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借金貴族ナージャ
「困ったわ……300万フランなんて、三ヶ月で用意できるわけないわ」
ナージャはセーヌ川のほとりを歩いていた。
アントニオは、ダンデライオン一座の所有する劇場の権利書を手に入れ、
ローンを一括で返済するよう要求してきた。
それができなければ、ナージャ達一行は劇場を立ち退かなくてはならないのだ。
誰にも迷惑をかけず一人前の踊り子になることを誓ったナージャは、
公爵や母に頼ることもできず、すっかり困り果てていた。
新しい仲間を迎えて浮かれる仲間達に打ち明ける事はできず、一人金策に思い悩む。
うつむくナージャが、行く手を阻むように立っている男に気付いたのは、
彼にぶつかりそうになる直前だった。
「久しぶりだな、ナージャ」
顔を上げると、懐かしい顔があった。
ウィーンで別れてから数ヶ月、時折夢に思い描いていた、彼。
「あなたは……フランシス!」
ナージャは思わず声を上げたが、男はふっと目をそらして答えた。
「……いや、キースの方だ」
「……あ、ごめんなさい」
「いいんだ、なんせ俺達はそっくりさんだからな」
「……あ、あははははは」
「それよりナージャ、どうしたんだ……君らしくないな、下をむいて歩くなんて」
「それが……」
509 :
注意:2005/07/10(日) 22:07:47 ID:yiUdEqT2
ああ、注意投下し忘れました。
CDドラマ借金貴族ナージャの2話目のパロディです。
CDドラマの内容は、
からくり自動車が壊れたので一座は劇場購入(30年ローン)→
不動産屋が倒産し、劇場の権利書がアントニオの手に→
劇場の支配人になったナージャは3ヶ月以内に300万フラン稼ぐハメになる。
そんな感じです。