純愛SS

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私の手で。
処女だった姉が。
性のなにも身に受けたことのなかった姉が。
今宵──。
もし悔いるにしても、ふたつずつの裸の乳房を触れ合わせて同衾(どうきん)し、
姉の破瓜血をみつめているいまでは、もう遅すぎる。
いま胸を押しつぶそうとしている重さは、後悔ではなく、
大きすぎる感動なのだと信じたい。そして。
次は、私の番だ。
「ねえさま。どうぞ」
姉はうなずくと。今夜初めてみずから動いた。
手を、無防備な妹の股間へと伸ばす。
今夜はまだ誰にも触られていないにも関らず、
そこは、彼女にとって過去最大の潤いに満ちていた。
当然のことだった。
一本目が挿入された感触は、妹の心を感動で震わせた。
“ねえさまが! ねえさまがとうとう私を! ああ──っ”
二本目は、大きな痛みと、喪失の幸福を。
“ねえさま……私も……とうとう……いっしょに……!”
三本目は、ふたりの愛と誓いの瞬間だった。
重い痛みと、いとおしい異物の感触と、喜びとに、リムルルは震えた。
“ああ……ああ。リムルルはもうねえさまを放しません。けして離れません”
指が抜かれたあとは、ふたり共に
じんじんとした股間の幸せの痛みに耐えながら、
裸で抱き合い、口づけを甘く繰り返した。
失い、捧げ終えた裸身を姉妹して結び合わせながら。
毛布の中で結ばれた手と手が、
ふたりの神聖な血を、絡み、混じり合わせている──

 * * *
297/10:03/04/12 16:03 ID:4rTM9Lce
さっき軽く目覚めた時はまだ裸の肩を閨(ねや)に寄せ合っていたはずなのに、
もう、毛布の中の隣に姉の裸身はなかった。
「姉様…」
人はいない。
帯も締めず裸の肩に衣を引っ掛けただけで外に出ると、
姉はすでに身を正して井戸水を汲んでいた。
朝餉(あさげ)の用意と、身支度をするため。
「…おはよう。リムルル」
いつもと違う夜を過ごしたにふさわしく、
いつもと違う紅色が、姉の頬に差した。
「姉様……身体は痛くないですか?」
「だいじょうぶ」
姉の方から、抱きしめてきてくれた。リムルルの、夢だった。
「あんなに優しく、あなたのものにしてくれたんだもの」
「姉様。好きです…」
「私も、好きです…。ずっと放さないでいて…」
血の繋がった姉妹の誓いの口付けの光景と共に、
朝日は山の稜線をゆっくりと離れ、地上をまぶしく照らしだす。

道を歩いて来た姉妹を、待ち受けていた人影があった。
「よう、ご両人さん。出立の支度はできたかい?」
声を掛けてきたのは、大刀(だいとう)を背にぶら下げた浪人者、
覇王丸と名乗る男だ。
ナコルルはなぜか、乱れてもいない衣服の前を押さえ、少し赤くなった。
リムルルは姉の左腕を抱えながら、やはり赤くなってその影に隠れようとする。
「は……はい、こちらはいつでも出立できます。では村を出ましょう」
「お、おう。じゃ、小屋の中の連中にも声を掛けて来てくれや」
足早に、というのでもなかったが、
姉妹はなにかそそくさと気まずそうにその場を去った。
覇王丸は隣の兵法者に声を掛ける。
「……あのふたり、やっぱり、その……しちまったのかねえ」
308/10:03/04/12 16:04 ID:4rTM9Lce
柳生十兵衛はふんと鼻を鳴らしただけだった。
「けどよ。女同士だぜ? ……実の姉妹でぇ……だぜ?」
「好きにさせておけ。いつ果てるも知れぬのが兵法者の習い。
なれば、思い残すことがないようにしておくのもまた、その者たちの好き好きよ」
「捌(さば)けてるな。オッサンも案外……」

 * * *

それから、姉妹がふたりで重ねた夜は、もう数知れない。
禁断の愛を押し込める理由ももはやなく、
ふたりはふたりだけの蜜事に、夜毎(よごと)溺れ続けていた。
初めての恋人に、心のすべてを奪われていた。
姉妹して、お互いの肉体に夢中だった。
日常は清楚な佇まいを失わないナコルルも、
夜はもう、妹の性の虜だ。
今夜は、仰向けにした裸身を海老のように折らせて、
天井を向いた秘部の潤いを妹にむさぼられるに任せている。
リムルルは自分のしている行為のいやらしさに、
姉の見せる、ふたりしか知らない媚態に、
胸を突くいとおしさに、夢中だった。
もし彼女が女でなかったら、姉はとっくにリムルルの子を孕んでいただろう。
眼前であらわにむさぼられるみずからの薄桃色のあわいに、
ナコルルの視線も茫洋としている。
リムルルは我が手で開通した姉の洞(ほら)を、
三本の指でじゅくじゅくと出し入れを繰り返している。
もう姉のその場所も、こんなにし慣れている。
同時にもうひとつの姉のすぼまりを舐めると、
いまだに姉は驚いた顔と声をあらわす。
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空いた手で濡れた突起物を弾きながら、
そうして出し入れしているうちに、
姉の声は絶息に近いものとなり、やがて、
姉の最高の昂ぶりを表す、間欠泉のごとき熱い汁の迸(ほとばし)りを、
ぴゅっぴゅっと天に向って女の部分から飛ばしだした。
自分がいやらしすぎてほんとうにいやだ、と姉がみずから言う
その状態を、しかしリムルルはどうしても繰り返しさせてしまう。
可愛らしすぎるから。
欲望が、果て無く身を突き動かすから……。
やがて、全身を汗と妹の唾液とみずからの粘液で光らせたまま、
ナコルルは荒い息でくたっと身を横たえた。
少し息が整うと、腕を伸ばして妹を呼ぶ。
リムルルはいつものように自分の股間を姉の顔の前に動かす。
今度は、妹の番。
姉もいまや、妹の性器と排泄器官を喜んで舐めしゃぶってくれるのだ。
合い舐めの行為にすら、従ってくれる。
すぐに水音と妹の高い声が天井に響きだした。

今夜は妹の胸に頭を預けながら、
ナコルルは、激しい行為の余韻に浸っていた。
「ほんとにいつも夢中ね。リムルルは」
「……恐いから」
「恐い?」
「はい、姉様。幸せが恐いです」
まるで年下の恋人をあやすように、抱いた姉の髪を指ですきながら、
リムルルは言葉を続ける。
「生まれてから一番幸せなのに、その幸せの最中に、
ああしている夢の中みたいな最中に、どちらかが
消えてなくなってしまいそうな……なんでか、いつもそんな気が…して……」
声が揺れた。不吉な自分の言葉が、リムルルの涙腺を
みずから刺激してしまったようだ。
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ナコルルは涙を指でぬぐってやった。
「この世が揺れ動いている、こんな時。
毎日が戦いの日々のいま。確かに、今日は明日のなにごとも約してくれないわ」
お互いの、いま生きている証しの生身の体温を感じ合いながら、
姉の言葉は続く。
「それでも、なにが起きても生きてゆかねばならないのよ。
誰も皆、幸だけを味わって生きてゆくことはできない。
この世は、幸と不幸とが互い違いに織られてゆく、一枚の布のようなもの」
「一枚の布……」
「ええ。幸がない時も、明日の幸のために、誰かの幸のために、
力を尽くして生き続けてゆくのが人のさだめ」
「……でも、いつかねえさまとともに在れなくなるなんて、想像もできない……」
「いまの幸せを味わいましょう。このぬくもりを。愛しさを。
せめて、永劫、けして、忘れぬように……」
リムルルの涙は、姉の体温に暖かく包まれたまま
やすらかな眠りに落ちゆくまで、絶えることなく続いた。

ふたりに残された蜜月、残りあと僅(わず)か──