【羊の】冬目景エロパロ【うた】

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364ある日の羊(1/2)
 血を求めねば生きる事もできない。
 なんて不完全で――なんて無様な生き物なのか。
 月に一度、自身の血を見る生活。その中で思う。これだけの血を流すくせに、なぜ自分
は血を必要とするのだろうか、と。
 眩む意識。揺れる身体。
 けれど、私の足は床をしっかと踏みしめ、立ち尽くす。
 倒れても、誰も助けてはくれない。誰も、自分を抱き起こしてはくれない。
 なら、自分は倒れるわけにはいかない。
 それは単純で明快な解答。
「――気持ち悪い」
 けれど、思いを吐露することを否定できないから、私は吐き捨てるように、呟く。
 自分の血を見ながら。

               † † †

「……千砂。大丈夫?」
 トイレを出て、縁側の廊下を歩きながら、私は柱に身をもたれかけていた。繰り返しわ
き上がる吐き気と眩暈。下腹を覆う疼痛をこらえていると、居間から顔を出した少年が心
配そうに尋ねてきた。
「……少し、気分が悪いだけよ。大丈夫。発作じゃないわ」
 言葉少ない私の答えを訝しく思ったのだろう。一砂は私の前に歩いてくる。
 とんとん、と板を歩く音が、耳に届く。
 傍らに膝をつくと、一砂の手が私の額に触れた。
365ある日の羊(2/2):03/05/24 00:23 ID:L+OkIK1K
「熱があるじゃないか。寝てなくちゃダメだよ」
「……大丈夫よ。少し休めば、楽になるわ。発作じゃないのよ」
「ダメだ。ほら、掴まって」
 ぐい、と私の身体を引っ張りあげる一砂。
 その胸は思っていたよりも大きくて、そして、男の匂いがした。
 あ、と声が漏れる。
「千砂?」
「……なんでもないわ」
 それだけを答えて、私は一砂の腕に支えられながら自室へと戻る。血を流す自分。その
澱物の匂いが一砂に気取られるのではないかと、怯えている。
「……千砂。顔色が悪い。水無瀬先生に来てもらうかい?」
「やめて。別に病気じゃないのよ」
 言うのは正直恥ずかしいけれど、でも、それで水無瀬さんを呼ばれては、もっとみっと
もない。私ははっきりとした言葉ではなく、少しぼやかして言うことにした。
「女の人は、月に一度、大変なのよ」
「え? ……あ」
 一砂も理解したのだろう。真っ赤になって、そっぽを向いている。私だって、バツが悪
くて俯いているのだが。
 しばし、無言で歩く。
 私の部屋の前で、一砂がようやく口を開いた。
「……寝てたら、楽になる?」
 まだ頬は赤い。けれど、その瞳は心配そうに私を見つめている。
 だから。
「……ええ。ありがとう」
 気持ちの悪さをこらえて、私は微笑んだ。