〜『男を喰った話』〜
「さて」
女性は少し身を引きながら、男の方を向いて言いました。
男はすでにやる気まんまんで、女性の体に手を回していました。
「あなたは初めてではありませんね?」
女性は、決まっていることのように言いました。
男はそっと女性の身を引き寄せ、ハンサムな顔で女性を見ます。
「あ・・・、まいったなあ。どうして分かるんです?
もしよかったら理由を教えてくださいよ。
ひょっとして"初めてにしてはムードの作り方がいい"とか
"ここぞという時の口説き文句に優れている"とかですか?」
男は嬉しそうに聞きましたが、女性は首を振りました。
「以前あなたが道端で用を足している時見ました。
・・・もう少し可愛らしいものであったら喜んでその時相手をしたのですが」
「・・・さいですか」
「今回は私の命令は特にありません。あなたは自由に好きなように」
「お言葉に甘えてそうさせてもらいますよ。師匠と弟子の関係は一時お終いですね。それでは」
男が口を寄せて、女性が口を開きます。
「ただし、あなたが着ている服は全部脱いでもらいます」
「せめて、上着だけでいいでしょう? 羞恥心ってやつですよ」
「全部脱ぎなさい」
「ズボンまででは? 俺にだって恥ずかしいという気持ちが」
「全部脱ぎなさい」
「せ、せめてシャツくらいは? 妥当ではないかと」
「全部脱ぎなさい」
「パンツまで脱ぐとこちらとしても苦しいかなと」
「全部脱ぎなさい」
「例えば、靴下だけは履いたままとか・・・」
「全部脱ぎなさい」
「師匠が脱ぐの手伝いますから・・・」
「全部脱がせなさい」
「いい天気ですね」
「そうですね」
「・・・。ちょっとくらい──」
「全部脱ぎなさい」
「・・・」
「あのう、つかぬ事をお聞きしますが・・・」
「なんでしょう?」
「あの、好色って言われた事は?」
それには答えず、女性は少し体を震わせました。
男は不思議な顔をして女性を抱きしめました。
「まあ、いいですけど・・・。まさか師匠──」
「そのようなことはありません」
女性は凛とした顔で、きっぱりと言い放ちました。
「いいですけど・・・」
男がつぶやいて、一瞬考え事をして、それから、