸がずきりと痛みました。
225 :
125:03/10/04 00:06 ID:NbLfzthd
――深夜、二人の少女はクマさんのぬいぐるみを挟んで仲良く眠っていました。
と、髪を下ろした長髪の少女がぱちりと目を開きました。
そっと短髪の少女に気付かれないように布団から抜け出し、夜の街へと繰り出したのです。
やっぱりウサギさんが気になるのです。
目指すはもちろんお昼に訪れた幽霊屋敷です。
とてとてとてとて
長い髪をなびかせ、少女は屋敷の前に着きました。
と、
お昼にいた赤髪の少年が屋敷の前にいました。
なんでこんなところにいるんだろう? 少女は疑問に思いました。
つま先を伸ばし、頑張って柵にかけられた鍵を開けようとしています。
でも、あとちょっとのところで届きません。
少年は小さく息を吐き、くるっと回って公園の方へ歩いていきました。
取ってきてくれるのかな、と期待していた少女は少しがっかりしてしまいました。
その時です。軽快なリズムで足音が聞こえたかと思うと、少年が空を翔け、柵を跳び越えたのです。
少女は驚きました。
だって自分の背の何倍も何倍もある柵を跳ぶなんて、信じられなかったからです。
少年が館の中に姿を消したかと思うとすぐに戻ってきました。
さっきと同じように柵を超え、そして少年と少女の目が合いました。
少女がおたおたと慌てふためきます。
少年はそんな彼女にずいっとあるものを突き出しました。
それはお昼に少女の手から離れていった、あのウサギさんのぬいぐるみです。
ウサギさんを渡すと、少年はすぐそこから離れるよう少女に言いました。
少年が去っていくとすぐに館に明かりが灯りました。
彼の後ろ姿を見つめ、彼女は小さくありがとうと呟いた。
226 :
125:03/10/04 00:07 ID:NbLfzthd
今でも朧気にそんな夢を見ることがある。夢といっても僕の場合は昼寝の時にしか夢は
見られないんだけどね。
夢に出てくる二人の少女の、髪の長い女の子が忘れられない。鮮明にとまではいかない
けど、顔も思い出せる。その顔は、僕が恋をしたあの子に――、
(いや、それはないよね)
浮かびかけた想いを頭を左右に振って拭い去った。
朝、スケッチに出かける前にソファで横になっていたらうとうとして眠ってしまったよ
うだ。身体を起こしてバックを肩にかけると、その中からウィズの鳴き声が聞こえてきた。
今日もまたついてくるつもりらしい。僕としては大歓迎だ。なぜならウィズをきっかけに
して彼女と話ができるからだ。
あの日、初めて原田さんが噴水広場で僕のスケッチするところを見て以来、毎日――と
いってもまだ三日目だけど――そこに来てくれている。おかげで僕は毎日が楽しくて、気
恥ずかしくて、多分、幸せだ。
「行こっか」
特に意味があるわけじゃないけど、ウィズにそう声をかけた。鳴くのを聞いてから動き
出し、家を飛び出した。
今日も彼女は来てくれる。何故かそう思える。彼女に振られたということもすっかり忘
れて、自然と話ができる喜びに胸を躍らせ、僕は道を急いだ。
227 :
125:03/10/04 00:08 ID:NbLfzthd
と、これだったら大助が梨紗に惚れたのもわかるなぁ・・・と妄想して書いてみますた。
>>221
ありがとです (。^_^。)/
しかし僕が知らないことが多いなぁ((((((^_^;)
137さんの小説も見ています!!!♪ d(⌒o⌒)b♪
ここは小説が巧い人が多いですね!!!v(=∩_∩=)
・・・僕も125さん・137さんみたいに精進していきます!!! (。^_^。)/
(今思った事だけど何か言葉の使い方子供っぽい・・・童顔だからかな???)
>>125
いいですねぇ!!! (=∩_∩=)
何か泣けてきました(;_;)ウルウル
最高ですこれからも頑張ってください!!!(^○^)ふぁいと!!
梨紅と梨紗を逆にしてるーーーーー!!!
語りが紙芝居風なのがよかった。
関係ないがパソコンはじめて2,3日でここにきてるって・・・・
坂道を転がり落ちてるんじゃないかと思うな。
230>>
そうなんですか???
僕は結構普通に着たんですけど。(~ヘ~;)ウーン
検索サイトに行って≪小説≫と書きまして、後はここを見つけて入ったって訳で
すけど。
何か変でした???((((((^_^;)
>230
たしかに・・・
転げ落ちると言うよりは・・・
出てくるところを間違えたって感じかな・・・v
まぁ、lovelessさん、がんばってくださいナ
125氏、乙です。
梨紅と梨紗の予告状が・・・w
逆に・・・wwいいですねぇ〜・・・
というか、遊んでたところに日渡もいたんですかw
そのころから、「ぼくは丹羽くんとけっこんするんだぃ」
とか言ってたのかな?ww
125氏続きキタ―――(・∀・)―――イ!!してます。
234 :
ゼィア:03/10/04 18:32 ID:+/qMIBze
小説!!
書き込ませてもらいます!! 変で短いものですが・・・読んでいただければ
それで嬉しいですvv
235 :
ゼィア:03/10/04 18:34 ID:+/qMIBze
―――−大助と梨紅は、ひょんな事で付き合い出したものの、毎日忙しくて、ろく
に話もでくず、日々が過ぎていく・・。 今日は、その一つの例を出してみよう。
近々、大助の通う学校では、学際がありました。今日は、その出し物を決める日。
大助は、体調が悪く午後から学校に出席しました。
そして、教室のドアを開けた瞬間
「オメデトー大助!!!」
「丹羽君グッドタイミング〜〜♪」
などと、口々にクラスの生徒達が大助に挨拶をかわす。
「え・・何が・・オメデト・・・??」
「まぁまぁ、これを見たまえ!!!」
いきなりで何がオメデトウなのか分からない大助を、冴原は黒板の前まで連れてき
た。
「――と、まぁ、そーゆー事なんだ!」
「え・・。でも、フリーデルトって・・・。確か・・・。」
「そう!!!ヒ・ロ・イ・ン!!頑張れよな!!主役だぜ??ちなみに、相手役のエ
リオットは、ダントツの票で日渡だ!」
「そ・・そんな・・・;」
「問答無用!!早速、準備に取りかかるからな!!しっかりやれよ〜〜〜。」
大助の反応を無視して、冴原はやる気満々で教室から出て職員室に行きました。
「ハァ・・・;」
大変な役についてしまった大助は、大きなため息を一つ・・。
236 :
ゼィア:03/10/04 18:36 ID:+/qMIBze
大助がガク―ッとしていると、そこへ、梨紅がきました。
「ゴメンね・・丹羽君。私も票入れちゃって・・vでも、頑張ってね!!丹羽君なら
きっとできるよ!!!」
「梨紅さん・・・。うん・・頑張るよ・・・。」
「私も、衣装作り頑張るからね!!丹羽君に似合う可愛い〜衣装作るから!!!」
「梨紅ーー!!布とりに来てってーーー。行こーよーーー」
と、梨紅の双子の妹、梨紗が言いました。
「あ、うん。じゃぁね!丹羽君。また後で!!!」
そう言って梨紅は教室から出て行きました。
大助は、梨紅に手をヒラヒラと振って見送りました。
そこへ、日渡総司令登場・・・。
「丹羽は、いつも面倒なことに巻き込まれるな・・・。」
「ウワァッ!!ひ・・日渡君・・・。(全く気配を感じなかった・・;)」
「まぁ・・・学校の行事だから、それなりに頑張らないとな・・。」
「そ・・そうだね・・;でも、日渡君・・よく引きうけたね。忙しいのに。」
「まぁ、俺がいなきゃ始まらないって感じで、俺も仕方なく――」
「あーそう。うん。じゃぁ、またあとでね。」
と、日渡が最後までセリフを言う前に大助は無理やり、話を終わらせてスタスタと
歩いていってしまいました。
―――――−そんな感じで、いつも大助は振りまわされっぱなしでした。 いつ
になれば、梨紅と楽しい時間を過ごせるのか―――・・・。
学際が終わるまで、ちょっと無理かな・・・?
――――−終わり−――――
237 :
ゼィア:03/10/04 18:37 ID:+/qMIBze
以上です☆
初ながら出鱈目で・・; 短くてスイマソンm(_ _)mぺコ
大助たんの女体化
学祭・・・?
240 :
125:03/10/04 21:31 ID:NbLfzthd
>ゼィアさん乙。
学祭に続くんかなぁ?続きキボンヌ。
あと、「・・」ですけど、
これは「……」の三点リーダー2セットにするだけで凄く読みやすくなります(多用厳禁
これからもガムバッテください。
まず第一話ですよろしくです_(._.)_
----------------------------------------------------------------------
第一話
「ここは・・・・どこ・・・・・・ここは・・・どこ??!」
大助は真っ白の空間にいた・・いつから・・ここはどこ・・そう・・大助は自分に自問自答を繰り返していた。
「はっっっ!!?」
ここは自分の部屋どうやら夢を見ていたようだ。
「キュゥゥ??」
ウィズが「どうしたの」という感じで僕の顔を見てくる。
「・・・・・ゆっ・・・夢??」
時刻は11時50分、まだ寝てから1時間も経っていなかった。
「・・・・・はぁはぁ・・・っ大丈夫だよウィズ(ゴクン)」
「キュウゥ!?」今度は「本当」という感じで見てきた。
「うん・・・本当だよ」
喉をならした後大助は言った。
(・・・夢とは思えなかった・・・なんだろう??)
(どうかしたか?・・大助)
「ダーク!!・・・・・」
(??どうした・・大助)
「・・・いや・・なんでもない」
その後大助はさっきの夢を振り払う様に寝た。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
次の日の朝...
大助はかなり早く起きた、時刻は6時。
「おはよう・・母さん」
「おはよう大ちゃん・・・・・???」
笑子は頭に疑問符が浮んでいるかと思う位、驚いていた。
「?・・どうしたの・・母さん??
「えっ・・だってこの時間に起きたこと無かったからびっくりしっ・・・何かあったの??」
「えっ・・ナッ・・ナニモナイヨ」
あからさまだった。
「大ちゃん!!何があったの?!」
「なっ・・・なにもないよ別に」
嘘だった・・・実はあの後同じ夢を繰り返し繰り返し見ていたのである。
「かっ・・顔洗ってくる」
「こっこら大ちゃん・・大ちゃん!!!(なにかしら・・・とても嫌な予感がするわねっっ!!)」
バシャ・・・バシャ・・・バシャと顔を洗った、かなりの寝不足だった。
「ふぁわ〜〜(・・眠いなぁ・・)」
(・・・ほんとに大丈夫か大助!?)
「ダーク!??」
(ああっ!?なに?!)
「・・いや・・ダークが僕の心配してるのが不気味で」
(!!ふっ・・ふん別にお前の心配したわけじゃね〜よ)
「そっそうだよね・・ごめん」
(別に・・(なんでだ・・・なんで心配してた・・何かあるのか??))
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
学校...
大助は睡眠不足と夢の事で頭は一杯だった、周りから「おはよう」と声をかけられてもまともに返事を
返すことが出来なかった。
「おはよう丹羽くん・・・?」
「・・・えっあっおはよう梨紅さん」
「大丈夫丹羽くん??かなり眠そうだけど」
「・・うん大丈夫だよ梨紅さん」
「そう・・ならいいんだけど」
その後二人は、ほぼ無言で教室に入った。
-------------------------------------------------------------------------------
その日の放課後...
「(あの後から梨紅さんと喋ってないなぁ)」
「・・・しょうがない今日はそのまま帰ろう」
その後大助は家に帰り、今日の夢を忘れる様に眠った。
第一話 完
まず第一話です((((((^_^;)
←貼り付けにかなり時間が掛かった(×_×;)しゅん
まだ後3話程度残っていますがもう少し待ってください(期待している人は居ないと
思いますが)((((((^_^;)
ではまたっ (。^_^。)/
ゼィアさそ
乙です。
これからも、マッタリ系やエロいのもお待ちしております!!
lovelessさそ
今日、本屋であなたのコテハンと同じタイトルの漫画を見つけましたv
とりあえずは、乙です。
キタ―――(・∀・)―――イ!!してますんで、がんばってください!!
235〜236>>
ゼィアさん良いですね (。^_^。)/
僕としては自分の作品よりこっちの方が好きかも((((((^_^;)
僕のは・・・・・・かなり稚拙(×_×;)
同じ初心者という事で頑張りましょう!! (。^_^。)/
後返事遅れてすいません((((((^_^;)
←パソコンの機能を殆ど知らない(?_?)?
247 :
125:03/10/05 00:31 ID:sgtPkp+I
lovelessさん乙。
職人増えてよかったーよ。
>198
コンドーム作戦はSTAGE-04くらいで無残に破れたはず・・・
第二話です。
はあ・・・何か全然成長していない気が(×_×;)
とりあえず第二話です・・よろしくです
247>>
ごめんなさい職人って何ですか(←基本的なものも分かっていない)申し訳ないです
\(__ ) ハンセイ
第二話
------------------------------------------------------------
今日はいつもの時間に起きた。
「ふわぁぁぁ〜(眠い・・・昨日の夢の所為かなぁ)」
(今日はその夢見なかったのか?)
「うん・・見てないけど・・気になった事でもあったの?」
(いや・・・そういう・・訳じゃねぇけどよ)
「ふーん・・・」
それから顔を洗い、服を着て、食事をしようと、とした時。
『皆さん、あのダークから予告状が届きました』
-----------------------------------------------------------
同時刻・原田邸...
「えっっ・・ダークさんが!!!」
梨紗はテレビに噛り付く様な勢いでテレビを凝視した。
『ダークの予告状の文章はこうです』
予告状の文章...
今夜7時
≪悩ましき悪魔の旋律≫
をいただきにあがります
DARK
『この予告状が東中央博物館に送られました・・・』
その後の言葉は梨紗にも大助にも届いていなかった。
------------------------------------------------------------
丹羽邸...
大助は危うく口の中の食べ物を戻しそうになった。
「げほっげほっ・・・母さんまた勝手に予告状を出したね〜〜!!!」
大助は苦しそうに言った。
「という事で今夜よろしくね大ちゃん」
「母さん〜〜〜!」
------------------------------------------------------------
原田邸...
「ダークさんが東中央博物館に来るのね・・・準備しなくちゃ」
・・・・・・もう朝の7時30分を過ぎたというのに準備をしようとする梨紗・・・。
------------------------------------------------------------
「はぁぁぁ〜〜(結局行く羽目になちゃったどうしよう)」
「よう大助!!!朝から暗いぞお前」
横から冴原が出てきて明るく(?)声を掛けてきた。
(朝から明るいんでしょ君が)
と思っても口には出せない大助だった。
「おはよう冴原」
「おうよ!!・・・所でダークのニュース・・見たよな」
「うん・・見たけど・・それが何かあったの?」
「いや・・その事実は昨日の夜8時に知ったんだけどな」
(母さん随分気が早いね!?)
大助は多少苛立ちを覚えたが冴原の話を聞いた。
「うん・・・それで?」
「いやなその博物館に問い合わせたらなそんな物置いてないってよ」
「えっ!?(ええええっ!!?)」
「おかしいなダークは何を盗む気だ?」
「うっ・・うん・・何だろうね(母さん〜〜〜〜?!)」
大助は叫びたいほど悩んでいた。
------------------------------------------------------------
その日の放課後...
「はぁ・・・何か今日も梨紅さんとまともに喋れなかった・・・・・はぁ」
(まあ元気出せよ大助)
と意地悪そうにダークは言った。
「・・・・何か僕の反応楽しんでない?!」
(いいえ〜〜)
「全くもう(ダークの意地悪)」
------------------------------------------------------------
丹羽邸...
「ただいま〜〜」
「あっ・・お帰り大ちゃん!」
「早速だけど確認ね・・・・・・・・・・・・」
その時僕は梨紅さんとの関係をどう戻すかで頭は一杯だった。
「ちゃ・・・・・だ・ちゃ・・・・・大ちゃん」
「えっ???」
「「えっ」じゃないわよ!、大ちゃん」
「あっ・・・ごめん聞いてなかった」
「もう!!」
(俺は覚えたぜ!)
ダークがこういう事を言うのは初めてだった。
(大丈夫なのダーク!)
(おう・・もう覚えたぜ)
「あっ・・あの母さん」
「何・・大ちゃん」
「ダっ・・・ダークが覚えたって(それも激しく情けない)」
「うーーん・・・しょうがないわねっっ今回だけよだけよ」
------------------------------------------------------------
夜7時...
「ダークだダークが現れたぞーー」
「どこだ探せーー」
警官達が大声を出して1人の人物を探している。
第二話 完
245>>
はい!!確かに有りますねゼロサムのでしょ♪ d(⌒o⌒)b♪
っと関係無い話はしてはいけないのだった。((((((^_^;)
またまた返事遅れてしまいましたごめんなさい\(__ ) ハゲシクハンセイ
うおー!久々に見たら職人さんがわんさかいる!!みなさん乙です。
>>247 >>198とは別人ですがコンドームは何枚も重ねれば大丈夫では?大助の出す量も減ったみたいだしw
毎朝処理に追われる大助が不憫でならない…ww
まぁ根元からあふれた場合は(ry
254 :
125:03/10/05 02:32 ID:sgtPkp+I
>253
今度試してみます。
255 :
125:03/10/05 02:32 ID:sgtPkp+I
「んん……」
ごろ。
「んぅぅ……」
ごろごろ。
「んぐぅ……はわッ!?」
どてん。派手な音を立ててベットから落下した。
「いっつー……」
床にぶつけた後頭部をさすりながら原田梨紅は目を覚ました。まだしっかり開かない眼
を擦りつつ階下へ降りた。
「おはようございます」
ダイニングに行くと、使用人の坪内が大仰な仕草で梨紅にお辞儀をした。
「うん、おはよー」
手をひらひらさせ、欠伸をしながら挨拶を返してテーブルへついた。坪内はまだ寝てい
るのではないかと思えるほどだらしない顔をしている梨紅の前に朝食を運んだ。
白米、味噌汁、煮魚と、和の雰囲気たっぷりの朝食を目を閉じたまま器用に口にする。
256 :
125:03/10/05 02:33 ID:sgtPkp+I
「坪内さん、梨紗はー?」
もぐもぐと咀嚼しながら訊ねた。
「梨紗様は顔を洗っておられます」
「今何時?」
「七時でございます」
「……おかしい」
などと疑問に思いつつ、今日も部活か、と回り始めた頭で考えた。と、そこに洗面所の
ほうからばたばた足音を立てて梨紗がダイニングにやってきた。
「おはよー梨紅。今日も早いね」
あんたの方が早いじゃん、といやみを言いかけ、そこで気付いた。
「あんた、ちょっと匂うよ」
「そ、そう?」
僅かに同様を浮かべた梨紗に詰め寄る、閉じた目で。梨紗は半歩ばかり身体を引いた。
端から見ればメンチを切っているように見えるだろう。
「うん、匂う。何だろ? 香水?」
くんくんと鼻を利かせてさらに匂いを嗅ごうとすると、
「私、もう出かけるから! それじゃ」
逃げるように梨紅のもとから去り、家を飛び出した。
「…………」
夏休みに入って以来梨紗の様子がおかしい。頻繁に出かけるし、気を遣っていたおしゃ
れにもさらに力を注いでいる。何かあったに違いない。それは推測ではなく、確信に近か
った。
257 :
125:03/10/05 02:33 ID:sgtPkp+I
「あ……」
小さく声が漏れた。僕が噴水広場に着くより早く、原田さんがそこにいたからだ。僕が
いつも座っている噴水の縁に腰を下ろし、まるで僕が来るのを待ってたみたいな、そんな
感じがする。
近づくと、彼女が僕に気付いて顔を上げた。挨拶を交わして、彼女の横に腰を下ろして
スケッチブックを取り出した。一緒にウィズが跳び出し、原田さんの膝の上で丸くなった。
どうもそこが気に入ったらしく、僕のスケッチが終るまでずっとそこにいる。原田さんも
嫌がった顔一つせず、優しくウィズの身体を撫でる。
これがいつもどおりの光景だ。とても静かに二人と一匹が座っている。僕がスケッチに
集中している間は会話はあまりないけど、不思議と気まずい感じもしない。傍に彼女がい
るだけで、それだけで胸の奥が仄かに暖かくなる。
しばらく無言で描き続け、ようやく自分で納得いくような風景が描けた。書く向きをず
らしたり、筆のタッチを微妙に変え、細かい修正を終え、一枚の風景画がやっと完成した。
「できたの?」
ウィズを抱きかかえた原田さんがスケッチブックを覗き込んできた。よく見えるように
傾けた。
「うん。やっと満足できるのができたよ」
「うわーっ! 凄い上手!」
目を輝かせて言われ、少し恥ずかしくて顔が赤くなるのが分かった。
「ありがと。でも僕なんてまだまだだし」
「そんなことないよ。この絵、凄い好きだよ」
「そんな……」
ぽりぽりと鼻の頭を掻いた。
258 :
125:03/10/05 02:34 ID:sgtPkp+I
「ねえ、この絵貰っちゃってもいいかな?」
「え?」
思いがけない一言に耳を疑いたくなった。
「でも、鉛筆で描いただけのスケッチだし」
「いいの。好きなんだもん」
自分の絵をこんなに好きだと言われたことがなく、僕は嬉しくなった。スケッチを終え
たばかりのページを引き剥がし、筒状に丸めて原田さんに渡した。
「ありがとう!」
僕の絵を大事に胸に抱いてくれる(その時ウィズが彼女の胸から落ちたのは見なかった
ことにした)。こんなに眩しい笑顔が見れて本当によかった。
「描き終わっちゃったけど明日もここに来るの?」
「ん、そうだねぇ……。明日からは別の場所に行こうかな」
「じゃあ私も付き合っていい?」
原田さんと一緒に……。凄く魅力的な提案だ。でも二人でなんて、緊張しまくっておか
しくなりそうで、最後にはあんなことをしてしまうかもしれない。ちょっと考えただけで
素直に下半身が震えた。流石に即答できず、少しだけ考え込んだ。
そして、一つ思いついた。
「じゃあ原田さんが、僕が次に描いている場所を捜し出すっていうのはどう?」
「んー? それって丹羽くん捜して街を回れってこと?」
「そ。それで捜し出せたら今までみたいにするんだ」
「なんだかゲームみたいだね」
「そうそう。夏休みが期間の長いゲーム」
「でも絵を描く場所って変わっちゃうし、描かない日だってあるでしょ?」
「それは、ほら。街を歩いて運動したことになって身体にいいよ」
「あーっ、私まだそんなに衰えてないよ」
酷い酷いと言われ、でもその顔は楽しそうに笑っていた。
楽しい一時は瞬く間に過ぎ、太陽はすでに真上にいた。
259 :
125:03/10/05 02:35 ID:sgtPkp+I
家に帰り着き、すぐに自分の部屋に駆け上がり、ベットにうつ伏せで倒れこんだ。胸が
きりきりと悲鳴をあげて苦しんでいる。丹羽大助と原田梨紗が、妹が楽しそうにしている
ところを偶然目撃し、原田梨紅はその場からすぐに逃げた。
(なによ、なによなによッ!)
一心に何かを罵っていた。それは丹羽か、梨紗か、それとも自分か。とにかく罵りの言
葉を頭で叫んでいないと胸が破裂しそうであった。
梨紗の様子がおかしい理由もようやく分かった。だが、分かってしまえばそれがさらに
辛く梨紅の心に圧し掛かった。楽しそうな二人の間に、自分が入る余地なんて残されてい
ないのでは、それどころか初めから無かったのではないかと思えた。
ただベットのシーツを濡らし、肩を震わせるしかなかった。
260 :
125:03/10/05 02:36 ID:sgtPkp+I
家に帰り着くと挨拶もそこそこに自分の部屋へ駆け上がった。机にバックを置き、ベッ
トに身体を投げ出した。
「いいことでもあったか?」
「ん? そうでもないよ」
「分かりやすい嘘ですね」
「そうかなぁ」
「顔がにやけとる」
二人が楽しそうに冷やかそうとしているのが分かるけど、今日はそれさえ快く感じられ
るほど気分がいい。
このまま眠ってしまおうかと考えた時、下から母さんの声が聞こえた。
「大ちゃん、お電話よ」
「はーい」
返事をして下に行く途中、
「つまらん」
「つまらないです」
二人が腹の底から不機嫌さをひり出したような声で言ってきた。これ以上何か言われる
前にささっと部屋を脱出した。
「……レム、気付いてるか?」
「……はい」
「最近、出番が減ってきておる」
「嘆かわしいですぅ……」
261 :
125:03/10/05 02:37 ID:sgtPkp+I
母さんから受話器を受け取ると、そこからは夏休みに入ってから聞いていなかった美術
部顧問の先生の声がしてきた。先生の話によると、今日学校の美術室に参考資料として絵
画が何点か届き、その整理に僕を駆り出したいということだ。興味をそそられた僕は二つ
返事でオーケーした。
「なんだったの? もしかして呼び出し?」
受話器を置くと、いきなり母さんがそう訊いてきたので肩がこけた。
「違うよ。学校に絵が幾つか届いたからその整理を手伝って欲しいんだって」
「あら、それじゃあ明日は学校に行くの?」
「うん」
「お弁当はいるかしら?」
「いいよ。お昼までには帰ってこれると思うから」
心配性な母さんと別れて部屋に戻った。
「主っ!」
「ご主人様!」
「おわぁっ!?」
入るなり、二人の大声が鼓膜を貫いた。
「早く寝ろ、寝るのだ!」
「寝てください、お願いしますぅ!」
「んな、なんで……」
『なんででもだ(です)!!』
262 :
125:03/10/05 02:37 ID:sgtPkp+I
僕は手を後ろで縛られ、地面に転がされている。身体を起こそうにもさっちゃんに肩を
踏みつけられ思うように動けない。
「だから、なんでこんな酷い格好させてるのっ!?」
今までこんなことをされたことがなかった僕はそれが気に食わなかった。
「分かるであろ?」
「うんうん」
「分かんないよ」
二人がくすくすと、凄惨な笑みを浮かべている。怖い。
「分からせてやろう。どちらの実力が上か」
実力ってなんのことさ。そう思っていると肩から足を離したさっちゃんが僕の身体を起
こして背後に回りこんだ。何をする気だろうと怪訝に思っていると、彼女の指が僕のもの
にすっと這わされた。
「んッ……」
微かな刺激に顔を歪めた。
「ふふ。可愛い顔ですぅ」
レムちゃんの顔が僕の股間へ近づく。さっちゃんの指が軽く陰茎をさすり、ペニスを膨
らませてきた。血液が通い始めた亀頭がレムちゃんの口の中へと姿を消した。
「どうだ? 気持ちよいか?」
さっちゃんが耳元に息を吹きかけてきた。
263 :
125:03/10/05 02:38 ID:sgtPkp+I
確かに、気持ちいい。女性二人に挟まれ、背中にはさっちゃんの豊満な胸が密着し、肉
竿を優しくしごき、前では股間を顔に埋めたレムちゃんが懸命な舌遣いで僕のを舐める。
射精しそうになった時、レムちゃんが金玉と肛門の間を強く圧迫してきた。
「んぅッ!」
快感に負けたペニスがびくびくと小刻みに震えた。けど、そこから放たれるべき白色の
粘着液が噴き出さない。
「ここを押すとですねぇ、射精しないんですよぉ〜」
彼女が陽気に告げてくる。僕自身はそんなことはどうでもよかった。とにかく今は出し
たかった。
「レムちゃん……、指、離して」
「ダメだ」
「や、さっちゃんには訊いてな」
「ダメです」
「だ……ダメなの?」
『ダメ』
断固として拒否された。二人の手と口は止まることなく、尚もペニスを攻めてくる。再
び震え上がるが、やはり精子は出ない。確実にイッてるはずなのに、まったく萎える様子
がない。それどころかさらに大きく腫れ上がっている。
「うぐぅ……」
僕が呻くのを楽しそうに聞いているのが気配で分かる。完全に弄ばれている。
「さて。今晩は主をたっぷり可愛がってやらねばな」
「えへへ。弄りまくりますよぉ」
「は、はぅ、あぁッッ――」
僕が射精を許してもらったのは最後、さっちゃんの中へ放つ時だけだった。それまでに
すっかり身体はおかしくなり、従順に二人に従っていた。
「うむ。久々にやり応えがあったぞ」
「次からもこの調子で。あ、もちろん私に出してくださいね」
「…………はい」
うわー。なんだろうこの気持ち。惨めというか何というか。女性二人に穢されたという
のは情けない気分になるのか。
264 :
125:03/10/05 02:39 ID:sgtPkp+I
八時四十二分。この調子なら九時までには学校に着ける。余裕を持って出てきてよかった。
今日はどうも腰がおかしい。原因は分かりきっている。さっちゃんとレムちゃんに弄ら
れすぎたせいだ。昨日はいつにも増して激しく、時折り『出番、出番』と意味不明の単語
を呟いていた。
(なんだったんだろう……)
出番。その単語を繰り返しているうちに校門へ辿り着いた。夏休み期間中のため、学校
に来ている生徒の数は皆無に近い。グラウンドの方から運動部の掛け声が聞こえる。人気
はそれくらいだ。
顧問の先生に会うために職員室へ急いだ。
265 :
125:03/10/05 02:40 ID:sgtPkp+I
(あれって……)
グラウンドから見えた人影に梨紅の心臓が一度だけ大きく脈打った。赤髪の男子生徒と
いえば彼しか知らない梨紅は人影を目で追おうとして、やめた。
脳裏に甦るのは昨日見た大助と梨紗の楽しそうな笑顔。世間一般から見れば、二人は恋
人同士と言っても差し支えないのではないかと梨紅は思った。
(けど……)
このまま自分の想いをくすぶらせたままでいいわけがない。思いは募る一方で、それは
決して消えることはない。
「――梨紅、危ないっっ!!」
「へ?」
どごん。部員の一人が放ったボールが振り返った梨紅の脳天に見事に直撃した。ひしゃ
げるような鳴き声をあげ、梨紅は地面に倒れこんだ。
「ちょ、大丈夫!?」
数名の部員が梨紅の傍に駆け寄り、心配そうに顔を覗き込んだ。
「あっ! 額が割れてる!?」
「ホントだ。血が出てるよ!」
「保健室に行った方がよくない?」
緩慢な動作で身体を起こし、痛む頭を抑えた。
「うん……。行ってくる」
のそっと立ち上がり、とろとろと校舎に向かい歩き出した。見送る部員たちは危なげな
足取りに不安を覚えていた。
「んんー……、ん?」
大助のことを含め、ここのところ不幸な出来事が立て続けに起きている気がしてならな
い梨紅が、そこである考えを思いついた。
(そ、そうだ!この隙に丹羽くんに会ってみよ!)
会って何をするか。そんなことを考えるのは二の次で、元気に校舎に駆けていった。額
から血を流しつつ。
266 :
125:03/10/05 02:40 ID:sgtPkp+I
「や、休みぃぃぃっっっ!!?」
我が耳を疑うとはこのことだな、と思った。野澤先生が丁寧に教えてくれた。今日から
美術部顧問の先生は旅行に出かけた、と。
(つまり、仕事を、押しつけられたと、いうことですか)
野澤先生が一枚のプリントを差し出してきた。そこにはこれから僕がどうすればいいか、
事細かに記されてあった。そこまで計算していたなんて、ある意味寒心させられる。
とにかく一人で全部やるには量が多すぎると感じた僕は知り合いを捜しに校内を歩き回
った。闇雲に歩いても見つかるわけはないのでまずは教室へ向かった。
U-Bには誰の姿もなかったが、鞄が幾つか見受けられた。
(あの席は関本か。それに向こうは……石井さんか)
二人を捜して回るか、それとも諦めて美術室へ行くか迷った時、鞄がもぞもぞと動き出
した。まさかと思い中を見ると、やはりいた。
「ウィズ。ついてきちゃったのか」
「キュウ」
おそらくいつもの調子で鞄に跳び込んだんだと思う。
これは使える。
「よし、ウィズ。勝手についてきた罰として僕の手伝いを頼む」
分かったのか分かってないのか、ウィズは嬉しそうな声をあげている。ウィズを掴んで
美術室へ急いだ。
267 :
125:03/10/05 02:41 ID:sgtPkp+I
まずはウィズを僕に変身させた。これなら作業も大分楽になるはずだ。
「じゃあまずはあれとそれとこれをあっちに運んで――」
「うん」
「それでこの絵をあそこにかけて……あ、違う違う。それはこっち」
「うん」
「んでもって後はかくかくしかじか……っと」
「うん」
「よし。おしまい」
「うん」
ウィズが手伝ってくれたおかげで時間もかなり短縮できた。
「戻っていいよ」
「うん」
ウィズが白い毛玉へと姿を戻し、鞄の中へ入るよう促がした。
「さて」
ようやく僕がしたかったことができる。今日ここに来たばかりで、さきほどようやく整
理を終えた絵画の数々をゆっくりと見て回るのだ。
美術室の壁にかけられた一つ一つの作品を穴が開くほどじっくりと見回した。筆遣い、
色遣い、作者の感性。その絵が伝えようとしてくるものをできる限り享受しようと努めた。
その中で一枚の絵画が見て回る僕の足を止めさせた。
ユニコーンと幼い少女が描かれた絵。動き出しそうなほどの躍動感が感じられる。絵自
体は動きがあるものではないけど、まるで生命を宿しているような、生きた躍動感がその
絵にはある。それは作者が魂を吹き込んだとかそういった感じじゃなくて、その絵が生き
ていると言った方が正しい、と思う。
「なんだ……、この感じ」
背筋に走る悪寒にもにた感覚。身体中の細胞がふつふつと沸き立つような緊張感。噴き
出す汗。それはあの時と似ている。一度だけ対峙したことのある、殺意を抱く美術品。
「…………まさか!?――」
268 :
125:03/10/05 02:42 ID:sgtPkp+I
異変は外にいた者に降りかかった。校舎の一角から学校の敷地を覆い尽くすほどの圧倒
的な光が溢れ出す。外にいた生徒のほとんどがその現象に目を奪われた。
息つく間もなく、その一角から一つの光球が飛び出した。それが上部に二つの光の筋を
伸ばし、まるで翼のようにはためかせた。
それが消えたかと思うほどの高速で飛行し、人間の身体をかすめる。その瞬間、その人
物は支えを失ったように崩れ落ちた。
その状況を呑み込む者が現れる前に、誰もが倒れたまま動かなくなった。多いとは言え
ない人数だが、グラウンドで、校内で、ところ構わず人が倒れている光景はそれだけで十
分過ぎる狂気を孕み、死人が転がる、戦争のように――。
269 :
125:03/10/05 02:44 ID:sgtPkp+I
Apart終了。お休みなさい・・・
255〜268>>
またまた良いですねぇ (。^_^。)/
これからも頑張ってください!!!♪ d(⌒o⌒)b♪
僕の小説もこんな感じになればなぁ((((((^_^;)
まだまだ勉強ですね (▼、▼メ)メラメラ
頑張ります!!!♪ d(⌒o⌒)b♪
お願いします〜〜(大泣き)( ・_;)( ;_;)( ;_;)(>0<)ワーン
誰でも良いですセックスに関する事教えて下さい〜〜♪ ( ・_;)( ;_;)( ;_;)(>0<)ワーン
経験が無いので書けません〜〜(;_;)ウルウル
お願いしますm(__)mペコペコ
(後小説に関する事も教えて下さいお願いします)
←ほぼ無知ですすいません((((((^_^;)
うーん、しらないものを無理に書く必要はないんじゃ・・・?
と思うし、知らないからってここで懇切丁寧に1から教えることはできないっていうかしないので
どうしても知りたかったらそれ系のサイトにいってください。
ネットには膨大な数の小説やエロ小説の類があるのでそれでも見て勉強すればよいかと。
>125氏
おつかれー。なんだか梨紗が1歩リードしてますなぁw
ダークがいなかったら三角関係でとってもおもしろいと実感できました。
梨紅の追い上げにも期待w
272>>
うーむ・・そうですか、でもありがとうございますちょっと行ってきまーす (。^_^。)/
274 :
137:03/10/05 12:50 ID:d5p4iIuw
125氏乙です。
学校に来ていた関本と石井さん・・・ま、まさかっっ!?
探してみるのもまた一興、とか。
関本がバーベキューの時の如くやつれている姿が目に浮かぶw
275 :
ゼィア:03/10/05 17:28 ID:jU8QMYzB
125氏最高デシタ!!(・V・)/
次回も楽しみにしとりますvv
>loveress殿
新人同士(?)頑張りやしょう!!
あなたの小説、我は好きゼよーーーーッ!о(≧▽≦)о
―――― −―
続きは、学際に繋げるつもりです!! イヤ・・・分かりませんガねェ・・世界は広い
・・・♪〜θ(^0^ )( ^0^)θ~♪
276 :
125:03/10/05 18:05 ID:sgtPkp+I
ゼィアさんもlovelessさんも顔文字遣いすぎているのでは・・・。
遣うのが悪いというわけではないですが、
多用はスレの(というか2ちゃんの)空気に合わないので・・・。
スレ違いの話スマソ。
>273-276
そして書き手の四連カキコというミラクルw
277 :
ゼィア:03/10/05 19:24 ID:jU8QMYzB
>125氏
スンマセンでした・・顔文字、今度から激減いたしヤす・・。
278 :
ゼィア:03/10/05 19:40 ID:jU8QMYzB
――前回の続き―――
学際も間近なため、みんな大忙しでした。
もちろん、大助のクラス2−Bも劇の取り組みで大忙し。
ヒロイン・フリーデルトを演じることになった大助は、セリフも覚えないといけな
いし、女を演じなくてはいけなく、大変でした。
「う〜ん…やっぱ、女を演じるのって……難しいなぁ………;」
大助は、かなり悪戦苦闘の様子でした。
そこへ、冴原がやってきました。
「大助ーー。どうだ、調子は?」
「……全然進まない………。」
「まぁ、女ってモンは、大変だからな。…そうそう、用事で来たのに忘れるところ
だった……。フリーデルトとエリオットの衣装が決まったんだ。日渡は、もぅ着替え
に行ってるぜ。お前も、女子に服借りて試着してみろ。」
「えぇーー……。どうせ、スカートとかでしょ?」
「あったりめーだろ!?ヒ・ロ・イ・ンなんだからな!」
嫌がる大助に無理やり服を渡し、着替えに行かせました。
279 :
ゼィア:03/10/05 20:00 ID:jU8QMYzB
大助は、嫌ながらもちゃんと着替えて教室に戻りました。
大助は、教室のドアを開けて驚きました。
そこには、居るはずのないダークの姿が………。
驚きのあまり、ボーゼンとしてると、梨紅が大助の言いました。
「あ、やっぱり丹羽君も驚いた?あれ、日渡君だよ。衣装係の女子が、『やっぱカ
ッコイイ衣装が良い!!』って騒いでさ・・結局、何かダークの格好。」
「へぇーー。そうなんだ……。一瞬、本物かと思った……アハハ。」
と、大助は引き笑い状態でした。
「それにしても……女のあたしより、可愛いね。丹羽君…。」
「え……。あ、そう…かな?でも、やっぱり梨紅さんの方がずっと可愛いよ。」
あっさりと、大助が言った言葉に梨紅は顔を真っ赤にしました。
すると、クラスの女子が大助の元へ集まってきました。
「キャー!!丹羽君もピッタリね!!可愛い〜〜〜!」
「うーん。やぱり、私達の目に狂いはなかったわ!ほぼ、すそ直しもなしね!」
キャーキャーと騒がれっぱなしで、大助は疲れて思わず大きなため息をついてし
まいました。
「ハァ……。本当、面倒な事になっちゃったな…。」
「丹羽は、ため息をつくのが好きだな。」
「ウワッ!!日渡君……いつの間に……;」
「失礼だな…。それにしても……」
「何?」
大助が日渡に尋ね返すと、日渡は鼻を高くして言いました。
「やはり、俺は何を着ても似合うな。ハッハッハッハッ。そこいらの人間とは」
「あー、はいはい。そうですか。それは、良かったですねーー」
そう言って、大助はその場を流しセリフの練習をしました。
「えーと…。あ…あな……?た…。え……?は?何なんだ、このセリフは……」
セリフを覚えるのに一生懸命な大助の姿を梨紅は、ただただ見つめていました。
「丹羽君……。忙しそうだな…。あたしも、何か協力してあげられれば良いんだ
けど………」
―――――第二部終了―――
学祭・・・学際・・・
ううう・・・ごめんなさい(×_×;)
かなり短くなってしまいました((((((^_^;)
もっと気合をいれてやりますのでご勘弁を((((((^_^;)
・・・っという事で第三部ですよろしくです_(._.)_
第三話
博物館・中央部...
「今夜も軽く頂きますっと」
(今日は日渡くん・・居なかったね)
「ああっ・・・そういえばそうだな」
------------------------------------------------------------
博物館・外...
ダークが警察の目を盗みながら家に帰る途中。
「あっ ダーク!!」
「げっ 梨紅!!」
(りっ 梨紅さん!?)
その瞬間≪悩ましき悪魔の旋律≫が光り始めた。
「何だ・・この光りは!!」
(ダッ ダーク何なのこの光)
「俺に聞かれても分かるか・・・俺も初めてだこんなの」
その時≪悩ましき悪魔の旋律≫から一筋の光が梨紅に襲い掛かった。
「きゃーー」
梨紅が悲鳴をあげる。
「梨紅!!!!」
(梨紅さん!!!!)
梨紅に光が掛かった後、梨紅は倒れた。
「大丈夫ですか!!・・!!ダークだダークが居たぞーー」
「ちぃぃ・・・クソッ・・一先ず今は逃げるぞ」
(うん!!)
------------------------------------------------------------
丹羽邸...
無事逃げ切ったダークが家で状況を話していた。
「――――っつう訳だ」
「それは困った事になったわねっっ」
暫く考える事で一杯になったダークは黙っていた。
「それは、この呪いの可能性があるな」
後ろから小助が話し掛けてきた。
「何だ・・何の呪いだ!!!!!!」
ダークが大声を上げて聞いてきた。
「ああ・・これだ」
「あっ?・・・・・・・・」
暫く沈黙が続いた。
「おいおいマジかよ・・・・」
「ああ・・今の所これが一番可能性が高い」
(なっ・・何々)
「お前に今話したら、パニックになるから話さん」
(何なのさーー)
第三話 完
276>>
申し訳ありませんでした!!。
(見るのも遅れまして小説を出すのが先になってしまいましたごめんなさい)
という事で顔文字は出来るだけ使わないようにします、すいません。
小説も遅れて、すいません!!!
この話は次で終わりなのですが僕が童貞な所為もあり、勉強してきます。
あともう暫くお待ちください_(._.)_
本当にごめんなさい!!!
286 :
137:03/10/06 15:17 ID:qsUoEN7P
ゼィアさん、lovelessさん乙です
ぶっちゃけ漏れも初心者なんでマターリ行きませう
>>285 まああんまり童貞と自ら言うのもアレかと
現実と想像とは似て非なるものだし、と知ったかぶりしてみる
とにかくガンガッテください
あ、よく考えたら漏れはまだ四肢(ry しか投下してない罠(´・ω・`)
今日あたりいけるかな・・・
286>>
すいません昔から童貞は気になってたとこなので、ついつい使ってしまいます。
(あと本当にありがとうございます)
小説の方も、まだ遅れそうです(勉強中!!)
(あっ・・・後、弟が「小説を作りたい」と言ってます良いでしょうか?僕20歳、弟18歳)
>>287 あのさぁ…今まで黙っていたんだけど、一言良いかな?
こ こ 、 2 1 禁 よ ?
あと、2ちゃんを含めたあちこちの『サイトマナー』関連の文章を一度読んだ方が良いと思うよ…
自治厨じみててスマソ。
うわぁぁ〜
なんか昨日来なかっただけなのに、いつの間にか・・・・
とりあえず、はと・・・
>125氏
乙でぃす。
美術品から出てきた奴は・・・もしや・・・?
Bpartも期待してます!!
>lovelessさん
まずは、乙です。
で、とりあえず、質問の方から・・・
職人ってのはぁ・・・まぁ、SSなり、AAなり(SSってのは・・・あぁ〜・・・後記)を
作る人たちのことを、職人っていいます。
ココで言うなら、125氏・137氏・ゼィア氏、そして、あなたです。
なんか、投下が遅いだとか童貞だとか、気にしてるみたいだけど、
ぜんぜん遅くもなければ、童貞も気にすることもない。
極論を言えば、しつこい。(まぁ、そこまで行かずとも、そんなに気にすることはないってこと。)
あとは、>288さんも言ってる通り、あちこち見て勉強した方が良いと思うな・・・
どうしてもわからなかったら、初心者板で聞いて見なさいナ
>ゼィアさん
ひとまず、乙です。
で、「学際」ってのは、変換で出ないのはわかりますけど、
せめて、登録してください。ちゃんと「学祭」って・・・
さすがに、気になります・・・
ではでは、第三部もがんばってください。
>137さん
キタ―――(・∀・)―――イ!!してます。w
がんばってください。
290 :
289:03/10/06 19:54 ID:eG1uQB8G
後記とか言っといて説明してないよ・・・
SSってのは
Short Storyの略で、小説とかそういう小話的な物の事。
で、もひとつ。
「>>」の使い方だけど、ちょっと気になったんで・・・
番号・名前の前に「>>」を半角でおいてください。
一応、そういう使い方をしてるってことで・・・
番号を書けば(番号も半角)、そこにリンクが張られるんで、
(まぁ、専用ブラウザには関係ないが・・・)
あと、***から***までってときは、「〜」じゃなくて、
「-」をつかってもらえると・・・
(例・「
>>255-268」)
長々と、マジにスレ違いスマソ
291 :
137:03/10/06 21:16 ID:H6y4Nam9
梨紗SS 例の奴の続き
病院から帰ってきて、私は見慣れた自分の部屋のベッドに座っていた。
その隣では梨紅が看病している。
「ねえ梨紅・・・わたし、手術とかした?」
「そんなわけないじゃない。なんで?」
「ううん、いいの。」
私が病院で目を覚ましてから、梨紅から4日間行方不明になっていたこと、
丹羽君に頼んで見つけてくれたことを聞いた。
行方不明になっている間何があったのか聞かれたが、
思い出してみてもあの恐ろしい出来事以外思い出せない。
そのことを話すわけにも行かず、適当に言葉を濁してごまかしたのだった。
「とにかく、今日はゆっくり休んで。」
「・・・うん。」
医師の話によると、軽い栄養失調と貧血を引き起こしているだけで、
今日しっかり栄養を取って休めば明日には元気になるらしい。
私はベッドに横になると、疲労のせいかすぐに眠ってしまった。
292 :
137:03/10/06 21:17 ID:H6y4Nam9
ジリリリリリリリリリリッ!カチャ。
「ん・・・ふあ・・・」
うるさく鳴る目覚まし時計の音で私は目を覚ます。
いつもと何も変わらない朝。起き上がって欠伸をしながら伸びをする。
どうやらゆっくり休めて体調も良くなったようで、眠いが特に目眩や気だるさはない。
下に降りると母が朝食の支度を整えていて、いつものように挨拶する。
「じゃ、いってきまーす!」
先に準備が整った梨紅が私を待たずに行こうとする。
「ちょっと、梨紅病み上がりの私をほっといて先行くの?」
と言い終わる前に梨紅はさっさと行ってしまった。
「もう!」
退院早々不機嫌になって家を出て学校に向かう。
「あ、梨紗、おはよー!風邪治ったんだ?」
「う、うん、おはよ。」
どうやら、風邪を引いてこじらせた事になっているらしい。
「そういうことは先教えといてよね・・・。」
思わず不満をもらしてしまう。
「なにが?」
「な、なんでもない。」
席に座り、辺りを見回すと、先に出て行ったはずの梨紅がいないことに気付く。
梨紅の席にも荷物がないのでまだ来ていないようだった。
朝練にしては梨紅が出たのは遅すぎだし、何かあったのかと不安になり
私がしばらく教室の入り口を見つめていると、
何人かのクラスメイトがそこを出入りした後、彼はやってきた。
293 :
137:03/10/06 21:19 ID:H6y4Nam9
小柄で、顔は意外に整っているがかっこいいと言うのではなく、可愛いと言う感じだ。
いつもちょっと情けない表情をしている彼は楽しそうに微笑みながら入ってくる。
「丹羽君・・・。」
これまではそんなことがなかったのに、どきりと胸が高鳴る。
(あ、あいさつあいさつ)
そう思って立ち上がろうとしたとき、私の動きが止まる。
後ろから続いて入ってきたのは、梨紅だった。
まさか、一緒に来たなんてことは・・・。
「あ、原田さん、おはよう。」
「お、おはよ。」
彼の微笑が胸に突き刺さる。
「梨紗、元気ないけどやっぱまだ休んでた方がよかったんじゃない?」
「もう大丈夫よ。ねえ梨紅、先に出たくせに随分遅かったわね?」
「ん、まあ、ちょっとね。」
「丹羽君と一緒に来たみたいだったけど?」
「ぐ、偶然出会っただけだってば。」
そう言う梨紅の頬は赤くなっていた。
「・・・あっそ。」
私はまた不機嫌になって机に突っ伏した。
294 :
137:03/10/06 21:19 ID:H6y4Nam9
授業が始まると休んでいた分先に進んでいたのは当然で、
横で梨紅がちょくちょく教えてくれたりするが、分からないところが多々あった。
わいわいと雑談している教室の風景も何処か遠くから聞こえているような気がして、
いつもの風景なのになんだか違う、そんな気がする。
「梨紗、ほんとに大丈夫?」
梨紅が心配そうに声をかけてくる。
「うん・・・。」
「どうしかたの?」
「なんだか、置いてきぼりになったような気がして・・・。」
「しばらく休んでたからそう思うだけよ。すぐ慣れるってば。」
「そうかな?」
「そうそう、ほら、いつものDQNな梨紗に戻って!」
「うん・・・ってなによそれっ!?」
意味の分からない単語を言われてムカッと来たが、
なんだか元気が出てきたような気がする。もう、大丈夫―――。
295 :
137:03/10/06 21:20 ID:H6y4Nam9
と思って楽しく学校に行ってから帰ってきたものの、
自分の部屋に一人ぽつんといると、やはりあのことを思い出してしまう。
4日間、自分は何をしていたのか。
たしか、友達と遊びに行って別れたところまで覚えている。
それからがはっきりと分からない。
手足が元に戻るなんて考えられないし、でも、覚えているのは・・・。
ぶんぶんと頭を振りその記憶を振り払うと、
ふと最後に現れた丹羽君の顔が頭によぎる。
いつもの情けない笑顔とは違う、真剣な眼差し。
その視線がつらそうに私からそらされる。
(いや・・・丹羽君、ちゃんとわたしをみて・・・!丹羽君になら・・・)
どきりと胸が高鳴る。。
(丹羽君になら・・・なに?)
胸の鼓動が激しくなり、体が熱くなる。この感覚ははっきりと覚えている。
男たちに囲まれ、じっと見られていたとき・・・。
近づいてくる男が、丹羽君と重なる。
(何この感じ・・・我慢、できない・・・!)
296 :
137:03/10/06 21:21 ID:H6y4Nam9
ゆっくりと、私の右手が股に伸びる。
「んっ・・・はぁっ!」
突然襲い掛かる快楽に思わず声を漏らす。
(だめ、隣の部屋には梨紅が・・・)
私は声を堪えつつ、自分の豆をこね、
左手は自然と胸をまさぐり、自らを愛撫する。
「んん、に、丹羽君・・・。」
今まで気になっていた少年への思いがあふれ出す。
あの時されたように膣口を指でなぞると私はビクンとのけぞり、
指がぬらぬらとした液体に濡れた。
「ふあ、い、入れ・・・。」
私は自らの指を彼のものに見立てて膣に入れ、
中でくちゅくちゅと指を動かすと今にもおかしくなりそうになる。
「梨紗・・・なに、やってんの?」
限界になりそうなとき、突然声をかけられ私はハッと我に返った。
そこには呆然と私を見ている梨紅がいて、私は恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
心臓がばくばくと今にも飛び出しそうで、そこにいられなくなって部屋を飛び出した。
「梨紗、何やってたんだろ?」
何をしていたのか素で分かっていない梨紅だった。
297 :
137:03/10/06 21:22 ID:H6y4Nam9
「梨紗ー?こんな時間にどこ行くつもり!?」
母の声も無視してそのまま当てもなく家を飛び出し、ひたすら走った。
どれくらい走っただろう。息を切らして座ったそこは、
家から100m程しかない公園のベンチだった。
「はぁ、はぁ、こんなに走ったのに何でこんなに近くなのよ・・・。」
単純に運動不足なだけだったのだが。
とりあえず手がまだべとべとだったことに気が付いて、
公園の水道で洗い流した。
「梨紅ったら、ノックくらいしたら良いのに・・・。」
一息ついたものの、これからどうするか困る。
あんなところを梨紅に見られて恥ずかしくて帰れないし、
辺りはすっかり暗くなってしまっている。
さらに、途中でやめてしまったせいか、ずっと変な気分だ。
「もう・・・最悪。」
つぶやいた瞬間、ガサっと木の葉が揺れる音がして、
私はびっくりして上を見ると闇に紛れてバサバサと黒い鳥が飛んでいくのが見えた。
「なーんだ・・・鳥か。」
はらりと手に落ちた羽を見てふと思う。
怪盗ダーク。少し前40年ぶりに姿を現した怪盗は、
黒い翼を持った美青年だった。
私は一目惚れして美術館に忍び込んで待ち伏せたり、追っかけたりしたが、
そんな簡単に出会えるはずもなく住む世界が違うと諦めたのだった。
「ったく、母さんもひどいよ、毎度のことだけど息子にこんなことさせるなんてさ。」
ぼおっと考えていると、再び突然茂みがガサガサとなって彼は出てきた。
表情はいつものままだが、着ている服がいつもとは違う雰囲気を漂わせる。
少々大きめで、真っ黒な衣装。まるでダークのような・・・。
298 :
137:03/10/06 21:22 ID:H6y4Nam9
「って、丹羽君!?」
「え?あっ、は、原田さん!?こ、こんな時間に何してるの?」
「丹羽君こそなにしてるの?」
「うっ、いや、その・・・ちょっと散歩、なんて・・・」
黒ずくめで夜中に散歩なんて、かなり苦しい言い訳に思える。
じーっと怪しそうに見つめると、困った顔で彼があははと笑う。
「そうだ、今日丹羽君の家に泊めてくれない?」
「ええっ!?ぼ、僕の家っ!?」
我ながらナイスなアイディアだ。
丹羽君の家に泊まれば今日は梨紅と顔をあわせずに済むし、
私が目を潤ませて頼めば断れないはずだ。
それに、丹羽君とふたりきりになれ・・・どきりと再び胸が高鳴る。
忘れかけていた気持ちが再び湧き上がる。
「えっと、でも、家の人とか心配しない・・・?」
丹羽君に言われて気がつく。そういえば、当然彼の家にも家族がいるわけで、
そんなところで二人きりになったりは出来ない。
「やっぱりいい。それより、丹羽君に話があるの。」
「な、なに?」
「ここじゃ誰かに聞かれるかもしれないから、場所を移しましょう。」
そうだ、私は丹羽君に聞いておかなければならないことがある。
それと、このもう抑えようのない気持ちも―――。
299 :
137:03/10/06 21:23 ID:H6y4Nam9
「あ、あの、場所移すって、なにもこんなところじゃなくても・・・。」
私が戸惑う丹羽君を連れ込んだのは、真ん中に大きなベッドがあり、
他には色々な調度品や道具が置かれている部屋だった。まあ、いわゆるあれだ。
止められそうなものだが、無人だったので難なく入ることが出来た。
とはいえさすがに入るときはこの年だし目立っていただろう。
とりあえず2人はソファーに座って小さくなっていた。
「そっ、それで、話って?」
「うん・・・丹羽君が私を見つけてくれたとき、どんな状態だったの?」
うっ、と丹羽君は詰まる。
その一瞬の彼の戸惑いが私を見つけたところが普通でなかったことを物語る。
「もしかして、原田さん覚えてないの?」
「そうじゃないけど。」
私が思い出せるのは、薄暗くて変わった匂いのする地下室のような場所で、
自分の手足を失ったことだけだった。
思い出すたび、吐き気とは別に抑えようのない気持ちが湧き上がってくる。
「原田さんごめん、ちょっとトイレ!」
私の気持ちを知らずに、彼はトイレへと駆け込んだ。
「ちょっとダーク、記憶書き換えてなかったの!?」
(あー、わりぃ、忘れてた。)
「わ、忘れてたって、まずいじゃないかっ」
(どーせ手足つなげたんだから、覚えてても信じられてねーよ。
聞かれてもシラきりゃダイジョーブだって。)
「ダーク、わざと忘れたでしょ。」
(さーな。んなことより、せっかくのチャンスなんだから、やっちまえよ。)
「やっちまえって、な、何言ってるんだよっ!?」
(フラれても好きなんだろ?それに向こうからこんなとこ連れ込んできたんだぜ、
その気あるとしか思えねーだろ。ま、俺は中古品なんざ御免だがな。
俺はしばらく寝ててやるからよ。)
300 :
137:03/10/06 21:24 ID:H6y4Nam9
少しの間私は一人取り残され、落ち着きなくうろうろしたりする。
梨紅の前で片付けるわけにも行かず、そのまま出て来てしまったので
下着の中はべとべとだった。
結構時間が経ったが、それでも私の股はじんじんしている。
今は彼と二人きり。見つけてくれたときのことを聞いて気を逸らそうとしたが、
もう、そんなことはどうでもいい、我慢できない。
(丹羽君に、私の気持ちを伝えて、それで―――。)
私はそのことで頭がいっぱいになっていた。
変態と思われるかもしれない。こんな私を知ったら嫌いになるかもしれない。
それでも、もうこの気持ちは抑えられない。
がちゃっとドアが開き、彼が出てくる。
「え、えっと、それで・・・・。」
「さっきのことは、もういいの。」
「え?じゃ、じゃあかえろっか。送ってくから。」
「まって。」
部屋を出ようとする丹羽君に私は抱きついた。
そのとき初めて思ったよりも彼が背が伸びている事、
意外にも無駄のないしっかりとした体つきなのに気が付いた。
私の体は更に熱くなり、丹羽君の体がひんやりしているとすら思える。
「な、なに?」
「この前、丹羽君私に告白したでしょ?今も私のこと好き?」
いきなり聞かれて驚いたのか、しばらくして返事があった。
「う、うん。」
「私、あの時断ったの後悔してた。でも、はっきり分かったの。
私も、丹羽君が好き・・・!」
301 :
137:03/10/06 21:25 ID:H6y4Nam9
散々我慢してきたが、ようやくここまで来た。
あとは、丹羽君をその気にさせるだけ。
ゆっくり抱きついた腕を放し、丹羽君が振り向くのを待つ。
少し悲しそうな顔をして、彼を見つめれば完璧だ。
「原田さん・・・。」
真剣な目をする丹羽君は、いつもと違って大人っぽく見えた。
もしかして、後2、3年すればかなりカッコよくなるかも。
すかさずキスをする。我慢できず、彼の口に舌をねじ込む。
「んっ!?」
「こんな私は、やっぱりイヤ?」
「え、ええと、その、そんなことはないけど・・・。」
計算通りだ。後は一気に行くのみ。
私の息は少し乱れ、だんだんと分からなくなっていく。
「って、ちょ、原田さん!?」
私が服を脱ぐと、慌てて丹羽君が後ろを向く。
「お願い、我慢、出来ないの。」
これでこなけりゃ男じゃない、はず。
ごくりとつばを飲む彼をベッドの方に引っ張っていく。
ベッドに倒れこむと、丹羽君が私に覆いかぶさる形になり、
その状態に私は興奮を覚える。
顔を真っ赤にしてぼけっとしている丹羽君に手を伸ばし引き寄せると、
再びキスをした。彼も理性の箍が外れたのか、私が舌を絡めると彼も絡めてくる。
「んんっ、はあンっ」
突然胸を揉まれ、思わず声をあげる。
乳首が硬くなって、敏感になっているのが分かる。
「ひああッ!」
乳首を弄られ、自分でした時とは比べ物にならない快感が襲ってくる。
302 :
137:03/10/06 21:26 ID:H6y4Nam9
彼は体を下にずらして私の股が見える位置に着ていた。
息を乱しながら、私はほとんど無毛に近い股を開く。
「はぁ、はぁ、丹羽君、見て。」
「原田さん・・・。」
彼に見られていると思うと、とめどなく花弁から愛液が滴る。
ゆっくりと顔が近づけられるにつれ、私はいやらしい顔になっていく。
「ふあああっ!私のが、に、丹羽君にっ!」
ピチャピチャと音を立てて私の未熟な性器を舐められる。
舐めても舐めてもそこからはとめどなく愛液が溢れ、ヒクヒクと痙攣する。
「原田さん、気持ちいいの?」
「ひはぁっ、そ、そんなところで声出さないでぇっ!」
言うまもなく、クリトリスを吸われて更に快感の渦にのまれる。
「い、いっちゃううううっ!」
頭が真っ白になり、私は絶頂に達した。
何も分からなくなり、私は更に快感を求める。
「は、原田さん、僕・・・。」
「い、いいよ、いれて、かき回してぇ!」
丹羽君がズボンを脱いで大きくなったモノを出して
私のヒクついている入り口にあてがう。
「い、いくよ。」
「ふぁ、来てっ。」
じゅ、ずずずずず・・・。
ゆっくりと入ってくるそれは、多少の抵抗があったが奥まで入った。
「ひあ、は、入ってる、丹羽君のがはいってるよぉ!」
「原田さんッ、う、動かすよ。」
わざわざ断ってから彼は腰を振り始める。
さっき一人でしていた時想像していたことが現実になり、
それが言い知れぬ興奮を呼び、快感を増幅させる。
303 :
137:03/10/06 21:26 ID:H6y4Nam9
ぱんぱんと打ち据えられるたびに私は嬌声をあげた。
「はあんっ、おっきいの、すごいっ、腰が勝手にうごいちゃうううっ!」
しばらくそれを繰り返していると、丹羽君が思い立ったかのように
突然私の胸をむにむにと揉み始め、乳首をつまんでグリグリと弄る。
私は再び頭が真っ白になり、言いようのない快感がこみ上げてくる。
「だ、だめぇ、また、おかしくなるうっ!」
「原田さんっ、も、もう出るッ!」
「んくっ、ひああああああっ!!」
ぐっと奥まで貫かれ私はビクンとふるえ、膣がきゅうっとなり
それに耐えかねたのか一気に丹羽君が射精する。
どくどくと二人の性器は震え、私の中に熱いものが広がる。
「はあッ、はあッ、丹羽君のが、いっぱい・・・。」
しばらく快感の余韻に浸った後、ゆっくりと引き抜かれる。
「あん、丹羽君のが垂れてきちゃう。」
収まりきらなかった精液があふれ、愛液と混ざって股を伝っていき、
ベッドを汚す。とはいえ、既にだいぶ汚していたが。
それを見て二人は顔を見合わせ、困ったように笑い合う。
とりあえず適当に後始末を終えると、重大なことを思い出す。
「ねえ、丹羽君。」
「な、なに?」
「お金、持ってる?」
「え゛?」
二人はしばらくそこで固まっていた。
304 :
137:03/10/06 21:28 ID:H6y4Nam9
とりあえずこれで終わりっす。
今度は切り刻みーの、ぶっ刺しーの・・・いや、冗談。
どうも微妙に方向間違えた気がしないでもないような(´・ω・`)
288>>
マジですか今まで18禁かと思ってました!!!
ではっ・・・でなおしてきまーす_(._.)_
皆さん来年までさようなら〜 (。^_^。)/
またまた・・書き込みが遅れてしまいました(ってもう関係無いか)
ばいばい・・・('_')ノ▽"フリフリ
306 :
288:03/10/06 23:51 ID:gN4T1x8G
>>305 いや…ね、別に素直に出ていくことはないと思うのさ。
ただ、やっぱり安易な書き込みは控えるべきだと思うワケ。結局21禁てのはその辺の判別能力も暗に求めているんだし。
つー訳で、『明日が実は誕生日だった』という事実を元にこれからもガンガレと。
307 :
125:03/10/07 00:10 ID:daWlmC0V
>137さん乙。
お次も激しいものを書くのですね・・・?
次作にキターイ。
>loveさん
年齢なんて黙っていれば分からないわけで。
気にせず書いていればいいんじゃないですか?
まあ、これからもガンガレと。
308 :
288:03/10/07 00:14 ID:ZekK0eGr
…職人さん達のss感想を書いていない罠。駄目駄目です…
ゼィア氏>マターリ、(・∀・)イイ!
本来の舞台が○学校であることを思い出させ…ゲフンゲフン、ともかく女装大助君を中心にどうなっていくか楽しみでつ。
137氏>うわ、そうきましたか…
前回からの伏線の張らせ具合いといい、続きが非常に気になります。できれば最終的に梨紗には明るい結末を…
125氏>いつも小ネタ、濡れ場共々楽しませて貰ってます。ってか既に脳内ではこちらが元祖ネタw
皆様、今後とも頑張って下され(;´д`)
309 :
ゼィア:03/10/07 19:10 ID:Yl4mTxyj
―さらに前回の続き―
放課後になって、やっと練習が終わり、みんなも帰り始めました。
だけど、大助はセリフを中々覚えれなくて、一人教室に残って練習していました。
「う〜ん…やっぱり、難しいなぁ……。そうだ、雰囲気だけでも掴むように、嫌だ
けど、カツラをかぶっておこう……」
一人で居る教室は、自分の声がキレイに響きました。
「……丹羽君…練習熱心だね……」
「り…梨紅さんッ!?どうしたの?もぅ、みんな帰ってるよ……?」
「え…あ、良いの。私も、残って衣装作りしてただけだし。」
「そう?…あ、じゃぁ一緒に…帰る……?」
少し、照れる様子で大助が梨紅に言いました。
310 :
ゼィア:03/10/07 19:16 ID:Yl4mTxyj
その言葉に、梨紅も少し照れながら応えました。
「…うん。…あ、ちょっと待って……」
「何?」
大助が、カツラをとって荷物を片付け様とすると、梨紅が止めました。
「あ…あの……。丹羽君、忙しそうで…何か、私にしてあげられないかなって考えた
んだけど…」
「え…そ、そんなッ!全然ー……」
と、大助が焦った瞬間、梨紅は大助にキスをしました。
「………ぁ…ンッ…」
突然の出来事で、大助は息を整えられず甘い声を漏らしてしまいました。
少しすると、梨紅は大助を解放しました。
「り……梨紅…さん……?」
「あ…ご、ゴメン!!た…ただ、そ…その……。か…彼女として、彼氏が喜んでく
れる事って何だろうって思ってたんだけど…。」
「え、あ…そう。う。うん。何か、梨紅さんからってのが…ちょっと嬉しかった……
あ、アリガトッ!」
「ホント?良かった〜。あたし、これで嫌われたらどうしようって思ってた。」
「ううん。でも、こんなカツラかぶってると、僕、女っぽぃよね……;」
アハハと笑いながら、大助が言うと梨紅はニッコリ笑って言いました。
「じゃぁ、今日だけ丹羽君がお姫様だね!!さっ!帰ろーーッ!!」
「え、あ…うん!!!」
そうして、二人は教室から出て行きました。
311 :
ゼィア:03/10/07 19:19 ID:Yl4mTxyj
――おまけ―――
そんな様子を見ていた一人の人物―その名も日渡 怜
「ちっ!丹羽にさきを越された!って感じだ……。俺は、こんなにカッコ良くて優雅
で頭も良くてモテる・・なのに、何故!彼女が出来ないんだーーーーーッ!!」
見まわりの人意外、誰もいない校舎に、彼女居ない暦14年の少年の声が響き渡った。
――学祭編・終了――
>>ゼィア氏
乙でした!!
日渡のキャラが定着してきましたな〜w
こういうキャラも好きっすよw
次回作も期待してます!!
313 :
名無しさん@ピンキー:03/10/07 19:52 ID:f4kD/pWr
>137さん
乙です!!
どこをどう間違えて、こんな(・∀・)イイ話が作れるんですか。ww
ぃゃぃゃ・・・
すごく、いい感じの展開ですなぁ〜〜〜・・・
「DQNな梨紗に・・・」ワラタ。これはちょっと不意打ちだったww
まぁ、計算高い梨紗に変わりはないけどw
コレは、いかんせん続きが読みたいですよ・・・
もちろん、書いてくれますよね?
(そこで少し悲しそうな顔をして、彼を見つめれば完璧だ)www
314 :
名無しさん@ピンキー:03/10/08 01:23 ID:h8LDRxbY
315 :
137:03/10/09 14:41 ID:7OplpRn0
1日半以上誰も書き込んでないな…。
それは置いておいて、ゼィアさん乙です。
マターリ(・∀・)イイ!そして日渡ワロタ。
見回りの人にしっかりと聞かれていて…きっとそこから色々噂が流れて云々。
次も頑張ってください。キターイしてますんで。
で、漏れは
>>313-314のやり取りの意味をどう取ればいいんだろうと小一時間
316 :
313:03/10/09 22:38 ID:/NYn2TOO
どう取るも何も、 書 い て ってことだな。ww
おれも
>>314が何を伝えたいのかが良く分からないケドw
318 :
125:03/10/11 00:49 ID:RCc955k4
Bpart途中までです。えちぃシーンはもう少し辛抱してください。
319 :
125:03/10/11 00:50 ID:RCc955k4
「なに……今の?」
額に絆創膏を貼り、校舎の中を歩き回っていた梨紅は外を白く染め上げた光に顔をしか
めた。怪訝に思いながらも、大助を見つけるために止まっていた足を進めた。
(でもなぁ)
一体全体どこにいるのか予想もつかない。ただ闇雲に校舎を歩き回るしかなかった。し
かし、時間をかけすぎれば部員に怪しまれることは明らかだ。制限時間は十分といったと
ころである。
(って、後五分くらいしか捜せないよ)
捜し始めてそれくらいの時間がすでに経過していた。もう教室は覗いた。鞄が幾つかあ
ったが大助の席には置いていなかった。
(もう帰っちゃったとか?)
時間が経てば経つほど焦りが募り、頭が混乱し、走り回って体力を削っていった。
「うへー……」
手を膝について肩を揺らせた。丹羽大助がどこにいるか。さっきの光は何だろうか。分
からないことが重なり、多少苛立っていた。
「んんー……、もうっ!」
胸中に生まれかけていたもやもやを吹き飛ばすようにがばっと顔を上げて拳を握り締めた。
「ダッシュゥゥゥゥッッッ!!」
気合一発。全力で廊下を駆け抜けた。
320 :
125:03/10/11 00:51 ID:RCc955k4
「――くっ、そ」
右腕に走る激痛に顔を歪め、廊下を疾走していた。後ろを振り返るがあれは追ってこない。
どうやら逃げることができたらしいけど、気は抜けない。僕が通った道には点々と赤黒い
ものが続き、それが逃げたルートをあれに教えてしまう危険性が十二分にある。
(考えるのは後だ。とにかく体勢を立て直さなきゃ)
すでに手は打った。あとは、それまで逃げ回って時間を稼ぐしかない。学校の廊下がや
けに長く感じられる。曲がり角までが遠い。上り階段の段差が煩わしい。あれが今どこに
いるか分からないことも焦燥を駆り立てていた。
美術室から遠ざかることを第一に考え、どこをどう走ったかも分からない。だけど離れ
ていっていることは確かだ。角を曲がり、廊下の直線を駆け抜けようとした瞬間、
「っきゃ!?」
「――!?」
全身に急制動をかけて衝突を避けた。
「び、びっくりしたぁ」
目を見開いて胸を撫で下ろしている彼女がそこにいた。
「り……くさん?」
なんでここにいるのか、しかもラクロスの練習着で。僕の頭が少し混乱した。けど、こ
のまま立ち止まっているわけにはいかない。
「丹羽く……はわっ!?」
「こっちだ!」
左手で彼女の腕を掴んで強引に引っ張り、彼女が通ってきたであろう道を戻った。
「に、丹羽く」
「黙ってて!」
逃走する焦りのためについきつい口調になってしまう。けど、説明する余裕がなかった。
321 :
125:03/10/11 00:52 ID:RCc955k4
廊下側の窓から見える光景を見て、ようやく事態の深刻さに気付いた。全員がばったりと
倒れている。
(これが、あの美術品の魔力……)
おそらくは学校中、下手をすれば近隣の地域にまで影響が出ているかもしれない。一刻
も早く対処する必要がある。
「黙ってって……血が出てるじゃない!?」
梨紅さんが僕の腕を指して言った。
「僕は平気だから、今は逃げなきゃ」
「逃げるって……」
その時、僕の手から梨紅さんの腕が抜けた。掌に付いていた血のせいですべったんだ。
急いで彼女の腕を掴みなおそうとすると、逆に僕の手が掴まれた。
「ほっとけない!」
真っ直ぐに射抜かれるような眼に、僕は反論できなかった。腕を引かれ、すぐそこにあ
る保健室に連れ込まれた。
「失礼しまーす」
梨紅さんの声に返ってくるものはない。夏休み中だから担当の先生がいないのだろうか。
「座って」
流されるままにすとんと椅子に腰を下ろした。
「傷、見せて」
シャツの袖を捲くり、二の腕に刻まれた裂傷を見せると、梨紅さんが小さく声をあげた。
「うわ……。どうしたの、これ?」
絵の中から出てきたユニコーンの角が掠ったんだ。などと本当のことを言って信じても
らえるわけがないので、笑ってごまかした。
「まあ、いいけどさ。それじゃちょっと待ってて」
棚を品定めするように見て回り、うんうんと二、三度首を振ると、棚を開けてさっ、さ
っと何かを取り出した。
322 :
125:03/10/11 00:53 ID:RCc955k4
「沁みると思うけど、我慢してね」
ピンセットで綿をつまみ、取り出した消毒液に浸し、それを僕の傷口へちょんちょんと
触れさせた。
「いッ――!!」
痛みがそこから身体中に拡がり、顔を微かに歪めた。
「我慢我慢」
さらに梨紅さんが容赦なく攻め立ててくる。
「はぁぅッ!」
「これくらいで痛がっちゃダメだよ」
「は、うぅ」
「もうすぐ終わるから」
「ああッ――!」
ほいおしまい、と言われてガーゼを当てられ、包帯で巻かれた。包帯を巻いていく彼女
の指の動きに見とれている自分に気付き、そっと視線を外した。
「あ、ありがと」
失礼ながら横を向いたままお礼を言った。
「どういたしまして。怪我はすぐ手当てしないといけないんだからね」
後半は怒られるように言われ、素直に反省した。
「ごめん。でも、手際いいね」
実際、彼女の手際は見事なものだった。包帯の巻き方も結び方も結構慣れている印象を
受けた。
「うん。部活やってるとね、こういうの上手くなるんだ」
「そっか。部活か」
だから練習着姿なのか。その点は考えれば分かったことだけど頭が回ってなかった。
323 :
125:03/10/11 00:53 ID:RCc955k4
でも、どうして校内にいたかという疑問が残っている。そのおかげで外のみんなのように
犠牲にならずにすんだのだから、よかったといえばそうだけど。
「怪我も多いから保健室もよくお世話になってるの」
梨紅さんと話していると心が安らぐ。この感じ、僕は知ってる。
原田さんと同じだ。
「保健室の世話に、か……」
原田さんと梨紅さんが僕の中で等価になっている。その事実で頭を悩ませることを避け
るように言葉を口にし、引っかかった。
「…………」
「どうしたの?」
梨紅さんの問いかけには答えず、顎に手を当てて思考を巡らせた。
「……梨紅さん」
「なに?」
「保健室ってさ、一階にあるんだよね」
「そうだよ。何言ってるの?」
「…………いや」
おかしい。僕は階段を上りはしたけど、下りてはいない。
「!! 行こう、梨紅さん」
音を立てて立ち上がったせいで梨紅さんの身体がびくんと強張った。
「はぇっ?」
分かっていない表情をしている彼女の腕を再び取り、保健室を駆け出た。
「ま、また走るの?」
「これで最後だから、頑張って!」
「どこに行くの?」
「美術室!」
324 :
125:03/10/11 00:55 ID:RCc955k4
(僕らは、もうあ美術品の手の中だ)
空間の整合が歪んでいる。すでに僕と梨紅さんは校舎という巨大な檻の中に捕らえられ
ている。だからユニコーンが追ってくる必要はない。もう逃げ場がないのだから。
(おびき寄せてる……のか?)
一体あの美術品がどんな思惑を抱いているか見当もつかない。ただ、美術室に、すべて
の元凶であるあの絵のもとに行くことが、今できることだった。
床に付いた自分の血を辿り、美術室へ向かう。ユニコーンに追われると心配していた血
痕が、こういうかたちで役立つなんて、ちょっと皮肉っぽい。
床に点々とする血痕が次第に大きくなっていく。血を流し始めたばかりのところが近い。
息を切らせ、目指していた場所へ着いた。空間が歪んでいる状況でその血痕がどれだけ信
頼できるか不安だったけど、無事に辿り着けた。ますます僕をおびき寄せているような気
がして胸の奥がざわついた。
「行こう」
ここまで強引に引っ張られてきた梨紅さんは不安そうな表情を浮かべている。それはそ
うだ。魔力がほとんどない僕にも分かるほど美術室のドアの向こうからは形容しがたい重
圧がずっしりと感じられる。梨紅さんも分かっているに違いない。
「ちょっと、怖い……かな」
梨紅さんが弱気だ。こんなところは見たことがない。握った腕が少し震えているのが伝
わってくる。
梨紅さんを一人にするのはダメだ。あいつが狙ってこないと決まったわけじゃない。
「大丈夫。僕が一緒だから」
彼女を励まそうとして肩に手をかけた。
(……頼りないだろうけど)
気の利いた台詞でも言えればよかったんだろうけど、僕にはそれが精一杯だった。
325 :
125:03/10/11 00:55 ID:RCc955k4
「ん……」
それでも、梨紅さんには想いが通じたみたいだ。完全に不安は拭えていないだろうけど、
それでも力強い眼差しで頷いてくれた。
「よし。じゃあ――」
そこで、感じた。背筋をぞくりと撫でていく悪寒。もはや馴染みになったと言ってもい
い感覚。首を左右に廻らせ、それを視認した。
廊下の端で、こちらをじっと見ている。
「急ぐよっ!」
声をあげると同時にユニコーンが急接近してきた。身体中が光で覆われ、まるで光の球
が突っ込んでくるように見えた。
美術室の扉を開き、中へ入った。一瞬で室内の暗く渦巻く空気に身体が押し潰されそう
になる。
「ぐっ……」
「き、もち悪い……っ」
二人そろって不快感を口にした。しかし、ここで音をあげちゃいけない。両足を踏ん張
って脚を進めた。
326 :
125:03/10/11 00:57 ID:RCc955k4
「何か、あるはずなんだ……。あの絵に、何か」
右腕を伸ばして壁にかけられた絵に触れた。どす黒い空気しかなかった室内に、膨大な
量の光が溢れた。発生源は、今触れている絵だ。
「くぅ!っうわ……!」
一気に肩まで絵の中に吸い込まれた。
「丹羽くんっっ!?」
梨紅さんが僕の身体に腕を回し、絵の中に連れて行かれないように懸命に守ろうとして
くれている。でも、このままでは彼女も吸い込まれ、どうなってしまうか分からない。
「梨紅さんっ!!」
僕から離れるように言おうとした時、視界にあれが映りこんだ。開け放たれた扉の向こ
うからこちらを狙っている。
「くっ、そぉぉっっ!!」
梨紅さんの腰に左腕を回し、僕の身体に引き寄せた。
「絶対に離れないで!!」
「丹羽くんっ?!」
この行動に驚きの声をあげる梨紅さんを片腕で抱きしめ、絶対に放さないと心に決め、
腹をくくって床を蹴り、光の奔流に身を投じた。
327 :
125:03/10/11 00:58 ID:RCc955k4
丹羽家上空。巨大なカラスのような翼をした物体が丹羽家の玄関前へ降下した。地面に
触れると同時にそれは人へと、丹羽大助へと姿を変えた。
ドタドタと家へ上がり込む。笑子が、大樹が、小助が挨拶をしようとしたが、全員を無
視するように二階へ駆け上がった。
「はぁ、は、あ、だ、ダメですッッ、そこは!」
「ふふ、そう言うな。二人で慰め合うのも久々ではないか」
「ひゃぅんッッ!い、いいですぅ!!」
「ほら。もっともっと虐めるぞ」
「あうあうあうんッ!!」
「さったん、レムたん!」
部屋からはなんとも妖しい会話が聞こえていたが、構わずにウィズは呂律が回らない子
どものような口調で呼びかけた。
「ん?ウィズか」
「た、助かったのですぅ……」
「大変、大変!」
「どうした。落ち着け」
「あのね、学校で、大事件。大助、ピンチなのです!」
「真似しないでください!!」
「うるさいっ!主のピンチだ。行くぞ!」
「はいっ!イくの……行くのです!!」
「ウィズ、飛んで行くぞ」
「うん」
紅円の剣と蒼月の盾を壁から外し、小助に手伝ってもらい二人に取り付けたチェーンを
首にかけ、バルコニーへの窓を開いて再び漆黒の翼へと姿を変えた。
「行け、ウィズ!!」
「久々の出番ですぅっっ!!」
「キュウゥッッ!!」
328 :
125:03/10/11 00:58 ID:RCc955k4
光の奔流の切れ目が見えた。何があるかわからない。梨紅さんに何かあっちゃいけない
と思い、抱きしめる腕にさらに力を加えた。
「んぐっ!?」
左の肩から全身に抜けるように鈍い衝撃が走った。そのままずざっと音を立てて左半身
が擦れるような感覚に襲われた。
「っつぅ……」
激しい光の中にあった視力が少しずつ回復し、周囲の様子が見えてきた。地面には芝が
生えている。本流から吐き出されてすぐ、この上を滑るようにここに着いたようだ。
「丹羽くん、大丈夫?」
腕の中の梨紅さんが眉根を寄せて訊いてくる。
「うん、平気だよ」
とりあえず安全だと判断し、回していた腕を放して身体を起こした。
「ここって……」
「見覚えは……、あ」
あった。声をあげたので梨紅さんが説明を求めた。
「見たことある。ここ、あの絵とそっくりだよ」
「絵って、丹羽くんが触ろうとしてたあれ?」
頷いた。僕が叩きつけられた地面を見ると、青々と緑の芝が息づいている。周囲を見回
すと、幾つかの木々、側を流れる運河、そして遠くに見える洋館――
(って言うより城か)
そのすべてが、僕が見たあの絵とそっくりだった。
(絵の中に入り込んだんだから当たり前か)
けど、人を取り込むなんて、かなりの力を秘めているに違いない。強力なユニコーンも
この絵から出てきた。まだ油断できる状況じゃない。
「あの城に誰かいるかもしれない。行こう」
動かないわけにはいかない。梨紅さんを連れ、僕は城を目指した。
329 :
125:03/10/11 01:01 ID:RCc955k4
「! 丹羽くん、お城の前……」
梨紅さんが言うより早く気付いた僕は彼女が言葉を言い終わる前に城めがけて駆け出し
ていた。遠目に見えただけだが、心臓が不安のせいで大きく拍動している。
走り続けた脚が目の前の光景に進むことを拒んだ。城の前に広げられたテーブルの上に
は数々の豪華な料理が、これからパーティーでも始まるかのように準備されている。けど、
テーブルについている出席者は一人もいない。出席者に予定されていただろう人達は、死
んだように芝の上に転がっていた。
後ろから追いついてきた梨紅さんが小さく悲鳴をあげた。日常では眼にかかることのな
い状況に呼吸を乱し、動揺しているのが分かる。
「ど、どうしたのこれっ!」
「分からない。けど、僕から離れないで」
梨紅さんをかばうように右手をあげ、腰を少し落として神経を集中させた。魔力が渦巻
くこの世界ではどこから、何が起きるか分かったものじゃない。突然背後から現れたり、
梨紅さんに化けたり、精を搾り取られたり、搾り返したり、
(バカか僕はーーッッ!!)
緊急事態にも関わらずこんな想像しか思い浮かばない自分が怨めしい。
「どしたの丹羽くん?」
「い、いや――」
不安そうな梨紅さんに声をかけようとした時、身体中に上から押し潰されそうなほどの
威圧感を感じた。地面にめり込むんじゃないかと思えるほどの圧力。強大な力を誇示する
ように全身から放つ光を纏ったユニコーンの感じ。
「っっ!!」
「きゃっ!?」
突如降り注いだ光のために左手で顔を覆った。目が眩むと同時に頭の中もどろどろに掻
き回されたような気分だ。よろけそうになるのを両脚を踏ん張って堪えた。瞼を通して眼
に突き刺さる光が次第に収まり、開ける事が辛くなった眼を開き、総毛だった。
ユニコーンが堂々と、静かに、動かず、風景のようにそこにいた。
330 :
125:03/10/11 01:01 ID:RCc955k4
今の僕が闘って勝てる相手じゃない。攻撃を仕掛けられたらどうすればいいだろうか。
逃げる? どこに。梨紅さんは守れるか? 自信がない。ウィズはまだ戻らないのだろうか。
ここと外の時間の流れはどうなっているのだろうか。あと何分、何時間かかるのだろうか。
(ダメだ、考えがまとまらない!!)
冷静さを欠いている。どうする、どうでる、何をする。答えの出ない難問が頭の中を飛
び交う。万事休すだ。とにかく神経を極限まで研ぎ澄まし、あれの一挙手一投足に注意を
払った。
「お兄ちゃん達、動けるの?」
不意に聞こえてきた少女の声に、今まで練り上げてきた集中力が霧散した。身体が冷た
くなっている。汗が噴出していることに初めて気付いた。
「どうして動けるの?」
ユニコーンの陰から何かが姿を見せた。
「女の……子?」
梨紅さんが虚を突かれたように口を開いた。僕も同じ気分だ。
「みんな、他の人はみんな動かないのに、どうして?」
髪は栗色で、肩までのショートヘアでウェーブのかかっている。フランス人形という形
容がしっくりくる。年齢は幼そうで、外見だけで判断すればレムちゃんより発育不全だ。
「どうしてなのかな?」
顎に人差し指を当てて首をかしげるその仕草が可愛らしい。
少女の疑問、どうして僕達だけが動けるかという疑問には僕なりに考えをまとめてある。
それは僕達とみんなが絵に入ってきた方法の違い。ユニコーンが絡んでいるかいないかと
いう点だ。あれがみんなをこんな目に合わせている元凶だと確信に近い重いが僕にはあった。
ユニコーンを睨むように視線を移した。あれはどう思っているか、まったく見当のつか
ない目をしている。
「でも、別にいいの」
考え込んでいた少女が明るい声を出した。掌を胸の前で叩き合わせ、嬉々として言って
くる。
「これで、やっと楽しいパーティができそう」
331 :
125:03/10/11 01:03 ID:RCc955k4
「パーティ?」
「そう。パーティ」
「何でそんなことを」
「だって、私はそれがしたくてずっと待ってたんですもの」
そう言ってくる少女の顔は、長い年月を経た老婆のように疲れに満ちた、悲しい表情だ
った。それに、ユニコーンから受けるのとは別種の寒気が背筋を駆け上がった。
「でもユニコーンさんが連れてくる人はみんな動かないの」
その言い方だとあれが外で何をしているのか知らないみたいだ。
「だからお兄ちゃん達が来てくれて本当に嬉しいの」
屈託なく笑う少女には、さっき僕がみた老婆の影はなく、歳相応に純真無垢な表情だ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
声をあげた梨紅さんが僕の右腕を押しのけて一歩前に歩み出た。
「みんなは、ここにいるみんなはどうなっちゃうのよ!?」
「大丈夫。ユニコーンさんが何とかしてくれるから」
「何とかって……、元はといえばそいつのせいで――!」
「うわわっ!待ってよ梨紅さんっっ!!」
今にも少女とユニコーンに飛び掛っていきそうな梨紅さんを抑えた。
「何よ丹羽くん?」
「まずいよ。状況が悪い」
「あ、あんな馬の一頭や二頭、殴り倒して」
「無理無理無理無理っ」
「あうー……」
何とか冷静さを取り戻してくれたようだ。とにかく今、あれと対峙するようなことは避
けるのが得策だ。素直に従うのがいい。
332 :
125:03/10/11 01:03 ID:RCc955k4
「それで、パーティってどんなことするつもりなの?」
二人揃って妙にぎこちない微笑みを浮かべて話しかけた。少女は顔を伏せ、言いにくそ
うに身体をもじもじさせていたが、すぐに口を開いた。
「あのね、実はお兄ちゃんにしか頼めないの」
「僕、にしか?」
少女がこくんと頷いた。
「私、ずっとここにいたの。一人ぼっちで」
また少女の顔が老け込んだ。が、それは一瞬のことだった。
「それでね、こうなっちゃう前に本で読んだことがあるの」
「何を?」
「えっちなこと」
すっぱりと言い放たれた。
「あんなことやそんなこと、お兄ちゃんとしてみたいの」
「ちょぉぉっっと待ちなさいっっっっ!!」
僕がどうするか悩むよりも早く、梨紅さんが顔を真っ赤にして再び少女に歩み寄った。
333 :
125:03/10/11 01:05 ID:RCc955k4
「あんた、まだ子どもじゃないの!それで、それでそんな――ッ」
すとん、と梨紅さんの身体が落ちた。最初はこけただけかと思ったけど、その表情がた
だ事じゃないと物語っていた。
「梨紅さんっっ!」
彼女の傍に腰を下ろして上体を抱え上げた。その眼には恐怖と不安の色に染まり、僕に
助けを求めていた。喉を押さえている。どうやら声が出せないらしい。手が動くというこ
とは全身の自由を奪われたわけじゃないけど、立つことはできないようだ。
こんな芸当ができるのはあれしかいない。梨紅さんに向けて魔力を使っているせいか、
先程よりさらに威圧感が増している。
「お願い、邪魔しないで!」
少女の声が一際大きく響いた。それほどえっちにこだわっているのだろうか。
「お兄ちゃんがしてくれたら、お姉ちゃんを解放するから」
交換条件を突きつけられた。もちろん、僕に選択権はない。
「……お願い。目をつぶってて」
梨紅さんの驚きが表情だけで十分伝わってきた。抱えていた上体をそっと地面に横たえた。
彼女が腕を伸ばすが、それをすり抜け、少女に近寄った。あの腕に捕らわれたら、絶対に
気持ちが揺らぐ。
ユニコーンが近くにいるせいで、逆らうことも、怪しい素振りも命取りになる。何より、
梨紅さんを助ける手立てが他に見当たらない。
梨紅さんの視線が背中に当たっているのを感じる。お願いだからこれ以上僕の方を見て
欲しくなかった。
334 :
125:03/10/11 01:06 ID:RCc955k4
ここまでです。次はえちぃシーンがんがります。
>125氏
乙です。
何か非常にヘビーな話の流れになっているみたいで…
ここから一話内としても、連作としても流れがどう傾いていくのか楽しみですわ。
キタ━━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━━ !!!!!!!!!!!!
125氏
乙です。個人的に
さっちゃんとレムちゃんの出番もキボン
338 :
337:03/10/11 06:20 ID:kpVT+X++
間違い間違い・・・。
さっちゃんとレムちゃん×大助でつ。
特に魔力の無くなったさっちゃんを・・・。
340 :
弧慮:03/10/12 20:46 ID:s/HEKLpe
個人的に丹羽責め梨紅受け
125氏乙です。
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!って感じですねww
これは・・・次回はC partですかね?w
なんだか、凄い事になりそうで楽しみデス
次回も頑張って!!
342 :
137:03/10/13 03:14 ID:4lR58WDq
125氏乙です
梨紅タソの目の前で(*´Д`)…
やっぱ美術品を絡めた方がいいなと思う今日この頃
まあ…思いついたらでいいか
343 :
125:03/10/13 22:22 ID:JiSBP5Ww
前スレhtml化してたんだ。しらんかった。
一応、はっときまふ
://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1049/10499/1049972960.html
344 :
125:03/10/13 23:39 ID:JiSBP5Ww
>>333 いざ少女の前に立つと、本当にしていいものかどうか迷った。その目は好奇心で爛々と
輝いていて、期待大という想いが痛いほど伝わってきた。
少しだけ後ろを振り返ると梨紅さんと視線が交わり、彼女の方が先に逸らした。一瞬だ
け見えた眼は、軽蔑されているような感じがした。当たり前、だと思う。
頭を振って視線を少女に戻した。変わらず、眩しいほどの目で僕を見ている。
「あの、初めてだから、優しくお願いします」
ぺこりと頭を下げられ、つられて頭を下げた。
「優しくって言われても、僕だって経験多くないし……」
いつもさっちゃん、レムちゃんとしているけど、慣れているとは思われたくなかったから
小さな嘘をついた。そして次の瞬間後悔した。
「経験者ですか!それは好都合です」
周囲に聞こえる程度に彼女の声があがった。もちろん、それは後ろにいる梨紅さんにも
届く大きさの声であって、非常に悪い予感がしつつ、恐る恐る振り返った。
案の定聞こえていたらしい。梨紅さんが目を見開いて驚いている。
(最悪だ……)
自分の浅はかさを呪った。
「安心して任せられます」
「……そう」
最悪なことをされてしまったせいか少しばかり気分が楽になった。というよりこの場合
はやけになったという方が正しい。勢いに任せて彼女に訊いた。
「それで、どこでするのかな」
「ここでいいです」
「よくなぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっっっ!!!!」
この世界に木霊するほど強く吼えた。
345 :
125:03/10/13 23:40 ID:JiSBP5Ww
「大体梨紅さんがすぐ傍にいるのにできるわけないじゃないかっっ!」
「人に見られているほうが気持ちいいと本に書いてましたよ?」
「ましたよ? じゃなくてっ! 人に見られるようなことじゃないんだよ!」
「そうなんですか? でも外でするんですから、いいじゃないですか」
「外で!? なんで外でするのっっ?!」
「そう書いてありましたよ?」
「ましたよ?じゃなくてっ! 普通は清潔なところですることなんだよ!」
「へぇー。初めて知りました。さすが経験者ですね」
間違ってる。この少女の知識はどこか間違ってる。一体どこで、どんな本でこんな知識
を学んだんだろうか。
梨紅さんはというとここでする発言のせいか、顔を真っ赤にして俯いている。
「とにかく、私はここでするって決めてたんです。ここでしてください」
「えぇ――」
僕が嫌そうな顔をした瞬間、ユニコーンがきつく睨んできた。
「お兄ちゃんに拒否権はありません」
脅しじゃないか。ともあれ、彼女の要求に応えない限り梨紅さんの安全は保障されない
から拒否権がないというのは事実だ。
この距離なら目を閉じてくれてても声は聞こえてしまうだろう。梨紅さんのことを忘れ、
少女のことにだけ集中した。
(そうだ。忘れるんだ。この子に、いつもしてるようにするんだ)
「――よし」
腹を決めた。
346 :
125:03/10/13 23:41 ID:JiSBP5Ww
手始めに、少女の目線の高さまで腰を落とし、手を彼女の肩にかけてから軽く口付けた。
「はむぅ」
不慣れなせいか、唇は堅く閉ざされ、舌は進入できそうもない。身体も微かに震えてい
るのが手から伝わってきた。
「キミ、名前は?」
彼女の緊張を解くつもりで訊ねた。
「美咲……西沢美咲」
「美咲ちゃんか。かわいいね」
「あ、ありがと」
幾分表情が和らいできた。今度は美咲ちゃんの首筋に甘く噛みついた。噛みついた瞬間
に彼女の身体が縮みあがったけど、一瞬だけだった。噛みついた箇所に熱い息を吹きかけ
ながら舌を這わせた。
「ぁ……」
くすぐったがるだけかと思ったけどしっかり艶のある声を出してくれた。どうやら性感
はある程度できているようだ。
(これなら、イけるかな……)
性感がばっちりな彼女の服を剥ぎ取ると、レムちゃん以上にぺったんこな胸の、その先
端にある小さな突起を指でつまんだ。すでにこりこりしていて興奮状態だった。さらに大
きく勃つように念入りに指で擦っていると、目に見えて彼女の呼吸が荒く、大きくなって
きた。
「痛かったら言ってね」
優しく声をかけた瞬間、
「ひッ――」
美咲ちゃんが小さく呻き、僕に抱きついて身体を強張らせた。この反応にまさかと思っ
た僕はショーツ姿になった彼女の股間の割れ目に指を這わせた。熱く湿り、溢れた汁がシ
ョーツに収まりきれずに太ももまで伝っていた。
347 :
125:03/10/13 23:41 ID:JiSBP5Ww
本気でイッている。あまりにも早い絶頂に多少狼狽えてしまった。どうも感度がよすぎ
てこちらが困ってしまう。
絶頂が尾を引いているせいで彼女の呼吸はまだ整っていない。
「まだイける?」
ここまでやらせておいて僕だけおあずけというのはごめんだ。弱々しいけど、確かに彼
女は頷いた。
美咲ちゃんの腕を首に回させたまま地面に腰を下ろし、彼女だけお尻を突き出すような
格好で立たせた。右手の中指を口に含んで唾液をまぶし、彼女のショーツの中へ進入して
いった。無毛で、しかもイッたばかりで大量に溢れている汁のおかげで滑らかに秘裂を指
でなぞることができる。時折、思い出したように声を漏らし、身体をくねらせる美咲ちゃ
んが可愛らしい。
まだ陰唇の膨らみさえ感じられない、唯の一本の筋を割るように指でまさぐった。
(…………見つからない)
女性にあるべき膣穴が分からない。指だけで探り当てるのは無理のようだ。立たせてい
た彼女の膝を折らせ、流れるように正上位の型へ持っていき、縦筋の中をじっくり観察した。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいです……」
「ここまできて恥ずかしいもないと思うけど……」
相変わらず少しずれている気がする。肉厚な縦筋を左手の親指と人差し指で押し拡げ、
ようやく膣穴らしきものが見えた。再度唾液で湿らせた指を三度股間へ向けて伸ばす。
「んッッ!」
指の先端から第一関節、第二関節を押し込んでいき、そこで締めつけが強くなった。指
が壊死するんじゃないかと思えるくらいの強すぎる締めつけ。
(こんなところに入るのか?)
当たり前だがペニスは指とは比較にならないほどの太さと長さと硬さがある。繋がろう
とすれば僕のか彼女が壊れてしまいそうだ。十分すぎるほど指で練っておく必要がある。
彼女の中に入れていた指を強引に動かし、膣道を掻き乱した。
348 :
125:03/10/13 23:42 ID:JiSBP5Ww
――東野第二中学校上空。二つと一匹が舞っていた。
「す、すごい魔力ですねぇ」
「並の力ではないな。大気が歪んで見える」
美術室から放たれる魔力の渦はすでに校舎を覆い、学校の敷地を越えて市街へ溢れ出す
のも時間の問題かと思われた。
「さっさと済ますぞ。これは少し、まずい」
「ですねぇ。久々に暴れるのです」
「本気でいくか?」
「本気でいくのです。この機を逃すと、次の活躍はいつになるのやら」
最後の方はうるうると涙目で訴えていた。
「だな。今晩は主の精を最後の一滴まで搾り取らねば」
「干からびるまでやってみましょうか?」
「それは洒落にならん」
いつもの調子の掛け合いが終わり、真剣な口調へ戻った。
「行くぞ、ウィズ!」
「突撃ぃ、なのです!」
「クッキュゥゥゥゥッッ!」
349 :
125:03/10/13 23:43 ID:JiSBP5Ww
――あたしは、ダメな奴だ。
丹羽くんがどうしてあんなことをしなきゃいけないのか、理由はちゃんと分かってる。
あたしが役立たずで、足手まといになって、丹羽くんにつけを払わせている。
行ってほしくなかった。止めたかった。あと少しこの手が伸びていたら、彼を止めるこ
とができたかもしれない。
二人の息遣いが聞こえる。二人の交わる姿が見える。今すぐにでも目を逸らし、耳を塞
いでしまいたかった。
けど、できない。あたしは丹羽くんがえっちなことをしているのを食い入るように見つ
めて、耳を立てて聞いていた。
丹羽くんとしているのがあの子じゃなかったら、あたしだったら、そっちのほうがよか
った。あんなところを見るくらいなら、見せられるくらいなら、あたしが代わりに相手を
したかった。
嫉妬……しているんだろう、あの子に。
彼のあんな姿を見て濡らしているなんて、あたしは、ダメな奴だ。
350 :
125:03/10/13 23:44 ID:JiSBP5Ww
「き、っつい……」
動けるものじゃない。動こうとしただけでねじ込んだ亀頭が食い潰されそうだ。少し腰
を引くと勢いよく胎内から吐き出される。奥までの挿入は無理だ。
仕方なくかなり浅い位置でやるしかない。再び先端を美咲ちゃんの中へ押し込んだ。今
度は吐き出されないように震えるくらいの微細な動きで腰を使った。
「んッ、くぅッ」
ねちっこく、がっしりと僕のものに喰らいついてくる。このきつさはたまらなく痛い。
それでも堪えて彼女の膣口を擦っていると、微かに締めつけが緩くなってきた気がする。
ぬるぬると湿る道を、閉じている肉壁を裂いて奥へ侵入させようとする。
「大丈夫?」
「は、はひッ」
大丈夫じゃないようだ。歯を食いしばってかくかく震えている。全体の半分も入ってな
いけど、これ以上の進入は美咲ちゃんに悪いと思った。この位置で、さっきより大きく腰
を動かした。
未成熟の膣内は肉が蠢く感触を伝えてはこないけど、それに代わる締めつけがペニスを
刺激してくる。痛いとしか思えなかったそれがだんだん快楽へ変換されていく。
「くッ、うう……」
「はふ、ふぅんッ!」
気がつくと美咲ちゃんの脚を抱え、いつもより早い動きで、小刻みに抽迭を繰り返して
いた。先の方しか入れてないせいか、いつもよりそこの感覚が鋭くなっている気がして、
すぐにでも爆発しそうだ。
「はぁッ、あぅんッッ――」
彼女の身体が震え上がると、連動して僕の先を締めつけるそこもぐぐっと縮んだ。
「んぐッ」
続いて僕にも限界が訪れそうになった。今までにないくらい腰を突き出し、彼女の幼い
子宮口へ劣情をぶつけようとした。
351 :
125:03/10/13 23:45 ID:JiSBP5Ww
「――あ」
両手を地面につき、破裂しそうに腫れ上がったものから白濁液が飛び出そうとするのを
必死に堪えた。
「んぐぐ……、がッ! はぁ、はぁッ」
鈴口のすぐ手前まで押し寄せていた射精の波がゆっくりと引いていく。未だにペニスは
腫れているけどもう出ることはなくなった。結合をそっと解き、ズボンの中にそれを納めた。
「約束。梨紅さんを……」
言おうとしたけど、目を閉じて横たわる美咲ちゃんの顔を見ると、声をかけることがはば
かられた。疲れて、でも満足そうにしている。
腰を上げ、僕が射精を堪える要因になった梨紅さんに近づいた。あの瞬間、梨紅さんの
姿が目の端に映りこんだ。梨紅さんの顔が思い浮かび、出したくないと、強くそう思った。自分でも何でそう思ったか理由ははっきりしないけど、ただ、彼女が傍にいるのに別の女
性として、それでイッてしまうことに酷く不快な気持ちになった。
(とにかくまず梨紅さんを助けて、それからみんなを……)
「――ッ!」
考えるより先に身体が動き、右へ転がった。瞬間、僕がいたところを何かが高速で駆け
抜けた。
いや、何か、ではなく、あれしかいない。
「くぅっ!」
転がる勢いのまま身体を起こた。視線の先には、すでにユニコーンが臨戦態勢に入って
いる。僕がみんなを、梨紅さんを助けるのを阻止するつもりだ。
一瞬思案した隙を突いて間合いを一気に詰められた。
(――速いっ!)
身体の軸を逸らし直撃を避けようとした。
「があッ!」
左半身――左肩に僅かに触れただけで身体が吹き飛ばされた。受け身も取らず、ただ身
体を丸めて地面を跳ねるように吹き飛んだ。鈍い衝撃が全身に走る。準備してあったテー
ブルに突っ込み、崩れたそれが身体に圧し掛かってきた。
352 :
125:03/10/13 23:45 ID:JiSBP5Ww
瓦礫と化したその中から這い出して体勢を立て直そうとするけど、打つ手がないことは
分かっていた。
対峙しているだけで、プレッシャーで負けそうだ。
ユニコーンが微かに身を動かした。僕も身体をかがめて身構えた、が、ユニコーンは僕
ではなく、上空を振り仰いだ。
「キュウゥッッッ!!」
怪訝に思う間もなく上空から待ちに待った鳴き声が聞こえてきた。
「ウィズっっ!」
真っ青な空にそこだけ色が抜け落ちたように黒く染める翼が僕のもと舞い降りてきた。
「ふむ。面倒なことになってるではないか」
「ほわぁ、ユニコーンさんですね」
「みんなを助けなきゃいけないんだ。力を貸して!」
必死な口調で頼んだ途端二人が含み笑いをを始め、思わず身を引いた。
「な、何……?」
「くく、ふふふっ。久々の出番だ!」
「全力で殲滅しますよぉっ!」
「そ、そう……」
並々ならぬ力強さが伝わってきた。
「! くるぞッ!」
さっちゃんの声に反応して振り返ると、ユニコーンが間合いを詰め始めていた。
右手で剣を、左手で盾を取り、ウィズを背にして跳躍した。瞬時に空高く舞い上がり、
それを追って向こうも軌道を修正してきた。
一瞬だけ梨紅さんが倒れているところに目がいった。
(すぐ、助けるから!)
353 :
125:03/10/13 23:46 ID:JiSBP5Ww
「余所見はダメですっっ!」
レムちゃんの声で視線を戻した。
「うわぁッ!?」
目の前まで迫っていた角をすれすれでかわした。
「気を抜くな。命取りだ」
「う……うん」
今の一撃だけで冷や汗が噴き出してきた。思った以上に強敵だ。
「一撃で決めるぞ。集中しろ」
「分かった!」
二人の魔力が増長し、周囲の空気が音を立てて弾けていく。その強大さに僕自身も息苦
しさを感じ始めた。
「す……っごい……」
「ふふん。今夜は干からびるまで相手をしてもらうぞ」
「二人まとめてですよぉ」
「んげっ」
二人の力に意識が吹き飛びそうになる反面、身体は驚くほど活性化して感覚が冴え渡っ
てている。
「これなら、いける!!」
ユニコーンとの距離を刹那で詰める。相手が気付いているのかどうか分からない。構わ
ず剣を薙ぎ、その首を横一文字に斬り裂いた。
354 :
125:03/10/13 23:47 ID:JiSBP5Ww
「――」
直後に身体を襲う衝撃。ばらばらになるかと錯覚するような感覚。鼓膜をつんざくよ
うな音が突き抜け、咄嗟に手で耳を塞いだ。
「ごらああぁぁぁぁ――……」
右手から抜け落ちたさっちゃんが叫びながら地上へ落下していくのを薄く開けた目で確
認した。そのまま視線を前に向けたが、そこにはユニコーンの姿はなかった。
「終わった……?」
「はい、終わり……うきゅぅ」
「レムちゃん! どうしたの?」
「っつ、疲れましたぁぁ」
魔力の使いすぎでもう力が出ないということだ。帰りだけならウィズだけで十分だと言
われたので安心した。
「梨紅さんは……っ」
梨紅さんのところへ行こうとした時、城の側から幾筋かの光が真っ直ぐ空に立ち昇って
いるのが目に入った。
「あれは?」
「みなさんが、元の世界へ戻ってるんですよぉ」
「そうなんだ」
「でも、ご主人様と梨紅様は……肉体ごとここにきたので、早く脱出しないとこの世界と
一緒に消えてしまうのですぅ」
「まずいね。早く出よう。って、梨紅様ぁ?」
梨紅さんに様付けというの酷くしっくりこないけど、レムちゃんの調子ならそれも仕方ない。
355 :
125:03/10/13 23:48 ID:JiSBP5Ww
もうすぐで梨紅さんの傍だというところで、上体を起こしかけている美咲ちゃんの姿が
目に入った。
「……」
「あわわっ?ご主人様ぁ。梨紅様はそちらじゃないのですぅ」
慌てて僕に注意を促がすレムちゃんをよそに、美咲ちゃんのもとへ舞い下りた。焦点の
定まっていない目で僕を捉え、首を廻らせた。
「……ユニコーンさんは?」
正直に倒したといえばいいんだろうか。けど、彼女のユニコーンにすがるような瞳を見
ていると、答えるべきか迷った。
「そっか。消えちゃったんだ」
何も答えようとしない僕の真意が読まれ、彼女が寂しい笑みを浮かべた。
「僕は――っ」
口を開いても続く言葉が出てこない。けど、美咲ちゃんに何か言いたい。ただのエゴだ
けど何も言わないのは嫌だった。
「いいんです」
そんな僕を彼女が弱々しく頭を振って止めた。
「もう、いいんです」
「あ……」
彼女の身体が周囲に溶け込んでいく。目を擦ってもう一度見たけど、だんだん身体が透
けていっている。
「ユニコーンさんが消えたから、あの子を留める力が消えたんですね」
レムちゃんの説明が耳に入るけど、半分は聞き止めていなかった。この世から消えてい
こうとする彼女を前に、何もできることがないことが悔しく思えた。
「そんな顔しないでください。私は楽しかったですよ」
彼女に心配されるほど情けない顔をしていたのかと思い、自分の顔に手を当てた。
356 :
125:03/10/13 23:48 ID:JiSBP5Ww
「えっちってあんなにいいものだったんですね」
「…………は?」
うーん? なんだか一転して明るい口調で言われてしまったぞ。
「最後にあんないいことできて、もう思い残すことなんてありません」
なんだろう。さっきまで辺りに立ち込めていた重苦しい空気が全部吹っ飛んでしまった。
「えっちができてよかったですねぇ」
レムちゃんの声が周囲の空気にぴったりと合っている。けど、僕にはまったく合ってい
ない。一人だけ取り残された気分だ。
「はぁ。もうすぐお別れです。もっとしたかったんですけど残念です」
いや、僕はもういいです。
「機会があったらあのお姉ちゃんも交えて三人で」
「もういいよっっっ!!」
「ど、怒鳴らないでください!お別れなんですからもっと和やかに……」
「そうですよぉ。こんな子を虐めたら許さないですよ」
深い溜め息が漏れた。女性二人を相手に口で争うことに抵抗があった僕は反論を諦めた。
「お兄ちゃん」
僕を見つめる美咲ちゃんの顔にはふざけた色はなく、可愛らしい笑みを浮かべていた。
「ありがとう」
その言葉を最後に、砂城が波に呑まれるように彼女の姿が中空へ溶け込もうとした。
「ありがとう」
自然に微笑み、彼女と同じ台詞を口にした。お互いの視線が交わり、そして最後は掻き
消えていった。
しばらくの間、そこに立ち惚けていた。
「ご主人様、時間がありませんよぉ」
「そうだね。ウィズ、さっちゃんをお願い」
「ウッキュ」
レムちゃんの言葉に現状を思い出し、ウィズに指示を出してから梨紅さんの元へ走った
357 :
125:03/10/13 23:49 ID:JiSBP5Ww
梨紅さんはさっきまでここにいたみんなと同じようにぐったりとしていた。身体を抱え
て何度か呼びかけると、微かに唇が動くのを確認した。
「生きてるみたいですねぇ」
「不吉なこと言わないでよ」
薄く目が開いた。
「梨紅さん? 大丈夫?」
刺激しないように優しく語りかけると、次第に彼女の焦点がはっきりとしてきた。
「に……わ」
聞き取りにくいけど確かに僕の名前を呼んでる。ユニコーンから受けた魔力の影響も抜
けたみたいでようやく安心した。安堵が身体を巡ると、疲労が顔を覗かせてきた。ユニコ
ーンとの戦いがよっぽど響いたのか、四肢が悲鳴をあげてきた。
「早く帰ろっか。ウィズ」
呼んでもこない。さっちゃんが落ちた辺りを見ると、白い毛玉が不釣合いというか無茶
をしているとしか思えないほどのサイズの剣をずりずり引きずってこちらに向かっていた。
「何で飛んでこないんだよ」
「きっと魔力を温存してるんですよ。万が一ということもありますからねぇ」
ウィズがつくまでかなり時間がかかりそうだ。しょうがなく、梨紅さんを背負ってウィ
ズの方に行こうとした時、腕の中でぐすぐすと鼻をすするのが聞こえてきた。
「梨紅さんっ!?」
目から溢れる涙を拭いながら、梨紅さんが子どもみたいに泣きじゃくっていた。
「ご、ご主人様! 泣かせてしまったのですか?」
「しし、知らないよっ」
358 :
125:03/10/13 23:50 ID:JiSBP5Ww
慌てふためく僕の耳に、泣きじゃくる彼女の声に混じって小さく、ごめんなさい、とい
う言葉が聞こえてきた。梨紅さんが何を謝っているのか分からないでいると、レムちゃん
がとんでもないことを口にした。
「あやや。梨紅様、お股が濡れてるのですよっ!」
「ええっ!?」
急いで手を伸ばして確認しようとした。
「変態か僕はぁっっ!!」
「はわわっ! ご主人様が壊れたぁ!?」
ともあれ、梨紅さんが濡らしているというのはどうにも解せない。
「もしかしてご主人様とあの子がしているのを見ていたのかもしれませんねぇ」
「ま、まさかぁ」
否定しようとしたけど、それ以外に梨紅さんが濡らしてしまう原因も思い浮かばない。
まさか、本当に見られていたのだろうか。
「だから謝っているんでしょうか?」
「うーん……」
「それにしても、その濡れ具合ならやってしまっていいんじゃないですか?」
「それはさすがに……」
「えー。でもご主人様だってまだ勃起してますよ」
本当だ。戦ったことですっかり忘れていた。美咲ちゃんとした時は出さなかったから未
だに性欲だけは、ある。
359 :
125:03/10/13 23:50 ID:JiSBP5Ww
「いやいやいや。でもよくないって」
「何でですか?」
「何でって、それは」
「梨紅様だって受け入れの準備は万端ですよ。ここでしないと漢じゃありません!」
「そこまで言う?」
「言います。さあさあ、お互い慰めあうのです」
「楽しんでない?」
「楽しんでます」
これ以上つき合うのは疲れるので反論しなかった。しかし、腕の中で泣きじゃくって身
体を震わせる梨紅さんは触ってしまえば壊れそうなほど脆く、愛らしい。
(いやいやいやっ!)
暖かな体温が腕を通して伝わってくる。柔らかな肌の感触が堪らなく興奮させる。
(いやいやいやいやっ!!)
初めてした時はできなかったけど、次はじっくりと彼女の身体を、
(――――ッ!!!)
梨紅さんをお姫様だっこで担ぎ上げ、ウィズに向かって駆け出した。
「ごご、ご主人様ぁっ?」
「時間がないんでしょ帰るよ」
早口で捲くし立て、ウィズを呼び寄せた――。
360 :
125:03/10/13 23:51 ID:JiSBP5Ww
「目、覚めた?」
原田梨紅が身をよじって身体を起こすと、そこに声がかけられた。
「丹羽……くん」
起こした身体から毛布が落ちた。鼻につく消毒液の匂いと、白いレースのカーテンが覆
っているところから、そこが保健室だと思い至った。
「どうして、丹羽くんが……あれ?」
自分が何をしていたのか思い出そうとして、それができないことに狼狽した。額を怪我
して保健室に行ったことは覚えている。そこから先がまったく思い出せない。
「部活あるんでしょ? 早く行った方がいいよ」
「あ、うん」
「じゃあ先に行くから。また」
そう言って彼はさっさと保健室から出て行った。
「あ……」
彼が出て行く時、右腕の裾の下に包帯が巻いてあるのが彼女の目に入った。その跡に多
少の既視感を覚えたが、それだけだった。ドアが閉まる乾いた音が保健室に響いた。
独りになった梨紅はベッドに身を沈めた。失った記憶をたぐり寄せようとしてじっと目
を閉じた。自然体で落ち着いているとさっきは浮かんでこなかった夢とも思えるほど儚い
記憶の断片が微かにだが甦ってくる。
丹羽くんが女の子とえっちをする。
丹羽くんが以外にも経験者だ。
丹羽くんがしているところを見てあたしがどきどきしている。
「…………ろくなもんじゃねぇ」
ぼそりと呟いた。
361 :
125:03/10/13 23:52 ID:JiSBP5Ww
結局、それは夢だったのかもしれない。むしろそちらの方がいい。夢に決まっている。
そう自分に言い聞かせ、惚けたように天井を見つめていた。
そういえば、自分が大助に絡む夢を見る時はいつもこんな風にはっきりしていない時が
多いと、彼女の中にそういう思いが浮かんできた。
丹羽くんとしちゃったような夢を見た。
丹羽くんに助けてもらうような夢を見た。
今日は、丹羽くんが女の子としているような夢を見た。
「…………欲求不満?」
自分にそんなえっちな感情が内在しているのかと思い、少し顔を赤らめた。
362 :
125:03/10/13 23:52 ID:JiSBP5Ww
「あそこでしないなんて根性なしです」
「漢ではないな」
二人に好き勝手言われるのは慣れたものなので無視しておいた。荷物をすべて手にし、
空を飛んで家へ戻っている。
「梨紅様も望んでたのにぃ」
「女心が分かってないな」
あそこで耐えれたことに関しては素直に自分を褒め称えたいと思う。梨紅さんの記憶は
ユニコーンの力のせいか、かなり混濁していて今回のことは正確に覚えてはいないだろう
ということらしい。僕からすればそちらの方が好都合だ。今回のを覚えられていたら生き
ていけない。
「今、安心しましたね?」
「うぇっ! し、してないよ」
「すぐ顔に出る。分かりやすい、な」
「んな、何だよ二人してさぁ!」
二人の執拗な言葉攻めにとうとう反論してしまった。また面倒になるなと思っていると、
二人はあっさりと話を逸らした。
「まあいい。今回は他人のことはどうでもな」
「何で?」
「忘れましたか? 今回はぁ、ちょっと疲れちゃったんですよぉ」
「ッうげ!」
思い出した。
『干からびるまでやるからな(やりますからね)!!』
次回 パラレルANGEL STAGE−10 それぞれの夏休み
363 :
125:03/10/13 23:54 ID:JiSBP5Ww
今回は、長かったです・・・
ミタヨー(・∀・)
イイヨイイヨーーー。
キタ━━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━━ !!!!!!!!!!
『鉄拳執事坪内さん』
「遅くなっちゃったね」
「うん」
丹羽大助は、かたわらを歩く原田梨紅に声を掛けた。
社会的にも、そしてふたりの間にもいろいろあった年も明け、冬の寒さもまだまだ厳しい
日曜日、ふたりして近郊の美術館へ電車で出かけたその帰り路。
なんとなく別れ難く、なんやかやと時間をつぶして気がつけば黄昏時は過ぎ去ってしまい
、しらしらと冴える冬の銀月がのぼり始めた空の下、大助は駅から海岸沿いの原田邸まで
彼女を送っていくところだった。
要するにデート帰りである。
つきあい始めてしばらく経つが、このふたりだけに、デートといっても今日みたいに美術
館、あるいは映画館に動物園に遊園地だのと、周りの梨紗や冴原あたりがやきもきするほ
ど微笑ましいものだった。
『手ぐらいつないだら?』
梨紗などそう姉にはっぱをかけるのだけれど、
『そ、そんなの恥ずかしいじゃない』
のひと言だ。
無論、奥手っぷりではひけをとらない大助から一次的接触の試みなどあろうはずもなく(
大助も、家では母やトワちゃんに、ひやかしとからかい半分にあおられていたりする)。
『そうよ、まだ中学生なんだから』
手をつないで―――その先を考え、なんとなくどきどきしながら自分を納得させた。
隣の大助につかずはなれず。ちらりと横目に盗み見る。
『丹羽くん、背、伸びたなあ』
いっしょのクラスになった頃は、自分や梨紗よりほんのちょっと低いくらいだったのに、
今では少し見上げ気味だった。
よくクラスのみんなからは『かわいい』と言われて、学園祭の演劇では女子は口惜しがり
男子は道を踏み外しかけるほど女装がはまりまくっていた顔立ちも、どこかしら大人びて
きたようだ。
「なに?」
気付いて大助が声を掛ける。
「な―――なんでもないなんでもない」
慌てて手をぱたぱたさせながら歩みを止め、ちょっと赤面。
そんな梨紅のようすに微笑むと、
「ほら、もうすぐ着くよ」
「そ、そうね」
ちょっとどきどきしながら、見えてきた自宅へと、再び大助と肩を並べて歩き出した。
原田邸門前。
「着いたね」
「―――うん」
「じゃあ、また」
明日、学校で。
そう告げかけた大助の上着の袖を、うつむいた梨紅が、ちょいっ、とつまんでいた。
どこかしら寂しそうに、うわめづかいでこちらを見つめるその姿に、心臓が、以前なら恋
愛遺伝子が反応して限界突破してしまいそうな勢いで鼓動をきざむ。
惹きよせられるように顔を近づけると、梨紅もおもてをあげてそっと目を閉じ、互いの体
温を感じられるほどに―――。
「ぅおぉぉぉじょぉぉぉすぁぁぁむぅぁぁあっ!!」
轟、と、原田邸より不意を突いて迫りくる、なにか。
「へ?」
大助の腰より低きを疾る、黒き颶風。
「疾ぃっ!」
地より逆昇る稲妻のごとく天を貫く鋼の拳。
「っ!?」
描いた軌跡が空間をえぐりとるようなアッパーカットは避けるも流すもならず、それでも
寸前で後ろに跳んで勢いを殺しながら両手を組んで受け止められたのは、幼い頃から丹羽
家伝来のさまざまなテクニックを否応なく叩き込まれてきた大助ならではだった。
「わわわっ!」
大助の身体が弾かれたように大きく後退し、勢いを殺しきれずにごろごろと2転、3転、
原田邸のコンクリートの塀を背に、ようやく片膝ついて立て直す。防御に使った腕は、骨
にこそ影響はなさそうだが、びりびりと痺れて感覚が戻らない。
まるで戦槌を叩き込まれたようだった。
まともに受けていれば、小柄な大助の身体は頭より高く打ち上げられていたに違いない。
比類なき剛拳、その使い手は―――「くぅおぉずぅぉぉぉお」
深まる夕闇に、ごごごご、と太文字の擬音を背負って立ちはだかる紳士。
「つ、坪内さんっ!?」
呆然となりゆきを見守っていた梨紅が、その姿を認めて叫んだ。
シルバーグレイのオールバックスタイルに同色の美髯、仕立てのよい黒のタキシードにい
ち分の隙もなく身を包んだその姿。
まごうことなく、原田家執事、坪内さんその人であった。
だがそこに、大助も知っている日頃の温厚な紳士の面影は微塵もなく。
「きぃさぁむぅああ、梨紅お嬢様に、そのような不埒な真似を……」
紅蓮の怒りに燃える鬼神、そんな感じのモノがそこにいた。
「ふ、ふらち?」
「ちょ―――なにいってるのよ坪内さんっ!」
きゃーっと、真っ赤になって梨紅が叫ぶ。
「よくも……よくもわ・た・し・のかわいいお嬢様をキズモノに……」
「えっ、えっ!?」
「だれが“わたし”のっ!? だれがキズモノよっ!?」
「ゆ、る、さ、ぬ」
「はいっ!?」
「話を聞けーっ!!」
事態と展開と推移が呑み込めず、片膝立ちで塀にもたれ掛かって唖然としていた大助めが
け、くい、とずれた鼻眼鏡を直してぢゃきん、と拳を固めるや、執事坪内さん、再び黒い
閃光と化した。
「ひいっ!?」
「噴っ!」
みごとな反射で身を投げ出した大助の頭があった位置を、真っ直ぐほとばしった右拳がは
しり抜け、破城槌さながらにコンクリート塀を穿ち砕いた。馬に跨るように開いた両脚、
踏み込んだ右足元は、アスファルトの地面に放射状のひび割れを刻み込んでいた。
人間じゃない。
大助、なみだ目。
「1度ならず、2度まで我が拳をかわすとは―――軟弱な小僧かと思えば、なかなか」
純粋無雑な殺気の波動を言葉に変え、口の端を釣り上げて凶猛に笑いかける。
「坪内さんてば―――こらあっ、つぼうちーっ!」
梨紅の叫びはもはや届かず。
地面にしりもちをついたままの大助めがけて、坪内の右脚が昇り始めた満月を背に頭上高
く、踵落としのかたちに振り上げられていた。
いつ足が上がったのか、知覚すらできなかった。
身も蓋もなく横に転がる。
脇をかすめ、ちりりとこげくさい擦過痕を空に残しつつ振り下ろされた剛斧の一撃。勢い
止まらず踵がアスファルトを砕いてめりこんだ。
「ひいいいっ!?」
ころされる、容赦斟酌問答無用全身全霊かけてころされる。
あわわわ、と、体裁気にせず全力で転がって逃げる離れる遠ざか―――れない。
神速の踏み込みによって大助と坪内さんの間合いは広がらず、中腰の顔面めがけて硬い革
靴のつま先が迫る。
半端ではなく鋭いその力線に逆らわず、両手で組み受けて勢いを利用して、流れはそのま
まに跳躍、一足飛びに彼の身長をはるかに上回る塀の上に降り立っていた。
幼い頃から積み重ね、怪盗ダークとしての因果から解き放たれてなお、習慣的に日常繰り
返されている鍛錬のたまものである。もう記憶すら定かではない幼き日、梨紅のぬいぐる
みを取り返した際にも見せた身軽さそのまま、いや、蹴り足のから借力しつつも助走すら
なかった今の跳躍は確実にそれ以上だ。
さすがに追ってはこれないよね。
ひと安心、と下方、地面に目をやった大助は硬直した。
いない。
老執事の姿がどこにもない。
ただ、梨紅ひとり上を、こちらを見上げて目を見開き、口をぱくぱくさせているだけだ。
ダークと自分、そして丹羽家の因縁を折をみてそれとなく彼女には話してきた。その際、
自分もこうした身体能力を持っているんだと説明して見せもしたので、改めてこんなに驚
くことでもないはず。
まさか。
悪寒が走る。
月光を遮り頭上に差し掛かる影を感じるまでもなく、またしても、磨きぬかれた大助の生
存本能が肉体を衝き動かした。
重力のまま、塀の後ろ側、原田邸の庭に背中からまろび落ちる。
「ぢぃええりゃああああああ!」
塀が、割れた。
塀に立つ大助の頭より高く跳躍、いや飛翔した坪内さんの手刀は、自由落下に任せて塀を
真っ向唐竹に断ち割ってしまったのだ。反対側にかろうじて受け身をとって落っこちた大
助からは、分厚く硬いはずのコンクリート塀を、まるで豆腐のように根元まで分断した指
先だけが悪夢のようにのぞいていた。ずず、とその指がひっこめられる。
いくらなんでもむちゃくちゃだ。
そんな心の叫びをあざ笑うかのごとく。
「破ぁっ!!」
塀が爆発した。
そうとしかいいようのない、粉砕。
もうもうと立ち込める粉塵の彼方では、両脚を開いて腰を落とし、右手を頭上、左手を腹
前に、すなわち両手で太極を為して背を張り出した坪内さんの威容。
背中で体当たりして、塀を吹き飛ばした、そういうことだ。
砕いたコンクリート片を踏みしめ、ずい、と拳鬼が庭先に押し入ってきた。
「あは、あははははは」
芝生に腰を落として、どうにかしてこの怪物から一寸でも離れようといざりながら、乾い
た笑いを大助は漏らした。
「ちょろちょろと小賢しい」
生あるものを凍てつかせるような眼鏡ごしの凶眼が、へたりこむ大助を捉えた。
「だが、文化改革、略して“文革”を生き抜いた我が拳、伊達ではない」
坪内さん、ノリノリ。ちうか、微妙に障りがあるから“文革”って略さないほうが。
「もはや、逃がさぬ」
ぎらぎらと隠しようもなく放射され、大助の全身をぎちぎちと押し包んでいた殺意が、ふ
っと消えた。
構えもなくすらすらと、さながら無人の野を進むかのように歩み始める。
重心を据え、中心軸をぶらすことなく進みゆく、動きながらも五体を天地をまっすぐに貫
く柱と為す歩法は、勢いの乗った突進以上の戦慄を大助にもたらした。
打ち込むことはもちろん、避けることはおろか逃げることすら許されない、完璧なる神技
の歩法。
追い込まれた鼠どころか、巣からこぼれ落ちた雛鳥のごとく、ただただ恐怖にすくむ他な
い。ダークと共にクラッド相手の最終決戦に臨んだ時でも、これほどの危機感は感じなか
った。
殺意は感じず、ただ絶望をともなう無力感がひしひしと高まる。
死―――?
楽しかった記憶が脳裏を走馬灯のようにめぐりだす。
クリスマス・イヴに梨紅さんと。
学園祭の後、誰もいない教室で梨紅さんと。
臨海学校の夜、海岸で梨紅さんと。これは寸止めだったけど。
このかつてない緊迫した状況下、恐怖のあまり一線を突き抜けた夢想に知らず、にへら、
と表情が弛んでしまった。
ぴき。
大助の表情になにを察したか。老執事の顔に、怒りを超越した修羅の相が浮かぶ。
「滅殺」
「ご、ごめんなさぁぁぁいっ!」
「丹羽くんになにすんのよおおおぉぉぉっ!!」
ぱこーん。
快音一響。
梨紅が、手にしたラクロスのスティック先端部分で、坪内さんの後頭部、それも延髄をピ
ンポイントでを殴打していたのだ。
鋼鉄の拳鬼も、背後から不意を突かれてはひとたまりもなく、糸の切れた傀儡人形のごと
く地面にくずおれていった。
「丹羽くん、だいじょうぶ!?」
梨紅がかけよってへたりこんだ大助に手を貸して引き起こす。
「う……うん」
まだぼんやりと喪心した様子で、どこからスティックを出したんだろう、などとぼんやり
考えながら立ち上がった。
「ごめんね。坪内さん、若い頃ストリートファイトとか地下格闘なんかでならしてたみた
いで、今もたまーに血が騒ぐみたいなの」
ストリートファイト? 地下格闘?
「そ、そうなんだ……」
なにをどうつっこんだものやら。
「もおっ、坪内さんってば、若くないんだからほどほどにしないと」
そう言って、タキシードの襟首をひっつかみ、うんしょと身体を引きずり始めた。
重そうだったけど、いかに日頃梨紅を大事にしている大助とはいえ、恐怖の権化たるその
物体の運搬をぼくも手伝うよとは、とても言えない。
「よいしょっ……じゃあ丹羽くん、また明日、学校でねー」
「じゃ、じゃあね……」
呆然と、ずるずると坪内さんをひっぱりながら、ぶんぶんと元気よく手を振るその姿を見
送る。
梨紅さんって―――。
冴えわたる月光の下、少しだけ彼女が遠く見えた、冬の夜。
さて、それ以来。
「梨紅さん……」
「丹羽くん……」
ふたりの世界。
少し上向いて瞼を伏せる梨紅に顔をよせ―――。
月光を背に仁王立つ鉄拳執事の姿が。
『お嬢様に手を出すモノには、死』
「わあごめんなさいごめんなさい」
「どうしたの?」
「え? ……あはは、なんでもない、なんでもない」
フラッシュバックに悩まされる大助だったり。
――― 了 ―――
非常に面白かったんだけど…
そうしてこんな改行に?
379 :
367:03/10/14 15:48 ID:yeKmurBR
>>378 2chでの投稿経験が少ないため、文章成型の難しさを体感しました。
いや、お恥ずかしい。
>>367氏
乙です。
こういう、新しいキャラ性格の開拓があったあとに、
あらためてアニメを見ると面白いvv
>>125氏
乙でした。
C Partも無事に終わったようで・・・
いやぁ〜〜・・・ほんと125氏の作品はいつ見ても面白いですなww
381 :
葛利葉:03/10/16 07:39 ID:HHaq8DH/
はじめまして。葛利葉と申すものです。
稚拙な上にエロ薄でSS処女作(しかも無駄に長い)ですが、
こんな私もここに書き込んでいいですか?
382 :
葛利葉:03/10/16 08:18 ID:HHaq8DH/
―大助Side―
くぅんっ……あ、あんっ……
どうしてこんな事になっているんだろう……?
思考がどうにもはっきりしない。
わかっている事と言えば目の前でよがり狂っている梨紗と、
部屋の隅で小さくなって震えている、しかし目を逸らす事の出来ない梨紅、
そして快感を感じ続けている自分の、自分のではない躯。
そして床に落ちている純金の、やたらと緻密な細工が施されているハンドベル。
自分にわかるのはせいぜいその程度だった。
……ひゃぅん……んんっ……
真綿に頭から突っ込んでいるようなぼやけた思考でも、考えつづければ何かが思い出せる。
――そうだ、確か「エキムの鐘」をとって来る事が今回の仕事だったはず。
盗み自体はあっさりと終わった、はずだ……。
はぁぁぅんっ……あぁっ……
今回は日渡はいなかった。何故かは判らないし、今はその事を考える余裕もない。
躯から押し寄せる快感の波はいつまでたっても快感だったし、
目の前でよがる梨紗はさらに劣情を掻き立てる。
――ぁん……うぅん……
383 :
葛利葉:03/10/16 08:20 ID:HHaq8DH/
―――「エキムの鐘」
それがこの事態を引き起こしたことは想像に難くない。
ダークやじいちゃんは「争いがあれば、それを更に激化させる危険なもの」と言っていたが、
こんな事態を引き起こすなんて聞いていない。
思考がふと途切れる。後ろから突いていたのにいつの間にか、梨紗の顔が正面に見える。
それに気づいた瞬間、押し寄せる快感は一気に増した。もう止まれそうにもない。
止まる力もない。梨紗を犯しているのは自分なのに僕じゃない。
ああぁぁんっ……も、もうらめぇぇっ……
快感を享受しているしている自分と、それをぼんやり客観視している自分の意識が急に混濁する。
あぁ、またイッてしまうのか……。絶頂を迎える寸前、急にはっきりした意識がそうとらえる。
ふわああぁぁぁぁっっっんんんん!?
まるで意識ごと、思考ごと、全てを吐き出すかのように躯は梨紗の体内に欲望を吐き出す。
これまで何度その行為を行ったかは霧の晴れた思考でも思い出せない。
はぁ……はぁ……はぁ……
再び、霧がかかってきた思考の中で僕は、
はぁ……はぁ……はぁ……
という、梨紗ともう一人の自分ではない自分の息遣いを聞いていた……。
そして霧のかかった頭はふと思う―――
―――なんでこんな事になっているんだろう?
―――絶望を告げる鐘は、すでに鳴らされていた……
―大助Side End―
384 :
葛利葉:03/10/16 08:23 ID:HHaq8DH/
↑とりあえずはこんなノリ。
「場違いだ」とか「空気嫁」とか、あったらでいいですから感想よろしこ。
イイデスヨイイデスヨ!
続きをカモーン!
386 :
葛利葉:03/10/16 18:03 ID:HHaq8DH/
許しが出たようなので
>>385さんの為に第二章「梨紗編」です。
先に謝っておきます。
梨紗スキーな方々、ごめんなさい。
387 :
葛利葉:03/10/16 18:05 ID:HHaq8DH/
―梨紗Side―
その事を知ったのは、昼食後に見ていたニュースでの事だった。
『本日、東野町第4美術館にダークからの予告状が届きました。
時間は午後10時、今回のターゲットは「エキムの鐘」。純金でできたハンドベルで、
争いが絶えなかった頃、この鐘を鳴らすとその戦いには必ず勝利していた、という
逸話も残っているものです。
またこの件に関しまして、ダーク対策課の冴原警部は―――』
そのニュースを聞いた瞬間、今日の予定は決定した。
「ダークさんの為に、一杯おめかししなきゃ!」
そう叫んでソファーから立ち上がると、隣に座っていた双子の姉、梨紅はジト目でこっちを見ている。
「何よ。好きな人の為に精一杯のことをしたい、って思ってるのが何か変なの?」
少し棘を含んだ言い方に一瞬口をつぐんだ梨紅だけど、
「ダークなんてあんな変態、さっさと警察に捕まるわよ」
しかし負けじと梨紅も言い返す。
好きな相手を変態呼ばわりされて黙っていられるほどあたしも大人じゃない。
敵意を丸出しにしているのを自覚ながら梨紅の顔を正面から見る。
「だいたいねぇ、ことあるごとにダークさんを変態呼ばわりしてるけど、
何か理由があって言ってるの? 推測ならダークさんに失礼よ!」
このあたしの反論に顔を伏せ、口をごにょごにょさせている梨紅。
しばらくそうしたかと思うと、突然立ち上がり、
「理由なんていいでしょ! ともかく、あんな奴に会うのは認めないから!!」
そう言い残してリビングを出て行く梨紅。
ばたんっ、と扉が勢いよく閉められ、反響する。
「……別に梨紅に認めてもらう必要なんてないもんっ!」
私以外誰もいなくなったリビングで私は一人天井を仰いで叫んだ。
恋する乙女は時に狭視野だった……。
388 :
葛利葉:03/10/16 18:09 ID:HHaq8DH/
「……今夜も無事に抜け出せた♪ ダークさーん、待っててね〜」
今日は眠いから早く寝ると嘘をついて部屋に戻り、頃合を見計らって家から抜け出した私は上機嫌だった。
梨紅はあれから話もしてないし、晩御飯が終わるとさっさと部屋に戻っていった。
いつもは『あんたは家にいなさい!』とか言って出してくれないのに。
だから今日に限っては喧嘩も歓迎だ。
ここから第4美術館までは30分くらい。歩いて行けばちょうどいい時間だ。
ダークさんのことだからすぐに盗んじゃうんだろうな。
そんな事を考えならが街灯の下を通り――
「梨紗」
「▲☆‰ё香閨浴\――ッ!?」
はたして、梨紅がそこにいた。
「梨紅!? どうしてこんな所に?」
非難の眼差しを含めつつ、ばくばくいっている心臓をなだめながら問う。
梨紅は暗がりから街灯の明かりの下に歩を進めつつ答える。
「梨紗が何度言っても聞いてくれないから、直接あいつにガツンと言ってやるの。
そうすればもうあいつだって梨紗の前には現れないだろうし。
その方が梨紗の為なのよ。梨紗だってわかるで―――」
「わからないわよぉっっ!!」
389 :
葛利葉:03/10/16 18:11 ID:HHaq8DH/
私は思わず叫んでいた。だけど、これだけは譲れない。
ダークさんを諦めたら、きっとあたしはあたしで無くなってしまう。
彼を想う時、どんなに胸が高鳴るかこの姉はわかってくれない。
わかってくれようともしない。
彼に一目会えるかもとわかった時に、どんなに嬉しいかこの姉はわかってくれない。
わかってくれようともしない。
彼と二人でいる時、他に何もいらないという感情が沸く事をこの姉はわかってくれない。
わかってくれようともしない。
『梨紗のため』という言葉で誤魔化して、あたしの気持ちをいつも置いてけぼりにしている――
――双子の、姉。
「あたし、もう行くから。ついてこないで」
そう吐き捨ててその場を去る。もうのんびりしている時間はない。
早く行かないとダークさんが盗みを終えてしまうかもしれない。
「―――。……梨紗」
「ついてこないでって言ってるでしょうっ!?」
大声を張り上げる私に、一歩前に進もうとしていた梨紅は立ち止まる。
その驚いたような、引きつったかのような表情にも苛立ちを覚える。
「大体、姉ってそんなに偉いの? あたしには自由に恋愛する権利もないの?
好きな人と一緒に居たい! 好きな人の役に立ちたい!
誉められたい! 笑いかけてほしい! なんだって……してあげたい!
それのどこがいけないのっ!? ねぇ……梨紅っ!!」
一通り叫び尽くすと、残ったのは静寂だけだった。
梨紅の嗚咽が聞こえたような気がしたが、前がぼやけてうまく見えない。
自分の荒い呼吸で何も聞こえない。
―――それ以外は私にとって静寂そのものだった。
390 :
葛利葉:03/10/16 18:12 ID:HHaq8DH/
どれくらい時間がたっただろう?
長いような短いような、永遠と一瞬の隙間。
「それじゃ、わたし……行くから」
その声が涙声に聞こえないことを祈りつつ、第4美術館へ向かって走りだす。
ダークさん、ダークさん、ダークさん、ダークさん、ダークさん、ダークさん、
ダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさん
ダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさん
ダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさん
ダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさんダークさん―――
あたしにはもう、他に何もなかった……。
はぁ……はぁ……
どこからか聞こえる荒い息遣い。聞いているとむかむかする。
第4美術館はちょっとした山の上にある。普段ならトロッコを使うところだが、
駅の位置と待ち時間の関係から自分の足で登ったほうが早いのは昼のうちに調査済みだ。
はぁ…はぁ…はぁ…
さっきより息遣いの間隔が短い。非常に耳障りだ。
大体、この坂は何なの? そんなにあたしとダークさんを会わせたくないわけ?
何もかも、ダークさん以外は全て敵に思えてくる。
全ては、あたしと彼を引き裂く気なのね―――。
街灯の下で腕時計に目をやる。
午後10時を5分ほど回っている。急がなくては。
街灯と言えば、何か嫌な事があったような……?
そんな事を気にしてる場合じゃない。
ダークさん……。
再び走り出そうとしたとき、目の前に『闇』と言う名の漆黒が舞い降りた。
あたしは、心に浮かべたいとしくていとしくてたまらない人の名を口に出した。
「―――ダーク、さん」
391 :
葛利葉:03/10/16 18:14 ID:HHaq8DH/
「やっぱり梨紗だったか。ん? 梨紗、目が赤いじゃねぇか。どうした?」
彼は事も無げにそう言った。まるで、大怪盗である彼と、一般人である自分を同じ立場であるかのように。
嬉しかった。ただ嬉しかった。
何にかはわからない。彼と会えたことかもしれないし、彼が話しかけてくれた事かもしれない。
姉や親と違って横からの会話だったことかもしれない。
わかっていることはただ一つ。この場にいるのは、ダークさんとあたしだけってこと。
「何でもないの。大した事じゃないわ」
そう、ダークさんといること以上に重要なことなんて何一つない。
ダークさんは私の全て!
「そうか。ま、心配だから送っていってやるよ。
俺は女の子には優しいのがウリでね」
…………
………………
……………………
ダークさんは私の全て。それは間違いない。
じゃぁ……
「梨紗? ホントに大丈夫か?」
――あたしはダークさんの全て?
その考えに至った時、あたしは恐怖のあまりへたりこんでしまった。
そしてそのまま―――
「おい? 梨紗、梨紗! くそっ、どうしたってんだいきなり!?」
意識は闇へと落ちていった。堕ちていった。
深く、深く、深く―――『闇』へと。
392 :
葛利葉:03/10/16 18:16 ID:HHaq8DH/
目が覚めた時、そこがどこだかわからなかった。
ベットがあり、自分はそこに寝かされている。
あたしの家でないことは確かだ。
じゃぁどこ?
「梨紗、気が付いたか」
傍らから声がかけられる。聞き間違うはずもない。
「ダークさん」
振り向きながらその名を呼ぶ。
はたしてそこには、ダークがいた。手には今回の収穫である「エキムの鐘」が握られている。
「よかった…いてくれた……」
心底安堵の声を漏らす。しかし、ダークは少しばつが悪そうに、
「すまねぇな。調子が悪いの気づいてやれなくて。
家まで連れて行こうと思ったんだが、雨が降ってきちまって……。
それでとりあえず休めるところを、と思ってな……」
そこまで言われて、やっと気づく。ここはそういうところなのだという事を。
あたしにとっては好都合だった。あたしは、ダークさんの他にはなにもいらない。
なにも、なにも――
「梨紗の目、覚めた?」
不意にそんな声とともに『アノ女』が扉の奥から出てくる。
「おう梨紅。とりあえずは大丈夫みてぇだ。
お前も雨に濡れちまったからな。風邪でも引いて倒れられちまったら事だしな」
「なによそれ」
「あ、ああぁ……」
ダークさんが、『アノ女』と話してる。『アノ女』の心配をしてる。
やめて、あたし以外見ないで。あたし以外話さないで。あたし以外心配しないで。
あたしとダークさん以外、なくなっちゃえばいいんだ。
そうだ、みんないなくなっちゃえ。
393 :
葛利葉:03/10/16 18:18 ID:HHaq8DH/
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんな――――――――――――――
「あはははははははははーーーーーーーっ!!」
そうすればダークさんはあたし以外見ないはなさないシンパイシナイ。
あたしだけ、あタしダけ、アたシダけ、アタシダケ……
「ダーク、さん」
セカイノスベテヲ
さっきの笑い声とはうって変わって蚊の鳴くような小さな囁き。
テキニマワシテモ
あたしは呆然としているダークさんの傍らまで行くと、顔をよせ―――
アタシハだーくサントイタイ
―――優しくその唇を重ねた―――
その時、ダークが持っていた「エキムの鐘」が床に落ち、
りぃぃぃん……
と静かに鳴った。
―――絶望を告げる鐘の音が……
―梨紗Side End―
394 :
葛利葉:03/10/16 18:28 ID:HHaq8DH/
_| ̄|〇
長い……非常に長い……
第三章「ダーク編」はともかく、最終章「梨紅編」は「梨紗編」を超える(予定)なのに……。
楽しみにしている人はいないでしょうが、(いても「梨紗編」でいなくなったか?)
第三章ならびに最終章は今しばらくお待ちください。
感想・意見(批判含む)は随時募集中です。
最後に、
梨紗スキーな方々、まじスマン。
いやぁ・・・
こういうのもしばらくなかったから(゚∀゚)イイ!!ですなぁ〜
俺個人としては、続きキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━イ!!!
なわけですが、おそらく、ほとんどの人が、期待のはず。
396 :
125:03/10/17 00:54 ID:6vNkq0oo
文章ウマー( ゜д゜)
期待してます。
397 :
137:03/10/17 20:33 ID:rMqZxITY
葛利葉氏、キターイしてますよ。が。
いつになったら漏れは続きが出来るんだろう・・・(´・ω・`)
お知らせ
当方の保管庫に、「少女マンガの部屋」を新設しましたので、
それに伴いこのスレのSSも移動することになりました。
400 :
125:03/10/18 19:07 ID:FtG9f0X8
>保管人さま
乙彼であります。
401 :
葛利葉:03/10/19 04:02 ID:PdoV1DUH
えと、なんと言っていいのやら……。
とりあえず完成しました。
あまりの竜頭蛇尾さに自分でテンションダウンしかねないものが……。
これからそれを人様にお見せするかと思えばどきどきモノです。
先に言っておきますと、DNスキーな方々、ごめんなさい。
402 :
葛利葉:03/10/19 04:03 ID:PdoV1DUH
―ダークSide―
「――なっ!?」
俺は声を上げずにはいられなかった。
梨紗にキスをされたから、ではない。あの忌々しき「エキムの鐘」が鳴ったのだ。
魔力もそこを尽き、もう鳴ると思ってはいなかった鐘が、だ。
りぃぃぃん……
そんな音が静かに、しかし力強く頭の中にこだまする。
これは―――マズイッ!
俺は自分の魔力と思考を搾り取られるのを切に感じながら心の中でそう叫んだ。
『エキムの鐘』
大戦中においては自軍に確実な勝利をもたらす、象徴的な鐘だった。
その鐘の音色が及ぼす効果は単純な2つのみ。すなわち―――
思考の単純化
感情の増幅
言ってみればそんな程度のものであった。
しかし、それで単純に攻撃衝動のみを持ち、自らの死をも厭わない集団ができあがる。
その集団がどれだけの敵を圧倒したか、想像に難くない。
もっとも、恐怖などの戦いに不必要な感情はもともと薬物によりほとんど感じなくなっていたが。
403 :
葛利葉:03/10/19 04:04 ID:PdoV1DUH
そしてこの場には俺と大助、梨紗、梨紅の4人しかいない。
この中の誰か――おそらくは梨紗だろう――が何らかの起因となって発動したに違いない。
鐘に魔力は残ってなかった。それは確実だ。
しかし、すぐ傍には極上の魔力――オレ――があった。
クソッ!! 魔力をほとんど持っていかれちまった。
自らの魔力が流出するのを止めるほどの魔力も残っていない自分に苛立つ。
生来、魔力的な部分で自らを支え続けて来た俺にとって、魔力は血液のようなものだ。
やがて、思考までも蝕まれるのは火を見るより明らかだ。
「それまでに何とかしねぇと、俺まで……」
そこまで考えて、目の前の光景にはたと気づく。
梨紗は熱っぽく、潤んだ瞳でこちらを見ている。
梨紅は何かに怯えた様にこちらの方向を見ている。
魔力を持ち合わせていない2人は鐘の音にあっさりと取り込まれたのだろう。
俺の事を想っていた梨紗と、突然声を上げた梨紗に一瞬怯えた梨紅。
2人の思考はその瞬間で停止しているかのようだった。
すなわち、永遠の刹那。
そして、増幅された感情は今感じている気持ちを更に強固なものにしているに違いない。
大助のことも頭をよぎったが、だんだんしこうがまとまらなくなってくる。
おれのまりょくがぼうぎょへきになってるとおもうんだがな。
「―――へっ、どうやらぴんちってやつか?」
404 :
葛利葉:03/10/19 04:05 ID:PdoV1DUH
そんな軽口を叩くのが本当に限界だった。
生きることそれ自体に常に魔力を消費するダークは、人間と違いものを考えるのにもそれを消費する。
魔力の尽きかけたダークはすなわち、魔力を消費しない――できない――行動しか取れない。
―――本能の赴くままに。
はたしてその対象は、目の前に「あった」―――
りぃぃぃん……
と、まだ鐘の音が頭の中で反響していた……
―ダークSide End―
405 :
葛利葉:03/10/19 04:07 ID:PdoV1DUH
―梨紅Side―
―――涙が止まらない。
―――言い返すことが出来なかった。
―――追いかけることでさえも。
―――あぁ、助けて。丹羽君……。
―――わたし、どうしたらいいの?
―――ねぇ、丹羽君……?
『大丈夫だから、梨紅さん』
どこからかそんな声が聞こえたような気がして、我に返る。
『大丈夫』、丹羽君はいつもそう言って自分が無茶をする。
そんな姿を見てわたしがどれくらいはらはらするのか考えてないみたい。
でも、はらはらするのとおんなじくらい、ほっとする。
あぁ、丹羽君はやっぱり丹羽君なんだ。
そう思うとほっとする。理由なんてわからない。
だけど、だけど丹羽君には無理をさせたくない。
丹羽君に頼りたい気持ちと、丹羽君に心配をかけたくない気持ち。
その両方を抱えたまま、わたしは梨紗の去った街灯の下から離れる。
闇の中へと……。
406 :
葛利葉:03/10/19 04:08 ID:PdoV1DUH
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、梨紗を探したのよ。
だってそうでしょ?
大切な妹なんだから。
それから……それから……。
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、梨紗を見つけたのよ。
だってそうでしょ?
大切な妹なんだから。
それから……それから……。
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、ダークを問い詰めたんだっけ。
だってそうでしょ?
大切な妹なんだから。
それから……それから……。
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、とりあえず横になれるところを探したのよ。
だってそうでしょ?
大切な妹なんだから。
それから……それから……―――――
407 :
葛利葉:03/10/19 04:11 ID:PdoV1DUH
………………
・………
……
―――――それから……それから……それから……それから……
なんだっけ?
わたしの頭の中でそんな考えが延々と垂れ流されてるのをどこか遠くに自覚する。
それは、私のこころが遠くに逃げているからできること。
わたしの心を満たしているのは恐怖。
こわいこわいこわいこわいこわいこわい。
狂ったように腰を振りつづける女。
狂ったように腰を振るつづける男。
目をそらさないわたし。
目をそらせないわたし。
動かないわたし。
動けないわたし。
こわいという事が恐怖。
恐怖をこわいと感じる。
こわいこわいこわいこわいこわいこわい。
408 :
葛利葉:03/10/19 04:12 ID:PdoV1DUH
ねぇ、たすけてよ……丹羽くん。
わたし、とってもこわいんだよ?
動けないくらいこわいんだよ?
目の前の二人がとてもとてもこわいんだよ?
ねぇ……ねぇ……ねぇ……?
どうして何も言ってくれないの?
丹羽くん……わたし……あなたが……
―好き―なんだよ?
丹羽くんがいてくれたら、どんな事だって頑張れちゃうよ?
だから、何か言ってよ。ねぇ、丹羽くん……。
ただ流れ続ける時間。
一瞬と一瞬を繋ぐのが「時間」という概念なのか。
あるいは単純に、無意味に、終わり無く、始まり無く、流れ続けるものなのか。
―――未来永劫過去永劫。
409 :
葛利葉:03/10/19 04:13 ID:PdoV1DUH
しかし、そこに生きる者たちにとって永遠なんてありえない。
どんな者にだっで……どんな物にだって……。
それに例外はなく、この無限地獄に思える状況も転機を迎える。
ついに魔力の底がついたダークの、大助への変化によって。
二度と戻れぬ道へと……。
あるいは、事態はとっくに特異点を超えてしまっていたのか……。
「あああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」
その叫び声でループに入っていた思考が一瞬停止する。
なに? もう考えたくないよ。こわいよ。
目の前の光景を見るのがこわい。
目の前の光景を見ないとこわい。
目を開くのがこわい。
目を閉じるのがこわい。
わたしはどうすればいいの?
ねぇ、丹羽く―――
はたしてそこに、求めつづけた『彼』がいた。
410 :
葛利葉:03/10/19 04:15 ID:PdoV1DUH
わたしの大切な妹と交わっている、わたしの大好きな丹羽君。
「…………………は、ははは……、あははは……」
咽が渇いた音を立てている。
耳は、何かが崩れ去るのを聞いた。
ニワクン、ワタシコワレチャッタヨ……?
…………………………………
……………………
……………
411 :
葛利葉:03/10/19 04:16 ID:PdoV1DUH
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、梨紗を許せないと思ったのよ。
だってそうでしょ?
大切な丹羽くんをとろうとしてるんだから。
それから……それから……。
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、殺そうと思ったのよ。
だってそうでしょ?
大切な丹羽くんをとろうとしてるんだから。
それから……それから……。
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、駆け寄って蹴り飛ばしたんだっけ。
だってそうでしょ?
大切な丹羽くんをとろうとしてるんだから。
それから……それから……。
えっと、それから……なんだっけ?
そうそう、『この程度じゃ足りない』って思ったのよ。
だってそうでしょ?
大切な丹羽くんをとろうとしてるんだから。
それから……それから……―――――
412 :
葛利葉:03/10/19 04:17 ID:PdoV1DUH
………………
・………
……
―――――それから……それから……それから……それから……
まぁいいか。
部屋の隅で動かなくなったモノは放っておいて。
そんなことより丹羽君よ。
わたしの方が丹羽君をいっぱい好きなのに、梨紗とエッチしちゃうんだもん。
丹羽くんは許してあげるけど、梨紗はダメ。
だからお仕置きしてあげたの。
それも梨紗の為なのに、抵抗するなんて……。
姉の気もちが全然わかってないわね。
運動部の私が、梨紗に負けるはずないじゃない。
まぁいいか。
部屋の隅で動かなくなったモノは放っておいて。
そんなことより丹羽君よ。
ほら、梨紗にかかりっきりだったから寂しそうじゃない。
ごめんね、ひとりにして。
わたし、丹羽君の為だったらなんでもできるよ?
だから、一緒にいてもいいよね?
だから、役に立てるよね?
だから、誉めてくれるよね?
だから、そのためにはなんだってするよ?
好きだから。
413 :
葛利葉:03/10/19 04:18 ID:PdoV1DUH
そのあとは、丹羽君の好きなようにやらせていた。
だって、丹羽君がしたいことだったらなんだってさせてあげたい。
だって、丹羽君がしてくれることだったらなんだって気持ちいい。
エッチなんて、初めてだったけど、丹羽君とだから。
『大丈夫』だよ。
丹羽君が『大丈夫』という時は、無茶するときが多いけど、
わたしは無茶なんかしてないよ。
梨紗も、ダークとエッチしてるときはこんな気持ちだったのかな?
そうだといいな。
だって、大切な妹だから。
わたしは、そんな事をぼんやり頭に浮かべながら今の幸せをかみしめていた……。
丹羽君がいっぱいいっぱい出すから、おなかがちょっと出てきちゃったよ。
すらっとした身体つきは自慢でもあり、コンプレックスでもあったが、
今はおなかだけがぽっこり膨らんでいる。
まぁ、それはそれで幸せなんだけど。
今日は危険日だから、子供できちゃうかもね。
丹羽君との子供。きっとかわいいだろうなぁ。
そこまで考えて、ふと躯に気だるさを覚える。
ちょっと疲れたね。休もうか。
その時、わたしはちょっとした考えを思いつく。
丹羽君のきれいにしてあげる。
わたしの口できれいにしてあげる。
あ、気持ちよさそうな顔してる。
ふふっ。丹羽君ってかわいい。
感じてる丹羽君の顔を見てると、なんだかいたずらしたくなっちゃう。
そうだ、軽くかんじゃえ。へへへ……。
414 :
葛利葉:03/10/19 04:18 ID:PdoV1DUH
その考えが甘かった。
自分の局部を突然襲った痛みに、鐘の音に捕らわれていた大助は
『自分を傷つけるもの=敵』と認識してしまった。
その結果―――
「―――かはっ!?」
突然、大助が離れたかと思うと、両手で首を持ち上げられ、
きりきりと締め上げられる。
小柄な丹羽君がわたしを持ち上げている。
そっか……丹羽君、わたしを殺したいんだね?
いいよ。丹羽君のしたい事で、私にできることがあれば何だって……。
わたしは丹羽君が好きだから。
わたしがどうなっても……。
だから……だから……
「…………わたしがいた事は……覚えてて……ね?
それが……わたしの…………たったひとつの……お願い」
そして、わたしの意識は―――
―梨紅Side End―
_| ̄|〇
長かった……非常に長かった……
私一人のためにこんなにレス数を使っていいのかと
小一時間問い詰められそうなほどに……。
私的には梨紗・梨紅で静と動の狂気を表現したかっただけなんですがね……。
(とゆーか、それがいかんのか?)
前世で魔王にかけられた呪いのせいか、こんな文体しか書けない自分が恨めしい。
相変わらず、感想・意見(批判含む)は随時募集中です。
私はこういう事にはムラっけが激しいので、
次回作がどうなるかわかりませんが、今回の話を読んで、
それでもリクエストがあれば善処はしていく所存で(国会議員風ry
↓の話は、「エピローグ」と言うより「外伝」に近いですので、
適当に読み飛ばしてOKです。
では、再び運命の交わるときに会い見えん事を……。
416 :
葛利葉:03/10/19 04:37 ID:PdoV1DUH
―語り部Side―
さてさて、物語の続きが気になるところだが、
残念ながらもう誰かの視点で話すことはできないぜ。
なぜかって?
そりゃ簡単、もう誰も生き残ってないからな。
ダークは魔力残量が無くなって存在できなくなったし、
梨紗は撲殺、梨紅は首の骨折られて死んじまった。
筋力が本来セーブしてる力を使うと結構なことになるんだな。
いやはや、俺もびっくりしたさ。
ん? 大助?
あぁ、あいつね。あいつは自らの半身が死んだときに
既に死ぬことが確定されてたんだよ。
ただ、魔力との関わりが比較的疎遠だった為にちょいと
死ぬ時間がずれただけさ。
まぁいいじゃん、誰だっていつかは死ぬんだし。
俺も、あんたも。
417 :
葛利葉:03/10/19 04:38 ID:PdoV1DUH
とゆーか、俺は何者かを疑問に思う奴もいるだろう。
心優しい俺は答えてやるぜ。
「我輩は語り部である。名前はまだ無い」
どーよ? 俺のユーモアセンスが溢れてるだろ?
……はいはい、すべりましたさ。
ごめんなさいね。
じゃあ、
「我思う、ゆえに我あり」
これでどーよ?
答えになってねーよーな気もするが、まぁいいじゃん。
重要なのは今までの話で、さりげなく合いの手を入れてたってことよ。
所々に客観的な、本人視点でない文章があっただろ?
あれは俺がさりげに追加しておいたってワケよ。
どーよどーよ? おかげで読みやすかったっしょ?
感謝するよーに。
418 :
葛利葉:03/10/19 04:39 ID:PdoV1DUH
あんまり俺のことばっかり話すのもなんだな。
物語についても語っておこうか?
と、思ったが、そんなメンドクセェ事は作者に任せとくわ。
「僕はもう疲れたよ……。
なんだか眠いや……」
とか言いつつ冬の教会の床に寝そべっておくとするか。
おっと忘れてた。
俺からお前らに一言、どうしてもこれだけは言っておかないとな。
『今回の物語の破滅を迎えた原因、悪かった事って何だったんだろうな?』
それじゃお前ら、また機会があったら会おうや!
―語り部Side End―
419 :
125:03/10/19 09:49 ID:g2K13xDW
正直面白かったです。
救いようのない話はあまり書きたくない分、書かれると弱いw
次もキターイ。
やっぱ125氏はそういう性格なんですねww
俺も同じような感じかな?
とにかく、面白かったッス。
次はあるならキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━イ!!!
します。
精進精進日々勝神!!!!!!
職人さんがた、頑張ってください
確かにムラッけが多いですね。w
422 :
弧慮:03/10/21 16:00 ID:iL8a9TkH
保守
423 :
名無しさん@ピンキー:03/10/21 16:02 ID:cL3dwOQi
>423
吊り?
保守
保守
427 :
名無しさん@ピンキー:03/10/26 09:57 ID:zbyBU39t
保守
428 :
名無しさん@ピンキー:03/10/27 16:59 ID:/EwArtn/
ほしゅ
429 :
125:03/10/28 01:25 ID:wleYJObV
――腰の重さと下腹のひんやりとした感触を除けば、丹羽大助の目覚めは良い。ほぼ
毎朝こし摂られるようになり早三ヶ月、以来一度覚醒した頭は二度ねに悩まされることも
ない。
身体を起こし、恒例となった溜め息を吐きつつベッドから這い出して乾きかけた糊のよう
にかびかびになった精液を拭き取る。着替えとともにトランクスを穿き替え、精液が付着し
たティッシュをもってトイレへ向かう。家族に見つからないよう持てる技術を駆使す
るその姿、まさに怪盗の如し。
夢精の証拠を見事隠滅し終えた彼は何食わぬ顔でダイニングに行き、そこで家族に挨
拶してトーストに噛り付いた。テレビでニュースが流れるが、八月になってからは怪盗ダー
クの話題はほとんど上っていない。
テレビを見終わる頃には時計の針は九時を指していた。事前に用意しておいたバッグを
肩にかける。中に入っているのはスケッチブックと画材と、ウィズだ。
「行ってきまーす」
言葉を残し、彼は家を飛び出した。
430 :
125:03/10/28 01:27 ID:wleYJObV
――その様子を、坪内は訝しげな表情で、といっても親しいもの以外にはまず気づかれ
ないような僅かな変化であるが、見つめていた。
「…………梨紗様」
耐えかねた初老の男性はとうとう原田梨紗の背中に声をかけた。
「なに?」
彼女は振り返りもせず答えた。薄っすらとブラジャーのラインが浮かぶシャツに短パン、
そしてヘッドバンドというおよそらしからないスタイルであった。
「…………お出かけでございますか?」
「うん。ちょっとね、ランニングでもしようかと」
玄関先で入念なストレッチをしながらさらっと言われ、坪内は軽いめまいに襲われた。
運動とはまったくもって無縁、絶望的なまでに深い溝と圧倒的なまでに高い山々が連な
っているほどの隔たりがあると思っていた梨紗がランニングとはとてもではないが信じら
れなかったからだ。
実のところではあるが、梨紗は運動が大嫌いというわけではない。その気があれば運動
部に入れていただろう。しかし彼女は運動を避け続けていた。というのも、なにをやっても自
分より高い成果を出してしまう姉の原田梨紅と趣味や好みが重なってしまい、比べられてし
まうことを嫌ったからだ。姉に勝てない劣等感か、惨めさか、本人すら無意識のうちに姉とは
違うものを好むようにしていた。
「さて、と」
上げた顔はそんな屈折した暗い感情とは無縁の、ヤル気に満ち満ちた輝きを帯びていた。
「あ、そうそう。梨紅には内緒ね」
この言葉はただ単に知られてから説明するのが面倒という思いから出たものだ。
「じゃあ行ってきます」
そして彼女は街のどこかで絵を描いているはずの彼を捜すために駆け出した。その先で
筋肉痛に悩まされることになるとも知らずに。
431 :
125:03/10/28 01:28 ID:wleYJObV
――太陽が真上に射しかかる頃、学校のグラウンドではほとんどの運動部が午前の活動
を終えようとしていた。ラクロス部も例外ではない。グラウンドで輪を作り、整理体操を行って
いた。
輪の中には当然のように原田梨紅の姿もあった。夏休みに入ってから今の今まで部活に
は毎回顔を出していた彼女の肌は太陽の光を存分に浴び続け、綺麗に澄んだ肌色から健
康的な褐色に代わり始めていた。運動部に所属している女子の大半が何らかの日焼け対策
をしている中、肌を焼くことにそれほど抵抗を抱いていないのは稀有であるが、彼女らしいと
いえばらしい。
「ねえねえ」
部室へ戻るところに同じ二年生の部員が声をかけてきた。彼女の肌は今話題の日焼け止
めクリームで紫外線を見事にカットし、太陽の光に照らされ白く輝いている。
「梨紅もそろそろ日焼け対策したほうがいいよ」
「? なんで」
唐突にそう切り出され、梨紅は疑問符を浮かべた。
「そうそう。日焼けなんて別に気にしないし」
二人の間に程よく焼けた褐色の肌をした部員が口を出し、梨紅もその言葉に首を縦に振
った。白い肌の女子は何か言いかけたが、すぐに意地悪い笑みを浮かべた。
「な、なに……?」
「べっつにぃ。休み明けたら分かると思うよ」
少し引いている二人を残し、彼女はひらひらした足取りで部室へと去って行った。残された
二人は顔を見合わせ、首を傾げた。
練習着の袖を捲くり、日焼けの跡がどうかしたのだろうかとまじまじと観察した。
「…………ぽっきー」
真っ直ぐ伸びた腕を見て、一言だけ呟いた。
432 :
125:03/10/28 01:29 ID:wleYJObV
――自作のパスタを食し終えた福田律子は自分のパソコンを立ち上げた。起動するまで
の僅かな時間でいそいそと部屋の細かなところを整理整頓する。
椅子に腰掛け、特にこれといった外部機器の類はほとんど取り付けていない、いたって
ノーマルなパソコンを操作し、早速ネットの渦中に飛び込んだ。お気に入りに登録してある
大手掲示板のいつもチェックしている板へ行く。
スレを覗き、気になる発言にはレスをする。荒らしや煽りにもめげず、彼女は純愛板に住
み着いている。
「……私もこんな恋愛してみたいなぁ」
溜め息交じりにそう漏らした。気になる男子はいるが、彼には好きな人がいる。そのことが
少し残念だと思っていた。
「よ、横取りなんてよくないし……あわわぁ」
独りで妄想して勝手に顔を真っ赤に染め机に突っ伏した。
「はうぅ……、そだ」
彼女は自室を出ると電話まで向かい、ある番号をなれた指使いで押した。数回の呼び出
し音の後、落ち着いた温和な声が受話器から聞こえてきた。
「あの、福田ですけど真理さんいますか? はい、はい。…………あ、真理。うん私。あのさ、
明日暇? え、うん、そっか。ならいいよ、うん、またね」
電話を切ると同時に息を一つ吐いた。夏休みに入り何度か誘いをかけているがほとんど
断られているからだ。
「…………怪しい」
人類の進化系のような直感的な女性の勘が働いた。再び受話器を手にし、別の友人の元
へ電話をかけた。
433 :
125:03/10/28 01:30 ID:wleYJObV
――沢村みゆきはメガネをかけていた。それも顔半分が隠れてしまうほどの大きな丸メ
ガネである。彼女がカスタマイズを施したマイパソコンを使う際はいつもそのメガネをして
いる。
いつも覗く大手掲示板で住み着いているところは過激な恋愛板である。初めて足を踏み
込む時はかなり抵抗があったのだが、
(こ、こ、ここは年齢制限なんてないんだし)
そう言い聞かせ、震える指でクリックして以来定期的に巡回するようになってしまって
いた。元来真面目な性格の彼女は人一倍熱心にのめり込み、そういった方面の知識だけ
は人並み以上となっていた。真面目すぎるが故の非行である。
今も頭に血が昇り、鼻血が出そうになるほど興奮しているのを理性で堪えながら食い入
るようにパソコンに噛り付いていた、その時、
「みゆきちゃん、電話よ」
部屋のドアを開けて彼女の母が入ってきた。
「わぁぁぁーーっっ!!」
突然のことに身体が大きくびくついた。その際机に激しく膝をぶつけたが、とにかく急いで
ウィンドウを最小化させた。
「へ、部屋に入る時はノックしてっていってるでしょ!」
せっかく気分が乗ってきたところに水を差された彼女はメガネを外し、背後に接近していた
母に吼えるように言い放ったが、母はというとにこにこしたままみゆきに電話の子機を手渡した。
「それじゃあね」
ほほほとわざとらしいほど上品な笑い声を上げて母はすっと部屋から出て行った。母の
後ろ姿を威嚇するように睨みつけていた彼女はいきなりの事態で起きた動揺を落ち着かせ
るように数回深呼吸をし、それから受話器を耳に当てた。
「はい変わりました。ああ律子。どうしたの? 真理? ……うーん、そっか。そりゃちょっとは
気になるけどさぁ。……明日? でも…………」
結局、福田律子の熱い説得に負け、明日はあることをする羽目になった。
434 :
125:03/10/28 01:30 ID:wleYJObV
――雑用のため教師に呼び出されていた西村祐次はようやく帰宅するところだった。彼
は内心むかむかしていた。どうして自分だけが夏休みの午前に呼び出されねばならなかっ
たのかと。
呼び出すならば同じ委員長である沢村みゆきもそうするべきでしょうと教師に訴えてみ
たが、これくらいならお前一人でも十分だろという沢村に対する余計な気遣いのせいで独
りぼっちの午前を送る羽目になった。
「沢村がいれば、さりげなく話しかけたりなんかして……」
独りでぶつぶつと呟く様は端から見れば怪しいものだったろうが、幸いな事に彼の奇行
を気に留めた者はいなかった。
「西村くん?」
前触れもなく突然背後から声をかけられ、呟きとともに抱いていたよからぬ妄想を急い
で打ち消した。
「あ、原田さん」
振り返った先にいたのは程よくこんがり肌が焼けた原田梨紅だった。自転車を押してい
る姿から帰宅するところかと察した。校門に到るまでとりとめもない会話を交わした。
以下抜粋。
「そういえば休み明けたら修学旅行だったか」
「あ、そだね。どこだっけ? 南の方だっけ?」
「ああ。本当は違うところって予定だったんだけど、今年はプールが壊れたから海に変更
だってさ」
「そっか。でもあたしは海になってよかったなぁ」
「なんで?」
「だって海だよ、楽しそうじゃない! 開放的な気分になって気持ちいいよ絶対」
「うむぅ……、開放的か……」
「? どしたの」
「ん? いや、何でもない。っと、じゃあここで」
「うん、それじゃ」
(……海、開放的。これは……チャンスってやつか?)
人間どこかで思い切らなければいけない時がある。彼にもとうとうその時が訪れそうで
ある。
435 :
125:03/10/28 01:31 ID:wleYJObV
――カメラを携え、冴原剛は会場の一画へ急いだ。
「ちぃっ! もうあんなに集まってやがる」
彼にはカメラマン、いや今はカメコとしての意地とプライドがあった。ほかの冴えない
野郎どもより俺の方が数千倍マシな写真をとれるという自信を持っていた。
目の前に連なる男の肉壁の隙間を縫うようにして人だかりの中心へ向かう。そこには彼
が追い求める至高のコスプレイヤーがいるはずだった。
「だっしゃぁぁぁっっっ!」
中心に近づく頃には人の足元を這うようにしていた。人々の隙間から眩い閃光が連続し
て煌いている。とうとう彼は辿り着いたのだ。
カメラを構えてファインダーを覗くと、ベンチにツナギ姿の一人の若い男が座っていた。
「やらないか」
レンズが粉微塵に砕け散った。
同日、同会場、あるブースには長蛇の列ができていた。列を作っているのはほとんど女
性である。男性の姿はちらほらと見える程度である。
その列を迎えているのは日渡怜。ごく一部に熱狂的なファンを持ち、画の質、話の内容
のリアリティ、そのすべてがうけている、今が旬の同人作家である。
ちなみに今回の作品は男同士の熱い友情を描いた感動巨編である。もちろんモデルとし
た少年にはなんの断りも入れていない。タイトル『放課後の情事』。内容は割愛いたします。
436 :
125:03/10/28 01:33 ID:wleYJObV
長らくお待たせした上に短めです。
後半はちゃんとえっちくするのでお待ちください。
乙!
しかしまた、みんな揃って不健全な夏休みをw
さてそろそろ梨紅の巻き返しが見たいなと思う今日この頃…
やらないかって・・・w
おお、スレが動いた。
125さん、お疲れ様です。
まったりした(?)ひと夏の風景もよいものです。
しかし冴原、合掌。
日渡……。
440 :
名無しさん@ピンキー:03/10/28 18:17 ID:Za+WVq8O
日渡・・・・
とうとうそこまで落ちたか・・・(笑)
俺は嬉しいぞっ(爆)
>437
まったくだw
しかし、関本の姿が見えないな・・・?(ニヤリ
Bpartもキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━イ!!!
んでは〜
442 :
125:03/10/30 01:30 ID:c+7TQWl3
「石井さんの様子がおかしい?」
目の前にいる二人の女子に言われたことを確認するように繰り返した。
「うん」
「そうなんだって」
福田さんと沢村さんが同じように頷いてみせた。呼び出された原因はそれのようだ。
昨日、家に帰るなり福田さんから電話がかかってきた。訳は言えないが明日、つまり
今日になるけど、少し付き合ってほしいということだった。約束の時間に商店街にあるハ
ンバーガーショップに行くと、昼前で混雑する店内の窓際のテーブルに僕を待つ二人を
見つけ、同じように腰を下ろした。そして切り出された話がそれである。
「最近、遊びに誘っても付き合いが悪いの」
「それは石井さんにだって都合はあるし」
「でもいっつも断るなんて今までなかったんだよ。これは絶っっっ対に何かあるはずよ」
そう言う福田さんの目は酷く強い輝きを帯びている。本人の並々ならない気迫というや
つがひしひし伝わってくる。
「ま、気になることははっきりさせといた方がいいでしょ?」
沢村さんが軽い調子でそう言い、曖昧に返事をしつつ気になったことを二人に訊ねた。
「それにしてもどうして僕しかいないの? 他にも冴原とか、原田さんとかは呼ばなかっ
たの?」
「冴原くんは日渡くんと一緒に出かけてるんだって。梨紗はなーんか忙しいって」
「関本くんも用事あるって言ってたし、梨紅は練習試合が近いからって部活に行ってる。
西村は役に立ちそうにないから電話してない」
沢村さんが鼻でふっと冷笑するのを見て、西村泣くなと心の中で励ましておいた。
443 :
125:03/10/30 01:31 ID:c+7TQWl3
「だから僕だけ、か。それで、肝心の石井さんは?」
「そこ」
福田さんがテーブルの横の方を指差したのでつられるように視線を移した。大きなガラ
ス張りの窓の向こうには大勢の人で賑わう通りの様子が一望でき、その窓のすぐ前に肩ま
である黒い長髪を結った石井さんの後ろ姿が見え
「近いぃぃっっっ!!」
席から跳ね上がって突っ込んだ僕はそのまま二人に取り押さえられた。
「ちょっと! 大声出したら気付かれるよ!」
「よく考えて行動してよ!」
「二人こそよく考えて場所選びなよ!」
――数分後、僕らはハンバーガーを口にしながら石井さんが動くのを待っていた。
「やっぱり待ち合わせだよきっと」
「誰と?」
「そ、それはきっと彼氏……」
顔を見合わせた二人が同時に色を真っ赤に染めた。と思ったら、
「誰? 一体どこの誰なの!?」
「知らないよ! でも、でも私たちを差し置いて付き合うなんて、許せない!」
二人がわなわなと震えだした。友達が付き合ってるんなら素直に喜んであげればいいと
思うけど、世の中そううまくいかないのだろうか。
それにしてもここのハンバーガーは美味い。一口かじるとキャベツのしゃきっとした歯
ごたえの下にあるチーズの蕩けるような触感が優しく口全体を受け止め、さらに食い付く
とハンバーグの肉汁が口いっぱいに
『丹羽くんっっ!!』
「げほっ――?!」
まったりと味わっていたところに二人の声が響いたせいでむせ込んだ。ひりひりする喉
を潤すためにドリンクを半分ほど流し込んだ。
444 :
125:03/10/30 01:32 ID:c+7TQWl3
「は、はふぅ。……なに?」
「『なに?』じゃないわよ。なんで一人だけ優雅にハンバーガー食べてんの?」
ハンバーガーに優雅も何もないと思ったけど口にするのはやめた。ろくなことにならな
いと思った。
「そうだよ。真剣に真理のこと見張ってないとダメじゃない」
テーブルの上に身を乗り出して迫ってくる沢村さんに思わずたじろいだ。
「う、うん。それよりほら、外見てないと……?」
誰も石井さんを見ていないのはまずいし、何よりこれ以上二人に責められるのは嫌だ
という気持ちから外にいる石井さんに指と視線を向け、そこで彼女の変化に気づいた。
手を振り、明らかに何かに反応している。
「あわわ……うご、動くわよ」
「……」
「彼氏かな?」
固唾を呑んで見守っていると、颯爽と関本が出現し、二人は手を繋いで雑踏の中へと
消えていった。
『……………………』
あまりにもあっさりと自然になんということもない様子で、とてつもなく重大で信じ難くそ
れでいて目の前で起こった事実にきっかり十秒間、僕らの時が止まった。
そして猛然と店を飛び出した。
445 :
125:03/10/30 01:33 ID:c+7TQWl3
一心不乱に東野商店街(勝手に命名)を捜し回ること五分、見失っていた二人の後ろ姿
を捉え、さっと角に身を隠した。
「まさか、あの二人が……」
今まであまり接点はなかった気がするけど、一体どこでどういった経緯で付き合うように
なったかかなり興味がある。ひょこっと角から顔を出した。
「私、知らなかった……」
低いトーンで福田さんが漏らした。仲のいい友達が付き合い始めていたことを知らなかっ
たというのはショックなのだろう。僕の頭の上に彼女の顔が生えた。
「不純よ、あんなの……」
沢村さんがぶつぶつ言いながら一番上に顔を出した。
「でも、こんな風に黙ってついてっていいの?」
目線を上に向けて二人に訊いた。
「黙ってないとばれちゃうでしょ」
「そうそう。これはあくまで二人を見守るための尾行なのよ」
そうだったっけと本気で考え込んだ。当初の予定がなんだったのかさえもはっきりとしなく
なっている気がする。最初はそうだ、石井さんの怪しい行動の原因を突き止めることだった、
はずだ。そしてそれはもう突き止めてるんじゃないんだろうか。これ以上はあまりにも二人の
プライバシーを侵しすぎるんじゃないだろうか。
446 :
125:03/10/30 01:34 ID:c+7TQWl3
あれやこれやと考えている間にも、僕の脚は目の前のカップルに惹かれるように勝手に
進んで行き、気がつけばタクシー乗り場に辿り着いていた。
「街から出る気かな?」
「どこまで行くんだろ」
福田さんと沢村さんが話しているうちに二人がタクシーに乗り込んでしまった。
「ねえ、関本たちが行っちゃうよ」
「あっ! どうしよう……」
福田さんが慌てふためく横で沢村さんがしごく当然と行った調子で言い放った。
「追うわよ」
「さ、沢村さん。やっぱりまずいんじゃ」
これ以上踏み込むことに罪悪感を抱き始めた僕は沢村さんにそう言った。けど、彼女も
ここで折れる気はさらさらないようだ。
「じゃあ、丹羽くんは二人が気にならないの?」
挑まれるような視線で言われて口篭った。もちろん気になる。僕だって二人の関係がど
れくらい進んでいるのか知りたいという気持ちが多少あったので否定することができなか
った。僕と沢村さんの視線が交わること数秒、
「ねぇ、タクシー捕まえたよ」
「ええーっ!!」
「ナイス律子!」
手招きする福田さんの側には本当にタクシーが停まっていた。沢村さんが意気揚々と歩
み寄って僕を呼んだ。
447 :
125:03/10/30 01:35 ID:c+7TQWl3
結局タクシーの存在がふわふわとはっきりしなかった僕の気持ちを後押しし、一番最初
にタクシーに乗り込んだ。
「へ?」
後部座席に座ると同時に左右のドアから沢村さんと福田さんが乗ってきた。服越しに感
じる二人の柔肌と、鼻腔をくすぐる女の子の甘い匂いに思わずくらっときてしまった。
「じゃなくてっ!」
理性が崩れそうになるのを声をあげて阻止した。
「なんで前に一人乗らないの? ちょっと狭いって」
「まあまあいいからいいから」
「運転手さん、前のタクシー追ってください」
僕の訴えなんて二人の耳には届いてないらしい。それに気のせいか、左右からやけに
身体を押しつけられている感じがする。僕が身体を少し縮めるとその倍は密着してくる。
気がつけば二人の顔がくっつくくらいに迫っていた。正直に勃起しそうになるのを堪えなが
らの苦しみに満ちたドライブとなった。
448 :
125:03/10/30 01:36 ID:c+7TQWl3
沈黙が漂うタクシーは東野町(でいいのかな?)の隣にある春日井町(創作)にまで来て
いた。
春日井町は東野町と同じで美術品に対する関心が高く、良い品があるのでたまに母さん
とじいちゃんはこの街まで足を運ぶこともある。さらに近代化も進んでいて、大きな駅やデ
パートなどもある、この辺り一帯の主要な街だ。
そして僕らを乗せたタクシーが走っているのはそんな春日井町のもう一つの顔、ホテル街
である。気まずい沈黙の原因はこれのせいだ。タクシーに乗った場かにの時は僕を挟んで
あれこれと言葉が飛び交っていたけど、車外に派手な看板が目立ち始めた頃から口数が
めっきり減り、タクシーが走る尾としか聞こえないほど黙り込んでいた。
外を流れる景色が幾分落ち着きを取り戻した時、前方を走っていたタクシーが停止した。
「停まったよ」
心身ともに異常なくらい疲弊していた僕はそう言ったついでに大きく息を吸った。今まで呼
吸するのを忘れていたかと思うほど、その一息は身体中に染み渡った。緊張が解けたのか、
左右にいる二人の身体がぴくっと震え、僕と同じように息を吸った。
「二人が出て……はわわわわぁっ!」
関本と石井さんの動きを追っていた福田さんが顔を真っ赤に染めて動揺しだした。僕と沢村
さんも目の前で起きた出来事に唖然としていた。
こんなところに来るからにはやはりそれなりのことをしでかすだろうと予想はしていたけど、
実際それを目撃してしまうと頭がパニックを起こしてどうしていいか分からなくなっていた。
二人は迷うことなくホテルに入った。もちろん、『ラブ』とつくホテルに、だ。
「…………追うわよ」
「いぇっっ!?」
そういう沢村さんの目は本気だ。ドアを開けて外へ飛び出して行った。
「私も行くっ!」
続いて福田さんも出て行き、車内には僕が取り残された。本当に行っていいのだろうか。
ラブホテルですることなんてあれしかないのに、それを聞き耳立ててあれこれと関わってしまう
のは非常にしてはいけないことじゃないか。頭を抱えて悩み苦しんだ。
449 :
125:03/10/30 01:37 ID:c+7TQWl3
「なあ、ボウズ……」
どうしても車外に出る気が起きない僕に声がかけられた。顔を上げると運転手のお兄さん
がこちらを向いていた。金髪に蒼い双眸、白い肌。一目見て外国の人だと分かる。
「ぼ、僕?」
訊くとその人はゆっくりと頷いた。その口から流暢に言葉が紡がれてきた。
「俺は今はこんなタクシーの運ちゃんなんて格好してっけど、本当は世界でも屈指の特殊
傭兵部隊の兵士の一人なんだよ」
「…………はぁ」
はっきり言って危ない人だと直感が告げてきた。けど、そう言うお兄さんの目はとても強く
光り、嘘を吐いてるようには思えない。
「俺はスナイパーとして今まで数えきれないほど危険な目に遭ってきた。それこそ一度や二
度死んでてもおかしくはねえ」
お兄さんの両手が宙で固定される。僕にはその手の中にはっきりとライフルの銃身が見え
た。背筋がぞわっと泡立った。
「スコープを覗く瞬間、それは命のやり取りをしてる瞬間さ。心臓を鷲掴みにされたみてえに
冷や汗が噴き出すし、恐怖が判断を鈍らせる」
その瞬間の気持ちが痛いほど伝わってくる。それは美術品と死闘を繰り広げる時の感じに
よく似ている。
「けどな、俺はこうやって生きてる。恐怖に負けそうになった時もあった。そんな時は何も考え
ないで、ただひたすら前に進めばいいんだよ」
なんでだろう。この人の言葉を聞いていると、胸の奥に熱い、魂が打ち震えるような奇妙な
感覚が湧き上がってくる。
「今、お前はどうするか迷ってんだろ? だったら迷う必要はねえ。足を踏み出して前に進め
ばいいんだよ」
もうそれ以上の言葉は要らなかった。お兄さんに強く背中を後押ししてもらった僕は迷わず
車外に飛び出した。
「ありがとう、運転手さん!」
お兄さんは何も言わず、僕に向けて親指を立てた。
450 :
125:03/10/30 01:38 ID:c+7TQWl3
――余談。
「おいクルツ」
タクシーに備え付けられている物とは別に耳に付けた通信機から若い男の声が聞こえ、
クルツと呼ばれた金髪の青年はそれに答えた。
「なんだソースケ?」
彼の視線は目の前に停まっているタクシーに向けられている。通信している相手はその
運転席にいる人物だった。
「なんだじゃない。民間人にミスリルのことをほのめかすとはどういうつもりだ?」
クルツの軽い調子とは正反対に、ソースケの声は緊張に満ちたものだった。
「いいじゃねえか。ミスリルの名前出したわけじゃないんだしよ」
「しかし、それでもミスリルの情報が漏洩する可能性はゼロでは……」
「ったく、どうしてお前の頭はそう固いんだよ」
「お前が何も考えなさすぎなだけだ」
考えて行動する挙句にいつも周囲に甚大な被害をもたらすお前に言われたくねえ、と胸
中で毒づいた。
「とにかく除隊届けを提出したくなかったら今後は気をつけろ」
真剣な口調で注意を促がすソースケに対し、クルツはやはり軽い調子で頷いた。ソース
ケにしは珍しく溜め息を吐き、思い出したようにクルツに訊ねた。
「ところでどうして俺たちはタクシーのドライバーなどしているんだ? そういった指令を受け
た覚えはないんだが」
「作者の気まぐれだろ。余計なことは考えんな」
言われたことが理解できずに頭の中で疑問符が渦巻いていた。
「おら、さっさと車出せよ。ケツに突っ込むぞ」
「了解。まだ分からんところがあるが、その点は後で報告書にまとめておこう」
「ご苦労なこって」
そして二台のタクシーは街のどこかへ消えていった。
451 :
125:03/10/30 01:42 ID:c+7TQWl3
後半一部うp。
最後に違うアニメのキャラがでておりますがさっと読んでください・・
452 :
葛利葉:03/10/30 01:55 ID:iqwuR53M
125氏、お疲れ様です。
後半の続編では二人の隣の部屋で三人が(倫理的観念により削除)するわけですね?
楽しみです。
それと、ふもっふは笑いが止まりませんよ、実際。
それでは続きをキターイしております。
早くもネタ切れ中の葛利葉より。
125さん、後半UPお疲れ様です。
さて、すると次回は大助の種もといブリーフが割れることに……。
「見える、ぼくにも見えるよっ!」
454 :
名無しさん@ピンキー:03/10/30 17:08 ID:U/bndLUK
まさかソースケとクルツが出てくるとは!驚きました。
続きを期待してます!
今週のふもっふ見て思いついたんだろうが・・・w
覗きはレーザーを避けないと・・・種割れさせる気か?
なんにしろお疲れ様です。
グワッ!!
ついていけない俺ってば一体・・・
とりあえずは、面白かったですw
お疲れ様でぇす〜
次回期待sage
457 :
125:03/11/01 18:27 ID:yRdt0c/x
「ここが、ラブホテル……」
初めて目にするラブホテルの一室、その内装を気恥ずかしさと好奇心が入り交じった視
線できょろきょろ見ていた。
イメージとしてはピンク色の照明に鼻について胸がむかむかするような匂いが漂ってい
ると想っていたけど、実際は以外にも清潔な雰囲気が漂っている。壁にも床にもベッドの
シーツにも汚らしいシミなんか付いていない。本当にただのホテルに来たような感じだ。
が、これはあくまで最初に感じたもの、第一印象だ。細かいところに目をやると、やはり
ここはそういうことをするようなところなのだと再認識させられた。
ベッドの傍に一台のテレビとビデオデッキが備え付けてあり、卑猥なタイトルのビデオテ
ープがずらりと並んでいる。『家庭教師3』『隣のお姉さん』『母娘相姦』『教師と
(何をチェックしているんだ僕はぁッッ!)
危うくこの部屋が発する妖しい空気に呑まれるところだった。視線を留めておくと妄想ば
かり膨らんでしまいそうなのでまた泳がせた。と、部屋の隅にある木製の器具が目に留ま
った。その形状は女性が出産する時に乗せられる分娩台にそっくりだ。左右に突き出た可
動式の板の上に女性の脚を乗せ、ぱっくりと秘裂が拝めるようになっている。身体が未成
熟な中学生なら二人乗せれるかもしれ
(なにをかんがえてるんだぼくはぁぁッッッ!!)
ダメだ。僕はもう人として終わってる。自分の最低ぶりに嫌気がさしがっくりと膝をついた。
458 :
125:03/11/01 18:28 ID:yRdt0c/x
「この向こうに二人がいるのね」
僕の苦悩は露知らず、沢村さんが壁の前に立って耳をくっつけた。
「…………あんまり聞こえないわね」
一度壁から離れて風呂場の方へ向かい、手にコップをもって戻ってきた。どうやら洗面
所から拝借してきたようだ。今度は壁にコップを当てて隣の音を聞いている。
「いくらなんでも露骨過ぎるよっ」
隣の二人に悪いと思った僕は見かねて彼女に近づいた。
――その時、部屋中に女性の喘ぎ声が響き渡った。慌てて音源の方を振り向くと、福田
さんがベッドに座ってテレビを見ていた。僕の位置からちょうど画面が見え、そこには男性
と女性が交わる姿が映し
「ぬぅぁに見てるのぉぉぉッッッッ!!」
超速で福田さんの横に一っ跳び。その肩を揺すった。
「…………へ?」
振り返った彼女の鼻から鮮血が一筋滴っていた。
「興奮しすぎっっ!」
すばやくティッシュを摘み取り、鼻血を拭いて栓をした。
「あぅ、あびばと(ありがと)」
思いっきり聞き取りづらい声で福田さんがお礼を言い、再びテレビへと向き直った。
「いやいやいやいや、見ちゃだめだってば!」
「んもう、ちょっとうるさいよ」
苛立たしげな声をあげて沢村さんが睨んできた。
「はぁぁ……なんで、なんでこんなんなっちゃうんだよぉぉぉッッッ!!」
二人の女子が壊れたことを大声で嘆いた。
459 :
125:03/11/01 18:29 ID:yRdt0c/x
「――隣、騒がしいね」
「そんだけ激しいんだろ」
関本と石井は隣室からくぐもって聞こえる声のような音に耳を傾けていた。ベッドの上に
重なるようにして横になり、今まさに行為を開始しようとするところだった。
「じゃあ私たちも。ね」
「お、おお……努力する」
彼女がねだる時は大抵無事に帰れないことを身体に教え込まれた関本は少しだけ胃の上
辺りがきりきり傷むのを感じた。それでも一度知ってしまった彼女の、女性の身体にどっぷり
と溺れた関本はゆっくりと唇を重ねた。
「んん……ふゥ、んッ!」
口の隙間から漏れる甘い吐息が二人の興奮を徐々に高めだした。
「巧くなったね」
「おかげさまで」
求めるような口づけを交互に交わし、唇が混ざり合った唾液で溶けるように濡らされた。
十分に身体が火照ったところで、関本の手がまだ服に包まれている彼女の胸へと伸び、粘土
を慣らすように優しく、柔らかく撫で回す。彼女の呼吸が荒くなると、身体の硬さが抜け、腕の
中の女性はすっかり熱気と湿り気を帯びていた。
彼女が誘うように上着の裾を捲くると、桜色の小さな隆起が顔をのぞかせた。
「下着つけてなかったのか」
「擦れて、気持ちいいんだよ?」
言葉どおり彼女の乳首は十分に充血していた。目を奪われ、溜め息を漏らしながらそれへ
しゃぶりついた。
460 :
125:03/11/01 18:30 ID:yRdt0c/x
――何なんだこの状況は。
無言でベッドに腰を下ろし、女性が激しく乱れ悶え苦しむ様を映し出すテレビに見入っ
ている。――三人で。
「……」
「……」
「……」
女の子と一緒にAV鑑賞という現実離れしたふわふわした感じがなんとも奇妙だ。ちらっ
と横を見ると二人が上体を前に出して画面に喰らいついている。白のガーターを身に着け
たお姉さんが上位で腰を振るのを眼が血走りそうなほど見開いて、脳裏に焼き付けようと
してるみたいだ。
「はぁぁ……」
お姉さんがフィニッシュを向かえ、テープがビデオデッキから吐き出されると、沢村さんが
一息吐いた。その声が凄く艶のあるものに聞こえ、下半身がビクッと反応した。
福田さんが無言で別のテープをデッキに入れ、再び鑑賞会が始まる。これで、確か五本
目だったと思う。
テレビには大人しそうな委員長がクラスの男子に輪姦されるという、女優の演技もあいま
ってなんとも寒い作りのものだった。それでも二人は熱心に委員長が犯されるところを見て
いた。
そして僕自身も、ビデオのデキはともかくとして、下半身は元気になっていた。散々えっち
はしてきたけどエロビデオを見るのは初めてで、他人の痴態を見るといういつもと違う行為
に新たな興奮を覚えた。が、それはともかくとして二人に下半身のテントを見られたくはない
ので上体を不自然なほど曲げて隠した。
目の前では女性の顔に大勢の男子が精液を降りかけるところだった。
そこで僕は横からの視線に気づいた。顔を上げると沢村さんが僕の顔を穴が開くほどじ
ぃっと見ていた。どうしたのか聞こうとしたけど、その眼から発せられる熱気というか殺気と
いうか、とにかく身体にまとわりつくような異様なプレッシャーを感じ、そして――
461 :
125:03/11/01 18:31 ID:yRdt0c/x
「丹羽くんっ」
「ああ――」
みゆきは通常の三倍の速さで大助をベッドに押し倒した。二人の裸体がベッドへと沈む。
「沢村さん、なにを」
大助が腹の上に跨る彼女から逃れようと身をよじるが、通常の三倍の力で腕を彼を押さ
え込んだ。上位をとる彼女の顔は上気し、妖しさと熱を孕んだ視線を大助に向けている。
どこで手に入れたのか、ガーターに包まれた白い脚が、歳不相応な大人の色気を醸して
いた。
「なにって、これからいいことするんだよ」
身動きの取れない彼に、自分から唇を重ねにいった。
「んむ――っ」
驚きの声をあげる大助の目を見つめながら、彼女はさらに唇を貪った。唇を濡らし、舌
を挿入し、歯を、歯茎を、口蓋を犯していく。その度にぴくっと反応するのを楽しみ、彼へ
対する征服感を大きく肥大させていった。
「気持ちいい?」
嬉しそうな笑みを浮かべて訊ねる彼女に、大助は答えることができずに喉から掠れた呻
きを漏らした。
「気持ちいいでしょ? もうこんなになってるんだもん」
「はぁッ!」
後ろに右手を回し大助の血液が溜まっているそこを指先でさすると、力強く脈動する音
が手に伝わってきた。先端を紅弁にあてがい、焦らすように腰を回し、大助が喘ぐのを悦
に入った表情で見下ろしている。
「入れたい?」
すでに二人の間には絶対の上下関係ができていた。余裕に満ちた年上のお姉さんのよう
に言葉をかける彼女に、大助は素直に頷くしかなかった。
「あは。じゃあ入れるね」
そそり立つものがずぶずぶと呑み込まれるように彼女の膣内へ陥入していった。
462 :
125:03/11/01 18:32 ID:yRdt0c/x
――「ぶっ」のような「ぼはっ」のような、とにかく例えにくい音を立てて沢村さんが鼻から
鮮血を撒き散らしながらベッドに倒れ込んだ。
一瞬だけ事態を把握できなかったけど、すぐさま肩に手をかけて彼女の身体を揺すった。
「だ、大丈夫!?」
耳元で聞いても何も反応してくれない。身体もぴくぴく痙攣している。顔色も悪い。
「貧血!? 鼻血の出しすぎっっ!?」
飛び散った鼻血を見ると、吐血でもあったんじゃないかと思えるほどの量の血が床にべ
っとりとシミを作っていた。さすがにこの量はまずい。とにかく冷静に対処しないといけない。
「福田さんっ、福田さんも手を貸してってまだ見てるのッッッ!?」
横の騒ぎはなんのその、テレビの中で凌辱される委員長をまだ見ている。
「ねえ福田さんっ!」
肩を掴んで身体を揺すると――
463 :
125:03/11/01 18:32 ID:yRdt0c/x
「福田さんっ」
「きゃ――」
律子の肩を掴んだ大助は強引に彼女を抱きしめた。放課後、朱色に染まる誰もいない教
室の中では、彼女の小さな悲鳴が一際大きく響いた。
「だ、ダメ……」
腕の中で暴れる彼女を身動きができないくらい強く抱きしめる。道徳に背く行為が外から
見えぬよう教室の隅で、カーテンに包まるようにその身を隠した。
「でも僕は、もう……」
何故か学ラン姿の大助が、これまた何故かセーラー服姿の彼女の耳元で搾り出すように
囁いた。
「――僕の気持ち、知ってるよね?」
「ひゃぅッ」
大助の手が、スカートに隠れる彼女の張りのある太腿に這わされたことで咄嗟に突き飛ば
そうとするが、身体に食い込むほど強く回された彼の腕は解けることはなかった。
「ぃや、止めてっ」
「いやなの? そうじゃないでしょ」
太腿に這わされていた指がショーツ一枚で覆われたあそこへ伸びた。そこはすでに薄っす
らと、指に絡みつくような湿り気を帯びていた。
「ね? こうされたかったんでしょ」
「ち、ちが……ッ!」
抗弁しようと顔を上げた彼女の口に吸い付くように唇を重ねた。涙が滲む瞳が驚きに見開か
れるのを彼は見逃さず、心の底から悦びが湧き上がってくるのを感じた。
「好きなんだ。福田さんのこと」
「あ、ああッ」
言葉と指の二重の攻めに、彼女の胸の動悸は非常に激しくなっていた。
「私、私もっ、丹羽くんのこと――」
本心を告げようとする彼女に再び口付けた。それ以上言葉は必要ないといわんばかりに
強く、淫らに、乱暴に彼女の唇を求めた。西日のせいか、真っ赤に焼ける彼女の顔に興奮
した大助はショーツをずらし、彼女の、まだ純血を守るそこに指を挿入していった。
464 :
125:03/11/01 18:33 ID:yRdt0c/x
――こてっと倒れてしまった。デジャヴを感じた僕は、さっきより幾分早く状況を飲み
込めた。
「こっちも!?」
福田さんの鼻からもどばどばと不自然なほど大量の血液が流れていた。さっき栓を
したはずなのに、まったく意味を成していなかった。足元には殺害現場のような血だまり
が一つだけできていた。鼻血を出しながら見続けていたようだ。凄い執念だと感服した。
どうやら女子中学生二人にはここの雰囲気は刺激が強すぎたようだ。ぐったりとベッド
に横たわる二人は少し苦しそうに胸を上下させ、乱れた衣服が僕の煩悩を刺激してくる。
(――じゃなくて!!)
そうだ。まずは二人を介抱しないといけないんだ。今日何度目かの本能の暴走を寸前で
抑え込んでから、あれやこれやと貧血を起こした二人の世話をした。
ベッドにきちんと横たえ、頭に濡れタオルを置いて安静にさせた。多分、これでいいと思う。
間違ってても、まあ大分落ち着いてきているからよしとしよう。
一息吐いてベッドの端に腰を下ろして二人の様子を窺った。衣服からすらりと伸びた手足
が薄く汗ばんでいる。呼吸をする度に上下する双房の動きが堪らない。内腿に手を這わせ
ても、今なら気付かれないんじゃないだろうか。
「…………」
一通り妄想し、トイレに駆け込んだ。
465 :
125:03/11/01 18:34 ID:yRdt0c/x
――息も絶え絶えといった真理の喘ぎが部屋に反響している。
「い、いッ。凄いよ関本くんんんッッ――」
後背位から秘裂の上にある窄みを貫かれ、ベッドの上で狂乱したように淫らな姿を晒して
いた。さすがに十二発目ともなると、腰の動きも遅くなり、肉棒の感度もかなり鈍くなってい
た。動けども動けども感じるのは膨張の表面を擦りあげる腸壁が与える鈍痛。射精感はど
こかにいってしまい、内側を駆け上がってくるものはない。
「あンッ、だ……めぇッ。お尻、イッちゃうぅぅぅッッッ――」
それでも彼が動き続けるのは、彼女が狂喜する様に胸の奥がぞくぞくと波打つように悦び
が溢れてくるからだ。
宣言どおり、彼女が二、三度大きく身体を震わせ、括約筋が小刻みに痙攣した。噴き出す
潮がお小水を漏らした子どもが作るようなシミをシーツに描き出した。
収まりをみせない怒張を、擦られる痛みを我慢しながら引き抜いた。尻を突き出していた
真理の身体が崩れ、彼女の肛門がぱくぱくとそれを求めるように口を動かすのを見、少し
だけ下半身が疼いた。幾度の射精によりすっかり穢れた縦裂にもそそられる。
が、それ以上動く気力が湧かない彼は天井を仰いだ。
「っくはぁぁーッ。今日は、もう勘弁だぞー……」
ベッドに手をつくと、指が股間をしゅしゅっとまさぐる感覚が伝わってきた。
「…………ん?」
ひどく奇妙な気がし、視線を落とすと、そこには両手を使って竿をしごく彼女の姿があった。
「ちょっと待てぃっ! 今イッたばかりだろ!?」
「でも、まだこっちは満足してないみたいだよ?」
上目遣いで言いながら、指先で鈴口をくにくにと弄られたことで下半身の疼きが次第に
強くなってきた。
466 :
125:03/11/01 18:35 ID:yRdt0c/x
「いや、でももうこれ以上やったら……」
自分が壊れてしまいそうな気がして少し躊躇ったが、そんなことは彼女に関係なかった。
「勃ってれば出ちゃうって」
彼女が腰の上に跨り、愛液と精液の涎を垂らす口に硬く張りつめたものを咥え込んでい
った。根元まで呑み込んだあとは雁のくびれすれすれまで腰を浮かせ、また根元まで喰ら
っていく。何度も繰り返していると、連結部から濁った液が次々と溢れてくる。
「関本くん、動かなくっていいよ。私が、イかせるからね」
「ぅぁあ……」
腰の動きが激しくなり、二人の間に幾筋もの糸が引くほどの体液が滲み出してくる。もう
限界だったはずが、彼女に、それこそ最後の一滴まで搾り出されるような上下運動のため
に下腹の奥から熱く滾った欲望がじわじわとせり上がってきた。
「お、俺もう……」
「イく? イッちゃうの? まだダメ! 私と、一緒だよッ」
びちゃびちゃ音を立てて二人の腰がぶつかり、一度死んだ彼の動きも淫猥な空気にあて
られ復活した。下からリズムよく突き上げられ、子宮の奥まで抉られる感覚に、涎を垂らして
悦びを露わにしながら彼女は乱れ狂った。
「奥いいッッ! きゅうってなっちゃうッッ! きゅうってしちゃうぅっっ――ッ!」
悶え苦しむ声を聞き、彼は奥まで突き上げた。内臓すべてを揺り動かされる錯覚を身体に
感じ、頭の中が快楽の洪水で掻き乱された彼女は全身を収縮させ、彼の身体に身を委ねた。
「お、おい」
死んだようにぐったりとした彼女を揺さぶってみるが何も反応を示さない。完全に意識が
吹っ飛んでいる。
「…………」
ここで止めようかと思ったが、一緒にイこうと言っておいて自分だけかよ、みたいな思いが
渦巻き、未だ彼女の胎内で疼きを納めたがっているものがあるので仕方なく彼女をベッドに
寝かせ、正上位で腰をぶつけて最後の射精をしておいた。
幾ばくかの虚しさが彼の胸中に残った。
467 :
125:03/11/01 18:35 ID:yRdt0c/x
「――あ……」
ベッドから立ち上がろうとする福田さんがバランスを崩し、危うく床にぶつかるというところで
その身体を支えた。
「大丈夫?」
「う、うん。ありがと」
彼女の腕を首に回し、肩を抱えて立ち上がると、
「いいよ、そこまでしなくって」
そう言って腕を振り解こうとするけど、僕もここで何もしないほど無責任じゃない。
「無理はしちゃいけないよ。倒れたりしたら心配だよ」
彼女はまだ何か言いたそうだったけど、口に出させるより先に僕が別の人物に声をかけた。
「沢村さんもこっちきて。肩貸すよ」
福田さんより先に目を覚まし、ベッドに腰を下ろしていた沢村さんは顔色も少しよくなっている。
僕と福田さんの顔を交互に見て、
「……仕方ないからね」
いやいやといった感じで腕を回してきた。
468 :
125:03/11/01 18:36 ID:yRdt0c/x
「でもあの二人が何してるか、結局分かんなかったね……」
「だよね。何しにきたのか分かんないよこれじゃ……気分悪いし」
あんなことがあったらしょうがないと思いつつ、僕は部屋を出た。
「あ」
横から間の抜けた声が聞こえ、振り向くと、
「あ」
僕と同じように石井さんに肩を貸して部屋から出てくる関本とばったり出くわした。
しまったと思った。尾行のつもりが出くわしてしまっては元も子もない。適当な言い訳
を考えようとしていると、まるで珍妙な生物を見たかのように関本の目が丸くなり、横に
抱えた二人を見てその顔が紅く染まっていった。
「お、おま、お前、お前らっっ! 一体何してんだよ!?」
「何って……」
「丹羽くんどうしたの……って、関本くん!?」
「んん……? うわっ、見つかっちゃったの!?」
二人も関本の存在に気付いて慌て、に、さらにその騒ぎが聞こえたのか、関本が抱えて
いた石井さんが眼を覚ました。寝惚けている半眼で、見つかってしまったことに冷や汗を
垂らしながら立ちつくす僕らを捉え、一言だけ言い放った。
「…………どっちが美味しかった?」
次回 パラレルANGEL STAGE-11 同業者
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
途中に挿入された二人の妄想(だよね?) が妄想だとわかるのに
手間取ってしまったw これはギャグか! ギャグですね?w
沢村、福田両名がしたことはラブホ入ってエロビデオ見て妄想して鼻血。
大助はその介抱しただけ・・・。 なにやってんだかw
関本、石井ペアはおつかれさまでした。
更新お疲れ様です。
今回は鼻血祭り、南無。
しかしどこぞの漫画の増血鬼のような。
471 :
名無しさん@ピンキー:03/11/04 19:05 ID:OEiDNRvv
お疲れ様でした。
えーっと・・ところで大助はいつ
梨紗を食べちゃうんでしょうか?
472 :
125:03/11/06 00:37 ID:e1jaHgW5
>471
「お姉様ぁ〜」
それは唐突にやってきた。梨紗の甘える声。
「な、何よ……」
ふとしたデジャヴ。梨紅の脳裏をによぎったのは、一年前のあの日の出来事だった。
「今年もお願い。ね?」
ゴマをするように肩を揉む梨紗に、梨紅は突き放すように言い切った。
「や。今年は自分でやんなさいよ」
「ひっ、酷いわお姉様」
梨紗がよよよと泣き崩れる。もちろん仕草だけだ。ちらっと梨紅を盗み見るが、その眼には断固として拒否するという強い意思が宿っていた。
「ちっ」
小さく舌打ちし、そして立ち上がった彼女の顔はいやというほど自信に満ち溢れていた。
梨紅が訝しげな視線を向けていると、梨紗が懐から何かを取り出して彼女の眼前に突き出してきた。
「んな……ッ!」
それを見て彼女は絶句し、次の瞬間には梨紗に飛び掛ろうとした。が、梨紗はひらっと身をかわすと、不敵な笑みを浮かべて彼女を見据えていた。
「ふっふっふ。この丹羽くんとの恥ずかしいラブラブデート写真をばら撒かれたくないなら素直に降参しなさい」
「うぅ……」
「ちなみにネガは別の場所に隠してあるから今これを処分しても無意味だからね」
そう言う梨紗の顔は満面の笑みを浮かべていた。勝利を確信した者の表情だった。
473 :
125:03/11/06 00:38 ID:e1jaHgW5
――翌日の放課後。
原田姉妹は昨年と同じようにトイレでスタイルチェンジを果たした。入れ代わった容姿は、
外見からは見破ることはできないだろう。
「ということで、今年もキャベツの千切り頑張ってね」
硬く握り締めた梨紅の手をぶんぶんと振りながら、梨紗は晴れ晴れとした表情をしていた。
「はいはい」
対して梨紅は、どんよりした空気が滲み出すほどうんざりした表情をしていた。
「こらぁ。そんな顔してたら印象悪くなっちゃうでしょ?」
「だーれのせいだと思ってんのよ」
「それじゃあお願いね」
非難の声があがりかけ、すぐさま梨紗はトイレを飛び出した。
「部活にはいくから」
そう言い残し、完全に梨紗の姿が視界から消え去った。残された梨紅は大きく息を吐き、
かつらとエプロンを正す仕草をした。
「今年もこのエプロンなんだ」
フリルの付いたエプロンを指で弄ぶと、一年前の懐かしい記憶が沁みだすように思い出
された。表情が緩んでいるのに気付き、はっとして頬を二、三度引っ叩いた。
「あー、もうっ! 丹羽くんが悪いんだから悪いんだからぁっ!」
丹羽大助。彼女の恋人、であるが、先日少しばかり気まずいことがあり、それ以来微妙
に噛み合わない状況が続いていた。こんなことは望んでないのに、と思いながら、しばら
くトイレの中で悶々としているのであった。
474 :
125:03/11/06 00:39 ID:e1jaHgW5
「はぁ、疲れた……」
梨紗はラクロス部に顔を出したが、百メートル走を六本続けて走り、そこでリタイアした。
今は自転車をとりに駐輪場まで向かっているところだった。
「ん?」
駐輪場まであと少しというところで、見知った男子生徒がばつの悪そうな表情で梨紗を
窺っていた。見知っていたのは彼がクラスメイトであり、そして双子の姉の恋人だったか
らだ。彼女は声をかけるべきか判断に迷った。いくら瓜二つの変装をしているとはいえ、
彼にはばれてしまうかもという思いがあったからだ。が、歩くのを止めるわけにもいかず、
自然と歩調を落とし、ゆっくりと彼の傍まで歩み寄った。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
お互いが口を開かない不気味な沈黙が続き、まさかばれたのではないかと彼女の疑念
が膨らみかけた時、ようやく大助が言葉を発した。
「あ、あの……」
「なに?」
なるべくぼろが出ないように言葉を少なくして彼女は答えるが、それを聞いた途端、彼が
びくっと震え上がった。
「ご、ごめんっ!」
「え……」
いきなり謝られて困惑する彼女に、さらに彼が言葉を被せてきた。
「やっぱり怒ってるよね。あんなことしちゃったから……」
消え入りそうで泣き出しそうな、とても弱々しい声で彼が絞りだした。状況が把握できて
いない彼女はいろいろ考えを巡らし、何とか事態を整理しようと試みた。
475 :
125:03/11/06 00:39 ID:e1jaHgW5
「あ、と……おお、怒ってないよ」
とりあえず否定してみると、彼が潤んだ瞳を向けてきた。
「でも喋り方が怒ってるみたいだし……」
どうも言葉に気を遣いすぎていたために喋り方がぶっきらぼうになり、それが怒気を孕
んでいると誤解したようだ。彼女はできるだけ大げさな身振りで否定した。
「そっ、そんなことないよ! 私、全然怒ってないから」
「本当っ!?」
急に彼が目を輝かせて顔を近づけた。
「う、うん」
反射的に身を引きながら頷くと、さらに彼が言葉を続けてくる。
「じゃ、じゃあ今からこの前みたいにしていいの?」
この前みたいに、と言われてもまったくもって理解できない彼女は即答しかねた。すると、
彼の表情がみるみるうちに空気の抜けた風船のようにしょぼくれていった。
「やっぱり嫌なんだ……」
「あ、い、その……」
まさか自分のせいで恋人との仲が悪くなりました。などと姉に言うわけにもいかず、それに
加えて今は調理実習の居残りも代わってもらっているという恩義から、
「い、いいよ! わ、私も嫌なんかじゃないの全然っっ!」
自棄になって答えていた。
「やった! それじゃこっちに来て」
「あ、ちょっ――」
476 :
125:03/11/06 00:40 ID:e1jaHgW5
そのまま彼女は茂みの奥へ連れ込まれた。
「丹羽くん、一体なに――ッ!」
肩に感じる手の温もり。背中に当たる木の硬さ。唇に触れる濡れた粘液。理解するまで
に時間はいらなかった。
「――んんッ」
咄嗟に顔を背け、勢いで芝の上に倒れ込んでしまった。顔を上げると、顔を赤くして息を
荒げる彼の姿が目に映った。不意に、彼の姿に半年前に永遠の別れとなった人の姿が重
なって見えた。
「な、にを……」
口の周りにべっとりと付く粘液に触れながら、彼女の顔は驚きで惚けていた。胸の鼓動が
いつもよりはっきりと耳に響いている。
「して、いいんだよね? この前みたいに」
彼の期待に満ちた双眸が彼女を捉え、思わず身体がびくついた。一体なにをされるのか
分からない彼女は、子猫のように小さく震えていた。
「怖いの?」
彼女は彼が差し伸べる手に畏怖の念を抱いた眼差しを向けている。
「わた、私は……」
「大丈夫だよ。梨紅さん」
――ああそうか。今、私は梨紅だったんだ。
そう思うとまるでたがが外れたように身体が、心が動き出した。
――そう。何も遠慮することなんてないんだ。
彼とあの人の姿を重ねたまま彼の手を握ると、力任せに身体を引き寄せられた。抱きと
められると同時に口が交わり、熱い吐息が互いの顔を撫でる。
477 :
125:03/11/06 00:40 ID:e1jaHgW5
「んふぅッ、んんぅッ」
彼の粘液が唇にまとわりつくだけで興奮が昂り、一気に体温が上昇していく。
「ふぅぅッッ!」
口の中が痺れるように衝撃が走った。挿し込まれた彼の舌が彼女の舌を絡め取った。崩
れ落ちる腰を彼が抱え込み、執拗に口内を攻め立てた。
「ふぁぅ、ぅぁぁッ」
切なげな吐息を漏らし、力の抜けた身体を彼に委ねるように寄りかかった。乱暴に、まるで
凌辱するような強引さで彼女のスカートの中に、ショーツの中に彼の手が進入し、恥丘を愛撫
してきた。
「あッ、や……ッ。見つかっちゃうよ……」
「でもそれがいい。興奮、するでしょ?」
否定はできない。いつこの行為が見られてしまうかという羞恥心、緊張感が胸をさらに強く
高鳴らせている。
「ほら、こんなに濡れてる」
彼の指にはぬるっとした粘着性の体液が糸を引いていた。
「恥ずかしい……」
俯く彼女に彼も気分が高揚してきた。とはいえ、前回のように激しくやりすぎてまたしばらく
口を利いてもらえなくなるかもしれないと危惧がよぎり、
「じゃあ早く終わらせよっか」
できることは素直に嬉しく、しゃがみ込み、彼女のショーツを膝まで下げた。
「きゃッ」
短い悲鳴をあげる彼女の両手を木につかせ、尻を突き出す格好にさせてスカートを捲り
上げた。綺麗なしわが形作る窄みの下に、充血して肥大した桃色の縦筋が一つ走っている。
「ゃんッ! こっちも恥ずかしいよッ」
「大丈夫大丈夫」
膨れ上がった彼女の襞を押し分けるように何か硬く、大きなものが触れてきた。
478 :
125:03/11/06 00:41 ID:e1jaHgW5
「え? あ、だ、ちょっと待って!」
もちろんそれが何か分からないほど疎くはない。首を回して背後に立つ彼に必死に声を
かけた。しかし彼は今にも泣き出しそうな彼女の顔を見ることなく、その視線はこれから
結合する部位にだけ向けられていた。
「平気だよ。バックは初めてじゃないんだし」
「ちがッ! わたしッ、私は初めて――ぃいッ!」
彼女の声が、呼吸が詰まった。尻から脳天まで一気に突き抜けるような激痛が下腹部を
押し上げ、呼吸を麻痺させた。
「いいよ梨紅さんッ! 初めての時くらい締まってるよ」
彼は彼女の正体どころか初めてだということにも気付かずがんがんと腰をぶつけてきた。
「いッ、ッたぁぁぃぃッッ!」
股に感じる裂けるような痛みから身体が逃れようとするが、すぐに木にぶつかり、挟ま
るような形になりさらに痛みが増した。
「うぁッ、きついッ」
処女に突っ込んでいるとは未だに気付かない彼はあまりのきつさに早々に出してしまい
そうになった。
479 :
125:03/11/06 00:43 ID:e1jaHgW5
「はッ、ぐッ、んぐッ、うぅぁ……ッひゃぁ!?」
久々の性交に今少し繋がっていたい彼は、彼女の右足を抱え上げて大きく股を開かせた。
「ぃ、いやぁッッ!? そんなぁッ!」
「少し緩くなったよ」
彼は嬉しそうに腰を振り続け、あまりの恥ずかしい格好に涙を流す彼女には気付いてい
なかった。しかし彼女が流すのは涙だけではない。
「凄い……濡れてきてるよ」
「はぁぅッ、嘘、うそぉッッ!?」
彼が言うとおり、彼女のあそこからは滝のように次々と愛汁が溢れ出していた。その中
に薄い桃色の液体も混ざっていたが、彼は気付いていなかった。
「ひぐッ、あぅぁ……」
「うぁ、出そう」
限界が近いことを彼の口が告げると、腰のピッチがさらに早くなり、彼女の身体が形を
歪めて押し潰されそうになる。
「中、中に出すよッ」
「ひッ、ら、らめぇぇッ!」
満足に呂律が回らない彼女の声は聞こえず、最後に奥まで一気に突っ込み、限界に達し
た彼は中ですべてを出しきった。
480 :
125:03/11/06 00:44 ID:e1jaHgW5
足を離し、バックの体勢で繋がったまま、彼は彼女の耳元に口を寄せた。
「あの……怒ったり、してないよね?」
今回はしてもいいと受け入れてもらえたが、最初にした時はあれだけ怒らせてしまい、
そのことが気にかかっていた彼はまた怒らせてしまわないか少し不安だった。
「…………あ」
激しく消耗し、息を切らせた彼女の視線が彼と交わり、しばらく見つめあってから口を
開いた。
「次、する時は……写真でも撮ろっか?」
おしまい
おにょれ大助
まさか確信犯ではあるまいなw
なんでリクエストに答えて短編書いてんだ?w
おつかれさまです。
対応はやっ。
そして反応もはやっ。
自分も含めて、それなりに覗いている人いるのかな?
484 :
471:03/11/06 17:32 ID:IxR044V/
ありがとうございます!!125さん
じっくり堪能させてもらいました。
久しぶりの梨紗ですね
しかし大助は意外とエロエロですなぁ
怪盗があの程度の変装を見破れないようでは…
あ、そうか、見破ってたのかw
梨紅×大助のほのぼのラブラブな初デートものキボン!
梨紅と梨紗が大助を巡って熱い戦いを繰り広げるのきぼん
489 :
名無しさん@ピンキー:03/11/07 15:32 ID:XgpQ2Z8b
489>>
俺としては3Pよりも純粋に梨紅×大助キボン!!
上に激しく同意
でも普通じゃ面白くないし、梨紅が(または大助が)大助を(または梨紅を)喰っちゃうのも有り???
とりあえず保守
捕手
495 :
名無しさん@ピンキー:03/11/13 22:08 ID:/GfKmlfx
age
496 :
名無しさん@ピンキー:03/11/13 22:24 ID:WOahAV8p
mage
sage
498 :
名無しさん@ピンキー:03/11/14 22:10 ID:n6soXDQb
mange
499 :
125:03/11/16 00:33 ID:1AaRJKBl
「――でもまさかお前らまでホテルに入ってくるなんてな」
「それは……」
確かに冷静に考えると、友達の後を尾けて、挙句に部屋まで入って何もしないで出てき
ました。なんていうのはおかしいことだ。
「初め見たときはやりすぎて二人が腰抜かしてるのかと思ったぞ」
「そんなことないってば!」
にやにやいやらしい笑みを浮かべて顔を覗き込んでくる関本に怒鳴ると、
「分かってるよ。冗談だよ冗談」
にやついた顔はそのままだ。
でも、部屋から女子二人に肩を貸して出てくるところを見たら、僕だって何かあったと思う
に違いない。関本と石井さんの反応も当然のことだった。もちろん必死に弁解して何もなか
ったと伝えたけど。
「じゃあこの辺で帰っけど」
「うん。今日は、その……ごめん」
「いいっていいって。謝んなよ」
音が立つほど強く肩を叩かれ、そのまま首に腕を回された。
「お前もさっさと原田妹とくっついちまえよ」
「な……っ!」
耳元で言われ、咄嗟に声をあげようとしたけど、関本は逃げるように離れていった。
「へへっ。じゃあな」
手を振って去っていく関本の後ろ姿を見届け、僕も家に向かった。
500 :
125:03/11/16 00:34 ID:1AaRJKBl
帰り道に考えていたのは関本に言われたことだった。僕が玉砕した後も何かと原田さん
とよく一緒にいるところをあいつは知ってるし、気を遣ってもらったこともある。だから
心配してそう言ってくれたんだと思う。
けど、僕には素直にそのことが喜べない。梨紅さんの存在が、彼女に対する思いが、原
田さんとの間で僕をふわふわさせている。
「…………ダメだよ、まだ」
決められない。いつかはこの思いを決めなくちゃいけないけど、今はまだ無理だ。
悶々とした思いを抱いているとあっという間に家に辿り着いた。
「ただいま」
玄関をくぐった途端、家の奥からどたどた慌しい音が聞こえ、その音がこちらにやってきた。
「大ちゃんっっ!」
姿を現したのは母さんだ。どうしたのか聞くより早く、母さんが駆け寄ってきた。
「今日お仕事にいってちょうだい!!」
「今日……って、でも八月は」
しなくていいという約束だったはずだけど、口ごたえは許してくれなかった。
「これを見て」
目の前に突き出された広告には、小指の先程の大きさがあるダイヤが無数に散りばめら
れたネックレスが載っていた。
「これね、今日美術館に展示してあったの」
言いたいことが分かってきた。
「……へぇ」
「お母さんね、こういうネックレス欲しかったの」
「……だから?」
「盗ってきて」
肩に手がかけられ、ぎりぎりと万力のように握り潰されそうだった。
「……行ってくるよ」
渋々引き受けると、母さんの顔がぱっと明るくなった。
「ありがと。だから大ちゃんのこと好きよ」
喜んでいる母さんから頬擦りされた。八月はしなくて言いといわれたけど、結局母さんの
気分次第で仕事が入るんだなと思うとかなり気が滅入った――。
501 :
125:03/11/16 00:34 ID:1AaRJKBl
――そして時刻は九時を過ぎ、さっと盗みを終えてネックレスを手中に収めていた。
左腕に盾を、背に剣を鞘に収めるいつものスタイルで月が照らす闇の中を走っていた。
「…………はぁ」
「? どうした」
「ん、うん。ちょっとね、今日はいろいろあってさ」
「疲れたのですか?」
「そう……だね」
民家の屋根の上を駆けながら、僕は二人に心配されていた。そう、確かに今日は疲れた。
したこともない尾行なんかして、それで流されるままホテルに入って、目まぐるしく周囲に
流されあっという間に時間が過ぎた。
「……でも、楽しかったよ」
「ほぉ」
「あら」
本気でそう思った。久々に充実した一日を過ごせて満足している。心に引っかかること
も言われたけど、今はまだ、答えは出せない。
「ふむ。そろそろいいのではないか?」
美術館からかなりの距離を走り、上空にヘリの影もなく、警官隊の包囲網から抜け出せ
たようだ。さっちゃんに変身を解いてもらい、懐に潜り込んでいるウィズに呼びかけると元気
に返事をしてくれた。
502 :
125:03/11/16 00:35 ID:1AaRJKBl
「それでは帰りましょうか」
黒翼を身に纏おうとウィズに声をかけようとした瞬間、
「――怪盗ダークっっ!」
よく通る綺麗な女声にあり得ない方向から名を呼ばれた。――頭上。
「んな……ッ」
驚いた僕はその場に立ち止まり空を見上げた。瞬く星の薄弱な光が染める夜の闇の中
から、浮き出るようにそれは姿を現した。
数十メートル前方に真っ黒なマントに身を包んだ人影が飛来し、
「ヒャぅッッ!?」
悲鳴とともに股が裂け、鈍角に拡がる屋根の先端に無防備な股間をぶつけ、鈍い衝撃が
こちらの足元にまで伝わってきた。
「アウッ! はッ、ほあァぁぁぅ……」
声から察するに女の子だろうか――目の前で悶絶している。
「……なんだあれは?」
「さ、さあ」
「何かよろしくない感じがしますねぇ」
「とりあえず、帰るか」
「そう、だね」
「あッ! ま、待つノダァッッ!」
僕の方へ必死に震える腕を伸ばし、悲痛な叫び声で呼び止めてくる。
「うぅぅん……」
どうするか逡巡したけど、結局うずくまる女の子に歩み寄った。
503 :
125:03/11/16 00:35 ID:1AaRJKBl
「あ、こら」
「助けるのですか?」
「やっぱりほっとけないよ。大丈夫?」
突き出されている手を掴もうと右腕を伸ばし、逆に僕の手ががっしりと捕らえられた。
「え?」
「……言わんことではない」
「あらら。やっぱりこうなりますかぁ」
二人が心底呆れたという調子で口を開くと同時、腕を握る少女が不敵に笑い出した。
「ふっふっふ。掴まえタなりよ怪盗ダークッッッ!!」
同時に鍵をかけるような金属音。
「げっ」
見ると、僕の腕と彼女の腕が手錠で繋がれていた。
「さあ、大人しくワタシのために死んでくれるノダッ」
(さらっと物騒なことを言われとるぞ)
(逃げちゃいましょう)
(うん。そうだね)
助けるつもりだったけど、僕を掴まえようとする元気があれば平気だと思う。
「逃がさないヨッ!」
「うわわわっっっ!?」
僕が行動するより早く、彼女が身体にしがみついてきた。足場が安定しない場所で不意
に受けた衝撃で、僕は宙に放り出された。
504 :
125:03/11/16 00:36 ID:1AaRJKBl
「くッッ!」
咄嗟に腕を伸ばし、指先に触れた物を言葉どおり藁にもすがるように掴み、
「アッ!?――」
もちろん僕が掴んだのは繋がれた手錠のもう片方にあった、彼女の腕だった。二人揃っ
て真っ逆さま、頭から地面に向けてダイブ状態となった。
「――ッ!!」
彼女を腕の中に抱え込み、大声でウィズを呼んだ。声が出たかどうかもはっきりしなかっ
たけど、ウィズは応えてくれた。地面に激突することなく、静かに翼を羽ばたかせて降り立
った。
「ふぅ」
「……」
安堵の溜め息が漏れた時、腕の中の女の子が僕の顔を凝視しているのに気付いた。そこ
で初めて彼女の顔をはっきりと見た。黒い瞳に金色の髪。薄い月明かりが染める暗闇の中
でもはっきり分かるくらい白い肌をしている。――何より一番目についたのは、頭に乗った王冠
だった。
穴があくほどずっと見つめられ、さすがに居心地の悪い思いが湧いてきた。
「…………あの」
「! はッ!?」
いきなり彼女が僕から身体を引き剥がし、踵を返して走り去っていく。
「いや、ちょっと待ってよ!」
僕は彼女の後をぴったりくっつき、ほぼ同じ速さで駆けていた。
「な、なんでついてくるノダッ!?」
「何でって、これこれ!」
505 :
125:03/11/16 00:37 ID:1AaRJKBl
空いている左手で必死に右手を繋いでいるものを指差した。彼女がそちらをちらっと
一瞥し、
「自力で何とかするのでゴザル!」
「えぇっっ!?」
無茶苦茶なことを言われてしまった。元はといえば彼女が手錠をかけたんじゃないか!
と胸中で叫んだ。
(大変ですねぇ)
(落ち着いてないでよ!)
(とりあえず斬ったらどうだ?)
さっちゃんに言われ、急いで左手で背負っている剣を抜き、彼女と繋げているものを斬り
裂いた。小さな金属音が聞こえ、目の前にいた女の子はもの凄いスピードで去っていった。
「取り敢えず何とかなったね」
「うむ」
「それにしても何だったのでしょうか?」
その問いかけには、誰も答えを出せそうになく、ただ時間を浪費するわけにもいかないので
急いで家に帰った。
506 :
125:03/11/16 00:38 ID:1AaRJKBl
日が昇り、夜の闇を追い払う。空高くで照り続け、傾き、そして名残を惜しむような夕
焼けが世界を暁に染め上げ、闇が還ってくる。
「――だからお願い。今日はこの指輪を盗ってきてちょうだい」
僕の眼前には、昨日と同じように広告が突き出されていた。そこには親指の先ほどは
ある宝石をあしらった指輪がでかでかと載っていた。
「……今日も?」
「お願い」
「……でも休み」
「お願い」
「……一日くら」
「お願い」
「……行ってきます」
「遅くならないうちに帰ってきてね」
507 :
125:03/11/16 00:38 ID:1AaRJKBl
「――で、やはり母君に丸め込まれた、か」
「逆らう気もなくなったよ……」
「逞しい奥様ですねぇ」
「否定しないよ」
美術館に忍び込んだ後だというのにまるで緊張感のない会話をしていた。今日も警官隊
の警備網をかいくぐり、ライティング・リングが飾られているはずの展示室の近くまで来てい
た。昨日盗んだばかりだというのに警備の手はいつもと変わった気配もなく、本当に美術品
を守る気があるのだろうかと心配してしまう。
「着くぞ」
「突っ切るよ!」
角を曲がり、展示室への道を閉ざす扉が見え――見えない。警官隊の姿もなく、思わず
足が止まってしまった。
「扉が……開いてる?」
「どうしたのでしょうか?」
いくらなんでもここまで警備が杜撰なわけがない。それが分かっていたから、いつも以上に
緊張感が身体を駆け巡った。
「さて、な。何にしろ行くしかあるまい?」
さっちゃんの言うとおりだ。ここで時間を浪費するわけにもいかない。それに、盗って帰らな
ければ後で母さんにあんなことやそんなことをされるに決まってる。
意を決し、開け放たれたままの扉をくぐった。
508 :
125:03/11/16 00:39 ID:1AaRJKBl
目に映った光景に息を呑み、中空に漂っている甘ったるい、それでいて突き抜けるよう
な刺激臭を感じ取り、口元を押さえて顔をしかめた。
「なんだ? この匂い」
床には制服を着た大勢の警官が気持ちよさそうに眠っている。おそらくこの匂いにやら
れたんだと思う。
「OH! 案外早かったネ」
広い展示室のかなり向こうの方から独特なイントネーションをした声が聞こえてきた。
忘れもしない。昨日聞いたばかりの女の子の声だ。
「昨日の子か! 一体どうしてゲホッ、ゲホッ」
思いっきり不純な空気を吸い込んでしまった。少しだけ頭の中が温かくなってきた。
「ダークダークッ」
走り寄ってくる彼女の声がかなり遠くに聞こえる。身体は触れそうなほど近くにあるのに、
感覚はそう捉えていない。
「お前サンが欲しいのはこのラブ・リングかえ?」
「ら、ラブ……?」
そんな代物じゃなかった気がするが、目の前で彼女が手にしている指輪は紛れもなく僕
が今日盗む予定のものだ。
「一体全体誰にヤルのだ? もしかしてアターシのため?」
全然違うし。と言おうとしたけど、口が回らなくなってきた。まずい、一気に身体が重くなっ
てきた。彼女が傍に寄ってきたせいなのか?
抱きかけた疑念は、そこでぷつりと途切れた――
509 :
125:03/11/16 00:44 ID:1AaRJKBl
――身体が撫でられている。
最初に感じたのはそれだった。それも一ヶ所だけ重点的に、股間を。
「……股間っ!?」
一気に視野が覚醒し、周囲の様子が目に飛び込んできた。街の光景が一望できる、ど
こかの建物の屋上だとすぐに分かった。目を下に向けると、女の子が僕の股間を優しくま
さぐっていた。
「って、ちょっと待って待って!」
「? どないしたカ」
「どないもなにも、いきなり何やってるの君はッ!?」
立ちあがろうとしたけど、足が縛られ、手も後ろで固定されている。身動きが少しできる
程度で、ほとんど自由がきかない。
「惚れた男のお世話をいたすノハ女の務メでござる」
「ほ、惚れたって……!」
そこで、変身した姿であるのを確認しようとしたけど、できなかった。変身は、していなか
った。何故?という疑念はすぐに晴れた。
(ぐぅ……ぐぅ……)
(すー……すー……)
あの匂いの影響で――二人に本当に効くのか疑問だったけど――さっちゃんが寝てしま
ったせいで変身が解け、、僕の姿は丹羽大介に戻っていた。もしかしたら変身が解ける瞬間
も彼女に見られているかもしれないと不安がよぎった。
「アハッ。なかなーか立派なモノをお持ちでんなァ」
そんな僕の想いをよそに、彼女は僕の股間を愛撫し続けていた。
510 :
125:03/11/16 00:44 ID:1AaRJKBl
「いやッ、いいからやめてよ!」
「遠慮なさルナ。性欲のままに身を委ねるノダ」
哀しいかな女性の愛撫に素直に反応してしまう下半身。欲棒がもくっと首をもたげ、立
派なテントを形作っていた。
「フフ、素直でヨロシイ」
彼女が怪しい笑みを浮かべている。何とかして逃げ出さなきゃと思うけど、手も足も使
えない状況ではどうしようもない。
「さあさ、ご対面ぞヨ」
彼女の手がズボンにかけられ、今まさに僕のあれが飛び出そうとした時、背中にごそご
そと蠢くものが触れた。そこで、まだ手段が残されていることに気付いた。
「ウィズゥッ!」
声を張り上げてその名を呼ぶと、背中から翼の開く音が空気を揺らし、身体を覆うほど
巨大な黒翼が出現した。
「WHAT!?」
突然起きた事に目を白黒させている彼女を置いて空に舞い上がった。
「アッ! 待てェェッッ、ルパァ〜ン!」
「泥棒違いだよ……って、うわわぁッ!」
彼女の手が依然としてしっかりと僕のズボンを掴んでいた。強引に飛んだ結果、ベルト
がぶっつりと千切れ、僕の下半身が剥かれ、
「OH、キュート――……」
という台詞を残し、彼女がズボンとともに落下していった。外気に晒された下半身を覆う
ものはなく、ない。――何もない。
「僕のパンツゥゥッッ!」
それまでも彼女に持っていかれていた。
511 :
125:03/11/16 00:45 ID:1AaRJKBl
せめてトランクスを取り返そうと思ったけど、すでに彼女の姿は見当たらず、股を両手
で隠しながら帰るという非常に恥ずかしく情けない格好で家に帰った。もちろん家族に見
つからないように自室のバルコニーから侵入した。
着替えを済ませて下に降りていくと、
「あら大ちゃん、お帰りなさい」
「ただいまぁ……あ」
母さんに会い、そこでようやく盗みが失敗したことを思い出した。正確には失敗したんじゃ
なくて外国訛りの変態さんに先を越されたんだけど、どちらにしろ今は僕の手元に指輪は
ない。
「今日もお疲れ様。テレビじゃダークのことが引っ切り無しよ」
母さんに促がされるようにして見たテレビには、つい先程美術品がダークの手によって
盗み出されたと大々的に放送してあった。
「さすが、わしの孫じゃ」
「お疲れ大助」
じいちゃんと父さんも満足気に頷いている。これから僕が伝えようとしていることが非常に
言い出しづらい空気だけど、言わないわけにもいかない。
「あ、あの、その指輪の件なんだけど……」
「どうしたの大ちゃん?」
にこやかな母さんの笑顔が凍りつくのは、僅か数秒後の事だった――。
512 :
125:03/11/16 00:45 ID:1AaRJKBl
「――で、母君は怒り狂ったというわけか」
さっちゃんが面白そうに笑い声を漏らした。
「こっちは笑い事じゃなかったんだよ」
僕はさっちゃんの胸の谷間に頭を埋め、そのまま地面に溶け込みそうなほどだらしなく身体
を投げ出していた。
僕が事情を説明したら、母さんは怒りに我を忘れて手当たり次第に家の中を破壊し始めた。
慌てて丹羽家の男子全員で取り押さえたけど、じいちゃんはぎっくり腰、父さんは全身打撲と
いう痛ましい犠牲を払うことになった。
「その小娘、今度会ったら八つ裂きになさい」
母さんがこんな恐ろしいことを平然と言ってのけたことに驚きとともに戦慄した。眼が本気だ
った。
「次に会うこともそうありはしないだろう。気にすることはない」
そう言いながらさっちゃんが腕を回して僕の乳首を弄り始めた。
「ふぉふふぇふほ。ふぃふぃふぃふぁいふぇ……えほ、えほ」
レムちゃんが咳き込み、僕のモノから口を離した。
「しゃぶりながら喋るのはどうかと……」
彼女の頭を撫でながら、再びその口の中に脈打つ肉を突き入れた。ちなみにさっきのを翻訳
すると『そうですよ。気にしないで』だと思う。
「でもさ、あの子しつこそうじゃない? また出くわすかもしれないよ」
乳首の周りを円を描くように刺激され、焦らされているのが分かり、早くもっとして欲しいという
思いが湧き立った。
「その時はその時だ。何とかすればよい」
「楽観的な……」
「んぱぁッ。世の中そんなものなのでは? はむッ」
咥え込まれるたびに頭が擦られて気持ちいい。新たな快感の発見の瞬間だ。
513 :
125:03/11/16 00:46 ID:1AaRJKBl
「それよりも、だ」
ぐいっとさっちゃんの胸の中に頭が沈み込んだ。サイドに感じる胸の弾力が心地良い。
これも新たな快感だ。
「どうもあの小娘が撒いた薬が効いているらしくてな」
乳首を優しく抓まれ、自然と声が漏れた。
「んぷはぁッ。身体が疼いて疼いてもうどうしようもないのです。んむぅッ」
やはりあの薬にはそんな作用があったんだな、と頷いた。僕自身も寝る直前になってか
なりの性欲が湧き起こってきていたからだ。
「じゃあ今日は力尽きるまでしよっか。あ、出る」
宣言した瞬間、レムちゃんの口内で僕が暴れ狂った。唇を締め、逃さないよう吸い上げら
れるのがさらに射精を強めてくれた。薬の効能も相まってか、しばらくしなかった時くらい
大量の精液が放出されるのが分かった。
「んん……、濃いですねぇ」
にやっと笑う口の端から精液が一筋漏れ出した。それを舌で舐め取り、喉を鳴らして口
の中のものをすべて呑み込んだ。
「ほれ。次は我の相手をしてくれ」
今しがた欲望を吐き出したばかりで萎え始めていた肉塊をさっちゃんが握り締めて無理
矢理上下にしごきだした。普通はそんなことをすれば敏感になりすぎた男根には辛いこと
だけど、淫夢の精であるさっちゃんがしてくれるとみるみるうちに元気を取り戻し、戦闘態勢
を整えてくれる。さすがさっちゃん。
「さて。桜と菊、どちらを犯したい?」
耳元で甘く囁かれ、
「菊で」
即答した。
514 :
125:03/11/16 00:47 ID:1AaRJKBl
「この好き者め」
嬉しそうに言いながら、さっちゃんが僕の方にお尻を突き出してきた。二つの山を左右
に押し拡げると、綺麗な皺が円をなす窄みがちょこっと姿を現し、それがぱくぱくと口の
ように開閉を繰り返した。
「早く挿入せい。我慢できずにひくついてしまってるではないか」
卑猥に動くそこを見て、さっき焦らされた仕返しをしてやろうと考えた。さっちゃんが望ん
だモノは入れずに舌でそこを舐め上げた。
「あン、こら。そんなことは、んッ……」
開いた菊の中を舌先で抉るように攻めると、さっちゃんが艶っぽい声をあげた。
「いいね。可愛い」
「からかうなっ!」
頬を染めて抗弁する彼女は本当に可愛らしいと思うのに、どうもさっちゃんは可愛いと
言われるのが苦手なようだ。
「じゃあ、綺麗?」
「…………それなら許す」
今度は照れたように鼻の頭をぽりぽり掻いている。やっぱり可愛いと言いたくなった。
「そんなことはどうでもいい!」
僕にとってはそうでもないけど。
「早く入れんか! 主が欲しくて気が狂いそうだッ」
そうまで言われたら入れないわけにはいかない。唾液で十分に濡らした後門へ先端をぐ
いぐい押しつけ、少しずつ腰を突き出していった。
「んくぅぅゥッッ――」
さっちゃんにしては珍しく痛みを堪える声を漏らした。そう思ったけど、よく見ると彼女の
顔はさっき以上に赤く染まり、息を荒げ、さらに前門から愛液が大量に滴り落ちている。
「入れただけで、イッちゃったの?」
驚いたので訊いてみたけど、彼女は呼吸を乱したまま答えることができなかった。これ
も薬の効果なのか?と考え、その影響のありがたさに少しだけあの子に感謝した。
515 :
125:03/11/16 00:49 ID:1AaRJKBl
「じゃあ動くよ」
そう言ってあげてから腰を掴み、がんがんさっちゃんのお尻に腰をぶつけ始めた。直腸
の奥まで挿し込むたびに彼女の口から引き攣った息が漏れ、死にそうなほど呼吸を荒げ
て悦んでくれる。バックから快楽に歪んだ表情が拝めないことが残念だけど、その分彼女
の声がはっきりと耳に届く。
「うぅ、気持ちいいッッ」
押し突くほどに入り口の締りがよくなり、僕のモノに吸いついてくる。肉壁は柔和にうねり、
優しく包み込んでくれる。肌を重ねてから一分もしないうちに、さっちゃんの腸内へ二度目の
射精を行った。一度出していたにも拘らず、繋がり合うところから噴き出すほどの量の体液
をブチ撒けていた。
「ふぅぅッ、ふぅッ……」
身体を震わせているさっちゃんから腰を離すと、粘液が惜しむように糸を引いた。さっちゃん
がもの欲しそうな目で僕の股間を見つめてくるけど、力が入らないのか、動こうとはしなかった。
「激しいですねぇ」
背中に温かなものが触れたかと思うと、身体に細い腕が回された。全裸のレムちゃんが
密着し、片手で僕の柔肉を弄びだした。
516 :
125:03/11/16 00:51 ID:1AaRJKBl
「ま、まだやるの?」
「当然なのですっ」
元気に返事をし、むぎゅっと金の玉袋を握られた。
「――!!?」
不意の動作、予期せぬ鈍撃に腹の奥がきゅんとなった。
「か……加減して、よ……」
「ここ、これは申し訳ありませんです!!」
レムちゃんがさっと手を引いて謝った。性欲満々なのはいいけどまだテクニックはさっ
ちゃんに及んでない。
「謝罪の意を込めて口でさせてくださいっ」
僕の答えを待たずして、レムちゃんが前に回りこみ、己の精子がべろっと付着して萎え
ているそれを根元まで咥え込んでいった。
この子は口でするのが好きで、その点においてはさっちゃんより数段上手だ。舌で全身
にこびりつく生臭い体液を舐め取られると同時に、彼女の粘膜の中で三度目の射精へ向
けての準備が整った。
「レムちゃんはどっちがいい?」
さっちゃんとは逆に彼女に入れる穴を選ばせた。
「わ、わたしはこっちがいいですぅ……」
両手で自分の縦割を拡げ、粘液で透き通るように輝く幼い内肉を外気に晒す姿に興奮した。
517 :
125:03/11/16 00:52 ID:1AaRJKBl
「すけべだね」
顔を朱に染める彼女の足を左右に拡げ、小さな桜色の花弁をぱっくりと開いた。
「恥ずかしいですぅ……」
両手で顔を隠す仕草が小動物のようで愛らしい。指の間から覗く瞳には期待に溢れてい
るような気がした。
「入れるね」
桃色の肉穴は彼女の身体と同じで小さく、挿入は捻じ込むように強引になってしまう。
表情は読み取れないけど、眼は頑なに閉ざされ、時折り大きく身体をびくつかせている。
「痛む?」
僕はいつもその心配をしている。何度やってもレムちゃんのあそこは初めてのように狭く、
緩くならない。心なし最初の頃より穴が小さくなってる気がしないでもない。
レムちゃんはぶんぶんと首を横に振った。僕も彼女に苦痛を与えないようにゆっくり、
慎重に腰を進めていった。
「いぐッ! はにゅぅ、ぅぅッッ」
呻き声を聞きながら、狭い肉壁を拡げつつ根元まで咥え込ませた。腰を引こうとしたけど、
そうしようとするだけで肉棒が股間から引き千切られそうだ。やっぱり狭い。喰いつきが
強くなっている。
「動いて……。平気、ですよぉ」
小さな呟きが耳に届いたけど、ここでピストンでは彼女も僕も気持ちよさが先に来ない。
そこで僕は、
「あッ! ひゃぁッッ!」
奥に剛直を突っ込んだまま、腰で円を描くように彼女の膣内で動かした。中を抉り取る
ように犯していく。ピストンをしない分、痛みは少なくて澄むはずだ。
「いやぁぅッ! なか、中ぐるぐるしてますぅぅッッ!!」
彼女が身体を捩るたびに膣を塞いでいるモノが捏ねくり回され、前後に擦る時とはまた
違った刺激が気持ちいい。
518 :
125:03/11/16 00:52 ID:1AaRJKBl
それでも、快感に身を委ねて乱暴にならないようにゆっくりと回し続けた。もともと潤って
いたそこから淫らな音が漏れ出している。途絶え途絶えに切らす息に、時折り艶っぽいも
のが混じり始めた。具合がよくなってきたようだ。
「動くよ」
慎重に腰を引くと、捏ねくり回した事が功を奏したようで、少しだけ緩くなった彼女の膣孔
から僕のそれがずるずると身を現し、そしてまた穴の中へ沈めていく。
「んん――」
レムちゃんが腰の動きに合わせて声を上ずらせる。奥にぶつけるたびに狭い孔道に収ま
りきれない膣汁が音を立てて噴き出している。
「んはァ……、恥ずかしぃぃ……」
頼りなさ気に呟く声に、一気にボルテージが上昇してしまった。
「可愛いよ」
彼女の首に甘く噛みつき、舌先を筋に沿うように這わせると、短く甲高い声で鳴いた。
「ひッ――!ぞくぞくしちゃ……ひゃンッ!」
舌を滑らせるだけで声にならなくなる彼女が愛しくなってきた。それと同時に下半身の疼き
が増し、限界を迎えたいと訴えてきた。
519 :
125:03/11/16 00:53 ID:1AaRJKBl
「イきそう、だよ」
「んは、はいぃッッ!」
腰をぶつけ、いつの間にか彼女に対する気遣いは消えていたが、彼女の方もすでにその
刺激に満更でなく、十分身体に快楽が突き抜けているようだった。
「んくッ……!」
呻くと同時に、本日三度目の絶頂が訪れ、彼女の中で元気よく跳ね回った。暴れるのを押
さえ込むために奥の方にまで突っ込み、
「ぶるぶるッ、震えてますぅぅゥッ!」
実況するようにレムちゃんが口走る。長い放出が終わると、彼女が疲労のためか、ぐったり
と脱力した。敏感を通り越して鈍感になりかけている陰茎をゆっくりと引き抜くと、力なく開いた
孔内からとろとろと粘液の混合物が流れてきた。レムちゃんに被さらないように気をつけて、
僕も地面に横になった。今日は大分頑張った。
「主ぃ」
感覚さえはっきりとしなくなっているモノがぎゅっと締めつけられた。驚いて目を向けると、
さっちゃんが地面に這いつくばりながら僕の萎縮した肉を握っていた。
「もう一回。な?」
「もう無理だぁぁぁーーッ」
僕の叫びが、白い世界に虚しく木霊した――。
520 :
125:03/11/16 00:54 ID:1AaRJKBl
「――ひぃッ!」
怯えた声を出して僕は跳ね起きた。身体にはべったりと寝汗が噴き出し、まとわりつく
寝巻きが気持ち悪い。
満足してもらったと思っていたけど、甘かった。二人の性欲は底なしで、跡になればな
るほど僕はどんどん精気を搾り取られていった。
いつものように股間チェックをし、
「…………あれ?」
まったく濡れていなかった。あれほど大量に、幾回も射精をしたにも拘らず。
「OH」
訝しく思っている僕の右手がベッドに触れ、変な音が、いや、声が聞こえた。それにこ
のベッド、やけに柔らかい。手元を見ると、僕は女性の象徴ともいえる部分の左側を揉ん
でいた。
「! ひぃぃぃっッ!!」
再び、さっきとは比較にならないほど大きな悲鳴をあげ、パニック状態になりかけた僕
は文字通りベッドから転げ落ちた。
「……ッ痛ぅ」
頭を激しくぶつけたせいで世界がぐるぐると揺らめいた。かぶりを振ってどうにか意識
をはっきりさせてから見上げると、ベッドからのっそりと覗いてきた女の子の覚醒しきれ
ていない寝惚け眼と視線が交わった。
「UMM……。OH、ダイスケッ! お目覚めでやんすカ?」
「なんでだぁぁぁァァァァッッッッッッ!!?」
521 :
125:03/11/16 00:55 ID:1AaRJKBl
大声量で吼えると彼女が耳を塞いでうるさそうな目を向けてきた。
「怒鳴ると近所迷惑ダヨ?」
「そんなことどうだっていいよ! どうして君が僕の部屋にいるのさ?!」
彼女がベッドから飛び降り、僕の目の前で正座して、
「これを見るアル」
差し出された彼女の手には布が乗っていた。よく見ると、それは昨日僕の下半身から脱
げ落ちていったトランクスだ。
「ここ、ここ」
「んん?」
指差すところを見ると、トランクスのゴムの内側に僕の家の住所が
「いや嘘だよね?」
「うん」
あっさり認められた。しばし、沈黙。
「…………まあジョークはここマデね」
「解決してないよ!」
彼女は聞く耳も持たず、手にしているトランクスを後ろに投げ捨てた。――僕のなのに。
「……ん?」
そこで新たな発見があった。能天気な明るい笑顔を向けてくる彼女の釣り上がった口の
端に、乾いた糊のようなものが一筋貼り付いている。
「…………」
多分、僕の予想で当たっていると思うので言及しなかった。
522 :
125:03/11/16 00:56 ID:1AaRJKBl
けど、まだ彼女に言っておきたいことがあった。
「あの、どうしてこの前からずっと僕に絡んでくるの?」
僕には彼女に絡まれるようなことをした記憶がない。二日前に会うまで顔を見たことも
ないはずだ。
彼女は少しの間だけ黙考し、両手を叩き合わせた。
「SORRYSORRY。言ってなかったネ」
「うん」
「これ見るよろシ」
どこから取り出したのか、彼女は新聞紙を手にしていた。そういえばトランクスもどこか
ら出したのか少し疑問に思った。
「これって……」
その新聞はうちが取っているのとは別のものだ。
「アタシの家が取ってる新聞ヨ。ホラ、ここ」
彼女が指差すまでもなく、その記事は一番目立っていた。そこには、僕の――正確に
はダークとしての――姿を遠くから撮った写真が掲載されていた。
それが分かった瞬間、心臓が爆発しそうなほど激しく打ち始め、汗が背中に吹き出てき
た。やはり彼女は僕の、ダークの正体に気付いている。昨日、ばれてしまったに違いない。
僕の心中を見透かしているように彼女の表情が不敵に歪んだ。息を呑み、身構えていると、
「心配しなさるナ」
彼女の台詞が意味するところが掴めず、頭の中が軽く混乱した。僕が訊き返すより早く、
彼女が言葉を続けた。
「将来のHUSBANDを陥れるような真似なんザできねーってンダ」
頬に手を当て、幾分紅くなった顔を隠すように俯いた。
(は、はずばんど?)
ちょっと待った。確かこの前の英語の授業でそんな単語を習った覚えがある。
(はずばんど……ハズ、バンド……HUSBANDは……)
「そうだ、夫だ」
ちゃんと学校の授業が役立ったことに、ちょっと嬉しくなった。
「イエースっ! ダイスケ、不束者でアルが末永くよろしくござル」
正座したまま頭が床につくほど深くお辞儀をされ、僕も返そうと手をついた。
「って、違ぁぁぁぁぁうっっっっ!!!!」
523 :
125:03/11/16 00:57 ID:1AaRJKBl
早朝から本日二度目の咆哮。また彼女が顔をしかめた。
「何っ? 何なのさ夫って! 勝手なこと言わないでよッッ!!」
口を挟ませることなく一気に捲くし立てた。息を切らし、ぜぇぜぇ肩で息をしていると、
「大ちゃんどうしたの?」
階段の下から母さんの声が訊いてきた。慌てて何でもないと否定し、再び彼女と顔を見
合わせた。一つ咳払いをして、十分間をおいてから確認するようにゆっくりと質問を始めた。
「えっと、まずは君の名前を教えてくれるかな?」
「あッ、まだ教えてなかったネ」
今度は彼女が咳をし、心なし居住いを正した。
「アタシの名前は桧尾みおでありますル。どうぞヨロシク」
何が宜しくなのか怖かったので曖昧に頷くだけにした。
「じゃあ桧尾さん、どうして僕に絡んでくるの? 正体を知ってるのにそれを言い触らさない
なんて、どういうこと?」
「そうだったヨ! もう一度見るノダ」
新聞紙を床に拡げると、今度は三面記事のところを開いて見せてきた。
「ここよ、ココ」
大面積の新聞紙の片隅に、他の話題に押しやられて小さく数行程度のある記事が載って
いた。
「んっと……『盗賊クラウンの仕業か!? またもや美術品盗まれる』?」
そういえば中学に入るより以前、母さんから隣町の春日井町にうちと同じように代々怪盗
家業をしている血族がいると聞かされた記憶がある。腕も確かで、その筋ではダークには
及ばないまでもなかなか有名らしい。たまにニュースでも流れていたが、最近になってあま
り見なくなっていた。
524 :
125:03/11/16 00:58 ID:1AaRJKBl
でもこの記事と桧尾さんとどういう関係が?と考えた時、僕の目に彼女の頭の上の王冠
が映った。
「…………クラウン? って、もしかしてっ!」
気付いた僕が桧尾さんに詰め寄るように新聞紙を超えて身を乗り出すと、彼女が満足そ
うに頷いた。
「おうともヨ! アターシが、新しく名を継いだ怪盗クラウンであール」
胸を反らせ、満面の笑みを浮かべる彼女はとても幼く見え、とても怪盗をやってるように
は見えない。――それは僕にも言えることかもしれないけど。身体を引いて新聞紙と桧尾
さんを交互に、何度も見やった。
「……ん? 怪盗? でも新聞には盗賊って」
そこまで言った途端、彼女の方が新聞を乗り越えて僕に詰め寄ってきた。
「そうなのッッ! アタシがダークの元に来たノモそれが理由ネ!」
「ど、どういうことかな?」
たじろぐ僕にさらに桧尾さんが顔を寄せてきた。表情は怒ったような、泣き出したような、
何とも喩えがたい複雑な形をしていた。彼女が僕に遭いに来た理由をようやく語りだした。
「アタシがクラウンの名を継いでしばらく、順調に盗みの方もいってタノ。アタシも次第に
クラウンの名にプライドを持ち始めてたノヨ。ところがその時、怪盗ダーク、つまーりダイ
スケも仕事をし始めたんでござル」
そこで、一瞬だけ僕の方に視線を向けられた。
「鮮やかな手口、ポリィスメンを欺く巧妙なトリック、そのせいでとうとうダークが春日井町
の新聞の一面まで飾るようになったーでアルよ!」
新聞紙がくしゃくしゃになるほど強く床を叩きつけ、不意のことに身体が縮み上がった。
彼女の言うことに思うところがあり、ベッド脇の壁にかかる長剣と円盾をちらっと盗み見た。
さっちゃんレムちゃんという強力な助けを借りて盗みをするせいで、その手口やトリック
といったものが人智を超えたものになり、過大にダークが評価されているんだと思う。も
ちろん二人の事を言うわけにはいかないからそのことは当然黙っていた。
525 :
125:03/11/16 00:59 ID:1AaRJKBl
「おかげでとうとうアタシのホームシティのニュースペーパーにまでダークがビッグに取
り上げられて、アタシの記事は小さくなる一途……さらーに怪盗から盗賊に格下げヨ」
確かに、聞く限りでは桧尾さんの、クラウンの話は可哀想なもので、それに僕が一枚
噛んでいるのも事実だ。
「だからダークを亡き者にしようと東野町にやってきたのでゴザイマス」
桧尾さんがどこからともなく取り出した無数の凶器――短刀、ピストル、グローブ、栓
抜き、コマにヨーヨー等――が床にぼろぼろと小さな山を作った。
「こ、殺されるところだったんだ……」
凶器の数々を目にし、それが冗談では済まなかった事を思い知った。
「でも、それじゃあどうして……その、夫だなんて」
最もな疑問だと思う。命を狙う仇から一転して夫にするだなんて、一体どういった心境
の変化なんだろうか。
「そ、それはァ……」
人差し指を絨毯に穴を穿つようにぐりぐり押しつけ、恥ずかしそうに言葉を紡いできた。
「実際に会って……敵としてでハなくぅ……、つ、つまりィ……」
絨毯から煙が上がり、気のせいか彼女の指が少しずつめり込んでいってる気がする。
僕はすっと立ちあがり、服を着替え始めた。なんとなく、じゃない。僕の勘がこうしろ
と告げている。財布があることを確認し、ズボンのポケットに押し込んだ。
彼女の指はすでに第二間接ほどまで埋まっている。
バルコニーに昨日脱ぎっぱなしだった靴があることも確かめた。怪盗時のものだけど、
不都合があるわけでもないのでよしとしよう。
「ウィズ」
名前を呼ぶとベッドの中からウィズがもこもこした身体を引きずって顔を覗かせた。
「今日は一緒にいけないけど、大人しくしててね」
分かったのか分かってないのか、半眼で鳴いたウィズは再びベッドに潜り込んでいった。
机の上に書置きを残し、これで済ませることは終わった。
「あ、アタシはダイスケの事が……ッ!! WHY?! いないナリ!」
バルコニーに出て靴を履き、そのまま外に逃げ出した。
526 :
125:03/11/16 01:00 ID:1AaRJKBl
「待つのダァァッッ!!」
「もう追ってきた!?」
反応が早い。さすが怪盗クラウンの名を冠しているだけのことはある。と感心している
場合じゃない。
後ろを振り返ると彼女が手に何かを持っている。あれは、ビン……壺?
「そーれ、喰らうのジャッ!」
壺に手を突っ込み、僕に向かってこれまた何かを投げてきた。
(粉……?)
「くっ!」
触れちゃダメだ!そう思った時には行動に移していた。地面を蹴り、失礼ながら他人の
家の塀を駆けさせてもらった。
僕がさっきまでいたところには不思議そうな目で僕を見上げるサッカーボールを持った
少年の姿が。
「! 危ないっ!」
少年がえっという顔をした時にはもう遅かった。桧尾さんが放った粉が少年に降り注い
でいた。
「は、はわぁぁぁッッ!!」
幼い子どもには似つかわしくない嬌声をあげ、その場に倒れてしまった。最後に一瞬だ
け見えた表情は、絶頂を迎えたような至高の笑顔をしていた。
「昨日の匂いの正体?」
走りながら、昨夜の美術館での警官隊の状態とさっきの少年の状態が似ていることに気
付き、彼女が手にしているのが昨日のあれと同じものだと思った。
「とにかく、逃げなきゃ!」
527 :
125:03/11/16 01:01 ID:1AaRJKBl
好きって言われても僕は困ってしまうわけで、それに捕まってしまえばあの粉の餌食に
なって昨日の続きみたいなことをされてしまいかねない。いや、粉の効能を見た限り、そ
れ以外の用途はないはずだ。
「待っテーーッッ!!」
粉を振り撒きながら桧尾さんが後をもの凄い速さで追いかけてきている。時折り後ろか
ら男性のものか女性のものか判断できない気持ちよさそうな叫びが聞こえてくる。
背後で起こっている惨状を目にしないように前だけを見据え、僕は走り続けた。
「ってぇぇぇぇぇいッッッ!!」
「上ぇっっ!?」
塀から横っ飛びに身を投げ出すと同時に、埃を巻き上げて他人の家のブロック塀が崩壊
した。
「んっふっふっふッフッフ」
目をぎらつかせ、桧尾さんが土埃の中から姿を現した。
これは、殺される……ッ!
そう思わされるほどの威圧感が彼女に纏わりついていた。急いで体勢を立て直し、大通り
を目指すのはやめて細い路地裏を縫うように逃げることにした。
土地勘がある分、僕の方が有利に違いない。地元特有の裏道を駆使し、何とか彼女を撒
こうと必死に走り続けた。
528 :
125:03/11/16 01:01 ID:1AaRJKBl
今はここマデです。
大作キターーーーーー!!!
三角関係+2がさらにややこしいことになりそうな予感w
同業者&秘密の共有で原田姉妹ピンチ!
しばらく更新がないと思ったら大量だなぁw
でも、微妙に、パラレルにみおって合わないかも。
原作よりもクラスメイトがキャラ立ってるからかなぁ…。
それともただ単に俺がみおが嫌いなだけ?
なんにしろ、おつかれさまです。続き期待ー。
大量の更新ご苦労様です。
みおはアニメオリジナルのキャラなので、原作から『DN』に
入った自分も登場当初は違和感ありまくりだったのですが、
最終回ではすっかり感情移入。
しかし、アノ謎日本語を模倣するのは大変そうだ(笑)。
532 :
名無しさん@ピンキー:03/11/17 14:53 ID:EGEDjlM5
梨紅が強姦されて梨紗にいたわってもらう話しキボン
凄いのキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!!
後でゆっくり読ませていただきます
とりあえず保守
535 :
名無しさん@ピンキー:03/11/22 23:26 ID:4+I6Fr2f
age
536 :
125:03/11/23 00:56 ID:5GwivvJD
――正午。
「じゃあね」
「ばいばい」
東野第二中学校の制服を着た女子が二人、公園の中で別れていた。二人とも健康的に
黒く焼けた肌をしている。
走り去るラクロス部の友人の後ろ姿を見送り、原田梨紅は自転車を押して公園の中を進
んだ。
「わー。緑がこんなに……」
見上げると、青い空を覆い尽くすように無数の緑木の葉が青々と茂っていた。葉と葉の隙
間から漏れる光が、彼女の周りを幻想的に照らし出していた。
「……綺麗」
地面に映える木漏れ日を見ていると、自然と穏やかな気持ちになっていた。
「――」
「ん?」
その時、彼女の耳に何かが届いた。
「――ッッぁぁぁぁ」
今度は、さっきよりはっきりと聞こえた。
「…………上?」
「退いてぇぇぇぇぇぇッッッッッ!!!」
「ひッ――」
盛んに茂る青葉を散らし、上空から人影が降ってきた。目の前に墜落するそれを見て、
梨紅は思わず息を呑んだ。
着地に失敗したのか、比喩なしの文字通りに地面にめり込む人影がずぼっと頭を引き抜
いた。
537 :
125:03/11/23 00:57 ID:5GwivvJD
「あ、っつつぅ……。あ、あの、大丈夫だった?」
すっかり土で汚れた顔を上げた彼は、目にした女子の顔を見て固まった。
「丹羽……くん?」
「……梨紅さん」
彼女が誰か分かった途端、彼はしどろもどろになった。
「そ、そのっ、これはッ! あ、あわわッッ!」
何故空から彼女の目の前に堕ちてきたか説明しようにも、どうにもうまい言葉が見つか
らずに混乱だけが進んだ。
「あ、あぁー……? 梨紅さん、日に焼けてるね」
何とか言葉を捻り出そうとして出たのがそれだった。
「うん。ずっと部活だったから」
大助に言われ、腕を抱え焼けた肌を隠したことに彼女自身も気付かなかった。
「そっか」
そして続く不思議な沈黙。優しい風が吹き、木の葉が擦り合う音が染み渡り、今まさに
二人だけの世界がそこにはあった。
「――ダイスケェェェェーー!!」
梨紅からすれば、それはようやく訪れた平穏な世界を切り裂く悪魔の雄叫びに聞こえ
ただろう。声が終わると同時に、大助に飛びつく女子が現れた。
「んなッ……!」
すぐ前で起きている出来事に梨紅は我が目を疑った。大助に馴れ馴れしく抱きつく女子
が出現した事に驚き、しばし身体が硬直した。
「桧尾さんッ! やめッ、やめてってば!」
「ンもー、照れなさるナ。アタシとダイスケの仲ではおまへンカ」
大助が身体を離そうと試みるが、しっかりと抱きつく彼女は離れるどころかどんどんくっ
ついていく。
538 :
125:03/11/23 00:58 ID:5GwivvJD
「アナタが逃げるから秘伝の粉が全部なくなったーヨ」
「そ、それはよかった……」
ひっつかれ、身動きの十分に取れない大助が梨紅に向けて助けを請うような視線を送ると、
彼女はそれに気付き、ようやく身体を動かした。
「ちょっと! 丹羽くんが嫌がってるでしょ」
梨紅が口を挟むと、今まで嬉々として大助に抱きついていたみおの動きが止まり、ぎりぎり
と音を立てて梨紅の方へ振り向いた。じと目で睨まれ、思わず引きそうになるが、負けじとそ
の目をじっと見つめ返した。
「むぅー、ダイスケ! 何アルかこのガールは?」
「彼女は」
「あたしは、丹羽くんのクラスメイトよ」
大介の前に梨紅が告げると、みおは彼女の顔を見て数回、目を瞬かせ、
「OH、そうでござルか。アタシはダイスケのワイフになるであロウ桧尾みおなのだ。よろシュー
たのんまスゥ」
険しい剣幕がぱっと晴れ、ぺこりと丁寧に頭を下げるみおにつられ、梨紅も深くお辞儀を返し
てから、
「ワイフッッ!?」
言葉の意味を確かめるように繰り返した。
「ワイフって、あの、丹羽くんと……その、桧尾さんが?」
「いやそれは誤解で」
「そうなのダ!」
否定しようとする大助の言葉を遮るようにみおが声をあげ、さらに強く抱きついた。梨紅の表情
が微かに引き攣ったことに、二人は気付かなかった。
「やめてって! お願いだからぁッッ!」
「んもー。照れるなこんチクショー」
べったりと触れ合う二人を見る梨紅の表情が、次第に歪み始めた。
539 :
125:03/11/23 00:59 ID:5GwivvJD
「……仲、いいんだね」
「えーッ! 違うってこれは」
「そうだヨ。アタシとダイスケは歯に衣着せぬ関係ナノダ!」
また誤解を招く言い方をされ、大助は懸命に否定した。しかし、やはりみおが邪魔する
ように強く抱きつく。
「あ、あぅぅ……」
抱きつかれ、困り果てて呻く大助の視線が梨紅に向けられた。助けを求めようと縋るそ
の瞳に、梨紅は言葉を詰まらせた。
(アタシにどうしろっていうの……)
(とにかく、助けて!)
(うぅ……困るよぉ)
(お願い助けてっ!)
等という脳内対話が行われた気がする。梨紅はどうすればいいか心を落ち着かせて考
えた。
「ダイスケェー」
「うッ、うぅぅッッ」
みおが大助に頬を摺り寄せるのを見て、切れた。
540 :
125:03/11/23 00:59 ID:5GwivvJD
「丹羽くんっ」
ずかずかと自転車を引いて大助の傍により、その腕を掴んだ。抱き合っている二人が
目を瞬かせていると、
「約束、覚えてるよね?」
「え……?」
声を漏らしたのは言葉をかけられた大助本人だった。間抜けな顔をしている彼に、梨紅
はさらに念を押して言葉を浴びせた。
「だから、この前した約束。その日が今日だったよね?」
「約束ゥ? 何の事ダ、ダイスケ?」
「?」
みおに訊かれるが、大助にも思い当たる節はなく、怪訝な顔を梨紅に向けた。
すると、梨紅が右目をぱちぱちとウィンクのような仕草を大助に送った。
(ほら、話し合わせて)
(そうか。そういう事なんだね!)
(早く。怪しまれちゃうでしょ)
(うん、分かった)
等という脳内対話が再び行われた気がする。
541 :
125:03/11/23 01:00 ID:5GwivvJD
「そっ、そうなんだ! 今日はこれから梨紅さんと用事があるんだ!」
「エッ?」
みおが狐に抓まれたような顔をし、僅かに力が緩んだ瞬間、大助が身体を引き離して
梨紅の傍に移った。
「だから桧尾さんとは……」
「そっ。そういうわけだから」
申し訳なさそうにする大助の横で、梨紅が素っ気無く告げた。しかし、みおがここで引
き下がるわけがなかった。
「ムーッ、納得できなーイ! HEY! そこの黒っ子ガール!」
「黒……ッ!」
梨紅がかちんときた後もみおは言葉を続けてきた。
「ユーはダイスケとどんな関係でございまスカ? 教えやガレィッ!」
「ひ、桧尾さんには関係ないでしょ!」
みおのしつこさに内心焦りつつ、ぼろが出ないように早々に会話を切り上げようとする
が、彼女は諦めない。
「ありやがル! アターシはダイスケと付き合ってるのダヨ!?」
「それは違……」
「それとも何? ユーがダイスケと付き合ってるのカ?」
「え゛……」
「これからダイスケとデートなノカ?」
どうしてそんなとんでもない発想が次々と浮かんでくるのか、思っただけで大助の気は
滅入った。とにかく今はこの状況を切り抜けようと方法を模索していた時、
「…………そ、そうよ」
『えーーッッ!!』
驚いたのは訊いたみおだけではない、大助もだ。そのとんでもない台詞に大助の頭の
中は真っ白になり、考えが霧散していった。
542 :
125:03/11/23 01:00 ID:5GwivvJD
「ま、待ってよ梨紅さん。いくら助けてくれるからってそこまで言わなくても……」
「な、何よ! あた、あたしとデートするの嫌なの!?」
「いッ! あ、や……そうじゃなくてぇ……」
助けてくれるだけのはずが、いつの間にかデートをするかどうかという点に論点がずれ
ていることにも気付かず、大助は酷く答えづらい問いかけに閉口した。
「んもうッ! はっきりしなさいよ!」
梨紅が急かす様を目にし、
「AH、二人は付き合ってるのではなかったでござルカ?」
二人の裏を見透かした表情でみおは訊ねた。その顔に、台詞に、もう後には退けない事
を悟った大助は、半ば自棄気味にみおに言い放った。
「つ、付き合ってるよ! ねッ、梨紅さん!?」
「う、うん! そうね丹羽くん!?」
互いに顔を見合わせ、引き攣った笑いを貼りつけながら、さらに笑い続けた。その様子を、
みおは未だに意地の悪そうな表情で見ていた。
「じゃ、じゃあ僕らはこれで」
「さ、さようなら桧尾さん」
二人がみおに手を振り、並んで去ろうとすると、その背中に彼女が声をかけた。
「せいぜい楽しんできやがレーイ!」
先程までのしつこさとは打って変わって、何ともあっさりと引いてくれたことに一瞬だけ不
思議な思いで大助と梨紅が視線を交わしたが、すぐに後ろを振り返り、また手を振り離れ
ていった。
みおも踵を返し、二人とは逆の方向へ歩き出した。その口が不気味に釣りあがっていた
ことは言うまでもなかった。
543 :
125:03/11/23 01:01 ID:5GwivvJD
「いたたたたぁ……」
全身の筋肉の悲鳴を聞きながら、原田梨紗は薬局を後にした。自宅にある湿布の買い置
きが切れたため、軽くウォーキングがてら買出しに来ていた。手に提げた袋には文字通り、
溢れんばかりに湿布が詰め込まれていた。いきなりランニングなんか始めるものじゃない
な、ということを身をもって知った。
(それでもっ……!)
自分はまだ走り回らなければならないという事をよく分かっていた。まだまだ、しなきゃいけ
ない事があるんだから、そう自分に言い聞かせ、この筋肉痛も覚悟の上だと納得しておいた。
「いたたたぁ……」
家を出る前に残りわずかの湿布を背中に貼っておいたが、未だに溜まった疲労は取れてい
なかった。袋片手に腰を曲げて二、三度叩く様は、行商のおばちゃんに似ている。
「しんどー……あれ?」
満身創痍の身体を引きずっている彼女の視界の端に、道路を挟んで逆側の公園にいる人
影が映り込んだ。それは体を蝕む筋肉痛の原因と関係があり、彼女が捜していた少年の姿
だった。彼を見つけ、頬が緩むのを自覚したが、構わずに傍に行こうと横断歩道まで急いだ。
「丹羽く――」
そこで、ようやく彼が一人ではないことに気付いた。降って湧いたように視界の中にもう一つ
人影が現れた。それは彼女がよく見知る人物、彼女の片割れ、理解者。最も親しい者である、
「…………梨紅」
――姉。
二人が並んでいるところを目の当たりにし、心臓が縮み上がる想いを抱いた。
(な、んで……)
羽虫の飛翔にしか過ぎない、小さなざわめき。
(そうよ、たまたま一緒なだけじゃない)
水紋が拡がるように、次第に大きくなっていく疑心。
(……違うよね? そうじゃ、ないよね?)
呼応して高まる心音。心に生じた、微かな亀裂。
(梨紅が……盗っちゃうの?)
灼ける程強く心臓が脈打ち、そして彼女は――
544 :
125:03/11/23 01:02 ID:5GwivvJD
「ついて来てる……」
後ろを振り返らずに、隣にいる梨紅さんに小声で告げた。
「えぇっ、本当?」
首を縦に振ると、梨紅さんが大きく溜め息を吐いた。
「あの子もしつっこいなぁ」
「ごめん。せっかく助けてもらったのに」
梨紅さんは別にいいよ、と笑って言ってくれたけど、僕はやはりばつが悪い思いでいっ
ぱいだった。
「うぅん……」
桧尾さんに尾行されているからには迂闊に梨紅さんと別れることもできず、この状況を
切り抜けるうまい方法も見つからず、一人で唸っていた。
「……ま、まあ立ち話もなんだし、どこか行こうよ」
「ん? うん。………………っえ、ええ! ぼ、僕と!?」
梨紅さんに言われてからしばらくして、ようやくその意味を呑み込めた。
「他に誰がいるのよ?」
当たり前でしょと言いたげに彼女が顔を近づけてきた。
「んでも、でもさっ! ああ、いや……いや、嫌じゃないんだけどぉ……」
いきなり、不意に、突然に誘われて気が動転してしまった。そんな僕にさらに彼女の顔
が迫ってきた。息がかかってしまう程の距離、思わず息を止めてしまった。
「いい? あたしたちは、今、デェトしてるんだよ?」
「あ……」
「だから、桧尾さんに怪しまれないように、それらしく振る舞わなきゃいけないんだよ」
そうだった。梨紅さんの思わぬ発言に現状を見失っていた。
梨紅さんからすれば、今日のこれはいきなり降りかかった災厄みたいな出来事に違い
ないのに、話を合わせて助けてもらった上に、こうやってしっかりフォローまでしてくれる。
「うん。付き合ってくれて、本当にありがとう」
素直な気持ちでお礼を言うと、梨紅さんはそっぽを向くように顔を逸らしてしまった。
545 :
125:03/11/23 01:03 ID:5GwivvJD
「お、お礼なんていいよ。まだ安心できないんだからね」
「そっか。それじゃ、また後でお礼言うよ」
「うん……」
梨紅さんが頷くと同時に、僕のお腹がぎゅるぎゅるとひどい音を立てて鳴いた。そうい
えば、今朝から何も口にしてなかったんだ。
「お腹空いてるんだ? もうお昼だもんね」
朝も食べてないんだ、と言う必要もないので梨紅さんの言葉に同意した。
「それじゃ、お昼食べに行こっか」
デートらしいしね、と小声で付け足され、顔が熱くなるのが自覚できた。そんな僕の様
子を知ってか知らずか、梨紅さんはさっぱりしている。
「どこか行きたい場所ある?」
そう訊かれ、まず思い浮かんだのは先日行ったラブホテル
(じゃなくて)
その前に立ち寄ったハンバーガーショップ『マホドナルド』だった。梨紅さんにマホドナル
ドのことを言うと、
「じゃあそこにしよ」
即決即断。コンマ2秒で昼食がハンバーガーになった。
それから会話をしたかどうかは覚えていないけど、いつの間にかマホドナルドが目の前
にあった。
「自転車置いてくるから待ってて」
梨紅さんが離れている間も視線を感じた。
(……僕を見てるのか)
梨紅さんを見ているんじゃないと分かり、ほっと胸を撫で下ろした。変に因縁なんかつ
けて、彼女に迷惑がかかってしまうことはごめんだからだ。
けど、桧尾さんのこの視線はなんていうか、刺すような冷たさを感じる。元気一杯、天真
爛漫な彼女がこんな視線を送ってくるのはあまりしっくりこない。
「お待たせー」
梨紅さんが駆け寄ってくると、僕は彼女と一緒に逃げるようにマホドナルドへ入った。
546 :
125:03/11/23 01:04 ID:5GwivvJD
「――それで」
ハンバーガー、ドリンク諸々が乗ったトレイを持って席につくなり、梨紅さんが強い調子
で声を出した。
「丹羽くんは桧尾さんとどういう関係なの?」
「え……」
「だってあたし、まだ丹羽くんとあの子の関係聞いてないもん」
「それは――」
果たして梨紅さんに話していいものかどうか悩み、口を噤んでしまった。実は桧尾さんは
怪盗で、僕の命を狙っていたけど一目惚れされたんだ、なんて正直に言ったところで信じ
てもらえるわけがない。
「言えないの? やっぱりそーゆー関係なんだ?」
目が据わっている。さっき外で感じた視線とは別の怖さが含まれていて、蛇に睨まれた蛙
のように呼吸さえままならなかった。
なんとか喉を鳴らして口を開き、考えも無しにぺらぺらと次から次へ引っ切り無しにとにか
く怪しまれる箇所は省いて誤解を招かないように言葉を紡いだついでに必要以上に身振り
手振りを交えてあれこれと一気に押し切った。
「…………あー」
息を切らす僕の前には、明らかに理解できていない梨紅さんの表情があった。
「んー……と、つまり桧尾さんは丹羽くんが春日井で知り合った子で、一目惚れされちゃって
追いかけ回されてた。ってこと?」
うん、と声にならない音を出して頷いた。
「無理しないでいいよ。ほら、飲み物飲んで落ち着いて」
梨紅さんに言われてから、音を立ててドリンクを流し込んだ。
「――ぷはーッ。……うん、落ち着いてきた」
彼女がほっと一息吐き、その表情が少しだけ緩んだ。と思ったら次の瞬間にはそれがきつく
なっていた。
547 :
125:03/11/23 01:05 ID:5GwivvJD
「大体丹羽くんがいけないんだよ」
「え?」
どうして、と聞く暇もなく梨紅さんが続けた。
「だって、丹羽くんが普段からぽーっとしてるから桧尾さんにいいように言い寄られちゃ
うんだよ」
「ぼ、僕ってそんなにぽーっとして」
「見える」
「…………」
釘を刺されるように即答され、すぐさま我が身を振り返ってみた。確かに学校ではそん
な風に振る舞っているけど、夜は凄いんだ。そう言いたい衝動が少しだけあった。言えは
しないんだけどね。
それにどんなにしっかりした人でも、桧尾さんのペースには誰も逆らえないはずだ。そ
れは推測じゃなくて確信に近いところがある。今日、梨紅さんに逢うまでに通ってきた道
がその証拠かもしれない。そこが今どのような惨状になっているのか、ひどく気がかりだ
けど、知りたくない。
「もっとしゃきっとした方がいいよ。男の子でしょ?」
「う、うん……」
「返事ははい」
「はいィっ!」
返事をしながら、完全に梨紅さんのペースになっていることに気付いた。もしかしたらこれ
からも女子と接する時はこうやってずっと圧されっぱなしなのかな?という考えがよ
ぎり、少しだけ気分が落ち込んだ。
そんな気分が微塵も伝わっていないのか、梨紅さんは表情を明るくさせた。
「それじゃ食べよっか? あたしも部活が終わったばっかでお腹ぺこぺこなんだ」
「うん。いただきます」
一緒にハンバーガーを食べ始めた。この前――といっても数日も前のことじゃないけど
――ここで食べた味を思い出しながら口にすると、あの時の美味しさがそっくりそのまま甦っ
てきた。
(それに……)
僕と同じく美味しそうにハンバーガーを齧る梨紅さんを見ながら食べれるなんて、これは
すごく幸せなことじゃないのか?と思えてきた。
548 :
125:03/11/23 01:05 ID:5GwivvJD
「あっ、そだ」
「! ――っ」
急いで視線を下げた。梨紅さんが突然、顔を上げて僕に話しかけてきた。
「ねえ、ちょっと訊いていいかな?」
幸い、彼女はその事に気付いていないようだ。
「なに?」
平静を装って言葉を促がした。それでも少しだけ動揺していたのでハンバーガーを口に
してごまかした。
「あのさ、どうして今日、丹羽くんが空から降ってきたの? っきゃぁぁぁッッッ!!」
口の中にあったものがすべて喉に詰まり、冷や汗を垂らしながらもがき苦しんだ。
「丹羽くんっ! 丹羽くんっっ!?」
眼前のテーブルがぐるぐる渦巻いている。――視界が揺らいでいた。
背中に数度、軽い衝撃が走った。それが背中から胸に突き抜ける感じとともに、喉につ
っかえていたものが僅かに緩んだ。すかさずドリンクを口に含み、喉が張り裂けそうになる
のを堪えて何とかして飲み込んだ。
「……っし、死ぬかと、思っ……」
「喋んなくていいから。どう? 少しは落ち着いた?」
梨紅さんの声がすぐ傍で聞こえ、横を見ると本当にすぐ傍に彼女の顔があった。僕の顔
色を窺いながら、優しく背中をさすってくれていた。
「…………うん、もう平気」
「ホント?」
「うん」
「なら、いいけど」
梨紅さんが席につく前に周囲に小さく頭を下げるのが目に入った。かなり目立っていたら
しい。僕も頭を下げ、それから恥ずかしさが徐々に込み上げてきた。
それからは周囲の目が気になってか、お互い無言で食べ続けた。
549 :
125:03/11/23 01:06 ID:5GwivvJD
「恥ずかしかったぁー」
「ごめん……」
大通りを歩き始めて最初に交わした言葉がそれだった。
「いいって。大事にならなくて安心したんだから」
思いやりに満ちた言葉を噛み締めながら、さっきから彼女を心配させてばっかりだとい
うことに気付き、自分が情けなくなってきた。
「丹羽くん?」
考えているところに声をかけられ、また僕がなにかしたのか思って胸が跳ねた。振り向
くと、彼女の曇った顔が目に映った。
「あのさ、あたしがあんなこと訊いちゃったからかな?」
あんなこととは、さっきマホドナルドでされた質問を指していると分かり、それがまったく
無関係じゃなく、まさに調子を悪くしたそのものなので、はっきりと否定することができな
かった。
「やっぱり、そうなんだぁ」
大きな溜め息の後、大袈裟な仕草で点を仰いで嘆くような声を出された。
「いや。うぅ、それはぁ……」
「あーあ。恋人同士で隠し事なんて、やだなぁ」
言いよどんでいた僕は、梨紅さんのその台詞を聞いて、言葉通り二の句が出なくなった。
彼女が僕に向ける視線が、よく前まで夢の中に出てきた梨紅さんのそれによく似た、ひどく
悪戯っぽいものに見えた。
550 :
125:03/11/23 01:07 ID:5GwivvJD
呆気にとられて梨紅さんの顔を凝視していると、彼女の悪戯な笑みが次第に崩れていき、
同時に押し殺した小さな笑いが聞こえ、彼女が身をかがめた。
「じょ、冗談だよぉ! そんな、驚かなくっていいでしょ?」
「…………冗談」
繰り返すように唱え、しばらく思考を巡らせて、横で身体を震わせる梨紅さんを見て、ああ
そういうことかと納得した。
「そんな冗談言わないでよっ!」
「あははっ、ごめんごめん」
笑いすぎて顔を紅くしている梨紅さんは目尻に涙まで浮かべている。
「笑いすぎだよそれっ!」
「だ、だからごめんって」
笑い続ける彼女に、僕は言葉をぶつけ続けた。
551 :
125:03/11/23 01:08 ID:5GwivvJD
それからはする事もなく、二人並んで小物店やペットショップ、いろいろなところを歩き
回って時間を潰した。
(……時間を潰した?)
なんで僕はそんなことをしているんだろう。
「――あっ!」
そこで、やっと、久々に、思い出した。
「どうしたの?」
きょろきょろと周囲を窺う僕に、梨紅さんが怪訝な表情で訊ねてきた。
「桧尾さんのこと、忘れてた……」
その名前を出した途端、梨紅さんも目を大きくした。
「? もしかして、梨紅さんも忘れ」
「きっとどこかでこっち見てるはずよ! さ、行こ!」
忘れていたみたいだ。
「でも……」
桧尾さんのことを思い出したら、今度はあるものがなくなっていることに気付いた。
「でも……って、早く行かないと怪しまれちゃうんじゃない?」
梨紅さんはそのことに気付いてないらしい。初めからそうなのかもしれないけど。動こ
うとしない僕に焦れているのか、少し不機嫌そうだ。
「うん……。多分、もう桧尾さんはいないよ」
僕の言葉に、梨紅さんの顔に疑問の色が現れた。
「なんでそう言えるの?」
「最初の方は桧尾さんがついてきてたよね? 視線も感じてたんだ」
「へー。丹羽くんって人の視線が分かっちゃうんだ?」
「な、なんとなくだよ。……で、今は全然桧尾さんの視線を感じないんだ」
梨紅さんが感心したような表情をし、すぐに首をかしげた。
「でもでも、こっそり遠くから見てたりするんじゃない?」
「それは……」
ないと言いかけて、説明を求められたら、間違えようがない刺すように冷たい視線がな
くなったから、と言ってしまうのは気が引けた。あの桧尾さんに――迷惑な子だけど――
そんな一面があるとは信じられないでいる自分がいた。
552 :
125:03/11/23 01:09 ID:5GwivvJD
「とにかくっ! もう安心だよ」
不思議そうだった梨紅さんが、今度は疑うような視線を送ってきた。けど、それは一瞬
だった。
「そうだね、丹羽くんがいいって言うならいいよ」
「ありがとう。今日は本当に助かったよ」
「うん……」
軽く微笑む梨紅さんに約束していたお礼を言い、名残惜しいけど、ずっといるわけにも
いかず、距離をとって手を振った。
「それじゃ、さよなら」
――あ……
背を向けて走ろうとしていたところに声をかけられたような、気がした。少しだけ首を後ろ
に巡らせると、梨紅さんの表情が痛いほど目に飛び込んできた。
傷付いたような、寂しそうな、泣き出しそうな、切ないような、複雑な顔だった。さっきまで
とは一転した変化に、心がひどく波打つ音が聞こえた。
「――梨紅さん!」
呼びかけると、彼女の身体が微かに震えた。未だに明るさの戻らない顔が、激しく胸を
打ちつけた。
「またねっ!」
なにがまたなのか、自分でもよくわからない。だけど、それ以外に言いたい台詞がなかった。
彼女の表情が何度か微妙に変化した気がするけど、細かく覚えていない。ただ、最後に
笑ってくれたことだけが印象的だった。
「うん、また!」
553 :
125:03/11/23 01:12 ID:5GwivvJD
梨紅さんと別れ、家に着く直前になり、そこで身体が緊張した。ここまで浮かれていた
のか、まったく気を張らず来てしまったけど、もしかしたら桧尾さんに襲われていたかも
しれない。いくら梨紅さんとの擬似デートの途中で気配を感じなくなったからといっても、
あまりにも無防備すぎたかもしれない。
なるべく家族との接触を避けようと思い、家を出たときと同じようにバルコニーから進入
した。
「ッんな……!」
部屋の中を覗き、絶句した。
「なんだこれぇぇぇッッ!?」
物取りにあったというにはあまりにも汚すぎる現場。机の棚、引き出し、クローゼットに
至るまで、その中身が引っくり返されて部屋に溢れかえっていた。
「! とにかく……」
部屋に入り、見回してみると、その惨劇の後がまざまざと目に焼きついた。
「やっと帰ったか」
「はぁ……です」
耳に疲れ果てた二つの声が聞こえてきた。
「さっちゃん、レムちゃん! どうなってるのこれ!?」
554 :
125:03/11/23 01:12 ID:5GwivvJD
「どうもこうもない。あの小娘が主の部屋に入ってきたかと思うとあっという間に引っく
り返していったのだ」
「見ているこっちが疲れるほどだったのですぅ」
「そんなぁ……。なんで止めてくれなかったの?」
「我らには無理だ」
「動けない〜です」
「うぅ……。そうだ、ウィズは!?」
この部屋で、僕以外に動ける唯一の存在がいたじゃないか。ウィズがいたからこの
惨状が回避できたとは思えないけど、これ以上ひどくはなっていなかったと……自信
はないけど思う。
「ここだ」
「どこ?」
「ベッドの中ですねぇ」
二人が言うとおり、布団の中には幸せそうな寝息を立て、ウィズが安らかに眠っていた。
「偉いなぁ。主の言いつけを守ってあの状況の中」
「何もせずに大人しくしてたのです」
「そんなぁ……」
力なくうな垂れると、床に封筒が落ちているのが目についた。白いそれにはっきりでか
でかと「YOUR LOVER みお」と書かれていた。
その意味は考えず、中に入っている便箋を取り出した。
今日は帰るゾ。またナノダ。
「もういいよぉぉぉぉぉぉッッッッッッ!!!」
555 :
125:03/11/23 01:13 ID:5GwivvJD
「梨紅様。お帰りなさいませ」
「ただいまー」
いつものように坪内の丁寧な言葉を受けながら、梨紅は玄関から家に上がった。
「今日は遅いお帰りですね? 何かございましたか?」
「ん、いろいろね」
「いろいろ……でございますか」
梨紅は頷き、自室へ向かおうとした。
「梨紅様、そろそろ夕食の準備が整います。宜しければ梨紗様を呼んできてもらえませ
んか?」
「はーい」
この匂いはミートソースかな?と夕飯を模索しながら、音を立てて階段を駆け上がった。
机に鞄を置き、さっきまで抱いていた気持ちを呼び起こした。玄関をくぐるまでは気が気
ではなかった。
またね
この言葉を彼はどういう意図で言ったか、どう考えても彼女の今の思考では行き着く答
えは一つしかなかった。
顔と胸が熱くなるのを自覚しながら、大きく頭を振ってその思いを振り払った。
「だめだめだめッ! あの子がいるのに、そんなこと考えちゃ……」
一度口に出し、続けて頭の中で何度も繰り返した。つい今まで抱いていた光が、じわじわ
とくすみ、その灯りが漏れないよう胸の奥深くに圧し込み、押し殺した。
これでいいんだ。これでいいんだと繰り返し、それでも完全に仕舞いきれない想いは少し
ずつ増している。
梨紗がいるのに。梨紗がいるのにと繰り返しながらも、大助と親しくなろうとしている自分は
ひどくずるい人間に思え、自己嫌悪に近い感情が溢れてきた。
再び頭を振り、小さく気合いを入れて梨紗の部屋へ向かった。
556 :
125:03/11/23 01:14 ID:5GwivvJD
梨紗の部屋の扉を数回ノックし、少しだけ開けた。
「梨紗ー。夕食できたって」
部屋の中に呼びかけると返事があるはずだが、今日は返ってこなかった。
「? 梨紗ー」
妙だと感じた梨紅がドアを開け放ち中を見ると、ベッドにうつ伏せになっている梨紗が
目に入った。
「どうしたの? 気分悪いとか……」
心配した梨紅が部屋に踏み込んだ時、
「来ないで……」
梨紗が消え入りそうな声でその脚を止めた。
「ねえ、どうしたの? 坪内さん呼ぼっか?」
「いいから、出てって……」
さらに心配する梨紅に、今度は先程より幾分はっきりと、確かに聞こえた。
「やっぱ梨紗おかしいよ。どうしちゃったの?」
「…………おかしいのは、梨紅の方だよ」
震えて絞り出す声を聞いたとき、梨紅は梨紗が泣いているんだと、確信した。
「あたしがおかしいって……」
「だってそうでしょ!!?」
感情を剥き出しにし、梨紗が目尻から雫を散らして梨紅を睨みつけた。光る頬が、その
涙の量を物語っていた。
「ど、どうしちゃったの?」
姉妹喧嘩をした時でさえ、これほど泣かれた事はない、これほど怒りをあらわにされた
事はない、これほど狼狽えた事はない。初めて見る梨紗に、梨紅はたじろいだ。
「いいから、出てってよっっっ!!」
「――!」
梨紗の剣幕に気圧され、梨紅は怯えた子猫のように身体をびくつかせ、扉を閉めた。向
かいの壁に背がぶつかり、そのまま力なくずるずると座り込んだ。
「な、んで……?」
梨紅はただ呆然と、疑問の言葉を繰り返し呟きながら、むせ返るような嗚咽が響く部屋
の扉を見つめていた。
次回 パラレルANGEL STAGE-12 さまぁ・たいむ・ばけぇしょん
557 :
125:03/11/23 01:16 ID:5GwivvJD
もう肌寒い季節になりましたが話の中はまだ9月すぎ・・・_| ̄|○
最近遅筆ですみません。
大量更新キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!!
いえね、なんかちょうどリアルタイムだったのよ。(0:58でした、俺が来たの)
で、かちゅの更新ボタンをバシバシ連打しながら読んでましたw
梨紅(・∀・)イイ!! 若々しいデートでした。クラスメイトとは大違いw
梨紗はちょっとかわいそうだが、大助と梨紅の関係を心配しながら尾行してるの想像したら
なんかね、もう、かわいいなぁ。
最後の修羅場がもうちょい見たかったw
まぁ、次回も期待してます。
みおの存在が梨紅・梨紗・大助の均衡を破ってしまいましたね。
梨紅が一歩リードしたのは個人的に嬉しいけど、梨紗がこわい…
125さんの以前の作品のようなことになったらと思うとガクガクブルブルですw
実はアニメは見たことがないので、みおがこの先どの様に絡んでくるのか見当がつかないのですが、
その分、先の読めない展開に期待しています。
更新ご苦労様です。
きちんと書き進めていける継続力には、素直に脱帽。
そして今回はなんというか、月並みな言葉ですが……良かった。
やはりDNは大助と梨紅の物語であり、それに絡んでくる梨紗達を
横糸に紡いでいるんだなあとかなんとか改めて思ったり。
廃れてますなぁ…125氏を期待しつつ保守
ついでに言えば大助×フリーデルトもキボンヌ
戦闘入るなら紅円の剣のさっちゃんVS時の楔のエリオット、剣の戦いとか(w
562 :
125:03/11/26 01:55 ID:EBBchPbK
――夢を見ていた。
幼い頃の朧げな記憶。
僕がいて、
小さな女の子がいて、
ウサギのぬいぐるみがあって……。
……はっきりとしない情景。何度か見たけど、その度に鮮明さが失われていくような気
がする。だけどはっきりとしているのは、僕はその子のことが気になって、だからあんな
真似をしたに違いないということだ。
それは初恋だったせいなのかもしれないと、最近になって何気に思う時がある。あの時、
あの子を助けた時に抱いた気持ちが、今の僕の気持ちと少しだけ重なっている気がする。
僕は今、恋をしてる。そんな確信染みたものがある。僕は誰に恋をしているのか、それ
も朧げで、影を捉えるくらい不確かなもの。だけど影を捉えられるくらい近く、影の主が
側にいるんだと思えた。それが誰なのか、なんとなく分かる気がする……――
563 :
125:03/11/26 01:56 ID:EBBchPbK
(――ごっしゅじんさまぁッッ!)
「んぁッ!?」
頭の中に舌っ足らずな幼い声が響き渡った。気持ちよく寝ていた僕は叩き起こされ、
変な声を出して身体を震わせた。
「? どうした」
顔を上げると、隣の席の冴原が僕の方を見ていた。
「あ、いや……」
何でもないよと告げると、冴原は特に気にしてくる事もせず、窓から見える大海原に
視線を向けた。フェリーに乗る前、窓側の席に座ろうとした僕を制し、強引にその席を
奪われたことを思い出した。
そう、僕らは今、フェリーに乗っている。夏休みが終わってすぐ、東野第二中学校の二
年生は、南の島へと五泊六日の修学旅行にきていたのだ。本当は別のところに行く予定
だったけど、今年はプールが使えなくなったせいで急遽予定を変更したらしいと聞いた。
二-Bのクラスメイトは肩身の狭い思いをしつつ――原因は僕、じゃなくてさっちゃんの
せいだけど――この修学旅行に臨んだ。
今はそんな状況だ。ところで、
(なにレムちゃん?)
(はいっ。ご主人様、そろそろ時間なのです)
(時間って、もうすぐフェリーが着くの?)
(はいです。そろそろ到着予定時間の一時半です)
言われてフェリーの中に時計を求めて視線を巡らせたけど、なかった。
(どうやって時間が分かったの?)
(体内時計でありますっ!)
少しの間、頭の中が空っぽになった。手元のバッグの中から腕時計を取り出して時間を
確認した。――十二時。ちなみにフェリーに乗ったのは十一時半。
(……お休み)
(はわっ!? 何故ですかぁ?)
相変わらずどこか抜けているなと思いつつ、再び瞼を閉じた。
564 :
125:03/11/26 01:57 ID:EBBchPbK
「おい大助!」
「いたッ?!」
急に声がしたと同時に、頭に鋭い衝撃が走った。瞼を開けると、冴原が拳をかざしてい
る姿が目に入った。
「痛いなぁ……。なんで叩くのさ?」
「なんでじゃねえよ。ほら、甲板に行くぞ」
「なんで?」
「もうすぐ着くからに決まってんだろ?」
周囲を見回すと、みんながバッグを手に席を立ち始めていた。どうやら今度は本当に着
くらしい。
「ぐずぐずしてっと置いてくぞ」
「あ、すぐ行くよ」
席の前を少し空けて冴原を先に行かせ、僕もバッグを手に席を立った。大きなバッグは
乗る前に貨物室に預けたので、小さなバッグしか持って行かなくていい。筆記具にしおり、
その他よく使うもの以外に、バッグの中には淡く光を放つ丸い鏡――ということにして持っ
てきた――が入っていた。
「レムちゃん、着いたら起こしてって言ったのに」
周りにほとんど人がいないのを確認し、小声でバッグの中に話しかけた。けれど返事は
なく、
「すぅ……すぅ……」
小さくて可愛らしい寝息だけが耳に届いてきた。
565 :
125:03/11/26 01:58 ID:EBBchPbK
その呑気さに呆れつつ、僕も甲板へ向かった。
「っ……」
顔にぶつかってくる清涼な風と、降り注いでくる陽光の眩しさに手をかざした。一瞬だけ
白くなった視界が回復し、辺り一面、それこそ無限に続くかと思えるほど大きくて青い海原
が広がっていた。
「ふわぁぁぁ」
レムちゃんが感嘆の声をあげた。僕はその光景に言葉も出なかった。
「おっ。来たか」
「冴原」
「どうだよこれ。寝てばっかじゃぜってぇ拝めねえ眺めだぜ」
手を広げてそう説く冴原の言葉に素直に頷いた。言われたとおり、起きてよかったと思
った。手すりの側まで行き、眼下から彼方にまで続いている海を呑み込むつもりで大きく
深呼吸した。鼻をくすぐる磯の香りに、胸の奥まで洗われるような気分になる。海から空
に照り返す海光が、天光と相まって瞳に痛いほど美しく世界に光を与えていた。
視線をフェリーが行く先に向けると、まさに緑に覆われたとしか言いようのないリゾート
島が近づいてくるのが見える。
「あそこが目的の地ですね?」
「うん。綺麗なとこだね」
「はいっ。さっちゃんにも見せてあげたかったです」
レムちゃんの言葉に、少しだけ今朝の記憶が呼び起こされた。家に帰ったら何て言われ
るか、考えただけで気が滅入った。
566 :
125:03/11/26 01:59 ID:EBBchPbK
「ま、まあ土産話でもするよ。は、はははは……」
「なに独りで喋ってるの?」
背後から声が降りかかり、心臓が口から飛び出るほど身体を縮み上がらせた。
「――ッり、梨紅さんっ!」
振り返ると、さっきの眩しさとはまた違った光を持った褐色の肌をした赤いショートヘア
の女子が立っていた。
「独り言なんて感心しないぞ?」
彼女は子どもに接するような優しい口調で咎めながら、僕の傍に立って手すりにもたれ
かかった。
「すごい眺めだよねー。あたし感動しちゃうよ」
「そうだね。海って、街からだとちょっとしか見えないし、こんなに広がる水平線なんて滅多
に見る機会ないもんね」
「そうそう。丹羽くんは海、好き?」
「好きだよ。一度でいいからこんな大海原を描いてみたいよ」
「描きなよっ。あたし、丹羽くんの描く絵好きだよ」
目を煌めかせてそう言われ、ちょっと気恥ずかしくなって視線を落とした。
567 :
125:03/11/26 02:00 ID:EBBchPbK
あの日を境に、僕と梨紅さんはよく顔を合わせるようになった。偶然……じゃない。多分、
僕が知らず知らずのうちに彼女と逢うように時間と場所を調整していたんだ。
「今日はどこまで進んだの?」
公園のベンチに腰掛けて風景を描いていた僕の横に、部活帰りの梨紅さんが声をかけ
てきた。日に日に肌の色が黒く染まっていく彼女を見ていると、熱心にがんばっているん
だなと感心させられる。
「昨日は下書きだったけど、今日は一応清書してみたんだ」
「どれどれ見せて」
知り合いに絵を見せるという習慣があまりなかった僕にとって、梨紅さんに絵を見せる
というのは恥ずかしく、最初のうちはかなり抵抗があった。
「うっわぁ! すごい上手!」
けど、顔を輝かせて素直に褒めてくれる彼女を見ていると、次第に抵抗はなくなり、後
には恥ずかしさと、ちょっとばかりの喜びが残った。
「うまく言えないけど、とっても暖かい感じがするよ」
その感想だけで十分すぎる。人に褒めてもらえることの嬉しさを、本当の意味で知った
ような気がした。
そんな事をぼんやりと考えていると、梨紅さんとは反対のところに置いているバッグが
もぞもぞと動く気配がした。怪訝に思った瞬間、
「ウッキュ」
「ウィズ!?」
バッグの中から家に残してきたはずの白い毛玉の塊が飛び出し、僕の膝の上を越え、
梨紅さんめがけて跳躍した。
568 :
125:03/11/26 02:01 ID:EBBchPbK
「きゃッ!」
彼女が小さく声をあげ、自分の膝の上に跳んできた物体に視線を移した。
「に、丹羽くん! これなに!?」
「わわっ! ごめん、すぐに退けるよ」
突然のことに軽く慌てている梨紅さんの膝から、ウィズの首根っこを掴んで引き剥がそうとした。
「ウッキュゥゥゥ」
けど何故かウィズも必死に抵抗し、梨紅さんのスカートにしがみついて堪えている。
「ウィズ、ダメだってば!」
さらに力を込めて引き剥がそうとすると、
「いやぁッ! 丹羽くん待って待ってぇ!」
どういうわけか聞こえてきたのは梨紅さんの悲鳴だった。
「どうしたの梨紅さ――ッ、わぁぁッ! ごめんなさぁぁいっっ!」
すぐに理解した。ウィズがしがみついているせいでスカートが捲れ、梨紅さんの美脚が
付け根の近くまで見えていた。
急いでウィズから手を離すと梨紅さんの膝の上に落ちた。そのまま気持ちよさそうにす
りすりと顔を埋めようとしている。――正直言って羨ましい。
などとバカな考えは置いておき、梨紅さんの顔をばつの悪い思いで窺ってみると、顔を
真っ赤にして俯いていた。
「ごめん……」
それだけ言うのが精一杯だった。後は、ただ梨紅さんの言葉を待った。しばらく、といっ
ても時間を計ることさえ忘れて待っていたので、長いか短いかも定かじゃないほどの時間の後、
「この子ってウサギ?」
「え? ウィズのこと?」
「うん。そっか、きみはウィズっていうのか」
梨紅さんが膝で丸くなっているウィズに手を伸ばすと、いとも簡単に抱えあげた。ウィ
ズのやつもどことなく嬉しそうだ。
「うん。ウサギだよ。耳が垂れてるのが特徴なんだ」
少しウィズに腹を立てながらも梨紅さんに説明した。まさか使い魔と教えるわけにもい
かない。
「珍しー。あたし、ウサギ好きなんだ」
ウィズを抱きしめて頬を寄せる彼女の姿に、ほのかに暖かく、懐かしくも新鮮な思いが
よぎった。
569 :
125:03/11/26 02:02 ID:EBBchPbK
「丹羽くん、そろそろ着くよ」
梨紅さんの声にはっとして顔を上げると、いつの間にか島が間近にあった。ホテルとな
る建造物から浜辺にいる人影まではっきりと見てとれる。
「先に行くから。また後で」
「あ。うん」
手を振って離れていく梨紅さんに僕も振り返していると、レムちゃんがうきうきと弾む声
で話しかけてきた。
「ごっしゅじっんさまぁ」
「どうしたの?」
「むふふっ。今から夜が楽しみですぅっ」
「夜って、まさか修学旅行中もするの!?」
「当たり前ですよぉ」
至極当然といった調子で言われ、僕は困った。
「ダメだよ! 同じ部屋の人に射精してるのがばれたらどうするのさ?」
「ばれなきゃ平気なのですっ」
「簡単に言わないでよ。それに旅行中は控えてもらうから昨日あんなにいっぱいしたじゃ
ないか」
「それはさっちゃんも一緒でしたよ。わたしはご主人様と一対一でしたいのです」
「ダメっ! ダメったらダメ!」
「ひっ、ひどいです。わたしが餓死してもよいのですね!?」
レムちゃんが泣き崩れるのが分かり、小さく嘆息した。
「はぁ……。あれ?」
どこか遠くから視線を感じたのでそちらに首を向けると、栗色のロングヘアを海から来る
強風になびかせる女子と目が合った。
「原田さん……」
名前を呼んだのが聞こえたわけがないだろうけど、そう呟くと同時に彼女は踵を返して
歩いていった。そういえば夏休みの後半に会った時もどこかよそよそしくて、一学期ほど
の親しさがなかった気がする。
「大助、さっさと降りる準備しとけよ」
考え込む暇もなく、遠くから呼びかけてくる冴原に手をあげて応えた。
「ご主人さまぁ……」
レムちゃんの甘い声の訴えに耳を貸すのはやめておいた。
570 :
125:03/11/26 02:03 ID:EBBchPbK
ホテルに入ると、さっそく熱血家庭科教師・加世田先生からありがたい言葉をいただいた。
「男子は一階。女子は二階。男子は絶対二階に上がらないように!」
その言葉にちらほらと嘆きの声があがったのは言うまでもない。僕も少しだけ残念だと
思った。
部屋に入ると、まずその清潔感溢れる内装に感心した。そして入り口のドアの向かいに
は外の景色が広く展望できるガラス張りの窓。もっと安っぽい造りかと思っていたけど、
なかなかどうして立派だ。ベッドまで人数分きちんとある。
「おお! なかなかどうして立派な部屋じゃないか」
後から同室の冴原が部屋に入ってきてほぼ僕と同じ感想を高らかに述べた。
「へえ。なかなかどうして立派な部屋だな」
続いて入ってきたのは関本だった。こっちも僕と同じ感想を口にした。
「ふむ。なかなかどうし」
「お前は別部屋だろーがっ!」
さり気なく進入してこようとした日渡くんが関本に追い返され、室内には平穏な空気が流れ
た。旅行用の大きなバッグと手提げのバッグをベッドの上に置き、窓を開けてベランダに出た。
ここから海が見渡せ、潮の香りも漂ってくる。
「いい所だね」
「いやまったくだ」
「うん……ってうあぁぁぁッッッ!!」
一人で呟いたのに誰かに相槌を打たれて驚いた。隣室とのベランダの仕切りの向こうから
声が聞こえてきたと思ったら、にょきっと日渡くんの顔が現れた。
「失礼な。何をそんなに驚く必要がある?」
「い、いきなり声かけられたら誰でも驚くって……」
相変わらず神出鬼没だ。僕の心臓がばくばく音を立てている。
571 :
125:03/11/26 02:04 ID:EBBchPbK
「しかし、この仕切りは邪魔だと思わないか?」
「そうかな?」
「そうだとも。まるで俺と君の行く手を阻むぅぉぉぉッッ――」
何かやばそうなことを言いかけた日渡くんが、突然引き込まれるようにして視界から姿を消し、
代わりに別の人物の顔が現れた。
「よお」
「西村。日渡くんと同じ部屋なんだ」
「ああ。いないといろいろまずいからな」
そのとおりだ。心の中で同意した。
「そうだ。ついでにそっちの部屋の連中に連絡伝えといてくれ」
「連絡? いいよ」
「五時まで自由行動。泳ぐ人は先生に申し込んでから。以上」
「了解。西村も行くの?」
「当たり前だろ? なんせオレは今回にかけてるんだからな」
「? かけるって何を?」
「ん、ま、まぁ、いろいろとだよ」
その事を訊いた途端、急に西村の挙動が怪しくなった。何か隠し事でもしてるんだろうか?
そう思わざるをえなかった。
「じゃあそういうことだからさ! 頼んだぞ」
そう言ってさっさと切り上げて去っていった。未だ、頭には疑問符が渦巻いていた。けど本人
が話したくなさそうだったから、訊かないでいた方がいいな。
そう考えながら部屋に戻ると、そこには一人しかいなかった。
「あれ? 関本はどこ行ったの?」
これから連絡があるのにタイミングが悪いなと思っていると、
「あいつならさっさと水着に着替えて海に行ったぞ」
冴原の答えに驚き、すでに冴原も着替え終えていることに二重で驚いた。
「オレも先行くけど、先生への申し込みの方は頼んだぞっ、大助くん!」
カメラを片手に駆け出す冴原を止めようとしたけど時すでに遅し、だった。きっとあんなのや
そんなのを撮るんだろうなと思うと気が重くなった。
「ばれたらどうするんだよ……」
「ばれなきゃ平気なのですってばぁ!」
レムちゃんの言葉がとても虚しく心に響いた。
572 :
125:03/11/26 02:04 ID:EBBchPbK
「――つまらん」
丹羽家の大助の部屋、ベッドの側にかけられた刃渡り八十センチほどの両刃の剣。
「つまらんつまらんつまらんつまらん」
炎が揺らめく様を象った柄とアームガード、刀身まで薄っすら紅く染まっている。
「つまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらんつまらん」
紅円の剣に宿されたサッキュバスことさっちゃんはただひたすらにぼやいていた。
「なぜだっ! なぜ我だけがこのような思いをせねばならん!?」
答えは単純にして明快。銃刀法違反になってしまうからである。そういうわけで修学旅
行にはウィズとレムちゃんだけが連れて行かれたのだ。
しかしそれに納得できるわけもなく、彼女は延々と飽きることなくぼやき続けていた。
そしてそんな彼女の不平不満を抑えるべく、一人の勇者が大助の部屋に向かった。
「やあ」
聞こえてきた声の方にさっちゃんの意識が集まり、声の主を捉えた。
「おお。親父殿か」
大助の父であり、丹羽家の中で唯一、さっちゃんとレムちゃんの存在を知る人物・丹羽
小助が姿を見せた。
「何用か?」
「さっちゃんが一人で退屈してると思ってね。遊びに来たんだけど、邪魔かな?」
「そんなことはない、大歓迎だッ! 嬉しいぞ親父殿!」
退屈がしのげる。そう分かり、さっちゃんは喜び勇んで小助に擦り寄った。――気分だけ
だが。
573 :
125:03/11/26 02:05 ID:EBBchPbK
「む? 親父殿、その手にしている物はなんだ?」
さっちゃんは小助の手に小瓶が握られていることに気付いた。中には虹色に光り輝く不
思議な液体が波打っている。小助はまだ何も言わず、黙って紅円の剣を壁からとり、床に
置いた。
「なにをするつもりだ?」
「ちょっとね。試してみたい事があるんだ」
そう言って小瓶の蓋を外し、虹色の液体を一粒、剣の刀身に滴らせた。
「おわっ!?」
さっちゃんが叫んだ次の瞬間、軽い爆発音とともに部屋中に煙が充満した。もくもくと
渦巻く煙を窓を開け逃がし、次第に部屋の中の様子が窺えてきた。
「げはっ、げはっ! お、親父殿、何をした?」
煙が完全になくなると、紅円の剣の上に一人の幼女がいた。ライトパープルのロングヘア。
悪戯に釣り上がった目に口の端から覗く牙に肌の露出が多い際どい衣装。以前、淫夢の短
剣から魔力が溢れ出し、魔力多過が原因で一度だけ現れた幼女さっちゃんである。
「お、おおっ!?」
その姿に驚いたのはさっちゃん本人である。小助はというと、これこそが目的と言わんばかり
に、にこにこと微笑んでいた。
「親父殿、これはどういうことだ?」
舌っ足らずな口調でさっちゃんが問いただした。
「うん。さっきの薬はちょっとした秘薬でね。一時的に対象の魔力を増幅させることができるんだ」
小助は嬉しそうに続ける。
「だからさっちゃんに使って、またその姿を現してもらったんだ」
「なるほど。しかし、どうせしてくれるのならもっと魔力を増幅してくれた方がセクシーな容姿に
なったのだがなぁ」
「さっちゃん。世の中にはこういう人もいるんだよ」
どこから取り出したか、小助は園児服やスモールサイズのスクール水着にナース服。その他
諸々を手にしていた。
574 :
125:03/11/26 02:07 ID:EBBchPbK
投下完了です。後半はお待ちを。
おお、前回から間もない更新が。
後半楽しみにしております。
キタ━(゚∀゚)(∀゚)(゚ )( )( ゚)( ゚∀)(゚∀゚)━━━━!!
キタ━━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━━ !!!!!!!!!!!!
早かったね。
なんか梨紗が泣けるね(つд`)
それにしても親父殿は・・・w
親父殿〜〜〜〜、てめぇは変態か??・・・・・でもグ-(^-^)g
小助さん・・・
そうこなくっちゃ!!!w
で、村村とか、関石とか、丹渡とk(ゲフンゲフン)
いろいろと気になりますなww
楽しみ〜
保守保守
未だにSSすら書いたことないトーシローだけども、投下してみようか迷いちう
ってか、ここは今、何人いるんでしょうね…最近廃れまくり…(⊃д`)
>>580
書いて下さい!!!応援します!!・・・何人・・・かな・・・???
おお、それじゃあドシロウトながらやってみます
カナーリ時間掛かりそうなのでそこらへんは某ネトゲ企業の如く『お察しください』
584 :
125:03/11/29 22:04 ID:Wxe7qOju
と、いうわけで、僕は冴原と関本から少し遅れて海へ出た。フェリーから、ベランダから
と見た海ではあるけど、砂浜で目にするのもまた違ったインパクトがある。
「おう! やっと来たか」
声のした方を振り向くと、すでにビーチパラソルを広げその下で独りくつろぐ冴原の姿
があった。その様子を見、少し腑に落ちない点があったので近づいて話しかけた。
「関本は? 一緒じゃないの?」
「いやそれがよ、あいつの後追って走ったんだけどさっさとどっか行っちまいやがってさ」
「えーっ! ちょっとまずいよ。行動は班単位でしろって先生に言われたのに」
「構いやしねえよ。ばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃよ」
何をやってもな、と最後に付け足す冴原の顔が、非常にどす黒く歪んだことに気付き、
また変な事――あれしかないけど――をするつもりだと直感した。
585 :
125:03/11/29 22:05 ID:Wxe7qOju
「冴原っ、盗撮は――」
冴原の悪行を止めようとし、それより早く冴原が動いた。
「うるさぁぁぁいッッッ」
「うわっ、あ、ああぁ……っ?」
顔に粉末状のものを振りかけられて鼻や口から直接吸い込んでしまったかと思うと、一
瞬で身体の自由が効かなくなり、腰がすとんと落ちてしまった。
「なッ!」
それだけじゃない。意識もしていないのに下半身のものが大きく膨張し、海水パンツを
押し上げようとしていた。突然の身体の変調にうろたえていると、頭上から声が降ってきた。
「ふっふっふ、驚いたか! 驚いたろ? そうかそうか驚いたかっ!」
独りで満足そうに高笑いする冴原に何をしたか問いただすと、
「夏休みにな、オレの身に文字通り災難が降りかかったわけよ。これを見ろ!」
眼前に突き出された手には小さなビニール袋が握られ、中に収められているピンク色の
粉末がはっきりと見えた。僕は、その粉を見たことがある。
「成分は企業秘密だが、これを吸い込むと身体がむふふな状態になるんだぜっ!」
聞けば聞くほど確信していく。あの夏休み中のほろ苦くて甘酸っぱい青春の日々が脳裏
をかすめていく。
「……成分って、お前も分かってないんじゃないの?」
「口の減らない悪い子は君かなぁ?」
「うぎゃッッッ――」
図星を突いただろうその言葉が気に障ったのか、冴原が僕の両足を掴み股間に足を当て
て遠慮なしの全開電気アンマを放ってきた。
丹羽大助十四歳、悶死。
586 :
125:03/11/29 22:06 ID:Wxe7qOju
「――じゃあ邪魔すんなよ。って言ってもその状態じゃ手出しできねえけどな」
冴原の言葉が遠い。身体も動かない。というよりこの状態じゃ動かせない。僕の身体に
はは冴原の手によって砂がてんこ盛りにかけられている。股間の異常がばれないよう、
冴原曰く、武士の情けらしい。
先程の悪魔の所業により僕のあれはひどい痛手を負っていた。粉のせいでぎんぎん、
先走りまで垂れているけど感覚がない。代わりに下腹部に締めつけられるような鈍痛が
響いている。
「三十分くらいしたら戻ってきてやるよ。そん頃にゃ体調も治ってるだろ」
冴原はカメラと袋を手に遠くへ繰り出して行った。僕は泣きたくなるほどの痛みと、独り
の寂しさに打ちひしがれていた。
目を閉じてしくしくと泣いた真似をしていると、瞼を通して降り注いでくる陽光が不意に
かげった。訝しく思って目を開くと、
「うわッッ!」
「何を驚く? 失礼な」
視線の先に日渡くんの顔があった。その出で立ちは水着にパーカー付きの薄手のパーカー
にサングラスという、明らかに場所にそぐわないファッションだった。そんな格好をされれば
誰だって驚くはずだ。
この状況で日渡くんと交わす言葉が見つからずに口を閉じていると、彼は僕の側にしゃ
がんで砂を払い始めた。
「日渡くん?」
「動けないんだろ? だったら」
普段から変態じみた行動で迫ってくるだけに、この時は彼の心遣いに素直に感謝した。
「ってこらぁぁぁッッッ!! 何してるの!?」
「見れば分かるだろう。怒張を造っているんだ」
てっきり払ってくれているとばかり思っていた彼の手元を見た瞬間、僕の感謝の気持ちは
粉微塵に砕け散った。彼は払うどころか逆に砂を積み上げていた。一ヶ所だけ、重点的に
太く、長く。
587 :
125:03/11/29 22:07 ID:Wxe7qOju
「止めて、止めてって! そんなの造っても恥ずかしいだけだよ!」
「そうか? 少なくとも俺には立派な彫像に見えるぞ。よしできた」
「早っ! ていうかキモイよこれ!」
僕の上には、何というか、一言で現せば『リアル』なものが悠然と屹立していた。しわの
一つ一つから亀頭の形、雁のくびれまでそれはもうグロテスクなほど生々しく。
これは、やばい代物だ。
「早くこれ壊してよッ!」
「何を言う。お楽しみはこれからじゃないか」
未だに自由が効かない僕の身体を日渡くんが跨いで立ち、サングラスの奥でその瞳が
輝いる、気がした。
「さあ、行くぞ」
そう言うと日渡くんの腰が少しずつ下がってきた。
「ひいいぃぃぃぃぃっっっ!」
桁外れの威圧感を、プレッシャーをまとった日渡くんと、僕の身体から生えたペニスを
模した砂の造形との距離が次第に小さくなっていく。
「いやだぁぁっっ! こんなのいやだぁぁぁぁぁッッッ!!」
もがけどもがけど、砂の身体はびくともしない。それどころかその様を目にした日渡くんが
嬉しそうに、にやりと微笑した。
「ふふっ。触れるぞ?」
「うわあぁぁぁぁぁ――」
犯される。――本能がその単語を僕に与えてきた。もうダメだ。僕の純潔はこんなところで
散ってしまうんだと観念し、諦めかけた。
588 :
125:03/11/29 22:08 ID:Wxe7qOju
「ぉ前はぁぁッッ」
白紙になりかけた頭の中へ、遠くから近づいてくる人の声が聞こえた。その声は僕のよく
知っている人物のものだ。
「ヴァカかあぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!」
近づいていた日渡くんの顔が、左頬から波打つようにして歪んでいき、有り得ないくらい
首が曲がり、折れ、吹き飛んでいった。
「西村ぁぁぁぁぅぅぁぁぁあっっっ」
颯爽と駆けつけてくれた西村の
「泣くな。大丈夫か丹羽? 変な事されてないか?」
「変も何も、股間のそれをどうにかしてっ!」
僕の股間部からそそり立つそれを目にし、西村の顔が微かに、いやかなり引きつった。
「またろくでもない事を……」
「とにかく早く何とかしてっ」
「任せろ」
脚が一閃し怒張を模した造形は根元からぼきりと折れた。
「ああッ! 丹羽の逸物が!!」
「僕のじゃなぁいッッ!」
感情に任せて折れた造形を日渡くんめがけて投げつけた。顔面に見事的中し、日渡くんと
造形が仲良く崩れ落ちた。
「……に、丹羽の、が……かお、にぃ……」
彼が事切れる寸前、どことなく幸せそうだったのは気のせいだろうか。けど、とにかく貞操を
守りきれたことを喜んだ。
589 :
125:03/11/29 22:09 ID:Wxe7qOju
「ありがと。助かったよ」
「なに、気にするなって」
これも委員長としての責務だ、とは西村の弁。彼の仕事熱心な面に今回は助けられた。
しかしどうにも胸に引っかかるものがあった。
「ねえ。関本どこにいるか知らない?」
「ん? いや見てないけど」
そう。いつも日渡くんの奇行を喰い止めてくれるはずの関本が現れなかったのは珍しい
ことだ。やはりどこか遠くに行ってしまったのかもしれない。
「そのままじゃ不便だろ。出してやるよ」
「うん。ん、あー……上半身だけでいいよ」
「? そうか」
少しだけ疑わしそうな視線を向けられたけど、それだけだった。しつこく追求はせずに
上半身を覆う砂を払い落としてくれた。
「んーッ、生き返ったぁ」
上半身のみだけどようやく動きが取れるようになり大きく伸びをした。固まっていた身体中
の筋肉が程よくほぐれた。
こういう時、持つべきものはやはり友だ。
「西村はこれからどうする?」
「班員があれじゃあな、動くに動けないよ」
西村が動かした視線の先には、まだ気絶している日渡くんの姿があった。
「あれ? でも班って男子は三人じゃなかったっけ?」
そう訊くとひどく重苦しく覇気のない、がっかりしたような溜め息を漏らされた。
「ムッシュが仕事とか何とか言って休んじゃったんだよ」
「宮本くんが?」
宮本くんとは、いつも変な関西弁と『おまえおまえおまえぇ』という絶叫を繰り返している
お茶目な歌手志望のクラスメイトだ。
「ああ。だからあれの面倒をオレ独りで見なくちゃいけないんだよ……」
だから気分がどんよりしているのか。理解した。確かに独りで日渡くんを手なずけるのは
不可能に近い。
「それは……ご愁傷様」
そうとしか言えなかった。
590 :
125:03/11/29 22:10 ID:Wxe7qOju
男二人でする事もなくぼんやりと砂浜に座っていると、
「あー、いたいた。ねえ丹羽くーん」
遠くからまた聞きなれた声がして西村とともにそちらを振り向くと、水着姿の四人組の
女子――原田さん、沢村さん、福田さん、梨紅さんが並んでこちらに向かってきていた。
声をかけてきたのは沢村さんで、右手を振って存在を示している。水着から伸びる腕の
付け根、脇の下辺りについつい目がいってしまう。
「――はっ!?」
無言の圧力を感じ、すぐさま視線をそこから逸らした。横の方からちくちくと刺すような痛み
が突いてくる。僕の視線に気付いたせいで怒っているんだろう、好きな人をそんな目で見ら
れるのは嫌に違いない。
「やっ」
沢村さんの挨拶に手を挙げて返し、西村も同じようにするのが横目に映った。
「何か用?」
「うん。ちょっと丹羽くんに訊きたい事があって」
「……オレもいるんだけどな」
「何か言った?」
ぎろっと一瞥され、西村が口を閉ざして小さくなっていった。西村の気持ちが分かっている
から余計に気の毒に思える。見ているだけというのも悪く、急いで合いの手を差し伸べた。
「そ、それで訊きたい事って?」
「あ。そうそう」
何事もなかったように話を戻してくれたけど、これはこれで西村にはきついものがある。
「真理の姿が見えないんだけど、どっかで見てないかな?」
「石井さん? ううん、見てないけど……」
そこまで口にして、嫌な予感が脳裏をよぎった。
591 :
125:03/11/29 22:11 ID:Wxe7qOju
「……関本もいないんだけど、見てない?」
「関……っ」
沢村さんが気付いたように顔をはっとさせて福田さんに視線を向けた。彼女も顔を微か
に引きつらせ、僕らと同じことを考えついたようだ。
「関本くんがどうかしたの?」
原田さんが横から口を挟んできたけど僕と、沢村さんと福田さんはただ笑ってごまかす
しかなかった。疑わしげに原田さん、梨紅さんと西村に見つめられ、笑い声が苦しいもの
になってきた。
咳払いを一つして改めて四人の女子を見回した。原田さん、ビキニタイプの黄色い水着
は露出が高すぎ、胸の谷間も見えて目に入れるのが痛いくらいだ。見るに見れないとはこ
のことだ。沢村さん、原田さんと同じセパレーツ型でスカイブルーのカラーに右肩にしかない
ストラップのワンショルダー、白光の元にさらけ出された左肩がなんとも言えないエロスを
「ぐるるぅ……ッ」
野獣のように低い唸り声とともに強烈なプレッシャーを察知し、すぐさま次に移った。
福田さん、二人とは対照的なワンピースのピンクで赤い花柄をあしらっていて、一件地味
に見えるけど二人と比べて若干背の高い彼女にはすらりとして見えていいかもしれない。
梨紅さん、
「あれ?」
彼女はぶかぶかのシャツを着ていた。シャツには首にかかる紐のラインが浮かび、下に
はライトグリーンのタイトなトランクスを着けているから水着を着ているのは確かだ。
「梨紅さんは泳ぐ気ないの?」
そう訊ねると彼女が声を詰まらせた。
「に、丹羽くんには関係ないよ」
顔を背けて怒られてしまった。心なしかその焼けた頬が少し紅くなった気がする。あまり
確証はないけど。
592 :
125:03/11/29 22:12 ID:Wxe7qOju
「気になる? 気になる? 気になるよね?」
思い過ごしか、少しだけ声を弾ませている福田さんがそう訊いてきたので僕は小さく首
を縦に振った。すると福田さんと沢村さんは何も言わずに梨紅さんを両脇から挟み、
「ちょっ、何よ二人とも!」
にっこりと、ではなくにやりと笑みを浮かべ、梨紅さんを砂の上に押し倒した。
「わッ――、こらこらぁっ、やめなさいよ!」
「まあまあ。せっかく海に来たんだから泳がないと損だよ」
「大人しく脱いじゃいなさい」
脚をばたつかせて足掻く梨紅さんを二人が愉しそうにレイ――もとい押さえ込んで身体
を絡ませ合い、
「取ったぞー!」
沢村さんが梨紅さんから剥ぎ取ったシャツを手にした右拳を突き上げ、どこかのレスラー
のように力強く、雄々しく咆哮した。
「か、返しなさぁぁいっっ!」
福田さんに抱きつかれた梨紅さんが沢村さんの脚にしがみつき、懸命にシャツを取り返
そうとしていた。その彼女の肌を見た時、瞬きさえ忘れてしまったように僕の瞳は釘付けに
なり、目線を動かすことができなくなった。梨紅さん、肌にフィットした短いトランクスに、
ホルターネックのライトグリーンのツーピースとここまでは他の人と対して変わら
ない水着姿だけど、僕が凝視しているのは水着じゃなく、彼女の肌だった。
首の付け根と上腕の中ほどにはっきりと日焼けの跡がついている。線で綺麗に区切られ
たそこを境に、小麦色の肌と白い肌が見事なコントラストで身体を彩り、他の三人より地
の肌の白さを際立たせていた。
593 :
125:03/11/29 22:12 ID:Wxe7qOju
これは…………いい。
「は、原田さんって、いいな」
うわなんだろう。西村の台詞がめちゃくちゃ気に入らない。
「? どうした、そんな怖い顔して」
「え……、そんな顔してた?」
鼻の下を伸ばした西村が頷き、自分がそんな顔をしていたのかと初めて気付いた。
「んもぉーっ、梨紅ってば可愛いぃ」
「きゃッ!」
福田さんがじゃれつき、梨紅さんの脚が伸びるパンツの脇を少し捲った。
「うわっ」
そこも鮮やかなほど白く、砂の中に埋もれた僕のあれが正直に反応した。どくどくと、
(出てるぅぅぅっっ!?)
これはあまりに予想外の出来事だ。薬のせいで思った以上に感度がよくなりすぎている
みたいだ。これは急いでどうにかする必要がある。後で海に飛び込んで人目を気にしなが
ら洗い流そう。
「ねえ!」
三人の女子から距離を置いていた原田さんが唐突に声を出し、女子だけじゃなく僕と西村
もそちらを見やった。
「こっちの方で遊ぼうよ!」
そう言う彼女はビーチボールを抱えて、大きく手を振って三人を呼んでいた。
「そだね。行こっか」
「うん。梨紅も早く」
「う、うん……」
それじゃあと言い残してあっという間に女子は去り、まだ諸々の事情で動くことができない
僕と西村、余計かもしれないが遠くでのびている日渡くんだけになった。
594 :
125:03/11/29 22:13 ID:Wxe7qOju
「…………決めた」
いきなり、まるで独り言のように西村が呟いた。
「何を?」
僕が訊くと、西村は僕の肩に手を置き、熱く語りかけてきた。
「決めた! オレは今夜、やるぞっっ!」
「何を……っていうか熱いよ西村」
すさまじい熱気だ。よく分からない気迫だけど身体に叩きつけられてくる。
「これはオレの誓いだ! お前がその証人になってくれ!」
「全然分からないけど……まあ、いいよ」
「よく言ってくれた! それじゃ誓うぞ。オレは今夜、やるぞっっっ!!」
さっきと一緒じゃないか、と心の中で突っ込んでおいた。
「今夜って…………あれかな?」
「そう、あれだ。その時、やるぞっっっ!」
「う、うん。頑張って」
西村の気迫に圧され、そんな適当な励ましの言葉しか出てこなかった。それでもその言葉
が胸に染み入ったのか、西村は一言僕にお礼を言ってから息巻いて宿泊先のホテルへ戻っ
ていった。
「泳がないのー?」
見る見るうちに小さくなっていく彼の背中に、無駄だと分かりながらも一応そう言った。
もちろん答えは返ってこなかった。
今夜のあれ――計画したのは噂によると西村、その他男子数名、らしい。
それは2-B全員、男女ペアで行う肝試しのことだ。
595 :
125:03/11/29 22:14 ID:Wxe7qOju
日も暮れて夕食の時間も終わり、風呂も上がって夜の帳が降りた頃、僕ら2-Bの生徒は
ホテルを出て森の側に来ていた。
「西村ぁ。スタートはこの辺からでいいよな」
場所が近づいてきたのか、西村の周りにクラスのほぼ全員の男子が人だかりを作っていた。
僕と残りわずかな男子を除いた全員が少し離れたところでこそこそと打ち合わせをし、
それが終わったらしく、
「あー、あー。それじゃ準備の方ができたからまずは女子からこのくじを引いてくれ」
西村が言うと、まるで手下のように男子が手際よく女子を一列に並べていく。
ぺの決め方は簡単で、まずは女子が一から八までのくじを引き、次に男子が同じようにくじ
を引き、番号が一致した男女がペアになるということだ。
「こらそこ! お前だお前、男は列から出ろ!」
「俺はここでいいぞうわ何をするやめろっっ!」
日渡くんが列からつまみ出され、男子の輪の中へ放り込まれた。激しい打撃音が響き渡る
けど僕は何も見てないし聞いてない。
596 :
125:03/11/29 22:15 ID:Wxe7qOju
(けど、そこまで怒る必要もないんじゃないかな?)
胸中で独りごちていると声をかけられた。
「なあ。どう思う?」
「関本」
見ると、関本が傍に立って僕の意見を求めるように目を向けていた。
「その前にさ、昼はどこに」
「訊かなくても分かるだろ?」
関本が首を動かしてそちらの方を見るように促がした。それに従って視線を移動させると、
列に並ぶ石井さんの姿があった。興奮気味に顔が紅色に染まり、肌もつやつやと輝いている
のがはっきりと分かる。
「いや参った参った。今日も芯までしゃぶられたけどまだ満足してな」
「もういいよ……」
すべて聞く前にこちらの方がげんなりとしてしまいそうだ。元気に話す関本がとても逞
しく見える。
「そうか? なら次はオレの質問に答えてくれよ」
質問とはさっきのどう思うのことだろう。
「どう思うって言われても……」
周りの様子を見て思うのは、男子が多少乱暴に日渡くんの狼藉を咎めていること、乱暴
を働いている男子の目が多少血走っていることと、女子を並べている男子の顔が多少にや
けていることと、多少涎を垂らしていることと、多少野獣のような雰囲気をかもし出している
ことくらいだ。
「……やばいかも」
597 :
125:03/11/29 22:16 ID:Wxe7qOju
関本も同じことを感じたのか、その言葉に頷いた。そしてその疑念は、女子のくじ引き
が終わって男子の番になった時、確信に変わった、
「さっさと引けぇぇっっ! 時間が惜しいんだよっっ!」
普段割りと温厚な西村が大声を張り上げ、男子に怒号を飛ばしている。それに応じる
ようにみんな素早くくじを引いていく。
「丹羽、関本ぉ! 後はお前らだけだぞ!」
昼とは少し異なった西村の迫力に気圧され、急いでくじを引いた。手にしたくじを開くと、
適当にペア組め
とだけ書かれていた。
「…………えーっと」
しばらく思考を巡らせ、こんな時に頼れる関本の答えを聞くのが一番だという応えに
行き着いた。僕に続いてくじを引き終え、その中を見た関本の表情が固まった。
「…………えーっと」
僕と同じく関本も言葉を詰まらせた。
「ん」
と言ってこちらに突き出してきたくじには、やはり同じ文字が書かれていた。
「……つまり、こういうことか」
「んー、どうするつもりか分からないけど、これはよくないことだよ、ね?」
もちろん関本は頷いた。二人だけでこそっと相談し、こういう状況で頼りになる女子、
沢村さんに教えようと結論づけた。
「しっかし、何か男子がいやに興奮してる気がするな」
「うん。薬でもやったみたいに」
その時、僕の首に何かが巻きついてきた。
「おっ二人さん」
弾む声が耳に届いたと思うと、僕と関本の間に西村がぬっと顔を挟ませてきた。首に
回されたのは彼の腕で、関本にもそうしている。
598 :
125:03/11/29 22:18 ID:Wxe7qOju
「西村……、お前なんだってこんなの企画してんだよ?」
「そうだよ。らしくない――」
溜め息交じりで告げる関本に続いて言葉を口にし、そこで西村の異変に気付いた。
西村の顔は目尻がだらしなく下がり瞳も虚ろ、鼻の下も昼のように伸びているし口も
半開きで少し涎が垂れている、明らかに普通じゃない様子が分かって言葉を切った。
さらに鼻を突く匂いに顔をしかめた。この刺激臭は、よく知っている。そして瞬時に
思い至った。今回の企画の黒幕は、
「冴原ぁぁぁぁっっっっ!!」
叫んで周囲を見回すけど、姿はどこにも見当たらなかった。逃げたのかもしれない。
おそらく、企画参画者全員に微量な薬を与えたに違いない。
「丹羽ぁ、そう怒鳴るなって」
「西村、正気に戻ってよ。今夜やるんじゃなかったの!?」
何かを。その何かは知らないけど。
「やる? …………知らねえ」
「あの誓いは嘘だったの!?」
必死に西村に訴えるけど、もう彼の心に僕の言葉は届かなかった。
「――だからさ、二人が黙認してくれればこれはばれない完璧な作戦なんだよ」
口の端をつり上げて顔を歪める西村が僕と関本を説得しようとするけど、理性を保って
いる僕らはそれを呑む気はない。面と向かって沢村さんに今回の悪事を伝える旨を西村
に伝えた。
「なんだよお前らっ! もうちょっと協力的になってくれていいだろ!!」
「いや、さすがにこんなやり方で女子とペアになって仲良く……なんて間違ってるだろ」
さすが彼女を持つ男の言葉。まったくもって正論だ。
599 :
125:03/11/29 22:19 ID:Wxe7qOju
「けっ、勝手に言ってろ! けどな、オレ達男子は――」
「あ」
「あ」
僕と関本はほぼ同時に西村の背後に立つ影に気付いた。西村自身はまだ気付いた様子
もなく熱弁を奮っている。
「――というわけでさっさと決行する……?」
すでに僕らが話を聞いていないことに気付いたのか、西村の表情が曇った。
「おい、聞いてるのか?」
僕らが答えるよりも先に、西村の背後に立つ人物が彼の肩を軽く指で叩いて振り返らせた。
「なんだよ」
その言葉を吐いた刹那、西村の身体は宙に舞っていた。
「……おお」
関本が感嘆の声を漏らし、森の木々の遥か上を飛ぶ西村を目で追った。ドリルのように
スクリューし、落下。頭部が多少地面に埋まっている。
視線を戻すと、そこには光速の拳をくりだした沢村さんが技を放ったままの格好で立って
いた。
「全部、日渡くんから聞いたよ」
女子の輪の中に、ぼろくずのようにずたずたのけちょんけちょんで犯されてしまったかの
ように穢されている日渡くんがいた。足元もおぼつかず、小刻みに震えている。
「ふ、俺の邪魔をした……罰……だ」
気丈に言ってのけ、やはり力尽きてしまったのか、崩れ落ちた。
600 :
125:03/11/29 22:19 ID:Wxe7qOju
「――とまあそんなわけで」
ごほんと咳払いを一つし、沢村さんが言葉を続けた。
「肝試しの主催は急遽あたしが引き受けることになったから」
女子全員と無傷の男子――僕と関本が大きく頷いた。他の男子はというと、日渡くんと
西村以外は比較的軽い引っ掻き傷や痣などで済んでいる。
「じゃあ今度は男子から引きに来て」
男子は、負い目があるせいかなかなか動こうとせず、仕方なく僕と関本が最初に向かった。
くじ箱の中に手を入れ、八枚しかない紙のうち一つを手にした。少し離れて折られた紙を
開くと、
「二番か……」
「えッ」
耳に届いた小さな声に驚き後ろを振り向いた。が、変わった様子は何もなく、ただ関本
がくじを引いているところだった。
(今の声……)
もちろん知った人の声だ。くじを引いた時、番号を見られただろうか?ちなみに番号は
当たっている。二番だ。
(いや、でもあの人がそんな不正染みたことするはずないし)
西村の不正にいの一番に怒りの鉄拳を喰らわせたあの人に限ってそんなことはない。
きっと僕の気のせいだろうと言い聞かせた。
(二番よ)
みゆきはくじ箱の下で右手の親指と人差し指を立てて念を送った。
(二番ね)
律子は見事その念を受信し、親指を小さく突き立てた。オーケーのサインだ。
(二番、あたしが引いても怨まないでね)
(それはこっちの台詞よ)
みゆきと律子の間で激しい意思の疎通が行われてた。互いに闘争心剥き出しだが、協力
できるところではしっかり手を組んでいた。
みゆきと律子の恋愛同盟規約其の壱・対等な条件で頑張る。次回もツイン――……。
601 :
125:03/11/29 22:20 ID:Wxe7qOju
全員くじが引き終わると、ペアに分かれ始めた。
「あの、二番って誰かな?」
女子の方に向かってそう呼びかけると、全員一斉に手にしたくじに視線を落とし、ほぼ
同時に大きく溜め息を吐いた。
「いないの、かな……」
小さく漏らした時、後ろから声をかけられた。
「……二番、あたし」
その声を聞き、胸が一度だけ大きく打った。ゆっくりと振り返ると、胸の鼓動は一度と
いわず二度といわず、ただひたすらに打ち出した。
「梨紅さん…………あ、あの、よろしく……」
喉につっかえそうになりながらもどうにか言葉をひり出すと、梨紅さんは小さく縦に首
を振った。
602 :
125:03/11/29 22:21 ID:Wxe7qOju
「まあ、こういうこともあるよね」
「うん、こういうこともあるよね」
律子とみゆきは肩を落としていたが、めげてはいなかった。なぜならきっと次回もある
と信じているからだ。
「みゆきは何番引いたの?」
「あたしは六番。律子は?」
「一番。惜しかったんだけどなぁ」
「一番? じゃあオレとか」
二人の会話が偶然耳に入った関本が歩み寄り、律子に自分のくじを見せた。
「それじゃあよろしく」
割りと外れじゃないな、と心の中で少しだけ喜んだが、すでに彼は彼女持ちだということ
も知っており、そう素直に感情を露わにできなかった。
「ああ。ちなみにこいつは六番だ」
関本が腕を伸ばすと、六番の首根っこを掴んで引き寄せた。
「冴原くんか」
みゆきは思った。外れだと。冴原は事件の黒幕という事実を隠すかのようにすっ呆けた
表情をしており、関本もそのことにそれ以上言及する気はないらしい。もうごたごたは御免
らしい。
「というわけだ。よろしく頼むぜ、委員長」
冴原は思った。いい絵が撮れるかもしれないと。
603 :
125:03/11/29 22:23 ID:Wxe7qOju
彼女の番号は三番だった。何度見ても二ではなく、その間に一本線が入っている。その
線を怨めしげに睨みつけても、何も変わりはしない。分かっているが、このもやもやと渦
巻く感情をどうにかしたかった。
視線を上げると、その先には気恥ずかしそうに語り合う丹羽大助と、姉がいる。この現
実が、受け入れ、られない。
(――嫌だよ、こんなの……)
夏休みから溜め続けた感情は、近いうちに、破滅への扉を開くことになる。
「原田さん。俺と君がペアだ」
まだ誰ともペアを組んでいない日渡は、同じく独りでいた梨紗の番号を横目で盗み見し、
自分の番号と照らし合わせてペアだと確認してから近づいた。
「不本意だが、まあこれもしょうがない。諦めて君とペアを組んで」
「うるっさいわねぇぇぇっっっ!!」
夏休み中に鍛え上げた豪腕が唸り、風を斬り、日渡怜のメガネを打ち砕いた。
604 :
125:03/11/29 22:23 ID:Wxe7qOju
「――ところでさ」
梨紅さんと話していた時、ふと湧いた疑問を口にした。
「肝試しなんだからお化け役の人がいるんじゃないのかな?」
「普通はそうなんじゃないの」
「でも、クラスメイトは全員ここにいるよ?」
その言葉の意味を理解したのか、梨紅さんは周りにいる人数をかぞえ始めた。二人一組
の八ペア、計十六人。欠席していり宮本くんを除いて、間違いなく全員この場にいる。
「ホントだ。じゃあ肝試しって何するんだろ?」
「その辺は抜かりないぜ」
僕らの間にいきなり冴原が割り込んできた。そういえば、こいつが黒幕だったんだ。それは
ともかく僕と梨紅さんの間から退いて欲しい。
「抜かりないってどういうこと?」
梨紅さんが訊くと、冴原は得意気に含み笑いしだした。
「オレ達が今からそれぞれのペアで向かうゴールの神社までの道は、今まで何人も行方不明
者やその他諸々が出ているらしい」
「諸々が一番気になるんだけど……」
「細かいことは気にするな。とにかくそんな噂がどこからともなくオレの情報網にかかってな、
雰囲気だけなら十分だろ」
その説明を聞いて危険はなさそうだと、僕と梨紅さんは顔を見合わせてほっとした。
「それと、熊が出るから出遭ったら急いで逃げろよ」
『嘘ぉぉぉぉっっっ!!?』
605 :
125:03/11/29 22:25 ID:Wxe7qOju
当初の予定より長くなってしまい、もう一編増えることになりました。
>583
頑張ってください、キターイ!!
声優ネタっすか!?
日渡ガンガレ(泣)
流石日渡!!そうこなくっちゃ!!
てか、マジ久しぶりに日渡がはっちゃけてたww
今までの出番分、はっちゃけまくってたww
いやあ、久々に爆笑した。
次回もキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━イ!!!
えなりかわいそう・・・w
そういえば同じ回にみなをの中の人も出てたね。名前忘れたけど。
609 :
名無しさん@ピンキー:03/11/30 10:26 ID:ksH2GeTA
何やってんだよ、みんなっ!!
610 :
125:03/11/30 23:16 ID:9MJ34yGk
冴原が最後に宣告した台詞に怯えながら、僕と梨紅さんは規定の道を歩いていた。舗装
されていないけど、獣道というほどひどくなく、足元もしっかり見える。
空を振り仰ぐと、悠然とそそり立つ木々が伸ばす無数の枝葉が月光を遮り、一面に青い
影を落としていた。
「ちょっと待ってよーっ!」
呼び止められて振り向くと、梨紅さんがこちらに小走りで駆け寄ってきた。
「あ、あんまり、一人で先に行かないでよ」
「う……ごめん」
周囲が暗く不安もあるためか、 彼女が息を切らせて膝に手をつき、僕を上目遣いに見
てきた。月光を微かなに反射する瞳に、吸い込まれそうになる。
「そ、そう言えばっ、先に行った関本たちは大丈夫かな」
話題をふると同時に目を逸らし、先へと続く道を見た。数十メートル先は闇に呑まれ、
月の明かりでは十分に照らし出されていない。
「福田さんとペアだっけ?」
「うん。あんまり見ない組み合わせだよね」
確かに。みんなで一緒にいて顔を合わせることはよくあるけど、あの二人のツーショット
はあまり想像したことがなかった。
「関本くんならしっかりしてるから、平気だよね」
そう訊かれて少し考えた。というのも、不安が満ち溢れるこの状況でしっかりと福田さん
を支えてあげられるのかということと、男女二人だけの状況で福田さんに手を出してあん
なことやそんなことをしてしまう心配がないという二つの意味が頭をよぎったからだ。
もしかしたら二つの意味も孕んでいるかもしれない。ともあれ、このまま黙りこくるわけに
もいかなかった。
「うん。関本はしっかりしてるからね。きっと平気だよ」
その言葉に嘘はない。と、思う。
611 :
125:03/11/30 23:18 ID:9MJ34yGk
「きゃッ――」
「? おいどうした?」
突然律子にしがみつかれ、関本は多少驚きの混ざった声で訊ねた。
「いい、今、あっちの方から音がしたぁぁ!」
言いながら彼女が指差す方に注意を向けた。目を凝らし、耳を澄ませていると、木の葉
と木の葉が擦れ合う微かな音が聞こえ、生暖かな空気が頬を撫でた。
「なんだ。ただの風じゃないか」
彼は短く息を吐き、何事もなかったようにすたすたと先を急いだ。
「あ、待ってよ置いてかないでよ!」
自分だけ取り残されそうになり、律子は慌てて関本の後を追った。
「! あ――」
踏み出そうとした爪先に何かが引っかかり、彼女は前のめりに激しく倒れた。彼女の足
元には大きな石が転がっている。月明かりの中で見落としていたらしい。
「おい、大丈夫か!」
先行していた関本が駆け寄り、倒れた律子の傍に腰を落とした。
「うん、平気平気」
つまずいたことが恥ずかしく彼女は顔を少し赤くして先に立ちあがった。先に立ち上がろう
とし、そのままへたり込んだ。
「どうした?」
「へ? あ、うん……」
612 :
125:03/11/30 23:18 ID:9MJ34yGk
もう一度立ちあがろうとし、今度は彼にも見てとれるように顔を歪め、左足首を押さえて
うずくまった。すぐに思い至った彼は、彼女が制止しようとする声も聞かずに靴を脱がせ
取り、靴下を下げて彼女の足首の状態を調べた。
「やっぱり。ちょっと腫れてんじゃねえか」
ほら、と言うと彼は律子の左腕を首にかけて立ち上がった。
「わ! い、いいって。平気って言ったでしょ?!」
「あのなぁ、ここで放っておいて怪我がひどくなったらオレが悪者にされるの」
そう言ってのける彼の横顔を彼女は盗み見た。
「それにこれなら先に行っちまうこともないしな」
ばつの悪そうな彼の表情に、胸が小さく鼓動した。
(――はっ!? なに、感じ……)
「っそ、そろそろ真里も出発したかな?」
自分の抱いた感情に狼狽え、彼女はその名前を口にした。彼は真里の恋人で、私が好き
な人は別の男の子だ。自分自身に言い聞かせた。
「あいつは四番だったな。そろそろ出発したんじゃねえの?」
613 :
125:03/11/30 23:19 ID:9MJ34yGk
「きゃー、こわーいッ」
「いぃっ、い、石井さん!?」
突然抱きつかれた西村は耳たぶまで真っ赤にして、裏返った声で彼女の名を呼んだ。
彼女はというと、彼に抱きついたまま嬉しそうに身体をすり寄せていた。
「どどっ、どうしたの?」
そう訊く彼の声は高音を維持したままだ。
「あのね。向こうの方に何かいる気がしたのぉ」
猫撫で声で甘えられ、さらに体温が上昇するのを自覚した。彼女が言う方に視線を向け
るが、今の彼に冷静に判断することができないのは明らかだった。
「だだっ、大丈夫さ! たたた、ただの風だよっっ!」
適当に言うことしかできなかった。
(ここっ、これは嬉しいけど! けどぉっっ!!)
相手が真里でなく、みゆきならばと彼は心の奥底で嘆いた。もちろん真里でも十分嬉し
いのだが。
「西村くぅん……」
柔らかな胸が彼の胸に触れてきた。その感触に彼は頭が熱くなり、視界も揺らぎ、耳鳴り
までしてきた。
「わたし、胸が苦しいのぉ」
「ッ――」
彼の身体に回される腕に力が込められ、二人の身体が密着した瞬間、彼は興奮のあまり
全身の力が抜けて後ろに倒れ込んだ。
「いってぇ……」
その拍子に後頭部を大地にぶつけ、締めつけられるように痛むそこをさすった。
「え゛……?」
さすっていた腕がもの凄い力で掴まれた。どうなっているのかと思い目を開き、瞳に飛び
込んできた光景に言葉を失った。いつの間にか彼女の顔がすぐ眼前に迫っていた。
「西村くぅん」
咄嗟に逃げようと身体をよじるが、真里にマウントポジションを取られ、彼女の下から
抜け出すことができない。
「あ、や、あ、ちょ、ちょっ、ちょっと待っ――」
614 :
125:03/11/30 23:20 ID:9MJ34yGk
「ひぃぃッッッ!!」
森中に響き渡った雄叫びのような動物の鳴き声に冴原は身体を縮み上がらせた。
「何びびってんの?」
冴原の前方、勇猛な足取りで進むみゆきが怯えている彼を振り返って一瞥した。
「だ、だって熊かもしれないだろ!!」
「あんたねえ、分かってて企画したんでしょ?」
呆れたように告げると、冴原は涙を一杯に溜めて熱弁を奮いだした。
「オレはなあ! こんな暗がりの世界で怯えおののく可憐な女の子の写真を撮りたかっ
たんだ!! それがおめえみてえな男女――」
615 :
125:03/11/30 23:21 ID:9MJ34yGk
僕らの後方で動物の鳴き声が聞こえたかと思うと、今度はそのさらに遥か後方で鳥が
一斉に羽ばたき、森の静寂を打ち破った。
「何? 何が起こったの?」
横を歩く梨紅さんが不安に満ちた声を漏らした。
「も、もしかして熊が出たのかな……」
その可能性は否定できない。けど、認めてしまうと彼女の不安はもっと大きくなるはずだ。
「悪く考えない方がいいよ。きっとみんな大丈夫だから」
「うん……」
頷く声にはやはり元気がない。こんな危険な企画を開いた冴原たちを少しだけ怨めしく
思った。
「やっぱり熊が出るなんて嫌だよね」
こんな状況だけど梨紅さんと二人っきり。何も話さないのはもったいない気がして間を
持たせるために適当なことを口にした。
「ん、クマさんなら好きなんだけどね」
「クマさん?」
「そ。クマのぬいぐるみ。小さい頃におばあちゃんがウサギのぬいぐるみと一緒にくれたの、
……あたしと梨紗に」
「じゃあここに出てくる熊もぬいぐるみみたいに可愛かったらいいのにね」
梨紅さんのことが少しだけ知ることができ、嬉しくなった僕はそんな言葉が自然に口から
こぼれ出していた。
「あ、じゃあ小熊だったらどうかな? ころころして抱きかかえたりしちゃうの」
「それならいいかも。でも小熊ってどれくらい大きいのかな?」
「うーん……このくらい、かな」
「そうかなぁ。これくらいかも」
「えー。そんなに小さくないって。ウィズに喰われちゃうよ」
616 :
125:03/11/30 23:27 ID:9MJ34yGk
それからしばらくの間、小熊談議に花を咲かせた。熊に詳しいわけでもなく、ああだこ
うだと勝手な妄想をして意見を交わして、そんな楽しい時間はすぐに過ぎていった。
「丹羽くん。あれってゴールの神社かな?」
梨紅さんに言われて前方を見ると、道の切れ目、その先に小さな広場のようなところが
あり、さらにその向こうに神社が見えた。神社の中には微かに明かりが灯っている。電気
が通っているのかもしれない。
「福田さんと関本くんがいるかも」
「急ごう」
僕らは残りわずかな道のりを少し早足で駆け抜けた。
「熊が出なくて本当によかったよ。これも梨紅さんのクマのおかげかな?」
そう言うと梨紅さんは小さく噴き出した。
「なにバカなこと言ってるの。そんなことないって」
僕も彼女につられるように噴き出し、笑いが込み上げてきた。
「それに熊はあたしのじゃないし……」
「?」
いきなり付け足すように言葉が続けられ、何を言ったか理解できなかった。
「何?」
そう訊いたけど梨紅さんは首を横に振り、
「ううん。気にしないで。ほら、急ご」
言うが早いか、横にいた梨紅さんは駆け足というより走るようにして神社へ向かった。
少し釈然としない思いを抱きながら、僕も彼女の後ろに続いた。
それからしばらくし、彼女の言った言葉の意味がなんとなく分かってきた。――幼い頃
の記憶との繋がり。あの時、梨紅さんがどうしていたのか。
「……そ、っか。クマさんは原田さんに……」
少しお姉さんぶった彼女のあの時の行動が、薄れかけていた記憶を微かに、蘇らせた。
それは悪いことじゃないはずなのに、ツインテールの女の子を思い出すと、胸が少し、痛む。
617 :
125:03/11/30 23:28 ID:9MJ34yGk
「原田さん」
「……」
「原田さん」
「……」
「原田さん」
「……」
「原田さん」
「……」
「原田さん」
「……」
「原田さん」
「……」
呼べども呼べども、日渡怜は原田梨紗にしかとされ続け、彼の中には何故だろうという疑念
が浮かんでいた。
(確かに俺は変態だ、今のところ。自覚している。だがここまで無視しなくてもいいじゃないか)
自覚しているところが、たちの悪い気がするが、彼も女性に無視されて傷つくという一
面があるところは新たな発見である。ような気がする。
「…………」
ともあれ、今の原田梨紗には誰が声をかけてもその耳に届かないだろう。それほど、彼女の
胸中は、彼への想いで、あの女への嫉妬で、裂壊しそうなほど溢れていた。
618 :
125:03/11/30 23:29 ID:9MJ34yGk
「――えー、ということで」
全員の注目を一身に受けながら、沢村さんが最後の点呼を行おうとしていた。その前に、
僕は視線を巡らせ、知った顔の様子を確認した。
今回ペアだった梨紅さんはすぐ横にいる。
「あ……」
見ていることに気付いたのか、彼女が顔を上げて視線が交わり、自然な笑みを浮かべら
れた。少し恥ずかしくなり、微笑み返すとすぐに顔を背けた。
関本はペアだった福田さんではなく、石井さんの傍に立っている。福田さんとは何事もなか
ったようだ。けど、なぜか石井さんの肌はてかてかしている。なんだか、まあ、どう説明するの
かと言われれば、やっちゃった後のように満足そうだ。
(まさか、ねえ……)
そう思って西村を捜すと、クラスの輪から少しはみ出したところにげっそりと頬が削げた西村
がいた。なんだか、まあ、どう説明するのかと言われれば、やられちゃった後のように何かが
抜けている。
(まさか、ねえ…………)
自信がなくなってきた。放っておけない事態のように思えるけど、今は置いておき他の人を
捜した。
「ん?」
関本から離れたところに福田さんはいた。その目は一点を見つめている。その軌跡を追って
みると、その先には石井さんと仲良く手を繋ぐ関本がいる。
(…………)
なんだかとんでもない事態になっているように思えるけど、とにかく今は置いておき他の人を
捜した。
「うわ……」
思わず悲鳴をあげてしまったのは、沢村さんと一緒だった冴原の顔がひどく腫れている、
というかこぶが憑りついたようになっていたからだ。一体なにをしでかせばあんな顔になるの
だろうか。
619 :
125:03/11/30 23:30 ID:9MJ34yGk
さらに視線を移すと、原田さんとペアだった日渡くんが肩を落とし、すごく脱力してい
るのが見ていて痛いほど伝わってきた。原田さんに、いや女子に傷つくことでもされたの
だろうかと思うと、少なからずまだ男の部分があるんじゃないかと嬉しくなった。
そして日渡くんの横には原田さんがいた。こちらも日渡くんに負けず劣らず落ち込んで
いるようだ。長い髪に隠れて表情は分からないけど、日渡くんに何かされたんじゃないか
と心配になってきた。
(一体何を……)
数瞬考えてみたけど、全然思いつかなかった。
「全員いるか数えるから並んでー」
沢村さんの声に従ってみんなが顔を彼女に向けた。彼女は小さく数を呟きながら二人ず
つカウントしていった。
「……十六、と。うん、全員いるね」
端から端までの十六人を数え終え、こちらに固まっている人の顔をもう一度見回した。
全員いることに安心して満足そうに頷く彼女に、横にいた梨紅さんがふと気付いたように
口を開いた。
「あれ? 沢村さん、自分数に入れてないよ」
梨紅さんに言われて「あっ」と小さく声を上げ、
「ホントだ。ごめーん」
照れたように頬を二、三度掻いた。
「もう、みゆきっておっちょこちょいなんだから」
石井さんがそうはやしたて、あちこちからみんなの笑い声がわっはっはと沸き起こった。
沢村さんも自分のミスに恥ずかしそうに笑い、
「ひぃッ――!!」
瞬時に顔を強張らせた。あちこちからは笑いに変わり、彼女の豹変ぶりを怪訝に思う声が
飛んだ。
「どうしたの?」
「沢村さん?」
「おーい」
620 :
125:03/11/30 23:32 ID:9MJ34yGk
僕もどうしたのか訊こうとした時、沢村さんが震える腕をゆっくりと上げ、僕らの背後を
指差した。がたがたとぶれる指先を追って後ろを振り向くと、そこには巨大な壁があった。
――いや、それを壁と思ったのは、今は夜で暗く、そしてそれがあまりにも大きく高く、
沢村さんが指し示しているそれの顔がはっきりと視認できなかったからだ。
僕らが見上げた先には、
「っぽぉ」
全長二メートル九センチはあろうかという巨大な
『熊あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!』
がいた。
蜘蛛の子を散らすように、僕らはがむしゃらにその場から逃げ出した。
次回 パラレルANGEL STAGE-13 永遠の標
621 :
125:03/11/30 23:34 ID:9MJ34yGk
「それは災難でしたねぇ」
鼻にかかる間延びした声で言われると、本気でそう思っているのかと疑いたくなる人も
いるだろう。けど、今の彼女は本気で心配してくれている。最近になってようやく彼女の
本気とそうでない時の声の区別がつくようになってきた。これも慣れか。
「うん。危うく死んじゃうところだったよ」
素っ裸で腰を下ろし、胡坐をかく僕の足の上にレムちゃんは腰かけている。
メイド服と緑色に輝くショートヘアにフリルのカチューシャ。背は小さくロリ体型。強く抱き
しめれば折れてしまうんじゃないかというくらい華奢な身体。しかし実は蒼月の盾に宿る
精霊さんで、強固な防御力で何度も僕を守ってくれている、頼れる女の子だ。余計なこと
だけどえっちなことが大好きで、いつも好奇心旺盛に魔力の元である精を求めて――最近
ではえっちがしたいだけじゃないかと思ってしまう――迫ってくる。ちなみに得意なのは
お口での奉仕だ。
「ご主人様に何事もなくてよかったのです」
甘えるように背中を僕の胸に預けてきた。細い身体は軽く、まったく苦にならない。
「ありがと」
カチューシャとともに彼女の柔らかな髪の毛を撫でると、子犬のように鳴いて身体をすり
寄せてきた。
「もっと撫でてくださぁい」
さっちゃんがいないせいか、いつもより当社比三倍くらいで甘えてくる。萌え死にそうだ。
「萌え死にってなんですか?」
「う、えっ……」
レムちゃんに訊かれ、まさか声に出していたのかと焦った。恐るべし萌え力。
「ご主人様は死んじゃダメですよ」
身体の向きを変え、僕の顔を見上げて懇願してきた。まだ萌えさせるつもりらしい。
「大丈夫だよ。本当に死んだりしないから」
「本当ですか?」
涙目で心配するレムちゃんに優しく頷くと、その表情から次第にかげりが消え、いつもの
ようなにっこりした笑顔が戻った。
「安心しましたぁ」
そのまま彼女は細い腕を僕の身体に回し、力いっぱい――非力だけど――抱きついてきた。
丹羽大助十四歳、萌え死。
622 :
125:03/11/30 23:34 ID:9MJ34yGk
「それじゃあご主人様」
レムちゃんの呼びかけに、昇天しかけていた僕の意識が呼び戻された。
「な、なに?」
視線を向けると、レムちゃんはすでに
「裸ッ!?」
だった。
「二人だけで楽しみましょっ」
「待って待って! 修学旅行中はしないって――」
「放しませんよぉッ」
逃れようと身をばたつかせても、レムちゃんはしっかり抱きついており、その腕が外れない。
(全っ然、非力じゃないっっ!)
「ごっ主人さまぁ」
「だ、め、まて待ってって、う、うわあぁぁぁぁぁ――――」
623 :
125:03/11/30 23:35 ID:9MJ34yGk
なんで、こんなきもち?
――苦しいから。
なんで、くるしいの?
――辛いから。
なんで、つらいの?
――好きな人が離れてしまいそうだから。
どうして?
――姉のせい。
…………いや。いやだいやだ、そんなの嫌だ!
私が最初に好きになったのに! 私が初めて好きになったのに! どうして、どうして!
あんたが彼の傍にいるの!?
嫌だ、嫌だ認めたくない!
なんで私はいつも惨めな思いをしなきゃいけないの!?
なんであんたはいつも、私からいろいろなモノを奪っテいクの!!――――
624 :
125:03/11/30 23:36 ID:9MJ34yGk
「――!」
小さな悲鳴を漏らし、原田梨紗はベッドから上体を跳ね起こした。呼吸は荒く、汗が寝巻き
を濡らし肌に貼りつかせているが、その感触よりもつい今しがた見た夢の内容に、彼女は胃
の奥から込み上げてくる吐き気を感じた。
身体の内で倦怠感に似た不快感が渦巻くのを覚えながら、横に連なるベッドに視線を送っ
た。彼女が寝ているもの以外に二つのベッドが並んでおり、すぐ側で穏やかな寝息を立てて
いるのは同じ班の福田律子であり、彼女を挟んで向こうのベッドには、姉の梨紅が梨紗に背
を向けて寝ていた。
何事もなく寝続ける二人を見ると、今、自分が見た夢がどれだけ醜く、穢く、濁り恐れ妬み
憎んだ想いだったのだろうと嫌悪した。
「…………ぃ」
彼女は自分の身体を抱え込み、汚らわしい想いに喰い潰されないよう小声で必死に唱え
続けた。
「悪くない……悪くない悪くない。あの子は、梨紅は悪くないんだから……」
姉を慕う妹の心だけが、増大しようとする醜悪な感情を圧し留めていた。
南の島の朝は早く、すでに日は昇り始めていた。
625 :
125:03/11/30 23:37 ID:9MJ34yGk
「――いただきに、あがりますっと」
この島にある灯台の下、今回のターゲットが飾られている下で僕は予告状を書き上げた。
旅行先でまで仕事をしてこいとはさすが母さん、ありがた過ぎて涙が滲んでくる。
「はぁ……」
「お疲れですかぁ?」
「うん、疲れた」
「やっぱりお出しにならなかったのが身体によくなかったのですね」
出すとは今朝のことだろう。レムちゃんに押し倒された後、その中に強引に入させられてし
まったけど、日ごろの鍛錬の賜物か、射精はしないで済んだ。
その代わり、イけなかったことからくる不満が少し、いやそこそこ……かなり、ある。
「出してしまえば楽になれましたのに」
残念そうに言うけど、それは僕のことを気遣ってじゃなくて、単に精子が飲めなかったこと
が不服なだけなんじゃ、と思う。
「別にいいけどさ」
五泊六日。約一週間近く溜めた後の射精の快感を思うと、悦びで身体が震えそうになる。
「無理せず出しましょうよぉ」
「いいってば。じゃあこれ頼んだよ、ウィズ」
どうあっても出させたいのか、声を弾ませて要求してくるレムちゃんを受け流し、ウィズ
に書いたばかりの予告状を渡した。ウィズは二つの大きな耳を羽ばたかせて飛んでいった。
どう見ても不自然だ。変だ。おかしすぎる飛び方だ。けど、突っ込むには今さらすぎる。
626 :
125:03/11/30 23:38 ID:9MJ34yGk
「その予告状はどこに出されるのですか?」
「ホテルのオーナーにね。一応その人の所有物だから」
「今盗んでいけばよいのではないですか?」
「それだとほら、ただの泥棒になっちゃうから」
「怪盗と泥棒にそんなに違いがあるとも思えませんけどぉ」
「それはそうかもしれないけど……」
言われて強く言い返せない現実が少し悲しい。
「とにかくっ! 今日の十二時、みんなが寝静まった頃に動くからそのつもりで」
「はいっ、わっかりましたぁ!」
レムちゃんがびしっと敬礼するのがなんとなく伝わってきた。満足気にというわけでもな
いけど一度頷き、天に向かい真っ直ぐ立つ灯台の、その先端最上部に取り付けられている
『永遠の標』の方を振り仰いだ。
「……雨ざらしの美術品、か」
「ほへ? 何か言いましたか?」
「……いや、何でもないよ」
今、僕は美術品を可哀想だと感じた。そんな愛着なんてないと思っていたけど、実際は
違っていたらしい。それもこれも、ちょっとうるさい二人のパートナーおかげなのかもしれない。
「気になりますっ! 教えて下さい!」
「それじゃずっと気にしててね」
「はうっ!? ひどいですぅぅぅっっっ」
蒼月の盾を子犬にするように優しく胸に抱え、ホテルへ急いだ。
二時のレクレーションが始まるまで、そう時間はなかった。
627 :
125:03/11/30 23:39 ID:9MJ34yGk
というわけで次の話の冒頭まで投下しました。
続きはいつものようにお待ちください。
梨紗の巻き返しに期待しつつ・・・
トワクル━━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━━ !!!!!!!!!!!!
そのうちラクスネタがあるとみた。
すばらしい更新速度だ!
125さんありがとー!!
何時も何時も、ご苦労様です!!125さん!!
普通はsageだけど、ageたい・・・
・・・・(カタカタ)・・・・・・(ブルブル)・・・・・・ageさせて(涙)
633 :
580:03/12/03 00:05 ID:TjO1aodi
125さんいつもおつかれ〜っす
自分は書こうにもネタ練りの段階で止まってもうて…レポートもあるし…
どなたかネタ提供キボーン(マテ
う〜〜ん・・・・・結構ネタやってるしね・・・・、
やっぱり最初は純粋に(中身は別!!)大助×梨紅じゃない??
635 :
125:03/12/04 00:39 ID:Ep3VnPpL
深夜零時。同室のベッド二つから寝息が聞こえてきたのを確認し、音を立てないよう
静かにベッドから這い出した。寝巻きとして使っていたシャツと短パンを脱ぎ捨てて制服
に着替えた。もし寝巻きに汚れがついてしまえば怪しまれるからだ。
ウィズ、黙っててね。小さく囁きながら懐に入れ、続いて蒼月の盾をバッグからそっと
取り出した。カーテンが閉められ月光の照らすことない室内で、それは表面に刻まれた
紋様をなぞり、脈打つように一定の間隔で淡く蒼く光を放っている。これも音を立てない
よう慎重に腕にはめた。
立ち上がり、再度室内の音に耳を澄ました。相変わらず寝息を立て、時折りいびきや
歯軋りも聞こえてくる。夜中に騒ぎ立てられないよう、クラスの男子全員の夕食に睡眠薬
を盛ったのは正解だ。
「…………」
自分のしていることに溜め息を漏らしそうになり、それを呑み込んだ。
「どうしましたかぁ?」
蚊の鳴くような声をかけてくるレムちゃんに首を横に振り、何でもないよと囁き、バッグ
からもう一つ道具を取り出してズボンのポケットにしまった。
準備を終えると窓の鍵を開けてベランダに出てきちんと窓を閉め、長く留まって人目に
ついてしまわないよう一気に宙へ飛び出した。同時に背中から漆黒の翼が巨大な衣のよう
にこの身を取り巻き、弾け開き、上空へ飛翔した。
636 :
125:03/12/04 00:41 ID:Ep3VnPpL
彼女は眠れなかった。毛布にくるまり、汗が肌を湿らすこともいとわなかった。寝巻き
替わりのキャミソールとショートパンツは薄っすらと滲んでいる。
――今日もだ。今日も彼は、私じゃなくて、梨紅と一緒だった。
今日の午後のレクリェーションの間、大助が梨紅と共にいる姿を何度も目にしていた。
それは三時間というレクリェーションの中ではほんの少しの回数であったが、梨紗から
すればそれは永遠ともつかないほど長く、苛立たしい時間だった。
――どうして私じゃないの? 私じゃ、ダメなの?
悔しい。惨めだ。自分はいつも二番手でしかない。それが、辛い。
目を固く閉ざし毛布に潜り込もうとした、その時、すっと瞼の上を影が掠めていった。
「なに……?」
目を開くと、まず映ったのはレースのカーテン。彼女のベッドは最も窓際である。ベッド
を出ると彼女はカーテンを少し開けた。そして見えたは、すでに彼方へと飛んでいく黒い
翼を纏ったものだった。それは鳥というにはあまりにも大きかった。月明かりが照らすその
姿形は、まるで人のようであった。
空を飛ぶ人。東野町の者がその単語で思い浮かべるのは今年、四十年ぶりに復活した
伝説の怪盗ダークが普通であるが、
「丹羽……くん?」
梨紗が口にしたのはその名だった。確証があるわけではない、というよりあれを知り合い
の少年と結びつけること自体おかしいことである。顔が見えたはずはなく、特徴ある赤髪を
し、制服を着ていたような気がしただけだ。
――丹羽くん、丹羽くんなの?
それでも今の彼女を突き動かすには十分すぎる条件だった。不安、焦りに駆られる心は
冷静な判断を失い、梨紗は直情のままに部屋を飛び出していた。
637 :
125:03/12/04 00:42 ID:Ep3VnPpL
「ん――?」
部屋の扉が大きく音を立てて閉じると同時、原田梨紅は浅い眠りから目を覚ました。
寝巻きとして使っているのは少し大きめのシャツに一時的な覚醒のため、目はしょぼ
しょぼしてすぐに夢の世界に舞い戻りそうである。
「…………りさぁ?」
いつ途切れるとも分からない意識の中、窓際のベッド、妹が眠っているはずのベッド
にはその姿がないことに気付いた。毛布も乱雑にはねのけられたようにくしゃくしゃで
ある。
「……トイレかなぁ」
そう呟くと後ろに倒れ、ベッドにぼすっと身を沈めた。
「――あっ」
今度は跳ね起き、思わず大声をあげそうになった。口を手で押さえ、横で寝ている福田
律子の様子を見た。幸いまだ気持ちよさそうに眠りこけている。
ほっと一安心してからベッドを降り、部屋に備えつけてあるテーブルの上に置いたまま
のルームキーを持って部屋の扉に手をかけた。。
このホテルの部屋はオートロックになっており、部屋を出る際は鍵を持って出るようにと
加世田先生からしつこく言われていた。
(忘れてくなんてドジなんだから)
扉を開けようとし、その動きが一瞬止まった。理由は分かっていないが、自分に対する
梨紗の態度が、最近おかしくなっていたからだ。自然に鍵を渡せるだろうか。話を聞いて
もらえるだろうか。
外に出るのを躊躇いかけたが、梨紅は持ち前の強さと、妹を想う気持ちから、意を決して
扉を開けた。
消灯時間を過ぎた廊下は暗闇が支配し、消火栓や非常通路を示す電光以外はほとんど
明かりがなかった。
「あれ?」
そこで疑問が湧いた。トイレに行ったならそこの電気も点いていなくてはおかしいはずだ。
しかし明かりはなく、梨紗がトイレに行ったとは思えなかった。
梨紅が闇の中へ足を踏み込んだ時、遠くから小さな音が聞こえてきた。軽快に一定のリ
ズムで響く音。階段を駆け下りる音だ。
妹が何をしているのか、どういうつもりなのか心配した姉は、迷うことなくその後を追った。
638 :
125:03/12/04 00:43 ID:Ep3VnPpL
夜風を裂き、灯台へ向かった。
「あのぉ、ご主人様ぁ……」
「どうかした?」
「あの灯台ってもう使われてないのですか?」
レムちゃんに言われて気付いた。その灯台はもう光を灯し、周囲にその存在をしらしめす
ことをしていなかった。
「本当だ」
「お手入れされてなかったのですかねぇ?」
多分そうだと思う。ホテルからも結構な距離があり、オーナーも手入れを怠っていたのかも
しれない。
「その点、ご主人様はしっかり私たちのお手入れしてくれますよね」
「ん? それはね。いつも力を貸してくれるからそのお礼だよ」
「でもお手入れはいいですから、もっとえっちしてくだ」
「うんうん部屋に戻ったらしっかり磨いてあげるよ」
「は、話は最後まで聞いてく」
「そろそろ灯台が近いね」
「あうぅぅっっ」
申し訳ないけど旅行中は本当にエッチに応える気はない。旅行中に事後処理なんてしたく
ないし、何度も言うようにしばらく溜めて出してみたかったからだ。
「……戻ったら、『永遠の標』も磨こうかな」
ぽろっとそんな台詞がこぼれた。
「それはいいですねっ! きっと標さんも喜びますよ」
「うん。そうだといいね」
彼女が言うと本当にそんな気がしてくる。美術品に愛着が湧くのも、悪くないかもしれない。
639 :
125:03/12/04 00:44 ID:Ep3VnPpL
次第に近づく灯台、その最上部に飾られている『永遠の標』の側へ舞い寄った。
「よ――っと」
灯台の先端部へ向かい、足を踏み外さないようしっかりと足場となるところを確認しながら、
ゆっくりと舞い降りて翼を閉じた。
「ん?」
「どうかされましたか?」
「あ、ああ。ちょっとね」
『永遠の標』。鳥を模して造られたそれは羽根を大きく拡げ、その眼は遥か彼方を見つめ、
まるで何かを示しているように堂々と鎮座している。――と、そこまでは母さんから写真で見せ
てもらったとおりの美術品だ。違うのは、その首の下、胸の上辺りに親指ほどの大きさをした
菱形の、輝く石が取り付けられていたことだ。赤色とも橙色とも判別のつかない色がその石の
中で渦巻くように光を放っている。宝石の類と考えるのが妥当だ。
ともかくこれは家に帰ってから母さんに見てもらうことにしよう。
「まずはこれを盗っていかないとね」
『永遠の標』の羽根の下に手を差し込み持ち上げようとするが、案の定その脚は灯台の先端
に固定されており、このまま取り外すことはできそうもない。もし無理矢理持ち上げようとすれば
脚が折れてしまい、母さんに怒られてしまう。
「でも僕には秘密兵器があるからね」
「誰に話しているのですか?」
さっちゃんの問いかけを無視し、ズボンのポケットから部屋を出る前に携帯しておいた物を取り
出した。
消しゴムほどのサイズのそれを『永遠の標』の足元に向け、指もとにあるスイッチを押すと、それ
の先端から赤い光が線を引き、『永遠の標』と灯台とを切り離していく。母さん特製の高出力のレー
ザーナイフだ。
「さっちゃんがいてくれたら剣ですぐだったんだけどね」
「そういえばさっちゃん元気かなぁ? 少し心配ですぅ」
「……僕もね」
帰ったら何て言われるか心配でたまらない。
640 :
125:03/12/04 00:44 ID:Ep3VnPpL
少し話をしているとあっという間に切断が完了した。切断面は綺麗なもので、指で触れて
みるとつるつるしている。凄い切れ味だと感心すると同時に、母さんのことが少し怖くなった。
もしかしたらこんなものを幾つも幾つも造っているかもと考えると背筋がぞっとする。
考えるのも億劫になってきたのでそそくさとレーザーナイフをポケットにしまい、『永遠の標』
を高く掲げた。
「永遠の標、ゲットォォォォッッッ!」
「ゲットォォォォッッッ! って、どうして叫んでいるのですっ!?」
「な、なんとなく」
ノリです。怪盗にしては軽率な行為だったかなと反省したけど、誰もいないから気にしないで
おこう。
けど頭上に掲げる美術品を見ていると、少ししっくりこない。
「…………うぅん」
「またどうかされましたか?」
「うん……、やっぱり気になるから」
「何がです?」
「この宝石」
そこでレムちゃんも気付いたように声をあげた。今まで疑問に思ってなかったらしい。
「これも切り取ろっか」
黒翼を拡げ静かに灯台の下に降り立つと、その宝石がどのように『永遠の標』に付いている
のか、よく観察した。元から宝石をはめ込んでいたらしい装飾品と、『永遠の標』がぴったりと
接着してある。融解させたためか、接着部は歪になっていてプロの仕業とは思えない。
641 :
125:03/12/04 00:45 ID:Ep3VnPpL
「素人……オーナーかな……」
当たり前だけど呟いても答えてくれる者はいない。それよりも、早く済ませて部屋に帰って
着替えて寝ようと思い、再びポケットの中からレーザーナイフを取り出そうとした、その時、
背後から砂を踏む音が聞こえ慌てて振り返った。
「んなッ……――」
思考が止まりそうになるくらい頭の中が混乱した。
「――丹羽、くん? な、何してるの?」
笑っているのか驚いているのか、とても言いがたい複雑な表情で原田梨紗さんが僕に、丹羽
大助に訊ねた。
(見られた――!?)
どうして、彼女がここに?
(ごっ、ご主人様! に、にに、逃げましょおっっ!!)
レムちゃんが叫んでくるけど、僕の身体は動かない。動けない。実行に移すだけの余裕が
なかった。
「ね、ねえ? なんでこんなところにいるの?」
息を切らした原田さんが一歩足を踏み出し、砂の音を二重にならした。
(――二重?)
「梨紗……っ」
僕が疑問に思った時には、原田さんの背後、僕の視線の先に彼女の姿があった。
「――梨紅さん」
肩を上下に揺らす彼女の名前を呟くと、原田さんもようやくその存在に気付いたように後ろを
振り返った。
642 :
125:03/12/04 00:46 ID:Ep3VnPpL
――なんで?
――なんで?
――なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでアンタがココにイルノ?
――どうして、丹羽くんと私の側に、いつも、アンタがいるの?
――奪ウタメ
643 :
125:03/12/04 00:47 ID:Ep3VnPpL
「―ーいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!」
原田梨紗の叫びに、悲鳴に、不安に、絶望に恐怖に憎悪に拒絶に嫉妬に嫉妬に嫉妬に嫉
妬に嫉妬に嫉妬が嫉妬が嫉妬が、破滅への、破壊への、崩壊への、排除への淘汰への混沌
への扉を開いた。
丹羽大助が手にしている『永遠の標』から、いや正しくはそれに接着されている『夢見
の紅玉』が膨大な光を噴き出した。
「な、なに――」
「ご主人さ――」
光の塊は大助を、梨紗を、梨紅を呑み込み、とどまることを知らぬようさらに巨大に膨
れ上がる。灯台を、海岸を、森を、ホテルを、島全体を包み込み、そして一瞬のうちに収
束した。
644 :
125:03/12/04 00:48 ID:Ep3VnPpL
「ご主人様。もう平気です」
レムちゃんの声が耳の中にまで入り込んだ感じのする光を剥ぎ落とした。眼は光に焼かれ
ていて、瞼の下でもちかちかして痛い。顔前で蒼月の盾をかざして交差させた腕を下ろし、
目を開いた。世界は真っ白だったけど徐々に視力が回復し、ぼんやりと世界の姿を捉えだした。
眼下には突然の出来事のせいで地面に投げ出してしまった『永遠の標』が、何事もなかった
かのように立っている。宝石も付いたままだ。ただ、その色が最初に見たときよりもかなりくすん
でいる。
「原田さんッ!」
視線を先に向け、倒れている原田さんを目にした僕は急いで駆け寄った。
「大丈夫!? しっかりして!」
肩に手をかけ揺すっても反応は返ってこない。息は、ある。脈は、ある。大丈夫、生きている。
それを確認できたおかげで少しだけ余裕が生まれたのか、さっきまでは気付かなかったことにも
気付くことができた。
よく聞くと彼女の呼吸は一定のリズムで繰り返して、とても穏やかな音をしている。これは、
「寝息?」
どういうことかと考えを巡らせた時、もう一人の女子のことをはっと思い出し、そちらにも急いで
駆けつけた。
「梨紅さん! 寝てるの!?」
なんとも間抜けな事を訊いているけど言葉を選ぶ暇もなく、思ったままを口にしていた。
当然答えは返ってくるわけはなく、こちらも可愛らしい寝息を立てている。
「どう……なってるの?」
そう呟くがレムちゃんにも分からないらしく返事はない。
彼女をこのままにしておくわけにもいかず、抱え上げると原田さんの側に運び、姉妹を並べ
横たえた。
645 :
125:03/12/04 00:49 ID:Ep3VnPpL
「レムちゃん、どうなってるのか分からない?」
「あうぅ……申し訳ないですぅ」
レムちゃんは美術関連に詳しいとはいえないから仕方ない、か。さっちゃんなら知っていた
かもしれないけど、今はしょうがない。
立ち上がって周囲に意識を向け、島全体の様子もおかしいことに気付いた。木々のざわめき、
虫々の鳴き声、海の波立つ音、頬を撫でる夜風、生命の存在といったものが微塵も感じられない。
――静か過ぎる。そのことが、普段は気にも留めない周囲の状況に対して敏感にさせている。
まるで僕以外の時が止まったような感覚に陥った。
そう考えた途端、僕の胸が不安に鷲掴みにされた。息苦しくなり、鼓動も早く打ち出した。
(ダメだダメだ! 焦るな、焦れるな、よく考えるんだ!)
そうだ。まずはしっかりと現状を知ることから始めるんだ。
「ウィズ、ホテルに戻って、様子が変じゃないか見てきて」
鳴き声を一つ残し、背中からウィズが飛び立ち、ホテルの方角へと向かった。修学旅行のこの
時間なら、多くの生徒がこそこそ起きているのは当たり前だし、先生や従業員なら見回りもして
いるはずだ。もしもそうじゃなかったら、二人と同じ現象がこの島全域に渡っていることになる。
残された僕は腕組みし、順を追って冷静に考えを組み立てようとした。
まずは何があったのか?
――光の膨張。収縮。
その結果どうなった?
――二人が……ウィズの報告次第じゃこの島の全員が眠りに入った。
じゃあ、僕はどうして助かった?
――レムちゃんのおかげ……なのかな?
何が原因でこうなったの?
――あの宝石か。
眠りに誘った目的は?
――分からない。
『永遠の標』も関わっているのかな?
――分からない。
646 :
125:03/12/04 00:49 ID:Ep3VnPpL
肝心なところが分からない。手がかりも知識も、僕は乏しすぎた。自分の不甲斐なさに
へこんでいると、ウィズが舞い戻ってきた。
「どうだった?」
「ウッキュ、ウキュウ、キュッキュ!」
黒い翼が地面をのた打ち回っている。その様はひどく、不気味だ。ジェスチャーで伝え
たいらしいけど、何も伝わってこない。
「……レムちゃん、ウィズが何を伝えたいのか分かる?」
「ご、ごめんなさぁい……」
レムちゃんが鼻声で謝ってきた。やはり分からなかったらしい。
「ウィズ、もういいよ……」
「キュウ?」
「今から質問するから、それに首を振るだけでいいよ」
「ウッキュ!」
「ホテルにいる人たちはみんなあの二人みたいに眠ってたの?」
ウィズが首を縦に振る。
「先生やホテルの従業員の人も?」
ウィズが首を縦に振る。
「ありがと。もう十分だよ」
ウィズが満足そうに鳴く。
この島で無事なのは僕だけのようだ。やっぱりレムちゃんのおかげで助かったのだろうか?
「レムちゃんってさ、美術品の魔力も防げるの?」
「は、はいっ! それはもうびっしりばっしりとっっ!」
今までそんな使い方ができたとは知らなかった。思い返すと、紅円の剣やユニコーンという
強敵との闘いは主に打撃戦だった。魔力を遮断する効果が蒼月の盾にあると知る機会は
ほとんどなかった。いや、よくよく考えれば、闘ってきたのはいずれも強力な魔力を込められた
美術品だった。だったら魔力に対抗するコーティングのようなものが盾に施されていてもなんら
不思議はないのかもしれない。
レムちゃんが防げたなら、やはりこの惨事も魔力のせいに違いない。それも、島全体に影響
を及ぼすほど強力なものだ。けど、相手が魔力を施行する美術品なら、きっとその力を解く方法
もある…………はずだ、と、思う。
647 :
125:03/12/04 00:50 ID:Ep3VnPpL
「はぁ……。知識がないとこんなに厄介なものなんだ」
「うぅぅっっ、ごべんなざぁぁぁぁい」
「ああっ!? 泣かないで! 別にレムちゃんを責めたわけじゃ」
「わだ、わだじがもっどじっがりぢでたらぁぁぁぁ――」
最後の方はもう金切り声だった。耳を塞ぎ、必死にレムちゃんをなだめた。
「えぐっ、えぐぅ」
レムちゃんが泣きやみ、鼻をぐずりだすと、顔をくしゃくしゃにして涙を浮かべている姿が
思い浮かんだ。いつもなら虐めてみたくなるけど、今はそんな時じゃない。
「落ち着いた?」
「んぐっ……はひっ!」
声が少し引きつってるけど大分よくなってきた。
「だったらどうするか、二人だけじゃ頼りないけど対策を練ろう」
「はひっっ!」
あぐらをかき、じっくり話し合えるよう腰を据えた。
「みんながああなったのは『永遠の標』に取り付けられた宝石のせい。ここはいいよね?」
「はいっ、きっと間違いありません!」
「だから詳しく知るには、もう一度宝石の力を発動させないといけないと思うんだ」
「そうですわね。それからどうなされるおつもりです?」
「……僕があの宝石の力を受けて、直接どうなってるか調べる」
「! そんな、危険すぎますっっ!」
「そうですわ。眠りに落ちたまま意識が戻ることはないかもしれませんわ」
「けど、どうなってるか知るには、宝石の支配下に入るしかないよ」
「でも、でもぉ……」
「わたくしも反対です。それにもっといい方法を知っていますわ」
「それ本当!? わっ!! わっ、わわっ!?」
いつの間にか、すぐ横に見知らぬ女の人が座っていた。驚き動転した僕は尻を引きずって
後ずさりし、背後にあった灯台にごつんと頭をぶつけた。
648 :
125:03/12/04 00:51 ID:Ep3VnPpL
「いったたぁ……」
「まあまあ。大丈夫ですか?」
「う、うん平気。…………あの、君、誰?」
顔を覗き込んでくる女の人の顔には、やはり見覚えはない。白髪のショートヘアに白い肌、
紫がかった服を着ている。
「あら? 自己紹介がまだでしたわね」
むぎゅっと両手が胸の前で握られ、彼女の顔がずいっと寄ってきた。
「わたくし『永遠の標』でございます。トワちゃんって呼んでくださってかまいませんのよ」
「と、トワさん……?」
「トワ『ちゃん』! トワさんだとまるでお婆さんみたいですもの!!」
トワ……ちゃんが大袈裟に泣き崩れる仕草をする。
「それにわたくし、まだ百歳に満たない小娘ですもの」
変……変なのが出てきた……。
「今、変って思いましたわね?」
「うっ、えぇーっと……」
指でちょっとだけ、と伝えると、ぷりぷりと怒り出した。
「失礼な子ですわね。手助けするの、やめちゃいましょうかしら?」
「! 助ける方法があるの!?」
彼女の台詞に反応して身体が動き詰め寄ろうとしたところ、トワちゃんが自然な動作で
立ち上がり僕の突進をかわした。
「方法はあります。ですが助けが欲しいのなら私の出す三つの条件を呑んでもらいますわ」
「条件?」
649 :
125:03/12/04 00:52 ID:Ep3VnPpL
トワちゃんが目の前に人差し指を突きつけてきた。
「一つ目は、わたくしを盗んだ後は大切にしてくださること。また灯台の先端に取り付けられ
て雨ざらし、何てひどい目に遭いたくないですから」
続けて中指を立て、続けてきた。
「二つ目は、帰りは自力で戻ってくること。わたくしまだ目覚めたばかりで存分に力が発揮
できませんので」
「戻ってくる? どこかに行くの?」
「それは後で説明いたします。今はこの条件を呑むかどうかにだけ集中してくださいませ」
「う、うん。分かったよ。片道切符ってことだね」
「その通りですわ。最後に三つ目」
トワちゃんが親指を立て、三本の指を僕に突きつけてきた。
「先程も言ったとおり、わたくし目覚めたばかりで本来の力の半分も発揮できませんの。
ですから」
あ、なんとなく、最後の条件が、読めた。
「戻ってきましたらわたくしにあなたの精を注いでくださいませ」
「やっぱり!!」
「あら? 分かってましたの? でしたら話は早いですわ」
「早いって言われても……僕は」
「ご主人様」
口をもごつかせていると、今まで静観していたレムちゃんが声をかけてきた。
「あらま。これはまたおかしなものを従えてますわね」
「わ、私はおかしくなんか
「ここで拒んでしまえば、皆さんを救えなくなるのです! 腹を決めるのですよッ!」
そうだった。危うく自分だけの羞恥心で決定を誤るところだった。迷うことはないんだ。
「いいよっ! その条件、呑むよ」
「決まりですわね」
650 :
125:03/12/04 00:53 ID:Ep3VnPpL
それからトワちゃんが僕の名前を聞いてきたので答えると、『永遠の標』の彫像を僕と
彼女の間に置いて説明を始めた。
「では丹羽大助。これからこの島で何が起きたのか説明します」
神妙な口ぶり、それだけでこの島に起きたことがただ事じゃないと感じた。僕まで緊張
してしまう。
「今回この島を襲った出来事は、大助も察しているとおりわたくしに付けられた宝石、『夢
見の紅玉』が引き起こしたことです」
紅玉……ルビーか。橙色も混ざっていたから分からなかった。そういう加工を施されて
いるのかもしれない。
「でもあの宝石、ルビーにしてはとても色がくすんでいたけど」
「それもこれから説明しますわ。慌てずに聞いてください」
本当は今すぐにでも原因を聞いてその魔力を解除したいけど、確かにトワちゃんが言う
とおり、慌ててしまえば判断を誤ることもある。ここは大人しく従おう。
「あの紅玉の本来の力は、人に望むままのよい夢を見せる、というただそれだけのもので
した。しかし長い歳月がその力をより強大なものにし、人の夢――いえ、魂を喰らうように
なったのです」
「魂を……。でも、どうしていきなりその力が発動したの?」
「それはそちらで寝ている、髪の長い女の子のせいですわ」
「髪の長い、って原田さんの?」
こくりとトワちゃんが頷いた。
「『夢見の紅玉』が力を発動する条件は、人の願望に呼応するという、極めて単純なもの
ですわ。もともと夢を見せるためのものですから、それほど複雑な条件にする必要はあり
ませんでしたの。ところが長い歳月が経ち紅玉自身が力を増してくると、願望の強さに呼応
するという条件に変化しましたの」
「つまり、この状況は原田さんが何か望んだから、それが強すぎたから、島全体に影響を
及ぼしたの?」
「ええ。付け加えますと紅玉の色がくすんでいますよね? それはその子の願いが、負の
感情に傾いていることを表してますの」
原田さんの負の感情……僕にはどうしてそんな想いを、願いを抱いたのか理解できなか
った。
651 :
125:03/12/04 00:54 ID:Ep3VnPpL
「どうして……」
「考え事をしている暇はありませんわよ。時間が経てば経つほど、取り込まれた人の夢、
魂の帰還は難しくなりますわ」
「時間もないってことだね。ところで、どうしてトワちゃんはそんなに詳しいの?」
よく考えると妙なことだ。自分のことでもないのにそんなに詳しいなんて、ちょっと腑に
落ちない。
「簡単なことですわ。わたくしと『夢見の宝玉』が一体となっていた時、その記憶・情報が
わたくしに流れ込んできましたの」
「だからそんなによく知ってたんだ」
なるほど、納得。
「さ。お喋りはここまでですわ。今から宝玉の中へ行きます。片道だけあなたの標となり
ますわ」
トワちゃんが差し伸べてくる手を握り、
「あ、待って。帰ってくるのにウィズを使うから、一緒に」
「それは無理ですわ」
「ぅえッ!? なんで?」
「今のわたくしにはあなた一人を導くだけでいっぱいいっぱいですの。残念ですけどお察し
くださいませ」
こうなると帰ってくる手段は宝玉の中で捜すしかないか。手段が見つかるとは限らないけど。
「ご主人様、行かないという選択肢もありますよ?」
「意地悪なこと言わないでよ。レムちゃんが僕に腹を決めさせたんでしょ?」
「あはは、そうでしたぁ」
そう、もう決めたんだ。みんなを助ける。僕のことはその次だ。
「緊張は解けましたか? では行きますよ、翼主・丹羽大助――」
「うん――」
『夢見の紅玉』とは別の、温かみに溢れる光が僕とトワちゃんを包み、光の柱が天に向けて
突き抜けた。
意識は遠のき、深淵の中に落ち行く感覚が身体に染み渡った――。
652 :
125:03/12/04 00:56 ID:Ep3VnPpL
前半終了です。
何気にそろそろスレの容量ピンチです。
653 :
580:03/12/04 01:01 ID:XW6Y/igo
リアルタイムキター!
次スレ立てたほうがいいのかな?
ネタのほうは大助×梨紅で
何らかのトラブルによりどっちかがどっちかの家に居候のヨテーイ
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
125さんおつです〜
125様乙です。
最近執筆が加速してますね。無理しない程度に頑張って下さい。
580様期待しています。
スレ容量に関しては、雑談する分にはまだまだ十分ですので、
面倒をお掛けしますが、次にSSを投下される方が立ててもらえるでしょうか?
即死した前スレの二の舞は御免ですから。
規制等で立てられない場合はその旨を書き込んでもらえれば代行しますので。
(この時間帯ならたいてい張り付いてますw)
おつかれー、なんか最初の方よりうまくなってるような気がするぞ。
初代スレ125からずっと見てきた俺はそう思った。
これからもがんばれー。
125様お疲れさまです、漫画と一緒に見ると最高!!!!
580様に期待ですな!!・・・580氏頑張って下さい!!!!!
トワちゃんキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
きっとあんなことやこんなことを……ハァハァ
期待超大!
659 :
125:03/12/04 20:51 ID:Ep3VnPpL
「ふむ」
軽く吐息を漏らした坪内さんは、ちぎれて首に絡まった蝶ネクタイを外して襟元をくつろげ、
くるりと身を転じた。
「お嬢様、これをおねがいします」
蝶ネクタイを丁寧に内ポケットに納めてから、銀縁の眼鏡を外して梨紅に手渡すと加世田先
生に向き直り、再び先と同じ構えをとった。
「坪内さんが眼鏡を外すなんて……」
「初めてみたわ……」
「そ、そうなの?」
梨紅と梨紗の言葉にどう反応したものかとまどう大助。
『ひょっとして、僕達解説役?』
そんな外野は尻目に、
「この身体は当然至極、さらには身に着けたもの一片余さず我が主、原田の家に捧ぐもの」
重々しく、坪内さんが口を切る。
「それを汚し傷つけられるは己が未熟。されど……」
すう、と息を吸い、石を投げつけるようなひと言。
「手を下した貴様の罪もまた、異様に、重い」
宣告終了直後、鉄拳執事と格闘教師は、磁石の異極が引き合うごとく互いに間合いを詰めて
いった。
一足一拳の間境を踏み越えるや、まったく同時に顔面めがけて右の鉄拳と剛拳が火を噴き合
う。ごつりと骨が骨を打つ鈍い激突音もまた同時。固めた拳を額で受け合ったふたりは、さら
に逡巡なく左拳による二撃目、鉤突きを空いた脇腹へ繰り出したが、これもまた、水を吸った
油粘土、それを隙なく詰め込んだような腹筋を締めて、ダメージを遮断し合う。
三撃目、加世田先生の顔が迫る。大きく口を開き、歯茎までむき出して。
かみつき。
だが、坪内さんにとっては格別驚くべき行為でもない。無造作に頭突きを相手の鼻っ柱にめ
り込ませて退けた。
たまらずのけぞる加世田先生。初めて与えられたダメージらしいダメージであり、また逃す
べくもない戦機。崩れた態勢を立て直そうとする人体は、自然と吸気を行なう。そこへ打突を
与えれば、衝撃はいくぶんも減じられることなくそのまま浸透する原理、それすなわち、いか
なる打たれ強さを誇ろうが、この瞬間の耐性は零にひとしい。
迷いなく、畳みかけに放った右直拳はしかし、グローブめいた掌に捕捉されていた。
坪内さんの前腕を、加世田先生両の手がしっかりとつかみ――なおつかみしめた。
『む――』
投げ技でも逆技でもないそれは、握力による圧力。
万力のごとく握られた腕、その肉と血管が異様な膨張を始めたと察する前に坪内さんは応じ
ていた。落とした重心、地面から還る力を腰から肩、腕へと波状に伝え、全身を連動、協調さ
せ、雑巾を絞るように一気に内へひねる。
加世田先生の両足が地を離れた。巨体が握った右腕を中心にぎゅるりと空中を一回転、大き
く跳ねてやや距離をおいた地点に着地していた。
頭から地に落とすはずだったが、相手自ら跳んで流れに乗ってやり過ごしたのだ。
改めて、力だけの者ではない、ということか。
>>662、663
なにやら、こっちに凄絶な誤射をしてしまっていますね。
行方不明になった送信があったのでどこにいったのかと思えば_| ̄|○
665 :
名無しさん@ピンキー:03/12/08 23:40 ID:79u/JpYf
age
666 :
125:03/12/09 00:26 ID:LdgHM612
――目に飛び込んできたものは噴水、海、岬に風車。
「……噴水公園?」
見覚えのある光景。夏休み中に絵を描いた場所――それも一番最初に描いた場所だ、間
違えるはずがない。
「じゃあ、ここは……」
東野町に戻ってきたのか、と錯覚してしまう。噴水の縁に手をかけてみると、質感はなんら
不自然なことなく、僕が腰掛けていたまさにその感触だ。水にも触れてみた。ひんやりとした
感覚は、とても夢の世界とは思えない。
そう考えてから、すぐにそれを否定した。夢の世界なんて現実味のないのが普通だけど、
僕は何度も肉の質感溢れる夢を見てきたじゃないか。これくらいで驚くことなんてない。
「! トワちゃん? トワちゃん!?」
思案を打ち切ると、トワちゃんの姿がいつの間にか見当たらなくなっていた。辺りを見回して
もその姿はおろか、人の姿もない。困惑しているところに、トワちゃんの声が届いてきた。
「ここにいますわ、丹羽大助っ!」
「ここってどこ?」
姿はないのに声は聞こえる。このことに驚きながらも、何とか見つけようと足を動かそうとした。
667 :
125:03/12/09 00:26 ID:LdgHM612
「きゃぁぁっ! 踏まないでぇぇぁッッ!」
「うええッッ!?」
反射的に足を上げ、バランスを崩してそのまま尻から転倒してしまった。呻いてお尻をさす
りながら地面を見る、と、
「トワ……ちゃん?」
そこにはピンク色をしたちょっと太めの小鳥が、羽根をばたばたさせて僕の顔を見ていた。
手を差し伸べると身軽に、とは言いがたい動きでひょこっと手の上に乗ってきた。
「なんでそんな姿に?」
「魔力を使いすぎまして、今はこれがいっぱいいっぱいですの」
トワちゃんが片道だけしか標になれないと言っていたのは本当みたいだ。やっぱりかえる
手段は自力で捜すしか……と考えた時、一つ妙案が浮かんだ。
「そうだ。ここで僕が魔力を注ぐことはできないの?」
そうすれば帰りも標になってくれるんじゃないかと期待した。
「それは無理ですわ。わたくし夢の中でいたすより、ちゃんと肌と肌を触れ合わせていたした
いのです」
「それは無理なんじゃなくて、ただトワちゃんがしたくないだけじゃ……」
「無駄話をしている時間はありませんわよっ!」
無駄なんだろうかと疑問にするより早くトワちゃんが僕の頭の上にぽすんと移動した。
「一刻も早く『夢見の紅玉』を見つけだして、それを粉々に砕いてください。そうすれば力の
支配下にある皆さんの意識は元に戻りますわ」
「……なんかトワちゃんに使われてるみたいだけど、分かった。行こう」
頭に乗せたトワちゃんの指示を受け、僕は駆け出した。
668 :
125:03/12/09 00:27 ID:LdgHM612
「うきゃぁぁぁッッッ!! ふ、踏まないでくださぁぁぁぁいッッッ!!」
「うわぁぁぁぁッッッ!?」
足の裏に非常に生柔らかな感触を感じたと思ったら突然の大絶叫。すかさず脚を上げ、
また転倒してしまった。
「な、なにッ?」
「わたしですぅぅ」
また地面を見ると、そこにはさっきと同じく小さなものがあった。じゃなくていた。
「レムちゃん!?」
僕が踏みつけてしまった今のトワちゃんと同じくらいの大きさのそれがむくっと立ち上がる
と、こちらを向いてひょこひょこと効果音を伴なって近寄ってきた。
「はいっ、わたしです!」
見上げてくるものは確かにレムちゃんの顔をしている。服装も確かにレムちゃんのメイド服
の雰囲気を残している。ただ、どうしても言いたいことがあった。
「何でそんなに小さくなってるの!? どうしてちびキャラ!? ちょっと可愛すぎるよ!!」
「そそ、そんなに言われても分からないのですぅ」
レムちゃんが頭を抱えて悩む仕草をする。うあ……可愛い。
「丹羽大助。別に不都合があるわけではないのですから構わないじゃないですか?」
「そうですそうです、構わないですっっ!」
「そんなもんかなぁ……」
『そんなもんです』
口を揃えて言わなくてもいいじゃないか。なんとなく、二人は相性がいいのかもしれないと
思った。
「ではわたしもそちらにゆきますっ」
レムちゃんがふわっと浮かぶと、すすすっとトワちゃんと同じところに乗った。
「今飛んだっっ!!?」
「気になさらないでください」
「そうです。時間はありませんわよ」
「うわぁ。凄い胸の中がもよもよしてる」
すっきりしない思いを抱きながら、僕は紅玉を捜し求めて今度こそ夢の世界を駆け出した。
669 :
125:03/12/09 00:29 ID:LdgHM612
街の中を走り抜けていると、すぐにあるものを目にした。
「あれ、灯台じゃないか!」
かなり遠方、山がある方角についさっきまで僕らが現実世界で目にしていた灯台がそびえ
たっていた。さらに同じ方角には滞在しているホテルと、島で見たような気がする木々が森を
作っていた。
「ここは夢の世界。それもあの女の子の夢が基盤となっていますわ。現実での影響がある程度
現れても不思議ではありません」
頭の上からトワちゃんが教えてくれる。その横でレムちゃんが感心したように声を漏らして
トワちゃんに絡みつき、それを迷惑そうに振りほどこうとして僕の頭でころころ暴れまわって
いる。ちょっと、僕が迷惑かも。
「……つまりなんでもありってこと?」
「いえ、もちろん制約はあります。この世界に存在しているものはすべて彼女の記憶の中の
もの。彼女の知らないものが存在することはありません」
結局レムちゃんに抱きつかれたままのトワちゃんの解説を聞いたおかげで、この東野町に
人の気配があまりしないことにも合点がいった。街の人でも、接点がない人が出てくることは
ないのか。だったら人の数もかなり限定されることになる。紅玉を捜すには有利か、不利か、
どっちに転ぶだろう。
「付け加えますと力の巻き添えを受けたもう一人の女の子やホテルの人々は、この夢の街を
舞台にしてそれぞれの理想を夢見ているはずですわ」
「じゃあ、修学旅行に来てるほとんどの人がこの街にいるってことだね」
「ええ。もしかしたら紅玉を捜すための手がかりをつかめるかもしれません。その方たちに
お会いしに行きましょう」
とは言われても、修学旅行に来ている人数にホテルの従業員の数を足せば、おそらく百人
近い人数になっているはずだ。その全員を捜し回ることに時間を割くことは避けたい。
だったら人数が多くいるところで聞くのがいいけど、どこに人がいるのか皆目見当がつかない。
「一体どこに行けば……」
「落ち着いてください。いきなり巻き込まれた人がそれほど無茶な願いを抱いていたとは考え
にくいですわ。おそらくは普段の生活の中でのささやかな願望を満たすようなことを……」
670 :
125:03/12/09 00:29 ID:LdgHM612
普段の生活――普通の生活。普通、僕らは何をしている?
「――学校!?」
思いついた時にはすでにそこに向かっていた。もしかしたらホテルかもしれないとも考えた。
従業員の人はいるだろうけど、みんながいるかは分からない。いや、いるかもしれないけど、
ここは直感に従うべきだ。きっと、みんなだって直感的に思いついたほうにいるはずだ。
走りながら太陽の位置を確認した。すでに傾きかけている。この世界の季節も夏だとすれば、
今はちょうど放課後になるかどうかという時間だ。みんなが下校してしまえば大きな時間のロス
になってしまう。全力で学校へ走った。
「こんな時、翼があったら、楽なんだけど――」
「ほらほら。喋ってないで、あと少しですわ」
「ご主人様ぁ、がんばれぇぇぇっっ」
二人の声援を頭の上から受けながらとにかく走った。トロッコ乗り場に近づいたけど、タイミング
悪くトロッコはすでに上に行ってしまっている。
待つ時間も惜しい僕は、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
急な斜面を自分の脚で、
「――ぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
一気に、
「ぁぁぁぁぁッ、ぁぁぁ――」
……一気に、
「――ぁぁ……ぁ、へえぇぇ……」
…………失速して駆け上がった。
671 :
125:03/12/09 00:31 ID:LdgHM612
「つ、ついたぁぁ……」
中学校の校門前に着く頃には体力もなくなり、膝に疲労がきてがくがく笑っていた。
「ナイスファイトですわ丹羽大助!」
「さすがご主人様! 男らしいです」
「あ……あ、あり、がど」
何とか言葉を口にしたけど、とてもしんどい。胸が苦しく、脚が、身体が重い。
「へ、変だな……こんな、きついなんて」
体力にはかなり自身があったはずなのに、坂を駆け上がって疾走してきただけでこの有様
だ。それにここは夢の世界なのに、どうして疲労が現れてくるんだろう。
「仕方がありませんわ。この世界にとって大助は、強引に侵入してきた異端の存在。何かしら
の力が働いていると考えてよいはずですわ」
「はは、そっか」
軽口を叩くつもりで笑って答えようとしたけど息が詰まりそうになる。膝に手をつき、ゆっくりと
呼吸を整えてから校内に踏み込んだ。
下校時間のためか、多くの生徒が僕と反対の方向に流れていく。さっきまでいた街の閑散と
した様子とは大分違う。
「何かみんな、生き生きしてるね」
「これが原田梨紗ちゃんの世界ですわ。――理想の」
原田さんの理想の夢。みんなが楽しそうに生きる世界。それはとてもいいことだ、そのはずだ。
(けど…………)
みんな確かに笑っている。けどその顔を注意深く見ようとすると、まるで靄がかかったように
ぼんやりと、まったく焦点が合わなくなる。
「どうしてみんなの顔が見えないの?」
トワちゃんに訊くと咳払いを一つし、高説するように語りだした。
「それはここにいる人すべてが梨紗ちゃんの夢の世界の登場人物にしか過ぎないからですわ。
紅玉に取り込まれた他の人の意識とはまた別物です」
「造り物の人々、夢の産物か……」
「ご主人様、ちょっと詩的ですぅ」
ぽつりと呟いたことに感心されて少し気恥ずかしくなった。
672 :
125:03/12/09 00:31 ID:LdgHM612
「さあさ、急ぎませんと」
「うん」
足早に下校生の間を縫って昇降口側にやってきた時、
「うわわっ!?」
慌てて横に飛んで茂みの中に姿を隠した。
「どうしましたか?」
「あっち、あっち」
身を隠したまま目線で昇降口付近を見るように促がした。
「んんーー……? あ、原田梨紅さんがいるのですね!」
レムちゃんの言ったことに頷いた。その姿ははっきりと見ることができ、夢の産物じゃない
とすぐに分かった。けど、僕が驚いたことはもう一つあった。
「あわわわわッ!? 梨紅さんの横にご主人様がっっ!?」
再びレムちゃんに頷いた。梨紅さんの横には僕が――梨紅さん以外のみんなと同じように
どこか霞んで見える僕がいた。
茂みから顔を出して二人の様子を窺ってみると、楽しそうに談笑している姿が目に入った。
(なんか、妙な感じ)
自分の胸がむず痒くなる錯覚に襲われた。くすぐられているというほうが正しいかもしれない。
とにかくちょっと落ち着かない。
「大助、他人の夢を覗くのはあまりよろしくないのでは?」
「わ、分かってるよそれくらい!」
トワちゃんの言葉が突き刺さった。ごまかすように強めの口調で言い放ち、梨紅さんの後ろ姿
を見送ってから校舎へ侵入した。
673 :
125:03/12/09 00:32 ID:LdgHM612
下駄箱を抜けて廊下に足を踏み入れた瞬間、
「な、なんだここぉッ!?」
声が裏返るほど素っ頓狂な声をあげてしまった。
廊下はいつものとおり何の変哲もない。教室もおかしいところはなく、廊下に面した窓が
左右にそれぞれ続いている。――彼方まで。
廊下の向こうは闇に飲み込まれている。それほど、長い。
「どうなってるの……」
きょろきょろと辺りを見回し、教室の表札に人名が刻まれていることに気付いた。それが
東野第二中学校二年生の名前だと分かるのに時間は必要なかった。
「みんなの名前が、どうしてここに?」
「そういうことですか……」
突然頭上でトワちゃんが口を開いた。
「どういうことです?」
レムちゃんの問いかけにまた一つ咳払いをし、すらすらと説明し出した。
「ここにある無数の部屋には、一人ずつの夢が閉じ込められていますわ」
「みんなの夢が?」
「ええ。そして閉じ込めた夢をそのまま喰らってしまうところでもあります」
「なッ……! 急いで助けないと!」
一番近くにある教室の扉に手をかけようとした時、トワちゃんに制止された。
「待ってください! 部屋を一つ一つ開放してもその人が夢から醒めることはありません。
ここは急いで紅玉を見つけだして砕いた方がよろしいですわ」
この世界についてはトワちゃんの方が格段に詳しい。言ってることも間違いなく本当の
ことに違いない。
「分かった」
紅玉を捜そうと駆け出そうとした。
674 :
125:03/12/09 00:33 ID:LdgHM612
「あぁッ! でも待って! 僕ってここに情報収集に来たんだよ? でも誰もいないんじゃ
……」
「心配いりません。紅玉は、ここにあるはずです」
その言葉に違和感を覚えた。最初は捜せと言ったはずなのに、今はここにあると断言し
ている。
「でも、どうして……」
「すみません。標としての役割を終えてしまったわたくしには、これ以上教えてさし上げる
ことができません。でも信じてください。紅玉の気配は、この奥からしています」
トワちゃんの声はどこか苦しそうに感じた。これ以上説明することができないことが歯痒い
という思いが伝わってきた気がした。
「ううん。気にしないで。さ、行くよ」
どうして気配を見つけることができたのか、訊くのは悪いことだと感じた。
「はぁい」
「急ぎましょう。すでにこの機関が形成されているということは、残された時間は思っていた
以上にありませんわ」
トワちゃんの言葉を胸に刻み、真っ直ぐと続く廊下を走って闇の奥へ向かった。その間も
左右の壁には教室の窓と表札が続いていた。夢に取り込まれた人数はこの島全員の百名
余り。そう考えると教室五十室分は駆けなきゃいけないことになる。今の僕には辛いけど、
泣き言は言ってられない。
675 :
125:03/12/09 00:34 ID:LdgHM612
(――あれ?)
足を止めることなく、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「トワちゃん。みんなの夢が教室に閉じ込められているなら――」
「――ご主人様、あれ!」
レムちゃんの言葉に言いかけていたことを飲み込んで正面を見据えた。薄暗い廊下の端
にぼんやりとだけど、何かが見えた。
「扉?」
近づくにつれてそれがはっきりと見えるようになった。やはり扉だ。壁のように廊下を塞いで
いる観音開きの大きな扉。長く続くかと思われた廊下は思ったより早くその終わりを見せた。
「ここですわ」
それだけでこの奥に求める物があることが分かった。息を一つ呑み込み、それに触れた。
「ダメッ!!」
「――――!」
突然背後から聞こえた甲高い声に振り向くと、視線の先――というより下に声の主と思われる
少女がいた。
見覚えのある少女。幼いころに見た。クマのぬいぐるみを抱えた、短髪の――。
「その先に行っちゃダメなのッッ!!」
頭の中に直接響く声に脳を掻き乱される錯覚に襲われ、体を九の字に曲げて膝をついた。
「? どうしましたか」
「ご主人様?」
「ど、どうって……この子が」
苦しみながらも視線を上げると、そこには誰の姿もいなかった。
「あ、れ?」
「この子ってどの子ですかぁ?」
「誰もいませんわよ?」
「そんなッ!」
確かにいたはずだ、本当に突然現れた女の子が。
(そして、突然消えた――?)
「大丈夫ですか? 夢に感化でもされましたか?」
「あ、いや……大丈夫、大丈夫」
頭痛も嘘のように引いている。何事もなかったように。僕がおかしくなったのか?そう思いかけた
けど、確かに、いた。
676 :
125:03/12/09 00:35 ID:LdgHM612
(ううん、今は考えてるときじゃない)
かぶりを振って腰を上げ、再び扉に触れた。少し押してもビクともしない。
「かなり厳重に封じられているようですわ。並みの衝撃ではどうしようもないでしょう」
「そんな! ここまで来て」
もうすぐでみんなを解放できるのに、こんな扉一枚に阻まれてしまうなんて、そんなのは
ごめんだ。何かないかと辺りを、身体を探った。ポケットには高出力レーザーナイフが入った
ままだけど、これで扉を破壊できるとは思えない。他に身に着けているものといえば、
「これだッッ!!」
「ほえ? わ、わたしですか?」
左腕にはめた蒼月の盾しかない。
677 :
125:03/12/09 00:36 ID:LdgHM612
「レムちゃん!!」
「ははッ、はいぃッッ!!!」
号令をかけるように声を張り上げると、それに答えて頭に乗るレムちゃんがぴしっと背筋を
伸ばすのが分かった。
「全力出して!」
「ら、らじゃぁでありますっっ」
蒼月の盾を巡る蒼い光が活性化する。それに応じるように僕の心臓も大きく鼓動する。
「まだまだっ! これじゃ壊せない!」
「はいっっ!」
盾を巡る光が強く、強く輝き、扉の前だけが、満月が輝くよりも蒼く染め上がった。魔力の
開放が限界に達した盾から光の帯が幾筋も、衣のようになびいて僕の身体を覆い尽くそう
とする。
「レムちゃぁんッッッ!!」
「はぁぁぁいッッッ!!」
「ごめん」
「え? え、あの、あのご主――」
魔力で堅く包み込まれた左腕を思いっきり扉に叩きつけた。
「ふぎゅッ」
幼児が履く音が出るサンダルのような声が頭上で漏れた次の瞬間、目の前を隠していた
扉は跡形もなく消し飛び、その向こうには暗黒の空間が続いていた。
「よし、行こう」
「ささ、行きましょう」
「ひっ、ひどいですぅぅッッ! お鼻が潰れちゃいますぅぅ!」
家に戻ったらしっかり慰めてあげようと心に誓いながら。
678 :
125:03/12/09 00:37 ID:LdgHM612
とにかくそこから先は暗かった。目を開いているはずなのに、何も見えない。蒼月の盾
が放つ淡い光でさえもまったく先を照らすことはできない。
「足元平気かなぁ」
全力で疾走しながらそんな心配をしていた。
「二人ともちゃんといるよね?」
「いますわよー」
「はぁい」
頭から何かが落ちた気配はなかったけど、二人の存在をちゃんと確かめておかないと
不安でしょうがなかった。
「安心した」
それからしばらく沈黙が続いたけど、一向に闇が晴れる気配はない。いい加減うんざり
し始めた時、さっき訊こうとしたことを思い出した。
「ねえトワちゃん。みんなの夢が閉じ込められてるなら、どうして――」
前触れもなくいきなり目が真っ白な世界に犯され、手で視界を覆って立ち止まった。
「これって」
「闇が消えたようですわ」
「目がぁ、目がぁぁ〜。ひぃぅぅ」
暗闇に慣れた瞳に、この光はあまりに強すぎた。視力の回復も遅かったけど、ようやく
数センチ先、数メートル先と徐々に見えてきた。
「うぅ……白い」
捉えることができる範囲は言葉どおり真っ白な空間だった。清潔すぎるほど、潔癖すぎ
るほどに。そしてここにあれがあるはずだと、なんとなく確信した。
「ごご、ご主人様ぁ! 前、前ぇ!」
先に視力が回復したのか、レムちゃんが頭のてっぺんで騒ぎ立てている。
「一体何……が――」
僕は、レムちゃんのように騒ぐことができなかった。ただ、目に飛び込んできたものに、
ただ、ただ釘付けになった。
巨大な、さっき砕いた扉より二回り、三回りはゆうに大きな、透明の卵形のカプセルの
ようなものの中に透明の液体と共に、何も身にまとっていない彼女が膝を抱え、美しい肢体
を折り曲げて浮いていた。
679 :
125:03/12/09 00:38 ID:LdgHM612
――ここにある無数の部屋には、一人ずつの夢が閉じ込められていますわ
トワちゃんの言葉が鮮明に甦る。
じゃあ、さっき、外にいた彼女は?
「この子は、やはり……」
予想が当たったような口ぶりをするトワちゃんの声が耳に届く。胸の動悸が激しくなる。
それじゃあ、僕がさっき見たのは――。
「来ちゃったんだ」
再び後ろから声をかけられて振り返った。視線の先には、赤い短髪の彼女がいた。胸元
にはオレンジに輝く紅玉が宙に浮いていた。
(――トワちゃんは、分かってたんだ)
一目見たときに、彼女のことを。そしてそこから感じる紅玉の気配を。そして、僕がここに
来ることを見越して、彼女がここで待っていたことを。
「……どうして、こんなことをしたの?」
僕の後ろで、まるで封印されているように拘束されている梨紅さんへの仕打ちが信じられず、
声が震えていた。
彼女は答えずに、梨紅さんと同じ瞳で僕を射抜いている。懇願するような声で、表情で、僕は
後ろで眠る女の子と同じ姿をしている彼女に呼びかけた。
「答えてよっっ! 原田さんッッッ!!!」
680 :
125:03/12/09 00:38 ID:LdgHM612
ここまでです。
埋め埋め
なんか旧スレにきてるーw
いいところで終わってるなぁ。
続きが気になるぞぉ!! “ヘ( ̄∇ ̄ )カモォーン♪
682 :
367:
更新ご苦労様です。
物語上、梨紗の比重があがっていて続きに期待。