スターオーシャンTilltheEndofTime

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347その1
 暗闇の中に、ぼうと人影が浮かぶ。長髪とも短髪とも呼べない微妙な髪の長さ。
やや細身の体躯。とはいえ脂肪をナイフで削った感のあるその手足に、華奢な
印象を持つことは難しい。

 暗闇に浮かぶ、青い髪の青年。直刀を腰溜めに構えたその姿は、ひどく自然体で
あるくせに微塵の隙も見つけられない。頭髪と同じく青色の瞳。切れ長の目に
収まるそれは、青年の気性を反映してか、湖面のように控えめに瞬いている。

 人影、直刀を持つ青年が動く。ゆるりとした動作で、ぞっとするほどに素早く
間合いを詰める。瞬きをする間もなく刀圏に入られた。その同時、下段からの
切り上げが自分を襲う。こちらを退かせるための明らかな誘い手。だが、あえて
自分はそれに乗った。青年の剣先が頂点に達した瞬間、右足を半歩踏み込む。
期を測ったように、再び襲い掛かってくる直刀。両腕を跳ね上げ、強引にそれを
鍔元で受け止める。痺れる手。軋む奥歯。が、その衝撃に寸前で耐えることに
成功する。

 噛んだ刀身部分を支点にし、青年の剣を受け流す。耳障りな音。散る火花。爆発
する殺意。唇に浮かぶ歪な微笑み。受け流しの勢いを殺さぬまま、その場で
くるりと体を回す。左足を軸足とし、回転の勢いを加えた胴薙ぎの一閃。自分を
して会心の一撃であった。肉を、骨を断つ感触までも予感する。しかし、

 そこに青い髪の青年はいなかった。愕然と目を見開く。頭上に感じる風。視線を
上げる。彼はそこにいた。飛び上がった姿勢のまま、無慈悲なほど正確な狙いで、
肩越しに構えた直刀がこちらの頭蓋を叩き砕い――
348その2:03/03/17 02:27 ID:XNEr07jT
 アルベルは瞼を開いた。先ほどまで目前にいたフェイトの姿が、跡形もなく
消える。鉄甲の覆っていない片手で、額に浮かんでいる脂汗を乱暴に拭う。汗を
かいていたのは、ここの気温のせいではない。忌々しくそれを認めた。くそったれ、
これで何度俺はあいつに……

「また負けたのか? 小僧」

 揶揄を多分に含んだ声が鳴り響く。この溶岩洞の主である、老竜の声が。

「……黙れ」
「想像の中でさえ勝てぬとはな。これでは実戦でも同じ事か」
「黙れと言ったろうがデカイだけの糞蝿が」

 その老竜の正体を知るものが聞けば目を剥くであろう言葉を、平然とアルベルは
口にする。それは蛮勇か、あるいは何も考えていないだけか。

 声を殺していまだに笑い続けている老竜から、アルベルは目をそらし、刀を構え
直した。幼い頃に学んだ基本の型を、丁寧に一つずつ繰り返す。架空の剣を受け、
払い、巻き込む。転じて架空の敵に打ち込み、斬りつけ、薙ぎ、刺突を見舞う。
無心に、無心に、ただ無心に。

 いや。無心であるべきなのに、今はそれができない。どうしても一人の男の
姿が浮かんでしまう。『あの時』からずっと。その事実が、尚更アルベルを
苛立たせた。
349その3:03/03/17 02:28 ID:XNEr07jT
「チッ!」

 感情に任せて刀を振り終え、アルベルはふてくされた様に腰を下ろす。手綱の
取れない自分の心が、ひどく不快であった。

「どうした? 今日はもう終いか?」
「…………」

 聞こえてきた声をあからさまに無視し、そっぽを向く。何を言っても喜ばせる
だけと思いとった態度だが、豪快な笑い声が帰ってきたところから考えるに、結局
同じ事であったのかもしれない。

 新たな舌打ちを一つ打ち、仰向けに寝転がる。眼を閉じれば浮かぶ人影。そして
また不快になるという悪循環。吐き気がするほどに忌々しいことだ。だが、こうも
思ってしまう。誰か一人の事をこうまで考えつづけた事が、今まで有っただろうかと。

「糞が。いったい何だってんだ……」
「それは恋ね」

 唐突に。全くもって予期も予想もしていなかった声が突然きこえた。
350その4:03/03/17 02:29 ID:RW35BWHB
 妙に身体のラインが出るスーツを着た女性が、いきなりそこに立っていた。
プラチナブロンドの短髪。目鼻のはっきりした端麗な容姿。年の頃は二十代後半か。
一度でも会ったことがあれば忘れそうもない女性だが、生憎と初対面であった。

「だ、誰だお前は?」
「ブレアよ」
「……誰?」

 質問には答えず、ブレアと名乗った女性は謎めいた微笑を覗かせる。

「私は感動しているの、アルベド君」
「アルベルだ」
「ただのデータでしかなかったあなた達が恋愛感情を、それも同姓に対するという
複雑なものまで持てるなんて」
「とりあえずそこは訂正させろ」
「それも当の本人が自覚していないなんて! ビバ王道! 最近めっきり廃れて
るけど、やっぱりこーゆーのにはプラトニックで背徳感がないとね!」
「いやたぶんこれはライバルに対する純粋な対抗心とかだと……」
「あなたの望み、叶えて上げましょう!」
「聞けよ人の話」
351その5:03/03/17 02:29 ID:RW35BWHB
 一方的に話し終えたブレアなる女性は、今度は耳元で何かぼそぼそと言って
いる。断片的に「適当にパラメーターを」「……を変えるだけで」などという
言葉が聞こえてきたが、意味は分からなかった。と、またしても唐突に振り向き、
彼女は告げる。

「おめでとう! アルベラ君!」
「それはインド映画のヒロインだ」
「変身!」
「は?」

 その糞女(もうこう呼んでしまおう)がこちらを指差したとたん、いきなり
自分の身体が青い光に包まれる。あまりにもあまりのことに、声さえ出ない。
そして光の爆発が収縮した瞬間、

「おめでとう! アルベロ君! これで性別の壁は取り払われたわ!」

 身体が一回り小さくなっていた。腕も細くなっていた。他にも……いや、現実
逃避はよそう。つまり、要するに、自分の身体が、女に、なって、いた。

「…………」
「じゃあフェイト君とお幸せに! 私達はあなたのことを応援しているからね!」

 アルベドの思考回路が停止している間に、その糞女は光と共に消えていった。
352その6:03/03/17 02:29 ID:RW35BWHB
「古来より……」

 背後から。錆を含んだ重々しい声が聞こえた。茫然自失としていたアルベルが
ほとんど条件反射だけで振りかえる。人も身では決して叶えられない長い月日を
生きた老竜が、他の生命を圧する眼光を見せながら身を起こした。

 両翼を広げ、竜族の侯爵は言う。

「神話の中で竜は女好きと決まっておる」
「……は?」

 鋭い眼光のまま、完全に女のものとなったアルベルの肢体を、嘗め回すように
鑑賞した後、

「……そそる」

 器用に頬だけを染めて、にゅるんとキノコ型の触手を何本も生やしはじめた。

「う、うそ、まさか……!」
「そそるぅぅぅぅぅぅ!!」
「イヤァァァァァァ!!」

 結構その気になっているアルベルの悲鳴であった。
353その7:03/03/17 02:30 ID:FZx+/TLH
フェイト「アルベル? なんでお前がこんな所に……」
アルベル「遅ぇんだよ阿保がぁぁぁぁぁぁ!!」
フェイト「え? あれ? 僕おこられてる?」


ソフィア「チッ。ブレアも分かってね―なー」
マリア「まったく。アルベル×フェイトもの描いてたのに無駄になっちゃった」
ネル「あたしは別の描いてたからいいや」
マリア「何を?」
ネル「若ロキシ×幼フェイト」
ソフィア・マリア「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!」
354名無しさん@ピンキー:03/03/17 02:30 ID:FZx+/TLH
エロパロじゃないですな。正直スマン。