西遊記のエロパロです。
お師匠様と一緒に旅をしてみませんか?
SAGE進行でお願いします。
2 :
名無しさん@ピンキー:03/08/09 00:35 ID:0xHYz4hA
に
とりあえず、三蔵、悟空、八戒、悟浄の四人で書いていこうと思います。
他の書き手さんもщ(゚Д゚щ)カモーン。
玄奘三蔵=20歳女。性格、二重人格。
悟空=18歳(見た目)男。性格、単純。
八戒=27歳(見た目)男。性格=多重人格。
悟浄=27歳(見た目)男。性格=難有り。
この四人で天竺目指して行きますので。
西遊記っていじりようによっては面白いと思うんだけどね。
夏目雅子の西遊記見てから再燃したし。
6 :
@瑠璃:03/08/09 22:11 ID:SADJTdcg
『悪童西遊記』
玄奘三蔵と名乗る一人の女。証文を手に山人の妖怪を引き連れて天竺なる場所を目指す。
「三蔵ちゃん、俺疲れてんだけど。自分だけ馬なんか乗ってないでさ」
「河童、ならお前が乗るか?」
「どうせなら俺は三蔵ちゃんに乗りたいんだけど」
僧衣を身に纏い、白馬に乗るのは玄奘三蔵。頭巾の中に隠した栗色の髪が僅かばかりこぼれている。
「悟浄、三蔵にだったら俺も乗りてぇ」
「ガキが何言ってんだよ」
喚く二人を取り成すのは猪八戒。
「三蔵、だったらボクならいい?」
「お前そういえば豚……」
「失礼な女性だね。あなた……豚じゃねぇよ。ボクは三代目」
「大差無い。まったくこんな厄介なもの四匹もつれて遠方に出むくことになるなんて……」
こめかみを押しながら三蔵はため息をつく。
はれて玄奘三蔵を名乗りたいのならばこの三人を引き連れて天竺に行きなさい。
それが課せられた使命。
建前は経文のためだけれども、その裏の言葉はまだ誰にも言えないまま。
「言葉が崩れてるぞ、八戒」
「最近人食ってないから。食わせてよ、三蔵」
「猿と河童と順番決めとけ。疲れてるから一人限定で頼む」
幾重にも重なった水晶の数珠。
この水晶が全て変わる頃、天竺に辿りつくと言われた。
7 :
@瑠璃:03/08/09 22:11 ID:SADJTdcg
(面倒なことを……お師匠様は何をお考えですか……)
女人禁制のはずがどういうことか三蔵は寺院で育ってきた。
元は江流童子。川流れの子供である。
早い話が捨て子を拾い、不憫に思った一人の僧侶が育ててきたのだ。
その子の法力が強かったのも幸いして僧侶名として「玄奘三蔵」を習得もした。
「おい、そこの街で休んでいくぞ」
「三蔵ちゃん、俺でいい?」
「河童か……どうやって決めたんだ?」
「くじ引き。ラッキーだわ、俺三蔵ちゃんに乗りたくってしょうが無かったからさ」
沙悟浄は鼻歌混じりに三蔵の肩を抱いた。
「なれなれしく触るな」
「生きてるものにはみな平等にが僧侶のモットーなんじゃねぇの?」
指で悟浄の額をぱちんと打つ。
「お前ら三人は外す。他には優しいつもりだが」
袈裟を止める金具が夕日を受けて赤く光る。
腰の辺りで留められた布地がその括れを露にしていた。
「明日の朝の出発までに適当に散っていいぞ。集合はここで」
沈む夕日と同じ赤い瞳。
「んじゃ俺は三蔵ちゃんと一緒に行ってくっから」
敗者二人に悟浄はひらひらと手を振った。
後ろから手を伸ばして三蔵の頭巾を外す。
「何をする……河童」
「河童じゃなくて悟浄って呼んで。三蔵ちゃん」
短く切られた栗色の髪。耳には小さな金輪が下がっている。
目尻に施された紅と白い肌。
8 :
@瑠璃:03/08/09 22:12 ID:SADJTdcg
「だぁってさ、そんなモン被ってたら俺の三蔵ちゃんが自慢できないじゃん」
「誰が何時、貴様の所有物になった?」
「坊主にしとくの勿体無いな……三蔵」
「さっさと宿を決めて来い。私は疲れてるんだ」
こきこきと首を鳴らす三蔵を見ながら悟浄は当たり障りの無い宿を決めに走る。
一度それようの宿に連れ込んだ時は結界と証文読経の二連打を受けた。
腐っても坊主。その法力は十分妖怪相手には効果があるのだ。
(あーゆーとこ、女なんだろうな。ヤれりゃ場所なんてどうだっていいじゃねぇか)
煙管片手に悟浄は三蔵の手を取った。
「んじゃ、行きましょうか。三蔵ちゃん」
簡素な作りの室内。散らばった僧衣。
「三蔵の目って……やばい色してるよな」
襦袢を脱がせることにも慣れた手つき。
「真っ赤でさ……まるで血みてぇ……」
形の良い乳房に沈む指。軽く甘噛すると細い肢体がかすかに震えた。
舌先で舐め上げて、腰に手を落とす。
「生まれつきだ……この目は……」
悟浄の額に触れる指先。薄い爪がちりりと傷をつけていく。
9 :
@瑠璃:03/08/09 22:12 ID:SADJTdcg
その指を取って軽く噛み、程よく締まった腹筋を滑らせて己の下腹に誘導する。
「俺のも触って」
「……嫌だ。この間十分やっただろ」
幸か不幸かここ最近の三蔵の相手はこの沙悟浄。
「もうちっと可愛い言葉使いってやつがあってもいーんじゃねぇの?」
「それを私に期待するほうが無駄だな、河童」
皮肉めいた笑いは、いつもの癖。
薄く笑った唇に噛み付いてそのまま言葉を封じた。
「……っは……」
離れるのを惜しむように糸を引き、それに答えるようにもう一度、深く重ねる。
首筋に痕を付けて、鎖骨を舐めると小さく声が上がった。
「坊主にしとくの、勿体無ぇ……」
肩から胸へ。赤い軌跡を残して悟浄の唇が下がっていく。
「…っあ!」
指先が入り口を摩り、ちゅぷっと音を立てて入り込む。
ぬめりと締め付け。女の感覚と身体。
中程まで沈めて押し上げるとぎゅっと自分の首に抱きついてくる。
「その気になってきた?三蔵」
「……ぅ……ああっ!!」
根元まで沈めて、引っ掻き回すように蠢かせる。
ぬるぬるとした愛液が指を伝って、敷布に堕ちていく。
親指でその上の芽を擦ると締め付けが一層強くなる。
「あっ!!……んんっ!!」
「準備よしって感じ……っと」
10 :
@瑠璃:03/08/09 22:13 ID:SADJTdcg
ずるりと指を抜き、三蔵の身体を抱いて向かい合わせの対面座位に変える。
「やっぱ顔見ながらやりたいからさ」
翠の瞳。深緑の髪と黄色の肌。
赤い目。金栗色の髪。真白の肌。
「……!!やぁっ!!」
腰を掴んで一気に沈めさせる。逃げようとする身体を抱いて沈めて、より深くまで。
「…は……ご…じょ……!っ……」
悟浄の背に手を回して、縋るように抱きつく。
「……俺(バケモノ)に縋る坊主ってのもさ……」
首筋を舐めて、耳に息を掛ける。
「あ!!あんっっ!!」
ちゅっと乳首を噛んで、吸い上げ、細い背中を抱いた。
「……三蔵……左手だけは勘弁して……俺…マジで死んじまうから……」
三蔵の左腕は絹布で幾重にも巻かれ、枡で封印するかのよう。
「……今日は……隠してる……」
荒い息と染まった頬。
「そーゆー顔……可愛いくてたまんねぇ……」
唇をぺろりと舐める。伸びた髪が三蔵の頬を掠め、くすぐったいのかその髪を軽く引く。
「……鬱陶しい……切れ……」
「あーん?好きなくせに」
締め付けてくる感覚と膣内の熱さ。
細い腰を両手で掴んで、何度も打ち付けさせた。
「ああ!!やっ……!…ご…じょ…う……っ……!」
細い足首を掴んで、膝を折らせる。
11 :
@瑠璃:03/08/09 22:13 ID:SADJTdcg
「!!!」
無理に屈ませられた身体が悲鳴を上げた。
「悪ぃ……ちょっと痛かったかも……」
「分かったら……足を離してっ!!!」
ぎりぎりと掴まれた足首。左だけ、小指が存在しない。
そこを責めれば三蔵は簡単に陥落する。
まるで指が無いことを見せたくないとばかりに。
「……あぁ……や…っ……!!」
「……三蔵……イキそう?」
繋がった部分から湿った音がこぼれる。
「三蔵の中……ぬるっとしてて気持ちいい……」
「……言うなっ……」
「何で……本当のことじゃん……」
汗で濡れた手。
纏わり付く女の香りは妖怪である自分を惹きつけて離さない。
「淫乱坊主ってのも……ありだよな……三蔵……」
絡みつく脚。
濡れた腰を抱けば自我なんて一瞬で消えていく。
「〜〜〜〜〜っっ!!!!」
一際強く打ち付けられて三蔵の身体が震えて崩れた。
「……っ……江流っ……」
熱さときつさに全て奪われて、その細い身体の上にどさりと身体を投げ出した。
12 :
@瑠璃:03/08/09 22:13 ID:SADJTdcg
薄暗がりの中、煙管の中の火がほんのりと灯る。
「坊主は普通そんなもんやらねーんじゃねぇの?」
「生憎だが、坊主では無く僧侶なもんでね」
「まぁ、確かに。でなきゃ俺とはやんねーよな」
身体を起こした三蔵の腰を抱いて、腹部を覆う敷布に顔を埋める。
「落とすぞ……」
「まぁた、俺の事好きなくせにィ」
「阿保河童。川に帰ったらどうだ?」
柔らかい腹に頬をすり寄せる。
「三蔵さ、よくあの寺で無事だったね」
「無事?」
「だってさ、俺と初めてやったとき、三蔵ちゃん処女だったじゃん」
悟浄の髪をくしゃくしゃと撫で回し、額をぱちんと弾いた。
「坊主は女犯を禁ず……だからな。それでだろ?」
煙を吐き出し、三蔵は窓の外を見た。
四角い枠に囲まれた月。
「それよりかなんでオンナであるあんたが『玄奘三蔵』なわけ?」
「……御仏の思し召し」
「そんな物騒なもん腕に刻むのもミホトケって奴の為?」
絹越しに悟浄の指が三蔵の左腕を摩った。
肩から肘に掛けて刻まれた破邪の呪文。
弱い妖怪ならば三蔵に触れるだけで消滅させられてしまう。
「俺、三蔵が死んだら左腕は喰わないでおこっと」
「お前が死んだら鳥葬にしてやるよ」
けらけらと笑う声。
(こーゆー顔してると三蔵も可愛いんだけどな)
「ありがたいキョウモンってやつは上げてくれないわけ?」
「そんなにいいもんじゃない。あんなもの……」
赤い瞳が仄かに憂う。
その目が欲しいから、離れられない。
13 :
@瑠璃:03/08/09 22:14 ID:SADJTdcg
「三蔵食ったら……美味いだろうな」
「妖怪が……」
高僧を食せば不老不死になるという。
それは誇張しすぎだが能力は格段に上がり、妖気も上昇するのは事実だ。
そして、今傍らに居るこの女があの『玄奘三蔵』である。
僧侶の中でも最高位に属する一人。
「あーでもさ、三蔵ちゃんとやった後って調子イイんだよね。やっぱそういうのもありなわけ?」
「おい……河童……」
「三蔵ちゃんがオンナノコでよかったぁ……でなきゃこんないいことできな…!!」
ごつんと肘で打たれて悟浄は頭を抱えた。
「何すんだよ糞坊主!!」
「今度言ったら向こう三ヶ月やらせない。河童、私はデリカシーの無いやつは嫌いだと何度も言ったぞ」
「それだけは御勘弁。俺が悪かったです、謝ります」
細く括れた腰に抱きつくと、そっと頭を抱かれた。
少しだけ笑った目は、慈悲深く、まさに玄奘三蔵と名乗るに相応しい。
「三蔵ちゃん、もっかいしよっか」
「断る。河童は河童らしく水でも飲んでろ」
「干上がったら俺死んじゃうよ?だから三蔵ちゃんのを飲ませて」
あがらう腕を押さえつけて。
「俺に死なれたら困るでしょ?三蔵ちゃん……カヨワイんだから……」
武器を持たない三蔵を全面的に悟浄は守る陣営が多かった。
高名なる玄奘三蔵を狙う妖怪は止まることを知らない。
僧侶としては本来成るべきではない女。
14 :
@瑠璃:03/08/09 22:15 ID:SADJTdcg
その女が正当なる『玄奘三蔵』を名乗り、天竺を目指すのだ。
しかも、従えたのは人ならざる者。
三人の美丈夫を引き連れた美貌の女僧はその顔を隠しながら進み行く。
「朝まで長いんだからさ……」
「……起きたら腰が立たないとか言うなよ……」
「望むところ。三蔵ちゃんったら大胆」
柔らかい胸に沈ませて。
夢を見させて、あなたの夢を。
これより先、彼女が天竺に着くのはまた別のお話。
(・∀・)イイ!!
良スレage・・・ない!大事にしよう
16 :
@瑠璃:03/08/10 17:16 ID:h9ALpW/x
>15
ありがと。完全オリジナルですが、お付き合い願えると嬉しいです。
17 :
@瑠璃:03/08/11 02:48 ID:0AFDtINy
UPは結構遅いと思います。
なので自分で適度に保守しておかなきゃ。
次は猿と三蔵の話です。
保守
保守。三蔵に恥ずかしいポーズを取らせてホスィ
20 :
@瑠璃:03/08/11 08:19 ID:mhfYhMWO
うお、人が着てる(゚∀゚)
了解。猿は結構なエロガキなので。
藻いらがかいてエロくなるかは別だけどね。
21 :
@瑠璃:03/08/11 19:13 ID:IVW64S9y
だらだらと触手ものをかいとります。
三蔵、結構苦悩の人だな……
間もなく48時間か・・・微妙だね
一応保守
書き始めたばかりなのにあれだけど、
キャラの書き分けについて、かなり原作に助けてもらってる感じ
>>4が生きてないような・・・スマソ
23 :
@瑠璃:03/08/11 23:37 ID:IVW64S9y
>22、そうかも。
ああ48時間の掟か……
追々いじりたいけれども、中々上手くもいかないというか。
河童ってそこまでエロ河童でしたっけか。
もう一度読み直すか……うーん。
むしろこの過疎地に人が来てる事の方が驚いてます。
>>@瑠璃
コピペじゃないよね?オリジナルだよね?
じゃあ2ch投下開始ですよね?
乙ぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
25 :
@瑠璃:03/08/11 23:49 ID:IVW64S9y
コピペじゃないよ。今書いてる。
48時間の掟と30レスでDAT回避だよね?
原典今手元に無いから、ばらばらだけども書けるとこまで書きまっせ!
26 :
22:03/08/11 23:55 ID:ayQDnO6T
>>@瑠璃
>河童ってそこまでエロ河童でしたっけか。
そうじゃなくて、特に意識しなくてキャラを書き分けしなくても
原作が有名だから、読者は努力することなく区別がつくと言う事でつ
・・・って
>>24Σ(゚Д゚)作者って有名人なの!?エラソーなこと言ってスマソ
27 :
@瑠璃:03/08/12 00:04 ID:w6QYbcBT
>26
了解。それはそれで楽。
有名でもないよ。別スレでコテ使ってるだけ。
@瑠璃は思いつきでここで。
28 :
@瑠璃:03/08/12 00:33 ID:w6QYbcBT
DAT回避のために投下します。
書きかけですが。
29 :
@瑠璃:03/08/12 00:33 ID:w6QYbcBT
『悪童西遊記』
「悟浄、この先ってさぁ、牛魔王ってのが居るんだろ?」
如意棒を肩に乗せ、悟空が呟く。
「綺麗なねーちゃんだといいよな」
それに答えるのは玄奘三蔵。煙管を咥えて、こつんと悟空の頭を小突いた。
「馬鹿猿。魔王ってんだから男に決まってんだろ」
「なんだ。男かよ。三蔵みたいなのだったら良かったのに」
口を尖らせて、悟空は空を仰ぐ。
「三蔵、そろそろ暗くなってきましたね。どこかに宿でも取りますか?」
「こんな山ん中にそんな上等なものがあるとも思えないけどな」
「俺は別に外でやるのもOKよ。背中痛いとかだったら三蔵ちゃんが俺に乗ればいいだけ」
今度は杓丈で悟浄の頭を数度叩く。
じゃらじゃらと封魔の印が刻まれたそれは彼らにとっては忌むべきものだ。
「痛っっっテェ!!!三蔵ちゃんおれそっちの趣味は無いのよ」
「おい、お前らこの河童川に返して来い」
頭上の冠を下ろすと、さらさらと金栗の髪が泳ぐ。
「この先に寺院があるはずですよ。高名なる三蔵法師ならば宿なら容易いのではないのですか?」
「まぁハチの言うことで当たりだな。野宿は避けたいし」
「まぁな三蔵ちゃんの身体に痕つけていいのは俺だけだしィ」
「悟浄、今のは聞き捨てなりませんね。三蔵は皆の共有財産ですよ」
ばちばちと目線で火花を散らしている二人を無視して、三蔵は前に進む。
日も沈みかけ、あたりには夜の帳が下りつつあった。
「虫に刺されんのも嫌だからな。害虫二匹は置いてくか」
「ヤッリィ!んじゃ三蔵今日は俺とね」
褐色の肌に金の髪。
気まぐれで封印を解いた妖怪は自分に付き従う。
想像した以上に、騒がしい未来。
「悟空、そろそろあいつら止めて来い。どっちかが死ぬぞ」
「相討ちだったらおもしれーのに」
30 :
@瑠璃:03/08/12 00:33 ID:w6QYbcBT
笑うとかすかに見える牙。沈む夕日が影を伸ばした。
八戒の言うとおりに少し進んだところに小さな寺院はあった。
辺境の地によもや玄奘三蔵が宿を求めるとは誰も予想しなかったことらしく、僧侶たちは挙って彼女を取り囲んだ。
「御仏のお導き……三蔵様がこのような地においでなさるとは」
「こちらこそ、お心遣いいたみいります」
深々と頭を下げる。
その姿は普段目にする三蔵のそれとはまったく別で、まさに高僧とでも言うべきだった。
「三蔵って演技派だよな。ハチ」
「まったくですね。あの人僧侶やめても食べていけますよ」
ひそひそと耳打ちし合い、三蔵の後に付く。
「何にしろ、虫がいないだけでもいいな」
肩に掛かった袈裟を外し、杓丈を壁に掛ける。
「お前らは別室。久々にゆっくり寝かせてもらうぞ」
非難轟々の三人を部屋から追い出し、三蔵は一枚ずつ法衣を落としていく。
(しかし、疲れた……あいつら体力だけは無尽蔵だな……)
疲れた身体は暖かい湯船に沈めた。
(あいつらと一緒だとゆっくり風呂にも入れないからな……)
借り物の夜着に身を包む。
形の良い乳房と、括れた腰。結んだ帯と張り付く布地がその線をあらわにする。
女犯を禁ず。
それが僧侶たるものに課せられた戒律の一つ。
「さ、三蔵様!?」
「なんだ?私に何か付いてるか?」
まるで目のやり場に困るとばかりに若い僧侶は目を伏せる。
はだけた裾からはちらりと白い腿が覗く。
「その……」
「ウブだねぇ〜、まぁそそるっちゃそそる格好だけどな」
「俺はこーゆーのも好きだよ。裸よりか綺麗じゃん」
「誘いの美学もありますからねぇ」
31 :
@瑠璃:03/08/12 00:34 ID:w6QYbcBT
八戒が三蔵の手に愛用の煙管を手渡す。
「忘れ物ですよ、三蔵」
「お前のとこに在ったのか」
軽く咥えると、若い僧侶は唖然とした顔で三蔵と三人を見つめた。
「さ、三蔵様。僧侶は……」
「禁止事項いっぱいあったような気もするけど……三大禁欲は守ってるから」
「ハチ、三大禁欲って何?」
悟空が隣の八戒を見上げた。少しばかし背が足りないのを彼は気にしたりもする。
「殺さず、肉を食わず、女犯を禁ず……ですよね、三蔵」
煙を吐き出し小さくうなずく。
「それって生きてくのがつまんねーっておもわねぇのか?」
「俺だったら耐えらんねぇな……目の前に三蔵ちゃん居るのに指咥えてろってものさぁ」
「でも、三蔵妖怪は殺しまくってんじゃん。肉だって食ってるし」
「まぁ、性別的に女関係はシロだよな……シロだと思いたい」
「まぁ、クロならそれはそれで面白いじゃないですか」
蚊帳の外で三蔵はため息をついた。
「すまんな、馬鹿しかいなくて」
「いえ……その……」
「?」
「袷を……」
真っ赤になるのを見ながら三蔵はやれやれと首を振った。
32 :
@瑠璃:03/08/12 01:17 ID:w6QYbcBT
今宵の月は下弦。妖怪たちの好む色。
足元に転がる酒瓶と、だらりと投げ出された身体。
(なんか……喉痛いな……飲みすぎたか……)
当然禁酒も言い渡されている僧院に酒などあるわけも無く、持参していた老酒の紛い物を一人で呷った。
酔いが染み渡る感触は心地良く、窓の外の月をぼんやりと見上げて。
だらけた身体を起こして、水を求めて部屋を出る。
板張りの回廊の感触が素足に冷たい。
(………?何だ……)
流れてくる冷気はゆっくりと妖気に変わる。
「!!」
おもむろに現れた白い塊が三蔵の身体を拘束していく。
(しまった!!私としたことが……!!)
酒のせいもあって何も持たずに丸腰で出歩いたことを後悔した。
塊からは無数の触手が伸びて三蔵の夜着を落としていく。
筆のように細いものからは繊毛が伸び、首筋を這い回り、まるで感触を楽しむかのように絡みつく。
「〜〜〜〜〜っ!!!」
経文を口にしようとした瞬間、口中に一際太いものが入り込み声すら出ない。
(っくしょ……役立たずの馬鹿共っ!!!)
数本の触手は乳房を揉むように這い回りながら締め上げる。
腿に絡み、ぬるりと内側を這い上がり、内部へと入り込んでくる。
(何で……こんなにバケモンにばっかり好かれるんだよっ!!)
湿った感触と共に進入され、身体が蠢く。
「っ……!!……」
押し上げられるように動き回り、先割れした細い繊毛はその周辺を舐めるように撫でていく。
「……っ……ぅ……」
腕の封印を外そうにも指まで拘束されて身動きが取れない。
びくびくと反応するのを楽しむかのように濡れた触手は後ろへの侵入も開始していく。
「!!!!」
ぶんぶんと頭を振って拒絶しようとしても、相手は人間ではない。
肉ではなく、三蔵の僧侶としての気を吸い取るのが目的なのだ。
一番手っ取り早い方法。妖怪の思考は単純なことが多い。
33 :
@瑠璃:03/08/12 01:17 ID:w6QYbcBT
薄皮一枚通じて、前後を犯されながら何とかして口中の触手を外そうとする。
「…っ……ぁ!!」
こぼれるのは小さな悲鳴だけ。
闇の中、月だけが赤黒く照らしている。
「おサルちゃん、こんな時間にどこ行くの?」
扉に手をかけようとしたところで悟浄に阻まれる。
「悟浄こそなんでこんなとこに居るんだよ」
「俺は愛しの三蔵ちゃんが一人寝は寂しーかなと思って」
「気が合うな。俺もだよ」
ぽきぽきと指を鳴らす。大抵こういうときは力の勝負だ。
「なぁ、いっそ三人ってのはどうだ?多分あいつ酒飲んでると思うから行けるかも知れねぇぞ」
「それも……いいかも」
興味深げに悟空も賛同。
「どうせなら僕も入れてくれませんか?」
同じ穴の狢。同属の本能。
もっと単純に女が欲しいという欲求。
「さーんぞ……っていないし」
「まさか若い坊主漁りにいったってのはナシ……だよな」
「いくら三蔵でもそこまでは無いと思いますよ」
何も持たずに、姿だけが無い。
「……違う、三蔵の気配がする。あっちだ」
回廊の奥深くを悟空が指差す。
その方向に進みながら三人はそれぞれの愛用の武器を手にした。
34 :
@瑠璃:03/08/12 01:18 ID:w6QYbcBT
「わーお、本番中?」
「これまた……」
「ムカツクね」
何度も犯されてぐったりとした身体を、触手は休むことなく攻め立てる。
「俺の開発した三蔵ちゃんに」
鎖鎌を軽く振りながら悟浄。
「順番からいったら今夜は俺のだったんだけどな、三蔵」
如意棒を肩に乗せて悟空。
「開発は僕も加担してると自負してますけど?」
長剣を鞘から取り出して八戒。
『下等生物が俺のオンナにさわんじゃねぇよ!!』
三人同時に飛び出し、次々に触手をなぎ払っていく。
切った端から再び生えて三蔵の身体に絡み付こうとする。
「しつこいのは三蔵ちゃん、嫌いなのよ」
飛び散る体液を拭いながら、手を伸ばしてずるりと引き抜く。
「悟空!!!」
後ろで応戦していた悟空に三蔵を投げ渡す。
「こいつは俺とハチでなんとかする!!お前は三蔵を風呂にでもぶち込んで来い!!」
「了解。んじゃ行きますか」
半分意識の無い身体を抱えて、身軽に触手の群れをかわしていく。
その姿を見送ると二人は陣を取り直した。
「人のもんに手ぇ出したときってのは大概オシオキが待ってんだよな」
「目には目を。三蔵の場合でしたら……」
「まぁ、一言で終わるだろうな」
男二人、力では負けない。
『さっさと死ね』
35 :
@瑠璃:03/08/12 01:18 ID:w6QYbcBT
「三蔵、大丈夫か?」
「……気持ち悪い……」
口元を押さえて、咳き込む。どろりとした白濁液がこぼれた。
ぼたぼたと吐き出しす背中を摩ると小さく『すまない』と呟かれる。
「怪我とかしてないか?」
「それは大丈夫だ……食われる前にお前らがきたから」
手を伸ばして、少し端の切れた唇にちゅっ…と重ねた。
「……まっず……同属の味がする」
「そういやお前も妖怪だったな……」
僧衣を身に纏い、左腕の絹地を解く。
「あれは借り物だ。本体は別にあるだろ。ここいらは昔から百鬼の出る場所だからな」
夜露の散った庭先の小さな石を割ると古びた髑髏が一つ。
ゆらゆらと立ち上り、人の形を成していく。
「悟空、とりあえず守ってくれ」
「了解。やっぱオンナ守ってこそのオトコだよな〜」
小さく印を結んで、経文を口にする。
(消えやがれ……下衆が……)
突き出した左手が魂を砕く。
「任務完了。戻って寝るぞ」
「三蔵、待って」
36 :
@瑠璃:03/08/12 01:19 ID:w6QYbcBT
翌朝、寺院を跡にしようとして一行は和尚に呼び止められた。
「また機会がございましたら……」
「おい、ジジイ……自分の寺にバケモン宿してるのもわかんねぇ位もうろくしたか?
まさか私が来るまで待っていたとかぬかすなよ。僧侶ならそれなりの仕事位しろ」
振り返ることなく声だけで返す。
「……………」
「欲しけりゃ三蔵の称号くらいくれてやる。お前らが三蔵として成り得るならな」
「三蔵ちゃん、きびしい。でも俺きついの好きよ」
まだ少し濡れた道を四人は進んでいく。
「しっかし昨日は中々いいもん見させてもっらちゃった」
「堪能できたといえばできましたらね」
わいわいと夕べの三蔵の痴態をネタに悟浄と八戒は盛り上がる。
「おい、悟空」
「ん?」
「あの馬鹿二匹、どっかに捨ててこい」
まだまだ道は遠く。
37 :
@瑠璃:03/08/12 01:20 ID:w6QYbcBT
とりあえず第二話?
これで30レスいったから、DATは回避になるはず。
あとは適度の書き込みか……過疎地にも人がいた事が驚き。
原典借りてこよう。てきとーにかいちゃいかんね。
38 :
名無しさん@ピンキー:03/08/14 02:31 ID:A1mWlL+M
応援あげ
39 :
@瑠璃:03/08/15 11:10 ID:ZPelEvC9
>38
ようこそ過疎地へ。中々書けないけども、よろしく。
40 :
山崎 渉:03/08/15 16:30 ID:7WSqfyM8
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
41 :
@瑠璃:03/08/17 10:35 ID:Ssq36Z78
保守
42 :
@瑠璃:03/08/18 17:46 ID:G9atBpe1
えーと、某スレで投下できなくなった話、ここつかってもよろし?
同じ中国もの何だけどさ。
ここ、過疎スレだからいいかな〜とも。いや、西遊記も書きたいけども、両方書きたいから。
ぜひ見たい!
44 :
@瑠璃:03/08/19 05:06 ID:sH0QF02V
いいでしょうかねぇ。ただ、今のところエチシーン無いんで、出てきたら持ち込みます。
なんかねぇ、たまーにいきなりエロいの書きたくなりませんか?
わしだけか……いや、所詮わしのなんで対してエロくもないが。
三蔵さんもちくちくかいとります。
煮詰まり中。書けない時は書けないようです。
こんなんで保守。
アソボット戦記五九に萌えなんですが、こちらで何とかなりませんか(*´Д`)ハァハァ
アソボット詳しくないんですよね。う〜ん。
今度きちんと読んでみます。どうにもならんかったらごめん。
でも、あそこの三蔵君もイイと思う自分。
三蔵マニアか。
(´ω`)ノ ガンガッテ
さんきゅ、がんがってみます。
いい感じに下がってるんでできればこのまま下げ続けておきましょう。
最終書き込み時間なので、このままでもスレは十分機能しますんで。
つまり保守ですよ
西遊記書いてます。えーと@瑠璃をそのうちに元のハンドルに変えます。
どーせばれてんだしね。
ようやく原典を借りてきましたが、あんな話だったんだと再読。
アソボットも読んでます。
努力家だなガンガレ。・゚・(ノ∀`)・゚・。
>53
ありがとね。西遊記と玄奘異聞も読んでるんだけども
読めば読むほど三蔵さんが分らない。英雄も見てきたから脳内はバッチコーイなんだけどな。
とりあえず半コテに戻します。このまま下げ続けていきましょう。
いや、おながいします。超sage進行で……
トリップつきの人が。
さて、玄奘記読めば高僧の欠片も無くなっていくのは如何に。
中国ものは好きだからあれなんだけども。
金、銀、と三蔵一行での乱交ものが書きたい今日この頃。
書くとは思うけれども。
西遊記関係ばかりじゃなくてエロ小説も読んでみたらどうだろう
ちょっと読みづらい
更新待ってます
下がり過ぎなのでageるのは駄目かしら?
向上心があって(・∀・)イイ!
これからも頑張ってください。
一番下まで言ったらあげますか?
むしろここに人が着てることが藻いらはビクーリ。
英字をカタカナにして再会と再開。
エロ小説読み漁ってきました。ネットですが。いやぁ……奥深い。
さくさくはかけないけれども、がんばりやす。
中国ものはやっぱりすきなんだ……水滸伝も三国志も封神演義録もどれも好きな藻いら。
読みやすいのが書ける様にがんばってみるよ。
向上心ある?ありがとね。
何言われてもやっぱり書くことが好きみたい。
応援sage
面白い!エロいし萌えます。
妖怪で旅ものというと、なんかどろろ思い出すな。
いやどちらかというと「ぼくの西遊記」かな?
あの三蔵法師は男なのに非常に色っぽかった…(;´Д`)ハァハァ
あー、どろろ!!なつかしいところを(゚∀゚)
中華物好きでアジア系の妖怪はなんかエロい感じが好きです。
今続き書いてるんですがようやくスランプ?脱出できまして。
むしろここに人が居ることがわし的にはびっくりです。
「ぼくの西遊記」ってのがすげぇ気になるんですが……詳細キボン。
同じく手塚治虫です。「ぼくの孫悟空」でしたね、失礼。
三蔵法師が男なのに非常に色っぽい。全集に入ってます。
色っぽい三蔵法師というと、夏目雅子もよかった。
なつかしいな〜
保守
保守サンクスです。
半分までかいてるんでそのうち持ってきます。
夏目雅子の西遊記のDVDであるんですかね?
あったら即買しそうだ。いや、配役もなにもかもが大好きなんですよ。
何にしろ、三蔵法師ってのはある一種美貌の果実のような御方なんでしょうね。
別嬪さんばんざい。
保守。
早めに書け、自分。といってみる
『悪童西遊記』
◆三蔵と八戒の秘密の話◆
珍しく三蔵が大人しい。
大人しいというよりは本来の姿である僧侶たる姿勢を保っているのだ。
手には九環の錫杖。凛とした姿。
「三蔵、何か変なもの喰った?この前の百足野郎とか?」
「アホ、お前ぐらいだ。あんなもん喰えるのは」
妖怪は雑食である。飢えをしのげるのならば例え同胞であっても平気で食らう。
先日も襲い掛かってきた妖怪を倒すついでに胃に納めたのは悟空。
「さーんぞ、なんで無視すんの?」
ぺたぺたと触りながら、視線を合わせる。
赤い瞳が『静かにしていろ』と返してきた。
「わーった。三蔵に従う」
「そんじゃ俺もそうしますか」
「じゃ、僕も静かにしましょう」
世間的に見れば外見だけならば十分高僧として通じるその姿。
田舎町ならなおさらに人だかりができる。
「八戒」
「どうかなさいましたか?玄奘三蔵法師」
八戒は三人の中では一番の演技派。本物の従者よろしく三蔵を敬う素振りをする。
心中はこの三人、欠片も思わない。
自分は自分だけのもの。誰にも何にも縛られない。
三蔵は三人に持ちかけた。「自分を守り天竺まで行くならば経典を収めた後、この身は食わせてやる」と。
不老長寿には興味は無い。ただ、妖怪である自分たちに対して恐怖もたずに触れてきたニンゲン。
世界中の禁忌を集めた存在しないはずのニンゲン。
それが玄奘三蔵。
「商談を持ちかけられた。バケモノ三匹退治すれば暫く日銭には困らん。さて、どうしようか?」
「あなたが僕にそれを持ちかける意味は?」
「簡単だ。お前が一番適任だから。餌が要るならば私がなろう」
「ならば商談は成立でいいのでは?」
外見は人間と同等の美丈夫三人。纏め上げれるのは恐らくこの女僧ただ一人だけであろう。
妖怪でなくとも、噂に聞く三蔵法師ならば一度くらいは味を見たい。
下卑た男の視線を浴びながら三蔵は事も無く進む。
「そういうわけで、僕たちは別行動させていただきますよ。御指名を戴いたので」
「ハチばっかりずるい。俺は?」
「三蔵ちゃん、俺ってそんなに不甲斐ないオトコに見える?」
さらさらと封魔の呪府を書いてぺたりと額に貼り付ける。
「あっぢぃっ!!!!」
「痛ェっ!!!!デコが焼けるっ!!!」
弾くように振り払って二人は三蔵を睨んだ。
「ハチにはこの札が効かない。だから、今回はハチを選んだ」
「呪府の乱舞になれば大火傷ですよ?大火傷。蒙古班どころじゃありませんよ」
八戒はその名の通り、八つの大罪を犯した妖怪。
その封印を解いたのがこの女。再封印しようとして八戒は三蔵にこう持ちかけた。
『天竺までの道のり、お供しましょう。その代わり封印の呪府は捨て置いてくれ』と。
知に長けた者が欲しかったところ。三蔵は八戒を従者に加えた。
頼まれた相手は呪府と剣舞で簡単に倒すことが出来た。
血生臭い身体を引きずりながら宿へと身を移す。
「ハチ、ご苦労だったな」
「いいえ、今からお相手してもらえることを考えればあれくらいどーとも思いませんよ」
小さな顎を取って舌を絡める
「血の味がする……口の中切ったんですか?」
「ちょっと……人間の身体はひ弱だって思うか?」
血の滲んだ唇の端をぺろりと舐める。甘い甘い、本能が欲しがる味がした。
「……ん……っ……」
唇を合わせたまま、壁に押し付けて法衣を脱がせていく。
紫紺の袈裟は赤黒く染まり、その下の襦袢に大輪の華のように染みを作っていた。
ちゅっ…と唇が離れると二人を糸が繋いだ。
「ここで……?」
「たまには。ダメですか?」
「できればあっちがいい」
寝台を指す。どのみち抱かれるならば身体に負担の来ないほうを選びたかった。
どさりと下ろされて襦袢を剥ぎ取られる。鎖骨をきりりと噛まれて声が上がった。
「っは……」
ぴちゃりと舌が乳房を舐め上げていく。柔らかく包むように揉みながら乳首を甘く噛むと
その度に嬌声が上がる。
「……そうしてると僧侶には見えませんね……ましてや玄奘三蔵なんて……」
「……お前もあの八戒には見えないぞ……そうしてると……」
赤い瞳と対を成すような碧眼。
引き寄せて唇をかみ合うような接吻をしながら指先を下げていく。
薄い茂みの中に指を滑らせればぬるぬるとした女特有の体液が絡みついてくる。
入り口を焦らしながら擦り上げると、腰つきが妖しく誘う。
「あなたを食べれば……また僕の名前は変わりますかね?」
じゅくじゅくと濡れて曇った音が耳を刺す。内側からの熱さに三蔵は身を捩った。
三人の中で最も性質の悪い抱き方をするのがこの男。
焦らして、泣かせて、苛めるのが好みなのだ。
「あ……っ……う……」
「あなたは……僕たちに近い気がする……その眼、人間がそんな色の眼で産まれてくるなんて聞いたことも無い……」
濡れた眼は熟れた月のような紅色。
「だったら……どうするつもりだ……?」
「どうもしませんよ。あなたが何であれ三蔵であることには変わらないんですから」
この言葉に左腕で顔を覆う。
八戒が決して触れることの出来ない左腕で。
「……っ……」
自分が何であろうと自分は自分だ。
そう言い聞かせてきた。
川流れの子供「江流童子」と名付けられ、揶揄されても師匠の下黙々と修行を積んできた。
誰にも負けない。そう決めて並居る男たちよりも武芸の腕を高めた。
女だから等と言われないように自分の身体を痛めつけてまで奪取したのがこの「玄奘三蔵」の法名。
それでも、肉体は性には逆らえず乳房は膨らみ、経血は否応無しに訪れる。
その度に蔵の奥に篭り息を潜めた。
始めて見た内側から流れる血の色はどこと無く黒く、そして鮮やか過ぎる赤で。
自分が女の身体であることを自覚させた。
「……ハチ、私は私だと思うか?」
ずるり、と指の引き抜かれる感覚。
皮肉にも女であることの性を開花させたのはこの男だった。
僧侶を陥落させ、妖僧に変えるかのように彼女の色香は艶やかになっていく。
「僕が何を言ったって、あなたが信じるのはあなただけでしょう?三蔵」
不遜な態度で前を見つめる。
光の下で誰にも臆することなく自分の味方は自分だけと。
「気まぐれでも何でも、あなたが僕をあそこから出してくれた。だから僕はあなたの傍に居る」
巻かれた包帯を口で外して、腕に口付けてくる。
「!!」
唇の焼ける感覚に眉を寄せても、止めずにそこに赤い痣を残していく。
「止めろ!何を……」
「これくらいしなきゃ、あなたに僕の覚悟は分かってもらえないから。あの二人にも、あなたの師にも
僕は負けたくありませんから」
細い首を押さえつけて、腰を抱いて引き寄せる。
「っあ!!」
奥まで突かれてつま先まで痺れが回る。
小さな爪が敷布を掴む。
抱きつけば刻まれた文字が八戒の身体を焼くことになる。
「……いつもみたいに抱きついてくれないんですか?」
高僧といわれても、中身はまだ二十歳の娘。
千年以上を生きる八戒とは経験が違った。
強さと脆さは剥離できない鏡のようで不安定な姿に興味を持った。
それがたまたま玄奘三蔵と名乗る女であっただけで。
「や、やだ……」
首筋を噛まれて竦むのを満足気に見つめる。
強く何回か打ち付けると仰け反る背中。そのまま噛み付くような口付けを眩暈がするほど重ねた。
口中に広がる血と女の味が体中を支配していく恍惚感。
「このままあなたを、喰いちぎるのも面白そうですね……」
離れる唇を追って舌を吸い合う。
「…っは……」
細められた瞳と、微笑む唇。
「喰えばいい……楽にしてくれ……」
それは彼女がこぼした小さな本音と愚痴。
「……そのうちに……」
強く乳房を掴んで、かり、と乳首を甘く噛む。
「んんっ!!」
壁に映る影は人型ではないものが二つ。
それは真夜中の八戒一人だけの秘密に留めた。
「もう一度聞きますが、天竺には何のために行くんです?この先には雑魚ではないバケモノしか居ませんよ?」
煙管片手に彼女はぼんやりと窓にかかる月を見上げた。
「経典を貰いに」
「建前ではなく、本音を聞かせてください。三蔵」
寝そべる八戒の頬に指が触れる。
「……お前に誤魔化しは効かないか……まぁいい。河童と違って口も堅いしな」
「悟浄と一緒にされるのは心外ですね」
「私が何であるかを知るためだ。其の口実に師匠は天竺行きを私に命じた」
身体を起こして、後ろから細い背中を抱くと珍しくその腕を取ってくる。
「口……大丈夫なのか?」
「ええ、あなたに接吻するくらいは」
「……ハチ、お前は何でそういうことを臆面も無く言えるんだ?」
「言わなければあなたは聞かない振りをしますからね。いいじゃないですか」
こつん、と寄り添ってくる細い身体を抱きしめる。
「疲れた……寝かせてくれ……」
「ええ、ゆっくりとどうぞ」
強がりの隠しがちな弱さを垣間見せ、そのたびに妙に心が痛む。
その思いをどう名付ければいいのかは未だ思案に暮れるばかり。
(三蔵もこうしてると可愛げがあるんですけどね)
悪態、毒舌、凶暴の三拍子揃った高僧はその目で全てを奪う力を持っている。
封印を解かれてもこの体たらく。自分も落ちたものだと八戒は自嘲気味に頭を抱えた。
妖怪は単純行動のものが多い。自分たちとて本能の欲求には従順で短絡的だ。
もし、この女僧が自分たちの同胞であるならば腑に落ちないところが多すぎる。
(まぁ、楽しませていただきますから……)
柔らかい髪を撫でると寝息がこぼれる。
「……ん……」
半開きの唇が扇情的で。
「……ハチ……」
(寝言でまで呼んでくれるんですか……?)
「……この、色摩が……触んじゃねぇ……」
口を開けば寝言でも甘い言葉は吐いてはくれない。
「……可愛くねぇ……」
どさりと寝台に押し付けるとその衝撃で三蔵は目を覚ました。
「……ハチ?私は眠いんだが……」
「寝言でまで誘ってくれたじゃねぇか……二回戦と行こうぜ、三蔵」
その言葉に彼女は八戒の人格が代わってることにようやく気が付く事となる。
「ま、待て!!明日はここを発つんだ、余計な体力は……」
「おぶってでもなんでもして運ぶから、心配無用」
にやりと笑う八戒の笑みに背筋が凍る。
伸びてくる手に三蔵は諦めて目を閉じた。
翌日、ひどくだるそうな三蔵の姿と妙ににこやかな八戒の姿があったのは言うまでも無い。
始めて連続投降の規制というものにあいました。
いや、二個投下しただけなんだけども、最近厳しくなってるんだな……
気をつけないと。
また、血かにもぐります。保守してくださるかた、サンキュウヽ(゚▽゚*)
キタァァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)ァァ( ゚)ァァ( )ァァ(`* )ハァ(Д`*)ハァ(*´Д`*)ハァハァ
なんか今回のが一番いい感じに思います。
艶っぽくて仇っぽくて毒のある三蔵が非常によい。
今後どういう展開を考えていらっしゃるのかな?原作も絡めるの?
キャラがいいですね〜
原作が原作だけに遊びたっぷりで、オリジナリティ溢れていて。
コミックスの原作に良さそう。
赤い瞳の毒婦で女僧の三蔵法師と、美丈夫の外見でありながら妖怪の3人組の
組み合わせも良い。タイトな文体もいい。
エロで抜く目的の人には物足りない部分もあるかもしれないけど、物語として
非常に楽しめます。
今後も楽しみにしています。
あ、どうもヽ(゚▽゚*)
ようやくスランプから脱出したんでこんな感じに進めさせてもらってます。
原典に出てくる主要な妖怪は出てくるんで、展開は八割くらいは脳内書庫にあります。
そういってもらえると嬉しいです。がんがりますね。
投下は結構結ゆっくりめなんで……ヽ(゚▽゚*)
保守!
…そうかイマイチなのは俺が工ロで抜く香具師だからかΣ(゚д゚lll)ガーン
あー、自分エロだけってのは得意分野には入ってなくて。
ぬるいエロ書きなんで。
イマイチか。今度は挽回できるようにがんばろ〆(T▽T;)
ぬるめなのが良いんですのよ!
所々に隠れてる部分を想像するのがエロなんじゃないかな…。
自分の想像力を鍛えなきゃ、萌えが衰えそうな気がする。
西遊記もそうだけども、最近、自分が女体化好きかもしれんという気になってきた……
人としてどうかと悩みつつ、楽しいからいいやと思う蒸し暑い秋。
アソボットの三蔵くんが女だったら書けそうだが、変換したらいかんだろ。
AV的なのりが苦手でして。追々努力はしますんで。何卒。
84 :
名無しさん@ピンキー:03/09/20 01:50 ID:Vk3acRMW
保守あげ
85 :
名無しさん@ピンキー:03/09/25 02:10 ID:wUeiMneb
age
保守サンクスです。
時間見て書いてますんで……ヽ(゚▽゚*)
良スレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
中華もの大好きで、しかも西遊記は一生もので好きなんだが、
こんな西遊記は初めてでつ!
エロ可愛い三蔵にゾッコンぽいお供3匹がイイ!
がんがって下さい!
保守!アソボット戦記五九終わっちまった ・゚・(ノ∀`)・゚・。
毎度保守どうもです。他の中華物はさくさくと書いてるんですが、
中々時間を作れなくて。
次は金銀ネタなので楽しんで書いてはいるんですが……〆(゚▽゚;)
気長に待ってやってください。
>87
中華物わしも大好きですよ。西遊記はどうしても手をつけたかったのでがんばってます。
保守
91 :
名無しさん@ピンキー:03/10/05 19:00 ID:mrNVf3gV
保守AGE
保守セヨ
芸が無いが取りあえずホシュ
保守ありがとうございます。圧縮から守っていただいて・゚・(ノ∀`)・゚・。
金銀の前にあがっちゃったのがあるんでそちらを先にとうかさせいただきます。
ただ、投下は本当に遅いです。色々書いてるんですが、遅いです。
毎回保守は本当にありがたいです・゚・(ノ∀`)・゚・。
悪童西遊記
◆厄介事◆
「だ〜〜〜〜〜っ!!!どこのどいつだ!あの猿を逃がしやがったのは!!」
二郎神は苦虫を噛み潰した顔で水晶の鏡を叩き割る。
『猿』とはかつて彼が岩山に封じ込めた天の子供。
今の名を『孫 悟空』と言うもののこと。
「そういえばあんたが封じ込めたのよね。忘れてたわ。天帝の甥って言う割りに非力だから」
長い黒髪を頭上に一括りにして穏やかに笑う姿。
蓮座に腰を下ろして彼女は煙管を咥えて煙を吐き出す。
「弥勒。それは止めろと言ってるだろ!」
「そんなおっきな声出さなくても聞こえてるわよ。それにあんたから命令される筋合いはないのよ。
坊や、御家に帰って慰めてもらったら?弥勒ちゃんがボクのことを虐めるの〜ってでも」
弥勒と呼ばれた少女はこつん、と煙管で二郎神の額を小突いた。
薄布の長衣は熟れた桃のような胸を浮かばせて何やら官能的。
「いつか絶対に泣かせてやるからな!」
「無理無理〜。あんたじゃ無理〜」
あはは、と弥勒は笑う。菩薩と呼ばれる立場に座するこの少女。
仮にも天帝の甥っ子の二郎神にきついことでも平気で言ってのける。
片目だけが藍に染まり、二つの色を持ちながらこの世界の全てをのんびりと見つめて。
「猿はねぇ、ちょっと前にどっかの坊主が封印を解いたはずよ。残念だったわね〜、唯一のお手柄だったのに。
腑抜けの二郎神なんて呼ばれちゃって」
「兎も角!もう一回あの猿を檻にぶち込みに行ってくる!!」
二郎神は肩を震わせて下界へと。弥勒はそれをにこにこと送り出す。
「なんでああも短気なのかしら。もうちょっと落ち着いたらいい男なのにね」
身丈は程々だが、二郎神には男の色気がある。
灰白の髪は短く切られ、凛とした瞳は銀貨のよう。
右眉から斜めに走る一本の傷は剣舞の会で背負ったもの。
逃げずに向かったことの証明とばかりに彼の男振りを上げている。
「弥勒、二郎神はどこかへ行ったのか?」
「あたしのことほっぽって下に行っちゃったわ。普賢は何しに来たの?」
「俺か?そりゃお前をからかいに」
同じく菩薩と呼ばれる立場に居る普賢と呼ばれた青年は弥勒の髪を取って唇を当てる。
「やぁね。これだから男は」
「おや。お前だって未だ男になるか女になるか迷ってるんだろ?」
両性具有の菩薩は小さく笑う。
「そうね。そのうち決めるわ。あの子が来るまでにね」
「なぁ、なんで三蔵はこの小猿を見つけたわけよ?」
「物食いながら喋るなって習わなかったか?河童」
長箸を眼球の直前で止めながら三蔵は悟浄を見据える。
「でも気になったわけよ」
「……こいつが呼んだからだ。私を。ここから連れ出せとな」
それは彼女にだけ聞こえた声。同じように叫んでも誰も来てはくれなかった。
たった一人だけその声を聞いたもの。
それがこの玄奘三蔵だった。
「いやでもさ、最初三蔵めちゃめちゃ恐かったぜ。ガン飛ばしながらこっち来るしさ」
「ほう〜きになるね。どんな風に?」
「いきなり来てさ、鉄格子蹴り上げんだぜ。んでさっさと出ろ馬鹿猿!とか言うし」
褐色の指先が徳利ごと掴んで清酒を飲み干す。
親指で口を拭って悟空はにししと笑った。
「三蔵だから、呼んだのさ。俺」
過去の記憶は殆ど無い。それくらいの長い時間を岩山の中で過ごしてきた。
時折見える鳥だけが、時間というものを思いださせる。
積もり行く雪、音の無い風。ただ、それだけの空間。
どんな声で叫んでも、たった一人を除いては手を差し伸べてはくれなかった。
白く、小さな手は柔らかく。その手の暖かさは全てを消し去るだけの力があった。
「お前、何者だ?」
細いが芯のある声。
「俺……悟空……」
「そうか。私は三蔵という。何故私を呼んだ。私は急いでいるのだ」
「お前……俺の声が聞こえたの?」
額に貼り付けられる破邪の札に悟空は悲鳴を上げる。
「何すんだこのアマ!」
「口の利き方に気をつけろ。この馬鹿猿がっ!!」
言うなり檻を蹴り上げて、三蔵は悟空の手枷を外す。幾重にも張られた鎖は重く彼を封じていた。
「とっとと出ろ。今日中にこの山、下るぞ」
「三蔵、俺、一緒に行っていいのか?」
「荷物持ちくらいにはさせてやる。わかったらさっさと来い!」
人間は下等生物と思っていた。
場合によっては食料とも。
「さ、三蔵。俺……」
「目的地は天竺ってところだ。私もどこにあるかは知らん。西のほうだとしかな」
「俺……」
「何だ?言いたいことがあるならはっきりと言え」
熟れた石榴のような赤い瞳。
「俺のことバケモノとか言わないのか?」
「生憎とバケモノには慣れてるんでな。人型であるならば問題も無いだろう」
「俺、人間を食うよ」
「喰えるものなら喰ってみろ。これでも玄奘三蔵としての法力はある」
差し伸べられた手は暖かく、何よりも優しい。
「行くぞ、悟空。天竺って所に」
「……うん」
その手を取った瞬間から、何もかもが動き始めたのだ。
三蔵と行動を共にするようになってから一月ほどした夜のこと。
別室にするのも面倒だと二人は同じ部屋で寝食を共にしていた。
悟空が三蔵を食らうようなことも無く、三蔵もこれといって悟空にし対して何かをすることも無い。
「おい猿。私の煙管を知らんか?寝る前の一服と思ったのだが……」
膝を抱えて、悟空はただ肩を振るわせるだけ。
「悟空?」
そっと髪に触れる手を荒々しく掴んで三蔵を引き寄せた。
「……猿、馬鹿力は他で発揮しろ。指が折れる」
「三蔵……俺……」
渇いた喉の感触。からからと悲鳴を上げながら本能は彼を締めつける。
「苦し……っ……」
「血でもやればいいのか?」
違う、と悟空は頭を振る。
自分たち妖怪にとっては高僧の血肉は何よりもの糧となる。
そして、今ここに居るこの女こそが聖典を納めた玄奘三蔵なのだ。
押さえきれない妖怪の本能は彼女を食らわせろと悟空の喉を締め上げる。
「…………」
転がった煙管を拾い上げて三蔵は火を点ける。
一息吸い込むと紫色の煙がゆらりと立ち昇った。
「やる」
「俺……それ苦手……っ……」
「……世話の焼ける猿だ」
深く吸い込んで、三蔵は悟空の唇に自分のそれを重ねた。
口移しで入り込んだ煙は、静かに彼の肺へと落ちていく。
何度か繰り返していくうちに震えがおさまり、呼吸が元に戻るのが分かった。
「まぁ、お前等は直接に肉から精気取るのが普通なんだろうけど、場合によっちゃ間接法でもどうにかなるだろ。
少しは落ち着いたか?」
「……悪ぃ……三蔵……」
こつんと煙管で彼女は悟空の額を小突く。
「さっさと寝ろ。明日も移動が長いからな」
寝台に身体を横たえて三蔵は目を閉じる。
「……三蔵、俺、寒いんだけど」
「……ったく世話の焼けるガキだな。入れ」
母の記憶などは無い。自分が何から出来ているかさえも分からない。
それでも、この胸の柔らかさと規則正しい心音はどこか懐かしい気がした。
「……三蔵、天竺ってとこ行ったらさ、俺が何なのかも分かるワケ?」
「多分な。気になるのか?自分の身元が」
「それなりには」
「私にも母の記憶は無い。川縁に捨てられているところを師匠に拾われた。三蔵はつい最近得た名前だ。
元は江流童子。川流れの江流だ。唯一の手がかりは左足の小指が無いことくらいか」
「三蔵……」
「お前の中身がなんであれ、お前は私の荷物持ち(下僕)に変わらん。さっさと寝ろ」
その声は甘く優しく鼓膜を浸蝕していく。
ただ一人彼女だけが自分の声を聞いてくれた。
自分の名前を呼んでくれた。
彼女で無ければならなかった理由があったから。
それを探すのも悪くは無い、悟空は彼女に従う理由をそう位置付けたのだ。
絡まる影が二つ。
「……三蔵ってさ、なんで俺の声が聞こえたんだよ……?」
首筋に噛み付きながら悟空は三蔵の法衣を剥ぎ取っていく。
浮いた鎖骨と甘い香り。
「知らん。お前が私を呼んだんだろう?」
互いの頭を抱えるようにして唇を重ねる。舌先を絡めて吸い合って、離れてはまた触れ合う。
褐色の指先は白い肌を弄りながらそろそろと下がっていく。
「ん……三蔵がそう言うんなら、そうなんだろうけどさ……」
顔つきはまだ少年。
三人の中では最も幼い容貌だ。
「……っは……何か……怖いことでもあるのか……?」
伸びた爪は切れと言われ、小言だけではなく暴言に暴力は日常茶飯事。
それでも、この女でなければならないと何かが囁くのだ。
柔らかい胸は少し強く吸えばすぐに痣が出来る。
細い腰は喰いちぎるには丁度いい。
その血が欲しいと身体が叫ぶのに……本能よりももっと奥深くの何かがそれをさせないのだ。
「……っ痛……あまり手荒にするなっ……」
沈む指先に痛みを覚えて、三蔵は悟空を軽く睨む。
「……外してやろうか、それ……」
すい、と細い指が頭を締める輪に触れる。
強すぎる破壊衝動を抑えるために投獄の際に悟空に科せられた封印の一つ。
「……三蔵……」
ちかちかと光が生まれ、カランと音を立てて床にそれが転がる。
同じように赤い瞳。伸びた髪は三蔵の胸をくすぐる。
「…んっ……」
細い手を取って指先を舐め上げる。ちゅっ…と吸い上げて手の甲に唇を落とした。
乳房を舌でなぞって、時折甘く噛む。
(なんでだろ……俺、三蔵のこと昔から知ってる気がする……)
腰を抱いて繋がりあって。
(でも……三蔵は俺のこと知らない……俺も三蔵こと、知らないはずなのに……)
この身体は一体何のためにあるのだろう。
熱さと縋る腕だけが真実で、あとは何もかもが偽物にさえ思えてくる。
「っあ!んっ!!」
形の良い臀部を掴んで更に深く重なり合う。
「…っは……あ!!」
「……江…流……」
小さな額に唇を落とす。
「その名で……呼ぶな……」
過去の記憶の無い自分と、過去を捨てた彼女。
「……三……蔵っ……」
ぬるりとした感触。締め上げる女の身体。従うのは己の直感。
この手だけは何があっても離さないとあの時に決めた。
この先に何があろうとも。
欠伸を噛み殺しながら三蔵は不機嫌そうに煙管を咥える。
少し痛む腰を摩りながらぎゃあぎゃあと騒ぐ三人を一瞥して一人古い文献を紐解いていた。
「お猿ちゃん、イカサマかますなんて百万年早いんだよ!」
「そのイカサマにかかってるのはどこの河童様だよ!」
「商品(三蔵)が掛かってなかったら笑って済ませてやったところなんですけどねぇ」
各々が武器を手に打ち合うのもこの一向にとっては日課のようなものだ。
気に止めることもなく三蔵は眼鏡を直しながら無視を決め込んでいた。
「おい!!そこのお前!!」
お前と呼ばれて三蔵は声の主をぎろりと睨む。
「人に何かを尋ねるときは自分から名乗れとガキの頃にならわなかったのか?」
「くっ、嫌な奴だな。俺は頸聖という。あそこの猿はもしや五行山のものではないのか?」
「……これはこれは天帝の甥とも言われるお方が斯様なところに」
三蔵は悪びれることも無く皮肉たっぷりに男を見つめ返す。
「あの猿は俺が封じ込めたんだ。お前か!?あれの封印を解いたのは!!??」
三蔵は煙を吐きながらケラケラと笑う。
「封印?私ごときに破られるあの程度で?馬鹿馬鹿しい。噂に違わぬな、腑抜けの二郎神」
「たかが人間風情に腑抜けといわれる筋合いはないっ!!!」
その言葉が終わる変わらないかの間に三蔵は短剣を二郎神の喉元に突きつけた。
「玄奘三蔵と申します、二郎神様。以後お見知りおきを。あそこに居ますのは全て私の従者。二郎神様のおっしゃるようなものは居りませんが?」
「お前が玄奘?女であろうが」
二人を囲むように悟空、悟浄、八戒はそれぞれが愛用の武器を二郎神に突きつける。
「三蔵から離れろ、変態」
「三蔵ちゃんはね、取り扱い難易度『高』なわけよ。そのきったねぇ手、離しな」
「その人から離れるのと、首を胴体から離すのとどっちがいいか選んでくださっても結構ですよ」
天竺と目指す高僧が従えたのは妖怪三人。
揃いも揃ってこの三蔵法師に骨抜きにされていると天界でも噂にはなっていた。
ただ、その玄奘三蔵を見たものは誰も居なく零れてくる話だけであれこれと想像をしてきた。
予想以上に幼い顔立ち。そして、口の悪さ。
「悟空、お前にしては珍しく確信をついてるがこの男は変態でなく、変人だ」
「どう違うんだ?」
「まぁ、平たく言えばイっちゃってる人ってことですよ」
「だ〜〜〜〜〜っ!!!人を小馬鹿にしよってっ!!!!」
銀の髪を振り乱し、二郎神は四人を振り解く。
手にした長槍を構えながら悟空を睨む。
「馬鹿にはしたけど小馬鹿にはしてねぇよな」
「そうだな。いきなり来てわけの分からんことを言ってるしな」
「三蔵ちゃん、苺食わない?苺。甘いの好きでしょ?」
二郎神のことなどお構い無しに四人は勝手に話しはじめる。相手が誰であろうと信じるものは己のみ。
「兎に角!その猿を渡してもらぞ!!」
頭上の金冠を三蔵は二郎神目掛けて投げつける。
ごん!という良い音を立ててそれは彼の額に命中した。
「猿ではなく。孫 悟空。私の従者だ。お前に渡すわけには行かない」
キッと睨んでくる真っ赤な瞳。
凛として臆することのない声。
仮にも神と称される自分に対しても三蔵は恐れも抱かずに皮肉めいた笑みを浮かべるのだ。
「人間の分際でっ!!!」
やれやれと三蔵は溜め息をついた。この神様は予想以上にまだコドモらしい。
「……二郎神。良かったら苺でも食って少し落ち着いたらどうだ?」
つかつかと進んで三蔵は二郎神の手に苺を二つばかり渡す。
「銀の髪の雄神。剣舞の才は天界でもそうそう無いと噂には聞いた。筋道立てて来るならば考えないでもないぞ。
あれの封印は私が解いた。あの輪もあなたの仕業だろう?もう少し鍛錬を積まれるが良い。三蔵如きに封印を解かれるようでは
天帝の甥の名折れだろう、二郎神」
それは三蔵の名に相応しい、諭すような静かな声。
先ほどまで自分に殺気丸出しでけんかを売ってきた女とは思えない声だった。
「この傷は逃げなかったから出来たのだろう?強さは力だけではない」
人間の一生などは神である彼から見れば瞬きをする間に終わってしまう。
その僅かな生を彼女は力の限り生きているのだ。
「剣をお引きになられよ。二郎神」
「…………」
穏やかに笑う顔は、静かにその心に沁みていく。
同じことを弥勒菩薩に言われても感じなかったはずなのに。
「……そなたがそう言うならば。今日は引こう……」
「ありがたきお言葉。感謝いたします」
「猿はそなたが天竺に着いた際に渡してもらえれば……」
「道はまだ遥かに御座います。何卒御力添えを」
それを遠巻きに三人は見つめていた。
(三蔵って演技派だよな?)
(僧侶辞めてもそっちで食べていけますね)
(まさか……アノ時のことも演技とか言わないよな?三蔵っ!)
二郎神の手に自分の手を重ね、三蔵は静かに微笑んだ。
「……三蔵殿……」
確信犯の笑みは雄神を一人の男に一瞬で変えた。
二郎神陥落。
その反応に三蔵は心の中で高笑い。いや、爆笑といおうか。
よほど妖怪三匹のほうが擦れきっている。
この雄神はあまりにも女慣れしすぎていなく、純情すぎるのだ。
甘い言葉と笑みだけで惑わすことが出来るのだから。
これより道中なにかと二郎神が三蔵にちょっかいを出すのを妖怪三人は全力で迎え撃つ。
成り行きとはいえ、厄介ごとが増えたと三蔵は苦笑交じりに煙管を咥えた。
メインで書いてる中華物に出てくる人の元キャラが沢山いるんでまったく別人格にしてしまいました。
何せ悪童ですから〆(゚▽゚*)
ではまた暫く地下作業にもどりますヽ(゚▽゚*)
KINOさんキタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━━━!!!!
っていうか悟空攻めを心待ちにしてたので、内心祭り状態です(w
萌えを、ありがとうございました。
>106
あ、ども〜。投下は遅いですが何卒……〆(゚▽゚*)
前の投下が約一ヶ月前なんですね。アヒャ。
もうちょっと早めに書けるようにできるといいんですが。
キタァァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)ァァ( ゚)ァァ( )ァァ(`* )ハァ(Д`*)ハァ(*´Д`*)ハァハァ
私も悟空攻めを内心楽しみにしていましたので、非常に嬉しいです。
個人的には三蔵の次に悟空、好きかも。や、サル系が好きなんですよ。
どんどん物語にはまっていきます。次が楽しみだ。
萌えました。
悟空キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
天界の方々も出てきて、ますます続きが楽しみです!
弥勒が少女(外見)なのに萌えますた。
個人的には紅孩児がどう絡むのか凄く気になるなあ・・・。
弥勒が少女というのは、私も面白いなと思いました。
KINOさんのキャラ造成、本当に良いですね。
私は最後、三蔵の笑いがツボでした。
三蔵のビジュアル萌えです。
あ、どもー。
紅孩児書くのはもちっと後になりそうです。金銀が先に出る予定なんで。
あとはそれに絡めて悟浄と八戒の過去なんかも入れられたらと……〆(゚▽゚*)
保守
保守
保守
圧縮厳しいんですかね。
短編でも持ち込めるようにがんばります〆(゚▽゚*)
116 :
名無しさん@ピンキー:03/10/18 02:23 ID:dB7Y4Mqd
保守age
保守カキコが毎日あれば問題なしかと。
とりあえずワタシもだいたい覗いているので、他の保守カキコがなければ保守っておきますので、執筆に専念してください。
118 :
名無しさん@ピンキー:03/10/19 23:50 ID:L31aTpLb
保守
ギャ〜!上げてしまった。
回線切って逝って来ます・・・。
>>KINO氏
圧縮については長くなるので説明は省略しまつ
要は24時間以内にレスを付けとけば良いのでつ
それと、断言するけど
「age」る必要は絶対に無いでつ
それではマイペースで更新よろしくでつ
保守サンクスです。
エロパロ情報スレはチェックしてはいるんですが圧縮最近厳しいな、と。
前は3〜4日レス無しでもOKだったと思って。
ほんまにねぇ、保守して下ってる皆様ありがとうございます。
よろしかったらみなさまも何か書いてみませんか????
sage進行でよろしくです。
ageても逝かなくても無問題ですよ。
のんびり、まったり、と。
初めて覗いたけど良スレですね〜。
話として普通に面白いです。自分はエロパロでも背景や物語重視なんで嬉しい。
続きまったりと楽しみにしてます。
保守
保守
保守
保守
毎日保守してもらってる……ありがとうございます。
一日に一話ずつでも張っていった方が良いんですかね?
自分、完成させてから投下型なんですよ、元々。
つなぎにほかの中華モン張るのもあれですしねぇ……〆(゚▽゚*)
まずは書かなきゃ。保守サンクス。
>122どうも〜。そういってもらえると嬉しいです
保守。マターリお待ちしているんで、ゆっくりと書き上げてください。
自分のペースでドゾー
保守っ
保っ守
っ保守
保守
なんか、毎日保守してもらってると書かねばならんと思うのですが……
気長に生暖かく見守ってやってください
保守
ホッシュ
ふとした疑問。ここって一体何人くらいいるんだろう。
3人くらい??
まずは一人目のKINOです。
まぁ、わし一人って可能性もあるわな
2人目。某スレでお世話になっているコテです。
ROMでつ。恐れ多きことながら三人目。
そして、保守カキコbPの俺様
5人目ノシ
気が向いたら保守してます
六人目
定期的に覗いてます。
中華モノ好きなんでつよ。
7人目です
8人目(・∀・)ノ
たまに保守させて頂いてます。
9人目。
某スレの義弟です。
10人目です。
お盆前から、拝見させて頂いてます。
11人いる!
というわけで11人目はわたしです。
ただの傍観者12人目
一回りしてKINOでござい。
意外といるもんだと驚いてます。
夏目雅子の西遊記ってDVDにならないんですかねぇ?
なったらいくらの値でも買うんだけどね。
牧瀬里穂よりも夏目雅子のほうが好きなんですよ。
IDがWAOだw
乗り遅れた!
13人目ですすいません
しばらくリサーチしてみようw
書くのは遅いんで。すまんです。
しかし、13人いるってのがスゲェ。自分でびっくりですよ。
(密かに)14人目で〜す。お仲間に入れてください〜
増えてる!!!Σ(゚Д゚;≡;゚д゚) 嬉しい。
みなさん、お茶どぞー 旦~
15人目です。
16人目!
ホッシュ
保守
早朝ホシュ
ほ〜っしゅ
保守
保守
保守!
ホーッシュ
封神スレのほうにも来て欲しいんだけど。
無理?
一応答えたほうがいいのかな?
>164
難しい。女体化スキーだから。
そのうち行くかもしれないし、分からないとさせてください。
金銀、長くなりそうです。
きりいいところで分割して持ち込み予定。
保守いつもありがとうございます〆(T▽T*)
>164
おおざっぱな事情しか知らないんだけど
「あえて行かないことで、封神スレを守ってる」という見方も
できるのではないでしょうかー?
長くなるので、書き上げた文を投下させていただきます。
前後位になるかな〜と思いきや、無理でした〆(T▽T;)
金銀に行き着くまでが長い長い。
いや、それだけ中華系で女体好きなんでしょうね。
それと、保管先にも過去ものとそのうちサイト用のものとかUPするんでよかったら。
では、行きます。
◆骸遊戯ー天界の事情ー◆
「なぁ、三蔵」
「飯のときは黙って食えといってるだろう」
取り箸で悟空を諌めながら三蔵は『何だ?』と聞き返す。
「ここ、人間少ないよな」
「ああ。そうだな」
三蔵は大した事ではないと返してくる。
見渡せばそちらこちらの縁台や卓には幽鬼の姿。
腑を引きずりながら女の傍でだらしなく舌を出すものや、よほど怨恨深いのか男の首を絞める遊女さながらの妖怪。
長い髪を振り乱す餓鬼にじっとこちらを見つめるだけの首だけのもの。
「三蔵ちゃんってば、ドライだから」
「お前等も大して変わらんだろう」
「それは心外ですね。少なくても僕たちはあなたに危害は加えませんけど」
「人の寝床を襲うのは危害には入らないのか?」
香菜を口にしながら彼女は八戒のほうを見る。
「合意であれば害にはならなうでしょう?」
「どうだかな」
ただ、そこにいるだけでも幽鬼は三蔵の傍にやってくる。
玄奘三蔵の名に相応しく、弱い妖怪たちは彼女の気に触れるだけで悲鳴を上げて消えていくのだ。
当の三蔵はのんびりと慣れた手つきで煙管を取り出し口にする。
この街に来て三日目。
依頼された物件は未だに来ない。
「こんなにのどかに飯食ってていいのかね、俺たち」
「お猿ちゃんにしちゃ珍しい発言じゃねぇの」
箸で悟空の額を押しながら悟浄はげらげらと笑う。
三蔵の膝下には童女の首の入った水玉がころころと転がってはぶつかる。
その度にばり、と割れ粘液をそこかしこに撒き散らす。
一つ消えてはまた一つ。
光に縋るにわらわらと這い出てくるのだ。
「追い払わないのですか?」
「これらは自分の意思で死んだわけではない。悪戯な魔物に殺された子供たちだ」
水玉の中の首は未だ幼く、四、五歳の顔が殆ど。
そのあどけなさと柔らかさに魔物たちは首を刈り取り水玉の中に閉じ込めて眺めるのだ。
寝床に残されるのは首のない小さな身体だけ。
母親の悲鳴をうっとりと聞きながら魔物たちは高笑いする。
人間など、ただの食料に他ならないのだから。
「この中から出れれば、天に昇れる」
三蔵は小さく言葉を紡いでいく。
その声に反応するように水玉の数は増え始め、薄い膜を破って首が次々と吐き出される。
光に溶けるようにさらさらと崩れ、その光の粉は蝶となり彼女の傍を飛びまわった。
まるで礼とばかりに、鮮やかに。
「ひょえ……見事なもんだね」
「お前等は私が僧侶だと忘れているようだしな」
一匹の薄紫の蝶が彼女の指先で羽根を休める。
「お前らが死んだ時も同じように弔ってやるよ」
「あー……俺、腹上死以外予定無しだから。三蔵ちゃん」
「俺も。三蔵に乗っかってて死ぬのが理想」
「僕もそのつもりですが?まぁそうなればこの二人を片付けなければいけませんが」
三人はあれこれと持論をぶつけ合う。
こめかみに指を当てながら三蔵は二度ばかり頭を振った。
(色欲の権化か……こいつらは)
それでも文句を言いながらも旅の途中は夢の途中。
未だ見ることの出来ない西の果ての国を目指して一向は進む。
水辺に足を入れて、ただ流れる煙を見つめる。
「三蔵ちゃん、何してんの?」
「風呂上りで足を冷やしてる。それに……」
風が、彼女の髪をかきあげていく。
「水辺の精霊に呼ばれた。お前も同じだろう?悟浄」
三蔵の唇から煙管を取って悟浄はそれを口にする。
「御名答。同胞の匂いっていうのか……嫌な予感がする」
袈裟に法衣ではなく、街娘のような衣類に身を包み三蔵は水面を見つていた。
腕には幾重にも巻きつけられた数珠。
「そうしてると、三蔵法師なんて物騒な奴には見えないよな」
「物騒?心外だな。私ほど慈悲深いのも居ないだろう?人も、それ以外も区別などなく」
水中に手を伸ばして三蔵は何かを引き上げる。
「!」
それは一見すれば髑髏。ただし、この二人の目は誤魔化せない。
「お仲間さんってとこか……」
「昔……嗅いだ事のある匂いだ。あのときのほうがやけに濃くて淫靡だったけどねぇ……」
両手で持ち直すと髑髏の右目からどろりと何かが零れ落ちた。
「……私を呼んだのはお前か?」
今度は左目から。
「そうか。お前の依頼、確かに請け負った。安心して眠れ」
小さく呪詛を唱えれば髑髏はさらさらと消えていく。
「三蔵……」
「泣いていたんだ。この河でずっと。私一人では見つけられないのを知って……お前を呼んだんだ。
同じ仲間を……」
自嘲気味に彼女は笑う。
「悟浄。暫くはお前の勘に頼らせてもらうぞ。失敗したら……河馬の餌にしてやる」
「はいはい。三蔵ちゃんのお願いなら俺が断わるわけ無いでしょ」
後ろから抱きしめて、その肩口に顔を埋める。
湯上りの香りはまだほんのりと残って男を誘うかのようだ。
「じゃあさ、俺に力を頂戴。三蔵……」
「鬱陶しい」
抱きかかえて、そのまま押さえた宿へと戻りだす。
「素直じゃないんだから。可愛いけどねぇ」
蓮の上、とろんとした瞳で弥勒菩薩は欠伸を噛み殺す。
「眠ぃ……ダルイ……やってらんねぇ……」
「弥勒ちゃん、おはよ」
「相変わらずだな、弥勒よ」
その声に弥勒は顔を上げる。
「観世音……それに老子まで。二人揃ってどうかしたのか?」
蓮座から降りて弥勒は二人の下にふわりと舞い降りる。
「私の金魚が逃げてしまって……二人で探してたの」
観世音は少し哀しげに空になった籠を弥勒に差し出す。
普段はここにお気に入りの真っ赤な金魚を入れて持ち歩いているのだ。
「しかし、何故に老子が?ああ、金魚を餌にして観世音に手を出そうと考えたわけか」
的を突かれてごほごほと咳き込む。
伸びた黒髪と幼い顔つき。
手を触れることを禁じられた永遠の処女神。
「普賢と二郎神は?」
「とある坊主に二人揃って熱上げてて見てられん」
「男色家ではないと思ったが」
「えらく作りの綺麗な坊主でね。ああいうの見ると……男になるのも悪くないかもって思えてくる」
弥勒はくすくすと笑う。
菩薩、御仏といわれてもその実は長い長い時間を持て余しているばかり。
故に、男二人が夢中になれる事が半分羨ましかったのだ。
二郎神があまりに熱心にかたるので普賢も一度くらい見てみようと小鳥に化けて下界へと飛んだのはつい先日。
おりしも一戦終わったばかりの一行を見かけることが出来た。
返り血を浴びて、まだ殺気だってはいるものの三蔵のその姿に眼を奪われた。
天界には存在することの無い慈悲と残虐を同時に持つ不可解な生き物。
(これは珍しい……随分と面白いではないか)
四人がばらばらになって部屋に入るのを見届けてから普賢は其の変化を解いた。
そっと三蔵の部屋の扉を開けて、寝台に横たわる姿をじっと覗き込む。
余程疲れたのか、眉を顰めたまま自分で自分を抱くように丸くなり眠る姿。
其の額に指を当てて、普賢は静かに気を送った。
「……う……誰だ!?」
枕元に隠した短刀を普賢の喉元に突きつける。
「おや、元気になりすぎたかな」
普賢の指先が刃先に触れると、短刀は光の粉になってさららと流れていく。
「!!」
「そんなにおびえなくてもいいよ。俺は普賢というもの。あまりに友が君の事を自慢するから逢いに来てみたんだ」
三蔵の隣に腰掛けると普賢はにこにこと笑う。
「友……?」
「二郎神っていうんだけどね。まぁ、うっかり者で単純なところがあるけど悪い奴じゃない」
三蔵はそれを聞いてやれやれと頭を振る。
天界がらみのことでろくな目にあったことがないからだ。
あの一件以来、二郎神は暫くの間朝に夕に関係なく求愛してくる有り様。
なんとか宥めて展開に帰したものの、今度はその仲間が来たというのだから仕方も無い。
「それに……君は俺たちに近いようで遠くもある不思議な子だ」
濃紺の髪と瞳。
端正な顔立ちの青年はうっとりとするような笑みを浮かべる。
菩薩という立場ではあるものの、この普賢は時折下界に下りては人間の女と寝所を共にするのだ。
咎めようにも天界には普賢だけではなく数人掟破りのものがいる。
一人を咎めれば、全員に事が及ぶ。
それを利用してこの男は遊び放題。特権乱用。
それでも世界を救うのだから性質が悪い。
「少なくとも、妖怪よりは優しいよ。俺は」
眺めの睫。
二郎神が男の色気ならば普賢は中性的な魅力の持ち主。
「妖怪?笑わせる。あれは私の下僕だ」
「言い切るね。気に入った」
くい、と顎を取って普賢は三蔵の薄い唇に自分のそれを重ねる。
「二郎神よりも先に味見させてもらおうかと。俺は……気の強い女が好きだから」
夜着を解いていく指先。
抵抗することも忘れて、ただ其の指先を見つめてた。
「……待て。何故、私がお前に抱かれなければならんのだ」
「神仏に逆らうのは懸命じゃないね」
普賢の指が三蔵の手首に触れる。
「!」
光の輪が幾重も生まれ、きゅっとソコを拘束していく。
「なんてね。意地悪するのは好きじゃない。遊ぶなら、楽しくが俺の信条だから」
「遊び人の仏なんざ、吐き気がする」
「二郎神の親御も似たようなものさ。それに、君が望むのなら……取引をしても構わないし」
「取引?」
光を解き、普賢は三蔵の身体を静かに倒していく。
「君の行く手に困難を授けるのは我が同胞の役目。どうにもならない時は……俺が助けてあげる。
少なくとも二郎神よりは立場はいいからね」
ぴちゃ…舌先が鎖骨を舐め上げて、ゆっくりと下がる。
余程疲れたのが疲労で張った乳房。
やんわりと揉みながらその中央の乳首を甘く吸い上げた。
「……ッ……」
「可哀想に……こんなところにまで傷が……」
左胸の下から鳩尾にかけて走る赤黒い傷跡。
百足の変化は彼女の法衣を裂いて其の身体に痕跡を残した。
まだ薄っすらと血の滲んだ傷口を、唇が静かになぞり上げていく。
両手は執拗に乳房を嬲り、感触を確かめるよう。
時折きゅっと摘み上げて、舐め上げる。
「…っは……」
「我慢しないで声を上げて。大丈夫、君の声は誰にも聞こえない。君の従者たちは朝までぐっすりだから」
三蔵の部屋に入る前。
普賢はそれぞれの部屋の前で術をかけたのだ。
朝まで何が起きても目覚めることは無い。
そして、其の朝日を操るのもまた、彼の仲間なのだ。
「…っあ!!」
かりり…腰骨を噛まれて身体が竦む。
「ほら、もっと……楽しんで」
唇を舐められ、そのまま深く重ねられる。
どうにもならないと理解してしてしまえば抵抗するのも馬鹿馬鹿しい。
普賢の頭を抱いて三蔵は自分から唇を合わせる。
「積極的な子は大好きだよ」
優しく細められる瞳。それがやけに懐かしく感じた。
指先を下げて、濡れた秘所に忍ばせていく。
「!!」
ちゅる…ぴちゃっ…
ぬるぬると光る半透明の体液を絡めながら、普賢の指先がそこを押し広げる。
「ああっ!!あ!んんぅ!!」
熱い舌が内壁に入り込み、唇がそこをじゅる…と吸い上げる。
「や……やめ…っ!!……」
押しのけようとしても、力は入らずに。
しっかりと腰を抱かれてただされるがままに喘ぐしかなかった
「ぅあっ!!」
ずるり抜けれた指が赤く充血した突起を擦り上げていく。
「ここは……やっぱり弱い?」
今度は唇を使って重点的に吸い上げられる。
「あああぁっ!!!」
誘発される痙攣と、涙声。
手の甲で唇を拭って普賢は三蔵に囁いた。
「どうせならもっと楽しもう……江流……」
三蔵の手首に普賢は接吻する。
耳朶を噛まれ、頬に降る唇。
抱き上げて自分の上に載るように促すと、素直に彼女はそれに従った。
「ああっ!!!」
腰を抱かれて、一気に奥まで貫かれる。
突き上げてくるその動きの一つ一つを逃さないように三蔵の身体は普賢を締め上げていく。
「そう……いい子だね。もっと自分で動いてみて……」
ほんの少しだけ上体を起こして、其の小さな身体を引き寄せる。
欠けた小指。
それを目にすると普賢はほんの少しだけ物悲しい気持ちになった。
(俺たちの巻き添え……可哀想な子供だ……)
泣くことを忘れたわけではない。
泣くことが出来ないわけでもない。
『泣く』ということを知らないのだ。
それ故に彼女は玄奘三蔵と成り得たのだから。
「……っは…ん!!……」
目尻に溜まる涙を弾く。
(涙はこんな時に使うものじゃない……よほど弥勒や観世音のほうが人間に思えてくる……)
天界にも類を見ない真紅の瞳。
それは気まぐれと偶然が産んだ奇跡の結果。
「あ……っ…ぅ……!…」
浮かぶ汗と、女の匂い。
絹布の巻かれた腕を取り、それを外す。
刻み込まれたのは一種の呪い。
「痛かっただろう?女の肌に光明も無体を……」
旅立つ前に、彼女の師匠は其の身体に破邪の刻印を付けた。
たったひとりで進み行く愛弟子を死なせないために。
前夜に貰ったのは小さな剣と、酷く優しい接吻。
そして『戒律を破るのはコレが最後』と師匠は笑ったのだ。
「これ以上、君が傷付くことが無いといいのにね……」
愛しげに其の文字の一つ一つに普賢は唇を当てていく。
「けれども、どんなことがあったって君は行くんだ。君のために」
強く腰を抱かれて、あふれ出る涙。
「あ!!!あッ……んんっ!!!」
ちゅる、と乳首を啄ばまれて三蔵は普賢にしがみ付く。
中性的な身体が絡まる様は、天界のものには見せられない。
ましてや其の相手が因縁付きの江流童子であるならば尚更に。
「…ひ……ぅん!!…」
「いい子だね……江流……」
子供をあやすかのように普賢は三蔵の頭を撫でる。
「あ!!あああッッッ!!!」
一際深く繋がれて、何かに縋るかのように彼女は普賢にきつく抱きついた。
眠る三蔵の髪を撫で上げて、仏にあるまじき思いだと彼は苦笑する。
「君は……あの金蝉では無いんだね……いや、金蝉でもあるけれども……」
今の彼女は何にも属さない不思議な立場に位置している。
人間、妖怪、仏。
その全てを受け入れて、全てを拒絶するのだから。
「君が進む道はとっても困難なことばかり。なにせ相手はあの観世音……」
ふわふわと笑う菩薩は何食わぬ顔であれこれと仕掛けてくる。
(天然ボケで可愛いけれども……俺はこの子の方が好みだな……)
小さな額に接吻して普賢はそっと身体を離そうとした。
「!」
その裾を握る手。
「帰るなら何か置いていけ。明朝に出発する」
「強かな子も大好きだよ。連れて帰りたいくらいだ」
「根も葉もないことを……」
にやりと笑う赤い瞳。
「これをあげる。俺の作った丹薬。少なくとも其の傷は綺麗に消えるよ」
ばさりと上着を羽織って普賢は身体を離した。
「またね。俺の名前は普賢。ちゃんと覚えておいて」
天界に戻ってからも普賢菩薩は上機嫌。
普段ならば投げ出すような雑事までも懇切丁寧に仕上げていく有り様。
「普賢!!お前っ!!!」
「お先に戴いたまで。人間は短命だからね。賞味期限切れないうちに食べないと」
にやりと笑って指先で額を押す。
普段は隠しているが二郎神は三つ目の男神。
千里眼を使えば三蔵と普賢のことなど造作なく見れるのだ。
もちろんそれは普賢菩薩も知っていての行動。
確信犯の実行犯。
「そんなんだから何時だっていいとこもっていかれるんだ」
「持っていくのはお前だろうがっ!!」
「あはははは。まあそうだけどね」
確信犯は穏やかに笑った。
「嫌な予感は当たりそうか?」
「訂正させて。予感じゃなくて……予言だわ。俺たち……ここに誘われてきたんだ」
冷えた素足に夜風を引っ掛けて三蔵は頭上の星を見る。
まるで己の瞳のように赤く光る星が一つ。
「朝が来たら……のこり二人叩き起こすぞ」
「それには賛成。売られた喧嘩は買わなくちゃね、三蔵ちゃん」
覗き込むように近付く顔。
「でも、その前に燃料補給させて」
ざわざわと騒ぐ風は無視を決め込んだ。
始まりの一夜、長き日の幕開けだった。
本日分はここまです。
前が10月9日だから、また月一か……参考文献のいいサイト見つけたんでもう少し何とかできれば
いいんでしょうが結構いっぱいいっぱいなところがありまして_| ̄|○
御仏様を何たるものかと言われそうですが、齧り調べでは結構やることやってんだな〜とモニタの前でのほほん。
でわまた。
乙!続きが楽しみです。
大河エロって感じで、緩やかな流れを感じます。
いろいろと妨害活動も盛んのようですが、応援している人間も多いので頑張って下さい。
ホシュ
ホシュ
ポシュ
ホシュ
保守
ヤバイ位下がってんだけど
一度あげた方がいいのかな・・・?
一番下まで下がっても、保守カキコがあれば生き残れます。
ただたまにageた方が他の人の目に入る機会が出来るから、読み手も増えるけど。
>KINOさん
どうされますか?
190 :
KINO ◆Nq.KINOKeY :03/12/07 22:17 ID:eEzT/H/v
この時間だとすぐに流れて下がると思うんで自分であげておきますね(*゚▽゚)
いとめでたけれエロの華。
かかってこいや!
とホシュ
保守
こっそり。
こっちに乗せられない話なんかを書いてみました。
興味のある方はサイトなんか見てやってください。
エロなしも個人的にはOKなんだがな。
他の住人はどうなんですか?
漏れもオケーだよ。保守
いや、まったく関連のない話を書いたんですよ。エロはありで。
骸遊戯の続きを書きながら。
多趣味なのも問題ありますねy=ー( *゚▽゚)・∵. ターン
メリークリスマスです。
サイトのほうに乗せてたやつなんですが、こっちにも投下させていただきます。
保守代わりにはなるんじゃないかな。
骸遊戯は年明けに持ってこれるんじゃないかと。
今回のは言うなれば不幸の始まりかとw
トリップを全部コピペでぐぐればでます。 KINO ◆Nq.KINOKeY まで。
いいクリスマスと年末であります余に。
◆恋心、夢見がちに成り得る夕暮れ。君の隣で◆
照らす日差しはじりじりと暑く、袈裟と法衣が身体に纏わりつく。
汗で濡れた肌に張り付くそれの感触は決していいものではない。
「悟空、私はちょっとそこの川で水浴びをしてくる。荷物番だけ頼むぞ」
「うあ〜〜?俺、昼寝したい……」
「そうか、永遠に覚めぬ昼寝でもさせてやろうか?」
赤い硝子玉の瞳が悟空の瞳を捕らた。
「荷物番させていただきます……」
「わかりゃいーんだ、わかりゃ」
玄奘三蔵と言う名のこの女。見た目こそ僧侶としても通じるが中身はまったく持って違うという毒婦。
その気になれば一国の諸侯や王侯でも落城させること出来るだろう。
そして、人ならざる物から永遠に愛される宿命。
(三蔵って全っっ然、坊主に見えねぇ……ってか坊主ってもっと大人しいもんだろ……?)
悟空がぼやくのも至極当然だった。
この三蔵と来たら僧侶の戒律からは程遠いような女なのだから。
相手が妖怪であれば間髪いれずに滅殺するし、食事の時でも平気で肉を食らう。
酒と煙草は切らせば怒りを買うことは必死。
そして何よりも、女僧の『三蔵』などは前代未聞のものなのだから。
栗金色の髪に、夕日を写し取ったような赤い瞳。
異国人にも似たような風貌。
(わっかんねーよ……三蔵って何者なんだぁ?)
うとうとと彼女の数珠の入った袱紗を抱きながら目を閉じる。
(あ〜〜……やべぇ……眠くなってきた……)
「!!!!」
後ろから濡れた乳房を鷲掴みにされて三蔵は振り返る。
「おお!!やっぱし美人!イイ身体してても不細工だと俺、イケないクチなのよ」
一人で勝手な理屈を展開させながら男はうんうん、と頷いている。
(……チッ……これもバケモノか……)
ぱしん!とその手を払いのけて、腕組みをしながら彼女は男と向かい合う。
「見たところこの川の主と思えるが……私に何の用だ?」
「大した度胸だな。俺に食われるとは思わないのか?」
水濡れの美丈夫は手を伸ばして三蔵の額に触れる。
「美味そうだよな、お前」
ニヤニヤと笑う男の額に同じように三蔵も手を伸ばす。
その指がつつつ…と走った瞬間に男は悲鳴を上げた。
「うぎゃぁぁぁぁッッッ!!!何すんだこのアマァッ!!!」
「手を離せ。話はそれからだ、河童」
「ほえ?俺が河童だとよく分かったね」
「水の中に居るのは水霊獣か河童の類と決まっているだろうが」
細い背中を目で追う。
器用に水を払って三蔵は法衣を身につけ、あっというまに僧侶の姿に。
「女の坊主ってのも珍しいな」
「そうか?たまには良かろう?」
正面から向かい合い、三蔵は煙管片手ににやりと笑う。
「さて、河童。名前を聞こうか」
「沙 悟浄」
「ほう……沙の姓を持つのならばおいそれと河童扱いするわけにもいかんな」
薄い唇と、金色の煙管。
僧衣がなければそのあたりの娼館で客を取っていてもおかしくはない。
「いや、どうせなら悟浄って読んでくれるとうれしーんだけどな」
「私は玄奘三蔵と申すもの、天竺への旅の途中だ」
その名を聞いて悟浄は目を見開く。
僧侶たちの中でも高位に称される『玄奘三蔵』の名を持つと言うのだ。
「あ、アンタが三蔵!?オンナだろっ!?」
「ああ、どういうわけか私が選ばれた。まぁ……鬱陶しいが仕方あるまい」
少しだけ釣り上がり気味の瞳。
その色は錆びた銅を含んだ血の色。
「さて、見たところ暇なようだな。出来ればここから出る方法を教えてもらえればありがたいんだが」
「……俺も一緒に行っちゃおうかな。天竺」
意味深な笑い方で悟浄は三蔵の唇から煙管を奪う。
「もしかしたら御馳走にありつけるかもしれないでしょ?三蔵ちゃん」
「河童なら胡瓜でも食えばいいだろうが」
赤い瞳がちらりと見据えてくる。
「それにこの当たり一体がお前の管轄だろう?おいそれと連れ出すわけには行かない」
管轄するべき主が消えればその座を狙って妖怪、霊獣入り乱れての戦が起きる。
それだけならばまだいいが、その魂胆の結果は水害や日照という形で民草にも降りかかるのだ。
それ相応の強さのあるものが統括することで戦乱を抑えるのは人も妖怪も同じらしい。
「兄貴、素直に言ったらいいんじゃないんですか?一目惚れしたって」
水面から姿を現したのは同じように水に属する精霊。
長く伸びた耳は変形してまるで魚の鰓の様にも見える。
「兄貴が前に同じように消えたのは確か…托塔李天王の奥方……ああ、あの蛇女」
「言うなよ、それ。俺も結構ショックだったんだからよ〜」
同じように水浴びをする女の美しさに見とれて寝所を共にしたまではよかった。
朝方目覚めてふと見やれば鱗と伸びた爪。
伸びた牙に食われる前にそそくさと逃げ帰る有様。
妖女はのちにナタ太子と恵岸行者を産み落とすこととなる。
「この人は無類の女好きで。悪い方ではないのですが、なんとも」
「それは十分に悪童だな。まぁいい。見たところお前もそこそこの妖気はあるようだが」
「へへ……兄貴を短期間なら貸し出し(レンタル)しますぜ。その代わりに……」
精霊はそっと自分の左腕を伸ばす。
幾重にも絡んだ女の骨。
「これ、取ってくれませんか?あなたならできるはずです」
そっと触れるとまるで砂糖を砕くように骨はさらさらと崩れて水に溶けていった。
「兄貴の巻き添え食らうのは真っ平です。さ、早めに荷物まとめて行ってきてくださいね!」
嫌がる悟空は三蔵の一喝で渋々ながら悟浄の同行を認める。
互いを「河童」「猿」と貶し合いながらも、この二人の息は合うことが多い。
一気呵成に攻める傾向のある悟空に対して攻守の均衡の取れた悟浄。
三蔵はどちらといえば後方支援。
いくら高僧といえども、生身の人間である彼女を前線に出すのは得策ではない。
そんな悟浄を迎えて最初の冬。
肌に感じる風は冷たく、吐く息を白に変えていた。
「痛ってぇ!!!もうちょっと優しくできねぇモン?三蔵ちゃん」
傷口に薬を塗りこみながら三蔵はぎろりと悟浄を睨む。
「女であればどれでも見境なく飛びつくからだ。阿保が」
「ヤキモチ?かぁわい……」
ぼたぼたと液薬をかけると再度悲鳴が上がる。
「馬鹿も休み休み言え。殺すぞ」
「十分反省しました。しっかしさ……あの猿は何モンよ」
余程疲れたのか悟空は隣室で爆睡。たいした怪我もなく悟浄とは対照的だ。
「斉天大聖といえば……お前には通じるであろう?」
「……嘘だろ?あのガキが?」
天界を追われた斉天大聖は二郎神の策略で五行山に封印されたとは風には聞いていた。
しかしながらその姿を見たものはほんの少数。
よもやあの子供がそうとはだれも思わなかった。
ましてや三蔵の従者の一人になっていようなどと。
「まぁ、俺と縁があるのは三蔵ちゃん……いや、江流童子って呼んだ方がいい?」
「……………」
どれだけ沈めようとしても、喰らおうとしても、まるで何かに守られているかのように赤子は籠と共に流されていく。
その籠を拾ったのは一人の僧侶。
彼は赤子に江流と名付け、僧として育て上げる。
「普通の化けモンなら……食えないだろうけど、俺ならいけるかもな」
「私を食ってどうする?」
「まぁ、強くはなれんだろうけども俺はそれには興味ナシ」
伸ばされた手が顎先をくいと上げる。
「食わせてくれんの?」
「天竺とやらに着いたらな。すきにするがいい」
ガラス玉を埋め込んだような赤の赫。
ほんの少しだけ開いた唇に、悟浄のそれが重なる。
「……何のつもりだ」
「俺は、美人に弱いって知ってんでしょ。こんだけ頑張ってんだからさご褒美の一つくらい出てもいいじゃん」
法衣に手をかけて、一枚ずつ落としていく。
あの日に見たよりもずっと細く、白い身体。
「ヤらせてよ。この先ずっと一緒に居るために」
「……………」
再度重ねた唇は、先刻よりもずっと重く、甘い。
入り込んでくる舌先を受けながらぼんやりと宙を見上げる。
「余計なとこは見ないで、俺だけ見てて」
上向きの胸が、ぷるんと揺れて指先がゆっくりと沈んでいく。
ほんの少し噛んだだけでも赤く滲む人間の柔肌。
脆くて、小さな、弱い生き物。
「……っ……」
背中を抱かれて、喉元に口付けられる。ちゅ…と離れては、恋しいのかすぐにまた。
肌着も全部剥ぎ取って目にしたのはあの日に見たよりもずっと艶かしい肌。
悟浄の頭を抱くようにすれば、鎖骨からゆっくりと唇が下がっていく。
「……っは……」
張りある乳房を優しく掴んでぴちゃ、と舐めあげる。
「我慢しないで、声上げて」
胸に顔を沈めて、男の指先はゆっくりと下がっていく。
しっとりとした肌に触れて、その感触を確かめる。
内腿をさわさわと撫で摩っていた指を、静かにその入口に沿わせる。
「なっ……!止めろっ!!」
柔らかい腹を甘く噛み、括れた腰を押さえつけていく。
ちゅく、と入り込んでくる指に身体は強張って、拒絶しようと収縮する。
「いいから黙ってな。俺がリードしてやっからさ、三蔵ちゃん」
片目をぱちりと閉じて悟浄は笑う。
「……っふ……」
ぴちゃ、と重なる唇。入り込んでくる舌が口腔を甘く嬲っていく。
顎先、鎖骨、舐めあげながら唇はそちこちに自分の痕跡を残す。
まっさらな布地を染め上げていくように。
「!!!」
唇全体を使って赤く熟れた突起を吸い上げる。
赤と白の交差する視界。
「ぅあ!!や……ッ!!」
味わったことなどない感覚に、身体は震えて男の指を奥へと導いく。
かりり…甘くそこを噛まれてびくりと身体が跳ね上がる。
「―――――――――ッッッ!!!!」
真白に炸裂する意識。細切れになった視界。
「……ぅ……」
「ちょっと慣れとかないと、後がキツイよ?」
ちゅるり抜いた指先を、赤い舌が舐める。
「……?」
漠然としか知らない行為。
脚を割られて入り込んでくる男の身体にびくりと肩が揺れた。
「……や……ッ……」
力の抜け切った腕で押し返そうとしても叶わず、その腕の中に抱かれてしまう。
自分の力の無さ、そしてこの身が女なのだと知らされるのだ。
(意外と可愛いとこあんじゃねぇの……)
この腕の中で震えるのは噂に名高い玄奘三蔵の名を持つ小さな女。
栗金の髪を小さく振って涙を堪える姿。
(今まで誰も手ェ付けられねぇのが分かるぜ……大した代モンだ)
高尚過ぎるものには触れられないのと同じように、この女もだそうだった。
同族の人間では触れることの出来ない気品。
その赤き瞳は何もかもを跳ね除け、平伏させるだけの力を持つ。
川流れの子供と揶揄されても、そんな半端な言葉程度では彼女の心に触れることは出来ない。
人と交わることの出来ない女。
人と身体を契る事の出来ない少女。
それ故に彼女は玄奘三蔵の名を得ることが出来たのだ。
「……力だけ、抜いて。江流……」
ぐっと膝を折られて、その先端が押し当てられる。
「…嫌……ッ!」
入り込んでくる異物をまるで拒絶するかのように、内壁は狭くきつい。
(やべ……俺のほうが先にヤられそ……)
ゆっくりと沈めるたびに小さな悲鳴を殺す唇。
乾いてカラカラのそれをぺろ、と舐める。
「……ぅ……や!!!嫌ッッ!!!」
ぐっと突き上げられて暴れ出す四肢。両手を一掴みにして自分の背中に回させる。
「引っ掻いても、何しても構わないから……江流」
腰を抱かれて最奥まで一気に突き上げられる。
「!!!!!」
半開きの口から零れるのは荒い息と押し殺した声。
重みと鋭さの交互した痛みが彼女の身体を支配していく。
「あ!……ッ!!」
ぼろぼろと零れる涙に、悪戯半分に誘った胸がちくりと痛む。
(大事にすっからさ……天竺だろうが地獄だろうが嫌でも付いていくから……)
汗で張り付いた前髪をそっと払って、形のいい額に唇を当てる。
しがみ付く様に背中に回された手。
小さな爪がくっ…と食い込む。
「……江流……」
潤んだ紅の瞳。
腰を進めるたびにぎっとその目が閉じる。
(大事なモン貰った責任はきっちり取るから。俺はどこまでも付いてく、アンタの行くとこなら)
汗ばんだ身体を絡ませて。二人分の体重を受けた寝台がぎしぎしと音を立てる。
柔らかい乳房を噛んで、転がすように唇を使う。
「……ひ……ぅ…ん!……」
腰から手を上下に滑らせて細い背中と小さな双丘を抱き寄せて一際強く繋ぎとめる。
「……っ……悪ぃ、先にイかせて……」
ぎゅっと抱きしめて小さな身体に己を吐き出す。
「!!」
注ぎ込まれる感触と背を走る感覚に彼女はただ涙を零した。
「そんなに怒んなくてもいいじゃねーの」
触れそうとする手をぱしんと払いのける。
鈍く痛む腰とどうしようもなく重い身体を抱きしめながら三蔵は悟浄に背を向けていた。
「でも、俺って好運(ラッキー)だわ、アンタの最初の男になれたんだから」
「私の人生における最大の汚点だな」
キッと睨んでくる真っ赤な眼。
「アンタ、小指一本欠けてんだな」
上掛けから覗く足首を悟浄は優しく撫で摩る。
三蔵の左足の小指は中程から綺麗に欠けていた。
あたかも生れ落ちた時からそうだったかのように。
「痛かったろ?こんな……」
「私が、私だと分かるために。死ねば只の肉槐だ。三蔵の名も、妖怪も区別は無い……」
その足首にそっと接吻する。
「天竺だろうが、地獄だろうがアンタが行くとこなら何処までも行いていく。例えアンタが嫌だって言っても。
アンタの隣でこの細い腰抱いて、きっちり守ってやるよ」
それは、素直ではない彼の告白。
「荷物持ちはもういるから、差し詰めお前は下僕ってとこだな」
のろのろと身体を起こして壁に背を当てる。
「そんなとこじゃ身体冷やすぜ?」
抱き寄せられて三蔵は訝しげに悟浄の顔を見上げた。
「何をにやけている。気色の悪い」
「いやん、三蔵ちゃんったら。俺、今……幸せの絶頂なんだからぁ」
手を伸ばして愛用の煙管を取って火を点ける。
立ち込める匂いと上がる紫の煙。
「そういや、この左腕の布は何なのよ?」
その言葉に三蔵はしゅるりとそれを解いていく。
肩口の下から肘の近くまで彫り込まれた破邪の呪文。
弱い妖怪は彼女の身体に触れるだけで消し飛ばれるその威力。
悟空と出会うまで三蔵が無事だったのはこれも理由の一つに上げられた。
「物騒だな……女の体に何てことすんだか……」
「直に触ればお前でも無事ではないだろうな。光明法師の珠玉の作だ」
「嫌な名前だな」
三蔵の手から煙管を取って口に咥える。
「ああ、そうだろうな……」
窓の枠が括った夜空。
黒紺の闇を裂く様に、真白な雪が静かに降り積もる。
罪で爛れたこの身体。
いっそこの雪のように、生まれ直すことが出来たなら……。
「さ、三蔵ちゃん?俺なんか悪いこと言った?」
はらはらと零れ落ちる涙。
指先で払ってそれが涙だと自覚する。
(ああ……まだ涙は出るのか……)
罪を背負い、贖罪のために生きることを宿命付けられたこの身体。
他人に何かを命じられることなど好きではなかった。
赤い瞳は罪人の眼。
人間ではなく、もっと他の生き物。
(贖罪のためになど誰が生きてやるものか……私は……死ぬまで私一人のものだ……)
砂漠の荒野に倒れようとも、妖怪に喰われ様とも。
最後の最後まで自分自身で選んでみせる。
「あ、それとも俺があんまりいい男だから嬉しくて?」
こつん、と煙管で悟浄の額を叩く。
「調子に乗るな。この色魔河童が」
「うわ、酷い言い方」
「桃色河童のほうが良かったか?」
いつも通りに笑う瞳にほっと悟浄は胸をなでおろす。
「雪降ってんじゃん」
「ああ……綺麗だな」
「まるで俺らを祝福してるみたい……でっ!!」
ぎゅっと頬を抓られて思わず悲鳴を上げる。
「明日の朝に積もったら面倒だ。馬鹿馬鹿しい」
上掛けに包まって三蔵は静かに目を閉じた。
思い出すのはまだ何も知らずに師の下で笑っていられたあの日々。
ただ、与えられた時間を甘受していればよかった。
「寝つきイイのね、三蔵ちゃんって……」
そっと身体を寄せて小さな背中を抱きしめる。
長い睫、小さな鼻、薄い唇。
(パーツが全部小さいのかねぇ、この人)
細い身体は頼りなく、僧侶だとは思えない。
子供のように折られた指先が、やけに愛しく思えた。
「……師匠……」
小さく呟く声。
只一人、彼女が縋って泣くことのできる男。
その存在に胸が痛む。
(見たことも無い坊主に嫉妬してどうすんだよ……勝ち目ねぇだろ、俺……)
ぐしゃぐしゃと頭を掻いて、沸いた考えを蹴り飛ばす。
「……私は……ここに居ても良いのですか……」
「…………………」
自分の居場所を探し続けて、彼女は前に進み行く。
その行く手に何があろうとも振り返ることなく。
安らぎに身を寄せることもせず、苦行だろうと、何だろうと皮肉めいた笑みで一蹴するのだ。
「……なぁ、天竺ってとこ行ったら俺みたいなバケモンでもさ、それなりになれるんだろ?」
三蔵の髪を優しく梳いて、悟浄は呟く。
「俺じゃ、あんたの居場所にはなれねぇのかなァ……三蔵……」
火遊びは大火傷ではなく、この身全てを焼き尽くした。
酒、煙草、博打が好きな三蔵法師は自信に満ちた赤い眼で自分を捕らえた。
縋るように抱きついて、涙を零した江流という女も、紅の瞳で自分を見つめた。
「どうしましょうかねぇ……この悟浄サマが本気で人間に惚れちゃいましたよ……」
しんしんと音も無く雪はただ降りしきる。
人にも妖怪にも、この真白の雪は同じように景色を変えてくれた。
冬の肌寒さは、人肌を恋しくさせる麻薬。
その麻薬以上に、この女は自分を侵蝕した。
(覚悟決めろ、俺。この先は仲間(バケモノ)と戦ってくんだぞ)
寒さに震えた肩を抱いて目を閉じる。
(惚れた女のために一生賭けたってイイじゃねぇか……俺らしくてさ……)
積もった雪に三蔵はやれやれと頭を振る。
「随分と積もったもんだ。雪ダルマの一つでも作れそうだな」
曇った窓を指で拭って外をじっと見つめる。
「三蔵ちゃんでもそんな遊びしたわけ?」
「昔な。本当に昔のことだ」
法衣を身に付けて身支度を調える。
もう少しだけ、先に進みたいのが本心だから。
「……何をしている」
敷布を抱きしめる悟浄を怪訝そうな顔が覗き込む。
「決まってんじゃん、記念に持って帰るに。俺の宝モンよ?」
「………この……エロガッパがァッッ!!!」
九環の錫杖を振り回して三蔵は悟浄を追いかける。
「そんなに走れるくらいに元気があるんだったらもう一回くらいやっときゃ良かった」
「!!」
言われてその場にへたへたと座り込む。
「あ、あれ?三蔵ちゃん……?」
ずきずきと痛む四肢。重い胎。
「とっとと運べ!下僕ッ!!」
「はぁ〜〜〜〜い」
春の訪れはまだ遠くても人生の春を迎えた男が一人。
面倒なことが増えたと頭を抱える女が一人。
世界は今日も回り続ける。
今度は年明けに持ってきますね。
では(*゚▽゚)
保守しま〜す。
213 :
名無しさん@ピンキー:03/12/30 04:41 ID:6qPYJPAH
とかいいつつsageてる漏れ…_| ̄|○スマソデス
AGEでも構わんよ〜〆(゚▽゚*)
思い切り下がった場合はよろしくです。
保守してくださった方、ありがとうございます。
来年ものんびりまったり書いていこうと思ってます。
現在骸遊戯の2、3と那咤太子の話なんかを進めてます。
サイトの方に先にUPするとは思いますが、こっちにも投下させていただきますので
来年度も娘々坊主、色物三人変神共々よろしゅうお願いいたします。
KINO〆(゚▽゚*)
KINOさんの三蔵、萌えました。
来年も楽しみにしています。
誰かps西遊記知らない?。・゚・(ノД`)・゚・。 山田章博氏がイラストの。
あれすごい萌えた…オンナノコイパーイオパーイ
フリーソフトの桂華西遊記なら……ごめんよ〜。
ゲームにはまると何もしなくなるダメ人間だからさ……でも、いい情報をありがとう。
ゲームは疎いのでよく知らないんですが、山田章博画伯の西遊記イラストと
聞いて目が光ってしまった。
そのイラスト禿しく見たいです!!!
KOEIから出てるやつね。三蔵を男か女で選べるんだよ。
ゲームとしてもすごい楽しかった。絵もすげえ綺麗だしいうことないよ!
しかも、そのps西遊記の小説も出てる。作者は七尾あきら。
男装の女三蔵が主人公。しかもなにげなく悟空×三蔵なんだよ!。・゚・(ノД`)・゚・。
おすすめです
Amazonで検索掛けてみた。
幻妖草子 西遊記―地怪篇 、幻妖草子 西遊記 天変篇
角川スニーカー文庫
こちらですね?
あわぁぁぁ。ゲームやりだすと止まんなくなるんだ。
本体と一緒に買うか!?
選ぶ間もなくわしは(ry
>>220 そそそ!゚*.(・∀・).*゚それそれ!
2つの表紙をくみあわせると1つの絵になるオマケ?つき!!
>>221 がんがれw
223 :
名無しさん@ピンキー:04/01/04 14:40 ID:RaYcN+nI
フリーソフトでベクターでみつけたんだけども、ソフトDLしないとあれですが
検索でゲームで西遊記で調べるとRPGだったかな、それとも恋愛ゲームだったかに
いっぽんあります。
三蔵と4人の女の子がって話です。
わしも、そのうちに続きを……やろう。
すんません…自分もKINO氏にPS西遊記やって頂きたい…
そして書いて頂きたい…!!
ホシュ
いろいろ大変だと思うけどKINOさんがんがって!
西遊記でギャグパロとかでも面白そうだとふと思ったり。
他の神なんかも現れないかな?
ギャグなんかおもしろいですよね〜。紅孩児とか那咤とかいますから。
エロコメとかいいなぁ……(逃避中)
ほんまにね、誰か書いてくれるとありがたいんですが。
中華物好きな人とか書いてくれないだろうか。
KINOさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています。
ところで、なんとなくキャラの性格が
最遊記のキャラに近い気がしていたのですが
KINOさんが執筆されている時イメージするキャラというのもああいう感じなのでしょうか?
最遊記、読まないんですよね。ただ、書こうと思っていろんな所を見たりはしたんですが
あまりにもかけ離れ過ぎたものは(三蔵9歳とか)はわしには出来なかったんで、ああなってますねぇ。
わしが書いてるときはどっちかっていうと先に絵が浮かびます。漫画で。
それを文にするんで、よく悶えてます。
がんばろう_| ̄|○
読み返したら意味不明ですね。峰倉氏の漫画では想定してないです。
サブキャラは被ることはないとは思うんですが(普賢や二郎神、那咤太子なんか)
長い目で、見てやってください。
ついでに。プレステは金に目処がついたらPS2と一緒にソフト買います。
しかし、自他共に認めるゲームジャンキーなのでやりだしたらクリアするまでSSに手が付かない可能性大です。
231 :
228:04/01/10 17:14 ID:i5+gib1L
KINOさんありがとうございました。
PS2、早く買えるといいですね。
こっそり。
エロあり話とエロなし話が上がってるのですがどっちも持ち込むかを考え中です。
どっちもキボーンと言ってみる。
ようやく双子登場です。あともう一人も。
これくらい曲げれば十分だろうといわれそうな曲げ方です。
金銀+紅孩児のお話です。
◆骸遊戯―双子妖怪―◆
育てた花は美しい。
水辺に咲くのは小さな水仙。
その花を取って彼は妹に手渡した。
「銀角、もうこんな華が咲く季節だね。僕はこの季節がとても好きだよ」
流れる銀の髪には赤の簪。
二つに纏めた団子髪とゆるりとしたうなじの後れ毛が愛らしい。
「金角……女々しい男だな。花なぞ一年中咲くだろうが」
赤の襦袢をだらりと着込み、銀角はのろのろと身体を起こした。
細い鎖骨が、目に入る。
「さて、と……もうじきお客さんが来るだろ?」
茶器を準備しながら金角は嬉しそうに花を愛でる。
同じ顔で、まったく違う性格のこの二人。
このあたりを管轄する双子妖怪としてその名を響かせている。
兄は金角、妹は銀角。
共に天界の閻魔帳(ブラックリスト)に名を連ねる悪童二人。
「誰が来んだよ?」
冊子を捲りながら銀角は不機嫌そうな笑みを。
「お・れ」
「!!」
ふっと首筋に息を吹きかける男の姿。
「紅!!」
「おひさし〜。銀角。俺に逢えなくて寂しかった?」
後ろから胸元を弄る手。
怒りに肩を震わせて、銀角は紅と呼ぶ男に怒鳴り散らす。
胸まで伸びた髪を頭頂部で一つに結わえた男の名は紅孩児。
牛魔王と鉄扇公主の間に生まれた所謂サラブレッド。
「ふざけるな!!誰がお前なんかと!!」
「つれないなぁ。俺は逢いたくて仕方なかったのに」
耳元を彩る水晶の飾りごと、紅孩児は彼女の耳朶を噛む。
兎にも角にもこの紅孩児、父親の血を色濃く継いだ女好き。
茶会の席で見た銀角に一目惚れした過去を持つ。
「紅。お茶が入ったよ」
「ありがと。そうだ、土産持ってきたんだ。これ、かーちゃんから」
包みのごと紅孩児はそれを金角に渡す。籠の中身は金の林檎。鉄扇公主秘蔵の果実だ。
「公主から?魔王さまはお元気で?」
「とーちゃんは愛人の所に通い詰めててさぁ、かーちゃんの機嫌がマジに悪いのよ。だから……」
「逃げてきたってこと?」
「そ、暫くやっかいになるわ。あ、俺、銀角の部屋で暮らすから何も準備しなくても……」
「勝手に決めるな!!紅!!」
背後で喚く銀角の声は無視を決め込む。
「そう?だと凄く僕も楽だな。掃除する部屋が増えなくて」
「だろ?それに未来の妻なんだから無問題」
けらけらと笑いながら紅孩児は出された茶に口をつける。
「そんなに照れるなよ、銀角」
「お前の頭蓋に脳味噌入ってねーだろっ!!!」
「入ってるよ。一日中お前のこと考えるために」
きっかけは彼の父親が酔狂に開いた茶会の席。
憮然とした表情で蓮花洞の主として席に着く彼女に一方的に恋をした。
俗に言う一目惚れだが、一瞬で心を奪われた。
たおやかな銀の髪を纏め上げて、翡翠の簪を揺らす姿。
同じ顔の兄と二人で平頂山を管轄する双子の妖怪だと聞かれた。
(綺麗な子だ……)
母の鉄扇公主も余程二人を気に入ったのか、傍を離れようとはしない。
気が弱いのか、兄の金角は公主の話に付き合っている。
妹の銀角は見向きもせずにただ黙々と杯を空けるだけ。
(気も強い。ますます好みだ)
牛魔王の血もあってかこの紅孩児、女の好みにはうるさいのだ。
外見もさることながら中身にまで事細かに注文をつけ、両親が進める婚姻話を全部蹴り飛ばした逸話の持ち主。
(決まった。俺の嫁はあいつだ)
つかつかと歩み寄って紅孩児は銀角の隣に座る。
「はじめまして。俺、紅孩児」
「……私は銀角。何か用でも?」
「ちょっと付き合って」
その手を取って円遊の場からそっと連れ出す。
それが二人の始まりだった。
もめながらも結局は押し切られて銀角は紅孩児を部屋に置くことに。
広い邸宅。誂えた部屋も同じように。
天蓋付の寝台に腰掛けて銀角はまだ雫の残る髪に櫛を入れる。
湯煙と甘い香りを従えて、滑る指先と水晶の櫛。
「だから、一緒に入ろうぜって言ったのに」
「勝手にしろ。それに私はお前と一緒になるつもりなんてこれっぽちも無い」
銀色の瞳が睨みつけてくる。
「恐い顔するなよ。折角可愛い顔してるのに」
掴みかかろうとする手を取って、紅孩児はそっと唇を当てた。
紫紺の瞳と、赤紫の髪。
少し日に焼けた肌と均整の取れた肉体。
挙げるならば頬に派手な刀傷。
逃げずに立ち向かったからと、彼は笑うのだ。
「俺、親父と違って浮気はしない。まぁ、俺ン家ってかーちゃんがああだから仕方無いかもしんないけど、
親父にまったく問題が無いわけじゃないし。俺、お前以外考えてないし」
思い込んだら一直線。
純情一途を武器に、過去の浮名は清算した。
「とーちゃんも、かーちゃんも銀角なら良いって言ってるしさ」
「だからって……」
「俺のことがそんなに嫌いか?銀角」
初めて抱かれた夜のことは今でも忘れることは無い。
後ろ手に縛られ、逃げようとする身体は押さえつけられた。
泣き叫んでも、誰も来てはくれない閉ざされた部屋で抱かれた。
正確に言うならば犯された。
不幸とは重なるもので、銀角にとってはこの紅孩児が最初の男である。
一度汚された身体ならばとその後は悪戯に何人かの相手をする日々が続いた。
代わりに紅孩児には指一本触れさせない。
結果、嫉妬に狂った男に彼女の相手をしたものは全員殺された。
土下座して怒りは解いたものの、銀角のトラウマは未だに消えてはいない。
「俺だってどうしたらいいか分かんなかったんだよ……」
甘えるように膝に頭を乗せてくる。
「悪かったって思ってる」
「それはもういい。私が言いたいのはそういうことじゃない」
そっと頬の傷をなぞる指先。
「いっそ子供でも出来てくれりゃなぁ」
「勘弁してくれ。紅の子供なんて考えるだけでも……」
銀角は頭を振る。
「絶対幸せにするって。浮気もしないし、温かい家庭作りてぇもん」
おそらく、その言葉に偽りは無い。
彼は自分を大事にしてくれ、子供が出来ればその子にも同じように愛情を注ぐだろう。
ただ、彼女が危惧するのは彼のその血。
あの牛魔王と鉄扇公主の間に生まれた男の血は、濃すぎる。
一妖怪でしかない自分の胎でその子が育つ確立は極めて低い。
「銀角」
身体を起こして、抱きしめてくる腕。
天界の武人が相手でも一歩も引くこととなく、彼は剣を振るう。
相当の数の首を刎ね、その肉を時折差し入れてくれもした。
共に天界の菩薩連中には疎まれる間柄だ。
「傷、増えてる」
肩口に出来た真新しい傷。まだ赤く腫れて、熟々としていた。
「あ、うん……」
「何時死ぬか分からない奴となんか一緒になんてなれない」
「死なねぇって。俺、強いから」
静かに倒されて、覆い被さってくる身体を抱きしめる。
乾いた唇。
「……ぅ…ん……」
指先で組みひもを解かれ、ぱさりと夜着が落とされて。
「……紅……」
少し潤んだ銀貨の瞳。
唇に指を当てて、男は悪戯っぽく笑う。
「しっ。喋んなくて良いから」
軽く手首を押さえつけて、その首筋を甘く噛む。
ほんのりと赤い痣は、自分の恋人である証拠に。
「…ぁ……や…ンッ……」
舌先はそのまま下がって、細い鎖骨へ。
ちゅ…と接吻して柔らかい乳房を舐め上げていく。
両手でぎゅっと揉み抱いて、その先の小さな乳首をかりり、と噛んでは吸い上げる。
「あ!っは……ん!…」
乳房の下に隠れる薄い傷。
つつ、となぞる度に上がる甘い吐息。
「痛かったろ?これ……」
その声に銀角は閉じていた瞳を静かに開いた。
紅孩児に抱かれたあの晩、彼女は自分の胸を刃で突いた。
幸いにも発見が早かったために一命は取り留めたのだが。
その傷は百年以上たっても、まだ消えることなく残っている。
彼女に触れるたびに、自責の念に駆られるのだ。
「……大したことはないよ。紅……」
「なんつーかさぁ。あんな錆びた刃がお前に残るものを作って、俺がお前に残せないってのも悔しいんだよな」
短刀にすら、嫉妬するこの心。
「馬鹿なことを……」
「俺にとっちゃ、大事だ」
ぎゅっと抱かれて頬に触れる唇。
重なる心音と体温。甘やかな呼吸。
白く柔らかい腹部に口付けて、そのまま唇を下げていく。
「……あっ……紅…ッ……!」
焦らすように、腿の内側を指が這う。
それを追うように、つ…と唇が触れて。
「!!」
開かせた内側に咲く赤い華。一つ、二つ、順に増えていく。
とろとろとこぼれる半透明の体液を救って、ちゅる、と塗りつける。
「んんッ!!」
甘えるような甲高い嬌声。
それは普段の彼女からは想像することの出来ない表情。
「ああッ!!!」
掠めるように、敏感になった突起を舐められる。
びくつく腰を押さえられて、追い込むようにほんの少しだけ触れてくるのだ。
「あ、んん!!!…っは……!!」
ぎゅっと敷布を握る指。
秘裂にそってさわさわと指先が摩る。
つぷ…と沈めてそのままゆっくりと内側に沈めていく。
「や!!あッ!」
ふるふると揺れる丸い乳房。
「銀華娘々、こっち向いて」
小さな顎を取って、絡むような接吻。
「!!」
唇を噛みあいながら、指先が奥で妖しく蠢く。
上がる声は飲み込まれて、縋るように抱きついてくる腕に男は眼で笑う。
引き抜いて、押さえつけたまま脚を開かせる。
「あああッッ!!!」
じれったいのは互様で、繋がってしまえば離れたくなくなってしまう。
「……っは……紅……ッ…」
潤んだ瞳が見上げてくる。
悪鬼銀娘と呼ばれる彼女の誰も知ることのないであろう表情。
染まった頬、甘えた声、濡れた肢体。
耳朶を噛んで、息を吹き掛ければ小さく震える肩。
「……っふ……ぅ……」
ぬるりと絡みつく女の感触。追い込むのも、追い込まれるのも、極楽と地獄。
括れた腰をぐっと抱き寄せて、より奥まで繋がりたくて隙間無く身体を重ねる。
柔らかい胸が触れるその甘さ。
きつく抱き合って、蕩けるような接吻を。
「銀華……」
瞼に優しく降る唇。
しがみ付いてくる腕。
そろそろと手をずらして、薄い背中と小さな臀部をぎゅっと抱く。
「んんンッ!!!」
揺さぶられるたびに、きゅん、と絡みつく柔肉の感触に眉を寄せる。
(俺、どこまで持つかなァ……なんてね)
加速する動きと、突き上げていく強さ。
敷布の上で乱れる銀髪は上等な綾織の様にさえ見える。
「あ、ああんッ!!」
薄明かりが照らす室内。絡んだ影は二つから一つに。
「…ひ……ぅ!…っは…ん!!…紅…ッ…紅……!」
甘い乳房に噛みけば、一層締め付けが強くなる。
小さな歯型とちりりとした痛みさえ、今だけは甘い痺れに変わり果ててしまう。
(相性だって……良いんだから)
びくびくと震える銀角の身体を抱きしめて、その額に、小鼻に、唇に。
本能のままの接吻を重ねていく。
「っふ…あ!!あああっっ!!紅…っ!!!!」
絡みつく脚。
女が果てるのを見て安心したかのように、男も女の胎へと精を放った。
「起きたか?」
紅孩児の腕の中、銀角はぼんやりと瞳を開ける。
「おっはよ〜。っても、まだ朝は遠いけどな」
にこにこと上機嫌で笑う顔。
「しばらくって、どのくらい居るつもりなんだ?」
「ん〜〜〜……俺的にはずっとでも。まぁ、とーちゃんとかーちゃんが納まるまではここに居させてくれ。
あの二人の喧嘩に巻き込まれんのだけは御免だ。この間だってさ、芭蕉扇喰らってここにハゲが出来てさ
いい男が台無し」
そう言って彼は額の上を指す。小さな真新しい傷が笑う。
「痛そう。公主さまは、悪い方じゃないのにね」
指先がそっと触れてくる。
「かーちゃんのヒスは治んねぇよ。ありゃあ病気だ。親父の浮気もそうだけど」
腕を抜け出して、銀角は窓を開けた。
消えかけた星と、生暖かい風。
(嫌な風……何か悪いことが起きそうだ……)
緩やかに波打つ銀の髪は、腰の少し上で風を受けてぷわん、と揺れる。
伸びた脚、細い足首、桜貝のような爪。
「銀角?」
「紅、こんな話を聞いたことがある?」
銀角がこぼすのは一人の女層と三人の従者の話。
「ああ、聞いてはいるけど……それがどうかしたのか?」
「ここも、天竺に行くためには避けては通れない場所……同胞を脅かすなら、私が出るしかない」
聞きかじった話では、数多の仲間が件の四人の前に倒れてきた。
彼等が人間の側に立つように、彼女もまた妖怪を守る立場にある。
平頂山一体は金角、銀角が統括する範囲だ。
そこをただ通るならば問題は起きない。
ただ、まがいなりにも名の通ってしまっている自分たちに彼等が何もしてこないということは考えにくかった。
「まだまだ先の話だろ?早く見積もっても、あと半年先だ」
「準備しなきゃなんないことが山のようにある。半年なんてあっという間だ」
「そぉか?俺はお前に逢えなかったこの三ヶ月、三年くらいに感じたぞ?」
窓辺に手を掛ける少女を後ろから抱きしめる。
肩口に顔を埋めて、愛しいとばかりにすり寄せて。
「単純計算で四対三か……」
「三?」
「未来の妻のためには、夫としては当然でしょう。銀華」
何かを言おうとした唇を塞ぐ。
離れ際の名残の銀糸を断ち切って、紅孩児は悪戯気に笑った。
「これで、ここに長期滞在する理由が出来た。あ〜〜〜、あの長くて暗かった三か月分を取りもどせる!!」
天界でも恐れられる男のたった一つにして唯一の弱点。
落ちてしまった恋は、今更鎮めることは無理な話なのだ。
「まずは、今後のこともちゃんと考えないとな。式の日取りとか、誰呼ぶかとか。俺んちもそうだけど、
お前のとこも親族多いからなぁ……」
「紅!!」
「そういうことをゆっくり考えるために、半年後にやってくる災難を潰すことも考慮しないとな」
滅多に見せない真面目な顔で男はそんなことを言う。
彼にとって大事なのは、大義名分でも絶対正義でもなく、ただそこに居てくれる彼女に他ならないのだから。
彼女が剣を取り、参戦するならば自分は彼女の剣と盾の両方になろうと。
「心配はいらない。ほら、俺強いから」
「……紅……」
「そんな顔もしない。銀華、笑って。そのほうがずっと良い」
きっかけは錯覚でも、今ここでこうしているのは自分たちの意思なのだから。
ちゅっ…と重なる唇に、彼女は目を閉じた。
「んじゃ、二回せ……」
「調子に乗るなッ!!」
ごつんと派手な音を立てて、銀角の拳が紅孩児の頭に振り下ろされる。
「俺、痛いのは好きじゃない〜〜〜もっと優しくして」
「知らん!!とっとと寝ろッ!!」
ぎゃあぎゃあと騒がしい二人を無視して、金角は一人で書を紐解く。
銀角が銀華娘々と言われるように彼の名は金圭童子。
一見すれば物静かに見えるが、鉄扇公主の秘蔵と称される実力者だ。
(うるさい二人だなぁ……何だかんだ言っても好きあってんのはバレバレなんだけどねぇ)
同じ顔をした双子妖怪。
妹の気持ちは兄にも伝わっていた。
同様に、同じ男として紅孩児の気持ちも理解できる。
(さて、僕はこれを使いこなせるようにならなきゃね。半年もあれば十分だろうけども)
赤の組紐が彩る瓢箪を、金角は灯篭に翳す。
(来るならおいで、玄奘三蔵。僕は妹ほど甘くはないよ)
金の猫眼が小さく笑う。
喧騒と静寂。
同じ顔の双子はまったく違う顔で笑っていた。
まずは先にずっと出せなかった金銀、紅孩児を持ち込ませていただきました。
彼が出てるので、当然ながら彼の両親の話もあります。
出てくる面子がメジャーどころになってきてるので、わりと書きたいネタも沢山。
双子話はちょっと長くなるかもしれませんが、気が向いたらお付き合い下さい。
PSの西遊記って普通のPSでも出来ますかね?2専用?
それによって買うハードが変わるかも。
2専用なら2買って、一緒にDQ4買うつもりのKINOです(駄目人間代表)
本年度もよろしくおながいします(*゚▽゚)
乙です!
三蔵たちが彼らと会うときが楽しみですね…!
紅孩児の親の話も気になる
ちなみにPS西遊記は普通のPSでできますよ!
こちらこそ今年もよろしくお願いします
KINOさん乙です!
紅孩児×銀角ラブラブで萌えますた!
三蔵といい、銀角といい女の子が可愛くてウハウハでつ。
今後の三蔵一行との絡みが楽しみですが、金銀が死んじゃいそうで怖い…。(苦笑)
ところで紅孩児の愛称は「こう」でいいのでしょうか?それとも「くれない」?
普通のPSでもOKなのですか。どっちを買おう(*゚▽゚)ポルァ
はたして「とーちゃん、かーちゃん」なんて呼ぶんだろうか。
わしの書く、紅孩児はこんな香具師です。
読み方は「コウ」です。これは完全な自分の趣味です。
雪降って辛いですが、中国の寒波は日本以上なんですよね。連中あんな薄着で……
250 :
248:04/01/19 02:38 ID:NQgNVc3y
「コウ」でつか!わざわざ答えてくれてどうもです。
PSの西遊記私も持ってますが、おすすめですよ。
安いし、山田氏の絵が美麗だし、キャラが凄く立ってます。
でもSRPG苦手なんで、途中で止まってますが…(´・ω・`)ショボーン
上げてしまった…_| ̄|○
保守。
保守。
KINOさん、いろんな作品のパロ書かれているからなー
でも自分は、西遊記非常に楽しみにしてますんで。
先日本屋で西遊記を立ち読みしていて思ったんだが、三蔵女体化も萌えだが、
ふたなりでも萌えるのではないだろうかと思った。
KINOさんのすこーしやさぐれた感じの三蔵は萌えなのだが、頑なに仏教の教えに
身を捧げようと天竺への旅をするのだが、フタナリの淫乱な躰がそれを妨げるって
感じで。
僧侶のストレイシズムに色気を感じたりする。
やさぐれ……凄いうれしい一言だ・゜゚・*:.。..。.:*・゜シャラ(*゚▽゚*)ンラー!゚・*:.。. .。.:*・゜゚・
ふたなりいいっすね〜。どっかで何かで使おうとはおもってます。
西遊記でも、もいっこの中華でも。
お坊さんの袈裟って色気がありますからね。
しかし、職場の目の前の交差点を坊さんが原付で袈裟を靡かせて華麗なコーナリングしたときは
どーしようかと思うほどの衝撃を受けました。しかもフルメット。
坊さん、ちょっと漢だと思ったほどです。
ホシュ
256 :
名無しさん@ピンキー:04/02/03 04:41 ID:nN2O4wH4
あげ
圧縮が近いようですね。
落ちたら、落ちたと思うんで成り行きに任せます。
保守してくださるかた、ありがとうございます。
しかしながら、恐らく八割の方が望むようなSSは書けない様な気がします。
そして、今後も。
元々自分勝手に作ったスレです。
必要ないと思われる方が多いのならばこのままDATでも構いませんので。
保守
保守
保守
保守
>
保守
圧縮近いみたいですね。早ければ今週末?
リアルが忙しくてなにもできてません。現段階で出来るのはサイトにUPしてる
エロなしものを投下するくらいです。
エロパロにエロ無しはNGだと思ってるんであれですが(*゚▽゚)
捕手
KINOさんそんなこといわんで下さい。
保守カキコも荒し認定されることになったようですね。
今後スレの保守が難しくなりますね・・・
何も投下しないよりはしてみたほうがいいかと一考。
のんびりと続きを書いてますがどうにもこうにもリアルが忙しいです。
ただ、落ちてもいいと思ってるのはあります。
元々わがままで立てたスレです。物語として読めるように書いてきたつもりはありますが。
読んでくれてる人も、多分2,3人かな?
そんでも、ありがとう。それしかいえないや。ありがとう。
◆骸遊戯――悪知恵勝負――◆
じゃらじゃらと部屋の中に響くのは麻雀牌の擦れ合う音。
円卓を囲むのは悪童四人。
それぞれが曰く付きの過去を背負う面々だ。
「さっきからず〜〜〜っっと親、変わってねぇよ」
牌を一つ持って悟空が呟く。
煙管を咥えながら煙を吐くのは玄奘三蔵。
配牌を見ながら眉を寄せる。
「まぁ今のところ俺様の一人勝ちってとこだしね〜〜」
「ムカツク男ですね。その減らず口、すぐに塞いであげますよ」
ぎろりと八戒は悟浄を睨む。
「俺のお口、塞いでいいのは三蔵ちゃんだけ〜」
「じゃあ、その三蔵ちゃんは俺がいただいちゃおうかな」
軽やかな声に四人の目線がその方向に一斉に向けられる。
三蔵の首を優しく抱きながら、男にはニコニコと笑う。
「寂しくてね、逢いに来ちゃった」
「……さっさと離れろ。その首飛ぶぞ」
三人の妖怪はそれぞれの武器を持って男を取り囲む。
紺色の瞳が静かに三人を捕らえた。
「菩薩に勝てると思うなよ?妖怪風情が」
「……菩薩程度に三蔵は渡せませんね」
首元に槍を突きつけて八戒は普賢を見据える。
能力の上ではこの三人が束になってもこの男の頬に傷一つ点けることも不可能に近い。
それでも売られた喧嘩はきっちりと買うのが三蔵一行の流儀だ。
「大体菩薩がこのようなところに何用ですか?」
「ん〜〜〜……房友に逢いにき……」
全て言い終わる前に三蔵は普賢の首を腕でギリギリと締め上げる。
引きつった笑いとひくつくこめかみ。
「……苦し……待って……」
「誰が、誰に逢いに来たって?んん?」
なおも力を入れる。その度に普賢は小さな悲鳴を上げた。
呆然とその姿を見ながら三人はそれぞれ顔を見合わせる。
(なぁ、あれ……本当に普賢菩薩か?バッタモンじゃねぇの?)
(間違いないですよ。本物です。しかし、三蔵……相手が菩薩だろうがなんだろうが容赦ないですね)
(俺も三蔵ちゃんになら締められてもイイ……)
ごきっと派手な音を確認すると三蔵は静かに普賢から身体を離す。
「馬鹿が……面倒なことばかりだ」
こきこきと首を鳴らして、法衣の埃を払う。薄い爪が陽を浴びてきらきらと輝いた。
「三蔵、相手が菩薩だろうと容赦ないですね」
「菩薩だろうが妖怪だろうが馬鹿に変わりは無い。まったく」
その手を取って八戒は静かに囁く。
「普賢菩薩が居るならば恐らく二郎神も居ますね。どうしますか?」
「何も。煙草が切れたから買いに行かせるくらいだ」
真紅の硝子球がにやりと笑う。
薄い唇が浮かべる笑みは彼の人よりも余程菩薩に見えるかもしれない。
その笑みに反する悪女は、相手が菩薩であろうが妖怪であろうが、そして人間であろうがその全てを魅了するだけ。
「顕聖ならまだ来ないよ」
痛そうに首を回しながら普賢が呟く。
手を天にかざして一振りすると光が生まれ、その光が消えるころ普賢は従者風の格好に早変わり。
首には大きめの水晶の飾り。金連鎖に繋がれたそれは彼の中性的な魅力を更に盛り立てる様。
「少しの間だけ、俺も一緒に行こうかな。三蔵のこともっとちゃんと見たいしね」
「それは、死出の道を一人で歩きたいという意味に捉えてもいいですか?」
穏やかな声とは裏腹な八戒の言葉。
「違うだろ?菩薩の肉を御馳走してくれるって事じゃねーの?」
深緑の眼がにやりと笑う。
「俺、男の肉は嫌だな。硬いじゃんか」
手を頭の後ろに組んで、悟空は欠伸をしながら首を回した。
中身の切れた煙管を手に三蔵は四人を見渡す。
「下僕が一人増えるだけのことだ。馬鹿馬鹿しい言い合いはするな」
「俺、好きな子には尽くすほうだよ。三蔵」
赤と対を成す紫紺の瞳。
「それに……今回ばっかりは俺たちにも責任があるからね」
「責任?」
煙管で円を書きながら三蔵が呟く。
「こんくらいは」
「隙間無く指くっついてんじゃんか」
普賢の指を見て、悟空は悟浄のほうを見る。
「お前にしちゃあいいとこ見たな。まぁ……面倒なことは避けて通りたいけどねぇ」
今度はちらりと八戒のほうを。
「ええ。でも、面倒なことは起きる前に目を積んだほうが良くないですか?」
三人の視線は一人の女に注がれて。
「まったくだ」
薄い唇の笑いは、何かの始まりを告げるようだった。
寝台に腰を降ろして、竹櫛で髪を梳く。
月光は彼女の栗金の髪をより艶やかに変える魔法の粉。
「三蔵、起きてますか?」
「ああ」
八戒の声に三蔵は櫛を置く。
「三匹はどうした?」
「麻雀してますよ。普賢菩薩は二人よりも下のようです」
笑いながら八戒は三蔵に小さな袋を手渡した。
かさかさと開けば中にはぎっしりと詰まった焼き栗。
甘い匂いが部屋の中にふんわりと漂う。
「私が食いたいとよく分かったな」
「煙草と甘味が切れると、機嫌が悪くなる。最初に気付いたのは悟空。焼栗の屋台を見つけておいたのは悟浄。
買いに行ったのが僕です」
皮を外して剥き身を口にする。
ほろほろとした甘い味。
「つまり、新参者なんかには負けないってことですよ。三蔵」
今この瞬間は仲間でも、いつ何時敵になるか分からない相棒たち。
何個か剥いて、三蔵はそれを八戒の掌に。
「?」
「食ってみろ。たまには私に付き合って」
「そうですね。それもいいかもしれません。貴女と口にしたものなんて清酒くらいしかありませんからね」
八戒にしては珍しい、困ったような笑顔。
口にしてその妙な食感と甘さに首を捻る姿に彼女は口元を押さえて笑いを噛み殺す。
「なんだか不思議な味ですねぇ。例えるなら……ああ、年若い女の肉ですね」
「ははは。まだ食いたいと思うか?」
「ええ、貴女限定で」
隣り合わせに座って、男は珍しく女の方に凭れ掛かる。
「どうした?」
「菩薩とは気が合わない……合いたいとも思わないけれども……男の菩薩に用は無いんです」
「本態、出かかってるぞ」
そっと手を伸ばしてその頭を抱く。
青年の姿はゆっくりと歪んで、伸びた耳と青白い肌の一匹の妖怪に変わり始める。
空いた手で煙管をとっていつものように煙を吸う。
「疲れたか?」
「……少しだけ。天界の住人は忌まわしいことしか思い出させない……」
閉じた瞳。いつもよりも鋭く伸びた爪。
普通の女がその過程を見たら悲鳴を上げて逃げるか、その場にへたり込んでしまうかどちらかだろう。
赤い瞳は別段何も変わらないように見つめて、優しく抱き寄せる。
「……貴女みたいな人間が多かったら、きっと僕たち(妖怪)との関係も変わっていた……」
「そうか?見境無く喧嘩を吹っ掛けてくる奴ばっかりじゃ、世も末だろう?」
妖怪であろうとも、天界の菩薩であろうとも彼女の前では全て一固体に戻る。
分け隔てなく接するのはある意味本当の慈悲なのかもしれない。
そんな大層なものではないと、彼女はいつものように煙管片手に皮肉めいた笑みを浮かべる。
「先は長いんだ。焦らずに行こうぜ」
「ええ……」
肩を寄せ合って、只二人。
この空間で呼吸を合わせるもの良いもの。
「ついでだ、本体見せてみろ」
「え……」
「聖人君子の真似事は疲れるだろ?私もだ」
窓を開けて風を取り込む。
月光は妖怪の姿をその下に余すことなく晒す魔性の粉。
「外に出ないか?」
夜着の裾を風が悪戯にたくし上げる。
「ここ、二階ですよ?」
「飛べるだろ?」
人間形態を維持するにはそれ相応の妖力が消費される。
本来の姿になったほうが何かと有利なのだ。
半妖のこの姿。
完全体ではないにしろ、宙を舞う位は造作なかった。
それに外に出るには件の三人の居る部屋の前を通らねばならない。
いざこざは出来れば避けたい状況だ。
普賢菩薩が絡んでいるのならばことが拗れるのは必至だから。
「ちゃんと掴まっててください」
「お前が私を落とさないようにすればいいだけだ」
不遜な態度にも、もう慣れてしまった。
「そうですね。行きますよ」
巨大な月を背負いながら、二つの影が浮かび上がる。
感じる風は少しだけ冷たい。
あたりを見渡して選んだのは大木の枝。
「良い場所だな」
月光は八戒の姿をゆっくりと変えていく。
碧眼は歪んで錆びた紅に。黒髪は白銀に。
頭蓋をぐるりと囲むように伸びた角。
「まぁ、その爪だけは切れ」
言われて彼は苦笑しながら伸びた爪を切り落とす。
自分と同じか、それ以上生きてきたであろう樹木。
「その方が良いぞ。私の好みだ」
「普通の女なら逃げるか、叫んで失神するのにな」
房事の最中、うっかり人間形態が解けてしまったことも何度かあった。
そのときの女たちはいまや彼の肉となっている。
いや、すでに死滅した細胞として処理されたかもしれない。
「あははははッ!!それではまるで私が普通の女ではないようだな」
素足をぶらりと揺らして笑う三蔵の声が響く。
栗金の髪は月光の下、まるで銀のようで。
赤い瞳も、自分と同じようにしか思えなかった。
「まぁ、普通ではないかも知れん。それでも……極力普通でありたいとは思う」
懐から袋を取り出して、かり…と焼栗を口にする。
「あんた、妖怪を従者にしてるって天界じゃいい笑いものになってるらしいぞ」
「心外だな。焼栗の美味さも、苺の甘さも、餡蜜の芸術性もわからんような連中に私の下僕を馬鹿にする
資格などないと思うが。お前等を馬鹿にしていいのは私だけだ」
二個目を放り込んで口を動かす。
甘いものにめっぽう弱いこの女僧はけらけらと笑って。
「変わりモンだ」
「お前もだろう?」
三個目を口にして、そのまま三蔵は男の唇にそれを重ねた。
口移しで入り込んできたそれを咀嚼して、八戒は苦笑する。
「甘いだろ?」
「ああ……滅茶苦茶に」
「でも、私が食ったのはそれ程甘くは無かった」
ざらざらと膝の上に広げて、一つ一つを小さな指がなぞっていく。
「なぁ、ハチ。私たちはこの栗と同じだ」
同じように焼いても、大小違えば味は異なってくる。
同じ栗でも、完全に同じ物など無いのだ。
均等に与えられた魂は、人も、妖怪も、菩薩もみな同じ。
違うのはその道を自分でどう選ぶかということだけ。
「笑ってやれ。甘味の良さも分からぬ菩薩風情に何が出来ると」
「……そうだな……」
こぼれそうになる涙。堪えても、奥から湧き上がる。
それは涙だけではなく、知りえなかったはずの感情。
「甘いのは、栗じゃなくてあんただ」
幹にも垂れて目を閉じる女を抱き寄せる。
「私を食いたいならば食えばいい。ただし、天竺に着いてからだ。それまでは私の命令に従え。約束は破らない主義だ。
天竺に着いたら好きにしろ。あの二人と分けても、お前一人でも」
腕の中に居るのは柔らかく、甘い香りの極上の肉。
それでしかなかったはずなのに。
自分でも制御しきれない何かがあった。
「どうかしたのか?」
怪訝な顔。
そっと頬に手を伸ばして触れるだけの接吻をした。
考えても、触れるだけの行為は初めてで。
柄にも無く鼓動が早くなるのを感じた。
「……あんたが、好きだ。これもあいつらの計算の中に入るのか?」
「連中にそこまで頭は無いだろう?悪知恵合戦ならお前のほうがずっと勝ってる」
同じ色の瞳。
同族であってくれたらと思う儚い願い。
「惚れたか?」
「完敗した。悔しいけど……俺の負け」
くしゃくしゃと男の髪を撫でる指先。
「そうか。それは残念だな」
そのまま胸に顔を埋めると、その指がそっと抱いてくる。
「覚えてないけれども、母親ってこんな感じなのか?」
「さぁな。私にも分からん。母親って生き物は」
「……あんたも知らないんだよな」
柔らかい胸の感触も、何度も味わった筈だった。
同じように抱かれても、今までとは違う甘さ。
胸を締める付ける何か。
ただ過ぎるだけの時間の心地よさ。
「この地に来てから面白い話を聞いた。一つは普賢から。もう一つは水辺の妖精からの依頼だ」
「それを俺に話す理由は?」
「さぁな。悪知恵効かせて自分で考えろ」
笑う月と女。
「双子の妖怪だと。面白そうだ」
「報酬は期待できないんだろ?」
「前金で貰った」
ちゃら…と胸の谷間から引き出したのは輝石の首飾り。
「売ればいい金額にもなるが……お前なら分かるよな?」
「破邪の石か?」
「馬鹿。こんだけ綺麗なものを何が楽しくて他人に譲らねばならん。これは私のものだ」
小さく「普通のオンナの様だろう?」と付け加えて。
笑い声が二つ。
月明りに溶けていく。
「明日、街の重鎮と話をつける。妖精が困り果てるのに人間がそうでないはずがないからな。口下手な私に
代わって弁の立つ男が居るから助かるよ」
にこにこと笑って、彼女は男の額に唇を落とす。
「そりゃどうも」
「焼栗、食うか?」
「そうだな。天竺に着くまであんたが食えないんだから。甘い物で我慢するか」
ほろほろと甘い焼栗。
「面倒な依頼だ。双子妖怪……どうも嫌な予感がする」
「前金もらったからにはやらなきゃなんねぇんだ。菩薩でもなんでもあんたの下僕だろ?好きに使えよ」
「そのつもりだ。ただ……」
「?」
「煙草が切れて苛々する。それをどうにかしたいのだが、この街には私の愛煙が無い」
代わりだといわんばかりに三蔵は栗を口に入れる。
「いい機会だ。煙草止めな、三蔵法師さん」
「難しい注文だ」
素足に触れる風。
もう少しだけ、このまま時間を過ごしたかった。
と、続きます。金銀の話は多分読む人の期待に添ったものにはならないかと。
お付き合いいただければ幸いですが、圧縮もあることですし運は天に任せます。
やはり面白いな。
あの勧善懲悪な西遊記を、
こんなにも味わい深い大人の楽しめる読み物に昇華するKINOさんの力量は流石だと思うし、
これからの展開が本当に楽しみです。
この大河をどう料理するのか・・・
興味は尽きません。
金銀の純愛が引き裂かれるだろう展開を予想していますが、
そのカタルシスをどう表現するのか、
はたまた私なんぞの予想を軽く鮮やかに覆されるのか。
よい意味での裏切りを期待しています。
>279
ども〜〜。あんまり褒められることがないのでちょっと嬉しいKINOです。
西遊記で三蔵の口癖が「ひもじい」ってのは無かったことにして書いてます。
悟浄や八戒も結構、酒好き女好き、悪戯好きで。寧ろ悟空のほうが頼れる人物ですしね。
神様方や紅孩児とかも多分もっと真面目なんでしょう。けど、わしが書くとこんな感じで。
そして、続きです。
骸遊戯――誤算――
「とりあえず聞け。お前等」
煙草がないとこれほどまでに機嫌が悪くなるかと言われる女が口を開く。
「大事なのは連携を組むことだ。だから……そこ!!」
掴み合いをしている普賢と悟空を睨む。
「だって、こいつ俺の頭バカスカ叩くんだぜ」
「手を置くのに丁度良い場所にいるからね」
掴みあう二人の間に入って三蔵はそれぞれを睨みつけた。
柘榴石の瞳に捕らえられればさすがの菩薩も身動きが取れない。
「普賢。悟空に手出ししていいのは私だけだ。覚えておけ」
「三蔵がそう言うなら」
にこにこと笑って普賢は三蔵の手に唇を当てる。
「その首刎ねられたくなかったら俺の三蔵ちゃんから離れな」
「まったくです。人のものに手をつけてはいけないと幼少の頃に習いませんでしたか?」
「邪魔だから、どけ!!普賢っ!!」
三人ばらばらの理由でも、徒党を組む目的は同じ。
「だから、それが連携ってやつで……」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ四人は自分の話しなどまるで聞いてはいない。
ため息は噛み殺して、先刻仕入れたばかりの長身の刀を光に翳す。
うっとりと輝きながら、刀身はまるで血を求めるかのように笑う。
(そういえば……そろそろだった気も……)
どうやっても身体は女であることを拒みきれない。
自覚した瞬間に血の気が失せていく。
(あ……ヤバ……イ……)
くらくらと回る景色と失速する意識。
木の葉が落ちるように身体はゆっくりと崩れていく。
「三蔵!!??」
遠くで誰かが呼ぶ声。
それが誰なのかを識別する力は、彼女には残ってはいなかった。
「あ、気が付いた。良かった。いきなり倒れるから驚いたぜ」
額に触れる指の冷たさに目を閉じる。
「人間って、大変なんだな。特に……女って」
多少言いにくそうに悟空は口篭る。
「面倒に見えるか?私でも」
「顔、真っ青だったしな。着替えは……悟浄がした。薬はハチの調合だから安心して飲んでいいと思う」
褐色の指が、心配そうに頬に触れた。
「俺、何したらいんだろうって……三蔵が痛がってんのに、何もできねぇ……」
鈍く重い痛みは、下腹部を中心にして全身を支配するかのよう。
寝返り一つ打つだけでも、ずきんと痛みが四肢を走るのだ。
微熱と気だるさ。
呪わしく、恨めしい女の身体。
「ここに、いてくれればそれで良い……」
痛みに弱いわけではないが、甘やかされれば弱くなってしまう。
「なんか、食いたいものとかないか?」
「……苺……と、飴……」
小さな声。普段の悪態は何処に行ったのかというような甘い音色。
子供のようなものを好む女僧は、照れ隠しに毛布の中に顔を埋める。
「他には? 何でも持ってくるよ」
「……黒糖衣の餡蜜……」
「他には?」
「……葛湯……甘い奴……」
消え入りそうな声。それでも、何かをいわれれば嬉しく思ってしまう。
「分かった、今持ってくるから!」
「ちょっと待て!!残り三匹はどうした!?」
思わず悟空の上着の裾を掴む。
「ん?何か、このあたりを管轄してる妖怪が来て、話してる。普賢はどっかにフケた」
「……それは随分と珍しいことを……」
起き上がろうとするのを、悟空はそっと制する。
「寝てろよ。たまには俺らに任せろって」
「だっから、三蔵ちゃんは二日目で唸って起きれねぇの。話は後日ってやつな」
自分たちにあれこれと話す水妖に二人はあんぐりとするしかなかった。
「悟浄、初日の間違いじゃないんですか?どっちにしても起きれないのは間違いないですけれども」
咥え煙草の妖怪二人。大人しくしていられるのは女の前でだけ。
その女が居ないのならば、相手に手加減をする必要は無い。
「それとも、ここで俺らとやるか?平頂山の双子妖怪。負けねぇぜ?俺らは」
その声にぎりぎりと銀角が唇を噛む。
「それ以上俺の妻と義理の弟馬鹿にすんのは止めて貰おうか?」
手には双頭の長槍。結ばれた帯は真紅で飾りには小さな銀の鈴。
何処にいても心は共にあるようにと、祈りを込めた御守りだった。
「紅孩児」
「ほう、焔天大帝の息子か」
指先で煙草を弾いて同じように、宝杖を構える。
「新調したんですか?」
「そ。ようやく俺のカワイコチャンが来た。これで……」
一振りすれば頬を裂く様な冷気がざん!と生まれる。
「本気でやれる。ちょっとは三蔵の前でいいとこ見せねぇと再度封印だ」
妖気は絡み合い、あたりの空気の色さえも変えてしまう。
人ならざるもの、それも悪名高い妖怪ばかりがこの地に揃い踏みしているのだ。
雑魚や土地神は震え上がって顔すら見せない。
「どっちにしろ、肝心の三蔵法師がいないのに野郎とやりあう必要はねぇだろ。銀華」
後ろに下がらせた銀角を制して紅孩児は二人を見る。
「どうせならばお互いに万全の状態でやりたいじゃねぇか。なぁ、捲簾大将」
その言葉に悟浄は眉を顰めた。
捨てたはずの名前。彼にとっては呪いの言葉に等しかった。
「そうだな、聖嬰大王」
互いに飛ばした嫌味は小さなもの。
「俺の相手は決まりだな。八戒、お前は?」
「女の子には女の子で。ならば僕は金圭童子、あなたで」
日時は七日後。
ひらひらと手を振って紅孩児は銀角の肩を抱いて姿を消した。
「紅!!余計なことを!!」
自室に身体を置いて、銀角は紅孩児の胸倉を掴む。
「そう怒るなよ。さっき、かーちゃんから葡萄と林檎貰ってきたんだ。ほら」
籠に入ったのは金の林檎と真っ赤な葡萄。
人の肉よりもずっと甘く喉を潤してくれる果物。
「悪阻、酷いんだろ?顔が真っ青だ」
額に浮いた汗。彼女の腹には小さな命が宿っていた。
気が付いたのは二月ほど前。妙なだるさと不快感にまさか、と考えた。
思い起こせば子供が出来ていてもおかしくはないのだ。
「俺も親父か〜〜〜、やっぱ女がいいなぁ。そんでパパとか呼ばせて……いや、父様も捨てがたいな」
まだ膨らみも見せぬ柔らかい腹を、優しく撫で擦る手。
「銀華娘々、機嫌を直して?」
「子供扱いするな。紅」
ぱしん、と手を払いのけて銀角はそっぽを向いてしまう。
「ごめん。そんなつもりじゃないよ。けれど……」
小さな膝に頭を乗せて、母体となった腹に頬を寄せる。
「嬉しいんだ。早く会いたい」
そっと髪を解いて、指を通す。さらさらと流れる真紅の髪。
「赤くなってる。何をした?」
「まぁ……その……親父に稽古つけてもらった。半端な色から真っ赤になっちまった」
日に焼けた肌。ここ数ヶ月、紅孩児が朝から晩までどこかに出かけていたのは分かっていた。
夕刻になれば帰ってきて、何食わぬ顔で自分を抱く。
「銀華。死ぬまで俺と一緒に居てくれ」
左手を取って、紅孩児は四番目の指に小さな指輪を。
銀の輪の中に小さな紅玉。きららと輝いて、細い指を彩る。
「自分で作ったからあんまり綺麗なモンじゃないけどな」
「紅……」
ぽろり。ぽろり。こぼれる大粒の涙。
この男は自分を縛り付ける甘い鎖。
触れられるたびに弱くなっていくのが分かるから。
「俺、また何かやったか?銀華」
違う。と彼女は首を振る。それでも溢れる涙を抑えることは出来なくて。
子供を宿してから、自分はこんなにも脆くなった。
感じる命の息吹。
これから膨れていく腹を見ながら未来を思うのだ。
けれども。
「紅」
男の胸の中、少女は小さく呟いた。
「……今、言わなければもう、言えないと思うから……」
「銀華?」
「……好き。大好き。ずっと、ずっと……」
子供が生まれることは未来永劫、無いと彼女は考える。
妖怪である以上、同胞を守るのは管轄主の役目だ。
恐らく自分たちは生き残ることは出来ないだろう。
「お前……まさか死ぬ気か?」
「………………」
小さな頭をかき抱いて、紅孩児は唇を噛む。
銀角は一度決めれば自分の意思を曲げることは無い。
死ぬならば相手を道連れにするタイプだ。気性の激しさは母である鉄扇公主に通じるものがある。
「銀華。死なせない、絶対に」
抱きしめて額に唇を落す。
悪鬼と呼ばれても、悪女と揶揄されても、彼にとって彼女以上の女はいないのだから。
「……や……御腹が……」
寝台に倒して、真っ赤な襦袢を剥ぎ取って。
丸く柔らかい乳房二つ。包むように揉んで唇を当てる。
「母親になるには……ちょっと細いな。悪阻が酷いから仕方ないか……」
ぺろり、と舐め上げて軽く噛む。
「あ、やだ……ッ……」
きゅっと摘んでは、左右の乳房の線に沿って唇を這わせる。
掌よりも少し大きめのそれは、いずれ産まれ出る子供のもとなる。
それはそれで悔しい、と彼は笑うのだ。
「今日は随分と……色気のあるもんつけてるよな……」
腿を彩るのは黒のフリルで飾られた吊帯(ガーター)乳白色の肌に吸い付くように存在を誇示する。
赤く染まった爪。幼い顔立ちに相反する魅惑的な身体。
「それは……っ!!」
吊帯はそのままに、下着だけを剥がせていく。
「俺の趣味だもんな。こういうのは……銀華」
舌先は下がって窪んだ臍を舐める。
愛しげになだらかな腹に接吻して噛跡を付けながら指と舌はそろそろと目的の場所を目指す。
「あ!!や、いや……!!」
ぴちゃ…と音を立てて口唇が秘所に触れる。
肉壁に舌を這わせて、こぼれだす愛液を舐め取ってはじゅるりと吸い上げていく。
「……っは…あ!!あ、んんッ!!」
内側で蠢く舌の熱さ。この身体はこの男に開発された。
きっかけは錯覚でも、今こうしているのは自分たちの選んだ結果なのだから。
「銀華……」
指先で入口を押し広げられて、銀角はぎゅっと目を閉じる。
「きゃ……ッ!!!あァン!!」
唇で敏感になった突起を包むように吸われてびくんと大きく腰が揺れた。
逃げられないように強く細腰を抱く腕。
突付くように舌はそれを攻め上げて、その度に切なそうな声がこぼれる。
「…あ!!あァっ!!!や……」
親指で唇を拭って、腿に指をかけて左右に開かせ身体を割り込ませて。
「!!!」
太杭に貫かれる感触に、仰け反る喉元の白さ。
小さな尻を揉み抱いて体勢を変えていく。
向かい合わせ、互いの胸が触れあるように抱きしめあって噛み付くような接吻
下から打ち付ければその度にきゅんと絡んでくる襞肉とぬるつく体液。
「あ!!や……っ…!!」
対面座位は彼女にとっては好まないものの一つ。男の手で良い様にされてしまうからだ。
「……紅……」
両手で紅孩児の頭を抱いて唇を求める。
「……腹の子供には、ちょっとばかり我慢してもらうしかないよな……」
「……馬鹿……」
耳まで真っ赤に染めて睨んでも、幼さの残る顔。
「ん〜〜〜、やっぱ銀華は可愛い」
ぺろ…と頬を舐められて、竦む肩。
銀髪から覗く小さな角は、子供を宿したものの証。
それを指先でさすって、紅孩児は目を細めた。
「あったかい家庭、作ろーな。良い親父目指すからさ」
「……うん……私もなるべく小言は控えるよ、紅」
括れた腰を抱き寄せて、ずん…と突き上げる。
その度に胎児が嫌がるかのように、奥のほうで何かが弾けるのだ。
「これから、どんどん膨らんでくんだよな……楽しみだ」
下がり始めた子宮はいつもよりも鋭敏になり、彼女を追い込む。
「あ……っは!!!ぅん!!」
ぢゅく、じゅぷ、と絡む音。腰を振る数を数えれば、指は幾つあっても足りない。
「……ひ…ぁ!!やぁ…ん……!!」
突き上げながら濡れた指で熟れた突起をくりゅ…と摘み上げる。
肌に感じる鼓動の速さと女の甘い匂い。
(銀華、片親じゃ切ないだろ?子供は、二人で育てるんだ……)
今こうして縋るように、自分に頼ってくれればどんなに幸福感を得られるだろう。
けれども、平頂山の主としてのプライドがそれを許さないのだ。
気の強さ、強固な意思。それに惹かれてしまったのだから。
(心配すんな……俺が守ってやっから。お前も、子供も)
自由気儘に女を変えるのはもう止めた。それだけの価値がこの少女にはあるのだ。
抱きしめて、一際強く突き上げる。
「あ!!!あああァっっ!!!」
ぽたり。こぼれた涙。
もう泣かなくて良い。男は笑みを浮かべて女を強く抱いた。
「早く出てくるといいのな……女以外はいらねぇけど」
横たわる銀角の腹部に耳を当てる。
「動くか?」
「まだ動くわけ無いだろ。こんな大きさなんだから」
銀角の指が描いた大きさに紅孩児は目を瞬かせた。
「ちっちゃんだな……銀華よりもずっと……」
「そうだな……あと二月もすれば腹も出でてくるだろうけど……そしたら紅の好きな格好は似合わなくなる」
細身の身体に布地を絡ませ、魅惑的な腿を覗かせるのが銀角の定番。
括れた腰には銀の鎖。
龍の胸当てには紅玉を。
「身体のほうが大事だ。あ〜〜〜名前どうすっかな〜〜。字面とか響きとか悩むよなぁ」
ばりばりと頭かく姿に、銀角は声を上げて笑う。
「好きに付ければ良いよ、紅」
「そうもいかねーだろ?こーいうのは二人で決めるもんだ」
残り六日。出来るだけ優しい記憶を作ろうと彼女は胸のうちに決めた。
「そうだな……楽しそう」
「だろ?生まれるのは……丁度桜の季節か……」
銀の瞳と紅紫の瞳。
(自爆はさせねぇ。どんな手をつかってもお前は死なせない)
男と女、思惑は違えて。
刻む秒針を聞きながら、悪戯な未来を二人で語り合った。
狩るものと、狩られるもの。
(銀華……だからそんな無理して笑うな……泣きそうな顔で笑うなよ……)
受け止めた魂は、痛みに震えていたから。
(玄奘三蔵……その首、貰い受ける。腹の子のためにも)
抱き合った暖かさ。
残時間――――――六日。
ブラウザ使いなのでのんびり。
また近いうちに続きを持ってきます。峰倉氏のサイユウキとは大分違ってきてるんじゃないかとは思うけど
どうなんでしょうね?
わし、漫画って特定の作家しか読まんのですよ。楠本まきとか、藤崎竜とか。
川原泉とか。本棚に革命がおきないタイプです。
お?KINOさん、カーラ女史のファンですか?
私もカーラさんはず0っと読んでますよ。
一時期コミックス売ってしまったので、最近文庫で集め直してます。
って即レスしてしもた。
後で時間のあるときに、新作読ませていただきます。
読ませていただきました。
二人の想いが交差する過程がまた萌え。
それにしても、板に人がいませんな。
そんなにIE人口が高いんですかね?
294 :
名無しさん@ピンキー:04/02/23 03:34 ID:8GT7Zzfw
続きさらに期待。
人大杉につき、あげ。
ようやくPS(普通の)かってきました。
そんで今度の休みに西遊記を買いに行くつもりなのですが
西遊記ってメモカ要りますか?
しかし、あそこまで安いPSもあれだって値段でした。うほぁ(゚▽゚*)
西遊記を購入。早速はじめました。
そんでKINO的感想
デフォで悟空x三蔵ですか?このゲーム。猿は僧侶に惚れてるとしか思えねぇ。いや、河童も。
悟空→むしろあれはデビルマソ
八戒→料理人か……いい設定だ。使おうヽ(・∀・)メ(・∀・)ノ
悟浄→半漁人にしか見えなかった
朱→萌え!!!
公主→まだ見てない。けど、可愛い
西王母→わしの中では凶暴なシーワン設定なんだが……いいひとそう
以下まだ見てないひと
那咤→とっても原典版。悪戯好きなんだろうかが気になった
仙姑さん→河童とくっつけたいとおもた
霊公→書き手でこんなにもいい男になるんだと。うほっ!それでものん兵衛で居て欲しい
ジロ→三蔵にちょっかい出して猿河童からぶちのめさうわなにえおs
面白いですね。一行も書かずにずっとやってました。反省。
そんなわけでもありませんが続きです。
もう少しで金銀編も終わりなので今しばらくお付き合い下さい。
◆骸遊戯――命数――◆
口元を押さえて青い顔をする妹と、その背を擦る男の姿に金角は目を細める。
「銀華、僕はちょっと出かけてくるよ。紅、薬はそこの棚にあるから。なにかあったらいつでも呼んで」
ひらひらと手を振り、金角の姿は煙のように消えてしまう。
同じ顔でも能力は兄のほうが数段上で、妹のように感情で暴走することも少ない。
笑顔という無表情で腹の底は読ませないのだ。
その心中は同じ血を持つ銀角でさえも図ることは難しいほど。
金の瞳は猫のそれのようで、光を受けて翠にも変わる。
中性的な身体は好色な妖精、妖魔に狙われるほどの一品だ。
それをかわす事が出来たのは、彼の実力とその血の成せる業。
口元の笑みが耐えぬところは、そこらの菩薩よりも肝が据わっていた。
巨岩の上で金角はそっと目を閉じる。
その細い首にそっとまわされる白すぎる指先。
同じように重ねるとその指は瞬時に白骨と化す。
「御免ね。君たちに触られる程、不自由はしてないんだ」
霊穴の上で印を結び、己の妖気を高めるための瞑想。
(銀華……君は生き延びなきゃいけないんだ。子供のためにも、紅のためにも)
銀角同様に、金角もまた己の身体の異変に気が付いていた。
ただし、彼の場合は彼女とはまったく違った結果だったが。
血液の腐る感触は、毎晩彼を苛む。痛みにはもう慣れてしまい、今は己の身体の腐敗を止めるのが精一杯だった。
(僕のこの手は、何が出来るのだろう……)
平頂山の主として、一帯の妖怪たちを纏め上げ出来る限りのことはしてきた。
無意味に人間を襲うことを禁じ、理解ある村民たちと協定を結んだことさえあった。
先にそれを破棄したのは人間。
怒り狂う銀角とは対照的に金角は静かに目を閉じていた。
そして、ある晩にたった一人で一つの村を跡形もなく消滅させたのだ。
そこには元から何もなかったかのように。
埃を払いながら金角は小さく呟く。「約束は、守るためにある」と。
(僕は、君が選んだ相手が彼で良かったと思うよ。銀華)
幼い日、泣いてばかりいた妹を背負って帰ったあの小道。
手を引きながら歩いた野山。
その全てが彼にとっては宝物なのだから。
霞の掛かるほど遠い日の出来事だった。
「鉄扇公主様。御子息さまに面会を」
単身乗り込んできたのは金圭童子。茶会の席で目をかけたあの美しい少年だった。
「うちの馬鹿息子が何かしたのかい?まったくあの子はあの人に似て……」
艶めく黒髪は結い上げられ、うなじが目に眩しい。
切れ長の目と知性的な眉。
目尻には赤の化粧。外見だけならばまだ二十歳前後の女は真っ赤な唇でため息をついた。
「まぁ、いいわ。紅!!!お客さんよ。早く来なさい!!!」
言われてのそのそと姿を現したのは息子の紅孩児。
寝起きなのか跳ねた後頭部に金角は眉を顰めた。
「あ〜〜〜?……っと、あ!!!金圭童子!!!」
「こんにちは、紅孩児」
近寄ってくる紅孩児の喉元に細身の長剣を突きつけて金角は穏やかに笑う。
「妹を、泣かせたね?」
「ちょ……ちょっと待て!!まずは俺の話も聞けって!!」
「泣かせたね、紅孩児」
唇だけは微笑んで、金角の瞳には静かな殺気。
妖怪たちが恐れるのは妹の銀角、そして天界の主たちが頭を悩ませるのがこの兄である金角だった。
「誰であろうと、銀華を泣かせる奴は僕が許さない」
金角の剣を素手で受け止めながら紅孩児はその顔をまじまじと見つめた。
見れば見るほどに、銀角と輪郭が重なる。
双子なのだから容姿が似ているのは当然なのだが、それ以上に何かがあるのだ。
「かーちゃんが居ちゃ邪魔だろ?俺の部屋で話つけようぜ」
言われるままに金角は紅孩児の自室に付いて行く。
出された椅子に座り、真向かいには件の男。
「妹が、あれからずっと塞ぎこんでいてね。園遊会までは服やら宝玉やらを選ぶのに夢中になっていたのに。
紅孩児、君……妹に何かしたね?」
金色の瞳がゆっくりと翠に変わっていく。
それは相手に対して攻撃の念があるということの意思表示。
少女と見紛う顔立ちは瞬時に妖気を纏って一層艶やかになる。
伸びた耳、口元からは細い牙が覗く。
「焔天大帝さまと公主様の血を引くその肉、さぞかし美味しいだろうね」
ここで金角と一戦交えれば確実に銀角は自分のことを敵と認定する。
しかし、ここで金角を交わすことは容易ではない。
(どうしたらいいもんだ?ああ……俺はただ銀華と仲良くなりないだけなんだけど……)
あれこれと迷っている紅孩児を、金角はじっと見つめた。
これは彼の引いた策の一つ。
どちちらを選んでも金角は紅孩児の喉元を噛み切るつもりなのだ。
それ以外の選択肢を見つける――――それが金角が彼に掛けた試験だった。
悲喜交々、紆余曲折を得て三人は互いを認め合う関係になることと。
この騒がしい日々が榮江淫に続くものだと信じた、午後の暖かさ。
それを誰一人として、生涯忘れることはないだろうと呟いた。
目の前の世界の美しさは、作られたものではなくありのままのそれ。
延命治療は受けずに、ありのままの死を受け入れようと独りで決めた。
「金角」
振り向けばそこに立つのは隻眼の男。
黒髪を一つに結わえ、無精髭と僅かな雀斑。
「独師兄……どうしてここへ?」
「決まってんだろうが。俺がお前を好きだからよ。まぁ、ストーカーって奴か?違うか……はは」
となりに座って独角児は金角の手を取る。
「いい加減よぉ、男で居るのも止めた方がいいんじゃないのか?妖力かなり使うだろ」
「………………………」
それは、二人が産まれた日のことだった。
母は二つの命を生み出し、目を閉じた。その子に身体を食われて。
産み落とされたのは二人の嬰児。愛らしい女児二人。
しかし、双子の女は凶とされ一方を殺めることが通例とされてきた。
だが、妻の面影を抱く愛娘のどちらを殺めることができるだろう。
先に産まれた姉を金角と名付け女禍の薬を与えて男として育てることを決めたのだ。
そうすればどちらも失うことなく在れると。
「いや、俺だって驚いたさ。お前が妖体になったときは。金華娘々」
「その名は、誰も知りません。僕は、金圭童子。平頂山の主です」
子供にするように、男の手が金角の頭を撫でる。
染み着いた煙草の匂い。金角は静かに目を閉じた。
光に包まれて、ゆっくりとその姿が変わっていく。
透ける様な金の髪。同じように光る瞳。
儚げな少女がそこには佇んでいた。
「止めない。お前が死ぬって決めたことは。止めたいけどな、本心を言えば」
そっと頬に掛かる手。
「止めたって、聞きやしないだろう?金華」
「独師兄……」
ゆらゆらと揺れる水面は、金角の心のようで。
「残りの時間、俺にくれ。お前がしようとしていることは……止めないから」
一石を投じればすべたが壊れてしまうような気がした。
外套の中に抱いてしまえば、その身全てを隠してしまえるほどの小ささ。
「……一つだけ、お願いがあります……独角児様……」
「?」
「妹を……銀華だけは……腹の中に紅の子供が。何卒、お力を」
見上げてくる瞳。
死を見つめて、地に還る者。
新たな命を生み出すもの。
命は、絶えず回り続けるのだから。
「…………任せろ。何が何でもあいつらの面倒は見る……」
ぎりぎりと唇を噛むことしか出来ない自分。
ただ、抱きしめてその不安を拭ってやりたかった
小さな錠剤を取り出して、金角をそれを噛み砕く。
「面倒なことに、首突っ込んでんだな」
金角が対峙するのは八戒。四人の中で一番行動パターンが読めない男である。
「何か考えてるのか?」
手招きして、抱き寄せる。膝の上に乗せて、小さな額に唇を落とした。
薄い前髪を指で分けて、ぺろ…と舐め上げる。
「ありません。僕は、もう一人……孫悟空も相手しなければなりませんから」
袷を解けば、形のいい碗形の胸が二つ顔を出す。
指を沈めればその柔らかさと、寄せられる眉に唇が綻ぶだけ。
「そりゃ無茶だな。金華一人で野郎二人……その身体じゃ無理だ」
「無理でも、やらなければなりません。平頂山の主として」
背中を抱けば、男が下になって少女が上の構図になる。
そのまま手を滑らせて、小さな臀部を揉み抱けば縋るように敷布を細い指が握った。
「……ぁ……ん……」
「女一人に、男二人ってのは……まぁ、いいんだが、よくねぇよな」
手を伸ばして、男の髪を解けばそのままぐっと抱かれて。
「きゃ……ッ!……」
ばさ、と夜着を脱がされて思わず胸を手で隠す。
「いやさ、俺……お前のそういうところ大好きよ。なんつーか、慣れてないって感じでさ」
組敷かれても、金角は目を逸らすことなく男を見上げる。
同じ顔の姉妹は、中身はまるで違っていて他人の様でもあった。
「ん!!」
ちゅぷ…と乳首を吸われて、ぎゅっと閉じられる瞳。
かりり、と歯を立てられてびくんと細い肩が震えた。
銀角とは対照的に金角の身体には無数の刀傷がある。
妹を守るために剣を取り、歯向かう者は全て切り捨ててきたのだ。
優麗なる剣舞の達人。美貌と強さを兼ね備えた美少年は鉄扇公主のお気に入り。
いや、天界の者ですら虜にする少年を誰が嫌うことが出来ただろうか。
「傷だらけだ。無茶ばっかしやがって……」
舌先が一筋大きな傷を舐め上げる。
「兄様も……右の目が……」
手を伸ばしてそっと眼帯の上からその傷をなぞった。
「外して。兄様」
言われてそれを外して床に打ち捨てる。魔力封じの眼帯は、独角児の妖体を押さえるもの。
伸びた耳と、僅かに吊り上がった黒い瞳。
愛しげに少女は微笑んで、男の広い背中を優しく抱きしめた。
黄褐色の肌と白絹の肌が重なり合う。
「あ!!や……ぁ……ッ!」
舌先はゆっくりと傷を確かめながらちろりと這うように下がっていく。
細い腰をするりと撫でられるだけでびくつく身体。
「や!!……んぅ…!…あぁ……」
とろり…濡れた秘所を舌は味わうように舐め上げる。
まるで別の生命体のように内側で蠢く感触に、金角はただ嬌声を上げるしか出来なかった。
指先で突起の顔を出して、ちゅっと吸い付く。
口中で飴でも舐めるかのように転がして、時折甘く歯が立てられる。
「あ!!ああんっ!!…っは…兄……様ぁ…!」
涙交じりの声。押さえるようにして唇を重ねた。
互いの頭をきつく抱いて、貪るように舌を絡めあった。
恐らくこれが最後の逢瀬。
「……っは……」
舌先を繋ぐ糸。断ち切るのが嫌でもう一度唇を重ねた。
掌の中に収まる少し小ぶりな乳房も。
他人を受け入れることを拒んできた細い腰も。
子を宿すことの無かった柔らかな腹部も。
何もかもが数日後には消えてしまう。
「……なぁ、金華よぉ……なんとかして、生きていたいって思わねぇのか?」
頬にそっと触れる唇。
耳元で囁く低い声。優しく、冷たく、愛しい声。
「いずれにせよ、平頂山の主として戦わなければなりません。それがあの三蔵一向、無事で居られ保障は……」
金角は小さく首を横に振った。
それは、引き止めることの出来ない意思。
「…………………………」
ぐっと小さな臀部を抱いて、膝を折る。
片足を担ぐようにして身体を折って、脚を開かせた。
「……息、俺に合わせて……」
言われるままに、呼吸を独角児に合わせる。
「!!!」
ぐっと貫かれて、びくんと腰が跳ねる。
手を滑らせて背と腰を抱かれて、より深く繋がりたいと身体が軋む
「…ぅあ!!……っは、んっ!!」
繋がった箇所がじりじりと熱く、痛みにも似た奇妙な感覚が金角の体を走る。
「……く…ぅん……!!…兄…様ぁ……」
ぎゅっとしがみ付いてくる細い腕。
自分の中の恐怖を閉じ込めて、何もかもを捨ててただ今は……一人の女でありたかった。
残された時間はあと僅か。
この瞬間だけは甘えて、弱音を吐いて、抱かれて、泣きたい。
「やぁ……ん!!」
親指でくりゅ…と濡れた突起を攻められて、蕩けそうな声が上がる。
きゅん、と摘まれてこぼれる涙。
口元を押さえる手を外して唇を舐め上げる。
妖怪は同族や、同じような強さであればあるほどに相性が良い。
独角児と金角は同じ土の気を持つ。
ましてや一度は義兄弟の契りを交わした間柄だ。
「あぁ…っ!!」
ちゅ…と乳房ごと口中に含まれて、全身が熱くなる。
男を締め上げるようにうねる身体。
そのままぐっと腰を抱くと一層絡まるように締め付けがきつくなっていく。
「……っは……んんっ!!」
ずん!と強く突き上げられて細い喉が仰け反る。
小さな手を取って、その頼りない指を一本ずつ確かめるように舐め上げた。
「兄様……離れたくありません……」
それは、彼女が呟いた最初で最後の小さなわがまま。
自分の命の期限を知ってから、ようやく気が付いた恋だった。
「……ずっと、お慕い申しておりました……」
散り行く花は美しいと誰が言ったのであろう。
その花が美しいのは生命を謳歌して、何もかもを全うしたからこそだと言うのに。
志半ばで、己の運命を受け止めること。
死の恐怖はいつだって彼女を苛んできた。
それを振り切ってこの数ヶ月、一心不乱に修行に明け暮れた。
これ以上、何を彼女に求めるというのだろう。
「馬鹿野郎……もっと早く言えよ……ッ……」
時計が刻む秒針のように、彼女の命の期限もゆっくりと近付いてくる。
仮面の下の素顔は、まだ幼い少女だったのだから。
誰かを慈しみ、無益な殺生を好まない妖怪。
「あ!!あんっ!!」
ぎりぎりまで引き抜いて、最奥まで貫く。
その度に背中にぎゅっとしがみ付いてくる手の感触。
髪の柔らかさも、耳朶の甘さも、首筋が誘う仕草も。
この手の中に閉じ込めてしまいたかった。
「や!!や……ぁ…ん…!!!」
互いの体液が絡まってじゅく、じゅぷ、と淫音を響かせる。
「金華……」
きつく抱き合って一際強くその身体を貫く。
重なった呼吸。
二人で落ちる夜の甘さを抱いて、目を閉じた。
「どっちにしても三対四じゃ分が悪ぃな……」
後ろから金角を抱きしめて、独角児は頭を掻いた。
自分を抱く手を取って、その甲にそっと接吻する。
そのまま頬に当てて、彼女は小さく笑った。
「俺としちゃあ、あの八戒とお前がやりあうのもどうかと思うが……」
「あちらからの指名ですわ。私は八戒と。紅孩児は悟浄、銀華は玄奘」
口元に手を当てて、独角児はふんふんと一人頷く。
「なら、孫悟空は俺だな。これで五分。イーブンな感じになる」
「兄様!!」
「紅孩児にばっかり格好付けさせるわけにはいかねぇからさ」
ちゅ、と額に触れる唇。
「それに、横見て俺が居たほうが安心できるだろ?金華」
「……兄様……」
男の胸に顔を埋めて、金角はそっと瞳を閉じる。
(なぁ、俺はお前を死なせるつもりは無いぞ……俺のやってる研究は……いや。まだいいか)
夜半の月。
さよならと言ってしまえばそこで全てが終わってしまうようで言い出せない。
それでも、いつかはその言葉を言わなければならないと分かっている。
「兄様?」
「出来るだけ、一緒に居ようさな……金華……」
「……はい……」
残時間―――――――五日。
こんな感じです。お暇な時でも見てやってください。
なんか言ってもらえるちょと嬉しい〆(゚▽゚*)
それでPSやってるわけですがようやく公主と丙霊公をゲト。
丙霊公……紫陽洞師弟?莫邪使いですしね。
311 :
名無しさん@ピンキー:04/03/16 15:56 ID:ytz0Ju5F
KINO殿、毎度ながらおもしろいっす〜!
どうやらBADエンディングぽいですが・・・。
あぁぁ、金銀切ない・・・。
彼女(達)には、幸せになってもらいたい・・・。
下げ忘れ申し訳・・・!
>311
多分、反則技使います。予想できないようにしたいなとは思ってますので。
ようやく主要メンバーが揃ってきましたので。
あとは今から出てくる子も一人、女の子の神将がいます。
ゲームはやっと神様六人そろって、金銀とじーさまゲト。
中々時間取れないのですがKINO的にはジロx公主とか結構好きかも。
天然と色男。那咤と金角とか。
まだ仲間ってゲトできるのかな?紅孩児を早く見たいような見たくないような……
今、スタッフサービスのCMで西遊記バージョンも流れているんだが、
ふとKINOさんバージョンを想像して笑ってしまった。
保守
圧縮来てたんですねぇ。一気にスレが減った。
むしろ、ここが残ったのも不思議なきもする。
まだ残りKBはたっぷりだけど、書ききれる保障はまったく無いので次スレは分かりません。
自分のわがままで立てたスレだし。
容量切れそうになったら立ててもいいのかな?
とりあえず聞いてみる。
中文投下がメインだから(長文には入んないよねぇ)
あと、一応はっときます
補完先
ttp://yellow.ribbon.to/~kino2/ 何ぞあるときは↑まで。
久しぶりの続きです。次あたりで終わると思うのですが。
そして、次はエロ無しです。
どうにかこうにか、今回までは入れられましたが、次は入れようが無いのです。
投下不可の判断はおまかせします。
まずは、最後の一歩手前。投下させていただきます〆(゚▽゚*)
◆骸遊戯――意思薄弱――◆
「三蔵が部屋に篭ってる」
「お腹痛いんじゃないの?三蔵ちゃんだって女の子なんだからさ」
悟空の問いに悟浄は宝杖を一振りする。
生まれる光の粉はまるで星屑のように煌めいて、さらさらと崩れていく。
「引き篭もりって奴か?」
「ん〜〜〜、何だか心配になってきたな。ちょっと行って来るか」
壁際に宝杖を立て掛けて、三蔵の部屋へと足を向ける。
「無駄だと思いますよ?」
「何で?」
八戒と悟空は顔を見合わせて、互いの左手を悟浄の前に突きつけた。
見れば赤黒く、火傷したかのよう。
「札、貼られてた」
「封魔の鎖で扉のほうもやられてます。窓も駄目で、あとは……」
「面会謝絶ってやつか。まぁ、三蔵ちゃんにも考えがあってのことなんだろうけどな」
寝台に腰掛けて、天井を仰ぐ。
無機質な空間と、立ち込める紫煙。
肺腑に染み込むのは罪の味と、誰かが昔語っていた。
(私は今まで、何の後悔もなくこの道を進んできた。天竺とやらに行けと言われて、その道をこうしてきた)
平頂山の双子妖怪は、今までの妖怪と違い意思をいうものを持っている。
とりわけ危険なのが兄の金角。銀角と違って人間との融和の経験を持つ。
笑顔と言う名の無表情で、彼は村一つを一瞬にして消し去る力を持つのだ。
(あの二人は……少なくとも今までのバケモノとは違う……寧ろ、悟空たちに近い……)
力でねじ伏せる以上に、彼らには何かがあった。
守るべきものは、互いの胸の中に。
(少なくとも、紙切れのために生きている私よりも、ずっと人間であろう)
なれたはずの味も、心なしか苦く思えて彼女は苦笑した。
降り注ぐのは光ではなく、爛れた罪。
傷だらけの手、割れた爪、握り締めた拳、脈打つ心臓。
何が違えて、人間と妖怪を区別するのだろう。
残忍で人肉を喰らい、糧と為すから?
欲望を抑えることも出来ずに殺しあうは人間も同じ。
己の本能に従い、女子供であっても殺すから?
嫌がる娘を押さえつけ、姦を犯すのは余程人間のほうが残酷だろう。
妖怪は同胞には寛容だ。
人間は同胞にも寛容ではない。
金角、銀角はこのあたりの妖怪を守るために自分たちの前に立つのだから。
(私は、何のために戦う?誰のために戦う?)
生まれてしまった疑問は、彼女を苛む。
赤い石榴の瞳は、罪人の色。
所詮は自分もいずれは人間から刃を向けられる立場に居るのだ。
『玄奘三蔵』と言う名が、自分の鎧。
それが無ければ、同じように妖怪として扱われるだけ。
(教えてくれ……私はこれから何を得て、何を失うのだ?何故に私なのだ?どうして、生き永らえた?何故?)
ため息は、ひらり。蝶になり粉と化して消えていく。
後に引けぬこの道、進むも止まるも地獄道。
「三蔵ちゃーん。ここ、開けてくんない?」
「飴とか、果物持ってきた。三蔵の好きなものばっかだぜ?」
「漢方を調合しました。痛むなら無理せずに薬を飲んだ方が良いですよ?」
重なる声。共に歩んできたこの茨だらけの道。
痛みに気付かずに来れたのは、それが痛みだと認識させないだけの力がこの三人にあったからだった。
(どうであろうと、今は私にも仲間が居る。それだけでも良いではないか)
「三ちゃ〜〜〜ん、まだお腹いたいの〜〜?俺があっためてあげっからさ〜〜〜」
「エロ河童はいいからさ、何か食った方が良いって。三蔵〜〜〜」
「漢方って言ったって、苦くないですよ。三蔵仕様に糖衣で甘くしてあるんです。飲めないなら口移しで飲ませます」
扉越し、聞こえるのはわいわいとした声。
邪魔なものは全て蹴り飛ばせと、男三人は武器を持ち女を守護する。
人間よりも、余程人間らしい妖怪三匹。
「三蔵ちゃん、怒ってんの?この前の夜のこと、まだ怒ってる?」
「悟浄!!てめえ三蔵になんかしたのか!?」
「聞き捨て何ねぇな……河童、表に出ろ!!」
「待て!!お前ら本性半分見えてるって!!落ち着け!!」
騒ぎ出す声に、笑ってしまう。
扉に手を掛けて、そっと内側から開く。
「それ以上騒がれたら、迷惑だ。入れ」
半分疲れたような表情。それでも、浮かべた笑みは見たことも無いようなもので。
それ以上、何の言葉をかければいいかも思いつかなかった。
水辺に見える月は、石を投げれば壊れてしまう。
幼い頃に、憧れたあの花と同じ色の光は今も変わらずに降り注ぐ。
「三蔵」
「悟空。どうかしたのか?」
愛用の煙管を握った手を前に出す。
「忘れモン。散歩行くにも、これなきゃ駄目なんだろ?」
受け取って、三蔵は管の部分をそっとなぞる。
刻まれた文字は「天魔降伏」彼女流の嫌味の一つ。
「明日だもんな。銀角は俺がやる。三蔵はいつも通り後ろで笑ってろ」
ただ、それだけの言葉なのに胸が痛む。
震える指先をぎゅっと握って、上着の裾を掴んだ。
「三蔵?」
何も失いたくない。例えそれが人外で、忌まれるものであっても。
自分にとっては掛替えの無いものなのだから。
俯いたままの顔。言いかけては飲み込まれる言葉。
乳白色の月明り、ただ虫の声だけが響き渡る。
「……………ぬな」
「え?」
「………耳塞げ」
「そうしたら、聞こえねぇよ。三蔵」
「良いから、塞げと言ってるだろ」
言われるままに両手で耳を塞ぐ。
薄い唇が紡ぐ、言葉たち。
耳を塞いでも、しっかりと聞こえたその声。
『死ぬな。何があっても、お前だけは』と。
泣きそうな顔は、彼女をずっと幼く見せて。
ほんの少し力を入れれば死んでしまう人間なのだと、認識させた。
人は脆く、儚く、残酷な生き物。
「三蔵………………」
未だ、この腕の力は脆弱で足りないことばかりだけれども。
彼女を抱きしめるだけの、強さはあると思いたかった。
『玄奘三蔵』の名に縛られた、一人の女。
人間が縋ることの出来る菩薩でさえ、彼女にとっては神に成り得ない。
「死なない。絶対に」
「阿保。お前なんか、殺しても死なないだろうが」
優しい声と、見えない表情(かお)でも。
「うん……絶対に、死なないから」
今、彼女がどんな表情なのかは手に取るように分かるのだから。
「兄様、どうかなさいましたか?」
ざりり、と無精髭を撫でながら独角児は頭を捻った。
ここ数日、庭に降る雨を二人で眺めながら穏やかに過ごしてきた。
時折、苦しげに咳き込む事もあったがそれでも二人で紡いだ時間の甘さはかけがいの無い物だった。
この時間が、永遠に続けばと祈っても。
それは、泡沫の夢。
「兄様?」
細腕に、百合を抱く姿。普段ならば愛しいと素直に愛でることも出来ただろう。
百合は、死者への弔いの花。
四周を消すべき、甘い香り。
「綺麗だけど、お前には似合わねぇ……」
俯き気味の笑顔。花瓶に生けて、降り止まない雨を見る。
独角児の邸宅は、雨の中に佇む。何かを考えるにはもってこいの場所だ。
閉鎖された空間と、穿つ雨音。
「金華」
招きよせて、少しだけ力を入れて抱きしめる。壊れてしまわないように、そっと。
そのまま、床に倒して袷を解く。
「あ、いや……兄様……」
やんわりと押しのけようとする手を取って、指先を舐め上げていく。
小さな胸は、しようと思えば全て口中に含むことが出来て。
「あん!!」
薄い背中を抱きながら、唇全体で小さな乳首を吸うように噛む。
舌先に感じるほんのり固い感触。
両手で寄せて、交互に嬲るように唇を使う。
僅かな痛みと、それ打ち消すような甘い快楽。
ぺろ…と舌先は、子供の身体を滑り落ちる。
「やぁ…んっ……!…」
恥ずかしげに顔を背けて、ぎゅっと目を閉じる姿。
握られた指先。開かせてその掌に接吻をした。
まだ、未完成の身体は男を魅了するには充分に完成されて。
膝を割って、開かせて目を細める。
同じ双子でも、自分を押さえつけて成長してしまった金角は身体がそれに伴っていない。
柔らかな曲線と、丸みを帯びた子供特有の肢体。
「あぁッ!!や、あ!!」
幼い秘裂にちゅっと口付けて、舌先を捩じ込むようにして内部へと侵入させていく。
柔らかな腰を抱いて、引き寄せれば悶えるように揺れて誘う。
じゅる、と吸い上げて唇を使えば「嫌」と小さく振られる頭。
「……っは……ぁ…!…」
掻き抱くように頭を押さえて、舐めるような接吻を重ねる。
僅かに角度がずれる時だけに許される呼吸に、貪りつく。
「……兄様……ぁ!!」
甲高く、細い声。耳にしみこむ甘い喘ぎ。
ぬるつく入口に指先を当てて、そのまま押し上げるようにして内壁をなぞる。
「!!!」
ぐ…と押し上げると、びくんと仰け反る身体。
唇だけで笑って、独角児は向かい合わせに金角を抱き寄せた。
腰を浮かせて、先端をあてがいそのまま腰を下ろさせる。
「あ!!ああっ!!」
「焦んなくていいからよ、もうちっと力抜け、金華」
擦られる感触と、押し上げられる甘さ。己を深々と貫く男の脈打つ熱さと女で居られることの至福感。
「……ひ……ぅ…ん!!…」
ぽろり。こぼれる涙。残された時間は後、数刻。
しがみ付くように背中に回された手。薄い爪が、ちりりと走る。
ぐ…と両手で腰を抱いて奥まで繋げて突き上げていく。
加速するその動きに、声にならない悲鳴が上がった。
「あ!!あァ……っ!!」
痛みも、快楽も自分が生きてこそのもの。
今更ながら生への執着に、金角は自嘲気味に笑った。
もう、戻れない道。
戻せない、時間。
散り行くならば、美しく残酷でありたい。
「……兄…様…ぁ……ッ!」
ただ、一つ君の望むものを与えられないと嘆くことも。
君の傍に居ることが出来ないと涙をこぼすことも。
本当の気持ちを、告げられないということも。
全てを吐き出して、受け入れられた今……後悔は無い。
(兄様……こうして兄様に抱かれていれば、何一つ怖いことなんてないのに……)
加速する腰の動きと、加熱する二つの身体。
(どうしてでしょうね……今は、こうしているのに不安なのです……)
こぼれる涙。
真意は、彼女一人。胸に閉じ込めた。
手を繋いで、体を絡ませたまま目を閉じる。
「三蔵、寒くねぇ?」
解けかけた包帯を気だるく巻き直しながら視線を上げる。
悟空の腕をとって、自分の背に回して三蔵は呟いた。
「そう思うなら、暖めろ」
押し倒して、柔らかい胸に顔を埋める。
「あ〜〜、あったけぇ……」
「お前が温まってどうする」
呆れた口調でも、頭を抱く手は優しい。
「三蔵、俺……強くなるよ。死なないように、強くなる」
「…………………………」
少しだけ顔をあげて、視線を重ねた。
壊れそうな赤い瞳。
「約束する。嫌だって言っても三蔵の傍に居る」
伏せられる睫。
「三蔵?」
「……一度口にしたことは、守れ」
「うん……」
「どんな姿になっても構わない、私を置いて……逝くな」
ただ、不安だと叫ぶ魂。
救う手は、菩薩ではなかった。
決戦前夜、まだ朝は少しだけ遠く。
と、今回はここまでです。
次でちょっと長めだった双子妖怪の話も終わりの予定です。
いや、伸びても、後二つくらいで終わると思うので今しばらくお付き合いくださいませ。
ここの西遊記面白いですねー
風変わりな三蔵に惹かれます(*´д`*)ハァハァ
>327
ありがとう。続きはもうちょっと掛かりそうです。
あいかわらずハアハアできて嬉しいです
>329
ありがとう。無理はしないで下され。
デモ、チョットイッパイイッパイダヨ…ドウシタライイカワカンナイヨ
>>330 スランプとかですか?Σ(゚д゚lll)
>331
と、思ってたけど吹っ切れました。目が覚めるような凄いものを見つけたので。
続きをちくちく書いてます〆(゚▽゚*)
>>332 楽しみに待ってます(;´Д`)ハァハァ
ホッシュ(`・ω・´)
休みの間は西遊記(原作)読もう!「最」じゃないほうな!(ウインク)
ところで西遊記でお奨めってのあります?
自分、ゲームのラノベ化した女三蔵のしか見た事ないんですけど
オンライン書店検索したら出るわ出るわでどれ読んだらいいかわからなくて…
「ロリータ西遊記」とか判りやすいとスルー出来るんですが
>336
「ロリータ西遊記」ワラタ。
自分もゲームのやつしか読んでないからわからんです。
むしろ、それなら買ってしまいそう(゚▽゚*)ノ
続きはもうちょっと。んでも生きてますし、書いてます。
保守
スタッフサービスのCM見てから
限りなく奥手の悟浄と三蔵のカラミも見たい今日この頃。
見てる人がいることがびっくり(゚∀゚ )
保守せんでもいいのよ。落としてもらっても。
奥手な悟浄か……いいネタありがと。書きたくなりました。
>>341 ヽ(´∀`)人(・ω・)人( ゚Д゚)人(・∀・)人( ̄ー ̄)人(´_ゝ`)ノワショーイ
お待ちしております!
保守
保守(`・ω・´)
保守します。
ただいま〜〜〜と。
PCの入院に伴ってトリップ変更です。
かけない間に迷ってた話が固まりました。
とりあえず、予想は裏切れるかな?と、もうちょとだけ時間ください。
>>346 お帰りなさい
三蔵でハァハァ出来る日を楽しみに待っとります
その間にホッシュ(`・ω・´)
いい意味で裏切ってくれる事を祈っております(*´д`*)ハァハァ
保守(・∀・)
ちょっとに詰まってるんで番外なんか書いてます。
金銀とはまったく関係なしですが、保守してくださったかたに。
◆晴れた日の恋曜日◆
「いきなり何のつもりだっ!!」
三蔵の手を引きながら悟浄は鼻歌交じりで辺りを見回す。
「たまにはいいじゃないの。俺とこーしてデートするのもさぁ」
首から下げた髑髏をちゃらちゃらと鳴らしながら悟浄は三蔵の意見を取り下げる。
発端は三蔵の一言だった。
「古文章を扱う店が、この街にはある。暇人がいるならば荷運びに来い」
悟空は三蔵の荷物だけは持ちなく無いと篭城を決め込んだ。
八戒は史書館で調べものがあるから残念だけれども行けないと首を振った。
ならば一人で向かうかと準備をしていたところに出てきたのが悟浄。
「三蔵ちゃんどこ行くの?え?荷物?俺が持つ持つ〜〜〜お出かけぇ」
そして三蔵の手を引いて街中へと繰り出したのである。
栗金の髪の僧侶は余程珍しいのか道行く者が皆振り返る。
隣に居る美丈夫も合わせてどうあっても人の目を引いてしまうらしい。
目的の物を手にして、書物は悟浄に持たせて身軽なはずなのに。
酷く、自由が利かないのはどうしてだと彼女は煙草に火を点けた。
「三蔵ちゃん、甘いもの食べよ」
「………………………」
「それよかお酒のほうがイイ?まだちょっとお天道様高いけど」
「…………お前の頭の中は桃色か?」
煙管をかしん、と鳴らして彼女は小さくため息をついた。
「いいや。三蔵ちゃんの色」
翠の眼が、赤いそれと重なる。
長い睫も、小さな唇も。すべて飾っておきたいと思うほど。
それでいて紡ぐ言葉の残酷さ。
陰陽を抱き合わせた無慈悲な僧侶。
「暑いし、何か冷たいモンでも食べよっか。俺、探してくるわ」
ひらひらと手を振って、三蔵を席に残したまま悟浄はどこかへと消えてしまった。
外に出された待合の椅子に座れば、過ぎ行く男の目線が刺さってくる。
人形のように作りこまれた女僧は視線をかわしきれるものではなかった。
「珍しいね、女の僧侶?」
「そんなとこ座ってないで俺らと遊ぼうよ」
けらけらと笑う声に、うんざりした表情。
「綺麗な顔してるねぇ……神様のためにやっぱし処女?」
「こんだけのツラでそれってありえねぇよな?」
自分など蚊帳の外で、男たちは下卑た話題を繰り返す。
(あの馬鹿は……一体どこに行った……)
ため息だけが時間を刻んで、煙草を口にしたくても出来ない状況に苛々を噛み潰す。
「ほら、こっちおいでよ」
ぐ、と手を取られて男の胸に倒れこむ形に。
栗金の髪の僧侶は余程珍しいのか道行く者が皆振り返る。
隣に居る美丈夫も合わせてどうあっても人の目を引いてしまうらしい。
目的の物を手にして、書物は悟浄に持たせて身軽なはずなのに。
酷く、自由が利かないのはどうしてだと彼女は煙草に火を点けた。
「三蔵ちゃん、甘いもの食べよ」
「………………………」
「それよかお酒のほうがイイ?まだちょっとお天道様高いけど」
「…………お前の頭の中は桃色か?」
煙管をかしん、と鳴らして彼女は小さくため息をついた。
「いいや。三蔵ちゃんの色」
翠の眼が、赤いそれと重なる。
長い睫も、小さな唇も。すべて飾っておきたいと思うほど。
それでいて紡ぐ言葉の残酷さ。
陰陽を抱き合わせた無慈悲な僧侶。
「暑いし、何か冷たいモンでも食べよっか。俺、探してくるわ」
ひらひらと手を振って、三蔵を席に残したまま悟浄はどこかへと消えてしまった。
外に出された待合の椅子に座れば、過ぎ行く男の目線が刺さってくる。
人形のように作りこまれた女僧は視線をかわしきれるものではなかった。
「珍しいね、女の僧侶?」
「そんなとこ座ってないで俺らと遊ぼうよ」
けらけらと笑う声に、うんざりした表情。
「綺麗な顔してるねぇ……神様のためにやっぱし処女?」
「こんだけのツラでそれってありえねぇよな?」
自分など蚊帳の外で、男たちは下卑た話題を繰り返す。
(あの馬鹿は……一体どこに行った……)
ため息だけが時間を刻んで、煙草を口にしたくても出来ない状況に苛々を噛み潰す。
「ほら、こっちおいでよ」
ぐ、と手を取られて男の胸に倒れこむ形に。
「うわ……柔らか……」
「離せ」
「声まで綺麗なんだな……儲けものだ」
布地越しに触れてくる指先に、全身が総毛立つ。
妖怪や天界の者に抱かれても、人間には抱かれたことが無かったことに今更ながらに気付く。
その汗ばんだ指を振り払おうと必死に身を捩った。
「俺の三蔵ちゃんからそのきったねー手、離しな」
片手に氷菓子を持ちながら、悟浄は三蔵を自分の背後へと。
「天国見せてやろうか?俺、強いよ」
翠の眼がやんわりと光り、男たちはふらふらとどこかへと立ち去っていった。
「…………何をした?」
「あ、氷菓子(アイス)買ってきたよ。冷たくて甘いモン好きでしょ?」
「だから……」
「三蔵との時間、邪魔されたくなかったからちょっと幻覚見せてやっただけだよ」
袈裟に付いた埃を払って、悟浄は笑う。
「食べよ、三蔵ちゃん。溶けちゃうよ?」
妖怪らしからぬこの男は、あれやこれやと準備してくる。
ただ、それを受け入れるだけの余裕が彼女にはまだ足りないだけで。
「……お前は、何故……私と居るんだ?」
薄紅色の氷菓子は、甘い甘い恋のような味。
けれども、『恋』が『甘い』なんて、誰かが決めた迷いの言葉。
恋は痛みを伴った熱いもの。
「好きだから。そんじゃぁ……ダメかな?三蔵」
伸びてくる手が同じように触れる。
先刻の男たちの様に、鳥肌が立つことは無い。
「……好きか…………」
ひときわ深いため息。
「好き……難しい感情だな」
ただ一言に表される単語。それなのに、その意味を定義することは不可能に近い。
例え神であってもそれを位置付けることなど出来はしないのだから。
「簡単なことだよ。俺が三蔵を好きで、一緒に居たいって思うから居るだけ」
頬に触れる手に目を閉じる。
(あら……何か可愛いことしてくれて……)
少しだけ開いた唇が甘くやんわりと誘う。
触れたいならば、その手を伸ばしておいでと。
小さな耳にあしらわれた銀色の輪。飾り気は無くとも、彼女自身が宝玉の様。
笑うことは少ないが、その笑みは風に揺れる花にも似ていた。
散りそうで必死に耐えるところまでも。
「時間かけて……知ってよ。俺のことも……」
何時だって初めに「好き」と言ったほうが負けになるのが男女の法則。
「……………………」
文句やはぐらかしならばいくらでもいえるのに。
肝心のことを言おうとすれば、言葉が出なくなってしまう。
どれだけ強がってみせても。
まだ、心は子供ままで止まったまま―――――――。
まだ少し高い太陽を背にして、炎天下よりも少しだけ涼しい中で杯を突き合わせた。
(酔っちゃってくれりゃ……いいんだけどねぇ)
一対一で酔い潰す機会など滅多に来ない。
虎視眈々と狙う敵はずらりと顔を並べるのだから。
玻璃に触れる唇は、少しだけ濡れて艶かしい色合い。
「三蔵ちゃん、ほらもっと飲んで」
このままここに留めて、たまには二人きりで過ごしてみたい。
「これ以上は……」
ほんのりと染まった頬と、少しだけ荒くなった呼吸。
「もっと、飲んで。ほら」
ここまできたら一気に畳み込んでしまいたい。
もうじきこの忌々しい太陽も沈むのだから。
覚束ない足取りの彼女の肩を抱いて、慣れた手つきで扉を開ける。
結局この勝負で軍配が上がったのは男のほうだった。
呂律の回らなくなった三蔵と一晩二人だけで過ごせる算段。
(こんな事は滅多に無いから……楽しませてもらわないと)
背後から抱きしめて、耳朶に唇を当てる。
「……ぁ……」
そのまま手をずらして布地越しに誘う乳房に。
やんわりと揉みながら邪魔な袈裟をはずして行く。
「あ!!」
その先端をきゅん、と摘まれて上がる甲高い声。
肌蹴た僧衣からこぼれ落ちる柔らかい二つの乳房。
ぎゅっと掴めばその感触に神経全てが支配されてしまう。
「……悟浄……こんな所…で……っ!」
入り込んでくる指先に、ぴくんと揺れる細い肩。
その肩口に噛み付いて、小さな痣を残していく。
「壁に……手、付いて。三蔵ちゃん……」
言われるままに、壁に手を付いて自分の身体を支える形になる。
その間にも指は奥へと進み、濡れた音を絡ませながら浅く蠢かせて。
「!!」
ぐ…と押し上げられて仰け反る喉元。
「あ!!あ…っは…!」
濡れた指先は、薄い茂みの中の彼女の弱点を擦り上げる。
時折きゅん、と摘むたびにふるふると二つの乳房が揺れた。
「あ……嫌…ァ…!!あ!!」
どれだけ頭で否定しても、腿を濡らしていく体液。
「ウソ。だってこんなに濡れてるし」
「…!!っは…あアッ!!」
内側を執拗に攻め上げる指と、突起に触れる指先。
嬌声は涙混じり。その涙さえも、本能に火を点ける媚薬。
付け根まで銜え込ませて、かき回す様に動かす。
その度に締め付けてくる柔襞に満足気な笑みがこぼれてしまう。
「俺の手……そんなにイイ?」
人間の男に触れられた時に感じた嫌悪感は不思議と無かった。
「…ぅ…ん!!」
ぎゅっと閉じられる瞳。
(ヤバ……早く挿れてぇ……)
舌先で耳の裏を舐め上げて、息を吹きかける。
「ぁん!!」
「可愛い声……もっと聞かせて」
自分のほうを向かせて、薄い唇に吸い付く。
舌先を捻じ込んで、絡ませて、吸い上げる。
分け合える呼吸に感じる至福感。
「!!!!!」
ぬるぬると絡まる愛液を滴らせながら、指を抜き差しさせて追い込んでいく。
肌蹴た衣が肌に触れるたびにもどかしげに揺れる腰。
「あァっ!や…ああっ!!」
びくん、と大きく腰が跳ねて崩れる身体。
手首を取って、少しだけ浮いた骨に口唇を当てた。
「…………しよ、三蔵ちゃん…………」
壁に彼女の背を押し当てて、濡れきったそこを一息に突き上げる。
ぬめりと女特有の湿り気は、男を締め上げて奥へと誘う。
「ちゃんとつかまってないと、落ちちゃうよ?三蔵……」
しがみついてくる細い身体を抱きしめて、腿に指を食い込ませる。
小さな尻を掴んで、より奥まで行ける様に。
「……んっ…ぅ……」
貪る様に唇を噛み合って、舐め合う。離れ際に繋がる糸が切れる前にもう一度。
男の頭を掻き抱いて、女はその脚を絡ませる。
(何故……こいつに触れられるのは嫌では無いのだろう……)
同属である人間よりも、忌み嫌われる妖怪のほうが心地良い。
自分が自分でいるための、安心できる場所。
「あ!!あ……ふ…っ!!」
ぱらり、と左腕の布が解けて刻まれた破邪の文字が飛び込んでくる。
(いけない!このままでは……)
自分をこの形で抱くならば、確実に悟浄の身体に触れることとなるのは明白だ。
唇で包帯の端を咥えて、その文字を覆う。
耳に、鼻に、降る接吻。
少しだけ頭をずらして、白い胸の谷間に顔を埋めればその頭を抱く腕。
甘さと少しだけ加わった酒気。
「ぁん!!」
舌先が鎖骨を舐め上げて、唇が触れては離れて。
その度にしがみついてくる腕が震えた。
腰を抱いて、三蔵の背を壁に当てながら勢いをつけて強く突き上げる。
絡んでくる襞の熱さと、目線の甘さに覚える感情。
(好きって……抱き合ったり、したりするだけじゃなくて……)
ぼろぼろとこぼれる涙に、ちくりと胸が痛む。
(暖めあったり、もっと……こう…………)
絡まる肉は否が応でも思考を奪っていく。
(難しいねぇ……三蔵の言った通りに……)
汗ばんだ肌と、女の吐息が意識を狂わせるから。
飲み込んで、この喉をその甘い体液で潤したい。
(ヤバ……っ……)
いつもはその気を吸い取る側なのだが、何の因果か今夜は自分のほうが消耗させられたらしい。
ふらつく足元を諌めて、頭を振る。
「……悟浄……?」
頬を包む柔らかい手。
蕩けたような瞳が見上げてくる。
自分と同じ赫を写し取った瞳。困ったように彼女は笑って、頬を寄せてくれた。
「……私たちは……同じ眼を持つのだな……悟浄……」
心音も、肌の暖かさも、瞳の色も。
唇から覗く牙も、鱗染みた外皮も、何も怖くはないと囁く声。
(いや……簡単なことじゃねぇか……)
唇を傷つけてしまわないように、そっと重ね合わせていく。
「あ!!」
僅かに伸びた爪が、薄紅色に染まった腿に食い込む。
この現実を受け止めて、生きていくには。
一人では寂しすぎるから。
彼女に触れることが出来たのが、人間『以外』だったのも。
もしかしたら、そう定められてきたことなのかもしれない。
その定めですら、笑って打ち壊すのが玄奘三蔵という女なのだから。
ずい!と打ち付けられるたびに絡んでくる体液と壁。
「……ひ…ぁんッ!!あぁっっ!!」
震える膝を折って、一つになりたいとその奥を目指す。
「ああアっぅ!!!」
崩れる身体を抱き合って、離れないようにと唇を合わせた。
気だるそうに身体を越して三蔵はのろのろと歩き出す。
寝台の上でもつれて絡まりあって、気が付けば真夜中になっていた。
「どこ行くの?三蔵ちゃん」
「風呂」
「あ、俺も一緒に入ろうっと」
後ろから抱きしめて、そのまま膝抱きにする。
軽やか足取りで浴室の扉を蹴飛ばして悟浄は湯船に三蔵をゆっくりと浸からせた。
「くっつくな。気持ち悪い」
「さっきまで一杯気持ちいいことしたのに」
蓮を浮かべた湯船に浸かって、三蔵は悟浄の頬を軽く打った。
「まぁ、見ててよ」
湯を掬って、小さく呪文を唱える。
水は宙に浮き霧のようにその形を変えた。
球体となって、三蔵の鼻先でぱちん、と割れる。
「こんなことだって出来る」
指先が何かを描くと、球体は今度は花に。
その光景にただ彼女は見とれるしか出来なかった。
「綺麗……だな……」
「うん。多分、こんなことをしたくなんのがさ……俺の好きってやつかもしれない」
いくつもの水の花を浮かべて、悟浄は照れ臭そうに笑う。
「難しいことはわかんねぇけど」
君が笑ってくれるのならば。
「三蔵が笑ってられるんなら、俺……案外なんでも出来ちゃうよ」
白だって黒に変えて見せるから。
それだけの力は、この両手にある。
真夜中過ぎのこの水の小部屋。
一組の男女が無邪気に笑っていた。
眠る男の頭をそっと撫でる指先。
(眠ってると、穏やかな顔になるのだな……)
皮肉めいた言葉を生み出す唇も、よく見れば形が整っている。
自分を抱く手も、手にすれば暖かい。
膝を抱えて、窓枠に掛かる月を見上げる。
(不思議だ……ずっと昔にもこんな思いをしたような気がする……)
風変わりな水の妖怪は、破天荒な女僧の侍従となり共にこの道を歩む。
改めて見れば悟浄の身体のあちこちに傷が出来ていた。
その一つ一つを撫で摩って行く。
(共に歩いてくれるか?悟浄……)
その胸に顔を埋めて、眼を閉じる。
(どこか……師匠に似て……)
無意識に背中を抱いてくる手。
(いや、比べるものではない……今は、こいつたちが居る……一人では……ないから……)
子供が居場所を見つけたような笑み。
重なった夢は、どこか懐かしい気がした。
晴れは日は恋曜日。
照りつける太陽の下、どこまでも行こう。
今度はそんなに間を空けずに投下できる……ようにがんばります。
台風に気をつけて健やかに過ごしたいものです。
キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
朝っぱらからハァハァさせて頂きますた
KINOさんのエロとエロ前後のやりとりやっぱ好きですわ
三蔵可愛いし悟浄いいヤシだし
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
まってました!
朝見つけたけど出掛けなきゃならんかったから泣く泣く…。
投下キテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
リズムのある文章と全体の艶めいた空気の表現が好きです。
美味しくいただきました。
368 :
名無しさん@ピンキー:04/06/26 17:43 ID:FTQlbPj+
a
ほしゅほしゅ
保守どうもです。
ようやく終わりが見えてきました。
多分、誰の予想も付かないオチだとは思ってるのですが。
もうじき七夕。今年こそは恋人たちが会えますように。
ワーイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ
372 :
名無しさん@ピンキー:04/07/07 13:12 ID:ke08cuka
あげ
圧縮近いかな?
PSの西遊記でラスボスやってますが……倒せません_| ̄|○
だれか助けて……
KINOさんこんにちは!
ラスボス…ええとクリアしたはずなのに覚えてない…_noゴメンナサイ
保守
保守(・∀・)
圧縮近いみたいだから、たまには自分で保守(゚▽゚*)ゞ
もうちょっとだけお待ちください
ホッシュ(`・ω・´)
保(゚∞゚)守
封神のほうには、帰ってこないんですか?
待ってる人もたくさん居ますよー。
ほす
保守
384 :
名無しさん@ピンキー:04/08/27 20:48 ID:1f16+jNa
干す
ほっしゅ
保守
hosyu
ほしゅ
あわわわ.。。。。。二ヶ月も投下してねぇヽ(#゚▽゚)ノ┌┛Σ(ノ´Д`)ノ←KINO
えーと、エロなしで板違い覚悟です。
三蔵の昔話を。
◆もくまおう◆
「江流!!どこいったぁ!?」
僧服の青年がばたばたと回廊を走る。
「師匠、どうかなさいましたか?」
「出かけるぞ!!」
「って、師匠〜〜〜〜っっ!!」
子供手を引く青年はけらけらと笑い石段を降りていく。
これがあの光明三蔵とは名乗らなければ誰にも分からないだろう。
栗金の髪に褐色の肌。左腕一本に刻まれた見事な刺青。
前を見据える碧眼はその光に意思を携える。
見たところ二十代後半にも見えるが、加減によってはもっと上にも。
ただ、笑い顔だけは妙に子供染みていた。
「どこに行くんですか?」
「遊びに。いやねぇ、毎日寺に篭るのもどうかと俺は思うわけよ。お前だって庭掃除と座禅の
繰り返しは飽きるだろ?たまには祭りで飴でも食ってだな……」
「師匠が、食べたいんですよね?」
「まぁ、そういうこった」
じゃらり、と鳴るのは水晶の数珠。
男の腰よりも少し高いとこまでしか背丈のない少女は、くすくすと笑う。
「師匠は、甘いもの好きですからね」
「甘いものとお姉ちゃんと菩薩さんとな。あと、お前」
「?」
まだ言葉の意味を解するには知識も経験も、そして悪行も足りなくて。
江流と呼ばれた少女は、元は川縁で拾った赤子。
栗金の髪に、血色の眼。
酔狂だといわれても、光明は彼女を育ててきた。
いわゆる僧侶とはかけ離れた男だが、それなりの信念はある。
心だけは誰にも汚されないということ。
幼いころから彼が江流に教えてきたことはただ一つだけ。
「己に恥じる行為だけはするな」と。
手を繋いで歩く道は、暗くてもそれさえ感じなかった。
守られている安心感。江流にとってこの破天荒な師は自慢の男だった。
小さな瓶に入れた金魚は、ひらひらと泳いで泡を立てる。
硝子の鉢は寺院にあるものをと、光明は江流の手を引いた。
飴細工の入った袋と、小さな翡翠の櫛。
「江流、こぼさないで食え。その飴だって職人さんが魂込めて作ってんだ」
「は……はひ……」
口をもごもごと動かしながら、江流は師匠の顔を見上げる。
この寺院には多くの若い僧侶見習いが居る。
頂点に立つのは光明三蔵法師。
若年にして三蔵言うの階位をもつ男だ。
その次に居るのがこの江流童子。法師の秘蔵の子供。
幼年にして経文を全て憶えるという頭脳は持つものの、面白く思わない輩が多いのも事実だ。
何かと意地の悪いことを江流に仕掛けるのだが、彼女はさらりとかわすだけ。
現場を押さえられれば光明法師の飛び蹴りと拳突が待っている。
何人か強制的に下山させられた連中も居るほどだ。
「同じ髪の色ってのもあるけど、なんかお前に跡目やって欲しいんだよな。俺」
ぽふぽふと小さな頭に触れる大きな手。
「強くなれ、江流。誰にも汚されることの無い誇りを持てるように」
川流れの子供故に「江流童子」と言われ、彼女は生きてきた。
それでも師匠がつけたこの名前は、決して嫌いではない。
水は全ての生命の源であり、柔軟に形を変える。
その水の名を汲んだこの名を嫌うことなど出来なかった。
「江流、ちょっと来い」
箒を持ったまま手を引かれて、ぐるりとその周りを囲むのは僧侶見習いの先達たち。
「何か御用で?」
「光明さまがお前を飼ってる理由が分かるか?」
「私は飼育されてるわけでありません」
ぱん!と頬をはたく手。
「その顔なら育てばいいものになるからな」
「詰まらんことを……」
その手を払いのけて江流は男の顔を見上げた。
夕日に血を混ぜたような赤い赤い眼。
「!!」
小さな拳が鳩尾に入る。
「光明様は先に手出しされたらその場に居るもの全員をやってもいいとおっしゃった。
次はどの馬鹿だ」
江流を光明法師が気に入っているのは、何よりもその気性。
多少のことには負けずに、相手がどれだけ大きくとも引かない。
枝一本で熊とでも戦う少女。
負けることなど決して考えない。
「光明様以外、私に命令できるものはいない。覚えておけ」
「生意気な……」
「ならばこの寺にある経典を全て暗唱するのだな。それが出来ないような輩に文句を言われる筋はない」
昼に夜に。
彼女は心の迷いを払うために経典を読みふけった。
一字一句間違えることなく、心に刻み込まれる言葉たち。
(母様は……私を何故お流しになられたのか……)
欠けた小指だけが父母との繋がり。
夜毎、痛むそこに触れる指。
強がりを取り払えば、年相応の少女が独りいるだけ。
妖怪たちのざわめきは、いつものことだと彼は笑う。
此処での生活にも慣れ、江流は名実共に光明三蔵の後継者として一目置かれるようになった。
破邪の札と封魔の法力は群を抜く女僧。
「お前も十七か、早いよな」
「そうですか?師匠は何一つ変わりませんね」
二人揃えば妖魔も逃げ出す。二人の声は封魔の音色。
四十の少し手前だというのに、光明法師の身体はいまだ若者とそう変わらない。
筋骨が隆起しているとは言いがたいが、筋肉質の身体は日ごろの鍛錬の賜物だろう。
鎖につながれた鉄球を振り回しながら、庭先で行う独経。
まるで鉄球などないかのようにその小脇をすり抜ける江流。
この師匠にしてこの弟子あり。
そんな二人だった。
日が沈めば杯を突き合わせて酒を飲み、書物の共には煙管が二本。
年の離れた兄妹のように、光明と江流は日々を過ごしてきた。
同じように左腕に刻まれた破邪の呪文は、江流の度胸の表し。
その痛みにも堪えうる精神力は、「女だから」という回りの声をねじ伏せた。
「なぁ。江流」
「はい」
掛かる月の色は、彼女の瞳と同じ色。
「俺四十だ。ガキの一人ぐらい居てもおかしくはねぇ」
縁談は全て断り続け、勝手気ままな生活を続けてきた。
無論、江流に降りかかる男共を引き剥がしてきたのも光明だった。
「……………………」
女犯を禁ずは守られないが、彼は江流にだけは手をつけなかった。
「所帯も悪かねぇ……良くもねぇだろうがな」
自覚した恋は、あまりにも唐突で。
胸が苦しいという感覚をはじめて知った。
隣で聞こえる寝息が、こんなにもせつないもので。
触れてもらえないことが、自分が女だということを改めて自覚させた。
「なんつーか、自分の血が流れてる人間を見たいんだ」
「ええ…………」
「俺と同じ髪の色で……まぁ、口の悪いガキになるんだろうな」
日に焼けた肌は、月明かりで不思議な色合い。
眼を合わせるのが怖くて伏せられたままの紅玉。
「なぁ、江流…………」
「はい…………」
「三蔵法師に、なりたいか?」
「……………………」
「三蔵は、俺が死なんと継げねぇ。しばらくは先のことだ」
「はい……………」
流れるのは葉が風に擦れる音。
「お前、俺と一緒にならねぇか?まぁ、そんなに不幸せにはしねぇとおもうぞ」
唐突な言葉にぼろぼろとこぼれる涙。
「うわ、泣くな!俺はお前みたいなのに泣かれるとどうしたらいいかわかんねぇんだよっ!」
「……は……っい!……」
たまった涙を払う指先。
「酒癖……悪いけども」
「はい……」
「甘いもん好きで、偏食激しいけど」
「はい」
「女癖が悪いのは……極力直す」
「…………はい」
「でも、お前のことは大事する」
「はい!」
証人はあの熟れた月。
触れるだけの接吻でも、甘くて何もかもが溶けそうだった。
抱きしめられて得る安堵感。
きり良く二十歳まではこのままの関係と光明は自戒した。
まだ細すぎる身体は、男を受け入れるには不準備で。
それでも、互いの体温と匂いは幸福を運んでくれた。
「今度よ、天竺って西の果てに経文取りに行かなきゃなんねーのよ」
「天竺?」
「砂漠を二人で歩くのも悪かねぇ……なぁ、江流……」
「師匠…………」
「…………黙ってろ、何か、来てんな……」
江流の唇に指を当てて、光明は窓辺をちらりとみる。
障子に映る魑魅魍魎の影。
「寝かせてももらえねぇってか。面倒なこった」
身体を起こして刀を取る。数百の妖しの血を吸った長剣は、男の手の中でまるで笑うように
きらりと光った。
何が起こったのか、理解するのは容易ではなかった。
ただ、現実として最愛の男は自分の腕の中で虫の息ということだ。
仲間たちの骸も、妖怪たちの屍も。
何もかも、一つになって血溜まりの中にあるだけ。
「………し……しょ…ぉ……っ……」
男の頭を抱いて、だらりと力なく崩れた身体を抱きしめる。
「イヤ!!!嫌ァァァァ!!!!」
どれだけ叫んでも、この夢は覚めてはくれない。
現実という名の、過酷な夢。
「……こ……りゅ……」
「師匠!!」
「……え、が……っ……ぞ……に…」
三蔵法師の階位は、死を持って次の者に受け継がれる。
「要らない!!三蔵になんてなりたくない!!!」
ただ、その肩越しに未来を見つめたかっただけ。
血のこびり付いた唇が、小さく動く。
「嫌!!!師匠!!!」
「……………………………」
喉に絡んだ血は、彼から声を奪った。
それでもはっきりと聞こえた声。
「…………は…い……っ……」
閉じた眼は、二度と開かず。
冷たくなった男の唇に、自分のそれを押し当てた。
『三蔵の名を継げば、お前の中で生きられる。この先もお前と進める。悪くない未来だ』
彼の遺言は。
彼女を玄奘三蔵と名付ける事となる。
彼の意思を継ぎ、江流は玄奘三蔵と名乗り西の果てへと進み行く。
右手に彼の数珠を。
左手に、彼の想いを絡ませて。
あれから三度の季節が流れ、銘柄を変えた煙草にも慣れた。
一年で一日だけ『玄奘三蔵』から『江流』に戻る日。
(……師匠、私の進む道は……)
「江流」
「……は……い……ッ……」
それは、熟れた苺月が見せた幻だったのかもしれない。
「いい女に……なったな……」
伸ばされた手。
「連れては、行けねぇ……けど……」
「……はい……」
「西の果てで、逢える。もう少し…………」
さらさらと、砂が崩れるように消えていく姿。
「その道を進め。俺は先に行ってる」
「…………はい」
それは一年に一度だけの奇跡。
彼女を彼女に戻す魔法。
でわノシ
(;´-`).。oO(三日も反応がないなんて…)
(´-`).。oO(KINOさん、楽しませてくれてありがとう)
>400
反応が無いのが反応だとおもってるから、無問題。
適度に保守ありがとう>ALL
DATでも構いません。ぽつぽつしか投下できないので。
やれるだけ、あがくよー。こんなに難産になるとはおもわなんだ⊂⌒~⊃。Д。)⊃
保守
まだ、投下しててもよいものなのかな?
双子だけでもきちんと終わらせたいのです。
むしろ、こいつらをきっちり終わらせたいのですが。
一個片付いたのでちょっと時間を回せそうです(゚▽゚*)ノシ
お待ちしております...(´З`)チェッ
(゚▽゚*)これか?この顔文字か?
>>406 新作まってます
∧_∧
(・∀・*)
iヽ (つと )
| ゙ヽ、 /(_ 丿
| ゙''─‐'''" l
,/ ゙ヽ
,i゙ ゙i!
i! ● ト─‐イ ● ,l
゙i,,* ヽ,_ノ *,/
ヾ、,, γ⌒ヽ/
/゙ " ヽ,. '!
/ i!
(⌒i ヽ 〈 ,i!:::::::::::::::: ::: :: :: :: : : : : :
γ"⌒゙ヽ l γ"⌒゙ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::: ::: :: :: :: : : : : :
i i,__,,ノ _i, i::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::: :: :: :: : : : : :
ヽ,_,,ノ"~´ ̄``゙ヽ,_,,ノ:::::::::::::::::: ::: :: :: :: ::
んーと、な?
ここ、わしがだらだらと書いてきたわけですが、過去のものも最近のものも、
そしてこれからのものも。
つまんねーとか、ここ変とかいってやってください。
みんなが満足できるSSは、書けないだろうけども。
KINO、ちょっとはマシなSS書けるようになったなっていわれるように、がんばりたいから。
ここだけは、自分で守りたい。我儘で立てたスレだけど、ここだけは。
金銀、自分なりにあがいてます。やるだけやる、がんばるよ〆(゚▽゚*)
反応すらないこのスレの人間性を疑う。
みんな、散々もてはやしといてこれか?
俺は待ってるますよ。
こそこそと、繋いで見る
◆アゲハ蝶◆
「は〜〜〜い、三蔵ちゃん。質問がありまぁ〜す!」
むくれ顔の悟浄は奇妙な音階の声色。
「手短に言え、河童」
「俺、この仕事は請けたくありませぇ〜〜ん」
「俺も、嫌だ」
珍しく意見が一致しても、三蔵にとってはありがたくもなんともない状況。
「…………もしかしなくても、前金で貰った?」
「……………」
「煙草の匂い、いつもと違う」
男二人の視線から目を逸らす。
「ああ〜〜!!!俺、三蔵ちゃんに不満無しだけど!そこだけ嫌なんだって!!」
「しかも最初に使うしな!!!」
ぎゃあぎゃあと文句を言う男二人の鼻先に三蔵は一枚の紙を突きつけた。
「ほぇ?」
「どんな武具でも、直す匠が居るそうだ。先払いしてある、行け」
夜々、年頃の娘がふらふらと姿を消す。
戻っては来るのだが皆一様に視点が定まらない。
まるで熱病にでも犯されたかのようにただじっと天を見上げるだけ。
「地の血脈を操る妖怪らしい。こちらは炎と水か。幾分か分が良いが……」
金輪を触りながら、悟空が笑う。
「風と月。三蔵の相だ。合わせれば俺らが勝てない相手なんてないだろ?」
彼は物の形には囚われない目を持つ。
そして、人ならざる者の声を聞く女。
「なんにしろ、やるときゃやんねーとな。男としてのプライドってもんがね」
深緑の髪を下目に結い上げて、悟浄は空を仰ぐ。
水の気を読むことの出来る男は、この先の運命に多少の不安を感じていた。
(胸騒ぎ……三蔵に何も起きなきゃいいんだけどさ……)
時折、妙に彼女の命が揺らめいて見えてしまう。
手を伸ばしても、さららと崩れる砂のように。
人間(ひと)の命は短く儚い。
だからこそ、人間を愛してはいけないのだ。
悠久の時を生きるものは何時だって残される側。
慣れたはずでも、傷口は化膿してしまう。
(何も……起こらせねぇよ…………この悟浄様が付いてんだからよ)
秘密も黙秘も黙殺も。
この女にとっては意味を成さないことくらいは分かっている。
だからこそ、その頼りない手首を離さないように。
出来るだけ側に居たいと願った。
ひらり、ひらり、と飛ぶ蝶を指で摘んでため息を付く。
その小さき命の光は男の意思で簡単に消えてしまう。
「生臭い肉は好きじゃないけれど、食わなきゃ死ぬ」
男の名は猪悟能。この古びた村に数百年前に幽閉された地妖。
村の娘をさらう張本人でもあった。
人間の女の肉でも彼の口には合わないらしく、魂を少しだけ齧って村に帰らせる。
彼にしてみれば親切心なのだろうが、魂の欠けた娘は生きる屍だ。
いや、それよりももっと性質が悪い。
家畜や獣を素手で掴んでは、食い千切る姿。
血の気の無い顔の中でただ一つ色のある唇は、赤錆の血色。
「ちゃんと家にも帰してるし、何が不満なんだろうね」
水晶の中に閉じ込めた金魚は、彼の唯一の話し相手。
この地から動くことの出来ない八戒にとって、たった一つの誰かとのつながりだった。
月が頭上よりも少しずれるころ、三人はそれぞれの武器を手に石碑の前に立つ。
「ここ?」
「ああ。悟空」
如意棒で石碑を叩き割れば、異空間への穴がぽっかりと開いているのが見えた。
「美人だとやる気も出るんだけど、多分男でしょ?」
「十中八九な。行くぞ」
三蔵の右に付くのは悟空。後ろに悟浄。
三人揃ったときに先陣を切るのは何時だってこの女だった。
躊躇無く、闇に解ける姿。
「うわぁっ!!」
最後に見えたのはその白く細い指先。
「三蔵!?」
「三蔵ちゃん!?」
それきり、空間はぴしりと閉じてしまった。
一人ではないと錯覚するには何かの残像に頼ってしまう。
それすら限界に近いからと罠を張った。
気の強さは風で読むことが出来る。
無作為に娘たちを攫えば、その主が此処に来ると踏んだからだ。
「して、私に何の用だ」
「話し相手が欲しかったんです」
悟能はため息をつく。どれだけあがいてもこの空間から出ることは出来ないのだから。
かつては天逢元帥として天界で高位の道士として生きていた。
しかし、元来の酒好き女好きが祟って今はこの有様。
見た目がまじめなだけに余計に性質が悪い。
「でも、お前……他に色々やらかしてんだろう?」
猪悟能の悪行はそれだけに留まらない。
上げれば大きなものは八つ。細かなものなどはきりが無い。
札付きの悪童振りには、悪僧と言われる三蔵も苦笑するしかない。
「なんとか此処から出れませんかね」
「出したら私が標的(マーク)にされる。お断りだ」
天竺までの道のりに何かと邪魔が入るのは避けて通りたい。
「そういうわけで帰らせてもらうぞ。悟能」
「……僕だって、本当は平穏に暮らしたいんです。のんびりと碁を打ったり、花を育てたり」
元々温厚な猪悟能は、女好きと酒乱を除けば人としては悪くは無い。
ただ、運悪く月神の褥に潜り込んでしまったのだ。
本来は同じ気を持つ地の女神の寝所に行くはずだったのだが、その夜に限って一つ隣の
扉を開けてしまった。
そして、こんな辺境の地に投獄されてしまったのだ。
「分かった、分かった。私は帰らせてもらう」
「待ってください!もう少しここに居て話を……」
「がたがたうるさい男だな!こっぴどく仕置きされたいのか!」
水晶の数珠で額をぺしん、と打つ。
「是非!!お仕置きしていってくださいっ!」
「は!?」
「気の済むまで、じっくりとお仕置きを。さぁ、別室でゆっくりと」
がし、と手を取られて引きずられるように連れ込まれたのは寝室。
「時間をかけて、ゆっくりとお仕置きしてください」
「殺すぞ!馬鹿!!」
慣れた手つきで衣類を剥ぎ取り、細い背中を抱きしめる。
「ふざけるな!大馬鹿者がっ!!」
重なった唇。
「!」
その瞬間に、空気の色が変わる。
張り詰めて閉鎖されていたものが剥がれ落ちて、始まる外界との融合。
「まさか……接吻(キス)で解けたのか……ッ……」
恋多き、月の女神が仕掛けた封印は。
「そう……みたいですね」
一人の女の唇で解けてしまった。
「これで、ここから出れる」
三蔵の頬に手を掛けて、悟能はもう一度唇を重ねた。
暖かさも、柔らかさも、随分と縁遠いものと化していた。
それを感じることの出来る『幸福』という感情。
光は失ってはじめてその明るさを知ることが出来る。
明けない夜の恐怖。
「ありがとう……ええと……」
「玄奘三蔵。覚えておけ。猪悟能」
噂に聞く女僧は、想像していたよりもずっと違っていた。
破天荒で粗野な女だと伝わり聞いたが、実物はそうではなく。
(凶悪なのは噂通りだけども……)
自分の話を最後まで聞き、逃げ出さない肝の据わった女。
女との接吻なら、今まで何度も重ねてきた。
それでも、その封印を解くことが気出たのは彼女だけ。
(でも、僕の話をちゃんと聞いてくれた)
細い手首を掴んで。
「三蔵、僕に……名前を付けてくれませんか?」
「何のために?」
「貴女と共に生きるために。どの道天界の連中は貴女を狙いますよ。なら、警護に僕を
連れて行くのも悪くないとは思いませんか?」
呆れ顔で女は首を振った。
「面倒ごとばかり私に降りかかる。猿と河童の他に今度は豚か!?」
「豚とは失礼な女だな」
「まぁいい。荷物持ち三人目だ。行くぞ、八戒」
ばしん、と小物の入った鞄を悟能に向かって投げつける。
「え…………」
「大罪八つ。それ以上するなという意味だ。わかったなら返事をしろ、八戒」
「……はい」
猪悟能から、猪八戒に。
この名が、後世まで残ることになろうとは彼女も彼も思っても見なかった。
「ハチ、どこだ?」
「ここですよ、三蔵」
いつもの様にその名を呼ぶ声。
八戒が一行に加わった当初、悟浄はいい顔をしなかった。
元々同じような階位の男二人。
加えて狙う獲物は共にあの『玄奘三蔵』ということ。
悲喜交々を抱きながら四人はまだまだ旅路の途中。
(貴女がつけたこの名は……僕の知る言葉の中で一番すきなんですよ)
荷物持ち、愚痴の相手。
どれだけ虐げられても妖怪三匹は彼女の側を離れようとはしない。
「甘酒と栗でも食わないか?」
「いいですよ、お付き合いしましょう」
まだ夢の半ば。
さめることは願わぬまま、この道を進む――――――。
でわ、またに(゚▽゚*)ノシ
乙であります!!
421 :
名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:20:46 ID:+MiHkTqP
あげ
えーと。
投下自体をやめようかと思ってます。ここも、多分見てる人はもういないと思うんで。
適度にDAT落ちさせてやってください。
たたきにもスルーにも、なんか疲れてきたってのが本音で。
なんかありますか?この際なんで何でも言ってやってください。
反応ないのが嫌なら自分で自分のサイトやったらいいと思うよ
なければサイト立ち上げて。
なんというか、かまって君丸出し。
うん。そうなんだな。
つまんねーとかでも嬉しいんだ。ああ、見てる人いるんだなって思えるから。
っていうか、ここ人がいたことに驚いた
作品はずっと好きだったよ。最初のころは何度か感想も書いてた。
ただすごく反応が欲しそうだなーというのがわかった後、
なんだか重くなってROMにまわってしまった。天邪鬼でスマン。
疲れたなら休んでくれ。楽しませてくれてありがとうな。
そっか。わしが重かったんだな。
誰がいるかわかんないし、誰も見てないんだろうなって思い始めてたからさ。
エロパロで初めて立てたスレだし、楽しく落としたい気持ちがあるのは本当で。
でも、もうお前なんかイラネ!なら、何もしないでDATに逝かせたほうがいいかと思ったんだ。
今までのようにできたものを落とすか、それとも、此処自体を消滅させるか。
どっちがいいかは自分では決めかねるんで、決めてやってください。
うん、「決めてくれ」って、それは一番重い類のリクエストだと思うぞ。
青い顔で川辺に立ってる女に
「私辛いんだけどどうしたら良い?」とか聞かれるの、怖いと思わないか。
投下するもしないも自由。感想かくも書かないも自由。
自分なんかはそれが楽でここにいるからな。
「なんか書くことを求められてんのか?」って思わせるようなレス、あんま好かない。
書き込みを見てて迷ってるらしいことはわかるんだが、
KINO氏の好きなようにすればいいとしか言えんわ。
下手に今後も投下して欲しいっつって、
またスルーやらたたきやらでKINO氏が悩むのも嫌だしな。
かといって感想書かなきゃならんって責任を負うのも嫌なんだわ。
役に立たん上に冷たいROMで悪い。
誰も見てないわけじゃないですよ
これにて金銀完結。次に移動です。
鵜国か何かに行く予定。
だらだらいきますわぁ。気長に、のんびりと。
◆骸遊戯――幸福の定義――◆
「さて、そろそろ時間だな」
頭上の太陽を一瞥して、四人は相手を待つ。
手にはそれぞれの武器を。後方に構えるのは玄奘三蔵。
「負けやしねぇさ。三蔵」
悪童四人と悪鬼三人。軍配はまだ分からないまま。
「おっと、来みたいだぜ?三蔵ちゃん」
呼吸を整えて、前にでる。
「俺は、紅孩児を」
「僕は、金桂童子を」
「俺、あまりかよ」
「前を見ろ、四対四だ」
煙管を口から離して、女はため息をついた。
その言葉に、男三人は目線を移す。
「何?あれ」
「さぁな。敵さんだってことははっきりしてんだ。だったら……」
じゃらじゃらと喚く鎖を一撫で、悟浄はその切先を男に向ける。
「ブッ倒すだけだろ?三蔵ちゃん」
「そういうことだな」
鋼のぶつかり合う音を耳で確かめながら、女は尺錠を振りかざす。
「面倒ごとは嫌いなんだ。それは貴女だとて同じだと思っているが?」
青龍刀でそれを防いで、銀角は口だけで笑う。
「そうね。そう思うわ。でも、貴女……人間だもの」
頭蓋を守るようにぐるり、と回る角。
それは妖怪だけが知り得る受胎の証。
人間である彼女は気付く所以も無く、僅かに生まれる銀角の隙を突いていく。
光明法師はあらゆる武器の使い方を彼女に残していた。
腹部を守るために僅かに腕が下がる瞬間を見逃すような女ではない。
「古傷でも痛むか?桜華銀角」
「そんなところだ。傷はこれからも増える。けど……私の誇りだ!!」
揺れる金銀二つの髪。汗でさえ宝石のように彼女たちを飾り立てる。
おそらく。
出会いがもっと違う形ならば手を取り合うことができただろう。
同じ視線を持ち、同じ思考を解するものに。
人間と妖怪の境目など、ありはしないのだから。
「あれ、お前の女?可愛い顔してんのに性格悪ぃ?」
降妖杖で喉元を狙い、悟浄はちらりと目線を銀角に。
「性格?最高に悪いぞ。そこがたまんねー」
紅孩児の槍を防いで、悟浄は下から蹴り上げる。
土煙と、金属の掠れる匂い。
それはどこか懐かしいものだった。
鉄、硝煙、血液。
本能に刻み込まれた悦び。
(だから、もう遊ばねぇって決めたんじゃねーか……怪我ばっかすっから)
腕にできた傷を、摩ってくれた指の温かさ。
口の悪さに反比例して、彼女はいつも何処か穏やかだった。
(天竺じゃなくて、俺は三蔵と一緒にいるために……来てんだからよ!!)
「余所見してっと、振られるぜ?大将」
「大口叩けんのもそこまでだな、ガキ」
断ち切るべき因縁ならば。
今此処で、切ってみせよう。
互いの武器が弾かれて、男二人は掴みあう。
どちらとも肉弾戦と接近戦を得意とする種族だ。
「死んでたまっか!!俺は……あいつを守んだよっっ!!」
襟首を掴んで、拳を振り下ろす。
それを腕で受けながら悟浄は返した。
「俺にだって守るもんがあんだよ……だから、譲れねぇ!!」
ごほごほと咳き込む口を押さえて、金角は二つの剣を鮮やかに扱う。
「風邪ですか?不摂生は万病の元になりますよ?」
「黙れ!!」
頬を掠める剣先に触れる指先。
「!?」
びしびしと鈍い音が刃を侵略して、粉に変える。
さららと崩れたそれは一瞬で風に消えていった。
「己の武器の特性はよく知るべきです。それが貴方のような智謀者が相手なら
なおさらに。僕も慈善事業で三蔵に侍従しているわけではありませんから」
ゆっくりと、その姿がゆがんで瞳の色が血に染まる。
それは、紛れも無い同胞の姿。
「手抜きはしない主義なもんでな。死に行くものに対して悪いだろ?本気であたって
やらねぇと」
妖術の使い手の男は、金角を追い込むために周到な罠を準備していた。
二刀流の剣士はあくまで二つの剣を使うことに喜びを覚える。
その金角のプライドを打ち砕くには、その剣を微塵も無く消滅させること。
それも、一本だけを。
「ここで終わりだ。静涼金角」
「どうかな……?貴方がそうなれるように僕も……」
印を結び、金角はゆっくりと呪文を詠唱する。
伸びた金色の髪と、いっそう透き通る肌。
「死に逝く命ならば、鮮やかに散って見せるさ」
「……本体は、女か。お前」
「ああ、そうだ。双子はどちらかしか残れないからな!!」
むき出しの牙と、伸びた爪。
肩で息をしながらも金角は執拗に八戒の瞳を狙う。
悲しいほどに澄んだ空の下。
彼女は自分の運命を知っていた。
「金華!!」
悟空を突き飛ばして、独角児は金角の元へと走り寄る。
「痛っってぇぇ!!!待て!!おっさんっっ!!」
如意棒を振り回して悟空も後を追う。
身体的能力だけを取るならば三蔵一行ではこの男がずば抜けている。
その悟空をまくことなど、到底不可能に近かった。
「離れろ!!馬鹿猿がっっ!!」
「俺のこと馬鹿って言っていいのは三蔵だけだって決まってんだよ!!」
それでも気持ちは恋人の傍へと急ぐ。
「悟浄どけ!!そいつは俺の獲物だっっ!!」
「二対二。丁度いいか……」
すぐ傍では他の二組が熾烈な攻防を繰り広げている。
「兄様……」
「下がってろ、金華。俺がやる」
金角を守るように、独角児は二人を見据えた。
「麗しい兄弟愛か?」
幼鍬を振り下ろすと、大地に走る零度の空気。
「夫婦だからな。俺たちは」
「……兄様……」
金角の体が限界に近いのは、傍目にもわかる事実。
誰かを守ることは、自分の自我を満たすための行動なのかもしれない。
それでも。
この気持ちを止めることは、出来ないから。
出来るだけ、離れずにいられるのならば例え五体を切り裂かれても。
それに、後悔などありはしない。
のろのろと体を起こして、男は欠伸を噛み殺す。
ざんばらに伸びた髪を無造作に結び、だらりと腕を投げ出して長いすに凭れる姿。
「羅刹さんやぁ……馬鹿息子はどこいったぁ?」
「喧嘩しに行ったわよ。娘と」
「そりゃ感心だ。男なら喧嘩の一つもできねぇとな」
「三蔵法師ってのとね」
「……そりゃ感心できねぇな。孫を殺す気か、あの馬鹿息子が」
眼鏡を直し、男は身支度を。
「ちょっと出かけてくるわぁ……」
目指すのは彼の地。
牛魔王と字を持つ男は、紅孩児の父親。
義兄弟に独角児を持ち、因縁は腐るほどに。
平頂山の傍荒野、遠めにも分かるその激戦振りに男は頭を振った。
(……これを使えば……三蔵さえ封じれば……)
四対四の戦いは誰が誰とではなく無作為に繰り広げられていた。
幸いにして紅孩児と独角児は自分を守る形で善戦している。
(私にできることは、これが最後)
懐からとりだしたそれの栓を抜き、金角は女のほうを見る。
「玄奘三蔵!!」
「なんだ!!」
返事と同時に三蔵の体は、紅葫蘆へと吸い込まれていった。
「三蔵っっ!?」
一転して今度は紅葫蘆をめぐる争いに。
そして、それを止めたのは男の一声だった。
「そこまでだ、紅。独。下がれ」
「げ、とーちゃん……」
「兄貴……」
穏やかに笑って、男は金角と銀角を抱き起こす。
「金華に銀華。よくやった。お前たちは少し休んでろ。羅刹に部屋の準備はさせてきた。
銀華、いい子を産んでくれ」
二人の体を光が包み、何処かへと連れ去っていく光景。
「あんた、誰だ……?」
「こいつらの身内だ。弟と息子が迷惑掛けたな。それと嫁も」
紅葫蘆を振れば、酒塗れの三蔵の姿。
少しばかり酔いが回ったのか、頬が赤い。
「小姐、俺と少し話さんか?みたとこお前さんが一番話が通じそうだ」
「名を……」
「字を牛魔王。それで良いか?玄奘三蔵」
並んだ男たちは一様に不機嫌極まりないといった表情。
気にすることも無く、男は話を続けた。
人間と妖怪の不仲の原因。
金角と銀角が今まで平頂山を守ってきたこと。
最初に取り決めを破棄したのは人間。
そして、少女二人の体の現状を。
「ここは退いてもらえねぇか?」
「しかし、現に人間は妖怪に脅かされる生活だ」
「俺たちも人間に脅かされながら生きてる。その部分は相子だろ?」
人間は、同胞にさえ寛容にはなれない。
それは此処までの旅路で嫌というほど見てきた。
「今回だけ、退いてくれや。俺だって孫を抱きてぇんだ」
命は、全てに均等に与えられる。
そして、同様に死も。
命は生まれ、いずれ消え逝く。
「俺たちだって、殺しが好きなわけじゃねぇ」
「………………」
「どれくれぇ前か忘れたけどよ。あんたの前の三蔵と一度飲んだことがあんだ」
「師匠と?」
「ああ。人間にしとくが勿体ねぇくらいの度量の男だった」
頬の十字の傷を摩り、男は懐かしげに目を細めた。
「俺に傷付けたのも、アイツだけよ」
彼も自分を守ってその命を落とした。
双子の妖怪も仲間を守るために。
その関係に何の違いがあろう。
「……分かった。あなたに免じて退こう。だたし……二度目は無い」
「ありがてぇ。おい、馬鹿二匹。頭下げろや」
無理やりに男二人の頭を押さえつけて、伏せさせる。
「こいつらも連れてけぇるやね」
「そうしてくれ」
「あんたとは一度じっくり飲みてぇな。小姐。俺ぁ気の強い女が好みでねぇ」
やれやれと女は頭を振る。
「ここは退いてもらえねぇか?」
「しかし、現に人間は妖怪に脅かされる生活だ」
「俺たちも人間に脅かされながら生きてる。その部分は相子だろ?」
人間は、同胞にさえ寛容にはなれない。
それは此処までの旅路で嫌というほど見てきた。
「今回だけ、退いてくれや。俺だって孫を抱きてぇんだ」
命は、全てに均等に与えられる。
そして、同様に死も。
命は生まれ、いずれ消え逝く。
「俺たちだって、殺しが好きなわけじゃねぇ」
「………………」
「どれくれぇ前か忘れたけどよ。あんたの前の三蔵と一度飲んだことがあんだ」
「師匠と?」
「ああ。人間にしとくが勿体ねぇくらいの度量の男だった」
頬の十字の傷を摩り、男は懐かしげに目を細めた。
「俺に傷付けたのも、アイツだけよ」
彼も自分を守ってその命を落とした。
双子の妖怪も仲間を守るために。
その関係に何の違いがあろう。
「……分かった。あなたに免じて退こう。だたし……二度目は無い」
「ありがてぇ。おい、馬鹿二匹。頭下げろや」
無理やりに男二人の頭を押さえつけて、伏せさせる。
「こいつらも連れてけぇるやね」
「そうしてくれ」
「あんたとは一度じっくり飲みてぇな。小姐。俺ぁ気の強い女が好みでねぇ」
やれやれと女は頭を振る。
(しかし、光明もすげぇもん囲ったもんだな……惜しい男亡くしたもんだ)
それぞれの意思と、それぞれの命。
在るべき場所へと、返せればきっとそれが幸せなのだろう。
「これを山の頂に埋めてもらえれば、妖怪は悪さをしませんから」
宝珠を長に手渡して、三蔵は天を仰いだ。
「それと、無駄に命を奪うことは止めて下さい」
「妖怪は我らに仇成す物ですぞ」
「彼らにも私たちのように、家族があり、友がいるのです」
手を合わせ、小さな祈り。
凛とした姿は三蔵の名に相応しいものだった。
生まれ来るもの、死に逝くもの。
命はいずれも美しく、悲しい。
これで、ようやく金銀完結。これだけエロなしですいません。
入れる場所が見つけられませんでした。
次はうっかり妊婦か鵜国あたり。あとは金銀その後とか。
でわ( ゚▽゚)y─┛~~
441 :
見てる人:04/11/17 01:17:06 ID:NLgmgvQY
(´∀`)KINOさん、お疲れ様〜
個人的に金銀その後を先に見たいですw
投下乙です。エロなしもヨカタ。
乙です
(゚д゚)ほっしゅ ほっしゅ
三蔵ちゃんエロい、エロくていいー
445 :
☆:04/12/08 00:03:15 ID:h99MLTLZ
長文スマソ。だがSS書きとしてこれだけは言わせてくれ
自分が作品を書いてそれで満足だという作者もいるだろうが
そんなのはごく少数で大半は感想が欲しいんだよ。
批 判 で す ら 嬉 し い ん だ よ。
かまってちゃんは悪いみたいなことを書いたやつがいるが
貴重な時間を割いて作った小説がスルーされたときの悲しみを知ってるか?
もっとかまってやれよ。○○みたいなシチュキボン!とか言うだけでも充分だ。
マンセー意見や信者を嫌う奴がいるが、職人にとっては褒められ、崇拝され、
物乞いのように降臨を待たれるのが何よりも心地良いんだ。
そしてそれは職人の創作意欲へと繋がる。
よくいるよな? 自分で書けよ→俺文才無いから……ってやつ
職人はそれをやってのける、尊敬するべき存在なんだ。
それを感想すら書かずに次のSSを待って妄想をぶちまけ続けるだけじゃ、
職人だってやる気を無くすさ、そりゃ。
こういった板において「神」っていう表現は良く見るけど、
実際職人とそれを読んでるだけの奴とでは神と人の関係に近いと思う。
祈らない人間にまで愛を与える神はいないんだ。
ぶっちゃけこのスレの住人みたいに職人を下に見た発言を連発されたら、
神は祈ってくれる人のところに行くね。
だから、職人はもっとちやほやされるべきだと思う。
スレにもサイトにも感想が溢れていたら、それだけで次の作品を書く気になる。
それを今回みたいなことにしたら、スレを去る気にもなるさ。
キノはもう来ないかもな。
長文で悪かった。俺ももう来ないことにするよ。
このレスはあるSS書き一人の意見なので、あまり気にしなくても良い。
感想をしなくても次々作品を出してくれる真の神もいるかもしれない。
ただ一つだけ断言すれば、このままではこのスレは滅びる。確実に。
それはそうとKINOさん大変らしいな。
アフォはキニスルナ、乙。
ん?目標は年内に金銀さ。
>445
あんがとなー。ここは過疎上等だから。
のんびりとやらせてもらってますわぁ。みんなもクリスマスは楽しめよー。
漏れは仕事だけどな。
今更な質問でスマソですが…このスレの1ってKINOさん?
コテが違うみたいだけど、改名したんですか?
>449
うん。わし。
途中でトリップ変えて、今に至る。たまにKINO@瑠璃で投下したし。
KINO@出張中とかKINO@修行中とか。
適当に流してもらえれば幸い。
むしろ、過疎にようこそ、またーりしていってくれ
451 :
449:04/12/08 01:28:28 ID:cO0QlpmQ
>>KINOさん
いえいえ、ご本人自らどうもです。
前にもKINOさんが自分で立てたスレだから、って書いてたのを見て、
その時は「あれ?でも名前違うよなぁ…」と不思議に思ってたので
ようやく納得できましたヽ(´ー`)ノ
なんだかんだ言われてますけど、KINOさんのSS大好きですよ。
書きたくなったらまた書いてください。読んで感想書かせていただきますので(・∀・)
>449
あんがとー。
風邪とか引かないようにな(゚▽゚*)ノシ
わしも続き書こう。
なにこの良スレ
紅孩児と銀角のその後。
骸遊戯の付けたしだと思ってもらえれば嬉しいです。
◆年々歳々花相似、年年歳歳妖相違◆
「大分、でかくなってきたなー。どっちだ、どっち?」
顔と不釣合いの膨れた腹を摩るのは男の手。
浅黒く焼けた肌色と、対になる様な白絹の肌。
「産まれてくるまで、分からないよ。紅」
「あーもう、早く出て来いや」
体全体がどことなく丸みを帯びて、目は猫目に。
「あー、名前が迷う!!どうしろってんだよ!!」
「迷ってもいいけど、変な名前は付けないでね」
銀の髪を、ゆっくりと櫛が滑り行く。
その手を取って男は自分の頬に当てた。
「銀華、いい親父になれるように俺、がんばるから」
その言葉を裏付けるように、彼ここ数ヶ月、夜中には必ず戻ってくるようになった。
時折、酒の席に誘われても以前のように遊び呆けることも無い。
たまには宵を愛でろといっても、帰ってくるほどだ。
「父さまも、母さまも」
「ん?俺んちの?」
「そう。私を大事にしてくれる」
件の二人にとっても待望の初孫だ。
何だかんだと理由をつけては、新居へとやってくる。
「それよりも、金角は…………」
病に冒された双子の姉は、独角児の率いる薬師たちに委ねられ、面会も叶わない。
どちらにしろ、妊婦である銀閣にいい状況ではないのは明白だ。
「金角は……大丈夫だ。兄貴付いてるし、兄貴の薬師たちみんな頭良いし」
「……うん……」
欠けた身体の痛みは、どれだけ離れても伝わってくる。
双子とは、一つの魂を二つに分けて生まれてくるものなのだから。
同じ顔を持つ、二人の女。
「銀華は、ちゃんと食って、元気な子供を産んで、それを俺と一緒にあの二人に見せに行く。
それがお前のすること」
それでも、銀角は以前のように人間を食らうことは無くなった。
喉の飢えは石榴で飲み込む。
唇を赤く染める果汁は血液に似ていて、安定をくれる。
飲み下して、飢えを凌いで、腹の子供ために歌うのだ。
「お前に良く似た娘だろーな」
「女子(おなご)は父親に似るのを知らないのか?」
言葉尻も柔らかく、伸びた髪は上等な織物の様。
悪鬼と言われた姿は微塵も無い。
「紅、外に行きたい」
手を取って、窓辺に連れて行く。
ここ数ヶ月、銀閣は邸宅から出ることが無かった。
正確には、紅孩児がそれをさせなかったのだ。
平頂山の主として、その名は知られすぎている。
そして、それに付随するように彼女恨むものも少なからず居るのだ。
それが彼女が身重だと知って、色めき立たないはずがない。
「ダメ。ここで我慢しろ。ほしいものがあれば俺に言って」
解かれた髪と、素面は彼女の幼さを表に出してしまう。
「たまには私も外に出たい」
「危ないから、ダメ」
「紅」
「………………」
伸びた角は隠しようが無い。加えて、見事な銀の髪。
細い身体に腹だけが突き出た姿。
「雪、降るだろ。風邪引くから、ここに居て」
「……やー……」
ぽろぽろと零れる涙。
幽閉生活は、世界から色を奪ってしまう。
「外に行きたい……」
「………………」
抱き寄せて、こつん、と額を合わせる。
「どうしても、外に行きたい?」
「うん」
「…………どうしても?」
こくん、と頷く小さな顔。
「分かった。一日だけだぞ、銀華。俺の傍から離れないで」
連れ立って降り立ったのは西の都。
男は易者風情の人間の姿に。女は目深に帽子を被って、その角を隠した。
久々に見る外界に、銀角の瞳がきょろきょろと動く。
「紅。おかしくは無いか?」
「全然。さて、どうすっか?銀華」
手を繋いで、離れないようにして人間の中に紛れ込む。
膨らんだ腹を摩る女と、それを目を細めて眺める男。
並ぶ姿は初々しい夫婦にしか見えない。
その二人が揃って天界議録に名を連ねる妖怪だとは、誰にも分からないだろう。
「腹減った?何か食うか」
「喉が渇いた」
居並ぶ露店の一つに立ち寄って、手に取ったのは熟れた杏。
「いい塩梅じゃろ?」
「美味そうだ。もっと赤いのは無い?」
「杏は緋が一番じゃて。赤では鬼も食わんよ」
老婆の手からそれを受け取り、女の手に持たせる。
「銀華、どーぞ」
「ありがとう」
節くれた指に銀色の貨幣を握らせる。
「お釣りが追いつかないさね」
「いらねーよ、ばーちゃん。もう一個貰っても良いか?」
小さな杏は種を残して銀角の胃の中に。
緋色の杏は鬼も虜にしてしまう。
「一籠もっていきんしゃ。それでもお釣りがわんさとでるよ」
「あんがと。遠慮なくそーする」
「娘さんも、腹にややが居るのじゃろ?杏は赤子にも良い。良い子が生まれるさ」
果肉の付いた指先を一舐めして、少女はすい、と前に出る。
「御婆様、杏、美味しゅう御座いました。この杏ならばきっと鬼もころり、と
落ちるでしょうね」
その言葉に紅孩児は必死に笑いを堪えた。
自分たちがその『鬼』なのだから。
「胎の子も、満足しております」
唇しか見えなくても。
その言葉を彼女が心から発していることは、誰の目にも明らかだった。
「いい旦那さんじゃないか。御前さまを大事にしとる」
「ええ。お陰で甘やかしてもらってますわ」
「良い子を産むんだよ。子は、世の鎹じゃて」
皺だらけの笑顔に、同じように笑う唇。
「ありがとう、御婆様」
白絹の手に触れる、罅割れた指。
「大事にするんだよ。冬を越えれば、生まれるのじゃろ?」
「はい。桜の頃に」
がさついた手の優しさ。
それは、人間がただの食物ではないと彼女に伝えてくる。
子を成し、親となることに。
人も妖しも変わりは無いのだから。
彼女にとって、人間は一種の栄養摂取元だった。
それが変わり始めたのは件の女僧と出会ってからだ。
「親父!!それとそれも!!それから、そっちも!!」
色取り取りの水晶と宝玉。
妖怪にとってはそれらも大事な栄養である。
妊娠中であれば殊更、いいものを食らう必要があるのだ。
「紅。もう良いよ。そんなに食べられない」
「馬鹿言え、栄養取んなきゃガキに逆に食われるんだぞ」
人間にとって二人の会話は意味不明のものだ。
銀角の制止を振り切って、紅孩児は次から次に宝玉を選んでいく。
なにせ王子様は金銭感覚というものが無い。
妖怪にそれを求めるほうが、難しいことだろう。
「……?あれは……」
辻の端でけらら、と笑う猫幽鬼。
訝しげな顔で彼女はそれを見つめた。
「こら。何をしている」
首根っこを捕まえれば。
「げげ。銀華娘々!!」
「ここはお前たちのような幽鬼の居る場所ではないだろう?」
空いた手には杏の籠。甘い匂いが立ち込める。
「うわ。吐きそうな匂い。どうしたのさ、あんただって人間を食いに来たんだろう?」
「およし。あいにくと今は満腹だ」
飢えが無いわけではないが、人間を食いたいという気持ちでもない。
「皺皺の婆でも食うか。けけけ」
するり、と抜け出しそれは風に姿を変える。
「!!」
その先には、先ほどの老婆が居るのだ。
「お止めなさい!!」
落下する籠の音で、男はようやく事態を察する。
ばくり、と口を開いて頭から丸呑みしようと、幽鬼は老婆の上に。
「お止めと言っただろう?」
「うげ……っ…!!」
首筋に突き刺さる二本の牙。
そのまま引きちぎると、幽鬼の身体はぼとりと二つに分かれた。
ざわつきはやがて敵意に変わり、銀角を取り囲む男たちの手には光る武器。
(……面倒なことに……)
「馬鹿はどけっっ!!」
男たちを蹴散らして、紅孩児は銀角の肩を抱いた。
「銀華、帰ろう。身体に障る」
「……うん……」
自分たちは迫害されるものなのだから。
妖怪は狩られる側。どれだけ彼と彼女が強くとも、受け入れられることは無いのだ。
「お待ちなされ」
その声に、銀角はゆっくりと振り返る。
「お姿を、お見せください」
静かに帽子を外す。
ばさりと落ちる美しい白銀の髪。
「平頂山の銀角さまであったか……ああ、御労しゅうございます……」
「?」
「金角さまと銀角さまのお陰で、私の村は救われました」
二人が平頂山の主として健在だった頃。
悪戯に領地に踏む込む妖怪を一掃し、近辺を守ってきた。
それは結果的に山賊や夜盗をも遠ざけていたのだ。
「そちらのお方も、名の在る方なのでしょう。銀角さまがお選びになられた」
「……私が、怖くないの?私は人間を食らうのよ」
「人間は、人間を殺します。銀角さまは我らを守ってくださった。親の無い
私の命は、あなた様に守っていただいたのです。生きながらえて、親となり、
今は孫も曾孫もおります。銀角さま……あなた様を恐れる必要は、何があろうと……」
震える老婆の手を取って、同じように目線を重ねる。
「ありがとう、私……人間が少しだけ好きになれたのよ……」
それでも、これ以上ここに留まれば。
今度は彼女が迫害されるのだ。
「私の、お友達になってくれる?」
「銀角さま……」
「杏、美味しかったわ。ありがとう。こんなに美味しいの、初めて食べた」
籠を拾って、男の隣に並ぶ。
そして、その次の瞬間にはもう二人の姿は無かった。
織機に糸を掛けて、紡ぐ色は緋。
一目一目、掛け違えないように指先が踊る。
「それ、俺の?俺の?」
「違う。この子の」
あの日以来、彼女は人間を食らうことを禁じた。
代わりに色の良い杏を口にするのだ。
「もうじき無くなっちゃうから」
「わーってる。また、あのばーちゃんの杏が良いんだろ?」
「うん」
その度に、紅孩児は籠一杯の杏を取りに走る。
それで銀角が穏やかに笑っていられるなら、と。
「行って来る」
男を見送って、織機から手を離す。
長めに作った布地で、二人分の肩掛けを付くるのが本当の目的だ。
それを言ってしまえば、天界までも昇って戻ってこないような男が相手。
口を開くわけには行かない。
(あ……雪……)
掌で溶ける真白のそれ。
くすくすと笑う銀角の前を過ぎ去る一つの影。
(あら……美味しそう。紅に何か作ってやろうか)
手を伸ばして、消えかかった雪性をがしり、と掴む。
伸びた耳は兎と同じで、真っ赤な目でこちらを見つめてくる。
「嫌ーー!!妖怪なんかに食べられるなんて屈辱的で嫌ーー!!」
下級とはいえ、雪精も天界の住人だ。
「安心をし。私が美味しく味付けてやるから」
「嫌ーーーーっっ!!!」
じたばたと暴れる雪精の首をごきり、と折ってそのまま厨房へと向かう。
二人だけの暮らしを満喫するために、童女は一人も置かないことにしている。
手際よく皮を剥いで、胡椒と塩で下味を。
からりと素揚げにしてその上から野菜を混ぜたとろとろの餡を乗せた。
(杏も来るし……夕食はこれでいいね)
耳の上で結わえた銀の髪。
ふわりふわりと優しく揺れる。
次々と作り上げて、見る間に卓上は料理で埋まってしまった。
「たっだいま〜〜〜〜〜、あ?なんか美味そうな飯!!」
「取れたてだから、美味しいよ」
「飯♪」
取り分けて、差し出せばあっというまに平らげてしまう。
口の端に付いた欠片を優しく取る指先。
「付いてる」
「あ、うん……」
以前よりも、ずっと穏やかで女らしくなったと男は笑う。
杏と宝玉を糧にして、少女の胎は随分と膨らんできた。
「雪が綺麗。最初の雪だわ」
手を取って、並んで窓辺に立つ。
この雪が溶ける頃、二人の間にはもう一つ小さな命がやってくるのだ。
「銀華」
少しだけ屈んで、額に唇を当てる。
前よりも、ずっと近くなった二人の距離。
「愛してる。今までも、これからもずっと」
「……馬鹿……」
「かーわいい。ちっちゃくて、かーいい俺の銀華」
この腕に抱かれることも嫌だとは思わなくなった。
不思議な安心感と、温かさ。
「紅、私とこの子を……守ってくれる?」
「おう。俺はいい親父になるぜ」
「あ……」
「ど、どした?」
男の手を取って、そっと自分の腹に導く。
「今、蹴ったの。ほら、お父様の手よ」
反応するように、掌に感じる振動。
「やん、今日は凄く元気。機嫌が良いみたい」
「うわーーーー!!名前考えなきゃなんねーんだった!!」
「騒がしいお父様ね。でも、素敵なお父様よ」
めぐり来る季節に、変わりは無いけれども。
その色は、一度たりとも同じものは無い。
君が隣に居てくれるだけで、すべてに色が溢れていく。
「銀華、もっと言って!!もっと!!」
「騒がしい男だな。耳は良いんだ。静かにしろ」
「銀華〜〜〜〜〜っっ」
騒がしい二人に騒がしい季節。
年年歳歳花相似、年年歳歳『妖』相違―――――。
>453
あんがと。茶でも飲んでってくれ(゚▽゚*)ノ旦~~
色々と書きたいもんがあるんで、ちょこちょこ補足しながら投下できたらー、と思いますら。
あぁ、もうっ!
らぶらぶ過ぎて萌え死にそうです_| ̄|○
保守
保守
保守
おめですノシ 今年もよろしゅうですノシ
あけおめ&保守!
ホシュ
ホシュ
保守
あけおめことよろ&保守
保守
うは、保守がいぱーい。
独角児と金角です。
◆黄金の月◆
「はい、口開けて」
少女の口を開いて、そこから細い管を引き出す。
臓器の半分以上をごっそりと交換されても、彼女はその目を開いた。
平頂山の金桂童子といえば、天界でも知らないものは無い。
それが少女だったと伝わってからは、暇をもてあました神将達がうろつき始めた。
同じように暇をもてあました独角児という男がそれを蹴散らす日々。
「熱は下がったね。ああ、でも……その瞳、もったいないね」
猫のような色合いの眼球は、彼女が人外の者であることを雄弁に語る。
それでも、少女は小さく笑うのだ。
「命があっただけでも、よいとしなければ」
「悟ってるねぇ。若いかと思えば。独ちゃんには丁度いいかもね。あの男も結構な
若年寄だから」
薬師の一人は如意真仙と名乗った。
彼女が此処に来て数ヶ月。彼女の腹を開いたのもこの男だ。
「なんちゅーか、君たちは年寄りカップルだ」
「あはは。兄様が聞いたらこんな顔して怒りそう」
人差し指で目尻を吊り上げる仕草。
「うわはははっ!!そうそう、あいつそんな顔して怒んだよー。金華ちゃん結構
見てるねー!!笑いすぎて腹筋やられそ」
『俺が見てないと思って勝手なこというな。目ん玉掘るぞ、てめぇ』
男の声音を真似すれば、如意真仙の笑いは止まらない。
「やだ、笑い上戸」
「いやいや。金華ちゃんが俺を笑かすからよー。まったく」
「真仙さま、ところで兄様は?」
「独ちゃん、朝からどっか行ったねぇ。まぁ、昔みたく派手に女遊びしなくなった
だけでも全然いいのかもしれないけど」
言ってから男は口を押さえる。
物腰は柔らかだか、腐っても平頂山の主、金角その少女。
悪童の呼び名を持つものなのだ。
「派手、に?」
「いえ、その、ねー。ほら、独ちゃん結構もてるから」
「結構?」
庇えば庇うほどに泥沼に嵌ってしまうのは、この男の性分。
そして、過去は変えようの無い事実。
「て、点滴新しいのもってくるからねっ。金華ちゃん」
そそくさと部屋を出て、廊下で息をつく。
「なにやってんだ?真仙」
篠籠を抱えて、都合よく戻ってきたのは件の男。
右目の眼帯はトレードマーク。
「そのだな、独角児。俺らマブだよね?」
「一応な」
「俺はお前のその言葉を信じるぞ。じゃあな!!」
手を振りながら、濃紺の髪を揺らして立ち去る姿。
首をこきり、と回して男は訝しがる
(なんなんだ?頭に雑菌でも回ったか?)
扉に手を掛けて、そっと押し開く。
「金華、具合はど……!?」
ひゅん、と頬を掠めて壁に突き刺さ小刀。
銀色に輝くそれは、手入れが行き届いていることを証明する。
「ごめんなさい、兄様。手が滑りました」
「そ、そっか。ならいいんだ」
籠を寝台に乗せて、男は開くように少女に促がす。
「まあ、杏……おいしそう」
「あとちょっとすれば、この窮屈な部屋から出れるからな。金華」
頬に触れる大きな手。
手首に掛かる細い指先。
「兄様」
「ん?」
「昔は随分と派手に遊ばれていたと御伺いしました。それは、私が平頂山を
継承したころでしょうか?」
その言葉に、血の気が引いていくのがはっきりと分かる。
「兄様の言葉は、一体何人の仙女に仰ったものですか?」
いつもと変わらぬ声音が、逆に怖い。
「そのな、金華……」
それはどれくらい前のことだっただろうか。
妖術で男体変化を解いたその姿を偶然に見てしまった。
腰骨に踊る小さな龍の刺青。
陽を浴びて、鮮やかに靡く金の髪。
水浴びの雫がその身体を飾るように、きらきらと輝く。
(おい待て!!さっきまで男だったろっ!?)
いくらか膨らみには欠けるが、柔らか乳房が二つ。
痩せてはいるが貧相ではないしなやかな身体。
短く切られた金髪が、うなじの線を美しく見せる。
(痩せてっけど……悪ぃ身体じゃねぇな……)
「誰だ!?人の水浴びを覗く大馬鹿は!!」
人差し指がくるり、と円を描く。
(いっ!?)
ざわざわと水が集まり、それはやがて形を成す。
「出てこなければ、撃つ」
水龍は、牙を剥いて彼女を守るようにそこに居る。
「すまねぇ。覗くつもりは無かった」
頭を掻きながら男は少女の前に歩み出た。
「確か……独角児?」
「あたり。んでな……乳くらいしまってくれや」
その言葉に少女は首を傾げた。
「一応、女なんだからよ」
「そう思うなら……向こうに行け!!」
清涼金角の名を持つ少女は、男の心に刻み込まれる。
すれ違う姿が、少年のそれでも。
双子の女は忌み嫌われる。
そのため、金角は男として生きてきたのだ。
妹の銀角よりも数段上の妖力で、身体を男に変化させる。
そのために前線に出ることは滅多なことではない。
暴れまわるのは桜花銀角と決まっている。
金角はその後ろ。
確実の相手の致命傷をつくために静かに待っているのだ。
「なぁ、金華」
少年の後ろを歩きながら、男はその肩に手を伸ばす。
「何か、御用ですか?独師兄」
鉄扇公主の亭主の義兄弟ならば、公主に恩義ある金角にとっては兄弟子にあたる。
「面白い噂が流れてますよ。独角児は男色を好む。清涼金角を狙って、歩き回る……と」
くすくすと笑って、少年は振り返った。
首から下げた水晶の笛。
煌びやかな刺繍の施された前垂れ付きの道服。
かららと笑う小さな靴。
「まぁ半分は当たりだな。俺がお前を狙ってるってのは。まぁケツよりも前のほうが……」
「脳味噌に蛆でも湧きましたか?兄上様」
詰襟と小さな顎。
細い肩を抱いて、その頬に触れたいと思うこの気持ち。
「勿体無ぇだろ。べっぴんさんを逃すなんざ」
「腕の一本でもへし折れば退いてくださいますか?」
「あん?折るんなら、コッチ」
小さな手を取って、己の股間に当てる。
「なっ!?」
「折るんなら、床の中で折ってくれや。金華」
ぱしん。手を払いのけて金角は男を睨む。
「斯様な侮辱を受けるとは思いませんでした」
「侮辱?」
「さようなら。今後は声などかけないで下さいね」
薄い背中は、例え本物の少年であっても手を伸ばしたくなってしまう。
(俺が折りてぇのよ。金色の花をさ……)
見える片目で背中を見送って。
見えないもう一つの目で、その心を覗きたいと願った。
暴れまわるのは桜花銀角と決まっている。
金角はその後ろ。
確実の相手の致命傷をつくために静かに待っているのだ。
「なぁ、金華」
少年の後ろを歩きながら、男はその肩に手を伸ばす。
「何か、御用ですか?独師兄」
鉄扇公主の亭主の義兄弟ならば、公主に恩義ある金角にとっては兄弟子にあたる。
「面白い噂が流れてますよ。独角児は男色を好む。清涼金角を狙って、歩き回る……と」
くすくすと笑って、少年は振り返った。
首から下げた水晶の笛。
煌びやかな刺繍の施された前垂れ付きの道服。
かららと笑う小さな靴。
「まぁ半分は当たりだな。俺がお前を狙ってるってのは。まぁケツよりも前のほうが……」
「脳味噌に蛆でも湧きましたか?兄上様」
詰襟と小さな顎。
細い肩を抱いて、その頬に触れたいと思うこの気持ち。
「勿体無ぇだろ。べっぴんさんを逃すなんざ」
「腕の一本でもへし折れば退いてくださいますか?」
「あん?折るんなら、コッチ」
小さな手を取って、己の股間に当てる。
「なっ!?」
「折るんなら、床の中で折ってくれや。金華」
ぱしん。手を払いのけて金角は男を睨む。
「斯様な侮辱を受けるとは思いませんでした」
「侮辱?」
「さようなら。今後は声などかけないで下さいね」
薄い背中は、例え本物の少年であっても手を伸ばしたくなってしまう。
(俺が折りてぇのよ。金色の花をさ……)
見える片目で背中を見送って。
見えないもう一つの目で、その心を覗きたいと願った。
少年の後ろを歩く男の影。
重なる足音に苛立ちが生まれる。
「いいかげんにしてくれませんか!!僕はこれから風呂に入るんです!!」
「いいじゃねぇの。男同士だろ?金角」
その言葉に、金角はぎりりと歯軋りをした。
この男は、自分よりもずっと流れを掴むのに長けているのだ。
「何か、都合悪いことでもあんのか?」
にやにやと浮かべる笑みに、眉を顰める。
「ゆっくりと寛ぎたいので。一人で入りたいと思います」
「背中くらい洗ってやっからよ」
「一体何がしたいんですか!!」
噛み付くような言葉に、男はきょとんとした表情に。
「……お前。本気で俺がなんでお前にくっついてんのかわかんねーのか?」
「そんなに男体変化がおかしいですか?」
「違ぇよ。俺はお前が欲しいんだよ」
「売買の対象物ではありませんので」
「ったくアタマ硬ぇお嬢ちゃんだな」
手首を掴んで抱き寄せる。
「な!?」
重なる唇。背中をぎゅっと抱かれて、逃げることすら叶わない。
押し返そうにも力も体格もあまりに差がありすぎた。
そして、それが分からない金角ではない。
「お前を抱きてぇって言えば……通じるか?」
「通じるけれども……嫌だ!!」
「だったら強行突破しかないよなぁ。恋は盲目って言うし」
「大馬鹿野郎ーーーーーーっっっ!!!!」
どさり、と寝台に倒されて唇を吸われる。
上着を剥ぎ取られて、身体を押さえつけられた。
「嫌だ!!止めろっ!!」
指先が額に触れると、少年の身体を柔らかい光が包み込む。
「……お、成功、成功。俺でも頑張り次第で破邪光だせんだな」
光が消えて現れたのは、柔らかい少女の身体。
乳房に手が掛かって、やんわりと揉み抱く。
その頂にちゅ…と口唇が吸い付いて、口中でそこを嬲った。
「…や……止めろって言ってんだろ!!」
下から顎を殴り飛ばすその拳。
「痛ってぇなぁ……金華……」
両手首を押さえつけて、再度唇が塞がれる。
「こっちだってその髭が痛ぇってんだろ!!」
ざりり、と触れる無精髭。
伸びた爪と、ざんばらの髪。
「どうしてもやりたかったら……身支度くらい整えて来い!!!!」
蹴りだされて、ばたん!と扉が閉まる。
ばりばりと頭を掻いて、男は首を捻った。
彼女の言う身支度というものを整えるために、鏡の前に立つ。
無精髭を綺麗に剃り、ばさばさの髪は幽鬼に切らせた。
一まとめに縛り上げて、ぺたぺたと肌を触ってみる。
(まぁ、あんなんで頬擦りされたら痛ぇよな……うん……)
鏡に写る自分の顔。
醜く抉られて、無残な醜態を晒す右目。
(怖ぇよな……やっぱ、隠しておくか)
眼帯で押さえて、真新しい道衣を着込む。
「独角児様!!忘れ物です!!」
「おう」
花束を受け取って、目指すのは平頂山。
身支度を整えての来訪だ。断られる由縁は無い。
人の気配に、扉の印を解く。
(銀華は、幽明教主の所で宴会のはずなんだけど……紅孩児かな?)
立ち上がるのも面倒だと、大きな笊を取り寄せてその上に座る。
そのまま笊を浮かせて、のろのろと進めた。
「よ、身支度整えてきたぜ?」
「……あきれた御仁だ……」
「花、持ってきた。嫌いか?」
白く、小さなその花に優美さと豪華さは些か足りなくても。
可憐で楚々としたその美しさは、どこか彼女に似通っていた。
「嫌いでは……無い……」
今まで、一度も女としてなど扱われたことは無かった。
この先もずっと男として生きていくと思っていたのだから。
「留守番、寂しいだろ?一人じゃ」
出された老酒に、金角はくすくすと笑う。
「肴くらいなら、準備できる。上がっていってください」
部屋着から覗く細い肩。湯上りの香りがそれを煽る。
細腰は、あの日に見たものが未だに目に焼きついている有様だ。
「妹はあなたの義弟と酒宴に興じております。少しは、加減ができると良いのですが……」
「加減、ねぇ……お前だって酒は嫌いじゃねぇだろ?」
「どうにも、弱くて……一口、二口なら良いのですが……」
その言葉が事実ならば、今宵は誰かがお膳立てしてくれた千載一遇の好機。
「まぁ、そんなに強くないやつだ。味も女好みで甘いしな」
玻璃に注がれた液体は、見目麗しい桜色。
甘い味に、微笑む薄い唇をじっと見つめた。
(強くはねぇのよ。きついだけでさ)
「あなたは?」
「俺は、飲ませんのも好きなのよ。飲むのもだけどな」
「そう。珍しい人」
こくり、こくり。ゆっくりと飲み込まれていく薄紅の酒。
「……あ……やだ……ふらふらしてきた……」
「大丈夫か?極端に弱いんだな。寝床まで運んでやるよ」
額を押さえて、金角は小さく頷く。
(介抱狼にならせてもいますか。でなきゃ一生、触れねぇ)
目を閉じた少女を寝室に運んで、そっと寝台の上に降ろす。
上着の金具をはずせば、小ぶりな乳房が外気に晒される。
「口、開けな」
言われるままにすれば、入り込んでくる舌先。
小さな舌に絡ませて、弄る様に吸われてしまう。
押し返そうとしても、腕に力は入らずに。
されるがまま、受け入れるしか術は無かった。
「……っは……ぁ…」
舌と舌をぬるつく糸が繋いで、それが壊れる前にもう一度口唇が塞がる。
「……やだ!!やめ……ッ…」
首筋を舐められて、びくんと肩が竦んでしまう。
肩口、鎖骨。唇は一つ一つを確かめるように、ゆっくりと下がっていく。
「せっかく女に生まれてきたんだ。一度くらい、抱かれてみろ」
寄せるように乳房を揉んで、その頂にちゅっ…と口付ける。
そのまま口中で舌先がそれを転がすように舐めては吸い上げた。
「あ…っは…ッ……!」
下穿きと下着を一緒に剥ぎ取って、目にしたのはすらりと伸びた脚。
腰に踊る小龍を噛んで、膝に手を掛けてそっと押し開いた。
遠目には、子供染みた体だと思っていた。
しかし、実際にこうして間近で見れば、無駄の無い筋肉で構成された美しい裸体だ。
「綺麗な身体してんな……コレ、以外は」
その中で異彩を放つ刺青にそっと接吻する。
「や!!」
「弱いのか?ココ」
悪戯に歯を当てれば、びくん!と腰が大きく跳ねた。
するり、となで上げるだけで反応する感度の良さ。
「…ぅ……あ……」
じんわりと濡れた裂け目に舌を差し込んで、そのまま上へと舐め上げる。
「あ!!!や、いやッ!!」
「ココも、弱いだろ?」
小さな突起を軽く噛んで、ぶちゅ…と唇を押し当てて。
「やぁ……!!そ…な……ッ!」
指を入り口に忍ばせて、傷付けないように奥へと進める。
その度に、苦しげに寄せられる眉。
(ちっちぇ身体だな……)
細身だけでは言い表せないのがこの少女。
一つ一つの部分全てが小さく作られているのだ。
「……金華……」
舐めるような接吻をすれば、諦めたように頭を抱いてくる細い腕。
そのまま脚を開かせて、腰を抱き寄せた。
「細いだけじゃなくて……ちっちぇな……」
「……?……」
「いや、挿入んのかねぇって思ってな」
戸惑いながら、男のそれに手を添わせる。
そして、それが今から自分を貫くのだと思うと背筋がぞっとした。
「……無理……嫌……」
「寝込むようなことになったら、ちゃんと看護しやっからな」
「きゃ……あ!!」
先端を沈めて、ゆっくりと腰を進めていく。
押し広げられていく感触と、身体を引き裂くような感覚が交じり合って。
悲鳴すら上げることもできずに、だたその背にしがみついた。
「……っは…!!……」
「もうちょっと力抜いてもらえると嬉しいんだけどなぁ……半分までは挿入ってっから」
小さく横に振られる首。
それが彼女にできる精一杯の行動だった。
「ちゃんと濡れてっから、大丈夫だ」
「やぁ……怖い……っ…」
小さな身体を折るようにして、奥まで沈める。
きつく唇を噛んで、悲鳴を殺す姿。
滲んだ血を舐めとって、甘い甘い接吻を重ねた。
「ちっとばっか……動かしても大丈夫か?」
こくん、と頷くを確かめてからゆっくりと腰を前後させる。
体液と血液の匂いは、妖怪の本能を目覚めさせる甘い香り。
「……ひ…ぅ……!!」
ぼろぼろと零れる涙。宥めて、そっと抱きしめる。
窓の外の黄金の月。
蕩けそうな雫がぽたり、とこぼれ落ちた夜だった。
「眼帯くらい、はずしたら良いのでは?」
男の腕の中で、まだみしみしと軋む身体で少女は手を伸ばす。
「いや、グロいんで……」
「外して」
言われて渋々とそれを外す。
抉られた右目は、かつてそこに眼球があったとは思えない傷で塞がれていた。
「……痛かったでしょう?」
「気持ち悪くねぇのか?」
「傷が怖いようでは、平頂山の主は務まりません」
塞がれたそこに、そっと小さな唇が触れる。
独角児の傷跡に接吻したのは、この少女が初めてだった。
「……根性あるな、お前」
額に唇を当てて、抱き寄せて。
見上げてくる金の猫目が酷くやさしい光を帯びる。
「男になんのは止めておけ」
「いえ、それはできません。僕は……」
「俺の前では僕とか言わねぇでおけ。娘々」
「…………はい」
この先の未来など、誰にもわからない。
窓の外の月も、ただ笑うばかり。
「肉とか、大丈夫になったら人魚釣ってきてやるよ」
「美味しそう。兄様の一本釣り、また見たいです」
あの日の月と同じ色の杏に、金角は小さく笑った。
(甘い味も、あの日と同じですね……兄様)
窓に掛かる月が愛しいと思えるまでには、気が遠くなるような時間を必要としたけれど。
今こうして向かい合うことができたのはお互いの努力の賜物。
恋は、恋だけでは持続できないことを知っているから。
「そのな、金華」
「はい」
「兄様っちゅーのはさ……やめねぇか?なんか悪ぃことしてる気になってな」
「では、何と?」
困ったように視線を投げてくる。
「んー、何と、と言われっとな。独角児でいいんだけどよ」
「兄様では、何か不都合でもございますか?」
「嫁に、兄様って呼ばれんのもどうかと思ってな」
照れ隠しに頭を掻いて、独角児は金角を抱き寄せた。
「花嫁に……してくださるのですか?」
「おう。もれなく家付き、薬師つきだぜ。悪かねぇだろ?」
「……はい…っ……」
腕に刺さる針は、まだしばらく取ることはできなくても。
注がれる愛を受けられるなら、それは幸福の味。
重なる唇と、抱きしめあって確かめる温かさ。
「金華ちゃぁ〜ん!お薬の時間だよ〜♪」
徐に開く扉。
「……真仙、俺らマブだよな?」
「い、一応ね」
「だったらよ……二時間くらい入ってくんなよ?」
男の手から紙袋を奪い取って、扉を閉める。
二人分の笑い声と、一人分のため息が扉を隔てて重なった。
今宵の月もあの時と同じ色。
甘い甘い、黄金の月。
大沢誉志幸氏の黄金の月をタイトルに拝借しました。
なんかうまくはいえませんが、好きな曲なんで。つじあやの氏のほうも好きですが、ご本尊のがやはり好きです
GJ!!
乙ですっ!
KINOさんのSS好きなので……
続き、待ってても良いですかね?
>>494、
>>495 あ、ありがとうヽ(゚▽゚*)ノ
次は鵜国でうっかり女装です。二郎神とか普賢とかナタ公主とか。
金銀よりは早く書けるんじゃないかとおもいまふ
KINOさんキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
・・・
(*´Д`) ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア
>>497
お、おちついて。
規制解けた。この基準はなんなんだろう
そしてPS西遊記がまったくクリアできない……攻略本買うしかなかろうか
ホシュ
501 :
KINO ◆v3KINOoNOY :05/01/28 21:54:45 ID:fAZSLaJt
ただいまですよーと。
ようやく退院しました。健康は大事だね
>>KINOさん
入院してらしたんですかー。退院おめでdです( ´ー`)
キノさん色んなスレにいるからビクーリ
ホシュ
KINOさん、お大事に〜
ヤバイ。koeiのPS西遊記の小説読んだけど禿萌えた・・・
三蔵が僕女だし
そんなわけでこのスレに来たわけだけどなんだか深刻?
保守
ホシュ……してみよう
なんつーか、書けない周期が来てるんで……うん、あれです
気長に生暖かく見ててもらえれば
色んなスレにも居ないんで、あれですが。
まだ、西遊記攻略できねぇ_| ̄|○ 阿修羅倒せないんですけど
漏れはマハラカ(後)が倒せね
>510
わしのパーティは
猿、河童、三蔵、羅刹、涼鈴、結花。
この基本で結構さくさくと。
猿を牛、河童を金角銀角でも。金銀はダブルアタック用に使ったり。
いや、でも阿修羅で足止めくらってます_| ̄|○
三蔵・涼鈴・結花・金角・銀角・鉄扇。
やっぱ萌え優先パーティは駄目かなorz
河童は遠隔攻撃可能なので重宝してますな。金銀はセットだと強いし。
おにゃのこだけでのパーティも多いですよ。
SSやれよ、自分。ゲーム話しないでさ……でも、阿修羅が倒せないんですよ_| ̄|○
514 :
名無しさん@ピンキー:05/03/15 14:24:33 ID:e+XjnTqE
あげ
保守ばっかりだな
中々すすまんくてねぇ……気長に待っててもらえるとありがたいです。
他の中華とか砂漠の世界とかやらかしてるんで。
もちろん待ってます!
ホシュ してみる。
日付がすごいので書いてみるヽ(・∀・)メ(・∀・)ノ
女装とか、変装とか、変態とか、なんかそんな感じです
保守!!!
ほ し ゅ
うああああああ_| ̄|○
ちょっと沈みます。そんで、近いうちに鵜国その1持ってきます
さて、俺もこれであの雑誌を卒業か・゜・(ノД`)・゜・
523 :
AKAME:2005/05/02(月) 15:59:08 ID:mVaafKEz
524 :
名無しさん@ピンキー:2005/05/09(月) 00:33:09 ID:YtDPP20Q
緊急浮上
保守!!!!
ぼちぼち、上がってるぶんだけでももってきます
というわけで保守
続いて保守
保守
こそ
出来てる分落としていきますね。いつも、保守ありがとうございます
そんでまだ西遊記クリアできてません、だれか最終アスラ攻略教えてくだされ……これでやりなおし三回目
ようやく聞仲ゲッチュでやっとります
◆指先で確かめて◆
「と、言うわけでお前たちとは別室で休ませてもらうぞ」
女の目線の先には、身包みを剥がれた男が三人。
一枚の金貨に、女は小さな接吻をして笑う。
「さて、これで旨い酒でも飲んでくるか」
「は〜〜い!!三蔵さん。僧侶はお酒飲んじゃいけないと思いまぁ〜〜す」
「文句があるのか?」
呪符を指先で挟んで、女は男三人を見る。
「ありません……」
この女僧の酒好きは、半端なものではない。
一人で店の造酒全てを空けた過去を持つほどだ。
下心を手土産に、菩薩連中が酒宴に誘えば逆に潰す始末。
その身体のどこに、流し込まれているのかは誰にもわからない。
「物珍しいな。女僧とは」
白銀の髪を一つに縛り、男は三蔵に視線を向けた。
見たところ、三十も半ば。男盛りもいい所のはず。
「浮かない顔をしてらっしゃる。どうかなされたか?」
杯から唇が離れて、同じように目線を返す。
「無能な部下に、呆れ果てて……一人こうしている有様だ」
「そうか……御気持ち、痛いほどにわかります。私も使えぬ部下を抱えて……」
「なんと!それは御苦労をなさったことでしょう。貴女様の名は……失礼、私は……」
静かに女の手を取って、男は呟く。
「九天……いや、聞仲とお呼びくだされ」
「聞仲殿か……私は玄奘三蔵と申す。天竺への途中でして」
「玄奘三蔵……貴女が……」
男は、女を鑑定するようなまなざしで見つめた。
妖怪を引き連れて、天竺を目指す女僧。
天界の住人で彼女を知らないものなど居ない。
九環の錫杖に煙管。栗金の髪と赤い瞳。
「居た、三蔵ど……御館様!?斯様なところで何を……」
「何だ、二郎神か。その分だと普賢も付いてそうだな」
二郎神の影から、普賢菩薩がひょっこりと顔を出す。
天界の生ぬるい空気は嫌いだと、人間界を好む稀有な菩薩たち。
「もちろん来てるよ。三蔵ちゃんに逢いたかったんだもん」
「……馬鹿が雁首揃えて何をしにきた」
「だって、桜綺麗なんだよ?三蔵と一緒に御酒飲んだらもっと綺麗だろうなーって
俺は思ったわけ。そしたらね、ジロが勝手に付いてきて……」
見れば手には酒徳利。
一足先に一杯引っ掛けていたらしい。
「うふふふふふ、聞仲さぁん。三蔵ちゃん、ナンパしてたのぉ?」
元々、怖い物知らずの普賢菩薩はよった勢いも手伝って、男の肩をばしばしと叩く。
「普賢!!」
「うへへへへ……俺様、これでも普賢菩薩さまよぉ?民衆救っちゃうってぇーの」
かつん、と煙管で普賢菩薩を諌めたのは女僧。
ため息を噛み砕いて、飲み込んでは笑う。
「鶏国の酒は、美味しいねぇ。うへへ……眠くなってきちゃった」
「普賢、吐くなよ。お前この間の李塔天の宴席で吐いたろ。あの後、大変だったんだ」
「吐くときは、ジロに向かって行くから無問題。俺、女の子には優しいもん」
女の細い身体に抱き付いて、肩口に顔を埋める。
程なくして聞こえてくるのは、小さな寝息。
「いつから呑んでたんだ。お前たち」
「あー……夜明けよりは遅いころに……」
口篭る二郎神に、三蔵はくすくすと笑う。
いつだって、普賢菩薩が何かをしでかせばそのとばっちりは二郎神に来るのだ。
認め合っているが故に、切れない縁。
「御館様は、なぜに人間界に?」
「馬鹿共の始末書を書くのに、うんざりしてきたからだ」
ため息が玻璃に落ちて、その色を変える。
「俺と、普賢……でしょうか?」
「李塔の娘の那咤と炳霊もだ」
並び出る名前は、天界きっての問題児ばかり。
無論、その中に普賢菩薩と二郎神も含まれている。
「那咤公主か。最近見てませんね」
普賢菩薩を三蔵から引き離して、二郎神は印を結ぶ。
光の輪が幾重も生まれ、青年を包んでいく。
「先に帰ってくれ、普賢」
首をこきり、と回して同じように二郎神もため息を付いた。
「御館様、呑み直しませんか?」
「お前は、そちらの御仁と呑みたいのだろう?私とは嫌でもこの先呑まねばならんが、
彼女とはそう滅多には相伴も出来まい」
「……はい。御気持ち、受け取らせていただきます」
「従者は、私が足止めしよう。三蔵殿、顕聖は不器用だが悪い男ではない。私にとっても
息子のような男だ。心根の良さは証明しよう」
それぞれが愛する酒宴の形。
苦労症の二郎神のために、たまには御膳立てをしてやろうと思っての行動だ。
「さ、三蔵殿……桜でも、見に行きませんか?」
伸ばされた手に、重なる女の小さな掌。
しっかりと受け取って、ゆっくりと足を踏み出す。
小さなくなる陰と、足音。
笑うあう声に、男は小さく笑みを浮かべた。
指先で感じる温かさに、鼓動が早くなる。
「どうかなされたか?二郎神」
「いや……三蔵殿とこうして歩くことが出来るとは、思っても無かったというか……」
照れくさそうに笑って、指を絡めなおす。
予想したよりも、ずっと細い指先。
「そうか?」
こうして並ぶ女が、居並ぶ妖怪を薙ぎ倒してきたとは俄かには信じがたい。
しかし、平頂山の双子妖怪を打破したとう話は、瞬きするよりも早く天界中を駆け巡った。
天軍ですら手を焼いた双子を討ったのは、女僧が率いる妖怪三匹。
その話は、当然軍師のひとりである二郎神にも伝わってきた。
「一度、貴女とこうして歩いてみたかった」
夜桜は、どこか優しく悲しい色。
「苦労症の二郎神……か?」
「できれば、顕聖と呼んでもらえれば……」
顕聖二郎神、それが彼の名前だ。
余程親しい間で無い限り、その名で呼ばせる事は無い。
「切りたてか?この髪は」
「邪魔になった。面倒なので、自分で刈ればこの有様だ」
指先が頬に触れて、静かに離れる。
「いや、悪くないと思うぞ。顕聖の顔がよく見える」
薄明かりの中を歩くのは、ほんのりと心を甘くしてくれるから。
ぎこちない指先も、すこしだけ勇気を持てる。
「なぜ、目を合わせぬ?顕聖」
「……女の扱いは得意じゃない。いつも、粗雑だと言われてしまう」
「そうか?そんなこともないと思うが……」
はらり、と舞い落ちる薄紅の花。
「ど、何処かに腰を落ち着けて……」
「ならば、あそこが良い。いけるだろう?貴方なら」
女が指すのは、見事な枝振りのそこ。
「貴方が、そこで良いなら……」
逸る心を押さえて、震える手で肩を抱く。
大地を蹴って、男は桜の迷宮へと飛んだ。
足の下に広がる薄紅の海と、埋もれそうな儚い匂い。
うっとりと目を閉じて、三蔵は男の肩に身体を預ける。
細い首と、さわさわと揺れる柔らかな金の髪。
「さ、三蔵殿…………」
「私も、たまにはこうして花を堪能したいんだ。なのに、あの馬鹿共が……」
ゆっくりと瞼が開いて、赫玉が男を捕らえた。
「こうして……」
二郎神の手を取って、自分の体を抱かせる。
「抱くくらいの度胸もないか?天軍の猛者が」
その言葉に、男は女を後ろから抱き締めた。
幹に凭れ、女が落下してしまわないようにしっかりと。
掌で感じる確かな温かさと、心音。
これが、玄奘三蔵という人間。
「顕聖」
ゆっくりと、男の方に身体を向けて手を伸ばす。
刀傷をなぞる指と、肩口に触れる唇。
「私が、何のために天竺に行くか、わかるか?」
「経文を…………」
「建前はな。私が何者であるかを知るためだ」
彼女は、自分が何者であるかを知らない。
どれだけ人間だと言い張っても、それが本当であるとは限らないのだ。
辛うじて『三蔵』とう名が自分を守ってくれる。
妖怪に対して寛大なわけではない。自分が人間である証明すらないのに、妖怪を責める事が
どうしてできようか。
「父上も、母上も、私のこの目がなかったらならば私を御傍に置いてくれたのだろうか……?」
光明法師亡き後、彼女は一人で生きて来た。
そして、彼女の信頼を勝ち得たのは三匹の妖怪だったのだから。
「自分が誰なのかを知ってから、死にたい」
それすらも、叶わないかもしれない。
「貴女は…………昔、俺たちと一緒に居た。けれど、貴女はそれを知らない」
「?」
「金蝉、それが貴女の名前だ」
ざわざわと、風が枝葉を掠めていく。
「……金……蝉……」
男は静かに頷く。
心のどこかでは理解しようとしていた。
それでも、自分が人間でありたいと願っていた。
「けれど、それさえも遥か昔の話だ。今の貴女は玄奘三蔵、それに変わりは無い」
この身体は、父の肉と母の骨でこの世に産み落とされた。
自分の本性が何であれ、自分は自分だと言い聞かせて来たのに。
それなのに、酷く動揺してしまう。
「そうだな…………私は、私だ」
「三蔵殿は、俺たち天界の住人にも、妖怪にも、人間にも隔てが無い。それはきっと
貴女が貴女で居ようとするからなんだろう。腑抜けの二郎神に言えた事ではないが」
武神は、ただ不器用なだけで。
彼女はただ、その心に触れただけ。
「その……三蔵殿の沈んだ顔は、できれば何とかしたいと思っている……」
女は時折、脆くなる。
意図せぬそれは、男を魅了して捕りこもうとする天然の罠。
「風邪を引いてしまう。降りましょう」
立ち上がろうとする男の上着の裾を、細い指が掴む。
指先が伝えてきた小さな言葉。
ここに居たい、まだ降りたくは無い、と。
武神も僧侶も捨て去って、今だけはこうしてこの花の匂いに溺れてしまおう。
「その…………」
「顕聖」
「あ…………」
躊躇いがちに手を伸ばして、しっかりと抱き締める。
「俺は間違い無くあの母の血を引いている」
彼の母は、人間の男と恋に落ちて彼を産んだ。
「貴女が……好きだ……」
「私は、顕聖の気持ちをいつか裏切るかもしれない」
平頂山で出会った牛魔王と言う男の言葉が頭を巡る。
人間にも妖怪にも、天界の住人にもなれないこの曖昧で半端な身体。
「貴女を思う事は、俺が勝手にすることだから」
「私は顕聖に仇を成すかもしれない」
「そうなったら、そうなったときに考えさせてもらう。貴女のいう通り、俺は器用じゃない」
赤い瞳がゆっくりと細まって、小さな笑みを浮かべる。
この満開の桜でさえも、彼女を引き立てるための演出に思えた。
「……三蔵殿……」
不安定な気持ちを、抱き締めあって。
静かに、静かに口唇を重ねた。
本の僅かな時間なのに。
この一瞬が永遠に思えた。
「鵜国は、花と酒の美味い国らしい」
対を成す銀と金の髪。
夜の明かりを受けて、どこか淫靡に美しい。
「詳しいな」
煙草に火を点けて、煙を吸い込む。
「俺じゃない。普賢が」
「大方そんなところだろう。菩薩は暇人が多そうだ」
先ほどまでのしおらしさは欠片も見せず、女はけらけらと笑った。
絡ませた指先。
まだ、胸の動悸は治まる気配は無い。
「しかし、どうにもこの国にはバケモノが多いな」
「確かに……人間に混ざっては居るが……」
ちりり、と羽蟲が灯に飛び込んで悲鳴を上げる。
屋台で簪を選ぶ娘に混ざって、腸腑を溢した妖怪がけたけたと笑うこの街。
かつん、と煙管で頭を打てば、どろり…腐った脳が地面に零れ落ちた。
素知らぬ振りで印を結び、二郎神が魂魄ごと幽界へと強制送還。
「失礼、御髪に羽蟲がついてましたので」
小さく頭を下げて立ち去る娘を見ながら、ひらら…と手を振って。
何気なしに、少女が見つめていた簪に視線を移した。
「三蔵殿、簪は嫌いなのか?」
「嫌いではないが、生憎と挿すだけの髪が無い」
襟足まで短く切り揃えられた栗金の艶やかな髪。
僧でなければ、傾国の力を得る事も出来ただろう。
「ならば、これは?」
細やかな細工の施された指輪と、耳飾達。
どれもこれでも、女の目を奪うには十分すぎた。
「こっちは?それとも、こっちのほうが……」
「忙しない男だな、顕聖。それでは仙女たちに逃げられてしまうのも納得だ」
「貴女が、逃げなければ俺はそれで良いから」
選んだのは、簡素な銀の指輪。
それを、彼女の右手の第三指にそっと飾った。
「親父、同じ物をくれ」
「さ、三蔵殿!?」
「貰いっ放しは好きじゃない。対等で居たいからな」
同じ場所を飾った銀の指輪。夜灯を受けてくすくすと笑う。
灰銀の髪の男を引き連れる、金の髪の女僧。
大帝国の一角になら、こんな二人が居てもおかしくは無い。
「……顕聖、あれは……?」
人ではない何かを見つめて、二人は首を傾げる。
とぼとぼと歩く一人の男の姿。
しかし、その衣服と帝冠の豪華さはそのあたりの幽鬼とはまったく世界が違っていた。
「おい、おっさん。何をしている?」
「…………そなたら、わしが見えるのか?」
「しけたツラして、歩いてるのはな」
「三蔵殿、これは……鵜国の帝冠では……」
二郎神の言葉に、男は安堵したかのように涙をこぼした。
「わしは、この国の王。三年前に宰相だった男……いや、妖怪に身体を乗っ取られて……」
「顕聖、腑抜けとはこーいうおっさんのことを言うんだと思うぞ、私は」
いつの間にか買い込んだ鼈甲の飴細工。
ころころと口中で転がして、女は猫のように目を細めた。
「運がよかったな。この男は顕聖二郎神。天帝の甥にあたる」
「な、なんと!!天界の御方でございましたか!!」
「こちらは玄奘三蔵殿だ。大塘帝国の光明法師から三蔵を引き継いでいる」
鵜国王は、ふたりの言葉に目を白黒させるばかり。
「ああ……どうか御助けを……明後日に、身体を乗っ取られて丁度三年になります……」
三年たてば、どんな高僧でも元の身体の魂を戻す事は出来ない。
そのぎりぎりに、三蔵は鵜国へと来てしまったのだ。
「…………いいだろう。お前の依頼、受けよう」
「ああ……ありがたや……」
「ただし、私はタダ働きはしない主義だ。その代金はきっちりもらうぞ」
ここは鵜国、遊楽の国。
悪童達が、望む物を全て与えてくれる。
「まずは、お前を身体に戻してからだな」
「三蔵殿……」
「ゆっくりと、朝まで計画を立てるぞ、顕聖。お前にも助けてもらわねばならん」
悪戯気に片目を閉じて、女は男の手を引いて小路に消えていく。
まだまだ、朝の足音は遥か遠く。
(天界の雄神……悪いが早速、力に成ってもらうぞ。それと……普賢菩薩……)
行きは良い良いこの宵闇。
帰りは両手にされこうべ。
ここは甘い香りの闇小路。
心を酔わす桜小路。
ここまで
またちょっともぐります。鵜国はそんなに暗いSSじゃなくしたいもんです
脳味噌ぱーんてなりそうです
そして、原作の二郎神、雷帝、普賢菩薩好き方へ
どうもすんませんでしたー
良スレ発見読破記念カキコ〜
…一気に読みきってしまいました。
個人的にお気に入りなのが金銀のあたりです。
ハラハラしながら読んでました。
今後も覗きにきます〜
>543
ありがとー
気が向いたらまた来てねー
>>530 まず、後ろの腕2本の真ん中辺りに全員移動。そして、後ろの腕2本を攻撃。
その後、残りの右手2本か、左手2本、どちらか一方を攻撃。倒した2本の腕の方に避難。
残りの2本の腕の攻撃射程に入らない程度に、全員を避難。
そのあと本体に集中攻撃。
弛縛丹はイパーイ用意してね。
と、攻略本にかいてある。
アスラ戦でそんなに困った覚えがないから、ただ単にレベル足りないという予感もする。
天界の浄天門で、レベルうpできる&隠し宝箱で色んな丹が集まるよ。
>>545
ありがとー。レベルは50くらいまでは上げて突撃したんだが、攻略が間違ってたんだな_| ̄|○
やみくもにばらばら攻撃してたし……
今は天竺の酒場で隠しイベントだすのにがんばってるよー
白骨婦人だしたい
547 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 13:56:30 ID:VKNcjIUE
>545
あるがとー。おかげで本日ようやくクリアしました。
イベントも全部やっつけてからアスラ戦に持ち込んだ。
ありがとう。
そして神将ではジロが一番使いやすかった。あと、雲霄
頑張って続きをUPできるようにせねば
それはよかった。なら次は、
>>220の小説をオススメしたい。
550 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 00:12:37 ID:ckIBM5Ch
551 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 23:44:54 ID:N2hNxTP8
保守
ほす
糞スレだな
おとしてやるか
書き手も読み手もいないスレだな
キモイオナニー文章なんか、よむ価値ないな
( ゚Д゚)ペッ
( ゚Д゚)ペッ
☆様にたてつくからこうなるんだよ( ゚Д゚)ペッ
☆様ばんざーい
あーキモイキモイ( ´,_ゝ`)プッ
感想レスのつかないかわいそうなキノーン
>ID:YkUUusjy
保守ありがとう(*^ー゚)b
567 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 20:51:09 ID:/90SIRSk
も〜なんで保守なんかするんだよ!
もう少しほっとけば、落ちただろうに。
埋め立てヨロ
568 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 21:21:55 ID:S0+3mAiL
キノのせいで何人の神職人が迷惑こうむったことか
おまえキモいからキモに改名しろよ
つーか、氏ね
569 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:27:38 ID:+41rYKk/
ume
570 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:29:06 ID:+41rYKk/
ume
571 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:30:25 ID:+41rYKk/
uze
572 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:31:13 ID:+41rYKk/
sine
573 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:32:04 ID:+41rYKk/
ume
574 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:32:35 ID:+41rYKk/
☆
575 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:33:22 ID:+41rYKk/
tatarigami
576 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:34:54 ID:+41rYKk/
yakubyougami
577 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:35:56 ID:+41rYKk/
ヘタクソ
578 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:37:14 ID:+41rYKk/
祟り神
579 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:37:56 ID:+41rYKk/
umeume
580 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:38:27 ID:+41rYKk/
ume
581 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:40:09 ID:+41rYKk/
ume☆
582 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:41:56 ID:+41rYKk/
梅干
583 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:44:05 ID:+41rYKk/
公害
584 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:44:37 ID:+41rYKk/
老害
585 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:45:28 ID:+41rYKk/
★
586 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:46:27 ID:+41rYKk/
☆
587 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:47:22 ID:+41rYKk/
588 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:47:52 ID:+41rYKk/
589 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:48:50 ID:+41rYKk/
590 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:49:40 ID:+41rYKk/
591 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:50:31 ID:+41rYKk/
592 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:51:15 ID:+41rYKk/
( ゚Д゚)ペッ
593 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:52:04 ID:+41rYKk/
キモイオナニー文章なんか、よむ価値ないな
594 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:53:00 ID:+41rYKk/
595 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:54:26 ID:+41rYKk/
596 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:56:23 ID:+41rYKk/
597 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:57:01 ID:+41rYKk/
598 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:58:00 ID:+41rYKk/
た
た
り
が
み
K
I
N
O
599 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 01:59:15 ID:+41rYKk/
-------------------------------終 了------------------------------------
600 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:01:24 ID:+41rYKk/
クソスレで600ゲト
601 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:02:34 ID:+41rYKk/
602 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:03:13 ID:+41rYKk/
603 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:04:11 ID:+41rYKk/
604 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:05:39 ID:+41rYKk/
キモイオナニー文章なんか、よむ価値ないな
605 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:06:19 ID:+41rYKk/
キモイオナニー文章なんか、よむ価値ないな
606 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:09:15 ID:+41rYKk/
た
た
り
神
K
I
N
O
は
K
I
M
O
に
改
名
☆
ここも夏か?
ああ、夏だな。
つか、この過疎スレで一人でがんばってるな〜。
よほどスレ主への恨みが深いとみた。
ここのスレ主さんて国庫とか好きそうなよくいる腐女子?男の人?
SS以外を読んでてそう思った。
609 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 21:34:12 ID:dx+vxJc5
610 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 00:32:46 ID:ffiS0DMf
>>608 実は最低でも二人いることを私は知っている
なんだ、今日は嵐も来ていないな?
三日坊主か。やっぱ夏だな。
612 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:41:01 ID:XS/Yr8MW
氏
613 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:42:03 ID:XS/Yr8MW
ね
614 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:43:11 ID:XS/Yr8MW
糞
615 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:43:51 ID:XS/Yr8MW
K
616 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:44:45 ID:XS/Yr8MW
I
617 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:45:15 ID:XS/Yr8MW
N
618 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:46:29 ID:XS/Yr8MW
O
619 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:47:21 ID:XS/Yr8MW
ニ
620 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:47:53 ID:XS/Yr8MW
ー
621 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:48:39 ID:XS/Yr8MW
ト
622 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:50:19 ID:XS/Yr8MW
の
623 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:51:06 ID:XS/Yr8MW
年
624 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:51:41 ID:XS/Yr8MW
増
625 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:52:23 ID:XS/Yr8MW
ブ
626 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:53:09 ID:XS/Yr8MW
ス
627 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:53:45 ID:XS/Yr8MW
ブ
628 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:54:24 ID:XS/Yr8MW
タ
629 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:55:02 ID:XS/Yr8MW
売
630 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:56:04 ID:XS/Yr8MW
女
631 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:57:05 ID:XS/Yr8MW
趣
632 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:57:57 ID:XS/Yr8MW
味
633 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:58:36 ID:XS/Yr8MW
は
634 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:59:19 ID:XS/Yr8MW
ア
635 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 19:59:52 ID:XS/Yr8MW
ナ
636 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 20:00:40 ID:XS/Yr8MW
ル
637 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 20:02:02 ID:XS/Yr8MW
オ
638 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 20:02:59 ID:XS/Yr8MW
ナ
639 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 20:03:41 ID:XS/Yr8MW
し
|゚▽゚)<続きできたんで、近々もってきまー
スレが700越してるみたいです。圧縮警報がきたら適度に護ってやってくださいです
念のため、トリw
変更しておくか
仮トリ。
明日かそこらにまたきます
あああ。お待ちしておりました。
ワクテカしてます。
>>644 ありがとそう言って貰えるのは幸せな事です
◆ここにいるための事情◆
「面倒なことになったな」
二郎神はばりばりと頭を掻く。厄介な頼み事を引き受けたのもあるが、この場合は別件だ。
「この状態で、そんなことを言った男はお前が初めてだぞ、顕聖」
「俺も、まだ……迷っている……」
裸のままで向き合って、男は腕組みをする。
隆起した筋肉と精悍な身体が目に眩しい。
「私では勃たぬか?」
「そうじゃない!!ただ……貴女は、俺たちの仲間のはずなんだ……」
それなのに、彼女から感じるのは天界の者の気と毛一つ別のもの。
「私にも、私が何なのかはわからん」
男の胸板に手を当てて、下から瞳を覗き込む。
「私は私だ。死ぬまでな。それ以外のなにものでもない」
唇か掠めるように触れて、誘ってくる。
ここまで膳立てされて逃げるのならば、それこそ腑抜けの極みだろう。
「そうだな……三蔵殿……」
小さな頭を抱えるようにして、その唇を吸い合う。
腕に絡みつく白布を解いて、男は眉を顰めた。
「……女の身体に、なんてことを……ッ……」
顕聖の頬に手を当てて、ぐい、と三蔵は自分の方を向けさせた。
「我が恩師光明様の思し召しだ。これがあたったからこそ、低俗な輩には犯されずに
済んだのだ。師匠のことを悪く言うな」
少しだけ膨れる頬に、男の唇が綻ぶ。
「なんだ、三蔵殿でもそんな顔をするのだな。ほっとしたよ」
いつも、斜に構えて煙管を銜える姿ばかり。
こんな表情など、しないものだとばかり思っていた。
「うわ……!!」
敷布の上に組み敷かれて、今度は男の方から視線を重ねてくる。
額に乾いた唇が触れて、武骨な指が乳房に掛かって。
摘むようにして親指がその先端を捻ると、上ずった声が零れた。
「化粧も無いほうが、あなたは綺麗だ」
「……素顔だと、皆が笑う」
「そんな……素顔の方が……その……ずっと……」
上手に言葉は選べなくとも、指先が彼の気持ちを伝えてくれる。
「顕聖」
細い指先が、胸板に触れた。
繰り返される接吻の甘さが、この夜を優しく彩ってくれる。
「…ん!……」
乳房を噛まれて、肩が竦む。ざらついた掌と、すこしだけ乾いた唇。
この長旅にも関わらず、彼女の身体は真白のまま。
指先が下がって、陰唇をそっと開く。
少しだけ沈ませて、ちゅく…と踊らせる。
(ああ……金蝉はもう、居ないのだな……)
過去を引きずっても、彼女の何かを変える事はできない。
「……っは……」
青年の手を取って、その手首に女の唇が触れる。
濡れた唇はゆっくりと登って、親指にからみついた。
(でも……この癖は……)
同じように艶やかな髪を靡かせた、天界の女。
長槍を手に、近付く魔物は瞬殺した悲運の美丈夫。
(……金蝉……)
あのときも、同じようにこの腕に抱いたから。
再びこうして肌を重ねられることも、何かの運命なのだとしたら。
「……顕聖?」
でも、声も姿も何もかもが違う。彼女の影はあっても、彼女では無い。
「三蔵殿……」
根元まで沈ませた指に、絡みつく襞肉。
栗金に染め上げられた爪が、背中に食い込む。
小さな尻肉を掴んで、身体を開かせる。
伸びてきた腕が、首を抱いて擦り寄せるように腰が絡んだ。
柔らかい肉は、妖怪にとっては甘い果実。
誰かの暖かさは、天界の住人でも溺れてしまうから。
「…は……ぅ……」
突き進めるたびに、上がる声。けれども、その声が甘いものだけでは無い事に彼は気がつかない。
ぎしぎしと痛む腰と、噛んだ唇。
「……三蔵殿……?」
傷だらけの身体と、腕一本に刻まれた刺青。
真っ赤な爪が、背中に食い込む。
人でも、妖怪でも、天界の者でもない曖昧なる存在。
それでも、確固たる者として彼女は生きている。
誰かの暖かさは、自分と相手の生存を確認できる確実なる方法。
この身体を餌にして、いくらでも大魚を釣ろう。
短いこの生を、力いっぱい生き抜いて笑ってやろうと囁く唇。
「少し……痛むくらいだ……気にするな……」
抱きしめあって暖めあうだけよりも、多量荒々しいほうが良い。
生暖かい天界よりも、この殺伐とした人界が愛しいから。
しかしながら、国王の評判は悪くはない。
まるで人が変わったかのように国政は循環良く回り、民草の信頼も厚くなった。
「前が悪過ぎたんじゃねーの?」
「だろうな。何も元に戻す必要もないようにも思えてくる」
のんびりと焼き菓子を口にしながら、悟空は首を捻った。
「他はどうした?」
「八戒はどっか行ってる。悟浄は……オカマに惚れられた」
唐突な言葉に噴出してしまう。酒と女がなによりの生きがいと強訴する男。
その悟浄に取り付いたのはどうやら難しい性を持つものらしい。
「俺の喧嘩仲間でさ那咤っていうんだ。昔男だったんだけど、いつの間にか女になってて
びっくりしたっていうかさー」
口の端に付いた欠片を指先が摘んで、ぺろりと舐め取る。
「傑作だ。早速からかってやらねば」
「いやもう、爆笑もんよ?あの悟浄が叫びながら逃げてんだもん」
二人で丸半日、ここ鵜国の事を調べ回った。
御人よしの国王は政務に関しては今ひとつはっきりしない男だったらしい。
それが三年前の大干ばつが明けてからは人が変わったかのような男ぶり。
鵜国は押しも押されぬ大発展を遂げたのだ。
「まぁ、実際中身変わってんじゃん」
「そうだな。このまま放置してても……!!」
首筋に感じるぞくりとしたもの。
振り返れば鵜国王が涙目で女にすがりついている。
「法師さま〜〜〜〜〜〜っっ!!なんて事をおっしゃるんですかぁぁぁぁ」
「うら!!俺の三蔵(もん)に抱きつくなバケモノ!!」
「妖怪にバケモノって言われたぁぁあああ!!何たる屈辱っっ!!」
如意棒を煙管で止めて、女は視線を亡霊に移した。
「出すものは、出すんだろうな?旅には色々なものが必要だ」
「まだ他に何か御望みなんですかぁぁぁぁ?」
「一々語尾を伸ばすな!!うっとおしい!!」
国王を煙管でがすん、と打ちつけて乱れた袈裟を手早に直す。
「お前の城に、落魂の宝玉があったろう?まずはそれを寄越せ」
例え相手が一国の王でも、譲る事などしない。
それが、この玄奘三蔵という女なのだ。
「あとは、お前を身体に戻したあとに決める」
冷えた桂花茶で喉を潤して、女は片目を閉じた。
何かしらの悪巧みをするときの合図。
(三蔵、なに考えてんだ?)
素知らぬ振りも上手になった。退屈な日々よりも多少荒波の方が自分にも合っている。
自由と不自由をくれたこの女の策に乗るのはいつだって命がけ。
(任せておけ、お前にとっても悪くないことだぞ?)
熟れた苺の双眼がくすくすと笑うから。
離れるコトを選べなくなる。
(わーった。乗った!!)
(了解した。実行に移す)
澄み切った春の空の下、憂鬱なのは目下の亡霊。
祝い酒だと笑いながら、盃を合わせて二人はそれを飲み干した。
宿の一室で繰り広げられる光景に、女は小さく頭を二度ばかり振った。
「何をやっている、河童」
「さ、三蔵ちゃんっ!!助け……」
男の首に抱きつく、可憐な少女の姿。
上げ巻きの黒髪に、桃のような頬。丸く大きな塗れた瞳。
唇から覗く小さな牙は愛嬌とばかりに少女は悟浄にしがみつく。
「よ、那咤。元気だったか?」
「悟空!!わしの為に斯様な男を準備してくれるとは……持つべき者は友達じゃな!!」
頬をすり寄せるたびに走る寒気に、とうとう湿疹まで出てくる始末。
「は、離れろ〜〜〜〜〜っっ!!!」
「那咤。とーちゃんとにーちゃん達は元気か?」
腰に手を当てて、悟空はそれをにやにやと笑う。
「おお。兄者たちは相変わらずじゃ。木叉の兄者などは家にも帰らぬ。父上もしょっちゅう
天帝に呼ばれていて御姿もない」
たん、と飛び降りれば脚輪がしゃらんと囁く。
張りのある乳房を隠すのは半透明の薄布。腰に巻かれたそれには蓮の花が。
「それ、明らかにおめーが原因じゃねーか。どーせ毎晩違う男とやってんだろ?」
「折角に女の身体じゃ。遊ばぬと損ではないか。それに元々父上が悪いのだ」
托塔李天王と竜女の間に生まれた那咤は、元々は男児として生を受けるはずだった。
肉の玉子より生まれ出る瞬間、父である李靖はうっかりと呟いてしまったのだ。
玉のような女子が欲しい、と。
慌てて性を変えようとしても、間に合わずに那咤は半陰陽のままこの世に生まれ出た。
五行の荒行によって性を「女」に固定させるまでの険しき日々。
可憐な少女は一枚剥けば、脛に傷ある身体だった。
「西王母のおばちゃんは?」
「変わらずうるさいぞ。ここ数日は女禍の桃をかじりながら洞府に篭ってるがな」
似たような年端の少年と少女。共に齢千を越すもの。
天界の台風の目であり、名を馳せる者でもある。
「天化も、降りてきてるぞ」
「炳霊公も?あいつも暇人かよ」
二人の会話を聞きながら、女は思案を巡らせる。
(悟空も記憶が戻り掛けてるということか……そして、那咤の性は火。顕聖が水。普賢が金……
天化とやらに仕掛けてみるか)
必要名札は手元に揃いつつある。
死者に生を与えるならば、ある儀式を取らなければならない。
「那咤公主、その炳霊公とやらには逢えないのか?」
公主と呼ばれて、那咤は目を輝かせた。
自分のことを女として扱ってくれる相手など、そうそういない。
「逢えるぞ。わしと一緒に来たからな」
三蔵の傍に駆け寄って、那咤は首から提げた水晶の笛を口にした。
程なくして現れる一人の青年。
「あんだよ、もう帰るってか?俺はまだ酒、飲み尽くしてねぇぞ」
「違う。友達が天化に逢いたいと言うた」
「炳霊公さまって呼べっつってんだろ、おガキさまよぉ」
口の悪さとは相反する美丈夫。筋肉質の身体に羽織った法衣。
腰に携えた莫邪の宝剣は、彼が人間だったころからの愛用品。
仙とはならずに、神将となった殷国武成王の次男。
「炳霊公?天化?」
「ん?なんか可愛いーちゃんと……猿じゃんか!?おま、元気だったか?」
拳を突き合わせて、にかりと笑い合う。
「天化もかわんねーな。酒ばっか飲んでるとデブるぞ」
「他に楽しみなくてよー。このねーちゃん、お前のコレ?」
小指を立てる仕草と、まるで時間が戻ったような空気の色。
「そんなとこ。またみんなで遊べるといいな」
「ジロもなー、もうちっと頭やーらかいと誘ってやんだけども」
げらげらと笑って、あれこれと話しだす。
どうやらこの炳霊公とやらはそうとうに人懐こく酒好きらしい。
「んで、おねーちゃんは俺に何のようなわけ?」
「泰山府君の祭をしたい。那咤公主の火、おぬしの土。顕聖の水、普賢の金。これで
札が全部揃う」
「ん?木は?」
炳霊公の声に、女は口を開く。
「私だ。これで十分だろう?」
しぶとく首にしがみつく鵜国王を引き剥がして、炳霊公の眼前に突き出す。
「鵜国は酒がうまい。この男はここの国王。身体に戻れば礼ははずむぞ?」
「おーーーーーーーっっ!?おっしゃ、乗った!!」
青ざめた顔で鵜国王は青年を見上げた。
「わ、私は一体何をすればいいのですかぁぁぁぁあ!?」
「黙って待ってろ。明日中にはケリを付ける」
人間、神将、妖怪諸々、入り乱れての大混戦。
鵜国の夜は花宴。
今はそれまでの小休止。
ここまで。
|゚▽゚)ノシ<またもぐります。適度に保守とsageでおながい。
ゆらり、ゆるりと行きましょう。
今度はそんなに暗くないはず。
655 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/19(金) 22:37:47 ID:hNGK9wQk
∧_∧
(・∀・ )
⊂ \
(⌒__)
(_) 人
(__)
(___)
ごめんなさい、誤爆です。
スレ汚し申し訳ない。
しかもずれてるし…
(・∀・)イイヨイイヨー
なたちゃんかわいいです
保守だぁ
ほ、し、ゅ
圧縮近いのかな?
適度に守って貰えれば幸い
そんで、まだ先ですがここを使い切ったら次を立てるか
それともPINKなんでもあり辺りに引っ越すか
如何したしましょう(゚▽゚*)
ここはスレ主さんの「西遊記の女体化小説」を発表するスレなのですか?
もしそうならば、次スレは立てずに、続きはあなたのサイトでお願いしたいです。
それとも、ご自分のサイトだけでは物足りないのですか?
一人の書き手の作品と保守しか無いスレの存在っていかがなものなのでしょう。
西遊記のエロを語らうにしても、ここでは場違いのような気がします。
って、こんな否定的な意見をマジレスしても、ここでは荒らし扱いされちゃうんだろうな。
意見の一つということで、聞いていただければありがたいです。
多分そのうち、スレ主さんのファンの方たちが、次スレについていろいろ
妥当な意見を出してくれるでしょうから。
そう思うなら、いちいち書き込むなよなぁ
保守しときます
664 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/05(月) 23:13:13 ID:U1A5b5X4
>>661 まーねー、勝手に建てて勝手に使ってるからねぃ
こういう意見もひっくるめて声が聞けるってのが大きいのがここのいいところ
まだ容量おけのはずだから、あと3つくらいやってから考えるよ