(7/22)
「目の前で京一ぶん殴って、怖い女だなって思った」
「う……」
「あと、ラーメン良く食べるなって」
「そんなんばっかりなの……」
「インパクト強かったからな」
龍麻はいつもの軽口のつもりで言ったのだが、何か思う所があったのか、
小蒔は似つかわしくない、苦いお茶を飲んだような顔をした。
「……ひーちゃんさ、なんで……ボクと……付き合おうって思ったの?」
「え!? えっと……お前はなんでだよ」
「ひーちゃんが先」
「う……んと……元気なところが楽しいからかな」
「……なんか、先生がちっちゃい子褒めるみたいだね、それ」
それは龍麻にとって80パーセントくらい本気の意見だったけれど、小蒔は納得しなかった。
軽く頬を膨らませ、そっぽを向かせないよう龍麻の左頬に手を乗せる。
進退窮まった龍麻は、つい口を滑らせてしまった。
「んなこと言われても……好きは好きだしな、なんで、なんてわかんねぇよ」
「……好き?」
「あ……う……ま、まぁ……そうだな」
「好き?」
さっきまでの表情はどこへやら、小蒔はキラキラと目を輝かせてで龍麻を見る。
それは、新しい悪戯を思いついた時の目にも似ていた。
「わかったよ、言えばいいんだろ。………す……す、好きだよ」
じっと聞き終えた小蒔は、少しだけはにかんだ、
大人びた顔を一瞬だけひらめかせて額を胸に押し当てた。
「うん。ボクもね、ひーちゃんのコト……好き。ぜんぶ」
(8/22)
「……ん」
短く答えた龍麻は少し身を乗り出し、半身を小蒔に被せる。
サラサラのショートカットが嬉しそうに揺れ、腕が背中に回された。
ゆるやかな呼吸が、お互いの心を繋ぐ。
「ひーちゃんと会ってから、まだ半年しか経ってないんだよね。
なんか……いろんなことがあってさ、あっという間だったけど」
「そうだな……もうちょっと、早く転校してくれば良かったかな。そうすれば」
「そうすれば?」
小蒔は龍麻が言おうとしていることが判ったけれど、わざと問い返し、
龍麻も今度は照れもせず、真っ直ぐ瞳を見据えて告げる。
「……お前と早く会えた」
「うん……そうだね。でもさ、これから、ずっと……一緒だよね」
「そうだな、ずっと……一緒だな」
深い想いが胸を満たし、自然に唇が合わさる。
軽いキスの後、そっと顔を離すと、小蒔は小さく頷いた。
「ね、もう……いいよ」
「あ、ああ」
「でもさ、ボクも怖いから……優しくしてよね」
「あ、ああ」
生唾を二度飲みこんでから、小蒔の肩を掴む。
極度の緊張のせいか、手に力が入りすぎてしまい、小蒔に顔をしかめられてしまった。
「ちょっと、痛いよ」
「あ、ああ……悪い」
龍麻は謝った……つもりだったが、掠れてしまってほとんど声になっていない。
動揺を強める龍麻の胸に、小蒔が掌を押し当てた。
(9/22)
「すごいどきどきしてるね……緊張してるの?」
「あ、当たり前だろ。初めてなんだから」
「そっか。そうだよね」
龍麻は当たり前のことを言っただけだったが、小蒔は妙に嬉しいようだった。
いつもの屈託のない笑顔ではなく、照れを含んだ、八分咲きの桜のような笑顔。
たちまちに魅了されてしまった龍麻は、まばたきも忘れて魅入る。
小蒔は自分を見据える視線を受け止め、受け入れてから、龍麻の肩を支点にして顔を近づけた。
二度目のキスは、今までとは異なっていた。
唇が触れた瞬間、龍麻は頭の中で火花が散ったような眩暈を感じ、たまらず小蒔の掌を探る。
小蒔も同じ気持ちだったのか、二つの掌はお互いを求めあってぎこちなくすれ違ってしまい、
必死の努力の末にようやく指先を交え、付け根からぴったりと絡みあわせた。
龍麻のもう片方の腕は小蒔の頭をしっかりと抱え、小蒔の反対側の腕は龍麻の背中を探り当てる。
それは、立っていたなら社交ダンスを踊る時のようにも見えるポーズだった。
もちろん二人にはそんな意識があるはずもなく、ただ、
とめどなく湧きでてくる想いを、唇を通して伝え、受け取るのに夢中だった。
唇を合わせただけのキスでも途方も無く気持ち良かったが、
龍麻は思いきって舌を伸ばし、小蒔の唇に触れてみる。
小蒔は一瞬、身体を固くしたものの、それだけが抵抗らしい抵抗だった。
薄く口が開き、迎え入れる。
しかし、龍麻が舌に触れた瞬間、いきなり小蒔の身体から力が抜けた。
少し浮かせ、しがみつくようにしていた上半身が音を立てて布団に沈みこむ。
「お、おい……大丈夫か?」
「わかんない……急に……力、抜け……ちゃって……」
それがどういうことなのか判っていないらしい小蒔に、
急激に龍麻の欲望が危険水域に入り、今度は自分からキスを仕掛けた。
(10/22)
抑えこむように、乱暴に。
歯にぬめりとした感触が伝わると、小蒔の頭の中は一瞬で真っ白になっていた。
口の中のあちこちに舌が触れ、その度に心臓が大きくジャンプする。
こういうキスがあるのはもちろん知っていたし、映画なんかでも観たことがあったけれど、
こんなに凄いものだとは思っていなかった。
とにかく気持ちいい、ただそれだけ。
知らなかったことに損した気分を抱いてしまうほど、強烈な体験。
もっと、ずっとしていたい。
小蒔は握った掌と背中に回した腕の双方に力を込めた。
背中が押され、舌と舌がより近づく。
龍麻は小蒔よりも幾分冷静さが残っていたが、それもほんのわずかな差だった。
むしろそれ以外の部分は小蒔を上回る情欲に支配され、ただひたすらに舌を差しこむ。
もちろん龍麻も舌を絡めるキスなど初めてだったから、
ぎこちない、というよりも硬いキスだったが、それでも、
続けるうちに少しずつコツのようなものが解ってきて、
小蒔の舌を撫でるように舐め、優しくつつく。
「ふっ……ん……ぅ………んぅっ……」
鼻声を漏らしはじめた小蒔に、一度顔を離し、様子を伺う。
小蒔は戸惑ったように目と口を同時にぱくぱくさせた後、感心したように呟いた。
「すごい……ね」
「あ、ああ……びっくりした。……なぁ」
「うん」
頷きあった二人は再び唇を重ね、今度は最初から舌を求めあう。
強く顔を押しつけて舌を潜り込ませる龍麻に、小蒔は少しずつ身を任せていった。
(11/22)
「小蒔?」
「ん……」
返事はしたものの、小蒔の目はやや頼りなげに宙をさまよっていた。
勝気な眉は柔らかくたわみ、すっきりとした頬は薄紅く色づいている。
つい今まで触れていた唇の艶かしさに誘われて、龍麻は腕を伸ばす。
少し卑怯な気もしたが、身体の内側から膨れ上がる欲求には勝てなかった。
初めて触れる、唇と手以外の場所。
ほとんど一直線に目指す場所に辿りついた龍麻の手は、そのままいきなり胸を掴んだ。
「つっ……」
加減はしたつもりだったが、
武道一筋だった無骨な手ではやはり力が強すぎたのか、小蒔は痛がってしまった。
「あ、わ、悪ぃ」
「ううん……ちょっと、びっくりしただけだから……」
本当は、ちょっと、どころではなかった。
何しろ、自分でもあんまり触ったことのないところをいきなり触られたのだ。
おっきくてあったかいけど、手を繋ぐときとは違う、やらしい手。
怖いような、くすぐったいような感じが、喉の奥辺りで転がりだす。
口を開けるとそれが飛び出てしまいそうで、小蒔は軽く唇を噛んだ。
(12/22)
龍麻はさっき強く握ってしまった反動で、今度は弱々しいほどの手つきで撫でる。
なだらかな膨らみの表面だけを、指の皮だけで。
話には聞き、本で見ていても、やはり実物は全く違っていた。
少し固く、でも、自分の身体の何処にもありはしない柔らかさ。
いくら触っていても飽きることなど全くなかったが、
やがて、中心にある小さなしこりだけに愛撫を集中させる。
まだあまり慣れていない様子で硬くなった乳首は、
それでも、一度反応しはじめるとたちまちにせりあがって形を整えた。
かろうじて指の先でつまめる程度の大きさしかないその手触りを確かめようと、
爪の甲で円を描かせる。
「んっ……」
小蒔の声が、急に掠れた。
その甘い響きの心臓に直接語りかけてくるような感覚に、息苦しさを覚える。
しかし呼吸を整えようともしないまま、もう一度、今度は親指の腹で転がした。
「はぁ……ん、ひー、ちゃん……」
小蒔が腕を掴み、きゅっと握ってくる。
嫌がっているのか、それとも続きを求めているのか判断がつかないまま、
乳房全体をやんわりと掴んだ。
「ん…………っ……」
小蒔の肩が小さく震え、何かを怖がっているように目をつぶる。
「い、嫌……なの……か?」
返事はない。
もう一度尋ねると、小さく顔が横に動いた。
それに勇気付けられるように、そっと揉みあげる。
(13/22)
胸の大小などどうでも良いことと思ってはいたが、
確かに小蒔のサイズでは手に余ってしまい、手全体で大きく揉む、というのは出来なかった。
少し窮屈そうに手を動かす龍麻に、小蒔が申し訳なさそうに声を上げる。
「やっぱりさ、胸……大きい方がいいよね」
「いや、別に……お前の胸だったら大きさなんて関係ねぇよ」
「あ、そ、そう? ……えヘヘッ、ありがと」
小蒔はその答えを半ば予期していたように小さく笑ったが、龍麻は、本当にそう思っている、
その思いの全てを伝えきれているかどうかもどかしくなり、身体ごと抱き寄せる。
「な……なに?」
「あったかくて……気持ちいいな」
「…………うん。ひーちゃんも」
突然変なことを言う龍麻に戸惑いながらも、龍麻の大きな身体は確かに気持ち良くて、
小蒔もしっかりとしがみついた。
いつも皆から頼りにされている龍麻を、今は一人占めにしている。
そう考えると嬉しさがこみ上げてきて、小蒔は頬を龍麻の胸板に子犬のように擦りつけた。
「な……なんだよ」
「もうちょっと、こうしててもいい?」
「……ん」
龍麻は頷いたが、それは小蒔がこうしててもいいか、と言う問いに頷いただけで、
自分が何もしない、と言う意味で頷いた訳ではなかった。
小蒔の肩を抱いていた手を、掌全てを肌に密着させたまま降ろしていく。
浮き出た背骨からくびれた腰を通り、更にその下へ。
へその下辺りまで来たところで、どこを目指しているのか気付いた小蒔に手首を掴まれてしまった。
(14/22)
「へッ、ヘンなトコ……触んないでよ……」
「んなこと言われてもよ」
「うー……」
不承不承大人しくなった小蒔を尻目に、指先はとうとう秘密の入り口を探しあてる。
手探りで触ってみると、確かに割れ目……というか筋のようなものがあって、妙に感動してしまった。
劣情の赴くまま指先を少し押しこんでみると、大した抵抗もなく沈み込み、
何か濡れた感触が伝わってくる。
「やら、し……ん……っ」
熱く潤った秘唇が、訪問者を迎え入れようと閉ざされた門を開いていく。
その中を、さしたる抵抗も無いまま指が入っていった。
吸いこまれ、吸いつかれる指から、たまらない快楽が上って来る。
ほとんど本能的に、龍麻は根元近くまで埋まった指を動かしはじめた。
「はぁ……ッ、ひ……ちゃ…………ん……」
ほんのわずかな指先の動きを敏感に感じ取り、万華鏡のようにいくつもの艶やかな表情を見せる小蒔に、
龍麻はその場所を直接見ようと身体を動かす。
龍麻の愛撫を夢心地で受け入れていた小蒔だったが、
その動きを察知して、慌てて両手で龍麻を押さえた。
「だッ、だめッ、見るのは絶対ダメ」
「そ……そっか」
そこは男にとって永遠に気になる場所で、龍麻もぜひ直接見たいと思ったのだが、
小蒔の断固とした調子に断念せざるを得なかった。
おまけにそのまま指だけは触りつづけるのもおかしくて中途半端に引っ込めたために、
小さなベッドの上に気まずい空気が漂いはじめる。
ボ、ボクのせいだし、なんとかしなくちゃ。
そう考えた小蒔は、焦ってまたとんでもない行動に出てしまった。
(15/22)
「ひ、ひーちゃんのも……触るね」
「あ……あぁ」
指先が触れた途端びくりと跳ねたそれに、驚いて手を引っ込めてしまう。
「な、なにコレ……なんか、動いてるよ……熱いし……平気なの?」
「あぁ、……多分」
小蒔は今更ながらにまるでメカニズムの違う男女の身体にいたく感銘を受けたらしく、
いつまでたっても手を離そうとしない。
そのうち、他人の刺激を受けることに慣れていない屹立は、限界が近いことを所有者に知らせた。
「ちょ、ちょっと待て。それ以上されたら出ちまう」
「出ちまう……って、出たらダメなの?」
「ダメってことはないけど、次に出来るようになるまで少し時間がかかる」
「ふーん……良くわかんないや」
ぶつぶつ言いながらも小蒔が手を放してくれたので、龍麻は急いで避妊具を着ける。
妙に手際良く着けられたそれに、小蒔はうさんくさそうな表情をした。
「もしかして……前から準備してあった?」
「いっ! ま、まあそれなりに……」
「いつから?」
「い、いいだろ」
「いつから?」
「……二ヶ月くらい前かな」
指折り数えて逆算した小蒔は、その日時に思いきり呆れてしまう。
「……それって、付き合いはじめてすぐじゃない?
あっきれた、やっぱ男の子ってやらしーことばっかり考えてるんだね」
一語一語が無形の矢となって突き刺さり、龍麻はぐうの音も出ずうつむいてしまう。
そのしょげかえりようがおかしくて、小蒔は龍麻の髪に手櫛を入れると、頬に唇を押し当てた。
(16/22)
「でも……いいよ。今日は許したげる」
「うん……んじゃ……い、いくぞ」
「…………うん」
龍麻は威勢良くそう言ったものの、どこに入れればいいか良く判らないらしい。
かと言って自分が教えてやることも出来ずにいると、
ようやくそれらしい場所を探り当てたのか、大きく一度息を吸う音が聞こえた。
間を置かず、押し広げられる痛覚が下腹を襲う。
「い、た……っ!」
顎が跳ね上がり、身体ごと大きく仰け反る。
頭の中で覚悟はしていたつもりでも、そんなものでは到底足りなかった。
身体を引き裂かれる恐怖が痛みを倍化させ、息を吐き出すことさえ辛い。
「おい……大丈夫か?」
今更に気遣わしげな龍麻の声も遥か遠くから聞こえてきて、何の慰めにもならない。
それでも、滲んだ視界の向こうに不安そうな顔が映ると、無理して笑みを作った。
「エヘヘッ……ひーちゃ、んと……ひと、つ、に……なって、る、ん、だよ……ね……」
話すのもやっとで、息継ぎをしながらようやくそれだけを言う。
「小蒔……」
龍麻はおろおろとするばかりだったが、それでも、
名前を呼んでくれたことでようやくいくらか落ちついてきた。
しかしそれも、龍麻が少し身体を動かしただけで再び、身体の内側を引掻かれ、
引き摺られるような痛みに見舞われ、振り出しに戻ってしまう。
龍麻も気を遣い、出来る限り痛がらせないよう慎重に動こうとしてくれているらしいが、
それでも抽送される度、腕に爪を立ててしまう。
龍麻には申し訳ないけれど、一秒でも早く終わってくれるよう願うしか出来なかった。
(17/22)
こじ入れるように挿入した膣は、
入ってきた屹立を必死で食い止めようとするかのように強烈に締め上げてくる。
気持ちは良かったが、それよりも小蒔の苦しそうな顔が気になって、
快楽を受け入れるまでにはならなかった。
ただ本能のままに、ぎこちなく腰を動かしていた龍麻は、
やがて、股間の一点に何かが溜まっていく気配を感じる。
たちまち爆発的な高まりとなった、まだ堪える術も知らない屹立を、欲望のまま解き放つ。
と言っても避妊具を着けていたから解放感は無かったし、
何よりもこれ以上小蒔を痛がらせなくてすむという安堵感のほうが大きかった。
射精もそこそこに、小蒔を苦しめていたものを引きぬき、ベッドに倒れこむ。
二人の初めては、こうして終わりを告げた。
隣に龍麻が寝転がる。
その横顔を見ながら、小蒔は額に張りついた髪の毛をかきあげた。
龍麻が悪いわけでは無いと知っていても、全ての感覚を奪い去ってしまったような破瓜の痛みに、
つい恨み言を言いたくなってしまう。
「痛かった……死ぬかと思ったよ。ホントにこんなんが気持ち良くなるのかな?」
「……そんなに?」
「んーとね、このくらい」
少し考える表情をした小蒔は、おもむろに龍麻の頬を力一杯つねりあげた。
ご丁寧にひねりまで効かせている為に、
龍麻は痛みから逃れようと顔を一回転させ、首の筋をひねってしまう。
「わかった?」
「良くわかりました」
「じゃさ、なんか飲む物持ってきてよ。喉乾いちゃった」
「あいよ」
(18/22)
気軽に応じて立ちあがった龍麻だったが、突然何かに尻を押されて危うく転びそうになる。
驚いて振り返ると、布団の端から小蒔が足を覗かせて怒っていた。
「何てことすんだよ」
「何か履け、このヘンタイ!」
「蹴るこたぁねぇだろ」
「こっち向かないでよッ!」
いそいそと下着を履く龍麻に一瞬だけ痛みを忘れて怒鳴りちらした小蒔は、
幾分表情を和らげると、シーツを胸元に手繰り寄せる。
「まったく……女の子の前なんだぞッ。少しは気をつけてよね」
「すまん」
「いやに素直じゃない……どうしたのさ」
「な、なんでもねぇよ」
龍麻は口元がひとりでに歪んでしまうのを隠そうと、無理やりしかつめらしい顔を作る。
剥き出しになっている肩の細さに気付いた時、ようやく実感が湧いてきたのだ。
「気持ち悪いなぁ……ま、いいや。あっち向いて。服着るから」
「もう一回、したいって言ったら怒るか?」
「ヤダ。絶対ヤダ」
ものすごい剣幕で睨まれてしまい、すごすごと後ろを向き、自分も服を着る。
さっさと着終わってしまってから、小蒔が今裸だということにはたと気付いた。
そっと、空気の一分子も乱さないよう注意しながら、顔を後ろに向ける。
薄暗がりの中でぼんやりと動く白い肌が見えたと思った瞬間、何かが飛んできた。
「ごッ!」
「絶対見ると思ったよ」
人体の急所──顎に見事に命中して、反動で龍麻の顔は再び後ろを向かされる。
それは質こそ違えど、小蒔が受けた破瓜の痛みに匹敵するものだった。
「だからって目覚まし時計投げるか普通……」
「ボクの裸は安くないんだから」
ぶつけられた物を拾い上げ、憮然として顎をさする龍麻に向かって
勝ち誇った笑みを浮かべた小蒔は、今度こそ落ちついて服に袖を通しはじめた。
(19/22)
制服を着終わった小蒔は、自分が変わってしまっていないか確かめるように身体を見渡す。
もちろん見た目は何も変わりなどしていなかった。
なのに、足下からは、なんとなくこそばゆい感じが漂ってくる。
その正体を確かめようと一歩踏み出した途端、足の間が、
まるでまだ龍麻のものがそのままそこにあるかのようにずきずきと痛み、
思わず龍麻にしがみついてしまった。
「痛っ! 帰れるのかな、ボク……」
「泊まってくか?」
「そういう訳にもいかないでしょ。大体泊まってったら何されるかわかんないもん」
「信用無いのな……」
龍麻は初めてキスした時にも同じ台詞を言われたのを思い出し、しょんぼりと呟く。
小蒔もそれを思い出し、小さく笑った。
「ま、ね。……んじゃね」
最後に一言言おうか迷った小蒔が、結局何も言わずに背を向けると、手を掴まれた。
「何?」
なんとなくそれを予想していた自分に照れくさくなって、少し尖った返事をしてしまう。
「……あのさ、絶対何もしないからさ、やっぱ泊まってかないか?」
「何もしないんだったら泊まる意味ないじゃない」
(20/22)
鋭い突っ込みに龍麻は頭の後ろを掻きながら、悪事を告白するような顔で口を開いた。
「……笑わないか?」
「何を?」
「今から言うこと」
「多分。言ってみてよ」
「……手を繋いで寝たいんだ」
「……またどうして」
「ほら、小さい子とか手を繋いで寝てやると安心するだろ」
「ひーちゃんさ、今年でいくつになるの?」
「い、嫌ならいいよ」
相当に恥ずかしいことを言ったという自覚があるのか、龍麻は目を合わせようとしない。
何もしないというのは多分本当だろうし、
言っていることは相当魅力的ではあったが、やはりいきなり外泊というのは気が引けた。
ためらいはじめる心を押しきって髪を揺らす。
「うーん、やっぱり帰る。ごめんね」
「いや、いいよ。じゃあな」
明るく返事しながらも、残念さがありありと判る様子で離した龍麻の手を逆に掴み返す。
「送ってってよ」
「え?」
「え、じゃないよ。夜道を一人で歩かせる気?」
「外、寒い……」
「怒るよ」
「判ったよ、すぐ手振り上げるの止めろって」
ぶつぶつ言いながらも口許が綻んでいるのを、小蒔は見逃さない。
下手くそな愛情表現に、上着を羽織る背中に飛びつきたくなってしまって、
それを隠す為に先に表に出た。
(21/22)
「はい」
「?」
靴ひもを縛り終えた龍麻は、目の前に差し出された手を不思議そうに眺めた。
「繋ぐんでしょ、手」
手を握ると、初めてキスをした時のような、新鮮な恥ずかしさが掌から疾る。
その快さを味わおうとしっかりと握り直して指先まで絡め、ゆっくりと歩き出した。
「えへへッ、あったかいね」
「やっぱ、こうやって寝たかったなぁ」
「こんな寒いところで寝たら死ぬよ」
未練がましくしみじみと呟く龍麻を肘でつつきながら応じる。
やっぱり、ボク達はこういうのがお似合いだよねッ。
まだ残る初体験の痛みのせいもあって、
今ひとつそういうことに消極的にならざるを得ない小蒔だったが、
龍麻はそうは思っていないようだった。
「裸で暖めあうんだよな、そう言う時って」
「もう……嫌だからね、ボク、毎日とかするの」
「嘘……」
「する気だったの!? 冗談じゃないよ、絶対やだ」
「そんな……」
「やだったらやだ」
「じゃ、週に三回」
「や」
「二回」
「い、や」
「ううう……」
(22/22)
泣きまねまで始めた龍麻にうっとうしさを覚えて、小蒔はついに立ち止まって問いただす。
「はぁ……ね、マジメに訊きたいんだけどさ、付き合うってさ、
やっぱりそういうことしないとダメな訳?」
「いや、全然」
「……は?」
龍麻がまだふざけているのかと思って、短い言葉に鋭いとげを込める。
しかし、返ってきた言葉の真剣な調子は、思わず龍麻の顔を見なおしたほどだった。
「お前が嫌ならもういいよ。そんなの全然楽しくないし」
「……怒っちゃった?」
「違うって。そりゃする気ゼロとは言わないけどさ、
しょうがなくやってもらったって意味ないだろ。だから、いい」
「し、しょうがなくは……ないよ。ボクも……痛かったけど、その……嬉しかったし」
急に低姿勢になった龍麻につられて、つい本音を漏らしてしまう。
それを聞いた龍麻の口から、安心したような白い息が吐き出された。
「ん……んじゃ、それなりってことで」
「そ、そうだね、それなりに」
なんとなく言いくるめられた気がしないでもなかったが、
今日はもう、それで良かった。
そこの角を曲がれば、家はもうそこだった。
もし家族に見られたら大変だから、本当はもっと離れた場所で別れるつもりだったけど、
結局言い出せなかったのだ。
「……ここでいいよ。ありがと」
でもやっぱり、もうちょっと手繋いでいてくれたらいいな。
そう思ったけれど、龍麻はあっさりと手を離してしまった。
チェッ。
もうちょっと女心を勉強しなよッ。
しかし、頭に浮かんだ言葉を形にする前に、目の前が真っ暗になる。
龍麻が自分を包み込んだ、と知るまで数秒かかり、知った時にはもう身体は離れていた。
「じゃあなッ」
小蒔にだけ聞こえるように囁いた龍麻は、身を翻し、そのまま走り去る。
──バカ。どうせなら、キスもしてってよッ。
小蒔は夜空に向かって声を出さずに叫ぶ。
見上げた濃紫色の空には、口許と同じ形をした月が浮かんでいた。
小蒔キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
入りきりませんでしたワラタ乙!
む、いつのまにか小蒔があがってる。
はしょってあるのがちと残念。
ここってレベルたけぇーな
吃驚
「乳を揉ませてください」
龍麻は土下座した。
「アホかぁぁぁぁ!!」
雪乃の叫び声とグチャッと肉の潰れる音が響く昼下がりの織部神社。
それは小春日和の秋の日の出来事だった。
「突然1人で訪ねてきたと思ったら言うことはそれか!」
血走った目で長刀をかまえる雪乃。
「いやいや、俺は雛乃ちゃんにお願いしたんだぞ?」
「どっちでも一緒だ! そんなふざけた事が通るとでも思ってやがんのか!?」
「かまいません」
「そう、雛乃だってかまわないって……は?」
「どうぞ、龍麻様の思う存分揉みしだいてくださいませ」
頬を薄紅色に染めた雛乃が俯き加減に、しかしはっきりと言った。
「なっ!」
当然の事ながら目を白黒させる雪乃。
さっそく手をワキワキさせながら雛乃に近づこうとする龍麻をとりあえず蹴飛ばしておいて、
トチ狂った妹を説得しようと詰め寄る。
「なに馬鹿なこと言ってるんだ、雛乃!」
「これも宿星のお導きです」
「わけわかんないって!」
「話は済んだか? 明日香学園のゴールデンフィンガーと呼ばれた俺の妙技を見せてくれよう」
「ふ、ふざけんな! そ、そんな事させるわけないだろ!」
「でも雛乃ちゃんはOKって言ってるぞ?」
「言ってますよ?」
「と、とにかく駄目なものは駄目!!」
「じゃあ、尻でいいや」
「駄目!」
「ふとももは?」
「駄目!」
「唇」
「駄目!」
「んー、じゃあ……」
十数分後。
「どうだい、雛乃?」
「ん…、少しくすぐったいです」
「………」
「可愛いね、雛乃のココは。それにとっても柔らかい」
「あ、あまり言わないで下さい。恥ずかしいです…」
「………」
「こんなのはどうかな?」
「んっ、ん……あ……」
「……なぁ」
「どうかしたか、雪乃?」
「耳たぶなんか触って楽しいか?」
結局すったもんだの挙句、龍麻は雛乃の耳たぶを堪能することとなった。
耳たぶならそんなにやらしくないだろうと思った雪乃だったが、何故か龍麻は喜々としていた。
「ああ、楽しいよ。柔らかいし」
「そうかな?」
試しに自分の耳たぶを触ってみる雪乃。
確かに柔らかいけれども、喜ぶほどではないんじゃないかと思った。
「なら雪乃にもやってあげようか?」
「え?」
「別に気持ちいいとは思わないんだろ? ならいいじゃん」
「それは……そうかもしれないけどよ」
「ほらほら、おいで。俺の手は2本あるんだからさ」
「……わかった」
まあ、耳たぶなら大丈夫かな。雪乃はそう思った。
「それじゃあいくよ」
どうしてこうなったんだろう。
「駄目ぇ、やめ……やめて……」
本当に耳たぶだけのはずだったのに。
「いやぁ……」
だんだん気持ちよくなってきて、ちょっとだけならいいかなって、それで気付いたら、
「たすけて…雛乃……」
こんなはしたない格好ではしたない声をあげてはしたないことをされてる。
「姉様、可愛いですわ」
雛乃に見られている。
「そうだな、雪乃は可愛いな」
よがって、しがみついて、受け入れている自分を見られている。
「雛乃も良かったけど、雪乃の耳たぶもまた絶品だな」
そう、耳たぶだけで狂わされていた。
「なんでぇ……なんでこんなにいいのぉ……」
「このセリフだけ聞くと官能小説でアナル開発されてる女教師みたいだな」
「『変態アナル奴隷教師 ゆきの』といった感じでしょうか?」
織部雛乃、高校2年生。好きは出版社はフランス書院。
耳たぶに ハマりハメられ 雪乃ちゃん
声高らかに 秋の夕暮れ
龍麻・心の百人一首
おわる
>644-647
萌えワロさせてもらいました(*´∀`)♥
GJ!
1行目でワロターよ
(・∀・)イイ!!
クッキー残ってら_」 ̄|◯
>650
む、ナニが入りきらなかったんだ?おいちゃんにゆうてごらん(・∀・)
>644-647
龍麻はテクニシャンだなー(w
>650
職人さんの中の人も大変ですね(・∀・)ニヤニヤ
腕だけでとか髪の毛だけでとか影だけでとか呪いの人形とか
>644-647
(・∀・)イイ!!
龍麻は美里邸に遊びに来ていた。
本当はマリィの部屋でマリィと一緒にゴロゴロふにゃふにゃしたかったのだが、葵さんに拉致られて
「今日、家族いないの…」とか「私、今下着つけてないのよ」とか「シャワー浴びてくるけど、覗かないでね」
とかいった誘惑の言葉を右から左に聞き流しつつボーっとしていた。
つーか本当にシャワー浴びにいったし。
これはチャンスだマリィの部屋へ行くべし、と立ち上がろうとすると、見覚えのある黒猫がいた。
「なんだ、メフィストか。マリィは一緒じゃないのか?」
まあ、さすがに家の中でも常に一緒というわけでもないだろうけど。
「…そうか、お前はいつもマリィと一緒なんだよな」
そう呟きながらメフィストを抱き上げる。
「そうだよな、食事も登校も寝るときもお風呂も一緒なんだよな…」
なんだかメフィストが羨ましくなってきたり。
「よし決めた! 俺、卒業したらメフィストになる!」
なれるのか。
「黄龍パワーよ、俺をメフィストにしてくれ!」
いや、普通に無理。
『その願い、かなえてつかわそう』
どこからともなく声が聞こえてきた。
「ニャ?」
なんだか知らないけどメフィストになっていた。
それでいいのか黄龍。
メフィストとなった龍麻は何の躊躇いもなくマリィの部屋へと向かった。
少しは驚け。
「ニャーニャー」
マリィの部屋のドアをカリカリとすると、内側から開いた。
「どうしたの、メフィスト?」
マリィだった。猫視点から見上げるマリィはなんだかとても大きくて、甘えたくなった。
「ニャ」
飛び上がってマリィに抱きつく。ビックリしながらもマリィは受け止めてくれた。
「ニャニャ」
さっそくマリィの頬をペロペロと舐め始める龍麻。もうちょっとプライド持て。
「く、くすぐったいよメフィスト」
「ニャーニャー(訳:さあ、いつものようにバター猫ごっこしようじゃないか)」
そんな事実はありません。
「ん、お腹空いたの?」
当然のように意図が伝わるはずもなかった。
「ニャー(訳:そう、マリィが食べたいんだ)」
「じゃあちょっと待ってね。用意するから」
「ニャー(訳:いや、服着たままでもいいよっつーかむしろその方向で)」
かみ合ってないようでかみ合ってるけどやっぱりかみ合ってない会話。
「フニャー!(訳:おいどんは我慢できんとですたーい)」
「きゃっ! メ、メフィスト!?」
突然首筋を舐められてゾクッときてバランスを崩してベッドに倒れ込む1人と1匹。
「ニャニャー(訳:いただきまーす)」
「メ、メフィ…駄目……」
突然のメフィスト(in 龍麻)の暴走に驚いたせいか抵抗の弱いマリィ。
そのスキにとばかりに欲望のままにふにふにぺろぺろむぎゅむぎゅする龍麻。
「きゃっ…んっ……だ、駄目だよぉ……」
大好きな親友が相手とあって強く反抗もできずされるがままのマリィ。
すっかり獣と化した龍麻はスカートの中へと潜り込んだ。
「そ、そこはっ…!」
「ニャー(訳:秘密の花園バンザーイ!)」
ショーツの上から鼻をこすりつける。
「いやっ、や、やめて…!」
さすがに強い抵抗をしはじめるマリィ。
と、そのとき。
『ごめん、時間切れだわ』
「え?」
「あれ?」
元に戻りました。
「………」
「………」
重い沈黙。ああ、これが別のエロSSなら「お兄ちゃんなら…マリィいいよ」とかでめでたしめでたし
なんだろうけど。
龍麻が小粋なアメリカンジョークで場をなんとかしようと決意したそのとき、
「この龍野郎がぁ!!!」
突然、バスタオル姿の葵さんがドアを半壊させながら乱入してきた。
「年頃の娘がシャワー入ってるってぇのになんのリアクションも無しかい!
そりゃあ失礼ってもんじゃないのぉ!!?」
血走った目で龍麻の胸ぐらをつかむ葵さん。
肌は上気して色っぽいっつーかのぼせたらしい。そういえば1時間くらい経ってるかも。
ああ良かった。神様っているんだね。龍麻は心の中で感謝した。
でもね、神様。
「こっちへこんかい、じっくりタップリ事情聴取してやろうじゃない!」
ズルズルと美里邸にある地下室(制作・葵さん)へと引きずられながら龍麻は思った。
助けてくれたのはいいけど、その先が更に地獄ってのはどうかと思うなぁ、ぼかぁ。
数日後、すっかりしぼりとられてヨロヨロな龍麻とタンパク質たっぷり摂取しましたって感じのツヤツヤの
肌をした葵さんが地下室から出てくるのだけれど、それは別の話。
あと、マリィがあの感じを忘れられずに本物のメフィスト相手にいけない道を歩き始めるのだけれども
それもまた別の話。
おわる
あ、あ、アフォっぽー(w
ハゲワラ
アフォ杉な龍麻に笑いました。
マリィたんの目覚めハァハァ
手解きネコハァハァ
ええのー
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スレ立て宣告ですな。
雛乃たんと深ーく下品なキスをする夢を見たよ。
別に好きなキャラじゃなかったけどものすごく好きになってしまったよ。
どうしよう、死んだほうが良いかな?死のうか?
>664
死ぬな、死なずに作品かいてうp汁
そんなことで死ぬ気になるのかw
気持ちはよくわかるぞっ
次スレ…
立てるのはいいけど即死しないようにしないと
職人さんが新作うpするタイミングに合わせて立てるのがいいのかな。
というか、職人さんが立ててもいいと思うがどうか。
では立ててみるかな。<新スレ