【ここで】フォーチュンクエスト【ない場所】

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1名無しさん@ピンキー
ないようなので作りました。
過去ログにあったらupお願いします。
さあ、みんな書こうじゃないか!

早期神光臨キボン。
2名無しさん@ピンキー:03/06/16 00:41 ID:kU/QwFmr
2ゲッツ(σ・∀・)σ!
3名無しさん@ピンキー:03/06/16 01:19 ID:Sm0IPPlZ
なつかしーなぁヲイ。
トラップ×パステルの凌辱物キボン(゚∀゚)
4名無しさん@ピンキー:03/06/16 01:44 ID:e1VkdhO6
パステル×クレイの品行方性カポー
どっちもトラップが気にかかりつつ。
5名無しさん@ピンキー:03/06/16 03:06 ID:EsE0AbM6
ギア×パステルきぼーん
6名無しさん@ピンキー:03/06/16 03:28 ID:PvH8Hpcf
>>1が神になれ。
文才がないという意見は一切受け付けません。
7名無しさん@ピンキー:03/06/16 09:43 ID:aOlchdje
ギアってなんかやらしいイメージがアル(゚Д゚)!! 優しさにだまされたパステルがやられちゃう系がいい。
8名無しさん@ピンキー:03/06/16 12:42 ID:Sm0IPPlZ
>>7
それは

イイ!!(*´д`)ハァハァ
9名無しさん@ピンキー:03/06/16 18:42 ID:N4MGVy+l
おお、ついにスレが…!
記念パピコ兼即死防止さげ。
10名無しさん@ピンキー:03/06/16 21:08 ID:gNjd+Sq4
パステルタンのバニーや毛糸パンツでハアハアしたもんさ…
11名無しさん@ピンキー:03/06/17 02:49 ID:33JOUqEJ
PCがイカれたため、携帯からです。ついにスレ誕生か・・・。
皆はどの話が萌える?漏れはやはりバニーの格好したパステルが出てくる魔術団の話だな。
12名無しさん@ピンキー:03/06/17 03:53 ID:5P0w4UYh
ほりおこしてきます。
古着屋詐欺娘×パス
13トラップ×パステル:03/06/17 04:32 ID:Q7YFwCBO
書いてみたがなにぶん昔読んだっきりなので
キャラの特徴を大まかにしかおぼえてなかった。
とりあえずスレ活性化の為に投下します。
14トラップ×パステル:03/06/17 04:33 ID:Q7YFwCBO

「ごめんねトラップ」
手をひかれて歩きながらパステルは三度目の謝罪の言葉を口ににした。
「いいってもう、さっさといくぞ」
そういってトラップは手を引っ張る。今はパーティに合流することが最優先だ。
何てことないクエストのはずだった、ある森にしかいない蝶を捕まえてくるだけ
その蝶も別に危険性が高いわけでもない、簡単なクエストのはずだったのだ。
『冒険に、たら、ればは無い。それを口にする時は屍になっているからだ』
誰もが知ってる高名な冒険者の言葉だ。
だがパステルは、自分が昆虫を発見して駆け出さなければ一人でつっぱしらなければ
蝶ばっかりみないで足元をみていれば、その思いに捕らわれていた。
「でもわたしが転げ落ちなかったらはぐれなかったし、助けに来てくれたトラップまで
 巻き添えにして迷わせたし私が地図を間違えなかったら・・」
「あー、俺に羽が生えていたらあっという間にかえれるのに!
 遠話の呪文が使えたらクレイ達と話せるのに!
 金持ちだったらこんなクエストしなくて良かったのに!」
トラップは大声でパステルの愚痴をさえぎりこう言った。それからクルッ振り返る。
「だろ?」
「でも・・そんな事言ったっ・・」
いいかけてパステルも気付いた。その様子をみてトラップが二ヤッと笑う。
「そういう事。俺達はシロじゃないから飛べないし
 金持ってないし呪文も使えない。今はな。」
パステルの胸にはやけにトラップの言葉が暖かかった。
「ありがと、トラップ」
パステルの顔に笑顔が浮かぶ。
「寒いからさっさと帰ろうぜ。俺パステルと違って毛糸のパンツはいてねえから寒いんだよね」
「何よ、もう!エッチ!いつ見たのよ!」
パステルはほっぺたをふくらませてポカポカとトラップを叩く。
「うっひゃっひゃっひゃっ」
少しふざけあってまた歩き出す。パステルの足取りはさっきよりかるくなっていた。
15トラップ×パステル:03/06/17 04:33 ID:Q7YFwCBO

「おっ!なんだ、あれ」
そういうとトラップは走り出した。
手をつかまれたままのパステルも一緒に走る事になる。
たどりついた所は切り株などがあり明らかに人の手の入った痕跡があった。
「ふーん、人が来たような後もあるな」
「クレイ達かなっ?」
「多分違うんじゃねえか?そんなに新しい痕でもないし
 クレイ達ならなんかサインを残していくと思うぜ」
「そっか・・・」
パステルは期待してしまった分少し落胆してしまった。
「でもちょうどいいからここで休んでいこうぜ」
トラップは伸びをしながらだらしなく切り株の一つに座る。
パステルもトラップの隣の切り株に座りため息をついた。
「どした?疲れたか」
「う、うん。少し・・」
「ま、ちょっと休もうぜ。ここにクレイ達がくっかもしれねーし」
パステルはかなり疲れていたがトラップは反対にどこか楽しげですらある。
しばらくそこで休憩しながらお喋りをしたりしていたが急にパステルが立ちあがった。
「ん?どこいくんだよ」
「どこでもいいでしょ。ついてこないでよ」
パステルは少し空威張りしたような口調でそういった。
「よかねえだろ、すぐに迷うくせに。あっ!しょんべんか!?」
「もう、バカ!イーっだ」
森の中にはいっていくパステルにトラップが大声で話しかける。
「あんま遠くいくなよ!俺が見える所でしてくれよ!」
16トラップ×パステル:03/06/17 04:36 ID:Q7YFwCBO
トラップは念の為にパステルが場所を決めて
しゃがんだのを確認すると切り株に座った。
「きゃあ〜〜!!!」
トラップがやれやれと座りこんだ瞬間悲鳴が聞こえた。
あわててパステルのところで駆けつけると,パステルのお尻にしっぽが生えていた。
驚いてよくみてみるとそれは蛇がパステルのお尻にかみついているようだ。
パステルは悲鳴をあげながらじたばたとまわったりお尻をふったりしている。
「じっとしてろ!」
そういってトラップは蛇の頭を押さえて口を開けさせると
パステルの尻から離しパステルの短剣を抜いて蛇を殺した。
ぽろぽろと涙を流しながらお尻をおさえるパステルを広場まで連れ戻す。
「痛いか?ちょっとみせろ」
パステルはあわてて首を振る。
「やだよ、恥ずかしいもん」
「いいからみせろって」
「やだ!絶対やだ!」
17トラップ×パステル:03/06/17 04:36 ID:Q7YFwCBO
絶対やだ、というパステルと見せろというトラップの間で押し問答が繰り返された。
「バカ!死にたいのか!毒蛇だったらどうするんだ!」
「う・・」
結局、凄い剣幕で怒るトラップの迫力におされパステルは渋々承知した。
顔を真っ赤に染めながらパステルは後ろを向いて切り株に手をつく。
自然とお尻をつきだすような姿勢になる。
トラップは目の前にパステルの生尻があるのをみて激しく興奮したが
なんとか理性を保たせてお尻の肉をつかんだ。そしておもむろにお尻の肉を左右に開いた。
「〜〜〜〜」
パステルは恥ずかしさのあまり声にならない声をあげ腰をくねらせた。
トラップは初めて見るパステルの秘所にくらくらしながらも
蛇にかまれたと思われる傷をみつけた。
その場所はお尻の内側で、つまりパステルの秘唇のすぐそばであった。
トラップはその傷口に唇をあて吸いつく。
「ひゃ・・〜〜んッ」
パステルの傷口を吸っては吐き吸って吐きと繰り返す。
吸いついているときに独特の匂いがトラップの嗅覚を刺激する。
パステルの放つ妖しい匂いにトラップの理性は既に崩壊していた。
「・・・まだ?も、もういいでしょ、あっ・・」
パステルの声が聞こえているのかいないのかトラップは吸う場所を少しずらした。
パステルのそこは少し湿っていた。
18トラップ×パステル:03/06/17 04:36 ID:Q7YFwCBO
トラップは音がしないようにそろっとズボンを脱いだ。
トラップの男根がパステルの女芯にあてがわれる
「パステル!ごめん!」
その言葉の意味と性器に感じた感触の正体を問うまえにパステルの体に激痛が走った。
「ぐ!・・〜〜いっ!・・いぁっ・・!」
パステルから押し殺された悲鳴が上がる。トラップはお構いなしに腰をうちつける。
「ぃぐっ・・!駄目ぇ!ぬ・・抜いて!ぬいてええ!」
ようやく自分に行われた仕打ちに気付いたパステルが懇願する。
聞き入れてもらえるはずもなくパステルの声がむなしく響く。
トラップは返事の代りにパステルの尻を自分の腰でリズミカルにうちならす。
パンッパンッという音と同時にパステルから息が漏れる。
逃げようと動いてもトラップに腰をつかまれているので逃げれない。
パステルの嗚咽とトラップの悦びの声と肉体のぶつかる音。
三つの音が森を支配する。
「ぐっ・・ぐっ・・ぐっ・・ぐっ・・」
「うおぉ・・うぉ・・うああっ!」
ついに音の均衡が破られパステルのなかにトラップが放出した。
19トラップ×パステル:03/06/17 04:37 ID:Q7YFwCBO

初めて味わう苦しみから開放され
トラップが動かなくなった隙にパステルは逃げ出した。
しかし体が思うように動かない、すぐにトラップに捕らえられてしまう。
「ごめん!本当にごめん!謝ってすまないのはわかってる!
 もう何もしないから逃げないでくれ!」
パステルを両腕に捕まえたままトラップが謝り続ける。
最初は逃げ出そうと暴れていたパステルだったが無駄だと悟り抵抗をやめた。
「どうして・・?どうして・・こんな・・」
パステルは泣く事すらもできず虚ろな表情をしていた。
「パステル。俺でよければ責任とるよ。
 それが嫌でも出来る事あればなんでもする。許してくれ」
必死に許しをこうトラップにパステルは驚いていた。
なぜあんな事をしたのか、謝るぐらいなら・・・パステルには理解できなかった。
「なんで?なんでこんな事したの?」
ゆっくりとトラップの腕をはずし対峙する。
少しの沈黙の後、意を決したようにトラップが話し出した。
「・・俺、パステルの事好きなんだ。
 それでパステルのが目の前に来たとき我を忘れて・・・。
 もちろんこんな事言い訳にならないとわかってる。
 好きな女を無理に犯して責任とるなんて卑怯だとも思う。
 どうすればいい?どうしたらいい?いってくれ、なんでもする」
パステルは情けなく謝るトラップを見て少しだけ許してあげる事にした。
「・・わかった。とりあえず保留しとく。みんなの前じゃ普通にしてて」
「パステル・・・」
「勘違いしないで。許したわけじゃないからね。
 迷惑をかけたのはお互いでもあるし、こんな事で冒険できなくなるのも嫌なの。
 もう二度としないで。絶対にしないで」
それだけ誓わせると二人は再び仲間を探し始めた。
20名無しさん@ピンキー:03/06/17 04:37 ID:Q7YFwCBO
終わり。
21あぼーん:あぼーん
あぼーん
22名無しさん@ピンキー:03/06/17 07:28 ID:dV5L6UBi
>>20
小説上手いね すげー読みやすかった
まさに起承転結って感じで
23名無しさん@ピンキー:03/06/17 07:47 ID:TqcLA5P3
ほしゅ。
24あぼーん:あぼーん
あぼーん
25名無しさん@ピンキー:03/06/17 10:11 ID:njont0T+
神きた━━(゚∀゚)━━!!
26下手の横好き:03/06/17 11:13 ID:vTbPAuyc
おお、とうとうFQ単体でスレが立ったか。
昔、ライトノベルスレでうpった、漏れの稚拙なSSで良ければうpりたい所存ではあるが、
保存していたFD失くしちゃったのな・・・。

とりあえず>>1乙!
また何かネタが浮かんだら書くよ。漏れは素直にクレパスとかトラパスとかギアパスとか書けない人だがな(w
27名無しさん@ピンキー:03/06/17 12:19 ID:I7rpQSem
うおぉお! 下手の横好き氏 光・臨!!
お願い致しますー!(・∀・)シノ
28名無しさん@ピンキー:03/06/18 02:18 ID:lDEPBjFP
なつかしーな。
漏れはパステルよりマリーナの方が好き。
ってなわけでクレイ×マリーナきぼん。
29あぼーん:あぼーん
あぼーん
30あぼーん:あぼーん
あぼーん
31       :03/06/18 09:03 ID:SNJO0LB7
ミケドリア丼って食ってみたい。
dingdongdongに鬼畜SSがあったよ。
32名無しさん@ピンキー:03/06/18 09:33 ID:Lncd5S10
キットン族の秘儀で逝かされるルーミーとかあったら・・・・・・
33名無しさん@ピンキー:03/06/18 12:24 ID:3TaDAMgc
ロリは主食なんだけど、ペドまで行くとちょっとなぁ……。
34名無しさん@ピンキー:03/06/19 12:00 ID:0FaxT7sf
補習=З
35あぼーん:あぼーん
あぼーん
36あぼーん:あぼーん
あぼーん
37あぼーん:あぼーん
あぼーん
38名無しさん@ピンキー:03/06/22 00:23 ID:ApIp+jyN
age
39あぼーん:あぼーん
あぼーん
40あぼーん:あぼーん
あぼーん
41名無しさん@ピンキー:03/06/22 13:28 ID:IzgvYU3Y
懐かしいなぁ〜。
パステルの鬼畜調教モノを書いてみたいなぁ〜。
42名無しさん@ピンキー:03/06/22 15:21 ID:ygSFYFKQ
また暇が出来たら パステル×クレイとか書きに来ていいかな?
43名無しさん@ピンキー:03/06/22 20:10 ID:MSesgG1q
>42
待ってるよ
44あぼーん:あぼーん
あぼーん
45名無しさん@ピンキー:03/06/22 21:33 ID:gMqp0rH6
>>42
いいともー!
46名無しさん@ピンキー:03/06/23 02:20 ID:BzHaewZb
>>46
笑って〜?!
47あぼーん:あぼーん
あぼーん
48あぼーん:あぼーん
あぼーん
49二人の脱出:03/06/24 17:33 ID:Nlm8czJI
クレイ×パステル行きます。
>>13〜20とは全く関係無い話です。
50二人の脱出:03/06/24 17:33 ID:Nlm8czJI
 ドンッ!
縛られたままクレイとパステルは床に突き飛ばされた。
理解できない言語を喋り謎の種族は部屋から出ていった。
「大丈夫かパステル」
「うん・・・」
二人が入れられた部屋は何も物が置いてない粗末な部屋だった。
扉と窓がひとつづつありあまり監禁に向いた部屋とはいえなかった。
手足の自由さえきけば簡単に逃げれそうな部屋だ。
手足の自由がきけばの話だが・・・

何故こんな事になったかというと、ほんの一時間ほど前の事。
パステルが用を足しにいくというので用心のためクレイがついてきた。
すると突然謎の亜人種があらわれ二人を取り囲んだ。
言葉が通じずおろおろしてると十人以上に取り囲まれた。
それぞれが武器を手にしており身のこなしや
気配を消していた事を考えると手練のように思えた。
人数差も考え抵抗をやめると森の中のボロい屋敷まで連れて来られたというわけだ。

身包みを剥がされた後身動きできないようお互いに縛られた。
そう、クレイとパステルは一緒に縛られたのだ。
パステルは後ろ手にまわされて手首を縛られ、
そこにクレイの手首も同時に縛られている。
お互いに正面を向いて縛られてるため傍からみれば
クレイがパステルを抱きしめているようにも見える。
さらに腰にも縄が巻かれており下半身をくっつけあってるような状態だ。
51二人の脱出:03/06/24 17:33 ID:Nlm8czJI
しばらく投げ出されたまま黙っていたが特に厳重に見張りが居る訳では無い事を
確認するとぼそぼそと話し始めた。
「どうしよっか・・」
「・・言葉がわからないからな、何を考えているのかわからないな・・。
 隙をみて脱出したほうがいいかもしれない」
「どうやって・・?」
パステルの疑問は当然の事だ。変則的な縛り方であったが抜けれそうには思えなかった。
二人で考えているとクレイの体に異変が起きた。それにはパステルもすぐに気づき赤面した。
クレイの下腹部が膨張し始めたのだ。下着しかつけていないパステルの体と密着しているのだから
健康な男子としては当然の現象である。
「・・・・」
パステルは何も言わず赤らめた顔でじっとクレイを見上げた。
「いっ・・」
パステルに見詰められますます膨張してしまうが
今は腰を縛られているのだ、密着したパステルの下腹部を押して痛い。
パステルも痛いのだろう、顔をしかめている。
だがクレイのはお構いなしにぎゅうぎゅうとパステルの下腹部を押している。
「た、立ち上がって」
状況を打開しようとパステルとタイミングをあわせて立ち上がった。
「グッ・・」
パステルを持ち上げるようにクレイが体を下げる。
みっちり密着しているが勃起した分か、少しづつ動く。
クレイの頬がパステルの頭、額、ほっぺたと移動してくる。
すでにクレイのモノの根元はパステルの股下までいったが先っぽがまだ下腹部に引っかかっている。
さらに下がりクレイの口がパステルの首元まできてやっとクレイのふくらみが開放された。
52二人の脱出:03/06/24 17:33 ID:Nlm8czJI

二人の頬が重なりクレイの肉棒がパステルの秘所の真下にきた。
まるでソレでパステルを持ち上げているようになった。
「・・・ごめん・・」
「・・・・うん・・しょうがないよ」
パステルの頬は柔らかく汗で少しぬるっとしていた。
頬と頬をくっつけた状態で話すと相手の声が直接響くような不思議な感覚があった。
相手の姿が見えない事や息が耳にかかる事もあり二人に間に温い空気が漂う。
「パステル・・今日の下着どんなんだ?」
「・・どっ、どうしたの?」
「ブラって金具はいってたりするだろ?今日のはどうかなって・・」
「多分はいってると思う・・」
少しの沈黙の後クレイの考えを察したパステルが口をひらく。
「・・まさかその金具を使う気?」
「そう。形によってはヤスリになるかもしれないし縄を切れるかもしれないだろ」
「でも・・どうやって・・まさか口で・?」
「うん、それしかないと思う」
予想はついてたがパステルには衝撃的な答えだった。
「・・エッチな事かんがえてるんじゃない?」
「ち、ちがうよ」
クレイの人柄は信用していたがさっきのふくらみの事もあり思わず疑ってしまう。
「う〜〜〜」
パステルが小さく唸る。はっきりいって嫌だ。
しかしそういってられない状況なのもわかる。
しばらくうなったり考え込んだりしていたら決心がついた。
「わかった・・やってみて・・」
クレイは返事を聞くと無言で体を動かした。
クレイの顔がパステルの首筋、鎖骨と通る。
同時にパステルの胸のふくらみがクレイの胸板を楽しませる。
パステルの胸がクレイのあごに触れた。
53二人の脱出:03/06/24 17:33 ID:Nlm8czJI

「んっ・・」
クレイの顔が自分の胸に触れた感触でパステルは思わず声をあげる。
真っ白で信じられないほど柔らかくすべすべとしたパステルのふくらみを
両頬に味わいクレイは一瞬仕事を忘れた。
少しだけおっぱいに浸った後クレイはブラに噛み付いた。
胸を下から支えるように金具は入ってるはずでそこに噛み付こうとしてるのだが
上手くいかない。何度試してみてもツルッとすべる。
試すたびにクレイの顔がパステルの胸にうずまる。
そのたびにパステルから小さな悲鳴があがるがクレイはそれを無視した。
上手くいかないので方針を変えクレイは下着の上の方に噛み付いた。
クレイの狙いどおりアッサリとくわえられた。そのまま上の方にずらす。
一回では上手く行かずもう一度やるとブラの下から桃色の突起があらわれた。
「みないでよお・・」
クレイの視線を感じ恥ずかしそうに抗議するパステルだったが何もする事はできない。
クレイはパステルの乳首に見とれていたが自分の欲望をおさえつけブラの下を噛んだ。
狙いどおりの場所をしっかりと噛むと顔を横に振った。
クレイが顔を勢い良く振るたびにパステルの胸も揺れた。
振るたびにクレイの下唇にパステルの乳首の感触がありクレイを刺激した。
何度やったかクレイが目的を間違え始めたころブチッと音がしてブラが破れた。
破れたブラから期待通り金具がでてきたが出てきた金具は期待外れだった。
短く細く役に立ちそうも無い。その事をパステルに伝えると
「いいから顔をもっと下げて」
と怒られた。おっぱいに顔をおしつけたまま喋るなということだ。
クレイは言う通りにすると再び口を開いた。
「このまま下がったら縄抜けられるんじゃないかな・・」
それはパステルも考えた。
だがそれをやるという事はクレイの顔がパステルの下半身を通るという事だ。
先ほどより深く長く悩んだ。しばらく考え込んだがある事を思い出し決意した。
「・・クレイ・・いいよ」
54二人の脱出:03/06/24 17:34 ID:Nlm8czJI
今日はここまでです。
続きます。
55名無しさん@ピンキー:03/06/25 00:53 ID:EUCRmsGF
密着しすぎ!
……でも、そこが良かったりして(*´∀`*)
続き激しく期待して待ってまつ〜

トコロデ クレイ×ルーミィ ッテノハ イカンザキ?
5642:03/06/25 01:36 ID:WA7ZDZZZ
うぉっ!先に書かれてしまった
乙です 続き待ってますね
57名無しさん@ピンキー:03/06/25 14:38 ID:V1UClaiU
>>55
クレイ×ルーミィ…書いてもいいけど、ロリペド無しでいくためには、
無茶な設定が出てくるような。
これに関しては、ネット上にも少数ながら支持者がいるので、
設定を見るのも、お勧めです。
大概が突然成長とか、パラレルとかみたいですが。

>>14
>>50
御疲れです。堪能させていただきました。
58二人の脱出:03/06/25 17:12 ID:Du1wB+gn
>>53の続きです。
59二人の脱出:03/06/25 17:12 ID:Du1wB+gn

クレイはパステルの返事を聞くとパステルのお腹から顔を下げていった。
腰付近は縛られている場所に近いため多少の余裕がありくっつく必要がない。
そのことをクレイは少し残念に思ってしまい自分の心に驚いた。
クレイの顔がパステルの太もも、膝の上辺りでとまる。
「パステル、俺の肩の上から足を抜いて」
そう指示するが体勢としてはそれは不可能だった。
しかたなくパステルは膝をクレイの肩の上に置き押し抜こうとする。
必然的にパステルの股間がクレイの顔にあたる。
「や〜もぅ〜〜」
パステルが悲鳴をあげながら必死に膝を押すがなかなか抜けない。
ただそうする事でクレイの口がパステルの秘所にぐいぐいと押し付けられる。
クレイの熱い吐息がパステルの秘所を刺激する。
「ふぁ・・クレイ息しないで・・」
「ふちゃひゅうな(無茶いうな)」
クレイが喋ると唇の動きがパステルを愛撫する。
クレイの口とパステルの下の口の間には下着一枚しかない。
「んあ・・喋らないで・・!」
「ふぉんなことひゅわれれも」
「しゃべらないでって!」
口が動かなくともクレイの熱い吐息は容赦なくパステルを責め立てる。
「くう・・うう・・ん」
パステルの下着は濡れていた。
「息をかけないで・・」
クレイは仕方なく鼻で息をした。
汗とチーズとミルクが混ざったような匂いがクレイを興奮させる。
「臭いも嗅がないでよ!」
パステルは恥ずかしくてたまらなかったがそれでもやめるわけにはいかない。
(急がないと!)
60二人の脱出:03/06/25 17:12 ID:Du1wB+gn

そういわれても鼻で息する以上は臭いを嗅がないわけにはいかない。
パステルの臭いがクレイの鼻腔を占拠する。
もぞもぞと動くパステルの動きを顔で感じクレイは幸福な気持ちになる。
押し付けられるパステルの秘密の場所は柔らかいような固さで太ももはさらさらと滑らかだった。
一生懸命にクレイに動いていたパステルの動きがとまる。
プルプルと震えて足に力が入っている。
「ふぉうした?」
「駄目・・・しゃべらないで・・漏れちゃう・・」
クレイは驚いたがある事を思い出していた。
もともとつかまる前からパステルはおしっこがしたかったんだ。
色々あって忘れていたが遂に我慢できなくなってきたのだ。
それはわかっていてもここでやられるのはクレイとしても困る。
しばらくすると波がおさまったのかまたパステルが動き出した。
悪戦苦闘の末やっと片足がクレイの背中側に通った。
そうなればもう片足は簡単でさっきの半分もかからず抜いた。
パステルの体重がクレイの顔に預けられた時、またパステルに尿意が襲ってきた。
「くぅ・・・」
パステルはクレイの顔が股間にうずまっている事もお構いなしに太ももをしめた。
内ももと股間にはさまれクレイの鼻息があらくなる。
「だめだって・・」
パステルは弱弱しくそういうと腰をくねらせた。
「くぅぅぅ〜〜・・」
二人の間に緊張が走ったがパステルはなんとか持ちなおしたようだ。
クレイの顔が解放され変な体勢になり二人とも崩れ落ちる。
寝転んだまま二人の手を縛る縄に噛み付く。
何度もガシガシと噛み付いていると少しだけ縄が緩みそこを足がかりにほどく。
「よし!少しほどけたぞ」
ほどけたのはクレイの右腕だけだったがこれで立ち上がる事ができる。
パステルを立たせ片手で縄をほどく。
61二人の脱出:03/06/25 17:13 ID:Du1wB+gn

「はや・・くしてぇ・・」
また尿意がきたのかパステルが腰をくねらせ地団太をふみはじめる。
「ちょ・・動くなって」
悶えまくるパステルに苦戦しながらやっとのことでクレイの左手分がほどかれる。
「〜〜〜ぃゃあっ」
そこで我慢し続けていたパステルに限界がおとずれてしまった。
ちいさな悲鳴と同時にジョロジョロと音がして
パンツにしみがひろがり黄色い液体がしたたりおちる。
内股になったふとももを伝い膝から下へ流れ落ちた。
「うう〜〜っ・・」
パステルがうつむいて泣き始める。
パンツからはまだぽたぽたとおしっこのしずくがおちていた。
クレイがパステルの頭をなで慰めていると突然扉がひらいた。
二人をつれ去った謎の種族だ。
また訳のわからない言語でしゃべるとついて来いというような身振りをした。
かまわずに泣き続けるパステルを連れてついていくと屋敷の外にだされた。
森の中を進むと少しだけ広い場所がありそこで謎の種族は足を止めた。
するとパステルの縄をナイフで切り没収された装備等を返してくれそのまま去っていった。
「はあ?・・・俺達助かったのか?」
しばし呆然としてクレイが笑い始めた。
つられてパステルも笑い、泣き笑いのよになった。
「パステル・・」
クレイは返された荷物からタオルを出しパステルに近寄った。
なにもいわずにびしょびしょのパンツをずり下げる。
パステルは何も言わず何も抵抗しなかった。
タオルでパステルの足をふき性器を拭いた。
拭き終わった後も指で広げいじる。
62二人の脱出:03/06/25 17:13 ID:Du1wB+gn

「ん・・ふぁ・・んむ」
クレイが指でいじっていることに気付いているはずだがパステルはせつない息をもらすだけだ。
指で弄んでいるとパステルのそこはクレイを誘っているかのように光りだした。
誘われるままにしゃぶりつくと舌で転がした。
「んんっ・・ぅんっ・・んっ・・」
パステルは木にもたれかかったまま片足をクレイの肩にかけさせられていた。
ひとしきり味わいクレイは下着を脱いだ。
「パステル・・」
クレイが見つめるとパステルの瞳にはまだ涙が少し残っていた。
「クレイ・・ここまでしたんだから責任とってよね・・」
力なくゆうパステルにキスをしてクレイはうなずいた。
はちきれそうな男根をパステルの秘所にあてがう。
パステルはクレイの動きをみれすクレイの首に腕を回し目をとじた。
クレイが突き入れると激痛がパステルの体にはしる。
「ぐぅ〜っ・・くうっ・・いっ!うぐ・・」
パステルはつらそうだったがクレイはかまわず腰をつく。
まだ先しか入らなかったが腰を上下させる。
「んくっ・・・んくっ・」
何度も腰を上下させていると少しづつ長くパステルの中にはいれるようになってきた。
さらに何度もやっていると半分以上がパステルのなかにおさまっていく。
「ん・・ん・・ん・・」
耐えるためにだされるパステルの息がクレイを更に煽る。
クレイの肉棒が何度も出し入れされパステルの粘膜をいたぶる。
クレイの肉棒の全てがようやくパステルの中におさまりそうになったとき
クレイから白い欲望がパステルの中にぶちまけられた。
63二人の脱出:03/06/25 17:13 ID:Du1wB+gn

しばらく抱き合ったまま余韻にひたる。
呼吸が収まってきてクレイがパステルの中から引き抜かれた。
赤いものが混じった白濁液がパステルからこぼれおちる。
「・・パステル可愛かったよ」
二人は長いキスをした。
何度も何度もキスを繰り返した。
パステルの赤く腫れた性器が乾きはじめるころようやく二人は服を着た。
装備を整えてからまたキスをする。
「帰ろうか」
「うん・・」

手をつないだ二人は果たしてどうやって帰るのだろうか?
二人はいつ自分達が迷子になった事に気付くのか?
謎の種族の謎とは?
様々な疑問を残しながらこの物語は終わる。
6455:03/06/25 23:25 ID:QQquWqta
二人の脱出、堪能しました……イイ!
迷子になった事に気が付いてないんですね(w

>57
是非書いて頂きたい〜。
ルーミィのお父さんの様になっているクレイが好きなんです。
(だからってクレイ×ルーミィに変換する私も私なんですが;
早速、お勧めして下さったサイトを探すべく冒険に行ってきます。
有難うございました。
65あぼーん:あぼーん
あぼーん
66名無しさん@ピンキー:03/06/27 10:09 ID:J5WcTQzM
拾い物のエロ絵貼るのもOK?
OKなら貼り板を紹介してくだせい。
67名無しさん@ピンキー:03/06/28 02:26 ID:TdMsXAJr
期待age
68名無しさん@ピンキー:03/06/28 22:26 ID:aYYMR+uA
面白い物を見つけたので。

ttp://www.kawarayane.com/gekitan/yanekouji/n/union/001.htm
69あぼーん:あぼーん
あぼーん
70名無しさん@ピンキー:03/06/29 00:41 ID:+BIzJvPO
>68 ワラタ あの二人は一番可能性ありそうで展開無さげでもあるよ。
フォーチュンはパスがどう思ってんのかも煮え切らないけどクレやトラがどう思ってんのかはっきりせん。
それなりに婚約者とか対抗馬は用意されてるけど。新1巻あたりは良かったよなー
71あぼーん:あぼーん
あぼーん
72あぼーん:あぼーん
あぼーん
73場繋ぎ?:03/06/30 03:11 ID:Wr7A4PyF
74あぼーん:あぼーん
あぼーん
75あぼーん:あぼーん
あぼーん
76名無しさん@ピンキー:03/07/01 00:57 ID:nEjnFdRy
なかなか神光臨しないなあ。
FQでエロはむずいのか?!
77あぼーん:あぼーん
あぼーん
78あぼーん:あぼーん
あぼーん
79名無しさん@ピンキー:03/07/02 20:49 ID:1IlEK/np
はあはあっ
80名無しさん@ピンキー:03/07/02 22:13 ID:yJs73lv4
おお、こんなスレあったのか。全職人さんグッジョブ!
 
クレイがMでマリーナとパステルに責められるSSキボン
81名無しさん@ピンキー:03/07/02 22:31 ID:pP5GidYx
>>80
そういえば、クレイってMの気がありそうだよな。
でも、トラップとパステルを並べると、確実にトラップがSでパステルがMに見えてくる…
82名無しさん@ピンキー:03/07/03 17:27 ID:hj20eoAD
資料にどーぞ

フォーチュンクエスト年表
ttp://www2.saganet.ne.jp/ngik/fq/
83出だしだけ書いてみた:03/07/03 23:36 ID:3J/sRMT7
「きゃあっ!!」
クレイに両手を捕まれ、わたしはベットに押さえつけられた。
「なんで、なんで普通でいられるんだよっ! 俺は人を殺したんだぞ! 
人殺しなんだっ!!」


一週間前のこと。
ちょっとしたクエストに出かけた帰り道。商隊と出会った私達は、元からいる
人達と一緒に護衛することになったんだけど……。現れた野党達との戦いで、
クレイはわたしを助けるために相手を殺してしまった。

初めて人を殺したことで、クレイは酷く落ち込んだ。まるで話さなくなって、
引きこもりがちなり、食事もあまり取らなくなったし、ちょっとしたことで
周りに当たり散らしたり……。
 ルーミイは怖がって近づかなくなったし、みんなもどう話しかけていいか
わからなくて避けている。
 わたしは…、自分の所為で変わってしまったクレイを元に戻したくて、いつも
どおりに話しかけたり、自分なりに励ましていたつもりだったけど…。クレイの
様子は、ますます悪くなっていた。

「冒険者支援グループに相談してはどうですか」

キットンの提案でノルと一緒にエベリンへ向かった。
「暴れると、パステルはクレイ、止められない」
宿はアリーナが準備してくれて、料金も幾らか出してくれた。

そして、到着したその日の夜になって…。


「ク、クレイ! 落ち着いてっ!」
84名無しさん@ピンキー:03/07/05 01:52 ID:WItN3dR2
アリーナじゃなくてマリーナ
85名無しさん@ピンキー:03/07/05 18:54 ID:K3iD1OBr
>>83
神ッポイ。キター・・・か?
86あぼーん:あぼーん
あぼーん
87名無しさん@ピンキー:03/07/06 00:16 ID:UQfs6rNN
なっつかしぃー!
トラ×パスの神はいないのか。
88あぼーん:あぼーん
あぼーん
89名無しさん@ピンキー:03/07/07 07:30 ID:+h49yF+G
まだかなまだかな〜 83の続きはまだかな〜
90名無しさん@ピンキー:03/07/07 15:51 ID:Mr4FeVj9
誰かパステルがシロにバター犬させてたら
パーティの誰かに見つかって犯される、ってSSを書いてくれ
91名無しさん@ピンキー:03/07/07 19:40 ID:q59PrTs7
ところで下手の横好きさんが書いたSSがHDから発掘されたんだけど貼っていいの?
下手の横好きの返答を待ちます。
9291:03/07/07 19:45 ID:q59PrTs7
『さん』を付けてなかった…
93名無しさん@ピンキー:03/07/08 00:35 ID:Sj7zJh3g
>>90
シロがバター犬やる話は見たことあるで。
探してみたら?
94下手の横好き:03/07/08 10:33 ID:l/qI57tl
>>91
ドッチさんの話なら、オレはオッケーですよ。
その後に書いたヤシは、冷静に考えたらパステルである必要性が無い話だし、
完全にFQとは別物の話になってたので、このまま闇に葬りたい所存(w

新作書いてる時間が皆無なので、スレ住人の方がOKでしたら、貼ってくらさい。
いや、ネタは考えてるんだよ。一人で遠出する事になったパステルが、ニセ乗合馬車内で集団痴漢される話とか、
冒険者カードの書き換えでエベリンに来て、目の前にパーティーの皆がいる状態で、人ゴミの中で痴漢される話とか・・・。
って、痴漢話ばっかりかよ!(w
95あぼーん:あぼーん
あぼーん
96名無しさん@ピンキー:03/07/08 21:05 ID:v9l1V6Zt
パステル!俺もう我慢できないよ!!
97名無しさん@ピンキー:03/07/08 22:30 ID:kUmEBB4S
>スレ住人の方がOKでしたら、貼ってくらさい。
反対するスレ住人なんているんだろうか?
98名無しさん@ピンキー:03/07/08 23:51 ID:a5R7SNUR
いません!
99あぼーん:あぼーん
あぼーん
100名無しさん@ピンキー:03/07/09 10:53 ID:CYrxt/5I
100
101あぼーん:あぼーん
あぼーん
102あぼーん:あぼーん
あぼーん
103あぼーん:あぼーん
あぼーん
104名無しさん@ピンキー:03/07/10 22:22 ID:27ItvqRL
sage
105あぼーん:あぼーん
あぼーん
106あぼーん:あぼーん
あぼーん
107名無しさん@ピンキー:03/07/11 01:46 ID:0rcF4F9b
職人さん期待sage
広告ウゼーーー
108あぼーん:あぼーん
あぼーん
109あぼーん:あぼーん
あぼーん
110山崎 渉:03/07/15 11:09 ID:7GpObfWE

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
111名無しさん@ピンキー:03/07/16 23:04 ID:Od8OJ701
>>80
クレイM説禿堂。つーか本気で神の降臨待ち。
112名無しさん@ピンキー:03/07/17 23:18 ID:FBj5siwu
神 は ま だ か
113名無しさん@ピンキー:03/07/18 04:01 ID:BxzXsQYm
誰もいないな…
114名無しさん@ピンキー:03/07/18 10:25 ID:pis5Xmcx
折れ書いていい?
115名無しさん@ピンキー:03/07/18 13:32 ID:thoVvxQA
>>114
是非お願いします
116あぼーん:あぼーん
あぼーん
11783続き:03/07/19 06:32 ID:xOQrj3tL
クレイの唇が口を塞いだ。首を振って逃げても追いかけてくる。
「クレ、んんっ!」
「くそっ。おとなしくしろ!」
頬がヒリヒリする。クレイがわたしの頬を叩いたんだ。
見上げるとクレイと目があった。今まで見たことのない冷たい目。
呆然としてる間に唇を塞がれて、舌が口の中に入って来た。わたしは怖くなって目を瞑る。
「や、んっ、ふうっ……、く、うんっ………」
 口の中を乱暴に舌が動き回ってる。逃げたいけど、無理に動いたらクレイの
舌を噛んでしまいそうで。
「んっ! ひゃぁぁ!」
胸、掴まれてる! ちょっ、嫌だっ!! 痛いよっ! 
 解放された左手で、クレイの手や体をどけようとしても、びくともしない。

こんなの、嘘だよね? 悪い夢だよね?
こんなことクレイがするはず無い。
優しいクレイが、大好きなクレイが
こんな酷いこと、するはず無いよね?

服を脱がそうとする手を何度か払うと、クレイの体が離れた。
諦めたのかな? そう思って、おそるおそる目を開ける。
でも、クレイは、膝立ちでわたしの体を跨いでいて、そして、右手にナイフを握っていた。
「あ、ああ………」
「動くなよ。怪我ですまなくなる」
ゆっくりと襟元から服の内側へ入れた。冷たい、ナイフの感触。
クレイはナイフの刃を上向きにして逆手に持つと、服を下着ごと裂いていく。
胸元がはだけて胸があらわになっても、怖くて、震える体は動ない。
「リボンほどくぞ」
髪を結わえていたリボンを解くと、それで両手を縛ってベットに縛り付ける。


「もう………、やめて………、クレイ………」
118名無しさん@ピンキー:03/07/19 09:54 ID:gXJZVS4M
キターーーーーーーーーーーーーーーー

イラスト付けて見た
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Bass/6678/nicebody.swf
119名無しさん@ピンキー:03/07/19 10:33 ID:EKaKPyFT
>>118
最後に一瞬ドキっとするので、怖い物が見たい人以外は見ない方が良いな。
最後がswfになってるし、直リンなので、イラストなんぞではない事は判ってるだろうが、
一応念のため。
ちなみにどういう物かというと、寝転がった誰かの水着グラビアが横スクロールしていって、
最後に怖い女の人の顔が出るってヤシでした。
120名無しさん@ピンキー:03/07/20 02:40 ID:6M7sFy2j
>>119
あ、ありがと・・・。見るとこだった。

>>118
逝ってよし。
121名無しさん@ピンキー:03/07/20 11:56 ID:rx3p1mEw
おまいらの視点はどうでもいい.sefなのか

>>117
いい、かなりいいよ。(・∀・)ガンガッテ!!
122あぼーん:あぼーん
あぼーん
123名無しさん@ピンキー:03/07/21 01:20 ID:ME+j8iFh
>>117
イイ!神降臨。ハァハァしつつ続きを待ちまつ。
124117続き:03/07/22 19:32 ID:HaaR0OVT
「ひゃっ……」
首筋を舌が舐めてる。下から上へ舐められる度に、ゾクゾクとした感覚が
背筋を駆け上がっていく。

あたし、犯され、ちゃうのかな。
そう、なんだろうな……。
手は縛られちゃったし、体はクレイが覆い被さって思うように動かせなくて、
抵抗できない。大声を上げて、人を呼んだら助かるかもしれない。でも、そう
したらクレイは……。
あたりの景色が歪んだ。涙が溢れて流れ出す。

「ひっ、い、痛! いやぁっ」
乱暴に左の胸を揉んでいた手が乳首を摘んだ。ビクッと体が勝手に跳ねる。
ちらりとクレイがわたしの顔を見て…、乳首を弄り出す。摘まれて、転がす
ように弄られる内に、堅くなっていくのが自分でわかる。

「やっ……、くっ……、う、ふぁっ?」
いやだ、これ、感じてるの? 体が変……。
ガイナにいた頃、友達同士の会話の中で、胸とか弄ると気持ちよくなるって
聞いて、興味本位に弄ってみた事はある。でも、こんな強い感じに襲われた
ことは無かったし、ガイナを離れてからはシタことはなかった。
 クレイの舌が首筋から乳房へ上ってくる。や、やだ、まさか、吸ったりする?
「やぁあ………、んふ……、だ、だめぇ……、」
 乳首が吸い上げられた快感で、体がカアッと火照ってくる。じっとしてられ
なくて、無意識にモジモジと動いてしまう。
125124続き:03/07/22 19:34 ID:HaaR0OVT
クレイの右手がスカートを捲り上げる。
「いやっ! やめて! これ以上し、ひゃあああっ!」
慌てて足を閉じようとしたけれど、クレイの手の方が早くあの部分にたどり
着いて、下着の上からこね回してくる。
「あっ、あっ、くっ………、んぁあっ………」
ううっ、濡れてるんだ……。溢れ出すのが、わかる。
「足、開け」
「えっ! そ、そんなの、いやだ、できない……」
クレイの眉が釣り上がった。そして、腰の後ろからナイフを抜く。
「開けっ!!」「う、うう……」
体が震えて、涙が止まらない。
「早く開け!」
恐る恐る開いた足の間に、クレイは顔を近づけてくる。息が、かかる。
「すごい、濡れてる……」
「はうっ! あ、ふっ…………、い、ひゃう………」
滑った、柔らかいのが、割れ目に差し込まれて、動いて、ピチャピチャ音がして……。
「ああああっ!!!!」
割れ目の先の硬い何かに触れたとたん、快感が体を駆けめぐり背中が反り返る。
そこを弄られる度に、頭の中が白くなって、もう、なんだか、解らない。

「ハハハ、最低だな。好きな相手にこんな事をして。でも、もういいんだ。
これで、しがらみも、悩みも、全部終わりにする」
クレイは服を脱ぎだした。わたしは、ぼんやりとそれを見ている。
「狂った俺に、誰も期待することなんてないからな」
裸になったクレイの股間に、見たこともないモノがそそり立っている。男の人が
興奮すると、あんな風になるって聞いたことがある………、って、えええっ!!
126125続き:03/07/22 19:36 ID:HaaR0OVT
いた太股を押さえつけて、クレイは足の間に体を入り込ませてきた。
「いやああああ!! やめてっ! お願い!」
割れ目に、クレイのモノが当たる。
「いやだいやだいやだいやだあああっ!! だめぇーっ!!!」
ブチブチと何かが裂ける、凄まじい痛みが全身を走る。
「ぐっ………、う………」
あまりの痛みに、息が詰まる。
「おね、がい。抜いて、よ………」
「もう少し、だから、我慢して、えっ?」

クレイのモノがズルリと抜けて姿が消えた。重い物が壁にぶつかる音がして、
部屋が揺れる。
「クレイ。見損なった」
今の、声………。
「ノ、ノル!!」
127126修正:03/07/22 19:38 ID:HaaR0OVT
一行目×
いた太股を押さえつけて、クレイは足の間に体を入り込ませてきた。

二行目○
開いた太股を押さえつけて、クレイは足の間に体を入り込ませてきた。
128126修正-2:03/07/23 12:04 ID:hXmdXCgN
開いた膝を押さえつけて、クレイは足の間に体を入り込ませてきた。
「いやああああ!! やめてっ! お願い!」
割れ目に、クレイのモノが当たる。
「いやだいやだいやだいやだあああっ!! だめぇーっ!!!」
ブチブチと何かが裂ける、凄まじい痛みが全身を走る。
「ぐっ………、う………」
あまりの痛みに、息が詰まる。
「痛い、よ。おね、がい。抜いて………」
「もう少し、だから、我慢して、えっ?」

クレイのモノがズルリと抜けて、視界から姿が消えた。重い物が壁にぶつかる
音がして、部屋が揺れる。
「クレイ。見損なった」
今の、声………。
「ノ、ノル!!」
129名無しさん@ピンキー:03/07/23 13:22 ID:nj5kKHZ9
すげえ・・・!!めちゃくちゃ気になる、続きお願いします!
130名無しさん@ピンキー:03/07/23 23:44 ID:zH8WHePq
も・・・もしかして今度はノルたんが・・・?(;´д`) ハアハア…
ノルたんはでかそうだぞ・・・パステル、大丈夫か!?
131名無しさん@ピンキー:03/07/24 01:03 ID:wfVjdU/r
なつかしい!!
小学生の頃クラスのみんなで回し読みしましたw

ここってトラップ需要少ない?
一番書きやすそうなキャラなのに・・・(w
132名無しさん@ピンキー:03/07/24 08:54 ID:cea3wBwz
>>130
それはないように思われる。
とにかく>>128がんがれ!!

>>131
いや、禿しくキボン!
133名無しさん@ピンキー:03/07/24 11:46 ID:8OPwavFj
みんな!ギアを忘れるな!!
134あぼーん:あぼーん
あぼーん
135あぼーん:あぼーん
あぼーん
136名無しさん@ピンキー:03/07/24 17:56 ID:vJjLSjR5
137名無しさん@ピンキー:03/07/26 18:35 ID:u7tq1crm
age
138あぼーん:あぼーん
あぼーん
139SS保管庫の素人”管理”人:03/07/26 22:18 ID:UJREzkeU
http://www5f.biglobe.ne.jp/~database/library.html
当方の保管庫にこのスレのSSを収蔵しました。
自分の作品を転載して欲しくない方は仰って下さい。削除します。
正式に作品名、作者名を付けたいという場合も仰って下さい。

140名無しさん@ピンキー:03/07/29 02:51 ID:UWRX3liK
hosyu
141名無しさん@ピンキー:03/07/30 07:53 ID:USB+jS5K
続きはまだかな?
142あぼーん:あぼーん
あぼーん
143あぼーん:あぼーん
あぼーん
144名無しさん@ピンキー:03/07/30 14:24 ID:rBHt9WQA
hosyu
145ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/08/02 05:02 ID:e3EGd7L5
     ∧_∧  ∧_∧
ピュ.ー (  ・3・) (  ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
  = ◎――――――◎                      山崎渉&ぼるじょあ
146名無しさん@ピンキー:03/08/04 12:55 ID:+juB9nbl
続き!続き!!
147SS保管庫の素人”管理”人:03/08/04 18:40 ID:lVL4jbjU
http://adult.csx.jp/~database/index.html
保管庫を引っ越ししました。
エロ禁止・容量制限有りのbiglobeから、容量無制限のアダルト専用のサイトへ移動です。
これで削除に怯えることもなくなりました。
148128続き:03/08/04 22:52 ID:GyAByoAQ
カーテン越しに、外の明かりが淡く部屋の中を照らしている。
朝方まで寝付けずにいたけれど、いつの間にか眠っていたみたい。何時位なん
だろう?

起きあがって振り向き、絵の掛かった壁を見る。その壁の向こうはクレイと
ノルの部屋。
 ノルは、この部屋にわたしを運んだ後、何度も隣と往復して様子を見に来て
くれた。今は、隣の部屋にいてクレイの様子を見ているはず。静かで、何も
聞こえてこない。
「夢なら、良いのにね……」
 赤くなった手首の縛られた跡を見る。
 あの時のノル……、いつも穏和なノルが、あんなふうに怒るなんて信じられ
なかった。
149129続き:03/08/04 22:53 ID:GyAByoAQ
 音のした方へ首を巡らす見ると、壁に叩きつけられ、蹲って咳き込むクレイと
ノルの後ろ姿が見えた。
「パステルが、クレイのことを、どれだけ心配していたか解ってるのか?」
「……………、しらない、よ。本当は、蔑んでいただけじゃないのか?」
「バカ野郎!」
ノルが拳を振り上げる
「やめてっ! クレイ! ノル! もうやめて……。こんなの見たくない!
聞きたくないよっ!」

 あの後、騒ぎに気が付いて、店員さんやってきたけれど。ケンカだって説明した。
説明している間、わたしは隠れていた。さすがに強姦されかかったわたしがいると、
誤魔化しきれないって考えて……。何とか納得してもらったけど、シーツに付いた
血を訝しげにみてたけれど…。

溢れた出した涙を手で拭う。
どうして、こんなふうになってしまったんだろう…。
クレイは本当に狂って……。
首を振ってその考えを追い払う。
どうにかして、クレイを立ち直らせなきゃ。
150128、129作者:03/08/04 22:55 ID:GyAByoAQ
すいません、暫くエロは無いかも…。
151名無しさん@ピンキー:03/08/05 02:37 ID:lS8HTlwM
キタ━━━ヽ( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚≡゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )ノ━━━ !!!!!!!!!!!
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
キテタ━━━━(*゚∀゚)(*゚∀)(* ゚)(  )(゚* )(∀゚*)(゚∀゚*)━━━━!!!!!!

いいでつ!!続きが気になる・・・。
152あぼーん:あぼーん
あぼーん
153あぼーん:あぼーん
あぼーん
154あぼーん:あぼーん
あぼーん
155名無しさん@ピンキー:03/08/07 11:22 ID:ela9RAoV
156名無しさん@ピンキー:03/08/07 13:23 ID:qGpqIspz
続き! 続き!! (;´Д`)ハァハァハァハァ
157あぼーん:あぼーん
あぼーん
158名無しさん@ピンキー:03/08/08 01:02 ID:M64+v6E8
期待ち
159あぼーん:あぼーん
あぼーん
160あぼーん:あぼーん
あぼーん
161名無しさん@ピンキー:03/08/08 10:58 ID:AyrIOmTz
本スレにもあるが、
ttp://up.isp.2ch.net/up/3dba2eb57a5e.jpg
はここではれっきとしたハァハァ対象
162あぼーん:あぼーん
あぼーん
163あぼーん:あぼーん
あぼーん
164名無しさん@ピンキー:03/08/08 17:11 ID:tc/ypxeW
俺男だけどクレイに激しく萌え
だから>>161も確かにエロいんだが息子は何の反応も示さん
ヤベエナー

職人さんガンガッテーー(・∀・)
165あぼーん:あぼーん
あぼーん
166149修正:03/08/08 19:48 ID:HUsxFAX5
 音のした方へ首を巡らす見ると、壁に叩きつけられ、蹲って咳き込むクレイと
ノルの後ろ姿が見えた。
「パステルが、クレイのことを、どれだけ心配していたか分ってるのか?」
「……………、しらない、よ。本当は、蔑んでいただけじゃないのか?」
「バカ野郎!」
ノルが拳を振り上げる
「やめてっ! クレイ! ノル! もうやめて……。こんなの見たくない!
聞きたくないよっ!」

 あの後、騒ぎに気が付いて現れたた店員には、ケンカだって説明した。
説明している間、わたしは隠れていた。さすがに強姦されたわたしがいると、
誤魔化しきれないって考えて……。シーツに付いた血を訝しげにみていた
けれど、何とか納得してもらえた。

溢れた出した涙を手で拭う。
どうして、こんなふうになってしまったんだろう…。
クレイは本当に狂って……。
首を振ってその考えを追い払う。
どうにかして、クレイを立ち直らせなきゃ。
167166続き:03/08/08 19:51 ID:HUsxFAX5
「パステル、起きてる?」
ノックの音がして、ノルの声が聞こえた。
「うん。入っていいよ」
戸を開けて入ってきたノルは、ちょっと疲れてるように見えた。
「クレイの様子は?」
「ベットの中に籠もったままだ」「そう………」
「パステルは、大丈夫?」「うん、なんとかね」
そう言って笑ってみせると、ノルはポンポンとやさしくわたしの頭を叩く。
「無理、するな」「あ………」
無理な笑顔だったのが分かったみたい。

ノルはカーテンと窓を開けて、椅子をベットの側に置いて座った。
「お昼、とっておいてもらったけれど、今から食べるか?」
「そんな時間なの?」「うん。もう3時」
「そ、そんなに寝てたんだ…。でも、もういよ。おなか空いてないし」
「そうか。じゃあ、これからどうする」
「今日はこのままでいいと思う。あした…、冒グルの事務所に連れてく」
「わかった」
「…………。なんだか悔しいね」
「どうして」
「ねえ、ノル。わたし、クレイのために何も出来なかったの? クレイは『本当は、
蔑んでいただけじゃないのか?』て言ったけど、わたしも、そんなふうに見えて
いたのかな。 誰も蔑んでいないよ。みんな、クレイのことを心配してるのにっ。
クレイなら分かるはずなのにっ! どうして!?」
 思わず、ノルに向かって叫んでしまった。うう、何やってるんだろう、わたし…。
 ノルは真剣な表情で、わたしを見つめてる。恥ずかしくなって俯いた。
168167続き:03/08/08 19:52 ID:HUsxFAX5
「パステル、クレイの事、どう思ってる? 信用していない?」
「えっ、わたし、わたしは……」
昨日のクレイの冷たい目が思い浮かんだ
「信用してる、信じてる。だって、クレイは優しいし、周りに気遣いが出来る人、
私達の気持ちは分かるはずだもの。他人を傷つけて、平気でいられる……」
 肌に触れたナイフの冷たい感触がよみがえる。思わず左腕をグッと掴んだ。
 いつものクレイなら、こんな時は側にいて、話を聞いてくれて、慰めて、
励ましてくれて……。クレイの顔が見られて、声を聞ければ、落ち着いてい
られるのに。
 会いたい。もう一度、話がしたい。
「パステル」
泣き出した私の手を、ノルがそっと握る。
私はうんうんと頷いて、涙を拭った。

 クレイの本当の思いが知りたい。クレイの言葉を思い出す。
『狂った俺に、誰も期待することなんてないからな』
『ハハハ、最低だな。好きな相手にこんな事をして。でも、もういいんだ。
これで、しがらみも、悩みも、全部終わりにする』
クレイ、もしかして、本気なの?
強姦した相手にこんなふうに思うなんて変かもしれない。でも……。
「ノル、あたし、クレイともう一度話してみたい。二人だけで」
「パステル、危険だよ」
わたしは、首を振って答える。
「大丈夫、クレイは二度としない。あんなこと」
「けれど……」
「お願い! やらせて」
二人で見つめ合ったまま、暫く黙っていた。
「わかった。でも、ずっと隣にいるから、何あったら呼んで」
「ありがとう、ノル」
169あぼーん:あぼーん
あぼーん
170あぼーん:あぼーん
あぼーん
171168作者:03/08/09 17:14 ID:ukkUIy/n
一週間ほど、ネットに繋げられなくなります。
続きは暫く先になります。
申し訳ないです…。
172あぼーん:あぼーん
あぼーん
173あぼーん:あぼーん
あぼーん
174あぼーん:あぼーん
あぼーん
175あぼーん:あぼーん
あぼーん
176名無しさん@ピンキー:03/08/10 08:30 ID:9cnYZyRJ
ん、果報
177名無しさん@ピンキー:03/08/10 09:23 ID:tdoT5yIv
 
178あぼーん:あぼーん
あぼーん
179あぼーん:あぼーん
あぼーん
180名無しさん@ピンキー:03/08/10 21:56 ID:tdoT5yIv
181あぼーん:あぼーん
あぼーん
182あぼーん:あぼーん
あぼーん
183あぼーん:あぼーん
あぼーん
184名無しさん@ピンキー:03/08/11 17:03 ID:x2Tj2XKG
185あぼーん:あぼーん
あぼーん
186あぼーん:あぼーん
あぼーん
187あぼーん:あぼーん
あぼーん
188名無しさん@ピンキー:03/08/12 05:58 ID:c2MjhCHG
広告氏ね tdoT5yIvとx2Tj2XKGは去ね
189あぼーん:あぼーん
あぼーん
190名無しさん@ピンキー:03/08/12 12:15 ID:37IwMlpT
191名無しさん@ピンキー:03/08/12 19:10 ID:CMJ5GT0V
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193名無しさん@ピンキー:03/08/12 19:49 ID:37IwMlpT
194あぼーん:あぼーん
あぼーん
195名無しさん@ピンキー:03/08/13 11:21 ID:7Kbph6Yh
196名無しさん@ピンキー:03/08/13 18:11 ID:jg35hGgk
期待sage
197名無しさん@ピンキー:03/08/14 12:28 ID:plFf/GGM
198名無しさん@ピンキー:03/08/14 15:41 ID:Fk9fmCS7
199名無しさん@ピンキー:03/08/15 09:49 ID:+OSMOstk
20087445:03/08/15 09:53 ID:+kjZRdeM

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201名無しさん@ピンキー:03/08/15 10:23 ID:+OSMOstk
202山崎 渉:03/08/15 16:15 ID:4fmQeeOf
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
203名無しさん@ピンキー:03/08/15 18:52 ID:+OSMOstk
204あぼーん:あぼーん
あぼーん
205名無しさん@ピンキー:03/08/18 02:09 ID:M+BG3azB
168の続きをひたすらに待ちつつさげ
206あぼーん:あぼーん
あぼーん
207あぼーん:あぼーん
あぼーん
208あぼーん:あぼーん
あぼーん
209あぼーん:あぼーん
あぼーん
210あぼーん:あぼーん
あぼーん
211名無しさん@ピンキー:03/08/20 00:53 ID:fB3KFbkK
続き期待sage
212名無しさん@ピンキー:03/08/21 01:16 ID:ztu5r19D
忘れないでほしい 右手の漢たちが待っている
213168続き:03/08/21 05:30 ID:Kcd8yS6P
「クレイ、入るよ」
ドアを叩いてから呼びかける。返事は無かったけれど中へ入った。
「晩ご飯もってきたから、一緒に食べよ」
部屋の中は真っ暗。ドアから入った光がテーブルの食事を照らしてる。
「朝と、お昼の分ね。食べ立たなかったんだ」
端の方に寄せて、二人分の夕飯をおく。
「起きて、クレイ。一緒に食べようよ」
 カーテンを閉めて灯りをつける。クレイは、シーツを頭まで被って、ベットの
上で丸くなっていた。
「食べないと、体に良くないよ? クレイ、起きて」
黙ったまま、返事がない。
「あっ、そうだ。夕飯に唐揚げがあるんだ。好物でしょ?」
「……………」
クレイは、身じろぎもしないで黙ったまま。
「ふう………」
溜息をついて、ベットの横に椅子を置いて座る。
「クレイ、その、ね。聞きたいことがあるの」
「……………」
「『蔑んでいただけじゃないのか?』って、本気でい言ったの?」
「……ああ」
一瞬、その答えに息が詰まった。けれど、でも…
「嘘、言わないで。クレイが私達の気持ち、わからないはず無いもの」
「パステル……」「な、何?」
クレイはシーツの中から向こうを向いたまま顔を出して、かすれた声で話し出した。
214213続き:03/08/21 05:32 ID:Kcd8yS6P
「よく、平気で話が出来るな」
「えっ? どういう……」
「自分を犯した相手と、よく話が出来るなっ」
怒ったようなクレイの声に驚いて、私は身をすくませた。
「………平気じゃ、ないよ。でも、今のクレイ、ほうっておけないよ」
「怖いんだろう? だったら無理するな。パーティから放り出せばいい。俺の
代わりなんて、すぐに見つかるだろうしな。リーダーもパステルの方がよっぽど
向いているよ」
「クレイ」
「まあ、こんな奴がいても迷惑なだけだろうし、君たちが何もしなくても、
パーティから抜けるけどね。もういいよ、面倒見なくても。部屋を出て、
ほうっておいてくれ」
「どうして、そんな…、そんな、パーティ抜けるなんて、嘘言わないでよ」
鼻の奥がツーンとして、涙が溢れそうになる。
「嘘? 嘘じゃないさ。今のだって本当にそう思って話してる」
「違うよ、現実から逃げる為に嘘までついて言い訳してるだけじゃない」
泣き出すのを我慢して話すから、早口になる。
「そんな意気地なしだった? 心配してくれる仲間を『蔑んでいる』なんて言
う人だった? 違うよね?」
「……………」
「わたしの、わたしが好きなクレイは、そんなこと考えるはず無いもの」

言ってから、気がついて、慌てて訂正しようとしたけれど、振り返ったクレイと
目があって何も言えなくなってしまった。
215名無しさん@ピンキー:03/08/22 03:20 ID:FBGN3MJN
きたきたキター!
腐ったクレイは萌えるなぁ 引き続き期待
216名無しさん@ピンキー:03/08/25 09:54 ID:6cvcPLJj
烈しく萌え。
まぁ故郷に帰って許嫁に癒されるというのも烈しく萌え期待しているのだが。
217名無しさん@ピンキー:03/08/27 01:20 ID:A7LgZdms
心理描写に萌えますた。エロ抜きでも期待してまつ。
218名無しさん@ピンキー:03/08/29 20:37 ID:gzx8cMJT
保守保守期待 保守期待
219名無しさん@ピンキー:03/08/31 00:29 ID:GacC3eGC
保守
220214続き:03/09/01 07:41 ID:T5rTf0AC
「えっと、あ、あああ、あの、その…」
 私はクレイの視線に耐えられなくて俯いた。スカートの裾を弄ってみたり、
髪の毛を弄ってみたりして、混乱した気持を紛らわそうとしても、はなかなか
気分は落ち着かない。
「何、言ってるんだろうね、こんな時に」
ゆっくり息を吸って、はき出して、深呼吸を繰り返して、やっと言葉をはき出せた。
「でも、クレイを好きなのは、本当、だから」

「マリーナが、お見舞いに来てないけれど、何故だか分かる?」
俯いたままクレイに聞いてみたけれど、返事は帰ってこない。
「マリーナね、凄くクレイのことを心配してた。今度の事を話したら、『何で
今まで黙ってたの!?』って怒られちゃったし。ここに泊まれるのもマリーナの
お陰なんだ。でも、なんだかそれが疎ましく思えて、見舞いに来たマリーナを、
今のクレイを見せたくないからって追い返してしまって。それ以来、一度も来てない。
でも、よく考えたら、それって嫉妬だったんだよね。クレイに近づけたくない
だけだったんだって」
ふう、と溜息をついて、膝の上の両手をギュッと握りしめる。
「クレイに好きって言われて、自分の気持ちはどうなんだろうって考えたら……、
クレイを好きなんだって気がついたんだよ? その言葉も嘘だったの?」

返ってくる答えが怖くて、目を瞑って体を強張らせる。手に爪が食い込んで痛い。
でも、クレイは答えないままだった。
目を開けて恐る恐る顔を上げると、クレイは頭を抱えて震えていた。
「ク、クレイ! 大丈夫?」
「お、俺……、パステル、………何を、………」
シーツに、ポツポツと涙のシミが出来ていく。
「パステル………、ごめん………、俺、……ごめん」
嗚咽で言葉が繋がらない。
「うっ……、ううっ……、くっ……」
声を絞り出して泣くクレイを見てるのが辛くて、胸が痛くて、クレイを抱き締めた。
そうしないとクレイが壊れてしまいそうで怖かった。
221215続き:03/09/01 07:44 ID:T5rTf0AC
嗚咽が消えて、震えが止まっても、しばらくの間クレイの体を抱き締めていた。
「……放してくれないか」「あ、うん……」
私が手を放すと、力無く俯いた。
「ごめん。パステル」
「うん、私は大丈夫だから、謝らないで」
「でも俺は……」
「いいから! もう、いいから……」
「…………パステルは、強くなったね」「えっ?」
「以前のパステルなら、こうして側にいるなんて無理だったはずだよ。比べて
俺は、逃げ回って周りを傷つけて……。パステルの想いに答えられるような男
じゃない」
「…………」
クレイは顔を上げて、私をじっと見つめる。
「ノルとシルバーリーブに帰るんだ。俺の側にいても、パステルを辛く」
「いやっ! 絶対に帰らないから! クレイが、クレイが元に戻るまで、ずっと
離れないんだから!!」
クレイの腕を掴んで、必死に叫ぶ。涙が、頬を伝って落ちた。
「ほうっておいて欲しいなら、なんで、『狂った』『全部終わりにする』なんて
言ったの? 止めて欲しかったからじゃないの!?」
「…………」
クレイの顔が苦しげに歪む。
「クレイを、クレイを嫌いにさせないで! お願い……」
クレイは、顔を背けた。どうして…、なんでなの?
前が見えなくなるほど涙が溢れた時、頬に何かが触れた。
クレイが、頬を伝う涙を拭いてくれた。
「クレ、イ……」
「そうだな。止めてもらうのを待っていたんだって思う。情けないよ」
話してる間も、何度も涙を拭う。
「もう逃げたりしない。だから、泣かないで」
「うん、ありが、とう」
でも、涙は、なかなか止まらない。何度もクレイの手が涙を拭ってくれた。
222221続き:03/09/01 07:45 ID:T5rTf0AC
ふと、その手が止まる。真剣な表情のクレイが、私を見つめていた。
無意識に目を閉じると、そっと肩に手が置かれる。
そして……、私の唇に柔らかいものが触れた。
223222作者:03/09/01 07:50 ID:T5rTf0AC
おそらく、きっと、たぶん、次回
エロ有りです
224名無しさん@ピンキー:03/09/02 06:53 ID:m27DDswK
うーん そつがない…
切り詰めた文量でこの萌え いいねぇ
225名無しさん@ピンキー:03/09/02 16:42 ID:BsQzhbuc
グッジョブ!期待して待ってます!
226名無しさん@ピンキー:03/09/05 01:07 ID:VtMdJXnj
デュアンサークは?
227あぼーん:あぼーん
あぼーん
228名無しさん@ピンキー:03/09/05 02:05 ID:U5BUX37e
女装デュアンたんハァハァ…ってか?
229名無しさん@ピンキー:03/09/05 23:25 ID:wH3SKc3C
いや、アニエスたんハァハァだろう。
さもなくば、デミリオン様かね…気の強そうな女性ばっかりじゃないか…
つわものは、双子の魔女でハァハァするのも、乙だの。
230222修正:03/09/09 04:38 ID:jA05l+3r
ふと、その手が止まる。真剣な表情のクレイが、私を見つめていた。
そっと肩に手が置かれる。
私が無意識に目を閉じると……、私の唇に柔らかいものが触れた。
231230続き:03/09/09 04:39 ID:jA05l+3r
 唇に触れられた瞬間、急に昨日のことを思い出し、無意識に突き飛ばして
しまった。全身の震え出して、歯がカチカチと鳴る。クレイが何か言った
けれど、理解出来ない。
 歯を食いしばって、全身に力を入れて震えを無理矢理止める。大きく2回
呼吸して、椅子から勢いよく立ち上がると、クレイに背を向けた。
「やっぱり、昨日の」
「暗くなってきたから、灯りつけるね」
「あ、ああ……」
 力のない返事。このままだと、またクレイが落ち込んでしまいそう。昨日の
ことは気にしてないって、態度でしめさなきゃ。でもどうやって? 
も、もう一度キスしてもらう? だっ、だめ、そ、そんなコトしたら、また
クレイを拒絶してしまう。もうちょっと、おとなし目の方法考えないと。
肩に手を置かれても何ともなかったのだから、だ、抱きしめてもらって……。
「パステル?」
 ぼーっと立ったままだったわたしは、クレイの声にはっとして、慌ててランプに
灯をともすと、クレイの側に腰掛けた。
「こっちに座って、クレイ」
私の右側を指すと、一人分間をあけて座る。
「ち、ちがう。もっと近づいて、その、私を抱きしめて欲しい……」
顔が熱くなってくる。今鏡を見たらまっ赤じゃないかな。
「えっ? あ、うん……」
クレイがゆっくり近づいてくる。体が触れるほど近くに座ると、そっと肩に腕を
回して抱き締めた。
 体が震えだした。クレイが驚いて体を離そうとする。
「放さないで!」
わたしはクレイの背中に腕を回し、キスの時みたいに突き飛ばさないよう手をしっかり
組み合わせた。
232231続き:03/09/09 04:42 ID:jA05l+3r
暫くして、震えは収まった。
「大丈夫。平気だから」
クレイの胸に顔を埋めたまま話す。震えが収まると、今度は恥ずかしさが増して
きて、顔が上げられない。胸がドキドキして、収まらない。
そっと、クレイの手が頭をなでる。なんだか、それが心地いい。
「パステル。顔を上げて、くれないか」
ちょっと緊張したクレイの声。見上げると、同じように緊張した顔。
「キスして、いいかな」
「えっ、ええっと、そ、そんな、急に……」
ど、どうしよう。面と向かって、答えにくいよ。
「言わずにしたら、さっきみたいに震えるんじゃないか、そう思ったんだけど」
クレイは、恥ずかしそうに顔を背けた。
なんだか、そんなクレイの気遣いが嬉しくて、おかしくて。思わず笑ってしまった。
「パ、パステル?」
「あ、うん、ごめん。………その、いいよ、キス」
目を瞑ると前と同じように、肩に手が置かれた。
「ん……」
唇同士が触れ合うと、ビクッと一瞬体が震えたけれど、それ以上は何もなくて。
数回触れ合わせると、舌が唇に触れて辿っていく。
ええっと、これって……。舌を、いれたいんだよね?
少し口を開けるとおずおずとクレイの舌が入ってきた。
昨日みたいに乱暴に動き回るんじゃなくて、どこか、ためらいがちで。
口の中を舐め回して、舌を絡めてくる。どうしていいか分からなかったけれど、
クレイの舌を追いかけて絡ませあった。
昨日は気持ち悪いだけで何も感じなかったのに、くすぐったいような、不思議な
感じがして………、気持ちいい。体が火照ってきて、頭がボーっとしてる。
「ん……、ふ……」
クレイは私の体に腕を回して抱きしめると、少し体重をかけてきた。
わたしはクレイに促されるように、キスしたままゆっくりベットに倒れ込んだ。
233名無しさん@ピンキー:03/09/09 17:46 ID:zKtdyFuX
神キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
ドキドキ!続きが激しくキニナル!!
234名無しさん@ピンキー:03/09/09 20:10 ID:zKtdyFuX
ageとこうっと
(*´Д`)アハーン
235名無し@ピンキー:03/09/09 23:23 ID:ElUX+Qgc
フォーチュンの新刊みんな買った〜?
236名無しさん@ピンキー:03/09/10 03:47 ID:LXEM9NAQ
でたの?
っていうよりいつから買ってないんだろう。。。
237名無しさん@ピンキー:03/09/10 09:11 ID:hdAWOl1C
エピソードファイナル(でしたっけ?)、今日発売だった気が…。
前巻の思わせぶりな終わり方の続きが気になる…

そして、232の続きも気になる…
238名無しさん@ピンキー:03/09/10 15:56 ID:wdVF89vH
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239名無しさん@ピンキー:03/09/12 07:37 ID:qyA3+vVq
トラ×パス小説なら、昔書いたのを(非エロ)手直し(エロ有)すれば・・・
でも上にこんなうまい小説があると、アップするの気がひける(^^;;
240921:03/09/12 10:55 ID:AnejMYGI
ライノベからきますた。
ギアパスはいかがでしょう。
241あぼーん:あぼーん
あぼーん
242921:03/09/12 10:57 ID:AnejMYGI
「ギア…ありがとう」

天使のペンダントがキラキラ輝いてる。
海は凪いで柔らかな音を響かせている。
あぁ、涙腺弱いなぁ…
パステル。彼が呼ぶ。その声が今までで一番わたしの心臓を掻き乱す。
彼はゆっくりとわたしに顔を寄せて…
ええええ!!!
頭の中、まっしろ。
気付いてみると彼はわたしのまぶたを吸っていた。
「ギ…ギア」
何も言わずわたしの涙を舐めとっていく。
彼の唇が鼻梁、頬をつたっていくのを
わたしの全身の神経が追いかけて震えているみたいだった。
ゆっくりとそれが喉に降りていく…
そのとき、今までわたしの肩を掴んでいた彼の手も降りていった。
ゆっくりと、ウエスト…そして脚へ。
「!」
びっくりして顔を上げると、ばちっとギアと眼が合ってしまう。
「…ギ」
ア。
言い終わらないうちに唇がかぶさってきた。

243921A:03/09/12 10:58 ID:AnejMYGI
足に力が入らない。
感じたことがない感覚がからだの中心を支配している。
彼に唇が嬲られているのが、スローモーションのように
精密に理解できる。下唇を噛まれ、優しく舐められ、舌を吸われて…

抵抗するべきなのかわからない。
自分の気持ちなんてわからない。
嫌じゃないことしかわからない。

脚を撫で擦っていた右手が服の中に忍び込んできても、
どうしていいのかわたしにはわからなかった。
「…濡れてる」
ギアの声が遠くから響いているみたいに聞こえる。
濡れてる・・・?
とっさには理解できなかった。だってこんなこと初めてで…

小さく鳴る金属音。それがギアのベルトの音だと気付くのに数秒かかった。
服の上から刺激されていて、わたしはそれどころじゃなかったんだ。
ギアの背中にかじりついて必死に足に力を込めた。
彼の指がくるくると動くたびに、へたりこんでしまいそうになる…
ふいにその動きが止んだ。
「はぁ…っ」
えっ?
自分の出した声に驚いてしまった。
こんな声を出してしまうなんて…
244921B:03/09/12 11:03 ID:AnejMYGI
彼の指が下着を剥ぎ取っていく。
怖くて下が見られない。
ついに腰が抜けてしまったわたしの身体を支えて座らせて、
でもそれでもわたしは怖くて眼を閉じて彼に抱きついていた。
なにかがわたしにあてがわれて、侵入してくる…!!!
「んん…っ」
「力を抜いて」

ギアも息を切らしてる。
変なことに気づくなぁ。頭のどこかが冷静になってる感じ。

ゆっくりと彼が入ってくる。
245921C:03/09/12 11:13 ID:AnejMYGI
身体を震わせたわたしに、ギアは優しく「大丈夫…?」
囁いてくれた。
大丈夫。視線を返すと、何度目かのくちづけを彼はくれた。
交わすたびに甘い疼きが下腹部を襲う。
「うっ…」
そのたびに彼が呻いた。繋がっているんだ。わたしたち…
小鳥のようなキスをたくさん降らせたかと思うと、彼は身体を動かし始めた。
246921C:03/09/12 11:29 ID:AnejMYGI
「んぁっ!あぁあっ…あむっ」
一番奥に達する感覚で、思わず声をあげてしまったわたしの唇を
彼は乱暴に塞いだ。
「静かに…」
そんなこといったって。
舌を絡ませて声を出てしまいそうになるのを凌ぐ。
「!」
左手が服の中をまさぐって、バストを弄んだ。
下腹部がまた疼く。
「あ…あぁっ!駄目だ、いく!!」
「ああああっ!」
彼の動きがいきなり早くなり、何かが身体の中に放出されたのがわかった。
247名無しさん@ピンキー:03/09/12 12:30 ID:qC2zh/zG
取り敢えず機種依存やめたら?
248名無しさん@ピンキー:03/09/12 14:27 ID:AQV7ah8a
いつの間に神キテル━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!
混乱しっぱなしで持ってかれちゃうパステルイイ!!
そもそもギアパス自体が/lァ/lァな漏れには勿体無い程ご馳走であります!!
続き激しく松
249トラパスです・1:03/09/12 23:15 ID:qyA3+vVq
といっても、まだ出だしだけ。
なるたけ原文に近くなるよう工夫したつもりですが・・・
過去スレの小説があまりにも見事なので自信喪失中。
反応見てから続きあげます。

「あー、いいお天気!」
 窓を開け放った後、わたしは真っ青な空に向かって叫んだ。
 ここのところ、ずーっと天気が悪かったからね。こんなに気持ちよく晴れたのは、本当に久しぶりなんだ。
 ……といっても、わたしは締め切りが迫った原稿を抱えてて、外に出る余裕も無いんだけどね。
 今だって、窓を開けて一声叫んで、その直後また原稿にかじりついてるくらいだし。
 でも、今日は久しぶりに集中できそう。
 何しろ、天気が悪いと外に遊びに行けないから、ルーミィが不機嫌で。ずーっと機嫌が悪かったから、相手してあげないと可哀想だし、シロちゃんと二人(?)で随分苦労したんだ。
 もちろん、その間原稿はおあずけ。ルーミィと遊ぶのは楽しいけど、締め切りまで後何日、って考えるとそうも言ってられない。
 でも、今日はやっといいお天気になったから。原稿があるわたしを気遣って、クレイがルーミィを散歩に連れていってくれた。もちろん、シロちゃんも一緒。こういう気配りができるのって、さっすがクレイだよね。
 後、キットンも「やっと晴れたから薬草収集に行ってきます」とのことで朝からお出かけ。ノルは宿のご主人に頼まれて、薪を調達しにいった。雨のせいで、皆やりたいこと、やらなきゃならないことがいっぱいあるみたい。
 で、わたしにとっては、それが原稿というわけ。宿のおかみせんが入れてくれたホットミルク片手に、朝からうんうんうなってるんだけど。
 うーん。静かで集中できるはずなのに、どうにも筆が進まない……これって、やっぱりわたしが「遊びに行きたい!」って思ってるからなんだろうなあ。外に出ないともったいない、それくらい気持良さそうな空なんだ。
 うう、だめだめ。我慢我慢。うちの財政状態考えたら、こうしてクエストの無いときに地道に稼いでおかないと、後で困ることになるのは目に見えてるんだから! それもこれも、すぐに散財しようとするトラブルメーカーの誰かさんのせいで……
 こんなことをもんもんと考えてたせいで、わたしはちっとも気づかなかった。
 いつのまにか、部屋の中に誰かが入ってきたことを。
250トラパスです・2:03/09/13 00:12 ID:7sjuzyUA
と言いながら続きアップ。あんな序盤の序盤だけではただのスレ汚しなので

「おめえ、せっかくの天気のいい休みなのに、こんなとこで何してるんだ?」
「キャア!!」
 突然声をかけられて、わたしは思わず叫んでいた。
 うっ、そういえば、朝から静かだからてっきりいないものだと思ってたけど。外出するのも見てなかったなあ……
 振り向けば、やや乱れた赤毛髪をかきあげている、見慣れた盗賊の姿。
「何、また原稿? おめえも寂しいやつだなあ」
「と、トラップ! そういうあなたこそ、出かけてたんじゃなかったの!?」
 わたしが思わず聞き返すと、トラップは不機嫌そうに顔をしかめた。
「んなこと言ったって、一文無しじゃ出かけてもつまんねえし。だから昼寝してたんだよ。朝から」
 それって昼寝じゃないと思う……
「もしかして、今までずっと寝てたの?」
「そーだよ。だけど、さすがに飽きたから。クレイあたりに金借りようかなーと思ったんだけど、気がついたらあいついねーんだし。っつーわけでパステル、金貸して。それを何倍にも増やしてきてやるからさあ」
「バカモノ!!」
 思わず原稿丸めてトラップの頭をはたき倒していた。
 もー信じられない!! わたしが何のために一生懸命原稿書いてると思ってるのよ!!
251トラパスです・3:03/09/13 00:13 ID:7sjuzyUA
「だめに決まってるでしょ! もー出てってよ。わたし、早くこの原稿仕上げたいんだからー!!」
「ちぇっ、つめてーなあ。んじゃさ、せめて、この部屋のベッド貸してくれよ。静かにしてるから」
 ……はあ??
「自分の部屋で寝ればいいじゃない」
「日がもろにベッドにあたって暑いんだよ、あの部屋。だから目が覚めたの。俺、昨日の夜遅かったからさ。もーちょっと寝たいんだよね」
 ちなみに、トラップが今一文無しなのは、昨日の夜ギャンブルにはまってたせいだったりするんだけど。
 まあそれはともかくとして。うーん、どうしよう……
 確かに、トラップたちの部屋に比べれば、この部屋のベッドは陰になる場所に置いてあるから、寝やすいと思うけど……
 ま、いっか。静かに寝てるだけなら、邪魔にはならないでしょう。
「そういうことならいいけど。そのかわり、静かにしててよね」
「バーカ、寝てるときにうるさくなんてできるかよ。んじゃ、そういうことで、おやすみ!」
 現金なもので、トラップはベッドに寝転がると、即座に寝息を立て始めた。
252トラパスです・4:03/09/13 00:15 ID:7sjuzyUA
 ……
 ……
 ……
 約束通り、トラップはとても静かだった。もともと、いびきも歯軋りもしない人だからね。当たり前なんだけど。
 ……
 くーっ、集中できない!
 何で、なんで!? こんなに静かなのに、誰も邪魔なんかしてないのに、なんでこんなに集中できないの!?
 やっぱり、遊びにいきたいからかなあ。でも、今までは、ちゃんと原稿終わらせたら思いっきり遊ぶぞっ! って思うことで、集中することができたはずなのに。なんで、今日はできないんだろう?
 はう〜〜っ、とわたしは一人悩み続ける。そして、どれくらいの時間が過ぎたんだろうか。
「……おめえ、よく平気でいられるな」
「えっ!?」
 寝てるとばかり思ったトラップが、突然話しかけてきて、わたしはびくっと振り向いた。
 トラップは相変わらず寝転がっていたけど、その目はまっすぐわたしを見つめている。
 うっ、もしかして、さっきからずっと見られてた? 集中できなかったのこのせい?
「何よ。起きてるなら起きてるって言ってよ、もう。平気なんかじゃないよ。全然原稿進まないし。このままだと締め切りにまにあわな」
「そういう意味で言ってんじゃねえよ」
 わたしの言葉を遮って、トラップは音も無く立ち上がった。
 まあね、この人は盗賊だから。静かなのが当たり前なんだけど。
 何だか、いつもと様子が違う気がして、わたしは思わず身構えてしまった。
「違うって……じゃあ、どういう意味?」
「……おまえさあ、ちょっとは危機感とか感じないわけ? 他に誰もいない部屋に、男と二人っきりなんだぜ? それを無防備に、ベッド使ってもいいよーって。言うか? 普通」
「男って……誰のこと?」
 反射的に聞き返すと、トラップの顔がひきつった。な、何かまずいこと言ったかな??
 そのまま、ゆっくりと机の傍まで寄ってきて……
 ドンッ!!
 わたしの顔の真横の壁に、手をついて立ち止まった。
253トラパスです・5:03/09/13 00:17 ID:7sjuzyUA
 うっ、この体勢って……
 前を向くと、嫌でもトラップの体が真正面に来る。といって、左には机があるし、右はトラップの腕が視界を塞いでいる。後ろは壁。
「おめえさ、俺のこと、何だと思ってるんだ?」
「……ぱ、パーティー組んでる、大切な仲間だよ」
 怖い。何、トラップ。なんで突然こんな……
 トラップは仲間。家族と一緒。そんなの、当たり前じゃない。なんで……
 正面のトラップの顔は、今まで見たとこもないくらい、真面目だった。
 真面目で、怒ったような、悲しそうな、そんな目をしていて……
「トラップは、仲間だよ。家族だよ! とっても大切な……」
「俺は、お前に家族だなんて思われても、ちっとも嬉しくねえんだよ!!」
 バンッ!!
 激しく壁を叩きつけて、トラップは叫んだ。
 ど、どうしちゃったの? なんでそんなに怒ってるの? わたし……正直に話しただけ、だよね?
「とらっ……」
 言いかけた言葉は、突然唇をふさがれて、言葉にならなかった。
 

うっ、何か長くなりそうな気配がっ……
一応続き要請があれば次回よりエロ突入(予定)
職人さん達と比べると随分見劣りしてしまうなあ……
254名無しさん@ピンキー:03/09/13 00:27 ID:KQTm8746
流れ的に生活感溢れてて自然だと思ふが
255921続き:03/09/13 00:38 ID:7Lv11KgI
続きです。

からだの中で、ギアがどくどくと脈打っているのがわかる。
「パステルっ…うぅっ……はぁ」
ぶるぶるっ、と彼は身震いして、わたしの中から出て行った。

ギアって。
いつも落ち着いていて余裕があって、凄く大人!って感じのひとなのに。
いま、わたしを抱きしめている彼は、いつもの彼とは全く違っていて。
なんていうんだろう?
可愛い。
じゃ失礼か?

ギアの汗ばんだ髪の毛を撫で付けてみる。
優しい眼差し…キス。キス。キス。
こめかみと、まゆげと、唇に。
キスされるはしから熱を帯びるようだ。
256921続き:03/09/13 00:56 ID:7Lv11KgI
そのあと。
お互いなんとはなしに、船室に戻らず、手を繋いで座って星を見た。

「ほんとうは」
ギアがつぶやく。
「もっと紳士的にするつもりだったんだけど」と笑って、
「でも駄目だった。涙は卑怯だよ、パステル」
「そうなの?」
わたしの返事に彼はまた笑って、わたしの肩を抱き寄せた。
心臓が跳ね上がる。
ギアといると心臓が100個あっても足りないんじゃないかな?

でもギアは安心する。
この相反する気持ちはなんなんだろ?
「戻ろうか」

この手が暖かいことだけしか、いまはわからないみたいだった。


257名無しさん@ピンキー:03/09/13 00:58 ID:7Lv11KgI
>>249
素晴らしいトラパス!続きキボンヌ!
258トラパスです・6:03/09/13 02:07 ID:7sjuzyUA
253の続きですが、嫌になるくらいエロ描写稚拙っ!(恥
初めて書いたものなので勘弁してください。


 ――――――!!!?????
 一瞬、頭の中が真っ白になった。
 な、なに? なに、してるの……トラップ……
 今、わたしの唇を塞いでるのは……トラップの……
「ん……ん―――――!!」
 反射的に頭を振って逃れようとしたけど、壁についていたトラップの手が、がっちりとわたしの頭を抱え込んで、それを許してくれなかった。
 強引に唇が押し開かれる。暖かい、柔らかい感触の「何か」が、わたしの舌にからまり、吸い上げられる。
 ……くぅ―――――っ!?
 なに、なに、この感じ……? 
 あ、頭が、ぼーっとして……なんだか、とっても……
 膝ががくがくして、まっすぐ立ってるのが難しくなってきた。わたし、わたしどうしちゃったんだろ?
 怖い。トラップ。やめて……やめ……
 そのときだった。
 トラップの、もう片方の手が、わたしの腰のあたりに触れた。そして、その指が、細くて長い、器用な指先が、背中をなでるようにして首筋まで這い登ってきた。同時に、頭を抱えていたほうの手も、うなじをなでるようにして徐々に下がっていって……
 ひゃんっ!!
 全身を走り抜けた感覚に、わたしは声にならない悲鳴をあげた。


259トラパスです・7:03/09/13 02:08 ID:7sjuzyUA
 そのとき、ようやっと唇が解放された。思わず、むさぼるように空気を吸ってしまう。
 そのまま膝から崩れ落ちそうになったけど、トラップの両手が、わたしの両肩をおさえつけて無理やり固定された。
「……これでも、まだ言えるのかよ」
 トラップは、かすれた声でつぶやいた。まるで、別人みたいな声。
「俺を、家族だって」
 …………
 わたしは答えられなかった。頭が混乱して、何を考えてるのか、何を言えばいいのか、何もわからなくなっちゃって……
 逃げ出したいけど、トラップの細い腕は、信じられないような力でわたしをとらえている。目をそらしたいのに、そらせない。
 1番とまどったのは、彼の目。怒っていたはずなのに、すごく悲しそうな、すがりつくような目。
 わたしにできたのは、わずかに首を振ることだけだった。それも、頷いたのか、その逆なのか、自分でも分からないような弱々しい動き。
 それが、トラップの目にはどう見えたのか、わたしにはわからない。
 だけど、その瞬間、トラップの顔がゆがんで見えた。今にも泣き出しそうなそんな表情を彼が見せたのは、初めてのことで……
 そして。
 彼の右手が、荒々しくわたしのブラウスの襟元をつかんだかと思うと、そのまま一気に引き裂いた!
260トラパスです・8:03/09/13 02:10 ID:7sjuzyUA
っきゃあああああああああああああああああああああ!!?
 思わずあげそうになった盛大な悲鳴は、再び唇をふさがれることによって、喉の奥に封じ込められた。
 なに、何するつもり、トラップ……まさか、まさか……
 今度のくちづけは一瞬だった。トラップの瞳が、迷うように動き、そして……
 拘束が緩む。その瞬間、わたしはすりぬけるようにして彼と壁の間から逃れた。
 怖い……!!
「パステルっ!」
 わたしの心の叫びも空しく、ほんの数歩よろめいただけで、トラップは即座に向き直った。そのまま、わたしは二の腕をつかまれて、強引に抱き寄せられる。
 ―――――!!
 背後から抱き締められる形になって、トラップの顔が見えなくなった。
 いやっ……
 トラップの手が、破れた服と素肌の間にすべりこんだ。すすっと、なでるように、曲線をなぞるように、彼の手は……
 彼の唇が、首筋をはいまわる気配。
 右手が、ゆっくりと上半身をはいまわり、やがてブラを押し上げるようにして胸に到達した。
「あっ……」
 瞬間、走り抜けた感覚。わたしの言葉では説明できない、でも決して不快ではない感覚。
 たまらずに声をあげる。その瞬間、トラップの手の動きが激しくなった。
 右手が優しく胸をなで、ときにつまむようにして刺激を与える。
 同時に、左手は、太ももの内側をなぞって、徐々に、徐々にスカートの内側に向かってはいのぼっていった。
「やっ、トラップ……あっ、やあん!!」
 うなじに吸い付くような感触を感じ、わたしは、段々声を抑えることができなくなった。
 ううっ、恥ずかしいようっ!! 怖い、この感じ、何……? わたし、わたしどうしちゃったの?
 抵抗したくてもできない。段々、トラップに身をまかせようとしている。わたしの身体、変になっちゃった……?
261トラパスです・9:03/09/13 02:11 ID:7sjuzyUA
 トラップの左手が、とうとう、スカートの中にもぐりこんだ。微妙に指を動かしながら、容赦なくはいのぼって……やがて、パンティの隙間にもぐりこみ、わたし自身だってさわったことがないような場所を、触れるようにこすった。
「やんっ……やっ、さ、さわらないで……わ、わたし……」
「パステル……」
 弱々しい抗議の声は、あっさりとかき消された。トラップの、茫然としたような声に。
「おめえ、濡れて……」
「え……?」
 言われてみて、初めて、体の奥から、じんわりと何かがにじみでているのを感じた。
 ひゃっ、も、もしかして、おもらし……?
「やっ、やだっ、ちがっ……これはっ……」
 慌てて何か言おうとしたけど、言葉にならない。その間にも、トラップの動きはとまらず……
 やがて、彼の指が、何かをつまみあげた。
 ――――――!!!??
 全身を貫く快感。たまらず、わたしは前のめりに倒れこんだ。とてもじゃないけど、立っていられなかった。
 今度は、本当に床に倒れこんだ。だけど、解放してもらえたわけじゃない。
 床に倒れたわたしの上に、トラップが躊躇なくおおいかぶさってきた!
 彼の足が、わたしの足の間に強引に割って入り、無理やり足を開かされる。思わず手をふりあげて抵抗しようとしたけど、即座に両手首まとめて、抑えつけられた。
 すごい力。圧迫感。わたしは、初めて、トラップの本気の力を知ったような気がした。
262トラパスです・10:03/09/13 02:12 ID:7sjuzyUA
「……おめえが、悪いんだぜ」
 トラップは、苦しそうにうめいた。
「俺の気持ち、ちっとも、わかってくれねえから……」
 トラップの、気持ち……?
 わたし、何をわかって……
 トラップの手が、再びスカートの中にもぐりこんできた。そのまま、パンティを無理やりずりおろされ――
「!!!!」
 何かが、わたしの大事なところに触れた。その瞬間、わたしはトラップのものを受け入れていた。
 
「っっっいやっ、痛いっ! 痛い痛い痛い痛いーっ!!」
 固い、大きいもの。それが、無理やりわたしの中に進入する。文字通り、何かが引き裂かれていく痛み。
「痛い……やあっ、トラップ、やめて! やめてやめてやめてやめて――!!」
 答えるかわりに、トラップはゆっくりと動き出した。そのたびに、痛みが増す。
「いやあっ!! 動かないで……動かないでー!! 痛い、痛いよお……トラップ、やめてよ!! どうしてこんなことするのっ……」
「……っ! ぱ、パステル……おめえ、おめえの中って……」
 トラップが何か言いかけたけど、わたしは聞いてなかった。
 自分の身に何が起こってるか、わからない、考えたくない。でも現実は止まらない!!
 1番ショックだったのは、最初は、痛くて痛くてたまらなかったその行為が、段々、動きがなめらかになってくるにつれて、頭の奥にしびれるような快感をもたらしていることで……
「やっ……あっ、ああっ……」
「くっ……だめ、だ……俺、これ以上、我慢、でき……」
 どくん
 何かが、わたしの中で弾けた。
 同時に、わたしも、頭の中が、真っ白に弾けとんだ。
 どくん、どくん
 トラップの、茫然とした表情。小刻みに動く……もの。
 しびれるわたしの身体。全身が弓なりにのけぞって、動けなくて……
 脱力したのは、同時だった。
263トラパスです・11:03/09/13 02:13 ID:7sjuzyUA
 はあ、はあ……
 はぁ、はぁ……
 しばらく、わたしとトラップの息づかいだけが響いた。
 わたしはあおむけになってて、その上にトラップがおおいかぶさってて……
 何かを考える余裕ができたのは、随分後になってからだと思う。
 あんなに素敵だった青い空が、だいぶ赤く染まった頃……
 太ももの内側を伝い落ちる液体の感触を感じ、わたしは、何があったのかを理解せずにはいられなかった。
 涙が伝い落ちる。何で、こんなことになっちゃったんだろう……?
「…………」
 先に動いたのはトラップだった。服を整えて、ゆっくりと立ち上がる。
 そして、わたしの顔をじぃっと見つめた。
 ……泣いてる顔、見られたくない。
 ぷいっと顔を背け、一生懸命顔をこすってみたけど、涙はなかなか止まってくれなかった。いやだ、見られたくない。こんな姿見られたくないよ……
「……俺、好きなんだぜ……」
 そのとき、トラップがぽつりとつぶやいた。そのまま、わたしの上に何かがかぶせられる。
 ……ベッドのシーツ?
 そうなって、初めて、わたしは自分の服が破れてひどい状態になってることを思いだした。
「俺、好きだ。パステルのこと、ずっと好きだった。ずーっと、おめえのことだけ、見てたんだ……」
 ――――!?
 トラップ……?
「おめえ、俺のこと、家族って言ったよな? でも、俺はパステルのこと、一人の女として、ずっと見てたんだ! どうしても……俺の気持ち、わかってほしかったから……」
 これが……トラップの、気持ち?
 わたしに、わかってもらいたかった……?
「でも、駄目だよな……俺、最低のこと、しちまった。好きな女、泣かせちまった。痛かった……だろ? ごめん……俺、謝っても、謝りきれ、な……」
 彼の言葉が、唐突に止まったのは。
 わたしが、起き上がったせい。
 起き上がって、彼に抱きついたせい。
264トラパスです・12:03/09/13 02:16 ID:7sjuzyUA
「パステル……?」
「ごめんね……ごめんね、トラップ」
 わたし、馬鹿だったよ。わかったつもりでいて、何もわかってなかった。
 トラップの気持ちも、わたしの気持ちも。
「ごめんね、わかってあげられなくて、気づいてあげられなくてごめんね。トラップ。いつもいつも、わたしのこと助けてくれて、元気付けてくれて、わたし、パーティーだから、家族だからそれが当たり前だと思ってた。
 トラップ、意地悪なようでいて、いつも優しかったね。その優しさを、当たり前だと思うようになってた。ごめんね……」
「パステル……」
「わたし、好きだよ」
 トラップの体が、硬直した。
 いいよね。さっきの、お返しだよ。
「トラップのこと、好きだよ。気づいてあげられなくて、ごめんね」
「……嘘だろ」
「嘘じゃないよ」
「冗談?」
「違う」
「俺……おめえを無理やり犯したんだぜ?」
「無理やりじゃ、ないよ……」
 違う。確かに、びっくりしたけど。怖かったけど。でも……
「心の底から嫌だ、とは、思わなかったんだから……」
「パステル……」
「でも、すごく、痛かったから。服も破れちゃったし。だから……」
 だから、仕返しだよ。
 わたしは、トラップの襟元をつかんで、ぶらさがるように体重をかけた。彼の上半身が傾き……
 ちょうどいい位置に来たところで、とびっきりのくちづけを、トラップにぶつけてやった。


以上、完結です。
エロ描写に精進する旅に逝ってきます_| ̄|○ 
265名無しさん@ピンキー:03/09/13 09:00 ID:Z0IfGOX7
新刊発売記念トラパスキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!
266名無しさん@ピンキー:03/09/13 18:06 ID:7sjuzyUA
トラ×パス、需要が多い割には書く人が少ない気がする・・・
クレイやノル(ぉぃ より、余程エロに精通してそうな気がするんだけどなあ
267名無しさん@ピンキー:03/09/13 18:09 ID:7sjuzyUA
あげてしまったー! 欝……
というわけで、上にあげたのとは別にもう一本トラ×パス書いてたりするのですが
あんまりトラ×パスばっかだとうざいかな? と思って自粛中(ついでにエロ描写特訓中)
前の方にあるクレパスの続きを激しく期待しつつ逝ってきます。
268名無しさん@ピンキー:03/09/13 22:40 ID:239EGMAO
>>267さん書いてください!!
自分はマリーナ×トラップの子悪魔コンビがすきですw
269名無しさん@ピンキー:03/09/13 23:04 ID:Y3Dp53SF
>>256
後はメール欄に「sage」と入れてくれたら何も言うこと無い…と思う。
>>264
素直に…萌えました。
原作の雰囲気しっかり保ったままで、ばっちりエッチです。
…神だよ…
>>266
需要が多い分、自分でHPもって、そこに裏作って書く人が多い…
と思われます。

実家にいるころ、トラパス物をノートに書き溜めたけど、
置いて来てしまった…中にはエロもあったのに。
誰かに読まれてませんように…
270トラパスクエスト1:03/09/14 02:41 ID:LwMTZHN+
>>268さんや>>269さんに褒めていただいたので、調子に乗って書き始めました。
トラパス1〜12の作者です。
ただ、ものすごく長くなりそうです(汗 SSじゃないかも、既に。しかもいつになったらエロに突入するんだというくらい展開が遅いですし。
それでもよろしければ、試しに導入部分アップしてみます。


 うーっ、何でこんなことになっちゃったんだろ?
 わたしは、傍を歩く赤毛の盗賊……パーティー1のお調子者でトラブルメーカー、トラップの顔を見上げながら、深々とためいきをついた。
 ここは、とあるダンジョン。今ここを歩いているのは、わたしとトラップの二人だけ。
 そう、認めたくはないんだけど……また、迷ってしまっているのだ。
 ううっ。トラップ……呆れてるだろうなあ……
 はあ。と大きなためいき一つ。落ち込んでてもしょうがない、それはわかってるけど。落ち込まずにはいられない。こういうとき、わたしって成長してないよなーって思ってしまう。
 でも! でもでもでも! 今回は、わたしだけの責任じゃないんだからっ。
 迷ったのはわたしの責任だけど……そもそも、こんなクエストに挑戦する羽目になったのは、トラップが原因なわけで。
 はあ。もう一度大きなためいきをついて、わたしは昨日のことを思い出していた。
271トラパスクエスト2:03/09/14 02:42 ID:LwMTZHN+
「はあっ!? 賭けに負けてクエストに!?」
 クレイの声がみすず旅館に響き渡ったのは、夏も終わりに近づいたある日の午後。
 そのとき、わたし達はちょうど一つのクエストを終わらせたところで。まあまあ懐もあったかいし、しばらくはシルバーリーブでのんびりしてようか? と言っていた時期だった。
 ところが! トラブルを起こさずにはいられない誰かさんが、まーたやってくれちゃったんですよねえ……
「だあら! 悪かったって言ってんだろ!?」
 ふてくされたように椅子にふんぞりかえっているのは、トラップ。さすがに、いつもに比べて毒舌も勢いが弱いけど……
 トラップの説明によると、こういうことだった。
 退屈なことが何より嫌いな彼のこと。おとなしくのんびりなんてできるはずもなく、毎夜毎夜相変わらずギャンブルに夢中になってたんだけど。
 いくら多少懐に余裕があるからって、そう毎日毎日通い詰めるほど余裕があるわけもなく。
 もちろんわたしも、クレイも、他の皆も、ギャンブルに浪費されることがわかっててお金を貸してあげるなんて言うわけもなく。
 そしてそれで諦めるトラップでもなく。彼はこう言ったんだそうな。
「負けたら、後で払ってやるよ。こう見えても俺は冒険者だぜ? ちょいちょいっとクエストに出りゃあ、いくらでもお宝を手に入れることができんだかんな!」
 で、結果けちょんけちょんに負けてしまったと。ははっ、トラップらしいというか何というか。
 そうなるともう後には引けない。ちょっとくらい無理をしても、実入りの良さそうなクエストに早急に出かける必要があるということで。
 うーっ、ギャンブルのつけを、パーティー皆にまわさないでよねっ。
「本当に悪かったって。だから、頼む! 今回だけ協力してくれっ」
 まあね。でも、基本的に我がパーティーのリーダーは人がいいから。
 こんな風に拝み倒されたら、嫌とは言えず。
 わたし達は、せっかくの休暇を切り上げて、またまた新たなクエストに挑戦することになったのだった。
272トラパスクエスト3:03/09/14 02:43 ID:LwMTZHN+
 わたしやクレイのお小遣いで買ってきたクエストはこんなクエストだった。
 とある洞窟の奥には、財宝が眠っている。
 ただし、奥に進むための扉は固く封印されていて、特殊な状況下に置かれないと開かない。
 出現モンスターのレベルはそう高くは無いけど、謎解きの要素がかなり厳しいらしく、また財宝という言い方があまりにも曖昧でどれくらい価値あるものなのかがさっぱりわからない。
 厳しい謎解きをクリアできるような高レベルの冒険者にとっては、モンスターのレベルが低いということは経験値もあまり手に入らないから意味がない。
 そんな理由で売れ残っていたクエストを、ヒュー・オーシから格安で手に入れたんだ。
 そして、わたし達は、シルバーリーブから程近い場所にある、洞窟の前に立っていた。
 
「気をつけてくださいよ。低レベルでも、モンスターは集団で襲ってきたら厄介ですからねえ」
 ぐふぐふと笑い声を漏らしながら、キットンが警告する。
 洞窟を歩いてから五分。既に入り口は見えなくなっていて、周囲は闇に包まれている。
 明かりは、トラップとノルが持つポタカンのみ。
 先頭のトラップが罠チェックをしながら進み、彼の後ろにわたし、ルーミィ、シロちゃん、クレイ、キットン、ノルと続く。
 わたしが二番手に来てるのは、もちろんマッピングのため……なんだけど……
 ははっ。大丈夫かな? このマップ……
 わたしが方向音痴っていうのを差し置いても、この洞窟はマップが取りづらかった。
 一本道なのに、くねくねと曲がっていて……それも、45度とか90度じゃなくて、微妙に曲線を描くように曲がっていて。どうかするとすぐに自分がどこを向いてるのかがわからなくなってしまう。
 幸い、別れ道が無いから迷いようは無いけど……うーっ……
 なーんて唸ってたら、出てきちゃいました。別れ道。それも三本。
 道が急に広くなったなー、と思ったら、突然広場みたいな場所に出た。
 ヒカリゴケが生えていて微妙に明るく、ちょっと休憩するには最適な場所。
 そして……
 広場の先には、それぞれがてんでんばらばらな方向に伸びていて、果たしでどこがどう伸びているのやら見当もつかない三本の道。そして、わたし達がやってきた道のちょうど真正面にあたる位置にどどーんと存在する、重厚な扉。
273トラパスクエスト4:03/09/14 02:44 ID:LwMTZHN+
「これが、奥に進むための扉、ってやつか?」
 ひとしきり罠チェックした後、トラップが皆に同意を求めてくる。
 反対する人は誰もいない。だって、誰がどう見たって、「この奥には大切なものが隠されています!!」って存在主張してるみたいな、立派な扉なんだもん。お城の門だって、ここまで立派なのは少ないかも?
 試しにノル、クレイ、トラップの三人がかりで扉を引っぱってみたけど、やっぱりというか、それはびくともしなかった。
 ははっ、まあそんな簡単にいくくらいなら、財宝なんて誰かがとっくに持ってっちゃってるだろうしね。
「私が思うにですね、その三本の別れ道が、扉を開く鍵だと思うんですよ」
 休憩を兼ねて昼食をとりながらこれからのことを相談する。
 最初は、別れ道を一つ一つ調べてまわるしかないかな、って言ってたんだけど。
 試しにトラップが道の一つを偵察にいったら、30メートルも進んだら行き止まりにぶつかってしまった、ということだった。
 うーん、と悩んでいると、キットンが突然言い出した。
 扉を開く鍵は、ある特殊な状況下に置かれること。
 それはもしかしたら、三箇所に置かれたスイッチを、全て同時に押す……といった類のことではないか? と。
 その言葉をうけてトラップがもう一度別れ道を調べに行くと、確かに、押しても何の反応もない、スイッチらしきものがある、ということだった。
 別れ道の先にあるスイッチ。三箇所を同時に押せば、扉が開くか。あるいは別れ道がさらに先に続くか。
 とにかく、試してみよう、ということになったんだけど……
 問題は、パーティーをどう分けるか。
 同時に押さなきゃいけない(かもしれない)ってことは、三パーティーに別れなきゃいけないってわけで……
うーっ、不安だなあ。
274トラパスクエスト5:03/09/14 02:46 ID:LwMTZHN+
「とにかくですねえ、重要なのは、モンスターが出る可能性も踏まえて、絶対に戦力になる人間が一人は必要ってことなんですよ」
 キットンの力説により、とりあえず、ファイターのクレイとノル、罠チェックができて感覚の鋭いトラップが、それぞれ別れることになった。後は、誰が誰と組むか……って問題なんだけど……
 そうなると、どうしてもわたしはルーミィと離れることになっちゃうから、ルーミィはシロちゃんと一緒に行ってもらうことにして。
「へっ、赤ん坊のお守りなんかできるかってんだ」
「るーみぃ、赤ん坊じゃないもん!」
 ははは。組む前から喧嘩してるよ、トラップとルーミィ……この組み合わせは没かな。
 それに、言っちゃ悪いけど、クレイやノルに比べればトラップは……戦闘力に関しては、どうしても劣っちゃうから(盗賊だからね。それが当たり前なんだけど)。いざとなったら、ルーミィを守りながらでは、ちょっときついかも。
 というわけで、ルーミィとシロちゃんはクレイにまかせることにした。
 後は、わたしとキットン、ノルとトラップだけど……
「パステルは、トラップと一緒の方がいいでしょうねえ」
 ぐふぐふと笑いながらキットン。
「ほら、迷子になったとき、耳がよくて感覚の鋭いトラップなら、きっと誰よりも早くパステルを見つけられるでしょうから」
 しっ、失礼なっ!! 何で迷子になるって決め付けられてるのよっ!!
 と抗議したかったけど、数え切れない前科のあるわたしは、反論できなくって。
 他の皆も「それもそうか」とか頷いてるし。ううーっ、悔しいっ……
 というわけで、別れ道1にクレイ、ルーミィ、シロちゃん、別れ道2にノルとキットン、別れ道3を、トラップとわたしで進むことになったのだった。
275トラパスクエスト6:03/09/14 02:47 ID:LwMTZHN+
 でもね、これが思ったより大変な作業で。
 一応、連絡は、冒険者組合でレンタルした簡易通信機で取り合うことができたから、「同時に押す」ことは問題無い……と思う。
 ただ、スイッチらしきものが、なかなか見つからないんだよね……
 わたしはトラップと組んでるから、何だか簡単に見つけられるように見えたけど、どうやら結構凝った隠し方がされてるらしく、他の二組はなかなか苦戦してるみたい。
 通信機を駆使してトラップが散々アドバイスして、どうにか同時に押すことには成功したんだけど。
 残念ながら、扉は開かなかったみたい。何故なら、
 ズゴゴゴゴゴゴゴ……という重厚な音と共に行き止まりだった壁が崩れて、その先にまたまた長い道が続いていたからだった。
「だーっ、やっぱ、そんな簡単には行かねえか。ほれ、とっとと行くぞ」
 そうして、先に進むこと半日。
 進んで行き止まりになったらスイッチを見つけて、押して、また壁が崩れて、先に進んで……の繰り返し。
 ただ、道は広くなったり狭くなったりくねくね曲がったりはしていたけど、幸いにも別れ道はなかったし。トラップのコツを聞いて、他の二組も段々スイッチを見つける作業に慣れてきたみたいだし。
 モンスターもあまり頻繁に襲ってくるわけじゃなかったし。何とかなりそうかな? っていう矢先のことだった。
 わたしがまたまた、大ドジやらかしちゃったのは……
 
「ご、ごめんね、トラップ……」
 謝っても、トラップは無言。ううっ、やっぱり怒ってるんだろうなあ……
 きっかけは、わたしがトイレに行きたくなっちゃった、というささいなことで……
「おめえのことだから、別れ道がなかったら別れ道を作ってでも迷いそうな気がする。見えるところでやれ」
「何言ってるのよ、バカ!! エッチ!!」
 なーんていうやりとりの後、来た道を少し戻って、トラップの姿が見えないことをしっかり確認して、用を足したんだけどね。
 ははっ……トラップってば、やっぱり鋭い。
 トラップが気にかけなかったのも無理はない。普通に歩いているだけなら、絶対手に触れないような位置に、不自然に花が一輪咲いていて。
 あっ、きれいな花だなー、と思ってひっぱった瞬間……
 音を立てて、わたしが立っていた場所が崩れたのだった。
276トラパスクエスト7:03/09/14 02:48 ID:LwMTZHN+
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
「パステル!!」
 悲鳴を聞きつけてとんでくるトラップ。でも、そのときにはもう、私の身体は崩壊した地面の破片と一緒に落下を始めていて。
 手を伸ばしたって絶対届かない。そう気づいた瞬間、トラップは躊躇なくとびこんできてくれた。壁を蹴って落下スピードを早めて、わたしの身体を抱え込むようにして……
 幸いなことに、落下地点は柔らかい地面だったので、わたしもトラップも大きな怪我はなかったんだけど。
 ぬかるんだ地面に叩きつけられて、二人ともどろどろのびしょびしょ。
 結構な高さを落ちてきたから、上るのは絶対無理だし。
 落下のショックで通信機もどうにかなっちゃったみたいだし。
 とにかく、どこかに出口があるはずだー、と歩き始めて……で、やっと冒頭に繋がる、というわけなのだ。
 はあ。
 と、前を歩いていたトラップが、突然くるりと振り返った。
「……悪かったよ」
 へ??
 一瞬、何のことかわからずに首をかしげると、トラップは何故か真っ赤になって
「……だあら、おめえが救いがたいバカだって知ってたのに、余計なものに触るなって言う基本的なことも教えなくて、悪かったなって言ってんだよ」
 なっ、何よその言い草!!
 かなりむかむかしたけど、でも、まあトラップの言うことも一理ある。
 よーく考えたら、コケ以外草一本生えていないような洞窟に花が一輪なんて、怪しすぎる。うかつに触ったわたしが、確かに間抜けだったかも……
 ……落ち込むなあ。
 はあ、とまたまた大きなためいきをつくと、トラップは慌てたように、
「だ、だから、今回のことは俺のミスで、おめえは悪くないんだって! だから、落ち込むな、謝るな!!」
??
 へ? それって……
 もしかして、慰めてくれてる、とか?
 へー。珍しい。
 思ったとおり口にすると、トラップは不機嫌そうに顔をしかめて、おら、と手を出してきた。
 目を離すと、おめえはふらふらどこ歩いていくかわかんねえからな、って……どうしてこんな言い方しかできないのかなあ。
277トラパスクエスト8:03/09/14 02:49 ID:LwMTZHN+
 トラップの好意はありがたく受け取ることにして、手を繋いで再びもくもくと歩き出す。
 でもねー……いつまで経っても、出口らしき場所が見えないんだ、これが。
 お腹は空いて来るし、疲れるし。時計が無いからわからないけど、ひょっとしたらもう丸一日くらいは歩きとおしてるんじゃないかなあ……
 それに、寒い。落ちた場所から遠ざかるに連れて、周囲の温度がどんどん下がっていくのがわかる。
 だってだって、気がついたら吐く息が白いのよ!! 季節は夏なのに。
 思わずぶるっと身震いしたら、パサッと何かが肩にかけられた。
 これって……
「こんなところで、風邪ひいて倒れられたらかなわないかんな。それ着てろ」
 ぶっきらぼうなトラップの声。肩にかけられたのは、オレンジ色のジャケット。
「いいよ。トラップだって寒いでしょう?」
「ふん! 俺はなあ、おめえと違って鍛えてんの! これしきの寒さなんともねえよ!」
 なーんて言ってるけど、トラップの顔、青ざめてるよ?
 でも、多分わたしを気遣ってくれてるんだよね……多分。
 そんなわけで、それ以上意地をはるのをやめて、ありがたく上着を借りたんだけど……結果的にこれが大失敗だった。
278トラパスクエスト9:03/09/14 02:51 ID:LwMTZHN+
 わたし達が先に進んでいくと、広場みたいな場所につきあたった。扉があった広場と違うのは、その先には一本道が続いてる、ってことだけ。
 そして、驚くなかれ。そこには小さな泉がわいていたのよ!!
「地下水がたまったんじゃねえの?」とはトラップの言葉だけどね。そんなのはどっちでもいいの。歩き続けてすごく喉が渇いてたから、わたしは夢中で水辺にひざまずいた。
「あ、おい。気をつけ……」
 トラップの警告、遅し。
 慌ててひざまずいた途端、ボロッ、という感じで地面が崩れて。
 ぬかるんで、弱ってたからね。まあ当たり前といったら当たり前なんだけど。
 あちゃー、と天を仰ぐトラップを尻目に、わたしは盛大に泉に転落していた。
 もちろん、トラップの上着もろともね……
 幸い、泉自体は大した深さじゃないから溺れることもなかったんだけど……
 さささささ、寒いぃぃぃぃぃっ
「……ったく、おめえはどこまでドジやれば気が済むんだよ」
 完全に呆れたトラップの口調。いつもなら、何か言い返すとこなんだけど……今は寒くて、とてもそれどころじゃなく。
 全身を抱き締めてがちがちと歯を鳴らしてると、トラップが首を振って言った。
「しゃーねえ。今日はここで野宿すっか……明日になりゃ、多分誰かが探しにきてくれるだろ。さすがに……」 言いながら、ばさっと被せられたのは、大きなタオル。
 ありがたく使わせてもらっている間に、トラップが毛布を出して広げていた。
 一応、クエストだからね。野宿の準備はしてたんだ。ただ、燃やすものがないから火が起こせないし、従ってあったかい料理も飲み物も用意できないんだけど……
 タオルでごしごしこすってみたけど、そんなことじゃ濡れた服は乾かないし。トラップの上着まで巻き添えにしちゃったのに、火がないから乾かすこともできないし。
 うううーっ、さ、寒いよう……でも、このままくるまったら、毛布まで濡れちゃうし……
 わたしが震えていると、トラップはひょいと顔をあげていった。
「パステル。おめえ、服脱げよ」


一応、導入部終了。長っ(;´o`)
次回以降エロが入ります(多分)
279名無しさん@ピンキー:03/09/14 09:59 ID:fHOMt+we
トラパス神さま降臨〜⊂(゚∀゚⊂
続きキボン!!
280トラパスクエスト10:03/09/14 17:54 ID:LwMTZHN+
続きです。まだ濡れ場に到達してない(汗

「パステル。おめえ、服脱げよ」
 ……は?
 あまりにもさらっと言われたものだから、わたしはしばらく、その言葉の意味がわからなかった。
 で、意味がわかった瞬間、ぼんっと頭に血が上る音を確かに聞いた気がした。
 なーなななななななな突然何を言い出すのよこの人は!
「ばばばバカ!! こんなときに何考えてんのよエッチ! 最低!」
 自分自身を抱きしめるような格好でずざざざざ、と後ずさったんだけど。広場って言っても広さはたかがしれてるし。すぐに背中が壁にぶつかってしまった。
 それも、それも!
「バーカ、何マジになってんだよ」とかいつものごとく笑い出すトラップ……を期待してるのに、何でそんな真面目な顔してるのよ、トラップったら!!
 そう、彼の顔はとても大真面目だった。さらに言っちゃえば、かなり怒ってるようにも見えた。
 うーっ、何でトラップが怒るのよ! 普通ここはわたしが怒る場面でしょ!!
 そう言おうとした瞬間、トラップが立ち上がった。そして、大またでこっちに向かって歩いてくる。
 な、何をするつもりなのよお……
「と、トラップ? 真面目な顔してどうしたの? じょ、冗談だよね……」
「パステル……」
 トラップは、つぶやいて、わたしに視線を合わせるようにしゃがみこんだ。真面目な顔すると、意外なくらい整った顔立ちだなーとわかる。いっつもクレイの影に隠れて目立たないけど、どうしてどうして、トラップだってなかなか格好いい部類に入るんじゃない?
 なーんてことをぼんやり考えていると、トラップはにっこり笑った。そして
「てめえは! こんなときに何つまんねえこと考えてんだ!」
「いひゃいいひゃいいひゃいー!!」
 わたしのほっぺを両手でつまんで、ぎゅーっと横にひっぱった。い、いきなり何するのよー!!
「こんな寒い場所で、そんな濡れた格好でいてみろ! あっという間に体温奪われて、下手すりゃ凍死だぞ!? 死にたくなかったら脱げ! 向こうむいててやるから!」
 ……へ?
281トラパスクエスト11:03/09/14 17:56 ID:LwMTZHN+
 トラップは、ものすごい早口でそう叫ぶと、わたしの方に毛布を放り投げて凄い速さで離れた。壁に頭をつけて、意地でも振り返ろうとしない。
 ……心配、してくれてたんだ。ははっ、よく考えたらそうだよねえ。トラップは、いつも意地悪ばっかり言ってるけど、意地悪を装っていっつも皆のこと気遣ってたもんね。わたし、本当にバカだなあ……
 ううっ、物凄い自己嫌悪。せめてもの罪滅ぼしに、早く言うとおりにしよう。
 トラップが相変わらず背中を向けたままなのを確認して、わたしは、手早くびしょぬれになったシャツとスカートを脱いだ。ブーツも中まで水びだしになってたから、それも脱いで、完全に下着だけの姿になる。
 もう一度タオルでよく身体を拭いて、そうして頭から毛布にくるまると、ほんの少しだけど寒さがマシになった。ふうっ……
「ごめんね、トラップ。もうこっち向いてもいいよ」
 ちょっと恥ずかしいけど、毛布は凄く大きくて全身をすっぽり包んでくれてるし。何より、ずっとあんな格好させてちゃトラップが可哀想だもんね。
 わたしの言葉に、トラップはゆっくりと振り向いた。こっちを見てちょっとうろたえたみたいだけど、わたしがもう一度「ごめん、ありがとう」と言うと、ため息つきつきずりずりと元の位置まで戻ってきた。
「まったくよう。勘弁してくれよな。こうなったのは、ぜーんぶおめえのドジのせいなんだからな!」
「うー、もう、わかってるわよ。だから、本当にごめん。反省してるから」
 毛布は一枚しかなかった。さっきも言ったとおり、一枚で何人も寝られるように大きめのを買ってあるからね。荷物がなるべくかさばらないようにするために、人数分の用意はしてなかったんだ。
 上着に続いて毛布まで譲ってくれて、多分凄く寒いだろうに、そのことは一言も言わない。
 わたしの身体心配してくれたのに、最低とまで言っちゃったもんね。ちゃんと謝らなきゃ。
 そんなわけで、わたし達はここで野宿することになったのだけれど……
282トラパスクエスト12:03/09/14 17:57 ID:LwMTZHN+
 時間が経つにつれて、震えが止まらなくなっているのがわかった。
 多分、今鏡を見たら、唇とか真っ青になってるんじゃないかな……?
 気温は、何だかどんどん下がってきているみたいだった。濡れた服をしぼって広げておいたんだけど、さっき触ってみたら、凍ってたもんね。つまり、気温は零下?
 毛布一枚じゃ、とても寒さを凌げない。
 だけど、そんなこと言えない。トラップは、上着も毛布もなしでこの寒さに耐えてるんだから。
 最初のうちこそ、軽口を叩いたりもしたんだけど、そのうちわたしもトラップも黙り込んでしまった。
 あまりの寒さに歯の根がかみあわなくて、言葉が出せなくなってきたんだよね……
 うー、このままだと、風邪じゃすまないかも……?
「……パステル」
 そのとき、トラップが重たげに口を開いた。さすがの彼も、この寒さには大分参ってるみたい。
「寒いか?」
「え? う、ううん、へ、平気……だ、だ、大丈夫だから……」
「……おめえ、顔真っ青だぜ」
 あ、やっぱり? だけど、そういうトラップの顔も、かなり真っ青だよ。
「……あの、さ」
 そんなわたしを見て、トラップは何だか迷うように視線をそらした。どうしたんだろ?
「えっと、その……あったかくする方法、一つだけあるんだけど……試してみて、いいか?」
「えっ、本当!?」
 わたしは思わず、自分の姿も忘れてトラップににじりよってしまった。
 そんな方法があるんなら、早くしてくれればいいのに。いちいち了解を取るなんて、トラップらしくないなあ。
「そんな方法があるんなら、お願い!」
「……本当に、いいんだな? 後悔しねえな!」
「うん!」
 この寒さがマシになるのなら、後悔なんてするわけない!
 ……とわたしは迷わず頷いたんだけど……
 わたしの言葉にふっきれたのか、トラップはごくんと息をのんで……
 そして、自分が着ていたシャツを、脱ぎ捨てたのだった。
283トラパスクエスト13:03/09/14 17:58 ID:LwMTZHN+
 ……え?
 上着をわたしに貸してくれて、トラップはシャツしか着てなかった。つまり、その下は……はだ……
 そして次の瞬間、わたしはトラップに抱きしめられていた!
 ……えええええええええええええええええええええええええ!!?
「う、へ、変な意味じゃねえぞ! 頼むから、暴れるな!!」
 わたしが叫ぶ寸前なのを察知したのか、トラップが慌てて叫んだ。そして、わたしの身体ごと、自分の身体に毛布を巻きつけた。
 あ、これって……もしかして、雪山遭難とかのときによく言われる……
 だ、だけど、この状態って……
 さっきも言ったけど、わたし、毛布の下は下着しか身につけてなかったんだよね。
 で、その状態で抱きしめられてるわけだから……トラップの、その手とかが、どうしても肌に触れちゃってるわけで……
 わたしはわたしで、トラップの裸の胸に抱きしめられたりしてるわけで……
 ううーっ、は、恥ずかしいようっ!!
 多分、トラップも相当照れてるんだろう。さっきは真っ青だった顔が、ちらっと見上げたら今は真っ赤になってた。
 だけど、確かに、トラップの体温とかが直接伝わってきて、毛布一枚よりは少なくともあったかかった。
 が、我慢よパステル! ここは我慢! 非常事態なんだから、この際多少のことは目をつぶらなきゃ!!
 多分、あと少しで助けが来るはず。自分にそう言い聞かせて、わたしはぎゅっと目をつぶった。
 
284名無しさん@ピンキー:03/09/14 19:39 ID:aH2gcTPJ
か、神だ…!!
続きキボンヌ!
285トラパスクエスト14:03/09/14 23:03 ID:LwMTZHN+
さらに続き。かなり長々と続きます。

 ところが! 助けはちーっとも来ないんだよねえ……
 皆、今頃どうしてるんだろう? いくら何でも、わたし達の後を追ってくるくらいは、してくれてもよさそうなんだけど……
 それに、もう一つ、気になることが。
 今は、座り込んだトラップの膝の上で抱きしめられるような格好で毛布にくるまっていて……色々試した結果、この体勢が1番楽だったからなんだけどね。つまり、わたしは背後から抱きしめられてる形になってて、トラップの顔が見えないんだけど。
 さっきから、何だかトラップの息が荒いような気がするのは……気のせいなのかな?
 それに、何か、お尻の下でトラップの膝とかが小刻みに動いてるんだけど……
 やっぱり、寒いのかな。もしかして、病気にでもなっちゃったとか?
「トラップ、大丈夫? 震えてるみたいだけど……」
「へ? い、いや、別に、そんなことはないぞ」
 ……何か口調も変な気がするのは、気のせいかな?
 うー、それにしても……
 二人で毛布にくるまってて、やっと寒さが少しは凌げるようになってきたんだけど。そうすると、押し付けられてる胸から聞こえるトラップの鼓動とか。お腹に直に触れてるトラップの手とかが、どうしても気になってきちゃって……
 細いけど、やっぱ男の子なんだなあ。筋肉とかしっかりついてるなあ……なーんてことが気になってきちゃって!!
 ううっ、何だかドキドキしてきちゃった。この気持ち、何なんだろう?
 さっきも思ったけど、トラップって、結構かっこいいよね、とか。いざとなったら、やっぱり凄く頼りになるし、意地悪ばっかり言ってるように見えて、実は全部わたしのこと気遣ったり元気付けたり励ましたりしてくれてたり、とか。
 そんなことばっかり考えてたら、頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃって……
 だから、トラップの言葉を聞いたときも、それがどういう意味なのか、よくわからなかった。
286トラパスクエスト15:03/09/14 23:04 ID:LwMTZHN+
「パステル……わりぃ。俺、もう我慢できねえ……」
 え?
 何を? と聞こうとしてわたしが顔を向けた瞬間。
 トラップの唇が、わたしの唇を塞いでいた。
 ……ん――――――!!?
 一瞬、状況がわからなくなる。え? え? これって……キス?
 そうやって、わたしが一人でパニックになってる間にも。
 トラップの唇が、強引にわたしの唇を押し開いて……その、中に無理やり押し入ってきたのは……
 そのまま、わたしの舌をからめとり、ころがすようにしながら、強く吸い上げられた。
 う――――――っ!?
 もちろん、彼の行動そのものにも驚いたんだけど。
 1番驚いたのは、わたし自身が、それを嫌だ、って思わないことで……
 その気になれば、いくらでも抵抗できそうなのに、そんな気には全然なれなくって……
「う……ふぅ……」
「ぱ、パステル……」
 嫌がらないわたしの態度が意外だったのか、トラップはちょっとためらったみたいだけど、それでも、動きを止めようとはしなかった。
 彼の唇は、わたしの唇から首筋へと移動してきて。同時に、背中にまわされていた手が、そっと背筋をなでていて。時折走る刺激が、わたしの脳をしびれさせる。
 うっ……なんだろう、この感じ?
 全然嫌じゃない、痛くもないのに、何故か、涙が出てきて……
「あっ……やん……と、トラップ……」
「パステル……」
 一瞬、トラップの手が止まった。そして、一度力強く抱きしめられた。
 ……きだ……
 耳元で囁かれたその言葉。その意味を考える暇もなく。
 わたしは、トラップに押し倒されていた。
287トラパスクエスト16:03/09/14 23:05 ID:LwMTZHN+
 変だよね。さっきまで、すごくすごく寒くて、毛布にくるまって震えていたのに。
 今、わたしの身体は凄く上気してて……全然寒さなんて感じなくて……
 地面に仰向けに横たわる。上を見上げれば、トラップの顔。
 凄く真っ赤で、でも真剣な顔で、ゆっくりと、唇を塞ぐ。
 さっきの唐突で激しいキスとは違う、優しい、柔らかいキス。
 そっと唇の形をなでるようにしてから、ゆっくりと進入してくる熱い舌。
 わたしの両肩のあたりに置かれていた彼の手は、いつの間にか、ゆっくりと下降していって……
 ブラのあたりに来たとき、彼はちょっとわたしの方を見た。
 声には出さなかったけど、「いいか?」って聞かれたような気がしたから……凄く恥ずかしかったけど、わたしは頷いた。
 彼の手が、ゆっくりとブラの下から押し入り、強引にそれをはぎとった。あらわになった胸を、じぃっと見つめられてる気がして、わたしは思わず顔をそむけた。
「やだぁ……そんな、じろじろ、見ないでよう……」
「……なんで? きれいじゃん……すっげえ……」
 つぶやくと、トラップはわたしの胸の頂に、そっとくちづけた。
「ひゃんっ!!」
 思わず声をあげてしまう。そのまま、彼はそこを口にふくみ、歯を立てないようにしながら優しく吸い上げた。
「やっ……いたい……」
 びくんと体がのけぞる。違う。本当は全然痛くなかった。むしろ……何だか、すごく気持ちよくて。でも、それを言葉に出すのが恥ずかしくて、思わず「いたい」と言ってしまっただけ。
 だけど、それを真に受けたのか、彼はそっと唇を離した。うなじのあたりにキスをして、両手を使って、わたしの身体をなで始める。
 「―――――あ、やぁん……あ、あん……ん……」
 ううーっ、恥ずかしいようっ。こえ、声が止まらない!!
 段々熱くなってくる自分の体。じんわりと奥からしみだしてくる、何か。
 この感覚は、何? 今までに味わったことのない……これが、快感……?
288トラパスクエスト17:03/09/14 23:06 ID:LwMTZHN+
「パステル……おめえ、何か、すっげぇ、かわいい……」
 トラップの息が荒い。声もかすれがち。こんなトラップの声を聞いたのは初めてだった。
 涙でうるんだ目で見上げると、トラップは視線をそらすことなく、じぃっと見つめ返してきた。
 だ、だめ。恥ずかしい……
 即座に視線をそらしてしまう。けど、トラップの手が、わたしの頬にあてられて、強引に元に戻された。
「――いいか?」
 聞かれた言葉の意味。わかるような、わからないような……
 でも、多分、嫌じゃない。わたし、わたしは、トラップのことが……
 気がついたら、こっくりと頷いていた。
 トラップの顔が、優しく微笑む。こんな顔見たのも、わたし、初めてかも……
 手が、太ももの内側をはう感触。ゆっくりとなであげられ、やがて、パンティの隙間から、優しく進入する指先。
 最初はゆっくりと、指先でなぞるようにさすられた。
 ――びくりっ
 思わずのけぞる背中。走った刺激は、今までよりずっと強くて……
 ずっと、その、気持ち……よくて……
 最初はゆっくり。段々早く。そのたびに、わたしの中から、じわり、じわりと染み出してくる何か……
「すっげぇ、濡れてる……」
「ば、バカ。何言ってるのよ……」
 恥ずかしいから、言わないで。視線で訴えてみたけど、トラップの茶色の瞳は、こう言っているみたいだった。
 照れてるお前、すっげぇ色っぽい……
 ズプリ……
 !!!!
 ゆっくり進入してきたのは、トラップの指。いつもパーティーを危機から救ってくれた、細くて長くて、とても器用な……指。
 いつのまにか、パンティははぎとられていて。その指が、ゆっくりと、わたしの中に進入してきて……
「ああっ……やあん……あ、やんっ……」
 ゆっくりと、かきまわすようにしながら奥へと進入していく指。そのたびに、くちゅ……ぐちゅ……と恥ずかしい音が立つ。
「や、やだっ、は、はずか……」
 しい、と最後まで言えなかった。
 トラップの指は、入ってきたときは違って唐突に引き抜かれた。
 ごそごそという衣擦れの音。やがて……
 目もくらむような激痛と快感が、わたしに襲い掛かってきた。
289トラパスクエスト18:03/09/14 23:07 ID:LwMTZHN+
「!!!!!!! あ……やっ、痛い、痛いっ……!」
 さっきの、言葉だけの「いたい」とは違う。引き裂くような痛み。狭い場所に、無理やり侵入してくる何かの感触。
「うっ……あっ……」
「うっ、痛い、痛いよぉ……トラップ……」
「や、やめるか?」
「……ううん。痛い、けど……やめないで……」
 ゆっくりと、ゆっくりとおしいってくるトラップ自身。そのたびに走る激痛。でも、痛いだけじゃなくて……
 言葉にできない、他の、感触……
 太ももを伝い落ちるのは、血? それとも……
「あ……あん、ふぁ……」
「おめぇの、中って……あったけぇ……」
 トラップの言葉を、わたしはほとんど聞いてなかった。
 ゆっくりと動き出すトラップ。そのたびに、痛みが走り、快感が走り、やがて痛みが遠のき……後に残ったのは……
 いつしか、わたしは、何も考えられなくなっていた。ただ、しびれるような快感、トラップを求める心、そんなものに振り回されていて……
 動きが早く、激しくなってきた。トラップの顔が、苦痛にゆがんだような表情を見せていて……
「はっ……駄目、だ、俺……もう……」
 ひときわ深く挿入される感覚。同時に……
 わたしの中で、熱い何かが弾ける感触。
 目の前が真っ白になり、背中がのけぞって……体がこわばって、そのまま動けなくなって……
 トラップが脱力する。引き抜かれると同時、太ももを伝い落ちる血と何か……
 わたし達は、そのまま、しばらく何も言えなかった。
290トラパスクエスト19:03/09/14 23:09 ID:LwMTZHN+
「…………」
 先に立ち上がったのはトラップ。もそもそと服を着て、それから再びタオルを出して、わたしの足元にひざまずいた。
「な、何……?」
「いや……ごめん。汚れちまった……な……」
 トラップは、真っ赤になって視線をそらしながら、タオルでわたしの足をぬぐってくれた。
 タオルに広がる、ピンクの染み……
 それを見て、改めて、恥ずかしくなってしまう。
 わたし……わたしっ……トラップと……
 慌てて毛布にくるまりなおす。もう寒さなんかどこかにふっとんじゃってたけど……
 起き上がろうとして、ずきんと響く痛み。その痛みが、さっきの感覚を、嫌が応にも思い出させてくれちゃって……!!
 気がついたら、涙がぽろぽろあふれてた。
 悲しいわけじゃなくて、痛いのが原因じゃなくて……これって……
「パステル……おめえ……」
 そんなわたしを見て、トラップはすごく困った顔をしていたけど、やがて、がばっと土下座した。
「ごめんっ!」
「……え?」
 えええええええええええええ!?
 ど、土下座? あのトラップが? パーティーのトラブルメーカーで、いっつも誰かに迷惑ばっかりかけて、そのくせ滅多なことじゃ素直に謝らないあのトラップが!!?
「わ、わりぃ……俺、とんでもないことしちまって……お、俺、謝ってすむ問題じゃねえと思うけど、その……」
「あ……」
 トラップ、勘違いしてる。わたしが、後悔してると思ってる……?
「あの、でも、これだけは信じてくれ! 俺、俺は……パステルのことが好きだ! ずっと好きだった、今も好きだ! だから、許してくれとは言わねえけど……いいかげんな気持ちじゃなかったことは、信じてくれ!」
「トラップ……」
 駄目、ちゃんと言わなくちゃ。
 いつもいつもわたしを助けてくれて、気遣ってくれて、励ましてくれたトラップ。わたしは、あなたのことが……
291トラパスクエスト20:03/09/14 23:09 ID:LwMTZHN+
「……好きだよ」
「え?」
 トラップの動きが止まる。へへ。いつもいつも驚かされてばかりだもん。たまには、わたしだって驚かせたい。
「わたしも、好きだよ。トラップのこと」
 動きを止めたトラップの頬に、そっと手をかける。
 冗談だと、思われたくないから。
 彼の唇に、そっと自分の唇を重ねた。
 と、その瞬間!!
 突然、広場にとんでもなくまぶしい明かりが弾けた!!
 
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
 あんまりにも突然のことだったから、わたしとトラップは、思わず互いの身体にしがみついてしまった。
 な、なに? 何なの?
「パステル、あれ……」
「え……?」
 トラップが指差したのは、泉の方向。
 そこに、一人の透き通った女の人が、立っていた……
 ……言っておくけど誤植じゃないからね。文字通り、体が透けて向こう側が見える、女の人……って……
「ゆ、幽霊!?」
『……わたしは、このダンジョンを作りし者……』
 わたしの言葉を無視して、女の人はしゃべり始めた。
『ここは、わたしが生涯でただ一人愛した人との思い出を封じ込める場所……わたしが欲しかったのは、地位でも、名誉でも、お金でもなく、彼だけだったのに……身分の差などというものが、わたし達を引き裂いた……』
292トラパスクエスト21:03/09/14 23:11 ID:LwMTZHN+
???
 わたしとトラップの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。この女の人……誰なんだろう??
『わたしの財産は、わたしを利用だけしてきた人たちなんかに渡さない……わたしの財産は、真実の愛を教えてくれた人にだけあげる……若い恋人達。美しい愛を見せてくれて、ありがとう……』
「あ……ねえ、ちょっと!!」
 わたしの呼びかけも空しく。
 女性の姿は、出てきたときと同様唐突に消えてしまった。
「なんだあ? 今の女……」
 トラップもぽかんとしてたんだけど。すぐにその目が見開かれた。
「おい、あれ!!」
「え?」
 振り向くと、泉の上に、ぽつりと浮かぶ宝箱が目に入った。
 あ、あんなの、さっきはなかったわよ……ね?
 トラップは、ズボンが濡れるのも構わずばしゃばしゃと泉に突入していった。
 はあ。まあ、当初の目的の品だからねえ。しょうがないけど。
「す、すっげぇ! パステル、来てみろよ!!」
「え、何? 何が入ってたの?」
 トラップの声に、わたしも近づいてみる。
 ……すすすすすすすごい!!
 何と、宝箱の中には、ぎっしり金貨がつまっていたのだった!!
 何で金貨がつまってるのに水に浮いてるのかって疑問は、まあともかくとして。
 これだけあれば、何ヶ月……ううん、何年も遊んで暮らせちゃう額だよ!!
「やりぃ! まあ色々あったけど、クエスト成功ってことだな!」
「う、うん……」
 ふ、複雑だなあ……
 何だかな。わたしとトラップって、さっき、その……何してたっけ? 告白してたんじゃなかったっけ?
 なのに、今はもうすっかり元のトラップに戻っちゃって。
 はあ。そりゃ、落ち込まれたりするよりは、いいけどさ。複雑……
293トラパスクエスト22:03/09/14 23:12 ID:LwMTZHN+
 トラップが金貨を数えるのに夢中になってるので、わたしはその間に服を着ようとしたんだけど。
 そこで気づいた。凍りついてた服が、もうほとんど乾いてる。
 そういえば、さっきまであんなに寒かったのに……今は、あったかい……もしかして、あの寒さって、あの女の人の魔法か何か?
 真実の愛を見せてくれて……
 謎解きが厳しい、誰も成功したことの無いクエスト……
 ――――あ!!
 わかった、わかっちゃったかも、わたし!
 もしかして、あのやたらと長いダンジョンとか、複雑に曲がってマッピングし辛かった道とか、急に寒くなったこととか、今までの苦労は、全部ぜーんぶ、愛情を試すための試練だったんじゃないかな?
 本当は、あの扉とかは全然関係なくて、色々過酷な状況に置かれて、それでも自分のことより相手を思いやる気持ちとか、そういうものを見るためにあの女の人が起こしていたんじゃないかな?
 だとすると……
 何となく嫌な予感がして、わたしはあわてて服を着た。着替え終わるのと、トラップが金貨を数え終わって宝箱を持ち上げるのが、ほとんど同時だった。
 その瞬間。
 突然、泉全体がものすごくまぶしい光を放ち、あたり全体を飲みこんだ!!
 
「うわっ!?」
「きゃっ!!」
「おわーっ!!」
「ぎゃっ!!」
 どれが誰の声なのやら。
 泉が光った、と思った瞬間。わたしはどこかに投げ出されたみたいなショックを受けて。
 光が収まって目を開けたら、そこは洞窟の外だった。
 そして、わたしとトラップ、さらには、別れたっきりだったクレイ、ルーミィ、シロちゃん、キットンにノル、ようするにパーティー全員が、洞窟の入り口前にちょこんと座っていたのだった。
294トラパスクエスト23:03/09/14 23:12 ID:LwMTZHN+
 ……やっぱり。
 何となくわかって、改めて服を着ていてよかったと思う。
 多分ね、洞窟の中で起こった試練って、全部、幻覚……みたいなもの、だったんじゃないかな?
 それで、わたしとトラップが幻覚を解いちゃったから、洞窟も消滅した、と。
 ちょっと入り口から覗いてみたけど、まっすぐな道は、10メートルも進んだら行き止まりになってるみたいだった。
「ななな、何が起きたんだ? 一体」
 クレイ達が目をぱちくりさせてる。そりゃー、クレイ達にしてみりゃ、わけがわからないだろうねえ……
 うーん。でも、どこまで、どうやって説明すればいいのやら。そもそも、わかったって思ってるのはわたしだけで、当事者のトラップにすら、いまいちよく理解してないみたいなんだもん。
 まあ、幸いなことは、トラップがしっかり抱えてる宝箱、その中身まで幻覚だったわけじゃない、ってことかな?
「あっ、トラップ! おまえ、どうしたんだよ、その宝箱」
「あー? これか? これはなあ……」
 言いかけて、トラップは口ごもった。
 そりゃ……本当のことは、言えないよねえ……
「わたしとトラップが見つけたの」
 しょうがない! クレイ達に嘘つくのは気がひけるけど。
 まだ、話したくないんだよね。恥ずかしいのもあるし……しばらくは、二人だけの思い出にしておきたいし。
「あのダンジョンね、道の一つだけが正解で、後は全部幻覚みたいなものだったみたい。トラップがこの宝箱見つけたから、幻覚が崩れたみたいなの」
「ふーん。そりゃ、お手柄だったな、トラップ」
「へ? お、おう。俺にかかれば、こんなもんちょろいちょろい」
 ……言いすぎだよ、トラップ。
295トラパスクエスト24:03/09/14 23:13 ID:LwMTZHN+
「ところでさあ、おまえら、途中で通信機に全然応答しなくなったけど、一体何してたんだ?」
 うっ!
 クレイの大変素朴な疑問に、わたしは思わず口ごもってしまった。
 あー駄目だ! やっぱり、嘘をつくのって、わたしには向いてないみたい。
「転んで壊したんだよ」
 そこに、何でもないことのようにトラップが言った。
「こいつ、途中でいきなり転んでさ。そんで通信機壊しちまったの。ったく、あんときは本当に焦ったぜ」
「そうだったのか。大変だったんだな」
 疑う気配も見せずに頷くクレイ。ううっ、心が痛む……
 ふっとトラップに目をやると、彼もわたしの方に視線を向けていた。
 ぱちん、と片目をつむってみせたトラップの行動に何の意味がこめられたのかは……知るよしもなく。
 
 ところで、クエストの後日談なんだけど。
 宝箱いっぱいの金貨だから、しばらくはゆっくりできるぞー! あれも買えるしこれも買えるぞー! なーんて思ってたんだけど。
 何と、トラップの借金を返したら、ほとんど何も残らなかったのよ!!
 全く呆れちゃう。一体いくらギャンブルに使ったのよ!
「しゃ、しゃーねえだろ! 借金ってのはなあ、利子がつくもんなんだよ!」
 トラップの言葉に、さすがの温厚なクレイもちょっと切れそうになってたもんね。
 まあ、でも、実際に宝を見つけたのはトラップなんだし、ということで。今回のことは大目に見るか! ってことで落ち着いた。
296トラパスクエスト25:03/09/14 23:15 ID:LwMTZHN+
 で、わたしとトラップのことなんだけど。
 あの後、皆が寝静まってから、こっそり二人きりで会ったんだよね。場所は、シルバーリーブの外れにある花畑。わたしのお気に入りの場所。
 話したいことが色々あったのも確かだけど、とりあえずわたしが考える真相、トラップにだけは教えておこうと思って。
 最初呼び出したときは、トラップ、すっごく嬉しそうだったんだけど。そう言ったら一転して不機嫌になった。何を期待してたんだろ?
 でも、最後まで説明して、それを聞いたトラップの感想。それにわたしは青ざめてしまった。
「愛を確かめる試練だあ? ってことはあれか? あの女は、俺達の行動をずーっと見張ってたってわけ?」
 ……うっ!!
 言われて思い出してしまった。わたしとトラップの……その、かなり恥ずかしい行為のことを。
 そりゃ、そりゃ相手はもう死んじゃった人だよ? で、でもさ、そういうのは関係なくて、っていうか、ひ、人に見られてたなんて――!!
 わたしは今更ながら赤くなったり青くなったりしてたんだけど、トラップはひょいっと肩をすくめてこともなげに言った。
「まっ、いいんじゃねえの。結局は、あの女のおかげですっげえお宝を手に入れられたってことだし」
「そ、そりゃ、確かに借金は返せたけど……でも、そういうことじゃなくって!」
「はあ? 何言ってんの?」
 わたしの言葉に心底不思議そうな顔をして、彼はこう続けたのだった。
「俺にとっての一番のお宝ってな、お・ま・え」
 ……え?
 ちょっとの間、意味がわからなくてぽかんとしてしまう。わたしの視線を受けたトラップの顔が、みるみるうちに真っ赤になって……
「も、もう二度と言わねえからな!」
「えー、もう一回、言ってよ。ね?」
 そうして、月の光が差す花畑で、わたし達は恋人同士のキスを交わした――


完結です。色んな意味で……逝ってきます
297名無しさん@ピンキー:03/09/14 23:37 ID:t+DorzGt
無粋なツッコミかもしれないが、
毛糸のパンツは最初に脱がないと、余計に体温奪うんじゃないか?
いや、作品の完成度はすばらしいと思うが、馬鹿なことを思いついた。
298SS保管庫の素人”管理”人:03/09/14 23:40 ID:qfTmvIXL
総量41kbにも及ぶ大作お疲れさまでした。

口ではきついことを言いながらもしっかり庇うところも、
リビドーに負けて突っ走ってしまうところも、
照れくさそうに気障なセリフを言うところも、
十分に原作らしさを持ってました。

しかし惜しい。
もう少しでみんなの前にすっぽんぽんで出るところだったのにw

これからもこんな感じの和姦系のほのぼのとしたお話を書いてもらえると嬉しいです。
299名無しさん@ピンキー:03/09/14 23:40 ID:Ex5Vza+C
神の光臨に初めて立ち会えたw
原作の雰囲気も生きてるなぁ・・・
素晴らしいでつ
300名無しさん@ピンキー:03/09/14 23:50 ID:DQTMciJh
神キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
いいです、逝かないで。
FQ読んで最初にはまったのはトラパスだったので、萌え尽きてます。
…多少女性向けな気もするけど、それはそれでまたいいです。

…FQ本スレ、何か殺伐としてる…(´・ω・`)ショボーン
でもここは、マターリしてて、雰囲気いいと思います。
願わくばこのマターリした雰囲気でいきたいですね。
301トラパスクエスト作者:03/09/15 00:16 ID:BhjktcCy
249〜 と 270〜 の作者です。
おお、何か好評みたいで嬉しい限りです。
また何か思いついたら書きたいと思います。
しかし自分にはどうしてもクレイ×パステルとかが思いつかなくて(w
トラップ×パステルが多いと思いますが

>>297
何故毛糸のパンツが出ないのか?
季節が夏という設定だったからなんです……
その割にはトラップ厚着じゃないか?
夏物のジャケットだったと思ってください

>>298
やはり皆の前にすっぽんぽんでさらした方がよかったでしょうか(w
個人的に原作の雰囲気を大切にしたいと思っているので
FQの世界観ではエロを書いてもどうしてもほのぼの系統に

>>299
原作の雰囲気を壊さないことに1番気を使いました。
ありがとうございます。

>>300
すいません。自分は性別♀なもので
男性向けエロがどーも苦手です。
しかし面白いといってくださった皆様のためにも、腐女子と呼ばれようとこれからも精進したいと思います
302名無し草:03/09/15 01:47 ID:mZBhRh8P
堪能させて頂きました!
ところで、勘違いかもしれないんですけどダンジョンって別の場所に飛ばされていたわけ
ではなく幻覚なんですよね?それで本当はただの洞穴なんですよね。
別のところにいるつもりでもほんとは一緒にいたわけですよね?

ということは、皆幻覚で分からなかっただけでトラップとパステルのいたしてるところに
立ち会って立って事ですか!?
303名無しさん@ピンキー:03/09/15 02:01 ID:9UD7T58I
>>301
電撃hpSPのパーティ分けでパステル&クレイに凹んでた
トラパス派の自分にとってまさに神でつ
エロパロ板なのにというのも変ですが
冒険の描写もしっかりしていて、物語として楽しめました。
続編希望です!お待ちしております(^∀^)ノ~
304名無しさん@ピンキー:03/09/15 14:45 ID:EYk2aQd8
このスレではトラパス・ギアパスが人気なんですか?
他の組み合わせじゃ駄目でしょうか。
305名無しさん@ピンキー :03/09/15 16:16 ID:U7+xjtfV
別のでもいいと思うよ。
306トラパスクエスト作者:03/09/15 18:58 ID:BhjktcCy
続編というか新作というか(トラパス小説)を考えていて
パステル、通りすがりの山賊に強姦されるとかいうネタが浮かんでしまった自分が欝(w

>>302
鋭いところに気づきましたね。実はそうです。
もし幻覚に囚われることの無い人(及びダンジョンマスター)が見てる光景を描写するとすると、
10メートルくらいしかない洞穴の中にぞろぞろ入っていく六人

その場で足踏み開始、会話開始
という大変奇妙な現象が起こったことに。
そう。実はトラパスの行為はパーティーメンバーの目の前で行われていたということに
だからどうしたといわれればそれまでですが。まあ、メンバーの中に幻覚を打ち破れるほど魔力の高い人間がいなかったことが幸いということです。

>>303
自分もあのSPのパーティ分けが納得いきませんでした(w
お褒めいただきありがとうございます〜。
ハートフルな続編が書けるように精進したいと思います。
307名無しさん@ピンキー:03/09/15 21:46 ID:tmuu4XER
今日ちらっとしてしまった妄想物語です…



事の始まりは、そう。
わたしたちの泊まるみすず旅館に、彼がやってきたのだ。

10日程前のことなんだけど…
クエストとクエストの、今はちょうど、間のお休み…みたいな感じで。
ずっと野宿をしていたからたまにはあったかいベッドで寝たいぞ!ということで、
わたしたちはシルバーリーブで各々アルバイトをしながら、お金を貯めつつみすず旅館に滞在していたんだ。

「キットン、遅いなぁ。どこまでキノコを探しに行ったんだ?」
「探すにしたって、ポタカン持ってってないんだもの。暗くて探せないんじゃないかしら?何かあったのかしら?」
「う〜ん…そうだな、もう少し待って帰って来なかったら、おれ、探しに行ってみるよ」
「そうね…」
まったく、何やってるのかしら?!
お昼に薬草を取りに行くと言って森に出かけたまま、夜になってもキットンが帰って来ないのだ。
この近くは慣れてるし、帰って来られないようなことにはなかなかならないと思うんだけどなぁ。
「ばーか、ほっとけよ。子供じゃないんだし、そのうち帰ってくんだろ」
これはトラップ。
「いや、万一ってことがあるだろ?もしかしたら怪我をして動けないのかもしれない」
「そうかー?心配しすぎだと思うけどねぇ」
トラップったら。
キットンが心配じゃないのかしら?クレイとは雲泥の差だわ。
「トラップ、あんたねぇ…」
腰に手をあててトラップに詰め寄ろうとしたその時…

「ぎゃっははははは!さすがはイルドさん!かなわないですよ、ぎゃっはははは!」
「何をおっしゃいますキットンさん、わたしのほうこそキットンさんの博識には脱帽です!」
308307 :03/09/15 22:17 ID:N93p/wFz
下げ忘れスマソ。続きです。

な、な、な…
なんだ、もう遅いっていうのにあの大音量は。
せっかくルーミィが寝てくれたのに、起きちゃうじゃない!
「…か、帰ってきたみたいだな、キットン」
「だから言ったじゃねーか!っつーか、うるせぇなぁ!どうしたってんだ!」
トラップもクレイも耳を押さえてる。
それもそのはず、キットンが2人いるかのような笑い声がみすず旅館じゅうに響き渡っているんだもん!
一度でも彼の笑い声を聞いたことがある人なら、この凄まじさを想像できるかもしれない。
ううう、明日きっとおかみさんに怒られちゃうんじゃないかしら?
キットンの馬鹿ー!!

「遅くなりましたー!あれ、皆まだ寝てなかったんですか?」
この言い草!
想像はしてたけど、キットンらしいというか、なんというか…
このひと言に、トラップのゲンコが飛んだ。
「ばぁーか!てめぇ、こんな時間まで帰って来なかったら、心配するに決まってんだろうが!」
「あいたっ!トラップ、あーたねぇ、すぐ暴力に訴えるのはよくないとあれほど…」
「て・め・ぇ。謝るのが先なんじゃねぇのか?おらおら」
「ぐ、ぐるじい〜…パ…パステル…た、助けてくださいよ〜」
キットンってば、全然悪いと思ってないみたい。
「やめろよ、トラップ。キットン、何も言わずに帰って来なかったから皆心配してたんだぞ。
一体なんでこんなに遅くなったんだ?」
「も…森の中である人に会って…盛り上がっていたんですよ」
クレイの問いに、キットンがぜいぜい言いながら答える。
まったく、もう…自業自得よ。
で、そのある人ってのは、さっきの声がキットン並の人なのかしら。

309307:03/09/15 22:56 ID:N93p/wFz
もうちょいエロなしです…お待ち下さい。

翌朝。
キットンが、昨夜知り合ったという人を紹介してくれた。
「はーじめましてー!!いやいや昨日はキットンさんにお世話になって。キットンさんのキノコの知識は凄いですねぇ!
あ、僕、イルドと申します。薬を作っているもんです」
「昨日ワタシがそろそろ帰ろうとしていたときに、イルドさんが野宿しようとしていたんですが、カゴに入っているキノコがまたツウな物ばかりだったんです!それで、思わず声をかけていたというわけです。いやー、偶然というものは不思議ですねぇ!」
「僕もちょうどお金がなかったんですがね、こんなに安く泊まれる宿があったとは!キットンさんには感謝しているんですよ。エベリンじゃ考えられませんね、この値段は」
近くで聞くと、この声、さらに凄いわ。
キットンがステレオになって、さらにパワーアップした感じ?
見ると、クレイとトラップだけじゃなくシロちゃんまで辟易した表情。
シロちゃんは伏せの姿勢で耳をふさいじゃってる。そりゃーねぇ。
ただひとり、ルーミィは猪鹿丁のランチに夢中で何にも聞こえてないみたいだったけど。

310307:03/09/15 22:58 ID:N93p/wFz
彼、イルドは普段各地をまわって薬の材料を集め、エベリンで調合した薬を売っているのだそうだ。
キットンと会ったときは、どうしても調合が成功しない薬があって、成功させるために必要な消耗品が尽きてきてしまって、そろそろエベリンに戻ろうか、どうしようか迷っていたところだったそうなのだ。
「この近くでしか取れないコケがありまして。いや、取れるんですけど成分が違うらしくて、ここらのが一番いいから、離れたくなかったんですけど色々と物が足りなくなってきましてね。
いやぁ、本当に助かりましたよ」
それで彼はそのまましばらくシルバーリーブを拠点に薬の調合をすることにしたみたいだった。
何日か同じ屋根の下で暮らしてみて、彼は声こそ大きいけれども悪い人じゃないということがわかった。
むしろいい人だった。時間があるとキットンとキノコ談義に熱中していたけれど、ノルがバイト中に怪我したときなんか、キットンが外出していて手当てをうろたえながらわたしがやっていたら、手伝ってくれてなおかつよく効くからと軟膏までくれたのだ。
「売り物じゃないんですか?」
「ああ、いいんですよ。使わなけりゃ薬もただのゴミ、ってね。あはははは!」
感動!
なんっていいひとなの。
このときクレイもトラップもバイトに行っていて、わたししかいなくて、ものすごーく不安だったから、なんだかイルドさんが神様のように見えた。
言いすぎ?ううん、ほんとうにそう思えたんだもん。


そうして何日かたった。
事件がおきたのは、ある日の午後、わたしが前回の冒険を原稿に起こしていたときのことだった…

311307:03/09/15 23:15 ID:N93p/wFz
「『そのときクレイはすかさず投げつけられたモノを切り払った』…と」
うーん。なかなか進まないなぁ。
クレイもトラップもバイトで、キットンはイルドさんの部屋に行っていて、ノルはわたしに気を遣ってくれてルーミィと遊びに行ってくれたから、
珍しく!部屋に1人という、執筆活動にはもってこいの環境なのに…なかなか進まない。
いつもうるさいからなぁ。それに慣れちゃったのかもしれないな。
「…きーめたっ」
今日はやめやめ!
お昼寝しちゃお。ここんとこ毎日構成考えてて疲れてたし。
たまには休息も必要よね!
柔らかいベッドにぼふっ、と身を投げる。
あったかーい。
幸せだなぁ。

そういえば大勢で冒険していて、こんなにゆっくり1人になれる時間なんてあんまりないよなぁ…
…どうしよっかなー。
うーん。
だいじょうぶかな?
いいよね、ルーミィもノルと出かけて、まだ帰って来ないし、今のうちだ!
「…ん……は…ぁっ」
とても久しぶりに、指先でパンティの隆起をなぞる。
312307:03/09/15 23:31 ID:N93p/wFz
初めて、こういう行動を覚えたのはいつだったか…覚えていないけれど。
「この部分をさわると変な気分になる」
それに気付いてから、たまに弄るようになったのだ。
でもでも、特別なことじゃないよね?
ドーマの女の子たちの間では一時期このことを内緒話するのが流行ったこともある。
したことがあるってだけでなんだかその子がオトナっぽく見えたんだ。
わたしは恥ずかしくて、そんなことしたことがない!と言い張っていたけど…

なんだか今日…いつもよりも感じるなぁ…
指先にトロトロの液体がまとわりつく。
ベッドの上に横たわりながら、両手を使ってパンティの中にも刺激を与えてみる。
トロトロが滲んでくる部分を擦りながら、もう一方の指で一番敏感な先端をつつく。
「あ…っ」
ああ、気のせいじゃない。あきらかにいつもよりも体か反応してる…!!
こんなの初めてだよ。
パンティが濡れすぎてしまった気がしたので、少しだけ(太腿の真ん中くらいまで。誰か帰ってきてもすぐに履けるように)ずりおろす。
なんで?なんでこんなに気持ちいいの…?

313307:03/09/16 00:12 ID:yHDUqvNj
久しぶりだからかな?
駄目だ…頭がもうろうとしてる。
天井もぼんやりしてきて、このまま最後までいけるかも…
そのときだった。
「おいしそうな匂いがするデシ…」
聞き覚えのある声とともに、パンティが破られる感じがした。
「ひゃう!」
何?!
今まで感じたこともない快感がびりびりと走った。
驚いて手をどけると、そこにはなんと、シロちゃんがいた!
ななななな。なんでー?!
ルーミィたちと一緒に遊びに行ったものだとばっかり…
ううん、それより今いちばん疑問なのは、なんでシロちゃんがわたしのアソコを舐めているのかってこと。
「ちょ…シロちゃ」
身体を起こしかけて、のけぞってしまった。
「んん…あああ!」
頭の中がまっしろになっちゃうよ!
シロちゃんの、ざらざらして薄くて長い舌がわたしの一番敏感な部分を乱暴に擦る。
「おいしいデシ…いい匂いデシ…」
シロちゃん、どうしちゃったの?!!
その戸惑いとは反対に、身体は初めての経験にケイレンしちゃってる。
もう一度身体を頑張って起こすと…げげげ!
シロちゃんの目が、黒と緑で明滅してる!
どういうことなの、これ!

頭の中で必死に考えつつも、まただんだん視界がぼんやりしてきてしまった。
314307:03/09/16 00:14 ID:yHDUqvNj
ここまで書いてなんだか鬱になってきました。
いいのか、こんなネタで…
シロパス???
315307:03/09/16 00:31 ID:yHDUqvNj
>>312
ドーマ→ガイナです。
逝ってきます…あと誤字が多いことにいまさら気付きました。
316名無しさん@ピンキー:03/09/16 02:01 ID:g5pjEgho
トラパスクエスト最高ー(゚∀゚)
原作者本人が書いてるのか、と思う位の雰囲気が出てた。
マジでまた何か書いてください!
317名無しさん@ピンキー:03/09/16 02:26 ID:No8bIBFL
>>307
ネバギバ
318名無しさん@ピンキー:03/09/16 04:02 ID:McxX3TFK
シロちゃんもお願いします、旦那
獣姦マンセー
319名無しさん@ピンキー:03/09/16 08:50 ID:T0zIPC3V
トラパスクエスト・・・・神!神ィ!神ィィィッ!!
作者様が、いかに原作を愛されているかがわかりました。
マジでエロ抜き・・・キスのみとかだったら、番外編なんかであってもおかしくないですね。
こんなふうにホノボノでエロチックなお話をまた期待しています。
320名無しさん@ピンキー:03/09/16 08:51 ID:T0zIPC3V
あげちゃった、ごみんなさい!逝ってきます。。。
321307:03/09/16 17:19 ID:lby5Or4l
続いてみます。

しごとを終えて帰ってきた俺とクレイは、みすず旅館の前でふと足を止めた。
「…ん?何だか妙な香りがしねぇか?」
「え?……あぁ、そういえば」
みすず旅館の中から、甘い香水のような香りが漂ってきている。
こういうお嬢様ぶった安っぽいいかにもな匂いが嫌いだったので、俺は思わず顔をしかめた。
「けっ、おかみのやつ香水でも買ったのかねぇ。こんな外まで香ってくるなんて、付けすぎたのか?」
鼻を袖口で押さえながら中へ入ると、その香りはまた強くなった。
おいおい。異常じゃねぇか?
どんなに強い香水だって、ここまで強いなんてさすがにないだろ。
クレイも同じことを考えたらしく、鼻と口を押さえたまま俺に目配せしてくる。
こいつはただごとじゃねぇ。

どうも、その強い香りは1階奥ののイルドの部屋から漏れているようだった。
目の前がくらくらするくらい鼻腔をくすぐる甘ったるい香り。
クレイはハンカチをマスク代わりにしているが、結構苦しそうだ。
俺もだんだんこの香りに参ってきた。いったい、なんだってんだ?
おかしいのはそれだけじゃねぇ。外から見たとき、こんな香りが充満していやがるのに、窓を開けている部屋がひとつもなかった。
「こんな状態なのに、パステルの姿が見えないのが心配だ。
俺はイルドの部屋に行ってみるから、トラップ、お前はパステルを探してきてくれ。」
「オーケー。まったく、あいつも冒険者だってのになにやってんだ?!」
俺とクレイは二手に分かれて、俺は上の階にパステルを探しに行った。
322トラパスクエスト作者:03/09/16 19:38 ID:O5YDkwUg
新作の構想練ってますが
その前にふっと思いついてパラレルワールドのトラパスなど書いてます。
つまり、キャラはそのままで世界観が違うという……
しかしこのスレではパラレル物はOKなのでしょうか?
323名無しさん@ピンキー:03/09/16 19:58 ID:UQ1jGM0/
>>322
個人的にはOK
これまでの作品を見ていれば、キャラを変に壊される心配もないし。
324名無しさん@ピンキー:03/09/16 20:03 ID:/e4awTiF
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325パラレルトラパス1:03/09/16 20:57 ID:O5YDkwUg
249〜 と270〜の作者です。
結構前作品が好評なのですごく勇気がいるのですが、ふと思い付いたので。
パラレルワールドのトラパスです。しかもまた長いし(´Д`;)
スレ汚し失礼


 ――わたしの使命は、とあるヴァンパイヤを退治すること。
 
 ヴァンパイヤ―始祖吸血鬼。全ての吸血鬼の源にして、不老であり、膨大な魔力、恐ろしいまでの自己治癒力を持つ、間違いなく最強最悪の魔物。
 彼の魔力の源は、人間の血液。生まれ持った鋭い牙による吸血行為は、彼に力を与えるだけでなく、血を吸われた人間を同じ吸血鬼に変えてしまうという――
 血を吸われた人間は、ヴァンパイヤと同じ吸血能力を与えられ、不老となり、
 日のあたる場所では力が半減し、十字架や純銀に弱くなるなど、ヴァンパイヤと同じ特性を持つようになる。ただ違う点は、吸血鬼にはヴァンパイヤ程の強大な魔力は備わっていないし、自己治癒力も弱い、ということ。だから、弱点さえつければ、倒すことは難しくない。
 だけど、吸血鬼に血を吸われた人間は、やはり吸血鬼になってしまう。そう。それはまさしく伝染病のようなもの。一度吸血鬼になってしまったら、もう二度と人間に戻ることはできない――不治の病のようなもの、と言われている。
 だからこそ、吸血鬼は――ヴァンパイヤは根絶やしにしなければならない。
 そのために、わたし達がいるのだから。
 ヴァンパイヤハンター……吸血鬼を倒すために生み出された、殺戮集団……
326パラレルトラパス2:03/09/16 20:58 ID:O5YDkwUg
「ついに、ここまで来たんだから……絶対に、倒すんだから……」
 わたしは、おまじないのように何度も何度もつぶやきながら、遠くに見える城の尖塔をにらみつけた。
 わたしの名前は、パステル。職業は、新米ヴァンパイヤハンター。
 ……といっても、ハンターになってから結構経つんだけどね。いまだに一人も倒したことがないから、新米の文字がなかなか取れない。。
 まあ、それについては理由があって。そもそも、わたしがハンターになったのは、あるヴァンパイヤを倒すため。その人を倒すためだけにハンターになったから、他の吸血鬼には手を出さない。
 だって、彼らもよく考えたら被害者だと思わない? 全ての元凶はヴァンパイヤであって、血を吸われて、無理やり人間をやめさせられちゃった人まで手にかけることは……わたしにはどうしてもできなかった。
 そりゃあ、そりゃあ吸血鬼だって、伝染する以上危険な存在に変わりはない、って理屈はわかるんだけど……
 でも、わたしは信じてるんだ。いつか、吸血鬼となってしまった人々を、元に戻す方法が見つかるって!
 そのためにも、わたしは他の吸血鬼には目もくれず、あるヴァンパイヤを捜すことだけに明け暮れていたんだ。
 そして、とうとう目的のヴァンパイヤの情報を入手したのが、一ヶ月前のこと。
 その情報を元に辿り着いたのは、シルバーリーブという小さな村だった……
 
「いらっしゃい。あなた、冒険者?」
 その村は、ヴァンパイヤの目撃情報を入手していくうちに辿り着いた村で。あ、始祖吸血鬼っていうくらいだから、厳密に言えばヴァンパイヤって呼ばれるべき存在なのは一人しかいないはずなのよ。
 だけど、ヴァンパイヤに血を吸われた吸血鬼達には、個人能力に差があって(これは、吸われた血の量に比例するとか、持って生まれた能力に比例するとか諸説乱れてるんだけど)、最近では強力な吸血鬼は皆ひっくるめてヴァンパイヤって呼ばれたりしてるんだ。
 そのせいで、情報が混乱してるんだけどね……とほほ。
327パラレルトラパス3:03/09/16 20:59 ID:O5YDkwUg
 で、その村にある猪鹿亭っていう小さな食堂で遅い食事を取っていたときのこと。
 リタっていうきさくなウェイトレスが色々と話しかけてきてくれて、わたしは久しぶりに楽しい食事を堪能できた。
 一人旅をしていると、食事を大勢で囲む機会なんてなかなかなくなっちゃうからなあ……
 若い女の子の冒険者は珍しいってことで、リタはわたしに色々な話を聞きたがったんだけど、仕事中はあまり話しこめないから、また夜にでも来てくれないか、って言われたんだ。
 どうせしばらくは滞在するつもりだったので、ありがたく招待を受けることにして、猪鹿亭が終わる間際の時間に再び訪ねてみると……
「やあ。君がパステル?」
 お店の中は、リタと一人のお客さんしかいなかった。
 それも、それも! そのお客さんが、今まで見たこともないくらいすんごいかっこいい人で!
 年の頃なら多分18〜20歳くらい。180センチ以上はありそうな高い身長と、本から抜け出してきた王子様みたいな正統派美形! 女の子なら誰でもうっとりしちゃうようなそんな人が、わたしに甘い微笑みを向けてくれて!
「ああ、パステル、いらっしゃい! よく来てくれたわね〜」
 リタは微笑みながら、わたしにお茶を出してくれた。お金を払おうとすると、「わたしが招待したんだからいいのよ」だって! いい子だなあ。
「彼はね、クレイって言うのよ。うちの常連さん。夕食しか食べに来てくれないのが残念だけど」
「ははっ、リタ。俺だって働いてるんだから、しょうがないだろう? ……はじめまして、クレイと言います。リタから話を聞いていたところだよ。冒険者なんだって?」
「え? は、はいっ」
 突然話しかけられて、思わずしどろもどろになってしまう。
 うーっ、こんなかっこいい人としゃべる機会なんて滅多にないんだもん。緊張するなあ。
328パラレルトラパス4:03/09/16 21:00 ID:O5YDkwUg
「ねえねえパステル、冒険者って、色んなところをまわってるんでしょう? 何か面白い話をしてよ!」
 リタは期待に胸を膨らませてるみたいだけど……うーんっ。
 正直に言えば、わたしは今まで、ヴァンパイヤを捜すためだけの旅をしてきたわけだから……つまり、情報収集が目当てで。モンスターと戦闘とか、難しいダンジョンに突入とか、そういう経験は無いんだよね……
 この村に来たのだって、「ハンター情報網」でヴァンパイヤ目撃情報があったからだし。
 うーんうーん、何て言えばいいのかなあ。
「あのね、リタ。わたし、冒険者って言っても、正確にはハンターなんだ。ヴァンパイヤハンター。知ってる?」
 嘘をつくのは嫌だったから正直に答えると、何故かリタとクレイの顔が強張った。……どうしたんだろう?
「この村に来たのもね、ヴァンパイヤを見たっていう情報があったからなんだ。二人は、何か知らない?」
「……パステル。捜しているのは、ヴァンパイヤなの? 吸血鬼じゃなくて……」
「え? うん……」
 あれ? リタはヴァンパイヤと吸血鬼の違いを知ってるの? 最近じゃ、結構ごっちゃにされてることが多いんだけど。
「確かに、この近くに、ヴァンパイヤが住む、って言われているお城があるよ」
 リタの言葉を引き継いだのは、クレイだった。
「だけど、お勧めしない。ヴァンパイヤがどれだけ怖い存在かは知ってるだろう? 噂じゃ、城の周辺は、並の人間じゃ近寄っただけで大怪我をするような強力な結界が張られていて、侵入すら容易じゃないらしいよ」
「でも! わたしはヴァンパイヤを倒さなければいけないの! お願い、城の場所を教えてくれない?」
「……村の皆は、危害を加えてこないのをいいことに、その城の存在を無かったことにしているわ。余計なとばっちりは、たくさんだから。もしヴァンパイヤが本気になったら、こんな村なんか一瞬で全滅してしまう。わかるでしょう? ごめんなさい。教えられないわ」
 リタはすまなそうに目を伏せると、カウンターの奥へと行ってしまった。
329パラレルトラパス5:03/09/16 21:01 ID:O5YDkwUg
 ……そっか。この村の人たちは、そういう考えなんだ。まあ、しょうがないよね。わたしは見た目はいたって普通の女の子だし。誰もわたしがヴァンパイヤを倒せるなんて思ってないんだよね……
 うーっ、でも、気になるなあ。ヴァンパイヤが近くにいるのに危害が加えられないって、そんなことあるのかな? もしかして、情報がガセだったのかも……
 そうやってわたしが一人でもんもんと悩んでいると、ずっと黙り込んでいたクレイが、ぽつんと言った。
「ズールの森を北に抜けたところ……」
「え?」
 わたしが思わず聞き返すと、クレイは素知らぬ顔でお茶を飲んでいた。
「俺は何も言っていないよ。ただ、初めてこの村に来たパステルに、周辺の地理を教えてあげるだけ。ズールの森っていうのは、シルバーリーブの近くにある森のこと」
 クレイ……それって、もしかして。
「初対面だけど、俺はパステルは信じてもいい子だと思った、ってだけ伝えておく」
 そういって、ぱちんとウィンクする姿も、どこまでも決まってるー!
 クレイは、わたしを信じてお城の場所を教えてくれたんだ。
「ありがとう! 早速行ってみるね!」
 クレイに別れを告げて、わたしはズールの森へと急いだのだった。
 
 ――あーん! でもでもでも!
 実は、わたしってば物凄い方向音痴なんだよね。初めての場所はもちろん、通いなれた道でも迷うことができるくらい筋金入りの。
 ズールの森自体は、シルバーリーブから見える場所にあったからすぐわかったんだけど……森に入っちゃったら、もうどこが北なのか全然わからなくって。
 そもそも夜だっていうのに森に入ろうとしたわたしがバカだっていうのは、よーくわかってるんだけど。
 でもでもでも! 村ではヴァンパイヤのことは禁句になってるみたいだし。とてもじゃないけどのんびり滞在しようっていう気にはなれなかったのよう……
 もちろんわたしも野宿くらいしたことあるけど、夜の森っていうのは初めて。風にそよぐ葉の音にさえびくっとなっちゃって……
 かといって、今更シルバーリーブに戻ろうにも、戻る道すらわからないのよ!!
「もう。どうしたらいいの……」
330パラレルトラパス6:03/09/16 21:01 ID:O5YDkwUg
 わたしが無謀だったのはよくわかってる。だけど、わたしは一日も早く、ヴァンパイヤを倒さなきゃならないんだから……
 ううーっ、情けなくって、涙がこぼれてきちゃった。泣いたってしょうがないのに……
 と、そのときだった。
「あんたさあ、こんなとこで、何してんの?」
 とんでもなく場違いな声が、頭上から降ってきた。
 ざざっという大きな音がしたかと思うと、すぐ近くの木の上から身軽に下りて来る一人の男の子。
 さらさらの赤毛をちょっと長めにのばした、茶色の瞳がいたずらっこみたいな輝きを持つ男の子。年は、多分17歳くらい? クレイよりちょっと年下みたいに見える。
 彼は、こんな真っ暗な森の中だというのに、全然迷うことなく、まっすぐわたしの方に向かってきた。
 えーっと……?
「あんたさ、もしかしてシルバーリーブの人? こんな時間に森で散歩なんて変わった趣味してんなあ」
「ち、違います!」
 何、このなれなれしい態度! そ、そりゃあ、わたしはあんまりハンターっぽく見えない外見をしてるけど……
「わたし、ヴァンパイヤハンターなの。ヴァンパイヤの城がこの近くにあると聞いて、彼を倒すためにここに来ました!」
 迷子になっちゃったけどね、という言葉は飲み込んで。
 わたしは精一杯威厳をこめて言ったつもりなんだけど、それを聞いた男の子の反応は、一瞬目を大きく開いたかと思うとぶはっと吹き出すという、大変に失礼なものだった。
「は、ハンター? おいおいお嬢ちゃん、嘘をつくにしたって、もっとマシな嘘をつきなよ」
「ほ、本当です!」
 言いながら、ハンター証明書かわりとなる、銀の十字架をあしらったペンダントをつきだした。
 男の子は、じーっとそれを見て、わたしを見て、またペンダントを見て……
 何故だか、物凄く落胆の表情を見せた。
「信じらんねえ……ハンターってのはそんなに人材不足なのか……そのうち世の中は吸血鬼に滅ぼされるな」
「し、し、失礼な!!」
 初対面なのに、何でこんなこと言われなきゃならないのよ!!
331パラレルトラパス7:03/09/16 21:02 ID:O5YDkwUg
 もう彼は相手にしないことにして、わたしはぷいっと背を向けて歩き出した。
 全く、クレイとは大違い! せっかくの幸せな気分が台無しになっちゃった。
 ところが!
 わたしが歩き出すと、背後からがさがさという音。
 振り向くと、何故か彼がついてきていた。
「……何でついてくるのよ?」
「別にー」
「用が無いならついてこないで!」
「用は無いさ。無いけどさー」
 ここで、男の子はひょいっと右手を指差した。
「ヴァンパイヤの城って、あっちだぜ。ちなみに、シルバーリーブに戻る道は、あんたが向かっているのとは全く逆の方向なんだけど、あんた、どこに行くつもりなわけ?」
 …………
 くっ、悔しいっ、悔しいけど……
「……ヴァンパイヤの城は、あっちなの?」
「そう。何、行きたい? ちなみに、道はまっすぐじゃないし一本道ってわけでもないぜ」
「……」
「案内してやろっか」
「お、お願いします……」
 悔しい悔しい悔しい悔しい――!
 
 そうして、わたしは彼と二人で歩き始めたんだけど。
「そういえば、あんた名前は?」
「パステル」
「ふーん」
 ……
「人に名前聞いたんだから、あなたも名乗りなさいよ!」
「んー何? パステルちゃん、俺の名前知りたいの?」
「……い、いいわよ、別に!」
「うそうっそ。俺のことはトラップって呼んでくれ」
 一時が万事こんな調子で、もう調子が狂うったら。
332パラレルトラパス8:03/09/16 21:03 ID:O5YDkwUg
 彼――トラップはトラップで、明らかにわたしのことからかって面白がってるし!
 道案内さえなければ、すぐにお別れしてるのに! ……って。
「ねえ、トラップ」
「何だ? 愛の告白ならお断りだぜ。俺、幼児体型には興味ねえんだ」
「――――!! ち、違うわよっ。あなた、シルバーリーブの人じゃないの?」
「……違うぜ。何で?」
「ううん。シルバーリーブの人たちは、ヴァンパイヤが危害を加えない限りは無関心でいたいって言って、何も教えてくれなかったから」
「ふーん。ま、賢明な判断だろうな。普通の人間でヴァンパイヤに挑もうなんて奴は、余程のバカだ」
 …………
 もしかして、わたし、バカにされてる?
「いやいやいや。もちろん、お強ーいハンター様は別だけどな?」
 やっぱり、バカにされてる!
 ……そりゃ、確かに道に迷って泣いてたようなわたしが、ヴァンパイヤに挑もうなんていうのは、バカなことかもしれないけど……
 でも、でも! わたしは……
 気がついたら、ぼろぼろ涙が溢れてきた。さっき、道に迷っていたときとは比べ物にならない、大粒の涙。
 泣いたって、どうせトラップにバカにされるだけなのに……
 ところが。予想に反してトラップは何も言ってこなかった。
 不思議に思ってちょっと顔をあげると、何だか物凄くうろたえたトラップが、こっちをじぃっと見てた。
 わたしと視線が合うと、彼はあたふたしながらハンカチを差し出してきてこう言った。
「わ、悪かったよ。ちょっと、言い過ぎた。だけどな、ヴァンパイヤってのは、半端な強さじゃねえんだ。いくらハンターとしての経験を積んでいてもだ。勝てるみこみもないのに突っ込むのはバカのすることだって、そう言いたかったんだよ」
「え……?」
「だから……あんたに、死んでほしくはなかったから……」
 ……もしかして、気遣ってくれてたのかな?
「……でも、わたしはどうしてもヴァンパイヤを倒さなくちゃいけないから」
「……」
「ごめんなさい。トラップを巻き添えにはしたくないから、お城へ案内してくれたら、すぐに帰ってくれていいから。だから、道案内だけ、お願い」
「……ついてこいよ」
 トラップは、それ以上は何も聞かず、ぐいっとわたしの腕を引っぱった。
333パラレルトラパス9:03/09/16 21:04 ID:O5YDkwUg
 真っ暗な道を、トラップは全く迷うことなくずんずんと歩いていく。
 そうして、30分くらいも歩いた頃かな?
 突然森が開けて、目の前にどどーんと大きな城が現れたんだ。
「トラップ……」
「ここが、シルバーリーブの奴らが言うヴァンパイヤの城だよ。おめえが捜してるヴァンパイヤと同一人物かどうかは、知らねえけどな」
 トラップの説明を、わたしは聞いてなかった。
 わたしにはわかるんだもん。間違いない、ここがわたしの捜している「あの男」の住む城だって。
 ここまですごく長かった。けど、ついにあいつを倒すことができるんだ!
「トラップ……どうもありがとう」
「あん?」
「後は、わたし一人で」
「お、おい!」
 トラップが何か叫んでたけど、わたしは振り返らずに走った。
 ありがとう、トラップ。初対面のわたしのことを心配してくれて。
 意地悪なことばかり言っているけど、あなたはとてもいい人だって、わたしにはわかるから。
 振り返ったら、あなたと一緒に帰りたくなっちゃうかもしれなから。
 だから、振り返らないんだ。
「パステル! 待てって!」
 後ろからトラップが追ってきてるみたいだったけど、もうわたしは城門に手を触れそうな位置だった。
 そのまま、門を開けようとして……
「っくしょう! 待てって言ってるじゃねぇか……!」
 がっ!!
 がくんと頭がのけぞった。一つにまとめてた髪の毛を、後ろからひっぱられたんだ。
 いったーい!! 何するのよう!!
 そう文句を言おうとした瞬間……わたしは見てしまった。
334パラレルトラパス10:03/09/16 21:05 ID:O5YDkwUg
 わたしの髪の毛を横なぎにひっぱって、無理やり方向転換させるトラップ。
 おかげで、わたしは横向きに倒れこむことになったんだけど……その反動で、トラップは背中からまともに城門に叩きつけられた。
 ――――バチバチバチッ!
「ぐはっ!!」
 その途端に弾ける閃光と、何かが焼け焦げるような嫌な臭い。そして、トラップの悲鳴。
「……トラップ?」
「だから……ヴァンパイヤの、城、には……結界、が……てめ、それ、でも……ハンター、か、よ……」
 ……あ!
 そういえば、クレイが言ってた。そんなこと。
 トラップ……わたしをかばって?
 それだけ言うと、トラップは力尽きたみたいに前のめりに倒れこんだ。
 ――きゃあああああああああああああああああああああああああ!?
 その背中が、真っ黒に焼け焦げて煙をあげているのを見て、わたしは森中に響くような悲鳴をあげていた――
 それから後のことは、よく覚えていない。
 とにかく、わたしは無我夢中でトラップを背負うと、闇雲に歩き出したんだ。
 どこをどう歩いたのかはさっぱり覚えてないんだけど、いつのまにか小さな小屋に辿り着いていたときは、全身から力が抜けそうになった。
 うーっ、駄目駄目! まだまだ倒れるわけにはいかないんだから!
 トラップのぐったり重たい体をひきずって、何とか小屋の戸を押し開ける。
 中は、ベッドとかテーブルとかは揃ってたけど、誰もいなかった。埃も積もってないし、誰かが住んでいるとは思うんだけど……
 ううん、考えるのはあとあと! 住人が帰ってきたら、そのときに謝ればいいわ!
 わたしはベッドにトラップの身体をうつぶせに寝かすと、背負っていたリュックをひっくり返した。傷薬とか、包帯とか、簡単な治療道具は旅の必需品だもんね。
 そうして、トラップの背中を改めて見たんだけど……
 ううっ、酷い怪我。焦げた服の切れ端を払ってみたら、血が焦げ付いてたもんね。
 トラップが庇ってくれなかったら、わたしがこの怪我をしてたんだ。ううっ、自己嫌悪……
 消毒薬を垂らしてぐるぐる包帯を巻きつけたけど、トラップは全然目を覚まさない。
 お願い、死なないで――!
 彼の手を握り締めているうちに、わたしはいつの間にか、眠ってしまったみたいだった。
335パラレルトラパス11:03/09/16 21:06 ID:O5YDkwUg
「おい。夜這いとは、意外と大胆だな、おめえ……」
 わたしは、皮肉気な声で目が覚めた。
 ……え? この声……
「トラップ! 大丈夫だった!?」
「ふん。あのなあ、派手に見えたけど、ただの火傷だよ、火傷。おめえ気が動転してたからわかんなかったみてえだけど。あの結界はんな強力なしろもんじゃねえよ」
「嘘! だって、昨日は……」
 昨夜と全くかわらないトラップ。
 わたしはあわてて包帯をほどいてみたけど、確かに、昨夜思ったほどはひどくないみたいだった。背中が全体的に赤く腫れて水ぶくれみたいになってるけど、薬を塗れば一週間くらいで治っちゃいそうな、その程度の火傷。
 ……暗かったから、見間違えたのかな?
「それよかさ、助けてやった恩人に、何か言葉はないわけ?」
 ……はっ! そういえば、わたし、何もお礼言ってない!?
「トラップ、本当にありがとう」
「んー。感謝してんなら、何か礼くれ。現金とか」
 わたしに向かってぐいっと突き出される手。
 ……何だか、お礼言って損しちゃった気になったんだけど……
「じょ、じょーだんだよ。マジにとるなよ」
 わたしのふくれっつらが目に入ったのか、トラップはあわてて弁解しながら体を起こした。
 そのとき、わたしは見てしまった。何気なく壁にもたれかかって、顔をしかめるトラップの姿を。
 そうだよね。痛くないはずがないよね。きっと、わたしが必要以上に責任感じないようにわざと明るく振る舞ってくれてるんだ……
 ううっ。わたし、トラップに何てお詫びすればいいんだろう?
 一気に落ち込んでしまったわたしを見て、トラップは何か考えていたけど、やがてポンと手を打った。
「そうだ。金はいらねえけど、かわりに一つ、俺の願い聞いてくんねえ?」
「……え?」
 何だろ。もちろん、わたしにできることなら何でもするつもりだけど。
「いいわよ。何?」
「まあまあ、ちょい、こっち来てみそ」
 ひょいひょいと手招きするトラップ。
 わたしが傍に近寄ると……
 ぐいっと手をつかまれた。気がついたときには、わたしは、トラップに抱きすくめられていた。
336パラレルトラパス12:03/09/16 21:07 ID:O5YDkwUg
 ――!!!!!??
 突然のことに、わたしの頭はパニックになった。
 え? え? 何……突然……
「あの結界は、そんな強力なしろもんじゃねえ」
 わたしをぎゅっと抱きしめたまま、トラップは続けた。
「俺なら、結界を解くことができる。いつだって、おめえを城に送り届けてやるよ。そうして、ヴァンパイヤを倒したら、おめえはここからいなくなっちまうんだろ? だから、一度だけでいいから……」
「トラップ……?」
「――おめえの、パステルのことが、好きになっちまったみたいなんだよ!!」
 !
 え……え……今、何て?
 わたしのことが……好き……? だって、昨日会ったばかりなのに?
 だけど、わたしは、嘘だ、とか冗談だ、って思えなかった。
 抱きしめられて、好きだって、言われて、気づいてしまった。
 わたしも、トラップに凄くひかれていることを。
「すっげえ卑怯なこと言ってるのは、わかってる。だけど……」
「――いいよ」
「あ?」
「いいよ。トラップなら……いいよ」
「パステル……」
 返事は、重ねられた唇だった。


とりあえずここまで。次回からエロ突入。
長っ(死
原作ファンの人、本当にすいません。うざかったら無視してください。
337名無しさん@ピンキー:03/09/16 22:37 ID:K12L/avV
トラパス大好きなので期待してます。
エロ楽しみでございます・・・・・・!!
338パラレルトラパス13:03/09/16 22:44 ID:O5YDkwUg
中盤です。いつになったら終わるんだろう(遠い目)


 軽く重ねられた唇。そのまま、首筋を這うようにして、襟元から内側へともぐりこむ。
 トラップの手が、わたしのブラウスのボタンを一つ一つ丁寧に外していった。
 もう片方の腕が、背中を支えながらゆっくりとベッドに倒される。
 見上げれば、すぐ近くにトラップの顔。
「――本当に――いいんだな?」
 わたしは、声を出さずに、軽く頷いた。
 正確には出せなかったんだけどね。もう、心臓が痛いくらいドキドキしてて。
 だってだって、よく考えたら、わたし、き、キスだって、まだしたことなかったのよ!?
 それが、昨日会ったばかりのトラップと……こんな……
 ブラウスのボタンが、全部外された。
 あらわになった胸。突然空気に触れて、ちょっと寒い。
 トラップの手が、ゆっくりと鎖骨のラインをなでた後、遠慮がちに胸を包み込んだ。
 ――ぴくっ
 初めて、男の人に触れられた。
 それは、何だかとても不思議な気分で。くすぐったいけど、ぞくぞくするみたいな、そんな気分で……
 手に力がこめられる。胸の……谷間の部分? から、頂点に向けて、徐々に指が這い登ってきて……そのたびに、わたしのぞくぞく感も強くなってきて……
 それと同時に、トラップの唇が、反対の胸におりてきて。
 ――ちゅっ
 優しく口付けられた後、そっと舌先で転がされた。
「やんっ!」
 指とは違う感覚。ううっ、わたし、わたし……
「おめえの、胸ってさ。きれいだな……白くて、ピンクで……」
「ぁんっ……よ、幼児、体型って……言った、くせに……」
 ううっ、息が荒れて、まともな言葉にならないっ……
「ばぁか。子供の方がさ、きれいなんだぜ……誰にも触れられてないから」
 しゃべりながらも、トラップの動きは止まらない。
339パラレルトラパス14:03/09/16 22:45 ID:O5YDkwUg
 手が、胸から首筋を伝い、背中へとまわった。背筋を優しく撫でられて、わたしは思わずのけぞった。
「あ、い、いやっ……」
「おめえ、背中が弱点か……?」
 呟きながら、トラップは耳たぶをかるくなめた。
「それとも、耳か」
「ああっ!」
 どうしよう、どうしよう。涙が出てきちゃった。
 嫌なんじゃないけど。すごく、すごく変な気持ち……
 体の奥が熱くなって、何だか、じわっと染み出てくるみたいな……
「おっ」
 トラップの手が、背中からお尻の方へと移動してきた。
 そのまま、スカートの中へともぐりこむ。
「おめえ……よりにもよって、こんなときに毛糸のパンツなんかはいてんなよなあ……」
 きゃあああああああああああああああああああ!!? そ、そういえば!!
「や、やだっ。見ないでっ。い、今脱ぐからっ」
「だぁめ」
 いたずらっこみたいな笑みを浮かべて、トラップはスカートのホックを外した。
「俺が脱がせてやるよ」
 ああああもうっ! 恥ずかしくて死にそうっ
 スルッ、とスカートが床に落とされた。
 トラップの手が、毛糸のパンツ(だってだって寒かったんだもん!)にかかり、徐々に足元へとずらされていく。
 そのまま、内股にくちづけ。そして、唇が、舌が、徐々に上の方へと……
「や、やだっ、そんなとこ……汚いよ、トラップ……」
「汚くなんかねぇよ」
 ひょいっと顔をあげて、トラップは微笑んだ。さっきとは違う、すごく優しい顔。
「おめえは、きれいだよ。どこも、全部」
340パラレルトラパス15:03/09/16 22:46 ID:O5YDkwUg
 ――ぴちゃっ
「やぁんっ!! あ、やだっ……」
 感じられる。ゆっくりとなぞるような動き。ときどき、強くなったり、弱くなったり、確実に刺激を与えるように……
 そのたびに、わたしは……何だか、何も考えられなくなっちゃって……
 トラップの唇が、離れた。今度は肩、もう一度首筋。
 強く吸い上げられるような感覚、そのたびにわたしの身体に、赤い痕が残って……
「ばか……襟の開いた服、着れなくなっちゃうじゃない……」
「バーカ。他の男なんかに、おめえの肌、見せるかよ……これは、おめえが俺のもんになったっていう、証明……」
 手が、わたしの、凄く大事なところに、触れられた。
 ぐちゅっ……という、何だか、すごく恥ずかしい音がする。
 ううっ。多分、わたしの顔、真っ赤になってるんだろうなあ……
 そのまま、トラップの細い指が、わたしの中へともぐりこんできた。
 ズプリッ
「っあ……あああああああ!」
 やだっ……何、この感じ……
 全身が火照ってきて、すごく、すごく熱くて……
 彼の指は、とても器用に動いた。中をかきまわすように、でも決して爪は立てないように。優しく、強く……
「やあっ、もう……トラップ、わたし……」
 トラップは、何も言わない。ただ、荒い息遣いだけが聞こえてくる。
 やがて、彼の指はゆっくりと動きを止めて引き抜かれた。そして……
 パサッ、という軽い衣擦れの音。ベッドのきしむ音。
 次に感じたのは、指よりも、ずっと大きな……力強いものが、入ってくる感覚。
341パラレルトラパス16:03/09/16 22:46 ID:O5YDkwUg
「っあ……い、いやっ……痛い、痛い痛いっ! やあっ、トラップ、痛いぃ……」
 びちっ、みちっ……と何かが引き裂かれる感触。それと同時に、少しずつ、奥へ、奥へと何かが侵入してくる感触。
 痛かった。すごく痛くて……でも、痛いけど、やめてほしくない、不思議な感覚で……
「っ……あ、うぅ……」
「うっ……」
 しばらく、わたしも、トラップも、うめき声しか出せなかった。
 最初はゆっくりと、段々と早く、トラップの動きが激しくなっていく。
 ズリッ、という動きだったのが、段々、ヌルッとした感じになって。
 痛くなくなって。しびれるような気持ちいいって感覚が襲ってきて。
「あんっ……あっ……――――!!」
「ぐっ……駄目だ……もう、いくっ……」
 どくんっ
 そんな音が聞こえたのかどうかは、わたしにはわからないけど。
 わたしの中で、何かが弾けたのは、わかった。
 頭の芯がしびれる感じ。わたしは、思わずトラップにしがみついていた。
 びくっ、びくっと痙攣を続ける彼の身体を、思い切り抱きしめて――
「ばか……いてぇよ……」
 トラップがつぶやくまで、彼が背中に怪我をしていたことすら、忘れていたのだった。

 ことが終わったその後、わたしは小屋を出た。
 まだ城には行かない。けど、トラップのために、何か作ってあげたくて。それに、火傷の薬も買いたいし――というわけで、シルバーリーブに向かうつもり。
 そうそう、聞いてびっくりしたんだけど、実はこの小屋、トラップが寝泊りしてる小屋なんだって!
 どうして村に住まず、こんなところに住んでいるのかはわからないけど……偶然って不思議。
 トラップは、「おめえが一人でシルバーリーブに行けるわけがねえ」とか失礼なこと言ってたけど、怪我人を連れて遠出するわけにはいかないもんね。道順は詳しく聞いたし、何より、ヴァンパイヤの城から案内もなくここまで来れたんだし! きっと大丈夫!
342パラレルトラパス17:03/09/16 22:49 ID:O5YDkwUg
……なーんて変な確信持って出てきたんだけど。
 やっぱり、わたしの方向音痴はそんなに簡単に治るものじゃないらしく。
 昼過ぎに小屋を出て、シルバーリーブまで30分もかからないと言われたはずなのに、どうしてついたときには辺りが暗くなりかけてるのかなあ……
 ううっ。トラップ、心配してるだろうなあ……怒ってる可能性の方が高そうだけど。
 わたしは閉まりかけてたお店を無理やり開けてもらって、料理の材料を買い込んだ。
 途中、「キットンの薬草屋」という看板も見つけて、火傷の薬も手に入れる。
 背が低くてぼさぼさの髪をしたそこの店主さんは、「火傷ですか? ふむふむ。水ぶくれができている場合は、よーく冷やした後、火であぶった針で水ぶくれをつぶし、水を抜いてですねえ……」なんて親切に治療方法を教えてくれた。
 とっても嬉しいんだけど、話がとっても長くてね……気がついたら、外は完全に真っ暗になっちゃってて……
 ううっ、どうしよう。またあの暗い森を歩くの、嫌だなあ……
 とぼとぼと村の外に向かう。途中、明かりと笑い声が漏れる猪鹿亭が目に入ったけど、そのまま通り過ぎてしまった。
 リタを巻き込んじゃ、悪いもんね……
 そうして、足早にそこを離れようとしたそのとき……
「パステルじゃないか?」
 突然、後ろから声をかけられて振り向いた。この声は……
「どうしたんだい。もう外は真っ暗だから、外に出ると危ないよ」
「クレイ!!」
 立っていたのは、優しく微笑むクレイだった。月明かりを長身に浴びて立っている姿は、やっぱりとってもかっこいい。
 通り過ぎる女の人が、みんな振り返ってるもんね。トラップに会わなければ、わたしもそうだったんだろうなあ。
「もしかして、野宿してるの? 何なら、俺が宿に口をきいてあげようか。大丈夫。パステルなら、言わなければハンターってばれないよ」
 それって地味に傷つくんですけど……まあいいや。クレイの顔はとっても優しくて、わたしのこと凄く心配してくれてるのがわかるから。
「ありがとう。でもいいの。わたし、待っててくれる人がいるから」
「へー、そうなんだ。じゃあ、邪魔しちゃ悪いかな」
「ううん。ありがとう、心配してくれて」
343パラレルトラパス18:03/09/16 22:50 ID:O5YDkwUg
 ぺこりと頭を下げて、わたしはそのまま別れるつもりだったんだけど。
「あ、パステル。昨日は、結局どうしたの? ヴァンパイヤの城は見つかった?」
 クレイに呼び止められてしまった。ううっ、早く帰りたいんだけどなあ。
「うーん、見つかったといえば、見つかったんだけど……」
「そうか。でも、今無事にここにいるってことは、ヴァンパイヤには会わなかったんだ?」
「うん……まあね」
「まだ挑むつもり? 本当に気をつけるんだよ。何しろ、あのヴァンパイヤは、今こそ何もしてないみたいだけど、昔は――」
 ……え?
 耳に入る、クレイの話。
 何、それ。どういうこと? それって……まさか……
 昨夜の出来事が、ぐるぐるとうずまく。
 まさか……まさか……
 気がついたら、わたしは走り出していた。
 後ろからクレイが何か言ってたみたいだけど、全然耳に入らなくて……
 でも、まさか。まさかっ――!!
 
 ズールの森にとびこんで、闇雲に走った。
 小屋の方角なんて、全然わからない真っ暗な道。そこを、ただ無我夢中で走り続けていた。
 嘘だよね……そんなこと、無いよね……
 わたしは、走りながら、髪の毛をまとめていたリボンに手をかけた。
 シュルッと音がして、蜂蜜色の髪がほどける。
 その間から滑り落ちたもの――それを、しっかりと握り締めて、つまづいても、枝にひっかかっても、ただ走り続けて……
「――おいっ!!」
 ぐいっ
 横手から突然伸びてきた手が、わたしの腕をつかんだ。
 つんのめりそうになったけど、そのまま優しく抱きとめられる。
 さっきまで、すごく愛しかった、手……
344パラレルトラパス19:03/09/16 22:52 ID:O5YDkwUg
「おめえなあ……どっち向かってんだよ。おせえから見に来てみれば……」
「トラップ……」
 ゆっくりと振り向く。目に入ってきたのは、眩しいくらいに明るい赤毛と茶色の瞳。
「お、無事にシルバーリーブにはついたみたいだな。ま、ちっとは成長したんじゃねえ?」
「トラップ、あのね」
「んで、何を作ってくれるんだ?」
 買い物袋を覗き込もうとするトラップを、わたしは押しとどめた。その顔をまっすぐに見上げる。
「……どーしたんだ、パステル」
 不思議そうな顔をするトラップの頬に、ゆっくりと手をあてて。
 わたしは、その唇に自分の唇を重ねた。
 トラップの目が見開かれる。優しい、甘い、そして悲しいキス。
 ……そして。
 唇をこじあけて、私はそっとなぞるように舌を差し入れた。最初で最後の、深い口付けを。
 その舌が、硬い、鋭い感触に触れる。
 ――やっぱり――
 ゆっくりと顔を上げる。目に入ったのは、とても、とても悲しそうな、トラップの顔。
「――あなたが、そうだったのね、トラップ」
「…………」
「あなたが、ヴァンパイヤだったのね、トラップ!」
 トラップの口が、わずかに開く。
 そこからかすかにのぞいているのは……決して人間にはありえない、鋭く尖った、犬歯。
 ――あの城のヴァンパイヤは、昔、多くの人々の血を吸い、恐怖をふりまいていた。『赤毛の悪魔』として、昔から恐れられてきたんだ――
 クレイの言葉と、トラップの赤い髪が、わたしの目に突き刺さった。


えーとりあえずここまで。次は終盤。
前回のトラパスクエストと同じくらいの長さ・・・でおさめられるといいなあ、と・・・
原作の雰囲気壊さないように、壊さないように・・・とこれまでずっと気を使ってきたんですけど
本当にどうもすいません・・・
345名無しさん@ピンキー:03/09/16 23:44 ID:g5pjEgho
おー最新だーパラレル編、ナイス(゚∀゚)
短時間でよくここまで書き上げたナー
原作の雰囲気も壊れてないし、
パラレルトラパスもイイ!続きがきになるー
さあ、ラストスパート!!
346307:03/09/16 23:49 ID:KIJoKIsr
遅くなりましたが続きです。っていうか途中に割り込む形ですみません。
用事があったので。気に障ってもスルーお願いします。


「パステル!!」
呼んでも返事がない。
くっそー。これで、平和に昼寝でもしててくれれば万々歳なんだが。
足早に階段を駆け上りながら、俺は心の中で毒づいていた。
この香りはやべぇ。
最初はただ甘いだけの香りだったが、いまおれの視界が歪んできているのは、十中八苦この香りのせいだろう。
「くっ…」
まっすぐ歩いているつもりなのに、どうしてか壁にぶつかっちまうんだ。
ぎしぎし軋む、いつものみすず旅館の床の音が反響して頭痛がさっきからひでぇ。
クレイは大丈夫なのか?…いや、ひとの心配をしている場合じゃないか。
はやく、あいつをみつけなくっちゃあ。

やっとのことで部屋の前にたどり着けた。
すでに頭の中はぐるぐると回っている。けっ、おれとしたことが、なんてザマだ!
息を吸い込んで止める。
脂汗がじっとりと滲む手で、ドアノブをゆっくりと引きあけた…
347307:03/09/17 00:42 ID:A+XotOOs
すいません、眠気に勝てず… 今日は寝ます
明日からエロはいります。
348パラレルトラパス20:03/09/17 00:59 ID:QvkmD7C8
続きです。かなり長いです。
しかも、原作の雰囲気が……未熟者ですいません……


 そう。今思えば。
 真っ暗闇の中でも、全然迷わなかった足どり。
 異常に早い傷の治り。
 何より――ヴァンパイヤが張ったと言われる、強力な結界を、『大したものじゃない。自分なら簡単に解ける』と言い切った、その自信が――
「――このまま、何も知らないままわかれちまえばいいと、そう思ったんだ……」
 とても苦しげなトラップの言葉。否定して欲しい、とどこかで期待していたわたしの心を引き裂く、残酷な言葉。
 トラップ。せめて――
 ――好きになる前に、本当のこと、教えて欲しかった!!
「ぱすて……」
 トラップの言葉が、止まった。
 髪の毛の中に隠していた、純銀製の針。
 ヴァンパイヤや吸血鬼を、唯一傷つけることができると言われるその針を、わたしはトラップの背中に突き刺していた――
「…………!」
 つぅっ、と彼の口から伝う、一筋の血。
 同時に、わたしの目からも、涙がこぼれていた。
 なんで、こんなことになっちゃったんだろう。どうして、彼を愛してしまったんだろう!
 ぐらり、とトラップの体がよろめいた。そのままわたしの身体を突き飛ばすようにして、2、3歩後ずさる。
 そして、背中に手をまわし、自分に刺さる針を引き抜いた。
「…………」
「――――」
 しばらく、わたしとトラップは何も言えなかった。
 ばかばかばか、こんなことしてる場合じゃないでしょ……? 早く、とどめを刺さないと。ずっと、この日のために旅を続けてきたのに。
 わたしの理性はそう告げているんだけど、わたしはどうしても動けなかった。
 トラップは何も言わない。だけど、その瞳。いつもいたずらっこみたいな輝きを秘めていたその茶色の瞳が、すごく悲しそうで見てられなくて――!
349パラレルトラパス21:03/09/17 01:00 ID:QvkmD7C8
「ひどいよ、トラップ」
 わたしは、思わずつぶやいていた。
「こんなに好きになっちゃったのに、今更――!」
 駄目、できない。
 わたしにはトラップを殺すなんて、できない――!
 わたしは目をそらして走りだした。
 どうしよう、どうしよう……
 わたしは、どうすればいいんだろう――
 
 どれくらい走ったのか、よくわからなかった。
 わたしの方向音痴は、こんなときでも治らないんだなあ……
 走りつかれて辺りをみまわすと、もうここが森のどこらへんなのか全然わからなくて。
 ヴァンパイヤの城も、シルバーリーブも、トラップの小屋も……どこに行く道もわからない。
 一度立ち止まったら疲れがどっと押し寄せてきて、わたしは近くの木の根元に座り込んだ。
 これから、どうすればいいんだろう――
 トラップ、大丈夫かな――
 って、何でトラップの心配なんかしてるのよ! わたしが、自分で、刺したのに――
 …………
 自己嫌悪に陥って、わたしは膝の間に顔をうずめた。
 わたし、どこまでバカなんだろう。ハンターとして、今まで何を勉強してきたんだろう?
 よーく考えれば、すぐに気づいてもよさそうな場面がいくらでもあったのに。
 どうして――
 そのとき、ざっと目の前の茂みが揺れた。
 ……え?
「パステル! やっと見つけた」
 一瞬トラップの姿を期待してしまったけど、違った。
「――クレイ」
「心配したんだよ。いきなり走っていくから……どうしたの?」
 目の前に立っていたのは、息を切らせているクレイ。全然変わらない、優しい視線。
 わたしは思わず、クレイに抱きついていた。そのまま、声をあげて泣いてしまう。
 うー、駄目、何をやってるんだろう、わたし。
 クレイのことが好きなわけじゃなくて、誰かにすがりたくて、甘えたくて……最低だね、わたしって。
350パラレルトラパス22:03/09/17 01:01 ID:QvkmD7C8
「ぱ、パステル? どうしたんだ?」
「クレイ。あのね、わたし……わたしっ……」
 わかっていてもやめられなかった。わたしは、今まで起きたことを全てクレイに話してしまう。
 あ、その、もちろん、言えないところもあるにはあったんだけど……
 クレイは、わたしが話し終わるまで、だまって聞いていてくれた。
 昨日会ったばかりのわたしに、何でこんなに優しくしてくれるんだろう。
「――それで、トラップを傷つけて、でも、殺せなくて――クレイ、わたし、どうしたらいいんだろう?」
「そんなことが――大変だったんだね、パステル」
 全部話を聞いて……クレイは、ぎゅっとわたしを抱きしめてくれた。
 これは、わたしを慰めてくれるために、甘えたくてすがりたくてたまらないわたしの気持ちを察して、やってくれたこと……だよね。
 クレイって、本当に優しい……ごめん、わたしが情けなくって。
 でも、今だけ甘えさせて。
 わたしは、ぎゅっとクレイに抱きついてもう一度泣いた。
 そんなわたしの髪を優しくなでながら、クレイは呟いた。
「そうか。そんな辛い目にあってたのなら、謝らなきゃな、パステル」
「……え?」
「俺、一つだけ嘘をついたんだ。昔は、たくさんの人の血を吸って人々を恐怖のどん底に陥れたヴァンパイヤ。本当はね……」
 ドスッ
 ……え?
 わたしは、何が起こったのか、全然わからなかった。
 何、この……わたしの、首、に刺さってるのは……
 わたしの肩に、顔を埋めるようにして、クレイは……
 急速に気が遠のいていく。わたしは、思わずクレイを突き飛ばしていた。
 大した抵抗もなく、クレイの体が離れる。
 月光を浴びて立っているクレイは、さっきと全然変わらず、やっぱりすごくかっこよくて。
 だから、余計に凄惨だった。口元から顎にかけて、べっとりと血で濡らしているその姿が。
「『黒髪の悪魔』……そう呼ばれていたんだよ、その城のヴァンパイヤは」
 さらさらの黒髪を夜風になびかせて、クレイは優しく微笑んだ。
351パラレルトラパス23:03/09/17 01:01 ID:QvkmD7C8
 頭がくらくらする。
 急に血を抜かれたせいで、わたしは貧血を起こしそうになっていた。けど、倒れるわけにはいかない。
 何で……どういうこと……
 夜にしか現れない……そう、確か、リタはクレイが夕食にしか来ないと……
 わたしも、夜しかクレイには会ったことがなくて。
 ヴァンパイヤは、昼間は活動できない……
 能力の低い吸血鬼なら、昼間でも動くことくらいは可能だけど。純粋な始祖吸血鬼、ヴァンパイヤは、昼間は全く動けなくなるという……
 わたしの頭の中で、ハンターになるとき覚えた知識がぐるぐるうずまいていた。
 でも、じゃあ、トラップは? 彼は、ただの吸血鬼だったの?
 わたしは……
「本当に、残念だよ、パステル……俺、何故か、君のことが一目見たときから気になっていてね……遠い昔のことを、やっと思い出せそうだと思っていたのに」
「…………」
「君が、ハンターでなければ。俺を狙ってきたんでなければ……俺も……」
「っ……触らないでっ……」
 わたしは、反射的に護身用に持ち歩いていたショートソードを抜き放っていた。
 それが、クレイの腕をかすめてわずかに血が流れる。だけど、クレイは全然気にもしてないみたいで、わたしの方に手を伸ばしてきた。
 その腕の傷が……わたしが見ている前で、瞬く間に塞がって、止まった。
「ああっ……」
「無駄だよ。君に、俺は傷つけられない……ハンターなら、わかってるだろう? ヴァンパイヤの能力のことは」
 クレイの手が、わたしの頬に触れる。
「……人の血を吸いたくなったのは、久しぶりだ。『彼女』との約束だったのに。どうしてだろうね? パステル、君を見ていたら、どうしても……」
「――そいつから離れやがれ、この吸血生物が……」
 ……!!?
 不意に響いたその声は、忘れたくても忘れられない声。
 ああ、でも、まさか……
 クレイがゆっくりと振り向く。視界が開けて、そこに立っている人が目に入った。
 わたしが、今1番好きな人――トラップ。
352パラレルトラパス24:03/09/17 01:04 ID:QvkmD7C8
「やあ、トラップ。吸血生物って言い方は無いだろう? ――お前も同類なのに」
「へっ、おめえと一緒にすんな……とにかく、パステルから離れろよ。――そいつは俺のもんだかんな」
「彼女はそれを望んでいるのかな?」
 クレイの口調は全く変わらない。トラップは、やっぱりわたしが刺した傷が痛むのか、すごく辛そうで……
 そして、わたしは全然状況がわからなくて。
 うーっ、これってどういうこと? 一体、クレイとトラップはどういう関係なの?
 わたしの視線を感じたのか、クレイはちらりとわたしの方を見て答えた。
「混乱させているようだね。パステル、トラップは――俺が、1番最初に血を吸った人間だよ」
 ――!!?
 クレイの言葉に、トラップが苦い顔をする。
 何……ってことは……
「そう。トラップを直接吸血鬼にしたのは俺ってことになるな。パステル、ハンターなら知ってるだろう? 吸血鬼の能力を決定する要因の一つに、かんだ相手がどれだけヴァンパイヤに近いかで決まる、というのがあるんだ。
 つまり、俺が直接血を吸った奴は、間違いなく吸血鬼の中でも最強の能力を持ってるってことになるね」
「へっ。それをありがたいなんて思ったことはねえがな……てめえを倒すためだけに、俺は今日まで何百年も生きてきたんだ」
「おまえもこりない奴だなあ。今まで何百回、何千回と挑んで、お前が俺に勝てたことがあったか?」
「へっ。何千回、何万回負けようと、次に勝てばいいんだよ……今回は負けねえ。パステルを傷つけたおめえを、俺は許さねえ」
「トラップ……」
 わたし……わたしは、本当に……
 何て……バカだったんだろう……
 にらみつけるトラップと、その視線を静かに受けるクレイ。
 トラップの足元はふらついている。いくら吸血鬼で最強だからって、傷の治りが早いからって……純銀製のもので傷つけられた傷は、そう簡単には治らない。
 だけど、ヴァンパイヤは……もちろん、他の武器より少しはマシだろうけど、純銀製でも致命傷を与えることは、すっごく難しいはず。それくらい、自己治癒力がとびぬけていて……
 トラップはそれをわかってるはずなのに、わたしのために戦おうとしてくれてる! トラップのことを信じられなくて、傷つけたわたしのために――!
 だから、わたしは……
353パラレルトラパス25:03/09/17 01:05 ID:QvkmD7C8
じりっ、とトラップが動く。クレイはただ彼を見つめるばかり。
「覚悟しやがれ……吸血生物!」
「ああ、かかって、こ……!?」
 ごふっ
 突然のことだった。
 あまりにも突然のことで、走りかけていたトラップは、つんのめって転びそうになっていた。
 クレイは、何が起きたのかよくわかってないみたい。
 クレイの口からあふれ出ている、血の塊。
 急速に衰えていく、魔力の波動。
 がくがくと震える身体を抱きしめて、クレイは茫然としていた。
 ――やっと、効いてきたみたい。
「クレイ、トラップ……こんな話、知ってる?」
 わたしは、貧血でくらくらする頭をおさえながら言った。
 全ては、この日のために。この日のために、今日まで――
「毒を持って、毒を制す……強い毒の効果を打ち消す、あるいは中和するために、あえて弱い毒を利用する、みたいな意味なんだけど……ヴァンパイヤは、強大な力を持っている。人間の血を吸うことで、ますます力を得る。でも、もし――」
 夜風が、わたしの髪をなでて通り過ぎた。それまで髪の毛で隠れていた首筋が、あらわになる。
 さっき、クレイに血を吸われたはずなのに、傷口一つ残っていない首筋――
「ヴァンパイヤが、ヴァンパイヤの血を、吸ったとしたら……?」
 そして、わたしは微かに口を開いてみせた。
 夜目の効くトラップなら、きっと見えているはず。
 わたしの口からのぞく、二本の小さな牙に――
354パラレルトラパス26:03/09/17 01:05 ID:QvkmD7C8
「パステル――おめえ――」
「バカなっ……ヴァンパイヤ……始祖吸血鬼は、俺一人のはず! パステル、君は……」
 トラップの言葉も、クレイの言葉も、わたしには聞こえていなかった。
 涙が止まらない。だって、やっと会えたんだから。
「確かに、ヴァンパイヤ――純粋なヴァンパイヤは、あなた一人よ……クレイ。血を吸われて吸血鬼になった人は、例えどんなに強い力を持っていても、結局はヴァンパイヤとは違う存在だから……でも」
 そのとき、クレイの顔が強張った。きっと、気づいたんだ。わたしの正体に。
「まさか――君は、マリーナの……」
 それは、お母さんの名前。
 ヴァンパイヤを愛し、そして愛されて、自ら人間であることをやめ――最終的に、人間達に狩られて死んだお母さんの名前。
「やっと、会えた――ずっと捜していたよ、お父さん――」

 わたしの頭の中を、お母さんとの最期の別れがぐるぐるまわっていた。
 ――パステル、あなただけでも、逃げて――
 ――お母さん、嫌だよ、お母さん!!――
 ――駄目、ね……お父さんに、迷惑かけたく、なくて……――
 ――わたしがいると、お父さんの足手まといになるから――
 ――あなたをずっと守ってあげたかったけど――
 ――ごめんね、パステル――
 
「お母さんは、最期まで、お父さん……クレイのこと考えて死んだよ」
「…………」
「クレイがヴァンパイヤじゃなければ……お母さんは……」
 ごぼりっ、と音を立てて、クレイの口からまた鮮血があふれてきた。
 ヴァンパイヤがヴァンパイヤの血を吸うと、血と血が滅ぼしあって、ヴァンパイヤとしての能力を失ってしまう。
 ヴァンパイヤを倒せるのは、ヴァンパイヤのみ――だから、わたしは……
355パラレルトラパス27:03/09/17 01:06 ID:QvkmD7C8
「クレイが……血を吸ったせいで、トラップはいっぱい苦しんだのよ……他の、たくさんの人も……あなたを倒さなければ、この悲劇はどこまでも終わらない。だからわたしは、クレイを倒すために、ずっと、ずっと一人で生きてきたんだからあ!!」
「……パステル……」
 わたしの言葉を、クレイは聞いてないみたいだった。
 聞こえていないのかもしれない。今、クレイの体の中で、クレイの血とわたしの血が、戦って、身体をぼろぼろにしているはず……
 すごく苦しいはずなのに。クレイは何故か、歩き出した。わたしの方へ……
 そして。
「!? おい、パステル、逃げ――」
 茫然としていたトラップが我に返ったときは既に遅く。
 わたしは、クレイに抱きしめられていた。
「――え?」
「……ごめんな、パステル……」
 クレイは、弱っていく体から、せいいっぱいの力を出しているみたいだった。
 だって、全然違うんだもん。さっき抱きしめられたときは、ちょっと苦しいな、っていうくらいだったのに……今は……
「ごめんな。今まで、ずっと辛かったんだな……やっとわかったよ。君に初めて会ったときから、どうしても放っておけなかった……君が、マリーナに似ていたから。顔じゃなくて、何というのかな……全てを包み込むような、優しい雰囲気が……」
「――クレイ?」
「いいんだよ、パステル……俺は、どうせ長くなかったんだ。マリーナの、頼みで……もう、ずっと、人の血を吸っていなくて……力は、どうせ尽きかけていたんだ……」
「!!」
 クレイの言葉に、わたしも、トラップも、驚きを隠せなかった。
 ああ……そう、そういえば……
 リタが言っていた。ヴァンパイヤは何もしていない。誰も襲っていない。だからわたし達は彼に関わらない、と……
 クレイは、ずっと人の血を吸っていなかった。お母さんに言われて――!
356パラレルトラパス28:03/09/17 01:08 ID:QvkmD7C8
「マリーナは……俺についてくるために、自ら、俺に血を吸われて……でも、彼女は、とても人間を愛していたんだ……『わたしで、血を吸うのを最後にして』って……俺は……」
「クレイ……?」
 クレイの言葉が、だんだん弱くなっていって……
 まさか……まさか。わたし、まだ何もしてない。クレイ、それほどまでに体が弱っていたの――!?
「彼女の、愛した、人間達と、関わりたくて……シルバーリーブに……ああ、神に憎まれた俺でも、死ぬ間際には、恩恵を受けることができたみたいだ……パステル、まさか、最期に君に会える、なん、て……」
「クレイ!? クレイ、待って……」
 クレイの体から、段々力が抜けてきて、わたしじゃ、彼の身体を支えきれなくなったそのとき。
 不意に、それまでずうっと黙っていたトラップが、こっちに向かって歩き出した。
 彼の目に浮かぶ感情が何なのか、わたしにはよくわからなかったけど……
 でも、わたしは見ていた。トラップが振り上げたのは、純銀の針。
 その針が、クレイの体を刺し貫くのを――
「トラップ!?」
「……パステルなんかに、殺されてんじゃねえよ……」
 トラップは、すごく辛そうにつぶやいた。
「おめえを殺すのは俺だって、そう言っただろう!?」
「トラップ、何を……」
 言いかけたわたしを制したのは……刺されたクレイ自身だった。
「わかってるさ、トラップ」
 クレイが、ゆっくりと離れる。もう、その身体からは、ほとんど魔力を感じない。
「ああ、そうさ。俺を殺すのは……殺したのは、お前だ、トラップ」
「そうだ。てめえは、俺に刺されて、死ぬ」
 トラップの言葉に、クレイは……初めて会ったときと同じ、優しい微笑みを浮かべた。
「――パステルを、よろしく頼むよ」
「けっ。言われなくたって。てめえよくも俺のパステルに抱きついたな。あの世で会ったら覚えてろよ」
「ははっ……了解……」
 言い終わると、クレイはゆっくりと振り返った。じっとわたしを見つめて……
「……さようなら、パステル」
「クレ……」
 ざあっ
 ひときわ強い風が吹いた。
 それと同時に、クレイの体が……一瞬にして灰となり、その場に崩れ落ちた。
357パラレルトラパス29:03/09/17 01:10 ID:QvkmD7C8
 ……あ……
 それを見たとき、わたしの心に浮かんだのは……ヴァンパイヤを倒した、という満足ではなく……
「クレイ……お父さん……お父さん――!!」
 お母さんが死んだときと同じ、強い悲しみだった――
 
 その場に残ったのは、灰の塊と純銀の針。
 わたしは、しばらくぼんやりとそれを見つめていた。
 わたしは、ヴァンパイヤを倒すためだけに生きてきて……
 わたしもヴァンパイヤの血が流れているから、不老で……
 でも、一度も血を吸ってないから……きっと、いつかはお父さんみたいに……
「……おい」
 突然声をかけられて、わたしはとびあがりそうになった。
 目の前に立っているのは、すごく不機嫌そうなトラップ。
「てめえ、俺の存在忘れてんじゃねーよ!!」
「トラップ……」
「何、ぼけーっとしてんだ!! んな暇があったらなあ! あったら……」
「……あったら?」
「お、俺の心配でもしやがれ!!」
 ……はあ??
 思わず目が点になってしまう。こんなときにまで、何でそんなことが言えるのよこの人は!!
「俺はな、おめえに勘違いで刺されて死ぬとこだったんだぞ! その前にもかばって大怪我したし、ちっとは感謝して反省しろっ」
「! か、感謝してるわよっ! 反省だってしてるわよっ。何よもうっ、こんなときに……トラップのバカっ!」
 あんまり勝手な言い草に、わたしが思わず立ち上がると、トラップは、にやっと笑った。
「やーっと、泣きやみやがった」
「……え?」
「おめえは、笑ったり怒ったりしてるほうが、いい」
 言われて初めて、わたしは涙が止まってることに気づいた。
358パラレルトラパス30:03/09/17 01:11 ID:QvkmD7C8
 ……あ……
 それを見たとき、わたしの心に浮かんだのは……ヴァンパイヤを倒した、という満足ではなく……
「クレイ……お父さん……お父さん――!!」
 お母さんが死んだときと同じ、強い悲しみだった――
 
 その場に残ったのは、灰の塊と純銀の針。
 わたしは、しばらくぼんやりとそれを見つめていた。
 わたしは、ヴァンパイヤを倒すためだけに生きてきて……
 わたしもヴァンパイヤの血が流れているから、不老で……
 でも、一度も血を吸ってないから……きっと、いつかはお父さんみたいに……
「……おい」
 突然声をかけられて、わたしはとびあがりそうになった。
 目の前に立っているのは、すごく不機嫌そうなトラップ。
「てめえ、俺の存在忘れてんじゃねーよ!!」
「トラップ……」
「何、ぼけーっとしてんだ!! んな暇があったらなあ! あったら……」
「……あったら?」
「お、俺の心配でもしやがれ!!」
 ……はあ??
 思わず目が点になってしまう。こんなときにまで、何でそんなことが言えるのよこの人は!!
「俺はな、おめえに勘違いで刺されて死ぬとこだったんだぞ! その前にもかばって大怪我したし、ちっとは感謝して反省しろっ」
「! か、感謝してるわよっ! 反省だってしてるわよっ。何よもうっ、こんなときに……トラップのバカっ!」
 あんまり勝手な言い草に、わたしが思わず立ち上がると、トラップは、にやっと笑った。
「やーっと、泣きやみやがった」
「……え?」
「おめえは、笑ったり怒ったりしてるほうが、いい」
 言われて初めて、わたしは涙が止まってることに気づいた。
359パラレルトラパス30:03/09/17 01:12 ID:QvkmD7C8
ぎゃあっ、しまった!! 訂正、こっちが本当の30です!!


「ちなみに、ヴァンパイヤは俺が倒したわけだが」
「……何でトラップ一人が倒したみたいな言い方なの?」
「とどめ刺したのは俺だ! 俺が刺さなきゃ、仮にもヴァンパイヤだぞ? どんな手使っても生き延びたに決まってるだろーが。おめえは殺してない。誰も、殺してねえからな」
 ……あっ!?
 そのとき、わたしは初めて、トラップとクレイの最期の会話の意味がわかった。
 二人とも……それを気にして……
 わたしが、お父さんを殺したことを、後になって気に病まないように、と……
「まあいいや。話を戻すぞ。そういうわけで、おめえの目的は達したんだよな? で、これからおめえはどうするつもりだ?」
「……え?」
 聞かれて、初めてわたしはそのことを考えてなかったことに気づいた。
 そういえば、今までヴァン……お父さんを捜す、ってことだけに一生懸命だったから。
 後のことなんて、なーんにも考えてなかった……
「……どうしよう」
「おめえ、本当に何も考えてねえの? ってか思いつかねえ?」
「……え?」
 トラップは何を言いたいんだろう?
 わたしがぽかんとしていると、トラップは何だかぶつぶつと悪態をついていた。
 鈍い奴とか、俺に言わせるなとか……本当に何のこと?
「……だあら、俺も吸血鬼なわけで……んで、クレイを倒すためにずーっと生きてきて。今わかったんだけど、俺とおめえって似てるよな」
「うん……」
 きっと、だからひかれあったんだ、という言葉は、言わないでおく。
「だから、俺も、おめえと同じ、この後どうすればいいかわかんねえんだよ!」
「え、トラップも? 人のこと言えないじゃない!」
「ううううっせえ! だ、だから……」
 トラップは、何だか赤くなって黙り込んでしまった。
360パラレルトラパス31:03/09/17 01:14 ID:QvkmD7C8
 ……?
 あれ、もしかして、トラップの言いたいことって……
「だ、だから……言ったじゃねえか! 俺、パステルのこと好きになっちまったって……その気持ち、変わってねえぞ、言っとくけど」
「……うん」
「あ?」
「わたしも変わってないよ。トラップのこと、好き」
 意外とすんなり出てきた本音に、自分でもびっくりしてしまう。
 だけど、本当のことだもんね。
 それっきり、しばらく二人で見詰め合ってたんだけど……
 やがて、トラップが真っ赤な顔を伏せて、手を差し出した。
「……これからは、俺と一緒に、生きていかねえか? 二人で、生きる意味を見つけようぜ」
「……うん……」
 いつかは、吸血鬼が人間に戻れる方法が見つかるかもしれない。
 いつかは、ヴァンパイヤが血を吸わなくても生きていける方法が見つかるかもしれない。
 だから、その日まで――生きていかないと。
 わたしは、トラップの手を、ぎゅっとにぎった。


か、完結です……一日でこれ書くのは辛かった……というか
長々と、本当に、本当にすみませんっ。
し、しかも原作の雰囲気大事にとか言っておきながら、どんどんどんどん原作のイメージぶっ壊してますね……
本当にすみませんでした。というか文字通り逝ってきたくなりました
パラレルにはもう二度と手を出さない・・・
361名無しさん@ピンキー:03/09/17 02:09 ID:rFE7CejL
なんて完成度の高さ…。こんなの1日で完結させたなんて
もはや神を超えてるレベルじゃないかと。
まだ読んでないけど、MOSO本なんぞでこの作者さんの作品を
超えるものは絶対ないと確信しております。
362パラレルトラパス作者:03/09/17 02:52 ID:QvkmD7C8
>>361
ありがとうございます。自分でも信じられません<一日で

三本続けてトラパス書いてきましたけど、書けば書くほど長くなるのは何故だろう
エロ描写が長くなるのは何故だろう
トラップが素直になっていくのは何故だろう
パラレルのトラップはトラップじゃない、と思いました。反省
363名無しさん@ピンキー:03/09/17 11:13 ID:8bErAeM4
イイッ!スゲ―イイヨー!!オモシロカッタ!!!
後半はエロ無かったけど、ぜんっぜんOK(゚∀゚)
お疲れ様です!ゆっくり休んでまた書いてください。
364名無しさん@ピンキー:03/09/17 16:04 ID:K6PwPDUD
えーパラレルかよって思った私がバカだった。
今の原作よりもずっとフォーチュンらしいのではないか。
私の好きなフォーチュンて、こんなキャラ達だった。
読ませてくれて、ありがとうございました。
せっかくこんなに素敵な作品を書かれるのだからこそ、
そんなご自分で卑下しないほうが、楽しんで読んでます
こちらとしても、読後感が良いと思いますよ。
365名無しさん@ピンキー:03/09/17 18:36 ID:uMDJqjgu
232の続きはまだかいのう 新人神もバッチグーなんぢゃが
366名無しさん@ピンキー:03/09/17 19:59 ID:XbAa5edx
シロパスは糸冬了なのか?個人的にハアハアなのだが
367名無しさん@ピンキー:03/09/17 20:00 ID:szlgCcpH
正直トラップ好きじゃないのに好感が持てた>パラレル
>>232の作者さんも皆ガンガッテー
368名無しさん@ピンキー:03/09/17 22:52 ID:HAhlWmvs
トラパス作者様スゴイです、ホント。
そう来たか〜という展開に、エロなしでも十分楽しめそうなストーリー
トラパスクエストもそうですが、
本物より本物ちっくな雰囲気を出しているのがすばらしぃ!
今後もよろしくお願い致しますv
369トラパス温泉編 1:03/09/17 23:24 ID:QvkmD7C8
249〜、270〜、325〜 の作者です。
パラレルトラパス、好評で嬉しい限りです。
というわけで調子乗ってまた書いてしまいました。
パラレルトラパスがちょっと重たい話だったので、今回は軽いノリ目指しました。
手法がちょっと反則気味なのですが……楽しんでいただけたら幸いです。


 ――おめえは、もうぜってー酒を飲むな。
 わたしが朝起きたとき、パーティー1のトラブルメーカー、趣味はギャンブル、特技毒舌の赤毛の盗賊、トラップは、何だかとても疲れた顔で懇願してきた。
「わたし、お酒なんて飲んでないよ?」
 そう言い返すと、トラップは何だかさらに疲れたみたいだった。
 ――覚えてねーならそれでもいいよ。いやよくねーけどなっ! あーもう、何で俺ばっかこんな目にあうんだよっ!!
 一方的に怒鳴って、部屋を出て行ってしまった。
 もー、何なのよ! わたしが何したっていうの!?
 えーと、ゆうべは確か……
 ……あれ?
 そういえば、わたし、ゆうべ何してたっけ? それに、何でこんなに頭が痛いの?
 うーっ、えーと、えーと、順番に思い出そう。確か、昨日は……
 
370トラパス温泉編 2:03/09/17 23:26 ID:QvkmD7C8
「うっひゃー! いい気持ち!」
 お湯につかって、わたしは思わず声をあげていた。
 わたし達パーティーは、今、とある温泉街に立ち寄ってるんだよね。
 目的は、その温泉街の近くにある山に生えてる珍しい薬草を取りにいくためだったんだけど。
 そこで取れた薬草がびっくりするくらい高値で売れて。
 で、まあこの先急ぐ用事があるわけでもないし、ってことで、一泊していくことにしたんだ。
 もうわたしとルーミィはおおはしゃぎ。何しろ、クエストの最中って、滅多にお風呂になんか入れないんだよね。せいぜい水で濡れたタオルで身体を拭く程度。まあしょうがないんだけど。
 だからこそ、あったかいお風呂に入れるのは貴重な機会なんだ。ふっふっふ、たっぷり堪能するぞー!
 お風呂嫌いなキットンだけは、何だか不満そうだったけどね……もー! こんなに気持ちいいのに。
 ちなみに、今わたしは湯船の中に一人だけ。
 それもそのはずで、時間的にはもう真夜中過ぎなんだ。
 もちろん、夕方にも一度入ったんだけど。ルーミィと一緒だと、ゆっくりお湯につかれないんだよねー。体洗ってあげたり、頭洗ってあげたり、何やかんやと忙しい。
 それに、ここって露天風呂なんだけど、一応男女にわけられてるんだけど、間を隔てている岩にところどころ隙間があって、覗けるし身軽な人なら簡単に乗り越えられるようなつくりなんだよね。
 男湯の方に誰かがいると、それだけで緊張しちゃってゆっくりできない。
 だから、皆が寝静まった後で、ゆーっくり入りなおすことにしたんだ。もちろん、明日の朝にはもう出発だから、あまり遅くまではいられないけど。
 ルーミィとシロちゃんはもうぐっすり眠ってたし、クレイは剣の手入れ。キットンは薬草のチェック、ノルは、やっぱり部屋の中に入れないから馬小屋を借りることになって、そこの整備。
 トラップは懲りずにカジノに出かけてて、宿はたまたまわたし達しかお客さんがいなかったからこの広い温泉が完全に貸切状態! うーん贅沢。
 というわけで、せっかくだからわたしは外でジュースを一本買って、それを飲みながらゆっくりとお湯を堪能していたのだった。
 熱いお湯につかって飲む冷たいジュースって、どうしてこんなにおいしいんだろう。
 はーっ、と岩に持たれて月を眺めていたんだけど……
371トラパス温泉編 3:03/09/17 23:27 ID:QvkmD7C8
 うーん? 何だか頭がボーッとしてきたぞ?? もしかして、のぼせたのかな?
 いやいやいや。まだつかってからそんなに時間は経ってないはず。せっかくだからもう少し、もう少し……
 
「あーっ、ちっくしょう。負けた負けた」
 宿の入り口をくぐりながら、俺は愚痴らずにいられなかった。
 ったく。たまーに懐があったかいとついついのめりこんじまうのは、俺の悪い癖だよなあ。いや、直すつもりは全くねーんだが。
 初めてのカジノで勝手がわからなかったからだな、うん。次に行くときは、もうかるに違いない。
 と俺は決め付けることにして、温泉の方へ向かった。
 よく考えたら、すぐカジノに向かっちまったから、まだ風呂に入ってねーんだよな。こんな時間なら誰もいねーだろうし、ゆっくりできるだろう。いつの間にか、もう真夜中になってんだよな。
 というわけで俺は温泉でさっぱりすることにしたのだが。
 見通しが甘かったことを知ったのは、数分後のことだった。
 
「あーっ。いーい湯加減じゃねえか」
 ざっと体を洗って湯につかると、思わず声が漏れる。我ながらじじくせえなあ。
 こんな広い風呂に入る機会なんて滅多にねーんだし、ゆっくりするか。
 そうやって俺が岩にもたれて鼻歌なんぞを歌っていると、だ。
 ぷかぷかぷかと、岩の反対側から何かが流れてきた。どうやらコップみてーだが、空じゃなくて中身が少し残ってる。
「んだよこれ。忘れもんかあ?」
 ちょっと中身を飲んでみると、甘い味がするがれっきとしたアルコールだった。ここの名物でもある「チューハイ」って奴だ。ビールに比べて口当たりがいいんで、女に人気があるらしい。
 ……このとき、俺は何となーく嫌な予感がしたんだよ。
 根拠なんか何もねえが、鍛えられた野性の勘、って奴だ。
 ざばざばと湯をかきわけて岩の向こう側にまわりこんでみると……
372トラパス温泉編 4:03/09/17 23:28 ID:QvkmD7C8
「ぱ、パステル!?」
 当たってほしくねー予感に限って当たるんだよなあ……
 岩に持たれかかって真っ赤な顔で湯に沈みかかってたのは、間違いなく、パーティーの詩人兼マッパー、特技は方向音痴の、パステル・G・キング。
 ……認めたくはねえが、最近やけに俺をいらだたせる奴でもある。こんな色気もなく鈍感きわまりない女に振り回されるなんざ、俺もやきがまわったもんだ。
 ってんなことはどうでもよくて!
 慌ててパステルの体をひきあげる。……風呂に入ってるんだから当たり前だが、裸。
 み、見るなトラップ! これは女じゃない! 人間じゃない! 人形だと思え!!
 自分に必死こいて言い聞かせながら、風呂からひきずりだそうとしたんだが……
 まあ、状況は一目瞭然だ。ジュースと間違えてアルコールを飲んで、その状態で湯につかったりしたからあっという間に酔いがまわったんだろう。全くドジな女だぜ。
 とにかくだ、俺はなるべくパステルの方を見ないようにしながら、すぐに風呂からひきあげようとしたんだ。やましい気持ちなんか断じてなかった。
 そりゃあこうして見ると、いくらパステルとはいえ、だ。
 もともと色白なところにアルコールが入って上気した肌とか、服着てるとよくわかんねえが裸になるときっちり自己主張してる胸とか、まあ、その……男の欲情って奴をかきたてる魅力が十分に備わってることは、認めてやってもいい。
 しかしだ! 酔っ払ってるのにつけこんでいただいちまうってのは、いくら俺でも、さすがに気がとがめる。他の女ならまあいざ知らず、パステルだけは……
 ……って何考えてんだ俺はー!!
 どうも混乱してるのは、その、抱えてるパステルの肌触りとかが、嫌でも裸であることを知らせてるわけで。
 んで、俺の身体は、律儀にそれに反応しかかってるわけで……
 いやっ、17歳の健康な男子なら、それが当たり前のことじゃないか!? 俺を責めるのは酷ってもんだ!!
 理性があるうちにさっさとパステルに服を着せようとしたんだが……そのときだった。
 完全に気を失ってると思ったパステルが、ぱっちり目を開けたのは。
373トラパス温泉編 5:03/09/17 23:29 ID:QvkmD7C8
 目があった。
 温泉の中、お互い裸、俺はパステルの体を抱えていた。
 その状況で、パステルの奴は目を開けやがった。
 ッわああああああああああああああ!!?
 思わず叫びそうになったがこらえる。こんな状況で他の奴らまでとびこんできた日には、いらん誤解を招くこと間違いなしだ。
「ぱ、パステル、誤解すんなよ!? お、俺はな、お、おめえをた、たすけ……」
「……とらっぷぅ?」
 ところが、焦ってるのは俺一人。パステルは、何だかとろんとした目でじーっと俺を見つめているが、特に叫ぶ気配も暴れる気配もない。
 それどころか、にへらっ、としまりのない顔で笑いやがった。
 ……まだ酔ってやがるな、こいつ。まあ、助かった、というか……それにしても……
 か、かわいいじゃねえか、ちょっと……
 何の警戒心も無い顔で無邪気に笑うパステルは、ちょっと、いや、かなり、可愛かった。驚きで萎えかけてたのが、再び勢いを取り戻し……
 や、やべえかも……
「ぱ、パステル。いいか、さっさと出よう。それがお互いのためだ」
「……いやぁ」
「ああ?」
「いやぁ。まだはいってるぅ」
 そう言うと、あろうことか、パステルの奴は俺に抱きつきやがった!!
 ぎゅーっと押し付けられる胸の感触。確実に、理性のたがの一つはぶっとんだ。
「お、おめえな、俺はおめえのためを思って……」
「とらっぷもぉ」
「……あ?」
「とらっぷもぉ、いっしょにはいろぉ」
 ななななななな何とんでもねーこと言ってやがるんだこいつは!!
 や、やべえ。本格的に理性がとびそうだ……
 何つーか発射寸前、って感じになってしまったモノを抱えて、俺はぶくぶくと湯の中に座り込んだ。
 ど、どーすればいいんだよ!!
374トラパス温泉編 6:03/09/17 23:30 ID:QvkmD7C8
 しがみついたパステルは離れない。耳元で吐かれる熱い吐息。上気した肌。しかも悪いことに、体勢が……その、座り込んだ俺の上に、腰掛けるような……やべえってマジでっ!!
「ぱ、パステル、落ち着け。いいか、落ち着くんだ。こ、こ、この状況はな、ちょっと、洒落にならんというか……」
「なによぉ。とらっぷは、わたしのこと、きらいなのぉ?」
「いやっ、好きとか嫌いとかそーいう問題じゃなくてだな!」
「じゃあー、すきなのぉ?」
 無邪気に何てこと聞きやがるんだこいつは……
 パステルのことが好きか? と聞かれたら、俺は実際にどう答えるかはともかく、心の中ではこう言うだろうな。
 ああ、好きだよ。って。
 そーなんだよ! 認めたくはねえが、俺はこいつに惚れてるんだよ!! もっとも、ぜってー表に出すつもりはないがな! ……どうせ、パステルはクレイの奴のことが好きなんだろうしな。
 クレイがどう思ってるかまではわかんねーが、まああいつもパステルのことを嫌ってることはねえだろう。
 俺じゃクレイに勝てるわけねーしな。あいつみてーに優しくねえし。争う気もねえし。
 だからだ。ぜってーばれないように、心の中だけに閉まっておこうとしている思いをだ。
 どーしてこいつは剥き出しにしようとするんだよ!!
 何だかむかむかしてきたが、睨もうとどうしようと、パステルは変わらずへらへら笑っている。
 くっ……と理性のたがが残り一つを残して全部ぶっとんだときだった。
「わたしはぁ、すきだよぉ」
「……は?」
「わたしはぁ、とらっぷのことすきだよぉ。だからぁ、いっしょにいよう?」
 そう言うと、パステルは、俺の首にさらに強くしがみついてきた。
 理性のたが、最後の一つが、音を立ててぶっとんだ。

とりあえずここまで。次回からエロ突入。今回の話はそう長くはならないはず。
しかしトラップの一人称は難しい……人格壊さないように気を使ってるつもりですが、どうでしょう。
375名無しさん@ピンキー:03/09/18 00:18 ID:cw8+sjYO
またもや最新版!連続でよくネタ続くなー、もはや神の領域(゚∀゚)
「どうでしょう」も「こうでしょうも」人格は壊れてないですよ!
今回もオモシロイよ、トラパス最高ー
376SS保管庫の素人”管理”人:03/09/18 00:42 ID:ALMx0SMP
うわあぁぁぁ…
保管庫の更新が間に合わないほどの速度!
何でこんなに書けるんだろう。
しかも中身は原作よりも(ry
どうやら我々は歴史的瞬間に立ち会っているようだ。
377トラパス温泉編 7:03/09/18 00:50 ID:8pk+zyZ0
続きです。トラップ受難編とでも名づけたいところ。


 もう止められねえ。俺は散々警告したし努力した。俺が酒を飲ませたわけでもなけりゃ、温泉に入れたわけでもねえ。
 それでもこうなっちまったんだ。もう……止められねえ。
 俺は、しがみついてくるパステルの顎をつかむと、ゆっくりとくちづけた。
 ……ここで嫌がられて泣かれでもしたら、俺、かなり救われねえよな……
 そっと唇を離して確認してみる。パステルの奴は、何だかきょとんとしてるみてえだが……
 やっぱり、にへらっ、としまりのねえ顔で笑いやがった。……自分が何されてるかわかってんだろうな?
「好き、だぜ」
 耳元で囁いてやる。こいつが素面だったら、死んでも言えねえだろう台詞を。
「好きだぜ、おめえのこと」
「……とらっぷぅ?」
 ぽかんとしてるパステルの唇をもう一度ふさぐ。強引に唇をこじあけて、深く、舌をこじいれる。
 アルコールのせいか、風呂に入ってるからなのか、かなり熱かった。ついでにちょっと酒臭い。
 からめるように、吸うようにした後、そっと目をあわせる。
 パステルの目は……うるんでいた。
 や、やべえ! 泣くか!?
 一瞬俺はひるんだが、パステルは泣かなかった。離れようともしない。へらっと笑ったまま、つぶやいた。
「いい、きもちぃ……」
 ……それが風呂に入ってるからなのか、はたまた俺のキスがうまかった、という意味なのか、それはわかんねえが……何にしろ、俺の興奮を高めることになったことだけは確かだった。
 パステルを膝に乗せるような形に抱きかかえて、そっと首筋に口付ける。
 そのまま背筋をなで上げてやると、猫みてえに身をよじって「ふにゃあ……」とかつぶやいた。
 ……感じてるんか?
 自慢じゃねえが俺は女を抱いた経験はまだ無い。多分誘えばいくらでも相手はいただろうが、どうしてもそういう気にはなれなかったからだ。
 パステルも、多分、無いだろう。この鈍感女が経験済みだった日には、俺は世の中の女が全て経験済みだと考える。
 だから、その、こーいうときどうやってやればいいのかがまだよくわかんねえんだよ。一応本とかでやり方くれーは知ってるが、それだけだ。
378トラパス温泉編 8:03/09/18 00:51 ID:8pk+zyZ0
「……あんま、うまくねえかもしんねえぞ」
「……」
 ぼそっとつぶやいてみたが、パステルはとろんとした目で俺を見つめるだけだった。
 背中を撫でながら、もう片方の手でパステルの体を持ち上げた。風呂の中だからこそできたことだけどな。
 湯に沈んでいた胸が、ゆっくりと外気に触れる。ほんのりと桜色に上気した胸は……綺麗だった。
 はやる気持ちを抑えながら、その胸の、桃色の頂点をそっと口にふくんでみる。
 パステルの奴は「ひゃぁっ……」とか呟きながら、腕を俺の頭にまわしてきた。
 いてっ、髪をつかむな髪を!
 舌先でちょっとなめた後、飴玉をなめる要領で転がしてみる。すると、最初は柔らかかったそれが、段々硬くなってきた。
 背中にまわしていた手で、もう片方の胸を愛撫してみる。パステルの身体が、わずかにのけぞった。
「やあ……とらっぷぅ……?」
 パステルの顔がさらに上気したように見えたのは、俺の気のせいだろうか?
 しばらく胸の愛撫を続けた後、体勢を入れ替えた。パステルの身体を背後から抱きしめるような形に抱きなおす。
 そうして背中にくちづけてやると、さっきよりも声が大きくなった。こいつ、多分背中が弱いんだな……
 そのまま強く吸い上げると、白い背中に赤い痕が残った。前にまわした手を、徐々に下降させて……
 今度は太ももをなであげてみる。「ぁんっ……」という声が聞こえたが、抵抗は無い。
 ……こいつは、普段クエストの最中でもずっとミニスカートで。
 こけたり走ったりするたびに、あらわになった太ももに、俺がどれだけ目をやるのをこらえていたか、わかってんだろうな?
 太ももよりさらに上、本人だって滅多に触ることは無いであろう部分に、俺の指は到達した。
 そっとかきわけるようにして、指でさすってみる。
「ひゃあっ……やんっ……あっ……」
 何つー悩ましげな声出すんだ……人がせっかくはやる心を抑えているというのに。
 湯の中だからわかりにくいが、指をちょっともぐらせてみて……確信する。
 濡れてる。パステルのそこは、明らかにぬるっとしたものを溢れさせていた。
 ぐっと指を深く差し入れてみる。予想外に抵抗なくもぐりこんだ。そのままかきまわすようにして出し入れすると、パステルの息が、どんどん荒くなっていった。
 ……俺もだけどな。
379トラパス温泉編 9:03/09/18 00:52 ID:8pk+zyZ0
「……いつでも、逃げられたんだからな」
 真っ赤になって「やんっ」とか「あんっ」とかうめいているパステルに、ささやきかける。
「ここにいるのは、おめえの意思なんだかんな」
 もしかして、俺、今ものすげえ卑怯なこと言ってるかも……
 だが……パステルは、嫌がってねえ。
 いくら酔ってるからって、好きでもねえ男にここまでされて、大人しくしてるってこたあ、ねえだろう。
 おめえは、俺のことを……
「くっ!!」
 考えてられなかった。再びパステルを顔が見えるように抱えなおす。
 そろそろ限界に達しそうだったモノを、指のかわりにあてがって……
 一気に深く沈めてやった。
「やあああああああああああああああっ!?」
 パステルは、一瞬びびるくらい大声をあげて、俺の首にかじりついた。
「やあっ、とらっぷぅ……いたぁい……」
「っ……俺もいてぇよ……」
 心がな。
 暖かい、包み込まれるような感触。パステルの奴、相当痛いのかもじもじ身もだえするもんだから、それが余計に刺激となって、すさまじい快感って奴を与える。
 やべっ、何かすぐにいっちまいそう……
 パステルの身体を抱きしめて、その身体をゆっくりと上下にゆする。
 湯の中ににじみ出ているのは……中から溢れた、血。
「ふあっ……とらっぷぅ……なんか、へんな、かんじぃ……」
「変、って、どんな……?」
「いたいのにぃ……すごくぅ……ぞくっとして、きもち、いいのぉ……」
「へっ、そうか……よかったな……」
 気持ちいい、か。これが、抱く、って感触なのか。
 何かがのぼりつめるような感触。上気するパステルの肌。とろんとした目。唇からもれるあえぎ声。
 そして――
 パステルの身体を、ひときわ深く沈める。その瞬間、俺は、パステルの中で果てていた――
380トラパス温泉編 10:03/09/18 00:52 ID:8pk+zyZ0
 その後、パステルの奴は、相変わらずへらへら笑ったまま、俺にしがみついていた。
 ったく、こいつ、自分が何されたのかわかってんのか? ……わかってねえだろうな……
 とりあえず……その、血だとか何だとかを湯で洗い流して、パジャマを着せて部屋に運んでおく。
 ベッドではルーミィとシロの奴が幸せそうに寝てやがったので、起こさないように注意して静かに……
 って俺がこんだけ気ぃ使ってんのに、何でこいつは俺から離れねえんだよ!!
 パステルの奴は、相変わらず俺の首にかじりついたままだった。
 相変わらず「ふにゃあ……」みたいな声をあげて、幸せそうに……眠ってやがる……
「こらっ、パステル、起きろ……っつーか離せっ、おいっ……」
「うーん……とらっぷぅ……」
「な、何だよ??」
 一瞬起きたのかと思ったが、どうやら寝言だったみてーだな。目を開ける気配もない。
「とらっぷぅ……だいすきだからねぇ……」
「……俺もだよ」
 かなわねーな、こいつには。
 いつか、ぜってー、素面で起きてるときに言ってやるよ。
 それが、おめえを抱いちまった俺にできる、せいいっぱいの償いだから。
 眠るパステルに軽くくちづけて、ベッドに横たえた。
 で、首にパステルの腕がかじりついたまんまなんで……俺は……
 ベッド脇に座り込んだ。おいおい、このまま夜明かしかあ? 勘弁してくれよ、ったく……
 
381トラパス温泉編 11:03/09/18 00:53 ID:8pk+zyZ0
 ……うーんっ。
 わたしが起きたとき、まだまわりは静かだった。ルーミィもシロちゃんも、まだ寝てるみたい。
 そろそろ起きた方がいいかな? うーん。何だか頭が痛い……もうちょっと寝ていたいかなあ……
 そこで、わたしは腕に何かを抱えていることに気づいた。
 ぱちっ、と目をあけてみる。目の前に飛び込んできたのは、真っ赤な髪……
「と、トラップ!? な、な、何してるのよこんなところで!!」
 ルーミィ達のことも忘れてわたしが叫ぶと、トラップは、すごくげっそりした顔でにらみつけてきた。
 ……あれ? いや、わたしがトラップの首を抱えてたんだよね。えーっと?
「……てめえ、何も覚えてねえのかよ……」
「? 覚えてって?」
「っあのなあっ――……いや、もういい。いいか、おめえはもうぜってー酒は飲むな……」
「お酒?」
 何のことだろう? わたし、お酒なんか飲んだっけ?
「何のこと? わたし、お酒なんて飲んでないよ」
「おめえなあっ……あー、もういいや。覚えてねーならそれでもいいよ。いやよくねーけどなっ! あーもう、何で俺ばっかこんな目にあうんだよっ!!」
 トラップは、大声で叫ぶと、わたしの腕を振り払って部屋から出て行った。
 もー何なのよ。わけわかんない! わたしが何したっていうのよ?
 えーっと、昨日は、温泉に入って、ジュース飲んで……それから?
 ……覚えてないや。まあ、いっか。後でトラップにもう一度聞こうっと。
「うーん、ぱーるぅ。もう起きるんかぁ?」
「おはようデシ」
「あっ、おはよう、ルーミィ、シロちゃん」
 もー、大きな声出すからルーミィ達が起きちゃったじゃないの。どうせそろそろ起こさなきゃならなかったからいいんだけど。
382トラパス温泉編 12:03/09/18 00:54 ID:8pk+zyZ0
「もうシルバーリーブに帰るからね。さ、着替えよう」
「うんっ! ルーミィ、おなかぺっこぺこだおう!」
「あはは。うん、着替えたら朝ごはん食べようねー」
「うんっ!」
 ルーミィの服を着替えさせてやって、わたしもパジャマを脱ぐ。
 ……あれ? わたし昨日パジャマに着替えたっけ? ……着てるってことは着替えたんだよね。
 うーん、覚えてないなあ……
「あれ? パステルおねーしゃん。それ、どうしたデシか?」
「え?」
 パジャマを脱いだところで、シロちゃんが不思議そうに言った。
 何だろ?
「ぱーるぅ。背中が赤くなってるおう」
「え? 本当?」
 赤く? 何だろ?
 といっても背中だからね。自分じゃ見えない。
 ルーミィに手鏡を持ってもらって、部屋にある鏡でうつしてみたんだけど、確かに、背中の、肩甲骨の下あたりに、赤くて丸い痕が残ってた。
「いたくないかぁ?」
「うん。全然痛くないよ。虫に刺されたのかな?」
 でも、かゆくもないし。何に刺されたのかなあ?
 えーい、悩んでてもしょうがないか。わからないものはわからないんだし。
 そう思いなおして、さっさと着替えちゃうことにする。
 さて、もう皆は起きたかな? まだなら起こさなくっちゃ。
 ルーミィとシロちゃんを食堂の椅子に座らせると、わたしは男部屋のドアをノックした。


以上、完結です。うーん。
トラップ一人称は難しいっ(心の叫び)
>>376
あっ、すいません……
更新がんばってください
383名無しさん@ピンキー:03/09/18 01:03 ID:rsYr+ig4
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
トラップ一人称マジイイ!! むしろ原作者よりキャラ掴んでる気すら

>>364禿同!
フカザワがプロット渡して249〜、270〜、325〜の作者さんが
本編の続きを書いてほしいでつ
384名無しさん@ピンキー:03/09/18 09:48 ID:5DrRuWMA
なんつースピードとクオリティ……。
感心するよりもむしろ唖然としてしまいます。
きっと深沢さんの生霊が乗り移っているに違い無い。
文句のつけようがありません。脱帽。
385名無しさん@ピンキー:03/09/18 12:20 ID:Bi1Zq+Oa
>>384
いやむしろ深沢の生霊を吸い取ってしまったようなw
386名無しさん@ピンキー:03/09/18 16:16 ID:cw8+sjYO
スゲ―!スゲ―よ!!毎回、なんでこんなオモシロイの書けるんだ?
このまま行けばトラパスで一冊の本になるんじゃないかって勢いだなー
また次回を作期待してます(゚∀゚)
387307:03/09/18 22:31 ID:SGAGrfnA
続き書いてしまいます…トラパスの方にはてんでかないませんが
尻切れは嫌なので。

ドアを開けて目の前に広がった光景に、おれは頭の中がまっしろになった。
頭がぐらぐらするのもこのときばかりは忘れちまった。

ベッドに仰向けに横たわるパステル…
その脚の間にいるのはシロか?
シロの黒く尖った爪が乗せられた太ももからは、たらたらと血が流れ出していた。
いつもの赤いミニスカートはめくられて、シロが…脚と脚の間を舐めるたびにパステルの身体がびくびくと反応している。
「あっ、…あああ…んあぁっ!…くぅ…」
「おいしいデシ…もっと飲みたいデシ」

正気の沙汰じゃねぇ。
シロもシロだが、パステルが全然抵抗していないのもおかしすぎる。
おかしい、と思いながらもおれは、パステルの身体のくねりにしばし見入ってしまった。
目をそらせねぇ…。
悩ましげな甘い声が理性を揺さぶる。
つややかな小麦色の髪の毛を束ねていたリボンがほどけて、ベッドに色っぽく散らばっている…

388トラパス作者:03/09/18 22:44 ID:8pk+zyZ0
249〜、270〜、325〜、369〜の作者です。いいかげんコテハンでも名乗ろうかな……
何か、ほめてもらえると調子に乗る性格みたいで。
一応、また新作書いているのですが(今半分くらい)
307さんが書き込まれているので、アップは後にしたほうがいいですかね。
その間に完結させておきます。
……今回の話は今までで1番書きにくくてちょっと難航中なので、明日明後日までに書けるか怪しいところですが……
389307:03/09/18 22:58 ID:SGAGrfnA
「シロ!やめろ!」
くそっ、声をかけても見向きもしやがらねぇ。
そのかわり、呼んでいないほうが気付いて、ゆっくりとこちらを向いて、その顔がおれを見つけたとたん、大粒の涙をこぼした。
「あ…トラッ…んああ!…み…見ないでぇ…ああぁ…」

…くそっ!
なんだってこんなモノを見せられなきゃいけねぇんだ。
おれの知る限りパステルは、まだまともに男と付き合ったこともねえ女だ。
そのパステルが淫乱女のように息を乱されて泣いている。
おれは夢中で、パステルの太ももからシロをひっぺがした。
じたばた暴れてあちこち引っかかれるがそんなものはどうでもいい。
さすがのドラゴンといえどもシロだ。
部屋の外に放り出して、鍵をかけてしまえば、もう入って来られねぇだろう。

鍵をかけ、念のためドアの前にサイドテーブルを置いてしばらく開かないようにした。
これで一安心。
さて、残るは…

おれは、泣きじゃくるパステルにゆっくりと歩み寄った。

390307:03/09/18 23:16 ID:SGAGrfnA
「で…出てって、お願い…見ないで」
弱々しく顔を背ける仕草が、身体に力が入っていないせいかぎこちない。
涙だけがなんの滞りもなく流れてはまた溜まっていく。
「ばかやろう。こんな状態のおめぇをほっておけるわけがないだろ」
「…」
「なんでこんなことになったんんだよ?」
「…」
「黙ってちゃわかんねぇだろ?」
「あっ…
あたしだってわかんないわよぅ…気付いたら、シロちゃんが…いたんだもの」
また泣かせちまった…
でも、とにかく原因は突き止めないといけねぇだろう。
例えば香りによる幻覚作用なんかがあったらえらいことだ。
「おしえてくれよ、おかしくなる前に、何をしてた?前兆とかはなかったか?」
「…」
「なんでもいいんだ。原因を調べようっていうだけだ。」
「…ひとりで…してた。」
「は?なんつった?」
「ひとりでしてた、っていったのよ」
「ひとりで何をしてたんだ?」
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!
……………エッチ を してたの!ひとりで!」
「!!」
なんだとっ!
いま何ていった!?
「そしたら、シロちゃんが来たの!」

391307:03/09/18 23:25 ID:SGAGrfnA
パステルは。
おれの知る限りパステルは、まだまともに男と付き合ったこともねえ女だ。
そのパステルが。

顔全部を恥ずかしさで真っ赤に染めて、眼に大粒の涙を溜めて、
上気した身体に破かれた下着…(今気付いた)

我慢し切れなくて、手を伸ばしてみる。
柔らかい頬に触れると、大粒の涙がぽろっ…とこぼれる。
瞬間、おれの理性は完全に吹き飛んだ。

強引に唇をふさぐ。
パステルが、びっくりして身体を押し戻そうとするが、
力が入っていない腕を組み敷くのは簡単だった。
392307:03/09/18 23:36 ID:SGAGrfnA
…??!!

トラップのいきなりな行動に、頭が一瞬動かなくなってしまった。
おかしくなったシロちゃんからわたしを助けてくれたトラップが、
今度は、わたしを…襲っている??
じたばたともがいてみたけれど、駄目。全然駄目。
力の差が歴然としすぎてるみたい。

でも、抵抗しながら、自分が濡れていくのがわかった。
さっきまでシロちゃんに嬲られ続けていた部分がどんどん柔らかくなっていく。
そこにいつの間にか熱い何かが押し付けられて、一気に中に入ってきた。

393トラパス 謎の生物編 1:03/09/19 00:31 ID:pbMrFgkW
249〜、270〜、325〜、369〜の作者です。
今回のは……期待しないでください。ひどい出来だ……
というかエロ少なっ! 中途半端っ!!
板違いと呼ばれるかもしれません。そこのところ踏まえて読んでくだされば幸いです。


 その日のクエストは、ある山の中に暮らすと言われる貴重な鳥の存在を確かめに行くことだった。
 証拠としてその鳥の羽を取ってくるっていうクエストだったんだけど、幸いなことに凶暴な鳥じゃなかったし。我がパーティーには動物と話せるノルがいるからね。クエストそのものは、簡単だったんだ。
 ……ところが、わたしがまーたまたやってしまいまして……
 それは帰り道のことだった。どこからか、猫みたいな鳴き声が聞こえたなー、って思ったのよ。
 ノルやトラップに聞こえなかったのに、わたしにだけ聞こえるなんておかしいから、最初は空耳かなって思ったんだけど。でもどうしても気になっちゃって。
 そっちの方に気を取られてたら、いつのまにかみんなとはぐれてしまっていたという……
 ははっ。いつものことのような気もするけど、わたしって本当に方向音痴だなあ……
「クレイートラップールーミィー」
 みんなの名前を呼びながらうろうろしてると、いつの間にか山の奥深くに入りこんだみたいで。まわりはどんどん暗くなるし、寒くなるしで、物凄く不安になった。
 わたし、本当にみんなと会えるのかな?
 トラップはいつも言うんだけどね。「迷ったと思ったらその場を動くな。うろうろ動き回るから余計迷うんだ」って。でも、その場でじーっと待ってるのってますます不安になるんだよね。
 そうして歩き回って……どのくらい経ったのかなあ?
 突然、大きな木が立っているちょっとした広場みたいなところに出た。わたしが十人くらいいないと抱え込めないくらいすっごく大きな木を中心として、そこだけ草しか生えてないんだ。
 休憩するのにちょうどいいからその木の根元に座り込んでたんだけど、そのとき気づいた。
 あの、猫みたいな鳴き声。それが、木の中から聞こえるってことに。
394トラパス 謎の生物編 2:03/09/19 00:33 ID:pbMrFgkW
「どうしたの? 何かいるの?」
 わたしは声をかけながら、木のまわりをぐるぐるまわってみた。そうしたら、ちょうど裏側の部分に、大きなうろがあったんだ。
 そして、その中に、猫……みたいな動物が二匹、罠にかかってたの!
 あの、猛獣を捕まえるのによく使う、踏んだらとげとげのついた鉄の輪がばちんと閉まる奴ね。
 その中に、手のひらくらいの凄く小さな動物が、二匹まとめて挟まれてたんだ。
「嘘っ、大丈夫!?」
 慌てて罠を開こうとしたんだけど……うーん、か、かたいっ!
 どこかを押せば簡単に開くと思うんだけど、どうやればいいのかさっぱりわからなくて。
 とげとげが身体に食いこんで、猫みたいな動物は、血を流して苦しんでいるのに。わたしじゃ助けてあげられなくて。
 悔しくて情けなくって、泣きながら「トラップ!」って思わず叫んでたの。
 そうしたら!
「あんだよ」
 本当にトラップが現れたの! わたしが叫んだらすぐによ。すごい偶然だと思わない?
「おめえはなあ! 一体どこをふらふらしてやがる! ちゃんと前見て歩いてたのかよ!?」
「そんなことよりトラップ! この子達助けてあげて!!」
 長々と続きそうなトラップのお説教を遮って、わたしは叫んでいた。
 トラップはちょっと面食らったみたいだけど、すぐにその動物達に気づいてくれて、あっという間に罠を解除してくれたんだ。さすが盗賊だよね。
「なんだあ? この動物」
 二匹まとめてつまみあげて、トラップがすごく不思議そうに聞いてきたんだけど。
 そう。さっきから「猫みたい」って言ってたんだけど、その動物は猫じゃなかった。猫みたいな三角の耳でふわふわの毛に包まれてるけど、足が六本あってかわりにしっぽが無いんだ。
 でもでも! すっごく可愛いの。小さいから余計にそう見えるのかもしれないんだけどね。
 で、わたしとトラップが持ってた傷薬を塗ってあげて、ハンカチを巻いてあげたら、動物達(何の動物なんだろ?)はぺこぺこおじぎしながら山の奥に歩いていったんだ。
 はーっ、怪我が思ったよりひどくなくてよかったあ。
「ほれ、気がすんだか? とっとと戻るぞ。みんな心配してんだかんな」
 もートラップったら! そんな言い方しなくてもいいじゃない!
395トラパス 謎の生物編 3:03/09/19 00:34 ID:pbMrFgkW
 で、この後、わたしは無事みんなと合流することができて、クエストは無事終了したんだけどね。
 このことが、後になってあんな騒ぎを引き起こすなんて、そのときは思ってもみなかったんだ。
 
「えーっ、またあの山に?」
 トラップが新たなクエストの情報を持って来たのは、その出来事から十日後のことだった。
 わたし達は、シルバーリーブで相変わらずバイトに明け暮れていたんだけどね。
 トラップは小さな本屋さんでバイトしてたんだけど、そこのお客さんが依頼してきたんだって。
「そうそう。ほれ、この間見つけた鳥の羽。あれさ、何か、結構研究価値があるらしくって、本当に存在するんだったらもっと取ってきてほしいんだとさ。羽一枚につきいくらで金くれるって言うから、集めれば集めるほど稼ぎになるぜ」
 トラップの目はきらきら輝いている。もー、本当にお金には目が無いんだから。
「俺、あんまり賛成しない」
 ところが! いつもは寡黙なノルが、珍しく反対した。ふえー、どうしたんだろう?
「羽がないと、あの鳥、年越せない。あれが彼らの洋服だから。たくさん取るのよくない」
 うーん、そう言われると、何かかわいそうになってくるなあ。
 トラップのことだから、多分羽を丸ごとむしりとる気満々だろうし。
 チラッとうかがってみたら、わたしの予想は当たってたみたいで、目をそらしてるし。
「いやいやいや、ノルの言うこともわかりますけどねえ」
 それにさらに反対したのがキットン。何だかトラップに負けず劣らず目が輝いてるんだけど……
「研究することによって、あの鳥は絶滅を免れるかもしれませんよ? それに、羽は再生しますからね。まだ冬には間がありますし、今の時期なら少々取っても大丈夫でしょう」
「おお! 珍しくいいこと言うじゃねーかキットン! そうそう、そのとおりだぜ、ノル。あの鳥の絶滅を防ぐためにも、俺達ががんばらないと!」
 すかさず話しに割り込むトラップ。あんたはお金のためでしょ! とつっこみたいのは山々だったんだけど。
 まあ、これから衣替えのシーズンだから買いたいものもいっぱいあったし。結局は「行ってみますか」ってことになったんだ。
 で、それから2日後、わたし達は再び、山の中へと入っていった。
396トラパス 謎の生物編 4:03/09/19 00:35 ID:pbMrFgkW
「いいかパステル。今度こそ迷うんじゃねーぞ」
「もー、わかってるわよ」
 先頭にわたしとトラップ、次にクレイとルーミィ、シロちゃん、最後尾にノルとキットンという隊列で、わたし達は山の中を歩いていた。
 前回はわたしが最後尾でキットンが先頭だったんだけどね。「おめえを後ろにまわすと気がついたらいなくなる」というトラップの言葉で、今回は1番前。
 ははは。反論できないのが悲しい……
 目的の鳥は、山の頂上に住みかを作ってるんだけど。日帰りできるくらいの低い山だからね。道さえ間違わなければ、そんなに時間はかからない。
 間違わなければだけど……
「おめえは! 何回言やあわかるんだよ!! 今の道を右、次の道を左だろうが!!」
「あ、あれ? 今わたし右に曲がらなかった??」
 なーんてやりとりをしながら、山の中腹くらいまで進んだときだった。
 ゴゴゴゴゴゴ……
 突然不気味な地響きがして、傍の木に止まってた鳥達が、いっせいに飛び立った!
「な、何?」
「危険が迫ってる、逃げろって鳥達が言ってる」
「危険!?」
 ノルの言葉に、慌てて引き返そうとしたんだけど。
 ノル、キットン、クレイと抱っこしてもらったルーミィ、シロちゃん……とわたしの間で、突然地面が割れたのよ!!
「きゃああああああああああああ!!?」
「パステル!!」
 危うく割れ目に落ちそうになったわたしを、トラップがひっぱりあげてくれた。
 ふえええええええ、何なの一体!?
397トラパス 謎の生物編 5:03/09/19 00:35 ID:pbMrFgkW
 茫然としてる間に、地割れの大きさはもうジャンプしても絶対向こう側に届かないくらいになっちゃって。
 クレイ達が何か叫んでるみたいなんだけど、それも全然聞こえない。
「と、トラップ……どうしよう……」
「お、落ち着け。まわりこめば絶対どっかから下りれるはずだ」
 そうして、わたしとトラップは揺れる地面を這うようにして進んだんだけど。
 何てこと! そんなことしているうちに、今度はわたしとトラップの間に地割れができちゃって!!
「きゃああああああああ!? トラップ、トラップー!!」
「パステル!!」
 トラップが一生懸命手を伸ばしてくれたけど、届かない。
 わたし一人だけ取り残されちゃって、一体どうしたらいいのよー!?
 なーんて、よつんばいになったまま茫然としていたら。
 地面がさらに大きく揺れて、わたしはどこかに頭をぶつけたみたいで……
 そのまま、気が遠くなっていって……完全に気を失ってしまったのだった。
 
 ……ル……
 うーん、何なのよ……
 ……テル……
 頭痛い……もうちょっと寝ていたいなあ……
 ……ステル……
「起きろパステル!!」
「は、はいっ!!」
 突然耳元で響いた大声にびっくりして、わたしは飛び起きた。
 もー、何なのよ!!
 目を開けてみると、目の前には見慣れた赤毛の盗賊の姿。まわりは、地割れだらけ、ぼこぼこだらけと無残な姿になった地面。
 揺れは収まってるみたいだけど……大丈夫かな。この山、崩れないでしょうね……
 ……ってトラップ?
398トラパス 謎の生物編 6:03/09/19 00:36 ID:pbMrFgkW
「トラップ? どうしてここに? さっき……」
「ああ? おめえ、俺の職業何だと思ってんだ? これ使って渡ってきたんだよ」
 そう言ってトラップが取り出したのは、フックつきのロープ。
 おお、さっすがー!
「なら、クレイ達ともすぐに合流できるよね!?」
「いや……それがさ、あいつらの姿が見えねーんだよ。地割れだらけで危ねえからな、先に下山したみてえ」
「えー!?」
 わたしとトラップがこっちにいるのに!? ま、まあ、この状況じゃあしょうがないけど……
「じゃあ、わたし達も早く下山した方がよくない? また地震が起きたら今度こそ危ないかも」
「いやー、それは大丈夫じゃねえ?」
「え?」
「いや、こっちの話」
 ……トラップ? 何か変なような気がするんだけど……気のせいかな?
「ま、んなことはともかく、とっとと行くぞ。ほれ、立て立て」
「あ……うん。でも、道わかるの?」
「んー、ま、適当に歩いてりゃ何とかなるんじゃねえ?」
 ……??
 何か落ち着いてるなあ、トラップ……どうしたんだろう?
 まあ、でも、焦ってるよりはマシかな?
 というわけで、わたしはトラップと歩き出したんだけど。
 トラップの足取りは、全然迷いがなかった。山の状況が全然変わっちゃってるのに、道なんかあって無いようなものなのに、よ?
 わたしと合流する前に、道をチェックしておいてくれたのかな?
399トラパス 謎の生物編 7:03/09/19 00:38 ID:pbMrFgkW
「ほれ、パステル。そこ危ねえぞ」
「え? きゃあっ!?」
 なーんて考え事してたら、ぐいっと肩を捕まれた。ひょいっと足元を見たら、3メートルくらいはありそうなすっごく大きな蛇が!!
「きゃあああああああああああ!?」
「あー、うるせえな。いちいち騒ぐなよ」
「だ、だって蛇よ、蛇っ!」
「どこにでもいるだろ、んなもん」
「あんな大きな蛇見たことないわよ!!」
 ……って、あれ? 何、このわたしの肩にまわされた手は。
 トラップ?
「ほれ、さっさと歩け」
「え? あ……うん……」
 トラップの手は、わたしの肩を抱いたまま。
 ……??
 何か……トラップ、変? もしかして、頭を打ったとか?
 何だか釈然としないまま歩き回ったんだけど、トラップの足取り、自信に満ちてた割には、全然下山する気配が無いんだよね。むしろ、上に登っていってない?
 いや、わたしの方向感覚が全然あてにならないことはわかってるんだけどね。
「ねー、トラップ。何だか上に上ってるような気がするんだけど……」
「ああ? 気のせいだよ気のせい」
「そう……?」
 うーっ、何か変。絶対、変。
 そうして、ずんずんとトラップが歩いて行った先。そこにあったのは、前にあの猫みたいな動物達を助けてあげた、木のうろだった。
「……トラップ?」
「もうじき暗くなるだろ」
 わたしの言葉を無視して、トラップは言った。
「夜の山は危ねえからな。一晩野宿すっぞ」
「えーっ!?」
 嘘っ、こんな崩れそうな山の中で!? クレイ達もいないのに!?
「トラップ、大丈夫なの? また地震が来たら、かえって危なくない?」
「バーカ、心配しすぎだって。暗い中で道に迷う方が危ねーよ。ほら、入った入った」
「う、うん……」
 そう言われてみれば、そうかな? わたし一人じゃ絶対下山は無理だし……ついていくしかないよね
400トラパス 謎の生物編 8:03/09/19 00:38 ID:pbMrFgkW
「わかった。でも、そこ大丈夫? 狭くない?」
「ああ、案外広いんだぜ、中は」
「ふーん」
 トラップにひっぱられてうろの中に入ってみたんだけど、確かに、思ったよりは広かった。思ったよりはね。
 いくら大きな木だからって、ここに二人は、無理があるんじゃないかなあ……
 だって、わたしとトラップ、二人が座ったらもうほとんど動くスペースが無いんだよ? これじゃ寝ることもできないじゃない。
「ねー、トラップ。本当にここで夜明かしするの?」
「あ? しつけーな。外で寝るよりマシだろ。蛇だの虫だのがうじゃうじゃいるんだぜ」
「うっ……うん……」
 さっきの大きな蛇を思い出して、改めて身震いしてしまう。うーん、それにしても……
 さっきから全然離れようとしない、この手は何なのよ、トラップ……?
 相変わらずわたしの肩を抱いたまま、鼻歌なんか歌ってるトラップに、わたしは思わず疑いの目を向けてしまった。
 だって……どう考えても、変じゃない? 何か……
 外見も服装も口調も何もかもいつものトラップだけど、何か……変……
 そして、わたしがそっと彼の手を外そうとした、そのときだった。
「なあ、パステル」
「……な、何?」
「二人っきりだよな」
 な、何を言い出すのよこの人は!
「そ、そうだね。早くクレイ達と合流できるといいね」
「いやあ、俺は合流できない方が嬉しいね」
「……え??」
 トラップ? 何を言ってるの……?
「だってさ。みんながいたらできねーだろ?」
 と、トラップ? 何、この手は……
「こんなことは……」
 そう言って、彼は……
 突然、わたしの頬に手を当てて、き、き、キスしてきたのよ!?
 ななななな何がどうなってるのー!!
401トラパス 謎の生物編 9:03/09/19 00:39 ID:pbMrFgkW
 目が覚めたら、俺は一人になってた。
 一体何がどうなってんだあ??
 えーと、落ち着いて考えよう。地震が起きて、地割れで俺とパステルだけが取り残された。んで、もう一回地震が来て、そのパステルとも離れ離れに……
 っておい! あの方向音痴が一人で取り残されてるのか!?
 俺は即座に立ち上がった。のんきに倒れてる場合じゃねえぞこりゃ。
 パステルと離れた後、俺は不覚にもどっかで頭を打ったらしい。それでしばらく気ぃ失ってたみたいなんだが……
 一体、ここは山のどこらへんなんだろうな?
 まわりをみまわしても、様子がすっかり変わっちまってさっぱり想像つかねえ。こりゃあ、早いとこパステル見つけねえととんでもないことになるぞ。
 そうして歩き出したものの。何しろ道という道が地割れで分断されてるからな。まっすぐ歩くことすらままならねえ始末だ。
「ったく。どーすりゃいいんだろうなあ。クレイ達、助けに来てくんねえかな?」
 俺が立ち止まってつぶやいたときだった。
 ――ップ――
 微かな声が、耳に届いてきた。自慢じゃないが、俺は耳と目には自信がある。しかも、この声は……
 ――ラップ――
 声の聞こえる方向に歩いてみる。思ったより近くにいるみてえだな、こりゃ。
 ……と、
「――トラップ!!」
「おわっ!!」
 突然茂みから飛び出してきた人影は、そのまま俺にしがみついてきた!
 ななな何だ!?
「トラップ! よかった、無事だったのね!」
「ぱ、パステル!?」
 俺の胸にしがみついてるのは、まぎれもなくあの方向音痴のマッパー、パステルだった。
 俺があいつの顔を見間違えるわけがない。いいかげん長い付き合いだしな。
 ……しかし、こいつって、こんな大胆なことする奴だったか? よっぽど怖かったんだろうな。
402トラパス 謎の生物編 10:03/09/19 00:40 ID:pbMrFgkW
「無事だったか? パステル」
「うん、わたしは大丈夫。トラップこそ大丈夫だった? 怪我してない?」
「ああ? おめえ、俺を誰だと思ってんだよ。おめえと一緒にすんなよな」
 ここで、いつものパステルなら「ひどーい。心配してあげてるのにその言い方はないでしょー」と返すところだ。あいつの返事のパターンなんか大体決まってる。
 ところが、だ。
「そうだよね、ごめん」
 何と、素直に謝りやがった!
 ……パステル、頭でも打ったか??
「謝らなくてもいいけどよ。とっとと下山するぞ。クレイ達とも合流しねーといけねーし」
「うん、そうよね。行こう、こっちよ」
「……へ?」
 ぱ、パステル? 何だ、その自信に満ちた足取りは??
 いつもなら、俺の後ろを自信なさそうに歩いてくるパステルが、だ。何と、俺の腕をひっぱって自ら進もうとしてやがる。
 ……本格的に変だぞ、こいつ。本当にパステルか?
「トラップ? どうしたの?」
「……いや、何でもねえよ」
 顔も、服装も、口調も、何もかもいつものパステルだ。
 変なのは、行動。こいつは、もしかすると……
「おい、パステル」
「……なあに?」
「ちょい、こっち来てみ」
 確かめる方法は簡単だ。本物のパステルだった日には、おそらく無傷じゃすまねえだろうが……
 近寄ってきたパステルを、ぎゅっと抱きしめてやる。
 ……この出るとこがひっこみひっこむところが出てる体型は、間違いなくパステルだな。
 そして、あいつなら、こんなことをされたら「もう、何するのよスケベ!」とひっぱたくか何かするはずなんだ。
 ところが! この目の前のパステルはこともあろうに……
「トラップ? どうしたの、急に……」
 とか、潤んだ目でこっちを見上げやがった!!
 ……やべ。罠にかけたつもりで、俺が罠にはまったかも……
403トラパス 謎の生物編 11:03/09/19 00:42 ID:pbMrFgkW
わ、わけがわからない……トラップが、わたしに、き、き、キスするなんて!?
 でも、まぎれもなく唇には柔らかい感触があって。目をあければ焦点も合わないくらい間近にトラップの顔があって!!
 逃げようにも、狭すぎて動くこともままならなくって……何なのよ一体――!
「ん――ん、んんっ!!」
「ん、何だ? 何か言いたいことでもあんのか?」
 どんどんと胸を叩いて無言の抗議をすると、やっと唇が解放された。ううっ、苦しかった……
 ってそんなこと言ってる場合じゃなくて!
「と、トラップ、どういうつもりよ!」
「あ? どういうつもりって?」
「な、な、な、何のつもりでき、キスなんか……」
「何、わかんねえの、おめえ? どういうつもりも何のつもりも……」
 そう言いながら、トラップはわたしをうろの壁に押し付けた。いや、狭いからね。もともと壁に背中ついてたんだけど。
 その上から両肩をおさえつけられて、わたしは本格的に身動きができなくなった。
「簡単じゃねえか。俺がパステルを好きだってこと」
 二回目のキスも、よけられなかった。しかも、しーかーもー!
 唇を強引にこじあけるようにして、と、トラップの舌がっ!
「んんーっ!!」
 ふりほどこうにも頭ごと抱え込まれちゃって動かせない。そのまま、舌がからめとられて、転がされて……
 ち、違うっ、こんなのトラップらしくない! 何か変! 絶対変!!
 思ったときには、わたしは思わず動かしていた。唯一自由になった、顎を
「っつ……」
 唇をかみきられて、ようやくトラップの顔が離れる。その表情は……何だか無表情で、とっても怖いんですけど……
「と、トラップ、変だよ? どうしちゃったの、一体……」
「変? どこが? 俺はいつもの俺だぜ」
「違う! いつものトラップなら、絶対こんなことしないもん! あなた一体……」
「……それは、パステル」
 と、突然、トラップの口調が変わった。声は同じなんだけど、何だか、雰囲気が全然……
「それは、君が彼のことをわかってなかった証拠だ。彼はいつも思っていたよ。君と、こうしたいと」
「……え?」
 トラップの顔で、声で、目の前の知らない人は……
 そのまま、わたしのブラウスに手をかけて力任せにひきちぎった!!
404トラパス 謎の生物編 12:03/09/19 00:43 ID:pbMrFgkW
 俺の腕の中で、パステル(?)は、じぃっと俺を見つめている。
 何つーか、その……顔は全くパステルと同じなんだが、可愛かった。やばいくらいに。
「ぱ、パステル……」
「そうよ、わたし。トラップ、どうしたの?」
「……違う。おめえ、パステルじゃねえだろ?」
「え?」
 違う。絶対違う。こいつはパステルじゃない。
 いつも傍で見てた俺が言うんだ。断じて、こいつはパステルじゃない。
「何言ってるのよ、トラップ。わたしのこと忘れたの?」
「覚えてるから言うんだよ!! おめえはパステルじゃねえ、パステルなら、俺にこんなことされて黙ってるはずがねえんだ!!」
「……そんなこと、ないわよ」
「へ?」
 パステル(偽者)は、ふっと目を伏せた後、自ら俺にしがみついてきた。
405トラパス 謎の生物編 13:03/09/19 00:44 ID:pbMrFgkW
 な、何なんだこいつは……誰なんだ、一体?
「わたしは、トラップとずっとこうしたいと思っていたよ? トラップ、どうして気づいてくれないの?」
「……なんだと?」
 どういうこった、それは? この偽者、何を言うつもりなんだ?
「気づくって何をだ? おめえ、一体何が言いてえんだ」
「どうしてわかってくれないのよ、バカ! わたしは……」
 その瞬間、起こったことを、俺は多分一生忘れねえ。
 偽者、とはいえ、だ。パステルと同じ顔で、同じ声をした女が……
 自ら、俺にキスしてきやがったんだよ!!
 な、何しやがるこいつ!!
 思わず力任せに押しのける。正直言って、怖かったんだよ。
 このまま、理性がとびそうになるのが。
「わたし、トラップのことが好きだよ! トラップは、わたしが嫌い?」
 だが、俺が必死こいて理性を保っているにも関わらず、だ。
 邪険に扱われて、偽者はこの上なく悲しそうな顔をした。
 今にも泣きそうな、そんな顔が、やっぱりパステルにそっくりで……
 やややややばい、冷静になれトラップ。あれはパステルじゃない! パステルじゃなくて……その……
「ねえ、トラップ。わたしを見て、わたしだけを見てよ……」
 ゆっくりと俺の頬に手を伸ばしてくる偽者を……
 俺は、力いっぱい抱きしめていた。……罠にかけるつもりじゃなく、本気で。
406トラパス 謎の生物編 14:03/09/19 00:45 ID:pbMrFgkW
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!?」
 はじけとぶボタン。あらわになる胸。
 わたしは叫んでいた。うろの中でわんわんと反響して物凄くうるさかったけど、それでも叫んでいた。
 何で、なんで。なんでこんな……
 この人は、一体……
「俺、好きだぜ。パステルのこと」
 目の前のトラップの顔をした人は、口調を戻して言った。
「好きだから、ずっとこうしたかった」
「やあっ、やめて触らないで!!」
 逃げようにも、何度も言ってるけど狭くて身動きできない!! どうしたら……
 その間にも、トラップの偽者……だよね? トラップじゃないよね? ……の手が、遠慮なく伸びてきて……
 わたしの胸を、思いっきりつかんだ。
「やっ……痛いっ……」
「おめえ、まだ処女だろ?」
 偽者は、にやにや笑いながら言った。
「いい気持ちにさせてやるから。大人しくしてろ」
「やだあ……やめて……」
 違う。絶対トラップのはずがない。嫌、こんなの嫌。
 本物のトラップはどうしたの? どうなってるの? 何でこんなことに?
 多分、わたしは現実から逃げたかったんだと思う。
 偽者トラップの力は強くて、わたしは全然身動きが取れなくって。逃げられないとわかったから……
407トラパス 謎の生物編 15:03/09/19 00:45 ID:pbMrFgkW
「……やっ……」
 胸から背中へ、首筋へ。偽者の手が、遠慮なく這い回る。
 でも、1番辛いのは。
 そうやって、微妙に刺激が来るたびに、わたしの身体が、段々熱くなってることで……
「あっ……やだっ、違うっ……やめっ……」
「へえ。おめえ、背中が弱点か?」
 びくっ!
 背筋をなでられて、思わず反応してしまう。
「結構感じやすいみてえだな。気持ちいいか?」
「……違うっ……よくなんか……ないんだから……」
「無理すんなよ。目ぇうるんでるぜえ? 素直になれって」
「っ誰がっ……」
「ほれ」
 びくっ
 くっ、悔しいっ……こんな、こんな人に……
 トラップ……助けて……
「……俺が、トラップなんだよ」
 偽者は、わたしの心を読んだみたいにつぶやいた。
「認めろよ! おめえも俺が好きなんだろう!?」
「いやあっ、違うっ! わたしが好きなのはっ……」
 わたしが、好きなのはあなたじゃなくて。
 本物の……
408トラパス 謎の生物編 16:03/09/19 00:46 ID:pbMrFgkW
 俺はパステルのことが好きだ。
 そう自覚したのがいつだったか、はっきり覚えちゃいねえが。
 あの鈍感女が、このナイーブな男心って奴に気づくはずもねえ。
 それに、見たところ、あいつはクレイの奴が好きみてえだしな。だから、俺はこの気持ちを表に出さねえつもりだった。
 けど辛かった。一緒にパーティー組んでるんだからな。四六時中顔をつきあわせなきゃなんねえし、もちろんクレイも一緒だし。
 だが、そのパステルと同じ顔をした女が、今、俺を好きだと言って……
「トラップ……」
 ……違う、違う、違う違う違うっ!!
 冷静になれっ。あのパステルに、こんな色っぽい表情ができるか!? 違う、こいつはパステルじゃねえんだ!!
「違う……」
「何が違うの? わたしはパステルよ。わたしはあなたが好き、トラップ。あなたもわたしが好きなんでしょう?」
「違うっ!! 俺が好きなのはおめえじゃねえ! 俺が好きなのはっ……」
 本物の……
 
「トラップよ!」
「パステルだ!」
409トラパス 謎の生物編 17:03/09/19 00:47 ID:pbMrFgkW
 ……え?
 わたしが叫んだとき、突然、目の前の偽者トラップが微笑んだ。
「最初から、素直になればいいんだよ」
 そして……彼の身体が、輝き始めて……
 なっ、何!? 何が始まるの!?
 瞬間。
 わたしがもたれてた木の幹が、突然消えた。
 ……え?
 それと一緒に、目の前の偽者トラップの姿が、急に小さくなっていって……
 な、何? 一体何が起きてるのー!?
 後ろ向きに倒れながら、わたしは心の中で叫んでいた。
 
 な、何が起きたんだ!?
 俺が叫んだ瞬間、偽者パステルは、微笑んだ。
「そうやって、素直になればいいのよ」
 そうつぶやくと、そいつは突然光り始めて……
 って何なんだよこいつは! 一体何者なんだ!? モンスターか!!?
 俺がパニックになってる間に、偽者の姿はどんどん縮んでいって……
 同時に、ぼこぼこの穴だらけだった周りの地面が、揺れ始めた。
 こ、今度は地震かよっ!!? 一体何が起きてんだー!!?
 その間に、偽者の姿は俺の膝くれえの大きさまで縮んで……そこで止まった。
 そして。
 俺の周囲が、突然光に包まれた。
 あー、もう、何が何だか。色んなことが起きすぎてわけわかんねえよ。
 どうにでもしてくれ、という気分で天を仰いだとき、包まれたときと同じように光は消えて……
 で、だ。
 何で目の前にいきなりパステルの背中が現れるんだよ!! しかもこっちに倒れこんでくるし!!
「おいっ!!」
 パステルの身体を抱え込みながら、俺は派手にしりもちをついた。
410トラパス 謎の生物編 18:03/09/19 00:48 ID:pbMrFgkW
「おいっ!」
 聞こえたのは、何だかとっても懐かしい声。
 さっきまで同じ声を聞いていたはずなのに、やっぱり何かが違う。この声は……
「トラップ!」
「パステル、パステルなんだな!」
 わたしを抱えるようにして地面に座り込んでるのは、間違いなくトラップだった。今度こそ本物の。
 見た目は全く同じなんだけどね。わたしにはわかるんだ。一緒にいると安心できる空気が、偽者にはなかったもん。
 で、トラップはトラップで、わたしのことじーっと見つめてて……
 ……って、そういえば。
 はっと思い出して自分の服装を見おろしてみる。
 きゃああああああああああ!!? そういえば、わたし、ブラウス破られて……
「ば、バカッ! エッチ! 見ないでよー!!」
「うげっ!!」
 思わず彼の頭をはたき倒してしまった。うーっ、恥ずかしいっ……
「お、おめえなあ! いきなり何すんだよ! ったく……」
「きゃあっ、顔あげないでー!!」
「だ、誰が見るかよそんな貧相な身体!!」
 ムカッ
 そりゃー、わたしはマリーナとかに比べたら胸とかも小さいけど……そんな言い方することないじゃない!!
「ひ、貧相で悪かったわねっ。何よお……怖かったんだから……」
 一生懸命破れた前身ごろあわせていると、上から上着をかけられた。
 このオレンジ色の上着って、トラップの……?
「あ、ありがと……」
「着てろ。見たいもんでもねえし……」
 ……悪かったわねっ、本当に。
411トラパス 謎の生物編 19:03/09/19 00:48 ID:pbMrFgkW
 上着のボタンをとめていると、トラップは、周囲を見渡してつぶやいた。
「ところでさ、おめえ一体何があったんだ? っつーかその格好……」
「あっ! そうだ聞いて! トラップが……」
「は?」
 いや違う。トラップじゃなくて……えーと、もーややこしい!!
 四苦八苦しつつ、何とか状況を説明する。襲われかけたっていうのも……まあ、格好見れば一目瞭然だからね。恥ずかしかったけどしゃべっちゃう。
 それを聞いて、トラップは何だかすごく驚いたみたいだった。
「あんだと!? おめえの方にも偽者が!? しかも襲われただと!?」
「え、えと、触られて……キスされただけ、だけどね……」
「んだとお!? 偽者の俺め、本物でもまだやってないことを……」
 ん? 何の話? いやいや、まあ細かいことは後で聞こう。
 で、わたしの方にも、ってことは、もしかして……
「ってことはトラップのところにも?」
「ああ。おめえを百倍色っぽくしたような偽者のおめえが俺に迫ってきた」
 ……微妙にひっかかる言い方なのは気のせいかな?
 でも……一体、何だったんだろう?
 よくまわりを見れば、地震で崩れそうなほどぼろぼろになってた山も、すっかり元通りになってる。
 一体……
 と、いきなりトラップがわたしの腕をひっぱった。
「おい」
「えっ、何?」
「あれ。いつかの猫もどきじゃねえ?」
 ……え?
412トラパス 謎の生物編 20:03/09/19 00:49 ID:pbMrFgkW
 トラップの指差す方向。そこには、確かにあのときわたしとトラップが助けてあげた、猫みたいな二匹の動物がいた。
 わたしとトラップの方を、じーっと見て……そして。
「きゃあ!」
「うわっ、何だこりゃ!?」
 突然、頭の中に、声が響いてきた。
 
 ――これが、我ら流の恩返し――
 ――お互いに、1番望んでいたものを――
 ――わかっただろう? 自分の気持ちが――
 ――素直になりさえすれば、お前達は、1番欲しいものが手に入る――
 ――助けてくれて、ありがとう――
 
「……え?」
 声が聞こえなくなったとき。
 あの不思議な動物は、もう、どこにもいなかった。
 
「ねー、トラップ。結局何だったんだろうね」
「けっ、俺に聞くな」
 トラップは、何だかすごく不機嫌そうだった。まあね、散々ふりまわされたから。気持ちはわかるけど……
 それにしても、何だったのかなあ。恩返しって言ってたから、きっと、助けてあげたことのお礼をしてくれたんだよね。
 とてもそうは思えなかったけど……
 わたしの一番望んでいたもの、って、何だったんだろう?
 ――素直になりさえすれば――
  「おおーい……トラップ――パステル――?」
 と、そのときだった。遠くから、懐かしい声が聞こえてきたのは。
「あ! クレイ達だ!! そっか、結局地震とかって全部あの子達が起こした幻覚みたいなものだったのかな」「あ、ああ……多分、そうなんじゃねえ?」
「よかったーみんな無事で。トラップ、早く行こう」
413トラパス 謎の生物編 21:03/09/19 00:51 ID:pbMrFgkW
「……パステル」
「え?」
 声は聞こえるけど、クレイ達の姿はまだ見えない。そんなときだった。突然トラップに呼び止められて……
 とっさに何が起きたのかわからなかった。
 えーっと……?
 わたし……何で、抱きしめられてるの??
「と、トラップ!? まさか偽者……」
「バカ、俺は本物だ!! ……あいつらが言ってたじゃねえか。素直になりさえすれば、1番望んでいたものが手に入るって……」
 ……え?
 それって、まさか。
「俺はっ……あいつら、余計なことしやがって……言うつもりなんかなかったのに……」
「と、トラップ?」
「――おめえのことが好きなんだよ!! わかったか!?」
 ……え。
 えええええええええええええええええええええ!!?
 驚くと同時に、思い出していた。
 あのとき、偽者トラップに言いかけたこと。
 わたしが好きなのは、本物の――
「で、どうなんだよ!! 俺は素直になったぞ。返事は!?」
 トラップ、真っ赤になってるよ……
 そっか、そういうことだったんだね。素直になるって……
 わたしも、素直になればいいのかな。
「うん。わたしも――」
 返事は、暖かいキスだった。


うわーやっちまった……全てにおいて中途半端な……
アップしないほうがよかったかも。板違い失礼しました……
もっとマシな作品書いてまたきます。
414名無しさん@ピンキー:03/09/19 01:17 ID:Z/aXwQvP
うおぉー俺は神の降臨に立ち会っている!!
トラパスイイ!激しく萌え!
そして392の続きも激しくキニナル!!

ここは神々が集うスレ!!!
415名無しさん@ピンキー:03/09/19 01:19 ID:ns9n6Rno
そんな事ないですよーう。
リアルタイムで拝見できますた、お疲れ様ですノシ
416名無しさん@ピンキー:03/09/19 01:55 ID:Es8F7OnG
お待ちしておりましたヽ(´▽`)ノ
カプ話なのにこのマターリ感イイ!! 萌えられつつほのぼの(゚д゚)ウマー
原作ではギア出てきたりして恋愛色濃くなってきてから
話全体の雰囲気悪くなってたのに。
今後もこんなかんじの話キボンヌ

417307:03/09/19 07:40 ID:iNqpMAdY
うあー寝てしまった!!
すいません、また続きます。
すみません…

>>414
ありがとうございます(泣
418名無しさん@ピンキー:03/09/19 11:17 ID:a5FmdeZG
うわー、すげーな、短時間でまた新いのできてるよー
自身が無いとか言ってたけど、なかなかどうして 今回も
オモシロかったよ、エロは少なくてもフォーチュンの雰囲気が壊れてない
それじゃあ!また新たな世界を見せてください(゚∀゚)
419トラパス作家:03/09/19 19:22 ID:pbMrFgkW
>>415、416、418
どうもありがとうございます。そう言っていただけるとほっとします。
エロパロスレだぞ、エロが無いなら書くな! とか言われたらどうしようかとびくびくしてました。
一応、話のネタは(あくまでもネタで、小説に成長できるかは不明)、まだ5つくらい持っているんですけど
ずーっとトラパスばっかりだと、他のカップリングファンの方にはつまらないかな、と心配です。
少し自粛したほうがいいのかなあ……書いたらすぐに人様に見せたくなる性分でして……

>>417
がんばってください。昨夜は途中で割り込んでごめんなさい。
続き楽しみにしています。
420307:03/09/19 22:47 ID:fm5EjBsY
きれぎれになってしまっていますが、
307〜313、321、346、387、389〜392の作者です。
>>419
ありがとうございます。今度こそ…


「…!!!!!!」
痛い!
ものすっごく、痛い!
あまりの激痛に身体をよじって逃げようとしてみたけど、まだ身体に力が入らなくて、
逆にトラップの胸を押し返そうとして捕まえられた腕を、両方まとめて片手につかまってしまった。
「ト…ラップ」
トラップの手って、こんなに大きかった?
わたしの手首を両方掴んじゃえるなんて!
名前を呼んだのに、彼は返事もせずにわたしの着ていたブラウスの下に手を捻じ込んできた。
下着を上にずらされ、今までの強引さが嘘のように優しい手つきでわたしの胸を包み込む。
何度か揉みしだいて、いつもわたしがひとりのときにするように先端を弄った。

「あっ…やぁっ…」

思わずわたしが漏らした声に、トラップはびくっ、と動きを止めた。
その表情にみるみる罪悪感が浮かんでくる…
「…ごめん!」
我に返ったように、彼はわたしから出て行った。
421SS保管人:03/09/19 23:07 ID:QuRwXrwk
また新作が来てる〜♪
神mode全開バリバリですね。
個人的にはエロ無しも大好き大歓迎です。

ところで、つかぬ事をお伺いしますが、他のスレで書かれてたりはしないのでしょうか?
またそのご予定は無いでしょうか?
異なる原作でも読んでみたいですね。
あと、コテハン襲名も良いかと思います。
422307:03/09/19 23:14 ID:fm5EjBsY
…結局。
今回の騒動の原因は、イルドさんの研究していた薬が原因だったみたい。
正確にいうと、試薬を何種類か並べてテーブルに並べておいたのを、
なんとキットンがつまずいて一緒に落としてしまい、混ざって予想もしなかったような効果を発現させてしまったんだって!
いったい何の薬を作っていたのかイルドさんに聞いてみたんだけど、
「ああ…媚薬ですよ、媚薬。お酒に1滴混ぜるだけで、相手をその気に出来るようなやつです。高く売れるんですよ」
…だって。
でもあんまりにも効果が強すぎて、1階にいた人たちは全員意識を失ってしまっていたんだって。
クレイがイルドさんの部屋のドアを開けたとき、ものすごーく頭がぐらぐらしたみたい。
1滴で効果のある薬だもん、当然よね?

イルドさんはあれからすぐに媚薬を完成させてシルバーリーブを去っていってしまった。
なんでもキットンがこぼしたときの調合がヒントになったとかなんとか…
わたしは、彼にわたしやシロちゃんやトラップがどうなっていたか教えなかったから、
気付いたら騒動が終っていた、ということにしておいた。だって、恥ずかしすぎて。
シロちゃんは何も覚えていないみたいだったし、トラップは…何も言わなかったし。

それどころか彼は、わたしと目を合わせようともしてくれなくなった。
423トラパス作家:03/09/19 23:23 ID:pbMrFgkW
「トラパス作家」をコテハンにするつもりは無いのですが……便宜的に。
249〜、270〜、325〜、369〜、393〜の作者です。
上であんなこと書いておきながらしつっこくまた作品書き上げました。
……アップしても大丈夫ですかね? 307さんがまだ途中かな?
今回は、トラップが優しくて外道な話なんですが(謎

>>421
管理お疲れ様です。
わたしは今のところ、このスレでしかSSを書いていません。
パロディ書いたのもエロを書いたのもここが初体験でした(笑
別の原作でも、書いてみたいなあ、と思うのですが。
今のところ、フォーチュンクエストが1番書きやすいので。
わたしは原作の雰囲気を壊さないことを第一に考えていますので、難しい文体の小説はそれだけで敬遠してしまっています。
もう少し精進して余裕ができたら、他のスレでも出没するかもしれません。
そのときには、何かわかりやすいコテハンを名乗ることにします。
保管庫、ちょくちょく利用させていただいていますので、更新がんばってください。
424トラパス 修羅場編 1:03/09/19 23:32 ID:pbMrFgkW
もーちょっとタイトルがどうにかならないのか、と思いつつ
249〜、270〜、325〜、369〜、393〜の作者です。
もし途中で割り込む形になったらごめんなさい >>307さん


 うーっ……ひどい顔……
 鏡を見て、思わずためいきをついてしまう。ちなみに今は真夜中。
 部屋にはわたし一人。鏡の中のわたしは、目は充血してるしくまができてるし顔色も青ざめてるしで、本当にひどい状態だった。
 まあ、しょうがないんだけどね。今日で、もう2日も寝てないことになるから……
 わたしの前に積まれたのは、真っ白な紙の束。
 その横には、同じくらいの厚みの、ますめの埋まった束。
 そう、わたしは今、原稿を書いてる真っ最中。
 締め切りが迫って、うーっとかあーっとかうなってるのはいつものことなんだけど、今回はちょっと事情が違って……
 ちなみに締め切りは明後日。書かなきゃいけない原稿は、後ざっと……100枚くらいかな? ははは……
 ことの起こりは、2日前のことだった。
425トラパス 修羅場編 1:03/09/19 23:33 ID:pbMrFgkW
「やったー! やっと終わったー!!」
 机の上にペンを放り出して、わたしは思わず伸びをしていた。
 目の前にはびっしりとますめの埋まった分厚い紙の束。ううっ、長い道のりだったなあ……
 実は、わたしが連載している冒険小説がちょっと評判が良くて、原稿料がアップしたんだよね。
 そうしたら、他の雑誌でも書いてみないか? とか、掲載分量をもうちょっと多くしようか、とか、ありがたい申し出が次々と舞い込んできたの!
 何しろ、うちのパーティーは万年貧乏ですから。1も2もなく引き受けちゃったんだけど……
 考えが甘かったなあ、と思い知ったのが、依頼を受けた数週間後。
 大体、雑誌って月始めか月末のどっちかに発売されるから、締め切りも似たような日に集中するんだよね。
 たくさん依頼を受けたら、たくさん締め切りが来るのも当たり前で……
 気がついたら、書かなきゃいけない原稿が200枚近くたまってたりして、かなり焦った。
 おかげで今週は、外に出る暇もなくずっと部屋にこもりっきり。ううっ、疲れたあ……
 でもでも、それも今日でおしまい! やっと全部の原稿が書き終わって、次の締め切りまでにはまだ間があるし。しばらくはのんびりできるぞー!
 そうと決まったら善は急げ。わたしは原稿を袋に入れて、早速印刷屋さんに持っていくことにした。
 外は暗くなっててちょっと怖かったけど、まだ夕食時だもんね。印刷屋さんも開いてるはず。
 これが終わったら、ルーミィ達と思いっきり遊んであげなくちゃ。
 鼻歌を歌いながら階段を下りると、途中でコップを持ったトラップとすれ違った。
 パーティー1のお調子者で、すんごいトラブルメーカーなんだよね。まあ、もちろんいいところもたくさんあるんだけど。
 うっ、またビールなんか飲んで……まさかこれからギャンブルに行くつもりなんじゃないでしょうね?
「おっ、パステル。何か外で見んのひさしぶりだな」
「あートラップ! 聞いて、やっと原稿が終わったの!」
 もう、この喜びを早く誰かに伝えたい! という一心で、わたしは夢中でしゃべったんだけど。
 トラップは「ふーん」とか「へー」とか気のない返事をするばかり。
 もーっ、わたしが原稿書いてるのはみんなのためでもあるんだから、もうちょっと喜んでくれてもいいでしょー!?
426トラパス 修羅場編 3:03/09/19 23:35 ID:pbMrFgkW
あっ! 上、「2」です! タイトル間違えたっ!!


「あっそ、よかったじゃねえか。しばらくのんびりできんだろ?」
「うん。あっ、だから、わたし原稿届けに印刷屋さんに行ってくるね」
「ああ。迷うなよー」
「まっ、迷うわけないでしょ! いつも通ってるんだから!」
 実は、わたしはパーティーでマッパーって役割についてるんだけど、致命的な方向音痴なんだよね……トラップの言葉を笑い飛ばせないくらいに。
「じゃ、行ってくるから」
 そして、そのまま行こうとしたんだけど。
 トラップは、何故か振り向いてこっちに戻ってきた。
「どうしたの?」
「いんや。一緒に行ってやるよ」
 へーっ、珍しい! いつもは頼んでも「めんどくせー」の一言で済ませるのに。たまには優しいときもあるんだ?
「もう暗くなってっからな。さすがにシルバーリーブで迷子になったら恥ずかしいだろ」
 ……前言撤回。
「バカにしないで! 一人で行けるわよ」
「いやいや、おめえのことだからボケーッと歩いてていつの間にか村の外、なんてこともありうる」
 きーっ! 絶対バカにされてるー!!
「もう、いいってば。トラップは一人でギャンブルでもナンパでも好きなことしてくればいいでしょ!」
「お、おめえなあ。人がせっかく親切で言ってやってんのに」
「どこが親切よっ!」
 そうやってぎゃあぎゃあ言い争っているうちに、いつの間にかつかみあい(というより、わたしが一方的につかみかかったんだけどね)になって。
 気がついたときには……中身の入ったコップは、トラップの手からはねとばされることになったんだ……
427トラパス 修羅場編 4:03/09/19 23:36 ID:pbMrFgkW
「あ」
「きゃああああああああああああああ!!?」
 何てこと! どうしてこういうときって、必ず大事なものが水びだしになるんだろ!?
 中に入ってたビールは、わたしの原稿に、まっすぐに降りそそいでいた……
 まだね、水だったら、乾けばどうにかなったのかもしれないけど。ビールじゃねえ……
 それに、ペンで書いてたから、すっかりにじんじゃって。原稿は、完全に台無しになったんだ……
「あー、わ、わりい……」
「…………」
 もう怒る気にもなれなかったわよっ! 人間って、あんまりショックなことが起こると、何も考えられなくなるんだね……
 かくして、わたしは200枚以上の原稿を、後4日で完全に書き直す羽目になったんだ……
 
 さすがにね、トラップも悪いと思ったらしくて。
 印刷屋さんに締め切り延ばしてくれるよう交渉に行ってやろうか? なんて言ってくれたけど。
 でも、結局はわたしの不注意なんだもんね。それにせっかく信頼してまかせてもらえたのに、迷惑かけたくなかったし。それは断った。
 かわりに、今日から4日間は部屋に誰も入れないで! って頼むことにしたんだ。
 そうやって完全集中しないと、とてもじゃないけどこんなに書けないもの。同じものをもう一度書くなんて簡単でしょ? って思われるかもしれないけど、それがそうでもないんだよねえ……
 それでも、元の原稿を乾かしたら、読みづらくはなってたけど、一応後半のページは文字の判別くらいはできたんだ。思い出し思い出し前半を書き終わって、後はもう書くというよりうつす、に近いんだけど。
 これが辛いんだなあ……同じ文章を二回書くっていう精神的な疲れもあるし、あっちの原稿見てこっちの原稿書き……なんてことしてるから目は疲れるし手は疲れるし。
 おかげで、この丸2日、わたしは部屋からトイレ以外一歩も外に出てないんだ。ルーミィとシロちゃんは、ちょっと可哀想だけど男部屋で寝てもらってる。
 だってだって! 布団に入るのを一生懸命我慢してるのに、後ろで幸せそうに眠られたら、わたしルーミィに何言っちゃうかわかんないもの!
 食事も、手で食べれるサンドイッチみたいなものを特別に作ってもらって、全部部屋に届けてもらってる。そして、ようやっと半分が終わったんだけど……
428トラパス 修羅場編 5:03/09/19 23:37 ID:pbMrFgkW
 ぐううううう……
 ……夜まで起きてると、お腹が空くよね……
 ちょうどキリのいいところまで終わったし、飲み物も取りにいきたいし。久しぶりに食堂に下りてみようかな?
 もちろん、こんな時間じゃ誰もいないから何も出てこないけどね。わたし達は既にこのみすず旅館に住んでるみたいなものだから。台所は自由に出入りしてもいいってことになってるんだ。
 よーし決めた! アイスティーでも作って、もうひとふんばりしよう!
 そうして、部屋のドアを開けてみると……
 ゴンッ
「いてっ!」
 ……何? 今の音?
 ドアを閉めなおして、もう一度そーっと開けてみる。そこにいたのは……
「と、トラップ??」
「……よお」
 何と、部屋の外にいたのはトラップだった。こんな時間に何してるんだろ?
「どうしたの? 何か用?」
「いんや。ルーミィとシロの奴が来て、男部屋のベッドが狭いんだよ。んで、クレイに追い出された。『おまえのせいなんだからおまえが床で寝ろ』って」
 はーっ、クレイも結構言うなあ。
「そうだったんだ。ごめんね」
「ま、今回は俺が悪かったかんな。それはいいんだけどよ」
 それは?
 そういえば、床で寝ろ……って、ここは床じゃなくて廊下だよね? トラップ、そんなに寝相悪かったっけ?
429トラパス 修羅場編 6:03/09/19 23:37 ID:pbMrFgkW
「まだ何かあるの?」
「ルーミィの奴がな、ときどき泣くんだよ、夜中に。『ぱーるぅがいない』って。それだけならともかく、寝ぼけてんのかどうかしんねーけどおめえの部屋に戻ろうとすんだよな」
 ううっ、ルーミィ……そうだったんだ。ごめんねー
 原稿が終わったら、いっぱい抱っこしてあげるからね!
 わたしは思わず感激してしまったんだけど、トラップはいたく不機嫌そうに、
「んで、さらにクレイから命令。『パステルの部屋の前で見張ってろ。ルーミィが来たら連れ戻せ』ってな。みんなおめえのこと心配してるぜ。邪魔しちゃいけないから様子も見にいけねえって」
 そうだったんだ……
 はーっ。せめてご飯くらいはみんなと一緒に食べようかなあ。
「で、おめえこんな時間にどうしたんだ?」
「あ、うん。ちょっとキリのいいところまで書けたから、飲み物と夜食取りに行こうと思って」
「ふーん……俺が取りにいってやろっか」
「え?」
 め、珍しい、あのトラップが!! 『俺の分もとってきて』ならともかく。
 ……何か悪いものでも食べたのかな?
「今回のことはなあ! 俺が悪かったってちっと反省してんだよ! んな驚くこたねえだろう!?」
「あはは、ごめんごめん。じゃあ、お願いするね。アイスティーと、何か夜食になりそうなものがあったら、取ってきて」
「ああ。ミルクティーでいいか?」
「うん。砂糖もたっぷり入れて」
 疲れたときには、甘いものが1番だよね!
 
430トラパス 修羅場編 7:03/09/19 23:38 ID:pbMrFgkW
 トラップが戻ってきたのは、30分後くらいだった。
 もちろん、その30分の間も、無駄にせず原稿を書き進めてたんだけどね。
「ほらよ。これでいいか?」
「うわっ、おいしそう! トラップ、ありがとう!」
 トラップが持ってきてくれた夜食に、思わず書きかけの原稿を放り出してしまった。
 だってだって! ミルクたっぷり砂糖たっぷりのミルクティーに、お皿の上にはこんがり焼けたホットサンドイッチがのってたんだよ! とろっと溶けたチーズがとっても香ばしい。
「これ、トラップが作ってくれたの?」
「ったりめえだろ。こんな時間に他に誰が作るんだよ」
「へー、トラップ、料理できたんだねえ……」
「おめえなあ。パンの上に材料のっけて焼いただけだろーが。誰でもできるぞこんなもん」
 いやいや、ホットサンドイッチって結構難しいんだよ? 材料がはみでないように切るとことか特に。
 トラップって、滅多に料理なんかしないけど、もともと手先は器用だもんね。へー。意外な特技だなあ……
 ……ところで、このパンとかチーズとかって、実は明日の朝ごはんの材料だったりして? うーっ、おかみさんごめんなさいっ!!
 宿のおかみさんに手を合わせつつ、わたしはあっという間に夜食を平らげてしまった。すっごくおいしかったんだよ。これからは、トラップにも料理当番手伝ってもらおうかな?
「んじゃ、俺はもう寝るぜ。おめえもさ、ひでえ顔してるからちょっと休んだ方がよくねえ?」
「ありがと。でも、寝てる暇ないから……」
 これは本当。多分、今ベッドに入ったら、2日くらいは平気で寝てそうだから……
「そっか。ま、がんばれよ」
 トラップは、ポンとわたしの肩を叩いて出ていこうとした。
 軽くよ、軽く。叩いたっていうより、触ったに近いくらい。ポン、と。
 たったそれだけのことなのに、わたしは思わず悲鳴をあげてしまった。
431トラパス 修羅場編 8:03/09/19 23:39 ID:pbMrFgkW
「痛っ!」
「ど、どーした!? お、俺は何もしてねえぞ」
「う、うん。トラップのせいじゃないから……」
 わたしは、ずきずきする肩をおさえて、無理やり笑顔を作った。
 そう、この2日間、わたしが眠れないのと同じくらい苦しめられているのが、実は腰痛と肩こり。
 ずーっと机に向かって文字を書き続けてるからね。目は疲れるし、手はこわばるし。もう腰と肩なんて、痛いを通り越して感覚がなくなりかけてるもん。
 ううっ、わたし、まだ16歳なのに……
 トラップは、わたしの様子から大体想像ついたみたいで、もう一度、今度は力をこめて肩をつかんだ。
 うー、何か、痛いんだけどいい気持ちかも……
 さらに、彼の手は背中へとまわって、
「お、おめえ……肩も背中もがっちがちだぞ。40過ぎたおばはんみてえ」
「あはは……」
 何か怒る気にもなれないや……わたしもそう思うもん。
「しょうがないよ、ずっと机に向かってるんだから……大丈夫。多分後2日で何とかなるよ……」
 多分。
 そんなわたしをトラップはじいっと見つめて……そして。
 何を考えたのか、突然、ひょいっと抱き上げられた。
 って本当に何!?
「と、トラップ!? 何すんのよっ」
「うっせえ。言っただろ。今回は、俺はちっと反省してんだよ」
 そのまま、ぽいっとベッドに下ろされる。
432トラパス 修羅場編 9:03/09/19 23:39 ID:pbMrFgkW
 うーっ、久々のふかふかのお布団だあ……
 思わず目を閉じてしまいたくなったけど、必死にこらえる。
 駄目よ、だめだめパステル! ここで目を閉じたら、確実に目を覚まさなくなるわ!!
 そうやって、必死に言い聞かせてたんだけど。次の瞬間には、その必要はなくなってしまった。
 何と、トラップはそのままわたしをうつぶせにして、腰のあたりにまたがってきたのよ!?
 きゃああああああああああああああ、何すんのよー!!
「ばっか、おめえ何勘違いしてんだ。マッサージしてやろうっていってんだよ。このままだとなあ、おめえ手が上がらなくなるぜ」
「へ?」
 マッサージ?
 言うが早いか、トラップの手が、肩を優しくもみほぐし始めた。
 ううっ、すっ……ごくいい気持ち!!
 トラップって、細い外見の割には力があるんだけどね。弱くもなく強くもなく、絶妙の力加減で、思わずとろけそうになってしまった。
「どーだよ。効くか? もっと強くしてやろうか」
「ううん、十分……うわあ、き、気持ちいいっ……」
 はーっ、このまま寝れたらすっごく気持ちいいだろうなあ……って……
「だっ、駄目っ、こんなことしてる場合じゃないの! 原稿書かなきゃっ……」
「ばっか、大人しくしてろ! 疲れてるときになあ、無理したっていい結果は出ねえんだよ」
 うっ……正論です。トラップがこんなにまともなことを言うなんて本当に珍しい……
 そうだよね……いいよね、ちょっとくらい。うん。こんな機会滅多に無いし。
 というか、あのトラップだよ? わたしの肩をもんでくれるなんて、この先多分一生無いだろうしね。
 それで、わたしはお言葉に甘えることにしたのだけど……
「う〜〜ああっ、やんっ……」
「……おめえなあ。ちっと静かにできねえか?」
 トラップに呆れられてしまった。けど、無理! 絶対無理!
 あまりにも気持ちよすぎて、思わず声が出ちゃうのよ!
433トラパス 修羅場編 10:03/09/19 23:40 ID:pbMrFgkW
 肩をゆっくりともみほぐした後、首筋、ついでに頭。
 頭をもむ?? って思われるかもしれないけど、一度やってみて! 特に疲れてるときとか、すっごく気持ちいいんだから!!
 その後、もう一度肩に戻って、今度は腕。指先まで徹底的に。
 実を言うと、最近ペンを持つ形に手が固まってたんだけどね。こわばった指をほぐされて、やっと思いっきり指を伸ばすことができたんだ。
 腕が終わったら、背中。トラップの細い指が、こってるポイントを見事に見つけ出して、しっかりとほぐしていってくれる。
 手先の器用な人って、何でもうまいんだなあ……
 なんてことを思いながら……わたしの意識は、だんだんと、眠りの中へ落ちていってしまった……
 
 ……もしかして、寝たか?
 背中をほぐしてやりながらうかがうと、パステルは、すうすうと寝息を立てていた。
 だいぶ疲れてたみてえだもんなあ……ま、俺のマッサージがうますぎたせいでもあるけどな。
 ガキの頃からじーちゃんによくやらされてきたもんな。もっとも、じーちゃん以外の奴にやるのはこれが初めてだけど。
 マッサージをしてやろうと思ったことに、深い意味はなかった。ただ、パステルの肩と背中がまるで鉄板みてえな手触りになってて、ちっとびっくりしたから、思わずやってやりたくなっただけだ。
 それに、こいつがこんな目に合ってるのは、まあ……今回は俺のせいだからな。あのとき、素直に「お疲れ様。何か食いに行くか?」って本音を言ってやりゃあ、こいつは今頃ルーミィやシロの奴と幸せに寝てたはずなんだから。
 ……とりあえず、全身ほぐしといてやるか。終わったら起こしてやればいいだろう。起きねーかもしれねえけど。
 それにしても……じーちゃんと全然違うな。
 細い首とか丸い肩とか見てると、つくづくそう思う。やっぱ、パステルって女なんだよなあ……
 ……やべっ、意識したら、反応してきやがった……そうでなくてもなあ、さっきから「あん」だの「やん」だの悩ましげな声でうめくから、いちいち反応しちまって……
 思わず血が集中しそうになる下半身を必死で抑えつつ、俺はマッサージを続けていく。
 よく考えたらすごい状況だよな。寝てるパステルの身体を思う存分触ってるわけで……
 ……だから、考えるなってそういうことを!!
434トラパス 修羅場編 11:03/09/19 23:40 ID:pbMrFgkW
 俺は雑念振り払いつつ、指先に神経集中することにしたんだが……
 背中を完全にほぐし終わったら、次は、腰に移動するわけで。
 腰の下は……もちろん、あるべきものがあるわけで。
 思わずごくんと息をのんだ。今、パステルは完全に寝てる。ちっとやそっとじゃ起きそうにもない。
 また厄介なことに、今のパステルは、Tシャツにミニスカートといういつもの格好をしてて……
 俺の手がふくらはぎに伸びたのは、足もきっと疲れてるだろうからマッサージしてやろうという、純粋な親切心だ。やましい気持ちなど何一つない。
 ふくらはぎをそっともみほぐしつつ、パステルの様子をうかがったが……目を覚ます気配は全くない。
 ふくらはぎが終わったら、次は……
「…………」
 起きねえよな? いや、起きてくれた方が、いいのかもしんねえけど。
 理性がひとつひとつぶっちぎれていく音を、俺は確かに聞いていた。
 だけど、身体はすっげえ正直だった。いやっ、こっ、これはだなあ、健康な青少年として、ごくごく当然の反応であってだな……
 そもそもだなっ……俺は、認めたくはねえが……ずっと、こいつに、パステルに惚れてたんだよっ! 好きな女が目の前に寝てるんだ。反応しねえほうがおかしいだろう!?
 誰も聞いてねえ言い訳をしながらも、俺の手は、パステルの太ももへと伝っていって……
 こっ、これはマッサージだ。単なるマッサージであって、やましい気持ちなど……
 山のようにあるんだけどな。
 そっと太ももをなでてみる。やはり反応は無い。完全に熟睡してるみてーだな。
 いかんいかん、やめとけ。もし起きたら明日からパステルと顔合わせらんねえぞ。
 最後に微かに残った理性がそう告げているが、俺の脳はそれを完全に無視した。
 気がついたら、俺の手は完全にスカートの中にもぐりこんでいた。
435トラパス 修羅場編 12:03/09/19 23:41 ID:pbMrFgkW
 ……今ならまだやめれるぞ、俺。
 頭の中ですんげー小さな声がしたけど、俺はそれを完全に無視していた。
 間違いなく、理性は丸ごとぶっとんだ。もともと寝起きで、あんまものを考える気になれなかったしな。
 スカートをめくりあげると、当たり前だが下は下着だけ。
 ……季節柄、さすがに毛糸のパンツははいてねえな。
 そーっと尻に触れてみる。柔らかくて弾力のある手ごたえ。
 …………
 俺は、パステルの身体をそっと仰向けにした。気持ち良さそうに寝てやがる。自分が何されてるか、全然気がついてねえみてえだな……
 そっと唇を重ねてみる。さっき俺自身が作ったミルクティーの味が微かにした。
 それでも、パステルは目を覚まさねえ。
「おめえ……鈍いにも程があるぜ……」
 手が自然に伸びた。触れたのは……パステルの、胸。
 俺はしょっちゅう、「出るところがひっこんで、ひっこむところが出てる体型」なんてパステルをバカにしてるが、本音を言えば、そこまでひどいとは思ってねえ。
 むしろ、すらっと伸びた手足とスレンダーな体型は、結構いい方なんじゃないかと思ってるくれえだ。ま、胸はそうでかくないけどな、確かに。
 じゃあ何でバカにするのかと言えば……認めたくはねえが、照れって奴だよ、照れ。
 こいつは、クエストのときでもいっつもスカートだからな。いやでも脚とかが目に入っちまって、俺としては、結構そのたびに触りたくなるのをこらえたりしてたんだ。
 いわゆる「欲情」ってやつを感じてたのを、ごまかすためだった、ってーわけだ。もっともこの鈍感女がそれに気づくわけもねえが。
 胸に触れてやると、パステルは微かにみじろぎしたが、それだけだった。
 シャツをまくりあげる。暑いせいなのか、上の下着はつけてなくて……つまり、もろに胸が目に入った。
 指で弾いてやるが、やはりちょっと動いただけで目を覚ます気配は無い。
 …………
 そっと胸をつかむ。あまり大きくはないが、ちょうど俺の手にすっぽりおさまるくらいの胸。
 力をこめないように気をつけながらもみほぐしてみる。……と、
「ん……」
 や、やべっ! 起きたか!?
436307:03/09/19 23:43 ID:/OT3Glce
「とりゃー、ぱぁーると、けんかしたんかぁ?」
あどけない顔でおれをのぞきこんでくるルーミィ。
「…してねぇよ」
ビールを飲み干して、横目でじろりとにらむとルーミィはとたんに眉毛を八の字によせ、
その大きな目に涙を溜め始めた。
…あのときのパステルのように。
「トラップ、言い方がきついぞ!子供相手にむきになるなよ」
と、クレイ。
キットンとノルは心配そうに視線を泳がせているが、当のパステルは視線をあげようともしやがらねぇ。

こういうとき、大体クレイがいさめ役に回ることが多い。
それでいつもなだめられているおれだが、今日は何故か虫の居所が悪かった。
「うるせー!むきになんかなってねぇよ!」
おれの怒鳴り声に、猪鹿亭のお客の視線がいっせいにこちらを向くのがわかった。
同時にルーミィが泣き出しちまう。
クレイたちからは非難の目…
くそ。
むしゃくしゃしてビールをあおろうとし、さっき空けたばかりなのに気付いてジョッキを机に置いた。
そのときだ。

437トラパス 修羅場編 13:03/09/19 23:43 ID:pbMrFgkW
 パステルが、微かにうめいた。って、何で俺は身をひいてるのに手を離さねえんだよ!!
 俺の手は、吸い付いたようにパステルの身体から離れない。
 胸から背中、腰……と、そのなだらかなラインをなでさすっていた。
 ……ん?
 そのとき、俺はパステルの身体がうっすらピンクに染まっていることに気づいた。
 よーく見れば、少し息が荒くなっている。
 まさか……感じてるのか、こいつ?
 ここにいたって、俺はもう、今更ひくにひけなくなっているのを感じた。何が、って? 俺自身がもう限界なんだよ!!
 スカートはそのままにして、下着だけそっとずらす。初めて目にする、パステルの大切な場所……
 ゆっくりとさすってみる。「うん……」といううめき声。
 起きるか? ……もし起きたら、俺は何て言えばいいんだ?
 今更止められねえんだよ、もう……
 ゆっくり指を挿入する。……やっぱりか。濡れてやがる。
「あん……」
「……悪いな、パステル……俺、自分を善人だなんて思ったことはねえが……こんだけ最低なことができるとは思ってなかったぜ……」
 ぐっと指を深く差し入れ、そのままかきまわしてみる。指を伝って、とろっとしたものがあふれてきた。
 ……おめえさ、もしかして、すげえ感じやすいタイプなんじゃねえ……?
 完全に下着をひきおろした。もう……我慢できねえ。
 俺は、怒張した自分自身を、パステルの中につっこんでいた。
 
438トラパス 修羅場編 13:03/09/19 23:44 ID:pbMrFgkW
うわっ、ごめんなさい、わりこんだ!?>>307さん
どうもすみません……



「っっっうっ…………!?」
 パステルの目が、微かに開いた。……さすがに目が覚めたか!?
 だけど、もう、引き返せねえ。
 きつくしめつけられる中を強引に突き進み、何かを突き破った。
 ――やべえ、すっげえ気持ちいい……
 俺はパステルの顔を見れなかった。見るのが怖かった。ただ、欲望の赴くままに動いていた。
 きっと、軽蔑と怒りの目を向けてんだろーな……されてもしょうがねえけど。
「あっ……うっ……?」
 だが、パステルは何も言わなかった。ただ息を荒くしつつうめいているだけだ。
 ……もしかして、寝起きで意識が朦朧としてんのか?
「っ――駄目だっ……」
 俺はもうちょっと自分が長持ちする人間だと思ってたが……どうやら、意外と早かった方らしい。情けねえけど……
 ――せめてっ……
「っ……くっ……」
 爆発する寸前、俺はパステルの中からモノを引き抜いた。そのまま、欲望の奔流を、自分の手で、受け止めていた。
 ――せめて、これくらいのことをしてやらねえと……もうしわけが立たねえから……
 部屋を見渡して、タオルを一枚拝借する。すまん、このタオルはもう使えねえな……
 手をぬぐって、改めてパステルの顔を見やる。
 まさか、とは思うが――
439307:03/09/19 23:45 ID:/OT3Glce
がたんっ!
いきなり席を立ったのはパステルだった。
「ぱぁーる?」
泣いていたルーミィもきょとんとしてパステルに聞く。
パステルはぱっと顔をあげると、にっこり笑って言った。
「ごめん、原稿の締め切りがあるの忘れてた。さき帰るね。ルーミィ、わたしのぶん、食べていいよ」
それだけ言うとパステルは猪鹿亭から走り去ってしまった。
「お、おい!パステル?!」
「ほんとか??やったぁ!!ルーミィ、おなかぺっこぺこだおぅ!」

…あの、馬鹿!
原稿は昨日渡しに行ってたじゃねぇか!!
わけがわからずにいるクレイたちを残し、おれはパステルの後を追って走り出した。


>>423
ありゃ。かぶっちゃってますね。
んじゃいったん休みます。
440トラパス 修羅場編 15:03/09/19 23:45 ID:pbMrFgkW
ミスが多い……上は「14」です。


 俺の予感はよく当たる。
 犯されたってのに、パステルの奴は……寝てやがった。
 疲労の極限に達した奴は、ここまで眠りが深いのか?
 それとも――俺のは、入ったのに気づかねえほど小せえってのか!?
 男としてのプライドを木っ端微塵に破壊されて、俺はがっくりとうなだれた。
 そりゃあな……考えようによっちゃ、ばれて二度と口きいてもらえなくなるよりゃ、マシかもしんねえよ。
 だけどな……いくら何でもあんまりじゃねえか……?
 ――まあ、俺が文句を言えた筋合いじゃねえけどよ……
 仕方なく、俺はパステルの身体を拭いて(血とかで汚れたからな)、服をちゃんと着せなおしてやった。
 さて……どうする? このまま起こすか? 今起こしたら、さすがに何か気づくだろうな……
 それに、気持ち良さそうに寝ているパステルを、起こす気にもなれなかった。
 ……俺にできる、最大の償いは……
 俺は、当分明るくなりそうもねえ空を見やって、机に向かった。
 
 ――うーん……
 あれ? わたし……何、して……
 ってきゃああああああああああああ!!? いつの間にか寝ちゃってた!?
 わたしは慌ててベッドから飛び起きた。
 うーっ、不覚っ! トラップのマッサージが、あんまり気持ちよかったせいだあ……
 窓の外は、何だかきれいな朝焼けが広がっていた。もう夜明けかあ……
 でもっ、トラップのマッサージと、ちょっとでも眠ったおかげで気分爽快! これなら、これから頑張ればきっと何とか……
 と、そのときだった。遠慮がちなノックの音が響いたのは。
 え、今って早朝だよね? こんな時間に誰だろう?
441トラパス 修羅場編 16:03/09/19 23:46 ID:pbMrFgkW
「はーい、誰?」
「パステル……大丈夫か?」
 響いたのはクレイの声。
「クレイ? こんな朝早くにどうしたの?」
 ドアを開けると、外にはクレイだけでなく、キットン、ルーミィにシロちゃんまでいた。
「パステル、あなた大丈夫ですか?」
「え?」
 いつになく神妙な声で言ったのは、キットン。
「いえ、時間の感覚もなくなったのかと……」
「時間? え、今朝じゃないの」
「いや、もう夕方だけど」
 ――えええええええええええええええええええええええええ!!?
 う、嘘っ、そんな時間っ!? あ、朝焼けじゃなくて夕焼けなの!? 半日以上寝てたの、わたし!?
「パステル……本当に大丈夫? 原稿はできたのか?」
 クレイのとっても心配そうな声。うっ……当たり前だよね。だって、もう締め切りは明日だもん。
 徹夜して、何とかなるかなあ……? いや、うつすだけだからね! 頑張れば……
「原稿、出しに行かなくていいのか?」
「……えっ?」
「締め切り、今日だろ?」
 …………
 クレイの言葉を、わたしはしばらく理解できなかった。
 今日? え? 確か寝たのが……
「クレイ……今日、何日?」
「え? 今日は……」
 クレイが告げた日付は、確かに、締め切りの日だった……
 わっ、わたしっ……丸一日半以上も寝てたの――!?
442トラパス 修羅場編 17:03/09/19 23:47 ID:pbMrFgkW
「やっぱり、寝てしまったんですねえ」
 キットンが、頷きながら言った。
「外に置いてある食事に、いっこうに手をつけてないからおかしいとは思ってたんですが」
「ど、どーして起こしてくれなかったの!?」
「何言ってるんですか。集中したいから部屋に入らないでくれって言ったのは、パステル、あなたでしょう?」
 がっくり。そうだね、キットン……あなたが正しい。確かにわたしはそう言ったよ……
 あーん、こうなったらしょうがない。できた分だけ持っていって、印刷屋のご主人に謝ろう……
 と、そのときだった。
「それはそうと、トラップはあんなところで何してるんですかねえ?」
「え?」
 トラップ? そういえば、姿が見えないなあ。
 キットンの指差す方向は、わたしの机があるところ。そこに……
 何と、トラップがつっぷして寝てたのよ!!
 な、何やってるのそんなところで……
「ちょっと、トラップ、何でこんなところで寝てるのよ! ベッドで寝ないと風邪ひいちゃうよ?」
「うーん……」
 揺すってみたけど、全然起きる気配なし。まあ、この人の寝起きが悪いのは、いつものことなんだけど……
 ……って、きゃあ! この下には原稿がっ!! よだれでも垂れたらどうするのよっ!!
 わたしは慌ててトラップを押しのけた。何だかガターンって音がしたけど、そんなことに構ってられない!
 無事な原稿まで台無しにされたら、大変だからね。
443トラパス 修羅場編 18:03/09/19 23:48 ID:pbMrFgkW
 ……ん?
 あれ? 何、この字……?
 机の上に乗ってた原稿の、1番上のページは、元原稿の最後のページに当たる部分だった。それも……
「これ……トラップの字じゃないか?」
 いつの間にか部屋に入ってきた皆が、原稿を覗き込んで言う。
 そうだよね、この癖のある字はトラップだよ。わたしの字じゃないのは確か。
 ……もしかして?
 慌ててページをくってみる。わたしが寝る前に中断したところから後。元原稿の字が何とか判別できたから、うつすだけになってた部分。
 そこが、トラップの字で、全部書き写されていた。
「トラップ……ちゃんと反省してたんですね」
 キットンが、うんうんと頷きながら言った。
 ちなみに、話題の主トラップは、わたしに椅子ごと床に倒されてもまだ寝てたんだけど。
 わたしと違って、トラップは原稿書くのに慣れてないはずだもん。きっと、すごく時間がかかったはず……わたしが寝てる間、ずっとかかったんじゃない?
「そうかー。どうりで昨日今日と、トラップの姿が見えないと思ったんだよなあ」
 クレイ、のんきすぎるよ……
「それはそうとパステル、できてるなら、早く印刷所に向かった方がいいんじゃないか?」
 思い出したようにクレイが言った。
「もうすぐ日が暮れるぞ。今ならまだ間に合うんじゃないか?」
「あっ……そうだね、行ってくる!」
「トラップは、我々がベッドまで運んでおきますから」
「ぱーるぅ、いってらっしゃいだおう!」
 ううっ、みんなありがとね!
 トラップ……本当にありがとう!!
 わたしは紙袋と原稿をつかんで、慌ててとびだした。
444トラパス 修羅場編 19:03/09/19 23:49 ID:pbMrFgkW
 走りながら原稿枚数をチェックする。抜けてるページがあったら大変だもんね。
 1枚、2枚、3枚……
 ……200枚、201……あれ?
 印刷所に到着寸前、気づいた。あれ? 原稿が一枚多い??
 慌ててよくチェックしなおしてみる。増えたのは、最後の一枚、の次……
 ラストページの次に、真ん中に一行しか書かれていない原稿が、挟まっていた。
 そこに書いてあったのは……
「……え?」
 ――ごめん。だから、俺が俺にできる精一杯の償い。おめえのことが、好きだ
 ……これ、トラップの字、よね……これ、どういう意味……?
 店を閉めようとしてわたしが外で突っ立っているのに気づいたご主人に声をかけられるまで、わたしは、そこに立ち尽くしていた――


以上、完結です。うーん。
トラップのキャラが変わってる気がする……「謎の生物編」よりは、まとまってると思うんだけどなあ……
なかなか納得できる作品を書くって難しいです。

>>307さん
わりこんですいませんでした。
続きをどうぞ
445307:03/09/20 00:03 ID:hTJKUUoK
>>444
いえいえこちらこそ良いもの読ませていただきました〜♪
しかもぞろ目ですねぇ。

では続きです。

――あんの馬鹿、どこ行きやがった?!
いつもとろいくせに、こういうときばっか…
心の中で毒づきながら、おれは走った。
あいつ、さっき…なんであんなふうに笑えたんだ?
おれはあいつを傷つけた。無理矢理犯しかけた。
そのことをいつ責められるか、それが怖くてあいつと目が合わせられなかったんだ。
それでずっといらいらして、周りにあたりちらして…
くそっ…おれはなにがしたいんだ?

謝ろう。
どんなに罵られてもいい、嫌われてもいい…憎まれて当然だ。
446307:03/09/20 00:13 ID:hTJKUUoK
いた!
村のはずれの丘へ続く道を、とぼとぼと歩いている、小麦色の後ろ姿。
「パステル!」
おれが呼ぶと、パステルは一瞬身を固まらせたかに見えた。
…が、次の瞬間、猛ダッシュでまた走り始めやがった!
「おい!待てよ!」
おれの制止も聞かず、林の中を走っていくパステル。
舌打ちして、そのあとを追った。あいつとおれじゃ鍛え方が違う。
すぐに追いついて、パステルの腕を掴み、引き寄せ、抱きしめた…
が、パステルが足元の木につまづいてしまい、2人してごろごろと草の上に転がることになってしまった。

447307:03/09/20 00:20 ID:hTJKUUoK
「あいてて…」
偉いぞ、おれ。
転んでもパステルは離してねぇ。
…なんてことを考えてる場合じゃない。
「大丈夫か?」
パステルに呼びかける。…返事がない。
「おい、大丈夫か?」
もう一度呼びかけ、顔を覗き込むと…
なんと、パステルはぼろぼろと涙を流していたのだ。
これにはおれもびびって、どこか怪我でもしたのかと心配になったが、
パステルは鼻をすすりながらこう言った。
「ト…トラップ、なんで、あのとき、やめたの?」
448307:03/09/20 00:33 ID:hTJKUUoK
おれは耳を疑った。
パステル、いま、何て言った?
「だれでも…ひっく、良かったの…?」
「ち…違う!」
どういうことだ?
いま、パステルはなんで泣いているんだ?
「お、おめぇ…嫌だったんじゃないのか?」
「…」
「だから抵抗してたんだろ?」
「…わかんないよ…でも…ひっく、あれから、毎日、あのときのこと思い出して、凄く寂しくなっちゃうの…それで…トラップが…ひっく、全然くちきいてくんなくて、それでもすごく悲しくて…自分でも、わかんないよぅ…」
おれはそれを聞いて、何も言えなくなっちまった。
つまり…つまりだ。それは…
「トラップ、わたしのこと、どうでもいいの?」
「そんなわけねぇだろ!」
「あの薬のせいで、したくなってただけじゃないの?わたしじゃなくても、良かったんじゃないの…?」
「違う!」
「わたし、それで、くちきいてくれないんだと思って、寂しくて…悲しくて」
そこまで言うとパステルは息せき切ったように泣き出した。
おれの目の前で泣きじゃくるパステル…
その小さく丸まった肩を、おれはそっと抱きしめた。
449307:03/09/20 00:49 ID:hTJKUUoK
しばらくの間、おれは震えるからだをずっと撫でてやった。
だんだんと呼吸が落ち着いていくのがわかる。
おれは口を開いた。
「おれは、お前のことが好きだから、欲情したんだよ」
ゆっくりと耳元でつぶやく。
パステルが、信じられないものを見るかのようにおれを見た。
「え…」
そうなんだ。
いつも一緒に居過ぎてくちに出せずにいたが、ほんとうはいつも誰よりも、こいつを見ていたんだ…
「…うそ」
「うそじゃねーよ!ひとが頑張ってせっかく言ったのに、茶化すんじゃねぇ!
…でも、だからこそ怖かったんだ。おれの不用意な行動で、おめぇを傷つけているんじゃねぇか、って。
おめぇ、おれが怖くねぇのか?」
「…怖くないよ。あのときは、びっくりしちゃったけど…
途中で終っちゃって、ほんとうはすごく、残念だったの…」

涙でうるんだままの、パステルの目を見つめた。
そのはしばみ色の目が、おれを優しく見つめている…
「好きだよ、トラップ…ほんとうはわたしもあなたが好き」

ざわざわざわ、と木々が鳴るのが聞こえる。
おれとパステルは、今度こそ本当に、抱き合った…
450307:03/09/20 00:59 ID:hTJKUUoK
あの後。
わたしとトラップは…いつもどおりの日常に戻った。
だって両想いだなんてこと、恥ずかしくて気まずくて皆になんて言えないもん。
部屋も男部屋と女部屋しかないから、なかなか2人になんてなれないし…

でも、少しの時間でも、2人になれるチャンスをいつも探していたりして(笑)
だって、ねぇ?

そして…これはトラップにも内緒なんだけど。
たまに、シロちゃんが「おいしいのが飲みたいデシ…」ってわたしに擦り寄ってくるようになっちゃったの。
あ、あれって…おいしいの?
でもものすごーく気持ちよかったから、してもらっちゃいたくなることも、あったりする…

あぶない、あぶない。



終わりです。
駄作で申し訳ありませんでした…しかも遅くて。
スレ汚しすみません。
451307:03/09/20 01:04 ID:hTJKUUoK
ぎゃあ!
矛盾を自分でみつけてしまい鬱。
>>450
シロちゃんも嘘をついていたのです。そういうことで…(汗)
452SS保管人:03/09/20 01:35 ID:Q9HHLvw9
>>451
シロがバター(ryになってる…

夜も遅くにご苦労様です。
一気に職人さんが増えて嬉しい限りです。
では、これからじっくり読ませて貰います。
453名無しさん@ピンキー:03/09/20 01:44 ID:XTCqlWKC
なんて事だ・・・二日連続でリアルタイムで拝見できるとは!
お疲れ様ですノシ
454名無しさん@ピンキー:03/09/20 01:51 ID:oWuKb6fo
いやートラパスシリーズ、マジで一冊の本になるくらい書いてるなー
それにあと5つ位ネタがあるってんだからスゲ―よマジで!
次はどんな話なのか楽しみです(゚∀゚)
455トラパス作家:03/09/20 07:25 ID:AWcbVn4c
>>307
お疲れ様でした。楽しく読ませていただきました〜

>>454
次はどのネタにしようかな、とか考えていて
MOSO本に対抗して先に学園ものトラパスでも書いてやろうか、とか思ったんですけど
クレイ→高校三年生
トラップ、パステル、マリーナ→高校二年生
ルーミィ→パステルの妹
キットン→保健室の先生
ノル→体育の先生
あたりまで設定考えたところでやめました(w どう考えても痛い話にしかなりそうもないので……
ネタが切れたら「MOSO本に載るSSの中身をエロ風に想像しよう!」シリーズでも書けそうな気がします。
泳ぎを教えるだとか腕を組むだとか、読者が考えるトラパス、みたいな話が多いみたいですから……

それは世間ではパクリと言う
456名無しさん@ピンキー:03/09/20 11:59 ID:jAu/CiUh
完結&新作キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
修羅場編の肩こり&マッサージの描写リアルですが、
一連の作品のせいで実体験ですか?だとしたらなんか申し訳ない気分。
無理なさらないで下さいね。
>307
これって前のほうでリクエストがあったのですよね!
なんていい人だ( ´Д⊂  
リクエストした方ではありませんが、楽しませて頂きましたv
457トラパス作家:03/09/20 19:55 ID:AWcbVn4c
>>456
ありがとうございます。
いえいえ、無理なぞしておりません。皆さんが面白いって言ってくれるたび、すごく充実して
書くことが全然苦痛になりませんから。
肩こりとマッサージの描写がリアルなのは、わたしがもう何年も腰痛肩こりを患っているからです。
いえ、パソコンやってる人なら、きっと頷いてくれるかと……
別に作品群を書いてきたことによって悪化したということもありませんから、ご安心ください。
アイディアが尽きるか、あるいは「つまらん、見たくないからもう書くな」といわれるまでは、続けていきたいと思います。


というわけでしつこくまた新作です。
ちょっと趣向変えてみました。
458トラパス 恋愛談義編 1:03/09/20 19:57 ID:AWcbVn4c
――先生の作品に出てくる男性って、リアリティがありませんね。
 その日、わたしのところに届いた一通のファンレター。
 それは一行目からこんな調子で始まっていた……
 わたしの名前はパステル・G・キング。
 冒険者にして、雑誌に連載作品を持ってる小説家(の卵)でもあるんだ。
 もともとはわたしが経験したクエストをまとめてたものをちょっとずつ発表してたんだけど、最近それが結構評判いいらしくてね。こんな依頼を受けたんだ。「普通の恋愛小説も書いてみませんか?」って。
 それって、つまりわたしが考えた完全オリジナルの作品を発表してもいいってことだよね? わたし、小説家って名乗っちゃっていいんだよね??
 それで舞い上がっちゃって。一も二もなく引き受けて、早速一本発表してみたんだ。
 内容は、地味で目立たない女の子が、かっこいい冒険者に憧れて、彼のパーティーに参加するために自分も冒険者を目指すっていうお話。
 ……実話じゃないからね、言っておくけど。
 結末は、女の子は冒険者には結局なれなかったけど、憧れの人と無事に結ばれて「いつか迎えに来る」っていう言葉を信じてひたすら待つ――ラストの一行で、彼が帰ってきたかのような描写を匂わせてエンド、だった。
 初めて書いた恋愛作品、それも完全なオリジナルだからね。わたしとしては、読んでくれた人の反応がすっごく気になったんだ。
 雑誌に連載とかしていると、ファンレターっていうのを毎月何通かもらうんだけど、今日届いたのもそれ。
 で、始まりからそんな調子だったそのファンレターは
 
 ――先生の作品に出てくる男性って、リアリティがありませんね。
   女性の希望と理想をそのまま体現しただけのような薄っぺらいキャラクターで、全然魅力が感じられません。
   どんなかっこいい男性にだって、汚い面や弱い面はあるはずなんです。先生は、想像で小説を書いていませんか?
   もっと身近な男性に、ちゃんと接して取材してみた方がいいのではないでしょうか。
459トラパス 恋愛談義編 2:03/09/20 19:58 ID:AWcbVn4c
   恋愛描写も同じです。何の根拠もなくお互いを好きになり、将来を誓い合って別れる……二人は、お互いのどこにひかれたのでしょう? 全くわかりませんでした。
   先生は、きっと恋愛をしたことがないんでしょうね。そんな人が恋愛小説を書くのは、無理があったんじゃないですか?
   冒険小説を面白く読ませていただいていただけに、今回の作品はちょっとがっかりでした。
   次回の作品が少しでも改善されていることを祈ります。
   
 というような内容だった。
 ガーンガーンガーン大ショック……
 そりゃあね、今までもらったファンレターだって、全部が全部ほめちぎったものばかりじゃなかったよ?
 それにしたって、今回みたいに一行目から最後の行まで批判されっぱなしっていうファンレター(?)も初めて見たので、わたしはかなりショックを受けていた。
 何よりショックだったのは、わたしに会ったこともないこの差出人が、わたしのことをすごく正確に見抜いてるってこと。
 確かに、わたしは今までまともに恋愛……っていうのをしたことない。
 ジュン・ケイとかギアとか、それらしい人は一応いたけど……どうもね、最近思うんだ。あれは、本当に恋愛だったのかなあ? って。
 じゃあ何だったんだ、って聞かれても困るんだけど……
 今回の恋愛小説を、1から10まで想像で書いたっていうのもその通りなら、相手役の男性をただ理想だけで書いたっていうのもその通り。
 ただ、女の子が人を好きになるときの条件を全部満たした、ただそれだけの主人公……そうだよね。読み返してみてわかったけど、確かにその通りだよ。
 はあ……一応、印刷所からは、二作目もどうかって言われてるんだけど……自信無いなあ……
 いやいや、諦めちゃそれでおしまいよね。差出人さんも言ってるじゃない。「身近な男性にちゃんと接して取材してみてはどうか」って。
 幸い、我がパーティーには男性が四人もいるもんね。シロちゃんはさすがに除くとして、クレイ、トラップ、キットン、ノル。
 全員が全員、全然違うタイプの人だもん。恋愛のポイントとか、人を好きになる条件とか、それぞれに聞いてみれば、きっとそれなりに参考になるはず。
 よしっ、決めた!
 というわけで、わたしはみんなに取材してまわることにしたんだけど……
460トラパス 恋愛談義編 3:03/09/20 20:02 ID:AWcbVn4c
 キットンの場合。
「はあ? 私が女性を好きになるとしたらですか? 私には既にスグリという愛する妻がいるんですが。まあ、そうですねえ……まず知的な女性ですね。それと、共通の趣味を持っていることですか。
 私の薬草の会話についてこれないような女性は、ちょっと恋愛対象として見る気にはなれませんね。恋愛についてですか? 私が思うにですね、それは一種の病じゃないかと思うんですよ。
 パステル、あなたもそのうちわかるでしょうけど、人を好きになるのに、条件なんて無いと思いますよ?」
 条件なんて無いって言いながら、どうして条件をスラスラ言えるのよう……もうわけわかんない。
 とりあえず、趣味が合うっていうのは確かに重要な項目だよね。チェックしておこう。
 
 ノルの場合。
「え? 俺? 好きになるとしたら?……よくわからない。大事な人? パーティーのみんなと、メルかな。そういう意味じゃない? じゃあどういう意味?
 恋愛について? ……相手と、ずっと一緒にいたいって思うことじゃないかな」
 うーっ、大切な人がパーティーの皆や妹のメルさんで、ずっと一緒にいたいって思うことが恋愛? ノルにとっての恋愛って、もしかして家族愛とごっちゃになってない? 違うのかなあ……
 
 クレイの場合。
「え? 俺が好きになる女性のタイプ? そうだなあ……優しくて家庭的なタイプかな。明るくて、前向きな……
 でも、実際にそういう人がいたとして、じゃあその人を好きになるかって聞かれたら、わからないって答えるよ。恋愛ってそんなものだよ。
 俺にとっての恋愛っていうのは、相手の何もかもを好きになれることかな。相手の嫌なところも、欠点も、全部ひっくるめて好きだと言える、それが恋愛だと思うよ」
 好きになる条件を全部満たしていたとしても、好きになるかわからない……うむむむむ。クレイの言うこともよくわかんないなあ。それに、嫌なところも欠点も好きにならなきゃ恋愛と言えないっていうのも、何だか納得できない。
 好きな相手って、自分にとって嫌なところも欠点もないような人だから好きになるんじゃないの?
 うーん。
461トラパス 恋愛談義編 4:03/09/20 20:03 ID:AWcbVn4c
 隣の部屋で薬草の実験をしていたキットン、裏で大工仕事をしていたノル、庭で剣の手入れをしていたクレイ、と次々に話を聞いていったんだけど、どうも……わからないなあ。
 みんなの言うこと、それぞれわかるようでやっぱりわからない。結局、男の子にとっての恋愛って、何なのかなあ? わたしにとっての恋愛は……?
 まあ、よく考えたら、ノルはずっと妹さんを捜すために旅を続けてたし、クレイはかっこいいからもてるけど、本人が全然それに気づかない人だしね……キットンは妻帯者だけど、まあ……一般の人とは異なる感覚を持つ人だから。
 まともに恋愛の話ができるのを期待したのが、間違いだったかも。
 でも、わたしは諦めないもんね。最後に残ったトラップなら、きっと何か教えてくれるんじゃないかって思うんだ。いつもナンパしてるから経験豊富そうだし、実際にマリーナのことが好きみたいだしね。
 よし、トラップに期待してみよう!
 トラップは、ちょうど今バイトに出かけてていないんだよね。帰ってきたら、早速インタビューだ!

 そうやって、わたしは食堂でホットミルクを飲みながら、ずーっとトラップの帰りを待ってたんだけど。
 夕食の時間を過ぎて、さらに寝る時間になっても、彼は帰ってこなかった。
 ……どうせギャンブルでもしてるんだろうなあ。はあ……
 クレイ達はもうとっくに寝ちゃったし、食堂にはわたし一人っきり。もう、明日にして今日は寝ちゃおうかなあ……
 わたしが半分くらい諦めかけたそのとき、やっと宿のドアが開く音がした。
 もーっ! やっと帰って来た!!
 どうせトラップのことだもん。わざわざ迎えに行かなくても、食堂には絶対立ち寄るはず。いっつもつまみ食いしてるの、知ってるんだからね。
 わたしは驚かせようと思って、わざと電気を消して待つことにした。
 そうしたら、思ったとおり! トラップは、部屋に戻らずに一直線にこっちに向かってきたんだ。
 何だか鼻歌まで歌ってご機嫌みたい……ギャンブル、今日は勝ったのかな?
 パチッ
「うおっ!?」
 電気をつけた瞬間、真ん中で仁王立ちしていたわたしを見て、予想通りトラップはかなり驚いていたみたい。
 ふっふっふ、ざまーみろ!
462トラパス 恋愛談義編 5:03/09/20 20:04 ID:AWcbVn4c
「ぱ、パステル!? おめえ、こんな時間に何やってんだ?」
「トラップの帰りを待ってたの! ね、ちょっとだけ話しない?」
「はなしぃ……?」
 トラップは露骨に面倒くさそうな声を出したけど、「はいっ」とミルクを突き出したら、渋々それを受け取って椅子に座ってくれた。
「んで、何だよ話って。俺ねみいんだけど」
「大事なことなのっ! あのさ、トラップに聞きたいんだけど」
「あんだよ」
「トラップってさ、今好きな子、いるよね?」
 ぶはあっ!!
 わたしがそう切り出した瞬間、トラップは盛大にミルクを吹き出した。
 もーっ、汚いなあ。
「げほげほっ……あんだよ、いきなり……」
「だから、大事なことなんだって。教えてよ」
「…………」
 トラップは、何だか急にそわそわして周りをみまわしてたけど、やがてボソッとつぶやいた。
「……まあな」
「やっぱり! ねえ、どうしてその子のこと好きになったの?」
「そりゃあ……って、何でんなこと聞くんだよ」
「うん、実はさあ」
 わたしがファンレターのことを話すと、トラップは何だかあからさまに不機嫌になった。
 ……わたし、何か悪いこと言ったっけ?
「けっ、くだらねえなあ。ほっときゃいいだろ、んなもん」
「何よー、そんな言い方はないでしょ! それに、わたし自身が納得できないもの。次も書いてみてって言われてるから、今度こそいい作品を書きたいの! だから、協力してよ。ね?」
 トラップは何だかぶつくさ言ってたけど、諦めたみたいで、椅子に座りなおして真剣に話し込む体勢になってくれた。
463トラパス 恋愛談義編 6:03/09/20 20:05 ID:AWcbVn4c
「わぁったよ。んで? 何を聞きたいんだよ」
「だから、トラップにとって恋愛とは何か、とか、どうして好きになったのか、とか」
 まあ、マリーナを好きになった理由は大体想像がつくけどね。同性のわたしから見ても、すっごくいい子だもんなあ。
「…………」
 トラップは、しばらく考え込んでたみたいだけど、ちょっと赤くなりながら言った。
「そだな。俺が……好きになった理由は……理由なんざねえ、ってのが正直なとこだな」
 は??
 わけわかんない。何、それ?
「だぁら……別に、特別な理由なんかねえんだよ。ただ、俺にとってはそいつでなきゃ駄目だって思えたんだ。
 例えば、そいつよりもっと美人でもっと色気があってもっと性格のいい女がこの後何人出てきたって、俺は絶対好きにはならねえと思う。そいつの何がいいってわけじゃねえ。しいて言うなら全部だな。
 そいつの何もかもが好きになっちまった、ってとこだ」
「うーんっ……」
 わかるような、わからないような……
「俺にとっての恋愛ってーのはだな……ま、そいつが幸せになってくれることだな。そいつにとって俺が邪魔な存在なら、俺は消えたっていい。ただそいつさえ幸せになってくれりゃあいい、それが俺にとっての恋愛だな」
 うーんっ……何だか、すごくとても意外な言葉を聞いた気がする……
「信じられないなあ……」
「てめえっ! 人が真剣に言ってんのに失礼な奴だなっ!!」
「あはは、ごめんごめん。ちょっと意外だったんだ。トラップは、いつも自分のことを真っ先に考えるタイプだと思ってたから……」
「……まぁな。そりゃそうだ。俺が幸せになんなきゃ、他の奴が幸せになったって意味ねえじゃねえか。だけど、そいつだけが特別だから、それが恋愛だっつってんだよ」
「ふーん……」
 何となく、わかる気がする……けど、いいなあ。そんな風に思ってもらえたら、幸せだろうなあ。
 ……何だろ。何だか悔しくなってきちゃった。
「いいなあ、マリーナが羨ましい」
「……ああ? 何でこんなとこでマリーナが出てくんだ?」
「だって、トラップの好きな人って、マリーナでしょ? トラップみたいな人に好きになってもらえたら、きっと幸せだろうなあ、って思って……」
 わたしがそう言った途端、トラップの顔が、何故かひきつった。
464トラパス 恋愛談義編 7:03/09/20 20:06 ID:AWcbVn4c
 ……どうしたんだろ? あ、もしかして、図星指されたからびっくりしたとか?
 いっつもわたしのこと鈍い鈍いってバカにしてるもんね。わたしにだって、それくらいわかるんだから。
 よし、大体わかったかもしれない! トラップの意見をメインにして、次の作品を考えてみよう!
「色々教えてくれてありがとう、トラップ。もう寝よう、大分遅くなっちゃったし」
「……パステル。最後にいいこと教えてやろうか」
「え?」
 いいこと? 何だろう?
「何? いいことって」
「恋愛のなあ、真実って奴だよ。ちょい、耳貸せ」
 ちょいちょいと手招きされて、わたしはトラップの口元に耳を寄せた。
 その瞬間だった。
 ぐいっ
 ……え?
 突然、トラップの手が、わたしの顎をつかんで……
 え? 何? わたし……わたしの唇を、トラップの唇が塞いで……
 これって……キス……?
「――――――!!」
 思わずつきとばそうとしたけど、その手をトラップにつかまれた。
 そのまま、わたしは抱きかかえられて……
 気がついたら、テーブルの上に押し倒されていた。
 すぐ目の前には、いつものふざけた表情が全然無い、怖いくらい真面目なトラップの顔……
「……教えてやるよ。恋愛の真実って奴を」
「トラップ……?」
 やだ、う、動けない。トラップって、こんなに力、強かった……?
 トラップの目が、じいっとわたしの目を見つめていて……
 そして、もう一度唇を塞がれた。
「んん――っ!!」
 何、何が起きてるわけ……? トラップ、どうしちゃったの……?
465トラパス 恋愛談義編 8:03/09/20 20:07 ID:AWcbVn4c
「恋愛ってのはな、奇麗事ばっかじゃねえんだよ……」
 唇を離して、トラップがつぶやいた。
 息が荒い。怖い……
 そのまま、トラップの唇がわたしの首筋をはって……そして。
 て、手が! 彼の手が! わたしの胸元に伸びてきて!!
「やっ、やだっ、やめて! やめてよっ!!」
「好きな女だから、欲望の赴くままにめちゃくちゃにしてやりてえ、それが恋愛の真実の一つなんだよ!」
 ――え?
 トラップの手が、乱暴にブラウスのボタンを外して、胸元におしいってくる。
 膝の間を、トラップの膝が割り込んで、無理やり脚を開かされるような格好になって……
 ――好きな女、だから? え? トラップの、好きな人って……
「何で……ここまでしなきゃ気づかねえんだよ!! 俺の、好きな奴ってのはなあ……」
「――駄目っ!!」
 どんっ!!
 わたしは、思わずトラップを突き飛ばしていた。思いっきり、力をこめて。
 彼を、拒絶してしまった。
「……あ……」
「…………」
 トラップは、何も言わない。そのまま……食堂を出て、階段を上っていく音がした。
 へたりっ、と床に座り込んでしまう。
 わたし……どうしたらいいの?
 トラップの……好きな人って……!
466トラパス 恋愛談義編 9:03/09/20 20:07 ID:AWcbVn4c
 翌朝。わたしはトラップとまともに目を合わせられなかった。
 それは、トラップも同じみたいで、わたしの方を見ようともしない。
 自然、ぎくしゃくした感じで朝食を終えたんだけど、さすがに様子が変だってことに気づいたみたいで、後でクレイに声をかけられた。
「パステル、トラップと何かあったのか? よかったら相談に乗るけど」
 ははっ、ありがとう、クレイ……でも、さすがにこれはクレイには相談できないよ。
 わたし、どうしたらいいのかなあ……
 こんな感じで、食事が終わった後も、猪鹿亭のテーブルで一人ぼんやりしていたときだった。
「はーい、パステル。どうしたの? 元気ないじゃない」
「あ、リタ……」
 食堂のウェイトレス、リタに話しかけられた。わたしと同い年くらいの女の子で、何かと話をしてくれるんだよね。
 ……そうだね。こういうことは、女の子同士の方が話しやすいかも。よーし、リタに聞いてみよっ!
 もちろん、恥ずかしいから相手の名は伏せて、だけどね。
「うん。あのね、リタ、実は……」
 で、わたしは、こういう風に話をしたんだ。
 恋愛小説が書けなくて困っていたこと。
 それで、実際に恋愛をしている人に話を聞いてみようと思って、ある人に話を聞いてみたこと。
 わたしは、そのある人の好きな人は別の女の子だと思っていたけど、実は違って……わたしのことを、好きでいてくれたみたい、ということ。
 それを、わたしは拒絶してしまって、そのまま気まずくなってしまったこと。
 トラップのトの字も出さないように、ある人がどんな人かも一切しゃべらないように、と気を使って気を使って話したのに。
 話を聞いて、リタは、間髪おかず
「そのある人って、トラップ?」
 ぶはっ
 昨夜のトラップのごとく、飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
 ううーっ、どうして一発でわかっちゃうのよう……
467トラパス 恋愛談義編 10:03/09/20 20:08 ID:AWcbVn4c
「な、何でそう思うの?」
「何で? 何でわからないのって言いたいわよ。トラップの好きな人なんて、見ればわかるわ。あからさま、ばればれじゃない」
 そ、そこまで……もしかして、気づいてなかったのわたしだけ? いやいや、まさかそんなことはないよね、うん……
「……うん、実はそう」
「ふーん。トラップ、ついに告白したんだ?」
「こ、告白ってわけじゃないんだけど……」
 ゆうべのことを思い出して、思わず赤面してしまう。ううーっ、恥ずかしいっ……
 でも、そういえば、トラップ、一度も「好き」って言ってない……よね。
 もし、これでわたしの勘違いだったら、どうしよう……
「と、とにかくね。同じパーティーなんだし、ぎくしゃくするのは嫌なんだ。わたし、どうすればいいんだろう?」
「どうすれば……って、パステル、あなた、トラップのこと好きなんじゃないの?」
 ……え?
 どうして、そこでそういう話が出てくるの?
「ち、違うよお。何でそう思うの?」
「何でって……だって、そんなの一目瞭然じゃない」
 ……わけがわかりません。リタ、一体何を言ってるの?
「違うってば。わたし、トラップのこと好きなんかじゃないよ。一緒にパーティー組んでる、家族みたいな人だもん。嫌いじゃないのは、確かだけど……」
「家族って……ねえ、パステル」
「だって、だって!」
 だって、ありえないよ。あのトラップだよ?
 いっつも意地悪ばっかり言うし、口は悪いし、トラブルメーカーだし。そりゃ、やるときはやるし、意地悪ばっかり言ってるように見えて、実はちゃんとみんなのことを考えて言ってくれてるんだってわかるけど……
 でも、わたしが好きなのは! こう、ジュン・ケイやギアみたいに、優しくて、頼りになって、それで……
 わたしがそういう意味のことをまくしたてると、リタは何だか呆れたみたいだった。
 ううーっ、何でそんな目で見るのよう。
468トラパス 恋愛談義編 11:03/09/20 20:09 ID:AWcbVn4c
「パステル……あなたは、恋愛って何だと思ってるの?」
「え……? えと、とっても素敵なもの、かな?」
 そう。ジュン・ケイのときみたいに、見ているだけで幸せになれるような、そんな素敵な気持ち。それが恋愛なんじゃないの?
 そう言うと、リタはぶんぶんと首を振った。
「違う。全然違うわよパステル。やっとわかったわ……あなたの言ってるのは、ただの憧れよ、憧れ」
「……え?」
「憧れと恋愛は全然違うわよ。恋愛って言うのはね、もっと嫌な面がいっぱいあって、すごく辛いものなの。
 例えば、誰かを本当に好きになったとするわね。だけど、その人にはもう他に恋人がいて……そういうとき、『あの女が消えてくれればいいのに』とか、本気で思っちゃう。本当よ?」
 ……嘘。
 茫然としている間にも、リタの話は続く。
「そういう、嫉妬心とか。好きな人が、今どこで何をしてるんだろうって詮索してしまう心とか、ちょっとしたことで浮気してるんじゃないかと思ってしまう疑惑とか、何もかも相手を自分のものにしてしまう独占欲とか。
 恋愛っていうのはね、そういう自分の醜くて嫌な面をいっぱいいっぱい見なくちゃいけないの。そして、同時に、相手の嫌な面も、いっぱい見ることになるのよ。だけど、欠点がいっぱいあるってわかってて、それなのに好きだって思っちゃうのよ。
 理想そのままの相手が来たって、その人を好きになるとは限らない。理想の正反対の人を何故か好きになることだってあるわ。理想と現実は違う、理屈どおりにいかない、それが恋愛よ」
 それだけ言うと、リタはお昼ご飯の準備のために厨房に行ってしまったんだけど。
 何だか、そう言ったリタはいつになくすごく大人びて見えて……
 それから、わたしはずっと考えてたんだ。
 トラップについて。恋愛について。
 わたしが、あのとき彼を拒絶してしまったのは……きっと……
469トラパス 恋愛談義編 12:03/09/20 20:11 ID:AWcbVn4c
 その日が来たのは、それから10日後のことだった。
 その間、わたしは一度もトラップと口をきかなかったんだけど。
 わたしは、その間に、エベリンのマリーナに手紙を出していたんだ。
 自分の気持ちを正直に書いて、今の状態を書いて、協力してもらえないか、って。
 マリーナは、快くOKしてくれた。ううっ、本当にいい子だよね。
 ……あんなにいい子が傍にいたのに、どうして、トラップはわたしを選んでくれたんだろう……
 そして、マリーナの協力の元。
 マリーナは、用事があるからエベリンまで来てくれ、と言って、クレイを呼び出してくれたんだ。
 手紙の一文にはしっかり、「ただし、ちょっと内密な用事なの。トラップに知られるとうるさいから、まだ黙ってて」と添えられていてね。
 そこにすかさず、わたしが
「じゃあ、ついでに魔法屋のおじいさんとおばあさんのところにルーミィを連れていってくれない? あんなにお世話になったんだから、たまには顔を見せてあげたいし。
 わたしは原稿があるから行けないけど、かわりにシロちゃんと一緒なら大丈夫だと思うから」
 って続けたんだ。
 で、エベリンまで行くのなら、一緒に行って薬草でも見てきては? とキットンもおまけにつれていってもらうことにして。
 ノルだけは理由が思いつかなかったけど……ノルは、普段から馬小屋で寝てて、部屋の中には入ってこないからね。
 ようするに、部屋の中でわたしとトラップが二人きりになれればよかったんだ。
 ちゃんと言わなくちゃいけない。わたしが、トラップをどう思っているか。どうして、あのとき拒絶してしまったのか……
 
 クレイ、ルーミィ、シロちゃん、キットンの四人が、エベリンに出発した後。
 トラップは、しばらく「ちぇーっ、俺も久しぶりにマリーナに会いたかったのになあ」とかぶつくさ言ってたけど、どうせトラップは、バイトがあったしね。
 クレイ達は、もちろんこの日に合わせてあらかじめ休みをもらっておいたんだ。
470トラパス 恋愛談義編 13:03/09/20 20:11 ID:AWcbVn4c
 で、その日。わたしは真っ白な原稿を前に、そわそわしながらトラップが帰ってくるのを待っていた。
 ううーっ、緊張するなあっ。う、うまく言えるかな?
 もう一度確認しておこう。よしっ、男部屋、誰もいない! わたしとルーミィの部屋も、わたししかいない!
 何度も何度も確認して、緊張を沈めるために原稿に向かい、結局一文字も書けないまままた確認に行って……みたいなことを繰り返して。
 やっとトラップが帰って来たのは、やっぱり真夜中になってからだった。
 ううーっ、もう何も言うつもりはないけど、どうせギャンブルしてたんだろうなあ……
 耳をドアにあてて、足音を聞く。いつもの通り、食堂で何か飲んだ後、階段を上ってくる音。
 そして、隣の部屋のドアが閉まる音。
 ……よしっ!
 あんまりためらってると、トラップが寝ちゃうかもしれないからね。すぐに部屋を出て、隣のドアをノックする。中から聞こえる、いつものトラップの声。
「開いてるぞー……って、誰だ?」
「あの……わたし……パステル」
 名乗った後、しばらく何も聞こえなかった。びっくりしてるんだろうなあ……この十日、話もしなかったのに突然訪ねてくるんだもんね。
 しばらく待ってたら、物音がして、ドアが開いた。
 多分もう寝ようとしてたんだろうな。だぶっとしたシャツとズボンというラフな格好のトラップが、目の前に立っていた。
「……あんだよ」
「あの、ね。話がしたくて。……部屋に入ってもいい?」
 わたしが答えると、トラップはしばらく迷ってたみたいだけど、「勝手にすれば?」と身をひいた。
 勝手にするもんっ。
 部屋の中に入って、後ろ手で鍵を閉める。……万が一にも、例えば宿のご主人とかが訪ねてきたら困るもんね。用心しないと。
471トラパス 恋愛談義編 14:03/09/20 20:12 ID:AWcbVn4c
 トラップは、二つあるベッドの一つに腰掛けて、わたしの方をじーっと見てた。
 ちなみに、今のわたしはパジャマ姿。それも、いつものズボンタイプじゃなくて、ネグリジェタイプ。
 多分、トラップの前でこれを着るのは初めてなんだけど……気づいてくれてるかな?
「んで、話って?」
「あのね、この間のこと……なんだけど」
 言いながら、わたしはトラップの隣に腰掛けた。
 ちゃんと、言わなくちゃ。もしかしたら、わたし、物凄く勘違いしてるのかもしれない。
 この間のことは、やっぱり、トラップの冗談だったのかもしれない。
 でも、それでも。わたしの気持ち、ちゃんと伝えたい。
「あのね、トラップ……聞いてもいいかな」
「……んだよ」
「この間の、あの……あれは、わたし、思ってもいいの? トラップが、わたしのことを好きでいてくれてるって、思ってもいいの?」
「…………」
 トラップは、しばらく黙ってたけど、やがて目をそらして言った。
「だったらどうだってんだよ。おめえにとっては、どうでもいいことなんじゃねえの? 俺が誰を好きだろうとさ」
「そんなことないわよっ!!」
 思わず大声で叫んでしまってから、慌てて口を押さえる。危ない危ない。
「……おめえは、別に俺のことなんか好きでもなんでもないんだろ。だったら気にすんなよ」
「違うっ……わたしは……」
 言わないと。言っちゃえパステル! でないと、何も先に進まないんだから!
「わたしは、トラップのこと、好きだよっ」
472トラパス 恋愛談義編 15:03/09/20 20:12 ID:AWcbVn4c
 ……そう。
 リタの言葉を聞いて、やっとわかったんだ。
 わたしは、トラップのことが好き。意地悪ばかり言ってたけど、わたしのことを考えて言ってくれてたんだってわかってから。迷惑そうにしながら、結局いつも助けてくれてたから。でも、そんなことじゃなくて。
 トラップじゃなきゃ駄目だから。トラップがいない日常なんて、もう考えられないから。
 口は悪いしトラブルメーカーだしギャンブル好きだし他人に迷惑かけても滅多に謝らないけど、そんなトラップが、わたしは好きだから。
 トラップの目をまっすぐに見つめて、伝える。
 これは、わたしの本音。冗談じゃない、嘘でもない。憧れでもない、まぎれもなく「好きだ」という気持ち。
 トラップは……しばらく面食らってたみたいだけど、やがて、口元で皮肉気な笑いを浮かべた。
「おいおい、本気で言ってんのか?」
「本気よ」
「おめえさ、この間、俺に何されたかわかってんの? んで、おめえがどうしたか、わかってんの?」
「……わかってるわよ」
「……だったら」
 そこで、トラップはわたしから目をそらした。すっごく辛そうな顔で。
「だったら、何でんな格好で、俺しかいねえ部屋を真夜中に訪ねてきたりすんだよ……おめえは、嫌だったんだろ? だから逃げたんだろ? ……なのに、俺を好き? 勘弁してくれよ」
「……違う」
 違う。あのとき、わたしが拒絶したのは……
「違う。わたしは怖かったの。わたしはマリーナみたいに美人じゃないしスタイルだってよくない。好きでいてもらえる自信がなかった。だから……」
 だから、あのときは逃げたんだ。わたしはそれまでずっと、トラップが好きなのはマリーナだと勘違いしていて、覚悟も何もなかったから。だから怖くて逃げた。
 嫌いだから……逃げたんじゃない。
 わたしは、そのままトラップの背中に抱きついた。びくっと震える体を抱きしめて、
「だから……今日は、覚悟してきたから……もし、トラップが、わたしのことを好きでいてくれるのなら……」
 そのとき、トラップは振り返った。そして……
 返事のかわりに、わたしは唇を塞がれていた。
473トラパス 恋愛談義編 16:03/09/20 20:13 ID:AWcbVn4c
「……いいんだな」
 トラップの、かすれた声。あのときと同じ。ううん、今日の方がひどいかも。
 わたしは頷いて、トラップの腕に体重を預けた。ふわり、と抱きとめられる感覚。
 そう。この腕が、いつもいつも、わたしを助けてくれていたよね……トラップ。
 もう一度、キス。今度のキスは、長くて、深かった。
 お互いを求めあうようにキスした後、わたし達は、ベッドに倒れこんでいた。
 すぐ目の前に、トラップの顔。
 そっと目を閉じた。唇に軽く触れる感触。その後、頬、額、耳、と、次々と触れていく。
 耳たぶを軽くかまれて、思わず吐息が漏れる。びくっと全身に走るのは……これが、快感?
「トラップ……」
「パステル……」
 トラップの手が、しゅるっとネグリジェの紐をほどいた。
 胸が空気に触れる。……実は、ブラをつけてなかったんだよね。寝るときはいつもそうしてるから……
 トラップの唇が、首筋をはった後、胸を軽くついばんだ。
「ひゃんっ」
 ううっ。な、何だろ、この感じ……
 明かりの下で、トラップがじっとわたしを見つめているのがわかる。は、恥ずかしいっ……
「お、お願い。あんまり見ないで……」
「……バーカ。見るに決まってんだろ」
 言いながら、トラップの手が、少しずつ胸の隆起をなぞっていく。
「俺が……どんだけ、こうしたいと思ってたのを我慢してきたか……わかってんのか?」
「……そんなに……」
 そんなに前から、わたしのことを思ってくれていたの?
 とは、さすがに恥ずかしくて聞けなかった。
474トラパス 恋愛談義編 17:03/09/20 20:15 ID:AWcbVn4c
 そのまま、身体を抱き起こされて抱きしめられた。
 背中をなでるようにして、トラップの手が下へ、下へと伸びていく。
 わたしは……何だか、背中を走る感覚が、くすぐったいような、ぞくぞくする感じが、すごく、気持ちよくて……
「やんっ……」
「……この、服さ。おめえにすっげえよく似合ってると思うけど……」
 言いながら、トラップは、ネグリジェの肩紐に手をかけた。
「邪魔だから……脱がすぞ」
「う、うんっ……」
 するっ、と音がして、ネグリジェが下に落ちた。
 今、わたしはパンティ一枚の姿になっていて……それを、見られてる。
 恥ずかしい、と思うと同時に、身体が、すごく、すごく熱くなってきて……
「ありきたりでわりいけど……綺麗、だぜ」
「…………」
 再び、ベッドに横たわる。
 ばさっという音。目を開けてみると、トラップも、シャツを脱いでいた。
 トラップの裸。初めて見たわけじゃないけど……
 無駄な贅肉とかが、全然なくて。細いのに、貧弱って感じもなくて……
「トラップの体も……きれいだよ」
「ばあか。それ、男に言う台詞じゃねえよ」
 抱きしめられたトラップの体は、温かかった。
 しばらく、わたし達は夢中でお互いを求めあっていて……
 もちろん、わたしは初めてだったから、よくわからないままただ身をまかせてただけなんだけど……
 トラップの手が触れるたび、わたしの身体、どんどん熱くなっていって。何だか息が荒くなってくるのがわかる。
「何だろ……変に、なっちゃいそう……」
「なっちまえよ。……行くぞ」
 何かが、触れた。トラップの、指?
 わたしの大事なところを、優しく触れる指。そのまま、もぐりこんで……
「ああっ……やんっ。と、とらっぷ……」
「すげえ……濡れてる……」
 ばっ、ばかばかっ! 何てこと言うのよっ!!
 無言の抗議も通じない。そして……
 指より、遥かに大きいもの。力強くて熱いものが、わたしの中に、もぐりこんできた。
475トラパス 恋愛談義編 18:03/09/20 20:15 ID:AWcbVn4c
「っっっ……いっ……いやっ……痛い、痛い痛い痛い痛いっっっ!!」
 痛いっ。何これ? こんなに大きい……の? こんなに痛いものなのっ!?
 文字通り、無理やり引き裂かれるような感触。こすれて、血がにじんで、それでも止まらない。
「痛いっ……」
「だ、大丈夫、か……? やめ……」
 トラップの言葉を遮って、わたしはぎゅっと彼の背中を抱きしめた。
 恋愛っていうのは、色々辛いもの。だけど、どんなに辛くても、それでも相手を求めてしまうもの。
 それは、心のことだと思ってたけど、身体もそうなんだね。
 すごく痛い。涙がにじんでくるくらい。だけど、やめてほしくなかった。今、トラップと一緒になれたんだってわかったから。だから、嬉しかったから。
 一生懸命首を横に振ると、トラップは、ゆっくりとわたしに口付けて……動き出した。
 少しずつ、奥に入っていくもの。最初はとてもゆっくり。痛がるわたしをとても気遣ってくれているのがわかる。
 やがて……痛みが和らいで、そして、あのぞくぞくする感覚が、少しずつ戻ってきた。
「っ――トラップ……好き、だよ」
「……俺もだ」
 段々激しくなる動き。そして……
 何かが、わたしの中で弾けた。脱力するトラップの身体。
 わたし達は、もう一度、深く口づけて……一緒に、ベッドに転がった。
476トラパス 恋愛談義編 19:03/09/20 20:17 ID:AWcbVn4c
 その後、わたしとトラップは一緒のベッドで眠った。
 クレイ達は、明後日にならないと帰ってこないからね。後2日は、トラップと二人きりになれる。
 ルーミィ達がいないのは、寂しいけど。でも、やっぱり嬉しいかな。ごめんね、みんな。
 翌朝、朝ごはんを食べに行くために、二人で猪鹿亭に行った。
 ノルも誘ったんだけど、何故か彼は、わたしとトラップの姿を見て、「俺はいい。二人で行ってきて」って言った。
 ……まさかノル……気づいてないよね……?
 二人で連れ立って猪鹿亭へ行くと、朝が早いせいか、お客さんはわたし達しかいなかった。
 席につくと、リタが水を持って注文を取りにきてくれる。
「おはよう。珍しいわね、二人だけなんて」
「ああ。クレイ達エベリンに行っちまってるから。俺、これとこれな」
「あ、わたしは、モーニングサービスっていうの、ちょうだい」
「はいはい。ちょっと待っててね」
 ところが、注文が終わっても、リタはしばらく傍を動かず、わたし達をじーっと見つめていた。
 ……どうしたのかな?
「ねえ、パステル」
 そして、リタはにこにこ笑いながら言った。
「おめでとう。女になったのね」
「……え?」
 どういう意味? と聞き返す前に、トラップが派手に水を噴き出した。


完結っ。うーん
どうして、話を短くまとめることができないんだろう(汗
趣向変えて、パステルから迫らせてみたんですが……
改めて思いますが、FQのキャラや世界観を変えないようにエロをやるのは難しいです。
こんなのパステルじゃない! とかいわれないか不安……
477307:03/09/20 21:11 ID:a+FfNF17
>>456
途中でやめるのもやだったので…お目汚しでした。ありがとうございます。
>>トラパス作家さん
パストラすごくいいです!新鮮でした…ドキドキでした。
478名無しさん@ピンキー:03/09/20 21:49 ID:jtB6IPJF
色んなシチュエーションが読めるのは嬉しいんですが
どれもパステルが「初めて」というのに違和感を覚えます。

「もうそういう仲」という話もあってもいいのでは?
479名無しさん@ピンキー:03/09/20 22:33 ID:jAu/CiUh
新作読ませて頂きました!
前半のメンバーの恋愛観がすごく原作のキャラらしさがでてて(*^ー゚)b グッジョブ!!
そして意外と恋愛に関しては大人なリタイイ!
相手は誰なんでしょう? ちょっと気になる(w
あとパステルの”恋に恋してる”ってのがほんとまんま原作。
もはやキャラの掴み方神業(゜д゜)
480名無しさん@ピンキー:03/09/20 22:35 ID:acx+lG3l
トラパス作家さまお疲れさまです〜。
最近ここのスレ覗くのが楽しみです!今回のもイイ!
これからも期待してます。
481名無しさん@ピンキー:03/09/20 23:40 ID:uQjbyWZK
トラパス作家さま、楽しませていただきました。
モニターの前で萌えながら読みました。
原作の雰囲気をそのままに、恋愛話を書けるその手腕に感服しました。

余談。
二次創作の恋愛話は萌えれるのに、
原作で露骨に恋愛描写されると萎えるのは何でだろう…
482名無しさん@ピンキー:03/09/21 00:09 ID:BMCk/8fq
今回もスゲ―よ!作品もそうだけど 夜、バイトから帰って来る度に新作が出来てるのがスゲ―よ!
帰って来てからすぐにここを確認するのが日課なんだけど、開く度に
「えー、もうこんなに出来てんのー」とか言いながら驚いてます。
これからの作品も楽しみにしてます、無理しない様にガンバってください(゚∀゚)
483トラパス作者:03/09/21 00:30 ID:eUcw3U5c
今回の作品は、結構各キャラに勝手なことしゃべらせてたので
「違うーこんなの○○じゃない!」っていわれたらどうしようかと思いました……
読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
もうちょいネタは続きそうなので、がんばりたいと思います。


>>478
既にトラップ(いや、クレイでもいいんですが)と恋人同士で初めてじゃないエロシチュエーションの話……
でもいいんでしょうか?
「一線を越えることになったきっかけ」が無いと、いきなり恋人同士です、って説明されても不自然かな、と思ったので。
もし要望があれば、例えば「これはトラパス○○編の続きです」というふうに
各シチュエーションから二人の関係がどのように発展したか、を書くこともあるかもしれません。
これまで強姦、和姦、なりゆき、パステルは覚えていない初体験、など色々書いてきましたけど
どんな関係を結んだかで、その後の発展も変わるのではないか、と。

もしよろしければ、「この話が1番好き」とか「この話の続きが読みたい」っていうのを教えてくれたらありがたいです。
何だかわたし一人でスレを消費していて申し訳ないのですが……
484名無しさん@ピンキー:03/09/21 01:09 ID:ZxEiZmFa
>トラパス作家さま
個人的には「トラパスクエスト」が一番好きです。
でも、既に「できてる」って設定だと、トラパス作家さまの売り(?)である
フォーチュンらしさが減っちゃうんじゃないかな、と思ったり。
自分は初めてが何回あってもいいです。どれも面白いし。
485SS保管人:03/09/21 01:12 ID:1+wMnaVG
>>483
最初から恋人同士の設定でも、前作の続きでもいっこうに構いませんよ。
むしろ、みんなは呆れるくらいにイチャイチャってのもw

あと、一人でスレを消費しているなんて思ってませんよ。
むしろ孤軍奮闘でスレを死守してるなと感謝しているくらいです。

486名無しさん@ピンキー:03/09/21 01:29 ID:T4tTFzkF
「吸血鬼のおしごと」
「灼眼のシャナ」
「DADDYFACE」
「パラサイトムーン」
「陰陽の京」
なんかが好き。
誰かSSを書いてくれないかなあ。
487名無しさん@ピンキー:03/09/21 03:32 ID:mDMIc2c+
リクエストOKですか!? ヤッター!!(*≧▽≦)ノ
トラパス作家様、パラレルはもう書かないとおっしゃってたのに
申し訳ございませんが、ヴァンパイアもののパラレルに1票!!
読んでいて「トラップは吸血鬼になった後、
人の血を吸っていたのか?(そこにもドラマがありそう)」とか、
パステルはクレイに騙されてトラップがヴァンパイヤだと思っていた時は
「お父さんとしちゃった!! ((;゚Д゚)ガクガクブルブル
だったんだろうな(そりゃ辛いよね)」とか妄想がふくらんでいたので。
物語としてきっちり完結しているから、難しいでしょうが
2人が幸せになるところが見たいなぁって思っていました。
でも、ぶっちゃけ全部本当におもしろかったので、どれでも結構ですので
よろしくお願い致します! いやホント読めるだけで幸せです…

488名無しさん@ピンキー:03/09/21 10:13 ID:BMCk/8fq
俺は一番最初のトラパスかトラパスクエストかな、あと温泉編も捨て難いけど…あの先を書くのはムズいなー
まあ、俺もどの続きでもOKだけどね(゚∀゚)
489名無しさん@ピンキー:03/09/21 14:41 ID:GW86cQlm
修羅場編の続き切実に希望ー
続き書くの難しそうだけど、あの続きが一番どうなるか謎だから
490(1/5):03/09/21 17:24 ID:1VHMc1LS
トラパスの神が降臨されているところへギアにて失礼シマス。
苦手な方は回避してくだされー。


ミモザ姫の即位式前夜祭が華やかに続いている会場を一人こっそりと抜けだすと、
個人用にあてがわれた部屋へ戻ってきた。
明かりもつけずに月明かりに照らされたベッドへ倒れこんで、ぼんやりと
さっきの会話を思い出す。

『おまえ、ギアと結婚するつもりなのか?』
『ギアならおめぇを幸せにしてくれそうだしさ』
『……そっか』

「……そっか、か」
何であんな事を言ったんだろう。
聞かなきゃ良かったこと、言わなきゃ良かった事をぐるぐる思い出している。
491(2/5):03/09/21 17:25 ID:1VHMc1LS
ふと、ドアをノックする音で意識を戻された。
「いる?」
低く響く声にどきりとする。
今一番会いたくない人物かもしれない、となんとなくやな気持ちでゆっくりと
ドアを開けた。
長身に黒髪、全身黒一色の正装姿。削ぎ落としたような頬も黒く影を作っていて、
控えめな明かりしかない廊下ではまるでシルエットだけみたいに見えた。
「……ギア」
「やあ。姿が見えなかったから」
「…なに?」
「うん、ちょっとね。いいかい?」
仕方なく身体を引くと、暗闇の部屋にギアが入ってきた。

「明日出発することにしたよ」
「えっ」
思ってもみない事に振り向くと、ギアはくすりと笑った。
「そんな顔しなくてもいいよ。パステルは連れていかない」
「だって……」
「いいんだ、もう決めた。だから」
するりとギアの腕が腰に回る。
「最後の挨拶をしに来たんだよ」
492(3/5):03/09/21 17:26 ID:1VHMc1LS
「なっ、ちょ……っ」
抗議しようとした声が冷たいものでふさがれた。
「んんっ」
身長差から上向きにさせられ唇を開かされると、ぬるりとしたものが口内へ
侵入してくる。
嫌悪に眉をしかめてもお構いなしに口の中の隅々までうごめき続け、
自分の舌も絡め取られる。
やがて唇の端から二人の唾液が溢れてこぼれていくと、その後を追うように
ようやくギアの舌が移動していった。
「…ぁ……はぁ」
溜まらず上げた息継ぎの息が信じられないほど熱い。
思わずふらつくと身体を支えられてベッドに押し付けられてしまう。
「……やめっ…」
抵抗しようにも力が入らない。
その間にもギアは馴れた手つきでするすると服を脱がし、愛撫を続けていく。
開いた胸元から忍び込む冷気や這い回る冷たい指と、身体の中の熱さとの温度差に
くらくらする。
「…いや…だ……、ギア…っ」
やっと絞り出した声も自分自身でさえ喘ぎ声のようだと思った。
「でもここは嫌がってないようだけど」
楽しげな声で遠慮の欠片もなく露出された下半身に触れられる。
「ああ…っ」
「ほら、こんなにぬるぬるになってる」
493(4/5):03/09/21 17:26 ID:1VHMc1LS
冷たく節くれだった指が太ももから這い上がっていきそこに触れる。
他人になんて弄られたことない場所を強弱をつけて蹂躙されていく。
「はじめて、だろう?力、抜いて」
ギアの声が掠れている。
下半身に熱い昂ぶる存在を感じて全身に恐怖が走った。
慌てて身を引こうとしたが一瞬遅い。
「ぁあああああ……っ」
ぎりぎりと身体の中に入ってくるもの。
熱く焼けた刀で切り裂かれているような痛み。
そこから逃げようとするが、ギアに強く押さえつけられていて出来ない。
「ああっ、痛……っ、…やめっ」
無我夢中にもがいても押さえつける腕は揺るがず、
「すごい……熱い…」
恍惚とさえ言えるギアの声が耳元で熱く囁かれ、律動が始まった。

「…っ、はぁ……っ、んん……」
深く腰を打ちつけられるたび、自分の声と粘着質な音が暗闇に響いて、
聴覚からも刺激される。
やがて、ただ痛みしかなかった行為がゆっくりと快感に変わっていくのが分かった。
粘膜を擦られるたび痺れが電流のように身体中を駆け回る。
「……ギア……っ」
思わず名前を呟いて背中に回した腕に力を込めた。
そんな態度に答えるように、さらなる高みへ向けてギアは動きを激しくさせた。
「…あっ、……ああっ、はあ………っ」
そして最後の瞬間、ギアがようやくおれの名を呟いた。
「………トラップ……」
494(5/5):03/09/21 17:27 ID:1VHMc1LS
ベッドの上でぐったりと横たわる身体にシーツを掛けてくれているのを
夢うつつに感じながら眠りにつく。
まだ前夜祭は続いているらしい。
音楽は今も鳴り響いていた。

END


色々な意味でスマソ。
495名無しさん@ピンキー:03/09/21 18:19 ID:ChrFFxV/
神さまが千客万来〜っ!

幸せなスレになったもんだなあ
496名無しさん@ピンキー:03/09/21 20:18 ID:/swSB8NI
ギアパスだと思ったら…

    _, ._
  ( ゚ Д゚)
  ( つ旦O
  と_)_)
    _, ._
  ( ゚ Д゚)   ガシャ
  ( つ O. __
  と_)_) (__()、;.o:。
          ゚*・:.。
497名無しさん@ピンキー:03/09/21 20:26 ID:ChrFFxV/
>>496
やーい、引っ掛かった引っ掛かったw
498トラパス作者:03/09/21 20:39 ID:eUcw3U5c
>>490
噴きました(w

>>484、485、488、489
ありがとうございます。
どれも完結させてしまっているので、続きができるかどうかはわかりませんが。
せっかくリクエストいただいたので、頑張ってみたいと思います。

というわけで

>>487
了解しました。
あのパラレルは、ちょっと反則でしたけど、私個人としても気に入っている作品です。
面白いといってくださって感謝します。
というわけで、1番初めのリクエスト、答えます。

以下、新作。パラレルトラパスの続きです。
ちょっとフォーチュンクエストらしさ、が出せているか自信はありませんが。
しかもまた長いですが。
しかもエロがちょびっとしかありませんが。
読んでくだされば幸いです。
499パラレルトラパス完結編 1:03/09/21 20:40 ID:eUcw3U5c
ヴァンパイヤ――始祖吸血鬼。全ての吸血鬼の源にして、不老であり、膨大な魔力、恐ろしいまでの自己治癒力を持つ、間違いなく最強最悪の魔物。
 彼の魔力は人間の血液によって補充され、ほぼ永遠の時を生きることとなる。
 ヴァンパイヤによって血を吸われた人間は、吸血鬼となり、同じく不老となり魔力と自己治癒力を得て、そして同じように吸血行為によってその魔力を補充し続ける必要がある。
 しかし、ヴァンパイヤ、及び吸血鬼が自らの意思で吸血行為を止めた場合、自らの魔力を削って生命維持につとめることになる。魔力が尽きたとき、彼らは灰となって滅びる。
 ヴァンパイヤや吸血鬼の魔力保有量がいかほどのものなのか、また、魔力が尽きるまでにどれほどの年月を生きる必要があるのか、それは誰にもわからない――
 
「あったくよう、冗談じゃねえぜ。もう真っ暗じゃねえか」
 森の中を進みながら、俺は愚痴らずにはいられなかった。
 俺は郵便配達のバイトをしてるんだが、いつもなら夕方で終わる仕事が、今日に限って深夜近くまでかかっちまった。しかも俺のせいじゃない。差出人のミスで、住所が半分消えてたから配達先を探すのに手間どってたんだ。
 ここで差出人がきっちり住所を書いてりゃあ、そのままつき返してやるんだが……間の悪いことに、差出人は名前だけしか書かれてなかった。意地でも配達先を見つけろ、という所長の命令に、俺は眩暈すらしたぜ。
 全く今日は厄日だ。
 俺が進んでいるのは、近道となる森の中の小道。普段はこんな薄気味わりいとこ、絶対通らねえんだが……ここを通れば大分時間短縮になるしな。
 この森は、小せえ頃から「絶対近づくな」と母ちゃんにしつっこく念を押されている場所だった。何か知らねえが、森に住み着いた危ねえ奴が、わけのわかんねえ実験を繰り返して魔物の巣窟になってるとか。
 ま、ガキの頃は単純に信じてたけどな。今となっちゃあ、どこまで本当だか怪しいもんだと思ってる。どうせ、毒蛇か何か、危険な生き物がいるからガキを近づけるな、っていう程度の意味だろう。
 そして、そのまま行けば森を抜けて家まで後十分、というところまで来たときだった。
 ふと、異常な気配を感じて、俺は思わず立ち止まった。
500パラレルトラパス完結編 2:03/09/21 20:41 ID:eUcw3U5c
 自慢じゃねーが、俺は結構勘が鋭い方なんだよ。こういうとき、何もなかった試しがねえからな。
 今いる場所は、他の場所と比べても何も変わらない、両脇に木が生い茂った小道。気配を感じたのは、右側の木だ。
 俺の勘は、このまま逃げろって言ってたが……それ以上に興味がわいた。ここまでびしびし嫌な気配を感じたのは、初めてだったからな。
 見るだけなら構わねえだろう。何がいるのか知らねえが、危なくなったら逃げちまえばいい。
 そう思って、俺は木の裏側をひょいっと覗いてみた。
 ……なんだあ?
 そこにいたのは、毒蛇でも猪でもなく、ただの人間だった。青いマントで身を包むようにして、木の根元に座り込んでいる男が一人。
 正直言ってちっと拍子抜けだぜ。どんな危ないもんがあるのかと思ったら……
 これで、座り込んでたのが身長2メートルくらいの化けもんじみた面した男だったりしたら、別の意味でびびって逃げたかもしんねえけどな。
 けど、そこにいたのは、さらさらの黒髪の、本に出てくる王子様じみた正統派美形の男。どう見ても危険な存在には見えなかった。
 多分、年も俺とそう変わらねえだろう。……しかし、こいつはこんなとこで何してんだ?
「おーい、大丈夫か」
 もしかしたら行き倒れかもしんねえな。俺はとりあえず声をかけてみた。
 すると、男はびくっと身じろぎして顔をあげた。……どうやら生きてたみてえだ。
「大丈夫かよあんた。具合でもわりいのか?」
「……ああ、大丈夫だ。ありがとう、心配してくれて」
 男は、そういうとえらく優しい笑みを浮かべた。男の俺から見てもかっこいいぞ。女だったらいちころだろうな。よし、こいつのあだ名はマダムキラーだ。今決めた。
「あんた、見かけねえ顔だな。旅人か?」
「ああ、そんなところだ。そういう君は、その先の村の人かい?」
「そうだよ。ドーマっつう街だ。村じゃねーぞ」
「ああ、これは失礼」
 言いながら、マダムキラーは立ち上がった。随分長身だな。俺より10センチは高いぞ。しかもかなり鍛えてやがる……ファイターか?
501パラレルトラパス完結編 3:03/09/21 20:42 ID:eUcw3U5c
「んで、あんたこんなとこで何してんだ?」
「ああ、道に迷ってしまってね。喉が渇いて、動けなくなったんだ。近くの街で一泊しようと思ってたんだけど、よかったら、案内してもらえないか?」
 やっぱりか。こんな一本道で迷えるとは器用な奴だな。
 しかし……動けなくなるほど喉が渇いたって、一体どんだけ迷ってたんだ?
「ああ、別に構わねえよ。すぐそこだぜ」
「ありがとう。俺はクレイ。君は?」
「トラップと呼んでくれ。動けるか?」
 暗がりの中でもわかるくらい、マダムキラー……クレイは、顔色が悪かった。
 水持ってきてやらねえと無理か? めんどくせーな……けど、ここで見捨てて死なれたら、さすがに後味悪いしな。
「いや、悪いが、ちょっと無理らしい」
 案の定、クレイは首を振って木にもたれかかった。ま、しょうがねーか。乗りかかった船だ。
「しゃーねえな。水持ってきてやるからここで待ってろよ。どうせすぐ近くだ」
「……いや、それには及ばない」
 ……は?
 その瞬間、だった。
 クレイは、俺の肩をつかむと、首筋に顔を寄せてきた。
 なっ、何だ!? こいつ、その手の趣味があんのか!?
 振り払おうとしたが、クレイの力は強かった。そして、首筋に鋭い痛みを感じた瞬間、俺の意識は暗転して……
 
502パラレルトラパス完結編 4:03/09/21 20:43 ID:eUcw3U5c
 どれくらいの時間が経ったのかわからねえ。
 わからねえが、目を覚ましたとき、まだ辺りは真っ暗で、クレイは既にいなかった。
 畜生……何だったんだ、一体。
 別に服も乱れてねえし、危ねえ趣味を持った変態とか、強盗の類でなかったのは確かみてえだが。
 立ち上がろうとしたが、ぐらっと眩暈がして、再び座り込んだ。
 貧血……? じゃねえ。脱水症状か?
 何だかものすごく喉が渇いて仕方がねえ。一体、俺はどんだけ倒れてたんだ?
 そういや、あんとき首に痛みを感じたが……
 触ってみたが、特に傷はないようだった。わかんねえ。あいつは一体何だったんだ?
「……考えてもしゃあねえ。帰るか」
 もしかしたら、丸一日くれえ経ってるかもな。母ちゃんやルーミィの奴、心配してっだろうなあ……
 とっとと家路につく。どうやら場所は動いてなかったらしく、十分もしたら見慣れた我が家に到着した。
 窓から明かりが漏れてるな……まだ起きてんのか?
「ただいまー……っと」
「あ、とりゃー! おかえりなさいだおう!!」
 ドアを開けた瞬間、妹のルーミィがとびついてきた。
 言葉使いでもわかるだろうが、まだ三歳にもならねえガキだ。えらく年の離れた妹なんで、たまに親子と間違われたりする。
 冗談じゃねえぞ! 俺はまだ17歳だっつーの。
「ただいま。おめえ一人か? 母ちゃんは?」
「寝てるー。るーみぃ、とりゃーを待ってたんだおう」
「あん?」
 普段は夜の九時には寝ちまってるおめえが? 時計を見てみたが、時間は既に深夜過ぎだった。
 気絶してたのは、2〜3時間ってとこか。ルーミィの様子から、丸一日経ったってことはねえみたいだな。
503パラレルトラパス完結編 5:03/09/21 20:43 ID:eUcw3U5c
 ルーミィは、真っ赤になった目をこすりながら、俺に小さな紙包みを渡してきた。
「とりゃー、お誕生日おめでとう!」
「……は?」
 誕生日? そういや、今日……いや、日付変わっちまったから昨日か……は……
 何てこった! 本当に俺の誕生日じゃねえか。17歳じゃなくて18歳になっちまってたのかー!?
 しかしすっかり忘れてたぜ。誕生日に残業くらうとは、俺もつくづくついてねえ。
「そっか、そのために起きてたのか?」
「うん! るーみぃ、一生懸命作ったんだおう!」
 ルーミィがくれた紙包みを開けてみると、中には緑の糸を編んで作ったリボン(のようなもの)が入っていた。
 母ちゃんが大分手伝ったみてえだけど……やっぱよれよれだな……
 あちこちにいびつな穴が開いて太さも揃ってないリボンだが、こいつのこったから、一生懸命作ってくれたんだろうなあ……
 早速、今まで髪をまとめるのに使っていたリボンをほどいて、ルーミィのリボンでまとめなおす。
 ははっ、しばりにくいリボンだな……あったけえけど。
 ルーミィを抱き上げて、我ながら会心の出来と言える優しい笑顔を返してやる。
「さんきゅーな、ルーミィ。すっげえ嬉しい。んじゃ、もう寝ようか」
「うん! とりゃー、大好きだおう!」
 そういって、ルーミィは短い腕を必死に伸ばして俺の首にしがみついた。
 ……そのときだった。
 さっきから感じていた喉の渇き。目の前にとびこんできた、ルーミィの白い首筋。
 今まで感じたことのない衝撃が、俺の中につきあげてきた。
 抑えられない欲望。気がついたら、俺は……
 ルーミィの首筋に、歯をつきたてていた。
504パラレルトラパス完結編 6:03/09/21 20:44 ID:eUcw3U5c
 それから何をしたのか、よく覚えていない。
 我に返ったとき、俺の前には、真っ青な顔をしたルーミィが倒れていた。
 そして、俺の口元から顎にかけて、べったりとこびりついていたのは……
 俺は……何をした? 一体、何が起きたんだ?
 そっと口の中に手を入れてみると、自分の犬歯が、異様に伸びているのがわかった。これじゃ……まるで……
「……牙?」
 俺の身に何が起こったのか。
 ルーミィの身体に触れたが、既に冷たくなっていた。呼吸も止まっている。
 ……死んだ、のか? 俺が殺したのか?
 俺は……一体……
 気がついたら、俺は家をとび出していた。
 妹を殺しちまった事実から逃げたくて。そして、あの男――クレイを捜すために。
 何より、これ以上人を手にかけないために。
 またあの衝動がつきあげてきたら、俺は次に、母ちゃんや街の皆を手にかけるかもしれない。離れるんだ、なるべく遠くに。
 俺をおかしくしたのは、クレイの野郎に違いない。あいつを締め上げれば、何かわかるはずだ。
 あいつを見つけるんだ――
 
 クレイを見つけ出したのは、それから一週間後だった。
 シルバーリーブとかいう小さな村の近くにある古城。奴は、そこに住み着いていた。
 クレイを見つけるのは案外簡単だった。何しろ目立つ外見だからな。目撃情報辿っていけば、自然に辿りついた。
 辛かったのは、散発的に襲ってくる衝動をこらえることだ。喉の渇きを感じるたび、人のいねえ場所に逃げ込み、いつ終わるともしれない衝動に身もだえしながら、だましだましここまで来た。
 昼間は猛烈に身体がだるくなり、動くのも億劫になる。夜しか動けねえから、時間だけがかかっちまった。まあ、飯は普通に食べれたからな。飢える心配だけは、なさそうだったが……
505パラレルトラパス完結編 7:03/09/21 20:45 ID:eUcw3U5c
 クレイの後を追っていくと、行く先々で、不気味な噂が立ち込めていた。
 いわく、突然、大量の血を失って人が死んだ。死んだと思ったら復活した……
 ……まさか、とは思うが。いや、まさかじゃねえな。多分、そうなんだろう。
 俺も……死んだのか? クレイに血を吸われて。死んで復活したのか? 化け物として?
 襲ってくる衝動と戦いながら、俺は古城に突入した。
 どんな恐ろしい化けもんが襲ってくるかと身構えてたんだが、城の中は静かだった。
 クレイは、城の最上階で、静かに椅子に座っていた――
「待っていたよ、トラップ」
 この間と全く変わらねえ優しい笑みを浮かべて、クレイは言い放った。
 この野郎……俺に、あんなことをしておきながら……待っていただと?
「てめえ……俺に何したんだ……そもそもてめえは何者だ?」
「言っただろう? 俺はクレイ」
「名前なんざ聞いてねえ! おめえは……あのとき何を……」
「トラップ、もうわかってるんだろう?」
 言いながら、クレイは立ち上がった。すまなそうな表情すら見せない、固まったような優しい笑顔で。
「俺は君の血を吸った。君は一度死んで、そして吸血鬼として復活した」
「……吸血鬼、だと?」
「そうだ。俺はヴァンパイヤ。光栄に思えよ、トラップ。おまえが最初の吸血鬼だ。ヴァンパイヤに最初に血を吸われた人間なんだよ」
 ……あんだと……?
 ヴァンパイヤだとか吸血鬼だとか、わけがわかんねえ……一体何を言ってるんだ?
 俺の表情から、言いたいことを悟ったらしい。クレイは、そのままヴァンパイヤとは何か、吸血鬼とは何かを説明してくれた。
 ……それは、俺の絶望を深める結果にしかならなかったけどな。
506パラレルトラパス完結編 8:03/09/21 20:46 ID:eUcw3U5c
「てめえ……よくも……」
「力を与えてやったのに、不満そうだな? トラップ、これでお前も、不老となり、すさまじい魔力を手に入れたんだぞ? 今はまだ、使い方もわからないからそれが実感できないだけだ」
「誰が……誰がんなこと頼んだ! 俺は、俺はっ……」
 言葉にならねえ……俺は、俺は……人間じゃなくなって……実の妹を手にかけて……
「いらねえ……そんな力なんざいらねえ! 他人を犠牲にしなきゃ保てねえ力なんざ何になる!? 俺を戻せ、人間に戻しやがれ!」
「悪いな、トラップ。それはできない」
 俺の絶叫に、クレイはゆっくりと首を振った。
「一度吸血鬼になってしまったら、もう二度と戻せない。おまえは吸血鬼として生きるしかないんだよ……身体を焼き尽くされるか心臓に杭を打ち込まれるかでもしない限り、死ぬことすらできない」
「あんだと……?」
「それに、犠牲にするというのも間違いだよ。君に血を吸われても、相手は死ぬわけじゃない。厳密に言えば、血を吸われた直後の状態は、仮死状態って奴だ。その間に感染した血液が身体を作りかえ、吸血鬼となって復活するんだ」
「……な、に……?」
 それは、ある意味死んだと言われるよりショックなことだった。
 目の前を、死んだように横たわっていたルーミィの姿がちらつく。
 気がついたら、俺は身を翻していた。クレイの奴は何も言わなかったが……きっと、奴は例の優しい笑みを浮かべて、俺を見送っていたんだろう。
 ドーマに戻った俺が見たのは、残酷な光景だった。
 たどり着いたのは真夜中。外は誰も歩いていない……二人を除いて。
 森を抜けた俺が見たのは、見知らぬ野郎に手をひかれて歩いているルーミィの姿だった。
 あいつは、兄の欲目を差し引いても可愛い顔をしていた。危ねえ変態に目をつけられてもおかしくないくらい。
 案の定、野郎はルーミィを抱えあげると、服を脱がせようとして……
 とび出そうとした俺の目の前で、ルーミィはやけに無邪気な笑みを浮かべた。そして。
 何のためらいもなく、野郎の首筋にかみついていた。
 首筋から滴り落ちる血。それを美味そうに吸い上げるルーミィの姿は……残酷なくらい綺麗だった。
 やがて、男が倒れる。ルーミィは、何事もなかったように歩き出そうとして……
507パラレルトラパス完結編 9:03/09/21 20:46 ID:eUcw3U5c
「ルーミィ」
 俺は思わず声をあげていた。
 ルーミィが振り返る。その顔に、笑顔が広がる、
「とりゃー! おかえりなさいだおう!!」
 あのときと変わらない笑顔で、ルーミィは抱きついてきた。口元から顎にかけて、べったりと血で汚してなければ……それはさぞ微笑ましい光景だっただろう。
「とりゃー! どこ行ってたんだあ? るーみぃ、ずっと待ってたんだおう!」
「そうか……すまねえな……」
 おめえをこんな風にしちまったのは……俺、なんだな……
 母ちゃん達がどうなったのか、聞きたくても聞けなかった。ルーミィ一人でこんな時間に外出させるなんざ、俺の知ってる母ちゃんなら絶対しねえ。
 多分、もう……
「すまねえ……すまねえな、ルーミィ……」
「とりゃー、泣いてるんかあ?」
 俺の頬に手を伸ばしてくるルーミィの顔を、直視できなかった。
 クレイの奴に聞いた、吸血鬼が死ねる方法。
 そのために用意しておいた、鋭く尖った杭。
 できれば使いたくなかったそれを、俺は……ルーミィの心臓に、突き立てていた。
 ルーミィの動きが止まる。何されたか……わかってねえんだろうな。
 これしかねえんだ。おめえを救える方法は……
 段々とぬくもりを失っていくルーミィの身体を抱きしめて、俺はしばらくの間、泣いた。
 
 できれば俺も死にたかった。欲望の赴くままに他人を殺すくらいなら、死んだ方がマシだと思った。
 けど……まだ死ねねえ。俺みてえな奴を増やさないために……何より、俺自身の気がすまないから。
 クレイの野郎をぶっ殺すまで、俺は絶対死なねえ……
 それから、俺はシルバーリーブ近くの森にある小屋に住み着いた。
 つきあげる衝動を抑えるのにも慣れた。クレイの野郎が城の入り口に結界を張ったせいで、それを破ろうと四苦八苦しているうちにいつのまにか魔力の使い方も覚えた。
 動きは鈍くなるが、昼間でも動けるようになった。俺は自分を鍛えたが、クレイの野郎にはどうしても敵わねえ。クレイも俺を殺さねえ。そうして、何百年も不毛な争いが続いた。
 そして、血を吸わないと決めた俺の魔力は、少しずつ、少しずつ弱っていって……
 そんなとき、俺は、あいつに出会った。
 あいつに会って、初めて、生きててよかったと思えた……
508パラレルトラパス完結編 10:03/09/21 20:48 ID:eUcw3U5c
 トラップの長い話を聞いて、わたしは何も言えなかった。
 わたしの名前はパステル。元ヴァンパイヤハンター。
 そして、クレイの娘、ヴァンパイヤと吸血鬼のハーフでもあるんだ。
 ヴァンパイヤがヴァンパイヤの血を吸った場合、血と血が争ってお互いを滅ぼしあい、ただの人間になってしまう。そう知ってから、わたしはクレイを捜すために、ずっと旅をしてきた。
 そして、トラップと出会った。トラップのおかげで、わたしは今こうしていられるんだと思う。
 やっぱり、辛いよね。自分の父親を手にかけるのは……
 クレイが死んだ後、わたしとトラップはまた旅に出た。
 目的地はドーマ。トラップの故郷……の近くにある森。
「ヴァンパイヤがヴァンパイヤの血を吸ったら人間になれるんだろ? だったら、ヴァンパイヤを捜せばいいじゃねえか。それで、少なくともおめえは人間に戻れる」
 二人で生きていこうと決めた後、トラップはあっさりと言い放った。
 あのねー……純粋なヴァンパイヤは、クレイ一人なんだってば。
 クレイの娘であるわたしも、一応ヴァンパイヤって言えるけど、わたしが自分の血を吸っても何もならないし。
 ちなみに、吸血鬼がヴァンパイヤの血を吸うと、ヴァンパイヤの血が強すぎて体の方が耐え切れないんだって。だから、ヴァンパイヤを見つけても、例えばわたしの血を吸っても、トラップは結局人間にはなれないんだ。
 そう言って、わたしは反対したんだけど。
「おめえなあ。俺達、いつ魔力が尽きて灰になるかわかんねえんだぜ? なら、少しでも可能性にかけてみねえと何にも進まねえだろ。俺は、見たくねえからな。おめえが灰になるとこなんて」
 ……うん。それは同感。わたしだって、トラップが灰になるところなんか見たくないもん。
 クレイが言ってたけど、クレイが1番最初に血を吸ったのがトラップってことは、クレイが生まれたのは、クレイとトラップが出会った場所の近くなんじゃないか、って思うんだよね。
 だから、クレイとの出会いを教えて、って言ったんだけど……
 トラップが、どうして血を吸おうとしなかったのか。吸いたいっていう衝動をこらえることができたのか、よくわかった。
 ……1番初めに吸った相手が、妹だなんて。
 わたしなら、きっとその場で泣き喚いてただろうな。トラップは、やっぱり強い。
509パラレルトラパス完結編 11:03/09/21 20:49 ID:eUcw3U5c
「ヴァンパイヤだか何だか知らねえけどなあ、何もねえところからいきなりわいて出たってこたーねえだろう。何かあるはずなんだよ。ヴァンパイヤが生まれる何かが。それを見つけりゃあ、吸血鬼から人間に戻れるヒントが手に入るかもしんねえし。
 少なくともヴァンパイヤさえ見つければ、おめえだけでも人間に戻れるんだしな」
 わたし一人だけ人間に戻ったって意味がないでしょ。トラップが一緒じゃなきゃ。
 そう言うと、トラップは優しく微笑んで、唇を重ねてきた。
 そうして、わたし達は今、ドーマに向かって歩いているんだ。
 
「やだっ、トラップ……こんな、ところで……」
「誰も見てねえって。大丈夫だいじょーぶ」
 重ねられる唇。身体を這い回る手。
 わたし達は今、街道を外れた森の奥深くにいるんだ。
 確かに、誰も通らないから見られてはいないと思うんだけど……そういう問題じゃなくてさあ。
 わたしはトラップのことがすごく好き。多分、トラップがいない生活なんて、もう考えられないと思う。
 だけど……この、その……外で迫ってくるの、やめてくれないかなあ……服が汚れちゃうし、何より……
 は、恥ずかしいから……
 わたしの小さな抵抗なんかものともせず、トラップの手は、実に楽しそうに服のボタンを外している。
 ちなみに、今は夜。月光に照らされるトラップの顔は……ううっ。悔しいけどかっこいい。
「ああっ……」
 あらわになった胸に、トラップが軽く口付ける。
 わたしは今、木を背にしてもたれかかってるんだけど……それがなかったら、多分、膝から崩れてたと思う。
 最初は、痛いとかくすぐったいとか、そういう感覚の方が強かったんだけど。
 何回も抱かれているうちに、その……「気持ちいい」っていう感じが、段々強くなってきて……
「もお……街道を、抜けたら……すぐ、街、じゃない……せめて、宿、まで……」
「ばーか。待てるかっての。おめえが悪いんだぜ」
 な、何でわたしが悪いのよう……
 言葉に出そうとしたら、唇を塞がれた。深いくちづけ。そして、トラップはにやっと笑った。
「おめえが、あんまりかわいいから」
 ……ううっ、相変わらず意地悪なんだから!
510パラレルトラパス完結編 12:03/09/21 20:50 ID:eUcw3U5c
「大体さ、おめえも口で言うほど嫌がってねえだろ」
「っ……そ、そんなことないもん」
「素直になれって」
 トラップの手が、スカートをたくしあげて下着の間に滑りこんだ。
「身体は、とっくに素直になってるぜ」
「―――あっ……あんっ、やあっ……」
 う――――っ、くっ、悔しいっ……それ以上に恥ずかしい……
 結局、わたしはトラップには勝てないんだなあ。
 中に入ってくるトラップを受け止めながら、わたしはいつもの言葉をつぶやいていた。
 ――こんなことしてるから、ドーマになかなかたどり着けないんだよね。
 
 そんなこんなで、わたし達が旅立ってから二週間くらい経った後。
 わたし達は、ようやく、トラップとクレイが出会った場所にたどり着いていた。
 ……ここを抜ければ、すぐにトラップの生まれた街が……
「ねえよ」
 わたしの考えを読んだかのように、トラップはあっさりと言った。
「ドーマは、とっくになくなってる。ほれ、ヴァンパイヤハンターって組織ができて、吸血鬼狩りが始まっただろ? そんときさ、真っ先にドーマが狙い打ちされた。
 ま、そりゃそうだよな。言うなれば吸血鬼発祥の地だもんな。無事な人間だけがガイナとかの近くの街に移住を迫られて、吸血鬼は、街もろとも焼き払われた」
 ……絶句。
 それって……
「トラップ……ごめん、ごめんね」
「ばっ、バカっ。何でおめえが謝るんだよ!!」
「だって……だって……」
 クレイを見つけるために、情報を手に入れるためにとは言え、わたしも、ハンターの一員だったから……
 トラップはしばらくおろおろしてたけど、やがて、ぎゅっとわたしを抱きしめてつぶやいた。
「バーカ。関係ねえよ。どうせ……どうせ、もう何百年も経ってんだ。母ちゃんや友達だって、生きてるわけねえんだ。吸血鬼になった奴らになんか、再会したくねえしな……」
「トラップ……」
511パラレルトラパス完結編 13:03/09/21 20:51 ID:eUcw3U5c
 トラップは、強い。どうして、そんな風に割り切れるんだろう?
 わたしなら、きっと思い悩んじゃう。お父さんを殺しちゃったことみたいに……
 そう言ったら、トラップは「クレイを殺したのは俺だ!」って本気になって怒るから、口には出さないけどね。
 うん、もう考えるのはやめよう。当事者のトラップが気にするなって言ってるんだもん。わたしがどうこう言ったってしょうがないもんね。
「ごめんね、トラップ。でもさ、何百年も経ってるのに、この森はよく残ってるね」
「……まあな。俺も驚いた」
 よく考えたら、ずっと昔のことだもん。クレイと出会った森が残ってるかどうかなんて保証はどこにもなかったんだよね。
 だって、トラップったら、クレイを殺すことにばっかり夢中になって、一度もこの森に来たことがないって言うんだよ! 下手したら無駄足踏むところだったんだ。
 結果的に無事に残ってたから、よかったんだけど。
「でもさ、場所、正確にわかる? だいぶ様子が変わってるんじゃないの?」
「……いや、それがそうでもねえな」
 わたしの言葉に、トラップが目を細めた。
 そのとき、彼の体から魔力が放たれるのがわかる。
 わたしもヴァンパイヤの端くれだもん。それくらいはね。もっとも、わたし自身は魔力の使い方が全然わからないんだけど……
 わたしにだって、多分力そのものはあるはずなんだけどなあ。
 とにかく、しばらくじーっとまわりを見渡した後、トラップは言った。
「全然変わってねえ。不気味なくらいな。行くぜ、はぐれんなよ」
 そのまま、わたしの腕をひっぱって、トラップはどんどん進んで行った。
 実は、わたしってすごい方向音痴なんだよね……ここまで向かう道のりの途中でも、何回かトラップとはぐれちゃって。そのたびにすんごく怒られた。
 でも、そのうち、歩くときはトラップが手をひっぱってくれるようになったんだ。へへっ、結構嬉しかったりして。
「何にやにや笑ってんだよ。気持ちわりーな」
 ……この口の悪ささえなければ、本当に、凄く素敵な人なんだけどなあ……
512パラレルトラパス完結編 14:03/09/21 20:51 ID:eUcw3U5c
 トラップが連れてきてくれた場所は、本当に目立つところなんか全然ない、普通の場所だった。
 よくわかるよねえ、トラップ……わたしなら絶対見つけられないよ……
「間違いねえ。この木だ。この木の裏に、クレイは座り込んでた」
 そう言ってトラップが手を当てた木も、周囲の木と何が違うのかさっぱりわからなくて。
「……おかしいな」
 え?
 不意にトラップがつぶやいた。何だろ? やっぱり自信がないとか?
「おかしいって、何が?」
「ああ? おめえわかんねえのか。俺があいつと出会ったのが何百年前だと思ってやがる。木ってのはなあ、普通成長するもんなんだよ。樹齢何百年の木が、こんな普通の木のわけねえだろ」
 ……あ、言われてみれば確かに。
「じゃあ、やっぱり違う木なんじゃない?」
「いいや、ぜってーここだ。間違いねえ。よく見てみろよ。クレイの魔力の残り香が、ほんの少し残ってる」
「ええ?」
 言われて、よーく目をこらしてみる。トラップが指差しているところ。そこに……
 あ、本当だ。ほんのちょっぴりだけど、クレイの気配がする。
 ……どういうこと?
 二人で顔を見合わせたときだった。
「それはですねえ、この森全体が、何かの結界で包まれてるからなんですよ」
 不意に、誰かの声が響き渡った。
513パラレルトラパス完結編 15:03/09/21 20:52 ID:eUcw3U5c
 わたし達が振り向くと、そこに、背が低くてぼさぼさの髪をした男の人が立っていた。
 ……あれ? この人って……
「お久しぶりです。私の薬は、役に立ちましたか?」
 その男の人は、私に向かって言いながら会釈をした。
 ……薬……?
 あ――!!
「あんだよ。知り合いか?」
 トラップが聞いてくるけど、わたしはびっくりしすぎて何も言えなかった。
 こ、この人って、シルバーリーブの薬屋さん! ええと、確かキットンって言ったっけ?
「キットンさん? シルバーリーブで火傷の薬を売ってくれた……」
「さんはいりませんよ。その通りです。あなた達は、パステルとトラップ……でしたか?」
「……何で俺達の名前、知ってんだ?」
 トラップが警戒心をこめた目でにらむと、キットンはぐふぐふ笑いながら言った。
「いやあ、実はお二人の後をずーっとつけてきていましたから」
 ……絶句。
 わたしが気づかなかったのはともかく、あのやたら鋭いトラップに気づかれないようについてくるなんて。
 いやいや問題はそこじゃなくて。
 ずーっとってことは、も、もしかして、み、見られてたっ!? そ、その、トラップと……
「ああ、安心してください」
 わたしが真っ赤になって後ずさると、キットンは何故だかげらげら笑いながら言った。
「私はそこまで野暮じゃないですから。見なかったことにしておきますので」
 それって見てたってことじゃないのー!!
 ああもう、穴があったら埋まりたいっ!!
 すっかり何も言えなくなったわたしにかわって、トラップがずいっと前に出た。
 顔色一つ変えてないよ、この人……わたしが何に赤くなってるか気づいてるんでしょうね?
「んで、そのシルバーリーブの薬屋が、俺達に何の用なんだ」
「いやあ。薬屋は副業でしてね。私の本職は、研究家なんですよ」
「研究家だあ?」
「そう。ヴァンパイヤのね」
 キットンの言葉に、今度こそ、トラップも黙り込んだ。
514パラレルトラパス完結編 16:03/09/21 20:53 ID:eUcw3U5c
ヴァンパイヤハンターに所属しているとき知ったんだけど、ハンターはあくまでも退治するのが目的。
 実際にヴァンパイヤや吸血鬼のことについて調べてるのは、別に専門家がいるんだよね。それがつまり、キットンみたいなヴァンパイヤの研究家。
 ヴァンパイヤや吸血鬼の生態とか、発生情報とか、とにかく関係してるありとあらゆる事柄を調べてくれる彼らからの情報で、ハンターは吸血鬼を倒していったんだ。
 ……だから、一人も倒せなかったわたしは落ちこぼれ扱いされてたんだけど。
 ううん、そんなことは問題じゃなくて!
「研究家だあ? ってことは……」
「ええ。シルバーリーブに住んでいたのは、ヴァンパイヤであるクレイのことを調べるためです。もちろん、あなたのことも知っていますよ。世界で最初の吸血鬼、トラップ」
 ……キットンの言葉には、嘲りとか怯えとか、そういう悪い感情は全然なかった。むしろ嬉しそうだったんだけど。
 それだけに、何を考えているかわからなくて不気味だった。
「……俺達をどうするつもりだ。ハンターにちくんのか?」
「いえいえ、とんでもない」
 トラップの言葉に、キットンはぶんぶんと首を振って言った。
「私は、あなた達を滅ぼすつもりは一切ありません。吸血鬼だろうと何だろうと、生きていることにかわりはないでしょう?」
 ……あ。
 キットンの言葉は、温かかった。嘘でも冗談でもないことがよくわかる。
 何だか、すっごく嬉しいぞ。
 トラップの表情も、少し和らいだ。
「んじゃあ、一体何で俺達をつけてきたんだ?」
「いえいえ。実は私、少々魔力を持っていましてね。私自身は吸血鬼ではありませんが、どうやら持って生まれた才能だったらしいです」
 へーっ、魔力って、ヴァンパイヤや吸血鬼だけの能力なんじゃなかったんだ。
「だから、パステルが店に来たときすぐにわかったんですよ。彼女がヴァンパイヤの血をひいてることにね」
 ぶはっ!!
 何気なく続いた言葉に、わたしとトラップは同時に吹き出していた。
515パラレルトラパス完結編 17:03/09/21 20:56 ID:eUcw3U5c
「いやいや、驚きましたねえ。ヴァンパイヤはクレイ一人だと思っていたんですが。まさか娘がいたとは……実は、私あなた達とクレイが戦っている現場を見ていたんですよ。気づきませんでした?」
 全っ然。
 ちらっとトラップを見上げると、彼も黙って肩をすくめた。トラップが気づかなかったのに、わたしが気づくわけないよね。
「それでですね、クレイの誕生の地を知ることができるまたとないチャンスと知って、後をつけさせていただきました。いやーなるほど、この森だったんですねえ」
 わたし達の驚きなんかいざ知らず。キットンは、マイペースにあたりを見渡している。
 ……そういえば、さっき何か言ってたよね。結界に覆われてる?
「そいやあ、どういうことだ? この森が結界で覆われてるってーのは」
「おや、トラップ。あなたにはわかりませんか? この森はですねえ、時間の流れから隔離されているんですよ。大きな結界で包まれているんです。だから、何百年も経っているのに、いっこうに木が成長していないんですよ」
「あんだと? 何でんなことになってんだ?」
「ぐふふ。ずばりですね、それにはヴァンパイヤの誕生が関係あるのです!」
 びしっ、と天を指差して、キットンは言った。
「私、研究してわかったんですけどね。ヴァンパイヤというのは、元々この世界の生物じゃないんですよ。彼らは異世界の住人なんです。クレイがいなければ、この世界が吸血鬼だらけになることはなかったでしょうねえ」
 ……はあ。
「ところがですよ。クレイは、どうしても力が欲しかった。知ってますか? 彼の家は、代々続く騎士の家系でしてね。クレイにも二人のお兄さんがいらっしゃったんですが、それはそれはお強い方達だったそうですよ。
 お父さんもお祖父さんもそのまたお祖父さんも……ところが、クレイは優しすぎたんですね。決して腕は悪くなかったのに、どうしても人を斬ることにためらいを捨てきれなかった。彼は、家では能無し扱いされて、ずっと苦しんでいたそうです」
 ……え?
 知らなかった……そんな話。お母さんは、知ってたのかな?
 トラップは何も言わないけど、やっぱり知らなかったみたい。表情は変わってないんだけど、何となくわかるんだ。
516パラレルトラパス完結編 18:03/09/21 20:58 ID:eUcw3U5c
「そこにですね、悪魔が囁いたんですよ。彼は何よりも自分自身が嫌いだった。変えたいと思っていた。だから、彼は禁断の術に手を染めたんです。ヴァンパイヤを召還するという術をね」
 ――えっ!?
 召還? それってどういうこと……
「ああ、召還というのは、つまり異世界の住人であるヴァンパイヤをこの世界に呼び出したということです」
 わたしがぽかんとしていたのに気づいたのか、キットンが説明してくれた。
 な、なるほど……
「彼はね、もともと能力は申し分なかった。だから、ヴァンパイヤを受け入れることができたんですよ。その力と資格がなければ、そのままヴァンパイヤに身体を乗っ取られて、今頃この世界はなくなっていましたよ。だけど、彼には理性があったでしょう?
 あれは、ヴァンパイヤの能力だけを完全に取り入れることができた証です」
 言われて、思い出す。確かに、クレイは優しかった……だから、お母さんとの約束を守ることができたんだね。
「まあ、それが幸せだったかどうかはわかりませんけどねえ。力が安定するまでは、やっぱり人を襲わずにはいられなかったみたいですし。だからトラップを始めとする吸血鬼を世の中にあふれさせてしまった。クレイはずっと苦しんでいましたよ。
 それこそ、我々など及びもつかないほど長い間……ね」
 ……お父さん。
 わたしは思わず泣きそうになってしまったけど、その前にトラップの声が響いた。
「てめえは、何でそんなに事情に詳しいんだ?」
 その言葉に、涙もひっこんでしまう。
 そういえばそうだよね。何でこんなに個人的なことに詳しいんだろう。
「クレイ自身が教えてくれました。いやあ、実は調べるために城に入っていったんですけど、クレイは丁重にもてなしてくれましてね。トラップを除けばここに来れたのはお前だけだ、って。随分仲良くさせてもらいました」
 な、仲良く……って。やっぱり、この人変わってる。
 あ、トラップの顔がひきつってるよ……
「まあ、それはともかくですね。召還の方法なんですけど、周囲から時間の流れを隔離した場所で、特定の儀式を行うんです。
 これは、アイテムと相応の知識さえあれば、魔力は特に必要としない作業でしてね。だからこそクレイに行えたんですが……いやあ、ここがそうだったんですか。いいものを見させていただきました」
517パラレルトラパス完結編 19:03/09/21 20:59 ID:eUcw3U5c
 それだけ言うと、キットンは背を向けた。
 って、おーい。
「おいっ! 結局てめえは何しに俺達をつけてきたんだ!!」
 あ、トラップが怒ってる。まあ当たり前だよね。トラップが言わなかったらわたしが言ってたもん。
「言ったでしょう? ただ研究家として見てみたかっただけです。クレイも、色々教えてくれましたが、場所は教えてくれませんでしたのでねえ。どうやら、彼にとってもここは忌まわしい場所のようですから」
「て、てめえなあ……」
 トラップの身体がぴくぴくひきつってた。殴りかかったりしないでしょうね。
 わたしははらはらしながら見てたんだけど、やがて、ふっと、彼の身体から力が抜けた。
 あれ? どうしたんだろう?
 キットンも、不穏な空気を察したのか、身を翻して逃げようとしたみたいなんだけど……
「待て」
 あらら、あっさり捕まってる。まあ、キットンとトラップじゃ、足の長さが全然違うもんね。
「な、何ですか?」
「おめえ、研究家っつったよな? そこまで知ってんだったら、ヴァンパイヤの召還方法も知ってるよな?」
「……知ってたら、どうだって言うんですか?」
 キットンが不思議そうに聞き返すと、トラップは、にやっと笑って行った。
「教えろ。俺がヴァンパイヤを召還する」
 …………
 え――――!?
 
 トラップの言葉に、私もキットンも言葉が出なかった。
 だってだって! さっきの話を聞いてなかったの!?
 ヴァンパイヤを召還するのって、すごい危険なことみたいだよね。普通の人だったら、身体を乗っ取られちゃうって……
「なっ、何考えてるのよトラップ!?」
「そうですよ。あなた、私の話を聞いてなかったんですか? クレイがヴァンパイヤになれたのは、彼が類稀なる能力を持っていたからなんですよ」
「ああ!? んじゃてめえは、俺にはその能力が無いっていうのか?」
「い、いえ、その……」
 すんごい迫力あるトラップの口調に、思わず黙り込むキットン。
 もーっ! 情けないっ!!
518パラレルトラパス完結編 20:03/09/21 21:01 ID:eUcw3U5c
「やめてトラップ! 第一、どうしてそんなことしなきゃならないのよ!?」
「ああ!? んなの決まってんだろ!?」
 わたしが叫ぶと、トラップは即座に怒鳴り返してきた。
「おめえと一緒に幸せになるためだよ!!」
 ……え?
 どういう、こと?
 わたしが呆気にとられていると、トラップはすごい早口でまくしたてた。
「バーカ、わかんねえのか? 俺がヴァンパイヤを召還して、俺自身をヴァンパイヤにする。そうすりゃあ、別のヴァンパイヤがどうのこうの言わなくてもいいだろ? 
 おめえが俺の血を吸って、俺がおめえの血を吸えばいいんだ。そうしたら、二人とも人間になれるじゃねえか!!」
 ……あっ!!
 そう……そうだよね。確かに……
「あ、あのですね、トラップ。私はお勧めしませんよ? あなた、既に吸血鬼になってしまってますし。能力の有る無し関係なく、ヴァンパイヤを受け入れることができるかどうか……」
「できねえっつー根拠はどこにあるんだよ」
「いえ、ありませんが……」
 そりゃあそうだよね。そもそも、ヴァンパイヤが召還によって現れるってことだって、初めて知ったもん。
 ハンターギルドでも聞いたことがなかったし。多分キットンとクレイしか知らなかったんじゃないかな?
 確かに、成功できるなら、それが一番の解決方法だろうけど……でも……
「でも、やっぱり駄目だよ。もし受け入れられなかったら? わたし、ヴァンパイヤになっちゃったトラップなんて見たくないよ!」
 怖い。すごく怖い。
 ヴァンパイヤに身体を乗っ取られるって、どういう風になるんだろう? トラップは、わたしのことも、クレイのことも、ルーミィのことも、今まで出会った全ての人を忘れて、ただ欲望にまかせて人の血を吸うだけの本物の悪魔になっちゃうの? 
 そんなの、嫌だよ。
 だけど、そんなわたしを、トラップはすごく優しい目で見つめていた。
 そして、キットンが見てる前だというのに、ぎゅっと抱きしめてくれたんだ。
 ……恥ずかしいんだけど。
 チラッとうかがったら、キットンは目をそらしていた。
519パラレルトラパス完結編 21:03/09/21 21:02 ID:eUcw3U5c
「あんがとな、パステル。けどな、おめえ、俺を信用しろよ。クレイにできて、俺にできねえはずがねえ。俺はクレイを殺した男だぜ?」
「トラップ……」
「俺は忘れねえ。他の誰のことを忘れても、おめえのことは絶対忘れねえ。パステル、俺を信用しろ」
 それは、すごく不思議な言葉。
 他の人だったら納得できなかっただろうけど、トラップの声で、言葉で言われると、納得できる。
 ……そうだよね。信じなくちゃ。
 トラップは、わたしと幸せになるために、自分の体を差し出すんだから。
 わたしが信用してあげなくちゃ。
「……わかった、トラップ。がんばってね。絶対、負けちゃ駄目だからね」
 わたしが言うと、トラップは笑って……
 ……キスはやめてね。キットンがいるから。
 押しとどめたわたしに、トラップは微かに不満そうな顔をした。
 
「えーとですね、結界は維持されていますし、後、召還に必要なものはそう多くありません。ろうそくと、紙とペンさえあれば」
 すっかり諦めたキットンが、召還について説明してくれる。
 もっとも、「ここでてめえの血を吸って吸血鬼にしてやってもいいんだぜ」ってトラップが牙を見せて脅したからなんだけど……
 わたし達は、一度ドーマの隣にあるガイナの街まで戻って、必要なものを調達してから再びこの場所へと戻った。
 キットンいわく、ここは、この森の中心になるんだって。
「それでですね、あ、ちょっと紙とペンを貸してもらえますか」
 そう言うと、キットンはすごい速さで、紙に複雑な模様を書き始めた。
 丸の中に三角が二つ重なった星マークを基本にして、そのまわりにすごくややこしい模様がいっぱい書いてあるの。
 うっ、目がちかちかしてきちゃった。
「これが、召還に使う魔法陣です。これを、中心となるこの場所に置いてですね」
 紙が置かれたのは、クレイの気配がちょっぴり残っていたあの場所。
「そして、四隅にろうそくを立てて炎を灯してください。倒れないように注意してくださいよ」
 言われたとおりにろうそくを立てると……
 何だか、その魔法陣の真ん中から、不思議な気配が上ってきた。これって、魔力?
 わたしですら感じられるんだもん。きっとすごい力……なんだよね。
 トラップ……大丈夫?
520パラレルトラパス完結編 22:03/09/21 21:03 ID:eUcw3U5c
「さて、後は呪文を唱えるだけです。ああ、パステル、離れておいた方がいいですよ。巻き込まれたら、死ぬかもしれません」
 そ、それを早く言ってよ!!
 キットンの言葉に思わずとびすさってしまったんだけど、すぐに後悔した。
 トラップは、もっと怖いはずだよね。自分の体にヴァンパイヤを呼び寄せるんだもん。
 ……わたしが傍にいてあげなくてどうするの!
「パステル? おめえ、離れてろって」
「嫌、わたしはトラップの傍にいる。わたしだってヴァンパイヤの端くれよ? 簡単に死んだりしないから……トラップは、わたしを信じてくれないの?」
 そう言うと、トラップは笑って、わたしの頭を撫でた。「さすが、俺の惚れた女だ」って。
 て、照れるなあ……
「あのーあなた達がラブラブなのはよくわかりました。続けていいですか?」
 ってきゃあああああああああああ!? キットンがいたの忘れてた!!
「ご、ごめん。どうぞ」
「ごほん。えーとですね、呪文なんですが、そう長いものじゃありません。『出でよヴァンパイヤ。我に能力を与えよ。我が名は……』この後、自分の名を叫ぶだけ。簡単でしょう」
 ……簡単っていうか、シンプルっていうか。
「さて、準備はいいですか、トラップ?」
「ああ」
「それじゃ、私は離れさせてもらいますよ。パステル、いいんですね? そこにいて」
「……うん」
 トラップなら、絶対大丈夫! わたしは信じてるんだから。
 わたしが大きく頷くと、キットンが後ろに下がった。
 ……いよいよ、始まる。
 わたしは、トラップの手をぎゅっと握った。彼は、一瞬わたしを見た後……魔法陣の前に立って、目を閉じた。
521パラレルトラパス完結編 23:03/09/21 21:03 ID:eUcw3U5c
「出でよヴァンパイヤ。我に能力を与えよ。我が名は……トラップ!」
 トラップが叫んだ瞬間。
 魔法陣から、ものすごい魔力の波動が吹き付けてきた。
 ううっ……くっ、苦しいっ……
 呼吸もできないくらい濃密な魔力。それが、トラップのまわりに立ち込める。
 その中から、声が響いてきた。
『我を呼び出したのはお前か……』
 それは、すごく不思議な声だった。低くてよく通る、威厳に満ちた声。耳じゃなくて、頭の中に直接響いてくるような声。
 その声に、トラップが答えた。
「ああ、そうだ」
『何故、我の力を求める』
「なんでそんなこと聞くんだ? その答えにおめえが満足できなかったら?」
『お前は塵となって消滅するだろう』
 ななな何ですって!? 聞いてないわよそんな話!!
 思わずキットンをにらみつけたけど、魔力の壁に阻まれて全然姿が見えなかった。後で文句言わなくっちゃ。
「なるほど、簡単に力を手に入れるってわけにはいかねえか」
『然り。例え我がお前の答えに納得したとしても、お前の体が我の力に耐えられるか。それは我にもわからぬ。そのときは、お前の体は我に完全に乗っ取られるであろう』
「ああ? おめえ俺を誰だと思ってんだ? クレイを倒した俺が、おめえごときの力、耐えられねえはずねえだろう」
 トラップ……それをこのヴァンパイヤに言っても、多分意味が通じないと思うよ……怒ってないといいけど。
『自信に満ち溢れているな。よかろう。では問いを繰り返す。お前が我が力を求める理由は?』
 その言葉に、トラップはにやっと笑って言った。
「惚れた女と、幸せになるためだ」
 その瞬間。
 魔力の壁が、トラップに向かっていっせいに押し寄せてきた。
522パラレルトラパス完結編 24:03/09/21 21:04 ID:eUcw3U5c
 くくうー!!
 その瞬間、わたしはトラップから弾き飛ばされた。とてもじゃないけど耐えられなかった。
 それほど、魔力が圧倒的だったのよ!!
 トラップの答えに、ヴァンパイヤが納得したのかどうかはわからない。
 もしかしたら、目を開けたとき、トラップの体は塵になってるかもしれない。
 もしかしたら、完全にヴァンパイヤになってるかもしれない。
 トラップ……
 駄目、信じなくちゃ。わたしが信じなくてどうするの!
 わたしは目を開いた。ちょうどそのとき、魔力の最後のかけらが、トラップの体に吸い込まれたところだった。
 塵にはなってない……トラップ!
 その瞬間、トラップの膝が崩れた。自分の体を抱きしめるようにして、そのままうずくまる。
「きゃあああああああああああああああ!? トラップ!?」
 嘘、まさか! まさか、トラップ!!
 わたしが慌てて駆け寄ると、トラップは……
 にやり、と笑った。
 それは、全くいつものトラップの笑顔で……
「だぁら、言ったろ? 俺は、クレイの奴より強いって」
 全くいつもの口調で、そう言った。
「ば、ばかあ! 心配、したんだから……」
「……わりい。やっぱさ、すげえな、ヴァンパイヤって」
 トラップの体……震えてる?
 わたしは慌てて彼の体を抱きしめた。同時に、トラップの腕が、わたしの体を抱きしめる。
523パラレルトラパス完結編 25:03/09/21 21:05 ID:eUcw3U5c
「早い方が、いい」
「え?」
「本当に、すげえ力なんだ。下手したら、俺の意識、とぶかもしんねえ。だから、おめえ……俺の血を……」
 ……ああ、そうか。そうだよね。
 そんなに簡単にいくはずがない。だからこそ、今この瞬間、トラップが意識を保てている奇跡を、無駄にしちゃいけない。
「わかった……トラップも、わたしの血を……」
「わかってるって。ちっといてえだろうけど、我慢しろよ」
「それは、お互い様」
 全ては、この瞬間のために。
 そのためだけに、わたし達はここまで来たんだ。
 わたしは、トラップの首筋にそっと歯をあてた。同時に、トラップの歯が、わたしの首筋にあたる感触。
 わたし、実は血を吸うの初めてなんだよね……お母さんに教えてもらって、衝動をずっと抑えてきてたから。うまく吸えるかな?
 トラップの歯に、微かに力がこもった。瞬間走る鋭い痛み。
 同時に、わたしも、顎に力をこめていた。
 
 血って、こんな味がするんだね……
 口の中に溢れた血を飲み込みながら、わたしはぼんやりと考えていた。
 トラップの血の味は、鉄くさくもさびくさくもなく、どちらかと言えば甘い味がした。
 その血が、わたしの胃に落ちて、そのまま全身をめぐる。
 それと同時に、急速に血を失って、頭がくらくらするのを感じた。クレイに血を吸われたときと、同じ感覚。
 体を離したのがどちらが先なのかはわからない。
 気がついたら、わたしもトラップも、地面に四つんばいになっていた。
 血がめぐる。
 トラップの血が、わたしの中でめぐってる。わたしの中に流れるヴァンパイヤの血を滅ぼそうと。
 それは、とても苦しかった。血管一つ一つがぼろぼろに崩れていくような感覚。
「ッああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 同時に全身をかけめぐった痛みに、わたしは叫んでいた。今まで味わったことのない痛み。クレイも味わったはずの痛み。
524パラレルトラパス完結編 26:03/09/21 21:06 ID:eUcw3U5c
 地面に倒れそうになったところを、即座にトラップが抱きとめてくれた。
 トラップも、凄く苦しいはずなのに。額には脂汗が浮かんでるのに。
 それでも、わたしを守ろうと、抱きしめてくれた。
 ……負けちゃいけない! 幸せになるために。トラップと幸せになるために!!
 その痛みが、どれくらい続いたのか……
 急速に全身の力が抜ける。痛みが、少しずつ遠のいて……
 そのまま、わたしは気を失ってしまった。
 
 額に当たる冷たい感触で、わたしは目を覚ました。
 ……えと、一体何が起きたんだっけ?
 目を開けると、焚き火をしているトラップとキットンの姿が目に入った。
 わたしの額に冷たいタオルをあててくれているのは、トラップ。
 キットンは、焚き火で茸みたいなものを焼いている。
「ああ、パステル、気がつきましたか」
「……わたし……?」
「いやあ、いいものを見させていただきましたよ。なかなか、ヴァンパイヤの召還の瞬間になんて立ち会えるものではありませんからね。いや、感謝します」
 ……わたしとトラップがどれだけ怖い目にあったと思ってるのよ、もう!
 あまりにものんきな言葉に、わたしは文句を言おうとしたのだけど、トラップに押しとどめられた。
 まだ寝てろ、ってことらしい。確かに、体がすごくだるいんだよね。何でだろう。
 キットンは、そんなわたし達の様子には全然気づかず、
「えー、まあというわけでこれはお礼です。この茸は、貧血によく聞くんですよ。これを食べれば、パステルもすぐ元気になりますから」
「あ、ありがとう……それより、わたし……」
 結局、どうなったの?
 そう言おうとしたんだけど、それに気づいたのか、トラップがにやっと笑って首筋を指差した。
 ……え?
 トラップの首。そこに、くっきりと残る、二つの痕。あれは……
 あわてて自分の首筋を触ってみた。触ると、痛い。指を見ると、ちょっとだけ血がついてきた。
 これって……ああ、でも、もし間違いだったら……
525パラレルトラパス完結編 27:03/09/21 21:07 ID:eUcw3U5c
「……まだ信じられねえのかよ」
 わたしの様子に呆れたのか、トラップは、ひょいっとポケットから小刀を出した。
 そして、ためらいもなく自分の腕を切り裂いた。
 きゃあああああああ!? いきなり何するのよっ!?
「バカ、かすり傷だって。それより、よっく見てみろよ」
「……え?」
 トラップが腕をつきつけてくる。その傷口は、確かにすごく浅かったけど。
 でも、いつまで経っても、塞がらなかった。
 慌ててトラップから小刀を借りて、自分の指先をちょっと切ってみた。
 いつもなら、こんな怪我、すぐに塞がる。わたしはヴァンパイヤだったんだから。自己治癒力に優れ、どんな怪我でもたちどころに治してしまったヴァンパイヤ……
 傷口は、いつまで経っても塞がらなかった。
「わたし……わたしっ、人間にっ……トラップもっ……」
「ああ。だあら言ったろ? 俺を信用しろって」
 わたしは……きっと今日という日を絶対に忘れない。
 やっと、呪縛から解放された日のことを。
 しばらくわたしとトラップは何も言わず抱き合ってたんだけど、ゴホンという咳払いで、慌てて離れた。
 ううっ、どうも他に人がいる状況って、慣れないなあ。
「えー、いや、感動的な光景をありがとうございました。私はそろそろ失礼しますよ。店も再開させないといけませんし」
「ああ、さっさと行け」
 トラップが、全然遠慮のない口調で言った。
 一応、キットンのおかげで召還ができたんだからさあ。もうちょっと丁寧な態度取れないかなあ。
「キットン、本当にありがとう」
526パラレルトラパス完結編 28:03/09/21 21:09 ID:eUcw3U5c
「いえいえ、私としても本当に貴重な経験でしたし。いつでも遊びに来てください。よく効く薬がいくらでもありますから」
「うん、絶対行く!」
 じゃあ、と手を振って、キットンの姿は森の中へと消えた。
 はあっ……不思議な人だったなあ。
「やーっと行ったか」
「もー、キットンのおかげで、わたし達人間に戻れたんだよ? 感謝しなきゃ」
「バーカ、感謝はしてるよ。おめえが寝てる間に、ちゃんと礼は言ったからな」
 ……本当でしょうね。
「でもな、それとこれとは話が別だ」
「え?」
 振り向いた瞬間、塞がれた唇。
 ……ああ、そうだね。何だか、随分久しぶりな気がする。
 まだ全部解決したわけじゃない。この方法は、トラップがヴァンパイヤの召還に耐えられたからこそ成功したんだから。
 わたしもトラップも人間になってしまってヴァンパイヤは消えたけど、吸血鬼はまだ世の中に残っている。彼らを元に戻す方法は、まだ見つからないけど。
 キットンみたいな優秀な研究家がいるんだもん。きっと、いつか、見つかるよね? 
 わたしもトラップも、いっぱいいっぱい苦しんだんだから。
 だから、今だけ忘れさせて。
 月光の下、わたしとトラップは、初めて人間として交わりあった――


完結っ。うーん……エロ少なっ(汗汗
だ、大丈夫でしょうか。板違いって言われても仕方がないような……
とりあえず、>>487さんのリクエストにそって
パラレルの続き、トラップの過去、その他もろもろ。
及び、>>478さんの、「既にそーいう関係のトラパス」
期待にこたえられたでしょうか?
527名無しさん@ピンキー:03/09/21 21:32 ID:mDMIc2c+
487です。
よかった、本当にリクエストしてよかった…。私は世界一の幸せ者です。
トラップとルーミィの辺り泣けました。ほんとに涙でました。
ああ、感無量…。もう、胸がいっぱいで言葉になりません。
それでもこれだけは。最高でした!トラパス作家様、本当にありがとうございました!!
528名無しさん@ピンキー:03/09/21 22:07 ID:ChrFFxV/
トラパス作家様、もの凄いです。
その速さも質の高さも。

できるなら、その溢れんばかりの才能を別の作品のSSでも…
529名無しさん@ピンキー:03/09/21 22:56 ID:jdE2Vaal
トラパス作家様、お疲れ様です。
もう全てが素晴らしい!!
本家フォーチュンより断然面白いんですが…。
テンポといい質といい、キャラの掴み具合といい、サイコーです。
次回作、楽しみに待たせてもらいます。
530トラパス作家:03/09/21 22:59 ID:eUcw3U5c
>>527
気に入っていただいてよかったです。
パラレル書いた時点では、よもや続編を書くことになるとは思わなかったので・・・
設定とかも全部後付け、書きながら展開を考えていたに近いんですけれど
でも、書いていくうちに、「あー、わたしはこの作品の続きを書きたかったんだな」って思えました。
こちらこそありがとうございます。あなたのリクエストがなければ、わたしは書きたい作品を書くチャンスを一つ失うところでした。

>>528
別の作品ですか……
今は頭の中がFQで染まってますので、書けるかどうか(笑
でも、そう言っていただいて嬉しいです。
アイディアが浮かんだら、別の作品SSスレに出没するかもしれません。

エロパロスレにいるくせに、エロがへたくそな私の作品に
暖かい言葉をかけていただいてありがとうございます。
新作、リクエスト作品、できる限りアップし続けていきたいと思います。
……スレがあっというまに500を超えてしまって(汗
他の方々の作品を流してしまって、申し訳ありません。
531名無しさん@ピンキー:03/09/22 00:41 ID:XMFb7HXD
487および527です。
勿体無いお言葉ありがとうございました。
私の単なるワガママなリクエストが、こんな素晴らしい作品が生まれる
きっかけの1つになったなんて、なんだか嬉しいと言うか、恐れ多というか…

設定後付けですか!?驚きました。矛盾全然ないじゃないですか!
やっぱりすごいです。本気で深沢美潮を超えてると思います。
最近、帰宅時間が確実に早くなっております(w 
もう、待ち遠しくって。これからも楽しみにしていますv
532名無しさん@ピンキー:03/09/22 01:03 ID:Oq+dlffl
いやーパラレルトラパス完結編、良い物を見させてもらいました。
マジ最高!なんでこんなに話をうまくまとめられるんだろう?
マジ、スゲーとしか言いようが無いッスヨ!
533名無しさん@ピンキー:03/09/22 01:35 ID:dNYJejKp
マーヴェラス!
面白いやら上手いやら、もう脱帽するっきゃないです。完成度高杉!
534トラパス作家:03/09/22 21:34 ID:uqrBOdIu
パラレルトラパス完結編が好評で、ちょっと発表するのが怖いのですが
>>489さんのリクエストにお答えして。
「トラパス 修羅場編」の続き、いきます。
ちょっと……雰囲気が悪いかもしれません。
というか……まあ、色々とやばいかもしれません(汗
完結させた作品の続きを書くって難しいです。
ではいきます。
535トラパス 修羅場続編 1:03/09/22 21:35 ID:uqrBOdIu
――ごめん。だから、俺が俺にできる精一杯の償い。おめえのことが、好きだ
 ……これって、どういうこと?
 印刷所に無事原稿を渡し終わった後も、わたしはずっと考えていた。
 わたしの名前はパステル・G・キング。冒険者にして、雑誌に連載を持ってる小説家の卵でもあるんだ。
 話せば長いことながら、わたしは駄目にしてしまった原稿を元に戻すためにしばらく徹夜続きで、結局トラップに助けてもらって何とか原稿を書き上げたんだけど。
 トラップの字で書かれた言葉。これって、どういう意味?
 ごめん、っていうのは、多分原稿を駄目にしちゃったことだよね。償いって、原稿を書き写してくれたこと?
 だけど……どうして、その後にこんな言葉が続くの? 「好き」?
 ……トラップが、わたしのことを好き?
 なーんて、まさかね。
 あのトラップが、わたしのことを好きだなんて、そんなことあるわけないよね。きっと彼のことだから、またわたしのことからかおうとしてるんだ。
 もーっ、いくら何でもちょっと悪質じゃない? まあ、今回はトラップにたくさん助けてもらったから、怒るのはやめておくけどさ。マッサージも気持ちよかったし。
 はあっ。きっと、この書き置き見たわたしが慌てるのを見て笑うつもりなんだろうなあ。そうはいかないんだから。
 平常心平常心、と言い聞かせながら、わたしは宿に戻った。
 ちょうど、みんなは夕食でも食べに行こうかってわたしを待っててくれたところだったんだけど。
 トラップの姿だけが見えない。どうしたんだろ?
「あ、おかえり、パステル。どうだった?」
「うん、ばっちり! ちゃんと印刷所に持っていった」
「よかったね、おめでとう」
 クレイが優しい言葉をかけてくれる。うーっ、いい人だなあ。今回のことでも随分心配してくれたみたいだし。何か美味しいものでも作ってお礼しよう。
536トラパス 修羅場続編 2:03/09/22 21:36 ID:uqrBOdIu
「じゃ、みんなそろったみたいですし、猪鹿亭にでもいきましょうか」
 キットンの言葉にみんな頷いたんだけど、みんなって、トラップがいないじゃない。
「トラップは?」
「ああ、まだ寝てます。どうやら、原稿を書き写すために徹夜したみたいですねえ。どうしても起きないので、ベッドに置いてきました」
 そう言うと、何がおかしいのかキットンはげらげら笑った。
 食事に来ないなんて、よっぽど眠いんだろうなあ。ううっ、ごめんねートラップ。
「じゃ、行こうか」
 会話が一段落したところでクレイが促したけど、わたしはその前に部屋に戻ることにしたんだ。
 余計な荷物は置いておきたかったし。トラップの書置きとかね。
「ごめん、わたし部屋に戻って荷物置いてくるから。みんな、先に行っててくれる? すぐに追いかけるから」
 わたしの言葉に、みんなは頷いて外に出て行った。
 さーて、わたしも荷物置いたらすぐに追いかけなくちゃ!
 
 トラップの書置きは机の中にしまって、原稿を入れるのに使ったカバンからお財布だけ抜けば準備完了。
 多分、今からすぐに追いかければ、猪鹿亭に着く前にみんなに追いつけるはず。
 そう思って、わたしはすぐに外に出ようとしたんだけど。
 その前に、ちょっと立ち寄るところができてしまった。……その、生理現象というか……おトイレに。
 いや、よく考えたら、丸一日半以上もずっと寝てたんだから当然なんだけどね。
 宿のおトイレに入って、ふうっ、と一息。用を足して立ち上がろうとすると……
537トラパス 修羅場続編 3:03/09/22 21:37 ID:uqrBOdIu
 あれ?
 下着に、赤い染みができてた。何だろ、血?
 わっ、もしかして、始まっちゃったのかな?
 そりゃあ、わたしも年頃の女の子だから、当然月に一回くらい、ちょっと苦しむ日があるんだけど……
 でも、変だなあ。次に来るまで、後二週間くらいは余裕があると思ってたんだけど。
 それに、血の色がやけに鮮やか。これじゃ、まるで怪我したみたい……
「……え?」
 そのとき、わたしは初めて違和感に気づいた。いや、気づくのが遅すぎるんじゃないかっていう気もするけど。
 何となく違和感。体の奥を怪我したような痛み。明らかに、「あの日」のときの痛みとは種類が違う。
 これって……こんなとこが痛くなったり怪我する理由って……
 いや、まさか、まさかだよね……でも……
 そのとき、わたしの頭の中に浮かんだのは、トラップの書き置き。
 ごめん。俺にできる償い。好きだ――
 まさかっ……
 わたしはもう一度階段を駆け上った。
538トラパス 修羅場続編 4:03/09/22 21:38 ID:uqrBOdIu
「トラップ!!」
 ノックもしないで男部屋のドアを開ける。トラップは、二つあるうちのベッドの一つで眠っていた。
 だけど遠慮しないもんね! まさか、とは思うけど。もしわたしの予想が当たってたら……
 そんなのって、酷すぎる。
「トラップ、起きて! 起きて起きて起きて!!」
「……んだよ……うるせえなあ……」
 しつこく叫んでその身体を揺さぶると、やっとトラップが目を開けた。
 もーっ、いつものことだけど寝起きが悪いんだから!!
「トラップ!」
「……ぱ、パステル!?」
 わたしがぐっと顔を近付けて怒鳴ると、突然トラップがばっと目を開けた。
 何だか一気に目が覚めたみたい……そんなにわたしの顔、怖かった?
「トラップ、あのね、聞きたいことがあるの」
「……あんだよ」
 わたしが身を乗り出すと、同じだけ身をそらしながらトラップが答えた。
 目を合わせようとしない。いつものトラップらしくない。
 いつものトラップだったら、「もう少し寝かせろ」とか何とか、得意の毒舌できりかえしてくるはずだもん。
 やっぱり……
「トラップ、最初にお礼言っておくね。夜食作ってくれて、マッサージしてくれて、わたしのかわりに原稿仕上げてくれて、どうもありがとう」
「……別に。言っただろ。それは俺が悪かったから」
「でね!」
 トラップの言葉を強引に遮る。
 ちゃんとお礼は言った。いっぱい色々してくれたことには、本当に感謝してるから。
 だから、ちゃんと聞かないと。
539トラパス 修羅場続編 5:03/09/22 21:39 ID:uqrBOdIu
「トラップ……それだけ?」
「……それだけ、って?」
「わたしにしてくれたのは……したのは、それだけ?」
「…………」
 トラップは、何も言わずに顔を背けた。
 絶対おかしいよ。何も無かったなら、「他に何があるんだよ」とか「何が言いてえんだ?」とか、何か言ってくるはずだもん。
 やっぱり……やっぱり……
「やっぱり……そうなの?」
「…………」
「やっぱり、わたしが寝てる間に……トラップ……」
「……負けた」
「え?」
 ボソッとつぶやかれたトラップの言葉。その意味が、わたしにはわからなかった。
「負けた。俺の前で、無防備に身体触らせてるおめえの誘惑に、負けたんだよ」
 ゆ、ゆ、誘惑!?
 何それ……わたし、そんなつもりじゃ……
「酷い……何、その言い方……」
「っ……俺はっ……おめえのことが、好きだから」
「嘘!」
 嘘、嘘だよ。そんなの信じない。
 好きな相手に、そんな酷いことできるわけないじゃない! そんな……
「嘘、嘘だよ! わたしのことなんか好きじゃないくせに。ただ、手を出せそうだから出したんでしょう? わたしが、寝てて、何も気づかなかったから……誰でもよかったんでしょ? 
 同じような状況だったら、例えばマリーナだったとしても、同じことしたんでしょう!?」
「てめっ……何でそこでマリーナが……」
「ううん、違うよね。マリーナだったらそんなことしないよね。好きな相手にそんなことできるわけないよね! そっか……トラップにとっては、わたしはマリーナのかわりだったんだ!」
 バンッ!!
 わたしの言葉を遮るようにして、トラップが壁を叩いた。
 その顔は……すごく怒ってるみたいだった。トラップのこんな顔、見たことない……
540トラパス 修羅場続編 6:03/09/22 21:39 ID:uqrBOdIu
「っ……寝てる間に抱いたのは、悪かったと思ってる。ああ、俺も自分がそこまで最低な野郎だったとは思わなかった。けどなっ……」
「けど、何よ」
 トラップの顔も、声も、すごく怖かったけど。
 でも、負けない。だって、いくら何でも許せない!
「けど何よ! わたしの気持ち無視して、酷い、酷いよ、トラップ。わたしは……」
 駄目、これ以上言葉にならない。
 言いたいことがぐちゃぐちゃになっちゃって……もう……
 ぼろぼろと涙がこぼれた。悔しいのと、悲しいので。
 それを見たからなのか、トラップは声のトーンを落とした。
 何だか、すごく辛そうな顔で。
「……そうだな、悪かったよ。いくら俺がおめえが好きだっつっても……おめえは信じたくねえよな、そりゃ」
「……え?」
「おめえが好きなのはどうせクレイなんだろ? 悪かったな……俺が先に傷物にしちまって!!」
「なっ……ちがっ……」
「安心しろよパステル。クレイの奴なら、んなこと気にしねえよ。あいつなら、同情して優しく」
 バシンッ!!
 気がついたら、わたしはトラップの頬を思いっきりひっぱたいていた。
 知らなかった……わたし、トラップは、酷いことばっかり言ってても、それは実はみんなのことを考えてだと思ってた。
 こんな、こんな酷い人だったなんて……!!
 トラップは何も言わなかった。わたしが叩いた頬を押さえて……そのまま、部屋を出ていこうとした。
 乱暴にドアを開けて、そして。
 そこに立っていたクレイと、はちあわせした。
「っ――クレイっ……」
「あ……あ、悪い。俺、パステルが遅いから……迎えに……」
 茫然として何か言いかけるクレイを突き飛ばすようにして、トラップは外にとびだした。
「おい! トラップ!!」
 クレイが呼び止めたけど、トラップは戻ってこなかった。
 クレイ……今の話……
「パステル……」
 クレイの顔がゆがんだ。すごく痛ましそうな、わたしに同情している顔。
 やっぱり……聞いてたんだ……
541トラパス 修羅場続編 7:03/09/22 21:40 ID:uqrBOdIu
「パステル……」
 クレイは、何か言いたそうにしてたけど、結局黙ってわたしの隣に腰かけた。
 ……そうだよね。こんなときに、かける言葉なんて見つからないよね。
 わたしがクレイの立場だったら、やっぱり何も言えないと思う。
 ――わたしっ……
「クレイ、わたし、どうしたらいいと思う?」
「…………」
「わたし、知らなかったよ。トラップがあんな人だったなんて……」
「パステル、あのさ」
「わたしもう信じられない! トラップのこと、信じられないよ!!」
「パステル!!」
 突然、クレイが強い口調で叫んだ。
 すごく真剣な表情。……何だろ? クレイ、何が言いたいの?
「パステル、すごくショックだったのはわかるよ。俺も、トラップのやったことは酷いと思う。同じ男として、最低なことだと思う。だけど……」
 そこで、クレイは悲しそうな目をして続けた。
「トラップは、真剣なんだよ。真剣にパステルのこと思ってる。そのことだけは、信じてやってくれないか?」
「……え?」
 嘘、嘘でしょう?
 だって、トラップはマリーナのことが……
542トラパス 修羅場続編 8:03/09/22 21:41 ID:uqrBOdIu
「パステルが何を勘違いしてるのかはわからないけど……トラップはパステルのことが好きなんだよ。俺はずっと見てたからわかる。原稿のときだって、トラップは1番心配してた。食事を部屋に届けてたのも、ずっとあいつだったんだよ」
「だって! ……好きな人に、あんな酷いこと、できるわけが……」
「パステルは、トラップのことが好き?」
「……え?」
 クレイ、どうしてそんなこと聞くの?
 好きなわけ……ないじゃない。わたしがトラップのことを好きなわけ……
「それとも、嫌い? 嫌いだから、怒ったのかい? 嫌いな人に抱かれたから、泣いたの?」
「……それは……」
「トラップの奴が言ってたな。パステルが好きなのは俺だって……それ、本当かい?」
 な、何を言ってるのよクレイ!
 そ、そりゃあ、クレイのことは好きだけど……でも、好きって、そういう好きじゃなくて……
「もしそうなんだとしたら、いいよな、パステル」
「え? 何、クレイ……?」
「いいよな、俺がこうしても」
 そう言うと、クレイは……
 何と、わたしを優しく抱きかかえて、ベッドに寝かせてきたのよ!!
 ななな何をするつもりなの――!?
543トラパス 修羅場続編 9:03/09/22 21:41 ID:uqrBOdIu
「く、クレイ!? ちょっと……」
「パステルは、俺のことが好きなんだろう? トラップに怒ったのは、トラップのことが嫌いなのに無理やり抱かれたからだろう? なら、いいじゃないか」
「なっ……ちがっ……」
 違うわよっ! わたしが怒ったのは、トラップが、わたしの気持ちを無視したから……
 クレイ、何を考えてるの――!? クレイが、そんなことわからないはずないじゃない! どうして――
 わたしがパニックになってる間にも、クレイの手が、優しくわたしの髪をなでて……
 ぶ、ブラウスのボタンを外しにかかって……
 て、手がっ! 胸、胸にっ!!
「やだっ、クレイっ――やめて、やめてよっ!!」
「どうして? パステルは俺が嫌い?」
「きっ、嫌いじゃないけどっ……」
 きゃああああああああああ!!? どどどどこ触ってるのよクレイっ!!
「嫌……」
「ん? 何、聞こえない」
「嫌っ、やめて……やめてやめて!! わたし、わたしはっ……」
 そのとき、わたしの頭の中に浮かんだのは。
 何でだろう。何で、こんなときに……トラップの顔が浮かぶの? どうして……
「違う、わたしが好きなのはクレイじゃないの! わたしは……」
「やっと、わかった?」
「……え?」
 そう言うと、クレイは、拍子抜けするくらいあっさりとわたしから離れた。
 あ――クレイ、真っ赤になってる。……照れてる? ばっとわたしから目をそらして……
 ああああ! 服、ちゃんと直さなくちゃっ……
544トラパス 修羅場続編 10:03/09/22 21:42 ID:uqrBOdIu
 わたしが慌てて服を整えると、クレイは、いつもの優しい顔になって言った。
「手荒なことしてごめんな、パステル。でも、これで自分の気持ちがわかっただろう?」
「クレイ……」
「自分の気持ちだって、よくわからないんだ。ましてや、他人の気持ちなんてそう簡単にわかるわけないよ。それにさ……自分の気持ちを誤解されるのって、すごく嫌な気分だろう?」
 そう……それは、そうだよね。確かに、そう思う。
「あのさ、パステル。俺も男だからわかるけど……その、どうしようもないことって、あるもんだよ。どうしても、理性が負けちゃうときって、あると思う。だから、トラップはトラップなりに、精一杯謝ったと思う」
「謝った……?」
 そうかなあ。とてもそうは見えなかったけど……
「あいつがさ、例えばパステルじゃなくても、誰か本気で女の子を好きになったとして……それを素直に告げられる奴だと思う?」
 ――あ!?
 そうだよね……それは、そうかもしれない。
 じゃあ、やっぱり……
「やっぱり冗談だったんだ、なんて思うなよ? 本気でそう思うんだとしたら、パステルはトラップのことをわかってない。冗談でこんなときにそんなことを言える奴じゃない。
 あいつは、パステルを……好きだから抱いた、いいかげんな気持ちじゃなかった、そう言いたかったんだと思う。やってしまったことは、取り消せないから。せめて自分の気持ちを偽りなく告げることで、償おうとしたんじゃないかな」
 トラップ……
 本当、なの? あなたは、本当にわたしのことを……?
「クレイ、それ本当?」
「さあ? 俺はそう思うってだけで、あいつの本心はあいつにしかわからない。……確かめてきたらどう?」
 クレイは肩をすくめて、ドアを指差した。
 ……行かなくちゃいけないよね。確かめなくちゃ。
「パステル!」
 わたしが部屋を出ようとすると、クレイが呼び止めた。
 何だろ?
「その……胸触って、ごめんっ……俺は、猪鹿亭に戻るよ。みんなをそこに引き止めておくから。トラップを見つけたら、ここに戻ってくるといい」
 あらら、クレイってば……本当に……
 いい人だなあ。
「ありがとう。気にしてないよ、おかげで自分の気持ちがわかったから!」
 それだけ言って、わたしは部屋をとびだした。
 トラップ、どこにいるの?
545トラパス 修羅場続編 11:03/09/22 21:43 ID:uqrBOdIu
 自慢じゃないけどわたしって方向音痴なんだよね。通いなれた道でも迷えるくらい。
 そんなわたしが、トラップを無事に見つけ出せるか、不安だったんだけど……
 何と、トラップは宿の入り口の前に座り込んでいた。
 どうしてこんなところにいるのよ……
「トラップ」
 呼びかけると、トラップは、びくっとして振り返った。
 もう怒ってはいないみたいだけど……何だか、すごく辛そう。
 わたしが、わかってあげなかったから? トラップの気持ちを誤解してたから?
 階段のあたりをうかがうと、クレイがちょうど下りて来るところだった。
 目で合図したら、わかってるっていう風に手を振って、裏口の方へと向かっていった。
 ううっ、クレイ……本当に、本当にありがとねっ!!
「トラップ、こんなところにいたら風邪ひくよ。部屋に戻らないと」
「――っせえな……」
 腕をつかもうとしたけど、乱暴に振り払われた。
 ……どうすれば、何を言えばいいんだろう。
「トラップってば。ね、部屋に戻ろう?」
「へっ。おめえにとってはどうでもいいことなんじゃねえの? 俺に構わずクレイのところにでも行けよ」
 ――ムカッ。
 まだ誤解してる! わたしが好きなのはクレイだって。……違うのに。
 って、わたしも、トラップが好きなのはマリーナだって、誤解……だよね? してたんだよね。
 そうか、こんなに嫌な気持ちになるものなんだ。気持ちを誤解されるって。
 トラップが怒ったのも、無理ないよね。
546トラパス 修羅場続編 12:03/09/22 21:44 ID:uqrBOdIu
「トラップ、わたし、クレイに抱かれそうになったよ」
 びくりっ
 わたしがそう言うと、トラップの身体がひきつった。
 後でクレイが殴られたりしないように、ちゃんと見張っておかないとね。
「でも、わたし駄目だったんだ。クレイのこと、もちろん嫌いじゃないけど。でも、そういう……恋愛の意味で好きじゃなかったから、嫌って言っちゃった」
「…………」
「ねえ、トラップ」
 わたしの気持ちを無視してしまったことを、トラップはせいいっぱい謝ってくれた。
 でも、わたしはそれに気づけなくて、誤解して、酷いこといっぱい言っちゃった。
 だから、これは、わたしにできるせいいっぱいの償い。
「もう一度、マッサージ、してくれる?」
「……何?」
 初めて、トラップは顔をあげた。
 
 普段わたしとルーミィが寝てる部屋。
 そこに、今はわたしとトラップの二人きり。
 クレイが、みんなを猪鹿亭に足止めしてくれるって言ったけど……大丈夫かな? クレイ、期待してるからね!
 そこで、わたしはベッドの上にうつぶせになっていた。あのときと同じように。
「おめえ……意味、わかってんだろうな?」
「……わかってるよ」
 トラップは、ベッド脇に立ってわたしを見おろしている。
 ……気持ちを無視されたのは悲しいけど、でも。わたしが好きなのは……
547トラパス 修羅場続編 13:03/09/22 21:45 ID:uqrBOdIu
「わかってる。……トラップは、嫌?」
「っ嫌……なわけ、ねえじゃねえか」
「じゃあ、お願い」
 言ってくれたよね、トラップ。わたしのことが好きだって。
 これは、わたしからの返事。
 ごくり、と息をのむ音がして。
 腰のあたりに、重みを感じた。
 最初は肩。あのときと同じように、強くもなく弱くもない絶妙の力加減で、優しくもみほぐしてくれる。
 首筋、頭、背中、腰。
 トラップの指が、たくみに動いて……そして。
 耳元に、熱い吐息が触れた。
「……いいか?」
 声に出さずに頷く。そして。
 わたしはゆっくりと顔をあげた。意外なくらい近くにトラップの顔。
 唇と唇が、重なった。
 
 キスは長く、熱く、深かった。
 わたし達は、しばらくお互いを求め合うようにくちづけあった。
 やがて、トラップの手が、ゆっくりとわたしを仰向けにする。
 優しく外されるボタン。あらわになる胸。
 トラップの唇が触れるたび、わたしの肌に、赤い痕が残った。
「やだっ……目立つところにつけないでよっ……」
「……俺のもんだっていう、しるしだよ」
 わたしの抗議を無視して、しるしは増えていく。
 ううっ。襟元のあいた服とか、しばらく着れないなあ。
548トラパス 修羅場続編 14:03/09/22 21:46 ID:uqrBOdIu
 やがて、トラップの唇は、胸元へと移動した。
 胸の頂点。そこに軽くキスした後、手が、優しく包んだ。そのまま、軽くもみほぐすように……
「ねえ……それ、も……マッサージ……?」
「そう。効くだろ?」
 効く、なんてもんじゃない。トラップの手が動くたび、わたしの身体は、どんどん熱くなって……
 おかしいよね。さっき、クレイだって同じようなことしたのに。
 あのときは、何も感じなかった。ただ、驚いたのと、怖かったのと、それだけだった。
「やっ……とらっぷ……」
「やっぱ、おめえは……起きてるときの方が、かわいい」
 うーっ、恥ずかしいっ……
 寝てるときのわたしだって、わたしなんだからっ。
 トラップの手が、身体の曲線に沿うようにして優しく、なめらかに動いていった。
 そのたびに、わたしは……頭がぼうっとしてくるような、そんな感覚がして……
 ううっ、だんだん何も考えられなくなってきちゃった。これが、その……「感じる」ってことなのかな……?
「あっ……やっ、やんっ……」
「あー……あのときも、思ったんだけどよ。俺、あんまり長持ちするほうじゃねえみてえ」
 長持ち? 何のことだろう?
 わたしがきょとんとした顔で見上げると、トラップは、何だか悔しそうに……笑っていた。
「だから満足させてやれねえかも」
 言いながら、トラップの手が、スカートにかかった。
 そのまま、手が太ももの内側をはいまわって、下着の中にもぐりこむ。
 っ――やっ……何、この感じ……
 背筋がぞくぞくする。頭の芯がしびれたみたいになって……熱い、じわっとしたものがあふれてくるみたいな感じで……
「やあっ……と、トラップ……」
「おめえってさ、結構、敏感なんだな」
 うっ……いつも鈍感鈍感ってバカにするくせにぃ。何なのよう。
 その瞬間、トラップの指が、わたしの中にもぐりこんできて……
 ぐじゅっ
「ああっ……」
「ほれ、結構、あふれてる」
 やああああああああああああああ!! もうっ、意地悪――!!
549トラパス 修羅場続編 15:03/09/22 21:47 ID:uqrBOdIu
 真っ赤になってにらみつけると、トラップは、すんごい優しい顔で微笑んできた。
 ずるいなあ……こんな顔されたら、怒れないじゃない……
「わりい、俺、もう限界……いいか?」
 わたしが頷くより早く。
 指よりもっと太いもの。大きいものが、ぐっと押し入ってきた。
「っ――つっ……」
 一瞬痛みが走るけど、思ってたほどひどくはなかった。
 これって……二回目、だから?
 ぬるっという感触とともに奥に侵入してくるもの。
 それは、決して不快な感触ではなくて。むしろ、暖かくて……
「っはあ……おめえの中ってさ……何で、こんなにあったけえんだろうな……」
「知らないよ……」
 トラップの動きが激しくなる。
 わたしも、息がどんどん荒くなって……太ももを伝っていくのは、何だろう? お、おもらしじゃないよねっ。
 ああっ、何か、すっごく……気持ち、いい、かも……
「くっ……もう、いく……」
 トラップの微かなうめき声。同時に……
 わたしも、目の前が真っ白になった。
550トラパス 修羅場続編 16:03/09/22 21:48 ID:uqrBOdIu
 っはあ……
 終わった後、服を着て、一緒にベッドに寝転んで。
 わたしとトラップは、同時にためいきをついた。
 ふと横を見ると、トラップとばっちり目があって、慌ててそらしてしまった。
 ううっ、恥ずかしいなあ……
「……おい、こっち向けよ」
 ぐいっ
 それが気に入らなかったみたいで、トラップの手が、強引にわたしの頭をつかむ。
 もう、もっと優しく扱ってよ。……好きな相手になら。
「どーだよ、俺のマッサージは」
「……うん、最高、だったよ」
「そうか」
「……」
「……」
 え、えと。何か、何か言わなくちゃ。えーっと……
「と、とらっ……」
「パステル」
 わたしが何か言おうとしたら、トラップに遮られた。
 すっごく強い口調。……何だろう?
「悪かったな……おめえの気持ち無視して、卑怯なことして。本当に悪かったと思ってる」
「うん」
「けど、言っとくけど、誰でもよかったわけじゃねえぞ。誰かのかわりってわけでもねえからな。俺は、おめえだから。そこに寝てたのがおめえだから、抱いたんだ」
「……うん」
「俺が好きなのはおめえだ。何勘違いしてんのか知らねえけど、マリーナはただの幼馴染で……何つーか、家族みてえなもんなんだよ。わかったか?」
 わかったよ。だから、同じ台詞をそっくり返してあげる。
551トラパス 修羅場続編 17:03/09/22 21:50 ID:uqrBOdIu
「わたしもだよ」
「あ?」
「わたしにとってのクレイも、同じ。好きは好きだけど、家族みたいなもの」
「……そっか」
「トラップとは、違う」
「……あんだと?」
 クレイは家族と一緒。でも、トラップは……
「トラップのことは、男の人として、恋愛対象として、好き」
「…………」
 あー、真っ赤になってる。照れてる照れてる。
 いつも意地悪で、酷いことばっかり言って、トラブルメーカーで、でも、優しい。
 そんなトラップが、わたしは、好きなんだ。
 わたしとトラップの唇が再び重なったとき――
 宿の入り口が開く音がして、みんなのにぎやかな声が、二階まで響いてきた。


完結。
ああ、書くんじゃなかったかも(←海より深く後悔中)
後クレイファンの皆さんごめんなさい。
今回、彼のキャラが少し壊れたかもしれません……
552クレ×パス 232続き:03/09/22 22:23 ID:qYo/wbSL
「んん………、ふ、あ………」
クレイの舌が引き込まれて、唇の感触が無くなった。目を開けると、わたしを
見下ろすクレイと目が合う。熱っぽい目……。わたしはどんなふうに見えてる
だろう? 同じような目で、クレイをみているのかな…。
 もう一度キス。唇が離れると、不意に切なさを感じてしまった。
 もっとキスしていたい、もっとクレイに触れていたい、もっとクレイに触って
欲しい、そう思ってる。
 クレイがそっと胸に右手を置いて、じっとわたしの顔を見つめてる。も、もしか
して、『動かしていいか』って聞いてるの? え、えええっと、その、いいけど。
口に出して言えないから、頷いて返事をした。
「ん……、ぅ…………」
 クレイにゆっくりと胸を服の上から揉まれて、むず痒い感覚が広がってく。
胸の切なさが増して、鼓動が早くなって、苦しくて、息が荒くなってくる。
「ふあ……」
 クレイの手が胸から腰の方へ、体をなぞって動き出した。背中がゾクッとして、
声を上げてしまう。恥ずかしくて、顔を横に伏せた。
「……パス、テル」「な、なに?」
「ふ、服、脱がして、いいか」
キスの時と同じように、緊張した声。腰まで下ろした右手が、わたしの服の裾を
弄ってる。
服? ふくをぬがすって?
553クレ×パス 552続き:03/09/22 22:24 ID:qYo/wbSL
「…………!」「うわっ!!」
クレイをはじき飛ばすように飛び起きて、顔を伏せて体を抱え込む。
ドキドキドキドキ……、鼓動が早鐘のように鳴ってる。
そ、そうよね、こ、このまま続けたら、脱がなきゃ行けなくなるよ、ね。裸を、
見られちゃうんだ。
「無理なら、いいんだ。パステルに嫌な思いさせたくないから」
「嫌じゃないよ、だって、だって……」
「…………」
「ク、クレイにもっと触って欲しいって思ってたんだから」
恥ずかしくて、一気に、早口で言った。顔から火が出そう……。
顔を伏せたまま、ちらりとクレイの方を見る。驚いた顔でわたしを見てる。
Hな子だって思われた?。でも……。
手を伸ばして、クレイの手に触れて、絡ませる。
「あ、す、好きな人じゃなきゃ、こんなこと言わないよ」
顔を上げて、クレイを見つめる。
「クレイは、わたしのこと好き?」
うあ、あたし、何言ってるんだろう。体を火照らせてる熱で、おかしくなった
のかな。
「うん、好きだ」
切なくて、胸か締め付けられて、涙が溢れてくる。
「あ………」
「…………向こう、向いてて。服脱ぐから。クレイも、脱いで」
「あ、ああ」
「…………好きじゃなきゃ、出来ないよ、こんなこと」
聞こえないように呟いた。
554名無しさん@ピンキー:03/09/22 23:13 ID:Bxfa3X0l
トラパス作家さん毎度お疲れ様です!
ウアーこんなに書けるなんて、毎日驚きです!
今後も期待してます。


232のクレパス作家さんの続き、ずーっと待ってましたよ!
続き気になります。楽しみダ!
555名無しさん@ピンキー:03/09/23 01:38 ID:l6rg0lya
トラパス作家様。
素晴らしかったです・・・
こんなところでこんな珠玉の作品に出逢えようとは・・・
読後の後味も良いですし、ほんとにすごいです。
頑張ってください!
556名無しさん@ピンキー:03/09/23 01:56 ID:/dR7Pg7G
次はトラパス修羅場続編が来たかー相変わらずキャラが生きてて、イイ(゚∀゚)
クレイもOK!彼なら親友の為に汚れ役になるでしょう!
次のトラパスも期待してます。

そして…クレパス続き来たかー、良い所で終わってるし…
こっちも楽しみにしてます!
557名無しさん@ピンキー:03/09/23 02:38 ID:/VXq2CNf
10日ぶりに来たら、レス数が2倍以上(250→550)伸びてて驚愕。

2chを軽視するわけではないですが、トラパス作家様はこの場所だけではもったいないです。
この作品群でホームページを作られたら、何度でも見に行きます。
小説同人誌を作ったら、速攻買います。
何と言いますか、より広い舞台で活躍してほしいです。
558489:03/09/23 02:39 ID:5qX9ZDe0
>551
乙です
雰囲気悪いとかいうことはないと思います
なんつーか、クレイは不幸だなぁとは思いましたがw
パステルの鈍いくせに傲慢なところも絶妙に配合されてて
原作のキャラを完璧に掴んでると思います
やっかいなリクに答えてくれてありでした
559クレ×パス 553続き:03/09/23 03:03 ID:1246tFtz
 上着とスカートを脱いで、ショーツだけになると、ベットに仰向けに寝転んだ。
恥ずかしさと、何処かで感じてる、よくわからない期待とで、顔が熱くなる。
クレイの顔も見られなくて、目を腕で隠す。
「触るよ……」
 こくん、と頷くと、ゆっくり揉みしだく。むず痒さが広がって、少し治まって
いた体の火照りが強くなってくる。息も荒くなって、胸が、切ない。
「は、くっ………」
 クレイの手に立ち上がった乳首を指先で転がすように弄られて、声を上げて
しまう。恥ずかしくて、下唇を噛んで我慢しても、ふうふうと声がもれていく。
「ひゃあっ…………」
唇の感触を右胸に感じると、昨日と同じように舌が乳首をねぶっていく。体が
反応してピクピクと震える。昨日と違うのは、ゆっくりとしたクレイの動き。
昨日、初めて感じた感覚が、体中に広がっていく。
「ふ、うっ…………、っあう……」
うう、い、いやぁ、体が変……。あそこが、熱いよ…。
どうしていいかわからなくて、足をギュッとすり合わせる。
クチュっと音がしたような気がした。濡れてるんだ…。あ、気持ち、いい…………。
すり合わせてるだけなのに、甘い気持ちが広がっていく。
胸を揉んでいた右手が、ゆっくり体をなぞりながら下へ降りていく。
「ふぅ…………」
ショーツに手がかかる。う………、覚悟はしてたけど、やっぱり、恥ずかしい。
だって、見られる上に、濡れてるのがわかっちゃうんだよ? そんなの………。
足をとじ合わせて、ちょっと腰をひねる。
「パステル……」
クレイの指先は、太股をゆっくり撫でている。わ、わかってるけど…。
腰を、ゆっくり元に戻す。
560クレ×パス 559続き:03/09/23 03:04 ID:1246tFtz
「力抜いて」「う、うん」
足を、少し開く。でも、クレイの手はそこに触らずに、目を隠していた腕を掴んだ。
そして、ゆっくりと腕を動かす。
「あ………」
目を開けると、心配そうなクレイの顔。そっと手が頬撫でる。優しいクレイの手、
わたしと、皆を護ってくれるクレイの手。撫でられているだけなのに、それだけで
心が満たされてく。
 唇が合わさって、舌が入ってくる。口の中を舐めあって舌を絡ませあうと、
頭の中がクラクラして体の力が抜けていく。
「ん、んんっ、ふぅん」
 クレイに割れ目をショーツの上からこすり上げられて、キスしたままで声を上げた。
腰がかってに動いてしまう。気持ち、よくて。

 ショーツが割れ目から溢れ出したので、びしょびしょになってる。
「脱がすよ」
頷いたのを見て、ショーツに手をかける。わたしは腰を上げて脱がすのを手伝う。
するすると足首からショーツが抜ける。クレイの動きが止まって、じっと、足の間
を見てる。
「あ、あんまり、見ないで……」
思わす、手で隠す。
「ご、ごめん……。その、は、初めて見たから、ビックリして」
「でも昨日……」
「よく覚えてないんだ。動転してたし……」
そう、なんだ。………薄いとか、形が変だとかじゃないんだ。でも、初めてって、
もしかして、せ、せえっくすするのも?
「手をどけて、もう少し足をひらいて」
クレイの声に考えていたことを放り出して、ゆっくり足を開いていく。恥ずか
しくて、シーツを掴んだ。
561名無しさん@ピンキー:03/09/23 08:16 ID:Bb5md6DG
>>551
クレイカコイイ!
562名無しさん@ピンキー:03/09/23 10:05 ID:ehnviDvR
クレパス続き待ってました!
563トラパス作家:03/09/23 22:47 ID:geCdYF6k
皆さん本当にいつもいつも暖かい言葉ありがとうございます。
気がつけば、今日発表する作品でもう10作品目……ですね。多分。
これだけ書き続けられてきたのは、応援してくださった皆様のおかげです。
というわけで、リクエストを一時中断して、今日は完全新作です。
相変わらずトラパスですが……
ちなみに今までで1番長いです。ちょっと冗長かもしれません。
ただ、かなり気合を入れて書いてみましたので……
展開はベタなのですが、ちょっと色々と工夫してみました。
お楽しみいただけたら幸いです。
では……
564トラパス 演劇舞台編 1:03/09/23 22:48 ID:geCdYF6k
「好きだ。一目見たときから……ひかれてたんだ。頼む、俺とつきあってくれ」
 目の前に立っているのは、見慣れた赤毛の盗賊の姿。
 いつもはいたずらっこみたいに輝く茶色の瞳が、真剣にわたしを見つめていて。
「……だ、駄目、よ。わ、わ、わたし、か、彼女を裏切れない、もの」
「どうしてだ! どうして……俺達は、こんな風に出会ってしまったんだ!?」
 彼の手が、わたしの肩をつかむ。ちょっと痛いけど、その力の強さが、彼が真剣なんだと、嫌でも思い知らせてくれて……
「お、お願い、い、言わない、で。わ、わ、わたし……」
「はーいストップストップストップ!!」
 突然あたりに響き渡る明るい声。同時に、ぱっと身を離すわたしとトラップ。
「もー駄目っ! 全然駄目よパステル。第一、ここは目をそらして言う場面じゃないでしょ?」
 腰に手を当てて言うのはマリーナ。トラップとクレイの幼馴染で、すっごくスタイルがいい美人で、おまけに性格もいいんだ。
 ううっ、神様って不公平だよね……
 マリーナの横にはクレイも立っているんだけど、いつもなら優しくフォローしてくれるはずの彼も、苦笑をはりつかせて黙っていた。どうやら、それくらいわたしの演技は酷かったらしい。
 そう、実はわたし達、お芝居の練習をしているんだ。
 主役は、わたし、トラップ、マリーナ、クレイの四人。
 他に、マリーナの知り合いだという人たちが脇役で少々。本当は練習はもうちょっと先なんだけど、演技経験の無いわたし達は、少し先に練習を始めることにしたの。
 そして、わたしが一人怒られまくってるんだけどね……ははっ……
 そもそも、どうしてわたし達がお芝居に出ることになったのかというと……
 
565トラパス 演劇舞台編 2:03/09/23 22:49 ID:geCdYF6k
「郵便でーす」
 シルバーリーブのみすず旅館にその手紙が届いたのは、夏も終わって涼しくなるなーっていうある日の午後。
 手紙を受け取ったのはわたしだったんだけど、差出人の名前がマリーナだったので、すぐにクレイとトラップに知らせたんだ。
 だって、マリーナは二人の幼馴染だもんね。用があるとしたら、二人のうちどちらかでしょう。
「え、マリーナから手紙?」
「へー久しぶりだなあ」
 二人は顔をつきあわせて手紙を読んでたんだけど……やがて、何とも言えない表情で顔を見合わせて、そしてわたしの方を同時に振り返った。
 え、何だろう?
「パステル、おめえも読め」
 わたしが?マークを浮かべていると、トラップがぽいっと手紙を投げてきた。
 もーっ、せっかくマリーナが出してくれたのに、乱暴だなあ。
 慌てて手紙を受けとって、その中に目を通してみると……
 
 ――ひさしぶり! パーティーのみんなは元気?
 実は、折り入ってお願いがあるんだ。これはわたしからの正式な依頼だと思って。
 今すぐエベリンのわたしのお店まで来てほしいの。
 クレイとトラップとパステルの三人に。
 もちろん、他のみんなも来てくれて構わないんだけど、あなた達三人にはどうしても来て欲しいの。
 突然のお願いごめんね! そのかわり、ちゃんと依頼料は支払うつもりよ。
 いい返事を期待してるわね!
                  マリーナ
                  
566トラパス 演劇舞台編 3:03/09/23 22:49 ID:geCdYF6k
 ???
 え、何だろ? マリーナ、どうしたんだろう?
 依頼……それも、わたしとトラップとクレイの三人に?
 もう一度手紙の中身をよく読んでみたんだけど、やっぱり書いてあるのはそれだけだった。どこにも依頼の内容はなし。
 うーっ、マリーナらしくないなあ。どうしたんだろう?
「クレイ、どうする?」
 パーティーのリーダーであるクレイの方をうかがうと、クレイはちょっとだけ考えてたけど
「まあ、他ならぬマリーナの頼みだし。別に俺達、今急ぎの用があるわけでもないし。いいんじゃないか?」
 だよね。クレイならそう言うと思った。わたしも別に不満は無いし。
「そうそう。第一、依頼だぜ依頼。依頼料だって払うっつってんだから、行くしかねえだろ」
 あんたはマリーナに会いたいだけでしょ!
 思わず言いそうになったけど、慌てて口をつぐんだ。危ない危ない。
 トラップって、多分マリーナのことが好きなんだよね。その気持ちはすごくよくわかるけど……マリーナは、多分、クレイのことが好きなんだろうなあ……
 ううっ、トラップかわいそう。応援してあげたいけど、こればっかりはねえ。
「駄目よ、マリーナからお金なんて受け取れない。どんな依頼かわからないけど、もちろんタダで受けるのよ、タダで! ねえ、クレイ」
「そうそう。俺達、マリーナには散々世話になったんだからな」
 わたしとクレイが言うと、トラップは「ちぇっ」とか言って顔を背けてたけど。
 最初からお金なんか受け取る気、なかったくせに。そらした顔がすんごく嬉しそうなの、わたしはちゃんと見てたんだから。
 そんなわけで、わたし達三人は、エベリンへと向かうことにした。
 ルーミィ、キットン、ノル、シロちゃんはシルバーリーブでお留守番。何しろわたし達パーティーは万年金欠ですから。その……乗合馬車に乗るお金の都合が、ね。
 そうして、それから3日後。わたし達はひさしぶりにマリーナに会ったんだけど……
567トラパス 演劇舞台編 4:03/09/23 22:50 ID:geCdYF6k
「しっ、芝居ぃ!?」
「そう。わたしと、あなた達三人と、後はわたしの知り合いが何人かで」
 マリーナの言葉に、わたしはぽかんとしてしまった。
 だって、脇役ならともかく、マリーナってばわたし達に主役で芝居に出てくれないかって言うのよ!?
 む、無理無理! わたし、お芝居なんてやったことないもの!
「あー、それって、あれか。毎年ドーマでやってる」
「そうそう、それ。今年はわたし達がやることになったんだけど、主役をやる予定だった人たちに、急に別の仕事が入っちゃって」
 ドーマ? 何のことだろ?
 クレイの方を見ると、彼は親切に、
「ああ、ドーマの街では、毎年一回大きなお祭りをやるんだけど、そのメインの一つで、各家が持ち回りで代表となって芝居をやることになってるんだ。多分、今年はトラップの家が代表になったんじゃないかな?
 それで、マリーナに依頼がまわったんだと思う。ほら、マリーナは……」
 と説明してくれた。
 なるほど、よく考えたらマリーナって、職業は詐欺師だもんね。お芝居は確かにうまそう。
「急なお願いだっていうのはよくわかってるんだけど、お祭りまではまだ一ヶ月もあるし。多分あなた達なら何とかなるの。お願い! 協力してくれない?」
 ううっ、マリーナってば手まで合わせてくれちゃって。
 そんな風にされたら、もう断れないじゃない。
「わかった、マリーナ。俺達でよかったら、協力するよ」
 ほら、やっぱり。
 クレイが優しい笑顔で頷くと、トラップも「ま、しゃーねえな」なんて言ってるし。
 これじゃあ、「無理です」なんて言えないじゃない。
「パステル、ごめんね。お願いできる?」
 そう言ってじっとわたしを見つめてくるマリーナに、
「ま、まかせて!」
 なーんてドン、と胸を叩いてしまった。ううっ、こうなったらやるしかないよね!
568トラパス 演劇舞台編 5:03/09/23 22:51 ID:geCdYF6k
 で、冒頭に繋がるわけなんだけど……
 その芝居の内容がねえ。聞いたとき、わたしは改めて後悔してしまった。
 
 わたし(パトリシア)とマリーナ(マリイ)は親友同士。
 お互い、素敵な恋人を見つけた、と紹介しあうことに。
 そこで、わたし達とわたしの恋人、クレス(クレイ)とマリーナの恋人、ステフ(トラップ)は初めて顔を合わせるんだけど。
 一目見たときから、わたしはトラップに激しく恋をしてしまう。
 そして、トラップもわたしを愛してくれるんだけど、お互い、マリーナとクレイのことが気になって、どうしても本当の気持ちが伝えられない。
 そして、色々誤解とすれ違いを繰り返し、一度は完全に別れることになったんだけど……それでも、お互いを諦めきれない。
 そんな中、運命のいたずらで二人は再び出会ってしまい、もう離れられないことを確信して……
 そして、マリーナとクレイに別れを告げ、二人の前から去ろうとする。
 ところが、そこで初めて知らされた事実。実は、マリーナとクレイも、お互い深く惹かれあっていたと。
 これはきっと運命だったんだ、と、わたし達はお互いが幸せになることを誓いあって――エンド。
 
 はいっはいっはいっ! 無理ですっ!!
 こ、こんなこってこてのラブストーリー、わたしには無理っ!
 だだだだって、あのトラップにだよ? 「お前を愛しているんだ」なんて真顔で言われたら、わたし、吹き出さずにはいられないもん!
569トラパス 演劇舞台編 6:03/09/23 22:52 ID:geCdYF6k
 第一、どうしてわたしとトラップなのよう。役を入れ替えた方がいいんじゃない?
 そうわたしは提案してみたんだけど。
「ごめんね。わたしは最初から『マリイ』役だったから、もう台詞も動きも全部そのつもりで覚えちゃったんだ。今から『パトリシア』を覚えなおすのは辛いから……」
 なーんて言われちゃったら、どうしてもお願い! とは、言えないよね……
 そうなると、これって結局は、「マリイ」と「クレス」が恋人同士になるんだから、マリーナの相手役(というか、わたしの最初の恋人役?)は、クレイの方がいいよねえ……
 はあ。しょうがないなあ。
 で、早速練習してみたんだけど。
 やっぱり無理だった、というわけです、はい。
 ううーっ、どうしてみんなそんなに役になりきれるの?
「おめえなあっ! この際色気も雰囲気も何もねえのはしょうがねえとして、せめて台詞くらいまともに言えねえのよかよ!?」
 すっごくイライラしたように続けたのはトラップ。
 むっ、た、確かにわたしが悪いんだけど、一言二言余計だよ、トラップ……
 そうなんだよねえ。わたし以外の三人、マリーナはわかってたけど、クレイもトラップも、すっごく自然なんだ。
 トラップなんか、普段と全然違う口調の役なのに、全く違和感が無いもんね。熱い視線で見つめられると、ちょっとドキッとするくらいかっこいい。
 だから、余計にわたしが浮いちゃうんだよねえ……
「トラップ、そんな言い方は無いだろう? 大丈夫だよパステル。最初からうまくやれる人なんていないよ」
「そうよ。そのために練習するんだから!」
 ううっ、クレイもマリーナもありがとうね。
 よ、よしっ。引き受けたからには、がんばるしかないよね!
 トラップは「けっ、甘ぇなあ」とか言ってたけど、気にしないもん。
 というわけで、わたし達は、しばらくエベリンのマリーナの家で寝泊りしながら練習することになったんだけど……
570トラパス 演劇舞台編 7:03/09/23 22:52 ID:geCdYF6k
「っだあああああああああああ!! おめえいいかげんにしろよな!!」
 バンッ、と壁を叩いて怒鳴ったのはトラップ。
 本番まで後二週間、というところに来て。わたし達も何とか台詞と動きを覚えて、本格的な通し練習に入った頃だった。
 でも、相変わらずねえ、その……わたしの演技の方が、いまいち上達しなくて。
 だって、そもそもトラップと目を合わせることができないんだもん! あんな真剣なトラップの視線を受けたのは初めてだったから、どうしても照れちゃって。
「確かにねえ……パステル。もう二週間も経つんだから、いいかげん慣れてもいいと思うんだけど」
 そう言うのは、クレイと練習していたマリーナ。
 そうそう、さっきの説明では、わたしとトラップサイドがメインみたいな書き方だったけど、実は芝居そのものは、わたしとトラップ、クレイとマリーナのサイドを交互に織り交ぜてやるのよ。
 そうやって、お客さん側の方から見るとお互いの事情がよくわかるから、ハラハラ感が増すような仕組みになってるんだ。
 つまりは、どっちの組もそれなりに出番も台詞も多いから、一度台詞を覚えてしまったら、改めてもう一度覚えなおすのは辛い、ってことなんだけど。
 それで、しばらくはわたしとトラップ、マリーナとクレイに別れて練習してたんだよね。
 もっとも、マリーナとクレイは、息もぴったりでもう練習の必要なんかないんじゃない? ってくらいなんだけど。
「ほれ、もう一度行くぞ。目えそらすな、顔動かすな、後笑うな!」
「う、うん……」
 トラップの指導のもと、わたしは言われたとおり、トラップの目をじっと見て……
「にらみつけてどーすんだ!! それが好きな男に向ける視線かよ!?」
 ううっ、難しいよう……
 そんなわけで、練習はちっとも進まないのだった。
 
571トラパス 演劇舞台編 8:03/09/23 22:54 ID:geCdYF6k
「こうなったら、荒療治で行くことにするわ」
 本番まで後一週間というところ。そこで、マリーナは重々しく言った。
 荒療治って、やっぱりわたし……だよね?
 ううっ、何するんだろう。
「大体ね、パステル。あなた、自分が思っているほど筋は悪くないわよ? わたしやクレイとのシーンは、それなりにうまくできてるじゃない」
 マリーナの言葉に、クレイもうんうんと頷いている。
 そうなんだよね。トラップだけじゃなくて、マリーナとの会話とか、クレイとの会話とか(最初は恋人同士の設定だもんね)、四人での会話とか。
 そのあたりのシーンは、割と自然にできるんだよね。じゃあ、どうしてトラップと二人のシーンだけ駄目なんだろう?
 ……普段と違和感がありすぎるからだよね。そうに違いない、うん。
「だからね、トラップと二人のシーンがうまくいかないのは、恋人同士の雰囲気、っていうのをよくわかってないからだと思うわ。
 クレイとのシーンがうまく行くのは、どうせその後で破局するから、ってわかってるからじゃないかしら」
 うーん、言われてみれば、そうかも。
 わたしがうんうんと頷くと、マリーナとクレイは顔を見合わせて……
 ……何なのよう、その「駄目だこりゃ」って言いたげな顔は。うーっ、二人とも何考えてるの?
「だからね、パステル、それとトラップ」
「……あんだ? 俺もか!?」
 それまで、ふてくされて(わたしに付き合わされてずーっと練習だもんね)寝転がってたトラップが、マリーナの言葉を聞いてとびおきた。
 でも、そうだよね。トラップはもう練習の必要なんか無いじゃない。すごく自然だし、うまいし、それに悔しいけどかっこいいし。
「うん。荒療治。パステル、明日一日練習はお休みして、トラップとデートしてきて」
「…………」
「…………」
 な、何ですって――!?
「おいおい、冗談はやめてくれよなあ。何で俺がこんな出るとこひっこんでひっこむところが出てる女とデートしなきゃなんねえんだよ」
 真っ先に文句を言ったのはトラップ。
 きいいいいい!! そんな言い方はないでしょー!?
 た、確かにわたしはマリーナと違ってあんまり胸は大きくないけど……
572トラパス 演劇舞台編 9:03/09/23 22:55 ID:geCdYF6k
「わ、わたしだって嫌! なんでトラップなんかとデートしなくちゃなんないのよ!!」
「おめえなあ! トラップ『なんか』ってどーいう意味だ!!」
 わたしとトラップがにらみあうと、マリーナがばんっ、と机を叩いた。
 うっ、すごい迫力……
「こうなったら、パステルには役になりきることを覚えてもらうわ。いい!? 明日一日、あなたとトラップは恋人同士よ。デートして恋人同士っていうのがどういう雰囲気かを身体で覚えてきてちょうだい!」
「ま、マリーナ、でも……」
「これは、依頼主からの命令よ」
 そう言ってにっこり微笑まれると……断れないよね。
 そして、わたしとトラップは、明日一日恋人同士になることになったのだった……
 
「うん、可愛い。似合うわよ、パステル」
「そ、そうかな」
 翌朝。わたしはマリーナの見立てで、デートにふさわしい服装、というのをコーディネートしてもらっていた。
 どうせ、そろそろ衣装とかも考えなきゃいけなかったしね。今日の服装が、そのまま本番のわたしとトラップの衣装になる予定なんだ。
 さすが、マリーナは貸し衣装屋さんをやっているだけあって、たくさんの服を持っていた。
 その中から選んでくれたのは、黄色のワンピース。
 スカートは膝丈くらいで、前ボタン式のノースリーブ。
 丈の長いブラウスみたいな形なんだけど、ウエストのあたりできゅっとしぼってあって、身体にぴったりフィットする形。
 その上から白いレースで編んだカーディガンを羽織るんだけど、うーん。普段こんな服着たことないから、似合うのかどうかよくわからないなあ……
 いつもは後ろでまとめてる髪はおろして、頭にワンピースと同じ色のリボンを結んでもらって、足元は白いローヒールのパンプス。
 ちょっぴりお化粧もしてもらって、完成。
「うんうん、やっぱりわたしの目に狂いはないわね。ぱっちりよ」
「そ、そうかなあ……」
 ううーっ、不安……
「おーい、そっちもういい?」
 そのとき、隣の部屋から聞こえたのはクレイの声。
 あっちはあっちで、トラップの衣装合わせしてるんだよね。
 ほら、彼は普段の服装が、ちょっと……あれな人だから。
 本人にまかせたらどんな服着てくるかわからないから、クレイにまかせたんだけど。
573トラパス 演劇舞台編 10:03/09/23 22:56 ID:geCdYF6k
「ええ、いいわよ。ばっちり。そっちは?」
「俺のセンスでまとめさせてもらったけど……どうかな?」
 そう言って、ドアが開いた。
 クレイに押し出されるようにしてこっちに来たトラップは……
 思わず、ぽかんとしてしまう。
 え? 誰、この人? って本気で考えてしまった。
 いつもの赤毛をまとめた髪の上には、黒いキャップがつばが後ろを向くように被せられていて。
 さすがに男の子だから化粧はしてなくて、顔は普段のままなんだけど、その服装が……
 黒の革靴とスリムパンツ、ウエストから裾を出した赤いシャツの上から、深緑色の長めのジャケットを羽織り、とどめに首からシルバーのシンプルなネックレスをさげたその姿は。
 ちょっと……いや、かなりかっこよかった。いつもの緑のタイツより、よっぽどよく似合ってるって!
「うーん、トラップの赤毛には、黒い帽子ってよく合うわね」
「どうかな。無難な服を選んだつもりなんだけど」
「舞台の上で着るなら、もうちょっと明るい色の方がいいかもしれないけど……」
 ぽかんとしてるわたしそっちのけで、マリーナとクレイが何か言い合ってるんだけど。
 話題の当人、トラップは、何だかすごく不機嫌そうだった。どうせ、自分が選んだ服はことごとく駄目だしされたんだろうなあ。
「まあ、いいわ。よく似合ってるし、トラップのセンスにまかせるよりよっぽどいいもの。じゃあ、本番もこれでいきましょう」
「っあのなあっ……悪かったな、センスがなくて!」
 マリーナの言葉に、ばっとトラップが顔を上げた。そして、初めてわたしの方に目をやって……
 何なのよ、その顔は。どうせ似合わないって言いたいんでしょ、ふん!
 トラップは、目を丸くしてまじまじとわたしを見つめてたんだけど、わたしがにらむと慌てて目をそらした。
 うーっ、どうせわたしはマリーナみたいに美人じゃないしスタイルもよくないわよ。悪かったわね。
「よし、じゃあ、二人には早速デートしてきてもらいましょうか」
 え、いきなり!? ま、まだ心の準備があ……
「デートったってなあ……どこに行けばいいんだよ」
「そんなの二人にまかせるわよ。ほら、行って行って」
 マリーナとクレイの二人にぐいぐいと押し出される。
 ちょっとちょっとお……
574トラパス 演劇舞台編 11:03/09/23 22:57 ID:geCdYF6k
「あ、それと!」
「んだよ、まだ何かあんのかあ?」
 トラップがすっかり諦めきった顔で振り向くと、マリーナがにっこり笑って言った。
「恋人同士なんだから、ただ歩いてちゃ駄目よ!! ほら、二人、腕組んで!」
 げげげげげっ、そこまでするのっ!?
 わたしは思いっきりうろたえてしまったんだけど、トラップは「けっ、どーにでもしてくれ」とでも言いたげな顔で、ぐいっとわたしの腕に自分の腕をからめた。
 そうすると、嫌でもわたしはトラップに密着することになるわけで……
 うっ、何だかすごくドキドキするんだけど……何でだろう。
「ほらよ。これでいいか?」
「うんうん、ばっちり! じゃ、楽しんできてね!」
 マリーナの楽しそうな声に押されて、わたし達は外に出た。
 マリーナ……実は面白がってないでしょうね……?
 
 エベリンの街は、何度も来たことがあるはずなんだけど。
 こんな風に歩くのは初めてで……ううっ、何だか緊張するなあ。
 ちらっとトラップを見上げると、彼は彼で、何だかすごく不機嫌そう。
 そうだよね。トラップはマリーナが好きなんだもんね……ごめんね、相手がわたしで。
 そうして、しばらく二人で歩いてたんだけど。
 いつもはうるさいくらいよくしゃべるトラップが、何だかすっごく無口で。
 ううーっ、会話が無いっ……やりにくいなあ……
「あ、あのさあ、トラップ」
「……あんだよ」
 トラップは、目をそらしたまま言ってきた。
 もーっ、恋人同士って設定じゃないの!?
575トラパス 演劇舞台編 12:03/09/23 22:58 ID:geCdYF6k
「もう、ちょっとはこっち見てよ。確かに、わたしのせいで悪かったとは思うけど……」
「けっ。わかってんならちっとは反省しろ」
 むっ。失礼な。反省はしてるわよっ……確かに上達はしなかったけど。
「だからっ……マリーナに悪いもの、ちゃんとやらないと。もうすぐ本番なのに、練習一日つぶすようなことになっちゃって。だから、わたし、ちゃんと恋人同士の雰囲気つかみたいから、それらしくしてよ」
 もっとも、どうやればそれらしくなるのかが、ちょっとよくわからないんだけど。
 わたしがそう言うと、トラップは何だか真っ赤になってた。……どうしたんだろ?
「お、おめえなあ、意味わかって言ってんのか?」
「? 意味って?」
「いや……わかってるわけねえよな。俺が悪かった……ほれ、行こうぜ。っつーかこのまま歩いててもしょうがねえから飯でも食おう」
 あ、言われてみれば、ちょっとお腹が空いたかも。お昼ごはん、まだだしね。
 トラップの言うことはよくわからないけど……ま、そのうちわかるでしょう。
 
 トラップが連れていってくれたのは、ちょっと静かな雰囲気のお店。
 お料理はすっごく美味しかったけど、わたしはもっとにぎやかに食べる店の方が好きかなあ。
 食べながらそう言うと、トラップははーっ、とためいきをついて、「ま、おめえはそうだろうな」って言った。「おめえは」って何よ。トラップは違うの?
 しかも、しかも! そのお店の代金、トラップが全部払ってくれたのよ!? あの人一倍お金にうるさいトラップが!
 信じられない……
 わたしがそうつぶやくと、トラップににらまれてしまった。
「恋人同士って設定なんだろうが!! 普通こういうときは、男が払うもんなんだよ!!」
 ……そうなの? へーっ。
 正直にそう言うと、トラップはがっくり肩を落としていた。「鈍い奴」とつぶやいてる声が……しっかり聞こえてるわよ。悪かったわね!
 とりあえず、食事が終わったらどこに行こうか……って話は結局まとまらなかったので、そのままぶらぶら散歩に出ることにした。相変わらず腕は組んだまま。
576トラパス 演劇舞台編 13:03/09/23 23:00 ID:geCdYF6k
 そうやって歩いてると、トラップって、細く見えるけど意外と腕とかたくましいなあ、とか。そんなことが意識されちゃって。やっぱり、こうして見るとかっこいいよね、とか思えてきちゃって。
 ううっ、何だろうこの気持ち? これが恋人同士の気持ち……って奴なのかな?
 ただ歩いてるだけなんだけど、エベリンの街はにぎやかで、それだけでも十分楽しかった。
 あっちこっちで露店が開かれたりしてるしね。普通のお店より安くて、しかも結構いい品物が置いてあるんだ。
「はーいお二人さん! よっていかない!!」
 わたし達に声をかけてきたのは、そんなお店の一つ。
 店を出していたのは、わたしとあんまり年のかわらない女の子で、にこにこしながら手招きしてる。
 売ってるのは、どうやら小さなアクセサリーみたい。
「ねえねえトラップ。ちょっと見ていってもいい?」
「ああ? ……ま、いいんじゃねえ?」
 もー、そんなあからさまに退屈そうな顔しなくたっていいじゃない。そりゃ、トラップにとっては興味ないだろうけどさ。
 そんなトラップをひきずるようにして露店をのぞきこんでみたんだけど。
 わーっ、すごいっ! 綺麗……
 本物の宝石ってわけじゃないと思うけどね。赤とか青とかキラキラ輝く石がふんだんに使われたネックレスとか、それよりもっと小さな石でシンプルにまとめられたイヤリングとか。
 わーっ、これ可愛いなあ……
 シルバーの細い金属が複雑に編まれて、中央にすっごく小さな白い石が花みたいな形にデザインしてある指輪。すごくシンプルなんだけど、細工はすごく凝ってるんだ。
 すごーい……もしかしてこれ、この女の子の手作り?
「安くしておくわよ。そちらの彼氏に買ってもらったら?」
 にこにこしながら言われた言葉。
 思わず、ボンッと真っ赤になってしまう。
 かっ、かっ、彼氏って……
 や、そりゃ、その、今はそういう設定で歩いてるんだから、そう見えるのはしょうがないんだけど……
 わたしが一人で慌てふためいてると、トラップの細い指が、ひょいっとその指輪を取り上げた。
 まじまじと見つめて、女の子に目をやる。
577トラパス 演劇舞台編 14:03/09/23 23:00 ID:geCdYF6k
「これ、おめえが作ったのか?」
「そうよ。全部わたしの手作り。いい品物でしょう?」
「ああ。いくらだ?」
「そうねえ……」
 女の子が告げた値段は……まあ、高すぎることはないけど、安いことはないっていう値段だった。わたし達のお財布では、ちょっと厳しいかな? っていうくらい。
 まあ、しょうがないよね。こんなに綺麗な指輪だもん。そう思って諦めかけたんだけど、
「んじゃ、もらうわ。ほれ」
「まいどっ!」
 トラップは、何のためらいもなく財布を出して、女の子にお金を渡していた。
 えっ!? いっ、いいの、トラップっ!?
 わたしがぽかんとしてるうちに、お店には他のお客さんがやってきて、トラップにひきずられるようにしてそこを離れることになった。
 うーっ、何だか申し訳ないなあ……
「ほらよっ、欲しかったんだろ?」
「そ、そりゃそうだけど、悪いよ。お金、後で払うから」
「おめえなあ……」
 わたしが言うと、トラップは呆れたようにわたしの左手をつかんで、薬指に指輪をはめた。
 わ、ぴったり。うーっ、こうして見るとやっぱり可愛いなあ。
「いいんだよ、遠慮すんなって。どうせ後でマリーナから必要経費もらうことになってんだから」
 ……余計にもらうわけにはいかないじゃない!
「わたし、返してくる」
「ば、バカッ。今更んな真似ができるかっつーの。ほれ、とっとと行くぞ!!」
 露店に戻ろうとしたわたしは、トラップにあっさりとひきずられてしまった。
 ううーっ、ごめんねマリーナ!! 指輪のお金は、絶対絶対後で返すからね!!
578トラパス 演劇舞台編 15:03/09/23 23:01 ID:geCdYF6k
 そのまましばらく歩いて、わたし達は公園のベンチに座っていた。
 そろそろ日が暮れそうな時間。ずっと歩いてて疲れちゃったしね。それに……
 何だか、ずっと腕組んで歩いてると、その、ドキドキ感とかが強くなっちゃって……
 もう、何なのかなあ。
 並んで座ってるトラップを見上げると、彼は相変わらず不機嫌そうだった。
 ……やっぱり、不満なのかなあ。いっぱい迷惑かけどおしだったしね。
 そもそも、わたしがちゃんと演技できれば、こんなことしなくてもすんだんだよね。
 よし、ちゃんと謝ろう!
「ごめんね、トラップ」
「あ? 何だよ急に」
 振り向いたトラップの顔は、夕陽に照らされていて……正直言って、かっこいい。
 いっつもクレイばっかり目立ってるけど、トラップだってねえ。黙ってそれなりの格好してれば、かなりかっこいいんだけどなあ。
「ごめんね、迷惑ばっかりかけて。ちゃんと本番がんばるから」
「けっ、どーだか。おめえは鈍いからなあ」
 むっ、何よその言い方。第一、鈍い鈍いって……さっきから何が言いたいのよ。
「何よ、謝ってるのに。そりゃ、巻き込んじゃって悪かったとは思うけど」
 言いながら、段々悲しくなってきた。
 トラップ、そんなに嫌だった? わたしとデートするの。
 わたしは、それなりに……楽しかったんだけどな。
「悪かったわよ。トラップがそんなに嫌だったなんて。ごめんね、マリーナじゃなくて!」
 そう思ったら、思わず言ってしまっていた。
 絶対言っちゃいけなかった言葉を。
 トラップの顔が、強張った。
579トラパス 演劇舞台編 16:03/09/23 23:01 ID:geCdYF6k
「あに言ってんだ、おめえ……」
「だってっ……トラップの好きな人って、マリーナなんでしょ?」
 わーん、わたしのバカバカっ! 何言ってるのよっ。
 ううっ、トラップの顔が怖い……絶対怒ってる。
 そうだよね、わたしが気づくくらいだから、トラップがマリーナの気持ちに気づかないわけないもん。きっと、ずっと隠してたんだよね。
 それなのに、わたしったら……
「デートの相手がマリーナだったら、トラップは嬉しかったんでしょう? ごめんね、わたしで。そんなに嫌だったのなら、言ってくれれば……わたし、無理言ってでもマリーナと役を変わってもらったのに」
 だけど言葉が止まらなかった。気がついたら、心の中で思ってたこと、ぜーんぶ吐き出しちゃって……
 トラップのすごく怖い顔。わたしのことを、じーっと見つめて……
 ベンチの背を握り締めている手が、白くなっていた。怒りをこらえてるみたいな、そんな顔。
「っ……おめえは、本当に……」
「え?」
「……ああ、そうだな。マリーナが相手だったら、俺もこんな苦労しなくてすんだよ。おめえが相手だったせいでっ……」
「っ……」
 やっぱり……そうなんだ。
 あれ……? 何でだろう。わかってたはずなのに……何で、涙が……
「ごめんね……わたし、先に帰る」
「あ?」
「もう、デートは終わり……だよね。恋人同士って設定も終わりだよね。わたし、先に帰るから」
「お、おいパステル!」
 腕をつかもうとしたトラップの手を、乱暴に振り払う。
 後ろで「おわっ」とかいう声とガターンって音がしたけど、わたしは振り返らずに走りだした。
 わたし……何か変だよね。どうしたんだろう……
580トラパス 演劇舞台編 17:03/09/23 23:02 ID:geCdYF6k
 トラップと別れて、そのまま走りだしたわたしなんだけど。
 ははっ……何でこんなときでも道に迷ってるのかなあ、わたし……
 無我夢中で走り出したら、いつのまにか見覚えのないところまで出てしまっていて。
 うーっ、一体ここはどこらへんなんだろ? マリーナの店に帰るには、どうしたらいいんだろ?
 とぼとぼと道を歩いているうちに、気がついたら人通りが少ない裏通りまで出てしまっていた。
 あたりは段々暗くなってくるし。何だか怖い。
 ……絶対ここは違うよね。戻らなくちゃ。
 そう思って、今来た道を振り返ると、そこに見知らぬ男の人が二人立っていた。
 まあまあかっこいいんだけど、何だかすごく軽そうな印象の人達。……誰だろ?
 無視して通り過ぎようとしたんだけど、わたしが行こうとすると、さっと道を塞がれてしまった。
 ううーっ、もう、何なのよ!
「あの、通してもらえませんか?」
「ん〜? 俺達は別に何もしてないぜ」
「そうそう、あんたが勝手に俺達のいるところへ来るんだよなあ」
 ……何それ。
 いつもの冒険者然とした姿なら、ちょっとはひいてくれるんだろうけどなあ。残念ながら、今のわたしは普通の女の子にしか見えないもんね。もしかして、バカにされてる?
 よーし、それなら!
 わたしは二人の間を無理やり割って入ろうとしたんだけど、通り過ぎた! と思った途端、両腕をそれぞれにつかまれてしまった。
 な、な、何……? 何だか、怖い。
「あの、離してください」
「なーお嬢ちゃん。人にぶつかっといて謝りもなしかよ」
「そうそう。痛かったぜえ、今のは」
 そ、そんなあ。何でわたしが謝らなきゃいけないの!?
581トラパス 演劇舞台編 18:03/09/23 23:03 ID:geCdYF6k
「だ、だって、今のは……」
「何、謝らないって?」
「じゃあ、身体で謝ってもらうしかないよなあ……」
 かかか身体でっ!? な、何言ってるのよこの人たち……
 逃げなきゃ、とわかってるけど、足がすくんで動かなかった。その間に、一人がなれなれしく肩を抱いてきて……
「結構いけてるじゃねえか」
「ああ、上玉だな。早速……」
「早速……あにする気だ?」
 ぐいっ
 瞬間、後ろから首にまわされる腕。
 そのとき聞こえたのは、とても聞き慣れた声。
 聞き慣れてて、すごく懐かしい声。
 まさか……こんな、すごいタイミングで現れるわけが……
「何だ、てめえ? 邪魔すんなよ」
「いやあ、別におめえらの邪魔をするつもりはなかったんだけどよ」
「トラップ……」
 振り向いたとき目に入ったのは、やっぱり、あの……見慣れた赤毛の盗賊の姿だった。
 うっ、何だかほっとして涙が出てきそう。
「けど、こいつは俺の女なんだけど、何か用か?」
 ……俺の女? どういう意味、それ?
 ぱっと顔を見上げて、そしてびっくりした。
 そう言ったトラップの顔は、いつもと同じような軽い笑みを浮かべてたんだけど。
 でも、その目が、見たこともないくらい怖くて……
 二人組も、それがわかったのかな? しばらくトラップとにらみあってたんだけど、そのうち「けっ」とか「覚えてろ」とか言いながら走り去っていった。
582トラパス 演劇舞台編 19:03/09/23 23:05 ID:geCdYF6k
 こ、こ、怖かったあ……
 思わず地面にへたりこんでしまう。服が汚れるけど、構ってられなかった。後でマリーナに謝ればいいや。
 と、そのときだった。
 後ろから、頭を思いっきりはたかれる。
 もーっ、何なのよ、痛いなあ。
 文句を言おうとして振り向くと、そこには、すんごく怖い顔したトラップ。
 ……やっぱり、怒ってる……よね……
「おめえはっ……散々心配かけやがって……何でこんなとこふらふらしてんだよ!!」
「ふ、ふらふらって……」
 べ、別にふらふらしようとしたわけじゃないもん。つい、その……迷っちゃっただけで……
「もうおめえはぜってー一人で出歩くな!! 捜す方の身にもなりやがれ!!」
「さ、捜してなんて言ってないじゃない!!」
 何よー、そんなに言わなくたっていいじゃない!! そりゃ、助けてくれたのは、感謝してるけどっ……
 ……って、あれ? 何? トラップ……何で……
 わたしを……抱きしめてるの……?
「……本当に……心配したぜ。今回ばっかりは……」
「トラップ……?」
 トラップの、暖かい腕に抱きしめられて……わたしは。
 何故だか、わんわん泣いてしまった。怖かったのでもなく、安心したのでもなく、嬉しくて。
 わたし……わたし、もしかしたら。
 もしかしたら……トラップのことが……
583トラパス 演劇舞台編 20:03/09/23 23:05 ID:geCdYF6k
 わたし達が我に返ったのは、頬にぽつりと冷たい雫が当たったときだった。
 それまで、わたしはずっとトラップにしがみついて泣いてたんだけど……
 最初はぽつぽつだった雫が、段々多くなってきて……
 って雨!? 嘘、さっきまではあんなによく晴れてたのに!!
「あー、くそっ、夕立か」
 トラップが、ぱっとわたしを離して恨めしげに空を見上げた。
 そうしている間にも、雨の勢いはどんどん増してくる。
「しゃあねえな。おい、走るぞ」
「え? う、うん」
 トラップに腕を引かれて走り出す。
 ……ちょっとだけ、残念だったかな。もうちょっと……
 トラップはわたしよりずっと足が速いから、わたしは走るというよりひきずられるに近かったんだけど。
 どうやら、彼の足でも、雨にはかなわなかったみたい。
 雨はついに本降りになってしまって、わたし達は仕方なく、せっかく抜けた裏通りからまた別の裏通りにとびこんで雨宿りすることにした。
 どうやら、わたしはマリーナの家と正反対の方向に向かってたみたいで、マリーナの家までは走ってもまだ大分かかるらしいんだよね。
 ははは、結局わたしのせいなんだ……
 その裏通りは住宅街に近いんだけど、そこに並ぶ家は、ほとんど空き家なんだって。
「どっかの金持ちが道楽で家を建てたんだけどよ、建て終わった途端に詐欺にひっかかって没落したんだと。んでせっかく建てた家をつぶすのももったいねえからって売りに出したんだけど、高すぎてまだほとんど買い手がつかないんだとさ」
 とは、トラップの説明。そんなわけで、わたし達は空き家の一つにお邪魔することにしたんだ。
 もちろん鍵はかかってたけどね。そこは盗賊のトラップ。いつもの七つ道具は持ってなかったんだけど、わたしが頭につけていたヘアピンを一本貸すと、それであっという間に開けてしまった。
 ううっ、持ち主の人ごめんなさい。少しお借りします。
 心の中で頭を下げて家の中に入る。中は、やっぱり空き家らしく、家具もなくガランとしていた。
 わたしもトラップも雨でびしょぬれだったからね。せめてタオルの一枚でもないかな、って探し回ったんだけど、結局何も見つからなかった。
 まあ、しょうがないか。雨がやむまでの我慢だし。
584トラパス 演劇舞台編 21:03/09/23 23:06 ID:geCdYF6k
 わたしはカーディガンを脱いでばんばんとはたいて水気をとばすと、床に広げた。トラップのジャケットも同じく。少しでも乾かさないとね。
 そうして二人で床に座り込んでたんだけど。雨はいっこうにやみそうになかった。
 窓の外からはざあざあっていう音が絶え間なく響いてる。
「はあ……トラップ、どうしよう。マリーナ達、心配してるかなあ」
 わたしが話しかけると、トラップは何故か目をそらしていた。
 ……どうしたんだろう?
「ねえ、トラップ」
「う、うっせえな。パステル、おめえあんま俺に近づくな」
 ……何、それ。
 さっきは助けてくれたのに……どうしてそんなこと言うの?
「どうしたのよ、トラップ。そりゃあ、わたしトラップに迷惑ばっかりかけたけど……」
「ち、ちげーよ。んなことじゃなくてなあ」
 わたしがぐいっと身体を寄せると、トラップは真っ赤になってうつむいた。
 ……トラップ?
「お、おめえなあ。自分の格好、よく見てみろよ」
「え?」
 格好? わたしの格好って……
 はっ!
 そういえば、わたし、雨でびしょぬれで……
 カーディガンを脱いでるから、わたしは今、ノースリーブのワンピース一枚で。それも、もともとぴたっとしたデザインだったのが、濡れてさらに身体にはりついて、ちょ、ちょっと下着が透けて……
 きゃああああああああああ!!?
「や、やだっ。見ないでよトラップ!」
「だから見ねえようにしてるんだろうが! おめえなあ、ちっとは俺のことを……」
 言いかけて、トラップは口をつぐんだ。
 俺のことを? ……何だろ?
585トラパス 演劇舞台編 22:03/09/23 23:07 ID:geCdYF6k
「俺のことを? 何?」
「…………」
 トラップは、何だかじっとわたしをにらんでいるみたいだった。
 何でそんな目で見られなくちゃならないのよう……
「ねえ、何よ?」
「んっとにおめえは……どこまでも鈍いなっ!」
「なっ、何よー!!」
 鈍い鈍いって、ちょっとしつこいわよトラップ!
「おめえな、俺だって男なんだよ。そのへん、ちっとは意識しろよっ!」
 ……え?
 わたしの怒りなんかそっちのけで、トラップは叫んできた。
 男……って。そりゃ、そうだよ。女には見えないもん。
 って、あれ? それって……
「トラップ……?」
「お、俺はなあ……言っとくけど、クレイみてえに優しくねえし、理性にあふれた奴でもねえんだよ」
 それは知ってるけど。
 わたしが首をかしげると、トラップはますますイライラしたみたいで、
「だあら……惚れた女が目の前でんな格好してたら、思わず手え出したくなるんだよ! わかったらちっとは警戒しろっ!!」
 え?
 惚れた女……? え、だって、トラップが好きな人って……
「え、だって、トラップ、マリーナは……」
「お、おめえ、まだんなこと思ってんのか?」
 わたしの言葉に、トラップはがっくりうなだれた。「あんだけ態度で示したろーが」とか「んなこと俺に言わせんな」とかぶつぶつつぶやいてたけど……
 やがて、どかっと座りなおして、真剣な目でわたしを見据えた。
 あの、お芝居のときみたいな、すっごく熱い視線。
「あー、もういいや。認めてやるよ。言わねえと、おめえ一生気づきそうにねえしな」
「トラップ……?」
「俺が、俺が好きなのはなあ、マリーナじゃなくておめえなんだよ! 気づけよいいかげんに!!」
 ……ええっ!?
 と、トラップ……それって……
586トラパス 演劇舞台編 23:03/09/23 23:08 ID:geCdYF6k
「言っとくけどな! 『嘘でしょ』とか『冗談?』とか『芝居?』とか言ったら、行動でわからせるからな! 嫌だったら本気にしろ!!」
 わたしが言おうとした台詞を見事に先取りして叫ぶトラップ。
 その姿は、もうほとんどやけっぱちに近いんだけど……
 だって、だってそんなことある?
 わたしも……わたしも、さっき気づいちゃったんだもん。わたしも、トラップのことが……
「だあら、わかったら俺から離れて……」
「嫌」
「あ?」
「嫌。離れない」
「お、おめえなあ!」
 嫌だよ。今は、離れたくない。やっと、やっとわたし、自分の気持ちに気づいたんだから。
 もし、トラップがそうしたいなら……
「いいよ」
「……あんだと?」
「いいよ。トラップがそうしたいなら……手を出しても、いいよ」
「お、おめえ、『手を出す』の意味、わかってんだろうな?」
 わかってるよ、それくらい。
 も、もちろん経験したことはないけど……わたしだって、本とか、友達に聞いたりとかして、それくらい知ってるもん。
 ばっと顔をあげた。トラップの顔をじいっと見つめる。
「わたしは、マリーナみたいに美人じゃないし、スタイルもよくないけど……トラップが、それでもいいって言ってくれるなら……」
「パステル……」
 わたしは、ワンピースのボタンに手をかけた。
 濡れててちょっと外しにくいそれを、上から順番に外していく。
 うっ……ちょっと、ちょっと大胆かな? で、でも、いいよね。こういうときって、こうした方がいいんだよね……?
 三番目のボタンに手をかけたところで、トラップの手が、わたしの手首をつかんだ。
 顔をあげると、そのまま唇を塞がれた。
587トラパス 演劇舞台編 24:03/09/23 23:09 ID:geCdYF6k
「……言っとくけどな、今更嫌だっつっても、もう止められねえからな」
「……言わないもん」
 トラップの言葉に、わたしはしっかりと目を見て答えた。
 お芝居のときも、こうすればいいんだよね、きっと。
 これが、「恋する女の子の視線」で、いいんだよね?
 もう一度唇を塞がれた。ぐっとこじあけるようにして、熱い舌が、わたしの中に侵入してくる。
 しばらく、わたしとトラップは何も言わずキスを深めあっていた。
 キスって……こんな感じなんだ。
 こんなに……気持ちいいものなんだ……
 しばらくして、トラップはわたしから身を離すと、濡れてべたっとはりついた自分のシャツを脱ぎ捨てた。
 痩せてるんだけど、ちゃんとしっかり筋肉がついていて、すごく引き締まって見える上半身は、わたしが見てもすごく綺麗だった。
「いいなあ……」
「あん? 何がだよ」
「トラップって……きれいで」
「……バカなこと言ってんじゃねえよ」
 自分のシャツをぽいっと放り出すと、彼の手は、わたしのワンピースにかかった。
 外れかけてた三番目のボタン、ついで四番目、五番目。
 ボタンが全開にされたとき、わたしはいつのまにか、床に横たえられていた。
 むきだしの木の床だからね。すごく冷たいはずなんだけど。
 わたしの身体はいつのまにかすごく熱くなっていて、その冷たさが、逆に気持ちよかった。
 ワンピースの前が完全に開かれて、わたしの身体は、下着だけの姿をさらしている。
 ううっ、恥ずかしいなあ……わたしも、マリーナみたいにスタイルがよかったら……
「おめえ、またくだらねえこと考えてるだろ」
「え?」
 真っ赤になって顔をそむけたわたしに、トラップが耳元でささやいた。
 熱い吐息が触れて、何だかすごくぞくぞくする。
「くだらない、こと……?」
「おめえのこったから、どーせ『マリーナみたいにスタイルがよかったら』とか」
 うっ! その通り……な、何でわかるの?
588トラパス 演劇舞台編 25:03/09/23 23:10 ID:geCdYF6k
「バーカ、俺がな、どんだけおめえのこと見てきたと思ってんだ……おめえの考えてることなんて、お見通しだっつーの」
 言いながら、トラップはゆっくりと首筋にくちづけてきた。
 びくっ!!
 瞬間、走った感覚に、わずかに背中をのけぞらせる。
 ううっ、何? この感覚……
 そのまま、トラップは、わたしの身体をなぞるように舌を這わせていって……
「おめえはな、十分綺麗だよ。少なくとも、俺にとっては、おめえ以上に魅力的な女なんていねえ」
 ……え?
 まさか、だって、いつもわたしのこと、「出るとこはひっこんで〜」なんてバカにしてたくせに……
 何で、こんなときにそんなこと言うのよう……
 トラップの手が、ゆっくりとわたしのブラにかかった。
 そのまま、ゆっくりとずりあげられる。
 み、見られてるっ……胸、絶対見てるよね……
「で、できれば……あんまり見ないで……」
「ああ? おめえなあ、無茶言うな」
 言いながら、トラップの唇が、ゆっくりと胸に吸い付いてきた。
 ひゃんっ!!
 声にならない悲鳴をあげると、彼は、にやっと笑って言った。
「こんなきれいなもん、見ないわけねえだろ」
 ……意地悪。
 いつのまにか、わたしは全身がほてってるのを感じた。
 今は秋。それも、わたしはびしょぬれで、すごく身体は冷えていたはずなのに……
 何で、こんなに熱いの……?
 トラップの手は、巧みにわたしの身体をはいまわっていく。
 それは、腕だったりお腹だったり肩だったりしたんだけど……彼の手が触れるたび、わたしの身体は、確実に熱くなっていって……
589トラパス 演劇舞台編 26:03/09/23 23:11 ID:geCdYF6k
「やっ、トラップ……あ、熱い……何だか、変……」
「ああ、どんどん変になっちまえ……」
 やんっ
 太ももに感じるのは、トラップの唇。そのまま、どんどん上の方へと這い登っていって……
 中心部に触れたとき、わたしはたまらず、悲鳴をあげた。
「やあっ! やだっ、トラップ……そんな、とこ……」
 ぐいっ
 わたしの悲鳴を無視して、トラップの手が、わたしの脚を無理やり開いた。
 つまり……トラップの目の前に、わたしの……
 や、やだああああああああああ!!
「ば、ばかあっ! そ、そんなとこ見ないで……」
「…………」
 わたしの声に、トラップはにやっと笑って……顔を埋めた。
 ぴちゃり
「――――!!」
 恥ずかしいのと同時に、ものすごくぞくっとくる感覚がつきあげてきて……わたしは、段々、身体から力が抜けて……
「やあん……と、トラップ……」
「……甘い」
 ぺろっと唇をなめて、トラップはつぶやいた。
「おめえの、ここって……甘いな」
「ううっ……」
 トラップの……意地悪っ!!
 思わず脚を閉じそうになったけど、その前に、トラップの身体が強引に割って入ってきた。
 彼の手が、ズボンのベルトにかかって……
 さすがに、目を開けてられなかった。
 ぎゅっと目をとじて、身体を硬くしたとたん。
 わたしは、トラップに貫かれていた。
590トラパス 演劇舞台編 27:03/09/23 23:11 ID:geCdYF6k
「――いっ……痛い……痛いっ……あああああああああ!!!」
 痛いっ。何、これ? 何でこんなに痛いの?
 こ、こういう行為って、き、気持ちいいものなんじゃ……
「やっ……痛い、痛いよ、トラップ……」
「っ……お、俺もいてぇ」
「……?」
「おめえの中って……すっげえ、締め付けられて……」
 え? わ、わたし何もしてないけど……
 トラップはぎゅっと目を閉じて首を振ると、そのまま一気に押し入ってきた。
 傷口を無理やり裂かれるような痛み。激痛。
 こ、こんなに痛い思いしたの、わたし初めてかもしれない……
「やだっ……痛い、痛いよ……」
 ぎゅっとトラップの背中にしがみつくと、彼の思ったより大きな手が、優しく髪をなでてくれた。
「優しくしてやるつもりだったんだけど……我慢できなかった」
「……え?」
「ずっと、おめえとこうしたいって、思ってたから……」
 トラップ……あなた、いつから、わたしのことを……
 トラップの身体が、ゆっくりと動き出した。
 本当にゆっくり、できる限りわたしに負担をかけないようにしてくれているのがわかる。
 そのうち……本当に少しずつだけど、痛みが、何だかやわらいできて……
 最初はすごくぎこちなかった動きが、段々なめらかになってきて……
「あっ……ああっ、やんっ……あぁっ……」
「…………」
 わたしは思わず声をあげてしまったんだけど、トラップは無言。
 そのうち、彼の動きが激しくなってきた。息が荒く、顔や身体に汗が浮かんできて……
「うっ……」
 一声うめいた瞬間、トラップの腕が、わたしの身体を抱きしめた。
 ひときわ奥におしいられる感触。同時に……
 トラップの身体が、脱力した。
591トラパス 演劇舞台編 28:03/09/23 23:12 ID:geCdYF6k
 結局、雨がやんだのは翌朝になってからだった。
 わたし達は、そのまま抱き合って床に転がってたんだけど。
 興奮して、あんまり眠れなかった。きっと、今鏡を見たらひどい顔になってるんだろうなあ。
 マリーナの家に戻ると、玄関のドアを開けた途端、マリーナとクレイがとびだしてきた。
 二人とも、昨日は一晩中起きて待っててくれたみたい。
 ううっ、ごめんね、二人とも。
「心配したのよ! どこに行ってたのよ、二人とも」
「ああ? 雨が強いから、雨宿りしてたんだよ、雨宿り!」
 マリーナの言葉に、トラップはぶっきらぼうに吐き捨てると、「寝る」と言って二階にあがっていった。
 ……トラップも、眠れなかったのかな。
 そんなトラップを呆れたように見送った後、マリーナはわたしの方に顔を向けた。
 う、どうしよう。何て言えばいいのかな?
「おかえり、パステル……どうだった? デートは」
「う、うん。まあまあ、楽しかったよ」
 本当に色々あったけどね。
「そう、よかったじゃない……ところで、その指輪、どうしたの?」
「え?」
 言われて、わたしは初めて、昨日買ってもらった指輪をはめっぱなしだったことに気づいた。
 あ、そうだ。このお金、マリーナが出してくれるんだよね。ちゃんと謝らなきゃ。
592トラパス 演劇舞台編 29:03/09/23 23:13 ID:geCdYF6k
「これ、昨日トラップが……ごめんねマリーナ、余計なもの買っちゃって」
「え? 何でわたしに謝るの?」
 わたしの言葉に、マリーナは心底不思議そうな顔をした。
 ……あれ?
「だって、デートの費用はマリーナが出してくれるって……」
「トラップがそう言ったの?」
「う、うん。そう言って、トラップが全部払ってくれたんだけど……」
 そう言うと、マリーナとクレイは顔を見合わせて、同時に吹き出した。
「パステル、鈍いにもほどがあるよ」
 く、クレイまで鈍いって言うことないでしょ!?
 ……って、二人のこの態度。もしかして……
「やあねえ。わたし、そんなこと一言も言ってないわよ。あいつが出してくれたお金は、全部あいつのお金」
「ええっ!? 嘘、だったら指輪のお金返さなきゃ!」
「ちょ、ちょっとパステル、あなたねえ……」
 わたしが慌てて二階に上ろうとすると、マリーナに引き止められた。
 だって、結構高かったんだよ? この指輪。
「ねえ、パステル。その指に指輪をはめてくれたの、トラップ?」
「え? うん」
 左手の薬指。確かにここにはめてくれたのは、トラップ……
 って、ああ!?
「パステル、まさか知らないなんてことないわよね? 左手の薬指にはめる指輪は……」
 もちろん、わたしだって知ってる、それくらい。
 ……エンゲージリング……
 トラップ、まさか……
「あいつにとっては、昨日のデートは、芝居じゃなかったんだろうな、きっと」
 クレイの言葉に、わたしは何も言えなかった。
 わたしって……本っ当に、鈍感だなあ……
593トラパス 演劇舞台編 30:03/09/23 23:14 ID:geCdYF6k
 ドーマのお祭りの日。つまり、芝居本番の日。
 その日は、すっごくきれいに晴れ渡っていた。
 キットンやノル、ルーミィにシロちゃんも、今日は見に来てくれることになっている。
 ううっ、緊張するなあ……
 わたしとトラップは、別にその後、あの日のことを話す機会もなく。
 この数日、ひたすら練習に明け暮れていたんだけど。
 わたしの演技もどうにか見られるものになったらしく、マリーナは満足そうだった。
 いつだったか、「うまくいったわね」ってクレイと言い合ってるのを聞いたんだけど、大分心配かけたんだろうなあ。
 うん、今日の本番。ちゃんとやらなくっちゃ!
 それに……
 わたしは、そっとあの日以来ずっとはめたままの指輪に目をやった。
 ちゃんと、返事しなくちゃね。今日こそは。
 そして、大勢のお客さんの前で、芝居は始まった。
 パトリシアとマリイ。クレスとステフ。
 四人の、甘く切ない恋物語。
 最初わたしが舞台に立ったとき、「ぱーるぅ!」という声が響いて危うくこけそうになったんだけど、ちらっと客席をうかがったらノルがルーミィの口を塞いでにっこり笑っていた。
 これで、大分緊張がほぐれたんだよね。よーし、がんばるぞ!
 そんなわけで、芝居は大体順調に進んだ。
 トラップの真面目な視線にも、大分慣れたしね。わたしもしっかり受け止めて、真面目に台詞を返す。
 「マリイを裏切れない」ってわたしがトラップと別れる場面では、泣いているお客さんもいたんだよ!
 ううっ、がんばった甲斐があったなあ……
 そして、芝居は最後の場面へとうつった。
 
594トラパス 演劇舞台編 31:03/09/23 23:15 ID:geCdYF6k
「マリイ、クレス……ごめんなさい。わたし、わたし、ステフを愛してしまったの!」
 舞台の上で、わたしとステフ、マリイとクレスは見詰め合っていた。
 もう離れられない。だから、二人で遠いところに行って一緒になろう。
 そう誓って、マリイとクレスに別れを告げる場面。
「パトリシア、どうして……」
「ごめんなさい、マリイ。わたし、あなたのこと大好きよ……でも、この気持ち、止められない!!」
 わたしの方に歩み寄ろうとするマリイを遮るようにして、わたしは一歩後ずさった。わたしを庇うようにしてその前に立つのは、ステフ。
「すまなかった、マリイ。パトリシアを責めないでくれ。全て悪いのは……俺だ」
「ステフ!」
「殴ってくれて構わない。一生憎んでくれて構わない。だから……パトリシアだけは、許してやってくれ」
「ステフ、やめて、どうしてあなたが謝るの!」
 わたしがステフの肩をつかんだとき、マリイの前に、クレスが立った。
「勘違いしないでくれ……二人とも」
 とても辛そうな顔。わたしと、マリイを交互に見つめるようにして。
「違う、マリイが言っているのは……『どうしてもっと早く言ってくれなかったの』だ……そうだろ? マリイ」
 クレスの言葉に、マリイが大きく頷く。そして、大きな目に、涙をいっぱいためて言った。
「そうよ……どうして言ってくれなかったの? わたしもずっと苦しんでいたのに。わたしとクレスもずっと苦しんでいたのに! あなた達と同じように!」
「え?」
 マリイの言葉に、わたしとステフは言葉を返せなかった。わたし達の目の前で、マリイとクレスは……
 お互いの手を、取り合った。
595トラパス 演劇舞台編 32:03/09/23 23:16 ID:geCdYF6k
「わたしも愛してしまったのよ、クレスを! パトリシア、あなたの大事な恋人だったはずのクレスを、一目見たときから……」
「俺も……そうだっ。パトリシアへの気持ちは、嘘じゃなかった。本当だ。なのに、マリイに初めて会ったそのときから、俺は……」
「嘘……」
 ああ、どうして。
 わたしは、どうしてもっとマリイとクレスのことを信じてあげなかったのだろう。
 もっと早くに相談していれば……わたし達は、こんなにも苦しむことはなかったのに。
「ははっ……バカみたいだな、俺達は……」
 自嘲してつぶやくのは、ステフ。
「最初から解決していた問題を、ずっと、苦しみ続けていたのか……」
「ステフ……」
 マリイとクレス、わたしとステフが見詰め合った後……わたしとマリイは、舞台中央で、かたく抱き合っていた。
「ねえ、マリイ。わたし達、ずっと友達よね?」
「当たり前じゃない……今までだって、これからだって、パトリシアはわたしの親友なんだから!」
 そして、わたし達は身体を離すと、ぎゅっとお互いの手を握り合った。
「ねえ、幸せになりましょうね、わたし達」
「もちろんよ……なるに決まってるじゃない……」
 そして。
 わたし達は、お互いの恋人の胸へととびこんでいった。
 抱き合う二組のカップル。やがて、マリイとクレスにスポットライトが当たって。
「ずっと苦しんでいたわ。パトリシアを裏切ったという思いに。でも、やっと幸せになれるのよね?」
「ああ。今まで苦しんだ分も、幸せになろう」
 そうして、マリイとクレスの口付け。これ、舞台の上で見るとわかるけど、実はしてるように見せかけて「ふり」なんだよね。
 もちろん、わたし達の方も、最初はその予定だったんだけど……
596トラパス 演劇舞台編 33:03/09/23 23:17 ID:geCdYF6k
 マリイとクレスの姿が闇に沈んで、今度はわたしとステフの方にスポットライトがあたる。
「ずっと辛かったの。マリイを裏切ったという思いに。でも、やっと幸せになれるのね」
「ああ。今までずっと耐えてきた分も、幸せになろうな」
 ここで、わたし達が抱き合い、キスをするふりをして、終わるはずだった。台本では。
 ……でも。
 わたしは、ぐっとステフ……トラップの顔を見つめた。
 予想外のわたしの動きに、トラップがけげんな表情をする。
 今までわたしが鈍感だったせいで、トラップはきっとすごく辛かったんだよね。
 だから……そのおわび!
「あなたが、いつかくれたこの指輪」
 そうしてわたしが見せたのは、あのデートの日、トラップが買ってくれた指輪。
「あのときは、答えられなかった。マリイのことを考えて、とても答えられなかった。本当はとても嬉しかったのに。嬉しかったから返すこともできず、ここまであなたを苦しめてしまった。
 本当にごめんなさい、ステフ……」
「パトリシア……」
「だから、今、返事をさせて。とても幸せな今日のこの日に……あなたを愛しているわ、ステフ。この指輪……受け取らせていただきます」
 きっと、これで通じたはず。わたしの言いたいこと。
 何だか視界の端で、マリイ……マリーナとクレイが手を取り合って「よくやった!」みたいなことを囁いてるのが見えるんだけど。
 気にしないもんね! どうせいつかはわかるんだし。
 トラップは、しばらく茫然としていたみたいだけど、やがてステフのものではない、トラップの笑みを浮かべていった。
「全く、かなわないな。パ……パトリシアには」
 そう言って、わたしとトラップは。
 観客の割れんばかりの拍手が降りそそぐなか、ふりではない本物のキスを交わした――


か、完結!!
長かった……しかも何というか……ありがちというか……ちょっとキャラ違うかも? な気も。
ちなみに次の作品はとある人のリクエストに答える予定です。予定ですけどね。
感想が怖い作品です・・・
597名無しさん@ピンキー:03/09/23 23:59 ID:ehnviDvR
神キタ━━━━!!!!!
毎日のように新作が読めるなんてなんて俺らは幸せなんだ!!!
パステルの鈍感っぷりにイラつくトラップ萌え(*´Д`)
598名無しさん@ピンキー:03/09/24 00:08 ID:PIfzIZ10
神よ 感謝します!!
俺をモエ殺す気ですか?!毎回毎回マジ最高です!

次回作も楽しみに待ってます
599名無しさん@ピンキー:03/09/24 00:11 ID:9s2ePyXH
つうかうまいなぁ・・・
最近のクソつまらん深沢のかわりに本編書いてほしい。
600名無しさん@ピンキー:03/09/24 00:15 ID:R98LJVUT
いや、イイ!ベタって言うか、ありがちって言うか、そう言うのもたまにはイイもんだ!
何よりも俺は至極 楽しませてもらいました!
次のリクエスト作品がどんなのか楽しみにしてます(゚∀゚)
601名無しさん@ピンキー:03/09/24 01:00 ID:haZR0232
もう10作目ですか!! お疲れ様です。いつも楽しませて頂いてます。
冗長なんて全然思いませんでしたよ!
前書きで「長い」→ワーイ、いっぱい読めるヽ(´▽`)ノ
読後→別に長くないじゃん、って全33スレΣ(゚Д゚; ナガカッタノネ…
むしろ長い方が(ry リクがあったので消化してないのは後、
1番最初のトラパス・トラパスクエスト・温泉編ですね。
どれも好きなので楽しみです!
602名無しさん@ピンキー:03/09/24 01:15 ID:kn37d0D6
キターー!!
今回も乙です。いやいや、読みごたえあって最高でした。
ありがちと言っておられますが全然。読ませてくれますな!
マジ本編より楽しいや…
603名無しさん@ピンキー:03/09/24 01:40 ID:fxWUMX7A
これだけ良質の作品を次々と書けるなんてスゴイ!!
もうプロとしてデビューした方が…
いや、それじゃーここで読めなくなる訳か?うーん…

トラパスもイイ!けど違う組み合わせのも読みたい!
クレイ×マリーナとか。今回いい雰囲気だったし。
604名無しさん@ピンキー:03/09/24 01:48 ID:wn/Q5A2u
>>560クレパス氏
抑え目な描写と切りつめた文で、ここまでドキドキさせてくれるとは…
激しくイイです。
前半のクレイの荒れっ振りの所でも思ったのですが、
ツボをしっかり押さえていらっしゃると思います。
何かフワフワ撫でられてる感じになりますた(痛?)
上手いだけでも嬉しいですが、ここまでハァハァ出来る文章は久し振りです。
完結まで楽しみに待ってます。
がんがって下さい。

>トラパス氏
多くの方が語られているように、どのSSも
キャラを外す事が殆ど無いのが凄すぎます。
しかもシチュが豊富だし、クエストの話も雰囲気が出てる。
…も、「燃え」神様と呼んで良いですか?(止めろ)
605クレ×パス 560続き:03/09/24 15:40 ID:dWoGqc7p
「あっ、あっ…」 
足の間に啄むようなキス。その度に背筋を快感が走ってく。そんな、汚いとこ
なのに、なんで。
割れ目の中に、滑った何か入り込んてきた。これ、クレイの舌…。
中を、ゆっくり舐め上げる。溢れ出したモノと絡まってピチャピチャと音が
してる。舌の動きが、掻き回すように変わった。
「はあっ! くっ、ああぁ…………」
今までより激しい快感に体が震えて、我慢しきれずに声を上げてしまう。自分の
声じゃないみたい。
「んん……、あ、あっ………」
快感が、どんどん高まってく。
どうなるんだろう、わたしの体、どうなっちゃうんだろう?
クレイの舌が、硬い突起に触れて、息が止まる程の快感に体が反り返る。
「もっ、やぁっ、ふぁあ………」
舌で突起を転がされると、快感に頭の中をグチャグチャにされて、まともに
考えることができない。
怖い。怖いよ。クレイ、クレイっ……。涙が溢れて、こぼれていく。
クレイに抱きしめてほしい。でも、そんなこと言ったら、わたしがHな、あ……。
割れ目から溢れ出した液体が、お尻の方まで流れていく。
ああ…、あたし、そんなに濡れてるんだ………。
快感はどんどん膨れあがって、わたしを何処かへ押し流そうとしてる。
昨日、クレイが入ってきた所に舌か触れて、そして、入ってきた。
やっ、なに? なにか、くる、くるうっ、たすけ……
「やっ……、んっ……、あんっ、あっ、くっ、ふぁ……、い、あ、ああっ、
ああああーーー!」
快感が体を満たして、頭の中が真っ白になった
606クレ×パス 605続き:03/09/24 15:42 ID:dWoGqc7p
 さっきの感覚がまだ残っていて、思うように体に力が入らない。頭の中も
どこかボーっとしたまま。
 あんなはしたない所を見られるなんて…。Hなことしてるんだから、当たり
前なんだけど。でも、やっぱり、恥ずかしい。今も恥ずかしくて、クレイに
背中を向けて横になってる。
「大丈夫か? パステル」
 さっき、答える気力もないぐらいにクタクタで、返事が出来なかったからかな。
酷く心配そうな声になってる。
「やっぱり、嫌だったんだ……、俺……」
ああ、もうっ! なんでこんな弱気なんだろう。
「違うの、疲れてただけだから」
振り返ると、正座して、畏まったクレイがいて……。しばらく、クレイの引き
締まった体と、………股間のモノに見とれてしまう。
「あ…………」「きゃあっ」
悲鳴を上げて、また、クレイに背を向けた。
そ、そうだった。クレイにも脱いでって言ってたんだ…。そ、それより、
クレイのアレ、あ、あのままじゃ、おさまりつきそうにないけど………。
ど、どうしよう………。
少し治まっていた熱がぶり返して、体を火照らせる。
「パステル」「な。なに」
「俺、我慢できないよ」「!…………」
「パステルと一つになりたい」
607名無しさん@ピンキー:03/09/24 23:04 ID:fxWUMX7A
クレパスキテル━━━━━━!!!!
エロくてイイ!!!
(;´Д`)ハァハァ
608トラパス作者:03/09/25 00:16 ID:aZoFL9Uk
えー……書きました。
今回は、何人かの方がリクエストしてくださった「トラパスクエスト」の続きです。
ただし、あらかじめ注意しておきます。
・長いです。前回の演劇・舞台編よりさらに長いです。
・エロ少ないです。いつものことのような気もしますが。
・今回かなり難航しました。えらく小難しいテーマにしてしまったもので。ですので、フォーチュンらしさ、とかほのぼのした話、が好きな方には、ちょっと合わないかもしれません。
それを踏まえた上で読んでくだされば幸いです。
609トラパスクエスト続編 1:03/09/25 00:29 ID:aZoFL9Uk
「あんた……誰だ?」
 とても冷たい目で、彼は言った。
 いつもはいたずらっこみたいな輝きを浮かべているその茶色の瞳には、不審そうな色しか浮かんでなくて。
 わたしを見て、彼はもう一度言った。
「あんた、誰だ?」
 鮮やかな赤い髪も、細く引き締まった身体も、いつもと何も変わらない。
 それなのに、目だけは、見たこともないほど冷たく光っていた――
 
「ぱーるぅ。何かいいことあったんかぁ?」
「んー? うん。とってもいいことがね」
 ルーミィの問いに、わたしはにこにこしながら答えた。
 自分で言うのも何だけど、最近わたしは機嫌がよかった。
 あの、「真実の愛を見せたものにだけ解けるクエスト」の後、わたしとトラップは、晴れて両思いになれたんだよね!
 素直に本音を告白したら、今までトラップを見るたびに感じてたもやもやが、すーっと晴れていくのを感じたんだ。これが、悩みを解決した気分、なのかな?
 もちろん、だからって生活は普段と全然変わらないんだけどね。二人っきりになるチャンスなんてなかなかないし。
 でも、「いつまでも黙っとくわけにはいかねえだろ」っていうトラップの言葉で、クレイ、キットン、ノルには、ちゃんと伝えたんだ。ルーミィには……もうちょっと大きくなってから、ね。
 みんな驚くかなあ、って思ってたんだけど。何故かクレイ初めとして
「やっとか」「遅すぎたくらいです」「おめでとう」と、ちっとも驚いてくれなかった。
「気づいてなかったのはおめえくれえだよ」とはトラップの言葉なんだけど。ううっ、そんなにばればれだった?
 まあ、だからって特別扱いはしないで、っていうことだけは、ちゃんと伝えておいたけどね。だって……恥ずかしいじゃない。
「っつーわけでさ、俺とルーミィ、部屋交代していいか?」
「バカモノ!!」
 もー、調子に乗りすぎ!!
610トラパスクエスト続編 2:03/09/25 00:30 ID:aZoFL9Uk
 とまあ、こんな感じでしばらくは平和で幸せな時間が流れてたんだけど。
 いつまでもシルバーリーブにとどまってるわけにはいかないもんね。いつまでもレベルが上がらなかったら冒険者カード剥奪されちゃうかもしれないし。
 というわけで、新しいクエストにまた出かけることになったんだ。
 今回のクエストは、どこかのお城に眠ると言われる財宝を捜すっていうクエストなんだ。
 もちろん、見つけてきたのはお宝には目のないトラップ。
 ただ、わたし達のレベルでは、ちょっと厳しいクエストみたいなんだよね。
 敵も1番レベルの高いクレイで何とかなるかな? ぐらいのレベルみたいだし、城の中は罠だらけだって言うし。
 だから、最初はわたしもクレイもあまり気が進まなかったんだけど。
「だーいじょうぶだって。罠なんざなあ、俺がちょいちょいっと見つけてやっから。それにな、たまにはこういう冒険しねーと、身体がなまるだろ?
 いつまでも弱っちい敵ばっか相手にしてたら、成長できるもんもできなくなるぞ」
 というトラップの言葉に、押し切られることになった。
 そうだよね……たまには、難しいクエストに挑戦してみないとね! よし、がんばるぞー!
 
 だけどねー、やっぱり考えが甘かったんだ。
 モンスターは、確かにクレイとノルの二人がかりで何とか倒せた。
 しかけられた罠も、トラップがことごとく解除してくれた。
 でもでもでも!
 あまりにもぎりぎりすぎて、全然余裕がないの! 回復する暇もなく走り回ったりモンスターと戦ったりで、一階を突破して二階に何とか進んだ頃には、もうみんなへとへと。
 キットンの薬草だって、限りがあるしねえ……
 城は、外から見る限りは五階建てくらい。いくら何でも、ちょっとクリアは無理じゃないか、って、みんな思ってたと思うんだよね。
 かく言うわたしが1番思ってたかも。「もう帰りたい」って。
 ところが、一人だけ元気だったのがこの人。
「だらしねえなあ。まだまだ先は長えんだぞ? ほれ、さっさと立つ立つ」
 見ればわかると思うけど、トラップ。もー、何で一人だけそんなに元気なのよ!
611トラパスクエスト続編 3:03/09/25 00:32 ID:aZoFL9Uk
「ねえ、トラップ。引き返さない? わたし達じゃ、ちょっと無理だよ」
 無駄だろうなあ、と思いつつ言ってみたんだけど。
「ああ!? ここまで来て引き返す? おめえなあ、それでも冒険者か! この先にお宝が待ってんだぞ!」
 やっぱり無理でした。もー、宝のことになるとまわりが見えなくなるんだから。
 クレイの方に目をやると、彼はしばらく考え込んでたみたいだけど、
「……よし。とりあえず二階の攻略には挑戦してみよう。もしかしたら、簡単に突破できる通路みたいなものがあるかもしれないし。無理そうだったら、あるいはキットンの薬草が尽きたら、今回は諦めて引き返す。それでいいな?」
 トラップはちょっと不満そうだったけど、何と言ってもクレイはリーダーだもんね。文句は言わなかった。
 今になって思うんだ。
 どうして、わたしはこのとき、強引にでもトラップを止めなかったんだろうって。
 あるいは、どうしてわたしは、もっと慎重になれなかったんだろう、って。
 
 それは、2階のある通路に出たときだった。
 その通路は、今までの大理石みたいなものでできた白い通路と違って、赤、青、黄色とすごくカラフルなタイルがしきつめられた通路だった。
 今までの通路は、絶対何体かのモンスターがいたんだけど、この通路に限ってはすごく静かだったんだよね。
 だからかえって不気味だった。「みんな、慎重にな」っていうクレイの言葉で、先頭のトラップの後をぴったりついていったんだけど。
「……あー、こういうタイプの罠か」
 一歩踏み出した途端、トラップが嫌そうな声をあげた。
「どうしたの?」
「ここな、特定のタイルを踏んでいかねえと、多分罠が発動する。俺が歩いた場所だけを通れよ。一歩でもずれたら多分アウトだ」
 な、なんですってー!?
 その言葉に、クレイが慌ててルーミィとシロちゃんを抱き上げた。同時に、ノルがキットンを肩車。
 二人(と一匹)は、トラップと歩幅が違いすぎるもんね。そうやって、わたし達は細心の注意を払ってトラップの後をついていったんだけど。
612トラパスクエスト続編 4:03/09/25 00:33 ID:aZoFL9Uk
 ガコン
 瞬間響く、すごく不吉な音。
「あっ……」
「パステル!」
「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
 ガコンガコンガコン
 その瞬間、床のタイルがすごい勢いで組み替えられていった。
 もちろん、上に乗っているわたし達のことなんかお構いなし。
 このとき、わたし以外のみんなは赤いタイルに乗ってたんだけど。赤は赤、青は青、黄色は黄色でタイルがまとまっていって。
 そして。
 ガッコン
 最後のタイルがはまったとき、通路は赤、青、黄色の見事な三色ゾーンに別れていた。
 黄色のタイルに乗っていたわたしは、みんなとは随分引き離されていて。
 ああ、どうしようどうしよう、と、とにかくみんなのところに戻らなきゃ。
 そう思って一歩踏み出した途端、真っ青になって叫ぶトラップ。
「バカ!! 動くんじゃねえ!!」
「え?」
 その瞬間。
 わたしの足元のタイルが……消えていた。
 黄色のゾーンが、まるで最初からなかったかのように、ごそっと消えたのよ!!
 もちろん、足場をなくしたわたしが立っていられるはずもなく……
「きゃあああああああああああああああ!!」
 再び悲鳴をあげていた。そのときには、もうわたしの身体は落下を始めていて。
 何とか、目の前に何事もなく残っている青いタイルに指をひっかけたんだけど、だ、駄目!! 指に力が入らないいい!!
 ちらっと下を見れば、どこまでも真っ暗な穴。
 ぞわぞわぞわっ。こ、こんなとこ落ちたら……わたし……
613トラパスクエスト続編 5:03/09/25 00:33 ID:aZoFL9Uk
「きゃあああああああ! だ、誰か助けてえ!!」
「うっせえ! 黙れっ」
 そのとき上から響いてきたのは、とても頼りになる声。
「とらっぷぅ……」
「あーったく、おめえはどこまでドジなんだよ!! いいか、今引き上げてやっから、暴れんなよ!!」
 そう言うと、トラップは、タイルにひっかけていたわたしの手首をぐいっとつかんだ。
 後ろから「トラップ、手伝う」というノルの声。
 ああ、よかったあ……と思ったそのときだった。
 足首に、何かがしゅるりっ、と巻きついた。
「……え?」
 下を見る。相変わらずの完全な闇。だけど、よーく目をこらしてみたら、そこには何かがうごめいていて……
 ぐいっ!!
「きゃああああ!?」
「うわああああああああああああ!!!」
 わたしの足首にまきついた「何か」は、そのままわたしをひきずりおろした!!
 それも、わたしの手首をつかんでいたトラップもろとも……
 このとき、トラップがすぐに手を離していれば。罠にひっかかるのは、わたしだけですんだのに。
 落ちる瞬間、わたしは見てしまった。
 トラップが、意地でもわたしの手首を離そうとしなかったのを。
 それどころか、落ちる最中、わたしを庇うようにして抱きかかえ、体勢を入れ替えてくれたことも。
 トラップ――!!
 彼の身体に抱きついたとき。
 激しい衝撃が襲って、わたしは意識を失ってしまった。
614トラパスクエスト続編 6:03/09/25 00:34 ID:aZoFL9Uk
 ――ル――
 ん……
 ――ステル、――か?
 何……何が起きたの……?
「パステル、大丈夫か!?」
「きゃあっ」
 耳元で響いた声に、わたしは飛び起きた。
 あれ? わたし……
 きょろきょろと見回すと、そこはあまり広くない穴の底……だった。
 すごく上の方に光と、心配そうに見おろしているノル、キットン、ルーミィ、シロちゃんの顔と、たらされたロープが見える。
 そして、わたしの目の前には、クレイ。
 ……あれ?
「ね、ねえ……」
「よかった、無事か? 怪我はない?」
「う、うん」
 そう、結構な高さを落下したと思うんだけど、幸いなことに、わたしには全然怪我がなかった。
 ふと思い出して足首を見ると、そこには黒い紐みたいなのが巻き付いていた。
 よーく見れば、穴の底に、変な植物がいくつか生えていて、そこから紐のようなつるが伸びている。
 わたしの足をひっぱったのは、あのつるなんだよね。よ、よかった。モンスターじゃなくて。
 わたしに怪我がないってわかると、クレイはすごくほっとしたみたいだった。
 ショートソードで足にまきついたつるを切ってくれると、わたしに背を向けた。
「じゃあ、俺におぶさって。穴を登るから」
「うん……ね、ねえ、トラップは!?」
 穴の中にはわたしとクレイだけ。上に見えるのはノル達だけ。トラップの姿が、どこにも見えない。
「ねえ、トラップは? 大丈夫だった?」
「……あいつは……」
 クレイの顔が辛そうにゆがんだ。けど、何も説明してくれない。
 何が――あったの?
615トラパスクエスト続編 7:03/09/25 00:35 ID:aZoFL9Uk
「詳しいことは、上に上ってから話すよ。とにかく、つかまって」
「う、うん」
 クレイの背中におぶさりながら、わたしは泣きそうになっていた。
 ううっ、わたしって、どうしてこんなにドジなんだろう。
 もっと慎重になっていれば、そんなに厳しい罠じゃなかったのに。
 わたしのせいで、トラップまで巻き込んで……
 トラップ、無事でいて――!!
 
 上に上ると、「ぱーるぅ!」と真っ先に抱きついてきたのはルーミィだった。
 そのかわいらしい顔がもう涙でべしゃべしゃで。
 ううっ、ごめんね、心配かけて……
 ロープを支えてくれていたのがノル。「よかった、無事だったか」って、すごくほっとしたみたい。
 そして……
 キットンは、床にひざまづいていた。その前に横たえられているのは……
「トラップ!!」
 キットンの前に力なく倒れていたのは、トラップ。
 その目はかたく閉じられていて、身体はぐったりしたまま。
 そして……
 その鮮やかな赤い髪。その髪がまだらに染まっていた。
 あ、あの色って……血……?
「きゃああああああああ!! トラップ、トラップ! トラップ!!」
「あああパステル!! 動かしては駄目です!!」
 思わずすがりつこうとしたんだけど、キットンに止められてしまった。
 だって、だってだってトラップが! 大好きなトラップが……わたしの、わたしのせいでっ……
「大丈夫です、死んではいません! すぐに手当てをすれば……とにかく、一度この城から出ましょう!!」
 キットンの言葉に、みんな1も2もなく頷いた。
 どうせ、黄色のゾーンの床が消えちゃって、その先には進めなくなってたんだもん。
 細心の注意を払ってトラップをノルの背中に預けると、わたし達は一目散に城から脱出した。
 幸いなことに、主なモンスターは行きにほとんど倒していたし。罠は全部トラップが解除してくれた後だったからね。脱出は、思いのほか簡単だったんだ。
616トラパスクエスト続編 8:03/09/25 00:35 ID:aZoFL9Uk
 そのまま、わたし達は城のすぐ近くにある村にかけこんだ。
 宿屋のベッドにトラップを寝かせて、改めてお医者さんを呼んだんだけど……
「大丈夫、命の別状はないですよ」
 と言われるまでの長かったこと!!
 よかったあ、とみんなで手を取り合ったんだけど、トラップの目は、相変わらず閉じられたままで。
「だいぶ頭を強く打ったみたいですから、意識はなかなか戻らないかもしれませんが、安静にさえしていれば、必ず目を覚ましますから」
 そういって、怪我の治療だけをすると、お医者さんは帰っていった。
 頭に白い包帯を巻いて寝ているトラップの顔は青ざめていたけど、確かに息はしっかりしていた。
 トラップ……早く目を覚ましてね!!
 
 それからしばらくわたし達はこの村に滞在することになった。
 トラップは絶対安静で動かせなかったしね。頭の怪我だから、ちょっとした衝撃が致命傷になることもあるんだって。
 ううっ、怖いなあ……
 だけど、宿屋の代金とか、手持ちのお金ではどうしても厳しいから。クレイ達は村で日雇いバイトみたいなことを始めて、かなり忙しそうだった。
 わたし? わたしは、ずっとトラップの傍につきっきり。
 だって、わたしのせいだもん。それに……トラップは、わたしの恋人……だし。
 バイトのできないルーミィは、多分すごく退屈だったと思うんだけどね。クレイがよーく言い聞かせてくれたのか、トラップが寝ている部屋には入ってこなかった。
 その分、食事のときに顔を合わせると、「ぱーるぅ!!」って、しがみついて離れようとしなかったけどね。
 そうして、一週間が過ぎた頃のことだった……
617トラパスクエスト続編 9:03/09/25 00:36 ID:aZoFL9Uk
 その日、クレイは武器屋さん、ノルは材木屋さん、キットンは薬屋さんでバイトをしていた。
 ルーミィとシロちゃんは、隣の部屋で絵を描いているみたいだった。
 そして、わたしはトラップの枕元に座って、彼の額にあてた布を冷たい水でしぼっていた。
 よく冷えた布を、額に置き直そうとして。
 そのときだった。
 突然、誰かに手首をつかまれた。
 ……え?
 細い指、腕、その割には強い力。
 辿っていくと、トラップが、うっすらと目を開けるところだった。
「と、トラップ?」
「…………」
 彼は無言だったけど、その目が、まぶしそうに2、3度まばたきした後、しっかりと開いた。
「トラップ、トラップ、よかった目が覚めたのね!!」
 よ、よかったあ!! お医者さんは大丈夫って言ったけど、すごく不安だったんだよね。このまま目を覚まさなかったらどうしようって。
 よかった、本当によかった!!
 わたしがだるそうに身を起こすトラップの身体にすがりつくと、トラップは……
 どん、とわたしの身体を突きとばした。
 ……え?
 何、トラップ……どうしたの?
 ふりあおぐと、彼の目は、ひどく冷たかった。鮮やかな赤毛も、細くひきしまった身体も、いつもと全く変わらない。
 ただ、目が。いつもはいたずらっこみたいに輝いている目が、ひどく冷たくわたしを見おろしていた。
「……あんた、誰だ?」
「え……?」
 トラップ……何、言ってるの……?
「あんた、誰だ?」
 茫然としているわたしに、トラップがもう一度聞いてきた。
 その口調には、冗談とかが含まれているようには聞こえなくて。
 いつもの軽い口調とは全然違うきつい声音。
618トラパスクエスト続編 10:03/09/25 00:37 ID:aZoFL9Uk
「トラップ……どうしたの? わたしよ、パステル……」
「……知らねえ」
「トラップ!?」
「だあら……誰だよ、そのトラップって」
 トラップは、いらだたしげに赤毛をかきまわして言った。
「俺の名前はなあ、ステア・ブーツってんだよ。変な名前で呼んでんじゃねえ」
 ――トラップ!?
 その瞬間、わたしは部屋をとびだしていた。
 お医者さんを呼んでこなくちゃ……ううん、キットンの薬屋さんの方が近い!!
 とにかく、みんなを呼んでこなくちゃ!!

「よおクレイ……何なんだよ、この連中は」
 わたしが村中かけまわってバイト中の皆を無理やりかき集めて部屋に戻ると、トラップが放った第一声。
 と、トラップ? 本当に……本当に忘れちゃったの?
「おい、トラップ……」
「ああ? おめえまであに言ってんだ? 誰だよトラップって」
「お、お前なあ……」
「幼馴染の名前忘れたのかよ? 俺の名前はステア・ブーツってんだよ。さっきからこの女もわめいてたけど、誰なんだよトラップって」
 この女、で指差されたのはもちろんわたし。
 トラップの言葉に、みんな茫然としてるみたいだった。
 そりゃそうだよね。「ステア・ブーツ」……確かにトラップの本名だけど。
 トラップは小さいときからずっと「トラップ」って呼ばれてきたはずなのに、一体?
「あのー、ちょっといくつか質問させてよろしいですか?」
 茫然としてるわたし達にかわって前に出てきたのがキットン。
 トラップは、思いっきりうさんくさそうな目を向けている。
「誰だあんた?」
「あー気にしないでください。医者だと思ってください。えーと、ですね。とら……ステアさん。あなた年はいくつですか?」
「ああ? 何でてめえにんなこと教えなきゃいけねえんだ」
「あのですね、あなた、覚えてないかもしれませんが、頭を打ってずっと寝ていたんですよ。記憶が混乱しているといけませんので、いくつか確認させてほしいだけです」
 トラップは、ちっと舌打ちした後、渋々キットンに向き直った。
 ……トラップ、何だか態度が……変。こんなに冷たい人だった?
619トラパスクエスト続編 11
「では、改めてお聞きしますが、年はいくつですか?」
「17だよ。もうすぐ18になるな」
「ほうほう。えーお住まいは?」
「ドーマっつう街……おい、そういやここはどこなんだよ。俺の部屋じゃねえな」
「あのですね、目を覚ます前……何をしてらしたか、覚えてますか?」
「…………」
 この質問に、トラップはちょっと顔をしかめた。
 しばらく頭を押さえてたけど、やがてボソッとつぶやいた。
「覚えてねえ……」
「そうですか。ま、あなた一週間以上も寝てたんですからね。頭の怪我は怖いですから、もうしばらく大人しく寝ていた方がいいですよ」
「…………」
 トラップは、何だか不審そうな目でわたし達を見回した後、もう一度ベッドに横になった。
 背中を向けて、振り返ろうともしない。
 トラップ……本当に、本当に忘れちゃったの? みんなのこと……
「隣の部屋に、行きましょうか」
 キットンに促されて、わたし達は部屋を移動した。