最近志麻の様子がおかしい。
どこが、と聞かれれば答えられないのだが、確かに違和感があるのだ。
一週間前のコータとの情事によって生まれた、
志麻に対しての罪悪感がそう思わせているのだろうか。
アリサとコータはあれ以来肌を重ねていない。キスも。
場所の問題、そして勉強の方が忙しくなってきたのもあるが、
やはりアリサ自身が志麻に対して抱いたこの気持ちが、歯止めをかけている。
好きな人に触れられたい。抱かれたい。
そんな想いが胸に浮かぶたびにそれを振り払い、自己嫌悪した。
コータとの関係は、以前どおりに努めた。
口裏を合わせあって、冗談を言い合い、笑い合い。
仲間にも気づかれていない自信はある。そんな自信欲しくなかったが。
志麻にはなんと言おう。
最善策は? 最善? 何をもって最善と?
アリサがぼんやりとそんな事を考えていると、
「アリサ」
「うわ!」
後ろから声をかけられ、思わず大声を出してしまった。
振り向く。やはり志麻だった。
目をあわせられない。アリサはやっとの事で言葉を発した。
「ビ、ビックリしたぁ」
「びっくりしたのはこっちだよ…」
志麻は呆れたような目でアリサを見ていた。
「ち、ちょっと考え事しててさ。あは、あははははは…」
乾いた笑い。
自分の顔が今引きつっていると、アリサは自信を持って言えた。やはりそんな自信はいらないが。
今アリサにとって志麻は、ある意味恐怖の対象といえた。
軽蔑されるのが恐い。裏切られたと思われるのが怖い。
最低の女だと思われるのが恐ろしい。大好きな志麻に嫌われてしまうのが何よりも怖ろしい。
元々志麻とコータの間を取り持つつもりだった自分が、何時の間にやらその相手と恋人同士。
最低だ。笑い話にもならない。
アリサはもう一度自分に問うた。何が最善なのか。
自分はコータと好き合えて、なおかつ志麻にも嫌われない。
最悪だ。アリサは自分がゴミに思えた。
そしてアリサは志麻に連れられて、食堂に向かった。
食堂。
ステルヴィアの生徒達が、勉学で失われた栄養を補おうと賑わっていた。
ほとんどの席が埋まっているが、空いている一石を見つけて、アリサと志麻は座った。
やよいや晶は違う場所で食べているようで、見つけられなかった。
気づいていなかったが、二人とも同じ食事を選んでいた。
黙々と食べる二人。
ムードメーカーのアリサが、今日に限って会話を見つけられない。
必死で会話を探すのだが、なぜかコータのことばかり思い浮かぶ。
志麻の様子がおかしいのではなく、ひょっとしておかしいのは自分ではないのか。
こんな調子じゃ、いつか志麻にばれてしまう。
いや、最終的には打ち明けるつもりなのだから、いまここで言ってしまおうか。
いやいや、こんな場所じゃ言えるわけが無い。
アリサの頭の中は混乱を起こしていた。そんなとき、
「音山くん」
志麻が言った。
アリサはビクっと体を引きつらせながらも、後ろを見る。
そこには、コータが料理の乗ったプレートを持ってこちらを見ていた。
こともあろうに、コータはこちらへ近づいてくる。
焦るアリサ。
いまコータと志麻二人の間に入ったら、自分はどんな態度をとるか分かったものではない。
来ないで。アリサのそんな願いも空しく、コータはアリサの横に座った。
口から心臓が飛び出しそうだった。もしかしたら、顔が赤くなっているかもしれない。
極度の緊張からか、何時もは意識しないようにしていた、一週間前のあの出来事が思い返される。
考えたことはあるが、自分がするとは思わなかったセックスという行為。処女の喪失。
自分はした。してしまったのだ。となりにいる音山コータと。
ありありと思い出せるわけではないが、あの焼けるような熱さは覚えている。忘れられない。
「コ…」
言葉を発しようとする。だが、何を言えばいいのか。
アリサが考え込んでいると、意外な所から声があがった。
「わ、わたし、用事思い出したから、行くね!」
志麻だった。志麻はそう言ってプレートを持って席を立ち、どこかへ行ってしまった。
アリサは呆然として、何も言えない。ただ、志麻の去っていった方向を見詰めていた。
意味が分からない。なぜ志麻があんな態度をとるのか。
普段なら去るべきなのは自分なのだ。
志麻たちを二人っきりにしたくて、それで戸惑う志麻の表情が好きで、
いまのように用事があるフリをして、いきなりその場所から離れてみたりしたことが、何回かある。
自分もおかしいが。やはり志麻もおかしい。
まるでアリサとコータに気を使っているかのように。
まるで『恋人同士を二人きりにしようとしているかのように』。
「ま…さか…」
「そのまさかだよ」
コータが言った。アリサはコータの顔を見る。無表情だった。
「ばれて…見られて、た?」
「多分。僕は出来る限り用心したつもりだったんだけどね。
ログを調べてみたら、あの時間帯にあの場所へ立ち入った人間は僕達と、もう一人」
「私と、コータと…」
「志麻ちゃん、さ。彼女、最近態度がおかしかったよね。なんか、無理に僕達をくっつけようとしてたみたいに」
そう、そうだった。
最近志麻がおかしいと感じた理由。
いまのように不必要にアリサ達を二人きりにしてみたり、不自然にコータの話を振ったりしたことが、あった。
「なんで…? なんでしーぽん、あんな…」
アリサは不安げにコータの顔を見る。無表情。
「なんで、なにも言ってくれないの?」
「ごめん」
「え?」
「考えなしにアリサにあんなことをした僕のせいだ」
さっきまでの無表情を崩し、コータは顔つきを変えた。
「アリサと志麻ちゃんの関係を考えれば、当然のことなのに」
後悔。軽率な自分に対しての怒り。コータの表情からは、それらが読み取れた。
しかし一息深呼吸してアリサの顔を見ると、コータは微笑んだ。
「コータ…?」
「僕は志麻ちゃんが好きだよ。アリサも、そうだよね?」
アリサはうなずく。
「志麻ちゃんも、僕らのこと、好きでいてくれるかな」
コータはまた無表情に戻った。
アリサは立ち上がった。志麻の姿を探す。
「僕も行ったほうがいい?」
コータの問いに、首を横に振るアリサ。
「これは、コータとあたしと、しーぽんの問題。でも、あたし一人で行きたい」
そう言い放つアリサに、コータは頷いた。
アリサの予想通り、志麻は自室に戻っていた。
ベッドに腰をかけて、金平糖の入ったビンを抱きかかえていた。
こちらからは志麻の顔は見えない。
怖い。アリサは内心怯えていたが、それでも志麻に声をかけた。
「しーぽん…」
肩を震わせて振り返る志麻。
「しーぽん…」
アリサは志麻が泣いているのかと思っていたが、そうではなかった。
「アリサ…どうしたの?」
首を傾げる志麻。
アリサは、なんと声をかけていいのか分からなかった。
だが、志麻は確実に気づいている。いまも多分その事を考えている。だから。
「ごめんなさい」
アリサは謝った。後に言葉が続かない。だが、ちゃんと志麻の目を見た。そらさなかった。
志麻もアリサの目を見詰めて、そして首を横に振った。アリサは驚いて目を見開く。志麻は言った。
「アリサが謝ることなんてないよ。最初見たときは、私も驚いたけど。
私って無神経だよね。アリサが音山君の事好きだって知らなくて、ずっと、私…」
「違う!」
アリサは否定する。今度は志麻が目を見開いた。
「そんなんじゃない。あたし、あの時まで自分がコータを好きだって気づいてなかった。
それに元々しーぽんとコータがくっつけばいいって思ってたのに、いつの間にか…。
最低。最低だよ。あたし。しーぽんを、裏切った…」
「それでも、私はアリサを嫌いになれなかったよ」
「…!」
「あの時、『なんで?』って思った。けど、アリサが時々音山君を見る時の目。
やっぱり好きな人を見る目だったよ」
そこまで言われて、アリサは自分の馬鹿さ加減に呆れた。
なにが気づかれていない、だ。あんな事になるよりも前に、志麻は気づいていたのだ。
「好きな人が幸せなら私も幸せ。私はそんな風に思えるほど凄い人間じゃないけど。
やっぱりアリサと音山君が幸せなら、私は嬉しいよ」
そこまで言って、アリサは志麻が目に涙を浮かべていることに気づいた。
当たり前だ。志麻がコータを好きな気持ちは、紛れも無く本物だったのだから。
そんなことは、アリサ自信が良く分かっている。
アリサも不意に涙が出そうになったが、体に力を入れると志麻に近づいていった。
じっとアリサを見詰める志麻。アリサはベッドの上の、志麻の正面に座った。
「しーぽん、ごめんね…」
堪えきれずに、涙が少し出た。今時分はどんな顔をしているだろう。答えられる自信は無かった。
「おなか減ったな…」
「え?」
「私、さっき途中で食べるのやめちゃったから。少し、おなかがすいちゃった」
そう言って、志麻は笑う。もう泣いていなかった。
アリサは涙を手の甲でぬぐい、言った。
「よーし、腕によりをかけて作ってあげちゃおう!」
涙は止まらない。ぬぐってもぬぐっても。
確か前にもこんなことがあった気がする。その時に泣いていたのは、確か志麻だったけど。
その後、アリサは志麻のために料理を作って、志麻はそれを食べた。
とても辛かったらしく、志麻は泣きながら食べた。
それがおかしくて、二人は少し笑った。
部屋を出たアリサに、コータが声をかける。
「さすがだね」
「親友ですから!」
アリサはガッツポーズをとった。コータは笑った。そして、
「え、ちょ、やだ…」
アリサはコータに抱きしめられる。こんなところで。誰かに見られる可能性は限りなく高い。
「やめてよ、コータ。部屋にしーぽんもいるんだよ」
訴えかけるように言うと、コータはアリサを開放した。笑っている。
「もう…」
アリサが呆れと、ほんの少しの怒りを込めた表情をすると、コータは言った。
「寮の端。そこに、誰も使ってない部屋があるんだ。生徒用の部屋じゃないから、防音もされてる。人は絶対来ない」
そこまで言われて、アリサもコータの意図が掴めた。みるみるうちに顔が赤くなる。
「な…だ、駄目!」
アリサが拒絶すると、コータは不思議そうな顔をする。
「なんで?」
「だって、しーぽんとの事が解決してすぐあとに、そんな…待ってましたって感じ、ちょっと…」
「…アリサは、嫌かな」
「……」
「あの時言ったでしょ? 君を知りたいって。あんなんじゃ、足りない」
「足りないって…」
「もっと、アリサが欲しい」
からかわれているのではなく、真剣な目。アリサをまっすぐに見詰めている。
拒む理由が見つからなかった。自分だって、コータと同じ気持ちなのだ。
アリサはコータの後をついて、その部屋に向かった。
そこは別段他の部屋と変わらないように思えた。
防音がされてるというが、本当だろうか。
人がこないというのは本当だろうか。
アリサは心臓の動悸を誤魔化すようにそんなことを考えていた。
二人でベッドに座る。そしてどちらともなくキスをする。
「今度は、アリサが自分で脱いで」
そんな事を言われた。
一週間前にあんな事をしておいて、アリサはまだ恥ずかしかった。
けれど、自分だって、少なからずともこのときを待っていた。今までは考えられないような自分。
アリサは気恥ずかしそうに服を脱いだ。下着姿になって、そしてその下着にも手をかける。
まず、ブラを外した。胸の先端が見えないように、アリサは片腕で胸を覆い隠す。
それを見て、コータは苦笑した。
次は、下着。さすがに躊躇するアリサ。だが、決心を固めると、片腕でそれを脱いだ。茂みが見えるが、ソコも手で隠す。
「その格好、すごくエッチだよ…?」
コータが少し笑いながら言うと、アリサは顔を真っ赤にしてうろたえながらベッドに横になった。
もう胸は隠していない。その代わり、両手で茂みを隠している。
そのせいでふくよかな胸が強調されているとも知らずに、アリサは黙って顔を赤くしていた。
コータも服を脱いだ。この間は上だけだったが、今度は下も全部脱ぐ。
二人とも、生まれたままの姿になった。
そこで、やはりアリサの視線は一点に集中してしまう。
コータの性器。
コータも少し恥ずかしそうにしているが、それとは反するようにコータの性器は自己を主張していた。
「ねえ」
「なに? アリサ」
「触っても、いい?」
「…いいよ」
そう言ってコータはベッドの上に上がった。
この間、アリサはコータの体液を飲む所までいっているのだが、冷静に考えるとなんて事をしてしまったんだとアリサは思う。
アリサはコータの了承をえると、コータの性器をまじまじと見た。
グロテスク。決してかわいいとは思わない。こんなものが自分の体内に入り込んだのかと思うと、信じられない。
「コータって、おっきい方?」
聞いた後で恥ずかしくなった。アリサは色んな意味で壊れつつある自分を自覚した。
「普通、じゃないかな。僕より大きいサイズの人もいるから」
アリサは僅かに耳を疑う。コレより、大きいのが存在するなんて。
そんな事を考えつつ、アリサは目の前の男性性器に手を伸ばした。触る。
「あっつい…」
コータはなんとも言えない。アリサは、ただ触ったり、握ったりして、それの感触を楽しんだ。
そして、上下に擦ってみる。こうすればいいと本で聞いたことがあるから。なんとなく、要求されてやるのは癪だった。
「う…」
コータが僅かにうめく。気持ちいいのかな。アリサは少し嬉しくなって、今度は口を近づけた。
もう、一度やっているのだから。これが今のアリサの行動原理だった。
唇が性器の先端に押し付けられる。舌を少し突き出して舐めてみる。
コータが顔をしかめるのが分かった。調子にのって、舐めるのではなく、口の中に入れてみる。
この間は、この状態で体液を飲んだのだ。
妙な興奮、アリサの行動は大胆になっていった。
口の深くまで入れて、出す寸前まで抜く。繰り返し。繰り返し。
コータの荒くなる息とともに、アリサも段々と興奮が高まっていく。
完全なるフェラチオ。まさか自分がするときが来るとは。
アリサはこのまま果てて欲しいと思った。
「アリサ、ちょっと待って」
コータから静止の声。しかしアリサは止めない。
「アリサ?」
アリサは止めない。というより、聞こえていない。
興奮が高まって、自分がしている行為に没頭している。
アリサは肩を揺すられて、
「ん…あっ」
慌てて口を離す。そして、今までにないほどの赤い顔をすると、言った。
「あ、あたし、つい、夢中になってて…」
すると、アリサはコータに押し倒された。
「あ…」
「僕にも、アリサの体を味わわせて」
とんでもないセリフだ。さっきまでのアリサなら慌ててうろたえるが、今は違う。
黙って頷いて、唇を求めた。
合わさる唇。お互いに舌を動かして、貪り合う。漏れる吐息。それだけで吹き出る汗。
十分に堪能したあと、コータは唾液で濡れたままの唇を胸に持っていった。
ぴちゃりと濡れる先端。薄いピンク色の頂が、艶やかに輝く。
「は…」
アリサは息を漏らす。コータは乳首を口に含む。片方だけではなく、交互に。
滑らかで、柔らかすぎる乳房に指を食い込ませ、自在に形を変える。
たったそれだけで、アリサの肌は桜色に染まっていった。
やがて、名残惜しそうにコータが胸を開放すると、乳房はふわふわと揺れて、元の形に戻った。
コータの唇は、下方へ下がっていく。腹へ。臍へ。下腹部。そして。
「ひゃ…!」
アリサ・グレンノースの肉体の中で、もっとも敏感で、柔らかい場所。
コータはそこを舐め上げる。この間は泣かれてしまったから、今度はゆっくりと舐める。
息を吸おうとすると、赤色の茂みが鼻に触って、くすぐったい。それさえもがコータの興奮を高めた。
アリサは快感に耐えるのに必死だった。腰から下が痺れたようになっている。
この間よりも優しい。それゆえに、とても気持ちがいい。
「は、ん、ふぅ、コー、タァ…」
何度も好きな人の名を呼ぶ。何度も。それだけで満たされる気持ち。
けれど、決定的に足りない何か。
無意識に、コータの性器に目が行く。釘付けになる。
あたしはこんなにエッチな女の子だったのか。
アリサの中に、新しいアリサが芽生えていく。
「コー、タァ…」
もう一度名前を呼ぶ。
コータはそれを聞くと、口を離した。しかし、まだ。
指でアリサの膣の周りをなぞり、膣口周辺を撫でる。
「んん、やぁ…」
もどかしい。アリサは泣きそうになってしまう。けれど堪えた。
コータは動かしていた指を、膣の中に埋め始めた。
「んぁ、ああ…」
異物の進入。アリサは喘ぐ。
感覚が鋭敏になっているのか。
自分の中の、どの部分が触られていて、どの部分を擦られているか、それが手に取るように分かった。
コータの指が出入りするたびにアリサは声を漏らした。けれど、
「いやだよ…」
「え?」
アリサの呟きに、コータが反応する。
「指、だけじゃ、嫌だよ。コータの、…れて欲しいよ」
アリサは涙で濡れた瞳で、コータに訴えかける。
こんな、アリサなら絶対に口にしないような言葉で。
アリサはコータが息を呑むのが分かった。
コータはアリサを抱きしめる。あの時のように。そしてあの時のようにキスをして。
アリサの膣にコータの性器があてがわれた。熱い。押し込まれる。
「ふ、あああ…」
アリサがため息にもにた、深い息を吐いた。
アリサの最も敏感な部分に、コータの最も敏感な部分が入り込んでくる。結合していく。
そして、完全に合わさった。もとから一つであったように。
二人は動かない。じんわりと染みてくるなにかを堪能していた。やがてコータが口を開く。
「痛い? まだ二回目だし…」
「ん、ちょっと痛い。でも、初めてのときとは、全然違う」
「じゃあ、気持ちいい?」
「まだわかんないよ。でも、なんか、お腹のなかがあったかい」
それを聞いて、コータはゆるゆると腰を動かした。
初めての時のように、ゆっくり。ギリギリまで抜いて、限界まで差し込む。繰り返し。
アリサは黙って目を閉じている。自分の中のまた新しい何かを見つけようとしているかのように。
時折顔をしかめながら、アリサはコータの攻めを受けていた。
「ん…ん…ん…」
たまに漏らす声は、痛みからのものだろうか。それとも。
「あ、またコンドームつけてない…。どうもタイミング逃しちゃうな…」
コータは困ったように言った。
「大丈夫だよ、また…ふぁ…」
そこまで言いかけて、アリサは突然の自分の体の変化に驚いた。
「あ、ごめん、やっぱり痛い?」
勘違いしたコータは、アリサから抜こうとする。
「待って!」
「?」
突然の声に、コータは驚いた顔をした。そしてアリサは顔を真っ赤にして、涙を流して、言った。
「急に…痛いのだけじゃ、なくなってきた気がする」
「アリサ…」
アリサはコータの体に抱きついた。ここで終わらせて欲しくない。
それを聞いたコータは、アリサの快感を引き出そうと、入れたままアリサを愛撫した。
胸をいじる。喘ぐアリサ。手探りで膣をいじる。さらに喘ぐアリサ。
そしてさっきは触らなかった突起。つつくように触った。
クッと閉めつけられるコータの性器。危ない。
アリサの声が大きくなる。コータは腰の動きを再開した。
「ふ、う、ん、ん、」
アリサの喘ぎ方が変わった。先ほどまでとは明らかに違う。
「アリサ、大丈夫?」
「コータ、ん、すご、い、よぉ」
質問の答えになっていない。だが、それで十分だった。
コータは腰の動きを早める。
「あ、ああ、は、あ!」
アリサはコータの方に引き寄せられた。向かい会う形で繋がった。
この体位の名称をアリサは知らなかったが、知識として知っている。とても恥ずかしい。
けれど体重がかかって、普通にするよりも深く繋がって、とても。
「ああ、ああん、ん! ん、は、あ、あ、あ…」
頭が狂いそうな程の快感。アリサはそれにただ身を任せた。
「アリサ、気持ちいい?」
コータも興奮しすぎているらしく、変な事を聞いてしまう。
「うん…! うん…!」
だがアリサは必死に頷いた。するとコータはアリサの涙を舐めとった。
「あ! あ、あ、あ、あ、あ、コータ、コータ、コータ!」
アリサはコータの名を呼び続ける。
「く、う、アリサ、駄目だ。僕…」
コータに限界が来た。しかしアリサの耳には届かない。
「コータ! なんか、来る、怖い、あたし、こわい!」
初めての絶頂。アリサが女の子から女になる波がすぐそこまで来ているようだった。
「アリサ…」
「駄目、お願い、最後まで、お願い!」
アリサは懇願する。
コータは少し考えていたが、意を決したように言った。
「本当に危なくなったら、止めるからね」
そして、アリサを早く果てさせようと、アリサの腰を強く上下させた。
結合部からは、液体の混ざり合う音が聞こえてくる。アリサの胸が上下に揺れる。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、コータ、あたし、もう…!」
絶頂の寸前。もう数秒もしないうちにアリサは果てるだろう。
それを確認したコータはすぐに引き抜こうとする。すると、
「ア、アリサ!」
アリサがコータから離れようとしない。
手も足も全て使ってコータにしがみついている。アリサの胸がコータの胸板に押し付けられた。
「ちょ、まず…うぁ…!」
「コータ、コータぁ、あ、あ! あ! ふぁ…!!」
静止の声も遅く、アリサの中でコータは果てた。とても熱い何かが、アリサの中で広がった。
アリサは真っ白になった意識の中で、コータにキスをした。
「なんであんなことしたの?」
「…ごめんなさい」
「…ちなみに今日は」
「安全日、です」
「…そういう問題じゃないんだけどね」
二人でベッドに横たわりそんな会話を続ける。
アリサは自分のお腹に手を当てた。
先ほど自分の中に吐き出されたコータの体液。
それがとても熱い感覚として、未だアリサの中に残っていた。
隣には、コータ。アリサのとても大事な人。
志麻に対しての申し訳ない気持ちは完全に消えたわけじゃない。
けれど、アリサはコータが好きで、志麻も好きだった。
だんだんと意識がまどろんでいく。
このまま眠ってしまっていいのだろうか。
アリサは少し心配だったが、きっとコータが起こしてくれると思った。
完
やったー。
完成したぞー。
これも俺の作品を「もったいない」って言ってくれた人たちのおかげだ。
ちょーうれしー。
うわー、なにをするー。