おかしい。
あの、海でディアッカと二人きりになった日から、どうもディアッカの事が気になっ
てしまう。
撮影は順調で、もうすぐ最終回を撮り終えるところだ。
俺は、脇役ながら最終回まで出番があった。あいつは…まあ、放送を楽しみにしてい
て欲しいが、
本人は内容自体は満足している様だ。
あの日以来、あいつはよく俺の家に来て、チャーハンをご馳走してくれる様になっ
た。
「助けてくれたお礼だぜグレイトォ!」とか言ってるが。
あいつが、このクーラーの無い部屋で、汗をかきながらチャーハンを作る姿を見てい
ると、
なんかゆったりとした空気が、いいな、と思う。
ただ、撮影が終わったら、皆離れ離れだな。
この関係も、どうなるんだろう…と、思っていた。すると…
俺のアパートの部屋の外から、階段を上がる音がした。
この足音はディアッカだな…あれ、今日は来る予定だったっけ…?
と、ふと、俺は自分の姿に気が付いた。
この猛暑だ。クーラーが無い部屋に住んでいる為、一人の時はもっぱらタンクトップ
とパンティだけで
うろちょろしていた。
もちろん、ディアッカが来る時は、ちゃんと服を着ていたが。
俺が慌てていると、ドアの向こうからあいつの声がした。
「おーい、いるんだろう?大事な話があるんだが…」
「こら、ちょっと待て!入ってくるなよ!」
ドアにはカギが掛かっているから、入ってくる事は無いはずだ。
すると、
「なんだ、いるならいるって言ってくれよ。窓開いてるんだろう?入るからな」
しまった!最近暑いから、カーテンは閉めてても、窓は軽く開けてあるって、あい
つは知ってるんだ!
奴に窓を開けさせまいと、俺は広くない部屋の中を、窓に向かって走った。
窓を開ける音。
まずい!
「ごつっ!」
あいった〜っ!一体何が起こったんだ?
ようやく状況を理解した。窓を開けて中に入ろうとしたディアッカと、
カーテン越しに頭同士をぶつけたのだ。
「OH…非グレイトォ…」とうめく声が聞こえる。
俺も頭を押さえていると、カーテンがシュッと音を立てて開いた。
まずい!まだタンクトップのままじゃないか。
あわててカーテンを閉めなおそうと外を見ると、ディアッカがまじめな顔をして
立っていた。
こいつ、頭打ってうめいてたんじゃないのか…?
俺の格好にひるむ事も無く、ディアッカは俺の目の前に、小さい箱を差し出した。
「あのさ、こないだ撮影の給料、出ただろう?俺はグゥレイトな役だから、ちょっと余計
に出ててさ。
それで、お前に似合うと思って買って来たんだけど、受け取ってくれないかな。」
…なんだこいつ?
俺は、一瞬、訳も分からず、ぼぉっと立っていた。
明らかにいつものディアッカとは違う、あいつがそこにいた。
奴が小箱を開けると、そこには綺麗な指輪が入っていた。
「多分、サイズは合ってると思うんだけどな。違ってたら取り替えてきてやるよ。」
ディアッカ、お前、これ…まさか、給料の三ヶ月分って奴か?
おれはますます混乱した。指輪を指差しながら、口をパクパクさせていた様だ。
「ほら、もうすぐ撮影終わっちゃうだろ。そうしたら、皆バラバラじゃないか…
もちろん、他の皆と離れ離れになるのもイヤだけど、俺、お前とは、ずっと一緒にい
たい。
こんな俺じゃダメかな…?」
俺の目から、知らない内に涙がこぼれた。
こいつも、俺と同じ事を考えていたんだな…
俺は、ディアッカのこぶしごと小箱を奪い取ると、胸の中にぎゅっと抱きしめた。
「ディアッカ、お前は、俺でいいのか…?」
「お前だからいいんだよ。他の誰でも無く、お前と一緒にいたい。」
俺は今、部屋の中でディアッカと無言で立っている。
結局、玄関から奴を迎え入れた。窓にカギを掛ける。
俺は混乱していた。
俺は、こいつと一緒になって、何をしたいのだろう?
俺は、今まで演劇に夢中で、男と付き合った事など無かった。
ただ、ディアッカとは、一緒に想いを感じあいたい…そう思って。
俺は意を決した。
俺は、引きっ放しにしていた布団に寝ると、頭から毛布をかぶった。
そして、喉の奥から声を絞り出した。
「…お前も、入って来いよ。」
毛布の向こうから、奴が服を脱ぐ音が聞こえる。
しばらくして、音がしなくなってから…ディアッカが毛布に入ってきた。
俺は、まだ正直怖かった。
布団の中で、震えていた。
すると、ディアッカが、俺の身体をぎゅっと抱きしめると、
ショートにしている俺の頭を、なで…なで…と、やさしくなでてくれた。
そうすると、俺の身体から、震えが、すぅっと取れていった。
二人なら、もう怖いものは無い、そう思った。
ディアッカもその想いを感じたのか、俺のおでこに、やさしくキスをした。
そして、ほっぺに。
そして、俺のあごを、やさしく引き上げて…
二人、初めてのくちづけをした。
ディアッカが、俺のタンクトップとパンティを脱がしていく。
目はつぶっているが、不思議と、あまり怖くない。これが自然…という感じだ。
俺を布団の上に寝かせると、足をMの字に開かせ、自分の身体をその間に入れた。
俺がそっと目を開けると、ディアッカが、優しい顔をして、俺の顔を見つめてい
た。
まさか、こいつの顔を、こんな風に眺める事があるなんてな…
ふと、ディアッカが不安な顔をしている事に気が付いた。
よく見てみると、どうやら、入れる場所が分からないらしい。
「お前…初めて、か?」
「もちろんだ。こんなことなら、前々から勉強しておけばよかったぜ…」
馬鹿だな…でも、お前らしいや。
「ほら、そこじゃない、もっと下…」
んっ!あいつの先が、入り口に当たる。
「そこ…」
「ここか?」
「そう、そのまま…」
自分も処女だ。正直、不安もある。
でも、こいつとなら、その気持ちを共有するのも、悪くない…
「入れるぞ…」
んんっ!
あいつの先が、入り口を押し広げて…少しずつ、入ってくる。
ううぅ…
とうとう、ディアッカの熱いものが、俺の奥まで入ってきた。
二人で、一つになった感触を、無言で確かめ合う。
しばらく抱き締めあってから、ディアッカの腰が、少しずつ動き出した。
俺の中も、少しずつではあるが、慣れてきた様だ。
「痛く、無いか…?」
馬鹿だな。俺はお前と感じあえて嬉しいんだよ。
無言で微笑み返す。
ディアッカの動きが、少しずつ早くなってきた。
ディアッカの熱い想いを、全身で感じていると…
奴の動きが止まった。
身体の中に、熱いものが流れ込んでくる。
果てた、のか…?
上から覆い被さってくるディアッカの体重を、心地よく感じていた。
俺は、毛布の中で、余韻に浸っていた。
ディアッカは、しばらく俺を抱きしめた後、布団から出て行った。
がさごそと音がするので、そっと毛布から顔を出してみると、
ディアッカはどこからか例のスクール水着を取り出して、
「今度はこれを着てやろうぜグレイトォ!」などと言い出した。
とりあえず、ディアッカが置きっ放しにしている中華鍋で頭をしこたま殴っておい
た。
あの日、どさくさに紛れて持って帰って、押入れにしまっておいたハズなのに…いつ
見つけたんだ?
とりあえず、暖かい気持ちに包まれながら、ディアッカの頭を叩き続けた。
こんな日が、ずっと続けばいいと思った。
そんだけ。