放課後の体育館裏。じりじりとした暑さが、シンジの焦燥を駆り立てる。
目の前には制服姿の三人の少女。彼女らに壁際に追いつめられるような形で、
シンジは立ちつくしていた。
「あ…あの……」
思うように言葉が出ない。どう答えるべきなのか、生まれて初めてのことで
まるで分からない。嬉しい気持ちも確かにあった。けれど、やはり戸惑いの方
が大きく――
「ごめんなさい」
シンジは目を閉じて言い、深く頭を下げた。
緊張して数秒待ち、恐る恐る目を開ける。三人の中心に立つ長身の少女――
対馬ミユキというらしい――は、ややきつい切れ長の瞳を一度しばたかせ、
「そう」
短くつぶやいた。反応らしい反応はそれだけで、シンジはほっと胸をなで下
ろす。つまりシンジは、上級生である彼女に呼び出され告白をされたのだった。
その言葉は「可愛い顔しているから、付き合ってあげてもいい」という高飛車
なものではあったが。
(なんで僕なんかを……けど、怒ってないみたいでよかった……)
機嫌を損ねずにすんで、本当によかったと思う。というのも彼女達は、素行
が良くないことで有名で――
刹那、突然伸びてきた腕に胸元を掴まれ、シンジは息を絞り上げられた。
「てめぇ、ミユキに恥かかせる気かよっ!」
腕は、ミユキの右脇にいた少女のもので、シンジの腕よりもずっと太い。背
丈もシンジより高いミユキよりもさらに高く、全体的にがっちりとしている――
よりはっきり言えば、かなり太めだった。
シンジは辛うじてつま先が地面についているだけで、ほとんど身体を持ち上
げられてしまっている。苦しくて、まともに声を出すこともできない。
「やめな」
静かな声で、ミユキが言う。
「けど――」
「ケイ、やめろって言ってるんだよ!」
シンジの胸元を掴んだままの太めの少女――ケイを、ミユキが一喝する。そ
の声は、声量自体はそれほどでもなかったが、有無を言わせぬ強さがあって、
シンジの方がびくりとしてしまう。
「ちっ」
ケイは舌打ちして、シンジを突き放した。シンジは地面に尻餅をついてしま
う。