FF10でエロパロ

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654他スレに投稿した分転載
その日も疲れ果てたギップルは寝室のベッドにようやく辿り着くと考える間もなく眠りについた。
どれくらい眠ったのだろう。
圧迫感を感じてうっすら目を開くと、リュックがいた。
「ギップル〜?」
「うわっ!なんだよシドの娘!何してんだお前!」
あわてて起き上がり、ベッド脇の照明に手を伸ばす。
「あ〜、何だとはヒドイ。せーっかくアタシが来てあげたのにさ〜」
そこでギップルが見たのは、肌も露な姿のリュックだった。
概してアルベドの服装は露出が多いが、リュックの今の服は薄い布で作られた、世間で言う「勝負下着」に近いものだった。
「それに『シドの娘』じやなくてリュックって呼べ〜」
ぷうっとふくれるリュックはなかなかに可愛らしいが、状況としてはかなり異常だ。
「わ…悪かった、リュック。謝るから、自分の部屋に戻ってくれ」
ギップルとしては『アニキの妹』というくらいしか意識していないリュックの突然の行動に面食らい、頭が真っ白だった。
「やだ」
リュックはぷいと横を向く。
「やだって、お前」
「ギップルがアタシの事恋人にしてくれるまで帰らないもん」
「こ・・・恋人ってどういう」
ギップルがぱくぱくと口を動かすとリュックはふん、と鼻を鳴らす。
「女の子が夜中に男の子の部屋にこーんな格好でいるんだよ? する事なんて一つじゃん」
数秒後、言葉の意味を理解したギップルは真っ赤になって絶叫した。
「モ・・・モレミニヤネオツヌレダ、ハシミッセウンガ〜!!!!」
そういう所で、ギップルは案外古風な男だった(藁
655他スレに投稿した分転載:03/04/24 23:23 ID:5Ns1TA/A
「うちのオヤジみたいな事言うな〜」
リュックはぴっ!と人差し指を立ててギップルの鼻先を突付いた。
「だいたい、ヘンだよ。なんでみんなアタシにばっかりそ〜いう事言う訳?」
「そっ……そりゃあ、お前……」
ギップルは回らない頭で必死に言葉を探す。
そうなのだ。
アルベド族は15才前後から、労働力として役に立つとみなされた時点で一人前として扱う。
迫害を受けて一族内での結束が固い事もあるが恋愛に関しては開放的で比較的早熟だ。
ギップル自身、少年期に好奇心から年上の女性と付きあった(あるいは遊ばれた?)経験がある。
しかし、自分より年下の少女、中でもリュックはちょっと特別だった。
自分の経験から、あまり年若い女の子が好奇心だけで男と付き合うのはできれば避けさせたかった。
男女間でのトラブルで負うリスクはどうしても女の子の方が高いのだ。
リュックは因習や既成概念に囚われる事のない思考の持ち主で、一族の大人達からも一目置かれていた。
シドの娘だからというより、リュック本人の資質はアルベドにとっての宝なのだ。
しかしその性格は、裏を返せば向こう見ずな上に無防備という欠点ともなる。
リュックが伸びやかな心を失わずに育つよう、周囲の人間達は常に心を砕いて守ってきた。
アルベドでも三本の指に入るといわれた美人だった母に似た容姿を持つリュックは、いろいろな意味で
同世代の少年から遠巻きに眺められている存在なのだ。
「だいたいさぁ〜、ギップルもマキナ派のリーダーなんだから、も〜ちょっと自分の身辺に気を配ったら〜?」
656他スレに投稿した分転載:03/04/24 23:23 ID:5Ns1TA/A
ギップルの考えがまとまらない内に、リュックは次の問題を提起する。
そこで初めてギップルは不自然な点に気付いた。
「お前……どうやってこの部屋に入った?」
「ん?ドアから」
「鍵がかかってただろ?」
「あ〜んなの、ちょいちょいってやったらす〜ぐ開いたよ」
ギップルは絶句する。
それなりの立場にいるために不穏な客が来る事もあるので寝室の鍵は色々工夫して現時点で不法侵入はまず無理という、
最新式の物を使っている。マキナ派のメンバーの自信作だった。
目が覚めたら美少女が夜這いに来ていたなんていう、普通の男ならラッキーとしか言えない状況なのだが
ギップルは色んな意味で頭痛がしてきた。
「シ……じゃない、リュック」
とにかく部屋に返さなければ、とギップルは説得を試みる事にした。
「な〜によう」
「頼むから、部屋に帰ってくれないか。話は明日ちゃんと聞くから」
平静を装って頼んだもののリュックは口をきゅっとへの字に結んでギップルを見た後、冷たく言った。
「イヤ」
リュックがずいっ、と体ごと前に出る。顔と顔がぶつかりそうな所まで接近した。
いつもはターバンで結い上げた髪をまとめているが、今夜のリュックは髪を下ろしている。
のしかかられたギップルの肩や腕にさらさらとリュックの髪が触れる。
「どうしてもって言うなら、キスしてくれたら帰る」
そんな事したらどういう展開になるかわかってるのか、とギップルは叫びたくなった。
「……お前、酒飲んでるのか!?」
「悪い?」
リュックからかすかにアルコールの匂いがしていた。
「考えてもみてよぅ〜。女の子が夜中に男の子の部屋にこ〜んなカッコで、あ〜んな理由で来るなんて
素面で出来るわけないじゃん。乙女心がわかんないやつぅ〜」
そのわかんないやつに迫っているのはお前だと突っ込みたい気持ちを抑えてギップルはその話題から離れようとした。
「そうか。で、どんだけ飲んだんだ?」
「いっぱい」
657他スレに投稿した分転載:03/04/24 23:24 ID:5Ns1TA/A
グラス一杯にしてはまわりが良すぎる。
「たくさん、て事か?」
ギップルの質問にリュックは首をぶんぶんと振る。
「一杯だけ。カップに一杯」
「何飲んだんだ?」
「んとね、野いちごのお酒。このあいだルチル隊長にミヘン名物ですってもらったの〜」
その答えにギップルの顔から血の気が引いた。
「おい!お前が飲んだの「貴婦人」と「騎士」どっちだ!」
「え〜?」
「色だ!ピンクと赤!どっちの色だった!」
「ん〜と、ピンク……」
ギップルは絶句した。
ミヘンの旅行公司でも扱っているが野いちご酒には2種類ある。
まず色が赤いのが「騎士」で、ミヘン街道の野いちごを使って作るワイン。
黒いちごを混ぜて作るので少し渋みがあるが、さほど度数は強くない。
そしてピンクは「貴婦人」と呼ばれ、野いちごをアルコール度数の高い酒に漬けて作る。
基本的に貴婦人は小さなリキュールグラスで供される。
なぜなら優雅な名前と甘い飲み口とは裏腹にアルコール度数がとても高いため、酒に弱い人間が
ビアカップ1杯くらいの量を一気に飲むと大抵アルコール中毒になるからだ。
ギップルが知る限りリュックは酒があまり得意でなかったはずだ。
658他スレに投稿した分転載:03/04/24 23:25 ID:5Ns1TA/A
「大丈夫なのか!?」
血相を変えたギップルの質問にリュックはきょとんとしたように首を傾げた。
「何が?」
「その……気持ち悪いとか、寒気がするとか」
「……ん〜……ちょっと……眠いかも」
リュックの目がとろん、としていかにも眠たげになっていた。
「あ……おい!」
突然、ぱたりという風にリュックが倒れた。
中毒か、とあせってリュックを抱えてみると寝息はごく安らかで熟睡しているようだった。
その一瞬はほっとしたものの、再びギップルは途方にくれた。
こんな格好のリュックを抱えてリュックの部屋に行く所を他人に見られたらどう考えてもいい逃れできない。
それに、酔いつぶれている可能性のある人間に対して絶対してはいけない事が一つある。
それは『一人だけにして放置する』だった。
「こりゃあ、寝ずの番だな……」
ギップルは半ばぐったりしながらリュックを見た。その寝顔は子供みたいに安らかだった。
「……シドに見つかったら、殺されるな……」
また新しい頭痛の種に気付き、ギップルは再び額を押えた。
659他スレに投稿した分転載:03/04/24 23:25 ID:5Ns1TA/A
というわけでここまでリュック×ギップル。
続きはまた次回と言う事で。
660名無しさん@ピンキー:03/04/25 06:11 ID:xzv3Xh4g
>659
(・∀・) イイ!!
続き待ってます
661名無しさん@ピンキー:03/04/25 16:31 ID:Xff6hmNj
>>659
あっちのスレでは歯がゆい思いをしたんですが、もしかしてここでエロバージョン書いてくれるんですか?
期待して待ってます!ハァハァ
662ぽよ:03/04/25 17:44 ID:rhvbG7hf
愛のコケラくずをぐぐる。
と、FFの同人誌の読めるページへ行く。
しかし、画像ではなく、タイトルをクリックしないと行けないという罠。
663姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/25 22:32 ID:k5W94qDR
>>661
いや、あまり「エロ」を期待されているとがっかりな作品かもしれません。
私の過去作品の一部が千一夜サイトに収録されてますので
それを読んでいただければわかるとは思いますが私はあまりハードなラブシーンは
書けませんので(汗
萌え小説レベルなんですがもう向こうの板ではえっちがらみシーンがかけないので
こちらに投稿させてもらおうと思った次第で。
ラブシーンonlyではなく前置きとかもしっかりありますので
勝手な言い分ですが、不要と思われる部分がありましても
生暖かくスルーで対処していただければと思ってます。
リュックは目を覚ました。
ベッドの中で寝返りを打つ。
奇妙な違和感があった。記憶にある香りがする。
『あれ?これってギップルの?』
清涼感のある薄荷の混じった煙草の香り。
リュックはベッドから飛び起きた。
部屋の中央のテーブルでは、半裸のギップルが煙草を片手になにやら図面らしき物を書いている。
『え?なんで、どういう事?』
そう思った瞬間、頭がずきんと痛む。
「あたたたた……」
リュックのうめき声に、ギップルが振り返る。
「おう。目ェ覚めたか」
「な……なんで〜?」
リュックは動揺する。
ふと気付くと自分がシャツ1枚で、その下は寝巻き代わりにしている下着だと気付く。
目の前には上半身裸で、麻のゆったりしたパンツを穿いたギップル。
「覚えてねぇのかよ?」
ギップルはあくびを一つすると頭をかく。
『これって……この状況って……』
リュックはがんがん痛む頭で昨夜の事を思い出す。
「飲むか?」
とどめにギップルにコーヒーを差し出されリュックは顔からすーっと血が引いていくような気がした。
『全然おぼえてないんだけど……これって、そうゆう事、だよね』
リュックはコーヒーカップを受け取るとそっとギップルを見た。
ギップルは窓の鎧戸を開ける。
砂漠の夜は冷えるので、冷気がすーっと部屋に満ちる。
「夜明けまで後1時間ってとこか。さすがに冷えるな」
ギップルは再び窓を閉めた。
「あのさ……」
ギップルはなんだ?という感じでリュックを見る。
「もしかして、これってそういう事?」
ギップルは2秒ほど、リュックを見たまま固まった。
「お前……本当に覚えてないのか」
リュックはこくんと頷く。
ギップルは疲れきった表情で数回首を振った。
「なになになに?何があったのよう〜!」
リュックは手に持っていたカップをベッドの横のチェストの上に置く。
そしてベッドから出かけて自分の格好に気付き、再びベッドの中に飛び込む。
普段肌を出す服装をしていてもあれは一応服な訳で、下着は別物だ。
『嘘。何で?何にもおぼえてないよ〜』
パニックを起こすリュックを見てギップルは苦笑した。
「何もねえよ」
「えぇ?ホントに〜?」
「酔っ払ってる女に無体な事するほど俺はケダモノじゃねえ!」
疑わしげなリュックの声にギップルの声のトーンがあがった。
二日酔いのリュックの頭がずきりと痛む。
「たたたた……」
「ああ、ワリィ」
ギップルがすぐそれに気付く。
頭痛のために目にうっすら涙を滲ませたリュックはかわいらしく、ギップルは思わず唾を飲んだ。
「とにかく、今のうちに部屋に戻れ」
ギップルは邪念を払うためにリュックから顔をそらして言った。
「うん…・・・あのさ、このシャツ……」
「着てろ!!誰かに見られたらどうすんだ、その格好!!」
ギップルは思わず振り返りそうになる。
「うん……借りてくね……ごめんね〜」
リュックの声が背後で移動し、ぱたんというドアの閉まる音が続いた。
ギップルは仮眠しようとベッドに入った。
薄いアルコールの匂いに、リュックの使っているらしい花の香りのコロンの匂いがした。
ギップルはぎゅっと目を閉じて、毛布をかぶった。
なんとか人に見られずに部屋に戻ったリュックはベッドにもぐりこむ。
『なんでギップルの部屋に行っちゃったんだろう』
頭痛のする頭で考える。
ベッドの横には、ルチル隊長からもらったリキュールの瓶とグラスがある。
『ああ、そうだ眠れなくてお酒飲んだんだ……』
現在リュック達がいるのは以前ホーム跡に近い砂丘だ。
アルベドにとってホームというのは未だに心の拠り所で、特に年配者にはその傾向が強い。
スピラの人間の中でアルベドは平均寿命が短い方だが、死別した母や忙しい父にかわってリュックの面倒を
みてくれた一族の女性達は初老といっていい年齢になっている。
砂漠の生活は楽ではなかったはずだが、それでも誰からも迫害される事なく暮らせたホームで
得た安らぎは何にも変えがたい物らしく、今でもしきりに話題にのぼる。
「生きているうちに、もう一度みんなで暮らせたらいいねぇ……」
そんな話を聞いて、黙っていられる性格ではない。
リュックは漠然とした希望を実現させるために一族に声をかけ続けた。
そしてようやく世の中が落ち着いてきたのと機械が普及してアルベド全体に余裕が出来たので
ホームの再建計画が具体的に持ち上がり、調査と計画を手伝うためにリュックはカモメ団から
一時離脱してここに来たのだ。
「久しぶりだな、リュック」
潮に洗われた、アルベドの髪と同じ光の色の髪を揺らして、アイツは言った。
その時の事を思い出してリュックはきゅっと唇を噛む。
ずっと、願っていたいた事のはずだった。
ユウナの幸せは、アタシの願い。
そのはずだった。
島に引きこもって大召喚士としての務めを黙々と果たすユウナを旅に連れ出す時、ワッカに言った事は嘘じゃない。
なのに。
願いが現実になった時感じたのはひどく苦い、怒りに似た気持ちだった。
幸福そうなユウナ達を見て、アタシもうれしかった。
それだけは嘘じゃない。
でも、心のどこかで納得できない自分がいる。
『どうして、アイツだけなの?』
シンとの戦いの後、アイツが一体どういう存在だったのか誰も真実は知らないままだった。
状況から事実に近いと思える真相の予想はできたけれど確信が持てなくて。
だからユウナは旅に出た。
でも、アタシにはわかってた。
本当は、アイツは生身の体を持たない存在だって。
旅を続けながら、ユウナの願いが叶う事を一緒に祈りながら、どこかでそれは夢でしかないって
ユウナが折り合いを付けられればいいと思っていた。
それがアタシの、本当の本心。
だって、アタシも同じ思いをしたから。
伝説のガード。
今や自分がそう呼ばれる事すらある、スピラの英雄の代名詞。
アーロン。
ほんの僅かな蜜月の間、あの腕の中での乱れにまかせてしか口にできなかった言葉。
アタシは最後まで意思を持ってその名であの人を呼んだ事なんてなかった。
『だって、呼べなかったんだもん』
恋人と呼ぶなんてできない、大きな、大事すぎる存在だった。
アルベドの中で族長の娘とかいろんな理由で皆が自分に気を使っているのがわかって、
それがイヤでもどうにもならないってわかった時、従姉が召喚士になったのを知って一族から飛び出した。
そして同じガードの先輩として出会った。
初めて出会った時はおっかなくて、コワい人だった。
子供扱いされたのがくやしくて「おっちゃん」なんて呼んでた。
けれどアタシのガードとして未熟な部分を子供扱いする以外、ごく普通に接してくれる初めてのオトナだった。
あの短い期間の逢瀬の事を思い出すと頭の芯がじん、と痺れて体が熱くなる。
強がりばっかり言っても本当は何も知らないコドモを一人前の女としてきちんと扱ってくれた。
二日酔いの鈍痛が、甘やかな興奮に摩り替わる。
『あ……また……』
リュックは体の中から柔らかに蜜が満ちるのを感じた。
アーロンに抱かれている時の事を思い出すと、いつもこうだ。
普段排泄の時でもなければ自分でも触れないその場所が、アーロンの事を思い出すと繻子のようになめらかに潤って
溶けるように柔らかくなる。
下着の上からそっと触れる。
熱い。
体が、あの人を欲しがっている。
『ごめんね。でも、ムリなんだよ』
リュックは指をそっと滑らせる。
「あ……」
思わず、声が洩れる。まぎれもない、「女」の声。
自分が、こんな声を持っているなんて知らなかった。
初めて自分で聞いた時は恥ずかしくて、声を抑えて我慢していたら面白がるような顔をして、
声を出さずにいられなくなるまで体中を熱っぽく愛撫された。
唇が。指が。舌が。全部覚えてる。
アタシでさえ知らない、体中の快楽の地雷を全部探し当てられた。
「だめ……だったら……」
ほんの少しだけのつもりだったのに、わずかな愛撫にも反応するように慣らされた体が欲しがる。
気が付くと指が下着を割って蜜の滴る場所をせわしなく探っていた。
肌が熱感を帯びて随所に刻印を刻まれた時の事を思い出す。
熱い、刺激的な息遣いが耳に蘇る。
「あっ……」
快感がゆっくりと足先まで広がっていく。
蜜の中で体の芯が熱くなって侵入してきた指を捕らえようとする。
669なんかこの辺アーリュ(汗:03/04/27 23:25 ID:7yswcP6R
「あっ!…・・・あっ……!!」
抑えていたはずの声がかすかに洩れる。
昇りつめた快感が、一瞬にしてすっと姿を変える。
ベッドにいるはずの体が、どこかへ墜落するかのような不安感。
軽い痺れと一緒にリュックは絶頂の海に投げ落とされた。
はぁっと息が洩れる。
最近、こんな風に感情が昂って眠れなくなる事が多い。
昨夜だってそうだ。
発泡水で割れば大丈夫だと思って強いお酒なのに一気に飲んだ。
確かにこのベッドで眠ったつもりなのにギップルの部屋に行ったなんて信じられなかった。
ギップルの事は嫌いじゃない。今よりずっとコドモだった頃は只のやんちゃなガキって感じだったけど、
それでも女の子には優しかった。お父さんがそういう風に躾けていたせいかもしれないけど。
少し大きくなってからは格好良くなったせいもあるけどすごくもててた。
そういう意味ではアタシもちょっとは気になる相手ではあったけど。でもそれは決して恋なんかじゃない。
あの目のせいだ。
アーロンと同じ隻眼。
根はちょっと古風な性格だとかほんのわずかな、欠片のような面影をギップルの中に探している。
全然似てないのに。
ユウナが大召喚士になって「永遠のナギ節」が訪れて、今や伝説のガードとは生きている自分達の事を指す。
消えてしまった人たちは忘れられたわけではなくても確実に皆の記憶から薄れて行こうとしている。
『アタシもそうなの?』
忘れたわけじゃない。もう触れ合う事ができないってあきらめただけ。
だから?アイツだけが戻って来れたの?
リュックは自分の内側に芽生えていた不快な棘の正体に気付いて愕然とする。
あの苦い気持ちは嫉妬じゃない。罪悪感だ。
『帰ってこれなかったのは、アタシのせいなの?』
胸が痛かった。
670なんかこの辺アーリュ(汗:03/04/27 23:26 ID:7yswcP6R
それは違うってわかっている。
消えていく時、アーロンは自分のした事、起きた結果の全てに満足していた。
アタシを受け入れたのも、何もないまま自分が消えるより、その方がアタシが納得できるってわかっていたから。
そういう人だった。アタシだってちゃんとわかっている。
「あれ……」
気が付いたら、泣いていた。
頬に触れて初めて自分が涙を流しているのに気付いた。
いつからアタシは、こんな風に泣くようになったんだろう?
リュックはそっと窓を開けた。
太陽が昇り始めている。
眠るのをあきらめるとリュックは着替えて宿舎の外に出た。

太陽は既に地平線から離れていた。
昇り始めの太陽はひどくまぶしい。
リュックはゴーグルを下ろすと宿舎の裏手のオアシスに向かった。
砂漠の真ん中にも関わらず豊富な水量の泉はホームの再建に欠かせない。
泉の横に、簡単なシャワー装置がある。
リュックは下着を脱いで勢いよくバルブをひねると水を浴びた。
水温は低かったが、寒いとは思わなかった。
シャワーを浴び終わっても、なぜか宿舎に戻ろうという気分になれなかった。
ギップルに会うのが気まずいような気もしたし、一人になりたいという気分でもあった。
「ま、いっか。まだ皆起きてこないだろうし」
リュックは泉のそばにすとんと腰を下ろした。
泉のそばには、スナナツメの低木が生えている。エボンの人間は沙棗(さそう)と呼ぶのだ、と教えてもらった。
ホームがなくなってしまったあの時もこの花の季節だった。
リュックを育ててくれたおばさんが、逃げ出す時にほん一枝折り取って来たのだ。
良い香りの花がつくこの木はリュックの母親が好きだったから、と手渡された時涙が出そうになった。
アタシは機械の扱いは得意だったけど植物の事は殆どわからなかったから、ただ水に挿しておく事しかできなかった。
671なんかこの辺アーリュ(汗:03/04/27 23:45 ID:7yswcP6R
「ほう、沙棗か」
そう言われて、ひどくびっくりしたのを覚えている。
だって、花の名前なんて知らない人だと思っていたから。
「ベベルには稀な木だ。心を慰める香りがすると言って、エボンでも珍重されている」
言葉少なな人だったけれど、優しい人だった。
シンを倒した後で、ホームから逃げた人達に会いに行った時小さな鉢植えを渡された。
あの騒ぎの合間にアーロンが挿し木したのだと聞かされた。
「『リュックの大切な人の木だそうだ』って、言われまして」
アーロンに頼まれて世話をしていたと言う人は、そうリュックに告げた。
その沙棗は今はミヘンの旅行公司に預けてある。
いつかホームが再建出来たらここに一緒に植えるつもりだった。
かすかな風が、沙棗の花の香りを運んでくる。
子供の頃はこの香りは苦手だった。
甘く濃厚で、どこか寺院で焚かれる香の匂いに似ていた。
後になって知った事だけど、この花の下は恋人達の待ち合わせ場所だっていう言い伝えがあるらしい。
最もそれはアルベドの言い伝えじゃなく、最近になってごくたまに通りかかるキャラバンの人に聞いた話。
「昔、砂漠に栄えた国の娘は、白いベールをかぶってこの木の陰で恋人を待った」
随分少女好みの話だった。
キャラバンの人は女の子が好む小さいガラス玉のアクセサリーなんかも扱っていたから買い物客の気を引こうとして
適当に作った話だったのかもしれない。
最もそれを喜びそうな年代の客はここにはリュックくらいしかいないけれど。
ホームの存在を隠していた頃だと商人にそんな話を聞くなんて考えられない話だった。
「なんだ。ここにいたのか」
不意に背後から声をかけられ、リュックは慌てて振り返る。
ギップルが、そこに立っていた。
672名無しさん@ピンキー:03/04/27 23:47 ID:kLydoHkM
アーリュキタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!!
すんません正直アーリュの方がハァハァしますた
673姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/27 23:48 ID:7yswcP6R
ハアハア、やっとギップルキタ━━━ヽ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ノ━━━!!!!
とか自分で言ってみる。

つか、ヌルいシーンばっかり続いててスマソ。
674姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/27 23:50 ID:7yswcP6R
>>672
いや、そういうかたの方が多いと思います。
最初のギップルのとこは前年齢対象として書いてますし。

良かった・・・誰も読んでないかと思った(´Д⊂
レスありがとうございます。
675名無しさん@ピンキー:03/04/28 00:12 ID:d1n1iqin
ギップルギップルギップルハァハァハァ
続き待ちきれません
676名無しさん@ピンキー:03/04/28 00:46 ID:R5YDG6nO
>姐 ◆ane/8MtRLQさん
読んでないなんて、とんでもない
(;´Д`)ハァハァしながら続きを待ち続けております。
アーロン×リュックにハァハァ
ギップル×リュックにハァハァ
ヒトとしてもう(´・ω・`)ダメポ
677ギップル×リュック:03/04/28 21:14 ID:1rYydGKw
「気分、悪いのか」
尋ねられて初めて頭の鈍痛が消えていた事に気付いた。
「うん。大丈夫みたい」
「そうか」
ギップルはリュックから目を逸らした。
「ギップルもシャワー使いに来たの?」
リュックの問いにギップルは首を振る。
「二日酔いの薬だ」
ぽんと投げられたのは小さな薬の瓶だった。
「一応、渡しとく。気分悪くなったら飲め」
わざわざ探しに来てくれたのか、と思わず口元に笑みが浮かんだ。
「ありがと」
「お前の分のメシは、置いてあるから」
「え?もう皆出ちゃった?」
宿舎に帰りかけたギップルはリュックの上げた声に立ち止まった。
「ああ、気にすんな。ホバーを一台残してあるし、整理の済んでない調査結果もあるから
調子悪ィみたいだったらそっちやってくれ」
何でもないようにギップルは言う。
心配してくれているんだ。
それは素直にうれしかった。けれどそれと同じくらい、切なかった。
『アタシも、こうやってだんだんおっちゃんの事、忘れていくのかな』
誰か、男の人に優しくされたり好意を向けられた時、いつもどこかで罪の意識が心にストップをかける。
アーロンが聞いたらきっと怒るだろうけれど。
触れると痛い棘はまだ、胸の中に埋まったままだ。
「やっぱりお前、顔色悪ィぞ」
いつの間にかそばに来ていたギップルが顔をのぞきこむ。
さっきまで吸っていたらしい煙草の香りがわかるくらいの距離でアタシを見ている。
「だ…ダイジョブだよ」
目が覚めた時の事を思い出して胸がドキドキしてきた。
ヤバい。これはたぶんきっと、すごくヤバい。
678ギップル×リュック:03/04/28 21:15 ID:1rYydGKw
「たぶん、この花の匂いのせいだよ」
とっさについた嘘はあながち的外れでもなかった。
立ち並ぶ沙棗の茂みは一斉に黄色い花を付け、濃密な香りが泉の周りに淀むように漂っている。
「ああ、沙棗か」
ギップルの何気ない言葉に、リュックは驚いた。
アルベドの人間は普通この花をその名前で呼ばない。大抵スナナツメとか「匂い花」と呼ぶ。
「なんで、知ってるの……?」
リュックは思わず尋ねた。
ギップルはその問いに少し言いよどんでから答えた。
「なんでっつーか……俺の親父が植えた木だからな」
「ギップルのお父さんが?でも、なんで?」
リュックはそう言ってから、子供の頃の事を思い出す。
アルベドの中では少々変り者で、いろんな植物をホームに持ち込んでいた人だ。
「砂漠に植物を植えれば緑化が進んで、雨が降りやすくなるとか言ってたな。沙棗は乾燥に強いし実は食えるから
ちょうどいいって思ったんじゃないのか?俺はあんまり好きじゃないけど」
ギップルが花の名前を知っていた事はおろか、花に対して好き嫌いがあるなんて思わなかったのでリュックは
驚いてギップルを見た。
ギップルはどこか遠い目で沙棗を見ている。嫌いというにしては優しくて寂しい目だった。
「本当に嫌いなの?」
ギップルはリュックの言葉に軽く溜息をついた。
「この花を見るとガキの頃に死んだお袋を思い出すんだよ」
ギップルは沙棗の花を摘むと指先で弄んだ。
「親父は砂漠の緑化とやらに夢中でろくに帰って来やしねえ。お袋は死ぬまで、じっと待ってるだけだった。
アルベドの女にしちゃ珍しいよな?ただじっと待ってるだけなんて」
ギップルは摘んでいた花を地面に落とした。
「この花な、嫌な言い伝えがあるんだ」
ギップルがリュックを振り返った。
「言い伝え?白いベールをかぶってこの木の陰で恋人を待ったってやつ?」
リュックは最近知ったばかりの話を思い出す。
ギップルは首を振った。
679ギップル×リュック:03/04/28 21:15 ID:1rYydGKw
「似てるけど、ちょっと違うな。女が待っていたのは恋人じゃなくてキャラバンに出た夫だ。
約束の日が来ても帰らない夫を、この木の陰で夫に贈られた白いベールをかぶって待ち続けて死んだんだ。
元々この花には香りなんてなかったが、自分が待っている事に気付いて欲しい女の祈りのために強い香りがするようになった。
俺が聞いたのはそういう話だ」
「そうなんだ……」
「ホームを作る時に見つけた遺跡の壁に彫ってあったらしいけど、どうだかな。元々この花はこの辺にはなかったし」
「え、じゃあ、どうして?」
「親父がたまたま持ち帰った花をお前のお袋さんが気に入ったから植えたんじゃないかって言われた。
親父は昔シドとお前のお袋さん取り合ってたらしいからな。どっちにしろ砂漠に生える木なんてそうないから
そういう理由だけで植えたわけじゃないだろうけどな」
「嘘!!」
「ホント。まあ、どっちもお袋が言ってた話だから多少脚色は入ってるかも知れねーけど。
酒の席だと未だに出る話だから取合いしてたのは本当みたいだぜ」
「あのオヤジがねぇ……」
思わず放心しそうになっているリュックを見てギップルは笑った。
「まあ、あいつらだって若い時はあったわけだしいろいろあらぁな」
「まあ……確かにそうなんだけど」
リュックは思わず膝を抱え込んだ。
ギップルもその隣に腰を下ろした。そうしてリュックを盗み見た。
「あのな」
ギップルは意を決して尋ねた。
「ん?何?」
リュックは膝を抱えたまま、ギップルの方に顔を向けた。
「前から聞こうと思ってたんだけどよ、お前なんで飛空挺を降りたんだ?」
ストレートな質問にリュックは慌てた。
「それは……ホームを再建するために」
ギップルはそれを遮る。
「ホームの再建計画は今に始まった事じゃないだろ?確かにお前が船を降りたあたりから本格化したって
いうのも確かなんだけどな。……やっぱり、つらい事でもあったんじゃないか?」
痛い所を突かれた、というのがリュックの本音だった。
680ギップル×リュック:03/04/28 21:17 ID:1rYydGKw
「なんで、そ〜いう事、言うワケ?」
悟られまいというあせりが、怒りに摩り替わる。
「カモメ団のみんなに失礼だよ」
リュックの声に滲む怒りに気付いてギップルは慌てる。
「いや、そういう意味じゃなくて」
「じゃ、一体ど〜いう意味なのさ〜!」
「アイツのせいじゃないかと思ったんだ」
心のどこかで止めておけ、という声がしていた。これ以上この話はするなと。
けれどリュックの言葉は止まらなかった。
「アイツって誰よ」
そしてギップルの声が、その答えを紡ぐ。
「ユウナ様のガード」
ギップルにとってそれが誰を指すのか、リュックにはわかっていた。
けれどその言葉に、リュックの体の血がすーっと冷えたような気がした。
「ザナルカンドから来たとかいう、アイツ、戻って来たんだろ。昔バージ=エボン寺院でサルベージした時
一時期、俺らの仕事手伝ってたって聞いたからさ、もしかしたらっ、てな」
ギップルの言葉は半分耳に入らなかった。
安堵と同時に、痛みが走った。
アタシの恋は誰にも知られないまま、アタシの中で朽ちて行くだけだ。
「飲めない酒飲む前に、吐き出した方がいいぜ。相談にならのってやるから」
ギップルは務めて明るく言った。そうすれば昨夜の事だって笑い話になる。
そっと横を盗み見ると、リュックは再び膝を抱えてうつむいていた。
「悪ィ。余計な事聞いたな」
ギップルは無言になったリュックを見て表情を曇らせた。
「ギップルにはわからないよ」
リュックは顔を上げ、うっすらと笑みを浮かべて言った。泣き笑いのような、悲しい顔だった。
「きっとわかんない。一生かかってもわかんないよ」
瞳を潤ませて尚、リュックは射抜くような目でギップルを見た。
一瞬、気圧された。思わず背筋がゾクっとするほどだった。
そこにいるのはシドの娘でもアニキの妹でもない、リュックという女だった。
681ギップル×リュック:03/04/28 21:30 ID:1rYydGKw
「何が……あった?」
ギップルは口の中が乾くような気がして、上手く喋れなかった。
一体何が、あの無邪気だったこの娘をこんな風な表情をさせるようにした?
答えは、とうにわかっていたような気がした。
酔って恋人でもない男の寝室に忍びこむような自棄を起こす理由。
「ギップルには関係ない事だよ」
リュックはいつもの声に戻って答えた。
「お前をそこまで追い詰めたのは何だ、って聞いてる」
ギップルの声が、静かに怒っていた。
関係ない、と繰り返しかけてリュックは声が出なくなった。
隻眼の、燃えるような瞳。
胸が一瞬苦しくなって、肌のどこかが粟立っているような感覚。
体の芯に小さな火が灯ったようになって動けなかった。
「答えろ」
大きな声ではない。むしろ静かな、低い声だった。
「嫌……」
リュックは囁くような声で答える事しかできなかった。
「リュック」
その声は、必要に迫られて呼ぶのとはあきらかに違う響きだった。
女を捕らえようとする、男の声だった。
ギップル自身、突然自分の中を荒れ狂う、嵐のような感情に翻弄されていた。
一方では止めろという自制の言葉が聞こえ続けている。
この先に一歩でも踏み出したら、もう引き返せない。
目の前ではリュックが自分を見て、怯えてさえいる。
止めろ。それ以上何かしたらリュックが傷つく。
理性ではわかっているのに、手が、リュックを捕まえようと目の前に伸びている。
掴んでしまったリュックの手首は、ひどく細かった。
682ギップル×リュック:03/04/28 21:45 ID:1rYydGKw
「昨夜、お前が俺に言った事、本当に覚えていないか?」
自分の口から出た意外な言葉にギップル自身が驚いた。
リュックは黙って首を振る。
「俺がお前を恋人にするまで帰らない。そう言ったんだ」
「こ……恋人って?」
昨夜とは逆にリュックの方が空気が足りないように口を動かしながら呟く。
ギップルは荒々しい、と言えるくらいの勢いでリュックの唇を奪った。
「……こういう事だろ」
自分の言葉と同時に、背後で橋が焼け落ちるような音がしたような気がした。
リュックの問いに行為と言葉で答えた後、ギップルはリュックに触れる手の力をわずかに緩めた。
頼む。拒絶してくれ。
ギップルは自分の行為とは裏腹に、願うようにリュックを見た。
もう、自分では止められない。
けれど、そんな希望に逆らうようにリュックの体が力無く自分の腕の中に崩れた。
ほんのわずかに開いた花のような色の唇は明らかにギップルを誘っていた。
ギップルは再びその唇に触れた。
今、自分が一番大切にしていたはずの物が自分の中で音を立てて壊れていくのを
ギップルは止める事ができなかった。
それなら、それでかまわない。
ギップルは吹っ切るようにリュックの服に手をかけた。
683姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/28 21:47 ID:L7p4EAV2
やっといいとこ?まで来ましたが一回ここで失礼します。
11時過ぎてもまだ起きてたらもうちょっとがんばりますけど。
あんましハアハアできない話でスマソです(汗
684名無しさん@ピンキー:03/04/28 23:33 ID:WveS/q3D
いいとこだー!
ハアハアってゆうかドキドキします。
685名無しさん@ピンキー:03/04/29 00:29 ID:qL5Nym8Q
ギ、ギップルカコイイ…萌えた、すまん
686名無しさん@ピンキー:03/04/29 00:46 ID:z+9OWDvG
ハイポリでもローポリでもなく、ムービーのふたりの姿が漏れの脳内ルカシアターで上演されてるよ!
すんげー萌えを感じてまつ
687姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/29 01:35 ID:4+GFAA4z
がんばりましたが今夜はもう寝ます。
どうせ黄金週間どこにも行けないし…。
>>684
>>685
この先が問題ですよね。
期待を裏切らなければいいんですが…(´・ω・`)ショボーン
つか男キャラを書いてカコイイって言ってもらえるととてもうれしいです。

>>686
> 脳内ルカシアターで上演されてるよ!
ワラタ。686さんがルカシアターの入口のところで映像スフィアを
セットしているわけですね?
やっぱりスフィアのタイトルはこの話のタイトルなんだろうか…。
カコ(・∀・)イイ!奴を考えないとダメかな…。

ではまた明日(っていうか今日)〜(予定)
688名無しさん@ピンキー:03/04/29 10:31 ID:NIBBtMG+
689動画直リン:03/04/29 10:39 ID:ep21piDJ
690名無しさん@ピンキー:03/04/29 10:55 ID:ycXeBC44
691名無しさん@ピンキー:03/04/29 17:03 ID:FUNJ20le
姐さん続き期待してまつ!!
ホント、ハァハァっていうかドキドキします。ときめきを感じます。
692Lover Soul:03/04/29 18:10 ID:iDYPVt5d
最初からさほど体を覆っていない服のせいで、脱がすにはさほど時間はかからなかった。
アルベドが必要以上に肌をさらす服を着たり装飾に金具を多用するのには理由がある。
エボンへの反逆者とみなされているために武器を向けられる事が多いからだ。
肌をさらすのは、武器を携帯していない事を明示するため。
金具を多用するのは万一危害を加えられた時のダメージを軽減するため。
リュックの肌を傷つけないようにギップルは自分の肩からショルダーカバーを引き抜くように外した。
アルベドの常として、成人になると体の一部に刺青を入れる風習があるが、リュックの肌は隅々まで白く、
染みも黒子も殆どといっていいほどなかった。
豊かというほどではないが、ほどよい大きさに柔らかく盛り上がった胸に触れた。
途端にぴくん、とリュックの体が反応する。
ぎこちなさのない、艶かしいその様子にギップルは自分の予想が確信に変わるのを感じた。
リュックは既に女なのだと。
言い様のない感情が喉元までこみ上げる。
そしてそれは情欲の火に油を注ぐ。
ギップルは貪る様にリュックにキスをした。
リュックは、逃げなかった。舌が滑らかに動いて応じる。
細い指が自分の背中でしなやかに踊るのを感じて、ギップルはリュックを抱く腕にことさら、力を込めた。
体が熱い。
太陽は既に昇っている。
組み敷いたリュックの体の上にオアシスを囲むなつめ椰子の葉と自分の体が濃い陰を落としている。
リュックは眩しそうに目を細めた。
ギップルの唇が、肌の上を這うように愛撫する。
「あっ……」
胸の頂を唇がかすめた。
たまらずにリュックは声を漏らす。
ギップルは探り当てるようにリュックの体に触れ続けた。
693Lover Soul:03/04/29 18:11 ID:iDYPVt5d
ウエストや背中のあたりのほんの狭いエリアに口付けられたられた時、リュックはぞくん、とするほど
自分の体に強い刺激が走るのを感じて驚いた。
既に男に抱かれる事に慣らされてると思っていたのに、それは未体験の感覚だった。
最後に一枚だけ残されていた下着の上をギップルの指が滑ったとき、そこから体中に電気が走るような気がした。
とっさに、それまでの癖で声を抑えようとした。
「……ぁ……」
それでも、こらえきれずに喘ぎ声が零れる。
「……誰もいねぇぞ?」
挑発するような声だった。ギップルは意地の悪い、とさえ言うような笑みを浮かべてリュックの耳元で囁いた。
「……イジワル」
涙目になったリュックの抗議にかまわずギップルの指が下着の上から円を描くように動く。
「あっ!」
思わずリュックは背中を逸らせた。乳首が自分でもわかるくらい硬く屹立している。痛いくらいだ。
『どうして?』
セックスをするのは初めてでもないし、緊張しているつもりもない。
なのに今日はいつもと違う。体が異常に反応する。
ギップルは確かに上手いのかもしれないけれど、こんなのってヘンだ。
「あっ……ああっ!!」
ギップルの指が突然下着と肌の間に割り込んだのだ。
体で一番敏感な場所に触れられて、一瞬頭の中が真っ白になった。
するり、と当たり前のように指が体の中に入ってくる。
「ダメッ!!」
とっさにリュックは首を左右に振った。
驚いたようにギップルが指を抜いた。
「イヤッ……」
指を抜かれた瞬間、また敏感な場所をギップルの指がかすめた。
「悪ィ……痛かったか?」
ギップルがわずかに理性を取り戻したように言った。
「違……」
リュックは思わず片手で顔を覆った。
694Lover Soul:03/04/29 18:13 ID:iDYPVt5d

「このままじゃ、アタシ、ヘンになっちゃう……」
「ヘン?」
ギップルがそっとリュックの手を顔からどかす。
「ヤダ。今アタシ、変な顔してる」
リュックは必死に顔を逸らす。
確かに、普段なら見られない表情だった。
乱れきって、苦しそうとも、放心しているとも取れる艶っぽい顔だった。
「見な……」
ギップルは尚も顔を背けようとするリュックのあごを指で持ち上げるとキスをした。
それにも最初だけリュックは抵抗した。
最初にしたのとは違う、優しい、甘いキスだった。
ギップルの舌がリュックの歯の間から侵入する。
ほんのわずかに、煙草の味がした。
「ん……」
リュックは自分の洩らす甘い声を、どこか遠くから聞いているような気がしていた。
キスをしたまま、片方の胸がギップルの掌の中で柔らかく捏ねられている。
頭のネジがどこかに飛んでいきそうだった。
息がさっきより荒くなる。
サイドで結んで止めていた下着はいつのまにか解かれて片方の腿に所在無げに絡まっていた。
秘所が熱を帯びる。
わかってる。
アタシは今、ギップルが欲しくて仕方ないんだ。
リュックは手を伸ばして、ギップルの服に触れた。
一瞬とまどったギップルを他所に、リュックはギップルの服の前をはだけた。
思わず手を止めたギップルの服をリュックはそっと脱がせた。
リュックはギップルの胸に口付けた。そして指をギップルの下着に滑りこませる。
細い指がしなやかに動いて、ギップルの股間を刺激する。
695Lover Soul:03/04/29 18:13 ID:iDYPVt5d
実際、ギップル自身も限界が近かった。
心のどこかに残っているわずかな罪悪感が、行為に逸ろうとする自分を押しとどめていたから
かろうじて暴走しないでいられたのだ。
しかしリュックが自分の行為に応じて、受け入れようとしている。
ギップルは名残惜しいと思うのを抑えてリュックの手を止めると再び自分の下に組み敷いた。
ギップルはさっきより慎重にリュックの体を愛撫する。
舌が、蜜のあふれる場所に届いた時、リュックはもう自分の体と感情に逆らわなかった。
「……気持ちイイ……」
ため息と一緒に洩れた言葉にギップルが反応する。
今、こうして自分の行為によって乱れきったリュックの姿を間近にしているのに興奮するなという方がムリだ。
リュックに触れる手が荒々しくなりそうなのを必死に自制しながらギップルはリュックの秘所に指を走らせた。
指でリュックの内側をくるりとなぞる。蜜が滴るくらいにあふれていた。
「あっ!!あっ……イイの……そこ……」
リュックが熱に浮かされた病人のように、切れ切れに呟く。
ギップルは既に痛くなり始めた自分の一部をさらけ出した。
リュックもそれに気付く。
目が合った時、思わずギップルは最後の罪悪感から視線を逸らした。
突然、リュックが片方の手を掴んだ。
「……いいよ、好きにして」
眩暈に似た感覚と、喜びとも驚きともいえない気分がこみあげた。
−変になりそうなのは、俺の方だ。
ギップルは一気にリュックの中に侵入した。
「あっ!!……熱いよ……」
リュックが悲鳴のような声を上げる。
『それはこっちのセリフだ……』
ギップルはリュックを突き上げながら、意識が飛びそうな気がした。
リュックの中はひどく熱い。そして今までに体験した事がないくらい、しめつける。
「やだ……なんか……怖いよ……」
涙声になったリュックが、必死にしがみついてくる。
696Lover Soul:03/04/29 18:15 ID:iDYPVt5d
木陰とはいえ、砂漠の暑さは相当なものだ。今は夜明けからさほど時間は経っていないが、それでも隙間から差し込む
日差しは容赦なくギップルの背を焼く。
そんな事すら、ギップルは忘れていた。
リュックはギップルの動きに合わせて、腰を大きくグラインドさせた。
二人の間には流れ落ちるような汗が滴っている。
「ダメ……アタシ……」
リュックは意識がふっと遠のきそうになってそう呟いた。
蜜の中で煮詰められていくような感覚。
「あっ……あっあっ……」
喘ぎ声の間隔がどんどん短くなる。
薄目を開けると、ギップルの顔が間近にあった。
リュックは夢中で、キスをした。
その瞬間、ギップルが今までで一番深く、リュックの体を突いた。
ふっ、と落ちるような感覚がした。
「あーーーーーーっ!!」
叫び声を残して、リュックは失神した。
それにほんのわずかに遅れて、ギップルも果てた。
激しい快感に、避妊の事を考える余裕さえなかった。
ほんのわずかな時間が過ぎて、リュックは目覚めた。
顔はとめどなくあふれる涙でぐちゃぐちゃになっている。
『アタシきっと今、すごく不細工だ……』
ギップルから顔を背けたリュックの額に、ギップルはそっと触れた。
697姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/29 18:20 ID:iDYPVt5d
キャー!!!すみませんすみません。
期待させておきながらこの程度ですみません!!
粘膜系の表現ってダメなんですよ私←言い訳にもなってない。
ギップルカコイイって言ってもらったのになんかイマイチうまく書けませんでした。
出だしの迫り方は自分で言うのもなんですがワリと上手くいったんですけれど・゚・(ノД`)・゚・
私は心理描写で萌えっていうのに比重置いてるので所詮はこの程度…。
アフターセクスでもちっと引っ張りますけど
「もう(・∀・)イイ!カエレ!」って言うことでしたら御遠慮なく教えて下さい。では〜。
698名無しさん@ピンキー:03/04/29 19:40 ID:bjDELY6D
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!
待ってました!
すんごく(・∀・) イイ!!
脳内ルカシアターでLover Soulをj購入しますた
アフターセクースも楽しみしてまつ
699名無しさん@ピンキー:03/04/29 22:59 ID:x6NaHdi4
自分的に脳内公式設定になりそうなSS、禿しく感謝です。
「園芸」が特技のアーロソがツボにはまりますたw。
700姐 ◆ane/8MtRLQ :03/04/30 01:14 ID:EVf8GW4P
暖かい御意見ありがとうございます。
続きを書いていたんですが、大変な事を忘れてました。
私、ゲームでギップルのスフィアという奴があるのをころっと忘れてまして。
それ見てからじゃないと続きが書けないのでこれから
もう一周してきますので明日(ていうか今日)続きのウプできません。
ぐぐったんですが、引っかからなかったもので(汗
というわけでがんばりますけどラストに向けてちょっと間が空きます。
なんかお間抜な感じになりますけどしばらくお待ち下さい。
701名無しさん@ピンキー:03/04/30 16:56 ID:aVLVOqnm
姐さん、なんつーすんばらすぃSS・・・。
リュックの細やかな感情表現がいいですわ。
ギップルって気にもしてなかった(オイ)けど、ちょっと惚れそうだよ・・・(わたし男なのに)。
702名無しさん@ピンキー:03/04/30 21:46 ID:26K0UI9g
ギヌバもの、もっとキボン。禿しく。
703アーロン:03/05/01 00:01 ID:xAJqHL4H
ふっ、異界から丸見えだ。



だが気にせず続けろ。
704名無しさん@ピンキー:03/05/01 04:45 ID:5AUvjgCm
↑ワラタ
705名無しさん@ピンキー:03/05/01 07:28 ID:CfxumXmh
このSSスゴク(・∀・) イイ!!
個人的にはこういう感じのも好きなんでこの調子でがんがれ。
続編も期待してますヨ。

706Lover Soul:03/05/01 20:08 ID:GYAvOeuG
リュックは自分から顔を背けたままだ。
ギップルは絶望に近い気分でリュックの髪を指で梳いて、そっと抜き去った。
指からこぼれた髪がさらさらとリュックの頬にかかる。
リュックが気を失う間際、確かに「ごめんね」と囁いたのを聞いた。
あれは自分に向けられた言葉ではない。
今、自分の腕の中で力なく横たわっているのは誰か別の男の事を想う女だ。
わかっていた。この娘が誰を想って泣いているのか。
ミヘンを訪れた時、そこにあるはずのない植物を見つけて経緯を聞いた時から漠然とした物ではあったけど予感があった。
あのもはや伝説の中の存在になった男が、リュックにとっても特別な存在であった事は間違いない。
けれどまさか男と女の関係だとは思わなかった。
リュックの腕を掴んだ時に自分の心が悲鳴を上げていたのはそのせいだ。
ギップルにとってリュックは特別な少女だった。
母親に聞かされた話のせいもある。
けれど一族の置かれている立場などおかまいなく自分の信念を貫く姿はギップルにとってまぶしく見えた。
アルベドもスピラを思う気持ちは変わらない事を態度で示すために自分はアカギ隊の候補生になった。
それと前後してリュックが自分と同じ血を引く召喚士のガードになったと知った時、形は違えどどこかに自分と
同じ部分を持っているとわかってうれしかった。
大きな瞳をくるくるとよく動かして笑い、自分より年上の人間でさえも間違っていれば叱り飛ばす。
その姿はいつも、自分の胸の中で硝子みたいにきらきらと光っていた。
ギップルにとってリュックはそんな存在だった。
そっと、リュックを抱く腕に力を入れた。
『俺は馬鹿だ』
まさかこんな風に自分が暴走してしまう日が来るなんて、思ってみた事もなかった。
今ならわかる。
自分はずっと前からこの娘を自分の物にしたくて仕方なかったのだ。
その思いを今遂げたはずなのに、今胸の中にあるのは侘しさだけだった。
707Lover Soul:03/05/01 20:08 ID:GYAvOeuG
体に力が入らなかった。
手足の指、体の隅々まで麻酔を流し込まれたような倦怠感。
ギップルが自分を優しく抱きしめている。
なのにアタシはどうして泣いているんだろう。
初めて間近で見たギップルの体には薄くなってはいるけれど傷跡が無数に走っている。
『きっと、いっぱい戦ったんだよね……』
アーロンの体にも同じような傷跡がたくさんあった。
ギップルの傷が少し薄いような気がするのはまだ若いうちの傷なので皮膚の再生が早いからだろう。
こんな小さな事でも別の男の人と比べるのはよくない事だってわかっている。
でもアタシの中でのアーロンの存在は大きくて意識しないでいる事なんてできない。
突然、ざぁっ、と風が吹いた。
細かな砂が風に乗る。同時に泉をとりまく僅かな木々の枝が、風に揺れた。
巻き上げられた砂が降るのと同時に、黄色い小さな花がばらばらと二人に降り注ぐ。
沙棗の花が風に吹き散らされて風に乗り、舞い下りたのだ。
すでに麻痺したはずの鼻に、濃密な花の香りが流れ込む。
リュックがぼんやり空を見上げると、驚いた事に雲が出ていた。
空気が砂漠にはないはずの湿気を帯びている。
突然、遠くで落雷の音がして、雨が降り始めた。
ビーカネル島では雨はめったに降らない。けれど降る時は叩き付けるような豪雨が雷を伴って突然降り始める。
あっという間に雨は大粒になり、リュックの髪を濡らした。
「泣いてる……」
思わずつぶやいた声を、ギップルも聞いた。
けれど雨は雹まじりの強い物に変わり、さすがに立ち上がらざるを得なかった。
リュックはシャワーのために持って来たタオルで体を覆うと見につけていた物を抱えて宿舎に駆け出した。
遅れてギップルが宿舎に辿り着いた時にはリュックの部屋の方でドアの閉まる音がする所だった。
708姐 ◆ane/8MtRLQ :03/05/01 21:24 ID:GYAvOeuG
>>703
ま…丸見えって何がですか?
ゲーム中、画面に向かって「ギッポーってなんだよw」って突っ込んでるところとか、
いたしてる最中のシーン書きながら小声で「っぁぁぅうぁぅううぅおおおぉぉぉっ!!!」とか
奇声を上げて気恥ずかしさに悶えてる所とかだったらやだな…。
(この話は頭で声優さんの声でセリフ読んで作るのですげー気恥ずかしいです)

>>699
脳内設定でアーロンは「薬草とか詳しそう」というのがあるので私にとっては
違和感なかったですが確かに園芸ですね。ワロタ。

これ読んでギップル好きって言ってもらえるとうれしいです。
(別にギップルファンていうわけでもないんですが)
ここから先は昼メロ風+少女漫画になるので御注意下さい。
(がんがってハードにキスシーンくらいは入れてみよう・・・)
709名無しさん@ピンキー:03/05/01 21:55 ID:dpZa4ija
少女漫画もいいけど、もっとえっちぃ10−2も読みたいなあ
710名無しさん@ピンキー:03/05/01 23:23 ID:sARht/2L
>姐 ◆ane/8MtRLQさん
ホレますた(・∀・)
私のツボにハマリまくりです、このSS。
ええ、そりゃあもう、楽しみにしてますよ、続きを。
思わずトーブソになってしまいますた。
ご降臨をお待ちしてますわ。










アーロン×リュックがアーリュならギップル×リュックはギップリュか?
とつい考えて、風の妖精まで思考がぶっ飛んでしまったのは内緒・・・
711姐 ◆ane/8MtRLQ :03/05/02 19:12 ID:RpQcOIBL
>>709
ごめんなさい。私はこれがいっぱいいっぱいなんで
他の職人さんの降臨待ちの保全カキコだと思ってスルーして下さい。

がんばって今日明日には完結させたいものですが今読み返すと
冒頭はコメディとして書いたのになんだ、このドロドロ感は。

>>710
トーブソってなんだとおもったらアイツですね。
「ういうい」って書いてもらうとさらにうれしかったかも(w
ちなみに私グルグルのコミック持ってるんですけれど
それでもこんな話を書いているという事実はどうすれば…。
712Lover Soul:03/05/02 20:34 ID:RpQcOIBL
「どうしよう……」
リュックは部屋のドアを閉めた途端膝の力が抜けてへなへなとしゃがみこんだ。
勢いとはいえ、とんでもない事になってしまった気がする。
ほとんど記憶にないがまさか昨夜、自分がそんな事を言っていたなんて。
一人になった途端、思い出したように心臓がドキドキしてきた。
『なんで?』
ギップルが傍にいた時はそうでもなかったのに、キスされた時の事や耳元で聞こえていたギップルの声を
思い出すとドキドキが止まらない。でも、ドキドキするのは純粋なときめきのせいだけじゃない。
「これから……どうなっちゃうんだろう……」
リュックは自分を抱えるようにした腕にぎゅっと力を込めた。
震えが止まらない。
いつか、こんな日がくるんじゃないかと思っていた。
自分がアーロン以外の男の人と、こうなってしまう日。
「なんでアイツなの?」
頭の中でぐるぐるといろんな出来事が回りだす。
ジョゼ寺院で再会した時、アイツは私には目もくれないでユウナを見て、言った。
「いい感じじゃねえかよ」って、本当に普通の男の子みたいに。
その言葉を向けられたユウナは困惑していたけど。
アタシは気付いてた。ギップルは絶対アタシにはあんな視線を向けない。
だってアタシは「シドの娘」だから。
パインの事もそう。アルベド語を誰に教わったか聞いた時、否定していたけど教えたのはたぶんギップル。
アルベドは他のスピラの人間に嫌われているけれどギップルは違う。
ちゃんとしたほとんど訛りのないスピラの言葉を話すし、スピラの人間がアルベドを嫌う事も納得はしていないけれど
その気持ちを理解して受け止めている。
だから、発掘の面接にやってくるアルベドじゃない人達もちゃんと心を開いてギップルと話す。
もともとそういう下らない偏見を持たないパインがギップルの事に興味を持ったって不思議じゃない。
アタシはあいつにとって単なる一族の、年の近い女の子でしかない。
せいぜい「昔付きあってた」なんて冗談でからかうだけ。
713Lover Soul:03/05/02 20:35 ID:RpQcOIBL
体に巻きつけていたタオルがずれたのを直そうとしてリュックは自分の胸元に何か付いているのに気付いた。
「うそ……」
薄っすらと、でも胸元以外の場所あちこちにもキスの痕跡が残っていた。
「ホントに、しちゃったんだ……」
ほんのわずか前に起きた事なのにまるで現実じゃないみたいで、もしかしたら夢なんじゃないかなんていう
馬鹿げた考えが打ち消されてしまった。
こんな事になってしまったきっかけはたぶん自分にあるのだ。
酔って覚えてもいない言葉。けれどギップルはそんな嘘をつく人じゃない。
けれど、ギップルの気持ちがわからなかった。
どうして?
抱いて欲しいという女の言葉に応じただけ?
それとも恋人にしようとした?
後者はリュックにとって考えられない答えだった。
ギップルはアタシには優しいけれど、それは礼儀としての優しさで特別な対象だからじゃない。
この宿舎に来てしばらく経つけれど個人的な話などほとんどしなかった。
ヘンだ。
アタシも、ギップルも。
頭をぶんぶんと振って心のもやもやを振り払おうとした。代わりに落ちてきたのは、沙棗の花。
きっとこの花のせいだ。強い香りと、思い出のせい。
『私を忘れないで。私は、ここにいるから』
香りは誰かの叫びなのかも知れない。夫を待つ妻の。そしていなくなってしまった人の。
突然、近くに雷が落ちた。窓の鎧戸は雨に叩かれて激しい音を立てている。
アーロンが泣いている。何故だか、そんな気がした。
裏切ったつもりはない。けれどもう私はアーロンだけの物じゃない。
「ごめんね……」
リュックは膝を抱えて静かに泣いた。
714Lover Soul:03/05/02 20:35 ID:RpQcOIBL
部屋に戻ったギップルは、とりあえず昨夜寝ずの番の間に書いた設計図を広げて見た。
そんな事をした所で図面の内容や続きの事など頭に入るはずもなかった。
リュックが今どんな気持ちなのか、想像もつかなかった。
このまましらばっくれるつもりもなかったがリュックがなかった事にしたいと思うならそうするつもりだった。
我ながら無責任な考えだ。
もちろん自分の行動は詫びて済む事ではないし、会わせる顔がないというのが正直な気分だった。
それなのに気が付くとリュックの事を考えている。
乱れた時の様子が、目に、耳に、焼き付いて離れない。
「……畜生」
ギップルは拳で壁を叩いた。
自分の心の絶対領域にしまっていたはずの少女の影はもうどこにもなかった。
今、自分の中にいるのは全く別の女だ。
それを今更後悔した所でどうにもならない。美しい偶像を粉々に叩き壊したのは自分だった。
どうして今まで忘れていたのか。
リュックと呼べ、と事ある毎に言われていた事を今更のように思い出す。
子供の頃は普通に呼んでいたはずの名前を呼べなくなったその理由。
まだ十三、四歳のころだった。
異性を意識し始める時期に差しかかった時の事。きっかけは本当に下らない事だった。
それまで、ギップルはリュック兄弟とそれなりに親しくしていた。
リュックは今と変わらず、人見知りしない性格だったから何かあれば一緒に遊んでいた。
ところが、ちょっとした事件が起きた。
アニキの初恋の相手である少女が、ギップルの事を好きだと言ってアニキを振ってしまったのだ。
その頃ギップルは異性を意識していたとはいってもまだ子供だったからどうでもいい事だと思っていた。
けれど少し年長だったアニキにとってはひどく大きな心の傷だったらしい。
ギップルがリュックに近づくとひどい剣幕で怒るようになった。
さらに悪い事に好奇心で顔を出していた酒宴の席で二人の父がリュックの母を巡って争った話になり
アニキと大喧嘩してしまったのだ。
さすがにその喧嘩の仲直りはしたものの、なんとなく気まずくなりリュックとも疎遠になった。
そのうちリュックの、機械を始めとする才能が一族の中で頭角を現し始め大人達が大切に扱うのを見て、
いつか自分もそれに同調するようになっていた。
715Lover Soul:03/05/02 20:36 ID:RpQcOIBL
一族にとって特別な「シドの娘」として扱う間はリュックのそばにいても誰も咎めなかったから。
ギップルに秋波を送ってくる女性は絶えずいた。その中には遊びと割り切っている相手もいたし、
その方が楽だったから好奇心に任せて付き合ってみたりもした。
そんな付き合いをしているうちに男女間のリスクや虚しさに気付いて、ギップルは恋愛に対してひどく慎重になった。
たぶんずっと以前から、自分はリュックに惹かれていた。
気付いて恋愛のドロドロした世界にリュックを巻きこみたくなくて、気付かない振りをしていた。
特別だけど、これは恋じゃない。ずっとそう思い込もうとしていた。
そして自分を偽り続けた結果がこれだった。
ギップルの中のリュックは自分でも気付かなかった少年期の、淡い恋をした頃の綺麗な思い出だった。
リュックはいつだって透明で明るい笑顔で笑っていたのだ。
現実はそうじゃない。リュックはいつまでも子供じゃないし、恋だってする。
勝手に作った偶像の型にリュックをはめようとしてそれがかなわないとわかった時、自分は暴走した。
かつて一度だけ「伝説のガード」と会った事がある。
ホームが襲撃された日だ。
グアドに不穏な動きがあるのに気付いて、お互いの保身のために逃げるよう忠告した。
しかし、あの男はふっと笑って言った。「先に謝っておこう」と。
ギップル自身も、その男と同じように当時のスピラでの最大勢力である寺院を敵に回すつもりだった。
でも正直に言って無謀だと思った。自分でもわかっていた。「馬鹿」だって。
それに対しても、あの男は明瞭に答えた。「世界を変えるのはいつだって大馬鹿野郎さ」と。
なぜあの男なのか。すごい男だと思った。同時に尊敬もした。その存在はギップルにとっても小さくない。
『シン』を倒した時に死んだと聞いていた。
もし彼が生きていたら、今頃、自分はどうしていただろう。そしてリュックは。
その「もし」がないとわかっていても、苛立ちは治まらなかった。
716Lover Soul:03/05/02 20:36 ID:RpQcOIBL
昼過ぎになった頃、宿舎の表がにわかに騒がしくなった。
「なんだ?事故か?」
部屋を出た所に通りかかった男に声をかける。
「ヒクウテイガ。アニキダリュックムツアネシチサナキミ」(飛空艇だ。アニキがリュックを迎えに来たらしい)
「アニキダ?」(アニキが?)
ギップルは背中の辺りがひやりとするのを感じた。
「ビサイドシミウユウナサヒダリュックシモフダワウナキミ。ミヤリュックダベセミッサソヨノガ」
(ビサイドにいるユウナたちがリュックに用があるらしい。今リュックが出ていったところだ)
「ホフア……」(そうか……)
それでも一応外に出てみるとちょうどセルシウスの機体が上昇し始める所だった。
機体が完全に見えなくなって、自分がほっとしている事に気付いた。
この先どうすればいいのか、考える時間がわずかなりとも出来た事になる。
ギップルは午後の間ずっとその事を考えた。
アーロン。
真っ先に思いついたのはあの男の事だった。
この先リュックがどういう答えを出そうとも、自分の前に立ちふさがるのはあの男の存在だ。
死して尚、燦然と輝く、自分の目標でもある男。
残念ながら、その男の人となりを知る者はほとんど生き残っていないはずだった。
その残りわずかな人間は今、リュックのそばにいる。
その時記憶の中に、ある物が閃いた。
たった一つ、あの男が残した手に触れられる物。
そう思ったら、じっとしていられなかった。
ギップルは表に出るとホバーに飛び乗った。
「トミ、ゴヨシミルンガ」(おい、どこにいくんだ)
日没を前にして帰還してくるホバーの群れに逆らうように飛び出したギップルに周囲から驚きの声が上がる。
「ミヘンガ。カウミダワソサオンガゲ!」(ミヘンだ。わるいがあとたのんだぜ。)
「モウオラザルマチテンガ!モヘ!」(よるのさばくはきけんだ!よせ!)
制止の声を後にギップルはさらにホバーを加速した。
ずっと遠くで、太陽が沈み始めていた。
717Lover Soul:03/05/02 20:37 ID:RpQcOIBL
「アタシに用って、これかぁ〜」
ビサイドについたリュックを待っていたのは美しいビサイド織の布だった。
ユウナ達はどこかに出かけているらしい。
「前にビザイド織の服を着てみたいって言ってたでしょ?イナミも少し大きくなって
手がかからなくなってきたから仕立ててあげるわ」
ルールーはさらに何枚かの布を別の箱から取り出す。
「でもさ、これど〜したの?ビサイド織の布って高いんでしょ?」
なかなかに手の込んだ模様の布を広げてリュックは首を傾げる。
ルールーはあら、という風に笑ってみせた。
「嫌だ。私が織ったのよ」
「え!!嘘!!」
思わず叫んだリュックをルールーが軽く睨む。
「失礼ね。ビサイドじゃ布が織れないと一人前とは言えないのよ」
「じゃあ、ユウナは?」
「ユウナの場合は特別。「召喚士様」だからね」
ルールーがくすっと笑った。
「ふえ〜。でもルールーはこんなにいっぱい、いつ織ったの?黒魔導士の修行は?」
「そうね、柄の大きいのは子供の頃だけど修行しながらでも少しずつ織ってはいたわよ。なにしろこの布は
この島では嫁入り道具の一つだから」
そう言ったルールーの声が少し固くなった気がした。
本当ならルールーはワッカの弟のチャップさんと結婚するはずだったのだ。
それなのに、チャップさんはルールーを守ろうとして『シン』を倒すために討伐隊に入って死んでしまった。
チャップさんの愛用の剣だった「フラタニティ」はいまではアイツが引き継いでいる。
2年前の旅の間、ルールーは悩んでいたみたいだった。でも、旅を終えてルールーはワッカと結婚した。
どんな心境の変化があったのか、リュックにはわからない。でもルールーはちゃんと自分で答えを出したのだ。
少なくともリュックはそう思っている。
「どうしたの?好みの柄がないかしら?」
布を選ぶ手を止めてしまったリュックにルールーが声をかける。
「ううん。そんな事ないよ」
そう言いながら、リュックはどこか上の空だ。
ルールーはなんとなく察しがついて尋ねてみた。
「何かあったの?」
718Lover Soul:03/05/02 20:38 ID:RpQcOIBL
紫紺の美しい瞳。顔にかかる髪のせいでルールーの目も隻眼に見える。
かつてアタシはこの人みたいになりたかった。綺麗で凛とした大人の女性。
今思えばアーロンがルールーを自分と対等のガードとして扱っていたからだと思う。
考えて見れば今の自分はかつてのルールーと同じ立場にいるのだ。
愛する人を失って、それをどう乗り越えたのか。聞いてみたかった。
「あのね」
「何?」
「ルールーは、どうしてワッカと結婚したの?」
その問いにルールーは一瞬目を大きく開いて、首を傾げた。
「どうしてって……言葉で説明するのは難しいわね」
「そっか……そうだよね。ごめんねヘンな事聞いちゃって」
「誰か、好きな人が出来たの?」
ルールーはあえてストレートな質問をぶつけた。リュックの肩がびくんと反応する。
「やっぱりね。……何か問題があるの?」
ルールーはユウナにするのと同じように、妹を思いやる姉のように尋ねた。
リュックは黙って首を振った。
「わかんない……」
ギップルが自分をどう思っているかわからない。そして自分がどうしたいのかも。
「……アーロンさんの事?」
ルールーの突然の言葉にリュックは驚いて顔を上げる。
「知ってたの?」
二人だけの秘密のはずだった。きちんと隠し通せたはずだと、そう思っていた。
「もしかしたら、と思った程度だけどね。夜中、どこかに抜け出した時あったでしょ?
まさかとは思ったんだけど、時々アンタが不自然にアーロンさんを避けたりしてたから逆に、ね?」
やっぱりこの人にはかなわない。
リュックは虚脱感に襲われてため息をつく事しかできなかった。
「あのね、リュック。私はチャップの事、忘れたわけじゃないのよ」
ルールーが静かに言った。
719Lover Soul:03/05/02 20:38 ID:RpQcOIBL
「じゃあ、どうしてワッカと?」
「そうね。ワッカにとってもチャップは大切な弟で、それと同じくらい私の事を大切にしてくれる。
私もチャップと同じくらいワッカが大事。私達は二人で、チャップを大切に思っているの。
……もしかしたら結婚したのはそのせいかもしれないわね」
ルールーはリュックの頭をそっと撫でた。
「私達は偶然大切な存在が同じだったけれど、普通はそうじゃない場合が殆どでしょうね。
私はアーロンさんの事を忘れろとは言わないわ。だけど思い出を大切にして守るために
目の前にいる大切な人を愛せないならその思い出には意味がないんじゃないかしら。私はそう思うわ」
「ルールー」
「誰かわからないけれど、その人が好きなんでしょう?」
「……わかんないよ」
ギップルの事を考えると心のどこかがもやもやする。
ユウナを見るギップルの目や思い出を見ているパインの横顔が消えない。
三人でギップルと会う度に毒のしずくをたらされるように胸が膿んだ。
どうしても自分を二人と比べてしまう。そしてアカギ隊のスフィアの中のギップル。
今でもあれを思い出すと嫌な感じになる。アタシだけ、置いて行かれているような不安感。
「……もう答えは、リュックの中では決まっていると思うわ。後はそれに気付くだけよ」
ルールーは泣き出したリュックの顔を拭ってやった。
「なんか、ルールー、本当にお母さんになったんだね」
リュックの言葉にルールーは微笑んだ。
「当たり前よ。そろそろワッカ達が帰ってくるからそれまでに決めてしまいましょう」
ルールーが布を広げなおす。
「アタシ、これがいい」
その中の一枚をリュックは選び取った。
「わかったわ。じゃあこれで作ってあげる。……イナミの服もそろそろいるからがんばらなくちゃ」
「お願いしま〜す」
「おお、綺麗だな。リュック、決まったか?」
布を選ぶ間、イナミの子守がてら浜辺に出ていたワッカが帰ってきた。
720Lover Soul:03/05/02 20:39 ID:RpQcOIBL
「当然。すっごい楽しみ〜」
「ルーは仕立ても上手だからな。あ、こらイナミ」
ワッカが腕から下ろしたイナミが、ルールーの方へ行こうと這い始めたのだ。
「まー」
ごはんの事なのかルールーの事なのかよくわからないがイナミがうれしそうに笑う。
ルールーはイナミを抱き上げるとリュックに渡した。
「ここを片付ける間、抱いててやって」
イナミは不思議そうにリュックを見上げている。
「アカミミ……」
思わずリュックがつぶやく。
「ソフゲン」
ワッカの言葉にリュックは思わず振り返った。
けれどワッカは何もなかったような顔で家の外に出た。
「おーっし。今日は俺が特別に夕メシ作っちゃる。蓮の葉ちまき、好物だったよな」
その後ろ姿を見送ってリュックはもう一度イナミを見た。
「まー」
小さな手が、リュックの頬を触った。
イナミ。アルベドの言葉で「未来」だった。

ギップルがミヘンに到着したのは翌日だった。以前鉢植えのあった店の隅に目をやる。
「ミナッキャミヤヘ」
背後で聞き慣れた声がする。
「リン」
ギップルは首だけ振り返る。
「ここにあった鉢植えは?」
ギップルの問いにリンは少し考え、思い出したようにうなずいた。
「ああ。スナナツメですか。もちろんございますよ」
「どこに」
「まあ、お待ちなさい」
リンは店の中のテーブルセットを指す。
「せっかく久しぶりにお会いしたのです。どうぞ」
椅子を勧められ、ギップルはしぶしぶ席に付いた。
721Lover Soul:03/05/02 20:40 ID:RpQcOIBL
「まあ、どうぞお一つ」
グラスに赤い酒が注がれた。『騎士』だ。
ギップルは一息で半分飲み干した。
向かいに座ったリンの背後の棚に透明で華奢なボトルに美しいラベルを貼った酒が並んでいる。『貴婦人』だ。
「あんなキツイ酒に『貴婦人』なんて名前つけて売るの、どうかと思うぜ」
思わずつぶやいたギップルの言葉にリンは即座に反応する。
「リュックさんに何か」
突然出た意外な名前にギップルは狼狽する。
「なんでそこであいつの名前が出るんだ」
「先日青年同盟のルチル隊長がお求めになりました。頼んでいた機械を作ってもらったお礼だとかで
何か良い物はないかと尋ねられましたのでそれを」
「モテミハヨソム。ワミユダモップナッセサミケンガッサボ」
「それは御災難でしたね」
リンはくっくっと笑う。
「しかしながら、あの酒に名前を付けたのは我々ではありません。あれはエボンに伝わる製法で、
それぞれの名前にきちんとした謂れもあるのですよ」
「なんだ?」
「まず『騎士』は原料の黒イチゴに貴婦人を守って死んだ騎士の血であの色になったという伝説があるからと
言われますがそうではありません。あれはれっきとした薬酒で痛みを和らげる効果があり、少量なら集中力を高めます。
貴婦人を守る騎士が戦いに望む時に飲むのにふさわしいでしょう」
リンは再びギップルのグラスに酒を注ぎ足す。
722Lover Soul:03/05/02 20:41 ID:RpQcOIBL
「同様に『貴婦人』も薬酒です。こちらは気分を和らげ、これは噂なのですが−」
そこでリンは意味ありげにギップルを見る。
「この酒で酔うと、心に秘めた秘密を話しだすとも言われています。かつて貴婦人に懸想した男がその気持ちを
知りたくて飲ませたとか、恋心を打ち明ける勇気のない貴婦人が飲んだとか。まあ、それも伝説ですね」
「馬鹿馬鹿しい」
ギップルはリンから顔を逸らし、継ぎ足されたグラスを空にした。
「そうですね。それでも効果の方はご自分で体験なさっているでしょうし」
リンは涼しい顔をして言う。
「お前……」
「だからこの酒をお出ししたのですが。お急ぎのようですし」
そう言ってリンは立ち上がる。
「ではお探しの物の所へ御案内します。こちらです」
ギップルはリンの後を追った。

「本当にここでいいのか?」
ダチの質問にリュックはうなずいた。
「また、なんかあったら呼べよ。……アニキには秘密なんだろ?」
「ありがと」
ダチはリュックに手を振ると飛空挺に戻って行った。たぶん今頃アニキはまだビサイドで寝ているはずだ。
ワッカ達が一席設けてくれたのがうれしくて明け方まで飲んでいたはずだから。
ミヘン街道で降ろしてもらったリュックは旅行公司を目指して駆け出した。
ルールーの言ったとおり、たぶんアタシの中では答えが出ている。
それでも、きちんと自分で決着を付けたかった。
アーロンが残してくれたたった一つの物。それが見たかった。
街道を一気に走り抜けたので公司に着いた時は息が切れていた。
「おや、リュックさん」
店の中からリンが出てきた。少し驚いたような顔をしている。
723Lover Soul:03/05/02 20:43 ID:RpQcOIBL
「どうなさいました?」
「……預けてる木、見に来たの」
呼吸を整えながらリュックがいうとリンはふむ、と腕を組んでかんがえるような顔をした。
「何?もしかして、枯れちゃった?」
不吉な予感に慌てるリュックにリンは首を振った。
「いえ、そのような事は。ただ、先客が」
「先客?」
リンの案内で公司の裏に回る。
「……アンタの事は尊敬している」
聞こえてきた声に、リュックは硬直した。
そっと声の方を盗み見る。
地面に座りこんだギップルが、小さな木に向かい合って何か話しかけていた。
「今でも残念なんだよ。結局アンタと話せたのはあの時、一度きりだったからな。もっといろいろな事を話して、
聞いてみたかったな。ブラスカ様やジェクトさんとの旅の話とかさ。いろいろ、聞きたかったよ」
ギップルの話しかけている相手が誰なのか、リュックにはわかった。
「たぶん、あいつはいろいろ聞いたんだろ?人見知りしない上に物怖じしない奴だからさ。アンタと意見が
合わなかったら遠慮なく噛みついたんだと思うんだ。そうだろ?」
まるでギップルに答えるように、木の枝が風に揺れた。
「たった一度会っただけの俺に取って、これだけアンタの存在が大きいんだ。ずっとそばにいたあいつには
たぶんもっともっと大きな存在なんだろうな。それはわかってるよ」
そこで一度ギップルは言葉を切った。
「けどな。アンタはもういない。それだけはどうしようもない事なんだ。もし今もアンタがいたなら
正々堂々勝負を申し込めたんだけど、今となっては無理な話だ。だから、俺は一方的な宣言しかできない」
一体何の話をしているのか、リュックは混乱してきた。
「リュックが好きなんだ」
息が止まりそうだった。
今ギップルの口から出た言葉が本当なのか、リュックには信じられなかった。
「順序が逆だって言われそうだけど、本当なんだ。俺は馬鹿だからリュックを傷つけるような真似を
してからじゃないと、自分でもわからなかったんだ」
そう言ってギップルは木に向かって頭を下げた。
「すまない」
リュックはたまらず、駆け出した。
724Lover Soul:03/05/02 20:44 ID:RpQcOIBL
足音に気付いたギップルが振り返る。
「リュック?なんでここに……」
ギップルの質問に答えないまま、リュックはギップルに抱き付いた。
「ミセッ」
思わずギップルが悲鳴を上げる。
慌ててリュックが飛びのく。
「怪我?」
「ああ、大した事ない。さっきリンが痛み止めの酒くれたから」
そこでもう一度目が合う。
「ホントなの?」
リュックは泣きそうになるのをこらえて尋ねた。
「今、言ってた事、ホントなの?」
ギップルは一瞬苦笑いを浮かべた後で静かに答えた。
「本当」
その答えを聞いてリュックはアーロンの木を振り返る。
驚いた事に、その木には一面に白い花が咲いていた。近づいてみたが、あの蜜のように濃い匂いもしない。
柔らかな甘い香りがするだけだった。
「リンが言ってた」
リュックの背中にギップルが言った。
「たぶん、環境の変化で原種返りしたんじゃないかって。去年初めて咲いた時からそうだったらしい」
去年、短い花の季節にリュックはここに訪れる事ができなかった。
「ギップル」
リュックはギップルを振り返る。
「どうして私がアーロンを好きだったってわかったの?」
リュックは初めてアーロンと、意思を持って言葉にした。
「ドレスフィア」
ギップルの答えは意外な物だった。
「『ヴェグナガン』と戦った時、お前は変わった剣をもっていただろう?パイン達とはまるで違う」
ダークナイトの武器の事だと気付いてリュックはうなずく。
「あれ、アーロンの持っていた剣と同じだった。シンラがドレスフィアの使用者の意志が武器の形に
影響するって言っていたからたぶんお前の中であの人は特別なんだって、そう思った。
もっとも、ちょっと前まではザナルカンドから来たガードの方が怪しいって思ってたけどな」
725Lover Soul:03/05/02 20:45 ID:RpQcOIBL
リュックは再び沙棗に向かい合った。
気が付かない内に鉢から下ろされた沙棗は、しゃんと胸を張るように枝を広げてそこに佇んでいた。
白い、淡い香りの花。それがアーロンからもらった答えのような気がした。
「アーロン。私もギップルの事好きなんだ」
「ヤギアモ……」
ギップルが呆然としたようにリュックを見る。
「いいよね?」
頬から、涙がこぼれた。その時、風が吹いて白い花が空に舞った。
『馬鹿。泣く奴があるか』
そんな声を聞いたような気がした。

「おや。お二人お揃いで」
ギップルの傷の手当てをしようと公司に戻った二人を見てリンは分け知り顔に笑って見た。
「傷薬もらえる?」
リュックの言葉にリンは心得たように薬を出す。
「それから、リュックさんにこれを」
リンの差し出したのはグラスに注がれた薄い琥珀色の酒だった。
警戒するギップルにリンは手をひらひらと振る。
「これは薬酒ではありません。去年、白ワインにリュックさんからお預かりした木の花を摘んで漬け込みました」
グラスに注がれたワインからは柔らかなあの花の匂いがした。
一口味見するとすっきりした飲み口でほんのわずかに苦味があった。
次いでギップルも味見する。
「今度この店のオリジナルとして売り出すつもりです」
あの木はもうホームに連れてはいけないけれど、代わりにいろんな人がこのワインを口にするだろう。
そしてこの木を救った人の話は伝えられる。
ずっと先に。未来に。
「名前は『Lover Soul』です。いかがでしょう」
リュックはギップルの手をしっかり握ってうなずいた。
726Lover Soul:03/05/02 20:45 ID:RpQcOIBL
「良かったのかよ」
店を出てからギップルが言った。
「いいの。あの木がここからなくなるともうあのワイン飲めなくなるもん」
「そういう問題かよ……」ギップルが頭をかりかりと掻く。
「で、これからどうする?」
リュックがギップルに尋ねる。
「そうだな……さすがに真っ直ぐビーカネルに帰るのはごめんだし……」
一人で夜の砂漠を越える時、魔物に襲われて怪我をしたてのギップルは首を傾げる。
「とりあえず、ジョゼ寺院に戻るか」
「うん!」
ギップルの意見にリュックが頷く。
「じゃ、後ろ乗れよ。リュック」
ギップルの言葉にリュックが笑う。
「なんだよ」
「もう『シドの娘』って言わないんだね」
その言葉にギップルが顔をしかめる。
「早く乗れ、行くぞ」
ギップルがホバーのエンジンをかけた。
風を切って、ホバーが走り出した。公司が遠ざかって行く。
『ばいばい、アーロン』
最後に一度だけ、リュックは笑顔で後ろに向かって手を振った。
727姐 ◆ane/8MtRLQ :03/05/02 20:50 ID:RpQcOIBL
一応、ここでエンド、です。
他にも入れたいエピソードがありましたがこれ以上長くなるのは
エロパロ期待されてる方に悪いですし。
最後ちょっとだれちゃってますがお許しを。
読みたいと言って下さった方、ありがとうございました。
また、エロパロにあるまじき部分を長々書いた事に対し
スルーで見逃して下さった方にこの場を借りてお礼とお詫びいたします。