エルフ系ゲーム、エロパロスレッド2

11さまの代理

同級生シリーズ
下級生
卒業生
YU-NO
ドラゴンナイトシリーズ
○作シリーズ
ワーズワース
リフレインブルー
あしたの雪~
その他色々
エルフ系ゲームすべてのエロパロ(主にSS)で盛り上がりましょう。

elf公式HP http://www.elf-game.co.jp/  (毎週金曜日更新)

エルフ系ゲーム、エロパロスレッド1
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1013859895/l50

elf(エルフ)総合スレッド@マッタリ part21
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1030972405/l50

DingDongDong
http://www.tomato.sakura.ne.jp/~ddd/
21さまの代理:02/09/16 00:09 ID:jv3A/MwB
こういうのは初めてなんですけど、こんな感じでよかったでしょうか?
3名無しさん@ピンキー:02/09/16 02:03 ID:5IXIzH+/
3ゲト
立てるの早すぎ
4名無しさん@ピンキー:02/09/16 10:24 ID:F8Gwh9py
>>3
いや、新スレのほうが安心でいいだろ。
1さんが一気に新作うpしてくれたら足りなくなっちまうしなw
ナイススレ建て。乙。
5名無しさん@ピンキー :02/09/16 10:35 ID:u1TrRww0
>>1
新スレ乙
6名無しさん@ピンキー:02/09/16 16:33 ID:uPuUm22N
新しいスレになってもSSうpされる?
7名無しさん@ピンキー:02/09/17 02:07 ID:Pi8z5QMg
>>1
よくやった。乙。
あとは、皆で新作を待つのみ。
1さんおながいします。
8名無しさん@ピンキー:02/09/18 21:55 ID:ur0/tLN5
ほしゅ
9名無しさん@ピンキー:02/09/18 23:58 ID:MBOcgFjh
>6
むりぽ
10名無しさん@ピンキー:02/09/19 00:30 ID:4IpNXPwo
1さまに余裕が出来たら瑞穂の続きを書き込んで頂けると思います。
でも他の方も意欲的にSSを書き込んで欲しいですね。
(近頃皆さん遠慮されているのかな?)

何かスレッド建てるの少し早かった(?)みたいでちょっと焦りましたw
11名無しさん@ピンキー:02/09/19 00:31 ID:4IpNXPwo
ところで以前から謎だったんですけど、SSって何の略なんですか?
12名無しさん@ピンキー:02/09/19 02:46 ID:WPQE0/1o
゚・( `∀´)・゚・。
13名無しさん@ピンキー:02/09/19 13:43 ID:1CtbryQY
>>11
サイドストーリー[Side Story]とショートストーリー[Short Story]の2つがあるけど、
ここのような二次創作物の場合、サイドストーリーの方。
14名無しさん@ピンキー:02/09/20 00:09 ID:+DBVKrYC
>>13
教えて下さってありがとうございます。
そうですか。二次創作物はサイドストーリーに当たるわけですね。
15名無しさん@ピンキー:02/09/20 23:45 ID:pgySyMLG
・・・もしかすると明日か明後日か明々後日、1さまの書き込みがあるかもしれません・・・。
16名無しさん@ピンキー:02/09/22 02:22 ID:tAcMwT7+
ホシュ
17名無しさん@ピンキー:02/09/22 13:28 ID:HvAq3jrD
メンテするならいまのうち・・・・。
18名無しさん@ピンキー:02/09/22 13:35 ID:hqAFjnir
>>15
週末恒例の書き込み、乙彼です。
19   l:02/09/22 14:08 ID:BmUf5iER
20名無しさん@ピンキー:02/09/23 00:01 ID:8WMmYGID
・・・よくわからないですけど、ブラクラとかだったら嫌だな。。
21名無しさん@ピンキー:02/09/23 05:08 ID:btxM5laS
もうダメぽ
22名無しさん@ピンキー:02/09/23 15:34 ID:RuKIjq/U
今週末も恒例書き込みだけだったら…
23名無しさん@ピンキー:02/09/24 00:37 ID:IULPu0UT
心配されなくても大丈夫ですよ。
旧スレッドで1さまは・・

>もう構想もできてるし、書く気もあるんだけど、
>仕事が多忙を極めてます・・・。
>暇になったら一気に書くつもりです。
>そんで、そのまま下級生2に流れ込むよw

と仰られていましたから。
ただ、良い場面で中断になっていますので、
待つ方はモンモンとしてつらいですね。
24名無しさん@ピンキー:02/09/24 18:34 ID:iZrG05rk
野々村病院は含まれないでしか?
25名無しさん@ピンキー :02/09/24 20:13 ID:U1Urv6hr
きわめて個人的には、前に可憐の話書いた人のカキコを期待してるんだが。
26名無しさん@ピンキー:02/09/24 23:46 ID:s4g3VR6z
可憐の芸能界での処女喪失話を誰か書いてくれないものか・・
27名無しさん@ピンキー:02/09/25 23:14 ID:idUBWkBz
もんもん。
28名無しさん@ピンキー:02/09/25 23:56 ID:JvjvrpIz
なりたて様、遅いな…
29名無しさん@ピンキー:02/09/27 01:18 ID:rGD+dRCT
きっついなー
30名無しさん@ピンキー:02/09/27 03:14 ID:rGD+dRCT
降臨期待しておりますです。
31名無しさん@ピンキー:02/09/28 21:58 ID:zNpJ2K1X
age
32名無しさん@ピンキー:02/09/28 23:48 ID:l8UADqYH
・・・もしかすると、今晩とうとう1さまの書き込みが・・・

(1さま、ナターシャのビデオついに発見致しました!)
33名無しさん@ピンキー:02/09/29 13:29 ID:anb3FZmY
ふむ、今晩は要チェックだな。
34なりたて職人:02/09/30 18:13 ID:l6fnWeGD
お待たせして申し訳ない。
亜希子ss、今週末には前半をupします。
代わりに、と言っては何ですが、書いている最中でボツにした部分
をここでお見せします。

野々村院長がまだ生きていた頃、亜希子と栄作との間で交わされて
いた秘事。
回想シーンで書くはずだったのですが、またいたずらに長くなりそ
うなのでカットしました。
何せ途中のシーンなので、人物の説明や描写は抜け落ちていますが、
まあ、ゲームをプレイしたことのある方なら脳内で補完してくださ
ることでしょう(w
それでは。
35なりたて職人:02/09/30 18:14 ID:l6fnWeGD
 亜希子は日常の業務や生活の世話だけでなく、時折、栄作に別の
意味での奉仕を求めることがあった。
 院長室、あるいは豪邸の私室に呼びつけては、豊満な肉体を彼の
前にさらけ出す。
 栄作は犬のように床へ這いつくばる。
 差し出される女主人の脚。
 すらりとしながら、西欧のモデルのように肉付きのいいその足を、
まるで拝むように捧げ持ち、ゆっくりと舌を近づけていく。

 亜希子はそれを侮蔑の視線で見下ろしている。
 人が人を見る目ではない。
 まさしく犬畜生を眺める目。
 そしてそんな男にされる行為だからこそ、舌がじっとりと肉を濡
らしていく感触に亜希子は冷たい瞳の色を次第次第に妖しくけぶら
せていくのだ。

 自ら服をはだけ、下着姿となる。
 女神像のように均整の取れた豊満な肉体でありながら、人妻の放
つ妖しい色香が生々しさを産む。
 何度見ても飽きない肢体だった。

 栄作は舌をじっくりと這わせていく。
 夫との性生活などほとんど無きに等しいだろう。いまはこのおれ
だけが、亜希子さまの肌に触れられるのだ――そう思うだけで栄作
は股間をいきり立たせる。
 太腿に沿って舌を移動させながら、栄作はテントを張った部分を
亜希子の脚に擦りつける。
 まさしく発情期の犬が主人の足にペニスを押し付けるのと同じポ
ーズ。
 亜希子は好きにさせた。
36なりたて職人:02/09/30 18:15 ID:l6fnWeGD
 脚フェチでなくとも涎を垂らしたくなるような美脚に、布地越し
とはいえ男根をこすりつける感覚に栄作は酔い痴れた。
 目を上げれば、亜希子の顔を覆い隠すほどに前へせり出した乳房
がある。
 レースで縁取りされた黒いブラジャーに押し込められていてさえ、
かぶりつきたくなるような色香と迫力がある。

 栄作はじょじょに顔の位置を上へと移動させていった。
 亜希子は奴隷のように奉仕する男を相変わらず、冷たい感情と、
倒錯的な興奮とを覗かせる瞳で見下ろしている。

 栄作のごつごつとした手がそっとブラジャーに押し当てられた。
 女主人の切れ長の目が細くなり、眉がぴくりと跳ねる。
 極上の感触に小男はパンツの中で早くも先走りの汁を滴らせた―
―。
37なりたて職人:02/09/30 18:17 ID:l6fnWeGD

……とまあ、こんな感じです。
多分この二人、本番まではしてないでしょう。
あくまでも主人と犬の関係ですから。

でわ、今度こそ頑張って書きますので、また週末に。
38名無しさん@ピンキー:02/09/30 18:40 ID:F50wxCJi
亜希子タン
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!
39名無しさん@ピンキー:02/09/30 21:20 ID:7P39EROC
キ、キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)゚∀゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)-_)゚∋゚)´Д`)゚ー゚)━━━!!!

うぅ、何度恒例書き込みだけの週末をすごした事か…(ノД`)
40名無しさん@ピンキー:02/09/30 23:16 ID:0yVaZX3R
奥さまの白い素肌に黒いランジェリー
セクシーな唇に見事なオパーイ(;´Д`)ハァハァ…
41名無しさん@ピンキー:02/10/01 09:28 ID:5oJxLUiV
ついにキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
SS職人に見放されてるかとオモタ・゚・(つД`)・゚・
42名無しさん@ピンキー:02/10/01 11:49 ID:CWPpfFGN
亜希子タンと童貞の少年を想像して(;´Д`)ハァハァしちゃだめでしか?
43名無しさん@ピンキー :02/10/04 22:50 ID:Y2WBuR0C
       /  /  / , /! , li     !l !  ll l l   `!  `、`i:::::::/
       ,'.   ,'  l! l.l l l l|       |l l.  |l l |   |    l. l::::,'
! -┼   .l   l   !l | ! | l _」.    -l-lL._,!l | !   .!    ! |:::!
l ,-┼-   !   !   l」.H T「 l !    .,'!Hl. /「 7‐ト、 ,'    l  !:;!
ヽ`ー' _⊥-.l   `、´l l ,l,-H‐トヽ   /,'ナ/ ̄i..7.V.l  /     |  「
    (_|フ`)   ヘ !∧l  ,!::ヽ、ヽ/〃'l _..ノ::::::l 〉、/!  .   ト  `、
       l l   トヽ|{ ト-:':;;;:::| `  ´  「::::::::;;;:::|/j |  ,!  i `、、.!
        `!   li`、  ゝ''"。ノ  、   ゝ'''"o.ノ   ! ,' l/  !!. |
! -┼     ヽ. ! N i ::::  ̄   ,-─-、   ̄ :::::: ,' / /. l!  |l l 前スレ1さんのSS読みたいよぉ
l ,-┼-   ∧`、`、 ゝ、    {    l      ..イ / /⊥|!  !| !
ヽ`ー' _⊥-  ! lヽ ヽヽN`>- ..__ゝ_..ノ.. -‐ 7´ / , ' / _  \〃 ,'
    (_|フ`). ヽヽ.\ヽくヽ、 ,'     ゝ~'"´/, '/ ゝ-、`.  
44名無しさん@ピンキー:02/10/04 23:23 ID:pR+RxkaL
>>43
明日光臨の予感…
祭りになるなw
45名無しさん@ピンキー:02/10/06 00:17 ID:7Kwh1Sdw
・・・もしかすると、今晩1さまの書き込みがあるかもしれない・・・

と言いたいところですが、恐らく今週も無理だと思います(涙)。
今すごくお忙しそうです。
46なりたて職人:02/10/06 20:40 ID:Qkz739AJ
 野々村病院2F。
 奥まった場所にある院長室では、現在、淫らな空気が熱っぽく這
い流れていた。
「ああ……」
 聞こえてくるその声に劣情を誘われない男はいまい。
 目に飛び込んでくるその光景に興奮を覚えない男もいまい。
 が、ドアの前に突っ立ち、微動だにせずにそれを見つめている男
の目は、劣情も興奮も十二分にたぎらせながら、しかし、殺意と呼
ぶにふさわしい感情をこそもっとも濃厚に放っていた。

 彼が射すくめる視線の矢の先にいるのは、この院長室の主。
 野々村亜希子――院長亡きいま、この野々村病院の実質的支配者
とも言える院長夫人だ。

 いつもならば傲然と椅子に腰かけ、来訪者を冷たく見据える彼女
はいま、机の上に半分身体を預けていた。
 前後両方から男二人に抱きすくめられている。
 ワインレッド色のジャケットはジッパーを中ほどまで下ろされて
いて、亜希子が身悶えるたびに、黒いブラジャーをちらちらと見え
隠れさせている。まくれ上がったスカートは、大理石のようにまば
ゆい光沢を放つ太腿と、ストッキングを吊ったガーターを露わにし
ていた。

 前後から亜希子を挟む男はともに黒いスーツ姿。どちらも筋骨た
くましい。野々村病院の――というより、野々村亜希子専属のボデ
ィーガードである。
 見た目は両者ともに強面の男だが、亜希子が漂わせる高貴なオー
ラに気圧されているのか、美女を好きにしていい状況にあるにもか
かわらず、どこかその動きはぎこちない。
47なりたて職人:02/10/06 20:40 ID:Qkz739AJ
「……くそっ」
 それを遠巻きに見つめている男――藤木栄作は歯噛みした。
 歯と歯が磨り減らんばかりに力を加える。
 小柄ながら、ボディガードにも劣らないほどたくましい身体は震
えを帯びている。
 いつもならば、あの役はおれのはずなのに。
 蛇を思わせる陰湿な目で女主人の痴態を眺めながら、彼はひとり、
殺意にも似た感情を滾らせていた。
 
 院長夫人・野々村亜希子はつい先日、未亡人になったばかりだ。
 まばゆい白の上衣に、ワインレッド色のジャケットと同色のスカ
ート。
 ややウェーブのかかった髪には何ともいえない艶がある。切れ上
がった双眸は黒く澄み、顔の中央を割るすっとした鼻筋には気品さ
え感じさせる。

 彫りの深い美貌が、一種独特の氷のような雰囲気を放って、まる
で西欧のモデルのような雰囲気をたたえていた。
 歳の頃は二七、八。

 男なら誰しも、見つめるだけで魂を奪われそうな美女だ。
 しかも美しいだけでなく、プロポーションも抜群ときている。
 ジャケットの胸元は勢いよく盛り上がり、スカートもヒップの丸
みで張りつめている。
 いまもちらちらとのぞく肌は水を弾き返しそうな若さを残しつつ
も、遠くで眺めているだけでムンと匂ってきそうなほどに甘く熟し
た風情がある。
 一見、クールで理知的な美貌の持ち主だけに、肉体の悩ましさは
いっそう男の劣情を誘って、魅惑的に映えていた。
48なりたて職人:02/10/06 20:41 ID:Qkz739AJ
 滅茶苦茶にしてやりたい。
 男ならそう思わずにはいられない女だ。飛びかかり、服を引き裂
き、豊かな肉を舐めまわし、歯を立てて噛みつきたくなる。

 すらりとしたその足元に跪きたい。
 そうも思わせる女だ。醜い己を恥じ、美と官能の化身たるこの女
性の前に跪き、すべてをさらけ出して彼女にお仕えしたい。

 そしてその両方の願望をかなえている男がいた。

 藤木栄作である。
 背が低い上に、いつも卑屈に背中を曲げて歩くために、女主人の
あとをついて歩くと、まるでせむし男のようだと周りから陰口と嘲
笑を囁かれる。
 栄作は気にも留めていなかった。
 彼にとってのすべては仕える女主人――野々村亜希子そのひとだ
けであり、それ以外のことなどに興味はなかったからだ。
 そして、だからこそ――
 彼にとって、いま目の前で繰り広げられている光景は憤死にも値
するほどのものだった。
 おのれ。栄作は心中で呪う。
 女主人を抱きすくめるボディーガード二人を、そして、この光景
を招いた真の元凶たる男――あの探偵を。

 事は、一時間ほど前に遡る――。
「獣のような目をしていたわ、あの男――」
 亜希子は囁くようにそう言った。
 かすれたその声はあきらかに欲情の証だ。
 目元をピンク色に火照らせ、うっとりと瞳を潤ませた彼女はひと
きわ美しかった。
49なりたて職人:02/10/06 20:42 ID:Qkz739AJ
 “あの男”とは、今しがた院長室から立ち去ったばかりの探偵の
ことで、入院患者のひとりだ。
 数日前に亡くなった院長の死の真相を暴きたいと彼は言い、亜希
子に了承をもらいに来ていた。
 女主人が鷹揚に許可したのにも栄作は驚いたが、それよりも何よ
り、彼は海原とか名乗る男の不遜な態度に怒りをたぎらせていた。

 傍若無人で、傲慢な口調。
 栄作はおろか、亜希子でさえ対等の人物として対している。
 そのうち、怒りは驚愕へと転じた。
 亜希子の放つ威圧感は、ただ高圧的なものではない。
 触れると切れそうな高貴的な雰囲気。
 触れるだけでとろけてしまいそうな匂やかな色香。
 本来なら相反しそうな二つの要素が、ぞくりとした陶酔を相対す
る人物にもたらす。
 並の人物――それも、人並みに性欲を持った男――ならば、一秒
と正視に耐えられまい。
 亜希子が怖いからだ。
 そして獣と化しそうな自分が怖いからだ。

 この野々村病院にしても、スタッフや看護婦たちは無論、ベテラ
ンの医師たちですら、亜希子とはまともに目を合わすこともできな
いほどだ。
 それを――
 初対面のはずのあの探偵は、真っ正面から亜希子と対峙しながら
も、実に飄々としていた。
 目を逸らすどころか、亜希子と視線を絡み合わせて離さない。
 かと思うと、亜希子への関心を隠そうともせず、それこそ舐める
ような視線を悩ましいボディラインに這わせたりもする。
50なりたて職人:02/10/06 20:42 ID:Qkz739AJ
 栄作の中の驚きが、ふたたび煮えるような怒りへと転換させられ
ていく。
「獣のような目」
 と亜希子が評したその視線。
 亜希子は身じろぎひとつせず、探偵と言葉の応酬を交わしていた。

 が、つき合いの長い栄作にはわかる。女主人がその野獣のような
視線で感じていたことを。
 豊満な胸に注がれる粘っこい視線が、ただそれだけで彼女の性感
を刺激していたことを。
 瞳を正面から見据える視線、鼻筋を伝い落ちる視線、真っ赤な唇
をねめる視線。
 そのことごとくが淫らな効果をあげていたことを。

 探偵が去ったあと、亜希子は軽く息を吐き出した。
 部屋中の空気がピンクに染まりそうな、そんな切ない吐息だった。
 それから、院長室にはあまりふさわしくないものを机の上へ出し
た。
 ワインボトルとグラスだ。
 琥珀色の液体を注いだグラスを持ち上げ、くっ、と一気に煽る。
 尖り気味の胸を軽く突き出し、白い喉を反らせる。

 栄作は凝視していた。
 女主人の赤々とした唇がグラスに触れ、そこからワインを飲み干
すのを。喉が卑猥に蠢くのを。唇からわずかにあふれた液体が、白
い喉を汚して這い落ちていくのを。
 栄作は我慢ならなくなったように歩み寄り、その女主人の喉にか
ぶりつこうとした。
 いつもそうしていたからだ。
51なりたて職人:02/10/06 20:43 ID:Qkz739AJ
 こぼれ出るワインを舌で舐め上げ、白い喉ごと強く音を立てて吸
う――栄作と亜希子の間で交わされる儀式のようなものだった。
 が、
「あとになさい」
 吸いつこうとした栄作の頭が、邪険に払いのけられた。
 小男の顔が驚きと屈辱の色に染まる。
 しかし、亜希子の冴えた目線に当てられると、「はい」と応じざる
を得ない。
 いったん燃え上がった欲情は、残り火となって瞳の奥でぶすぶす
と留まる。

 そこで何を思ったか、亜希子は彼女専用の回線を使って、ボディ
ーガードを二人呼びつけた。
 数秒と待たずして、
「失礼します」
 ひと声かけて入ってきた二人は、栄作もよく顔を知っている男た
ちだ。病院内だけでなく、外出する際にもひきつれられている。
 どちらも見上げるような巨漢で、筋骨たくましい。が、性格はほ
ぼ正反対に近かった。

 ひとりは実直を絵に描いたような男。栄作などほとんど声も聞い
たことがないくらい、仕事中に私事を押し挟まない性格だ。が、亜
希子を見つめる際にその目に灯るほんのかすかな輝きだけは隠しと
おしきれず、彼が女主人に抱くひそかな憧れがうかがい知れる。
 もうひとりは、根っから明るい性格をした男だ。男女問わず、野々
村病院の中では誰もが不気味がって近づかない栄作にさえ、「よ、せ
むし男」と軽口を叩いてからかったりする。亜希子に対しても、正
面からは絶対視線を合わせないくらいに恐れ、畏怖しているくせに、
ちらちらとよく亜希子の肉体を好色そのものの眼差しで盗み見して
いる。
52なりたて職人:02/10/06 20:44 ID:Qkz739AJ
 そんな二人も、いきなりの呼びつけに当惑している様子だ。
 外出の予定時間にもほど遠い。
 と、亜希子は栄作のぎょろりとした目をさらにひん剥かせる行為
に出た。
 椅子を後ろに下げたかと思うと、いきなり机の上に片方の足を投
げ出したのだ。
 すらりとした脚線美が三人の男たちの前で露わになった。
 黒のストッキングと、白い、脂の乗った太腿の対比がまず目を奪
う。当然、スカートもまくれ上がっていて、その奥を覆う黒いパン
ティーがのぞいている。

 栄作と、屈強な男二人の喉がぐびりと鳴った。
 世間でもてはやされる美人タレントなど、そこらへんの小娘レベ
ルにまで貶めかねない天性の気品と官能美が、男たちの思考を灼熱
させる。

「普段から職務に励んでいる二人に、ご褒美よ」
 そう笑いかけた亜希子の目は蕩けていた。
 普段の冷徹さなど微塵にも感じさせない。いや、そのイメージが
あるがゆえにいっそう情欲を露わにしたその眼差しが男たちの股間
を直撃する。
 ひとりは笑み崩れ、ひとりは顔を真っ赤に染めた。
 言うまでもなく、前者が明るい性格のボディーガードの表情であ
り、後者が実直なボディーガードの反応だ。
 が、さすがにそのひと言だけではどう動きようもない。
「それとも」
 亜希子は薄笑いを浮かべた。
「命令よ、と言ったほうがあたしを抱きやすいのかしら?」
53なりたて職人:02/10/06 20:46 ID:Qkz739AJ
……

ここで前半の前半終了。
前半の後半は近いうちに(早ければ深夜?)。

どうでしょう。
あれ? ひょっとして期待していたものと違った?

まあ、1さんの場つなぎに長い目で見守ってくださいな。
54名無しさん@ピンキー:02/10/06 21:49 ID:bM8cxzQk
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!
後半は亜希子タンのオパーイに期待
55レッド:02/10/06 22:14 ID:+RNcREGJ
キター!
56名無しさん@ピンキー:02/10/06 23:50 ID:W1dGpU2c
次にあると思われるエロシーンを想像するだけで(;´Д`)ハァハァ
57なりたて職人:02/10/06 23:59 ID:3RmuapK6
 それからさして間も置かずして。
 いまの屈辱的な光景が、栄作の前で展開されているのだ。
 軽口男――佐原が、机の上に腰を落としている亜希子を前から抱
きすくめている。
 実直男――野田が、斜め後ろから亜希子に密着している。
 しかしその動きはぎこちない。
 野田はともかく、いつも亜希子を不躾な眼差しで眺めていた佐原
でさえ、顔から笑みを消し、まるで童貞男のような緊張感を表情に
貼りつかせている。
 スカートをまくり上げたはいいが、極上の太腿をさする手はこわ
ごわとしているし、野田に至っては近づいたが最後、それからは石
のように固まって動かない。

 ――ふふん。
 栄作は内心でせせら笑った。
 どっちも威圧されている。あんな奴らで、亜希子さまを満足させ
て差し上げられるものか……。
 と、
「うむう!?」
 すっとんきょうな声が上がった。

 野田が亜希子の口を吸っている。いや、逆だ。ぎこちない動きに
業を煮やしたか、亜希子自らいきなり背後を振り向くや、彼の首筋
に両腕を巻きつかせ、赤い唇を寄せていたのである。
 息苦しそうな野田の声からすると、舌も差し入れられたに違いな
い。
 しばし、荒い息遣いと、んちゅ、ねちゅ……という、粘着質な音
が聞こえた。野田は惚けたように動かない。亜希子の舌ばかりが蠢
いているのだ。いやらしく。強く。長く。
 それを眺める佐原の喉仏が上下に動いた。
58なりたて職人:02/10/07 00:00 ID:yz5Vx5Gz
 ややあってから、亜希子は美貌をそっと離した。二人の唇から舌
先がのぞいている。互いの舌を、唾液の細い線が橋となってつない
でいた。
「ふふ」
 笑いかける亜希子は、その唾液を舌で舐め取る。野田は目を白黒
とさせていた。まるで魔女に魂を抜かれたように茫然自失としてい
る。

「畜生」
 後ろから唸るような声が上がった。
 佐原だ。
 興奮で顔を赤く染めた彼が、いきなり亜希子の首をぐいとねじ向
けたかと思うと、荒々しい勢いで正面から亜希子の唇に吸いついた。
「貴様……!」
 思わず栄作が止めに入ろうとするのを、亜希子は軽く片手をあげ
て制した。
 されるがままに佐原に唇を預けている。
 佐原はひたすらに亜希子の唇を貪っていた。
「んぐ、んぅ、んぉ……」
 角度を変え、合間合間に獣の唸りを交えながら、ふるいつく。彼
の顎を、どちらのものとも知れない涎が伝い落ちた。

 佐原の手が亜希子の胸へ伸びた。
 豊満な乳房を服の上から鷲掴みにする。
 痛みで柳眉をしかめる女主人の顔に、佐原はいっそうそそられた。
勢いよくジャケットのジッパーを引き下ろすと、ゆさりと二つの隆
起がこぼれ落ちる。濃い色のブラジャーも力ずくでむしり取った。
59なりたて職人:02/10/07 00:01 ID:yz5Vx5Gz
 真っ白い乳肉が露わになる。
 九〇センチ以上はあるだろう。未亡人としての妖しい艶にぬめ光
りながらも、ブラジャーをむしられた反動でプルンと弾むそれは、
若々しい張りに満ちている。
 佐原はまた唸り声をあげ、改めて亜希子の胸を揉みしだきにかか
った。
「ああふ」
 鋭利な美貌を上気させ、亜希子が軽く声をあげる。

 同僚の手が乳房を荒々しく揉むのをぼんやりと眺めていた野田は、
誘われたようにふらりと前に出た。
 後ろから亜希子にすがりつく格好となる。
 今度は彼も乱暴だった。近づくや否や、レッドワイン色のジャケ
ットを乱暴にはだけ、すんなりとした亜希子の首筋にかじりつく。

「んあっ……」
 佐原とのキスの合間に、軽くのけ反る亜希子。ちゅぽん、と音を
立てて唇が外れた。
「へへ、気分出してきたようだな、相棒」
 彼は口を拭いながらいやしそうに笑った。手に余る巨乳を今度は
両手で包み込み、強弱をつけて揉みはじめる。

 野田は首筋に唾液を塗りつけると、じょじょに顔の位置を下ろし
ていった。亜希子は西洋のモデル並に骨格が発達していて、華奢な
小娘よりもよほど舐めがいがある。野田は肩先を舌でなぞり、背筋
へと舌を這わせていった。
 亜希子の身悶えが激しくなる。
 一方の佐原は、指の合間で屹立していた乳首へ吸いついていた。
軽く歯を立てたのか、「ああっ」と亜希子が小さな悲鳴をあげる。
60なりたて職人:02/10/07 00:02 ID:yz5Vx5Gz
「奥さま、おっぱいいじられるのがお好きなようですねえ。可愛い
声出しちゃって」
「ああ……いけません。言っては駄目」
 ウェーブのかかった髪を振り乱し、亜希子が哀願とも取れる声を
出す。佐原はなおも鼻息を荒くした。

「くそ、このおっぱいだ、この乳が欲しかったんだ」
 たわわな胸に顔を埋めたかと思うと、両方の乳を寄せ、まとめて
乳首を吸い上げる。
 じゅる、じゅるるっとわざと唾を啜るような卑猥な音を立てた。
大理石を思わせる未亡人のまばゆい肌が羞恥のためにか、薄くピン
ク色に上気していく。

 一方の野田はその場に屈み込んで、亜希子の尻へ到達していた。
 スカートの上から豊かな肉を鷲掴み、まるで匂いを嗅ぐように顔
を押しつける。尻と顔の合間から、荒々しい呼吸音が洩れ出ていた。

「……」
 しばらくそうしていたが、何かが気に喰わないように顔を上げる。
 口を開きかけ、すぐにまた逡巡するように口を閉じる。何度かそ
れを繰り返す彼を、佐原は視界の端に認めた。
「おい、いいから命令しちまえよ。亜希子さまのご褒美なんだから
よ」
「お、おう」
 実直そうな顔を赤らめて野田は頷き、それから意を決したように
女主人へ命じた。

「し、尻を突き出せ。おれのほうへ、よ、よこすんだよ」
 どもりがちの声にあまり迫力はない。野田はその代わりというふ
うに、大きな手で思い切りスカートに包まれた尻肉を叩いた。
61なりたて職人:02/10/07 00:06 ID:yz5Vx5Gz
……
ありゃ。
ヘンなところで引いちゃった。
一応、もう少し書けているので、中盤は今週末にでも。
後半は……未定。

……誰だ、「短いもの」を書くなんて言ったのは。おれだ。
くっそー。

短くまとめる、というのが実は一番難しいんですねえ。
ふう。
62名無しさん@ピンキー:02/10/07 00:13 ID:fbLeJW68
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !! その2
またーりと待ちます
63名無しさん@ピンキー:02/10/07 06:59 ID:hrdYGpmi
偉大なるなりたて職人さま

アリガト━━m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m━━ンっ!


64名無しさん@ピンキー:02/10/09 14:22 ID:otXIyJ9D
続きを激しくキヴォンヌ
65名無しさん@ピンキー:02/10/09 14:27 ID:JJf0JT2I
週末まで待とうや
66名無しさん@ピンキー:02/10/09 15:58 ID:Czgk3WDm
俺が極秘に掴んだ情報によると…
今週末はSS職人さんたちがカキコしまくってくれるらしいぞ。
67名無しさん@ピンキー:02/10/11 15:17 ID:JXEZrDRf
連休の更新を楽しみにしてまつ
68名無しさん@ピンキー:02/10/12 23:28 ID:oP5j3r3s
・・・もしかすると、今晩か明日、1さまの書き込みがあるかもしれない・・・

そう思いたいですが、メール返答もないですし、まだ忙しいみたいですよ。
69なりたて職人:02/10/12 23:35 ID:PPzfVI4+
>>60のつづき


 ぱぁん、と小気味よく肉が打ち鳴る。
「ああッ――」
 背筋を反らしてから、亜希子はしぶしぶと、という感じで命令に
従った。
 野田へ尻を突き出し、代わりに上半身を佐原へ預ける格好となる。
 熟した女体が二人の男に挟まれた。

 そうした格好をすることで、よりスカートが尻肉の形に張りつめ
る。野田は満足したようにひとりで頷くと、掌で撫でさすりはじめ
た。男なら誰でも涎を垂らしたくなるようなヒップを掌で十二分に
楽しむ。

「キスしようぜ、奥さま」
 佐原はまるで恋人のようにすがりついてくる亜希子を抱きすくめ、
顎を指で持ち上げると、もう一度唇を重ね合わせた。
 舌と舌が、互いの口腔内でぴちゃぴちゃと絡み合う。
「んふ、ふ、ん……」
 唇を重ねながら、佐原は片手で乳を下からすくい上げた。
 うつ伏せになっているため、より重量感の増した乳房をタプタプ
と掌の上で弾ませる。いまにもとろけそうな感触だ。

 野田は尻の感触を楽しんでから、スカートをめくり上げにかかっ
ていた。
 ゆっくり、ゆっくり自分を焦らすようにするところが実に彼の性
格を表している。
 卵の薄皮をめくるように、白く輝く肌を目の前にさらしていく。
70なりたて職人:02/10/12 23:35 ID:PPzfVI4+
 ……一方、それを見つめる栄作はただでさえ大きな目をさらにぎ
ょろぎょろと剥いていた。
 いまにも憤死しそうなほどの怒りが脳内を嵐のように駆け巡って
いる。
 佐原は亜希子と唇を重ねながら、まだ飽きもせずにたっぷりとし
た乳房の感触を楽しんでいる。

 自分もその感触を知るだけに、いっそう怒りと嫉妬をかき立てら
れる光景だ。
 しかも奥さまのあの顔。
 自分を相手にするときも絶対の女主人として振る舞う彼女が、脳
味噌の足りないボディーガード風情に媚を売るように切れ長の目を
潤ませ、上目遣いに見上げつつ、男が乱暴に繰り出す舌をまるであ
やすように巧みにぬらぬらと自分の舌を絡ませ、唾液の音を立てて、
時には唾を啜りながら、濃厚なキスを交わしているのだ。

 もうひとりの野田は、ついにスカートをめくり上げ、亜希子の下
半身を目の前にしていた。
 ――ああ……!
 栄作はからからに乾いた喉で唸りを上げた。
 あの太腿。あの脚。あの尻。

 プロポーション維持のためのエクササイズを欠かさない亜希子の
太腿はたくましく引き締まり、そのくせ足首に至るまでの部分はモ
デル並にすんなりと細い。
 いったいどれほどの男があの脚を自由にできたのか。
 長くお仕えしている自分でさえも数えるほど。
 それを、あんな男がしげしげと眺めている。
 不自然な姿勢で立たされているため、亜希子の太腿には力が加わ
って筋肉の陰影を浮き立たせていた。
71なりたて職人:02/10/12 23:38 ID:PPzfVI4+
 どこもかしこも魅力的な身体だ。
 目に映る白いもの全てを自由にしていいのだという思いが、野田
に武者震いをさせた。
 と、彼の目線が尻の合間で止まった。
 喰い込んでいる。
 青紫色のパンティーが、尻の谷間に喰い込んでいる。
 白く輝くむっちりとした丘が二つ、まるで肉同士でせめぎ合うよ
うに並んでいるその中央。
 細くよじり合うようになった布切れ。
 亜希子の普段の颯爽とした、あるいは威圧的なその姿を知る者に
とってみれば、見ただけで射精してしまいかねないほど淫猥な眺め。
 野田はまた自分を失ったようにその場に立ち尽くしていた。

「やれやれ」
 亜希子とのキスを堪能した直後、顔を上げた佐原がそんな相棒の
姿を見て苦笑いした。
 興奮の坩堝にあるため顔こそ真っ赤だが、こちらは若干いつもの
性格を取り戻している。
 すがりついてくる亜希子の乳房をまた下からこねながら、
「あの馬鹿を誘ってくださいな、奥さま。いや、けしかける、と言
ったほうがいいかな」
 耳元で囁く。
「ええ……わかったわ」
 亜希子はぞくりとするような目線を下から当てながら頷いた。ほ
んのりと上気した肌が、冷徹な美貌に生々しい精気を与えている。
 亜希子は肩から顔を振り向かせた。
「ねえ、何をなさっているの? 亜希子のお尻では不満かしら?」
 媚びを含んだその言葉と声の調子に、野田のみならず栄作までも
がぎょっとした。
 亭主との間でもついぞ聞かれたことのないような、そんな声。
72なりたて職人:02/10/12 23:39 ID:PPzfVI4+
 野田は必死にかぶりを振った。大事なおもちゃを取り上げられそ
うになっている子供の顔だ。
 亜希子は薄く笑った。
「じゃあ……食べて。あたしのお尻。あなたの好きにしていいのよ」
 言いながら尻を振る。
 むっちりした太腿がさらに量感を増してわななき、たくましい尻
の曲線が淫靡に揺れる。

 野田はふたたび獣と化した。
 肉に歯を立てんばかりの勢いでかじりつく。
 尻のふくらみを舐めまわされる感触に、ああ、と未亡人は喘いだ。
乱暴で、がさつで、つたない愛撫。それだけに獣の営みを思わせる
激しさが、亜希子の瞳に新たな陶酔を呼んでいる。

 野田は夢中になっていた。
 ひと目見ただけで誰もが目を奪われる美女。彼はいつも、颯爽と
歩くその後ろ姿を見つめていた。真面目な性格だから、勤務中、他
のことに気を取られてはいけない、といつも自分を戒めるものの、
しかし、足を運ぶたび、腰の高い位置で弾む尻の量感にはどうして
も目を奪われてしまう。

 女主人と雇い人の関係だ。
 そしてそれ以前に、ひとりの男として相対したとき、とてもかな
わない女性だとも野田は認めていた。
 しかしだからこそ、欲望は募る。彼本人でさえも自覚しないまま
に育った欲望が、彼自身も思わぬ形でそれは噴出しようとしている。
「ち――畜生」
 尻たぼを唾液で汚し抜きながら、野田は佐原のような悪態を吐い
た。
73なりたて職人:02/10/12 23:39 ID:PPzfVI4+
「いい尻しやがって。いつもお高く振る舞いやがって。――そのく
せ、いつもこんなことしてやがったんだな。いつもこうやって、男
を呼んで、白い、この大きな尻を差し出してたんだな」
「何を言うの。およしなさい――あ……ん」
 強く尻を吸引されて、亜希子が軽く頤を反らす。
 佐原は、提供された喉もとに口づけしながらにやにや笑っている。
相棒の意外な一面を面白がっているのだ。
 そして亜希子も全て悟った上で楽しんでいるようだ。

「嘘をつけ。旦那がいた頃からそうしてたんだろう。この……この、
淫乱女め」
「ああー!?」
 びくりと亜希子の尻が大きく跳ねた。
 細くよじり合った布切れへと、野田の舌が差し込まれたのだ。
 錐のように細く丸められた舌先が、性器の形に沿ってパンティを
なぞり上げる。
 そこにも獣の獰猛さと、人間の鬱積した執念とが込められていた。

「へへ、いいぞ、いいぞ。もっと言ってやれ」
 佐原は方錐型にずっしりと垂れた乳房を弄びながら、亜希子の喉
を責めていた。舌でべっとりと舐め上げたかと思うと、唇を押し当
てて鳥のようについばむ。
 ほとんど全身が性感帯として開発されているのか、亜希子は息を
荒くしながら、敏感に豊満な女体を波打たせている。
「おれはキスマークをいっぱいつけてやる。人前に出られなくして
やるぜ。旦那が亡くなったばっかりだってのに、他の男に抱かれて
るんだって噂になってな」
「ああ……よしなさい。二人とも――よして」
 柳眉をぴくりぴくりと蠢かしつつ、亜希子は切なげな顔で哀願す
る。
74なりたて職人:02/10/12 23:40 ID:PPzfVI4+
 普段はきっ、と吊り上がった切れ長の目も弱々しく伏せられ、凛
と引き結ばれている赤い唇はいまや悦楽の声を生み、男を睥睨する
勝気な表情は屈辱と陶酔にまみれている。
 いつしか、それを眺める栄作の口からぎりぎり、ぎりぎりという
歯の浮くような音が洩れ出ていた。
 サディストでありながら、マゾの愉悦に酔うこともできるのが亜
希子だ。
 いや、サドであるがゆえに、より被虐的な立場に置かれた自分に
酔い痴れることができる、と言い変えてもいい。

「ああっ……はあ……んあああ」
 悩ましい亜希子の声音に、栄作の股間は既に暴発寸前だ。
 そのまま絶頂を迎えかねない。
 男の手で揉みくちゃにされる、あの乳房。底からカーブを描いて
ツンと持ち上がり、神々しいまでの曲線美を描いていたそれがぐに
ぐにと形を変えている。

 顔を埋められた尻。くびれたウェストにスカートがまくれ上がっ
たまま残っているのが余計にエロチックだ。尻の表面は、うっすら
と浮かび上がった汗と、野田が分泌した唾液とでぬめ光っている。
野田が顔を蠢かすたび、涎が出そうなほど張りつめた肉が震え、魅
惑的な両腿がわななく。

「凄え……もう溢れ出てきた」
 いったん顔を離した野田が、かすれ声で囁いた。
 パンティを指でなぞる。
 ふっくらとした丘の中心部に喰い込んだ布切れは、既にじっとり
とした水分を含んでいた。
75なりたて職人:02/10/12 23:41 ID:PPzfVI4+
「あ、あふ……ン」
 無骨な指で押されただけで、まるでイヤイヤをするように尻が揺
れる。
 野田は身を立ち上げた。
 押し当てた指をスリットに沿って上下させつつ、背中から希子に
密着し、白い首筋や耳たぶに分厚い唇を寄せる。
 さらには、こちらももうパンツを突き破りそうな勢いの怒張を、
肉づきのいい脚に擦りつけていく。

「凄い、こんなにぐちゅぐちゅ音がする」
「おっぱいもご機嫌だぜ、野田。触ってみな」
「お、おう」
 二人の男の荒々しい呼吸に挟まれ、亜希子も興奮の度合いを高め
る一方だ。
「あふ、あふ、あふゥ……」
「おお、乳首がぴんぴんに尖ってる」
「だろ? つねってみな。悦ぶからよ」
 へらへらと我物顔で笑う佐原。
 ぎゅっ、と太い指が敏感な突起をつねり上げた。
「あはぁっ!……ああ、そ、そんな……乱暴にしないで――ンン」
 白い歯をのぞかせる亜希子は、しかしその都度、佐原に執拗に
唇を求められて言葉を封じられるのだった。

 秘裂をこする指の動きも激しさを増す。ぎゅっ、と両腿が閉じ合
わされた。
「ンン……ふ、ん」
 いつしか男の獰猛な口づけにも甘く応じはじめる。
 互いの口腔内でぬらぬらと絡み合う舌と舌。
 冴えた頬には血の気が上り、ぴくつく瞼の下では、瞳が男の欲望
をさらに煽り立てるように濡れている。
76なりたて職人:02/10/12 23:42 ID:PPzfVI4+
 一方、野田が股間を擦りつける脚も、彼の動きに合わせて揺れは
じめた。まるで猛り狂った獣をあやすかのように、きゅ、きゅっ、
とハイヒールの爪先を鳴らしては、肉の張りつめた太腿を微妙に動
かす。
「う……」
「おお……」
 猛者二人が、与えられる刺激に反応する。

 佐原は我慢ならなくなったように、腰にすがりついていた亜希子
の手を取り、自分の股間へと導いた。
 ズボンをぱんぱんに張った隆起へ、優雅な未亡人の手が触れる。
亜希子は自分からまさぐりはじめた。押し当てた掌をやんわりと動
かし、隆起全体を撫でさするようにする。

 うお、と佐原が上ずった声をあげた。次第に動きが激しくなる。
佐原は愛撫も忘れ、自ら腰を使い出した。強く揉みしだく亜希子の
手。この女がそうしてるんだ、と思うだけで凄まじい興奮が駆け巡
る。
 夕刻の院長室に、淫らな声が三重奏を奏ではじめていた。
77なりたて職人:02/10/12 23:42 ID:PPzfVI4+
……
ここまででふ。
終盤はまったくの未定。
ひょっとしたら、ちょっとずつでもupするかもしれません。
そりでわ。
78レッド:02/10/13 00:45 ID:bXgK89ts
キター! 一番乗り!
79名無しさん@ピンキー:02/10/13 01:37 ID:KHEGc21w
凄ごいっすッ!!(@^0^@)
80名無しさん@ピンキー:02/10/13 04:43 ID:O2Mj2d3F
亜希子タンの絶妙なテクに期待してるでし
81名無しさん@ピンキー:02/10/15 23:30 ID:nwYGi4Mi
76最高
82名無しさん@ピンキー:02/10/16 04:39 ID:f1m9z8TK
6発!
83名無しさん@ピンキー:02/10/19 10:27 ID:ZPme3RZx
ほしゅ。本日1さんの書き込みが!?
84名無しさん@ピンキー :02/10/19 15:10 ID:q/bvO5qi
このスレは1さんに見捨てられたんだよ。あきらめな。
85旧1:02/10/19 21:21 ID:B7U1Oz1K
いま書いてるっす(^^
10月は無理だけど、11月はいけるよw
86名無しさん@ピンキー:02/10/19 22:02 ID:QQimGuDH
キターーーーーーーーーーーーーー
87名無しさん@ピンキー:02/10/19 23:09 ID:R/rg86ZN
1さま、ナターシャCG送る時はDDDからのメールでいいんですか?(^^;
私は無料HPスペースなど持っていないのでアップは出来ないんです。
(アドレスでわかる人にはわかりますし、アップするのはよろしくないことなので・・・)
88名無しさん@ピンキー :02/10/20 01:23 ID:qPMR+JSV
>>87
うぷろだにUPして半角で公開するなら、2ch系列的にはOK
89職人志望:02/10/21 21:17 ID:MtI8RB94
住宅街の一隅、せいぜい目立たぬ位置に車を止めて。
スモークを貼ったウィンドウ越しに、その店を監視する。
それが、この数日の男の日課になっていた。
朝から晩まで。『憩』という看板を掲げたその喫茶店の開店から閉店まで。
食事と用便以外には動くことなく。車から一歩も出ることなく。
ギラギラと暗い感情を燃やした目で、店の外観を睨みつけて。
呆れるほどの勤勉さで、男は“張り込み”を続けた。
無意味な行為。その馬鹿らしさは自覚している。
「……ったく。こんなとこから眺めてたってよう!」
苛立ちが、聞くもののない呪詛となって口から洩れた。
舌打ちすると、ヒリヒリと口の中が痛んだ。屈辱の記憶。
「ガキがっ!」
毒つけば、一層やりばのない怒りが強くなった。
自分の邪魔をした“ガキ”に対しても、その“ガキ”の影に怯えて、
車から出ることさえ出来ない自分に対しても。
90職人志望:02/10/21 21:18 ID:MtI8RB94
その喫茶店には、男の“獲物”がいた。
立地といい雰囲気といい、いかにも道楽的な店に似つかわしく、
まるで商売っ気の感じられない女主人。
ブラリと冷やかしに入った店内で、彼女の涼やかな声と柔らかな笑顔に迎えられた瞬間に、
男の中に馴染みの黒い情動が生まれた。それも、かつてない激しさで。
それほどに女は“上物”だった。
これまで自分が金と強引さにあかせて食い散らかしてきたような女たちとは、まるで次元が違うと思った。
早速、男は店に日参して、厚顔なアプローチを開始した。
同時に彼女についての情報を集めた。彼女自身は男の厚かましい接近に、
いつも困惑したような笑みを返すだけで口も重かったが。
代わりに、口さがない世間というやつが男に情報を与えてくれた。
女の名は鳴沢美佐子。未亡人の身上、それも高校生になる娘がいるというのには驚かされたが。
その事実は少しも彼女―美佐子の価値を損なうものではなかった。むしろ、その逆だった。
あの若々しい容貌の内側で熟成された肉体を思った時、男の美佐子への執着は決定的なものとなった。
(取り澄ましてたってよ、地味な格好の下じゃ、熟れきった身体が疼いてるんだろうが)
美佐子が寡婦であるという事実から導かれた短絡的な結論が、男を力づけた。
(持て余してるんだろ? 男が欲しくて夜泣きする身体を、寂しく自分で鎮めてんだろう)
91職人志望:02/10/21 21:19 ID:MtI8RB94
その美貌は隠しようもないが。
鳴沢美佐子の印象には華美なところがなかった。
薄い最低限の化粧。清楚で上品だが、特長のない服装。
さらに店にある時は、常にシンプルなエプロンを身につけている。
地味な装いの中に、生来の華やぎを押し隠そうとしているようにも見えた。
それでも……それだからこそ、か。
猟色に馴れた男の目には、美佐子の女としての価値は、より鮮明に映るのだった。
エプロンを突き上げる胸の高さ。何気ない挙措につれて浮かびあがる腰の曲線。
そういった部分にこそ、女の本音が滲み出ている、と男は受け止めた。
彼女の示す、つれなさや生硬な態度は、ポーズにすぎない。
“貞淑な未亡人”という仮面をつけて。
心の奥底では、誰かにそれを剥がされることを待ち望んでいるのだと。
(だから、俺が、その余分な皮を引き剥がしてやるよ。
全部剥ぎとって、裸のおまえをタップリ可愛がってやる)
92職人志望:02/10/21 21:21 ID:MtI8RB94
身勝手な憶測。しかし、男には自信があった。
連日、店を訪れての執拗なアプローチの中で。男は確かな手応えを得ていた。
どんなイヤな相手であれ、客となれば美佐子は無碍には出来ない。
男の下司で猥雑な言葉に、その美貌を、時に赤らめ時に強張らせながら。
しかし、確実に美佐子の心は揺れ動いていた。
男は、敏感にそれを読み取って、勝利の日は近いと確信していた。
いずれにしろ、最後には強引なアクションが必要だろうが。
要は、その強引さを受け入れる状態にまで女を追いやっておけばいいのだ。
予想以上の美佐子の身持ちの固さを、むしろ心地よく味わいながら、
篭絡までのプロセスを楽しむ余裕が、この時の男にはあった。
93職人志望:02/10/21 21:24 ID:MtI8RB94
……ああ、なんかスゲエ読みにくい。
以前から書いてみたかった美佐子さんモノのさわりです。
カエルおやぢによる凌辱……というと、
過去ログで否定的な声もあったようですが。
よろしければ、ボチボチ続けたいと思いますんですが……。
94なりたて職人:02/10/21 21:47 ID:Vog4wq5O
う ま い !

カエル親父頑張れぇぇぇ。
じゃなかった、職人志望さん、頑張ってくださいぃぃ。
95名無しさん@ピンキー:02/10/21 21:51 ID:GdCk9Eor
>職人志望さん

いい感じですな。
俺的には美佐子さんの後にさらに唯も喰っちまうところキボン。
96名無しさん@ピンキー:02/10/22 01:12 ID:wObk+BS2
今度のスレのSSは熟女中心で砂
どっちも続きに期待
97名無しさん@ピンキー :02/10/22 13:27 ID:2LtPSBOZ
職人志望さん、頑張って!
美佐子さんを快楽の奴隷にしちゃってください。
98職人志望:02/10/22 23:40 ID:6qjOCO3T
レスくれた方たち、ありがとうございます。
とりあえず受け入れていただけたようで安堵しちょります。

>>なりたて職人さん
先達の方から、そのように言っていただけると心強いっす。
亜希子さんの続きも期待してます。

>>95さん
唯は……いまのところ凌辱の予定はないんす。スミマセン。
ちょっと私の嗜好が偏ってるんで……。

>>96さん
私、けっこう重度のヅマスキー、熟女スキーなんす。
あまりスレの空気から浮かないように、抑えていくつもりですが。

>>97さん
当然、最終的にはその方向でまとまる予定です。

でわ、続きです。
99職人志望:02/10/22 23:41 ID:6qjOCO3T
しかし、楽しみの時間は突然終わり、男のそれまでの努力は水泡に帰した。
思いもかけなかった邪魔ものの登場によって。
その邪魔もの―竜之介とかいうガキの存在は、男も知っていた。
不在の店のオーナーの息子で、美佐子母子と同居しているということは。
店で、美佐子と言葉を交わすガキの姿も何度か目にしていた。
その時に自分に対して向ける視線に、剣呑なものがあることにも気づいていたが、
しょせんは子供だとタカをくくっていた。
生意気なガキが母のように慕う女を、やがて蹂躙してやるのだと思えば、
向けられる敵意さえ心地よかった。
(おまえのママさんは、俺がジックリ可愛がってやるからよ。
 ガキは外で遊んでな)
内心で、そう嘲っていたのだ。
だが、ほとんど眼中になかったそのガキに、痛烈なシッペ返しをくらうことになってしまった。
100職人志望:02/10/22 23:42 ID:6qjOCO3T
あの日。
思えば、さすがに焦れるものがあったのかもしれない。
いつもより強硬に美佐子に迫っていた時、
突然そのガキ―竜之介が乱入してきた。
美佐子を守るように自分の前に立ち塞がった高校生の少年は、
ガタイも自分より大きく、放つ怒りの波動は殺気じみたものさえあった。
ガキと侮っていた印象とはかけ離れた姿にうろたえるうちに、
男は竜之介によってボコボコにされてしまった。
いかにもケンカなれした少年の拳を何度もくらって、反撃らしきことは全くできないまま、
情けなく悲鳴を上げて、詫びを入れてしまった。
そして、二度と美佐子に近づかないことを誓約させられて、
ほうほうのていで逃げ出したのだ。
101職人志望:02/10/22 23:43 ID:6qjOCO3T
「くそっ!」
思い出すたびに、ハラワタが煮える。
殴られた顔には、いまも青黒くアザが残っている。
それは怒りの源であるとともに、恐怖の刻印でもあった。
男はビビっていた。腕力ではけっして敵わない若者に対して。
しかし、それで美佐子をスッパリ諦めるという選択肢は男にはなかった。
受けた屈辱の分だけ、美佐子への執着は強まっていた。妄執と呼べるレベルにまで。
単なる女漁りであった行為に、復讐の熱が加わったのだ。
(こうなったら、どんな手を使ってでも美佐子をモノにして、
あのガキに吠え面をかかせてやる)
その思いが男の中で凝り固まっていた。
だが、いくら復仇の念は強くても、実際にしている行動は、
こうして終日遠まきに店を眺めることだけだった。
肝心の美佐子の姿など、ほんの時折ガラス越しにうかがえる程度だ。
これでは、どうしようもない。どうにもなるわけがない。
それでも、なにか反撃の糸口となるものを求めて、男は日を送っていた。
102職人志望:02/10/22 23:44 ID:6qjOCO3T
焦燥を誤魔化すために、今日何本目かもわからない煙草に火をつけた。
「……あーあ、ったくよう」
煙と一緒に、これも何十度目かしれない愚痴を吐き出した時。
男の乗った車の横を、ノタノタと通りすぎる影があった。
男はそちらに視線を向け、すぐに見たことを後悔した。
見るからに暑苦しいデブ男が歩いていく。
男はうんざりして視線を戻したが、デブはそのまま『憩』の方向へと進んでいくから、
いやでも視界に入ってくる。
「俺さまの視界を汚すんじゃねえよ、デブ!」
毒づいて。だが、男の胸に引っかかるものがあった。
「……そういや、あいつ、こないだも現れなかったか?」
見たくもないようなモノだから、記憶が明確ではないが。
改めて、前方を歩いていくデブ男に注意を向ける。
デブは、『憩』の手前の辻を横に折れて、男の視界から消えた。
「……やっぱりそうだ。二、三日前にもあそこを曲がって……」
そのまま、男はデブの消えた角を注視して待った。
103職人志望:02/10/22 23:45 ID:6qjOCO3T
十分ほど経過して、再びデブは姿を見せた。先ほどより早足に、
キョロキョロと周囲を気にかけながら。
その見かけ通りの不審な挙動も、数日前の記憶と合致していた。
「……ふうむ」
遠ざかっていくデブの後ろ姿を見ながら、男は考えた。
デブが消え再び現れた曲がり角。男の位置からは死角になっているが、
美佐子たちの住居の玄関がある。
デブは野暮ったい私服姿で年齢不祥な感じだが、あの竜之介と同年代に見えないこともない。
「どっちにしろ、突ついてみる価値はあるな……」
八方塞がりの状況だ、掴めるなら藁でも掴もうという気持ちもあったが。
それ以上に、デブの纏った怪しげな雰囲気が男の嗅覚を刺激していた。
あるいはそれは、自分と同類のものを見つけたということだったかもしれない。
男は、静かに車を走り出させた。
104職人志望:02/10/22 23:46 ID:6qjOCO3T
……最初は、なんとかトボけようとしていたようだが。
「あそこで、なにをしてたか説明できるのか?」
ちょっとスゴんで問い質せば、デブは途端におとなしくなった。
カマをかけた男の方が、あまりの呆けなさに驚いたくらいだ。
(怪しいことをやるわりにゃあ、度胸はねえな)
御しやすい相手、と男は判断した。とにかくデブを助手席に座らせて話を聞いた。
「おまえ、あの竜之介ってガキのダチか?」
「……まあ、そんなとこ……」
デブ―芳樹と名乗った少年はモゾモゾと答えた。
芳樹には相手の男の正体も目的も解らず、当然警戒心はあったが、
自身に後ろ暗さがあるので、表面的には従順であった。
「でも、竜之介は留守だったろうが?」
竜之介を恐れるだけに、その出入りについては男は正確に掴んでいた。
「……行ったら、留守だったから、帰って来たんだよ……」
「それだけにしちゃあ、時間がかかりすぎだな」
「……別に」
「二、三日前にも同じようなことしてたしなあ?」
「……なんで、おたくがそれを知ってるわけ?」
「俺のことはいいんだよ! それと、口の聞き方に気をつけろ」
「…………」
105職人志望:02/10/22 23:47 ID:6qjOCO3T
「……まあ、おまえがあの家の中で、なにをしようが別に構わないんだよ」
男は、少し態度を和らげて言った。
「家人の留守をいいことに、美佐子や娘の下着を盗んでたってな」
「そんなことは」
「しないか? じゃあ、この大袈裟なカメラで盗撮でもしようってか?」
「……ギク」
「図星かよ。うん? でも娘は留守で美佐子は店だろうが。それで盗撮するったって……」
「……フフン」
首を捻る男に、芳樹は得意そうな表情を浮かべた。
「それは機密だから、教えられないなあ」
「ああ、そう」
とりあえず、こいつは馬鹿モノだ、と結論して男は話を続けた。
「とにかくだ、俺にとって重要なのは、
おまえがある程度自由にあの家に出入りできるってことだ」
「……ふうん」
芳樹の細い目に理解の色が浮かんだ。急に口調が滑らかになる。
「もちろん、いつも竜之介くんの留守を狙って行くんだよ。
美佐子さんが応対に出て来て、部屋で待つように言ってくれるんだ」
先まわりして、男の知りたいことを教えた。
106職人志望:02/10/22 23:48 ID:6qjOCO3T
「そうかいそうかい」
満足げに男は頷いた。芳樹との間に的確な意志の疎通がなったことを理解して。
ニンマリと、ふたりは歪んだ笑みを交わしあった。
「で? 狙いは?」
「美佐子だ」
打てば響くといった会話が展開されていく。
「方法は?」
「そこだなあ……ビデオや写真は無理だろうから」
「盗聴?」
「そんなとこだな。リビングと、美佐子の寝室だ。もちろん、ブツは俺が調達するが」
「……リスクが高いなあ」
クイと、眼鏡を指で押し上げて、芳樹が言った。
「一階をうろつくのは、店にいる美佐子さんに気づかれる可能性が高い」
「そこは、おまえさんの努力に期待するしかない」
「リスクが高いなあ」
「わかってるよ。見合うだけのものはくれてやる」
男は懐から、厚く膨らんだ札入れを取り出し、無造作に数枚抜いて芳樹に渡した。
「これは手付けだ。仕掛けに成功したら正式な謝礼、
それでいいネタが掴めたら、ボーナスもくれてやる」
意外な協力者を得て、一気に展望が広がった喜びが、男を気前よくさせていた。
芳樹は渡された万札を素早くポケットにねじこみながら、
「おじさん、お金持ちなんだね」
卑屈な態度になって、そう言ったのは、おべんちゃらのつもりだったのかもしれないが。
「昼間から、ブラブラしてるわりには」
余計な言葉まで、つけ加える。
しかし、男は怒りもせずに、
「親の会社で、名目だけの役員待遇だからな」
しゃあしゃあとヌカした。微塵も恥じる様子はなく。
「羨ましいなあ」
「世の中は不公平に出来てるんだよ」
なかなか似合いの棒組といえる、ふたりではあった。
107職人志望:02/10/22 23:53 ID:6qjOCO3T
……これで、ようやく前フリ終了です。
ムサイ場面を続けてしまって、申し訳なし。
次から、やっと本題に入るんで。
なるべく早く書くつもりですんで、よろしくお願いします。
108名無しさん@ピンキー:02/10/22 23:57 ID:5ysLUZpu
続編よろしくです
109名無しさん@ピンキー :02/10/23 02:59 ID:+dCMmT5o
キタ━( ´∀`)゚Д゚)・∀・)*゚ー゚)`ー´)`ハ´) ̄ー ̄)´・ω・`) ̄ェ ̄)`∀´>`Д´)´ー`)-_-)=゚ω゚
やっぱり前フリがしっかりしてると本編への期待も膨らみますな。
110名無しさん@ピンキー:02/10/23 07:32 ID:A4KEEHr5
にしてもやはり寝取られはイイ!(w
111職人志望:02/10/23 22:00 ID:Z2zRSHeM
レスくださった方、ありがとうございます。マジ、嬉しいです。
連日のカキコになって、ナンダカナアですが。
テンションのあるうちに、進めるだけ進めたくて。

>>108さん
続編です。まだるっこしくてスミマセンが。

>>109さん
肝心なところで、ショボーンにならないようにガンバリたいです。

>>110さん
ウフ。なるべく期待に沿えるように……。

……あのう、これ先にカイておかなきゃならんと思うんですが。
なんと今回もエロ・シーンまで言ってないんす。
イーカゲンにしろ! ってのが正しい反応だと思うです。
本当にスミマセン。申し訳ない。
かなり真剣にビビリながら、続きを上げます。
112職人志望:02/10/23 22:01 ID:Z2zRSHeM
数日後。深夜。

「俺は、美佐子さんが好きだ。女として。だから美佐子さんを抱きたい」

竜之介がキッパリと言い放った言葉は、懸命な演技で彼の想いをそらし、
自らの想いを隠そうとする美佐子の心の鎧を打ち砕いた。
全ての禁忌やしがらみを捨てたふたりは、強く抱きしめあった。
年齢や立場を超えて想いを通じ合った、一対の男と女として。

それは閉ざされた部屋の中での一幕。
いまはまだ誰にも明かすことの出来ない、秘密の誓約。

……のはずであったのだが。

「……クク……」
住宅街の闇の中に。今夜もその不審な車は停まっていた。
ある日を境に、車の出現する時間帯は昼から夜へと変わっている。
正確には、喫茶店『憩』の閉店時間に現れて、そのまま朝まで。
「……ククク……」
ハンドルに突っ伏すようにもたれた男の肩が小刻みに揺れる。
片方の耳に挿しこまれたイヤホーンに、男の全神経は集中していた。
そこから聞こえているのは、数十m離れた密室での会話。
「……“女としてスキだ。だから抱きたい”か。やるねえ、最近のガキは」
男は喜びに上気した顔を上げて、灯りを落とした『憩』を見やった。
その頬は、なおも堪えきれぬ笑いにヒクついている。
「芳樹に、ボーナスをはずんでやらなきゃなあ」
113職人志望:02/10/23 22:01 ID:Z2zRSHeM
「……っと」
男が笑いを鎮めて、真剣な表情になる。
最高級の盗聴器が伝える美佐子の寝室の状況。
ふたりの会話は間遠になって、代わりに艶めかしい息づかいが聞こえ始めた。
「まあ、そうなるわな……」
生意気なガキに、美佐子の身体を先に賞味されるのはいまいましいが。
“ネタ”としては、これで万全なものになったといえる。
『……あぁ……竜之介く…ん……』
「ケッ! ガキ相手に気分出しやがって。淫乱年増が」
毒づきながらも、男の体も盗み聞く情事に反応していた。
ズボンの前を突き上げたモノに手を伸ばしかけて、
「……って、ここまで来たら、寂しくシコってる場合じゃねえぞ」
グッと思い留まる。
芳樹を使って、盗聴器を仕掛けるのに成功してから、
毎夜美佐子の独り居の様子を余すところなく聞いてきた。
意外な飲酒癖を知り、酔った美佐子の洩らす愚痴や、
意味深な嘆息などを聞くだけでも、かなりの昂奮があって、
猛りはやる逸物を手であやさずにはいられなかった。
ましてや、今届いているのは、まごうことなき情事の実況である。
アテガキの対象としては、これ以上ないものではあったが。
「これで、美佐子は手に入ったも同然だからな。ここは我慢だ」
溜めに溜めた欲望も情念も、まとめて美佐子の中にブチこんでやらにゃあ、と。
「……とはいえ、こりゃあ生殺しだなあ」
ならば聞くのを止めればよさそうなものだが。
無論のこと、音声は全て録音中なのだし。
だが、やはり、そうとは簡単に割り切れないから、男も落ち着かない。
114職人志望:02/10/23 22:02 ID:Z2zRSHeM
しかし、男の懊悩は意外なかたちで救われることになった。
『……待って!』
美佐子の切迫した声が聞こえて。
その後は、グダグダとしたやりとりが続いた。
どうやら、美佐子はここでは最後まで許すフンギリがつかなかったようだ。
そして、男からすれば信じられないことに、
竜之介も美佐子の気持ちを汲んで、素直に引き下がってしまったのだった。
「…………はあ?」
竜之介が出ていく気配を最後に、シンと静まった部屋の様子を聞きながら、
男は呆気にとられていた。
まあ、美佐子のような女には、いかにもな行動とも言えるだろうが、
「おとなしく引き下がるかね? そこで」
まったく、血の気の多い若者とも思えない分別である。
「……まあ、これが、いわゆるひとつの、“愛”デスカ?」
呆れの後に、男の顔に浮かんだのは冷笑だった。
「本人がそれで納得すんなら、いいけどよ。つーか、言うことなし」
結果的に、バッチリな“ネタ”は手に入ったし、
ガキにお先を取られずにも済んだしで、
確かに男からすれば文句のつけようがない展開だった。
「……さあて、そうとなりゃ明日に備えて、今宵は撤収だな」
録音を止め、耳からイヤホーンを外した。
視線を、もう一度、美佐子の家の方へと向ける。
無論、その家はひっそりと静まって、今夜その一室で起こったことなど、
うかがうよしもない。
「待ってろよ、美佐子」
ニンマリと口の端を吊り上げて、男が宣告する。
車を出そうとして、助手席のシートに置かれたままの盗聴器に気づいた。
「っと、いけね。大事な大事な“ネタ”が詰まってるんだからな」
そそくさと取り上げて、主電源を切り、胸ポケットにしまいこんだ。

『……竜之介…くん……』
電源が切られる寸前にマイクが捉えた声は、誰にも聞かれることはなかった。
115職人志望:02/10/23 22:03 ID:Z2zRSHeM
「いってきまーす」
朝の慌しい時間を締めくくるように、明るい声が響いた。
「はい、いってらっしゃい。気をつけてね」
美佐子は玄関口に立って、制服姿の唯を見送る。
その横を、今朝もまた唯に急かされて、ようやく支度を整えた竜之介が出ていく。
「……あ、いってきます」
いつも通りの挨拶は、しかしどこかぎこちなかった。
それは無理もないことだったろう。
前夜の出来事を思えば。
「はい、いってらっしゃい」
だが、答えた美佐子の表情も声も、まったく普段と変わりないものだった。
そんな美佐子に、竜之介はホッと安堵するような、
どこか物足りないような複雑な感情を沸かせたが。
ん、とすぐに気持ちを切り替えて、
「いってきます」
もう一度、今度はしっかりとした声で告げて、正面から美佐子を見た。
その真っ直ぐな意志に満ちた視線に捉えられて、
美佐子の胸がドキンと大きな鼓動を打った。
「……あ」
瞬間、意味深長な雰囲気が、その場に生じたが、
「おにーちゃん! 早くしないと遅刻だよ!」
先に出た唯が呼ぶ声で、奇妙な緊張は破られた。
「わかってるよ!」
苦笑まじりに竜之介が叫び返して、玄関を飛び出していく。
それは、見慣れた朝の光景。何年も繰り返してきた。
しかし、その場に佇んだまま、ふたりを見送る美佐子の瞳には、
これまでと違った複雑な感情が揺れていた。
116職人志望:02/10/23 22:04 ID:Z2zRSHeM
「………………」
家の中に戻って。
美佐子は、使われた食器が残ったままの食卓の椅子に座って、
しばし物思いに沈んだ。
今しがた見送った、子供たちの姿を思い浮かべる。
並んで歩く竜之介に、しきりに話しかける唯の姿。
じゃれつくような、どこか甘えかかるような。
唯の想い―無論、美佐子はそれを知っていた。
何年も前から、多分唯本人が自覚するよりも早く、
娘が“おにいちゃん”に向ける感情に気づいていた。
そして、母として、いつか唯の想いが竜之介に届くことを願っていた。
願っていた……はずなのに。
どこで道を違えてしまったものか。
竜之介が選んだのは、唯ではなくて美佐子だった。
そして、美佐子も竜之介の想いを受け入れてしまったのだ。
(そう……私は、彼の心を受け入れてしまった……)
それこそが美佐子にとって、一番信じがたいことだった。
拒むべき理由はいくらでもあった。
親子ほど離れた年齢。そして、実際に母親と息子のように接してきた関係。
彼の想いが、一過性の熱病のようなものではないのか? という当然な疑い。
そして、なによりも唯の想い。
拒むべき理由ばかりが美佐子にはあったはずなのに。
117職人志望:02/10/23 22:04 ID:Z2zRSHeM
だが、竜之介は美佐子の桎梏の全てを打ち砕いてのけた。
拒むために演じる擬態のことごとくを跳ね返されるごとに、
美佐子は自分を縛った鎖が千切れていく音を聞いた。
そして最後には、剥き出しにされた女としての自分だけが残った。
若者からの求愛を受けて、歓喜に震える女が。
そうなのだ。
彼を受け入れてしまうことに、どれだけの懊悩を感じようとも。
なにより強い感情は、喜びなのだ。
「……竜之介くん……」
声に出して、その名を呼んでみる。
それだけで、痛みにも似た熱が美佐子の胸に走った。
グッと自分の肩を抱きしめて、その熱さに耐える。
腕に押された乳房が、ブラウスの下で柔らかくたわんだ。
彼の……大きな手が触れた胸。
「……ン……」
どうしても……思考は昨夜の記憶へと収束していく。
彼の体……息づかい……匂い。
逞しかった。熱かった。
ひとつひとつを思い浮かべるたびに、身体の奥の熱が増していく。
あの後、美佐子は一睡もしていない。眠れるはずもなかった。
汗を吸ったシーツの上で、火照りの引かぬ身体を煩悶させて朝まで過ごした。
ともすれば、手が乳房や股間に伸びようとするのを、
美佐子は懸命に自制して、朝を迎えた。
ここで情欲に流されるのは、自分の身勝手な願いを聞き入れて、
踏みとどまってくれた竜之介の心を裏切ることになると。
118職人志望:02/10/23 22:07 ID:Z2zRSHeM
竜之介と最後の一線を越えることを拒んだ時。
美佐子は、亡夫への想いを口にして、もう少しの猶予を竜之介に求めた。
それもまた嘘ではなかったが。
本当は、夫よりも唯のことを慮ってのことであった。
唯の知らぬ間に、竜之介と最終的な関係を結ぶことは出来ないと思ったのだ。
いずれ、唯には告げなければならない。
自分が竜之介とともに生きることを選択したのだと。
そして、それを唯に告げるのは、必ず自分でなければならないと、美佐子は思い定めていた。
唯は……深く傷つくだろう。
二度と自分を許してはくれないかも知れない。
それはそれで仕方ない、とは美佐子は考えない。
そんな割り切りは許されないのだ。決して。
どれだけの時間がかかろうとも、唯にわかってもらわなければならない。
少なくとも、“仕方ない”などという逃げ方で、
唯の理解を求める努力を放棄することだけは許されない。
“女”としての私は、最後まで娘に譲り通すことは出来なかったけれど。
それでも私はあの子の母親なのだから……。
119職人志望:02/10/23 22:08 ID:Z2zRSHeM
(……唯に、ちゃんと告げられるまでは、竜之介くんとは……)
これ以上関係を深めないように、と美佐子は思い決めた。
それもまた自分の勝手な取り決めで、彼を苦しめることになるだろう。
唯に対して、いつ、どのようなかたちで事実を伝えればいいのかも、
まだ思案が定まらないのだから。
(でも、彼ならわかってくれる)
昨夜、辛そうな顔で、それでも必死の自制を働かせて、
自分の願いを聞き入れてくれた竜之介のことを思い出す。
あの時は美佐子も必死だったが。今になれば、若い彼に、
どれほどの忍耐を強いてしまったものかと思い至る。
そこにも彼の想いの深さを見た気がして、美佐子は震えるような感動を覚えた。
(……私の方が、我慢できなくなるかも……)
燻るものは依然として身体の中にあった。昨夜からずっと、消えることなく。
「……馬鹿ね」
年甲斐もない、と頬に血を昇らせてしまった自分を叱責して、
美佐子は我にかえって、壁の時計を見やった。
「いけない! こんな時間」
慌てて立ち上がり、手早く片づけを済ませて、店へと向かった。
120職人志望:02/10/23 22:09 ID:Z2zRSHeM
ブラインドを上げ、簡単に店内を整える。
毎朝の、慣れた作業。
だが、そんな中にも、昨日までと違う自分を感じる。
眠っていないから、少し頭が重く、体も気だるいのに。
それを補って余りあるような活力が自分の中にある。
「……単純って、いうか」
つまりは、手に入れた新しい恋に浮かれてしまっているのだと気づく。
若い娘じゃあるまいし、と気恥ずかしさを感じても、
そんな自分を否定する気にはなれない。
すでに、長い眠りは破られてしまったのだから。
軽やかな足取りで、美佐子は店の外に出た。
「ン。いい天気」
青い空に笑顔を向けて、朝の空気を深呼吸した。
くるりと体を回して、ドアのプレートを『OPEN』に変える。
その時に。その声は背後から聞こえた。
「いま開店かい?」
「はい。いらっしゃ…」
笑顔のまま、振り返って。
美佐子の言葉は途切れ、表情が強張った。
そこに立って、厭らしい笑みを浮かべて、美佐子を見ている男。
忘れられない、とまでは言いたくないが、まだ記憶に新しい顔だった。
「丁度いいや、朝のコーヒーを飲ませてもらおうか」
121職人志望:02/10/23 22:10 ID:Z2zRSHeM
先日の騒ぎのことなど忘れたような顔で、男が言った。
無論、美佐子にすれば素直に招じ入れられるものではない。
「何の用です?」
キツく男を睨んで、身構えながら質した。
「おいおい、客に向かって、それはないんじゃないか?」
「帰ってください。もう、私には近づかない約束でしょう」
「そう警戒すんなよ。もうヘタなマネはしないからさ」
にべもない美佐子の拒絶にも、男はヘラヘラとした態度を変えなかった。
「また、あの若いのに殴られちゃたまらんからな。
 ようやく、みっともないアザが消えたとこだってのに」
「帰ってください」
「あのボーズ……竜之介だっけ? 俺が言うのもおかしいが、ホネがあるね」
 なかなか男ぶりもいいし。女にもモテるんだろうなあ」
「…………?」
竜之介のことを持ち出して、やたらとほめちぎる男に、美佐子は訝しさを感じる。
「そんな若い男に口説かれちゃあ、あんたが年甲斐もなくノボせちまうのも、
 無理はないわな」
「……なにを言っているの?」
内心の動揺を押し隠して、美佐子は聞き返した。
……どうせ、ゲスな想像で口にしたことに違いない。
昨夜のことを、この男が知るはずがないのだから、そうとしか考えようがないのだ。
だが、男の目に光る、やけに確信めいた色は……?
ゾワリと。美佐子の背を禍々しい予感が走った。
それを見透かして、男はゾクゾクとした愉悦を感じながら、
ゆっくりと、その言葉を吐き出す。
「“オレハ、ミサコサンガスキダ、オンナトシテ、ダカラダキタイ”か。
 あんた、ケツが痒くならなかったかよ? 俺なんざ、聞いてて吹き出しちまったよ」
122職人志望:02/10/23 22:12 ID:Z2zRSHeM
ガン、と。
後頭部を強打されたような衝撃が美佐子を見舞った。
もちろん、覚えている。たった昨夜のことだ。
いや、たとえ何年何十年たとうと、忘れることなどありはしないだろう。
無骨で無遠慮で不体裁な、でも真実の想いに満ちた言葉。
自分を生まれ変わらせて、これからの生き方を決定づけた言葉。
ふたりだけの記憶の中に、封じこまれるはずの言葉。
そのはずなのに。
「……どうして?」
驚愕のままに美佐子は洩らしていた。それが問わず語りになってしまっていることにも気づかずに。
「まあ、いつまでも立ち話もなんだしよ。中でゆっくりと話をしようじゃないの」
勝ち誇った顔で、男が促した。

カウンターを挟んで、美佐子と男は対峙していた。
ドアのプレートは、再び『CLOSED』に戻されている。
この男と店の中にふたりきりになることには、当然抵抗があったが。
しかし、このまま男を追い返すわけにもいかなくなっていた。
先ほどの、あの言葉のわけを聞かなくてはならない。
123職人志望:02/10/23 22:12 ID:Z2zRSHeM
「コーヒーくらい出してくれねえのか?」
ジッと殺気走った目を向ける美佐子をよそに、余裕に満ちた男が聞いた。
美佐子は動かず、なにも答えようともしない。
無言で男に釈明を促すようにも見えるが、美佐子の心理には、
うかつなことを言えないという自戒の方が強かった。
チェッと軽く舌打ちした男は、懐から大ぶりな補聴器のような機械を取り出した。
「こいつを聞いてもらえば、話は早いよ」
引き出したイヤホーンを美佐子に差し出す。
「………………」
美佐子は立ちすくんだままで、小さなイヤホーンを凝視した。
怖い。それを耳にあてるのが。
まだ、まさかという思いはある。そんなはずがないという希望が。
だが、それは一秒ごとに弱く小さくなっていった。
もし……最悪の答えが待ちうけているのなら。
そのイヤホーンから聞こえてくるものの察しはつく。
それを確認するのが、怖かった。
「どうした?」
いつまでも動かない美佐子に男が声を掛けた。別に焦れたふうではない。
むしろ、蒼白になった美佐子の怯えを、ジックリと楽しんでいた。
「…………」
ようやく、美佐子が手を伸ばした。
震える指で男の手からイヤホーンを受け取る。
耳穴に挿しこむ、たったそれだけの行為がおぼつかなくて、
取り落としかけたホーンを慌てて拾い上げた。
そんな美佐子の動きを、男が愉しげに眺めている。
やっと、小さなホーンが美佐子の形のよい耳の中心に収まったところで。
男は合図もなしに、再生ボタンを押した。

『あぁ……竜之介、くぅん……』
124職人志望:02/10/23 22:14 ID:Z2zRSHeM
「っ!!」
短く、引き攣った声を発して。
美佐子は弾かれたような動きで、イヤホーンを耳から引き剥がした。
その一瞬には、心臓が停止したかのように思えた。
その後には、凄まじい早さの鼓動が、ドンドンと頭蓋にまで響いている。
その小さな器具から聞こえてきた音声は。
音量が予想外に大きく、音質も予測より遥かにクリアだった。
まるで、今ここで誰かが耳元で上げた声のように。
いや。
自分自身が、今この場で発したかのような。
まぎれもなく、それは美佐子自身の声であった。
「もういいのか? 納得してもらえたのかな?」
ますます得意の気ぶりを強めて、男が聞いた。
追いこんだ“獲物”を仕留めにかかる。
「違う……違うわ」
追いつめられた“獲物”が最後の抵抗を試みる。
「違う? そうかねえ。登場してるふたりは、『美佐子』と『竜之介』って、
 呼び合ってるけど」
「作り物よ! 私じゃない……私たちじゃない」
何度もかぶりを振って、ひたすらに美佐子は否定する。
「でも、あんたの声にそっくりだと思うんだがなあ」
「違うわ!」
「ふうむ……じゃあ、あんたらに親しい人間に鑑定してもらうか?」
男の言葉に、俯いて首をふっていた美佐子が、ハッと顔を上げた。
「なにを……言うの?」
「やっぱ、娘さんだろうな、唯ちゃんだっけ? あのコなら、
 母親の声を聞き違えたりしないだろう?」
125職人志望:02/10/23 22:15 ID:Z2zRSHeM
「やめてっ!」
美佐子は悲痛な叫びを上げた。
(あの声を……あんなものを唯に聞かれたら……)
録音された声、客観的に聴かされた自分の声は、
甘い記憶の中にとどめるものとは、あまりにかけ離れていた。
実際には、自分はあんなにも淫蕩な声を上げて、竜之介に媚びていたのだ。
そんなものを、まだなにも知らない、知らせていない唯に聴かれることになったら。
自分のことは、まだいい。どれだけ蔑まれようと恨まれようと。
ある意味、自業自得なのだ。
だが、唯の受ける痛みと悲しみを思うと……。
126職人志望:02/10/23 22:16 ID:Z2zRSHeM
「……やめて……それだけは」
幽鬼のような顔色で、弱々しく美佐子は懇願した。
それは事実と敗北を認めたことでもある。
「だいたい、話はまとまったな」
ニンマリと笑って。男は煙草に火をつけた。勝利の一服のつもりらしい。
「……これは犯罪だわ」
視線を落としたまま、美佐子が呟く。
言うだけ無駄なことと解っている、力ない声だった。
「そうだな。で? 訴えるか」
「…………」
ダメを押されれば、もう美佐子に続ける言葉はなかった。
しょせん、それは敗北を沁みこませる時間を稼ぐためだけのやりとり。
そうして。
美佐子は最も訊きたくないことを、男に確認した。
「……目的は、なんなの」
「そりゃあ……」
わかりきったことを訊く、と男は鼻で笑って、
「俺も、美佐子さんがスキだからさあ、女として。
 だから美佐子さんを抱きたいわけだよ」
「………………」
全てが、最低最悪の予測に沿って推移するだけだった。
美佐子は、頷きはせず、かといって首を横にも振らずに。
ただ絶望の色をさらに濃くして、目を閉じた。
127職人志望:02/10/23 22:17 ID:Z2zRSHeM
……本人は、これでも本題に入ったつもりだったんですが。
一応は、こういうパートも、後でそれなりに効いてくれるかなあ、とか。
なるべく早く続きをカクので、許してつかーさい。

もうひとつ不安なのは……これ、ちゃんと美佐子さんになってますかね?
128名無しさん@ピンキー:02/10/23 22:39 ID:F8ZaQ3Eg
>127
ちょっと弱いような気もするけど
それでも俺の頭ではあの顔と声で動いてます。
少なくとも別人てことはないです。

それと一つ確認しておきたいんですが、
まずはじっくりと口をねぶりあげるんですよね?
129なりたて職人:02/10/23 23:26 ID:LyfOll4l
……
…………
ハッ!
読みふけってしまいました。
凄いっす。

頑張って、最後まで書き通してください。
130名無しさん@ピンキー:02/10/24 00:07 ID:QMb8LSDo
>127
グッジョブ!
続きめちゃくちゃよみてえ!

やぱーし、そのうち親子丼ありですか?
131名無しさん@ピンキー:02/10/24 00:59 ID:grAvqqbx
職人志望様、続きよろしく!!
132名無しさん@ピンキー :02/10/24 01:56 ID:Ovy/mPu2
>>127
ご苦労様です。
もちろん、カエルおやぢのテクニックは美佐子の亡き夫より上ですよね?
133レッド:02/10/24 23:23 ID:D84r9pT1
ぬおっ! 終わりか!
準備万端いつでもかかって来いって気持ちで読んでたのに(なんの?)
まっ、いいか。期待してま~す
134職人志望:02/10/25 02:10 ID:sn9MaJmR
引き続き、レスを頂けて、ありがたいです。
いきなりですが、ごめんなさいしときます(またかよ!?)。
今度こそ、カンジンな場面を迎えたはずなのですが、
カエル氏が作者の予想以上に粘着質で。
この調子では、この一幕がどれほどの長さになることやら。
つーわけで、ちょっと短めで半端なとこまでですが、上げさせてください。
焦らしてるつもりは、ないんす。ホント。

>>128
やっぱ弱いですかね。となると、これから更に離れちゃうかもしれないですね。
けっこう落ちていっていただく予定なので……。
別人にはならないよう、留意します。
口ネブリは……一応考慮してみます。

>>129
最後まで妄想は完了してるので、時間がかかっても完結はさせられると思います。
問題は展開の遅さですなあ。スマンです。

>>130
やっぱ、みなさん母娘ドンを期待してるんですかね? 基本型?
うーん……ちょっと希望に沿えるかどうかは……スミマセン。

>>131
半端ですが続きです。細切れでスマンです。

>>132
それはデフォルトでしょう。

>>133
スミマセン。今日の分も、まだ準備をするには早いです。

でわ、続きです。
135職人志望:02/10/25 02:11 ID:sn9MaJmR
美佐子は、広い部屋の壁一面を使った巨大な窓の傍に立っていた。
窓の外は、晴天の空だった。
視線を下に向ければ、如月町の眺望が広がっている。
ステーション・ホテル。最上階。
スペシャル・スウィートの名をつけられた部屋。
過剰に豪奢な部屋の窓辺に立ちながら、贅沢な眺めには背を向けて美佐子は立っていた。
差しこんだ午前の陽光が、豊かな黒髪を輝かせている。
光は、白い肩や滑らかな背肌をも照らしている。
冬の空を背景にして佇む美佐子は、一糸もまとわぬ全裸の姿だった。

あの後……男はすぐに美佐子を連れ出して、車に乗せた。
『憩』は臨時休業を余儀なくされてしまった。
(ただでさえ、お客さんが少ないのに……)
その上、急に休んだりすれば、ごくわずかな常連客まで離れてしまう。
車が走り出す時に、美佐子がボンヤリと考えていたのは、そんなことだった。
それは、逃避による自己防衛といえるものだったろう。
それを自覚した時、美佐子は軽く頭をふって、キュッと唇を噛みしめた。
(そんなことで、どうするの)
しっかりしろ、と自分を叱咤した。
この朝に、突然美佐子を襲った変事は、悪夢のようなものではあった。
しかし、ここで弱気に落ちきってしまえば、いくらでも悪い展開を呼びこんでしまうのだ。
美佐子にとって、最も恐れる事態は、唯や竜之介を巻きこんでしまうことだった。
それだけは、避けなければならない。
(私は、あの子たちを守る……守りとおしてみせる)
136職人志望:02/10/25 02:13 ID:sn9MaJmR
この局面においては、美佐子に逃げ道はない。
いま……自分の隣りで上機嫌で車を飛ばしている忌まわしい男の望みを受け入れざるを得ない。
考えただけで怖気が走るが……そのことについては覚悟を決めた。
男に促されて店を出る時に、美佐子は、これは一度限りのことだと男に約束させた。
いかにも簡単に了承した男を、信用はできないが。
しかし、必ずその約束を守らせなければならない。
一度だけ、数時間の忍従を代償として、自分と子供たちの周辺から、
この卑劣な男を排除しなければならない。そう美佐子は意を固めた。
……やがて、車が如月町の中心地に入った頃には、
美佐子はキッチリと背を伸ばして端座して、真っ直ぐに前を向いていた。
どこか、殉教者のような冷たい落ち着きを、その横顔に湛えて。
車の目指す先がホテルであるとわかった時にも、それは崩れなかった。
ただ、心の中に、
(……こんなことなら)
昨夜、竜之介と結ばれてしまえばよかった……という悔いを
よぎらせずにはいられなかった。
137職人志望:02/10/25 02:15 ID:sn9MaJmR
男は事前に部屋を予約していたらしかった。
それについても、美佐子はどうとも感じなかった。
生まれて初めて足を踏み入れる豪華な客室のようすには、少しだけ物珍しさを刺激されたが。
それだけであった。
美佐子は、感情を凍りつかせるべく努めた。
これからしばらくの苦痛の時間を、人形となって耐えるために。

「まずは乾杯といくか?」
部屋に入るなり、上着を脱ぎ捨てた男は、運びこませたワゴンからボトルを取り上げて、
美佐子に示した。最高級のシャンパン。
だが部屋の中央の佇む美佐子からは、なんの反応も得られず、男は軽く肩を竦めると、
シャンパンの栓を抜いた。小気味のよい音が静かな室内に響いた。
祝祭に相応しいはずのその音は、いまの美佐子には自分と無関係なものと聞こえた。
男は無造作に酒を注いだグラスを手に、豪奢なソファに腰を下ろした。
ここへの道中の浮かれた色は消えて、部屋に入ってからの男は、
悪落ち着きとでもいった冷静さを見せていた。
一口グラスの酒をあおると、
「じゃ、脱げよ」
ひどく簡単に命じた。
138職人志望:02/10/25 02:15 ID:sn9MaJmR
美佐子は目に力をこめて、正面から男を見つめた。
「一度きりよ。今日、この場かぎり」
改めて念を押した。
「わかってるよ」
「今日ここを出ていく時には、録音したものを返してもらいます。
 そして金輪際、私にも子供たちにも近づかないで」
「OK、OK」
「約束が破られたなら、今度は警察に訴えるわ。本気よ」
「わかったって。俺も警察沙汰だけはカンベンだからな。約束は守るぜ」
その代わり、と今度は男が威圧するような目を美佐子に向けて、
「今日、ここではあんたは俺の言いなりに動く。俺の指示には全て従う。いいな?」
「…………」
硬い頷きを、美佐子は返した。
「けっこうだ。じゃあ、脱いでもらおうか」
「……ここで?」
「そうだ。ああ、もっと窓の方へ寄りな。明るいとこで、鑑賞したいからな」
「…………」
美佐子は深く思い息をついて。己の中で最後のスイッチを切り替えた。
静かに窓辺へと歩んだ。
少し狭窄したように感じる視界に、窓の外の光景が入ってきた。
明るい空と、恬淡とそこにある街並を見ると、こんな時間にこんな場所で
肌を晒そうとしている自分という状況が、現実と隔絶してしまったように思えた。
美佐子は、微かに震える指先をシャツ・ブラウスの胸元に伸ばした。
美佐子の服装は、店にある時の姿からエプロンを外しただけの軽装だった。
男に急かせれた為に、上着も着ていなかった。
「後ろ姿も悪くないがよ。まずは、こっち向きから始めろや」
背後から指示がかかった。
フウ、と。またひとつ息をついて。美佐子は体の向きを変えた。
深くソファに腰を下ろして。真正面から鈍く光る目で美佐子を凝視する男がいた。
美佐子は、あえて男と目を合わせたまま、胸のボタンを外していった。
139職人志望:02/10/25 02:16 ID:sn9MaJmR
そして今、窓からの眺めを背景にして、全裸で佇む美佐子がいた。
両腕は体の横に垂らしているから、その眩いような裸身の前面は隠すところなく、
男の目に晒されていた。
豊かな胸も、くびれた腰も、かすかに脂肪をのせた滑らかな腹も、その下の黒い翳りも。
過去には、夫と竜之介以外の男には見せたことのない剥き身の姿を晒して。
それでも美佐子は、毅然たる態度で立っていた。
視線こそ、目の前の男から逸らされて下向きに固定されているが。
見るなら見ろ、とでも言いたげなその姿は、肉体の量感ともあいまって、
どこか見るものを圧倒するような力があった。
(いいねえ)
陶然と、男は内心に呟いた。
この状況で示す美佐子の気丈さが、男を喜ばせていた。
脱衣の際、美佐子は最後まで躊躇を見せなかった。
ブラジャーを外して、重たげに実った乳房をあらわにした時も、
ショーツを下ろして、艶やかに光る叢を晒した時も、その内心はどうあれ、
美佐子の手は一度も止まることはなかった。
(そのくらいの歯応えがなくっちゃあ、楽しめないからな)
いまは、そんな美佐子の強さを味わおうと、男はあえてゲスな揶揄や品評を言葉にせず、
無言で美佐子のストリップを鑑賞したのだった。
(それにしても……)
この肉体の見事さはどうだ、と男は嘆息する。
円熟と瑞々しさの絶妙のバランス。
ノーブルな涼しげな美貌を裏切るような肢体の量感は、予想以上だ。
140職人志望:02/10/25 02:17 ID:sn9MaJmR
男は渇いた喉に酒を流しこんで、
「悪くねえな」
内心より随分と控えめな評価を、美佐子に告げた。
「18の娘がいる年増のカラダとしちゃあ、悪くない」
「………………」
「これだけのカラダが、十年も男日照りが続いたんじゃあ、
 持てあますのも無理はねえなあ」
「………………」
「だからって、娘と同じ年のガキをたらしこむのは、どうかと思うがね」
無反応だった美佐子だが、この言葉には、キッと男を睨みつけて、
口元がなにか言いたげにわなないた。
だが、懸命に感情を抑えて、
「……早く済ませて」
低く呟いたのは、そんな言葉だった。
「あん? 催促か? 裸を見られただけで、もうその気になっちまったのか?」
「早く終わらせて解放してと言ってるのよ」
吐き捨てるように、美佐子が言うのに、
「早くしろたってなあ。それには、俺をその気にさせてもらわなくっちゃ。
 なにか? 自分が裸を見せりゃあ、それだけでどんな男でもサカリがついて、
 むしゃぶりついてくるとでも思ってたか? 
 そいつは自惚れが過ぎるんじゃねえの、あんたくらいの年代の女としちゃあ」
すでに股間のモノを痛いほど突っ張らせておきながら、男は嘲笑してみせる。
「残念ながら、18のガキほど飢えちゃあいないんだよ、俺は」
「…………」
男の言葉は、美佐子の意識せぬ自尊心を傷つけ、さらに、愛する青年との年齢差という
最大の泣きどころを抉る。
感情が波立たされて、平静を保つことが困難になっていく。
141職人志望:02/10/25 02:19 ID:sn9MaJmR
……ホントにエロ・シーンはやってくるのか? 
と、疑われそうですが。
とりあえず美佐子さんスッポンポンにはなってますんで。ナントカ……ねえ?
ただエロ・シーンは、やはりムズカシイという今更な事実と、
私の時間的な問題で、これまでほどのペースは維持できないかと。
それでも、一日置きくらいには上げるつもりなんで。
どうか、見捨てずに読んでやっていただけると嬉しいです。
142名無しさん@ピンキー:02/10/25 02:58 ID:Ws+F5+uY
窓の近くで・・・芳樹の気配がしますな。
やるなカエル。
脅迫で強要した行為でさらに・・・
その時の美佐子さんの反応を想像するだけでもう!

美佐子さんの強さ、崩され打ち砕かれることを
前提にしたそのはかない感じがいいですね。
143名無しさん@ピンキー :02/10/25 03:40 ID:YBtdDU3O
>カエル氏が作者の予想以上に粘着質

寝取り男のステータスの一つですね。
粘着質・性技抜群・悪人(個人的な寝取り男三大ステータス)
144名無しさん@ピンキー:02/10/25 11:15 ID:x9oEZsOp
あせらず良い作品を期待しています
145名無しさん@ピンキー:02/10/25 16:08 ID:sE5khSMA
更新めちゃはやっ!!
何か、毎日がわくわくです。
ここ数日、寝取られスキーははりのある生活を送っています。

がんばれっ!
146名無しさん@ピンキー:02/10/25 16:16 ID:kwLkjk52
147名無しさん@ピンキー:02/10/26 00:43 ID:JB68Uw3G
>>141
カエル、がっついてなくてイイ!
いい女を抱くからには、美しさを称えつつ強姦するのは礼を踏まえててイイ!
千草忠夫チックでイイ!
148なりたて職人:02/10/26 23:05 ID:sfl7bw8K
>>76のつづき。

 佐原はついに我慢しきれなくなり、自らジッパーを下ろしてトラ
ンクスの合間からペニスを露出させた。
 解き放たれた男根が、音さえ立てそうな勢いでそそり立つ。
 亜希子はためらわず、じかに手でくるんだ。ひんやりとした感触
がただそれだけで佐原の背筋にぞくぞくとした快感を送り込む。

 野田もあわててズボンを下ろした。彼はブリーフ派だ。ぴっちり
としたパンツがこんもりと盛り上がっている。
 その勢いがよすぎるのか、あまりに焦っていたせいか、野田はパ
ンツがなかなか脱げずにひとりで苦戦していた。
 と、亜希子が腕を差し伸べ、手ずから野田のパンツを引きずり下
ろした。

 そのまま彼の傍らにしゃがみ込む格好となる。
 亜希子の美貌が股間の高さに位置した。
 野田にしてみれば、目眩がするような思いだ。憧れの女性の顔が、
露出した男性器のすぐ前にある。彼女の息がそよぐだけで、裏筋が
ぴくぴくとひとりでに蠢きそうな感じさえする。

「そうこなくっちゃあ」
 佐原が、亜希子の頭を挟んで野田の反対側に立った。
 亜希子は左右から男根を突きつけられることとなる。どちらも
猛々しい。
「さあ、しゃぶれ」
「しゃ、しゃぶれ」
 佐原の命令に同調して、野田もしゃがれ声で命じた。
「ふふ、どっちも元気いっぱいね。それにどっちもおいしそうで迷
っちゃうわ」
149なりたて職人:02/10/26 23:06 ID:sfl7bw8K
 美しき未亡人は淫らに微笑むと、まず野田に、そして佐原に、そ
れぞれの亀頭へ軽いキスを送った。
 大の男二人が軽く背を反らす。
 もう一度亜希子は薄く笑うと、本格的に野田の肉茎を含みはじめ
た。

 ――ああ……。
 野田の頭はもはや白熱して、思考停止状態だ。
 何が起こっているのか、自分でもよくわからない。
 夢を見ているのか、おれは?
 亜希子様の真っ赤な唇が上下に開く。その肉厚ぎみな唇が、おれ
のものへと吸い寄せられて。
「うあ……!」
 ゆるゆると前後に揺すられはじめる亜希子の顔。
 その唇に消えてはまた生まれ出でる、野田の先端部。
 そうして亀頭を刺激したあと、もっと奥まで美貌が進み出る。

「んふゥ」
 鼻から甘い息を洩らしつつ、亜希子はその魅惑的な唇で肉茎全体
をぬるぬるとしごき立てた。
「おああ」
 野田が悲鳴をあげる。フェラチオがはじまったばかりだというの
に、もう根元近くにまで熱い塊がせり上がってきている。気を抜け
ば一気に持っていかれそうな勢いだ。長い、ウェーブがかった髪が
太腿あたりを柔らかく掃くのがまた堪らない。

「うふっ……ンン」
 男の苦悶を見抜いてか、亜希子は含んだまま目を細めると、いっ
たん肉棒を引き抜いた。野田がほっと力を抜いた途端、未練がまし
そうに先端部へぺろりと這わせた舌先がたまらなく刺激的だ。
150なりたて職人:02/10/26 23:06 ID:sfl7bw8K
「こ、今度はおれだ。ちくしょう、見せつけやがってよぉ」
 喚いた佐原が亜希子の頭を鷲掴み、凄まじく隆起した自分のもの
へと強引に顔を引き寄せる。
「焦らないで……う、むっ……」
 開きかけた唇に肉棒をねじ込まれ、さしもの亜希子もむせる。

 が、
「ンン――」
 すぐに、男の手で揺さぶられるままに唇をスライドさせはじめた。
「おお、こりゃ……」
 いい、と言いかけた佐原が快感に背筋をひくつかせる。
 亜希子の口腔内は温かく、それにたっぷりと唾液が分泌されてお
り、まさに理想の肉洞といえた。
 唇の輪でちゅぷちゅぷと、ねっとり前後にしごき上げられるのが
堪えられない。
 その上、上目遣いに妖しく男の様子をうかがったり、指も添えて
根元をしこしこ小刻みにあやしたりと、とにかくフェラチオ奉仕が
好きでたまらないという様子で行うのだ。

 やがて亜希子は、左右二つのペニスに交互に顔を持っていきはじ
めた。
 未亡人の絶妙なテクニックに二人の男が呻く。
 尖らせた唇が肉茎を前後し、真っ赤な舌がぺろりと下腹を這う。
かと思うと鈴口を口づけで刺激し、亀頭を舌全体でねぶるようにす
る。

 テクニックもさることながら、男たちはその視界でも興奮を味わ
っている。
 懸念していた女主人が、服を着たまま男の陰茎に唇を寄せている
のだ。
151なりたて職人:02/10/26 23:07 ID:sfl7bw8K
 露わにさせられた豊かなふくらみが重たげに波打ち、さらにミ
ニのタイトスカートからはみ出た長い足が蠢くたび、黒い刺激的
なパンティがちらちらとのぞく。
 眺めながらオナニーするだけでも、相当な快楽を得られることだ
ろう。

「あ、あ、あ、あ」
 野田は背筋をぴーんと立てながら、早くも達しそうな声を出して
いた。
「どうするの? 我慢する? それとも、出しちゃうの?」
 子供をからかうような声と上目遣いで、亜希子は薄く笑う。
「く、くそっ」
 野田は指で根元を押さえて必死で押さえ込もうとする。が、佐原
がけしかけた。
「出しちまえよ」
「そうよ。飲んであげるわ」
 同調した亜希子が、さらに深くふるいつく。精を搾り取ろうとす
るかのように、遮二無二動き出した。野田の声も高まる一方だ。ン、
ン、ン……となまめかしい声をあげる亜希子の頬がカッと燃え立っ
ていく。
 が――、

「いけ、亜希子さまの顔にぶっかけちまえ!」
 同僚の声に、野田と、そして亜希子がはっとなる。
 が、それも一瞬、野田は獣のような声を放ったかと思うと、亜希
子の唇から素早く自分のペニスを抜き取った。達する寸前のそれは
狂おしいほどに猛り、そして熱く震えていた。
「いけない――いけません。それはやめて」
 亜希子は必死で顔を背けようとする。目に本気の拒絶の色があっ
た。長い髪が大きく乱れる。
152なりたて職人:02/10/26 23:08 ID:sfl7bw8K
「そおら、奥さま。観念しな」
 後ろから佐原が女主人の顔を固定する。
 野田が筒先を突きつけた。
 定められた狙いは、氷のごとき美貌。しかも嫌がっている。
 美しいもの、手が届かないものだからこそ、汚し抜きたいという
欲望が人間にはある。
「ああ……駄目」
 哀切さえ秘めたその声が止めとなった。
「おお!」
 ペニスからどぴゅうっと白い粘液が迸る。

 鋭利な美貌のあちこちに、湯気さえ噴きそうな精液がぬらぬらと
這い回りはじめた。
 なおも噴射はつづく。
 高貴な鼻筋がうじ虫のような白い粘塊を垂れ下げ、冴えた頬がナ
メクジが這ったあとのように白濁する。
「ああ……」
 恍惚とした、熱い呻きが唇を割り、その唇にも白い精液がしたた
り落ちた。

「おお、凄え。亜希子さまが男の汚い汁を顔に浴びるなんてなあ」
 横からそれを眺めながら、佐原は揶揄する。いかにも冷静なよう
でいて、その実、凄まじい興奮の色が瞳に宿っていた。
 野田も長い射精を終え、放心したようなため息をつく。
「後始末だ、奥さま」
 亜希子は霞んだような目で頷き、野田の濡れたペニスにふたたび
舌を差し出した。
 野田が、うっ、と背中を痙攣させる。
153なりたて職人:02/10/26 23:08 ID:sfl7bw8K
 ……
 何か、最近、自分のSSがなぜ「意思と関係なく」長引くのか、わかった気がします。
 いや、何となくなんですけどね。

 続きはいつになるやら。
154名無しさん@ピンキー:02/10/26 23:51 ID:AS3fuvCz
>153
乙カレ~

続き気長にまってるYO!
155名無しさん@ピンキー:02/10/27 02:10 ID:wK8EkOWV
亜希子タンのオパーイに期待(;´Д`)ハァハァ
156名無しさん@ピンキー:02/10/27 15:21 ID:7mQSeUyb
更なる亜希子たんのテクを切望萌え
157職人志望:02/10/28 01:33 ID:TcBhm83P
>なりたて職人さん
美貌を汚されて恍惚する亜希子たんにモエッ!
なんか、文章の迫真性がスゴイっす。見習いたいんだけどなあ……

ちょっと間が空いてしまいました。
遅いレスになって申しわけないんですが。

>142
ああ、そういう展開もありでしたねえ。でも最上階にしちゃってるから……。
芳樹には、後々働いてもらう予定ですが。

>143
なるほど、三大ステータス、カエル氏は一応満たしてるかと。

>144
あせっちゃイカンと思うのですが、しょせん勢い頼りのところが強くて……。

>145
私も、いま非常にはりのある毎日です。ガンバリます。

>146
巨匠・千草っすか? “チック”でも恐れおおいっすが。

なんとか、ファースト凌辱の最後までと思ったんですが、
やっぱ無理。まーた半端ですが、上げさせてください。
158職人志望:02/10/28 01:34 ID:TcBhm83P
「だから、早く終わらせたいってえなら、俺がその気になるように努力するんだな。
 つーわけで、後ろを向きな。尻のカタチを見てやるからよ」
「………………」
自分はどっかと腰を据えたまま横柄に指令する男に、美佐子は無言で従う。
とにかく、少しでも早くこの恥辱の時間を終わらせたいという思いで。
美佐子の視界には、再び空が映る。その明るさが胸に痛くて、美佐子は目を伏せた。
「髪が邪魔だな」
男が注文をつける。美佐子は大きな三つ編に束ねた髪を身体の前へと流した。
蒼いような白さのうなじが、片側だけ晒された。
しばし室内に沈黙がとざす。
静寂の中で、しかし美佐子はハッキリと男の視線が突き刺さってくるのを感得する。
顔が見えないことで、逆に視線の圧力が、舐めるような執拗さが強調されて迫ってくる。
美佐子は唇を噛んで、粟立つ嫌悪に耐えた。
「いい尻だ」
ようやく男が口を開いた。感に堪えたような率直な口調で。
作為的な嘲侮を忘れるほどに、美佐子の豊臀の官能美は男を魅入らせた。
たっぷりと肉を実らせながら、弛みを見せず張り切って。
腰のくびれから勢いよく張り出したラインにも、いささかの崩れもなく。
厚い双臀の肉がムッチリと寄り合って作る切れこみは深く陰影を刻んで。
その上方には、秘密めいた小さなえくぼがふたつ、彩りを添えている。
まさに、この貞淑な未亡人が地味な装いの下に隠し持っていた爛熟の女体を、
象徴するかのような肉のパーツだった。
男は、そこから視線を外すことが出来なかった。
(絶対逃がさねえぞ、この女は)
目の前の女の価値を再確認して、改めて胸中に呟いた。
159職人志望:02/10/28 01:35 ID:TcBhm83P
当然、男には「一度かぎり」の約束を守る気など毛頭ない。
そんな約束、信じる方がバカだろう、と思っている。
美佐子が宣告した「次には警察に届ける」という言葉は虚勢ではないだろう。
ズルズルと脅迫者の意に従う愚を犯すよりは、犠牲を払ってでも禍根を断つという強さが、
美佐子にはある。
いまの美佐子には、ある。
(要するに、そんな気概がなくなるまで、メタメタにしてやればいいってことよ)
至極簡単に男は考えている。それが出来るということには、少しの疑いもない。
過去の経験と、自分の能力への自負からくる確信だった。
(まあ、いくら気丈なようでも、しょせんは良いとこの奥さまだな。甘いんだよ)
男には、木石と化してこのあとの行為に耐えようとする美佐子の覚悟など、
ハナからお見通しだった。
なんにもわかっちゃいない、と内心でせせら笑う。
美佐子は感情を殺すことで、与えられる汚辱を耐え忍ぼうとしている。
望まない情交、という行為における心身の苦痛と嫌悪に対してだけ身構えている。
美佐子にすれば、当たり前の認識なのだろう。
身を許す相手が、憎んでもあまりある男なのだから。
(どれだけ自分が考え違いをしてるかは……まあ、この後ジックリと思い知ってもらうさ)
それを美佐子に思い知らせるための武器―ズボンの前を異様なほどに盛り上げた逸物を
片手であやしながら、男は長い舌でペロリと唇を舐めた。
160職人志望:02/10/28 01:36 ID:TcBhm83P
その時、向こうむきの美佐子が身じろいだ。
無防備な背中を見られ続ける不安と、焼け付くような視線の圧迫に耐えかねたのだ。
「もう……」
「こっちを向けとは、言ってないぜ」
振り返ろうとする美佐子をピシャリと制して、さらに男は続けた。
「そのまま、前に屈んでみな」
「……え?」
半ばまで身をねじった姿勢で動きを止めたまま、美佐子が聞き返した。
「腰を折って、上体を前に倒すんだよ。脚はそのままだぞ。膝を曲げるな。
 両手で足首を掴んでみな」
「…………なっ!?」
細かな指示で男が自分にとらせようとする姿勢を理解した美佐子が、
眦を吊り上げて、今度は完全に男へと向き直った。
「早くしろ」
「なぜ、そんな格好をしなければならないの?」
「俺が、それを見たいからさ」
「そんなことに、なんの意味があるの?」
「そうすりゃ、そのデカいケツの分厚い肉がパックリ左右に割れて、
 あんたのオマ×コもケツ穴もよーく拝めるようになるって意味があるのさ」
「なっ……!?」
「わかったら、早く言われた通りのポーズを決めてみせろや」
「イヤよ」
「イヤよ、ときたね。じゃあ、その気になるまで待たせてもらう」
男は悠然とグラスに新しい酒を注ぎ足して、
「時間はたっぷりあるからな。夜まででも、なんなら明日の朝まで待ったっていいんだ」
161職人志望:02/10/28 01:37 ID:TcBhm83P
そう言われれば、窮するのはまたしても美佐子の方だった。
美佐子には時間の制約がある。今日この場での出来事を隠し通すために、
唯や竜之介が学校から帰るまでには家に戻っていなければならない。
多少遅れても言い訳は効くだろうが、美佐子の心理とすれば、
どんな些細な異変の徴候も子供たちには見せたくなかった。
しょせん、彼我の力関係はあまりに不均衡で、美佐子には弱みばかりがある。
どこまでも、その弱みにつけこんでくる男への怒りが沸く。
怒りは沸いて、しかしその感情にはなんの効力もない。
「…………」
美佐子は再び男に背を向けた。
その後に、さすがにしばしの逡巡があって。
そして、美佐子はゆっくりと体を折っていった。
いまの自分の無力さ、情けなさをイヤというほど噛みしめながら。
「……くっ……」
上体を倒し頭を下げて。その姿勢では転倒を避けるには、
いやがおうにも両脚を開かざるを得ない。美佐子は半ば捨て鉢な気持ちになって、
両足を横ににじって、脚と脚の間隔を広げていった。
「ちゃんと足首を握るんだぜ」
美佐子の決死の思いもしらぬげに、男が念を入れる。
キリリと歯噛みしながら、美佐子は垂らしていた両手を白い脛に伸ばした。
そして、恥辱の極みといったポーズが完成する。
豊かな両の乳房は逆しまになって垂れ下がり。
首筋や顔は、物理的にも心理的にも昇った血で紅くそまっていた。
曲げるなと言われたって、どうしても両膝は浅く曲がってしまう。
自然、尻を後ろに突き出すかたちになって。
その厚い肉づきは、男の言葉通り“パックリと”ふたつに割れて。
女体の一番の秘密である場所が、完全に暴きたてられている。
強めの暖房設定で裸でも暑いように感じていた室内の空気が、
その部分だけは、やけにヒンヤリと撫でて流れるように美佐子には感じられた。
162職人志望:02/10/28 01:38 ID:TcBhm83P
「こ、これでいいのでしょう!?」
美佐子は屈辱の涙を滲ませた双眸をキツく閉じて。
叫ぶように男に確認した。
「けっこうけっこう。年の割にゃあ、なかなか柔軟だな」
「も、もう……」
「そのままだ。姿勢を崩すなよ」
許しを求める美佐子の声を冷徹に遮って。
やっと、男はソファから腰を上げた。
グラスを置き、代わりにシャンパンのボトルを持って。
ゆっくりと美佐子に歩み寄った。
しかし、端近までは寄らずに、1mほどの距離を置いてしゃがみこむ。
「おお、絶景だな」
美佐子の屈辱の姿態を眺めるのに、この場所がベスト・ポジションという選択だったようだ。
「こうして見ると、やっぱデカいケツだなあ。これが熟女の貫禄ってやつか?」
確かに、わずかに見上げるかたちとなる美佐子の豊臀は、その姿勢のせいもあって、
圧倒的な量感を誇示していた。
「しかしシミひとつなくてツヤツヤ光ってるとこはいいねえ。
 まさに“ムキ玉子みたいな”ってやつだな。白く輝く巨大な尻だ。
 ただ、尻肌が白いだけ……肛門のまわりが黒ずんでるのが目立つんだよなあ」
「い、いやっ」
男の酷い言葉に、美佐子は泣くような声を上げて掲げた尻を戦慄かせたが、
姿勢を崩しはしなかった。維持を命じられたことよりも、
屈辱のポーズ自体に拘束されているというような、奇妙な自縛の状態に陥っていた。
どう体を逃がせばいいのかわからない、という混乱が生じていたのだ。
それをいいことに、男はさらに辛辣な検分を続けて、
美佐子の心をグサグサと抉りたてていく。
「肛門自体は慎ましやかだな。ちょっとシワが深い気がするが。
 痔の徴候はないようだしな。綺麗な顔してイボ痔持ちじゃあ艶消しだからなあ。
 ただ、意外に濃いお毛々がケツ穴のまわりにまでチョボチョボ生えてるのは
 ちとダラシない気がするな。不精ヒゲみたいでよ。これだとクソの後も
 拭くのが大変なんじゃねえか? 昨夜、あのガキにはなにか言われなかったのかよ?
 愛する美佐子さんの、ケツ毛問題について、竜之介クンからのコメントはなかったのか?」
163職人志望:02/10/28 01:39 ID:TcBhm83P
「マ○コは、ちょい下ヅキか。カタチはそう崩れてねえなあ。
 色も年のわりにゃあ、鮮度を保ってら。年のわりには、な。
 土手は高いね。モリマンってやつだ。いいんじゃねえの、スキモノらしくて。
 しかしなあ。全体に使いこんでないのはわかるが、それでも、なかなかに
 淫らなマン相だぞ、こいつは。
 俺は心が広いからよ、“その澄ました顔とのギャップに萌えェーッ!”ってことに
 しといてやるけどさ。ちょっとサギっぽいよ、これわ」
「………………」
美佐子は、もはや羞恥の声を上げる気力もない。
ただ、両の足首を掴んだ手に力をこめて、気死せんばかりの恥辱に耐えていた。
と、同時に。美佐子は困惑し混乱する。
これは……なんなのだろうか? この男はいったいなにがしたいのか?
この密室にふたりきりになってから、ここまでの男の振る舞いは、
美佐子が予期していたものとは、あまりにもかけ離れていた。
美佐子が予期し覚悟を固めていた展開―すぐにも、男が自分をベッドに押し倒す、
それを自分は受け入れて、しばしの苦痛に耐える。
そして男が欲望を果たしたら、すぐに脅迫の材料である録音テープを受け取って、
美佐子は部屋を出る。そして、日常に帰還する。
すべてを合わせても、一時間もあれば事は済むだろう、というのが美佐子の目算だった。
164職人志望:02/10/28 01:40 ID:TcBhm83P
それは、確かに甘すぎる計算と言えただろう。
たった一度、それも一時間に満たない行為で赦されるなどとは。
だが、それが亡夫との経験から導かれた美佐子の常識だったのである。
(実は、これでも、「こんな男だから、シツこいかも知れない」と考慮して、
 長めにみた時間設定だった。美佐子は純粋な交接自体はほんの数分で終わるものだと
 いう認識を持っていたのだ)
美佐子にとっての不幸は、これまで亡き夫を唯一の相手として、
他に比較の対象を持たなかったことであった。
だから。自分を裸に剥いておきながら、指一本触れようともせず、
淫らな姿勢を強要して、それを眺めるだけという男の行動が美佐子には理解できない。
理解不能な思考の持ち主に、これ以上はない無防備な姿を晒している。
ここまで男に対しては、その悪辣な遣り口への憤りと下卑た人間性への嫌悪しか感じていなかったのだが。
自分は……なにか根本的な考え違いをしていたのかも知れない、と。
そんな不安が、ヒタヒタと美佐子の胸に迫ってきていた。
165職人志望:02/10/28 01:40 ID:TcBhm83P
男が距離を詰める気配があった。
暴かれた尻の狭間に触れられて、美佐子は身を強張らせたのだが。
「アィッ!?」
突如走った鋭い痛みに、憚ることも忘れた叫びを洩らして、前へと倒れこんだ。
「な、なにを!?」
倒れた姿勢から背後を振り返ると。
男は二本の指に摘んだものを鼻先に寄せて、しきりに匂いを嗅いでいた。
「くんかくんか。うん、便の付着はなし。便臭もしないようだな」
美佐子は突然の痛みの理由を知る。
なんと男は、さんざんアゲつらっていた美佐子の肛門周辺の陰毛を引き抜いて、
臭っているのだった。
「……な……」
あまりに異常な行動に、美佐子は抗議の言葉すら出せずに呆然と仰ぎ見た。
男は検分に満足すると、フイッと摘んだ毛を吹き飛ばして、美佐子に立つように命じた。
「…………」
すでにして、グッタリとした疲労を感じながら、美佐子は立ち上がった。
男が美佐子の細い首に手を伸ばす。
ついに、忌まわしい手に肌身を汚される悲痛に美佐子は肩を強張らせて、目を伏せた。
しかし一方で、ようやく男が理解の範疇の行為に移ったことに、
安堵のような思いを感じてもいた。
だが、それは尚早な判断であった。
166職人志望:02/10/28 01:43 ID:RzyPs+c9
男は美佐子の頤を掴んで、顔を仰のかせた。
深い諦念を浮かべて、薄く瞑目した美貌にゾクゾクとした愉悦を味わいながら、
「お近づきのしるしに、一杯いこうや」
と片手に下げたボトルを掲げてみせる。
「あんたの為に用意したんだ。イケるクチだろう? 知ってるぜ」
「…………」
美佐子が目を開けて、男の手の高級酒を見やった。
いっそ、アルコールの助けを借りて……と迷う色が目に揺れた。
しかし、男は気を惹かれたようすの美佐子をよそに、自分でラッパ飲みにあおると。
酒を含んだ口を、いきなり美佐子の唇に重ねたのだった。
「ン!? ムウーッ!!」
虚を突かれた美佐子だったが、咄嗟に口を引き結んで、拒絶に喉を鳴らして首を振った。
男は酒ビンを床に落とすと、両手で美佐子の頬を押さえこんで、さらに強く唇を押しつけた。
そのまま口に含んだ酒を吹きかける。それはほとんどが美佐子の口には入ることなく、
顎に流れ、胸元へと滴っていった。
酒を全て吐き出しても、男は唇を離さなかった。
ガッチリと両頬を押さえた手の力に、美佐子は抵抗の動きを止めていたが。
依然として口だけは、キツく結び合わせている。
男は無理にそれをこじ開けようとはせずに、一度口を離すと、舌を出して、
チロチロと美佐子の唇を舐め始めた。
微妙な刺激に、ビクッと反応を示した美佐子は、さらに口元に力をこめた。
167職人志望:02/10/28 01:43 ID:RzyPs+c9
男はさらに長く舌を突き出して、その動きを大きくしていく。
唇を外れて、その外周部を舐めずり、そのままツーと頬をせり上がる。
唇と同様にキツく閉じられた美佐子の目元は、少し腫れぼったかった。
舌は、その下縁を擽り、目蓋の上から美佐子の眼球を転がすように舐めまわした。
「……ッ!」
また美佐子がビクビクと反応する。男の胸に突っ張った両腕が力ない抵抗を見せる。
男は、律儀に左右の目蓋へ舐めずりを行って、異様な感覚に美佐子を戦慄かせた後、
今度は鼻スジを伝って舌を下ろしていく。
カタチのいい小山に噴き出した細かな汗を舐めとって。
さらには荒い息をつく鼻孔にまで舌先は侵入する。
「フウウッ!?」
これにはさすがに顔をふって逃れようとする美佐子の動きを封じて、
これまたキッチリと左右の穴を味わいつくした。

顔面を周回した舌が、再び唇へと戻ってきた時には。
美佐子の顔は惨憺たる有様になっていた。
赤く上気し、額にはビッシリと汗が滲んでいる。
淡い口紅も、薄い化粧もまだらに剥げ落ちて。
代わりに塗された男の唾液でテラテラと光っていた。
そして汚される美貌同様に、その精神も追いつめられていた。
顔中に薄気味悪い舌の感触を味合わされ、生臭い唾を塗りたくられて。
その異様な感覚は耐えがたかった。
舌の這った部分から、肉が腐蝕していくような気がする。
鼻孔に塗された唾液の臭いが直接脳に届いて、神経を苛む。
クサイ、キタナイ。
この穢れは、二度と落ちないように思えてしまう。
蝕まれていく……。
168職人志望:02/10/28 01:44 ID:RzyPs+c9
美佐子を悩乱させる男の舌は、再び美佐子の口唇に狙いをつける。
それだけはさせまいと、美佐子の唇は断固として侵入を拒んだが。
ならば、と。男は口の代わりに必死に空気を貪っている鼻を摘む。
「………………ハァッ」
たったそれだけの行為で、あっけなく結界は破られる。
すかさず侵入した男の舌ベラは、すぐに美佐子の舌を絡めとった。
「……フ……ムウウ……」
慄き逃れようとするのを許さずに。巻きつき擦りたて、裏も表も撫でくりまわす。
舌の根が引き攣るような激しい攻撃は、同時に玄妙な技巧を持って、
繊細な肉を刺激する。
「……フム……ンンッ」
閉じられたままの美佐子の視界が白く発光する。
こんな口舌への愛撫を受けたことはなかった。
それは、美佐子からすれば、口吻と呼べるようなものではなかった。
かつて美佐子が夫と交わした口づけと、今のこの行為が同じものであるはずがない。
口を舌を……犯されている。そう形容するのが相応しい。
しかし。
「……フッ……フン……」
それは一方的な凌辱でありながら、亡夫との愛情の交歓としてのキスとは
比較にならないほどの刺激を美佐子に与える。
なにも考えられなくなる。
唇は弛緩して、舌は侵入者に従順になっていく。
男が多量の唾液を流しこめば、美佐子はそれをのみこむしかない。
確かな嫌悪はあって。注がれるものが毒のように思えて。
ああ、これで身体の内側からも蝕まれるのか、という絶望を感じる。
だが、コクコクと鳴る喉は、美佐子の意識ほどには、
流れこむものを忌避してはいないようだった。
169職人志望:02/10/28 01:45 ID:RzyPs+c9
タップリと、美佐子の甘い舌と口腔の粘膜を味わい尽くして。
ようやく男が口吻を解いた。
解放された美佐子は、軽く咳きこんで、その後にゼイゼイと喉をあえがせて空気を貪った。
顔も、首筋や胸元の白い肌にも血の色を昇らせている。
薄く開いた両目には、潤みがあった。
「楽しんだようだなあ。久しぶりの男の舌の味を」
「……だ……誰がっ……」
久しぶりどころか、初めて経験するような口戯だったのだが。
得意そうな男の言葉に、美佐子は荒い呼吸の下から反駁した。
「あら? フンフン鼻を鳴らして、俺のツバを美味そうに飲んでたんじゃなかったかよ?」
「……そんなことは……」
「じゃあ、これはどういうわけよ?」
そう言って男は手を伸ばして。呼吸につれて揺れている美佐子の乳房を掴んだ。
「アッ」
「おら、ヨガる前に見ろよ、これを」
顎をしゃくったのは、掴みしめた柔肉の中心。
「……!?」
視線を下ろした美佐子の目が見開かれた。
「尖ってるなあ。ビンビンだ」
男がせせら笑う。
事実、美佐子の乳首は固く尖り立っていた。
色を濃くしてプックラと盛り上がった乳輪から、年相応に肥大した乳頭がピンと頭をもたげている。
(……どうして……こんなに)
「なに、驚いたような顔してんだ? 別に不思議でもねえだろ。
 あんたは俺の舌に口ん中ネブられて、すっかり感じちゃったって。それだけの話だろうが」
「………………」
茫然とする美佐子の胸に男の言葉が響く。
男の言う通りなのか? では、あの口戯のさなかに覚えた身もよもないような感覚は……
性的な快感であったというのか?
こんな男に口と舌を嬲られて、私は―私の身体は、それを快楽として受け止めてしまったというのか?
孤立無援の戦いの中で、己が肉体までが自分を裏切っていくのかと、美佐子は脅えた。
170職人志望:02/10/28 01:46 ID:RzyPs+c9
造反の徴候を示す美佐子の乳首を、男の指がクリクリとこねまわした。
「アァッ!」
高い声を洩らして、背筋を反らせる美佐子。
男はなおも乳首を押し揉むようにして、美佐子を鳴かせながら、
「この調子じゃあ、下の方もシッポリとお湿りがきてるんじゃねえのか?」
意地の悪い笑みを浮かべて訊いた。
「そ、そんなことは……アン!」
「怪しいもんだな。どんどん、化けの皮が剥がれてきてっからな。
“貞淑な未亡人”の美佐子サンはよ」
鼻で笑って。しかし、男は“お湿り”については確認しようとはせず。
弄んでいた乳房からも、あっさり手を離した。
「膝をつけ。俺の前に跪くんだよ」
「アッ……」
美佐子の肩を押して、強引に跪かせた。そして手早くベルトを外して、
ズボンを脱ぎ落とした。
「わかるだろ? 次はなにをすりゃあいいのか」
「…………」
居丈高に命じるも、顔を横に反らしたままの美佐子に、
「おら、いつまでもグズグズしてんじゃねえぞ」
頭をわし掴んで、無理じいに前を向かせる。
美佐子の甘い口を味わい、肌に触れて、さすがに男も逸る欲望を抑えられなくなっていた。
「目を上げろよ」
「…………」
抵抗というよりは、気弱い逡巡といったものであったが。
どうせ美佐子は屈服を選ばざるをえない。
美佐子は視線を男へと向けて、
「……え」
間の抜けた声を上げて、固まった。
171職人志望:02/10/28 01:47 ID:RzyPs+c9
男は上は着衣のまま、下はブリーフと靴下姿という滑稽な格好で仁王立ちしているのだったが。
美佐子を凍りづかせたのは、ブリーフの前を突き上げた異様なまでの膨らみだった。
「……な、なんなの?」
驚愕のままに洩らした言葉を、頭上で男が笑った。
「なにって。男のまたぐらにナニがついてるか知らないわけじゃねえだろが」
「……そんな」
そう言われても、美佐子には信じられない。
目の前の巨大な膨張が、男の肉体の一部だとは、どうしても思えなかった。
「なんだあ? 疑ってんのか。失敬だなあ、詰め物なんざしてねえぞ」
「…………」
「パンツを下ろしてみろや。そうすりゃハッキリすんだろうが」
「……え?」
「脱がせろっての」
ホレ、と腰を前に送る。不気味な膨らみを鼻先に押しつけられて、
美佐子はヒッと喉を鳴らして、仰け反った。
「ああ、もう、いちいち世話のやける女だなあ」
男が両腕を伸ばして、美佐子の頭を抱えこんだ。
そして、突き出した股間へと美佐子の顔を擦りつけた。
「い、いやっ!」
「おらおら、どうよ? ちゃんと固い肉棒があるだろが。わかるだろ」
「やめて、やめてっ!」
美佐子にすれば気が狂いそうな汚辱だった。
男のその部分は、布地越しにも鋼のような硬度と高い熱を、美佐子の面に伝えてきた。
そしてムッと息詰まるような強い性臭が鼻孔に入ってきて、
美佐子の脳髄を揺さぶる。
「うりゃあ、世話をやかせるカマトト年増は、躾てやらねえとな」
「やめて、するから、言われたとおりに、するから」
172職人志望:02/10/28 01:48 ID:RzyPs+c9
「言われたとおりに? どうするんだ」
「脱がせる……あなたの下着を脱がせるわ」
誓わせて、ようやく男は美佐子の頭を放した。
「アァ……」
美佐子は泣くような声を上げて、両手で頬を覆った。
「なんだよ、汚いもんでも擦りつけられたみたいによ。
 いいか。もうおまえが清純ぶって、いちいち勿体つけんのにも飽きたんだよ。
 これから、おまえがなにをすりゃあいいのか、教えとくからな。
 速やかに行動に移すんだ。」
いいな? と男は美佐子の膝を蹴った。項垂れた美佐子が小さく頷くのを確認して。
「一度しか言わねえから、ちゃんと覚えろよ。
 まずは、パンツを下ろして、俺のチ○ポと御対面だ。この後タップリ世話になるんだから、
 よーく御尊顔を拝しとけってんだ。
 それから、手で挨拶だ。不精はすんなよ。両手で捧げ持つんだ。
 それで。生のチ○ポを、目で見て手で触れれば、どれだけの代物か解るだろ?
 その感想を聞かせろ」
「………………」
項垂れたまま、かすかに首を左右に振りながら、美佐子は男の言葉を聞いていた。
様々なかたちで与えられる執拗ないたぶりに、反抗の気概は尽き果てていた。
「それから、口で挨拶だ。まずは舌でペロペロ舐めまわしてもらうぜ」
その言葉には、美佐子は一瞬身を固くしたが。顔を上げはしなかった。
「念入りに唾を塗したら、咥えるんだ。デカいからな、気合を入れにゃあ、
 太刀打ちできねえぞ」
173職人志望:02/10/28 01:48 ID:RzyPs+c9
一通り指示を出し終えて。わかったか? と美佐子に確認する。
美佐子は、また小さく頷きを返した。
疲弊した美佐子の意識には、とにかく早く全てを終わらせたい、
という思いしか残っていなかった。
「ようし、じゃあ始めてもらおうか」
「…………」
美佐子はノロノロとした動きで男の腰へと両手を伸ばした。
威圧するように突き出た膨らみが、いやでも目に入る。
美佐子は慎重にその部分には触れないように、ブリーフの上縁へと指をかけた。
しかし、そのまま引き下ろそうとすると、前部を突き上げたモノがどうにも邪魔になった。
苦心の末、布地が伸びるほどに引っ張って、ようやく勃起を外すことに成功する。
ブルン、と重々しく揺れながら、男の肉根がその全貌を現した。
「………!」
美佐子は息を呑んで、現れ出たモノを見た。
解放された肉塊は、ブリーフ越しにうかがえたより、さらに巨大さを増していた。
本当に、生身の一部とは信じられないような大きさだった。
そして、その様相もまた、美佐子を驚愕させる怪異なものだった。
野太い茎の部分には、浮き上がった血管によってゴツゴツと節くれだって。
その先端には、瘤のような肉の冠が赤黒くテカリ輝いていた。
張り出した傘の部分は、凶悪なまでに高い段差を形作っている。
そんな凄まじい肉の凶器を、間近に眺めて。
美佐子は、本能的な恐れ―畏怖の感情にうたれて、ブルリとその腰を震わせた。
174職人志望:02/10/28 01:50 ID:RzyPs+c9
……エロ・シーンって、やっぱ悩みます。
これでコーフンしてもらえるのか、判断がつかなくて。
どんどん、取り返しがつかなくなってる危険性もあるわけで。
「それ以前に、早くヤレ!」というお怒りはごもっとも。
続きは、わりとカミング・スーンでUpできると思うんで、ご容赦を。
175名無しさん@ピンキー:02/10/28 01:52 ID:9l4h2OQk
upお疲れ様です
ますます続きが待ち遠しいです
176名無しさん@ピンキー:02/10/28 01:56 ID:XJZyX+WZ
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!

カエルネチネチ美佐子タンイヤイヤすばらすい!
早くなくてもよいので、じっくりがんがれ!
177名無しさん@ピンキー:02/10/28 03:13 ID:60/VCQJz
>>174
ねちねちじっくりなのはイイ!
けど、オナニー用小説なので、メリハリ・山場が欲しいな。
どこで読者を抜かせるか? みたいな視点が欲しい。
あんたうまいからそれが出来ると思う。
178名無しさん@ピンキー:02/10/28 07:53 ID:7X6o7ktL
「“その澄ました顔とのギャップに萌えェーッ!”」
という部分は正直しらけました。

ヌキ場のある展開に期待しています。
179名無しさん@ピンキー :02/10/28 09:13 ID:dVPscjFr
激しく(・∀・)イイ!
(*´Д`*)ハァハァ(*´Д`*)ハァハァ(*´Д`*)ハァハァ
180名無しさん@ピンキー :02/10/28 09:15 ID:dVPscjFr
>>174
>それ以前に、早くヤレ!

とんでもない!まだまだ前戯をネチネチやってください。
181名無しさん@ピンキー:02/10/28 10:23 ID:2AJT57+T
>>178
おやじっぽくないね
182名無しさん@ピンキー :02/10/28 11:42 ID:+IDySSWE
あのさ、1さんにも言いたいんだけど、もう少しヒロインの頭を良くしてくだしゃい。
183名無しさん@ピンキー:02/10/28 13:37 ID:BQP9qZVr
>>182
それじゃエロい展開にもちこめねーだろうが( ゚Д゚)ゴルァ
184なりたて職人:02/10/28 17:55 ID:nrEuf8No
185職人志望:02/10/28 19:59 ID:cVvcpDzj
たくさんのレス、感謝です。
さまざまな御意見が出てますので、まとめて返信・検討させてください。

まず「山場=ぬきどころを」という御指摘については、
まったく仰るとおりだと思うです。
もっと文章をタイトにして展開を早くしたいとは思ってるんですけども。
それがなかなかムズカシイ……。努力します。

「美佐子が頭悪すぎ」という御意見については。これもムズカシイとこです。
それが罠に落ちるまでのことを指してなら、もうどうしようもないんすが。
いたぶられる場面での美佐子の無力さについては、
一応は、「淡白な夫しか知らない美佐子が、男の歪んだ嗜好に困惑しながら、
流されていく」というエロ的お約束な展開をやってるつもりなんすが。
それが頭の悪さにしか見えないなら、作者の力不足です。気をつけます。
186職人志望:02/10/28 20:00 ID:cVvcpDzj
「しらけた」という声のあったカエル氏の言動に関してですが。
御指摘の箇所は、確かに悪ノリって感じでした。スミマセン。
それで、この際に確認というか。最初のうちにうかがっておくべきだったんですが。
このSSの中では、カエル氏は30代前半くらいのつもりで書いてるんですが。
そういう変更はパロとしては、やはり反則ですかね?
何故原作より若くするかというと、この後、やたらな絶倫ぶりを演じてもらう
ということと。後は美佐子より若くしたかった……ってのは単なる趣味。
「カエルはオヤヂでなきゃあイカン!」という声が多いようでしたら、軌道修正します。
どちらにしろ、もっと早くにきいておくべきでした。ゴメンナサイ。

……ネタじゃない部分で、クドクドと書いてしまって。みっともない。
ただ、いきなり出てきて大量にスレを消費してしまってるんで。
なるべく皆さんに楽しんでもらえるようにしたいと思ってるんすが。
あるいは、それも思い上がりかなあ。
結局、自分の嗜好と能力の範囲でしか、書けないんだし。

ああ、こういう言い訳がましさが、ネタに反映されてしまっているんだなあ、と反省。
失礼しやした。
187名無しさん@ピンキー:02/10/28 20:51 ID:LJg/UhMe
>>186
へたに読者の意見を取り入れるより、
アンタが一番萌える設定で突っ走ったのが読みたい。
技巧や設定に走るより、そっちのが書いてるほうも楽しめるはず。

・・・ただ参考までに書くと、
俺の希望はオヤジで絶倫なカエルにひぃひぃ言わされるヤツw
熟女が小娘のように翻弄される展開ね。
で、終わった後にほうぜんとなりつつも、満ち足りた自分を自覚してしまう。
んでもって、その後一緒に風呂に連れ込まれ、素手であわ立てた石鹸を・・・

いかん、参考のが長くなってしまった(藁
188名無しさん@ピンキー:02/10/29 00:11 ID:LbXIUxhN
ゲームでは物足りなかった亜希子たんのパイズリに期待
189名無しさん@ピンキー :02/10/29 13:17 ID:LDBUGkzL
>>186
周りの意見に左右されずに職人志望さんの趣味で突っ走ってくれ。
190名無しさん@ピンキー:02/10/29 16:01 ID:vVY8Dzsd
>>189
に、禿同
191名無しさん@ピンキー :02/10/30 14:18 ID:81Ns+hV4
                __ ___
           __  _,,、-r'´::::ヽ:::ヽ_
            /-‐ミ、:::::::レ'''ヽ;:::ト、:::|::ヽ
        //::,.--、ヽ;::/;::::;::::ヽ|:::\ト、:l
     ト--‐':/:j::|::::r‐:、:::::/::::::}、::::\:::::ヽ:゙i_
     ヾ:/:/:/::::|:::::{:`:_|」:::::|::ヽ:::::ヽ::::::l:::゙i
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         ` `∧ゝ`ー''´ 〈 __..,   __/|し;;;:ヽ::::::ヽ;ヽ
           /::/レヽ、   ヽ__ノ |ヽ `''''┐:::ヽ:::::::ヽヽ
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        /::// // r'|/-ヽ\-、 ヽ ゙! |  \::::::゙i:::::゙!l:::゙、
       i゙:/   | ,   | / ( \ ,ゝ┴─、/  ヽ:::゙i:::::゙i゙i:::!
         l::| \ / /レ'    ヽ/     |>-‐'´゙i:::|::::::| |::|
       l::|く`y' / /   ∠ヽ'´ _,、--- 、|    |::||:::::| l|::!
       |::レ' /o/   >'´ /r''´  ,. - ィ'  | j::| l:::| l|::!
       l/| | /   /  / / //  ノ、|  | //  l:::| |:|
        / | | /    l  .! i /!      ,ハ |:::/  l::! l:!
      ∨ヽ{. |、____,、 ,ノ、  | V   / /ヽ,、-‐'!   |:!
      /  `ト、! / / \_! {   ∠    / |:::::::/    lj
        |   ヽ ´ レ'  ヽ  L〈      / _j::::::i′
      `゙''-、__゙ヽ、    \  〉 ゙ヽ、 / ハ:::::::::|
          r'| ̄〉‐ァ-- 、\ | \   /! |、ヾ:::!
192名無しさん@ピンキー:02/10/30 17:56 ID:S3O4qVW0
なぜに優良さん?
193職人志望:02/10/31 03:49 ID:XlY7Bngc
ありがとうございます。
自分の趣味で突っ張らせていただきました。
というわけで、続きです。ちと、長いか?
194職人志望:02/10/31 03:50 ID:XlY7Bngc
男は満悦の笑みを浮かべて、呆然と自分の肉根を見つめている美佐子を見下ろした。
(まあ、無理もねえな)
どんなアバズレでも、最初は恐怖の表情を見せるデカブツだ。
(亭主の粗チンしか知らない淑女には、刺激が強すぎるか。
 だが、こいつの本当の恐ろしさを知るのは、これからだぜ)
それを思い知らせるために、男は口を開き、美佐子を動かす。
「次は、どうするんだ?」
「…………」
促されて、美佐子がゆっくりと両手を上げる。
眼前の肉塊を凝視したまま、そろそろと手を差し伸べる動作は憑かれたようで。
どこか正常な理性や判断力を喪失しているように見えた。
指先が躊躇いながら、太い茎の部分に近づく。
「……ッ!」
かすかに触れた瞬間、感電したように戦慄いたが。そのまま、そっと握りしめた。
「……あぁ……」
小さく、震える息を吐いた。
その白皙の頬には血の色が昇って、双眸には薄く膜がかかっているように見えた。
男も、滑らかな美佐子の手の感触に、身震いするような快感と感慨を覚えていた。
両手で肉幹を握ったまま動きを止めた美佐子にも催促をせずに、暫時その感触を味わう。
195職人志望:02/10/31 03:51 ID:XlY7Bngc
「そろそろ、感想を聞かせてもらおうか」
しばしの沈黙の後に、男が訊いた。
「どうだ、俺の逸物は?」
「……熱いわ」
うわ言のように、美佐子が呟く。率直に感じたままを。
「ハッハ、熱いか、なるほどな。それから?」
「……それから」
美佐子は、握りしめたモノに魂を吸い取られたように、心ここにあらずといった風情で。
「大きいか小さいか、太いか細いか。いろいろ、あるだろうが」
「……大きい……大きいわ、とても……太くて、長い……」
「ふむふむ、それで?」
「……固い、わ……ゴツゴツして……鉄みたいに……」
素直に答えを返しながら。自分の言ったことを確認するように、美佐子の手に力が入った。
間違いはなかった。鋼鉄を呑んだような肉塊は、美佐子の指を弾き返した。
(ああ、固い……)
その強さが美佐子の胸を灼く。
(……指が、まわりきらない……太い……)
逞しさが、美佐子を威圧する。
美佐子はゆるゆると、熱い肉を握った両手を前後に滑らせ始めていた。男からの指示もないうちに。
長大な雄物は、両手を連ねて握っても、完全に赤黒い頭部を晒している。
(ああ、大きい……こんな……こんなに大きな…男のひとのものが……)
196職人志望:02/10/31 03:52 ID:XlY7Bngc
「へっへ、こんな立派なモノは、見たことがないってわけだな?」
すっかり、己が巨根に心をひしがれてしまったようすの美佐子を眺めて、上機嫌に男が訊く。
コクリ、と。美佐子が頷きを返した。
「つまり、おまえの死んだ亭主より、大きいってことだな」
「……それは」
夫のことを持ち出されて。美佐子はわずかに精神の混濁を払われて、言いよどんだ。
だが、すでに自分は答えてしまっている。
言葉だけでなく、態度でそれを認めてしまっているのだ、と気づく。
「……あなたの方が……大きいわ」
か細い声で美佐子は答えた。心の中で夫に詫びながら。
「そうかいそうかい。そりゃあ、なによりだ」
男が笑う。やはり、人妻をコマす時には、亭主と比較させて、こちらの優位を認めさせるに限ると。
だが、美佐子を挟んで男が真の敵とするのは、死んだ夫ではなかった。
「じゃあ、竜之介と比べたら、どうだ?」
男が口にした名前に、美佐子は手の動きを止めて、男を仰ぎ見た。
「さっきのおまえの言いぐさだと、竜之介のモノより、こいつの方が立派だってことだよな?」
「彼のは……知らないから」
目を逸らして、美佐子が呟く。
「はあ? なに言ってやがる。昨夜ちちくりあってた相手じゃないか」
「でも、見てないわ」
それは嘘だった。ハッキリとではないが、竜之介の男性を美佐子は目にしていた。
その時にも、亡夫を凌ぐ逞しさに驚き、胸にどよめくものを感じたのだったが。
しかし、いま目の前にある雄大なものとは、比べものにならなかった。
だから、見ていないと言い張って、比較させられるのを避けたのだった。
197職人志望:02/10/31 03:53 ID:XlY7Bngc
「ほおお? まあ、そういうことにしといてやるか」
ニヤニヤと笑う男の言葉は、言外に美佐子の嘘を見通していると告げて。
竜之介に対して、勝ち誇る心情が露わだった。
それが、美佐子の胸に、忘れかけていた男への敵意を呼び覚ます。
(馬鹿ばかしい)
男性器が大きいから、どうだと言うのか。
そんな肉体の特長だけを根拠に、自分が竜之介よりも優れているなどと、この男は主張する気なのか。
そんなことが、あるわけがないではないか。
(そんなことが……)
美佐子は、男の肉根に視線を戻した。両手は依然として、その熱く固い肉を握りしめたままだった。
(そんな……大きいからって…………本当に、大きい……)
夫や竜之介との比較をさせられたためだろうか。
改めて眺める眼前の肉塊の威容と凶悪なフォルムは、美佐子の眼を灼いて鼓動を跳ねさせた。
蘇らせた反発心が、脆くも溶け流れていくようだ。
そして、美佐子は自身の矛盾に気づかされる。
その部分の大小や逞しさが、男性としての価値と無関係だというなら、
何故自分は咄嗟に嘘をついてまで、男と竜之介の比較を避けたのか?
どうして、“彼のものはこれほど大きくはないが、そんなことは問題ではない”と言えなかったのか。
それは……美佐子自身が無意識のうちに認めてしまったからではなかったか。
目の前の男の、牡としての優位性を。
(……私、は……)
心乱れながら。美佐子の視線は男の肉根を捉え、そこから動かない。
焼けついたような両手は、いつしかまたユルユルと太い肉茎を扱きはじめていた。
身体の奥深くで、なにかが蠢き出しているのを感じる。蠢動はどんどん強さを増している。
喉が熱い。渇いている。
「おら、いつまでもウットリ眺めてねえで。次のステップだよ」
頭上から、指示がかかった。
「…………」
逡巡は、数瞬だけ。
ゆっくりと、美佐子は男の先端に顔を近づけていった。
198職人志望:02/10/31 03:54 ID:XlY7Bngc
目を伏せて。心もち顎を上げるようにして。
美佐子はわななく唇を、握りしめたものに近よせた。
遠慮がちに突き出された舌先が、おずおずと対象を求めて。
そして、桜色の柔らかな肉が、赤黒く充血した硬い肉に触れた。
「おうっ」
その瞬間、男は短く吠えて、ブルルッと腰を慄かせた。
美佐子は、その声と動き、そしてなにより舌先に感じた灼けるような熱に、ビクリと舌を引っ込めたが。
すぐにまた引いた舌を伸ばして、チロチロと擽るように舐めはじめた。
「クウッ」
男はまた声を上げて、キリキリと奥歯を食いしばった。
「へ、へ、よっく味わえよ。本物の男の味をな」
吐きかける言葉にも、それまでのような余裕の色はない。
長く執拗に美佐子をいたぶっている間、男も猛る欲望を抑制していたのだ。
美佐子の身も心も蹂躙し尽くすのだという執念が男の忍耐を支えていた。
しかし、それももう限界に近かった。
(一発ブッ放しておかにゃあ、収まらんぜ、もう)
積もった恨みと思い入れのこもった一発目を美佐子に飲ませることは、予定していた通りだからと。
それでも、少しでも長く美佐子の舌と口の感触を味わいたいという思いに突き動かされて、
「おら、いつまでもお上品なマネしてんじゃねえぞ。もっと、大きく舌を出して!
 ベローッと、サオの上から下まで舐めまわすんだよ!」
男は声を激しくして、美佐子を促した。
199職人志望:02/10/31 03:56 ID:XlY7Bngc
美佐子は言われるままに、舌を大きく出して、首を上下させて、
男の肉根を舐め上げ舐め下ろしていった。
形よい鼻から高ぶった息を洩らして、顔を振り舌を使うそのさまは
この汚辱の行為に没入しているように見える。
その表情と強くなった肉根への刺激が、さらに男を追いつめて、
「おらっ! 口を開けろ!」
怒声を張り上げて、美佐子の頭を両手で掴みしめた。
そして、半開きの美佐子の唇の間に切っ先を押しつけて、強引にねじこんでいった。
「んぐっ!?」
いきなり口に余るようなデカブツを突っ込まれた美佐子がくぐもった悲鳴を洩らすのにはお構いなしに、
男は美佐子の頭を前後に揺さぶる。
「おおお、あったけえなあ、美佐子サンのお口はよう」
遂にあの鳴沢美佐子に咥えさせてやったという感動が男の背を走る。
「おまえにはさんざん煮え湯を飲まされたからなあ。
 根はスキモノの年増女の分際で、勿体つけやがってよ」
「んーーっ! ムウ……ングウ」
「おお、鳴け鳴け。もっとそのブザマな鳴き声を聞かせろや」
「ウゴ……ヴェ……オ……」
口を一杯に広げたモノに、喉を突かれて。美佐子は涙の滲んだ眼で、許しを乞うように男を見上げた。
無論、その弱々しい表情は男をいっそう昂ぶらせるだけだった。
200職人志望:02/10/31 03:56 ID:XlY7Bngc
「いい顔だ」
陶然と呟いて、自分からも腰を使って、美佐子の口腔を犯していく。
巨大すぎる肉塊を無理やりネジこまれて、美佐子の美貌は無惨に破壊されている。
棒のような息をつく小鼻は大きく広がって。鼻の下は間延びして。
限界まで開かされた顎には、ダラダラとヨダレを零して。
「ヘヘ、いまのその面、竜之介のガキに見せてやりてえなあ」
「……フ……グウ……」
男の言葉に美佐子がかすかに首を横に振る。
こんな状態まで追いやられても、竜之介の名には反応する美佐子が、
男にとっては忌々しくもあり、また愉しくもあった。
(イヤがったってよ。いずれ、あのガキにゃあ見せつけてやらずにはおかねえぞ。
 もっとも、その頃には、おまえは自分からこいつにムシャブリつくようになってんだがな。
 そんなおまえを見て、あの生意気なガキが、どんな面ァするか)
そう思いをはせた時に、堪えにこらえてきた男の欲望は臨界を超えた。
「おおおおっ! 出る! 出すぞう! 呑みこめやあ!」
「んんーーーーーーっ!!」
必死に逃れようとする美佐子の顔をガッチリと押さえて、男が爆発を遂げた。
201職人志望:02/10/31 03:57 ID:XlY7Bngc
……ようやく、男の肉棒を吐き出すことを許された美佐子が、
ベッタリと床にヘタリこんで、えずきを繰り返している。
色濃い疲労を浮かべた顔は生汗にまみれ、口元には白濁した液がこびりついていた。
男の爆発は長く長く続いた。吐き出した男精の量も信じられないほど多量だった。
凄まじい勢いで喉を叩き続けたそれを、美佐子は死ぬような思いで飲みこんだ。
そうしなければ窒息してしまうという恐怖があった。それほど暴力的な爆発だった。
「……ゲホッ……エホ……」
美佐子は倒れそうになる身体を片手で支え、もう一方の手で喉元を押さえて、えずきを繰り返した。
生まれて初めての飲精だった。こんな汚辱の行為を経験することになるなど、想像もしなかった。
吐く息から饐えた臭いがする。それが美佐子を絶望的な気分に陥らせた。
自分は穢されてしまった。これだけでももう竜之介の想いに応える資格をなくしてしまった。
そんな哀しい諦めが新たな涙になって、美佐子の眼に浮かんできた。
しかし。
悲痛に沈む時間さえ、長くは許されなかった。
「さあて。じゃあ、いよいよ床入りといくか」
「……え?」
かけられた言葉に、美佐子は疑うような顔を上げて。
そして驚愕に目を見開いた。
いつの間にか男は服を脱いでダブついた醜い裸体を露わにしていた。
そして、その股間では、今しがた美佐子の口に欲望を吐き出した肉根が、
まるで昂ぶりを鎮めることなく隆々と屹立していたのだ。
「……う……そ……?」
信じられない、という思いが呟きとなって零れた。
美佐子の心には、一縷の希望さえあったのだ。とにかくも男に欲望を吐き出させたのだから、
これで解放されるのでは、と。
だが、それは甘すぎる考えであった。やはり身体を与えなければ終わらないのだ。
しかし、それにしても。
「あんなに……出したのに……」
202職人志望:02/10/31 03:58 ID:XlY7Bngc
「ヘッヘ、おまえのウラナリ亭主と、この俺さまを一緒にしてもらっちゃあ困るぜ」
美佐子の驚愕をせせら笑って、男はゆっくりと歩み寄った。
その股間では、凶悪な肉塊が、つい先ほどの盛大な噴火などなかったかのように屹立して、
重々しく揺れている。
「……いや……」
脅えた声を洩らして。美佐子は尻で絨毯を擦りながら後ずさった。
この男は……“違う”。亡き夫とは、自分が知る“男”なる生き物とは、決定的に違っている。
その事実を、ここまでの行為だけで自分は充分思い知らされた。
だが、男はさらに違いを教えこもうとしている。この身体に植えつけようとしている。
知りたくない。これ以上のことなど、知りたくはない。
しかし男は迫ってくる。
恐怖に呑まれて、立ち上がることさえ出来ない美佐子の傍に寄ると、
男は髪を掴んで、手荒く引き起こした。
「世話をやかせるなといったろうが。生娘でもあるまいし、いい加減に覚悟を決めろや」
「イヤッ、痛ッ、やめて!」
「しゃきしゃき歩けよ」
髪を引っ張られ、ヨタヨタとへっぴり腰で。
屠場へ向かう家畜のように、美佐子は寝室へと引っ立てられていった。
203職人志望:02/10/31 03:59 ID:XlY7Bngc
この高価な客室の売りものである眺望は寝室の窓からも臨むことが出来た。
差しこむ昼の陽光によって、室内は明るい。
男は美佐子をキング・サイズのベッドの上に突き倒した。
極上のスプリングに、その裸身を軽く弾ませた美佐子は、すぐに上体を起こして、
ベッドの傍らから自分を見下ろす男を怯えた目で見上げた。
男はその光景を眺めた。
ベッドの上に裸の美佐子。これもまた男が夢見ていた絵図だ。
一発目を美佐子に飲ませたことで、やむにやまれぬような衝動は消えたが。
しかし、それは昂ぶりが鎮まったということではなかった。むしろ、男の精神はさらに猛りを強めている。
美佐子の怯えが心地よい。
今更ながらに、美佐子は両腕で乳房と股間を庇っていた。恐怖によって呼び覚まされた理性の色がある。
それが男を喜ばせた。
どうせ美佐子の正気も束の間のものだ。その儚さを楽しむ。
(メッタメタに犯してやる。死ぬほどヨガリ狂わせてやるぜ)
すでに下準備は万全だ。美佐子は備えも構えも喪失している。
だからこそ美佐子はこんなにも怯えているのだ。怯えは、美佐子自身に対するものだ。
これから受ける凌辱の中で、己が肉体がどんな状態に追いやられてしまうのか、と恐怖しているのだ。
(すぐに教えてやるよ。おまえの肉の本性を俺が残らず暴いてやる)
心中に嘯いて、男はベッドへと片足を乗せた。
204職人志望:02/10/31 04:00 ID:XlY7Bngc
「いやぁ」
弱い声を上げて、退ろうとする美佐子の身体に覆い被さって。
首を横抱きにして、唇を奪った。
「……ンッ」
美佐子の抵抗は弱い。唇は緩く、すぐに舌が絡めとられた。
反応しない舌を嬲りながら、男は冷徹な目で美佐子の顔を観察していた。
瞑目した美佐子は、眉間に刻んだシワに嫌悪の情をあらわしている。
ここに来て、当初の覚悟とおりに総身を石にしようとしているのかも知れない。
お笑いぐさだった。
男は片手を美佐子の胸に滑らせた。柔らかな肉をヤンワリと揉みあげる。
「フゥ……ン」
笑うほど簡単に、嫌悪のしるしが眉間から消える。さらに、固く尖ったままの乳首を
指で転がしてやれば、美佐子はビクビクと反応を返して、眉は情けなく八の字に折れまがった。
そう、今さら石になどなれるわけがないのだ。すでに美佐子の肉体は内側からの熱に溶けて
薄皮一枚で形を保っているに過ぎないのだから。
だから。男はあえて唇を離して、美佐子の耳に囁きかける。
「竜之介にも、そんな顔で甘えたのか?」
ピクッと、美佐子の目蓋が震えて。薄く開かれた。
「竜之介にも、この熟れた乳を揉ませたんだよなあ? 気持ちよかったか?」
「………やめて」
「こうやって俺に揉まれるのとどっちがよかった? やっぱ愛する竜之介の手の方がいいか?」
「……そんなこと……言うまでも……ないわ」
美佐子は答えたが、その声は力弱かった。どこか、自ら疑うような色があった。
205職人志望:02/10/31 04:01 ID:XlY7Bngc
「そりゃあそうだな。俺はあんたにとっちゃあ、憎んでもあまりある相手だもんなあ。
 訊くだけヤボだったぜ」
ヘラヘラと半笑いに言いながら、男は乳房の手を下へと動かした。美佐子の滑らかな腹を撫でて、
さらにその下の叢へと。
「アッ」
「いい手触りだ。毛並みがいい、ってのはこういう意味かね?」
しっとりと汗に湿った恥毛をすいて。反射的に閉じようとする美佐子の腿をかいくぐって、
秘肉へと男の手が達する。
「い、いや……アッ!」
美佐子の拒絶が、艶めいた声で途切れたのは、男の指が肉芽を捉えたからだった。
「けっこうおおぶりだな。いつも自分で弄くってたのか?」
掻くように弄って、美佐子を小刻みに鳴かせながら、男が訊いた。
「それに、もうカチカチじゃねえか。おかしな話だよなあ。俺なんかに弄くられてよ」
「アッ、ダメ、そこ、そこはっ」
敏感な肉を巧みに責めたてて、美佐子を身悶えさせながら、しかし男は快感への没入を許さない。
「ああ、そうか。あんた、昨夜の竜之介とのことを思い出してるんだろう。
 それで、ここもこんなにしてるってわけだ。ヤケるね、どうも」
「……アァ」
悪意に満ちた男の嬲りに、美佐子は泣くような声を上げて、火照った顔を歪めた。
無論、そんなことで男の矛先は勢いを弱めはしない。
「だから」
と、肉芽の下、美佐子の女肉にズブリと指を挿しこんで、
「ンアアッ!」
「ここをこんなに濡らして、俺の指を簡単に咥えこむほどトロトロにしてるのも、
 みんな愛しい竜之介を想ってのことなんだな。そうだよなあ? 他に理由がねえもんな」
「アッ、アアッ、イッ、アアアッ」
206職人志望:02/10/31 04:01 ID:XlY7Bngc
美佐子は悩乱の中にあった。
男の指が……二本も自分の中に入りこんでいる。無理やりに侵入して、激しい挿送を繰り返している。
「こうやって擦ってやれば、キュッキュキュッキュ絞めつけてくんのも、竜之介を想ってだよなあ?」
男の声が聞こえる。
リュウノスケ……竜之介。
そう、昨夜竜之介が触れてくれた身体。それを今、憎い男の手が蹂躙している。
竜之介が触れてくれた乳房を揉んだ男の手は、いま竜之介が愛でてくれた女の部分を責めたてている。
竜之介……愛するひと。
いま触れているのが彼の手だったら、どんなにかいいのに、と思う。
思うのに。
男の指が、身体を責める。
「アッアッアッ」
声が洩れる、引っ切りなしに。どうしても抑えることが出来ない。
彼にも……こんなにあらわな声は聞かせなかったのに。
男の指が擦り上げる度に、目蓋の裏に光が走って。言いようのない感覚が腰から全身に伝わっていく。
受け止めきれない感覚が、声になって噴き出す。
男の指が蠢く。もう正確にはその動きを把握できない。ただ、いままで経験したことのない刺激が、
その場所から伝わってくるのを感じるだけ。
こんな感覚は、知らない。
竜之介じゃないのに。彼に触れられた時のような幸せは微塵も感じないのに。
なのに、この刺激の鮮烈さは。
身体が震える。声が止められない。
なにも……考えられない。
207職人志望:02/10/31 04:02 ID:XlY7Bngc
片手で、美佐子を思うままに追いたてながら。
男はじっと冷たい目で美佐子の反応を見つめていた。
「アッ、アッ、アアアッ」
美佐子の声、もはや疑いようもない嬌声は、ますます高くなって、小刻みになっている。
無自覚なのだろうが、男の指を深々と咥えこんだ腰はくねり始めている。
陥落は、すぐそこだ。男がほんの少し攻撃を強めるだけで美佐子は絶頂を極めるだろう。
だが、男はそれを選ばずに、美佐子の女肉から指を引き抜いてしまう。
「……アッ…ア…?」
唐突に刺激を止められた美佐子が、うつろな声を上げて目を開いた。
「いやあ、愛の力は偉大だな。恋しい男を思い出すだけでこんなに濡れちまうってんだから」
嘲笑を浮かべて、今しがたまで美佐子の中にあった二本の指をかざした。
指は粘液にまみれ、テラテラと輝いていた。
「アアッ、イヤ!」
見るに耐えず、目を閉じて顔を横に反らした美佐子の頬に、濡れた指が伸ばされる。
「俺なんかの指を、こんなにマン汁まみれにするほど、愛しちゃってるわけだ、若い彼氏を。
 つくづく妬けるねえ」
付着した液を、美佐子の頬になすり、鼻の下に塗りつけた。
美佐子の顔は自ら吐き出した淫蜜に汚され、鼻は自らの性臭を嗅いだ。火の出るような羞恥。
男は体を起こすと、美佐子の脚の間に位置を変えた。
「アテられっぱなしで、まいっちゃったからな。とっとと約束のものを頂いて終わりにするぜ」
208職人志望:02/10/31 04:03 ID:XlY7Bngc
男の手が膝にかかって。両の腿を広げるのを無抵抗に受け入れながら。
美佐子は、ついに絶望の底に沈み着いた自分を実感した。
(……とうとう)
少しでも早く全てが終わることを望んではいても、やはり決定的な凌辱を目前にしては、
心が引き裂かれるような悲痛を感じずにはいられなかった。
犯される―こんな男に。夫が死んでから十年の間、守り続けてきた操を奪われてしまう。
竜之介にも、まだ与えていないものを。
「へへ、竜之介より先にハメるのは、心苦しいけどな」
美佐子の嘆きを読みとったように、男が心にもないことを口にした。
美佐子は涙の滲んだ眼を薄く開いて、そちらを見た。
男が身を屈め、片手に握りしめたものを押し下げるようにして、切っ先の狙いをつけている。
大きい。
改めて男の肉体の異様な魁偉さが、胸に迫ってくる。
(……あんな大きなものが……私の中に)
本当に入るのだろうか? と不安になる。肉体を破壊されるのではないかという恐怖が高まる。
手で口で実感させられた、その巨大さをまざまざと思い返せば、いっそう恐れは強くなって。
熱く固い男肉が、繊細な女肉に触れるのを感じた瞬間、美佐子は悲鳴を上げて身もがいた。
「イ、イヤアッ!」
「おら、暴れるな」
「無理、無理だわ」
「子持ちの年増が、なにヌカすか」
男は暴れる美佐子の腰を押さえつけて、さらに自分の腰を前へ進めた。
「ヒアアアッ」
女陰の濡れに助けられて、先端がズッと嵌まりこんだ。美佐子は縫いとめられたように動きを止めて、
総身を硬直させた。
209職人志望:02/10/31 04:04 ID:XlY7Bngc
「……グ……アッ……」
凄まじい拡張感が美佐子を襲う。キリキリと歯を食いしばって美佐子は苦痛に耐えた。
「力を抜けよ」
「痛ッ、痛い、やめてっ」
言われても、美佐子の硬直はとけない。
破瓜の時を迎える生娘のように、年に似合わぬ悲鳴をふりしぼる。
無理だ。絶対に無理だ。ほんの切っ先を挿しこまれただけで、この苦痛である。
しかし、百戦練磨の男は焦らない。女のこの手の泣き言など毎度のことだったから。
「やっぱり、いきなりは無理そうだな」
冷静に呟いて、嵌めこんだ先端を引き出して、しかし美佐子に安堵の息をつく暇は与えずに、
すぐに再度の挿入を試みる。
「ヒッ……アッ、いや……アッ」
男は先っぽだけを美佐子の女陰に含ませては引き抜くという行為を、さらに数回繰り返して、
美佐子から苦鳴をしぼりとった。
その効果はすぐに顕れて、美佐子の入り口は順応を示し始めた。抜き差しにつれて上がる
隠微な水音も次第に大きくなっていった。
頃合いと見てとって、男はそれまでより強く腰を押しこんだ。
「イアアッ!」
ひと際高い美佐子の叫びと共に、男の肉根は凶悪に張り出したエラの部分まで埋まりこんだ。
「こうなりゃ、後は楽だぜ」
気楽に請け負って、男はジワジワと美佐子の女肉を抉りこんでいく。
210職人志望:02/10/31 04:10 ID:QDXvgUHo
「ヒアッ、グ、苦し……」
メリメリと肉が裂ける音が、美佐子には聞こえる気がした。
十年ぶりに迎えいれる男根。ゆっくりと美佐子を貫いてくる。侵入は止まらない。
太くて熱くて硬い肉棒が、どこまでもどこまでも入りこんでくる。
亡夫の肉体が決して触れることがなかった奥深い場所が、灼鉄の肉に抉られて。
「オウッ!」
そして矛先が美佐子の最奥を叩いて、重いうめきを上げさせた。
しかし。一瞬だけ動きを止めた肉根は、まだ足りぬとばかりに前進する。
「ウアッ!? ア、アウ……」
美佐子はカッと目を見開いて、男を見やった。信じられないといった表情で。
しかし実際に、悠然と美佐子を見下ろす男の腰は、まだ完全には美佐子の股座に着いてはいなかった。
ズンと、重たいストロークで男が残った隙間を埋めた。
ガツンと、凄まじい衝撃とともに、子宮を押し上げられて。
「オオウッ!!」
美佐子は太いおめきを迸らせて、白い喉を反らした。
「ふうい、難儀したぜ」
男は、ひと息ついて、動きを止めたまま、美佐子を眺め下ろす。
美佐子は首を後ろに反らしたままの体勢で固まっている。両手でシーツを掴みしめて。
あんぐり開いた口が空気を貪るにつれて、胸が高く低く上下して、盛り上がった乳房が揺れている。
「いいザマだ。鳴沢美佐子」
またひとつ宿願を果たした満悦と共に、美佐子の弱々しい姿を眺め下ろしながら、
男は、美佐子の肉が咥えこんだものに馴染むのを待った。
211職人志望:02/10/31 04:10 ID:QDXvgUHo
さほども待つ必要はなかった。
衝撃と驚愕に固まる美佐子の意識より先に、その肉体は蹂躙を果たしたモノへの服従を決めたようだった。
ヒクリヒクリと戦慄いて、刺し貫いた肉塊にまとわりつき始める。
「悪くねえな」
男は倣岸に、美佐子の肉の味わいを評価する。
「なかなか、いい味だぞ、美佐子」
「ヒッ…ア…ぬ、抜いて」
美佐子が反らしていた顎を引いて、弱い声で懇願した。
「まだ始まっても居ないのに、抜けるかい」
「く、苦し……苦しいの、息が……」
子宮を深く押しこまれるという未曾有の体験は、本当に息がつまるような強烈な圧迫感を
美佐子に与えていた。
「ったく、いい年こいて、なっちゃいねえなあ。こうか?」
「アアッ!」
男がおもむろに肉根を半ばまでズルリと引き戻した刹那、美佐子の意識は閃光に包まれた。
高く強く張り出した肉エラに膣肉を擦りたてられる感覚は……あまりにも鮮烈で。
「おお、なんだ、そういうことかよ」
白々しく納得して見せて、男はまたズンと突きこんだ。
「ウ、ウウンッ!」
「抜いて差して、また抜いてってことだな」
ゆったりとしたペースで、挿送を開始する。
212職人志望:02/10/31 04:11 ID:QDXvgUHo
「ヒアッ、アフ、オ、オオオッ、やぁ……アアッ!」
瞬時にして、美佐子は狂おしいほどの感覚の暴風雨の中に叩きこまれる。
硬い先端で子宮をひしゃげるほどに痛打されれば、重く深い衝撃が脳髄にまで届く。
強靭なカリ首で繊細なヒダ肉をこそげるように抉られれば、歯の浮くような刺激が背筋を痺れさせる。
男の腰が打ちつけられるたびに、膨れた過敏な肉芽が押し潰されコネまわされる。
どれもこれもが、かつて経験したことのない鮮烈な感覚だった。
「アハァッ、ク、クアッ、ハン、アファ」
美佐子には、その深甚な感覚を、なんと受け止めればいいのかわからない。苦痛とも快感とも分別できない。
ただ、それが圧倒的な絶対的な深さの中に、自分を呑みこもうとしていることだけが解った。
「ア、アッ、アアッ……」
男が徐々に攻勢を強めて。美佐子の上げる声が急速に切羽詰まったものになっていって。
しかし、男はここでも、美佐子が簡単に忘我の境地へ跳ぶことを許さなかった。
手を伸ばして美佐子の解け乱れた髪を掴むと、手荒く引き寄せた。
無理強いに上体を撓められて苦痛の声を上げる美佐子に、
「見ろよ、こいつを」
「……ウ……ア……」
「フンフン、ヨガってねえで、目ぇ開けろ」
乱暴に頭を揺すられて、美佐子が霞んだ両目を開く。
「おら、俺とおまえがバッチリ繋がってるところを、よっく見ろい」
そう言って、さらに美佐子の頭を引き寄せ、股間を覗きこむような姿勢を強要する。
213職人志望:02/10/31 04:12 ID:QDXvgUHo
二つ折りになるような窮屈な体勢をとらされた美佐子の眼が、男と自分が繋がった部分を捉える。
「アア……アアア」
美佐子は羞恥も忘れて、目にした光景を凝視した。
「入ってるだろう? 俺の極太のモノがおまえのマ○コに根元まで収まってるのが見えるだろう」
「…ア…ア…」
「ぶっといチ○ポを、おまえのマ○コが美味そうに咥えこんでいるのがわかるだろうが」
「アッ…や……ちが…う」
「違わねえんだよ」
男が数度、激しく腰を使った。
「ンアアアッ!」
「ほら、おまえのここは、こんなにダラダラよだれを零してんだよ。聞こえんだろうが?」
指摘とおりに、抜き差しにつれて、ジュブジュブと湿った音がたった。
「見ろや。俺のマラはおまえのタレ流した、いやしいオツユでズブ濡れだよ」
「アアア、いや、イヤァッ!」
「いやじゃねえだろ。キモチいいんだろうが。キモチよくてたまらねえから、こんなにマン汁吹いてんだろうが」
「ヒァッ、わた…し……ちが……そんな」
「いくら上の口で否定したってなあ、下の口は正直に囀ってんだよ。太いチ○ポ美味しい美味しいってな」
「アア……」
「竜之介のじゃねえぞ。おまえが咥えこんでヨガリ狂ってるのは、竜之介じゃなくて、
 死ぬほど嫌ってた、この俺のデカマラなんだぞ」
「ア……アアア……」
執拗を極める男のいたぶりに、美佐子の両目から涙が零れ落ちた。
214職人志望:02/10/31 04:13 ID:QDXvgUHo
「ヘヘ、悔しいか? 情けないかよ? そりゃあ、そうだよなあ。俺みたいな卑劣な輩に犯されて、
 キモチよくなっちまってるんだからなあ」
哄笑して、男は再び美佐子を突き倒した。
「……もう……ゆるして……」
「寝ぼけてんじゃねえぞ。まだこれからなんだよ」
男が美佐子の両腿を抱えこんで、さらに腰を進めた。
「ウムゥッ」
極限と思われていた挿入が、なお深くなって、美佐子に生臭いうめきを振り絞らせる。
「これから、おまえはもっとヨガり泣くことになるんだよ。
 どうせ、ホントの絶頂も知らないんだろ? 俺が教えてやる」
「アァ……いや、いやぁ」
「そりゃあなあ。恥の極みだよなあ。いやなら、せいぜい堪えてみせろや」
自信満々に言い放って。男は悠然と腰を使い始める。
「アアッ、アハアアッ」
再開された攻撃に、たちまち乱れの中に落としこまれて。
(こんな男に)
そんな美佐子の自戒は、あまりにも脆く溶け崩れる。
「ほらな、途端にイイ声出しちゃってさ。こりゃあ、いくらももたねえなあ」
耳に届く男の言葉に、歯噛みする思いは、確かにあるのに。
(悔しい……悔しい)
胸の中に数度繰り返した言葉は、すぐに意味を持たぬ響きに変えられて。じきに消え失せてしまう。
後は全てを焼き尽くす官能の業火だけが、美佐子の中に残される。
「アッ、アン、アアアッ」
215職人志望:02/10/31 04:14 ID:QDXvgUHo
「ほうれ、どんどん声がよくなってきたぞ」
大きく重々しく腰を叩きつけながら。
男はなおも冷徹に美佐子の返す反応のひとつひとつをうかがっていた。
徹底して美佐子を狂わせることだけを求める姿は、ある意味ストイックでさえある。
「ほら、ここか? ここがイイか?」
「アハッ、ダメ、そこ、そこは!」
「そうか、ここがイイか」
熟練した巧緻を尽くして、美佐子自身が知らなかった官能のスポットを探り当てては
かさにかかって責めたてる。
「イヤアアアッ、アアン、アアアッ」
切れ間ない美佐子の叫びは、すでに純粋な快楽の声になっていた。
男の動きに合わせて、不器用に腰を使いはじめてさえいる。
(オボコい反応をしやがって)
美佐子の爛熟の肉体は、しかしあまりにも性的に未開発だ。
(これから俺がジックリ仕込んでやるからな)
資質は最高級だから、自分の薫陶を受ければ、極上の女に仕上がるだろう。
(そう、極上の牝奴隷にな)
貞淑な未亡人から淫蕩な肉奴隷へ。すでに決定づけられた美佐子の転生の。
その第一歩を刻むために、男は美佐子にとどめを刺しにかかった。
「おらおらあ!」
「ヒアアアーーーッ!」
怒号と共に、激発的な勢いで連続した突きを最奥に叩きこめば。
「アア、ダメ、イヤ、アッ、ダメダメダメ」
すでに土俵際まで追いこまれていた美佐子は、幾ばくも堪えられずに。
「ダメ、アアッ、イ、アッ、アアッ、アアアアアアーーーーーーーーーッ!!」
背骨が折れそうなほどに反りかえって、全身を硬直させて、
白々と晒した喉の奥から、断末魔の叫びを振り絞った。
216職人志望:02/10/31 04:14 ID:QDXvgUHo
その瞬間、美佐子の女陰は男のものを痛いほど絞めつけながら女蜜をしぶいた。
男はそれにあえて抗わなかった。
数秒の硬直の後に、プツンと糸が切れたように虚脱した美佐子の中から肉根を抜きとると、
素早い動きで美佐子の顔を跨いだ。
腰を落として、握った肉根の矛先を美佐子の顔に向けて、扱きを入れる。
噴き出した大量の白濁が美佐子の顔に降りかかった。
弛緩した身体をビクビクと痙攣させる美佐子は、汚辱の熱液をかけられても、なんの反応も示さない。
ポッカリと開かれた口に、白濁が飛びこむ。半ば閉じられた目蓋の下の眼球は裏返っているようだ。
美佐子は完全に失神していた。
噴火が下火になり、もう一度強く扱きを入れて最後の一滴まで注ぎ終えた男は、
汚辱の液に化粧された美佐子の面を、検分するように眺めた。
「フィニッシュとしちゃあ、ちいと味気なかったが。これも演出だからな」
ひとりごちて。
だが、凌辱の果て、望まぬ快楽の極みに意識を刈り取られて、その上男の欲望に美貌を汚された
美佐子の無惨な姿に、相応の満足も覚えて。
男はベッドを下りて、リヴィング・ルームへと向かった。
冷蔵庫から缶ビールを取り出して、渇いた喉を潤す。
「鳴沢美佐子の、記念すべき初アクメに乾杯だ」
ひとり悦に入りながら、ソファの上に脱ぎ捨てたジャケットから携帯電話を取り出す。
「ああ、俺だ。すぐ部屋に来い」
それだけを告げて、電話を切る。
一服しつつ待っていると、五分ほどでノックの音がした。
男は裸のままドアに向かった。
217職人志望:02/10/31 04:15 ID:QDXvgUHo
「おう、御苦労」
呼び出しに応えて、部屋を訪れたのは芳樹だった。
すっかり芳樹を子分扱いしている男に狩り出されて、ホテルのレストランで男の払いで飲み食いしながら
出番を待っていたのだ。
素っ裸で出迎えた男に、さすがに芳樹は驚き、さらに男の股間にブラブラと揺れるモノに
度肝を抜かれた顔をしたが、さっさと入れ、と促されて、どこか怖々と部屋に踏み入った。
「……美佐子さんは?」
豪奢な部屋の様子を物珍しげに見まわしてから、芳樹は姿のない美佐子のことを訊いた。
「ああ、奥の部屋だ。生まれて初めてのアクメがキツかったらしくてな。失神してらあ」
「…………」
あっさりと告げられて。芳樹はゴクリと唾をのみこんだ。
「丁度いいからな。今のうちに撮っちまうぞ」
用意しろ、と言われて。芳樹は肩に下げていたケースを下ろして、愛用のカメラを取り出した。
寝室へと向かう男の後に従う。
「おまえも役得だぜ、芳樹よ」
言いながら、男がドアを開けて。
一歩踏みこんだ芳樹は、目にした光景に立ちすくんだ。
一糸まとわず、その豊満な裸身をさらして。しどけなく四肢を投げ出して。
さらに精液に顔を汚されて。喪神したまま横たわる美佐子の姿。
「本当に……ヤッちゃったんだ……」
218職人志望:02/10/31 04:16 ID:QDXvgUHo
「おら、ボーッと眺めてないで。とっとと撮影しろ」
男に言われて、芳樹はカメラを構えた。
ファインダー越しに見ると、いっそう美佐子の晒す無惨さが際立つようだった。
しかし、何度かシャッターを押すうちに、芳樹はその凄惨な官能美とでも言うべきものに
幻惑されて、撮影にも熱がこもっていった。
(スゴイ……これはスゴイ写真になるぞ)
あの上品な気高い美しさを誇っていた女性が、その肉体の秘密をあますところなく晒しているのだ。
(こんな写真を撮られたら……絶対美佐子さんは逆らえなくなる)
ある少女は、着替えの現場を押さえられただけで言いなりになったのに。
今自分が撮影しているのは、単なるヌード写真ではない。明らかな凌辱の記録なのだ。
(これで……美佐子さんはもう……)
この悪辣な男の手から逃れなれなくなるのだ。
そう思うと、チクリと罪悪感が胸を刺した。
その切っ掛けを作ったのは自分で、今また決定的なネタを押さえることに協力しているのだから。
いつも優しく自分を迎えてくれた美佐子のことを思い出すと、いっそう自責の思いは強まったが。
(……いまさらだよな)
芳樹は自嘲して感傷を捨てた。
「よーし、そんなもんだろう。ついでに記念撮影をしとくか」
男が言ってベッドに上がった。記念撮影とは、つまり今の美佐子と並んで写真に収まろうということだった。
ついで、などと言いながら、その為に芳樹を呼んだものらしい。
「こいつは脅しのネタには使えねえけどな。おまえの存在がバレちまう」
男は今だ覚めぬ美佐子の上体を抱き起こして、背後から顔を寄せたポーズでVサインを作った。
得意きわまる男の笑顔と、白濁に汚れたままの美佐子の顔が並ぶ。
そのさまもまた芳樹によって、フィルムに収められた。
219職人志望:02/10/31 04:18 ID:GQ8pjztJ
撮影が終わると、男はとっとと芳樹を追い出した。
「まだ、帰るんじゃねえぞ。この後中出しを決めるからな。それも撮るんだ」
やる気まんまんに言い放つ男に、さしもの芳樹も辟易としながら、それでも言われたとおり
待機するためレストランに戻っていった。
「さあて」
男は寝室へと戻りかけて。ふと思いついたように床に脱がれたままの美佐子の衣服から、
ダーク・ブラウンのショーツを拾い上げた。
「姫は、まだお目覚めにはならぬのか?」
ショーツを手に寝室に入れば。美佐子はいまだ喪神したまま横たわっていた。
「まったく。いつまでもいぎたなく寝こけやがって」
パーンと、あられもなく広げられた美佐子の内腿を平手で叩いた。
「おら。いい加減に起きやがれ」
「……ん……」
かすかな声を洩らして。ようやく美佐子が彼岸から帰還する。
「………………」
しばし、ボーッと天井を見つめていたが。
「ようやっと、お目覚めかい。トウのたった眠り姫はよ」
掛けられた声の方へと、ノロノロと視線を動かして。
「……あ」
男の顔を見て、徐々に意識を覚醒させていった。
「……ここ……私……」
身を起こす動作ひとつに苦労しながら、まだボンヤリと周囲を見まわす。
「なんだあ? 初めてのアクメが強烈すぎて、記憶までトバしちまったのかよ。
 おまえはなあ、美佐子、俺に抱かれて、さんざんヨガリ狂った末に失神するほど絶頂しちゃったんだよ」
「……ア……アア……」
男の言葉に美佐子の瞳から混濁が払われて、代わって深い悲しみと絶望が浮かび上がった。
220職人志望:02/10/31 04:19 ID:GQ8pjztJ
「……う……」
美佐子が嗚咽をもらして。口元を手で押さえようとして。
ベットリと肌に付着したものに気づいた。
「……これ…?」
ハッと手を頬にすべらせて、汚れが顔中に広がっていることを知る。同時に、濃厚な臭気に気づいた。
「初アクメの祝いによ、盛大に降りかけてやったんだ。シャンパンのシャワーより似合いだろ? この場合」
「ひ、ひどい」
嫌悪と屈辱に顔を歪めて。慌てて穢れを拭おうとする美佐子の手を男が掴んで、
「俺がキレイにしてやるぜ」
片手に握った小さな布地で、美佐子の顔を拭いはじめた。
男の行動に一瞬戸惑った美佐子だったが、すぐに男の手にしたものがなんなのか気づいた。
自分が履いていた下着だった。
「い、いや。やめて。そんなもので」
必死に顔を背けて、男の手を払おうとするのを許さずに、
「動くなよ。帰る時には、ちゃんとこいつを履かせてやるからな。
 お土産のことまで気を配るってんだから、つくづく俺も女にゃあ優しいねえ」
「……ああ……もう」
グッタリと抵抗を諦めて。美佐子は男に顔をゆだねた。
なんでもいいから、もう終わりにしてほしい。男は自分の身体を汚して思いを果たしたのだから、
一刻も早く解放してほしい。
精も根も尽き果てた美佐子にあるのは、その思いだけだった。
「……もう、ゆるして……早く、テープを渡して、帰らせて」
221職人志望:02/10/31 04:20 ID:GQ8pjztJ
「ああ。もう一発ヤったら終わりにしてやる」
しかし、男が口にしたのは美佐子には信じられない言葉だった。
「な……」
いったい、なにを言うのか? と男を見やって。
そして、美佐子はしゃがみこんだ男の股間に、禍々しく鎌首をもたげたモノを知る。
「う……うそ……」
また、その言葉を美佐子は呟くことになった。
その眼で見ながら。今度という今度は、それが現実だとは思えなかった。
口と膣に、ほとんど連続して欲望を遂げたことでさえ美佐子には想像を越えたことだったのに。
まだ、この男は満足せずに美佐子を求めようというのだ。
あまつさえ、
「さっきは、年に似合わずウブな美佐子チャンに気を使って、不完全燃焼だったからな。
 今度は俺のやりたいように、思いっきりヤらせてもらうぜ」
そんな言葉まで吐いて。
「い、いや……」
蒼白になった面を、力なく左右に振りながら、美佐子は後ずさった。
その動きもまた、すでに一度演じたものだったが。より恐怖は深刻だった。
薄ら笑みを浮かべて、手を伸ばしてくる男が、人間とは思えなくなっている。
これ以上のことをされたら、またあんな地獄のような感覚を味合わされたら、本当に死んでしまう。
真剣に、そんな怖れを美佐子は抱いて。
「いやああっ!」
闇雲な逃走へと駆り立てられた。そんなことが可能なのか、とか、そんな姿でどこへ逃げようというのか、とか、
そんな理性的な判断を完全に喪失した、ひたすら本能的な行動だった。
222職人志望:02/10/31 04:21 ID:GQ8pjztJ
しかし、ベッドを飛び降りて、寝室から駆け出ようとする意志に、鉛をのんだような腰がついていかずに、
ブザマな転倒を演じてしまう。結果、
「うひょう、そういう誘い方かよ? なかなか、いい趣向だなあ」
男が歓声を上げて評したようなザマを晒す始末。
すなわち美佐子は、ベッドの縁から床に上半身だけを落として、ベッド上に残った尻を男に向けて
高く掲げたポーズを、図らずもとる羽目になり、しかも床に強く打ち付けた肩の痛みで、
すぐには身動きもできずに。
「そうまでされちゃあ、俺も張りきらずにはいられないねえ」
ひょっこりと突き出されて、モコモコと蠢く臀の肉に、男の手がかかった。
「ヒッ、ヒイッ!」
しゃくるような悲鳴を美佐子は洩らして。なおも肘でいざって逃れようと試みるが、
ガッチリと尻タブを掴んだ指が、それを許さない。
逆に、さらに美佐子の尻を高くさせて。
両の親指を尻の深い切れ目に差しこんで、グッと厚い肉をかきくつろげた。
暴きたてられた秘裂は、いまだ熱気をはらんで。充血した女肉は粘っこい汗と淫蜜にヌメ光っている。
男は不死身の男根の先を、そこへ擬した。
「いやぁ、もうやめて、もう……ヒギイッ!」
美佐子の哀願は、再び嵌まりこんだ肉鉄によって、悲鳴に変わった。
「アッ、ギ、ク、クアアッ」
二度目だからと言って、男の巨大な肉体の与える苦痛は、いささかも減じていなかった。
むしろ、不自然な体勢で、ほとんど経験のない後ろからの挿入に、肉体の感じる衝撃は
苛烈なものとなった。美佐子は横顔を床に擦りつけ、バリバリと絨毯を掻きむしって、
軋みをたてる肉の苦痛に耐えた。
223職人志望:02/10/31 04:22 ID:GQ8pjztJ
美佐子の受ける苦痛は意にも介さずに。男は一度目よりも強引な貫通を遂げた。
密着した腰に感じる、美佐子の豊臀の弾力を愉しみながら、
「どうだい? なかなかオツな味わいだろう。おまえの構造だと、ケツからの方が
 シックリくるかもな」
勝手なことをほざいて。さらには、ベッドのスプリングを利して、軽く体を上下させた。
「ウアアッ、や、やめ、ギイイッ」
「ほうれ、ほうれ」
弾む動きに、時折突きこみを混ぜて。残酷な戯れにしばし美佐子を鳴かせてから。
男は美佐子の両腿を抱えて、腰を送って美佐子の尻を押しやった。
「オウッ!」
吐き気がするほど深く嵌まりこんだ肉塊の圧迫に、腹の底からおめきをしぼる美佐子の、
床に崩れた体を無理やり前へと滑らせて、男は繋がったまま自分もベッドを下りた。
まともな後背位に転じて、そのまま攻勢に転じるかと思えば、
「せっかく、牝犬のポーズになってるんだからな。ちょいと散歩といくか」
いきなりそんなことを言い出して。突っ伏した美佐子の背に乱れて広がった黒髪を、
グイとたぐり寄せた。
「ほーら、ポチ、散歩に出掛けるぞい」
「い、痛い、やめっ」
グイグイと髪を引きしぼられて、美佐子は無理じいに上体を起こされる。
力の入らない両手を踏ん張って、これで正しく四つん這いの姿になった。
224職人志望:02/10/31 04:23 ID:GQ8pjztJ
「散歩の時間だよ、ポチ。それ、元気よく出発進行」
「な、なに、を…? いや、引っ張らないで、痛いっ」
「出発進行」
繰り返す男に、美佐子はようやく、その意図を誘った。“散歩”の意味を。
男は、この姿勢のまま、前へ進めと美佐子に命じているのだ。背後から貫かれたまま。
「そ、そんなこと…」
「なんだあ? も少し、エンジンをかけてくれってか? おらよ」
「アギイイーーッ!」
いきなり激しいピストンを送りこまれて、美佐子が絶叫する。
叩きつける男の腰に、身体が前にのめった。
「ようし、その調子だあ」
男は自分もジリジリと膝で進みながら、なおも深く重たい突きこみを続ける。
「アヒッ、アッ、アアアッ」
「おうら、ヨガってないで前進だよ」
パシーンと、音高く美佐子の尻タブに平手が見舞われる。
「ンアアアッ!」
「お、いまキュッときたな? なんだ、美佐子は犬より馬の方がよかったんか。
 そんならそうと早くいえや」
さらに連続して男の掌が叩きつけられて、白い臀肉に赤い手形をつけた。
「ほれ、はいしどうどう」
掴んだ髪を手綱のように引いて、ズーンと腰を打ちつける。
「アアアッ」
また美佐子の身体は前にのめって、しかし掴まれた髪によって、崩れることは許されず。
「ほうれ、前進前進」
「アッ、アイッ、ウアッ」
否応なしに、あられもない叫びを引き出されながら、
四つ足の美佐子はノタノタと重たい身体を進ませ始める。
225職人志望:02/10/31 04:24 ID:GQ8pjztJ
……数mを進むのに、どれだけの時間を要したものか。
美佐子にはわからない。
広い寝室の中央まで移動して。
四つん這いの姿勢のままで。いまだ男と繋がったままで。
美佐子は啜り泣いていた。
もうなにも考えられない。どうすればいいのか解らない。
「アア、アハッ、ハンッ、ウアアッ」
強いられる前進の動きが鈍れば、男が攻撃を強めてくる。
責められて、美佐子は啜り泣きの下から、嬌声を迸らせる。
どうしようもない快感を訴える声を、もう堪えようともせずに張り上げる。
たまらない。
背後から貫いた太くて長くて硬い肉棒が、子宮をこづき膣肉を抉るのがたまらない愉悦を生んで
美佐子の肉を燃え上がらせる。
泥のように疲弊しているのに、感覚だけがますます鋭敏になっている。
すでに数度、美佐子は軽い絶頂を味あわされていた。
美佐子が四つ足で歩んだ後には、両手と膝がつけた汗の跡と、零れた淫水のシミが残っていた。
「アッ、イッ、深…い……ダメ、アアッ!」
すでに、この扱いきれない感覚が、快楽であるとハッキリ思い知らされて。
美佐子の洩らす言葉も、より明確になっている。
「アイッ、奥、あた……って、おっき、ウアッ」
生まれて初めて味あわされる、魂消るような悦楽を、そのまま吐き出している。
「わ、たし……ダメ、また、アッ、アアアアアッ!」
226職人志望:02/10/31 04:25 ID:GQ8pjztJ
またひとつのピークを迎えて、たまらず美佐子の肘は折れて、床に突っ伏してしまう。
しかし、今度も男は休息を与えようとはしない。
「おら、起きろよ。さっきからヨガってばかりで、全然進まないじゃないか」
ペチペチと美佐子の汗にまみれた尻タブを叩いて、再開を促す。
「……もうダメ……もう、ゆるして」
グシャグシャに乱れた髪に横顔を埋めた美佐子が、瀕死のていで訴える。
「本当に……これ以上は……」
「なに言ってやがる。俺はまだ終わっちゃいねえんだぞ」
男が受け入れるはずもなく。
とうとう美佐子は声を上げて泣き始める。
「どうして……? どうして、私が……こんな目に合わなくちゃならないの?」
泣きながら、零した問いに答えるものはなく。
ただ、子供のように泣きじゃくる美佐子を、愉しげに見下ろす男がいるだけ。
(まあ、こんなとこか)
この日の目的は完遂されたことを確認して。
男は長い凌辱劇の仕上げにかかる。
227職人志望:02/10/31 04:26 ID:GQ8pjztJ
「へへ、ガキみてえにピーピー泣いてんじゃねえよ」
男は美佐子の臀を両手で抱えて、ゆっくりと立ち上がる。繋がったまま。
「いやぁ……」
弱い声をひとつ洩らして、美佐子は引き立てられる。
まるで、深々と貫いたモノに臀を吊り上げられるようにも見えた。
「フラついてんじゃねえぞ。キモチよすぎて、腰がヌケたってか。恥ずかしい女だなあ」
「……アァ」
男の侮蔑が、間違いではないことを美佐子は気づかされる。
その証拠に、立ち上がることで、後ろから抉った肉根が微妙に角度を変えるだけで、
快感が走って、鼻にかかった声を洩らしてしまう。
こんな状態でなお、たった今理不尽な運命に慟哭しておいて、なおも、快楽を感じてしまう
自分の肉体が信じられない。
「おうし、このまま前進だ」
「いやぁ、こんな……」
「とっとと歩く。ほれ、オイッチニ」
「ウアアッ、ア、アッ」
また、男の肉棒の動きに操られて。
美佐子は後ろ手で、臀を抱えた男の腕を掴んで上体を支えて。
ヨチヨチと歩きはじめる。
228職人志望:02/10/31 04:27 ID:GQ8pjztJ
男は窓の方へと美佐子を向かわせた。
立位で貫かれる初めての経験と、そのまま歩かされる恥辱と、歩を進むたびに微妙に粘膜を擦りたてられる
刺激に、また新たな汗と淫蜜を流して、嬌声を吹きこぼしながら。
やっとの思いで窓まで辿りついた美佐子は、両手をガラスについて、崩れかかる身体を支えた。
「到着っと」
「アァ……ハアン、アッ、アア」
「ようし、がんばった美佐子に褒美をくれてやるからな」
男の言う“褒美”とは、ひとつしかない。快楽。
そして、それを与えるべく男が激しい動きを開始すれば。
美佐子はすぐさま恭順を示して、それを受け取る。
「アィッ、ウアア、アアアアアッ!!」
呆気ないほど簡単に、極みへと追い上げられて。今日何度目とも知れぬ絶頂の女叫びを張り上げる。
しかし、男は一瞬も動きを弱めずに、そのまま責め続ける。
「イヤアアッ」
美佐子は泣く。これ以上の快楽には耐えられない。
「アウハッ、もう、ダメよう、おかしく……アイイイイッ!」
快楽の極みから下りる暇も与えられずに、再び飛ばされてしまう。
男の動きは止まらず、いっそう苛烈さを増していく。
「ヒッ、イヤ、アアアッ、ア、ア、ア、また、ダメ、もう、アヒイッ」
もはや美佐子はイキっぱなしの状態においやられて。
ひたすら脈略のない嬌声と啼泣を迸らせて、脂汗にまみれた裸身をのたうたせ続ける。
229職人志望:02/10/31 04:28 ID:GQ8pjztJ
「アィッ、死ぬ、オオッ、死んじゃ…う、イイッ」
汗と涙にグシャグシャになった顔をガラスに張りつけて、美佐子はそんな言葉を繰り返した。
それを、この上ない愉悦を持って眺めて。
ようやく、男も逐情の気配を自分の中に感じる。
「へへ、今度は中に注ぎこんでやるからな」
その宣告にも美佐子は反応を返さない。理解できないようだ。
「死ぬ……死んじゃう……」
「ヘッ、ザマあねえなあ」
男は、美佐子の頭を掴んで、窓の外を向かせた。
「八十八町は、あの方角だ」
「ウアッ、ア、アアッ」
美佐子の霞んだ瞳に、眼下の町並みが映った。
「娘や竜之介に、教えてやれよ。美佐子はいまここで、こんなにヨガリ狂ってるのよ、ってなあ」
「ああ……唯……竜之介、くん……」
美佐子の蕩けた意識が、その耳に馴染んだ音を拾う。
「唯……竜之介くん……助けて、助けてぇ」
「あひゃひゃ! そりゃあ最高だ」
錯乱の中で美佐子が洩らした言葉に男は哄笑して。
至極の満足感が、ついに男の引鉄をひいた。
「ウオオオオッ! いくぞ、出すぞ!」
怒涛の勢いで最後の突き上げを送りこめば。
「アアアアアアアーーーーッ!!」
極限まで膨張した男の肉体に、発狂したような女肉を抉られ、最奥を連打されて、
美佐子も、この日最後で最大の絶頂に吹き飛ばされて。
「イ…クッ」
かつて一度も口にしたことがなかった言葉が、勝手に零れて出た。そうとしか言いようがない感覚に。
「オオオオオッ!」
咆哮して、男が美佐子の中で爆発を遂げる。凄まじい勢いで子宮を叩く熱いマグマに。
「ヒイイイッ! イクッ! ああイク! イクーーーーーーッ!!」
美佐子はガリガリと窓に爪をたてて、乳房をガラスに押し潰して、折れるほど背を反らせて、
ガクガクと激烈な痙攣をとめどなく総身に走らせて。
肺腑の底から、歓喜の声をふりしぼった。
230職人志望:02/10/31 04:29 ID:GQ8pjztJ
……というわけで、ようやっとファースト凌辱完了です。
ちゃんと山場になってるかは、ちと心許ないんすが。期待ハズレだったら、ゴミンナサイ。
話はまだ続く……というか、むしろここからなんですが。
またジンワリとした展開になるんですけども。真綿で絞めるような。
よければ、続けさせてほしいっす。
231名無しさん@ピンキー:02/10/31 04:30 ID:hX0ynBYk
乙彼。
232名無しさん@ピンキー :02/10/31 09:53 ID:E5/csUKU
キタ━( ´∀`)゚Д゚)・∀・)*゚ー゚)`ー´)`ハ´) ̄ー ̄)´・ω・`) ̄ェ ̄)`∀´>`Д´)´ー`)-_-)=゚ω゚

真綿で締めるような展開をこれからもどんどん続けてください
233名無しさん@ピンキー:02/10/31 17:17 ID:E64wAI63
>>230
イイ! グッジョブ!

そのうち
「アヒオゥ!」とか叫びそうで怖かったw(巽飛呂彦だっけ?)
234名無しさん@ピンキー:02/10/31 23:49 ID:EldS3J6K
すげえ!
職人志望さんマンセー!

できれば変に薬やら器具やらに頼らない展開キボン、
235名無しさん@ピンキー:02/11/01 02:29 ID:UPZWpFUk
堪能しますた

イク寸前に、
詳細な観察描写があると、
あのボーっとした高まりとちょっと合わないね、冷静すぎて
236235:02/11/01 03:15 ID:UPZWpFUk
>>235
これは、職人志望氏のSSに対するコメントじゃないから、念のため
237191:02/11/01 12:37 ID:cdE4RY9c
>>192
ふたりエッチスレでも優良さん寝取られSSが連載中なので
なんとなく。
238名無しさん@ピンキー:02/11/01 15:34 ID:P6cIcZnV
だから~寝取られスレじゃないんだってw
239名無しさん@ピンキー :02/11/01 22:43 ID:cdE4RY9c
>>238
そうだよ。だからどうかしたの?
何で煽るかなあ~
240名無しさん@ピンキー:02/11/02 03:01 ID:fhwID2MC
どこが煽ってんねん。
頭とカルシュウム足りなすぎw
241名無しさん@ピンキー:02/11/02 04:46 ID:tFVVLlZq
>>237
紹介サンクスw
242名無しさん@ピンキー:02/11/02 07:24 ID:fC7aHjSi
>>237
激しくサンクスです!
(1の方は今見れないですね(涙)

スレッド違いで申し訳ないのですが(寝取られ系)
向正義の新刊っていつでるんでしょうか?
パピポに連載していた漫画のコミックが欲しいのですが・・・。
243名無しさん@ピンキー:02/11/03 06:54 ID:tsuOC3S5
本日前スレ1さん光臨の予感…
244名無しさん@ピンキー:02/11/03 07:30 ID:C0Ve8zuW
>>243
こうなってくると、予感つーより、祈りみたいなもんだなw
明日でいいから、俺もキボン
245名無しさん@ピンキー :02/11/03 15:04 ID:C0biirOA
前スレ1さんは身も心もFFに寝取られてしまってるから
あきらめなさい。
246旧1:02/11/03 16:08 ID:K6dSvopf
>>243 244 245
ゆっくり書いてるよ。
今月中にはうぷできると思うよ。期待せずまたーりまっててよ。

>>職人志望さん
美佐子さんSS素晴らしいです!!(^^
もう、けちのつけようがありません。
特にカエル親父の中年っぷりが上手すぎ!!もしかして、プロ?w
これからも頑張ってくださいね。
247職人志望:02/11/04 01:50 ID:A1qVINBF
引き続き、暖かい励ましをいただきまして感謝感謝です。
いまだにUpする時は、ビクビクしてるんで、マジありがたいっす。

>>旧1さん
光栄っす。
降臨は、もう少し先ですか? 期待して待たせていただきます。
なんとか、それまでには、こちらは終わらせたいものだ。

……しかし、今日のUpは、いわば幕間なのれす。
軽く読み流してやっておくんなさいまし。
248職人志望:02/11/04 01:51 ID:A1qVINBF
その午後。
唯は、ひとりで帰宅の途についていた。
竜之介は進路の件で担任の片桐先生に呼び出され、まだ学校にいる。
三年生のこの時期になって、いまだ卒業後の進路が決まっていないというのも尋常ではないことだが。
『まあ“あの”竜之介なら、そういうこともあるか』、という空気が周囲にはあったりもする。
なにより当人である竜之介が、焦るそぶりさえ見せないのだから。
多分、真剣に心配しているのは、片桐先生と唯ぐらいのものではないか。
それが唯には不満で、たびたび母親の美佐子に、竜之介の尻を叩くように頼んでいるのだが。
『竜之介くん自身が決めることだから』というのが、毎度の美佐子の答えで。
さらに、『心配しなくても大丈夫よ。竜之介くんなら』と、自信たっぷりに保証するのだった。
その時の母の表情は、いつも唯にかすかな嫉妬のような感情を覚えさせた。
母の竜之介に対する信頼は、自分のそれよりも強い。それは母が自分よりも深く竜之介という
少年を理解しているからではないか? と。
そう思えば、奇妙に胸が騒いで。その後に自己嫌悪に襲われる。
やきもちにしても見境がなさすぎると。
無論、母美佐子は竜之介を愛している。唯を愛するように。血は繋がっていなくても、
自分の子供として愛しているのだ。
そうであることは唯にも解っているから自分の嫉妬を恥じる―のだが。
しかし、最近特に、そんな胸騒ぎをしばしば感じるようになっていた。
三人で食卓を囲んでいる時、あるいはリヴィングで他愛もない会話をしている時。
美佐子を見る竜之介の目色に。竜之介の横顔を眺める美佐子の表情に。
唯は、ふっと漠たる不安を芽生えさせることが多くなっていた。
249職人志望:02/11/04 01:52 ID:A1qVINBF
「……どうかしてる」
フゥッとため息をついて。唯は、また心に浮かべてしまった馬鹿げた焦燥をふり払って、
遅くなっていた歩みを進めた。
やはり、自分も不安定な精神状態になっているのだろう、と思う。
人生の大きな岐路を迎えようとする、この時期に。
「……おにいちゃんが悪いんだよ」
いまは隣りにいない竜之介に文句をつけた。唯自身の進路はとうに決まっていて、
現在の悩みは全て竜之介にまつわることなのだからと。
……でも、と唯は学校で別れてきた竜之介のことを思い出した。
授業が終わって、片桐先生のもとへ向かう時の竜之介は、これまでと違って、
決然たる態度だったように思う。
あるいは、竜之介もようやく自分の進む道について決断を下したのかもしれない。
無論それは喜ぶべきことだし、そうでなくては困るのだが。
しかし、そうなればそうなったで、一抹の寂しさを唯は感じてしまうのだった。
「ダメだなあ……」
そんな自分に、またため息をついた頃に、ようやく我が家が見えてきた。
「あれ……?」
唯が怪訝な表情を浮かべた。
「お店、閉まってる」
思わず腕の時計を確認する。四時前。まだ営業時間だ。
『CLOSED』の札が下がったドアを押して、やはり施錠されていることを確かめると、
唯は急ぎ足で家へと向かった。
250職人志望:02/11/04 01:53 ID:A1qVINBF
「お母さん?」
鍵を開けて入った家の中は、シンと静まっていた。
美佐子の靴は玄関に脱いであるが、唯の呼びかけにも答える声はなかった。
「お母さん? どこ?」
声を大きくしながら、母の姿を探す。
リヴィングにも台所にも美佐子はいなかった。
「……出掛けてるのかな?」
そうも思ったが。突然の店の休業は気にかかった。
唯は美佐子の寝室へ向かい、ドアを叩いた。
「お母さん? ……入るよ」
ちょっとだけ遠慮がちにドアを開いて。
「……お母さん!?」
唯は、そこに見つけた母の姿に、大声を上げてしまった。
美佐子はベッドに横たわっていた。倒れこんでいた、と言った方が正しい。
布団をまくりもせず、ベッド・カバーの上に手足を投げ出すようにうつ伏せになっている。
身にまとった白いバス・ローブの裾は乱れて、白い脚が半ばまで剥き出しになり、
柔らかそうな両の足裏を唯の方に向けていた。
「お、お母さん!? どうしたの!?」
尋常ではない母の姿に、唯は慌てて駆けよって、肩を揺さぶった。
広がった豊かな髪の中に、横向きに伏せられた美佐子の顔には血の気がなくて、唯の動悸を早まらせた。
「お母さん! しっかりして!」
251職人志望:02/11/04 01:53 ID:A1qVINBF
懸命な唯の呼びかけに、ようやく美佐子が反応を示す。
長い睫毛が震えて、ゆっくりと双眸が開かれた。
それに、唯はホゥとひとまずの安堵の息をついた。
「よかった、ビックリしちゃったよぅ」
「……唯……?」
美佐子はまだ意識が醒めきらないのか、ボンヤリとした言葉を返した。
「いったい、どうしたの? お母さん、具合悪いの?」
「……唯……私……」
数度目蓋をしばたいて。
ハッと我に返った美佐子は、急に狼狽の色を示して、起き上がろうとした。
しかし、腕に力が入らないのか、起こしかけた体がグラリと揺れる。
「ちょっ、ダメだよ、無理しちゃ」
唯が手を差しのべて、美佐子の体を支えた。
ハラリと、美佐子のローブの前がはだけて、白い胸肌が露わになった。
「……お母さん、下着つけてないの?」
「あ、こ、これは」
軽い驚きを浮かべた唯の言葉に、美佐子はサッとローブの合わせを引いて肌を隠した。
髪も濡れているし、どうやら美佐子は湯上りらしいことはわかったが。
それにしても、ローブの下になにも着ていない美佐子が、唯には意外だったのだ。
「これは……シャワーを浴びて……その後に気分が、悪くなって」
きつく引っ張った襟で首元まで覆い隠しながら、言葉を探すようにして、美佐子は釈明した。
「そうなんだ。お店も閉まってるし、どうしたんだろうって」
「そう、なの。あの、調子が悪くて、お店を閉めて……休む前に汗を流そうと思って」
唯は簡単に納得したのだが、美佐子は殊更に言葉を費やして弁明した。
252職人志望:02/11/04 01:56 ID:SGGeW+ik
「そうだったんだ。ホント、ビックリしたんだよ。お母さん、布団にも入らずに倒れてるんだもん」
「ご、ごめんなさいね。部屋に戻ったら、急に眩暈がして」
「眩暈……風邪かなあ?」
そう言って、美佐子の額に手をあてる唯。
「……熱はないみたいだけど。痛いところとかは?」
「大丈夫よ……きっと、ただの疲れだと思うわ」
安心させるように美佐子は、薄く笑って見せたが。その隠しようもない憔悴の色が唯を不安にさせた。
今朝別れてから数時間しか経っていないのに、美佐子はゲッソリとやつれ果てて見えた。
「お医者さん、呼ぼうか?」
「平気よ」
「でも……」
「大丈夫だから。本当に、少し疲れが出ただけ」
美佐子に重ねて言われれば、納得するしかない。無理に母を病人にしたてたいわけでもないし、
過労というのも、店と家の両方を切り盛りする日頃の美佐子の忙しさを思えば、いかにもなことだ。
「ホントに無理はしないでね。ほら、休むならちゃんとお布団に入らないと。本当に風邪をひいちゃう」
母への感謝と申し訳なさから、俄然テキパキと世話をやきはじめる。
「あ、でも、ちょっと待って」
言われるままに布団の中に潜りこもうとした美佐子を制して。
唯はクロゼットから、乾いたタオルを持ち出してくる。
「髪、乾かさないと。冷えちゃうし、明日の朝、タイヘンなことになっちゃうから」
美佐子の長い髪は、濡れたまま、すでにヒンヤリと冷たくなっていた。
唯は座らせた美佐子の後ろにまわって、洗い髪を大きなタオルで包みこんだ。
253職人志望:02/11/04 01:57 ID:SGGeW+ik
タオルごと髪を揉むようにして、水分を取っていく。
「……だいたい、いいかな」
手早く作業を終えて、仕上がりを検分する。
まだシットリと潤いを含んだ美佐子の黒髪は、艶々と輝いていた。
「お母さんの髪って、綺麗だよねえ」
思わず感嘆の言葉が洩れた。
「…………」
と、黙って唯の手が髪を扱うのに任せていた美佐子が、肩に置かれた唯の手を握りしめた。
「……?」
「……唯…」
か細く名を呼んで、そして唯の手に頬を擦りつけるようにして、美佐子はポロポロと涙を零した。
「お母さん……? お母さん…泣いてるの? どうしたの、辛いの?」
突然泣き出した母にうろたえる唯に、美佐子は無言で何度も首を横にふった。
「……ごめん、なさい……なんでもないの……なんでも……」
指で目尻を拭って、笑顔を取り繕う。
そんな母を、唯は、体調が悪くて心細くなっているのかな、と妥当に判断した。
「ゆっくり休んで」
慈しむように、そう言いながら美佐子の身体をそっと横たわらせた。
「家のことは唯がやるから、心配しなくていいよ」
枕の位置を調整して、布団を肩まで掛けてやる。立場を逆にした、母親のような自分の振るまいに、
くすぐったい満足を感じながら。
「ありがとう……ごめんね」
「変なの。家族なのに」
「……そうね。お母さん、おかしいわね」
「ゆっくり休んで、早くいつものお母さんに戻ってね。じゃないと、おにいちゃんも心配するよ」
254職人志望:02/11/04 01:59 ID:SGGeW+ik
「………そう…ね」
竜之介のことを持ち出した時に、美佐子の瞳に揺れた翳りに唯は気づかなかった。
「晩ご飯は唯が支度するから。ちゃんと休むんだよ」
くどいように念を押して、唯は部屋を出ていった。
「………………」
遠ざかっていく足音に美佐子は耳をすませて。
そして、ホッと緊張を解いた。
自分を案じてくれる娘に対して申し訳ないと思いながらも。美佐子は唯の目が消えたことに
解放された思いを感じずにいられなかった。
無論、美佐子が安堵したのは、唯に気づかれずに済んだからだ。
唯が傍にいる間、この昼に自分の身に起こった出来事、悪夢のような凶事の痕跡を
見つけられてしまうのではないかと、脅えていたのだ。

……あの後。
窓辺での交わりの果てに、凄まじいまでの絶頂に追いやられた後。
美佐子は再び意識を失った。
セックスで、強烈な快感によって失神する―そんな絵空事としか思っていなかったことを
美佐子はわずかな間に二度も体験させられたことになる。
そして、二度目の失神から覚めた時。
美佐子は車の助手席に座っていた。
ちゃんと服を着て、男の車の助手席に座っている自分を発見して呆然とすることになった。
しかも車は、『憩』の前に停められていたのだ。
一瞬、ほんの一瞬だけ、すべてが悪い夢だったのでは? というあさはかな希望が胸に沸いた。
255職人志望:02/11/04 02:00 ID:SGGeW+ik
「ようやく起きやがった。ホントに、ここまで一度も目を覚まさないってんだから。
 よっぽど遠くまで飛んじまってたみたいだな」
しかし、運転席の男の科白が、美佐子の儚い希望を打ち砕いた。
いや、男の言葉を待つまでもなく、美佐子自身の身体の状態が、
すべてが現実の出来事であったのだと、雄弁に語っていた。
指も上げられないほどの疲労、節々に残る鈍く重い痛み。ベタついた肌。
しかし、そうであれば、やはりこの場の状況が美佐子には不可解だったのだが。
「いくら呼んでも起きないからよ。仕方ないんで服を着せて、重たい体を担いで。
 車に乗せて、ここまで送ってきたってわけだ。感謝しろや」
恩着せがましい男の説明に、ようやく状況を理解する。
我が身のていたらくに、また新たな恥辱を噛みしめながら。
美佐子は感情を堪え、必死に気概をかき立たせて、男を睨んだ。
「テープを返して」
「ああ、そうだったな」
男はあっさりと頷いて、懐から取り出した盗聴器ごと渡した。
「確認するか?」
聴きたくはなかったが、そうは言っていられない。
美佐子はイヤホーンを耳にあて、すべての元凶である録音を数瞬だけ聞いて、
すぐに再生を止めた。おぼつかない手つきでテープを取り出そうとすると、
「機械ごと持ってけよ。今日の記念にプレゼントするぜ。若い彼氏とのお遊びに使い道があるかもよ」
最後の最後まで、男のゲスな言いぐさは変わらない。
256職人志望:02/11/04 02:01 ID:SGGeW+ik
美佐子は、この期に及んで言い争う気にもなれず、
「これっきりよ。二度と私たちのそばに近づかないで」
それだけを念押しした。
「わかってるって。俺も警察沙汰はごめんだからな。録音テープもそれだけだ。コピーはない」
「…………」
これですべてのことは終わった。あとは一刻も早く男から離れるだけだ。
美佐子はドアを開けて、車を降りた。よろけそうになる足を路面に踏ん張った。
「楽しかったぜ」
笑いを含んだ声が背中に掛けられる。
美佐子はそれを無視して、叩きつけるようにドアを閉めた。
そして、家へと向かって歩き出した。フラつきそうになる脚をこらえ、
背を伸ばすことに気力をふりしぼって。
背中に男の視線を感じたが、美佐子は一度も振りかえらずに家に入った。
扉を閉ざし、すぐに内鍵をしめて。カチリと外界と切り離される音を聞いた途端に。
美佐子は、その場にヘタリこんでしまった。
扉に背をもたれて、見なれた家内の眺めを見やった。
帰ってきた。その実感が胸にわいた。
まるで数日間も数週間も離れていたような懐かしさと深い安堵を感じた。
「……いけない」
美佐子は頭をふって、重い腰を持ち上げた。
まだ気をぬいていい段階ではない。唯や竜之介が帰ってくるまでに……。
美佐子は思考を忙しくめぐらせて、疲れ果てた身体に鞭打って動きはじめた。
257職人志望:02/11/04 02:01 ID:SGGeW+ik
居間に入って時計を見ると、午後二時をまわったところだった。
男とは三時間ほど一緒にいたことになる。やはり、たったそれだけとは信じられない気がしたが。
この時に問題とすべきは過ぎた時間ではなく、残された時間だった。
唯や竜之介は、早ければ、あと一時間あまりで帰宅する。
それまでに変事の痕跡を消しておかなければならない。
美佐子は、まず自室に入って。手にした盗聴器を鏡台の引き出しの奥へと押しこんだ。
無論、破棄しなければならないものだが。それは後でもできる。
なにより先にしておかなければならないこと。
それを済ますために、美佐子は急ぎ浴室に向かった。
脱衣所の鏡に、ゲッソリと憔悴した女の顔が映った。
美佐子はシャツ・ブラウスのボタンを外した。ブラジャーは着けられておらず、
白い胸肌が現れた。ポツポツとこびりついた汚れは男の欲望の残滓だ。
思わず、それを爪で掻きむしりながら、汗の臭うシャツを脱ぎ捨てた。
同様に荒っぽい動作でスカートを下ろした。
ブラジャーは着けられていないのに、ショーツは履かされていた。
意識のないうちに、そんなことまで男の手に任せてしまったことに気づいて、
美佐子はカッと胸を灼いた。
無論、それは気遣いとは真逆の悪意に満ちた行為に違いないのだ。
脱ぎ下ろす時には、布地に貼りついた恥毛が引っ張られて、痛みが走った。
貼りつかせたのは、ショーツにヘバりついた男の欲望の証しだ。
小さな下着の全面に白い乾いた跡になっているのが、美佐子の顔を拭いた時のもので。
股布の部分に、ドロリと半乾きの状態で付着しているのが、美佐子の膣から流れ出したものだった。
それは、これ以上はない凌辱の証左で。美佐子が体験した悪夢のような時間が、
現実のことだと告げていた。
258職人志望:02/11/04 02:02 ID:SGGeW+ik
「……クッ!」
思わず、抑えていた感情が激発して、美佐子は脱いだショーツを床に叩きつけようとして。
その無意味さと、床を汚してしまうおそれに気づいて、思いとどまった。
気を鎮め、脱いだ衣服をひとまとめにして洗濯機に放りこもうとして。
しかし、その動きも途中で止めた。
洗って……また着るというのか? 
そんなことは出来ない。汚れは落ちても匂いは消えても、二度と身に着ける気にはなれなかった。
美佐子は服を手に、裸のまま、脱衣所を出た。
急いで日常を取り繕わなければという意思とは矛盾していたし、無人とはいえ、全裸で家の中を
動きまわるなどとは、平生の美佐子からは到底考えられない行動だったが。
この時の美佐子は、そうせずにはいられなかった。
キッチンに向かい、二重にしたゴミ袋の中に服を放りこんで、厳重に口をしばった。
そして、目立たない場所にゴミ袋を押しこんだ。
そうして、ようやく気を済ませて。美佐子は浴室に戻った。
真っ直ぐに浴室に駆けこんで、水量を最大にした熱いシャワーを頭から浴びた。
肌の上を流れる熱い湯の感触に、蘇生するような思いを味わいながら、
両手を、いたぶられた全身に慈しむように滑らせて汗を流した。
それから大量のソープを含ませたスポンジで身体中を磨いた。徹底的に。
乳房や尻に洗浄の手を伸ばせば、そこを這いまわった忌まわしい男の手がいやでも思い出されて、
悔し涙が滲んだが。
こうして何重にも被せられた穢れの膜を一枚一枚こそぎ落としているのだと自分に言い聞かせて、
美佐子は懸命に手を動かした。
259職人志望:02/11/04 02:03 ID:SGGeW+ik
だが、最も端的に汚された場所、女の部分を洗う時には、そんな自分への励ましも役に立たなかった。
浴室のタイルの上に、ベッタリと尻をついて、大きく両脚を広げて。
蹂躙された部分に、怖々と手を伸ばして。挿しこんだ指で、男の注ぎこんだものを掻き出す。
そんな行為を演じねばならない自分の惨めさが胸に迫って、美佐子は耐え切れず嗚咽の声を洩らした。
男の欲望は多量だった。掻き出しても掻き出しても、なおも溢れ出た。
美佐子はヒリヒリとした粘膜の痛みに耐えて指を動かしながら、妊娠の恐怖に脅えずにはいられなかった。
時期的には安全なはずだが。これだけ大量の痕跡を見せられると、心許なく思えて。
男のなすがままに膣内への射精を許してしまった己が不覚を美佐子は呪った。
……そこに触れることで、必然的に思い出された男の肉体の特長については、頭をふって意識から追いやった。
それでも、どうにかその部分の洗浄を終えて。
最後に、ここも手荒な扱いを受けた髪を入念に洗って。
全身を桜色にそめて浴室を出る時には、なんとか再生を果たしたような安堵が美佐子の胸にわいた。
だが、その思いがここまで美佐子を動かしていた気力を切ってしまった。肉体はとうに限界を超えていた。
どっと押し寄せた疲弊が、湯上りの美佐子をフラつかせた。
グラグラと回る視界の中、手さぐりに戸棚から日頃はほとんど使用しないバス・ローブを引っ張り出して
羽織ると、美佐子は這うようにして自室に向かった。
ようよう部屋に辿り着いて、ベッドに倒れこんだ瞬間に意識が途絶えた。
そして唯によって発見されるまで、昏睡のような深い眠りに落ちていたのだった。
260職人志望:02/11/04 02:05 ID:SGGeW+ik
……そして今、唯が出ていったばかりの寝室で。
(……間に合った……)
美佐子は、そんな安堵を噛み締めていた。
必死の働きの甲斐があって、唯には事実を気づかれずにすんだ。これで、竜之介に対しても大丈夫だろう。
長い一日が、これでようやく終わる。終えることができる。
本当に……なんという日であったろうか。
朝、目覚めた時には。昨夜結ばれた竜之介との誓いに、懊悩しながらも歓喜を感じる自分がいたのに。
それからわずか半日の間に、美佐子は悪夢にも見ないような地獄を味あわされて。
いまはこうして半病人のような状態で横たわっているのだ。
突如、自分を巻き込んだ災厄。
なんと凄まじい暴虐だったろう。なんて恐ろしい男だったろうか。
(……でも、すべては終わった……終わったのよ)
美佐子は胸中に呟いて、鮮明に蘇ろうとする恐怖を抑えつけた。
そう。すべては終わった。美佐子は犠牲と引き換えに、それを終わらせることが出来たのだ。
…………本当に終わったのだろうか?
あんな、恐ろしい男が、本当にこれですべてを終わらせるだろうか?
卑劣な男だ。欲望のためには手段を選ばず、それを恥じようともしない。
しかし、そんな非道さ以上に、生々しい恐怖として美佐子を襲うのは。
男の、狂的なまでに執拗な女へのいたぶりと。その肉体の特長、そして人間ばなれしたエネルギーだった。
261職人志望:02/11/04 02:06 ID:SGGeW+ik
目蓋に焼きついている。男の肉体の魁偉さと禍々しいフォルム。
それは美佐子の女にもまざまざと刻みこまれている。張り裂けるような太さと、息つまるような深さ。
それが呆れるほど長い時間をかけて、美佐子を蹂躙して。
最後には、これまた人間ばなれした爆発を浴びせられて。
(……あんな男がいるなんて……)
植えつけられた記憶はあまりに鮮烈で。美佐子は恐怖に身震いして、同時に息苦しいような感覚を覚えた。
そして、それに連らなって思い出さずにはいられなかった。
そんな獣のような男に思うままにいたぶられて、自分がどんな醜態を晒してしまったかを。
(……アァ……)
美佐子の眼から涙が零れて。こめかみを伝っていった。
女に生まれたことが、これほど恨めしく思えたことはなかった。
これで……自分は完全に竜之介の想いに応える資格を失ってしまったのだと。
(……竜之介くん……ゆるして)
いまだ、このベッドには彼の匂いが残っているように思えるのに。
せめて今は、その温もりの残滓の中で疲れた心と身体を休めたくて。
美佐子はシーツに頬を擦りつけ、深く息を吸った。
彼の温もりの名残に抱かれるような錯覚を、わずかな慰めとして美佐子は目を閉じた。
……やがて、傷心も懊悩も、深い心身の疲労に呑みこまれて。
美佐子は安らかな寝息を立て始めた。
262職人志望:02/11/04 02:07 ID:SGGeW+ik
帰宅して、唯から美佐子が寝こんでいると聞かされた竜之介は、らしくもない狼狽を見せた。
慌てて、様子を見に行こうとしたが、
「ダメだよ。いまは眠ってるから。そっとしといてあげないと」
唯に、そう言われて、渋々引き下がった。
しかし、唯の用意した夕食をふたりでとっている間も、
「……本当に、大丈夫かなあ、美佐子さん」
何度も、そんな言葉を繰り返した。心配そうに美佐子の部屋の方を見ながら。
「もう、おにいちゃん、さっきからそればっかり」
「だって、さ」
「疲れが出ただけだって、お母さんも言ってるし。ゆっくり休めば元気になるよ」
「でも、いままで、こんなことなかったじゃないか」
「……うん」
そう言われると、唯も不安が頭をもたげてくる。
「そうだよね……お店と家のことで大変なのは、もとからだし……。
 お母さん、なにかあったのかな?」
(あ、ヤバい)
竜之介はヤブヘビに気づいた。
「な、なにかって?」
「わからないけど……。おにいちゃん、なにか知らない?」
「しし、知らないぞ、全然」
実は、ハッキリとした心当たりがあるだけに口調が怪しくなってしまう。
「あああ、やっぱりさ、店と家事の両立はタイヘンだし。疲れがたまってたんだよ」
結局、先程の唯の言葉をそのまま返して、話をまとめようとする。
263職人志望:02/11/04 02:08 ID:SGGeW+ik
幸い、唯は竜之介の不自然な態度には気づかなかったが。
「だいたい、おにいちゃんがいけないんだよ」
やおら矛先を向けて、竜之介をまたギクリとさせた。
「な、なんでだよ?」
「いつまでも進路を決めないから。お母さんも安心できないんだよ」
「なんだ、そのことか。それなら…」
「え? おにいちゃん、進路決めたの?」
「うん、いや、まあ……」
何故か口ごもる竜之介に、唯は不満顔で、
「唯には教えてくれないの?」
「そんなわけないだろ。ただ……」
チラリと、美佐子の部屋の方を見やって、
「うーん、やっぱり美佐子さんもいる時に話すよ」
「ええ~。ケチ」
「ケチとかじゃなくって。やっぱ大事な話だからさ」
その後も、なんとか聞き出そうとする唯の追及をいなして、竜之介は胸のうちを明かさなかった。
……夕食後、唯が風呂に入ったスキに、竜之介は美佐子の部屋へと向かった。
「美佐子さん……?」
目覚めていれば聞こえるという程度のノックと声で呼んでみたが。
ドアの向こうはシンと静まって。なんの反応もなかった。
それに少しだけ残念そうな表情を浮かべたが。
竜之介は素直に引き下がって、自分の部屋へと戻った。
264職人志望:02/11/04 02:09 ID:SGGeW+ik
翌朝。
竜之介は普段より一時間も早く起き出して、階下へと下りた。
キッチンで忙しく立ち働く美佐子の姿を見つけて、自然と頬が綻んだ。
「おはよう、美佐子さん」
ちょっと照れくさい気がしたのは、こんな余裕を持って朝の挨拶をしたことなど
ほとんどなかったからだが。
案の定、意外な時間に声を掛けられた美佐子は、ビクリと驚いたように振りかえった。
「竜之介くん……」
「おはよう。もう体の調子はいいの?」
美佐子の驚きに、いたずらを成功させたような楽しさを味わいながら、
竜之介は気にかかることを確認した。
「え、ええ、もう大丈夫よ。ごめんなさいね、心配かけて」
安心させるように笑顔を見せて。すぐに美佐子はまた竜之介に背を向けて、手を動かしはじめた。
その挙措に滲む微妙なぎこちなさを、竜之介は感じとれなかった。
それよりも、美佐子が自分に向けた笑顔に心を奪われて、立ちすくんでしまっていた。
(……なんだか…今日の美佐子さんは、すごく色っぽいな……)
病み上がりだからだろうか? などと不謹慎なことを考えてしまう。
実際、美佐子の面には、一晩の休養では拭いきれなかった憔悴の翳が残っていた。
それを隠すために、化粧もいつもより念入りに施されていて、竜之介の感じた印象は、
そのせいもあったのだが。
とにかく、この朝の美佐子には、これまで見せたことのない艶めきがあった。
265職人志望:02/11/04 02:09 ID:SGGeW+ik
「……今日は、ずいぶん早いのね?」
向こうむきのまま、美佐子が言った。
「う、うん。美佐子さんの体調が気になったし……」
それに、と竜之介は少し口調を改めて、
「話したいことがあったんだ。美佐子さんに」
「私に? なにかしら」
聞き返して。しかし、依然として美佐子は竜之介の方を見ようとはしない。
それに微かな不満を感じながらも、竜之介は続けた。
「俺、進学することにしたんだ。もちろん、今からじゃ一年は浪人することになるけど。
 来年には必ず希望の大学に合格する。大学でも頑張って勉強する」
一晩暖めていた決意の言葉を、ほとんどひと息に竜之介は告げた。美佐子の背に向かって。
「進みたい道もあるんだ。そこで早く一人前の男になるように、俺、頑張るから。
 だから、待っててほしい」
昨日、唯に対しては意志を語らなかったのは、最初に美佐子に聞かせたかったからだった。
自分に、その決断を下すきっかけを与えてくれたのが美佐子だったから。
美佐子に相応しい男になるという決意が、自分の獏然としていた志望に明確な道を作ったのだから。
青臭い言上だとは自覚しても。これがいまの自分が表せる精一杯の気持ちだから。
竜之介は、竦むことなく自分の決意を口にした。
266職人志望:02/11/04 02:10 ID:SGGeW+ik
「………………」
だが、美佐子からはなんの言葉も返ってこない。竜之介に背を向けたまま。
忙しく動いていた手は止まり、少し俯くようにして。
竜之介は困惑する。具体的にどういう反応を期待していたというわけでもないが。
それにしても、一言も返してもらえないのでは立つ瀬がないというか。
「あの…」
うかがうように声を掛けようとした時、ようやく美佐子が振り向いた。
「……え?」
その顔が強張って、蒼ざめているように見えて、竜之介を驚かせたが。
しかし、次の瞬間には、美佐子はニッコリと微笑んでみせた。
「おめでとう。竜之介くんも、ようやく自分の道を見つけたのね」
「え? ああ、うん」
「竜之介くんなら、その気にさえなれば大丈夫だと思っていたけど。よかったわ」
……なんだか、微妙に話をズラされている気がした。
美佐子の言葉からは、竜之介の決意の中の一番大きな部分、美佐子自身のことが
抜け落ちているように聞こえた。
「お、俺は、美佐……」
「ああーーーーっ!? おにいちゃんがこんな時間に起きてるーーっ!?」
慌てて確認しようとした竜之介の言葉は、突然のかしましい声にかき消された。
「どうしたの? どこか具合でも悪いの?」
「……なんで、早く起きると具合が悪いことになるんだよ? 逆だろ、普通」
闖入してきた唯に、竜之介はため息をついて。それ以上の美佐子との会話を諦めた。
267職人志望:02/11/04 02:11 ID:SGGeW+ik
「だって。いっつも唯がいくら呼んでも起きないのに」
「……美佐子さんに話すことがあったんだよ」
「あ、お母さん。もう起きても平気なの?」
いまさらながらに美佐子の体調を訊く唯。薄情なようだが、それほど竜之介の早起きが意外事であったらしい。
「もう大丈夫よ。心配かけたわね」
「まだちょっと顔色が悪いみたい。無理しちゃダメだよ」
ひとしきり気にかけて。かと思うとクルリと竜之介に振り向いて。
「それで? お母さんと、なにを話してたの?」
「朝から失敬なことをいうヤツには、教えてやらない」
「ええ~、ズルイよ。あ、進路のこと? 唯にも教えてよう」
「竜之介くんね、進学することに決めたんですって」
とりなすように、美佐子が唯の疑問に答えた。
「本当? おにいちゃん進学するの?」
「……まあ、とりあえずは浪人生活だけどな」
……その後、いつもより時間の余裕のある朝食の間、竜之介は唯の質問責めにさらされた。
まあいいか、と美佐子にも聞かせるつもりで、竜之介は今後の予定について答えた。
話しながら、時折思い入れをこめた目を美佐子に向けた竜之介だったが。
何故か、美佐子と目が合うことはなかった。
268職人志望:02/11/04 02:14 ID:ft2rPvyS
いつにも増して賑やかだった朝の時間が過ぎて。
唯と竜之介は連れ立って、登校していった。
美佐子は食卓の椅子に座って、思いに沈んでいた。
唯と竜之介に見せていた微笑は消えて、深い懊悩と憔悴が、その面には浮かんでいた。
昨日も……この時間をこんな風に過ごしていたことを思い出す。
しかし、同じ場所で同じ姿勢で、やはり同じように思い煩いながらも、
その内実には天と地ほども差があった。
今朝の竜之介の言葉を、美佐子は思い出している。
その時の彼の顔は、どうしても見ることが出来なかったけれど。
真っ直ぐな、キッパリとした声の響きが耳に焼きついている。
辛かった。
竜之介のことを愛している。それは、いまも迷いなく言い切ることが出来る。
(……でも、私には、もう彼の想いに応える資格は……)
ない。ないのだ、と思う。
それは脅迫に屈して、身体を汚されたからではなくて。
望まぬはずの行為の中で、自分が演じてしまった致命的な屈服、敗北。
あんな卑劣な男に、言いように弄ばれて。なのに自分は快楽を感じてしまった。
いや、そんな生易しい言葉では済まないだろう。あの部屋での自分の狂態は。
そう、狂ってしまった。経験したこともない悦楽にさらされて。
自分の中に、あんなにも貪婪な“女”が眠っていたことを初めて思い知らされた。
269職人志望:02/11/04 02:15 ID:ft2rPvyS
一夜の昏々たる眠りの後にも、美佐子の身体からは重い疲労が抜けきっていなかった。
そして疲れ以上に美佐子をやるせない思いにさせるのが、そこかしこに残る痛みだった。
特に。亡夫との営みのすべてを合わせたよりも酷使されたように思える女肉は、
いまだ疼くような痛みをはらんで。いまでも太いモノを含んでいるような感覚があった。
それらのことごとくが、美佐子に忌まわしい記憶を遠ざけることを許さない。
なにより情けなく口惜しいのは。
疲れや痛みの底に、確かな充足を感じてしまっていることだった。
いまさらにして、自分の身体は十年の独り居に渇いていたのだと気づかされた。
……だから、仕方のないことではないか、と自分に言ってみる。
餓えた肉体に、たとえ忌み嫌う相手による凌辱ではあっても、逞しい牡を迎えさせられたのだから。
自分の錯乱も仕方のないことではなかったか、と。
女なのだから。長く忘れていたけれど、自分とて生身の血肉を持った女であるのだから。
……美佐子の思考は、どこにも行き着きようもない種類のもので。
だから停滞し循環した。グルグルと回るその中心にあるものは……あの男。男による凌辱の記憶。
その逞しさと無尽とも思えるエネルギーを、身体が覚えている。鮮明に。
(……でも……あの男とのことは、もう終わったこと……)
ほんの一瞬、思索が危ういところを掠めて。美佐子は強くかぶりを振った。
(馬鹿な)
無論、それでいいのだ。あの男とは二度と逢うこともない。逢いたくもない。
忌まわしい記憶は、自分の中だけに葬って。あとは時が傷を癒してくれるのを待つだけだ。
だが。
時間が傷口を塞いでくれるまで。悲痛や恥辱以外のものに悩まされることになるのではないか?
そんな情けない予感が胸にわいて、美佐子を惨めにさせた。
270職人志望:02/11/04 02:16 ID:ft2rPvyS
そして、そんな女の弱さを自覚すれば。
(……竜之介くん……)
愛する男へと縋りつきたくなってしまう。
いけない、と思い、すぐに、何故いけないのか? と反問する。
彼は、竜之介はなにも知らない。自分が受けた汚辱のことは。
このまま事実を封印して、傷を癒すのに彼の優しい手を借りる。
そう望むのは、そんなにもいけないことなのか?
……駄目だ。そんな偽りを裏切りを持ちこめば、ふたりの関係に必ず影を落とすことになる。
なにより、自分の心が耐えられそうもない。
ならば。いっそすべてを打ち明けてしまえば?
彼なら、竜之介ならば、事実のすべてを受け入れた上で、自分を抱きとめてくれるのではないか?
いや。たとえ赦してもらえずに、彼が離れていってしまうとしても。
ありのままを告げることこそが、とるべき道なのではないか?
ああ、でもそれは、しょせん自分の苦しみを彼に押しつけるだけの行為なのかも……。
……思考は千々に乱れて、いきつ戻りつして。出口を見つけられず。
(……いまは言えない。竜之介くんにとって、いまはとても大事な時だから。
 余計な負担を与えるわけには、いかない……)
そんな消極的な考えを、ひとまずの結論とする。
結局は、竜之介への想いを断ち切ることが出来ないがゆえの先送りなのだと、自覚しながら。
(……そろそろ、開店の準備をしないと)
時計を確認して、腰を上げた。
どれほど乱れ騒ぐものが心にあっても、平生通りの生活を送る。そう美佐子は決めていた。
犠牲と引き換えに守った平穏な日常だから、けっして揺るがせはすまいと。
271職人志望:02/11/04 02:18 ID:ft2rPvyS
しかし。

トゥルルルル……。

電話がなった。
その瞬間、美佐子はビクッと肩を震わせて。強張った顔で、鳴る電話機を見つめた。
冷たいものが、背を撫でた。
いや、そんなはずはない。臆病になりすぎている。
フウッと息を抜いて、鳴り続ける電話へと向かう。
「……はい」
だが、応対する声は、どうしても探るような調子になってしまった。
そして。
『おお、美佐子か。俺だよ。昨日は楽しかったなあ』
「……っ!?」
受話器から聞こえたのは、美佐子が最も耳にしたくない声だった。
「あ、あなたはっ…」
『ハハ、意外と元気そうだな。別れた時の調子じゃ、まだ腰をヌカして寝こんでるかと思ったが』
横柄な口調もゲスな言いぐさも、すべて忌まわしい記憶の通りで。
美佐子は逆上しかかる感情を懸命に抑えこんだ。
落ち着け。男のペースに乗せられてはいけない。
どうせ、下卑たからかいを浴びせるための電話だ。もう男にはそれくらいしか出来ない。
録音テープは取り返したのだから。
272職人志望:02/11/04 02:19 ID:ft2rPvyS
「……なんの用なの? もう二度と私たちに近づかない約束よ」
『そうスゴむなよ。昨日はあんなに熱く愛しあった仲じゃないか』
やはり、そんなことを言いたかっただけか、と。
安堵と共に、耐えがたい嫌悪を感じて。
「切るわよ。二度とかけてこないで」
『おっと。早まらない方が身のためだぜ』
受話器を戻そうとした動きを、思わせぶりな言葉に止められる。
「……なにが言いたいの?」
『昨日のさ、記念写真が出来てるからよ。ひとめ、美佐子にも見せてやりたくてな』
グラリ、と。
美佐子の視界が揺れた。
『覚えてないのか? ああ、美佐子が失神アクメして、気持ちよさそうに眠ってる時に撮ったんだっけな。
 よく撮れてるぜえ。泡ふいて白目を剥いた面も、恥ずかしげもなくおっ広げた股座もバッチリだ。
 まさに『淫乱熟女悶絶の図』ってな感じだなあ。あんまりデキがいいんで、俺ひとりで楽しむのは
 勿体なくってさ。取り合えず、モデルの美佐子に見せてやろうと思ったんだが。
 今から出てこれるだろ? 無理ってえなら郵送するか、どっかで娘にでもことづけてもいいんだが。
 おーい? 美佐子、聞いてるかあ?』

……この日も。前日と同様に。
開店時間を過ぎても、喫茶店『憩』はひっそりと扉を閉ざしたままだった。
273職人志望:02/11/04 02:21 ID:ft2rPvyS
……ツナギ部分にしては、長スギ、クドすぎ。
個人的に、凌辱直後とか翌日の描写ってのがスキなんすよ。ムズカシイけど。
美佐子サンがウダウダ悩むのは、このあたりまでなんで。
以後は、もう少しスンナリと話が進んでいく……はずだ。はずだとイイな。

ただ、こんな引きですが、次がセカンド凌辱というわけではないのです。
スミマセン。
274名無しさん@ピンキー:02/11/04 02:22 ID:f6KEZFSC
>>職人志望さん
毎回精力的にありがとうございます。
今から早速読んでみますね!!
275名無しさん@ピンキー:02/11/04 09:55 ID:dIYH4fOO
>>273
んん、グッジョブ!

>個人的に、凌辱直後とか翌日の描写ってのがスキなんすよ。

わははは、貴公、いい趣味をしているw
続きも頼むぜ。
276名無しさん@ピンキー:02/11/04 09:57 ID:dIYH4fOO
>>246
>今月中にはうぷできると思うよ。

隊長!
今月はまだ始まったばかりであります! 長すぎます!w
277名無しさん@ピンキー :02/11/06 13:43 ID:FzybLT0F
            __      ほ
        '⌒K8'´    ` 、   し
      /  , 〃/ /       ヽ  ゅ
     ,  〃l i| リノノノリ))ヾヽ!
      '~   l !l l' ┃ ┃〈 !リ
        ゙ 、!l|、_ lフ /ム!
        /,ベィ j〉ー-ァ l〉
       ,.-=/// f ´" l|_j ~" ヽ
     //∧/ !   [ HINA ] ゙.
    ' 〃 ,' ll  i   ____ i
   i |  ! l|  レ'ィ' 二二二二ヽ
   〔El]  ! ll  ! !   ̄ ̄ ̄ ̄ !
  、_人.ヽ_ム.. ゙、 ヾ ヽ _____ノ
278名無しさん@ピンキー :02/11/07 01:55 ID:3tVrdXUD
2ch専用プラウザでしか、アクセスできなくなったせいか
SS神達も含めて、カキコが急に減ったな。
279名無しさん@ピンキー :02/11/08 13:58 ID:bj13rpOt
IEの人のためにage
280名無しさん@ピンキー:02/11/08 14:03 ID:uGHJfKWU
Operaもアクセスできないけど何で?
281名無しさん@ピンキー :02/11/08 14:15 ID:bj13rpOt
PINKTOWERという広告ページに跳ばされる人は
ここで2ch専用ブラウザを入手しましょう

http://www.monazilla.org/
282名無しさん@ピンキー :02/11/09 00:51 ID:vzSwfORd
現在read.cgiを停止中です。

そのため、InternetExplorerなどの通常のWebブラウザでは
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また、以下のサイトも併用すると効果的です。
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なお、read.cgiが止まっているのは過去ログのHTML化作業中・スクリプト荒らし対策など
なんらかの理由があってのことですので、1週間程度この状態が続くことが予想されますので、
慌てず騒がず復旧を待ちましょう。
283名無しさん@ピンキー:02/11/09 17:52 ID:s0FSoCq0
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284抜き:02/11/09 18:06 ID:1CXjz35p
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285名無しさん@ピンキー :02/11/10 03:07 ID:zxdWRlfX
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286名無しさん@ピンキー:02/11/10 19:56 ID:biW8+W59
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現在、curry,game,school,www2.bbspink 鯖は過負荷のためread.cgi停止中です。

IE/Netscape/Operaなどのブラウザからでは、下の方にあるスレッドを読む、「全部読む」などができません。

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復旧するまで気長にお待ちください。
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287名無しさん@ピンキー:02/11/10 19:59 ID:yM2u6HzJ
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288名無しさん@ピンキー:02/11/11 01:08 ID:Jkxe5Xl8
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あげてても広告ばかりだし。
289名無しさん@ピンキー:02/11/11 01:11 ID:la5GEPuh
こんな状況でも広告だけは変わらず貼りつくんだなw
290名無しさん@ピンキー:02/11/11 09:44 ID:cVTSBr+o
今は大丈夫みたいだが???
291名無しさん@ピンキー :02/11/11 10:09 ID:Dswf6n9m
本当だIEからでもいける。
SS神達戻ってきてくれ~
292職人志望:02/11/11 20:19 ID:rDZVy6ub
祝・復旧。続き上げさせていただくっす。
でも、また地味なパートだから、お祝いにはならんかも。
293職人志望:02/11/11 20:20 ID:rDZVy6ub
八十八学園。三年B組の教室。
昼休みなのだが、どこか閑散とした雰囲気があった。
三年のこの時期には基本的に自由登校となり、出席している生徒の数は半分ほどだ。
その中に、唯と竜之介の姿もある。
竜之介は自分の席について、机の上に弁当をひろげている。昼休みなのだから、当然なことである。
しかし、弁当箱の横に分厚い参考書も開かれているというのが、
かつての彼を知るものにとっては、異常な光景であった。
まあ、それも二週間も続けて見せられれば、だいぶ慣れてはきたけれども。
竜之介の表情は真剣そのものだ。視線は開いたページに固定されている。
機械的に箸をつける弁当箱の中身は、まだ半分以上も残っている。
その没入の気色が、周囲のものたちに緊張を強いて、交わす声を潜めさせているのだった。
と、席を立って竜之介へと歩み寄るものがあった。唯である。
途端に集まる注視には気づかぬふりで、唯は竜之介の傍らに立ち、声をかけた。
「竜之介くん」
「………………ん?」
けっこうな時差を置いて、竜之介がようやく顔を上げた。
「お昼休み、終わっちゃうよ」
「……やや? いかん」
言われて時計を見た竜之介、昼休みが残り十分ほどしかないことに気づくと、テキストを閉じて、
猛然と弁当をかっこみ始めた。
ホッと、室内の緊張が解けて、ざわめきはじめる。
それがおかしくて、唯はクスリと笑った。
294職人志望:02/11/11 20:21 ID:rDZVy6ub
竜之介が進学の意志を表明したのが、二週間前。
それ以後の彼の劇的な変身ぶりは、衝撃となって八十八学園を駆け抜けた。大袈裟ではない。
ある初老の物理教師など、竜之介の本気を理解すると、
「教師生活二十五年、これほど感動したことはないいっ!」
と感泣したとか。
その思いは、他の教師たちも同様であったようで、早速竜之介への万全のバックアップ体制が敷かれることとなった。
いくら竜之介の決意が固く真剣なものであっても。なにしろ、これまでがこれまでである。
もとより、卒業後の浪人暮らしは確定しているが、現状では予備校の授業にもついていけない。
竜之介もそれは自覚しているから、連日閉門ギリギリまで教室に居残って自主的な補習を行っているのだが。
その助けとして、さまざまな課題や小テストの類が、担任の片桐先生を介して回ってくるのだった。
それらの心遣いに、竜之介も最大限の努力をもって応えている。
八十八学園一の問題児は、いまや学園一のガリ勉生徒と変貌しているのであった。

「ふー、食った食った」
本気でとりかかれば、あっという間に弁当はカラになった。満足そうに息をつく竜之介に、
「美味しかった?」
傍らに立ったまま見守っていた唯が尋ねる。最近は唯が弁当を作っているからだったが。
しかし、なにかに気をとられてでもいなければ、素直に答える竜之介ではない。
スッとぼけて弁当箱を片していたが、ふと思い至ったふうに唯を見上げて、
「美佐子さん、まだ調子が悪いのかな?」
軽く眉を寄せて、そんなことを訊いた。
「……うん。そうみたい」
唯も表情を曇らせて、頷いた。竜之介が何故美佐子のことを言い出したのかも察しがつく。
295職人志望:02/11/11 20:22 ID:rDZVy6ub
ここのところ、唯は弁当作りの他にも、さまざまな家事を代替わりしていた。
二週間前に突然倒れて以来、どうも本調子ではなさそうな美佐子を気遣ってのことである。
「お母さんは、大丈夫だって言ってるけど。すごく疲れてるように見える」
「そうだよなあ……」
唯の言うことは、竜之介も感じていたことだった。
最近の美佐子は行動の端々に、重い疲労を滲ませているように思えるのだ。
ボンヤリと考えこんでいる姿もしばしば見かけるようになった。
「やっぱり、一度医者に診てもらったほうが、いいんじゃないか?」
「唯もそう言ってるんだけど……」
しかし、そんな時には、美佐子は笑って「心配ないから」と済ませてしまうのだった。
「うーん。唯、おまえさあ、放課後俺につきあってないで、早く帰ってさ、
 少し店の方も手伝ったら?」
唯は連日教室に残って課題をこなす竜之介に付き添っていた。解らないところを教えてもらったりして、
竜之介としても多いに助かっているのだが。
「うん、それも言ったんだよ。でも、お母さん必要ないって。学校に通えるのもあと少しなんだからって」
正確には『竜之介くんと一緒に学校に通えるのも』と美佐子は言ったのだ。
それは現在の状況にかなりの幸福を感じている唯の弱いところを突いていたのである。
「それに……お母さん……」
「うん?」
「体調の問題だけじゃなくて、なにか、悩みがあるんじゃないかなって」
「な、悩みって?」
ドキリとする竜之介。
「それは、わからないけど。でも、暗い顔で考えこんでることが多いし、最近」
「そ、そうなんだ」
美佐子の変調が、心理的な要因からだとすれば、竜之介としては触れたくない問題なのだった。
特に唯の前では。
296職人志望:02/11/11 20:22 ID:rDZVy6ub
その時、竜之介を助けるように予鈴が鳴った。
直後騒がしい一団が、ドヤドヤと教室に入ってきた。
三名の男子生徒で、いずれも制服を着崩して髪を染めた、いわゆる不良っぽい連中である。
この手合が、この時期に登校しているのは、出席の帳尻を合わせるためだった。
日頃からやかましい連中だったが、それにしてもやけに昂揚しているようすだ。
「お、竜之介。昼休みもマジメに勉強か」
ひとりが、竜之介の机に置かれたままの参考書に目を止めて、近づいてきた。
「相変わらずの異常事態だな」
「この世の終わりも近い」
好き勝手なことを言ってるが、揶揄や嫌味という調子ではなかった。
竜之介の、ある女生徒が評したところの“ニュートラルな性格”が、この手の連中とも
親交を結ばせていたのだ。
「うるさいですよ、キミたち」
真面目くさった顔と口調を作って、竜之介が答えた。
「学校は、勉強するための場所ではありませんか」
「や、やめれえっ」
「気色が悪すぎる」
「そのように騒がれては、勉学の邪魔ですよ」
「やめろというに」
「そうだ! そんなことより、聞け! 竜之介」
「そうそう。久々に面白いネタだぜ」
勢いこんで、身を乗り出してくる。
どうせ、ロクな話じゃないな、とあたりをつけながらも。
竜之介は、唯が自分の席に戻っているのを確認して、聞く態度をとった。
297職人志望:02/11/11 20:23 ID:rDZVy6ub
「昼メシにさ、『珍々軒』にラーメン食いに行ったんだけど」
「キミたち、それは校則違反ですヨ」
「もう、それはええっちゅうに」
竜之介も、いい加減飽きてきたので、口調を素に戻した。
「で? 突然『珍々軒』のラーメンが超絶美味に変わってたとか?」
「イヤ、相変わらずマズかった」
「じゃあ、行くなよ。わざわざ」
「うーん、マズいとわかっていても、時々無性に食いたくなるんだよなあ」
「あれは謎だな」
「おい、話が進んでねえぞ」
「そう、珍々のマズいラーメンのことは、どうでもいいんだ。問題は、その帰り道よ」
「天道に見つかって、殴られたとか?」
「そんなヘマはしねえよ。つーか、それのどこが面白い話なんだよ」
「竜之介、おまえは黙って聞け」
「校門の前によ、ゴツい外車が停まってたんだけど」
「ホントは、行く時にも目についてたんだよな」
「これがまた、全面マスキングで、いかにも怪しいクルマなわけよ」
「……ふーん。それが?」
「それがって、おまえ、そんな場違いなクルマが停まってたら、興味がわくだろが」
「そうかあ?」
「とにかく! これは調査の必要があると思ったね」
298職人志望:02/11/11 20:25 ID:rDZVy6ub
「調査って?」
すでに耳を貸したことを後悔しながら、竜之介が訊いた。
「そりゃあ、おまえ、こっそり忍びよってさ」
「こう、身を低くしてな」
「……ヒマだねえ、キミたちも」
「フフン」
「フフン」
「なんだよ? その勝ち誇った顔は」
「ヤってたぞ」
「はあ?」
「だ・か・ら。中で、どこぞのカップルが真っ最中だったの」
「いわゆるひとつの、カーセックスだよ」
「中で、って、見えないんだろ?」
「近くに寄ったらハッキリ聞こえたよ。ハンハンあえいでる女の声が」
「これがまた、イロっぽい声でよう。思い出してもタマんねえよ」
「学校の真ん前で? なんでわざわざ、そんな場所で」
「それは、そういうプレイだってことでしょうが」
「わざと人目がある場所でな」
「マニアなカップルだな。そういうシチュの方が燃えるってこった」
「ふうん……」
「ビミョーに揺れてたもの、車体が」
「嘘くさ! 揺れるかあ?」
「イヤ、マジマジ、マジで。なあ?」
「うん、ユサユサしてたな」
「ホントかよ……」
299職人志望:02/11/11 20:27 ID:rDZVy6ub
「でもさ、なんか女の方はイヤがってたっぽくねえ? “あん、やめて、こんなところで”ってさ」
「声色はヤメれ。でも、確かにそんな感じもあったな」
「どうだか。なんだかんだ言っても、あんな場所でヤラせてるんだからな。インランな女じゃん?」
「でも、声はエカッたよう。“アアン、イヤン”って」
「だから、声マネはやめろって! せっかく耳に焼きつけたのに、
 おまえの声と混ざったら、どうしてくれる」
「いーじゃん、俺の声をオカズにすれば。許可するぜ」
三人組は、竜之介を置き去りにして、勝手に盛り上がっていく。
「ありゃ、不倫だな」
「確かに、秘密っぽい雰囲気がありましたな。ハイトクテキ、ってやつ?」
「いかにも、オトナの女って声だったしな」
「…ンププ。どうする? 実はおまえん家のカアちゃんだったら?」
「なんで、ウチのオカンが出てくるんだよ!?」
「やめろよう。せっかくのネタが台無しになるよう」
「おまえも! なんだよ、それは!?」
「ギャハハ。でも、マジであるかも。わざわざ学校の前でってのがさ。
 すぐそこで子供が勉強してるのに、って罪悪感が燃えるわけだよ」
「うひょー、マニアック」
「そう、マニアックすぎるよ、おまえのカアちゃん」
「やめろよう」
「だから! なんでおまえが…」
300職人志望:02/11/11 20:27 ID:rDZVy6ub
聞いてるだけで頭が悪くなるような会話が延々と繰り広げられる。
「…………」
竜之介は、つくづくと自分の交友関係への疑問を深めていたのだが。
始業のチャイムが鳴ったのをしおに三人を追い払った。
「ほら、席に戻れよ」
「どうせ次も自習だろ? いいじゃん」
「いくないっつーの」
「まあ、しょうがない。竜之介の勉学の邪魔をするのも悪いよ」
「竜之介、つづきは、後でまたジックリ聞かせてやるから」
「もう、いらん」
すげなく答えて。悪友どもが、それぞれのの席に戻っていくのにヤレヤレと息をついて。
竜之介は、すぐに気持ちを切り替えて、机上の参考書を開いた。
301職人志望:02/11/11 20:28 ID:rDZVy6ub
……この時期の午後六時というのは、かなり暗くなっている。
竜之介と唯は、今日も閉門ギリギリに学校を出た。
「あーあ」
大きく伸びをして、グリグリと凝った首をまわす竜之介。
ふと隣りを歩く唯が、やけに周囲を気にしているようすに気づいた。
「どうした?」
「あ、うん。いないね」
「なにが?」
「怪しい車」
「怪しい、車? …………ああ」
少し考えて、昼に悪友たちが話していたことかと思い出した。
そりゃ、五時間以上も前の話なんだから、いないだろうと思いつつ、
「聞いてたのか?」
「あんな大騒ぎしてたら、イヤでも聞こえちゃうよ」
「トホホ……」
やはり恥ずかしいことになってたなあ、といまさらにショボくれる竜之介。
「でも、ホントなのかな、あの話?」
「うーん? まあ、作り話ってこともないだろうけど」
「じゃ、じゃあ、ホントにこんな場所で、その……」
「なに赤くなってんだよ」
「ち、違うよ!」
ますます顔を赤くしながら否定する。
302職人志望:02/11/11 20:29 ID:rDZVy6ub
それでいて、唯はなおもその話題にこだわった。
「でも、信じられないよ。そんな場所でなんて…」
「解らなくていいよ。唯には、まだ早い」
「あ、また子供扱いしてる」
「実際、子供だろうが」
「もう!」
プイ、とふくれっ面を作って、そっぽを向いたが。
唯は、すぐにまた竜之介に振り向いて、顔を覗きこむようにして、
「……じゃあ、竜之介くんは、そういうことしたいと思うの?」
「はあ?」
いきなりなにを言い出すのか、と呆れた表情を浮かべながらも。
唯なりの論理の展開を、なんとなく理解できてしまう竜之介。
つまりは、子供の唯には理解できないことで、唯を子供扱いする竜之介には
理解できるというなら、それに対する見解を述べよ、と。
(唯って、時々こういう会話の進め方するんだよなあ)
「どうなの?」
なんで、そんなムキになるか? と思いつつも、どうかな? と自問してみる竜之介。
「……別に、そんな状況でしてみたいとは思わないなあ」
「そうなの?」
何故か、ホッと安堵したようすの唯。
一方の竜之介はというと、
(それに、美佐子さんは絶対そんなこと許してくれるわけないもんなあ)
などと考えていたのだが。
「竜之介くんて、意外と普通なんだね」
「なんじゃそりゃ?」
「フフフ」
まさか、隣りを歩く同い年の男の子が、自分の母親と愛を誓い合ってBまでいったなどとは
知らずに、そんなことを言う唯であった。
303職人志望:02/11/11 20:30 ID:rDZVy6ub
……などと、今日はいささか妙な会話を交わしながら。
いつもの帰宅路を進んで、家の近所まで辿り着いた時。
「お、竜ちゃん」
向こうから歩いてきた、犬の散歩中の老人が声を掛けてきた。
「あ、こんばんわ」
見知った顔に竜之介が頭を下げ、唯も、こんばんわとペコリとお辞儀をした。
「はい、こんばんわ」
ニッコリ笑った、この人の良さそうな老人は、この町内の町会長で。
竜之介のことも生まれた時から知っているし、竜之介がヤンチャ坊主だった頃には、
なにかと世話をかけた人物だ。
「聞いたよ、竜ちゃん、大学に行くんだって? それで毎日、こんな時間まで頑張ってるんだろ?」
「ええ、まあ…」
「やっぱり、お父さんと同じ道に進むのかい?」
「いや、まあ……」
弱ったなあ、とか内心で思う竜之介。この手のひとにありがちなことだが、この町会長、話好きなのだった。
案の定、ついこないだまでハナ垂らして走りまわってたのに、とか、私も年をとるはずだ、とか、
これで亡くなった竜之介の母親も安心してるだろう、とか。
次々と持ち出して、竜之介に、どうやって逃げようか、と思案させたのだったが、
「っと、いけない。こんな話をするために呼び止めたんじゃないんだった」
我に返った町会長は、急に顔を曇らせて、
「いや、聞きたかったのは、美佐子さんのことなんだけどね」
「美佐子さん、ですか?」
この町会長は、立場柄、竜之介の家の複雑な事情も知っていて、なにかと気にかけてくれていた。
ついでに言うと、『憩』の数少ない常連客でもあった。
304職人志望:02/11/11 20:31 ID:rDZVy6ub
「そう。美佐子さん、体の具合でも悪いのかい?」
心配そうに尋ねる町会長に、え? と聞き返して、竜之介は唯と顔を見合わせた。
美佐子の体調については、竜之介たちも心配していたことだが。
「どうして、それを?」
「どうして、って。最近しょっちゅう店を休んでるじゃないか」
「えっ!?」
虚をつかれた表情になって、竜之介は反射的に『憩』の方を見やった。
『憩』は灯りを落としている。それはこの時間であれば当然のことで。
連日、帰りはこの時間帯になっていた唯と竜之介だから、なんの異変も感じられなかったわけだが。
「憩……休んでるんですか?」
「え、知らなかったのかい? 唯ちゃんも?」
唯も竜之介と同様に驚愕しているのを見て、戸惑う町会長。
「そんなに、頻繁にですか?」
「二日に一日は、閉まってるよ。今日もそうだったな。いや、あの美佐子さんが店を休むくらいだから、
 よっぽどのことだと思ってさ。二、三日前に店を開けてた時に聞いてみたんだけどね」
「美佐子さんは…なんて?」
「それがさ、ちょっと所用でとか、それくらいのことしか言ってくれないんだな。
 だから、竜ちゃんたちに聞いてみようと思ったんだけどね。
 でも、竜ちゃんや唯ちゃんも知らなかったとはなあ…」
その時、唯が突然踵をかえして、家へと駆け出していった。
竜之介も、すぐにその後を追いたい気持ちだったが、
「あ、あの、美佐子さんがあまり体調が良くないのは、確かなんですけど」
「やっぱり、そうか。うん、顔色も良くないようだったしなあ」
「はい、あの、俺も、これから、よく聞いてみますから」
「ああ。なんかあったらさ、いつでも相談にのるから」
「はい、ありがとうございます」
手早く話をまとめて、頭をひとつ下げると、全速力で家へと向かった。
305職人志望:02/11/11 20:32 ID:rDZVy6ub
リヴィングで、唯が激しく美佐子に詰め寄っていた。
「ひどいじゃない! なんで、私たちになにも言ってくれないの?
 そんなに具合が悪いなんて、知らなかったから」
「唯、おねがい、落ち着いて…」
美佐子は困惑顔で宥めようとするのだが、激昂した唯は聞かなかった。
竜之介はそんな唯を見て、逆に冷静さを取り戻した。
「唯、まずは美佐子さんの話を聞こうよ」
落ち着いた言葉を掛けて、唯を鎮めて。しかし、正面から美佐子を見つめた竜之介の目は、
もう誤魔化しは許さないといった意志がこめられていた。
「……ごめんなさい。余計な心配をかけてしまったけど。本当に、そういうことじゃないのよ。
 最近、店を休んでいたのは、調子が悪いからじゃないの」
落ち着いた態度で、美佐子は説明を始めた。その言葉は淀みなかった。
「私の知り合いが、病気をして入院しているの。しばらくは寝たきりの状態になるんだけど。
 そのひと、独り暮らしで、近くに親類もいないものだから」
「……それで、お母さんが看病に?」
「ええ。いろいろ不自由をしてるようだから……」
「なあんだ」
唯が脱力する。確かに聞いてみれば、なあんだというような話だった。
「それならそうと、言ってくれればよかったのに」
「ごめんね。逆に心配をかけるかと思ったんだけど……お母さん、間違えてたわね」
「そうだよう。町会長のおじさんに聞かされて、ホントにビックリしたんだから。
 ねえ、おにいちゃん?」
「うん。やっぱり教えといてほしかったな」
「ごめんなさい。本当に」
繰り返して、美佐子は頭を下げた。
306職人志望:02/11/11 20:32 ID:rDZVy6ub
「まあ、美佐子さん面倒見がいいから、頼られちゃうんじゃないかな」
竜之介は、そうフォロウしたが、その後に、
「でも、無理はしないでよ。美佐子さんも体が本調子じゃないのは確かだろう?」
真剣な口調で、そう念を押した。
「そうだよ。家のことは、唯も手伝うけど」
「ありがとう。気をつけるわ」
美佐子が微笑んで、この話題は決着した。
「さあ、食事にしましょう。ふたりとも、着替えてらっしゃい」
美佐子はキッチンに、唯と竜之介は自分の部屋へと散っていく。
唯と竜之介の表情は晴れている。美佐子の釈明に完全に納得して。
小さな騒動は、あっさりと落着した。
唯と竜之介には、美佐子を疑う理由はなにもなかったから。
キッチンに立つ美佐子の顔に深い慙愧が浮かんでいたことを知るよしもなかったから。
307職人志望:02/11/11 20:35 ID:rDZVy6ub
……と、今日はこんなところまでで。
ジンワリになってるかなあ? あざといかしら。
そりでわ、また。
308名無しさん@ピンキー:02/11/11 23:20 ID:ToR+IgNM
面白いです。視点が新鮮ですね。
結局竜之介は気付きもしないまま、唯まで喰われてしまうんでしょうか。
そろそろ思い切りネチッこいの、期待してます。
309名無しさん@ピンキー:02/11/12 00:15 ID:bVbpAkwI
>>307
>ジンワリになってるかなあ?

キてますキてます!

いい展開ですねぇ
ゴテゴテのトンカツ喰ってる間に、
一口つまんだタクワンみたいでイイ!
310名無しさん@ピンキー:02/11/12 09:27 ID:jrLZxafe
職人志望様、さっそくup ご苦労様です。
この調子で続きよろしくお願いします。
311名無しさん@ピンキー:02/11/12 10:58 ID:WwOCa4N4
唯まで喰われちゃったら最高なんだけどナー
どうなるんでしょ
312名無しさん@ピンキー :02/11/12 12:32 ID:bqdt/89+
こうゆうジンワリとした展開って好き。
313名無しさん@ピンキー:02/11/12 13:21 ID:4sd4G3AM
> 「近くに寄ったらハッキリ聞こえたよ。ハンハンあえいでる女の声が」
> 「これがまた、イロっぽい声でよう。思い出してもタマんねえよ」

> 「ビミョーに揺れてたもの、車体が」
> 「嘘くさ! 揺れるかあ?」
> 「イヤ、マジマジ、マジで。なあ?」

ここ、何度も読み返してしまいますたw
この展開ばっかだと飽きるけど、
次にドッカーンとくるには申し分なしw
314名無しさん@ピンキー :02/11/13 03:09 ID:0B3nybdo
神降臨の予感
315名無しさん@ピンキー:02/11/13 19:16 ID:/YfQ5fLG
(゚Д゚)<なりたて様、ドコ?
316職人志望:02/11/13 23:55 ID:NnIdaGnm
……すんません。神でもなりたてさんでもなくて、また私です。
続きです。一応エロ・シーンだけど……。
ドカーンにはなってないすね。スンマセン。
317職人志望:02/11/13 23:56 ID:NnIdaGnm
「なるほどねえ」
男が、感心と呆れをない交ぜにした口調で言った。
「しかし、よくもまあ、咄嗟にそんな嘘八百を並べられたもんだな。これだから、女はコワイ」
「…………」
嘲けりが耳元に吹きかけられる。
美佐子は唇を噛んで、それに耐えた。
前夜、唯たちについた嘘。しかし、まったくあの場での思いつきだったわけでもない。
いずれ、自分から持ち出して予防線を張っておかなくては、と漠然と考えていた口実だった。
大事な家族に、最愛の者たちに対して、そんな偽りを用意していたこと、
そして、実際にそれが役に立ってしまったことが、悲しくて情けない。
自分は、いったいなにをしているのだろう?
「美佐子がそうまでして作った貴重な時間だ。俺もせいぜい張り切らないとな」
「そんなことじゃ、ない、わ」
美佐子が背後に振り向く。男の顔はすぐそこにあった。
美佐子の息が弾むのは、服の前をはだけて、裸の胸を男の玩弄にゆだねているからだ。
男の車の中。後部座席で。深く座った男の両脚に尻を挟まれるようにして。
着衣の乱れは、いまのところ上だけ。いまさら、背後の男に対して恥じるほどの姿でもないが。
それでも、美佐子が羞恥と焦慮に炙られてしまうのは、状況のせいだった。
車は前日と同様に、八十八学園の校門前に停められていた。
318職人志望:02/11/13 23:56 ID:NnIdaGnm
昨日よりも時間は遅い。午後三時を三十分ほど回ったところだ。
下校時間ということである。すでに、校門から出てくる生徒の流れが出来ている。
美佐子は、努めて窓の外を見ないようにしながら、男に訴えた。
「そんなことじゃない。こんな、毎日のように呼び出すのは、やめてと言ってるの」
美佐子の胸には、昨日の突如飛び込んできた唯に激しく詰問された時の、血の気の引くような
思いがまざまざと蘇っていた。
「ふむ。一応は誤魔化したが、これ以上疑われたくないってか」
「そ、そうよ」
「フフ、ガキどもに気づかれないように、上手いことやっていこうと」
「そういう意味じゃ…アッ」
男の勝手な言いぐさに激しかけた声は、乳房に這う指が軽く力を強めただけで、
鼻にかかった息に変わってしまう。
そのザマを嗤って、
「俺はそうしてもいいんだぜ」
「……え?」
「だから。逢うのを控えてもいいっての」
男は意外な言葉で美佐子を驚かせたが。そのまま口を美佐子の耳に寄せて、
「けどよ。おまえは、それでいいのかよ? 俺との逢瀬が減って、我慢できるのか?」
「……な、なにを…」
耳にかかる息にビクビクと肩を震わせながら、美佐子は否定しようとする。
「私は、脅迫され、て……」
「脅迫? ああ、写真のことかよ」
しらじらしい言葉に、美佐子は上気した面を男に向けて、恨みのこもった眼で睨んだ。
「あなたは、私を騙したわ。一度きりだと言ったのに」
319職人志望:02/11/13 23:57 ID:NnIdaGnm
「まあ、そういうことになるかね」
ニヤニヤと。
「けどよ、最初の時のおまえは、二度目はない、約束を破ったら今度は警察沙汰にするって、
 えらい迫力で言い切ってたよなあ? 俺も、こいつは本気だと思ったから、ちゃんと
 録音テープを返したんだが」
「同じことじゃないの! あんな写真を」
「だからさ。同じことなら、なんで言ってた通り、警察に訴えなかったんだ?」
「……それ、は……」
「正直なとこ、あんまりアッサリとおまえが折れたんで、拍子ぬけしたくらいだぜ。
 確かにキツい写真だが、少なくとも竜之介のガキにゃあ害は及ばないネタだ。
 おまえの性格からして、録音テープほどの強制力はないと思ってたんでな」
「…………」
美佐子は言葉を失う。男の言い分が正鵠を射ていたからだ。
なぜ自分は、二度目の脅迫を受けた時に、当初の決意通りに警察に届け出なかったのか。
確かに、美佐子が撮られた写真は酷い内容で、数枚を見せられただけで目を背けずにはいられなかったが。
それでも、そのままなし崩しに男の意に応じてしまうことの愚かしさは、解っていたはずなのに。
そんな羽目に陥るくらいならば、と一時の恥に耐えるだけの覚悟を、自分は抱いていたはずなのに。
実際には。男が言うように、あまりにも簡単に二度目の蹂躙を受け入れてしまった。
その後は、恐れていた通りに、ズルズルと男の言いなりになって。連日のように呼び出されては
身体を与えているのだ。あれほど情熱を注いでいた店の経営も投げ出して。
改めて顧れば、茫然としてしまう。どうしてこんなにも狂った状況の中に落ちこんでしまったのか。
320職人志望:02/11/13 23:59 ID:NnIdaGnm
男は間近の距離から、冷酷な目で美佐子の懊悩する横顔を眺めている。
なにをいまさら、と美佐子の煩悶を嗤う。
最初の日、あのホテルの一室での攻防で雌雄は決してしまっているのだと。
美佐子を屈服させ、男に従うことを選ばせているのは、痴態を収めた写真ではなく、
あの日、男によって植えつけられた記憶なのだと。
男には解っていた。すべて予定通りのことであったから。
すべてが思惑通りで、男には焦る必要などまったくない。だから、今は美佐子の詮無き葛藤を楽しむ。
「まあ、そう悩むなって。いいじゃねえか、美佐子はヤバい写真を俺に握られて、
 仕方なく言いなりになってる。そういうことにしておけば」
「しておけば、って、そんな…」
「おっと、こりゃあ口がスベったね。それは言わない約束、ってやつだわな」
「私はっ」
「だから、解ってるって。おまえは脅迫されて、イヤイヤ俺に従ってる。
 もちろん、こんなことは本当はイヤでたまらない。俺に触られるだけで虫唾が走る」
捲くし立てながら、豊かな乳肉に食いこんだ指が、固く尖っている乳首を摘みあげる。
「アッ、や、」
「こんなに乳首をビンビンにしてるのも、嫌悪からだ。決して感じてるからじゃない。
 俺なんかの手で感じるわけがない」
「や、やめ、アァッ」
玄妙な動きで、ひとしきり美佐子を囀らせてから、男は乳房から手を離して、
美佐子の背を前へと押しやった。
運転席のヘッド・レストを抱くようにして、男の顔前に尻を突き出す姿勢をとらされる美佐子。
すぐにスカートがめくり上げられ、剥き出された尻肌がうそ寒さを感じる。
321職人志望:02/11/14 00:00 ID:obYXZLkC
「今日はブルーか。これもよく似合ってるぜ」
ムチッと張りつめた尻の半ばを覆ったネイビー・ブルーのショーツの、深い切れ目に食い込んだ
部分を、指先で引っ張りながら、男が言う。
「なんだかんだ言いながら、こうやって洒落こんできてくれるんだから、嬉しいねえ」
「…………」
ボソボソと、聞き取れない声で美佐子が呟く。男の言葉を否定しているようだが。
しかし、男から呼び出される際に美佐子が着けている下着は、常にそれなりに見映えのいいものだった。
(たとえ、憎い男でも、くたびれたパンツは見せたくないってか。女ゴコロってやつかね)
しかし、それは“媚び”に違いないのだ。いまだ美佐子は理解していないかもしれないが。
だが、男はここでもあえてそれを追及しようとはしなかった。
「解ってるって。別に俺のための履いてきてるわけじゃないってんだろ?
 ま、普段着にしちゃあずいぶん上等で、ちいと扇情的な気はするが。
 年はとっても、そういうのに気を遣うってのはイイんじゃないの」
下卑た揶揄で美佐子を黙らせて。男は、生白く輝く尻に手を這わせた。
ビクッと、豊満な尻が緊張して、艶美な曲線が固くしこった。
男はそれをほぐすように、熟尻の表面を撫でまわし、軽く揉みたてた。
「……フ……ウゥ……」
シートの向こうに顔を落とすようにした美佐子が、鼻にかかった息を洩らす。
腰がしなって、ゆるやかな愛撫を受ける豊臀が揺れる。忌避ではなく、甘受の気色を見せて。
いつもながらの、過敏ともいえる美佐子の反応を、男は嘲笑った。
322職人志望:02/11/14 00:01 ID:obYXZLkC
男の冷笑を背中に感じて。
笑われても仕方がないようなザマを見せていることを自覚して、美佐子は己が情けなさに歯噛みする。
それでも、腰の蠢きを止めることができない。
臀肉の表面を羽毛で刷くような、男の指の感触がたまらない。
獣のような荒々しさで美佐子を貪るかと思えば、このような繊細な技巧をも男は兼ね備えていて。
その悪どいまでの巧緻と執拗さに、美佐子の肉体は一度も抗えたことがない。
(……あぁ……どうして……)
どうして、自分の官能はこんなにも脆いのだろうか?
美佐子を悩乱させる男の指が、ショーツにかかって。ツルリと剥き下ろした。
「あ、いや」
完全に裸にされた臀を落として、男の視線から逃がそうとする。
露わにされた部分が、どんな状態になっているか自覚できたから。
しかし、そのまま隠しきれるものではないとも解っているのだから、そんな行為も無意識の
媚態に過ぎないのかもしれない。
果たして、男の手が双臀を掴みしめて、わずかに力を入れれば、美佐子の下半身はおとなしく
それに応じて、再び白い生尻を男の眼前へと差し上げた。
内腿を軽くはたくことで無言の指示を送られれば、それにも素直に従って、おずおずと両脚を広げていく。
抵抗は無意味で時間を無駄にするだけだという諦めのせいではなく。
ほとんど無条件に、美佐子の身体は男の意のままに動いていく。
323職人志望:02/11/14 00:02 ID:obYXZLkC
「み、見ないで……」
弱い声で、そう訴えたのは、突き刺さる男の視線を秘裂に感じたからだが。
そう言いながらも、裸の尻を掲げた姿勢を崩しはしなかった。
「確かに、あんまり人目にゃあ晒せない有様だなあ。ベトベトだ」
呆れた口調が美佐子の胸を刺して、ブルッと厚い肉置をわななかせた。
そして、身も世もないような羞恥に炙られれば、さらにトロリと秘肉の奥から溢れるものが。
「けど、こいつは汗だよなあ? まさか、ちょいと乳とケツを撫でられたくらいで、
 妙な汁をタレ流すはずが……」
ネチっこく言葉で嬲りながら、男の指が肉厚な花弁に触れる。
ヒッと喉を鳴らして過剰な反応を示す美佐子。
男は充血した肉ビラをヌメ光らせる汁を指になすりとって、
「汗にしちゃあ、ちいと粘り気が強いようだが。……うーん、それに臭いもキツイなあ。
 こいつは、もうちょい検分の余地ありだな」
再び美佐子の秘肉へと伸ばされた手が、本格的な動きを開始する。
「フアァッ、アッ、アァッ」
親指が肉芽を剥き上げ、二指が濡れそぼる女肉を穿った。
たちまち美佐子は、陶然とした声を洩らし、フルフルと雄大な尻を揺すって、男の指戯を受け入れる。
どうして……この男の与える刺激はこんなにも鮮烈なのだろうか? 
男の指や舌には魔力じみた力があって、いつも美佐子の理性は容易く溶かされてしまう。
「ヒッ、あ、やっ、アアァ」
構えも備えも喪失して、男への嫌悪や憎しみさえも、この時には忘れ去って。
ただ美佐子は、舌ったらずな嬌声を上げて豊臀を躍らせる。
玩弄される女肉は、咥えこんだ男の指を離すまいとばかりに絞めつけ、次から次へと溢れ出る
女蜜が、指の挿送につれて、ジュブジュブと隠微な音を奏でる。
324職人志望:02/11/14 00:03 ID:obYXZLkC
「うーむ、美佐子の股座は汗っかきだなあ。どんどん粘り気や臭いも強くなってくるようだし」
これほどの崩壊の証しを美佐子から引き出しながら、なおも男は白々しい言葉で責める。
「な、嬲らないで……」
美佐子が血の色を昇らせた首をねじって、潤んだ眼を男に向けた。
いっそのこと、と口をつきかけた言葉を危うくのみこんで、
「ど、どこか……またホテルの部屋で……」
「ホテルで? どうしてほしいってんだ」
「こ、これ以上は、こんな場所では」
「さあて……」
日毎に、屈服までの時間を早めていく美佐子をせせら笑いながら、男は窓の外へ目を向けた。
帰宅する生徒の流れは、ポツポツとだが続いている。しかし、誰もこちらに目を向ける程度で、
広い車道を挟んだ向こう側の歩道を通り過ぎていく。
(いまいち、刺激にかけるな)
前日より生徒が多い時間帯なら、もっと面白くなるだろうという目論見は、ハズレてしまっている。
昨日は、結局この場で美佐子を犯すまでには至らなかった。
初の擬似露出プレイに激しい羞恥を示して、そのくせ昂ぶりを隠せない美佐子をいたぶることで
一応満足して、そのままホテルへと流れこんだのだった。
ホテルの部屋で、待ちわびたように男を受け入れた美佐子の狂いようは、これまでで一番だった。
その記憶にそそられて、今日もそういう展開に落ち着くか、と心を動かして。
(昨日の悪ガキどもでも、また現れてくれりゃあ面白くなると……うん?)
もう一度、未練がましく校門の方を見やった男の視線が、一点に止まった。
325職人志望:02/11/14 00:03 ID:obYXZLkC
(……クク、こりゃあまた。天の配剤ってやつか)
降ってわいた、願ってもない状況を活かそうと、男は手早くベルトを外して、
ズボンと下着を下ろした。
「い、いや、ダメよ」
男の不穏な動きに気づいた美佐子が、激しい狼狽を見せる。
「やめて! それだけは、こ、こんなところで」
必死な色で拒絶を訴えて、尻を引き寄せる男の手に抗おうとする。
振り向いた視界の中で、不気味に揺れる巨大な肉塊。
それは、自分の肉体を支配する男の魔力を象徴する存在だ。
その圧倒的な威力は、骨の髄まで叩きこまれている。
その灼鉄のような肉を突き入れられた瞬間に、すべての正気も理性も吹き飛ばされて、
狂ってしまう自分だと、いやというほど思い知らされている。
だから、美佐子は本気で恐れた。
こんな場所で―唯と竜之介が学ぶ学校の前で。こんな状況で―白昼の、すぐ傍を学生たちが通る車の中で。
それでも、逞しい肉に最奥まで抉られれば、噴き上がる声を堪える自信がなかったから。
しかし、剥き出しの臀肉に食い込んだ男の非情な手は、有無を言わさず美佐子の腰を下へと落とさせていく。
凶悪な姿を晒した屹立の上へと。
「いや、やめて、お願い」
美佐子の口は懸命に慈悲を乞うが。痺れたような身体は、悲しいほど弱い抵抗しか示さずに。
「ヒィッ!」
熱い矛先が蕩けた女肉に触れた瞬間には、感電したように総身を硬直させた。
ズブ、と巨大な肉傘がしとどな濡れに助けられて、狭隘な肉路に侵入をはたす。
そして、ズブズブと発熱したぬかるみの中を突き進む。
「クッ、アア……アハァ」
軋む肉の痛みすら、すでに馴染みの感覚で。苦痛さえが甘美で。
食いしばった美佐子の息は、すぐに鼻から抜けて。眉根がうっとりとほどけて。
「アッ、アア、いいっ!」
たった今までの拒絶を忘れ、ハッキリと快美をうたって。
ゆっくりと貫いてくる男に焦れたかのように、自ら臀を押し下げて、
「フン、ア、ウアアア」
深まる挿入に、啜り泣くような声を洩らして。長大な肉塊を根元まで呑みこんで、
子宮を突き上げられれば、ううむ、と生臭いうめきをたてた。
326職人志望:02/11/14 00:04 ID:obYXZLkC
「んア、深いぃ……」
シートに縋りついて、火照った顔を仰のかせる美佐子。
閉じられた目蓋に恍惚の色、結合の深さを確認する声には充足の気ぶり。
ズン、と男がひとつ突き上げた。
「アハァァッ」
重たい臀を弾ませた美佐子は、たちまちあられもない嬌声を迸らせて。
そして、ヘッド・レストに回した両腕で窮屈な姿勢を支えて、ゆっくりと臀を上下し始めた。
「ア……い、いいっ!」
「……ったく。これで、貞淑な未亡人のフリをしてたってんだから、笑わせるぜ」
いつものごとく、肉棒をブチこまれた途端に快楽を貪ることしか考えられなくなる美佐子を
冷然と見下して。男は再び車外へと目を向けた。
先ほど見止めたふたつの人影が、車道の向こうに立って、こちらを注視しているのを確認する。
ますます思い通りな展開に会心の笑みを浮かべて、男は美佐子の髪を掴んだ。
淫情にボケた美佐子の顔が、男の方へとネジ向けられる。
「はばかりもなくヨガリやがって。少しは場所がらを考えろや」
「そ、そん……だって、アッ、アアッ」
瞬時、美佐子の顔に羞恥と逡巡がよぎるが。その間もふりたくる臀の動きは止まらない。
「しょうがねえなあ。見ろや。あそこで、さっきからこっちを見てる学生がいるぜ。
 おまえのヨガリ声が聞こえたのかもな」
「……え、えっ?」
男の指摘に、さすがに冷水を浴びた思いで、窓の外を見やる美佐子。
確かに、車道の向こう側、通り過ぎていく生徒たちの流れの中に、
足を止めて、こちらを見ているふたつの人影があった。
「そういや、見覚えのある顔じゃねえか? あのふたり」
「…………」
男の補足を待つまでもなく、美佐子の顔は一気に蒼白となり、淫猥な身動ぎも止めて凍りついていた。
……この時間ならば、あのふたりが学校を出てくることはあるまいと。
それだけを唯一の救いと思っていたのに。
しかし、数m先から、ジッと不審げな視線を向けているのは、唯と竜之介に間違いなかった。
327職人志望:02/11/14 00:05 ID:obYXZLkC
「……でも、竜之介くん、本当によかったの?」
それは、共に校舎を出て校門へと向かう途中での会話。
「大丈夫だよ、一日くらい」
恒例の自主補習を取り止めて、早目に帰宅の途についたふたり。
やはり、前日に美佐子から聞かされた事情のことが気がかりで。
「だけど、この時間だと、お母さん、お友達の世話に出掛けてるんじゃないかな」
「だったら、俺たちで店を開けようか? コーヒーくらい、俺にも淹れられるぞ」
「ええ~? それは営業妨害になるんじゃない?」
「こいつは」
呑気な遣り取りのとおり、実際に何が出来るというあてがあるわけでもないのだが。
それでも、少しでも美佐子の手助けがしたくて、ふたりは久しぶりに明るいうちに校門を出た。
唯は、竜之介の口にした冗談に、ふたりで店を切りまわす自分たちの姿を想像して、
(いいかもしれない)
などと幸福そうな笑みを浮かべていたのだが。
不意に、その弾む足取りが止まった。
「……竜之介くん」
ひそめた声で呼ばれ、腕を引かれて。竜之介も唯の視線の先に停まった車の姿を見とめる。
「あの車って……」
「うん。昨日の話のやつみたいだな」
“ゴツイ外車”“全面マスキング”と、悪友どもの語っていたとおりの特徴。
「確かに、見るからに怪しいなあ」
見かけだけでなく、なんとも不穏で秘密めいた雰囲気を放っているように思えるのは、
前日に聞かされた話からの先入観だろうか?
(もしかして……いまもフラチな行為の最中なのか?)
そう疑えば、やはり興味をそそられてしまうけれど。
いかん、そんなものは唯の教育上好ましくない、とPTAのようなことを胸中に呟いて、
その場を離れようとした竜之介だったが。
「……あの車、家の近くで、何度か見かけたことがあるよ」
依然として不審車を凝視したまま、唯が呟いた言葉に、足を止められてしまった。
328職人志望:02/11/14 00:06 ID:obYXZLkC
「本当か、それ?」
「同じ車か、わからないけど。よく似てる。窓も黒かったし」
「いつ? いつ見たんだ」
「冬休みの間、かなあ。二、三回見たよ。見かけない車だなと思ったの」
「うむむ……」
改めて、険しい顔で車を睨んだ竜之介。
やおら、そちらへと向かって足を踏み出した。
「ちょっ!? ダメだよ、おにいちゃん!」
「唯は、そこにいろ」
慌てて引き止めようとする唯の手を振り払って、ゆっくりとだが躊躇なく、怪しい車へと歩み寄っていく。
周囲から最近の豹変ぶりを『大人になった』『落ち着いた』などと評されてはいても、
こういった無鉄砲な性格は変わっていないようだ。
とにかく、竜之介とすれば、この怪しさ満点な車が、自分たちの生活圏にまで出没していたらしい
と聞いて、捨て置きにはしておけなかったのである。
329職人志望:02/11/14 00:07 ID:obYXZLkC
……驚愕に固まっていた美佐子だったが、一歩一歩近づいてくる竜之介の姿に、パニック状態に陥った。
「い、いや……」
思わず高い悲鳴を上げかけて、慌てて口を押さえる。
男の股間に押しつけていた臀をもたげて結合を解こうとするが、くびれ腰をしっかと
掴んだ男の手が、それを許さなかった。
「お、おねがい!」
美佐子は蒼白な顔を振り向かせて、低めた声で必死に懇願した。
しかし、男は聞き入れない。逆に美佐子の臀を引き寄せて、挿入を極限まで深めた。
「ウゥ……ム……」
美佐子は懸命に口を引き結んで、洩れようとするうめきを堪えた。
その間にも、竜之介はどんどん近づいてくる。
(こ、来ないで!)
胸の中で叫びながら、美佐子は竜之介から眼を離すことが出来ない。怖くて出来なった。
と、不意に男が腰を掴んだ両手に力をこめて、美佐子の臀を回し始める。
ズッポリと咥えこんだ男根を中心に円を描くように。
「ウアアァッ!」
ギッチリと秘肉を満たしたモノに粘膜を攪拌されて、堪えきれぬ叫びが美佐子の口を衝く。
その声は、車まであと数歩という位置にまで接近していた竜之介の耳にも届いた。
驚いて足を止め、いっそう不審を強めた目で、車を眺めまわした。
330職人志望:02/11/14 00:08 ID:obYXZLkC
失態を犯した美佐子は、目の前が暗くなるのを感じた。
(聞かれた……! 気づかれた……!)
その思いこみに、錯乱しかけた時。
美佐子の背に覆い被さるようにして顔を寄せてきた男が、耳元に囁いた。
「まだ、バレちゃいねえよ。向こうからは見えないんだし。竜之介も、まさか愛しの美佐子サンが、
 こんなところで、男と乳くりあってるなんて思いもしないだろうからな」
例のごとくの嬲る言葉ではあったが、美佐子はそれに縋りついて崩壊しそうな自我を支えた。
涙を浮かべた目を、車外の竜之介に向けたまま、
「……お、おねがい、どうか、いまは、いまは……」
ほとんど聞き取れないような小さな声で、男に哀願する。
しかし、この絶好のシチュエーションを、男が手放すはずもなかった。
美佐子を宥めたのも、いまはまだ事実を暴露する気がなかっただけのこと。
「ただ、これ以上、はばかりのない声を聞かせたら、さすがに気づかれるかもしれねえなあ。
 せいぜい我慢しろや」
そう釘を刺して、今度は美佐子の臀を持ち上げては引き戻すという動きを開始した。
「…………っ!」
今度は、どうにか声を抑えることが出来た。
しかし、食いしばった口をほどけば、ただちに嬌声がこぼれてしまいそうで、
美佐子はもう男に中断を求めることもできなくなる。
竜之介は、まだ立ち去ろうとせず、美佐子を苦しめ続ける。
竜之介の存在と、女肉を抉る男の肉体と。
美佐子の意識と感覚は、そのふたつのものに占められ分断されていく
331職人志望:02/11/14 00:08 ID:obYXZLkC
男は、車外の竜之介の反応を窺いながら、慎重に挿送を送りこんで、美佐子を苦悶させる。
緊迫した空気の中に、ジュブジュブと湿った音が響いた。
「……声を抑えたってよ、この卑猥な濡れ音が聞こえちまうかもな」
耳に囁けば、美佐子はビクビクと背を震わせた。本当に、それを恐れるかのように。
異常な状況に、男も昂奮している。男の昂ぶりを美佐子は蕩けた淫肉で感じとっている。
ひときわ猛々しく漲った巨根に、うねる肉襞を擦られ、最奥をこづかれて。
微妙な仔細な蠢きでも、いまの美佐子の肉体に耐えがたいほどの愉悦を与えて。
(……た、たまらない……)
少しでも気を抜けば、膨れ上がる快楽に呑みこまれてしまいそうになる。
逞しい男肉を咥えこんだ臀を思うさまにふりたくって、快楽を貪りたくなる。
しかし、依然として指呼の距離に立ったまま、こちらを見つめている竜之介の存在がそれを許さない。
(もう、ゆるして)
錯乱を強める意識の中で竜之介に訴えた言葉は、自分の背信への懺悔ではなくて、
ただただこの生殺しの地獄からの解放を願うものだった。
どうか消えてくれ、立ち去ってくれ、と乞い願ったのだ。竜之介に対して。
しかし、美佐子の声なき叫びは届くことなく。
逆に竜之介は、さらに歩を詰めて。
そして、大胆にも腰を屈め鼻先をウィンドウに擦りつけるようにして、鋭い視線を巡らせたのだった。
まるで、黒塗りのガラス越しに車内の光景を透視しようとばかりに。
ヒッと喉を鳴らして、美佐子が仰け反った。
動いていた竜之介の視線が、その気配の方へと向けられて。
美佐子と竜之介は正面から見つめあうこととなる。
その瞬間に、美佐子の中で快楽が爆ぜた。
332職人志望:02/11/14 00:09 ID:obYXZLkC
「ーーーーーーーっっ!!」
突発的な絶頂に自制を砕かれて、大きく開けた口から迸り出ようとした女叫びは、
咄嗟に塞いだ男の手によって、くぐもった響きに変えられた。
くぐもることで、獣のうめきのような生々しい音となって、車外の竜之介の耳に届いた。
思わず、ギクリと身を反らした竜之介。
今度こそ、車中で行われている淫猥な遊戯を確信して、その眼に、あからさまな軽蔑の色が浮かぶ。
それを、美佐子は霞む視界の中に映していた。全身を硬直させ、
咥えこんだ男の肉体を食い千切りそうに絞めつけながら。
『おにいちゃん!』
不意に厳しい唯の声が、近くから響いて。竜之介の腕が後ろへと引かれる。
『っと』
『もういいでしょ!? 帰るよ』
有無を言わせず、竜之介を引っ張っていく。
『わかった、わかったから離せよ』
『もう! あんなに近づいて覗いたりして。コワイ人だったら、どうするの!?』
『平気だって。どっかの色ボケカップルだよ』
そう言って、もう一度だけ竜之介が車へと振り向く。呆れと侮蔑を目に浮かべて。
それを、美佐子は見ていた。
『シッ! 聞こえちゃうよ』
『あだだ、引っ張るなよう』
賑やかな遣り取りを交わしながら、ふたりが遠ざかっていく。
それを見届けて。
美佐子の身体から硬直が解ける。
男への絞めつけをゆるめた女陰から、ドッと熱い蜜が溢れ出して、男の股とシートを汚した。
333職人志望:02/11/14 00:10 ID:obYXZLkC
「ケッ。相変わらずクソ生意気なガキだぜ」
美佐子の口から手を放して、掌についたヨダレを美佐子の臀に擦りつけながら、男が毒づいた。
竜之介の無謀とも言える大胆な行動は、男からしても予想外であったのだが。
その分だけ、痛快な刺激を味わえたことに満悦していた。
「クク、それにしても“色ボケカップル”とは言ってくれるよなあ?
 その片割れが、思い焦がれる美佐子サンだと知ったら、あのガキ、どんな面をしたか」
美佐子からの反応はない。
ガックリと運転席の向こうに顔を落として。荒い呼気に背中を波打たせている
「それにしても、見つめあって昇天とは、相変わらずおアツイこったな。羨ましいぜ」
上機嫌な男が、なおもいたぶる言葉を吐きかけた時。
「……ア……アアア」
美佐子は咽ぶような声を洩らして、首をもたげた。
同時に、豊臀がゆっくりとのたうち始めて、わずかな弛緩を見せていた秘肉が男の剛直へと
からみまとわりついた。
「おっ?」
「つ、突いてっ!」
どこか虚ろな目で男を見返って、美佐子が叫んだ。
「強く…激しく、してぇ」
声を憚ることもなく求めて、一瞬呆気にとられる男を尻目に、さらに激しく白い臀をふりたくった。
「ヘッ、まだ足りねえってか。本性をあらわしてきやがったな、スベタ」
邪悪に口の端を歪めて。男が美佐子の願い通りに、ズーンと重い突き上げをくれた。
「ンアアッ! いい! イイ! もっとぉ」
たちまち感に堪えた嬌声を上げて、美佐子はさらに狂乱を強めていった。
……幸いにも。この時帰路につく生徒の流れは間遠になっていたのだが。
たまたま、この状況に通りかかったひとりの男子生徒。
学校の前に停められた車から洩れ聞こえる、嫋々たる女の啼泣に驚いて足を止めて。
見れば、明らかに上下している車体に、いっそう目を見開くこととなった。
ゴクリと生唾を呑んで、しばしその妖しい車を見つめていたが、それ以上近づこうとは思わなかった。
伝わってくる雰囲気は、若い好奇心よりも畏怖を誘うような隠微さと淫らさに満ちていたのだ。
やがて、絶息するような長い女叫びが響いた時には、男子生徒はゾッと総毛立つような怖気を感じて、
慌てて、その場から離れていった。
334職人志望:02/11/14 00:10 ID:obYXZLkC
……数刻のち。
運転席に戻った男のくゆらす煙草の煙が、車内に漂っている。
紫煙の香は、狭い密室の中に充満した淫猥な臭気と混ざり合う。
汗と女蜜と男精が蒸れ合った濃厚な性臭と。
そんな息苦しいような空気の底を、低い啜り泣きの声が流れている。後部席から。
美佐子はグッタリと脱力した身体を横臥させていた。
下半身は裸のまま。ムッチリと肉を実らせた太腿を重ねあわせて、
汗を浮かべた双臀の狭間から、淫汁と精液をタレ流したままで。
そんな無残な姿を隠そうともせずに、ただ美佐子は泣いていた。
狂乱のあとに、理性を取り戻せば、自分の演じた醜態が胸をしめつけて。
(……もうだめ……もう……)
何度も心に繰り返して、止まらぬ涙を横顔を擦りつけた皮のシートへと落とした。
今度という今度は、立ち直れないほどの絶望に襲われている。
白昼。こんな場所で。
すぐそばに竜之介と唯がいる状況で……快楽に流された。
竜之介と目を合わせたまま、魂消るような絶頂に達して。
その後も、さらに快楽を求めて、それに溺れこんでしまった。
もう……なにも解らない。自分というものが解らなくなっている。
(……もう……だめ……)
その思いだけが、心を占めていた。
335職人志望:02/11/14 00:11 ID:obYXZLkC
「おら、いつまでも余韻にひたってんじゃねえよ」
煙草を揉み消した男が、ぞんざいな言葉を投げて、エンジンをかけた。
「………………」
美佐子はノロノロと身を起こして、足首にからまったままの下着を引き上げた。
また、ホテルへでも向かうのだろうと思った。
場所を変えて、また男は自分を抱く。そして、また自分は痴れ狂わされるのだ。
いつものように。
それを、すでに当然のこととして受け入れている自分に気づく。
美佐子は虚ろな視線をバック・ミラーに向けて、男の顔を見た。
(……もう……私は、この男からは逃れられない……)
そう胸中に呟いてみる。またひとつ絶望が深まるのを感じる。
しかし、絶望は同時に奇妙な安息をも呼び起こした。
(……そう……諦めてしまえば、楽になれるのかも……)
疲れ果てた心が傾いていく。
そして、この後のことを思えば、ジンワリと身体の奥が熱くなるのを感じる。
(……私は……もう……)
だが。
男が車を向けた先は、いつものホテルではなかった。
「着いたぞ」
「……え?」
ボンヤリと思いに沈んでいた美佐子が、男の声に我に返って周囲を見まわす。
「……ここは」
美佐子の家に近い場所に車は停められていた。
336職人志望:02/11/14 00:13 ID:obYXZLkC
「なにを驚いてるんだよ? 家まで送ってやっただけだろうが」
男は、意外そうな美佐子とミラーの中で目を合わせて、
「それとも、行き先がホテルじゃなかったのが不満か? あんだけヨガリ狂っておいて、まだ足りねえってか?」
「そ、そんなことは……」
「じゃあ、とっとと降りろよ。可愛い娘と愛しい男が待ってんだろう。
 ま、その前に、なりを直しておいたほうが身のためだとは思うがな」
「…………」
いまだに半信半疑のまま、美佐子はバック・ミラーで、髪を整え着衣を直した。
車中という限定された状況での行為は、髪や服にはそれほどの痕跡を残していない。
無論、それは上辺だけのことで、スカートの下、ショーツの内側は欲望の残滓にベッタリと
汚れていたのだけれど。
上気が残る頬や、けぶる瞳は……誤魔化すしかないだろう。
不安そうに入念なチェックをする美佐子を、面白そうに眺めながら、
「ああ、それとな」
男が口を開いた。
「さっきも言ったが。しばらく、おまえを呼び出すのはやめにするぜ」
「え?」
またも意外なことを告げられて、美佐子は髪を撫でていた手を止めて、男を見やった。
「俺も、娘や竜之介に気づかれて面倒なことになるのはゴメンだからよ。
 しばらく逢瀬はナシにしようや」
「………………」
「どうした? 喜ばないのか? おまえの望み通りのことだろう」
「え、ええ」
確かにそれは美佐子自身が望み、男にも頼んだことだ。
たとえ、真の解放ではないとしても、喜ぶべきことには違いなかったのだが。
337職人志望:02/11/14 00:17 ID:obYXZLkC
「……本当に?」
美佐子の口から出た言葉は、どこか曖昧な響きがあった。
「ああ。おまえんとこに家族争議を起こしたって、しょうがないしな。
 ほとぼりを冷まそうじゃないの」
男の口ぶりは淡々としていた。まるで突然美佐子への執着をなくしたかのように。
「…………」
そう感じた時、美佐子の胸の奥にキナ臭い情動が生じた。
「ま、あれだ。もし、身体が寂しくなったら、竜之介に慰めてもらえばいいさ」
「……馬鹿なことを」
「そうかい? 無理はよくないぜ。俺のほうは、他にも女はいるから問題ないんだけどよ」
ゾワリ、と。
また暗い感情が、美佐子の中で蠢き、瞳を揺らした。
「もう準備はいいのか?」
急かすように、男は美佐子を車から下ろして。
「じゃあな」
顔も見ずに軽く手をふると、車を発進させた。すぐに辻を曲がって見えなくなった。
美佐子はその場に立ち尽くして。
しばし、男の去った方向を見つめていた。茫然と。
338職人志望:02/11/14 00:18 ID:obYXZLkC
……今日はこんなとこまでで。
遅々たる歩みですが、それでも話は少しづつ進展してるんで。
どうか、もうチョイお付き合いいただきたいっす。
339名無しさん@ピンキー:02/11/14 00:33 ID:PmTlalW9
ガラス越しのくだりが最高!!

この調子でいずれは唯もその毒牙にかけちゃってください
340名無しさん@ピンキー:02/11/14 01:13 ID:UAaiJCiR
>>338
あんたの構成力イイ!
たまりません!

いい展開だなぁ・・・
341名無しさん@ピンキー :02/11/14 04:27 ID:py9ueQ1X
体は徐々に堕ちてきてますね。
次は心までカエルおやぢのモノにしてもらいたいところです。
342名無しさん@ピンキー:02/11/14 11:28 ID:W2QgFzU1
>>341
いや、やってる時はたしかにメロメロっぽいんだけど、
終わったら激しく後悔&羞恥してしまう
メトロノームな人妻がいいな。

抽送と同じだよ。
入れられたら「だめ~」、離れそうになったら「抜かないで~」的な、をきぼん
343名無しさん@ピンキー:02/11/14 13:22 ID:A/dHOMO+
美佐子たん、オパーイ大きいでしか?
344名無しさん@ピンキー:02/11/14 20:20 ID:/gJGUf2r
で  か  い
345名無しさん@ピンキー:02/11/14 21:28 ID:jbmx8c58
>>344
>で  か  い
なんだよ、でかいけど胸の谷間が離れてるって言いたいのかw?
346名無しさん@ピンキー:02/11/15 01:13 ID:i3gxThBS
でかくても、垂れてたり形が崩れてると(以下略
347名無しさん@ピンキー :02/11/16 14:14 ID:M8UlwDK+
またしてもread.cgi停止かよ。
348名無しさん@ピンキー:02/11/16 14:37 ID:ikP2srHC
349名無しさん@ピンキー:02/11/16 16:16 ID:Mlandtpv
♂♀♂♀♂関西優良店デリヘル総合サイト♂♀♂♀♂
 ♂♀♂ http://www.delihel-planet.com ♂♀♂
350名無しさん@ピンキー:02/11/16 16:16 ID:RQ9a8C6l
351名無しさん@ピンキー:02/11/16 20:04 ID:ESo+h2A/
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352名無しさん@ピンキー:02/11/17 21:05 ID:dzy0koPi
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353名無しさん@ピンキー :02/11/18 10:53 ID:5mM/1uzH
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http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/7562/
なお、read.cgiが止まっているのは過去ログのHTML化作業中・スクリプト荒らし対策など
なんらかの理由があってのことですので、1週間程度この状態が続くことが予想されますので、
慌てず騒がず復旧を待ちましょう。
354名無しさん@ピンキー:02/11/18 21:23 ID:RS6Ao7LP
現在read.cgiを停止中です。
そのため、InternetExplorerなどの通常のWebブラウザでは
スレを表示することができません(トップ10の閲覧&書き込みは可)。
各種2ch専用ブラウザ(無料)を使うとスレの読み書きが可能になります。
詳しくは http://www.monazilla.org/
お使いのOSに対応した2ch専用ブラウザをお探し下さい。
また、以下のサイトも併用すると効果的です。
【2ch用ブラウザ比較サイト】
http://webmania.jp/~2browser/
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/7562/
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なんらかの理由があってのことですので、1週間程度この状態が続くことが予想されますので、
慌てず騒がず復旧を待ちましょう。
355名無しさん@ピンキー:02/11/18 21:51 ID:4si3Mgj5
さげ
356名無しさん@ピンキー:02/11/19 21:06 ID:6qIrFG7u
age
357名無しさん@ピンキー :02/11/20 12:54 ID:aTmkl2fw
このままread.cgiが止まったままだと、職人さん達も永久にもどってlこないのか・・・・
358名無しさん@ピンキー:02/11/20 18:26 ID:iRgPvQwj
まんこあげ
359名無しさん@ピンキー:02/11/20 18:34 ID:z6WJe0LQ
360名無しさん@ピンキー:02/11/20 18:43 ID:rrRkYvqv
361名無しさん@ピンキー:02/11/20 19:30 ID:tKW+jIm0
この状態じゃ広告しか来なさそう…でサゲ。
362名無しさん@ピンキー:02/11/21 22:03 ID:Z2kMcZNL
はげ
363名無しさん@ピンキー :02/11/22 10:23 ID:G44Z7+cA
もうだめぽ・゚・(ノД`)・゚・
364名無しさん@ピンキー:02/11/22 21:04 ID:gFDKx9NT
現在read.cgiを停止中です。
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なお、read.cgiが止まっているのは過去ログのHTML化作業中・スクリプト荒らし対策など
なんらかの理由があってのことですので、1週間程度この状態が続くことが予想されますので、
慌てず騒がず復旧を待ちましょう。
365職人志望:02/11/23 00:21 ID:PcHCpuAO
なかなか復旧しませんね。
こんな状況なので、控えておったのですが。
ちょっとずつでも、うpしたほうがいいかな?
それとも、静かに復旧をまつべきか?
366名無しさん@ピンキー:02/11/23 00:39 ID:7ZzcGl6F
あと一日二日の辛抱では?
続きを読みたいのは山々ですけど
必然的に上げ続けなればならないし
復帰後にまとめて読めれば幸いかと…
個人的な意見ですけども。

367名無しさん@ピンキー :02/11/23 17:00 ID:wVGfXf1/
>>366
このままずっと復旧しない気がする
368名無しさん@ピンキー:02/11/23 19:32 ID:5TC7APJS
月曜頃に復旧するって
369名無しさん@ピンキー :02/11/24 00:55 ID:Jroyzfef
>>368
ソースキボン
370名無しさん@ピンキー:02/11/24 01:59 ID:/n6VOZJP
復旧あげヽ(´ー`)ノワァーイ♪
371名無しさん@ピンキー:02/11/24 02:00 ID:NeQJOHBc
372名無しさん@ピンキー:02/11/24 02:12 ID:ClmBlxrU
・・・もしかすると、明日頃1さまの書き込みがあるのかも・・・
373名無しさん@ピンキー:02/11/24 19:03 ID:9bTZwiOQ
(´・ω・`)<なりたて様・・・・・・
374名無しさん@ピンキー:02/11/24 21:31 ID:QQLSGo+p
期待sage
375名無しさん@ピンキー:02/11/25 02:16 ID:9JTs1AvW
11月が終わってしまう・・・
376名無しさん@ピンキー:02/11/25 15:54 ID:qs8W7zH5
  _, ._
( ゚ Д゚)
377名無しさん@ピンキー :02/11/27 00:54 ID:wkf814tS
(;゚∀゚)=3
378名無しさん@ピンキー:02/11/27 01:58 ID:a9+zZBZe
エルフ系・・・ダンジョン&ドラゴンのエルフは入りますか?もしそうなら
エロ画像をキボンヌ
379名無しさん@ピンキー:02/11/27 09:04 ID:2hkK5LsO
>>378
  _, ._
( ゚ Д゚)
380名無しさん@ピンキー:02/11/27 13:23 ID:MqbJQNcL
もう復旧してんのかな? 
かちゅ~しゃあててるから判らないんだけど。
381名無しさん@ピンキー:02/11/27 14:09 ID:UYrzFscY
今週の土曜はいよいよ1さんのSSが読めるぞ!!
382名無しさん@ピンキー:02/11/27 20:17 ID:Xaq4pTX9
>>381
そうだそうだ!
そのはずだ!
・・・そうだよね、ねぇ、ねぇったらぁ
383名無しさん@ピンキー:02/11/27 21:53 ID:J4oD61qy
(*´▽`).。oOいっぱい書き溜まっているんだろうなぁ…
384名無しさん@ピンキー:02/11/27 23:30 ID:lwAemEb8
>>381
何か知っているの?き、期待しちゃうぞ・・。
385名無しさん@ピンキー:02/11/27 23:49 ID:a3bEz2ui
>>384

>246に、今月中には書けるとおもうとの旧1のカキコあり。
386名無しさん@ピンキー :02/11/28 22:27 ID:lRwUuHGz
hosyu
387名無しさん@ピンキー:02/11/29 16:01 ID:6+JIKr/j



肛門ヒクヒク!おまんこグチョグチョ!壮絶な調教シーンのモデルはなんと素人!
http://www.oshioki.net/video.html
388名無しさん@ピンキー:02/11/29 21:45 ID:ZluLbkjZ
ついに明日…いや、今日の深夜とて油断は出来んな。
当方に迎撃の用意あり!!
389名無しさん@ピンキー:02/11/29 23:32 ID:DsF/H1yX
おい!おまいら!
前スレに1さんが・・・
390名無しさん@ピンキー:02/11/30 00:06 ID:hbA+0M4p
>>389
前スレ、何もないようだけど?
391名無しさん@ピンキー :02/11/30 02:40 ID:6HvwR2RP
美佐子さんのSSの続きはまだかな~
392名無しさん@ピンキー:02/11/30 15:58 ID:rkY9aB57
マダ~?
393名無しさん@ピンキー:02/11/30 20:17 ID:cBWFEEWW
我は待つ。いつまでもいつまでも。
美佐子さんへの愛ゆえに。





その割には美佐子さん堕としSSだったりする。
394名無しさん@ピンキー:02/11/30 20:35 ID:vEfzyry3
>>393
愛とは相手に求めるものではなく、(覗き)見続けるものである
395名無しさん@ピンキー:02/11/30 20:41 ID:0ql9g54E
いかん…昨日徹夜で迎撃用意していたので今日はもう持たん…
もう寝るよ…
396職人志望:02/11/30 23:08 ID:RsPR3fy8
スミマセン、なんか雰囲気が緊迫してたんで控えておりました。
続き、Upさせていただきます。
でも、またエロなしパートなの……。
397職人志望:02/11/30 23:09 ID:RsPR3fy8
土曜の午後。喫茶『憩』。
ランチ・タイムが過ぎて、客はまばらになっている。
カウンター席に竜之介が座っている。
頬杖をつき、ボケッと静かな店内の風景を眺めて、
「……やっぱ、憩は空いてるほうが、しっくりくるなあ」
と呟いたのは、先ほどまでの、それなりの賑わいぶりと比べてのことだった。
「あ、そんなこと言って」
聞きとがめたのは、エプロン姿の唯。竜之介の隣りに腰を下ろして、軽く睨みつけた。
「おにいちゃんは、お客さんが来ないほうがいいっていうの?」
いまはこうして手が空いたが、ついさっきまではそれなりに慌しく立ち働いていた唯としては、
聞き捨てならないといったところ。
「いや、こういう状態の方が見慣れてるってゆうか、さ」
「もう! こんなこと言ってるよ、おかあさん」
まあ、本気で怒ってるわけでもなく、半ばジャレついてるようなもので。
カウンターの中の美佐子に話をフッたのも、この他愛のないやりとりに加われという誘いだったのだが。
「………………」
しかし、洗い物をしている美佐子は、目の前での会話を聞いていないようすで、なにも答えない。
かといって、作業に集中しているのでもなく。水を流したままのシンクに手を浸したまま、
ボーッと物思いに沈んでいた。
「……おかあさん」
「……え? あ、なに?」
ビクリと我にかえって、聞き返す美佐子に。
唯と竜之介は顔を曇らせて、そっと視線を交し合った。
398職人志望:02/11/30 23:10 ID:RsPR3fy8
……しばらく休みがちだった『憩』だが、この十日間ほどは平常の営業に戻っている。
知人の病状が快方に向かって、美佐子が介護に赴く必要がなくなったからだ。
それを美佐子から聞かされた時、無論唯と竜之介は喜び、安堵した。
美佐子の負担が減って、これで本来の生活が戻ってくると思ったのだ。
だが、すぐにそれは早計であったことに気づかされた。
美佐子のようすがおかしい。
表情や挙措から、重い疲弊の色は消えて、傍目にも体調は良くなったように見える。
しかし、行動の奇矯さは逆に強まっているのだ。
店でも家でも、しょっちゅう惚けたような状態に陥ってしまう。
かと思えば、なにかに苛立つような落ち着きのないさまを見せる。
当然、それらの異常は、すぐに唯や竜之介にも知れることになって。
ふたりは、何度も美佐子に、なにか悩みがあるのではないかと質したのだが。
そういう時には、きまって美佐子はなんでもない、心配はいらないと、
簡単に話を打ちきってしまう。どこかギコちない笑みを浮かべて。
否定されても、唯や竜之介は納得できるはずもなかったが。美佐子が口を閉ざすかぎり、どうにもしようがない。
せいぜいが、唯が毎日なるべく早く帰宅するようにして、店に手伝いに出る程度のことしか出来なかった。
竜之介の勉強の方は、一ヶ月近くの猛烈な集中の甲斐があって、ほぼメドが立った状況だから、
放課後の補習も自宅学習に切り替えた。まあ、竜之介の場合には、早く帰っても、
特になんのサポートを出来るというわけでもないわけだが。
それでも、ふたりはなるべく傍にいて、不安定な状態の美佐子を見守ることを暗黙のうちに
了解しあっていた。なんだか、腫れ物に触るようなやり方になってしまっているが。
この日は休日ということで、唯は朝から店の手伝いに。
竜之介は、久しぶりにたっぷりの睡眠をとって、昼近くに起き出してきたところ、
“どうせだから、今日は一日休養するように”というお達しを唯から受けて、
食事をとりながら、唯と美佐子の働くさまを眺めていたのであった。
399職人志望:02/11/30 23:11 ID:RsPR3fy8
「……ごめんなさい。なんの話?」
すまなそうに聞き返す美佐子に、唯も竜之介も答える言葉に迷った時、
カウンターの端に置かれた電話が鳴り出した。
位置的に近い唯が出ようとしたのだが、
「あ、いいわ」
やけに強い声で唯を制して、素早く動いた美佐子が、濡れたままの手で受話器を取った。
「……もう。絶対唯には取らせてくれないんだから」
不満そうに呟く唯の声に、少し緊張したような美佐子の応答が重なる。
「唯だって、電話くらいちゃんと受けられるのに」
「あ? いや、そういうことじゃないだろうけど……」
電話は納入業者からの連絡だったらしく、そうと知った途端に美佐子の肩から緊張が解けたように見えた。
ひとつひとつの動きが、唐突で不自然な美佐子に、眉を寄せる竜之介。
数時間、店にいて見守っている間にも、相変わらず美佐子の状態がおかしいことを、
改めて確認させられていた。
「……だって、おかあさん、唯たちにはなにも相談してくれないし。
 そんなに、頼りにならないのかなって……」
「うーん、人には言えないこともあるだろうからさ」
「唯たちにも? たとえば?」
「いや、それはわからないけどさ」
唯と竜之介では、美佐子への心配といっても、前提が異なる。
竜之介には、美佐子の悩みとして思いあたることがあるからだ。
だから、事実を知らずに無心に美佐子を思いやる唯に対して、気の毒なような
申し訳ないような気持ちを抱いてしまうのだったが。
しかし。
ここへ来て竜之介の胸には、ひょっとして自分は思い違いをしているのではないか?
という疑問が芽生えていた。
400職人志望:02/11/30 23:13 ID:RsPR3fy8
美佐子が思い悩んでいるのは、自分との関係についてだと、これまで竜之介は思いこんでいた。
細かく言えば、自分との関係を唯に告げることだ。
いつ、どのような形で唯にそれを告げればいいのか、と思い悩んでいるのだろうと竜之介は理解していたのだが。
最近の美佐子を見ていると、その解釈は怪しく思えてきた。
あの夜に、互いの想いを確認しあった時にも、美佐子は唯のことで心を痛めてはいた。
しかし、迷ってはいなかったと思う。
その姿と、いまの状態が、どうも結びつかない気がするのだ。
(……俺とのことじゃないとすると……美佐子さんは、なにをそんなに悩んでいるんだ……?)
答えを求めるように、美佐子を見る。
電話を終えた美佐子は、その場に佇んだまま、窓の外へと視線を向けていた。
なにを見ているわけでもなく、どこかへ意識を浮遊させているような風情。
(なんだろう?)
奇妙な胸騒ぎがする。
佇ずむ美佐子の横顔には、どこか悩ましい翳りがあって。
それが竜之介に、得体のしれない息苦しさを感じさせるのだった。
401職人志望:02/11/30 23:14 ID:RsPR3fy8
唯は、沈思に入ってしまった竜之介と、依然として茫洋と佇む美佐子を困惑した顔で見比べていたが。
カランカラン、とドアベルが鳴る音に素早く立ち上がった。
「いらっしゃいませ! ……あれ? いずみちゃん」
「よう」
入ってきた小柄な少女は、唯たちの同級生、篠原いずみ。そして、
「友美ちゃんも」
「こんにちわ」
いずみの後に続いて、同じく同級生で、隣家の住人でもある水野友美。
「うわあ、ひさしぶりだねえ。元気だった?」
しばらくぶりに顔を合わした級友たちに、唯が飛びつくようにして弾んだ声を上げる。
「うん。いろいろ忙しくってさあ。唯は元気そうだな」
快活に答えて、いずみは唯の後ろの竜之介へと顔を向けて、
「竜之介は……しばらく見ないうちに、やつれたんじゃないか?」
「……久々に会うなり、それかよ。そういういずみは背が伸びたんじゃないか?」
「えっ!? そうかな?」
「ああ。ほら、俺と変わらないじゃん」
「……そ・れ・は! おまえが座ってるからだろうがあ」
「あ、そうか……イダダ」
いずみ怒りのW耳ひっぱりに、悲鳴を上げる竜之介。
毎度おなじみの応酬に、ブランクを感じさせないふたりであった。
402職人志望:02/11/30 23:14 ID:RsPR3fy8
「いずみちゃん。座りましょう」
入ってきた時から、ひとり騒ぎの外にいた友美が落ち着いた声をかけた。
「あ、うん。……唯、ちょっといいかな?」
「ええっと……」
いずみの誘いに、美佐子の方を振りかえる唯。
「いいわよ。あとは私ひとりでやるから」
美佐子が答える。その顔は、いつもの営業中のものに戻っていた。
「うん。じゃあ、ちょっと休憩ね」
そう言ってエプロンを外した唯は、当然のように竜之介の腕を引っ張った。
「ほら、おにいちゃんも」
「いやだ。また、いずみにイジメられるから」
「聞こえてるぞ」
すでに窓際のテーブル席についたいずみが睨んだ。
「ほうら。呼んでるよ、いこう」
「そうよ。せっかく会いにきてくれたんじゃない」
美佐子にも促されて、渋々腰を上げる竜之介。
「別に、俺に会いにきたんじゃないのに」
とか、ブチブチ呟くのを聞いて、唯はため息をついた。
それがまた、照れ隠しとかでなく本気で言ってるとわかるから。
ちょっとだけ、後ろから蹴飛ばしてやりたいような気持ちになる。
取り合えずは、二人がけの席の奥へと、少し手荒く押しこむことで我慢した。
「あたた、乱暴だぞ、唯」
「なにゴチャゴチャ言ってんだよ」
と、竜之介の対面に座ったいずみ。
「特別のはからいで、美少女ばかりのところに相席させてやろうってのにさ」
「そういうことは、その美少女とやらを連れてきてから、言ってくれ」
「こいつっ!」
腰を浮かしかけたいずみだったが。
人数分のお冷を持って近づいてきた美佐子に気づくと、ひとまず矛先をおさめた。
403職人志望:02/11/30 23:17 ID:RsPR3fy8
「いらっしゃいませ。ふたりとも、ひさしぶりね」
「こんにちわ」
元気よく答えるいずみと、スッと頭を下げた友美。
注文を聞いて、美佐子が去ると、
「ホントに、ひさしぶりだね」
改めて、唯がそう言った。
「いずみちゃんも友美ちゃんも全然学校に来ないから」
「うん。なかなか部屋が決まらなくてさあ」
いずみも友美も、大学への進学が決まっている。いずみの場合、離れた街の大学に進むため
春からはひとり暮らしになる。
「私より、お父さんがうるさくてさあ。いちいちケチつけるもんだから」
どんな部屋でも、なにがしか文句をつける父親のせいで住居探しが難航した経緯を、
ひとくさり、いずみは説明した。
「フフ、いずみちゃんのお父さん、本当はひとり暮らしなんてさせたくないんじゃない?」
「ああ、そうみたい。まあ、それでもようやく決めたから、これからは学校にも行くよ。
 部活のようすも見ておきたいしね」
「そうなんだ。よかった。友美ちゃんは?」
「……私も、いろいろ用事があって」
「まだ学校にも来られない?」
「ええ……」
目を伏せたまま、言葉少なに答える友美。
「そうなんだ……」
素っ気無いともいえる反応に、唯は言葉の継ぎ穂を失ってしまう。
404職人志望:02/11/30 23:20 ID:RsPR3fy8
そこへ、美佐子が四人のオーダーした品を運んできた。
「お待ちどうさま」
「お、来た来た」
嬉しそうに、パフェを受け取り、素早くスプーンを手にするいずみ。
「いずみ、それ好きだな」
冬休みに同じものを奢らされたことを思い出して、竜之介が言うと、
「え、うん。……これからは、この店にも滅多に来れなくなるからさ。
 もう一度だけ、食べておきたかったんだよね。……もう一度だけ、ここで……」
語尾が尻すぼみになった時、いずみの表情に一瞬よぎった寂しさに、
気づいたのは少女ふたり。まったく気づかなかったのは、竜之介。
「ふーん。特に変わったところもないと思うけど」
パフェを眺めて、不思議そうにそんなことを言うから。
ギュギュッと唯に足を踏まれることになる。
「イデデッ! なにすんだよ?」
「ごめん。足が滑ったの」
「滑ったって……」
「サンキュ。唯」
そう言って、笑ったいずみに。
唯は、いずみが長い間の想いに踏ん切りをつけたことを悟った。
「これくらい当然だよ。全然足りないくらい」
「そうだよな」
笑いながら交わされる言葉の意味を理解できずに、
「なんなんだよ?」
踏まれた足をさする竜之介。自業自得ではある。
405職人志望:02/11/30 23:21 ID:RsPR3fy8
「それよりさ」
いずみが口調を明るく切りかえて、
「聞いたぞ。竜之介が、突然気が狂ったように勉強しだしたって」
「なんだよ、それは」
すると、横から唯が、
「へへ、なんか懐かしいね」
「はあ?」
「最初の頃は、みんなそんなふうに言ってたじゃない」
「そりゃそうだ。私だって、最初に噂を聞いた時は信じられなかったもの」
「……ったく、どいつもこいつも」
「どうやら噂が真実らしいと聞いた時には、もっと驚いたけどね。
 今日も期待してたのにな。ビン底メガネにハチマキ姿でガリ勉してる竜之介が見られるかって」
「今どき、そんなやつはいない」
「でも…」
と口を挟んだのは、静かにコーヒーを飲んでいた友美である。
「どうして、急に進学を決めたの? なにか切っ掛けがあったのかしら」
そう尋ねて。心の底を覗きこむような深い眼差しを竜之介に向けた。
「えっと、それは……」
なにか、奇妙に気圧されるものを感じて、口ごもる竜之介。
なんだか、友美のやつ、雰囲気が変わったな、とか思いつつ、
「切っ掛けっていうようなことはないけど……」
まさか、この場で“美佐子のため”などと真実を明かすことも出来ずに。
「まあ、進学か就職か、どっちかを選ぶしかないわけだし」
無難に切り抜けようとするが。
「でも……話に聞く竜之介の変身ぶりって、よほどの決意があってのことだと思えるのだけど」
友美に、さらに突っ込まれて、言葉に詰まった。
406職人志望:02/11/30 23:22 ID:RsPR3fy8
それはね、と竜之介に代わって、唯が説明した。
「このままじゃ、予備校の授業にもついていけないからって」
それは、正確には友美の疑問への返答にはなっていないのだが。
「そう」
友美は頷きを返して、竜之介から視線を外した。
「はは、そりゃそうだよなあ。三年間、教科書もろくに開いたことがなかったヤツだもん」
愉快そうにいずみ。
「こういうところで、日頃の行いの差が出るんだよ」
「うっさい」
「でも、スゴイんだよ。この一ヶ月で、三年間サボってたのを取り返しちゃったんだから」
唯が我が事のように誇らしげに言った。三年間サボってたことは否定しなかったが。
「へえー」
これには、ちょっと見直した目で、竜之介を見るいずみ。
「ふん。俺は、やる時はやるのだ」
「……そうだな。竜之介って……そういうヤツだよな」
呟いて。眩しげに細めた目に瞬いたのは、振り払った想いのカケラだろうか。
「片桐先生がね、“もう少し早く、その気になってくれれば”って残念そうに言ってたの」
「あはは、それも竜之介らしいな」
唯の補足に明るく笑った時には、いずみの顔から感傷は消えていた。
407職人志望:02/11/30 23:23 ID:RsPR3fy8
すっかり肴にされてしまっている竜之介は、仏頂面で、
「今日は、俺をからかいに来たのか?」
イジけたことを言ったが。
「うん」
いずみにキッパリと頷かれて、ダーッと脱力する。
「……忙しいとか言って。全然ヒマじゃないかよ」
「はは。まあ、それもあるってこと。ホントはさ、唯を誘いに来たんだ」
「私を?」
「うん……」
「唯ちゃん」
いずみの言葉を遮って、友美が唯を呼んだ。
え? と聞き返した唯に、目顔でカウンターの方を示した。
唯が振り返ると、奥のテーブルにいた女性客が伝票を手にレジの前に立っていたのだが。
カウンターの中の美佐子がそれに気づかない。例の放心状態に陥っている。
「おかあさん! ……ちょっとゴメンね」
呼びかけても反応がない美佐子に、唯は席を立って急ぎレジへと向かった。
困った顔で立ちつくしていた客に頭を下げて、会計を済ませる。
「ありがとうございました」
店を出ていく客に丁重な言葉をかけたところで、ようやく美佐子が我に返る。
低めた声で何事か言う唯に、美佐子がすまなそうに謝っている。
……という一連の流れを、竜之介たち三人はテーブル席から見守っていた。
いずみは少し不思議そうに。竜之介は深刻げに眉を寄せて。
友美は、感情を映さない眼で、じっと観察するように美佐子を見つめていた。
408職人志望:02/11/30 23:24 ID:RsPR3fy8
「ごめんね」
戻ってきた唯が、いずみ等に謝りながら席についた。
「あ、うん」
いまいち状況の掴めないいずみが、曖昧な返事をかえす。
「……美佐子さん、具合でも悪いのかしら」
依然として、美佐子に視線を向けたまま、友美がポツリと言った。
「最近、お店を休みがちだったみたいだけど」
「え? そうなのか?」
初耳だったいずみが、唯に確認する。
「うん。それは事情があったからで。体の方も、もういいはずなんだけど……」
ためらいがちな唯の説明に、皆がなんとなく美佐子の方を見る。
美佐子は、やけに真剣な表情でグラスを磨いていた。意識して作業に集中している感じ。
「変わりないように見えるけどなあ」
腑におちないようすで、いずみ。
だが、いずみ同様に詳しい事情を知らないはずの友美は、
「……なにか、気にかかることがあるみたい」
そんなことを呟いて、唯と竜之介をギクリとさせ、さらに続けて、
「美佐子さん、好きなひとでもできたのかしら」
「ブッ」
しれっと吐き出した科白に、折悪しくカップを口に運んでいた竜之介が、コーヒーを吹いた。
「うわっ!? キッタないなあ。なんだよ、竜之介」
「……ゲホ……す、すまん。友美が突拍子もないこというから……」
409職人志望:02/11/30 23:25 ID:RsPR3fy8
「そんなに、おかしなこと言った? 私」
友美は、ようやく美佐子から視線を外して、竜之介を見た。
「おかっしいって、いうか……唐突すぎるだろ」
「そう? 恋してるときの女のひとって、あんな感じじゃないかなって思ったんだけど」
淡々と、友美は言葉を紡ぐ。軽口で場を盛り上げようとしているふうでもない。
「いや、だからって、美佐子さんが……」
友美らしくもない主張に、反論するのは竜之介だけだった。
唯は、押し黙ってなにか考えこんでいる。
いずみは、何故かニヤニヤと笑いながら、静観している。
「美佐子さんだって、女ですもの。独身だし、まだあんなに若々しくて綺麗なんだし。
 恋愛したって、なんの不思議もないと思うわ」
……まったく、その通りであることを、竜之介は知っているわけだから、言葉に詰まる。
友美は、また美佐子へと目を向けて、
「……さっきみたいなことが、多いんでしょう?」
そう問いかけて、唯と竜之介の無言の肯定を待ってから、
「それって、好きなひとのことを想っているんじゃないかしら? 
 逢いたいのに逢えないひとのことを、想い浮かべているんじゃ……」
「いや…」
少なくとも、それは違う、と。うかつにも言いかけて、慌てて口を噤む竜之介。
“逢えないひと”という部分に、やっと明確に否定できることを見つけて、
危うく口を滑らせかけたのだったが。
410職人志望:02/11/30 23:26 ID:RsPR3fy8
「………………」
視線を戻した友美は、不自然な竜之介の態度を追及しようとはしなかった。
この時、友美の瞳に浮かんだ感情は……哀れみ。憐憫。
竜之介には、それを読み取ることは出来ない。友美から、そんな感情を向けられる理由など、
なにもなかったから……知らないから。
それでも、突き刺すような友美の視線に、得体のしれぬ不安を掻き立てられてしまう。
「……友美……なんか、変だぞ」
しぼり出すように、そう言った時。
ここまで、笑いを堪えるようにして、ふたりのやりとりを見守っていたいずみが、
我慢できないといったふうに口をはさんだ。
「ふふん。甘いぞ、竜之介。女は、少し会わないうちに変身しちゃうんだよ。
 それなりの理由があればね」
「はあ?」
「ま、美佐子さんが本当に恋に悩んでいるのかどうかは、置くとしてだ。
 友美が、そんなふうに考える理由を、私は知ってるんだ」
得意げな表情で、横目に友美を見る。
「友美は、自分のことと引き比べて、そういう推測をしたんだよな。そうだろ?」
「なに言ってんだ、いずみ?」
要領を得ない竜之介。いずみまでおかしくなってしまったのかと。
「かあーっ! 鈍い、鈍すぎるっ……てのは、いまさら言ってもしょうがないか」
と、つい自分自身のキズにも触れてしまって、やや気勢を削がれるが。
「えへん。つまりだ。友美にも、ついに恋人ができたってこと」
「へっ!?」
いずみの爆弾発言に、竜之介は虚をつかれた表情になり、俯いて考えこんでいた唯も、ハッと顔を上げた。
当の友美は、静かにカップを口に運んでいる。まるで他人事のような態度だったが、
少なくとも、いずみの言葉を否定しようとはしなかった。
いずみは、自分の発言が巻き起こしたセンセーションに満足げな表情を浮かべて、
「友美のお父さんがさ、うちの親に嘆いてたらしいんだ。友美は最近家を開けることが多くなったって。
 それを聞いて、ちょっと怪しいと思ってね。今日、顔を合わせた時に聞いてみたってわけ」
なんのことはない、得意げに説明するいずみ自身、今さっき知ったばかりなのだった。
411職人志望:02/11/30 23:27 ID:RsPR3fy8
「へええ……友美がねえ」
いまだ、ピンと来ない顔で、竜之介が言ったが。
「うん? すると、学校に来ないのも、毎日デートしてるからなのか?」
続けて、そんなことを口にするあたりが、その驚きの質を表していた。
つまりは、“あのカタブツの友美が”という類のものなのだ。
「………………」
呑気な竜之介の隣りで。唯が受けた衝撃は、はるかに大きく複雑なものだった。
同一の相手―すぐ横で間抜けたことをホザいている少年に、同じ想いを向けてきたものとして。
知らず、ジッと探るような眼を友美に向けてしまう唯。
しかし、友美はそれを平然と受け流して、端座していた。
「……唯」
と、口調を変え、深い声で呼んだのはいずみ。
「みんな、いろんなことが、変わっていくんだよ」
その言葉が、やけに重く胸に響いて。思わず、頷きをかえす唯。
と、いずみはまた明るい調子に戻って、
「でさ。その相手が、どんなヤツなのかとか、いろんなことをジックリ聞き出してやろうと思って。
 今夜、私の家でね。それに唯も誘いに来たんだ」
長い脱線の末に、話題がようやく要件に戻る。
「いずみちゃんの家で? 泊まりで?」
「うん。もう、あまり機会もないだろうと思ってさ。最後に女同士で、
 いろいろブチまけておきたいこともあるじゃないか。どう?」
「え、うん。私はいいけど……」
「よし。じゃあ、きまり! 急な話で悪いけどな。なにしろ、友美のスケジュールが詰まってるからさあ」
「…………」
また、からかわれても、友美は超然たる態度を変えなかったが。
「友美ちゃん……」
整理しきれない思いを吐き出すように、唯がこぼした言葉に、つと視線を上げて、かすかに微笑んでみせた。
静かな微笑には、まぎれもない“女”の艶めきと翳りが滲んでいて。
同席する三人の少年少女たちは、言葉を失う。
412職人志望:02/11/30 23:29 ID:RsPR3fy8
……皆が、友美の変貌に呑まれたような雰囲気のまま。その後すぐに、お茶会はお開きとなった。
店を出るふたりを、外まで見送る唯と、強制的につきあわされる竜之介。
「じゃあ、私はお店が終わってから、いずみちゃんの家に行くから」
「ああ、待ってるよ」
「なにか、持っていくものはある?」
「そうだなあ。お菓子やジュースは用意してあるけど……」
顔を寄せて、些細なことを検討しあう唯といずみ。
それを、少し離れた位置から、うんざりと眺める竜之介。とっとと解放されたい。
傍らに立つ友美の存在が、微妙な居心地の悪さを感じさせる。
友美は、いずみたちの会話には加わろうとせず、竜之介の横顔をジッと見つめていた。
「……な、なに?」
視線に耐えきれず、そう尋ねた。なんで、幼馴染を相手に、こんなに緊張せねばならないのか、
と不条理なものを感じつつ。
「…………」
友美は、なおも無言のまま。ちらりと、離れた唯を一瞥して。
「……唯ちゃんだったら」
「えっ?」
「唯ちゃんだったら……許せたんだけど……」
かろうじて聞き取れるほどの声。しかし、その意味は竜之介には掴めない。
「はあ?」
「……だから、教えてあげない」
友美の瞳に、ひどく複雑な感情、怒り、憐れみ、優越、悲しさが混ぜんとなった暗い色が、よぎって。
しかし、すぐにまた、鏡面のように平らかで無感情なものに戻った。
「友美、なにを……?」
「よし、友美、いこうぜ」
いずみの呼びかけに、友美がコクリと頷いて竜之介から離れることで、かみ合わない会話は断絶した。
「……なんなんだよ?」
413職人志望:02/11/30 23:30 ID:RsPR3fy8
……閉店後。
店の後片づけは美佐子に任せて、唯と竜之介は家のキッチンにいる。
出掛ける前に食事を済ませるために、急ぎ用意をする唯。
竜之介は、食卓についてボンヤリとそれを眺めていた。
手際よく準備を終えて、後は美佐子が戻るのを待つばかりという状態を整えると、
唯は竜之介の向かい側に座った。
「……………」
竜之介は、ムッツリと考えこんでいる。
なにを考えているかは、察しがついたから、
「……友美ちゃん、なんだか変わっちゃってたね」
唯は、そう言ってみた。
「…………」
「……あのね、おにいちゃん」
「…うん?」
「友美ちゃんが言ってた、おかあさんに好きなひとが出来たんじゃないかって話。
 実は……唯も、もしかしたらって思って。おかあさんに、一度だけ訊いてみたんだ」
「……それで? 美佐子さんは、なんて?」
「そんなことないって、言ってたけど。でも、少し慌ててたみたい」
「……ふうん」
気のないふりを装いながら。
不意に、竜之介は強い衝動にとらわれる。
いま、この場で、自分と美佐子の関係を、唯に告白したいという思いに。
414職人志望:02/11/30 23:31 ID:RsPR3fy8
元来が、秘密を抱えこむことが苦手な性分だ。
結果として唯を欺いている状況への心苦しさもある。
なによりも、いま感じている正体不明な息苦しさを払拭したいという思いがあった。
美佐子の変調の原因は、正確にはわからない。美佐子が語ってくれないから。
自分とのことだと思っていたが、違うのかもしれない。
とにかく、家族の間で秘密を抱えこんでいる状況が間違っているのだ、と竜之介は考える。
その最たるものが、自分と美佐子が唯に対して隠している事実だ。
それを露わにしてしまうことが、たちこめる鬱屈を払うキッカケになるはずだ、という竜之介の論理は、
かなり強引で短絡的ではあるが、それなりの筋道もたっている。
ただ、“どうせいつかは話さなければならないんだから”という割り切りが出来るのは、
美佐子と竜之介の立場の違いであり、唯の感情に対する理解の差でもあった。
「……あのさ」
半ば衝動に任せて、事実を暴露しようとした竜之介だが。
いざとなると、言葉に迷ってしまう。当然のことながら。
ん? と聞く態度をとった唯の澄んだ瞳を見れば、ますます言葉に詰まって。
やはり、これは勢いで果たしていいことではないな、と思い直した竜之介は逃げを打った。
「いや、美佐子さん、遅いなって……」
「そうだね。ちょっと見てくる」
気軽に立ち上がった唯が、勝手口から店へと消えるのを待って。
フウと、竜之介は息をついた。
危うく勇み足をおかすところだった、と反省する。
あんな衝動に駆られてしまったのは、久しぶりに会った友美のせいでもあった。
長年親しんでいた幼馴染の少女が、わずかな間に不可解な変貌を遂げていた。
それが強い不安となって、心を圧迫したのだ。知らぬ間に自分を取り巻く日常が変質していくような。
「いかんなあ……友美のことは関係ないのに」
自分の脆弱さを竜之介は責めた。
415職人志望:02/11/30 23:40 ID:RsPR3fy8
……今日は、こんなとこまでで。
ここも、こんなに長くすべきパートではないと思うんすが……。
次の分は、ほぼ書き上がってるんで、すぐにUpできるかと。
それでわ。
416名無しさん@ピンキー :02/11/30 23:42 ID:6HvwR2RP
いいなあ、こうゆう寝取られを匂わす部分って。
次回への想像がたくましくなってしまうわ。
417名無しさん@ピンキー:02/12/01 00:44 ID:nD1f5LmF
ううむ、友美は既に調教済みですか。
美佐子の件を知っている辺り、調教過程を色々想像してしまいますね。
その辺の回想シーンなんかも見てみたいが、とりあえず次は美佐子か・・・
それとも唯か?
続きが堪らん待ち遠しいっす。
418名無しさん@ピンキー:02/12/01 01:31 ID:m6Q9kjTY
うっうっ、友美かわいそう

普通の彼氏だったいいけど、調教だったりしたら
なおさらかわいそう。うっうっ(つД`)
419名無しさん@ピンキー:02/12/01 01:50 ID:sAlV6gBO
調教だったら・・・友美の相手って写真デブ?
420旧1:02/12/01 02:09 ID:SwNVsCZb
  _, ._
( ゚ Д゚)来週に回すね。
421名無しさん@ピンキー:02/12/01 05:06 ID:n5XC8lcZ
・゚・(つД`)・゚・
422名無しさん@ピンキー:02/12/01 05:20 ID:/E8oBTSu
北ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
423名無しさん@ピンキー:02/12/01 07:27 ID:WoJvF+6p
>419
くっくっきっついなぁ・・(;´Д`)ハァハァ
424名無しさん@ピンキー:02/12/01 07:58 ID:q92vDCHr
ら、来週ついに1さまのSSの続きが読めるの?

ま、まるで、先輩の指使いに操られるようにわたしの白いヒップが淫らなダンスを踊りだす。(;´Д`)ハァハァ
425名無しさん@ピンキー :02/12/01 13:09 ID:GYmtbT6j
・・・みんな暇でいいね。
426名無しさん@ピンキー:02/12/01 13:14 ID:753B2CD1
み、美佐子さんのことが友美にバレてる…?
ぬぅ…先が気になりますな。期待マチ。
427名無しさん@ピンキー:02/12/01 22:35 ID:20Q7b6dS
美佐子さんは十分に堪能したので友美の回想シーンキボンヌ!
写真デブに脅迫されて・・・・
428職人志望:02/12/01 23:16 ID:f701+IvW
……ええと。まず、スッゴク気にかかることが。
>420 旧1さん
>来週に回すね。
もしかして……私、降臨の邪魔しちゃいましたでしょうか?
間が悪かった?(汗

……ええ、なんか友美がエラい反響を呼んでしまっておりますが・・・。
スミマセン、引き続き美佐子さんの話を続けさせていただきます。
友美の状況については、急遽↓のような場面を作ってみました。
429職人志望:02/12/01 23:17 ID:f701+IvW
[ いずみの部屋にて ]

「えええーーーっ!? 芳樹ーーーっ!?」
いずみが悲鳴のような声を上げた。
唯も目を見開いて、友美を凝視した。
友美が明かした、あまりにも意外な名前。
「ちょ、ちょっと待ってよ、友美。それ、う、嘘だろう?」
「本当よ」
いずみと唯を驚倒させておいて。友美は平然たる態度で、缶の紅茶を口へと運んだ。
「そ、そんな……友美が……あの芳樹と……」
信じられない、信じたくないといった表情のいずみ。
「そんな……友美なら、いくらでも相手はいるだろうに……」
あまりにショックが大きかったのだろう、いずみは、お互いにタブーと了解していた
はずの話を持ち出してしまう。
「いくら竜之介に気持ちが伝わらなかったからって。ヤケになったんじゃないのか?」
「いずみちゃん」
キッと、冷たい怒りをこめた眼で友美に見据えられて。
「ご、ごめん。竜之介の話は……」
「そうじゃなくて。ヤケになって付き合ったなんて、ひど過ぎるわ」
「あ、ああ。ごめん。悪かった……よ」
友美の言葉に、これは事実だと認めるしかないのだと気づかされて。
いずみが黙りこんでしまったから、室内にはしばしの静寂が訪れた。
430職人志望:02/12/01 23:19 ID:f701+IvW
「で、でもさ。私たちが驚いたのも無理はないって、わかるだろ?」
「そうかしら?」
「うん……。あの、その、さ」
予定では、相手の素性を聞き出したら、なれそめやデートの内容や、
さらには、どこまで進展してるのかということまで突っこんでやろうと思っていたのだが。
その勢いは完全にそがれてしまった。
それでも、この不釣合いに過ぎるカップルの成立理由は気になったから。
「……きっかけとか……教えてくれない?」
「………………忘れたわ」
友美は、胸をかすめた苦いものを表情には出さなかった。一瞬、瞳が揺れただけ。
「忘れた、って。つい最近のことじゃ……」
「友美ちゃん」
いずみの反駁を遮って、唯が呼んだ。ひどく真剣な声で。
「なに? 唯ちゃん」
「……芳樹くんの……どんなところが好きになったの?」
それもまた、いささか無礼な問いかけではあったが。
今度は友美は怒らずに、かすかに苦笑を浮かべて。
「そうねえ……。確かに芳樹くんは、カッコ良くないし。男らしくもないけれど」
あっさりと言い放つ友美。そこに明確な比較の対象があることを、唯もいずみも知っている。
「でも……私を求めてくれる」
「求め…るって、おい」
短い言葉に、ひどく生々しいものを感じてしまって、固い唾をのんだのはいずみ。
友美は、唯を正面から見つめて、けぶるような微笑を浮かべた。
「それは、嬉しいことだから」
「………………」
唯は、射すくめられたように、身動ぎも出来なかった。
友美の、言葉にはしない問いかけを聞いた気がして。
(“彼”は、あなたを求めてくれるの?)
唯には、答えることが出来ない。
……その傍らで。
「……ク、アアアッ」
つい友美と芳樹のラブ・シーンなど想像してしまったいずみが、ドツボにはまって、のたうちまわっていた……。
431職人志望:02/12/01 23:21 ID:f701+IvW
……なんか、あまり説明にもなってないようですが。
本編には組みこめなかったんで、こんなかたちで。

でわ、本編の続きです。
これが、また長いんだ……。スミマセン。
432職人志望:02/12/01 23:23 ID:f701+IvW
『憩』の窓にはブラインドが下ろされ、照明も半ば落とされている。
片づけと清掃を全て終えた店内は、ガランとした雰囲気。
仕事を終えた美佐子は、しかし家へと戻りはせずに、中ほどの席に腰を下ろしていた。
綺麗に拭き清められたテーブルの上に両手を組んで。
組み合わせた細い指が、落ち着かなく動いているのは無意識の動作だった。
美佐子の双眸は前方へと向けられているが、焦点を結んではいない。
例の、自分の内に篭った状態だった。
心中の混沌が、虚ろな表情を造り出している。
美佐子の精神状態は、唯たちが感じているよりも、ずっと不安定だった。
この時にも、固まったような横顔とは裏腹に、その意識野では、
さまざまな思索や感情が取りとめもなく流れていたのだが。
その中心部に重く凝り固まっていたのは、
“今日も、男からの呼び出しはなかった”ということだった。
連日のように続いていた男との“密会”が途絶えてから、今日で十日目になる。
正確に、美佐子はその日数を把握していた。
433職人志望:02/12/01 23:23 ID:f701+IvW
一日、二日目は半信半疑だった。
またいつ男から呼び出しがかかるかと、身構えていた。
しかし、なんの連絡もないままに、三日、四日と過ぎて。
ようやく美佐子は、しばらく時間を置くという男の言葉を信じる気になった。
だから、唯から訊かれた際に、知人の介護は必要がなくなったと答えたのだが。
すぐにそれは失敗だったと気づいた。また男から呼び出しがかかるようになれば、
別の口実を用意しなければならなくなるからだ。
この時点では、美佐子は、じきにそういう状況に戻ることを疑っていなかった。
こんなに呆気なく事態が解決するわけがない、と決めつけていたのだ。
これはあくまでも束の間の安寧であって、だから、さほどの安堵も開放感も沸いて
来ないのも当然なのだと、落ち着かない己の心理を分析していた。
だが。五日目も六日目も、男からはなんの音沙汰もなかった。
店で、家で、電話が鳴るたびに美佐子は身構えたが、そのたびに肩すかしをくわされた。
緊張と弛緩の繰り返しの中で、美佐子の精神は平静さを欠いていった。
一方では、身体の変調が美佐子を悩ませはじめる。
連日の荒淫から解放されて、身体の芯に澱んでいた重たい疲労は消えたのだが。
そのかわりに、奇妙な熱っぽさを、美佐子は感じるようになった。
それは四六時中つきまとい、そして日毎に強くなっていった。
なかなか眠りにつけない夜が続いて、美佐子は酒量を増やした。
……変調の理由については、美佐子は考えないようにしていた。
あまりも馬鹿馬鹿しい、決して認められない結論に辿り着いてしまいそうで。
434職人志望:02/12/01 23:24 ID:f701+IvW
何事もないままに、七日目を終えた時に。
もしかしたら、男はこのまま自分との関係を絶つつもりなのではないか?
という推察が、はじめて美佐子に芽生えた。
それもまた、ありえないことではない。
すでに、男は散々に美佐子の肉体を弄んだ。
それで充分に気を済ませて、男はこのまま離れていくつもりなのかもしれない。
土台が、不自然な異常な関係である。いずれ終わりは来るはずで。
この電話一本入らないという状況が、すでに終焉を意味しているのではないかと美佐子は考えた。
最後に逢った時の、別れ際の男の素っ気なさを思い出せば、尚更その疑念は強まった。
(あの男は……もう、私の身体には飽きたのかもしれない)
だとすれば、真の解放を自分は得たことになる。待ち望んでいたはずの。
しかし。
美佐子の胸には、なんの喜びも安堵も沸いてこなかった。
沸き上がったのは、強い焦燥であった。
『他にも、女はいる』という男の言葉を思い出すと、カッと胸が燃え上がった。
馬鹿な、と打ち消してみても、黒い感情の火は消えなかった。
そして、燻る火に炙られることで、身体に巣食った熱も高まるように感じられた。
(……どうかしている)
美佐子は無理に自分を嗤った。状況の急変に混乱しているだけだと。そして、
(だいたい、本当に解放されたかも、まだ確かではないのに)
と、留保することで自分を納得させた。
その夜は、特に寝苦しさを感じて、また酒の力を借りた。
そして、短く浅い眠りの中で、美佐子は淫夢を見た。
435職人志望:02/12/01 23:25 ID:f701+IvW
……場所は、ホテルの一室のようでもあり、自分の寝室のようでもあった。
ベッドの上に、美佐子は全裸で横たわっている。
美佐子の身体の上には、やはり裸で、あの男がのしかかっている。
あの凄まじい剛直を美佐子に突き立てて、激しく腰を使っている。
美佐子は両手両脚を男の体に巻きつけて、それに応えている。
ヒィヒィとヨガり狂い、オウオウと咆哮し、イイワイイワと快楽を叫び、
耳を覆うような卑語を吐き散らしながら。
脂っこい汗に、ヌメヌメと全身を淫猥に輝かせ。
男の肉体を咥えこんだ女陰からは、ブジャブジャと愛液を噴きこぼして。
ズブ濡れのヴァギナは、待ち焦がれた逞しい肉へ熱烈な歓迎を示して、
食いちぎらんばかりに絞めつける。
絞めつけることで、男の肉体の偉大さ、素晴らしさがいっそう強く実感されて、
美佐子は全身をのたうたせて、随喜の涙を流す。
いつの間にか、ベッド・サイドにふたつの影が立っていた。
唯と竜之介だった。
唯と竜之介は、無感情な目で痴れ狂う美佐子を見下ろしていた。
悲鳴を上げて、美佐子は夢から覚めた。
気がつくと、自分の部屋でベッドの上に上体を起こして、息を喘がせている自分がいた。
しばし、呆然とした後、ようやく全て夢であったことを納得して、ガックリと虚脱する。
全身が粘っこい汗にまみれていた。夢の中と同じように。
いまだ荒い呼気を吐き出しながら、ノロノロと肌に貼りついた夜着を脱いだ。
波打つ胸元で、両の乳首は硬く屹立していた。
こちらもグッショリと濡れたショーツを引き下ろす。無論、ショーツを濡らしているのは汗だけではなかった。
美佐子の股間は、目もあてられないような状態だった。
未明の寝室で、ひとり全裸を晒して。溢れ出した淫らな汁を始末し、汗を拭いた。
まだ茫然たる心地のままで。
着替えを済ませ、シーツまで取り替えて、再び横になっても。
もう眠る気にはなれなかった。眠るのが怖かった。
また、眠りに入れるような状態ではなかった。鼓動はいつまでも落ち着かず、
身体の芯に孕んだ熱は冷めなかった。
忙しなく何度も寝返りをうつことで、美佐子は朝までの時間を過ごした。
436職人志望:02/12/01 23:26 ID:f701+IvW
翌日。八日目。
美佐子はいつにも増して仕事に精励した。
しかし、『憩』は一日中の忙殺を与えてくれるほど、忙しい店ではない。
客が途絶え、することもなくなった隙をついては、前夜の夢の記憶が美佐子の意識を襲った。
それは美佐子を暗澹たる思いにさせた。なにか底無しの泥濘に落ちこんでいくような恐怖も感じた。
重苦しい心地は、時間が経つほどに強まり、この日も男からの連絡がないままに閉店時間を迎えた時には、
暗い絶望が美佐子の胸を満たした。
夜を迎えることが怖かった。眠りにつくことが。
就寝の時間になっても、美佐子は寝室へ入る気になれず、灯りもつけないキッチンで座りこみ、
無為に時間を費やした。
深更になり、翌日の仕事のことを考えて、仕方なくベッドに入って。
恐れながらも、前夜の睡眠不足のせいか、すぐに眠りは訪れたが。
恐れたとおりに、淫夢もまたやって来たのだった。
やはり、どことも知れぬ部屋のベッドの上で、美佐子は男と交わっていた。
その狂乱ぶりは、前夜よりさらに烈しさを増していた。
夢の中の美佐子は白い蛇のように男の身体に絡みついて。
乱れた髪をふり、乳房を揺らし、腰をのたうたせた。
感泣し、咆哮し、淫らな言葉を叫び続けた。
また、いつの間にか唯と竜之介が現れて。冷たい目で美佐子を見つめたが。
夢の中の美佐子はそれに気づいても、快楽を求めることを止めようとはせずに。
むしろ、ふたりに見せつけるように、自ら卑猥なポーズをとり、臀をふって男を誘った。
437職人志望:02/12/01 23:26 ID:f701+IvW
唯たちに見られることが、いっそう愉悦を深めて。際限なしに快楽は高まっていった。
しかし、この時も、絶頂の直前で突然淫夢は断絶して、美佐子は目覚めた。
現にかえっても、しばし美佐子は、なにも考えられずに。
汗に濡れた頬に乱れた髪を貼りつけたまま、ただ荒い喘ぎをついていたのだが。
やがて、乱れているのが髪だけでないことに気づいた。
上掛けは撥ねのけられ、湿ったシーツには皺がよっていた。
夜着は首元まで捲り上げられ、乳房が剥き出しになっていた。そして、剥き出しの乳房を
自分の手がわし掴みにしていた。
美佐子のもう片方の手は、しどけなく開かれた両腿の間に伸びて。
半ば以上ズリ下がったショーツの中に潜りこんでいた。
美佐子は顎を引いて、濁ったままの瞳で、己のあさましい姿勢を眺めた。
深く指を食いこませて、歪に形を変えた肉丘の頂きでは、セピア色の乳首が痛々しいほどに
充血して尖り立っていた。
股に伸ばした手の指先には、失禁したかのような夥しい濡れを感じた。
夜気の中に晒された肌からは、かすかに湯気さえ立っていて、肉の火照りのほどを示していた。
しかし、この時の美佐子の顔には、悲嘆も羞恥も浮かぶことなく。
美佐子は、そのまま擡げていた頭を枕に落とし、そして目を閉じた。
まだ、自分は目覚めていない。まだ、夢の中にいる。
そう心に呟いて。
美佐子は、おずおずと両手を動かし始めた。
438職人志望:02/12/01 23:27 ID:f701+IvW
あくる日、九日目。
一日を、美佐子は自分への言い訳を胸中に呟き続けて過ごした。
あれは、仕方のないことだったのだと。
自分とて、女だ。生身の血肉を持った女なのだ。
時に、欲望に衝き動かされてしまうこともある、と。
だが、そんな通り一遍な理屈では、自分を誤魔化すことは出来なかった。
前夜……二晩続きの淫夢に苛まれた美佐子は、自分の指で疼く肉体を慰めた。
久しく遠ざかっていた行為の果てに、絶頂を得て、深夜の寝室に小さな嬌声を響かせた。
しかし、得られた快感も、その極まりも、あまりにも弱く頼りないもので。
少しも、肉の火照りを冷ましはしなかった。
渇いた砂地に落とされた一滴の水のような微弱さは、いっそう渇望を際立たせただけだった。
淫らな作業を終えたばかりの美佐子の両手は、そのままの場所から離れることなく。
すぐに連続した行為に移った。より激しく、あからさまな動きで。
結局、続けざまに三度の極まりを得るまで、美佐子の自涜の行為は続いた。
それでもなお、満足には遠かったが。疲労によって、美佐子はようやく眠りについたのだった。
淫らな一夜が明けて、普段通りに店を開けてからも。
美佐子の身体の奥では、消しきることの出来なかった火が燻り続けて。
チロチロと、内側から肉を炙りたてて、美佐子を苦しめていた。
だから、美佐子は認めざるを得なかったのだ。この渇きが、健全な肉体としての
当たり前な衝動ではないことを。
夫と死別して十年の間にも、孤閨を保つ身体の火照りを感じたことはあった。
しかし、それはほんの時折のことであり、たまに起こったとしても、ごく微弱な欲求であった。
宥めるための行為も、ほんの大人しいもので済んでいた。
それが。
439職人志望:02/12/01 23:28 ID:f701+IvW
前夜の自分の醜態を思い返して。
あらためて、自分の肉体が変えられてしまったことを、美佐子は認めざるを得なかった。
夫の死後、独り居の中でも貞節さを保てたのは……なんのことはない、本当の性の悦びを知らなかったからだ。
卑劣な手段で自分を凌辱した憎むべき男によって、美佐子は初めて快楽のなんたるかを
教えこまれてしまったのだ。
昨夜、いくら指を使っても肉の餓えを満たすことができなかったのは、比べてしまっているからだ。
あの男に何度となく与えられた、この世のものとも思えぬほどの快楽と。
しかし、男はプッツリと接触を絶ってしまった。再び、美佐子の前に現れるかどうかもわからないのだ。
(こんな身体にしておいて……)
そう思えば、恨めしさが沸いた。身勝手な男に対して。憎しみではなく恨みが。
『憩』の電話が鳴ることは、そう多くはないのだが。そのわずかな機会のたびに、美佐子の鼓動は跳ねて、
しかし、直後に虚脱を味わうことになった。
店の前に車が止まれば、機械的に働く手を止めて、外のようすをうかがった。
学校から帰った唯が手伝いに出てきてからも、美佐子はそんな自分の行動を隠す余裕を失っていた。
当然、唯は、この数日の母の変調ぶりに気づいていて、それが日毎に強まっているのを不安を持って
見守っていたのだが。

「おかあさん……もしかして、好きなひとでも、できた?」
この日、閉店作業を共に行っている途中に、遠慮がちに、そんなことを切り出したのは、
母のおかしな挙動に、なんらかの理由づけを欲したものだろう。
「えっ?」
虚をつかれたように、唯を見返した美佐子。わずかな、微妙な間合いがあって。
「な、なにを言い出すのよ。ビックリするじゃないの」
慌てて否定したが。声は上擦っていた。
「違うの?」
「当たり前です。いきなり、変なこといわないで。おかしいわ」
狼狽の気ぶりを消せないままに、話を打ちきる美佐子。
「そう……」
唯は少し残念そうに引き下がった。
440職人志望:02/12/01 23:29 ID:f701+IvW
その夜。寝室に入って。
これから迎える眠りへの恐れとの逡巡はあっても、それでも独りきりになれることに安堵した。
家族の、特に最近なにかと気づかってくる唯の目から解放されたことに。
平静を装うことが苦痛なのではなかった。
そばに唯がいて、自分を見ているのだと意識し続けることが、難しくなっていたのだ。
美佐子はガウン姿で、鏡台の椅子に座り、鏡に映る自分と対峙していた。
『おかあさん……好きなひとでもできた?』
この日、唯が突然投げかけてきた言葉を、美佐子は反芻していた。
本当に、唐突すぎる問いかけではあったが。唯は、真剣にそう訊いてきた。
ならば、いまの自分の様子は、そのようにも見えるということなのだろう。
誰かのことが……好きな男のことが気にかかって、常に心を浮遊させている、というように。
まるで、悪い冗談だと思った。
確かに、いまの美佐子は、それこそ四六時中、ある男のことを考えている。思わずにはいられなくなっている。
しかし、その男は間違っても“好きなひと”などであるはずがない。
卑劣な脅迫者。憎んでも、あまりある相手だ。
(……そう……そうでしか、ないはずなのに……)
好きなひと―恋しい男はいる。竜之介だ。
他の男に汚されてしまったことで、諦めざるを得ないとも悲しんだけれど。
いま、“好きなひと”は誰かと問われれば、竜之介以外にはいないはずだ。
そのはずなのに。
『好きなひとでもできた?』
……何故だろうか? 
何故、唯からそう訊かれた時に、脳裏に浮かんだ顔が竜之介のものではなかったのだろうか?
441職人志望:02/12/01 23:29 ID:f701+IvW
(馬鹿げている)
美佐子はかぶりをふって、己の深層と向き合うことを中断した。
いまだに自分は混乱しているのだと、お決まりとなった言葉を繰り返す。
(だいいち、あの男はもう……)
自分を見限ったではないか、と胸に呟く。
この頃にはもう、美佐子の中では、その認識が確信に近いものになっていた。
それに、なんの喜びも感じない自分の心も、美佐子は追及しようとはしなかった。
(………………)
美佐子は鏡に映る自分の顔を眺めた。
暗い眼をした、中年女が映っていた。
湯上りで、化粧を落とした顔。
肌は、まだ瑞々しさを保っていると思えるが。
それもしょせんは『年齢のわりには』という前置きがつくのだ、と。
目尻に現れた小さな皺を、指先でなぞる。
美佐子は、さらに表情を憂鬱なものにして。
そっとガウンを脱ぎ下ろした。続いて夜着を。
ショーツ一枚の姿になって、鏡に映った裸の上半身を検分した。
剥き出しになったふたつの乳房。
なんだか……形が以前とは違っているように思えた。
衰えたというのではない。豊かな充実を誇りながら、さほどの垂れも見せずに張り出している。
しかし、明らかに以前とは違う彩り……どこか淫らな色が滲んでいるように感じられた。
それに誘われるように、両の手を伸ばした。
そっと、下から重たい肉を持ち上げるようにする。
フ……とかすかな息が鼻から洩れた。自分の冷たい指の感触に。
その敏感さは、間違いなく、このひと月の間に磨かれたものだ。
442職人志望:02/12/01 23:30 ID:f701+IvW
美佐子は、悩ましく眉をたわめながら。
搾るように握りしめたふたつの肉丘を前へと差し出す。
すでに頭を擡げたセピア色の乳首が、鏡に映る。
子を産み育てた女の乳首。弱い照明の下で、その部分の色づきが、ことさらに濃く見えた。
「……確かに、年増の身体だわ」
度々、あの男が口にした言葉を呟いて、自分を卑下してみる。
いくら『いつまでも若々しい』などと決まり文句のように言われてはいても。
こうして、裸になって肉体の特徴を眺めれば、年相応のものでしかないと、自嘲に胸を痛めるが。
この時に思い浮かべていたのは、はるか年下の若者のことではなかった。
指に、力を入れてみた。
細く白い十指が、柔らかな肉の中に沈んでいく。
「……ウ……ン……」
甘い声を洩らしながら、ジッと鏡に映った肉房を観察した。
指の蠢きにつれて、かたちを変える柔肉。たやすく熱を孕んで、蕩ける。
「……いやらしい……」
詰る言葉は、弾みながらたわむ乳房のさまを言ったのか、はやくも息を荒げてしまう
自分の感覚を評したものか。……どちらも同じことか。
そのまま、乳揉みに耽溺してしまいそうになるのを堪えて、美佐子は胸から両手を引き剥がした。
立ち上がって。たった一枚残ったショーツに手をかけると、躊躇いなく引き下ろした。
完全に白い肢体をさらして、鏡に向いた。少し下がって、胸元から膝のあたりまで映るように。
なめらかな腹に手を滑らせた。
わずかな脂肪を乗せて、まるやかな線を描く下腹部。
その下側に、広く繁茂した濃い叢。
「……いやらしい……」
また、その言葉を美佐子は呟いた。俗説にもあるように。その黒々とした翳りもまた、
自分の肉体が秘していた貪婪さの顕れであるように思えてしまうのだった。
443職人志望:02/12/01 23:31 ID:f701+IvW
梳るように、指を濃い叢へくぐらせた。
腰を前へと突き出して、指を這わせた股間を鏡に近づけた。
映し出された、自分の放埓な姿を凝視しながら、さらに手を奥へと潜らせた。
手指の動きやすいようにと、両腿を左右に広げ、膝を外向きに曲げるようにして。
「……ひどい格好」
鏡の中の、ブザマな女を嗤う。そうすることに、奇妙な昂奮を覚えた。
いっそ、自分という女の淫らがましさ、あさましさをとことんまで暴き立てて嘲笑ってやろう、
という衝動が美佐子の中に生まれていた。
自虐の指が、繊細な肉花を開く。指先に触れた湿潤。
鏡の中で、毒々しく咲いた花。花弁に光る滴。
まじまじと、美佐子はそれを見つめた。
自分の“女”を、これほどハッキリと目の当たりにしたのは、生まれて初めてだ。
「……なんて……淫らな……」
実感がうわ言のような言葉となって、洩れた。
こんなにも淫猥だったのかと思う。
こんなものを肉体の中心に持っていればこそ、自分の本性は、こんなにも淫奔なのだと納得できた。
『これで、貞淑な未亡人のフリをしてたってんだから』
男の嘲りが、蘇る。不思議なほどに、美佐子は、自分を嬲る男の言葉を記憶に留めていた。
いまは、わかる。男は正しい。
こんな淫らに爛れた肉を持った女が、貞淑であるわけがない。
そんな姿は仮初のものだったのだ。自分でも気づかずにいたけれど。
こんな肉を抱えて。そしていまも、こんな破廉恥なマネをする女の本質が、
『良き母』や『貞婦』などであるはずがないのだ。
「……牝」
端的に、己の存在を表す言葉を美佐子は呟いて。ブルッと腰を慄かせた。
444職人志望:02/12/01 23:32 ID:f701+IvW
美佐子は酩酊にも似た状態に陥っていた。
自らの眼で確かめた、己が淫蕩の色と香に酔ったように。
トロンと双眸をけぶらせて、頬を上気させて。
そして、股間にさしこんだ手と、高く息をつく乳房を握りしめた手に、ハッキリと
快楽を求める蠢きを開始させた。
思い描くイメージ、愛撫の手がなぞるのは。
無論、亡夫との閨の記憶ではなく。竜之介との一夜の思い出でもなかった。
美佐子以外に、たったひとり、彼女の本性を知る男。
美佐子に初めて、本当の肉の悦びを教えこんだ男の荒々しくも巧妙な動きだった。
「……フ……ア……」
男がしたように、指の腹で、固く膨張した肉芽をこねくった。
男の手と同じように、搾るように熱い乳房を揉みたくり、先端に爪を立てた。
直截の刺激が、悦楽の記憶とシンクロして、美佐子の肉体を甘く痺れさせたが。
まだ、足りない。
あの男に触れられた時の快感は、こんなものではなかった。
焦燥と渇望にせかされて、ならば、と美佐子はさらに忠実に男の嬲りを再現しようとした。
性感の源泉にあてていた両手を外して、身体の向きを変えた。
首をねじって、鏡に映った自分の背姿を眺めた。
白くなめらかな背中と、くびれた腰。そして雄大な臀。
美佐子は両手をまわして、ムッチリと張りつめた臀の表面を撫でまわした。
鏡に映るそれは、角度のせいかいっそう逞しい量感をしめしていた。
もともと、大きすぎるのではないか、と密かに気にやんでいたパーツ。
しかし、あの男が最も執着していた部分だ。
(このお尻にも、飽きてしまったの……?)
嘆くような問いかけを呟きながら、美佐子は、さらに後ろへと突き出した豊臀の肌を愛撫した。
ジワジワと性感が高まって、分厚い肉は内側からの熱に火照りはじめる。
本来、さほど敏感ではないはずの場所を、こんなに感じ易く変えてしまったのも、あの男なのに。
切ない恨みが沸いて、思わずギュッと指を臀肉に食いこませた。
445職人志望:02/12/01 23:33 ID:f701+IvW
ハァと、大きな息を吐いて。
美佐子は鏡に尻を向けたまま、上体を倒していった。
洗い髪が床に落ちるのも気にかけず、深く前屈して。両脚を横に広げてバランスをとった。
最初の凌辱の時、男に強要されたポーズだった。
逆転した視界の中、両腿の間から鏡を見上げる。
自ら晒した最悪の姿態が忠実に映し出されていた。
大きな尻を掲げて。開いた脚の間に、逆むきに垂れた乳房を揺らして。
その下から血を昇らせた紅い顔で、トロンと蕩けた眼で見ている女。
滑稽で、無様で、とてつもなく淫猥な姿を、美佐子は嘲笑った。
嗤いながら、息苦しいような昂奮を覚えた。
(……もっと……もっとよ……)
グッと指をたてて、掴みしめた臀肉を左右に割り開いた。
薄明かりの下に、秘めやかな女の部分が完全に暴きたてられた。
臀の白さと強いコントラストを描く色づき。皺を刻んで、まばらな毛に縁取られたセピア色の蕾。
やはり濃い翳りに覆われた肉厚な花弁は、よじれ開いて。鮮紅色の内肉まで覗かせていた。
見つめる間にも、トロトロと零れる淫らな液で、女肉はテラテラと濡れ輝いていた。
「……アアァ……」
感にたえたような声を上げて、美佐子はブルルと臀を震わせて。
剥き出しになった欲望に従って、片手を前からくぐらせて、物欲しげに開いた女陰へと指を突き立てた。
ジュブッと隠微な音をたてて、性急な二指の挿入を、美佐子の膣は抵抗なく受け入れ、貪欲に咥えこんだ。
「アハァ……ア、アァ」
勝手に口をつく感悦の声を、美佐子は抑えようともしない。
根元まで挿しこんだ指を、そのまま激しい挿送に移らせた。
「ウン、アッ、いっ、ウウン」
ジュッポッジュッポと、猥雑な水音をかき鳴らす指は、懸命に男の技巧を模倣した。
熱いぬかるみの中で、バタ足のように蠢きながら、とろけた襞を掻き擦る。
446職人志望:02/12/01 23:33 ID:f701+IvW
「アッ、いぃっ、もっと、もっと」
前夜の行為よりはるかに強い快感を味わいながら、美佐子はさらなる高みを求めた。
臀肉を掴んでいたもう一方の手を口元にまわして。あえぎをつく舌を伸ばして、タップリと唾液をまぶすと。
その手を股間に差しこんで、唾にまみれた指で、屹立した肉芽をくじった。
「アイィッ、アッ、アアッ」
ビリビリと腰骨に走る甘美な電流に甲高い叫びを迸らせて、頭をふりたくった。
汗を含んだ髪が、バサバサと絨毯を掃いて散らばる。
美佐子は途切れない感泣を洩らしながら、ますます指の動きを激しくして、行為に耽溺する。
(もっと、もっと、もっと)
赤く染まった脳裏には、その言葉だけが反響していた。
女肉を抉る指を三本に増やして。真っ赤に充血した肉芯を引き伸ばすように扱きたてながら。
美佐子は顎を引いて、再び鏡の中の自分へと眼を向けた。
恥を忘れた淫乱な年増女が、これ以上はないような醜態を晒していた。
ふてぶてしいほどにデンと張り切った臀をふりたくって。
グニャグニャに溶けた肉を詰めたふたつの胸乳をブラブラと揺らして。
ビンビンに勃起した大ぶりな肉芽を、自分の唾と愛液に濡れた指に挟んで。
寂しい寂しいとすすり泣く哀れな肉穴に、三本も指を突っこんで。
淫猥な臭気を放つ熱湯のような淫蜜を、とめどもなく噴きこぼして。
獣だ、と思った。発情した牝の獣がそこにいた。
急激に昂ぶりを強める官能に、総身を小刻みに震わせながら、美佐子は鏡の中の牝を憐れみ嘲った。
すると、鏡の中の牝も蔑みをこめた眼で美佐子を見た。
「……アアァッ!」
その瞬間に、快楽が臨界を越えて、美佐子は軽い絶頂に達した。
しばし、その余波の中で、ゼイゼイと喉を鳴らし、脾腹を喘がせたが。
(もっと、もっと、もっと)
頭の中の声は止まない。
そう、こんなものでは足りない。これっぽちの快楽では、少しも満たされない。
447職人志望:02/12/01 23:34 ID:f701+IvW
指ではダメだ、と美佐子は気づいてしまっていた。
深く折っていた首をもたげて、薄明かりに照らされた室内を物色した。
視線がベッド・サイドにとまる。
サイド・テーブルに置かれたワインのボトル。昨夜の寝酒に用いたものだ。
美佐子は潤んだ眼を輝かせて、ベッド・サイドへと歩み寄った。
持ち上げたガラスの瓶を検分する。ボトルの底にはふた口分ほどの赤い酒が残っていた。
美佐子はコルクを抜くと、ラッパ飲みにあおった。ほとんどひと息に瓶の中身を飲み干した。
口の端から零れた酒が、顎へと一条の赤い軌跡をつくり、胸肌へと滴った。
口から離したボトルを、両手で捧げ持つようにして。
美佐子は赤く染まった舌を伸ばした。舌の先端で、瓶口の輪郭をなぞるように舐めまわす。
そのまま、舌を離すことなく舐め下ろした。顔を左右に振り、瓶を回すようにして、
細い先端の部分に満遍なく唾液をまぶした。
それから、再び瓶口を含むと、ゆっくりと両手を動かして、咥えたボトルを前後させた。
キュッと窄めた唇を、ガラスの筒が出入りするたびに、チュプチュプと唾液が弾けて。
美佐子の頬が淫猥に蠢くのは、口中の固い物に舌を使っていたから。
それはまぎれもない口戯だった。冷たい無機物を相手としたフェラチオの行為。
美佐子は鼻から荒い息を噴きながら、両手と同時に頭を前後に振って、しばし没入した。
口も舌もまた餓えていたのだ。固い物を咥えこんで味わうことに。
無論、口中のボトルは、美佐子が本当に求めているものには程遠かった。
実用に可能な先端部分はあまりに細く、長さも足りなかった。
ゴツゴツとした節くれもなければ、脈動もしない。
なにより、舌を灼くような熱がなかった。
そんな当たり前な事実に、いちいち落胆と不満を感じながらも。
せめて、その確かな固さを味わおうと、美佐子は甘く鼻を鳴らして、
口の中のガラスのペニスへと舌を絡めた。
448職人志望:02/12/01 23:36 ID:f701+IvW
やがて。ようやく擬似的なフェラチオ行為に満足したのか、肉の昂ぶりに次を急かされたのか。
むしゃぶりついていたボトルから、美佐子が口を離した。
粘い唾液が、ツーと糸を引いた。
美佐子は瓶を手に、鏡の前へと戻った。
ベッドに上がろうとは思わなかった。この後に演じようとする極限の痴態を自らの眼で見たかったし。
獣の牝が痴情の限りをつくすのには、ベッドなど相応しくないという思いがあった。
より相応しい場所、床の上に美佐子は這いつくばった。先程までと同じく鏡台に臀を向けて。
迷うことなく、美佐子はその体位をとった。男が最も好み、自分もまた最も強い快感をえたかたち。
首をねじって、鏡に映る姿を確認する。
四つ足で這ったさまは、ますますあさましく惨めで。そのことに被虐的な昂ぶりを感じながら、
ああ、似合いの格好だと奇妙な安堵も覚えた。獣なら、サカリのついた牝ならば。
ワイン・ボトルを底部で握った手を背後にまわした。もう一方の手を腹の方からくぐらせて、
先端を誘導する。
固い瓶口が触れた瞬間、期待に胴震いを走らせて。
「き、来てぇっ」
泣くような声で美佐子は求めていた。淫猥なひとり芝居を虚しいとか滑稽だとか感じる自意識さえ失って。
ニュルン、と滑らかにガラスの筒は潜りこんだ。
「ハアアアァッ」
陶然とした声が、美佐子の鼻から抜ける。
量感と迫力に乏しくても、確かな固さがある。貪婪にガラスの男根を食いしめる秘肉に感じる。
「つ、突いてぇ」
美佐子は媚びた流し目を背後にくれて、乞い願った。そこに求める男がいるかのように。
それに応えて、尻にまわした手が握りしめたボトルを前後に滑らせ始める。自作自演の凌辱劇。
449職人志望:02/12/01 23:37 ID:f701+IvW
「ヒッ、ああ、いっ、もっと、もっとぅ」
乱れた髪をふり、重く垂れ下がった乳房をふり、汗を浮かべた白い豊臀をふりたくって、
美佐子は酒瓶とのファックに痴れ狂った。
際限なく溢れ出る熱い淫汁が、ボトルをつたって絨毯の上に垂れ落ちる。
ギリギリまでガラスのペニスを打ちつければ、太く広がった瓶の胴部が臀肉を叩いて、
ペッタペッタと間抜けた音を鳴らす。
深く挿入したままで、グリグリと回せば、固い瓶口が襞肉をこそげて、たまらない快感が走った。
「うあっ、いい、いいの」
ガラスの男根は、やはり奥地を叩くには寸足らずだったが。
それでも、指では届かなかった部分への刺激が、たまらなく快美で。
「アッ、いきそ、い、いく、いきそう」
美佐子は兆した極まりを求めて、さらに激しい凌辱を自らの肉体に与えた。
顔と肩で上体を支えて、瓶を突きこむ手の動きを一際強めて。もう片手で、
引きむしるように女芯を嬲って。
「アアア、いく、イク……いっくううっ!」
裏返った叫びとともに、四つん這いの白い裸身が硬直して、その後にガクガクと痙攣を刻んだ。
「……ファ……ア……ハァ……」
やがて、脱力した肢体が絨毯の上に突っ伏した。ゴトッと、重たい音をたてて、ボトルの底が床を打った。
先端はまだ美佐子の中に入ったまま。
まだ物欲しげにわななく、美佐子の“女”にしっかと咥えこまれたままだった……。
450職人志望:02/12/01 23:38 ID:f701+IvW
……それが、昨夜までの美佐子の行状だった。
夜毎に狂いようを強めて。そして前夜の、これ以上はない破廉恥なふるまい。
今朝、短く深い眠りから覚めた時に、理性を取りもどした美佐子が感じたのは、
自分への絶望と敗北感だった。
朝の光りに照らし出された部屋の中の、狂乱の夜の痕跡が美佐子を苛んだ。
空気に残る淫猥な臭気。床に脱ぎ捨てられたガウンと夜着と下着。
不自然な位置にどけられた鏡台のストール。周辺の絨毯に点々と着いたシミ。
そして。美佐子が一夜の相手としたワイン・ボトル。
やはり、床に転がっていた空の酒ビンの、表面はベタベタした粘液にまみれ、
先端部分には恥毛が貼りつき……瓶の底には、白っぽい液が溜まってさえいたのだ。
目覚めて最初にしたことが、それら痴宴の残滓を片づけることだったのだから。
この一日をまともに過ごせるはずもなかった。
土曜ということで、唯が開店から手伝いに出ていた。竜之介も、店で時間を過ごした。
せめて、ふたりの前では平静を保たなければ、という美佐子の自戒は長くは続かなかった。
仕事に集中しているつもりでも、ふとした瞬間に昨夜の自分の醜態が蘇って。
そこから思索はとめどない連想と循環を始めてしまう。
すでに自分の変調に気づいている唯たちが、心配そうな眼を向けていることがわかっても。
どうしても、目の前のことに意識を繋ぎ続けることが、美佐子には出来なかった。
451職人志望:02/12/01 23:38 ID:f701+IvW
だから、閉店後、店にひとりになった時には、苦行を終えたような安堵を感じた。
慣れた作業をほとんど機械的にこなして。
すぐに家の中へ戻る気にはなれず、座りこんでしまった。
灯りを落とした店内に、ひとり座って。考えていることは例のごとし。
今日も……男からの連絡はなかった。
そして、自分はまた夜を迎えなければならない。
美佐子の心境は、途方にくれる、という表現が一番似つかわしかった。
(……どうすれば……私……)
どんなに昨夜の醜態を恥じていても。またひとりの寝室で、自分を律しきれる自信はなかった。
……このまま、本当に男が接触を絶ってしまって。
残された自分は。
やがて、時がたてば、あの男のことを、男に教えこまれた愉悦の記憶を忘れて、もとの自分に戻ることが出来るのか?
とても、そうは思えなかった。
ならば、これからは毎夜、あんな痴態を演じて、自分を慰めるのか?
この身体に棲む“女”が枯れ朽ちるまで? 
それは……あまりにも惨めすぎる。
美佐子は暗い眼を、カウンターの電話に向けた。鳴らない電話に。
男からの呼び出しは、いつも一方的なもので。
美佐子は男の連絡先を知らなかった。知る必要などないと思っていたのだが。
こんなことなら……と悔む気持ちがわく。
もう、そんな思考を、馬鹿げたことと誤魔化すことは出来なくなっていた。
認めざるをえない。あの男からの連絡を待ち侘びている自分を。
……暗きへと傾き続ける美佐子の思索は、呼びに来た唯によって、ひとまず打ち切られた。
452職人志望:02/12/01 23:39 ID:f701+IvW
唯は夕食を終えると、いずみの家へと出掛けていった。
竜之介は、テーブルに肘をついて、流しに立つ美佐子後ろ姿を眺めている。
食事の間も、美佐子のようすは相かわらずだった。この数日間の、奇妙にぎこちなく
不自然な態度。口数も少なく、眼の色は暗い。
真剣な顔で、美佐子の背中を眺めていた竜之介は、姿勢を正して、思いきったように声をかけた。
「美佐子さん」
「……え? なに?」
わずかに反応は遅れて。美佐子は少しだけ顔を後ろに向けて聞き返した。
声をかけられた瞬間に示す妙な緊張も、最近の美佐子の習性になっている。
竜之介は、そのことには触れずに、落ち着いた口調で続けた。
「さっき、唯に、俺たちのことを話そうとしたんだ。俺と美佐子さんのことを」
「私たちの……こと?」
美佐子は、数瞬考えるそぶりを見せて、
「えっ!?」
ようやく竜之介の言わんとすることを理解すると、ハッと振りかえった。
「竜之介くんっ……」
「いや、結局言わなかった。言えなかったんだけど」
バツが悪そうに、竜之介が付け足した言葉に、美佐子はホッと力を抜いた。
「驚かせないで」
「ごめん」
睨む美佐子に謝って、しかし竜之介は表情を引きしめて、
「でも、本当に、そうしてもいいと思ってるんだ」
確固たる口調で告げると、美佐子は不安げに眉をよせた。
「どうして……? 急にそんなことを……」
「美佐子さんが、なかなか言い出せないみたいだから」
率直に、竜之介は言った。
唯が不在のこの時を好機として、美佐子と腹を割った話し合いを持つつもりだった。
453職人志望:02/12/01 23:40 ID:f701+IvW
「それ、は……」
「わかってる。そう簡単に切り出せることじゃないよね。そのことで、ずっと美佐子さんは悩んでる。
 最近ようすがおかしいのも、そのせいだって……俺は思ってるんだけど?」
「………………」
「だったら、それは俺の問題でもある。美佐子さんひとりに押し付けていいことじゃない」
「……竜之介くん」
「俺にも、うまい伝え方なんてわからない。怖い気持ちもあるよ。
 でも……これ以上、美佐子さんが暗い顔をしてるのを見ていたくはないんだ」
「………………」
「俺だって、俺たちの関係が、そうスンナリと受け入れられるものじゃないことはわかってる。
 唯に限らずね。でも、俺は、美佐子さんだって決めたから。その気持ちは、なにがあっても変わることはないから。
 だから。どんなことも、ふたりで乗り越えていけたらなって」
「………………」
不意に。美佐子は顔を伏せると、口元を両手で押さえて。クッと嗚咽の声を洩らした。
両目から、ポロポロと涙を零して。
「み、美佐子さんっ?」
驚いて、腰を浮かせた竜之介。
「どうしたんだよ?」
うろたえながら、立ち竦んだまま声を殺して泣き続ける美佐子の傍らに立って。
ためらいがちに、震える肩に手を伸ばすと。
「うわっ」
フラリ、と。胸に美佐子がもたれかかってきて、さらに慌てることになった。
「美佐子さん?」
「……ご、め……ごめん、なさい……ご、めん……ね……」
竜之介の胸に顔を埋めて。なおも嗚咽に身体を震わせながら、切れ切れに美佐子が言葉を返した。
「…………」
竜之介は、両腕を美佐子の肩に回して、そっと抱きすくめた。
ビク、と一瞬強張った美佐子だったが、すぐに力を抜いて、竜之介に身を預けた。
甘い髪の香を嗅ぎながら。竜之介は美佐子が泣き止むまで、こうして抱いていようと思った。
454職人志望:02/12/01 23:43 ID:C9jr6lwq
竜之介の胸の広さと暖かさを、美佐子は感じている。
包みこむように抱きしめてくれる腕の優しさ。
こんなにも……彼は自分のことを思ってくれているのだ。そう実感すれば。
新たな涙がわき上がってくる。
美佐子が流しているのは、自責と慙愧の涙だった。
これほど真摯な純粋な想いを、竜之介は注いでくれるというのに。自分は。
どれだけ竜之介のことを意識に乗せてきただろうか?
あの男から頻繁に呼び出されていた時には、ひたすら発覚を恐れるだけで。
男が遠ざかってからは、男の真意をはかることと自分の内の奇怪な変調にばかり気をとられて。
挙句は……満たされぬ欲求に悶々とするばかりで。
竜之介とのことなど、意識から追いやってしまっていたのだ。
恥かしさに消え入りたくなる。申し訳なさで、竜之介の顔を見ることが出来ない。
だが。強い抱擁が心地いい。伝わる竜之介の体温が、この上ない安らぎを与えてくれる。
勝手だと、虫がよすぎると自分の感情を責めても。
追いつめられた美佐子には、竜之介が向けてくれる一途な想いだけが、最後の希望のよすがと思えて。
それに縋らずにはいられなかった。
だが、そのためには通過儀礼が必要だ。
すべてを……打ち明けようと美佐子は決意する。
これまで竜之介に隠してきた事実を、自分の身の起こったことのすべてを告白して、彼の裁断を受けよう。
美佐子は涙に濡れた顔を上げて、竜之介と眼を合わせた。
「あ……」
「竜之介くん……」
至近の距離から見つめあったまま、美佐子は告白の言葉を紡ごうとして。
455職人志望:02/12/01 23:44 ID:C9jr6lwq
しかし。そこで舌を凍りつかせてしまう。
すべてを……告げる? すべてを?
あの男に脅迫され、身体を汚されたこと。何度も。
それだけなら……きっと竜之介は赦してくれるだろう。美佐子を責めはせず、逆にいたわってくれるだろう。
だが。それが事実のすべてではない。
脅迫者との意にそまぬ情交の中で、快楽に溺れた自分。
男が去って後も、開発された官能の疼きに負けて、ひとり痴態を繰り広げた夜。
満たされぬ欲望に、忌むべき男が戻ってくることを望む気持ちさえ抱いてしまったこと。
そんなことを、すべて明かすというのか?
しかし、都合よく自分の変貌ぶりだけを除外してしまえば、それは欺瞞になる。むしろ、
より酷い裏切りになるだろう。
そんな思いが決意を鈍らせて。美佐子の逡巡は長く続いた。
結果として。
その躊躇いが美佐子の運命を決した。
「……美佐子さん?」
物言いたげに、口を開きかけたまま固まってしまった美佐子に、竜之介が訝しげな表情を浮かべた。
そして。

トゥルルルル……。

まるで見計らったかのように鳴り出した電話が、タイム・オーバーを告げた。
456職人志望:02/12/01 23:45 ID:C9jr6lwq
突然鳴り響いた電子音に、ハッと反応した竜之介が、美佐子の身体にまわした腕をといた。
「……あ…」
抱擁をとかれた美佐子は、我知らず惜しむような声を上げて。
すぐにそれを恥じたように顔をそらして、電話へと向かった。
この場での告白の機を逸したことに、落胆と安堵の入り混じった複雑な思いを感じて。
「……はい」
なかばうわの空のまま、美佐子は電話を取った。この数日、条件反射のようになっていた
緊張も身構えもないままに。
『よお、美佐子か。久しぶりだな』
「……!?」
だから、受話器から聞こえたその声は、絶大な衝撃を美佐子に与えたのだった。
「え、あ……」
咄嗟には、言葉が出ずに。
すぐに、そばにいる竜之介のことを思い出して。美佐子は、出来るだけさりげなく竜之介に背を向けて、
表情を隠すと、取り繕った声で応答する。
「お、お久しぶりですね」
『なんだあ? よそいきの声なんざ出しちまって。……ハハァ、娘かガキが近くにいるのか』
「え、ええ。ですから……」
かけ直してほしい、と言外に匂わせても、
『それもまた、面白いじゃないの』
男は取り合おうとしない。言葉の通り、うろたえる美佐子を面白がっている。
久しぶりに触れる男の悪辣さに、美佐子の背をゾクリとした感覚が走った。
パニックに陥りかける思考を必死にまとめて。とにかく竜之介の眼から逃れようと、
受話器をあてたまま、廊下に出た。行動の不自然さを顧る余裕はなくしていた。
暗い廊下に出て、リビングから数歩離れて。
「……なんの用なの?」
潜めた声で、美佐子は訊いた。
457職人志望:02/12/01 23:46 ID:C9jr6lwq
『オロ? いきなり態度が変わったな? ガキどもから逃げたか? つまんねえな』
「用件を言って」
竜之介の耳から逃れたとはいえ、長話はまずい。美佐子の口調は焦ったものとなった。
『別に、用事ってことじゃないがね。しばらくぶりに美佐子の声が訊きたくなってさ』
男のほうは至って呑気であった。それが、美佐子には無性に癇にさわる。
「ふざけないでっ」
思わず声を荒げて。ハッと気づいて、リビングの方をうかがう。
『やけに苛立ってるじゃねえか。ストレスでも溜めこんでるんじゃねえのか』
ニヤニヤと。小馬鹿にした笑みを浮かべているのが目に見えるようだった。
美佐子は、深く息を吸って気持ちを鎮めて。
「早く用件を伝えて」
用件―場所と時間を言え、という意味だ。男が連絡をとって来たなら、呼び出し以外のことではあるまいと。
だが。
『別に、次の逢瀬の約束をしようってわけじゃないぜ』
「えっ?」
男はあっさりと否定して。美佐子は間の抜けた声を出すことになった。
『なんだよ? そんなにオレと逢いたいってか?』
「そ、そんなわけが……」
『ああ、それならいいんだがな。身体を持て余して、悶々としてるんじゃないか、なんて心配だったもんでよ』
「ば、馬鹿なことを」
『いや、身体が夜泣きして、ひとりで慰めてるなんてんだったら、気の毒だと思ったんだがな。
 いらん気遣いだったみてえだな』
「……っ」
458職人志望:02/12/01 23:47 ID:C9jr6lwq
すべて見透かしているかのような男の言いぐさ。
恥辱に胸を灼いても、美佐子には反駁する言葉がない。
『ま、問題がないってなら、もうしばらく時間を置こうじゃないの』
「いつまで?」
あっさりと告げられた言葉に、反射的にそう聞き返して。
あっ、と美佐子は口を押さえたが、いまさらだった。声にこもった切迫した心情は、
ハッキリと電話の向こうにも伝わって。
『…………ふうん』
「あ、ちが、うの、……また、急に呼び出されるのは、困る、から」
しどろもどろな弁解に、冷笑の気配が返ってくる。
『…クク。近いうちに、また連絡するさ。そん時に、美佐子が“困った状態”になってたら
 交際の再開について考えようじゃないの』
「ちがう、私はっ」
『どうしても辛抱しきれなくなったら、竜之介にでも相談しろや。じゃあな』
「あっ」
プツリ、と声が途切れた。
美佐子は、しばし呆然と受話器を見つめて、立ち尽くした。
思考がまとまらない。複雑に交錯する感情に、頭の芯が痺れたようになって。
「…………あ」
不意に、小さく声を発して、スカートの前を握りしめた。
「……あ……あ……」
脅えるような眼を、左右にふる。奥の自室とリビングを見比べて。
片手に持ったままの受話器に気づいて、リビングへと足を向けた。
無理に背を伸ばし、呼吸を整えながら。
459職人志望:02/12/01 23:48 ID:C9jr6lwq
リビングで、竜之介が美佐子を待っていた。
ソファに座って、手持ち無沙汰なようすで。
「あ、美佐子さん」
戻ってきた美佐子に、体ごと向き直って。
「電話、誰からだったの?」
問いかけに他意はない。話の継ぎ穂として口にしただけだ。
「ええ、あの……入院している知り合いから、だったんだけど」
微妙に目を合わせることを避けたまま、受話器を戻した美佐子が答えた。
ああ、と簡単に竜之介は納得して。電話については、それで興味を失う。
そんなことより。美佐子とは大事な話の途中だったのだ。
中断させられて、さて、再びどのように切りだそうかと考えるうちに。
そそくさと、またリビングから出ていこうとする美佐子に慌てることになる。
「美佐子さん!?」
「お風呂わいてるから」
竜之介の呼びとめにも足を止めることなく、どうでもいいことを言い残して、美佐子は姿を消した。
すぐに美佐子の部屋のドアが開閉する音が聞こえた。
取り残された竜之介、しばし呆気にとられていたが。
やがて、脱力してソファに倒れこんだ。
「なんだよう……もう!」
吐き捨てた声に、どうしようもなく怒りがこもった。
460職人志望:02/12/01 23:49 ID:C9jr6lwq
……寝室へと逃げ込んだ美佐子は。
閉じたドアに背をもたれて、気息を整えていたが。
「…………」
手を伸ばして、照明を最小度に点すと。
おそるおそるに、スカートをめくり上げた。
薄明かりの下に、白い太腿とパール・ピンクのショーツが現れる。
ショーツまで下げる必要はなかった。
瀟洒な下着のクロッチの部分にはハッキリと濡れしみが浮き出して。
それだけでは済まずに。盛り上がった股布の横から内股へと、ひとすじの流れ。
「ああっ」
悲痛な声を上げて、顔を背けスカートの裾を放した。
ズルズルと、ドアに預けた背を滑らせて、へたりこむ。
「……まるで、犬じゃないの……」
あの男の声を聞いただけで、たった数分の会話で。
これでは、条件づけられた実験動物ではないかと、泣き声を震わせて。
美佐子は、自分の肩を抱いて、濡れた眼を宙にさ迷わせた。
奈落。暗い底無しの穴。自分が踵まで、その縁にかけているのだ感じる。
「……助けて……」
か弱い声で、美佐子は救いを求めた。
461職人志望:02/12/01 23:50 ID:C9jr6lwq
竜之介は自分の部屋で、ベッドに大の字になっていた。
あれから、すぐに部屋に上がって。一時間ほど、そうしている。
天井を見上げる表情は険しい。
あの後、美佐子を追って話の続きをしようか、とも思ったが。
どうにも有意義な会話は出来そうではなかったので、諦めた。
竜之介は憤慨していた。時間がたったいまもまだ、それは続いていた。
「……そんなに頼りにならないかなあ」
昼間、唯が吐いたと同じ言葉で、竜之介は嘆いた。
みずくさい、と思うのだ。
美佐子の態度は、抱えた懊悩を竜之介にも明かす気はないという意志の顕れだ、
と竜之介は解釈した。そうとしか思えなかった。
ならば、美佐子の思い煩っているのは、自分とのことではないのかもしれない。
だが、そうだとしても、元気づける役まわりくらいさせてくれてもいいのではないか、と思う。
悔しい。こんな時に、まだ青二才でしかない自分を痛感してしまう。
竜之介が悩み苦しんだ時、美佐子が与えてくれた包みこむような愛情。
それを自分の側からは与えてやれない求めてもらえない状況が竜之介を鬱屈させる。
そして、暗い感情の中にたゆたううちに、心の片隅に巣食った小さな暗黒に触れてしまう。
もしや……美佐子は心変わりをしてしまったのではないか、と。
そんな疑いが、はじめて竜之介の中で明確なかたちをとった。
462職人志望:02/12/01 23:51 ID:C9jr6lwq
『美佐子さん、好きなひとでもできたのかしら』
『逢いたいのに逢えないひとのことを、想い浮かべているんじゃ』
昼間の友美の言葉。
思い返しても、ピンとくるわけではない。もとより、女性の心理の機微には鈍いところのある竜之介だ。
だが。その推測に、この一月ほどの美佐子の行動を重ねてみたら?
たびたび店を休んで外出していたのは、本当は、その男に会うためで。
いつも暗い表情をしていたのは、その男との関係に悩んでいたから、あるいは、
その男と竜之介との板ばさみになって心を痛めていたからで。
しかし、その男とは、一時的にか恒久的にか逢えなくなってしまった。
だから、美佐子は連日のように外出することはなくなったが、より深い苦悩を見せるようになった……。
「………………」
やけに、スンナリと収まる気がする。
ひとりの顔のない人物を登場させることで、美佐子の不可解な変調ぶりに、説明がついてしまう。
なるほど、と感心したようにうなずいて。
しかし、竜之介は、
「馬鹿ばかしい」
ひとことのもとに、暗い推論を斬り捨てた。
かすかに、チリチリと胸が焦げるような不安はある。しかし、それも自分の弱さゆえだと受け止める。
「美佐子さんは、そんなひとじゃない」
根拠はそれだけだった。それだけで充分だった。
美佐子が、竜之介の想いを受け入れたのが、たったひと月前だ。それも、深く深く悩んだうえでの結論だったのだ。
それが、こんなわずかな時間で、他の男に気を移すなどとはありえない。
そもそも、美佐子のようすがおかしくなったのは、竜之介と想いを交し合った直後だったのだから。
やはり、どう考えても、他の人物が介入する余地などなかったと思える。
463職人志望:02/12/01 23:51 ID:C9jr6lwq
「……だいたい、美佐子さんの生活ぶりで、そんなに男と縁が……」
さらに否定の根拠を並べようとして。
なんのかんのと言いつつ、ムキになっている自分に気づいて、竜之介は苦笑した。
自嘲しながら、“美佐子の男との縁”という連想で、ひとりの人物を思い出した。
店の客で、しつこく美佐子に言い寄っていたオヤジ。
カエルオヤヂ。名前なぞ知らない。狼藉を見かねて、手荒く撃退してやった。
思い出すのもイヤなヤツだが。
でも、あれが美佐子との関係を進展させる最大のキッカケでもあったのだ。
「そう考えれば、あのオヤヂにも感謝しなきゃならんかもなあ」
無論、本気ではないが。美佐子の“男との縁”などを探せば、あんな輩しかいないんだから
と考えると、気持ちが軽くなる。
「……なんだか、脱線しちゃったな」
気がつけば、胸のうちから憤懣は消えてしまっていた。
結局、唯のいない夜に美佐子とジックリ話し合うという目的は果たされなかったわけだが。
まあ、もう少し時間を置こう、と本来の楽天ぶりを持ち出して、竜之介は起き上がった。
時計を見る。まだ寝るには早過ぎる時間だ。
視線を移すと、窓のカーテンも引いていないことに気づいた。部屋に戻ってきた時は
頭に血が昇っていて、ベッドに直行したのだった。
そういうとこも、お子様なんだろうなあ、と反省しつつ立ち上がろうとした時。
カチャリと、かすかな音が響いて。
ン? と振り返えると、ゆっくりとドアが開かれていく。
唯が不在なのだから、部屋を訪れるものは、ひとりしかいない。
「……美佐子さん?」
果たして、暗い廊下に立つ白い影は、美佐子であった。
464職人志望:02/12/01 23:52 ID:C9jr6lwq
スッ、と入りこんだ美佐子は後ろ手にドアを閉めた。
その間、顔は俯けたままで、竜之介と眼を合わせようとはしなかった。
「ど、どうしたの?」
竜之介の声は、戸惑いに上擦った。
ノックもせず声も掛けずにいきなりドアを開けて入ってくるなど、
おおよそ美佐子らしくもない行動のせいもあったが。
それよりも美佐子の格好が問題だった。
ドアを背に立つ美佐子は、白いバスローブ姿だったのだ。
ならば湯上りということなのだろう、いつも三つ編みにしている長い髪はほどかれている。
ローブの襟元には、白い素肌が露わになっている。
夜分に、男の部屋を訪れるには、あまりにも刺激的な姿だ。
「み、美佐子さん?」
胸元に引き寄せられる視線を必死に引き剥がして、竜之介は質した。
しかし、美佐子はなんの応えを返すことなく。
スッと手を横に伸ばした。指が電灯のスイッチを探って。
パチンという小さな音と同時に、室内は一転して闇に包まれた。
「なっ!?」
異常な展開についていけない竜之介は、ただ驚愕の声を上げるだけ。
窓からの月灯りは明るく、すぐにボンヤリとした視界は戻った。
薄闇の中に、浮かび上がった白い影。
白い手が動いた、と見えた次の瞬間には、白い衣装は音もなく床に落ちていた。
「…………っ!」
今度こそ、言葉も出せずに呆然と見つめる竜之介。
月光に、蒼白く照らし出される肌。たかい胸の隆起。縦長の臍。腰から下肢へのカーブ。黒い翳り。
美佐子は、一糸まとわぬ裸身を晒していた。
465職人志望:02/12/01 23:56 ID:C9jr6lwq
……以上です。連夜の大量Upになって、申し訳なし。
クドいのも……こういうふうにしか書けんのです。
妙なとこで、引きになってしまったので、続きもなるべく早く。
それでわ。
466名無しさん@ピンキー:02/12/02 00:02 ID:DALJeLlL
最高です
467名無しさん@ピンキー:02/12/02 00:14 ID:yJWy7VFa
定番の展開を予想をしのぐ迫真の描写で読めて、堪能しますた
それに日を追って変化していく心情が入ってるから、
尻軽臭もなく。

いやぁこれだけネチこい一人Hはひさしぶりに見ました。
印刷して枕もとに常備しようかなw
続きも楽しみっす。
468名無しさん@ピンキー:02/12/02 01:01 ID:zTK0d97J
ねちっこい文章に職人志望氏の熟女好きがひしひしと伝わってきます。
友美の回想シーンや唯落しも見たいのはやまやまですが、
この際ですから氏の思うままに突っ走ってください。
えらいことになりそうだ(w
469名無しさん@ピンキー:02/12/02 01:04 ID:qLx0x7EH
470名無しさん@ピンキー:02/12/02 01:20 ID:NLTlGfHk
>職人志望氏

あなたに会えて ほんとうによかった

嬉しくて嬉しくて 言葉にできない

LaLaLa LaLaLa… 

言葉にできない 

・゚・(つД`)・゚・
471名無しさん@ピンキー :02/12/02 09:58 ID:bOUamr57
いいなあ(*´Д`*)
こうゆうねちっこいの大好き。
472旧1:02/12/02 23:49 ID:tW8M0Xe6
>>428
あ、気にしないで。
単にずらした方がいいかなーと思っただけだから。
これからも、頑張って素晴らしいSSを書いてください。
そんで、このスレに投稿してくださいね(^^
473名無しさん@ピンキー :02/12/03 12:06 ID:v+z3Zfhj
くっそぉぉぉぉぉ、カエルおやじめぇぇぇぇぇ
474旧1:02/12/03 22:37 ID:u3KnGeuy
えっと、それではうぷします。
今回は批判があるかもしれないけど、敢えて自分の書きたい所を書きました。
475旧1:02/12/03 22:38 ID:u3KnGeuy
下級生・瑞穂調教 2 登校



都内有数の進学校、卯月学園。
男女共学、三学年、三クラスの構成。
生徒の自主性を尊重し、一人一人の自立と集団生活での協調性を育む教育システムには定評があり、
同時にスポーツも盛んで、高い偏差値と同様校名を都内に轟かせる。

その卯月学園、名称の由来である卯月町の町並みは、
繁華街に分類される葉月町とは対照的に平凡な住宅街のそれだった。
町の北側に中心となる卯月町駅が存在し、その周囲には個人経営の魚屋や生花店、喫茶店などが軒を
連ねるという、ごく一般的な町並みが形成されていた。

町の北西には緊急災害時に避難場所として利用される世界一公園が存在し、平時においては多くの市
民に憩いの場を提供していた。
駅から東に歩けば、樹木の薫りを強く感じさせる指きり神社の社殿が姿を現す。
ここで愛を誓って指切りした二人は永遠に結ばれる、という伝説は、今も若い女性の心を強くひき付
け、休日には参拝するカップルが後を絶たない。
境内の近くには児童公園が作られ、夕方ともなれば近所の子供達が遊具のまわりではしゃぐ姿が描か
れる。

近隣父母達の羨望の的、卯月学園の近代的な校舎は、町の南西。
意外にも駅から交通の便が良いとは言い難い西端にそびえ立つ。
在学する生徒の大半は自宅からの通学だが、それが出来ない生徒の為に用意されている寮が、学園の
敷地とは反対、卯月町の東端にある。
一時代前の学生寮とは違い、モダンで立派なマンション風の建物だ。
476旧1:02/12/03 22:39 ID:u3KnGeuy
その学園寮玄関前から伸びる、少し広めの道路は、閑静な住宅街を最短距離で突き抜け、まっすぐに
卯月学園校門前へと繋がる。
登下校の時間帯は、安全確保の為に車両規制が敷かれ、生徒達の主要な通学路となっていた。
その道の両脇には高級住宅街の家並とまではいかないが、立派な家屋が立ち並び、狭くない庭に植樹
された木々が青々と顔を覗かせていた。
家に庭がある事自体裕福な証拠だが、そこに樹木を植える余裕があるのだ。
どれも社会的地位と、それなりの収入がある人物の住居であろう事は一目瞭然だった。

そんな品の良い住宅街の一角にある、真っ白な壁に青い屋根の家屋。
周りの住宅よりも広めの庭には、芝生が植えられ、建物もまだ新しい。
花壇には所狭しと花が咲き誇り、住んでいる者の手入れのよさが窺える。
卯月町の住宅街にあって一際目に付くこの白い家の住人は四人だった。

国内有数の大企業に勤める真面目だけが取り柄の父に、専業主婦の母。
高校三年生の娘。
遊び盛りな小学生の息子。

日本のどこにでもあるような核家族構成。
しかし、ここに住む家族、特に女性二人は普通、平凡には程遠い存在だった。
この界隈、男性男子にとって……。
子供が二人いるとは思えない、若くて美しい人妻に、清楚で可憐な女子高生の娘……。

高校三年生の娘は卯月学園に通っていた。
所属クラブは女子テニス部。
まだ幼さが残るテレビアイドル顔負けの容姿、丸みを帯びた素晴らしいプロポーションの身体に、分
け隔てない明るい性格を擁し、全男子生徒の注目を集め続けた。
本人の意思とは別に、入学してすぐに学園のアイドルとして君臨したのだ。
美しく長い黒髪に白いヘアバンド。
それが少女のトレードマーク。

少女の名は結城瑞穂――――。
477旧1:02/12/03 22:40 ID:u3KnGeuy
庭の広葉樹の葉が散水に濡れ、花壇に植えられた赤や黄色のパンジーが初夏の風に揺れる。

「いってきます」

澄んだ声と共にダークパールの扉が開き、美しい黒髪に白いヘアバンドの少女が玄関から姿を現す。
卯月学園の冬の制服にモデル並みの身体を包み、胸に学生鞄を抱いていた。
絹の様な少女のロングヘアが朝日を浴びてキラキラと光り輝く。

美少女揃いの卯月学園にあって、誰もが認めるナンバーワン美少女、結城瑞穂その人だ。

瑞穂は近所でも評判の美しい母親に笑顔で手を振ると、扉が閉まるのを確認して深くため息をつく。
靴先を庭の石畳へ向けると、学生鞄の取っ手を一瞬だけ強く握り、それを合図に歩きだす。
しかし、小さなの門を出て右に曲がり、自宅の壁の終わり際で足が止まる。

どうしても気が進まない、足が前へと動かない。
違う、学校へ行きたくない――――。


あの日、結局瑞穂は家に帰らなかった。正確には帰らせて貰えなかった。
帰りたくと帰れなかったのだ……。

テニス部OB会打ち合わせの為に訪れたカクテルバーで、先輩である高田に酒を勧められ、しつこく
口説かれた上に、あろう事か大切な純潔を散らされてしまったのだ。
挙句の果てに、気付かぬ内にラブホテルへ連れ込まれ、数え切れない程抱かれ、女としての絶頂を味
わわされ、その数だけ濃い牡の精液をたっぷりと乙女の膣に注がれたのだ。
そして、想像もした事もない淫らな男女の行為を半ば強引かつ丁寧に教え込まれ、家に帰ってきたの
は日曜日の夕方だった。

478旧1:02/12/03 22:41 ID:u3KnGeuy
両親には高田が根回しした、女子テニス部同級生のアリバイ工作が入っていたので、何も聞かれる事
は無かったし、不審に思われる事などなかったが、シャワーを浴び、自室に戻り鍵を掛けると、瑞穂
はベットへ倒れ込み、声を押し殺して泣き続けた。
ひたすら恋人である健太郎にあやまりながら……。
気がついた時にはカーテンの隙間から細い光のスジが差し込んでいた。

その日、そして火曜と瑞穂は学校を休んだ。

「どうしたの、あなた? 目が真っ赤よ……」と心配する母親には風邪気味なのとごまかしたが、そ
れも二日が限度だった。
いままで滅多に学校を休んだ事の無い瑞穂が、三日も連続で休むには無理がある。
同級生たちも不思議に思うだろう。
優しい両親も薄々なにか感づくかもしれない。

瑞穂は父親や母親にいらぬ心配を掛けさせたくなかったし、なによりも大好きな健太郎からの度重な
る電話を、体調不良だけで断る自信がなかった……。
もはや、嘘をつくのは限界だった。

「ママ。わたし、明日は学校にいくわ」

鼻唄交じりに夕飯の支度をしていた母親に、背後からそう告げたのは昨日の事だった。

その時、瑞穂は確かに胸のつかえが少しだけ取れるのを感じた。

しかし、部屋へ戻るため階段へ向かおうとした時、リビングの電話が目に入り、全身が硬直する。
立ちくらみがして、パジャマ姿のままその場にうずくまる。

(わたし、どんな顔をして健太郎君に会えばいいの……)


*************************************
479旧1:02/12/03 22:42 ID:u3KnGeuy
通いなれた通学路。
道路を囲む住宅に植えられた木々が揺れ、初夏を意識させる青葉の薫りが駆け抜ける。
美しくまとまったロングヘアがふわりとなびく。

瑞穂の家から学校まではそれほど遠くはない。
十五分もあればで余裕を持って到着するぐらいだ。
しかし、いまの自分の状態では、卯月学園の校門をくぐる事は永遠にないだろう。
まだ、自宅壁の終わり際で立ち止まっている始末だ。

瑞穂は手首を軽く捻り、腕時計に目をやる。
時間はまだ十分にある。

(このまま学校を休んで、どこか行きたいな……)

今までは考えた事も無いような、サボタージュの計画を思いつく自分に驚きながら、瑞穂は雲一つな
い青い空を眺める。
今日は暑くなりそうだ。
犬を連れた老人が前を通りすぎ、先の角を曲がる。
朝の散歩なのだろう。
瑞穂は先程の風で流れた黒髪を細い指先で軽くかきあげ、背中へと流す。

今日、これから自分が健太郎に話さなければならない事を考えると、軽く目まいがする。
いっその事、このまま倒れてしまえばどれほど楽になるだろう……。
しかし、いつかは必ず話さなければならないのだ。
自分が健太郎と一緒にいたいと願う限り……。

(大丈夫だよ。健太郎くんならきっと……)

健太郎を信じる事で、今にも逃げ出しそうな自分の弱気を振り払う、瑞穂。
そして、深く息をついて、通学路を学校へと向かい歩みだす。
一歩、二歩、いつものように背筋をピンッと伸ばし、学生鞄を身体の前で両手に持つようにして歩く
480旧1:02/12/03 22:43 ID:u3KnGeuy
しかし、いくらそうやって虚勢をはっても、校舎が近づくたびにどこか寒気を覚える。
今までは楽しいばかりでしかなかった道のりが今日は苦痛でしかない。
教室につけば、恋人である健太郎との対面が待ち構えているのだ。
そして、その大好きな健太郎は自分が大学生の高田に処女を奪われた事を知らない。
ましてや、いやいやながら高田の巧みな責めにいつの間にか性感をほだされ、恥ずかしいぐらいに感
じてしまい、信じられないような台詞、淫らな行為を多々行ってしまったなど……。

(ああ、こんな事になるとわかっていたら、どうなってもいいから、何もかも全てを健太郎くんに捧
げてしまえばよかったわ……)

悔やんでも悔やみ切れない。
なぜ、自分はもっと健太郎の胸に飛び込まなかったのだろうと。
あの日、教室での健太郎の忠告を聞かなかったのだろう……。
なにより今は、その過ちで大好きな健太郎を失うのが怖い。

瑞穂は思わず唇をかみ締める。

(どうしよう、健太郎くんの事好きなのに……好きだから……)

心を悩ますあまり瑞穂の歩幅が自然と縮まり、雑踏の音が遠鳴りになる。

どこで、どう、話を切り出せばよいのか。
そればかりを考え、心は教室到着後に待ち受ける健太郎との対面シーンのシュミレーションによって
埋め尽くされていた。
481旧1:02/12/03 22:44 ID:u3KnGeuy
しかし、幾ら考えようとも答えが出ない。

自分ではそうは思っていないのだだが、学年トップクラスの成績を誇る優等生の瑞穂も、恋には劣等
生だった。
これまで健太郎以外の異性を好きになった事がないのだ。
考えれば考えるだけ、思考の糸が樹海の迷路を彷徨うようにぐるぐると回りだす。
いつのまにか瑞穂の視線は前方だけに投げ出され、アスファルトに示された白線に沿って歩いていた。

いつもの様に周囲の視線に気を配る余裕がなかった。
そして、気がついた時にはサラリーマン風の中年男性が背後に張り付き、瑞穂の魅力的な身体を舐め
るように眺めていたのだ。

(いやだ、後ろの男の人、わたしの身体をいやらしい目で見てるわ……)

優等生らしい学校指定の革靴から、傷一つない膝頭まで伸びる濃紺のハイソックス。
そこから続く白くてなめまかしい太腿は、まっすぐに赤紫のスカートへと隠れ、幼腰の後ろで青くて
大きなリボンが花を咲かす。
スポーツ少女のウェストだと主張するように、腰回りはキュッと引き締まっており、その括れから描
きださせる緩やかなカーブは、リボン下のスカートの中でも魅力的な曲線を描き続け、中年男性の視
線を釘付けにする。
482旧1:02/12/03 22:44 ID:u3KnGeuy
(この女の子は、なんていやらしいお尻をしているんだ……)

男が目の前の少女のスカートに包まれたお尻を凝視するのも仕方なかった。

清楚な少女そのものの外見とは裏腹に、瑞穂のまろやかなヒップは本人の意思とは関係なく、歩みを
進めるたびにまるで男を誘うようにシナシナと左右に振られていたのだ。
その上、つい先日、生まれて初めて牡の射精を胎内で受け止めた影響だろうか、瑞穂の腰周りからヒ
ップの頂点、白い太腿へと続くカーブの丸みが一段と増し、少女から大人の女性のそれに近づいてい
た。

無論、その事に瑞穂自身は気づいていない。
しかし、いまや瑞穂のスタイル抜群のボディは高田から受けた僅か二日間の猥褻な行為によって、さ
らに色っぽく大人の女性の肉体へと完成度を高めていた。
柔らかく大きな乳房、白くて丸いヒップ、まだ幼さを色濃く残す女性器。
全てが、幼い膣に濃い牡の精液を何度も何度も生で注がれる事によって、高田好みの少女に変えられつつあるのだ。
高田が求める客の取れる身体に……。

(まだ、ついてくるわ……)

瑞穂は美しい左手をヒップに回し、スカートの裾を押さえるようにして歩いてみる。
しかし、それでも歩くたびに制服の短いスカートが揺れ、テニスで磨かれた瑞穂の白い太腿が中年男
性の好色な目に晒される。
483旧1:02/12/03 22:45 ID:u3KnGeuy
(ううむ……)

男は思わずごくりと唾を飲み込むと、さりげなく瑞穂の斜め後ろに位置を取り、美少女の胸から顔を
丹念に眺めだす。

洗い立てのシャツを制服のベストが包み込み、胸の辺りは幾分窮屈そうだ、それだけで少女の胸が最
近急激に成長しているのが手に取るようにわかる。

絹のような黒髪はまっすぐに腰まで伸び、爽やかな柑橘系の香りをあたりに漂わせていた。
鼻筋はすっと通っており、瞳などは大きくぱっちりとして、どこか小国のお姫様かの様な雰囲気があ
ると、男は思った。
幼さなさの残る頬から、色っぽいうなじ、細い指先、むちりとした太腿。
そのいずれもが驚く程にきめ細やかで、気品溢れる白い肌をしていたのだ。

(まだ何も知らないような顔をして、なんて男好みの身体つきなんだ)

男は歩幅を広げ、少し瑞穂に近づくと、首元のリボンの下、大きな実りを見せるシャツに包まれた膨
らみをジトリと見入る。

(シャツの中で、おっぱいが揺れてやがる!
 この初心そうな反応からすると、まだ男の手でじかに揉まれた事なんてないに違いない。
 くそう、今すぐこの女子高生のでかいおっぱいをグイグイと揉んでやりたいぜ!)
484旧1:02/12/03 22:46 ID:u3KnGeuy
男は瑞穂に歩調を合わせるように歩き、妄想を膨らませる。
いつの間にか距離は縮まり、男の荒い鼻息が瑞穂に聞こえそうな程、近づく。

(ああ、この男の人、わたしの胸をみてる……)

この時間まだ余裕がある為、通学路に他の生徒の姿が見られない。
住民も朝の支度で忙しいのだろうか、離れた前方に二、三人、人影が見える程度で近くに人の気配は
ない。
例え居たとしても、こうして二人が並んで歩いている分には不審に思う者などいないだろう。
思ったとしても、知り合いか何かなのだと納得されてしまえば、それでお仕舞いだ。

(こんな時に限って人が近くにいないなんて……)

瑞穂は男の視線から逃れるように、スカートを抑えていた左手で右腕のひじを掴むようにして自慢の
胸を出来るだけ隠すようにしてみる。
しかし、歩く振動の影響で左腕に柔らかいバストが乗っかかりだし、かえって形の良い乳房を強調し
て歩くようなポーズになる。
当然、瑞穂は可能な限り男が興奮しないようにと頑張っているのだ。
しかし、そのはかなげな仕草さとミスマッチな瑞穂の男を知ったばかりの身体がさらに中年男性の興
奮をかきたてる。

「うおッ」

男が一瞬前かがみになるとポケットに手を突っ込んで、また元の姿勢にもどる。

(なんだ、なんだ! 女子中学生みたいに恥ずかしがってる割にはエロいポーズしやがって。
 もしかして、この私に揉んで欲しいのか??)
485旧1:02/12/03 22:47 ID:u3KnGeuy
男はついに瑞穂のすぐ横にへばりつき、覗き込むようにしてシャツに包まれた美少女の豊かな胸元を
眺め、時折、色っぽい太腿に目をやる。
揺れる制服のスカートから、瑞穂のやや火照った肌がチラリと露出する度に男の鼻息は荒くなる。
白くて肉付きのいい太腿に濃紺のハイソックスがいやにエロチックだ。

(怖いわ。こんな近くでわたしの身体を見てる……)

瑞穂の敏感な耳元に中年男性の熱い息が吹きかかり、思わずビクッ! としてしまう。
先程、ちらりと横目で見たが父親と同年代ぐらいだろうか……。
立派なスーツを着て真面目そうなだけに、父親の姿が思いっきり重なり、余計に困惑してしまう。
それだけに強気な態度にも打って出られない。

(わたし、まだ女子高生だよ……)

ついに男が我慢できなくなったのか。
スカートの上から瑞穂の人妻の様なヒップに軽く触れると、そのまま裾の内側に滑り込ませ、
女子高生の臀部をしっとりと撫で回しはじめたのだ。

「なにをするんですッ! 警察を呼びますよ!」

早朝の通学路でまさかこんなめに合うとは。
怒りに奮える瑞穂は中年男性の方にクルリと向きを変え、大きな瞳でキッと睨みつける。
自分の唇がワナワナと震えているのがはっきりとわかる。
486旧1:02/12/03 22:48 ID:u3KnGeuy
「ごめん、ごめん。あまりにお嬢ちゃんが可愛いから、オジさん思わず手が出ちゃったんだよ。
 それより、この辺に住んでるの?
 さっきから、何か考え事してたみたいだけど、悩みでもあるんじゃないのかな?
 もしよかったら、オジさんが相談にのってあげるよ。
 ほら、近くの児童公園でベンチに座りながら話しでもどうかな? 」

「な、悩みなんて……」

あっけにとられ、今も自分のヒップをゆっくりと弄ぶ、中年男性の手を払いのける事さえ忘れる、瑞
穂。
父親程に歳が離れ、身なりのきちんとした大人の男性が、悪びれる風も無く女子高生の身体に触れ続
ける事自体驚きだが。
それ以上に、今自分が悩んでいる事をあっさりと看破して来た事が、なによりも瑞穂の対応を鈍らせ
た。
中年男性の手が、若い瑞穂のヒップをあやす様になで、時折、卯月学園アイドルのヴィーナスの丘に
指を這わせようと試みる。

「ほら、一人で悩んでないでオジさんに打ち明けてごらん。きっと楽になるよ。
 そうだ、公園だとお嬢ちゃんも人目が気になるだろうから、ちょっと休める場所にでも行こうか」

女子高生の瑞穂は中年男性のまくし立てるような喋りに気圧され、ジリジリと人目につかない横道、
電柱と壁の隙間に追いやられてしまう。
そうして、ここならばと安心したのか、スカートの中で蠢く中年男性の手の平が一層大胆に瑞穂の87のヒップをショーツごと甚振りはじめたのだ。
487旧1:02/12/03 22:49 ID:u3KnGeuy
(どうしよう……確かに、このまま学校に行っても……。
 それに、話だけでも聞いてもらえば……)

当然、優しい父親には相談していないし、できるわけも無い。
しかし、この父親に姿がだぶる大人の男性ならば、もしかしたら本当に悩みを解決してくれるかもし
れない……。
そう思えてしまうのだ。

途端に瑞穂の中年男性の身体を押し返す力がためらいがちになる。

その間に男は、心の隙を突く様に右ひざを瑞穂の両脚の付け根に割り込ませ、ゆっくりと上下させだ
す。
この場で無防備な美少女を腰砕けにさせて、そのままどこかへ連れ込むつもりなのだ。

「お嬢ちゃんの悪いようにはしないよ。
 オジさん、やましい気持ちなんてないし。
 ちょっとお話しして楽になるだけなんだから。
 そうだ、お話が終わったらさ、お小遣いあげよう。それでどうだい」

「本当に、お話しだけなら……」

それまで必死に閉じられていた瑞穂の両脚から軽く力が抜け、視線を地面へと投げ出す。
まるで、中年男性のその行為を受け入れたかのように……。
短い制服のスカートが音も無くめくれあがり、瑞穂の白い太腿が付け根近くまで露にされる。
あと少しで純白のショーツまで見られそうだ。
488旧1:02/12/03 22:50 ID:u3KnGeuy
「お嬢ちゃん、卯月学園の生徒だろ。
 こんな真面目そうな顔しているのに、身体の方はグラビアアイドル並にいやらしいじゃないか」

依然として後ろでは高田に開発されたばかりのヒップがやわらかく揉み込まれる。
中年男性の空いていた左手が、ついに瑞穂の胸の膨らみに軽く触れ、そのまま優しく摩りだす。
下方では、男の膝がグリグリと禁断の恥丘を刺激する。

「んん。お、オジさん、やだ……」

狼狽する瑞穂。
自分の秘部から甘い電流が発せられだしたのを感じたのだ。
美しい頬が色っぽく火照りだす。

「ほら、目を閉じてごらん……」

瑞穂は言われるままに素直に目を閉じてしまう。
そうして、ついに見知らぬ中年男性に完全に抱きすくめられるようにして、制服の上からヒップと乳房、秘部を責められだす。

男の膝が瑞穂の最も敏感部位を優しく潰すようにローリングする。

「あっあっ、そこは……」

途端に瑞穂の下腹部がジワッと熱くなり、思わず鼻に掛かった声を漏らす。
細腰が僅かにピクッと動く。

大好きな健太郎に抱擁されている時の感覚とは明らかに違う、
ホテルで好色な高田に抱かれていた時の火照りが瑞穂の身体を包み込みだす。

(嘘よ、こんな事って……)
489旧1:02/12/03 22:51 ID:u3KnGeuy
先週までの自分なら間違いなく瞬時に声をあげ、平手打ちの一発でも放って颯爽と立ち去っていた。
しかし、何故だかわからないが、今日はそれが出来ない。

(け、健太郎くん……)

急にホテルでの高田との淫らな行為がフラッシュバックする。
泣きながら抱かれ続けた、二日間。
色々なポーズ、姿勢で犯され、気がつけば、自分の身体は完全に高田の物になっていた……。


ゴトン……。
右手から学生鞄が滑り落ちて、そのまま鈍い音を立てる。

瑞穂の色っぽい太腿がモジモジと男の膝に擦り付けられだすと、
ムチリとした白いヒップが熱を帯び、見知らぬ中年男性の愛撫を受け入れだす。

「おうおう、女子高生のおっぱいだ……」

目蓋の向こうで中年男性の興奮した声を聞きとる、瑞穂。
頭がぼーっとし、何も考えられなくなってゆく。

いまや瑞穂は壁に背中を預け、瞳を閉じて、わたしの身体をオジさんの好きにしてくださいといわん
ばかりに抵抗を諦めていた。

制服の首元のリボンが寂しげに波を打つ。
490旧1:02/12/03 22:52 ID:u3KnGeuy
男は成長著しい瑞穂の乳房下に手を伸ばし、シャツごと包み込むように持ち上げながら、ゆっくり
弄ぶ。
そうして、時折優しくミルクを搾る様に少女の乳房を甘く握ってゆく。
シャツの中では今朝つけたばかりのブラジャーが歪み、少女の可憐な乳頭がしこりだす。
もはや、瑞穂の美しいバストは中年男性の好き放題に弄くられていた。
高田との甘いSEXによって目覚めさせられた瑞穂の肉体は、それほど快楽に流されやすく調教され
ていたのだ。

「お願いです、オジ様。優しくしてください……」

清楚な顔を恥ずかしげに赤らめ、見知らぬ中年男性に小さくお願いする、瑞穂。
ついに真面目な瑞穂の意識が中年男性の思惑通り、優等生にあるまじき方向にながれだす。
何よりも、好色な大学生の手によって、二日間みっちりと男の味を教え込まれた女子高生の若い肉体
が……。

「この近くのホテルで君の悩みをゆっくり聞いてあげるよ……」

男の口元がニヤリとほころぶ。
491旧1:02/12/03 22:53 ID:u3KnGeuy
「ワンッ、ワンッ!!」

いきなり犬の鳴き声が響く!!

それも大型犬特有の野太い鳴き声。
嗅いだ事の無い匂いが自分のテリトリーに混ざり込み、警告を発したのだ。
それを機に一斉に辺りの飼い犬達が大合唱を始める。
準高級住宅街では犬の所有率が高い。
さらにどうやらこの一帯は、愛犬家の密集地のようだ。
こうなると、当分は鳴き止まない。

驚いた男はグルリと辺りを見回す。

「あッ!!」

その隙に瑞穂はドンッ!と中年男性の身体を跳ね除けると、学生鞄を拾い上げ、瞬く間に横道を抜け
、全速力で通学路を走りぬける。
一度も後ろを振り向かずに……。
通い慣れた卯月町の町並みが流れるように視界をすり抜け、5分としないうちに校門に到着する。

「はぁはぁ……」

校舎の大時計に目をやり、呼吸を整え、制服の乱れがないか確認する。

(わたし、何してるんだろう……。もし、あそこで犬が鳴かなかったら……)

一瞬、空恐ろしい想像が瑞穂の脳裏をかすめる。
初夏だというのに風が冷たく感じた。
492旧1:02/12/03 22:54 ID:u3KnGeuy
グラウンドでは陸上部がいつもと変わらず朝練を開始していた。
元気な声があちこちから聞こえる。
先週までと変わらぬ学校の風景がそこにはあった。

練習の邪魔にならないように校庭の端を校舎へ向けて歩き、下駄箱で上履きに履き変える。
つま先が赤い。有り触れた上履きだ。
健太郎は当然きていないようだ。
彼の靴がまだない。

瑞穂は二、三度トントンとつま先をついて揃えると、三年C組の教室へ向かうべく階段を上る。
すでに先程の見知らぬ中年男性との危機的行為は、瑞穂の頭の中から消え去り、健太郎にどうあの事
を打ち明けるかで一杯だった。
未だ時間はあるとはいえ、腕時計の分針がカチリと動く度に逃げ出したい衝動に駆られる。
なんだか息苦しく感じる。

(今日、健太郎君が来なければいいのに……)

階段をゆっくり登ったところで、時間の進みは遅くならない事は知っているし、
そうして、自分の気持ちをごまかそうとしていることも……。
493旧1:02/12/03 22:56 ID:u3KnGeuy
今回は以上です。
可能ならば、読んだか方は一言でもいいんで感想よろしこw
要望があれば、続きは今月中にいけるかもしれません。
次は・・・w
以上です。
494名無しさん@ピンキー:02/12/03 22:57 ID:9s2r9DZQ
神降臨

これから読ませて貰います
495名無しさん@ピンキー:02/12/03 23:20 ID:ygrE2Knd
ちっ、このクソ犬どもがいなければっ。
496名無しさん@ピンキー:02/12/03 23:22 ID:wbAr0v2j
1さま
あれ?ホテルの話はあれで終わりなのでしょうか?
あの「キスをしよう」と「ヒップが踊りだす」の後が気になってしかたがないのですが・・
497名無しさん@ピンキー:02/12/03 23:25 ID:hCIbxzd4
お待ちしておりました旧1様。
続きを心待ちにしています。 これからの展開に期待。
はたして高田先輩の再登場は・・・!?
498名無しさん@ピンキー:02/12/03 23:33 ID:umGMWEaU
>>493
おっさんに触られても、
感じてるっていうより、抵抗をあきらめて付け込まれてるってのがメインぽくて、
こないだまで処女だった高校生の彼女らしいですねぇ。
まだ清純さを残してるっぽくてイイ!

あと、今んトコ、健太郎に何も言わないって選択肢は
はなっから彼女の頭にはないみたいですね。
でも、ホントのことは言えんだろしなぁ。
彼女が逡巡に捕らわれると話は一見Hから遠ざかりそうですが、はてさて。

続き楽しみにしてます。
499名無しさん@ピンキー:02/12/03 23:46 ID:AGkxMuhF
犬めぇ~
旧1さん乙どす。

今月中・・・。続きが待ち遠しいぜ
500名無しさん@ピンキー:02/12/04 00:07 ID:tr3c1TXy
通学路痴漢最高。
ホテルHは回想とかの形で触れてもらえる事を期待。
しかしこの寸止めっぷり、まさに真綿で首を締めるような……どんどんやってくださいお願い始末。
501職人志望:02/12/04 01:02 ID:+4SvVTCW
瑞穂の日常が浸蝕されはじめたってところですねえ。ドキドキしますた。
続き、待ち遠しいです。この後の展開がまったく読めない……。
それにしても……犬がなあ~。中年氏も、もっと試合に集中しないと。
502奈々氏:02/12/04 01:18 ID:zw+on43g
ハァハァ・・・。
旧1さん、おつかれです。
503奈々氏:02/12/04 01:19 ID:zw+on43g
サゲるの忘れた・・・。(鬱
504名無しさん@ピンキー:02/12/04 07:30 ID:93NFTW9m
ホテル編も今回も続きが気になってまたモンモンした日々が・・・。
天国かに地獄か・・・。
でもまた1さまの瑞穂SSが読めたということでとても幸せです。
505名無しさん@ピンキー:02/12/04 08:55 ID:mt5bCbTb
うお!不意打ちキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
506名無しさん@ピンキー :02/12/04 13:15 ID:T3588zgV
>高田が求める客の取れる身体に……。

最終的にはこうゆう展開ですか?(*´Д`*)ハァハァ
507名無しさん@ピンキー:02/12/04 16:39 ID:Jzgqo4gF
旧1さん待ってました!!
やはり素晴らしく話に引き込まれます。
続きが楽しみでしょうがないです。
508名無しさん@ピンキー:02/12/04 16:51 ID:dvq7JnM8
犬め許さんぞ!!

1氏の作品が再び読めるとはw。
しかし路上で相手が中年、しかも一瞬とは落ちてるし。
(; ´Д`) ハァハァ

健太郎、高田がどう絡むのか絡まないのか。
また2人にそれぞれ出合ったときに、瑞穂の気持ちがどう動くのか。
楽しみですねえ。
509名無しさん@ピンキー:02/12/05 00:42 ID:ifm7Sdb4
>要望があれば、続きは今月中にいけるかもしれません。
もちろんあります!!
まだ今月ははじまったばかりですが(涙)、
続きを読めるのを楽しみにしております。
510名無しさん@ピンキー:02/12/06 01:43 ID:ayCnHbVR
1さま
未だに瑞穂のフェラシーンがないのですが
感想や希望次第ではそういったシーンが出てくることもあるのでしょうか?
初めての戸惑いフェラからねちねちフェラまで是非見てみたいのですが・・。
511名無しさん@ピンキー:02/12/06 01:49 ID:LO+Fo5j3
旧1様

私は健太郎や高田よりも今回出てきたおっさんと
瑞穂の本番シーンをお願いします!!
おっさんのねちっこい責めで喘ぐ瑞穂を是非
512旧1:02/12/06 02:33 ID:156E0yFt
たくさんの感想ありがとうございます(^^

えっと、瑞穂が高田によってホテルに連れ込まれた時の話は、
DDDに投稿する際にでも書こうかとおもってます。(書けるかな・・・(^^;; )
しかし、肝心のDDDがあの調子ではいつになるのやらw

続きの方ですが、いま割と余裕があるので今月中にいけると思います。
んで、現在下級生を再プレイ中w
下級生2が発売されるまでには終わらせるつもりです。
なんだかんだ言って、もうすぐ1年になっちゃうので・・・。

>>498
よく読んでるwそこが、今回書きたかったポイントです。
>>501
こちらとしては美佐子さんSSの”唯”が気になるw
出来たら唯には幸せになって欲しいが・・・。
>>510
いずれ出てくるかとw
>>511
清楚な瑞穂が見知らぬ中年男性に抱かれるわけありませんw

以上です。
頑張って続き書くので、他の方もSS投稿をよろしくお願いしますm(_ _)m
個人的には、
明日の~   :せりな
ワーズワース :シャロン
同級生  :舞
同級生2   :唯
下級生    :瑞穂
この辺のが読みたいなー。たまにはクロスカウンターで純愛ものとかw
513名無しさん@ピンキー:02/12/06 07:43 ID:epLOVw3a
>旧1氏
全部寝取られてほしいヒロインでしょうか?(w
にしてもみんな寝取られ好きね~~
514名無しさん@ピンキー:02/12/06 07:54 ID:u4OxTAS9
1さま
DDDは11月3日以降更新が止まっていますし、よかったら是非ホテル編も
先にこちらに書き込んで欲しいのですが、駄目でしょうか?
でもどっちにしても続きを読める日を楽しみにしています。

(高田先輩にフェラを仕込まれるシーンなど期待してます。)
515名無しさん@ピンキー :02/12/06 12:18 ID:weW2kG8W
>美佐子さんSS

美佐子と竜之介の関係を知った唯は衝撃を受け
思わず優しくしてくれた西園寺と・・・

ってな展開キボン。
516名無しさん@ピンキー:02/12/06 18:10 ID:qrFVI20i
>515

いいねえ、それ。
エロイねえ。
517名無しさん@ピンキー:02/12/06 18:52 ID:qwvQyPEA
518名無しさん@ピンキー:02/12/06 19:09 ID:5kfeh+Wu
http://basan7.tripod.co.jp/ara.html
                 
http://kanaharap.tripod.co.jp/deai.html
   
519名無しさん@ピンキー:02/12/06 23:05 ID:U/iDzklR
>>516
さげ進行にしないと無駄に広告が入るよぉ
520職人志望:02/12/06 23:47 ID:KHTE1fL9
ども。続きをUpさせていただきます。
ファクシーンですが、エロくはないのです。煮えきらない感じ。
竜之介は、かなり情けない描写になってしまいましたが。
これも友美やいずみを悲しませた報いなのです。ねえ?
521職人志望:02/12/06 23:48 ID:KHTE1fL9
「………な……」
竜之介には、突如目の前に現出した光景が理解できない。
と、白い肢体は泳ぐように前へと流れた。
「わわっ!?」
倒れこむように乗りかかってくる裸身を抱きとめるかたちになって。
そのまま押し倒された竜之介の体が、ベッドの上でわずかに弾む。
「み、美佐……」
言葉は半ばで途切れる。美佐子の唇に塞がれて。
「…………っ!」
美佐子は両腕で竜之介の首をきつく抱いて、さらに強く唇を押しつけ、身体を摺り寄せてくる。
柔らかな重みと甘い香。ピッタリと吸いついた唇と合わせた胸の間の膨らみ。
竜之介は巻きこまれそうになる情動を懸命に自制して。美佐子の肩を押しやって、顔を離した。
「……み、美佐子さん! いったい…」
「…………」
美佐子がゆっくりと、目蓋を上げた。まだ互いの顔は、乱れた息のかかる距離にある。
「……竜之介、くん」
掠れた声で、美佐子が呼ぶ。平素とは別人のような、甘い媚びに満ちた切ない声で。
薄く開いた瞳が、濡れて輝くのを竜之介は見て。強烈に己の中の“雄”を刺激された。
「…い、いいの?」
思わず、そう訊いていた。この状況において、いささか野暮とも無粋ともいえる念押しであったが。
しかし、竜之介からすれば、やはりあまりにも唐突すぎて、信じがたいものがあったのだ。
522職人志望:02/12/06 23:48 ID:KHTE1fL9
美佐子は、潤んだ眼を竜之介に向けたまま、小さくうなずいて、
「……おねがい……私、もう……」
啜り泣くような声で、そう訴えた。
その瞬間に、竜之介は疑心も躊躇も放り捨てて、強く美佐子の裸身を抱きしめた。
「……あぁっ…」
美佐子が喜びの声を上げて、再び竜之介の口を求め、竜之介もそれに応える。
唇が合わさると同時に、美佐子の舌が竜之介の口腔にすべりこんで、いきなり激しい口吻となる。
甘い唾の味わい、柔らかな舌の熱烈な求愛。竜之介の脳髄は痺れる。
負けじと、自分からもからめた舌を動かせば、美佐子は嬉しげに鼻を鳴らして、なおいっそうの
耽溺をしめした。竜之介が、初めて味わう濃厚な口舌の戯れ。
どれほど、そうしていたものか。ようやく美佐子の唇が離れて。竜之介はハァハァと呼吸を貪った。
美佐子もまた、肩で息をつきながら、なおも竜之介の顎や首筋に、唇を這わせて、
「……ねえ……」
情感を擦りたてるような声音で、誘う。
竜之介は、上に乗った美佐子の身体を抱いたまま、体勢をいれかえた。
そっと、ベッドに横たえた美佐子の白裸を、月明かりの中に見下ろした。
今宵初めて、じっくりと眺める女体に、あらためて息をのんだ。
こんなにも、官能的だったのかと思う。
美佐子のすべてを目にするのは、二度目だ。あのひと月前の夜以来のことだ。
あの時にも、その美しさに圧倒されたものだが。
いま目の前にある肢体には、見惚れるような美麗さではなく、狂おしく情感を揺さぶるような
艶めきに満ち満ちていた。女らしいラインも、胸や腰の豊かな肉付きも、確かにあの夜と同じなのに、
なにか別の女を見るような思いさえ抱かされる。
月の光だけという幻想的な状況のせいなのかもしれない。
自分が、あの時とは比べものにならないほど昂ぶっているせいもあるだろう。
確かなのは、裸身を晒した美佐子の態度が、あの夜とはまったく違っていること。
横たわる美佐子は、あの夜のような恥じらいのそぶりは見せずに。
両手を横に投げ出して、隠すところなくすべてを竜之介の目に曝け出して。
そして、薄く開いた双眸を熱っぽく潤ませて。竜之介を待っている。
523職人志望:02/12/06 23:50 ID:KHTE1fL9
竜之介は、引きむしるように服を脱ぎ捨てた。美佐子同様に全裸になる。
股間では猛りきったものが、腹を打つほどの勢いで屹立していた。
「……ハァ…」
美佐子の視線が竜之介の剛直にからんで。期待と欲情に満ちた吐息をもらした。
竜之介は引き締まった裸身を美佐子の隣りに横たえた。
三度、唇を合わせる。すかさず潜りこんだ美佐子の舌が、また縦横に蠢いて、竜之介の情感を擦りたてた。
(これが、大人のキスなんだ……)
そんなことを意識のすみに浮かべながら、竜之介は口吻に酔った。
美佐子もまた飽くことなく竜之介の口舌を味わいながら。片手を竜之介の胸に這わせて、
若い身体の逞しさを確かめるように撫でまわす。
「……ウッ、フウ……」
細い指が乳首を掻くように弄うと、竜之介は思いがけない刺激にビクビクと震えた。
おかえしとばかりに、美佐子の頤にかけていた手を胸へと滑らせる。
やんわりと揉みあげれば、掌に伝わる柔らかな肉感。
「……フウン、アハァッ」
今度は美佐子が甘く鼻を鳴らして、竜之介の口の中に快美の声を吹きこむ。
もっと、と突き出される乳房に、竜之介は優しく愛撫を続けた。
美佐子は敏感に竜之介の指の動きに応えていたが、やがて繊細に過ぎるタッチに焦れたように、
乳房を掴んだ竜之介の手に自分の手を重ねて、ギュッと力をこめた。
竜之介が戸惑いの気配を浮かべる。そこには優しく触れなくては、というのが竜之介なりの
経験則であったから。
「……いいの、もっと。もっと強くっ」
くちづけをほどいた美佐子が、強い口調で促す。
おずおずと、竜之介の手に力が加わる。手にあまる豊満な肉果に指が埋まりこんで、形を歪めた。
「ああぁっ! いいわ!」
痛くないのかと案ずる竜之介をよそに、美佐子はキツい愛撫に歓悦の声を迸らせた。
524職人志望:02/12/06 23:50 ID:KHTE1fL9
熟れきった柔肉の手触りは、成熟した女との交歓をあらためて竜之介に意識させた。
体をずらして、もう一方の乳房へと口を寄せる。
かすかに汗ばんだ肌の匂いを嗅ぎながら、尖り立った乳首ごと肉房を口に含んだ。
「アハッ、いいわ、吸って、オッパイ、もっと吸って」
あられもなく悦び、竜之介の頭を胸へと押しつける美佐子。
竜之介も、絶妙な柔らかさと弾力を伝える肉の心地に酔って、夢中で吸いたてた。
「アアアァ……アアアッ」
美佐子は細首を左右にうちふって快感を表しながら、片手を竜之介の腰へと差しのべた。
求める硬い肉根に指が触れると、躊躇いなく手を開いて、ギュッと握りしめる。
いきなり痛いほどに握りしめられた竜之介が、乳肉を含んだまま、ウッとうめいた。
「……アア……熱い……硬い……」
美佐子はうっとりと掌中のものを賛美しながら、さらに確かめるようにギュッギュと力をこめて。
そのままユルユルと扱きたてた。
「……これ、これが……」
欲しい! と激しい執着をこめた手の動き。
滑らかな掌の感触と巧妙な刺激に、竜之介はたちまち追いつめられる。
「み、美佐子さん、ダメ、だよ、アッ、そんなにしたら」
顔を上げて、身をよじりながら、訴えた。
ここのところ、勉強漬けの生活で、欲望の処理を怠り気味だったこともあって。
溜まった若い精力は、美佐子の熱にあてられ強い愛撫を受けて、いまにも弾けそうになっていた。
「いいわ、来てッ」
答えた美佐子の声にも切迫したものがこもって。
慌しく体を起こした竜之介の前で、大きく両腿を広げて竜之介を誘う。
見開かれた目にギラついた輝きが宿って。薄闇の中に光った。
525職人志望:02/12/06 23:51 ID:KHTE1fL9
竜之介は大胆な美佐子の姿態に、ゴクリと生唾を呑みくだす。
大きく開いた両脚の間に体を入れて、かすかに震える指を黒い翳りへと伸ばした。
「……アン…」
「……!? す、すごい」
指が秘所に触れた瞬間、美佐子は艶めいた息をつき、竜之介は驚愕する。
「美佐子さん、こんなに……濡れてる」
「いやぁ」
美佐子の秘肉は、熱い滴りにグショグショに濡れそぼっていた。熱蜜は内股にまで溢れ、
恥毛もベットリと固まって指にからみついてくる。
竜之介の驚嘆に羞恥の声を上げた美佐子は、しかし放埓な開陳の姿勢は崩そうとせずに。
女肉の表面を撫でさする指に焦れったそうに腰をくねらせた。
日頃の美佐子からは想像もできないような発情ぶりに、竜之介は唖然として、
「そ、そんなにしたかったの?」
「アアァ……そう、そうよ!」
悩乱する美佐子は、ヒステリックに叫んだ。
「だから、来てっ、早く入れてっ」
もう一刻たりと堪えられないといったふうに、竜之介の腕を掴んで引き寄せようとする。
「美佐子さんっ!」
そこまで自分を求めてくれていたのか、という感激に衝き動かされて、美佐子へとのしかかる竜之介。
(とうとう、美佐子さんと)
感慨に逸る心のままに腰を突きこむが。極限までそそり立った肉根の先端は狙いを外れて、
濡れた肉弁の上をニュルンと滑ってしまう。
「ああ、いやぁ」
「あ、あれ? ……あっ!」
焦って引きかけた矛先を、むずがるような声を上げた美佐子の手がガッシと掴んで。
グッと腰をもたげ、わななきながら待ちうけるヴァギナへと導く。
526職人志望:02/12/06 23:52 ID:KHTE1fL9
今度は確かな感触を先端にとらえた竜之介、
「い、いくよ!?」
「来て、早く、はやくッ!」
いちいち断るなとばかりに、竜之介を急かす美佐子。蕩けた女肉に感じる硬い肉感に炙られて
錯乱寸前といったようす。
また固い唾を呑みおろした竜之介が、慎重に腰を送る。
ヌチャッ、とかすかな濡れ音を発して、竜之介の肉根が美佐子の中に潜りこんだ。
「ウウッ」
「あ、アッ、入って、きた、硬いのが、アアッ」
灼けるように熱く、ドロドロに溶けた媚肉の感触に竜之介はうめいて、思わず動きを止めてしまう。
「イヤッ、きて、もっと……奥、まで」
乞い願いながら、腰を突き上げて自ら挿入を深める美佐子。
「ウアアッ」
巻きこまれた竜之介も、グイと腰を押し出して。若さに満ちた肉鉄は根元まで美佐子の膣肉に埋まりこんだ。
「アアンッ」
硬い矛先に子宮を小突かれて、美佐子が歓喜の声を上げる。
乱れ散らばった美佐子の髪の中に両手を突いた竜之介は、ペニスから伝わる強烈な快感に歯をくいしばった。
(こ、これが美佐子さんの……ス、スゴイ)
しとどな潤いのせいもあってか、意外なほどスムーズに竜之介の肉体を呑みこんだ美佐子の女肉だったが。
咥えこんでからの媚肉の反応は凄まじかった。
トロトロの熱い肉襞が、うねり、からみ、まとわりつく。
これが……本当の“女”というものなのか。
かつて経験したことのない、濃密で複雑な味わいに、竜之介はただ喉を荒く鳴らす。
527職人志望:02/12/06 23:53 ID:KHTE1fL9
しかし、そのまま熟れた女体の甘美を味わっていることは許されなかった。
「う、動いてっ、竜之介くん」
貫いたまま攻撃を開始しようとしない竜之介に、美佐子が焦れた声を上げて腰をうねらせた。
「ウアッ、ちょ、ちょっと待って、美佐子さん……」
ペニスに感じる未曾有の快感と、遂に美佐子と繋がったという心理の作用で、
すでに逐情の兆しに襲われている竜之介は、情感の波を鎮めるまでの猶予を求めたが。
「いや、いやよ、おねがいっ」
生殺しの状態に耐えられない美佐子は、両手で竜之介の体を掴みしめて腰を跳ね上げ
能動的に快楽を求めはじめる。
「ワッ、ちょ、アアア」
「突いて、竜之介くんも、してっ」
「グ、ウッ……」
憑かれたような眼を向けて挿送を懇願する美佐子に応えようと、ギリリと奥歯を食いしばって、
腰を前後しはじめる竜之介。
「んああっ、いい、いいの、もっと」
途端に嬌声を迸らせて、さらに熱狂的に腰を躍らせる美佐子。
「ウアッ、美佐子、さん、そんな」
追いつめられた性感を必死に自制しながら、なんとかペースを掴もうとする竜之介だったが、
美佐子の狂乱ぶりが、その暇を与えてくれない。
「あああ、もっと、もっとよ!」
竜之介の体を跳ね飛ばすような勢いで腰を突き上げ、極限よりさらに深い挿入を得ようと
両手で掴んだ竜之介の腰を力の限りに引き寄せる。
「ちょっ、美佐子さん」
竜之介は翻弄されるばかりで、ふたりの動きは噛み合わない。
528職人志望:02/12/06 23:53 ID:KHTE1fL9
「ああ、いやよ、もっと強くッ」
なかなか求めるままの快楽が得られないことに、美佐子がムズがる声を上げる。
その間も奔放な腰の蠢きは止まらず、女陰はさらに激しい収縮をみせて、快感を貪ろうとする。
「ウアアアッ」
経験したことのない貪欲な女体の攻撃に、すでにギリギリまで追いこまれていた竜之介の性感が
臨界を超えた。
「だ、ダメだっ!」
「アアッ!? いやあっ」
余力を振りしぼって腰を引き、慌てて追いすがろうとする美佐子の中から、ビクビクと震える
ペニスを引っこ抜いた。
「アアッ」
「あ……」
抜け出た瞬間に肉棒は脈動して、ドピュドピュと熱い波涛を噴出する。
弾け出た熱精は、悲しげな声を上げて動きを止めた美佐子の腹に降りかかった。
長い爆発の間、顎をそらしてガクガクと腰を痙攣させていた竜之介。
「……ウウン……」
ようやく吐精が終わると、ガクリと突っ張った両腕から力が抜けて、美佐子の横に倒れこんだ。
「……ああ……」
表情を虚ろにした美佐子は、腹の上の多量の精液に手を這わせて、
「……熱い……こんなに、たくさん……」
ボンヤリと呟いた。
突っ伏した竜之介は、大きく背を上下させて荒い息をついている。
「……中で、出してもよかったのに」
ポツリと美佐子が言葉を洩らす。
529職人志望:02/12/06 23:54 ID:KHTE1fL9
「えっ?」
驚きに、眼を見開く竜之介。
「竜之介くんの……私の中に欲しかったのに」
恨むように言って、流し目をくれる美佐子の凄艶さに、竜之介は鼓動を跳ねさせた。
「そ、それはマズイでしょう」
「……ああ、本当にすごい量だわ」
美佐子は下腹から鳩尾のあたりにまで飛び散った竜之介の精液を掌で撫でまわしていた。
拭うのではなく、肌にすりこむような愛しげな手の動き。
「わ、汚いよ、美佐子さん」
「どうして? そんなことないわ」
不思議そうに聞き返して。美佐子は指に竜之介の精をすくいとって、ペロリと舐めた。
「み、美佐子さんっ!?」
「……竜之介くんの味……」
ボウとけぶった眼を宙に向けて、無心に竜之介の精を味わう美佐子の姿は、
竜之介の背に、ゾクゾクと寒気にもにた感覚を走らせるほどの淫靡さに満ちていて。
(美佐子さんて……エッチの時には大胆になるんだなあ。スゴく、激しかったし……)
意外な思いをあらたにする竜之介だったが、その発見はイヤなものではなかった。
自分だけに、こんな姿を見せてくれるのだと思えば、美佐子への愛しさが募る。
竜之介は体を起こすと、枕元のテッシュ箱を引き寄せた。
数枚重ねにして、美佐子の身体を汚した自分の欲望を拭きとっていく。
「………………」
美佐子は無言で、何度も紙を替えて入念な作業をする竜之介の顔を見上げた。
その瞳には、ようよう理性の色が戻りつつあった。
「…………優しいのね……」
やがて呟いた声には、何故か悲しげな響き。
「うん? いやあ、自分で出したものだからさ」
我ながらよくもこんなに出したなあ、などと考えていた竜之介は、照れ笑った。
530職人志望:02/12/06 23:55 ID:KHTE1fL9
その笑顔に、そっと美佐子は目を伏せて、
「……恥かしい……」
消え入るような言葉を洩らした。
「えっ?」
「あんなに……乱れてしまって……軽蔑したでしょう?」
「そんなこと、ないよ」
ブンブンと首をふって否定する竜之介。
「俺、嬉しかったよ。美佐子さんがこんなに、その、俺のこと求めてくれてたんだって」
「………………」
「……美佐子さん、とても素敵だったよ」
照れながらも、心からの賛美を口にする竜之介。
「……竜之介くんも……素敵だったわ」
「いやあ、俺のほうは……ちょと、だらしなかったなって」
面目なさそうに頭をかく竜之介。
「気持ちよすぎて、抑えがきかなかったんだ。ゴメン」
あっけなく終わってしまった自分を恥じ入る。
「そんなこと…ない……私が、あんまり淫らだったから……」
「……ヘヘ、エッチな美佐子さんも魅力的だけどね」
「竜之介…くん……」
美佐子の眼にジワリと涙が浮かんで。そっと竜之介の腕を引いた。
竜之介も静かに体を倒して、美佐子の上に乗りかかった。
「美佐子さん……好きだよ。愛してる」
「…………私も……好きよ」
唇が重なる。舌がお互いを求めて蠢く。
優しいゆるやかな戯れあいは、すぐに濃厚で激しい行為になっていく。
531職人志望:02/12/06 23:56 ID:KHTE1fL9
きつく首を抱いた美佐子の求めるままに、ディープ・キスに耽る竜之介。
口舌の快感に煽られて、若い肉体に欲望が蘇る。
力を取り戻した肉根が、美佐子の柔らかな太腿に触れる。
「……あぁっ」
口を振りほどいた美佐子が、艶めいた声を上げて、すかさず屹立を握りしめた。
「ああ……硬い……もう、こんなになってる」
嬉しげに鼻を鳴らして、シュッシュと扱きたてた。
「もっと、もっと大きくなって」
うわごとのような言葉を吐く美佐子の瞳は、また淫情に霞みがかかって。
竜之介は苛烈な刺激に耐えながら、
「美佐子さん、もう一度……」
「ええ、いいわ、来てっ、このまま、すぐに」
燻り続ける欲望を、今度こそ鎮めてくれと、美佐子は自らの手で両腿をガバッと開いた。
体を移して、あまりにも放埓な開陳ぶりを真っ向から見る竜之介は、クラクラするような昂ぶりを覚える。
薄闇の中に浮かび上がる白い肢体。その中心、黒い翳に縁取られた、ヌメ光る肉穴。
妖しい香に、フラフラと吸い寄せられそうになるのを懸命に自制して。
竜之介はゆっくりと腰を進めた。
先ほどは、やはり逸りすぎていたという反省がある。
美佐子との初めての夜。今度こそ、ジックリとその感激を味わいたい。
そして、美佐子を満足させたい。
そのためには、落ち着くことだと自分に言い聞かせて。
竜之介は片手に握った怒張の先端を、慎重に美佐子の中に沈めていった。
「アハァッ」
「……クウゥッ」
美佐子が嬌声を洩らして、背を反らす。竜之介も快美のうめきをつく。
しばしの中断にも、美佐子の女肉は少しもその熱を下げていなかった。侵入した男根を
待ちかねたように迎えいれ、からめとろうとする。
532職人志望:02/12/06 23:57 ID:KHTE1fL9
二度目とはいえ、気を抜けばすぐにも負けてしまいそうな、絶妙な肉の味わいに対抗しながら、
竜之介は極限まで繋がりを深めた。
「ウウッ……美佐子さん、奥、まで……入ったよ…俺のが、美佐子さんの中に」
竜之介は美佐子と胸を重ねて、ひとつになった感激を耳元に囁いた。
「アアァ……いいわ、竜之介くん……もっと」
美佐子は両腕を竜之介の背にまわし、両脚を竜之介の尻に組み合わせて、しがみついた。
さらに奥深くまで竜之介の肉体を迎えいれようと。
「ねえ、動いてっ、激しくしてっ」
「うん、いくよ」
竜之介が律動を開始する。ゆったりとしたリズムで突き上げれば、たちまち美佐子は歓喜の声を上げて
身悶えたが。それでも、一度目のような狂奔は見せずに、竜之介に行為を委ねていた。
「美佐子さん、いい? 気持ちいい?」
一定のリズムで腰を送りながら、竜之介が訊いた。
「ええ、いいわ」
「俺も……スゴく気持ちいいよ、美佐子さんの中、熱くて……からみついてくる」
ようやく主導権を握ったことに、男としての満足を感じながら。竜之介も美佐子の肉の反応に、
この上ない快楽を味わっていた。
「ああっ、すごいよ、俺、こんなの初めてだ」
体ごと吸いこまれてしまいそうな、空恐ろしいほどの快感を言葉にする竜之介。
だが。それに反比例して、美佐子の快楽の声は弱く、少なくなっていく。
竜之介の突きこみに合わせる腰の動きにも、どこか焦れたような気色があらわれて。
「ね、ねえ、竜之介くん……もっと、強くしても、いいのよ……」
堪えかねたように、そう言った。
「え? こ、こう?」
規則的な律動を続けていた竜之介が、わずかにストロークを強く早くする。
533職人志望:02/12/06 23:57 ID:KHTE1fL9
「ああっ、そう、そうよっ、もっと、激しく」
喜悦の叫びを上げて、腰をふりたくる美佐子。
「ううっ」
その瞬間、若いペニスを咥えこんだ媚肉も凄まじく収縮して、竜之介をうめかせた。
急激に逐情の気配がせりあがってきて、動きをゆるめる竜之介。
「ああん、いやよっ、もっとっ」
水を差された美佐子が、詰るように促すが。
「だ、だめだよ。このままじゃ、俺、すぐに」
「…………アァ…」
歯を食いしばって、暴発の気ぶりを逸らそうとする竜之介に、切なげな息をついて動きをとめた。
「……ハァ……ハァ……」
竜之介は、半ばまでペニスを引き抜いて呼吸を整える。
「……大丈夫?」
「う、うん」
気遣うように尋ねる美佐子に、気恥かしそうに答える。
自分でも、情けないとは思うが、どうしようもない。
それなりの経験は積んできたつもりの竜之介だったが。爛熟した女体の甘美さと、行為の激しさは、
手にあまるものがあった。
だから、美佐子が、
「……ねえ、一度抜いて」
そう言った時には、失望されてしまったかとドキリとしたのだが。
「今度は、私が、してあげるから」
「え? う、うん……」
意味ありげな言葉に、ひとまず結合をとく。
美佐子の蜜にまみれた肉根は、急角度にそそり立って、ヒクヒクとわなないていた。
美佐子は体を起こすと、竜之介を仰向けに横たわらせた。
「……フフ、元気ね」
天を突く若いペニスをそっと掴みしめて。
大胆に脚を広げて、竜之介の腰をまたぐと。握ったものの上にゆっくりと腰を下ろしていった。
534職人志望:02/12/06 23:58 ID:KHTE1fL9
「クウウッ」
「……アハァッ」
騎乗位で繋がりあったふたりの口から、快楽の声が洩れる。
「アアァ……いい……この方が、深くまで……」
子宮を突く肉根の感覚に、うっとりと呟いた美佐子が、ゆるゆると臀をふりはじめた。
「アア……」
竜之介も愉悦にあえぎながら、眼を見開いて、その光景を凝視していた。
ムッチリと肉づいた太腿を大きく広げて、膝を立てた蹲踞の姿勢で美佐子がまたがっている。
「あああ、いい、いいわ、とどいて……る」
乱れた髪をふって、美佐子が腰を上下させるたびに、豊かな双乳がブルンブルンと弾む。
グッチョグッチョと卑猥な音をたてる結合部では、ペニスが半ばまで現れては、また女肉の中に
消えていく。徐々に、その振幅は大きくなっていく。
「アアッ、いい、気持ちイイッ、ア、アアア」
急激に狂乱の度合いを強める美佐子。両手でおのが乳房を掴んで揉みしぼり、
メチャクチャに臀を躍らせる。上下の動きだけでは足りずに、深くまで咥えこんだまま、
前後左右にくねらせる蠢きは、この上なく淫猥だった。
そんなさまを見せつけられ、激しい攻撃を受けて、また窮地に陥る竜之介。
「ウアア、美佐子さん……そんなに、したら……」
「ダメよっ、我慢して、もっと」
鋭い声で竜之介を叱咤しながら、美佐子は少しも動きをゆるめない。
エゴイスティックに、自分の快楽だけを求め続ける。組みしかれた竜之介は、
美佐子の欲望を満たすためだけに、その若い肉体を捧げる、生贄と成り果てていた。
それでも竜之介は、ギリギリと奥歯を食いしばり、ギュッとシーツを掴みしめて、耐えていたが。
「アアッ、いいわ、いい、いきそう、もう少し、いきそう」
ひときわ声を高めた美佐子に、ギュッと締めつけられて、
「も、もう……美佐子さん」
顎を反らして、悲鳴のような声で限界を告げた。
535職人志望:02/12/06 23:59 ID:KHTE1fL9
「いやっ、もうすこし、もうすこしなの」
美佐子はかぶりをふって竜之介の訴えを退け、さらに臀の動きを激しくして、
遮二無二快楽を極めようとする。
「で、でも、もう出ちゃうよ」
「いいの、出して、このまま、出していいからっ」
「そん、な……ク…アアアッ!」
躊躇の言葉も半ばで途切れて、腰を跳ね上げる竜之介。
「ああ……出てる……」
竜之介の噴火を子宮に浴びた美佐子が、声を上げる。恍惚と落胆が半ばした響き。
「私も、私も、いきたいっ」
絶頂までのわずかな距離を無理やり埋めようと、すさまじく臀をふって、
ビクビクと脈うつ肉根に、最後の使役を強要する。
「うわあ、み、さこさん、や、め……」
経験のない絶大な快感とともに射精を続けるペニスを扱かれて、ヒィヒィと喉を鳴らして
のけぞる竜之介。
「あ、いきそ、いく、いくっ、イクっ!」
その言葉を発することで絶頂を引きこんだふうに。ブルルと腰を震わせた美佐子。
なおも未練がましく、ゆるゆると臀をまわしていたが。
女肉の中で、竜之介の肉体が急速に力を失うと、ようやく動きを止めた。
フーーッと長い息をついて、ゼイゼイと荒い息をついている竜之介の上に倒れこむ。
すぐに、竜之介の腕が美佐子の背にまわって、強く抱きしめた。
「……美佐子…さん……」
弾む息の下から、竜之介が呼んだ。想いのこもった声で。
美佐子との情交がもたらした、恐ろしいほどの快楽に、竜之介は魂を奪われていた。
536職人志望:02/12/07 00:00 ID:5gjChL/r
無論、竜之介とて、美佐子との交歓を夢見ていた。
生まれてはじめてといっていい、真剣な想いを寄せた相手との愛の行為。
それは、素晴らしいものになるだろうという期待を抱いていた。
だが、現実となったそれは、どんな想像をもこえていた。
これほどの悦楽があるのか? といまだに信じられない思いがする。
そして、互いに情熱をぶつけあう時間を得たことで、ふたりの関係が決定的なものになったという
喜びもあった。
身も心も無上の幸福に包まれた、いまの想いを、竜之介は短い言葉にかえる。
「……好きだよ……絶対に離さない……」
美佐子の髪を梳きながら、囁く。
美佐子からの応えはなかった。乱れた髪に隠されて、その表情もうかがえない。
(……また、恥かしがっているのかな?)
また、激しい行為への羞恥を感じているのだろうと解釈して、竜之介は苦笑した。
(確かに、美佐子さんが、こんなに乱れるタイプだとは、思わなかったな。
 俺ももう少し、上手にならないと……)
ボンヤリと、益体もないことを考えながら、竜之介は眼を閉じた。
さすがに、立て続けに二回の行為で、肉体は疲弊していた。睡魔が忍び寄ってくる。
それもいい、と思った。このまま美佐子を抱いて眠るのも……。
至福の中に、まどろみかける竜之介。
と、腕の中の美佐子が動いた。竜之介の胸に手をついて身体を起こす。
「……美佐子さん?」
眠たげな目を開く竜之介。美佐子は無言のまま、竜之介の体から下りる。
ニュルン、といまだ美佐子の中にあった竜之介のペニスが抜け出た。
力を失い、しなだれたペニスを、美佐子が掴む。そのまま腹這いになりながら、顔を寄せる。
「えっ? み、美佐子さんっ?」
驚きに目を見開く竜之介を尻目に、美佐子は躊躇いなく汚れたペニスを口に含んだ。
537職人志望:02/12/07 00:01 ID:5gjChL/r
「クウゥッ……」
射精直後の過敏になっている性器への刺激。苦痛とも快感ともつかぬ感覚に顔をしかめながら
美佐子を止めようとする竜之介。
「み、美佐子さん、ダメだよ、汚いよ」
情事の直後、それも膣内で射精したばかりのペニスだ。当然ながら、男精と女蜜にまみれている。
しかし美佐子は、竜之介が伸ばした手に、うるさげに首をふって、一心不乱に口舌を使った。
「ウア……す、すご……」
貪るような舌の蠢きと、強烈な吸い上げに、身悶える竜之介。
二度も、大量な吐精を遂げたばかりの男根が、またムクムクと膨張しはじめた。
「……ンフ……」
美佐子が嬉しげに喉を鳴らす。ジュポジュポと唾音を響かせて、さらに激しく頭をふる。
やがて、美佐子が口を離した時には、竜之介の肉根はほぼ完全な勃起状態を取り戻していた。
竜之介は信じられない思いで、自分の肉体の変化を眺めた。
しかし、美佐子は、まだ満足せずに。
「……もっと、もっと大きくなって……」
チロチロと舌を這わせた。鈴口をくすぐり、裏スジを舐めあげ、カリ首に舌先を差しこんで。
その間も、根元を握った指でシュッシュと扱きをくれて、さらなる充血を誘う。
「ウ、ああ、気持ちいいよ、美佐子さん」
美佐子のなすがままに性感を煽られる竜之介は、泣くような声を洩らして、腰をわななかせる。
濃厚なフェラチオを受けた怒張は、二度の爆発などなかったかのように、ギンギンに漲った。
そのさまを眺めた美佐子は、真っ赤になって張りきった亀頭に、再び唇を被せた。
ダラダラと唾液を吐き掛けながら、ズルリと呑みこむ。
「……ン……フ……」
「……す、すげえ……」
勃起した自分のペニスを、やすやすと根元まで含んで見せる美佐子に、驚愕の目を向ける竜之介。
(……美佐子さんが、こんなことまで……)
すべて、亡くなった夫に仕込まれたのだろうが。一度だけ写真で見たことのある美佐子の亡夫は、
優しげな線の細い人物と思えたのに。そんな濃厚な営みをしていたなんて……。
538職人志望:02/12/07 00:02 ID:5gjChL/r
「……ング……ムウ……ハァ」
しばし、竜之介の勃起を口腔で味わっていた美佐子が、肉根を吐き出して顔を上げた。
乱れた髪を掻きあげながら、竜之介と眼を合わせる。
淫情の炎を燃やした美佐子の眼に射すくめられて、竜之介は身を固くする。
ゆっくりと美佐子が、身体をまわした。
シーツの上に乳房を押し潰して、豊満な臀を高く掲げて、竜之介へと差し出す。
両膝を大きく開いて。竜之介の精をタレ流す秘裂を見せつけた。
「……来て、後ろから、して」
昂ぶった声で、美佐子が求める。
ユラユラと、白い臀が揺れる。月の光の中。
竜之介は、固い唾を呑み下して。
どこか意志なきもののような動きで、牡を誘う白い肉へと体を寄せていった……。
539職人志望:02/12/07 00:03 ID:5gjChL/r
……以上です。
話も、ようやく終盤にかかってまいりまして。
せっかく、いろいろと展開のリクをいただてますが、
あまり期待には添えないかと……スミマセン。
……つーか、今回ので、200レス使ったことになるのですよ。
たいがいにしないとねえ、ホント……。
540名無しさん@ピンキー:02/12/07 01:50 ID:pwHuksHY
・・・はぁぁぁぁ~、いやぁ堪能しますた。

なんて貪婪な熟女・・・
女性特有の乳臭い息の匂いまで伝わってくるような。
今印刷して読み返してるんですが、
まさに、定番の黄金パターンで言うことありません。

貞淑な淑女が寝取られたすえ、
ねっちりなぶられて変えられてしまった展開はやはりすんばらしい。

一般には定番パターンに押し込むために、
普通はどうしても女性が突然淫乱化した印象を与えてしまいがちなんですが、
ぼくにはそういったアラも感じませんでた。

これはやっぱ、字数をかけつつも助長にならず
丁寧に職人志望氏が書いてくれたおかげだと思うので、
200スレだろうがいくつだろうが、
はしょらずこのままねっちり書いて欲しいです。

ただでさえ貴重な職人なんだし、
一人が増殖しすぎることより、職人が減ったり薄くなるほうが、
スレにとってもよくないと思うので。
ぼくもなんか書ければいいんですけどねぇ。
541名無しさん@ピンキー:02/12/07 12:24 ID:RGcpX8j5
職人志望さま

美佐子SSが終盤だとか
このSSが終わったあとに外伝として
友美と芳樹絡みをお願いします
542名無しさん@ピンキー:02/12/07 19:02 ID:ULUUM3Uw
美佐子「終わっちゃイヤッ」(w

展開としては終盤というのも仕方ありませんが、
なるべく続けて下さい。せめて終わりのシチュとして

美佐子がカエル親父の元に去り、失意の日々を送る竜之介。
そんなある日、彼の元に1本のビデオテープが。
そこにはあらゆる卑語を叫びまくり、カエル親父無しには
生きていけないと絶叫する美佐子の姿が・・・

てな展開をキボンヌ。期待してます。
543名無しさん@ピンキー:02/12/07 22:11 ID:eima3VjQ
寝取られたとしても最終日になったら、別キャラに
告白or相手からの告白OKして、何事もなかった様に幸せに
なる不死身の男、竜之介。



544名無しさん@ピンキー:02/12/07 23:00 ID:ec6UJ8Js
美佐子SSの結末は、やはり美佐子と竜之介が幸せになるように希望
545名無しさん@ピンキー:02/12/07 23:29 ID:1jEgwgQx
そして今夜1さまの書き込みがあると最高の週末なんですけど
546名無しさん@ピンキー :02/12/07 23:33 ID:XNhZxUqR
>>544
それは嫌
カエル親父の方がオスとして魅力的です
547名無しさん@ピンキー:02/12/08 00:54 ID:Jc5hauDG
俺も出来れば美佐子×竜之介エンドがいいなぁ。
寝取られる過程はスキだが、そのままエンドってのは
どこまで堕ちて逝っても抜き度は高いが安易に感じる。
堕ちた女神の後ろめたさとか受け止めなきゃいけない男の
苦悩とか葛藤がスキなんだが、最近の寝取られマンセーは
それを許してくれない…
548名無しさん@ピンキー :02/12/08 01:06 ID:9vmIV+kl
>>547
まだ美佐子は堕ちるとかまで堕ちきってない。
そんな状態で、美佐子×竜之介エンドにすれば非常に物足りなさを感じる。
549名無しさん@ピンキー:02/12/08 04:36 ID:6vc+QZcs
>548
堕ちて堕ちた美佐子と人生絶好調のカエル親父と
傷ついて傷ついて足掻いて苦悩して失意の底から…
HP残り1から這い上がる竜之介…。
その上での美佐子×竜之介がいいなぁて事なんだけど、
それがHappy Endかは別。
総てを受け入れると言いながら、心の中にどす黒いシコリを
残した竜之介と、カエル親父を体と心のどこかで求めてしまう美佐子の
新たなスタート。
そう言うエンドも見たいな♪て事です。
550名無しさん@ピンキー:02/12/08 05:21 ID:Xnq5fzp6
まあ結局は任せるのが一番な訳ですが。
551名無しさん@ピンキー:02/12/08 15:31 ID:3WpdtOWP
ごもっとも。
552名無しさん@ピンキー :02/12/10 14:08 ID:g9Tvd8jm
まだかな
553名無しさん@ピンキー:02/12/10 23:28 ID:td5zd71C
桜子にエロは禁忌なんでしょうか?
友美や可憐は結構あるのに・・・。
554名無しさん@ピンキー:02/12/11 01:19 ID:BQrwkomo
>553
書きにくいだけじゃない?。病人相手だと無茶がさせにくいとか。
555名無しさん@ピンキー:02/12/11 01:34 ID:hfOMJAV/
>533
他キャラとの接点がない、というのも一因では?
556名無しさん@ピンキー:02/12/11 02:26 ID:gmo/Y7TV
>>553

「病人」という設定を活かしながらだと、エロくしにくいんだろうな。
純愛路線や号泣系(『加奈』とか)ならば走らせられるんだろうけど。
557名無しさん@ピンキー :02/12/11 02:30 ID:00ocB+zr
>>553
野々村病院の桃子のように
先生との肉体関係・・(;゚∀゚)=3ハァハァ
558名無しさん@ピンキー:02/12/11 03:45 ID:YSZ95bQ6
体じゃなくて心患ってることにすればいいだよ。
アメリカの方じゃ放り込んだダウナー系美少女は確実に医者の性のはけ口だよ。
素敵なお薬使って下の口からずるっとね☆

……スマン、吊ってくる
559名無しさん@ピンキー:02/12/11 09:06 ID:jzByViiL
ああ、愛美さんにやさしくイカされたい(w

とか言ってみるテスト。
560名無しさん@ピンキー:02/12/11 20:45 ID:y5xuttuG
>職人志望様

1.カエル親父との関係が竜之介にばれる
2.ヤケになった竜之介が唯をレイプ
3.愛のない関係に疑問を感じた唯が美佐子に相談
4.美佐子は母として竜之介を責めるが、返す刀で詰られる
5.ショックを受けた美佐子はカエル親父のもとへ
6.落ち込む竜之介を励ます唯に、美佐子との関係を告白
7.ショックを受けた唯もフラフラと家を出ていく
8.後日、孤独な竜之介のもとへカエル親父から親子丼VTRが届けられる

ってな展開をキボンです。ええ。
561名無しさん@ピンキー:02/12/11 23:21 ID:zfpHnqjV
王道って言えば王道、ありがちって言えばありがち。
562名無しさん@ピンキー:02/12/11 23:42 ID:gLE8WBKl
>職人志望様
あの暴力先生が愛美が落とすSSを書いて下さい!
563名無しさん@ピンキー:02/12/11 23:42 ID:gLE8WBKl
>職人志望様
あの暴力先生が愛美が落とすSSを書いて下さい!
564名無しさん@ピンキー:02/12/11 23:48 ID:lpD8exOS
またPinkTowerか。
続きは先そうやね…
565名無しさん@ピンキー:02/12/12 00:36 ID:JWD/lB6T
あれ、直ってる。
566職人志望:02/12/12 02:41 ID:xdVJQfHz
どもです。
ええ、結末について、たくさんの御意見をいただきまして。
本当にありがたいことだと感激しておるんですが。
同時に……ヤバイなあ、とも。
↑のいくつかの展開の方が、当初から考えてたものより、
面白いなあ、エロいなあ、と。
ただここで迷うと収拾つかなくなると思うんで。
予定どおり進めさせていただくっす。
一番ベタなところへ着地するかと……。

で、続きです。
なんか、えらい苦しんだパートです。
もっとスッキリとしないものかと、いろいろ試してみたんですが……。
技量的にこれが限界です。許してください。
567職人志望:02/12/12 02:42 ID:xdVJQfHz
……目覚めた時には、竜之介はひとりだった。
「…………ん……?」
それは当然のことのはずなのに、何かが足りない気がして。
突っ伏したまま、ボンヤリと記憶をたどる。
「……む?」
自分が素っ裸で布団の中にいることに気づく。
そして、シーツに沁みた、自分のものではない匂い。
「……あ……そうか……」
前夜のことを思い出す。美佐子との濃密な情事。
もう一度、部屋の中へと視線を巡らせた。
美佐子はいない。窓からは明るい朝の陽射しが差しこんでいた。
時計を見ると、午前九時を過ぎていた。
「……そりゃ、そうか。朝の支度も、店の準備もあるし」
一抹の寂しさを感じながらも、そう納得する。
「……でも、美佐子さん……タフだなあ……」
今朝も、いつもと同じ時間に起き出して、日常をこなしているとすれば、
たいしたものだと感心する。
竜之介のほうは、体に残る重たい疲労に、なかなか起き上がる気になれなかった。
昨夜は……結局、都合四回、竜之介は欲望を吐き出した。
最後には精も根も尽き果てて、昏倒するように眠りに落ちたのだ。
「……美佐子さん、激しかったなあ……」
しみじみ呟く竜之介。
立て続けに三度の射精を遂げて、さすがに泣きが入った竜之介を許さずに、
また口と舌で無理やりに勃起を強いて、跨ってきた美佐子を思い出す。
568職人志望:02/12/12 02:43 ID:xdVJQfHz
「ま、無理もないか。十年ぶり、ってことだもんな」
一夜明ければ、すべてが甘い余韻に変わって。
竜之介は、美佐子の溜めこんでいた欲求の大きさを思って、同情する余裕すらあった。
あれほど成熟した肉体が、十年も性的な戯れから遠ざかっていたのだから、
昨夜の美佐子の乱れようも、無理はないことなのだろうと。
勿論、竜之介の胸には、ついに美佐子と結ばれたという感慨と、そして、
美佐子との情事がもたらした深い悦楽への満足感がある。
酷使された肉体に残る疲労すら、心地よく感じられた。
竜之介は、もうそこにいない美佐子を抱くように腕を伸ばして。
美佐子の横たわっていた場所に顔を埋め、残り香を吸いこんだ。
「……俺って、幸せものだよなあ……」
実感が、聞くもののない言葉になって洩れる。
これで、自分たちの関係は決定的になった。まだ、前途にはいくつもの障害があるけれども。
必ず、ふたりで乗り越えていける、と明るい未来を確信する。
「そうなれば……いつでも、美佐子さんと……」
悦楽の時間を過ごせるようになるのだ、と胸を高鳴らせて。
……いや、昨夜みたいのが続くんじゃ、身体がもたないかも? と一瞬不安になり。
いやいや、美佐子さんだって、いつでもあんな調子じゃないだろう、昨夜は久しぶりだったから、
ちょっとはめを外してたんだよな、と結論する。
いずれにしろ、竜之介には、もう美佐子以外の女性は考えられなくなっていた。
「……美佐子さん……」
すべてが現実だったことを確認するように、またシーツに鼻先を擦りつけた。
すでに、美佐子のぬくもりは残っていないことが、惜しかったが。
それでも竜之介は、この朝に感じる至福に、しばしたゆたった。
569職人志望:02/12/12 02:44 ID:xdVJQfHz
……さらにしばらくの時間が過ぎて。
ようやく階下へと下りた竜之介を迎えたのは、唯だけだった。
「あ、おはよう、おにいちゃん」
「おはよ……もう帰ってたんだ」
「うん。お店の手伝いがあるし…」
言いながら、トースターにパンをセットする唯。
「それに。ねぼすけさんの朝ご飯も用意しなくちゃならないからね」
「ハイハイ……ありがたいこってす」
エッヘンと胸をはる唯に、苦笑を返す竜之介。
唯は笑って、レンジに向かい、竜之介の分のベーコン・エッグを作り始める。
「……美佐子さんは……もう店に?」
「うん」
開店の準備……少し時間が早い気がした。
(俺と……顔を合わせるのを恥かしがってるのかな。美佐子さん)
竜之介にしても、いささか気恥かしいものがある。どんな顔をすればいいのかわからない。
「できたよう」
手早く調理を終えた唯が、竜之介の前へと皿を置いて、対面に座る。
焼き上がったパンにバターをぬりこむ。毎度ながらの、甲斐甲斐しさである。
(……変に態度を変えて、唯に気づかれるわけにもいかないしな)
昨夜のことは、竜之介にすれば突発的に訪れたものだった。
美佐子がそれを許してくれるのは、唯に事実を告げてからのことだろうと思っていた。
だから、突然の美佐子の行動を意外に思ったのだが。
(唯が外泊するのも、急にきまったことだったからな)
無論、唯が不在だったからこそ、美佐子は行動を起こしたのだと思う。
570職人志望:02/12/12 02:44 ID:xdVJQfHz
「……どうかした?」
知らず、ジッと見つめてしまっていたようで、唯が怪訝な顔をする。
「あ、いや」
竜之介は誤魔化すように、パンにかじりついた。
とにかく。唯には、決して昨夜のことを気づかれてはならない。
ふたりの関係を明かした後も、その以前に肉体を重ねたことだけは隠さねばならないだろう、と思った。
……家族である唯にたいして、期限つきではない秘密を抱えてしまったことに、後ろめたさを感じて。
「……どうだった、昨日は?」
つい、機嫌をうかがうような口調になってしまう竜之介。
「うん。楽しかったよ。みんなでね、いっぱい、おにいちゃんの悪口を言い合ったの」
「……いなくても、ネタにされるのかよ」
「しょうがないよ。おにいちゃんはネタの宝庫だから」
「ああ、そうですか。……唯は、今日も店に出るのか?」
「うん。おにいちゃんは?」
「うーん……」
少し悩む竜之介。美佐子の顔を見たい気持ちはあるが。
どうも、唯の前でボロを出してしまいそうな危険を感じて。
「昨日サボったからな。今日は勉強しとく」
「そう……」
ちょっとだけ残念そうな唯。
「じゃ、休憩したくなったら、店に来てね。唯が美味しいコーヒー淹れてあげるから」
「ああ……」
食事を終えると、唯は店に、竜之介は自室へと向かった。
571職人志望:02/12/12 02:45 ID:xdVJQfHz
「あてて……」
階段を上ろうとすると、腰が痛んだ。
体を屈めて、老人のように一段ずつ上がる竜之介。
「こ、こんな姿は唯には見せられないな……美佐子さんにも、か」
かなり情けないものを感じながら、ようよう辿り着いた部屋に入ると。
「……うん? 匂うな」
一度、出てから戻ったことで、室内に残る臭気に気づいた。
昨夜の名残、といっても饐えたような異臭はいただけない。
慌てて、窓を開け空気を入れ換える。
それから、乱れたままのベッドに向かった。
上掛けをどけると、皺だらけになって、めくれあがったシーツが現れる。
引き剥がして、ちょっと臭ってみる。
「……ウエッ」
確かに、美佐子の体臭も残っている……気はしたが。それ以上に強く自己主張している
汗と精液の臭いと混ざって、形容しがたい香になっていた。
朝は、こんなものに顔を擦りつけてウットリしていたのか、とちょっとヘコむ。
丸めたシーツを抱えて、また苦労しながら階段を下り、浴室へ向かった。
洗濯機に臭いシーツを放りこんだところで、じゃあ、こんなものの上で寝ていた自分はどうなのか?
と思い至って。その場で脱いだ服や下着も洗濯機に入れて、浴室に入った。
浴室は、使われた形跡があった。美佐子だろう。
「そりゃ、そうだよな」
そのまま、店に出るわけにはいかないだろう、と。
こんなことでも、美佐子と秘密を分け合っているようで、嬉しかった。
572職人志望:02/12/12 02:46 ID:xdVJQfHz
熱めのシャワーで、ベタついた肌を洗い清める。
「……ここは、特に念入りに洗っておかないとな」
少しヒリヒリする部分は、慎重に手で洗う。
「……また、いつ誘われてもいいように。清潔を心がけないと」
などと言ってはみるが、そうそうチャンスはないだろうことも理解していた。
少なくとも、ふたりの関係を公にするまでは。
浮かれた気分のなかにも、竜之介なりに昨夜のことの意味を考えている。
美佐子が、自分を求めてきた。その唐突さに驚いたが、美佐子も心の中では、ああなることを
ずっと求めていたのだ。そうとしか思えない、昨夜の美佐子の行動である。
ならば、最近の美佐子の鬱屈は、その欲求を押しこめていたせいだったのか……とは、さすがに
竜之介も考えない。そこまで短絡的ではない。
美佐子は、やはり自分との関係について悩んでいたのだと思う。
特に、唯に対しての割りきれない思いに深く懊悩して。
その中で、確かなよりどころとなるものを美佐子は求めたのだと竜之介は解釈した。
竜之介自身が、昨夜の体験でそれを手にしたからだ。
一時は、美佐子の変調に不安を感じたりもしたが。
もう自分は揺らがないという確信が、いま竜之介にはある。
きっと、美佐子も同じであるはずだ、と竜之介は信じた。
あとは進むだけだ。いま、自分がやるべきことに全力を注いで。
「よし」
最後に冷たい水を浴びて、竜之介はシャワーを終えた。
573職人志望:02/12/12 02:46 ID:xdVJQfHz
……結局、この日の竜之介は、終日を自室で机に向かって過ごした。
「おにいちゃん」
「……うん?」
呼びにきた唯に、テキストから視線を上げて。
「どうした?」
「どうしたじゃなくって。夕ご飯だよ」
「なぬ?」
時計を見れば、午後六時。窓の外は暗くなっている。机のスタンドは点いているのだが、
いつ点けたのかも記憶になかった。
「……ずーっと、やってたの?」
「ああ……ちょっと、集中してたから」
気合満点、頭の動きも快調で、没頭していたのであったが。
唯は呆れ顔で、
「……そんなことだろうとは思ったけど。お昼も食べに来なかったし」
「あっ! 本当だ。すごく腹が減ってるぞ」
「……ハァ。おにいちゃんて、絶対、体内時計がおかしいよね。一日中、寝て過ごしたりもするし」
「ちょっと忘れてただけじゃないかよう。さ、メシ、メシ」
いそいそと部屋を出ていく竜之介に、もう一度、ハァとため息をついて。後に続く唯。
だが、竜之介は廊下に出たところで足をとめて、
「唯。今日は……美佐子さんのようすはどうだった?」
心もち、声を潜めて訊いた。
「ええと……」
突然の問いかけを、唯は不審には思わない。美佐子の状態を気にかけることは、
最近のふたりの習慣になってしまっていたから。
574職人志望:02/12/12 02:47 ID:xdVJQfHz
「今日は、落ち着いていた気がする。ボーッとしてるとこも見なかったし」
「ふんふん。そうか」
納得しきりの竜之介、いぶかしむ眼を向ける唯をあとに、足取りも軽く階段を下りて。
ただ、この日はじめて美佐子と顔を合わせるのには、少し緊張したが。
「お疲れさま」
迎えた美佐子の態度は、まったく何気ないもので。さすがだなあ、と竜之介を感心させた。
「う、うん。美佐子さんも、お疲れさま」
無難な言葉をかえして。しかし、“お疲れ”のひとことにも、
つい余計な意味を考えてしまう自分を、イカンイカンと諌めて。
「腹へったあ。いただきまーす」
とりあえずは、空腹を満たすことに集中する。ボロを出さないように。
旺盛な食欲を発揮しながら、さりげなく美佐子のようすをうかがって。
唯が評した『落ち着いている』という言葉を納得する竜之介。
美佐子は、相変わらず口数は少ないが。例の放心状態に陥ることもなく。
賑やかな唯と竜之介のやりとりの途中に話をふられれば、ちゃんと受け答えもした。
(うんうん。これだよなあ)
食後のお茶をすすりながら、竜之介は感慨にふける。久しぶりの、なごやかな団欒の構図に。
やはり、昨夜の出来事が、美佐子にとっても良いキッカケになっているのだと。
ひとり合点して、悦に入っていた。
そして。
(……もしかすると。今晩にも、唯へ事実を告げることになるかも)
とまで。先回りした考えを浮かべていたのだったが。
575職人志望:02/12/12 02:48 ID:xdVJQfHz
唯と、春物の洋服の話などを交わしていた美佐子が、区切りのいいところで立ち上がって、
「……今日は、少し疲れたみたい。先に休むわね」
そう告げたことで、竜之介の気構えは無駄になった。
「あ、うん。今日もわりと忙しかったもんね」
特に、体調が悪いというふうではなかったから、唯はあっさりと納得する。
あれれ、ってな感じの竜之介だったが、引き止めるべき理由もなく。
唯とともに、美佐子へ、おやすみなさいを言うことになる。
「おやすみなさい」
美佐子が自室へ去って、なごやかな時間はあっさりと終わりを告げた。
「唯も、今日はもう寝ようかなあ」
唯が、小さくあくびをしながら言った。
「どうせ、昨夜はあんまり寝てないんだろ? いずみんとこで」
「うん、そうなんだ……おにいちゃん、お風呂さきしていい?」
「いいよ」
それじゃ、と唯も出ていって。ひとり残された竜之介。
「………………」
やはり寂しいものがある。
美佐子とは、ふたりで少し話したい気持ちもあったが。その疲労のわけも知っているから、
無理もいえない。
「……俺も、寝ようかなあ」
576職人志望:02/12/12 02:49 ID:xdVJQfHz
……自室に戻った美佐子は、笑顔の仮面を外す。
この部屋が、すっかり逃げこむための場所になってしまっている。唯と竜之介から。
「………………」
足を引き摺るようにしてベッドへと向かい、腰を下ろした。
ボンヤリと宙を見つめて。
今さっきまでの食卓での和やかなひとときは、美佐子にとっては拷問のような時間だった。
美佐子は、自分への罰として、その苦痛に耐えた。
耐えようとして、これ以上は耐えられないとなって逃げ出した。
暗い部屋へと逃げて、しかし安堵の息はつかない。つかないと決めていた。
自分を責める言葉も吐かない。それもまた、自分を守るためのものだと知っているから。
責める価値すらない自分だと、思いしったから。
唯が感じたように。この日の美佐子の心は、鏡のように平らかであった。
朝、唯が帰宅した時には、そのような状態になっていた。
自責や慙愧の想いも、贖罪の涙も、夜のうちに流し尽くしていたから。
577職人志望:02/12/12 02:49 ID:xdVJQfHz
昨夜……竜之介の部屋を訪れた。抱かれるために。抱いてほしくて。
あの時。この部屋で、おのが肉のあさましさに泣いていた顔を上げて。
風呂で身体を清めて。夜化粧をして。
階段を一歩一歩のぼっていった時に、自分はなにを考えていただろうか?
たすけてほしい、と思った。底無しの暗い穴に落ちかけている自分を救ってほしいと。
頼れるものは、彼しか竜之介しかいなかった。
竜之介なら、という一縷の希望もあった。彼が向けてくれる一途な愛情こそが自分を救ってくれるのではと。
そんな想いに、動かされていた。それは真実だ。
自分の心の真実の、一部だ。一部分でしかない。
竜之介の部屋の前に立った時。自分の“女”はすでに濡れていたではないか。
この扉の向こうに男がいて、これから自分は、その男に抱かれるのだと思っただけで、
欲深い肉体は熱く疼いて、トロトロと蕩けはじめていたではないか。
部屋に入り、竜之介の前に火照った肉体をさらした時には。もはや貪ることしか考えられずに。
せめて、それだけは、と自分に課していたはずの義務さえ放棄してしまったではないか。
最低限の義務、儀礼。竜之介にすべてを告白すること。
あっさりと、自分はそれを投げ捨てて、竜之介に襲いかかったのだ。
あの男のことなど、ひとことも口にせずに。ただうわごとのように、抱いてくれ、
犯してくれという意味の言葉だけを口走りながら。
何故、言えなかったのか? あの瞬間にも、すべてを隠したまま竜之介を求めることの
罪深さだけは理解していたはずなのに。それが、どれほどの裏切りであるか解っていたのに。
彼に嫌われたくなかったから? 彼の愛を失うことに耐えられなかったから?
578職人志望:02/12/12 02:50 ID:xdVJQfHz
そうではない。そうではなかった。
あの時の自分が恐れたのは。
穢れた身体だからと、竜之介に拒絶されることだった。その場で、突き放されることが。
抱いてもらえないこと、犯してもらえないこと。目の前の若い牡の肉を貪ることが
出来なくなることだけが怖かったのだ。
だから、不都合な事実は穏遮した。ひととしての最低限の誠意など投げ捨てた。
すべてを隠したまま、竜之介を挑発して。そうして、望みのものを手に入れた。
猛りたった、男の肉体を。
竜之介の男性が自分の中に入ってきた時。はじめて、ふたりが結ばれた瞬間。
大切に大事に行うべきことを性急にして、感激も感動もなくしてしまったのは自分だ。
あの時の自分は、ひたすら待ち焦がれた本物のペニスを味わうことだけに意識を占められていた。
痴れ狂った。ただ己の欲望を満たすことだけを求めて。
それに巻きこまれて。竜之介はあっという間に爆ぜてしまった。
あっけない中断に愕然として。彼を責めるような気持ちさえ胸にわかせた。
竜之介の目の前で、彼の吐き出したものを味わってみせたのも、不満の屈折した表現だったと思う。
だが。そんな自分にさえ、竜之介は優しかった。
身体を清めてくれる竜之介の横顔を眺めるうちに。わずかにだが、理性が蘇った。
竜之介の優しさが辛くて。それでも卑怯な自分は、その温もりに癒されたくもあって。
すまない、とかたちばかりの慙愧を感じながら、告解の言葉を口には出来なかった。
竜之介が、二度目を求めてくれたことを幸いとして、そのまま流されることを選んだ。
……無論それは、まだ満たされない肉欲のせいでもあって。
どこまでも……悲しいほどに自分のことしか考えていなかったということ。
579職人志望:02/12/12 02:51 ID:xdVJQfHz
それでも。二度目の交わりでは、竜之介にすべてを委ねようとした。
いまさら、本当にいまさらなことだが。彼に愛されたかった。自分から貪るのではなく。
凌辱され蹂躙されて歪められてしまった肉体を、情愛に満ちた交わりで浄化してほしい、
そんな勝手な願い。愚かな希望。
だが、そんな最後の望みを打ち砕いたのも、自分だった。
竜之介は、充分に逞しく力強かったと思う。
もし……ひと月前なら。亡き夫しか男を知らなかった自分ならば。彼との行為に、
夢のような陶酔を感じて、この上ない至福を味わえていただろう。
だが……いまの自分にとっては……。
愛し愛される相手と結ばれたという感動は、肉体の感じるもどかしさに、すぐに霧消してしまった。
やるせなさに身悶える肉体が発する叫びを聞いた。
(あの男の肉体は、もっと逞しかった)
(あの男の動きは、もっと荒々しかった)
(あの男の責めは、もっと巧みだった)
(あの男の与える快楽は、もっとずっと深くて強くて、なにも考えられなくなった)
(あの男なら…………)
ついには、竜之介の生ぬるい行為に我慢しきれずに、彼の上に跨った。
少しでも、あの男が与えた悦楽に近づけるようにと。それだけを乞い願って。
組みしいた竜之介が二度目の欲望を遂げて。
それを女肉に受けて、自分も半ば強引に絶頂に達したのだが。
(もっと、もっと)
肉の声は止まず、どんどん強くなって。
竜之介の胸に抱かれながら。ああ……自分はどんな言葉を内心に呟いていた?
優しい言葉や気遣いなどいらないから。もっと激しく犯してくれと……。
ひどすぎる。救いようがない。救われる価値もない。
そんなことなど……愛情によって救済されることなど、この時の自分は欲していなかったのだから。
580職人志望:02/12/12 02:52 ID:xdVJQfHz
……狂った牝が、どうにか理性らしきものを取り戻したのは。
さらに二度の行為を強要された竜之介が、喪神するように眠りについたあとだった。
それほどに若者を貪っておきながら、自分はまだ満たされていなかった。
だから、力を失ってしまった竜之介の肉体を未練がましく弄いながら、
疲れ果てて眠る顔に、恨むような眼を向けてしまっていたのだが。
竜之介が、眠りの中で、自分の名を呼んだ。他意のない、純粋な想いのこもった呟き。
血の気が引いた。
なにを……なんということを、自分はしてしまったのかと。
一瞬も、彼のそばには居たたまれずに、逃げ出した。床から引っ手繰ったローブは手に持ったまま、
裸で部屋を飛び出していた。
階段を駆け下りて、自分の部屋まで辿り着けずに、暗いリビングで崩おれて。
泣いた。我が身のあさましさに、犯した裏切りの恐ろしさに、慟哭した。
この罪深い肉体が消えてなくなればいいのに、と思った。
泣き続けて。自分を責め続けて。
そうしながら、そんな自分の行為に、吐き気のするような嫌悪を感じた。
涙を流すのも自分を責めるのも、所詮は自己弁護に過ぎないと気づいたから。
あれは、狂気の中のふるまいで? いまは正気にかえって、それを悔む?
そんなことはないのだ。
たったいままでの狂態が、自分の本当の姿なのだ。
情欲に盲いて、大切な絆さえ踏みにじる。いまの自分は、そういう女なのだ。
下劣な獣が下劣な行動をとったからといって、責めるに値するものか。
ましてや、悔恨の涙など……笑止なことだ。
581職人志望:02/12/12 02:52 ID:xdVJQfHz
嗤うべきだ、と美佐子は思った。それこそが相応しい扱いだと。
夜の居間で、裸で床に跪いたまま、美佐子は口の端を歪めて無理やりに笑った。
なのに涙が止まらなくて、それが腹立たしかった。
どれだけの時間、無様な泣き笑いを続けていただろうか。
身体が冷え切った頃、美佐子は物憂く立ち上がって、浴室へと向かった。
竜之介との情事の痕跡を洗い流しながら。
竜之介への想いも、今度こそ諦めなければならないのだと、自分に言い聞かせて。
そんな感傷も不相応だと、自嘲した。
自分を見下げはてることで、美佐子は安定を手にした。
もう、なにもない自分だと絶望することが、安息を生んだ。
そんな状態で、美佐子はこの一日を過ごした。
自分の空虚を無価値を自覚すれば、懊悩にとらわれることもなかった。
それでも……終日、店に顔を見せない竜之介のことを思うと、かすかに胸が軋んだ。
幻滅して、もう自分の顔など見たくないのだろうと、彼の心を推し量って。
悲しみとともに安堵を感じた。それでいいのだ、と。
だが。夕食になって顔を合わせた竜之介の態度に、それが早計だったと気づいた。
竜之介は、変わらぬ、いや、いままで以上に想いのこもった眼を向けてきた。
それに美佐子は、喜びよりも困惑を感じて。
耐えきれず、彼の前から逃げ出したのだった。
582職人志望:02/12/12 02:53 ID:xdVJQfHz
変わらぬ想いを向けられること。それがいまの美佐子には苦痛であった。
「……呆れて、嫌ってくれればよかったのに……」
そう呟いて。
ハッと美佐子は我にかえった。
「……私……なにを言って……」
“そうしてくれれば、片付くことなのに”
一瞬だが、そう考えてしまった自分に愕然とする。
……まだ、自分の心には欺瞞の皮が残っていたのだ、と美佐子は思い知らされた。
絶望してみせるのも、すべてを諦めると繰り返すのも。
結局は、言い逃れで。詭弁にすぎなくて。
本当は。竜之介を……諦めるのではなくて……。
「いやだっ」
美佐子は両手で顔を覆って、ベッドに倒れこんだ。
それ以上の思考を拒絶する。これ以上、自分の醜さを見つめることが出来なかった。
この日の美佐子を支えていた、絶望という安寧は脆くも破れて。
「……ごめん……なさい……ごめん、なさい……」
美佐子は顔を隠したまま啜り泣いて、禁じたはずの言葉を何度も繰り返した。
どこまで……この暗黒は深いのだろう、と慄えた。
まだ、自分は行き着いていないのだと思えば、震えは止まらなかった。
なんでもいいから、誰でもいいから、この虚ろを埋めてくれと惑乱した美佐子が。
思い浮かべた顔は…………。
583職人志望:02/12/12 02:54 ID:xdVJQfHz
翌日。月曜の朝。
唯と竜之介を学校へと送り出して。美佐子は『憩』の店内にいた。
いつものように開店の準備に動きまわることなく、カウンター席に座っている。
固い表情で座りこんで、美佐子は待っている。
予感があった。
すべてを見透かしているような、あの男だから。
たぶん……今日にも。
そんな確信を抱いて、美佐子は待っている。
そして。電話が鳴る。
「………………」
美佐子は立ち上がり、ゆっくりと歩み寄った。
受話器に手をかけて、一瞬の躊躇のあとに取った。
「……はい」
営業用ではない、硬く素っ気ない声で応答する。
果たして、電話は男からのもので。
『ステーション・ホテルにいる。いまから出てこい』
いきなり、用件だけを告げた。まるで、十日あまりの空白などなかったかのように。
「……はい」
美佐子が、了解をかえす。
男が部屋番号を教えて、短い会話は終わる。美佐子は受話器を戻す。
出掛ける準備をするために、家の中へと向かう。
584職人志望:02/12/12 02:54 ID:xdVJQfHz
一時間ほど後。
如月駅に降り立った美佐子は、ステーション・ホテルを目指す。
通いなれた道だった。何度となく、この道を辿って男のもとへと向かった。
道ゆきだけではなくて。先刻の電話のように、男との間のやりとりには、
すでに確立された形式があって。それをなぞればいい、という容易さがあった。
そう、楽なのだ。いまの美佐子は、そう感じる。
あれこれと思い悩む必要がないから。
自分は弱みを握られている……そういうことになっている。
だから、男の意に従うしかない。
どうすればいいのか、とか、どうすべきか、とか考える必要がない。
考えるのは男の役割で、自分はそれを受け入れるだけ。
その関係のありようが、いまの美佐子にはありがたかった。
知らず、足取りが急いたものとなる。鼓動が早い。
身体が……勝手に蠢きはじめている。
これから過ごす時間に、久しぶりの“逢瀬”に期待して。

……部屋の前まで辿りついて。
美佐子はかすかに弾んだ息を整える。神経質に髪を直す。
ドア・ノブに伸ばした手が、震えているのに気づいた。
深く、息をついて。
美佐子は、そのドアを開けた。
585職人志望:02/12/12 02:55 ID:xdVJQfHz
さすがに、最初の時のような高級な部屋ではない。
その後の男との“密会”に何度も使用していた、ごく普通のクラスの部屋だ。
滑りこんで、ドアを閉める。施錠する。
そして、思いきったように振り向いて、室内へと顔を向けた。
男が、いた。
「よお」
窓際の椅子に腰を下ろして、煙草を指に挟んで。馴れ馴れしい声をかけた。
「ずいぶん、早かったな。すっ飛んで来たってわけだ」
口を歪めて、皮肉な笑みを浮かべる。
美佐子は胴震いして。ジットリと下着が湿るのを感じた。
男の、舐めるような視線が、嬲る言葉が、感覚を刺激して。
どうしようもなく、血肉が熱くなっていく。
ああ……これなのだ、と実感した。
悪意を含んだ冷たい眼を向けられるのが、心地よかった。
純粋な思慕をこめた瞳で見つめられることよりも、ずっと。
男が横柄に顎をしゃくって、さし招いた。
ほとんど自動的に美佐子の足は動いて。
男のもとへと。
586職人志望:02/12/12 02:56 ID:xdVJQfHz
微妙な距離をおいて、美佐子は立ち止まる。
見上げる男の視線から、気弱く眼をそらして。次の言葉を待った。
「ひさしぶりだな」
ごく当たり前の言葉を、男は口にした。冷淡に。
美佐子には、答えようがない。
「愛想がねえなあ。再会の喜びくらい、表してもらいたいね」
「………………」
美佐子は答えない。しかし、否定もしなかった。
「なんだよ。しばらくほったらかしにしてたんで、拗ねてんのか?」
「………………」
……そうかもしれない、と美佐子は思った。音信も途絶えていた間、
男を恨む気持ちを抱いたことも確かだったから。
「それだってよ、おまえから言いだしたことだぜ? 呼び出しを控えてくれってな」
……そうだったろうか? そんなことを自分は言ったのか……。
「それとも、ひさしぶりに逢えて、胸がつまって言葉が出ないってか?」
……それも……そのとおりかもしれない。
なにを言えばいいのか、わからなくなっている。
どんな顔を、男に向ければいいのか……。
やれやれ、と呟いて。男が腰を上げた。
ビクリと反応した美佐子は、身を固くして、近づいてくる男を待った。
下に向けた視界に、男のつま先が入ってきて。
グイと、顎を掴んで仰のかされた。
冷たい眼が、見下ろしていた。
587職人志望:02/12/12 02:57 ID:xdVJQfHz
「……あ…」
かすかな声を洩らした美佐子は、もう眼を逸らすことが出来ない。
覚えのある男の体臭を嗅いで。軽く身体が触れ合って。
膝が震える。カッと喉の奥が熱くなった。
「……いい面だ」
ジックリと美佐子の顔をを眺めた男が笑う。
美佐子は、強い羞恥に首筋に血を昇らせた。
どんな顔を見せているのだろうか、自分は、いま。
きっと……淫らな期待に昂ぶった、“牝”の顔を……。
(……でも……どうせ、この男には……すべて、見透かされているんだから……)
いまさら取り繕ってもしょうがない、と開き直る気持ちがわく。
すべて、この男の思い通りに、踊らされてきた自分なのだから、と。
委ねれば、いいのだ。なにもかも。この男に。
男が顔を寄せてくる。
美佐子は目を閉じて、自分からも顔を上げて、それを受け入れた。
「……フ…ン…」
唇が合わさった瞬間、嬉しげに鼻を鳴らして。
入りこんできた男の舌に、すかさず舌をからめる。
男の体を掴みしめて、激しい口吻に耽溺した。
流しこまれる唾液を、嬉々として呑み下す。若い竜之介のサラリとした唾とは違うヤニ臭さ。
それがこよない甘露に感じられて。美佐子は恍惚として飲んだ。
588職人志望:02/12/12 02:58 ID:xdVJQfHz
長く濃厚なキスが終わったときには、美佐子は白皙の頬を火照らせて、
乱れる息に隆い胸を上下させていた。
男が、軽く肩を押す。それだけの示唆で通じる。
美佐子は腰をおとして、男の前に跪いた。人形のように、男の意のままに動かされることに、
確かな安堵と喜びを感じながら。
ベルトを外して、ズボンを下ろす。毛深い脚と、こんもりと盛り上がったブリーフが現れる。
「………………」
その膨らみに眼を奪われながら、美佐子は震える指を、男の下着にかけた。
息をつめて、一気に引き下ろした。
「…………アァ…」
ゴロン、と現れ出たものの姿に、美佐子は感に堪えたような声を洩らした。
男の肉根は、まだわずかな充填しか得ずに、下を向いたままだったが。
それでも、その見事な量感は、美佐子の胸をひしいで、血を昂ぶらせた。
ゴクリ、と生唾をのんで。美佐子は戦慄く手を伸ばして、そっと握った。
確かな熱と脈動に、動悸を早めながら、顔を寄せる。
ムッと鼻をついてくる、男の体臭。精のかたまりのような男は、その性臭も強い。
「……あぁ…」
陶然たる表情を浮かべて、美佐子は、その臭気を吸いこんだ。
(……男の…逞しい、牡の…匂い……)
懐かしい香が、媚薬のように血肉を滾らせる。
昂ぶりに急かされて、美佐子は、持ち上げた肉根の先に舌を伸ばした。
男の味を舌先に感じると、もう止め処がなくなった。
徐々に力を漲らせていく肉に歓喜しながら、無心に舐めずりまわす。
589職人志望:02/12/12 02:59 ID:xdVJQfHz
熱烈な舌の愛撫を受けた肉根が、半ばまで頭を擡げる。
もう我慢できずに、美佐子は口を開いて咥えこんだ。
「……フム……ウン……」
つむいだ唾液をジュポジュポと鳴らしながら、懸命に頭をふり、舌を蠢かせる。
「……しばらく逢わないうちに、ずいぶん積極的になったなあ」
頭上から男がかけた揶揄の言葉にも、美佐子は反応を示さない。
口腔の中で、急速に膨張していく肉塊に、意識を集中させていた。
「……フン……ウグッ…」
やがて、美佐子がズルズルと吐き出した肉根は、完全な勃起を遂げていた。
「……ああ……」
自分の唾液に濡れた、巨大な肉塊をマジマジと凝視して、畏怖の声を上げる美佐子。
その魁偉さ、天を突く勢い、テラテラと輝く肉傘の凶悪なまでの張り出し、
ゴツゴツと浮き出した血管、握った指を弾きかえすほどの硬さ。
「……すごい……すごいわ……」
その特長のすべてが、すさまじい愉悦の記憶を、美佐子の肉体に掻きたてる。
「げんきんな女だねえ。俺の顔を見ても、逢いたかったの一言もなかったくせによ。
 このデカマラとの再会には感激しちゃってさ」
男の嘲りをボンヤリと聞いても。美佐子には、それを否定できない。
(……これ…これが……)
欲しかった、と肉体が叫んでいたから。
その思いをぶつけるように、美佐子は精一杯に開いた唇を、巨大な肉傘に被せていった。
「……フグ…ウム…ウグ……」
長大な肉を喉奥まで呑みこんで、再び激しいフェラチオを開始した。
590職人志望:02/12/12 03:00 ID:xdVJQfHz
口蓋を硬い肉で擦られると、目眩むような刺激を感じた。
それは奉仕というよりは、口腔での性交だった。
美佐子は、咽び泣きながら、口を喉を犯される快感に溺れた。
「フフ……よっぽど、こいつが恋しかったらしいな」
男は、ひとが変わったように、あからさまな狂乱を晒す美佐子に、
自分の目論見が図に当たったことを確信して、満悦の笑いを浮かべる。
「再会を祝って、飲むか?」
男の言葉に。
美佐子は男を咥えたまま、頷きを返した。蕩けた官能の中で、躊躇なく。
「即決ときたね。変われば変わるもんだ」
呆れながら、男は両手で美佐子の頭を掴んで、ガシガシと腰を突きこむはじめた。
「フグウーーーッ」
美佐子が洩らしたうめきには、苦痛ではなく歓悦の響き。
「……よし、いくぞ。タップリ出してやる」
美佐子の口腔の中で、男の肉体がひときわ膨れ上がって。
そして、盛大な噴射を開始した。
「……グ……ウッ……」
熱い波涛に喉を打たれた刹那、美佐子の脳裏は白く発光した。
流れこむ多量の男精を、喉を鳴らして飲みながら、膝立ちの腰をブルブルと震わせた。
男が肉根を引き抜く。美佐子はまだ口の中に溜まった白濁が零れぬように顎を上げて、唇をすぼめた。
反らした白い喉が動く。最後の一滴まで嚥下する。
仰のいたまま、荒い呼気を鼻からついて。生え際にはジットリと汗を滲ませ。
薄く開けた両目は、陶酔に霞んでいる。
591職人志望:02/12/12 03:00 ID:xdVJQfHz
「おら、いつまでもウットリと味わってんじゃねえよ」
男の声に、美佐子はゆるゆると目を向けた。
男は、再び椅子に腰をおろしていた。下肢は剥き出しのままだ。
広げた脚の間に、欲望を吐いたばかりの肉根が揺れている。
「…………」
美佐子はかすかに頷くと、膝歩きで男のそばへと向かった。
視線をあてた汚れた肉塊に吸い寄せられるように。
巨大な肉は、わずかに漲りを弱めただけで、項垂れてもいなかった。
「……あぁ……」
逸る心のままに、膝の動きは早くなって。
男の脚の間に入りこんで、屹立したものを握りしめた。
確かな熱さと硬さを掌に感じ取る。また熱い吐息がもれた。
そう、そうなのだ。この男の肉体は不死身だ。決して萎えたりしない。
骨身に刻まれた事実を再確認して。泣きたいほどの歓喜を感じた。
両手に捧げ持って、舌を這わせた。丹念な動きで、白濁を舐めとっていく。
汚れを清めるうちに、手の中の肉塊は力と硬さを増していった。
「……あぁ……すごい……」
蕩けた美佐子の瞳に、崇敬にも似た賛美の感情が浮かぶ。
(……すぐに……これで……)
この凄まじい肉の凶器で犯されるのだと思えば、震えが止まらなくなる。
擡げられた臀がくねった。すでに下着は、グッショリと濡れそぼっている。
(……ああ……はやく……)
期待と焦燥に炙られながら、美佐子は男の先端を咥えこんで、舌をからませた。
次の行為へと、男を誘うために。
592職人志望:02/12/12 03:01 ID:xdVJQfHz
しかし、男は動こうとしない。椅子に深く背を沈めたまま。
やるせない思いをぶつけるように次第に口戯に熱をこめていく美佐子を、冷淡に見下ろしていた。
「……フン……ウウン……」
美佐子はムズがるように鼻を鳴らして。チラチラと男の顔を見上げた。媚びに満ちた目で。
それでも男は動かない。美佐子の身体に触れようともしない。
「……ねえ……」
堪えきれず、美佐子は訴えた。
「あん?」
「……おねがい……」
さすがに、それが精一杯だった。
それでも、その情欲に蕩けた眼と、せつなげな声音だけで、充分に意は通じたはずなのだが。
「さあて……? おねがい、ときたか」
男は、しらじらしく首を捻ってみせる。
「今日は、これで勘弁してくれってか?」
「……ちがう…」
嬲られていると解りながら、美佐子は必死に首をふって否定の言葉を吐いた。
「ううん? この状況で、おまえが願うことなんざ、それくらいしか思いつかないがなあ。
 なんたって、俺は卑劣な脅迫者で、おまえは、イヤイヤ身を任せてるんだから」
美佐子は、激しく頭を横にふり続けた。そんなことは、もうどうでもいい、と。
「じゃあ、なんだってんだ? その、おねがいとやらを、もう少しハッキリ言ってくれや」
「………………」
言わなければならないのだ、と美佐子は悟って。それ以上の逡巡はしなかった。
「……して……抱いて……」
593職人志望:02/12/12 03:02 ID:xdVJQfHz
あからさまな懇願の言葉を美佐子に吐かせて。
しかし、男はまだ許そうとはしなかった。
「抱いてほしいのか? 俺に?」
美佐子はコックリと頷いて、熱く硬い肉に、欲しくてたまらないものに頬をすりよせた。
「ずっと、抱いてほしかったのかよ?」
また、美佐子の頭が縦にふられる。何度も。くなくなと、臀が揺れる。
「竜之介には、抱かれたのか?」
「……っ」
美佐子の身体が硬直する。脅えた眼で、うかがうように男を見上げた。
「どうなんだよ? 寝たのか、竜之介と?」
美佐子は、迷いながら、首を横にふった。
「なんでだ? 言ったろうが、辛抱できなくなったら、あのガキに慰めてもらえってよ」
「………………」
「いまからでも、いいじゃねえか。帰って、続きは竜之介にしてもらえよ。
 愛する男に抱かれりゃ、俺とヤるより、ずっと気持ちよかろうぜ」
「あっ、いやっ」
男が身を乗り出して、肉根にすりつけていた美佐子の顔を押しやる。
その皮肉な眼色に、美佐子は悟る。男が、すべて見通したうえで、自分を試しているのだと。
暗黒が誘う。奈落が、顎を開いて待ちうけている。
美佐子は。
「だ、抱かれたわっ!」
自ら、暗き底へと身を投げた。
「抱かれたけど、ダメだったのよ!」
泣き喚くように口走って。剛直を握る指に力をこめる。
「これじゃないと……あなたじゃないと、もう、私……」
594職人志望:02/12/12 03:03 ID:xdVJQfHz
語尾が、嗚咽にまぎれた。
これで、永久に竜之介を失ったのだと理解して。
訣別……別れを告げたのは、単にひとつの恋だけではなくて、これまでの自分自身。
鳴沢美佐子という女を形作っていたもののすべて。
いいようのない寂寥を感じて、しかし、その裏には、途方もない解放の感覚があって。
堕落の坂を転げ落ちる美佐子は、惑乱の中で、目の前の男に縋った。
「……もう……私…私は……」
しかし、泣き咽ぶ美佐子を見下ろす男の目はあくまで冷淡だった。
やおら、両手に美佐子の涙に濡れた顔を掴んで、仰向かせた。
「堕ちたもんだなあ、美佐子」
ほとほと呆れ果てたといったふうに。
怒張の先を、美佐子の鼻面に擦りつける。
「乗り換えようってか? 竜之介から俺に。淫乱年増の身体は、ガキのセックスじゃ
 満足できねえから。ヒデえ話だなあ」
「……あ……うあ……」
男の言葉に胸を刺されて、美佐子はまた新たな涙をこぼす。
「牝犬か? 雌ブタかよ、おまえは?」
「ああぁっ」
ビクビクと美佐子の背が戦慄く。
もっと詰ってほしい、と思った。もっと責めてほしいと。
徹底的に自分の醜さを暴いて、そして、死ぬほど狂わせてほしい。
なにも考えられなくなるまで。この罪深い肉体が燃え尽きるまで。
だが、男は美佐子の望む救いを与えようとはしなかった。
595職人志望:02/12/12 03:03 ID:xdVJQfHz
「ケッ。気分出してんじゃねえぞ」
美佐子の顔から手を放すと、下着とズボンを引っ張り上げて、
いまだ突き立ったままのものを、隠してしまう。
「ど、どうしてっ?」
美佐子が泣き声を上げて、男にしがみついた。
「私、言ったのに、どうしてっ」
「ピーピー囀ってんじゃねえよ、いい年こいた女がよ」
男の手が、今度は美佐子の髪を鷲づかみにして、顔を引き寄せた。
覗きこむ男の表情は、ゾッとするほど冷たくて、美佐子は息をのむ。
「……ずいぶんと、悲嘆にくれてるみてえだけどなあ。まだまだ甘いんだよ」
吐き捨てるように、男が言う。
「ああ、私、こんなに堕ちてしまったわ、ってか? 酔ってんじゃねえぞ」
「そ、んな……」
「そんなことなんだよ。おまえは、まだ理屈を飾ろうとしてんだよ。
 爛れた肉の塊の分際で」
「……ひどい…」
「そら、そういう科白が出るってのが、まだ甘いっての」
「………………」
言葉を失う美佐子に、男は傍らのテーブル取り上げた封筒を放り投げた。
「おまえの写真だ。脅迫のネタってやつ。ネガも入ってるぜ」
「……っ!?」
596職人志望:02/12/12 03:04 ID:xdVJQfHz
愕然として、美佐子は男を見やった。
「……どういう……こと?」
声が震える。自分は……やはり捨てられるのか、という不安に。
男は明確な答えを返さない。美佐子の顔色を楽しみながら。
「ちゃんと持って帰れよ。忘れたふりして、置いてくんじゃねえぞ」
「………………」
「で、それはそれとしてだ」
男がガラリと調子を変えて。
「どうだい、温泉でも行かねえか?」
「えっ?」
「冬至温泉に馴染みの宿がある。まだまだ寒いしな。二、三日ゆっくりするってのは」
「……温泉…に?」
「フフ……以前にも、誘ったことがあったな。あの時は、あっさり断られたが。
 いまなら、どうだよ?」
「………………」
美佐子は男の真意を悟った。
脅迫の材料である写真を返して。美佐子からすべての逃げ道を奪った上での誘い。
もう、脅し脅される関係ではないのだ。その口実は使えない。
(この男と……ふたりで……)
家族の眼を気にする必要のない場所で……。
「……そんなには、店を休めないわ……」
心を動かされながら、美佐子はひとまずはそう答えたが。
「いまさら、なに言ってんだよ」
男が笑うとおりだった。今日とて、店を休んで出て来ているのだから。
597職人志望:02/12/12 03:05 ID:xdVJQfHz
「………………」
それでも、美佐子は逡巡した。
男と旅先で数日を過ごす。
それは、どれほどに濃密な時間になることか。考えただけで、身体が熱くなる。
だが、だからこその不安がある。その後に、自分はどんなことになってしまうのかと。
「そう、深刻に考えこむことでもないだろうが」
「あっ」
男が、いきなり美佐子の腰に腕をまわして、膝の上に引き上げた。
横抱きにして、片手で服の上から胸を掴んだ。
「なっ? いやっ」
唐突な行為に、かたちばかりの抵抗を示しても。
美佐子はようやく与えられる愛撫に、甘い痺れを背に走らせて、鼻を鳴らした。
「温泉で温まってよ、美味い酒を飲んで、そんでタップリと楽しもうってんだよ。
 悪かないだろうが?」
耳に吹きこみながら、もう一方の手はスカートの中に潜りこんでいる。
「ああっ」
下着ごしに撫でられただけで、美佐子はビクンと腰を跳ね上げた。
すでにグッショリと濡れたショーツの股布をずらして、指がとろけた肉に沈んでいく。
「あっ、いっ、そこ」
美佐子は男にしがみついて、舌足らずな嬌声を迸らせる。
(……ああ……感じる……こんなに……)
たったこれだけの行為でと、あらためて、この男に馴らされた自分の肉体を思い知る。
「あっ、いやっ! そ、そこは」
598職人志望:02/12/12 03:06 ID:xdVJQfHz
秘肉を掻きまわして、官能を煽りたてていた男の指が、さらにその奥の不浄な箇所に触れて、
美佐子は羞恥の叫びを上げた。
「フフ、知ってるぞ。おまえ、こっちも満更じゃねえだろ」
「い、いや、そこは、きたない…から」
生理的な嫌悪はあっても、指先で摩られれば鋭い感覚が走るのは、男の指摘どおりだった。
「向こうでよ、こっちも仕込んでやるよ。なあに、おまえのことだから、
 すぐに味を覚えるさ。慣れりゃア、堪えられねえ良さだぞ」
「そん、な、あ、アアッ」
「心配すんなって。こっちも」
と、またグイと媚肉を抉って、
「アアアッ」
「いやってほど可愛がってやるからよ。何発でも、ブチこんでやるよ。
 死ぬほどの目にあわせてやる」
「……ああぁ」
うっとりと。夢見るような色が美佐子の潤んだ瞳に浮かぶ。
「どうする?」
もう、否やはなかった。美佐子はコクリと頷いて、
「……行くわ…」
「よし」
男が、指の動きに熱をこめた。
「アッ、あ、い、いいっ、いいのっ」
たちまち、美佐子の官能は追いこまれていく。
「続きは、向こうでジックリしてやるからな」
「アッ、いく、いく、ア、アアアアアッ」
手付けとして与えられる絶頂に、美佐子は女叫びを上げて、男の膝の上で反りかえった。
599職人志望:02/12/12 03:09 ID:xdVJQfHz
“例の、入院していた友人が、めでたく全快した。
 世話になったということで、自分を温泉旅行に招待してくれた”
その日の夕食の席で、美佐子が切り出したその話には、特にいぶかしい点もなかった。
明日から出掛けるというのには、ずいぶん急な話だとは思ったが。
「ゆっくり、してきなよ」
「家のことは、唯がちゃんとやっておくから。お土産、おねがいね」
快く送り出そうとする唯と竜之介に返した美佐子の笑顔には翳りはなかった。
翌日。唯と竜之介が登校したあと。
小さな荷物を持って、美佐子も家を出た。
歩き出した足を、ふと止めて、一度だけ住み慣れた家と店を振りかえったのは、
どんな想いからだったろうか。
……やがて、踵をかえして、再び美佐子は歩き始めた。“知人”との待ち合わせの場所へ向かって。
二泊三日の予定だった。この時点では。
600職人志望:02/12/12 03:11 ID:xdVJQfHz
……以上です。
この後、温泉でのアレコレは割愛して、話を進めます。
温泉篇は、話が終わったあとに、補完的なパートとして、
書かせてもらおうかなあ、と思っておるんですが。
ただ……お察しでしょうが、そこにはカエル氏の別の情婦がいるんですよ。
つまり、熟×熟ですよ。私的には、楽しい場面なんですけども。
テコいれ(?)として、友美の投入も考えておるんですが。
そうすると……どうも、友美は“若きドミナ”なんて役回りになりそうで……。
どんなもんでしょうかねえ?
601名無しさん@ピンキー:02/12/12 12:06 ID:Z8prAz9a
職人志望様、upご苦労様です。
さらに今後の展開に期待。
温泉旅行 ハァハァ
602名無しさん@ピンキー:02/12/12 13:33 ID:fW+Y9iUo
レンズの奥に光る嗜虐性(・∀・)イイ!
603名無したちの午後:02/12/12 17:27 ID:2jHbUZ5w
職人志望様

予想を上回る展開、目が離せません。
終わった後の温泉篇、ネットリと描いて下さい。
後ろも、となるとぜひ浣○の一本でも決めて頂けると(w
美佐子に更なる恥辱を与えてやって下さい。
604名無しさん@ピンキー:02/12/12 18:44 ID:cGjq4yKG
たのむ、次スレ立てるときはスレタイに【寝取られ】 を入れてくれ
そんなの見たくないやつもいるんだよ、エルフのゲームのファンの中にはね(つーか大部分がそう?)

ああ、ゲンナリ
605名無しさん@ピンキー:02/12/12 20:42 ID:OkMqqg9O
職人志望様
熟×熟、凄く楽しみにしてます。
606名無しさん@ピンキー:02/12/12 22:18 ID:ot3KAADw
>>604
別にNTRネタ限定のスレなわけじゃないんで
是非ハートフルエロSSでも書いてうpしてくだされ
607名無しさん@ピンキー:02/12/12 22:21 ID:XS2QSCyc
ていうか、登場人物みりゃ寝取られものかどうかぐらいすぐ分かるじゃん。
608名無しさん@ピンキー:02/12/12 23:20 ID:+HPW9HaL
うぉッ、次の更新が有ったらまとめて読むゾって思ってたら
一区切りついてんじゃねーか!
有り難く読まねば…
609名無しさん@ピンキー:02/12/13 23:17 ID:ahMr/9ux
・・・明日の晩、1さまの書き込みが・・・
610名無しさん@ピンキー:02/12/15 00:58 ID:rr4SHopB
無かった・・・
611名無しさん@ピンキー:02/12/15 01:22 ID:x3+zWU7C
>>610
プッ( ´,_ゝ`)
明日だよ。
612名無しさん@ピンキー :02/12/15 03:04 ID:tJJBi3io
>>611
( ´,_ゝ`)プッ
この時間帯も晩だよ
613名無しさん@ピンキー:02/12/15 23:36 ID:Iz2ASdeN
1さまの書き込みも、職人志望様の書き込みも
なかった...。
最近それだけが、楽しみだったのに(ガックシT-T)
614名無しさん@ピンキー:02/12/16 00:03 ID:lkyqXfQ9
615職人志望:02/12/16 05:11 ID:hTcOSgWy
週末に間に合わず、スミマセン。
自分は今日が休みなので、こんな朝っぱらにUpしちゃったり。
ええと、ラス前の最後のグダグダな場面ですかね。エロなしっす。
また、このパターンかよ、って感じ? つーか、暗いです。
げんなり、するかと(w
616職人志望:02/12/16 05:12 ID:hTcOSgWy
三日後の夜。
唯と竜之介は、遅めの夕食をとっていた。
唯特製のビーフ・シチューは、充分な出来映えであったが。
いまひとつ、雰囲気は弾まない。
ふたりとも、つい空いた席に目を向けてしまう。いつも美佐子が座っている場所に。
そこには美佐子の分の食器も用意されているのだが。
「……おかあさん、今日も帰ってこないのかなあ?」
「……うん」
竜之介は、時計を確認する。午後七時すぎ。
予定通りなら、美佐子は前日には帰っているはずだった。昨日も、唯は三人分の夕食を用意していたのだ。
だが、夕方になって、美佐子から電話があった。
同行した友人―美佐子をこの旅行に誘った人物が体調を崩したので今日は帰れない、と。
そういうことなら仕方ない、と電話を受けた唯は納得し、話を聞いた竜之介も、
「その、美佐子さんの友達ってのも、人騒がせなひとだなあ」
と寸評して、ことはおさまった(竜之介は唯に窘められたが)。
今日は帰ってくるだろう、と夕食を遅らせて待っていたのだが。
なんの連絡もないまま時間が過ぎて。先に食べてようか、となったわけだった。
そういう次第で、落ち着かない気分のまま、ふたりきりの食事は終わった。
617職人志望:02/12/16 05:13 ID:hTcOSgWy
電話が鳴ったのは、さらに一時間ほど過ぎた頃だった。
待ち構えていた唯が、素早く受話器をとる。
居間で、見たくもないテレビを見て時間を潰していた竜之介も、そばに寄った。
「おかあさん? うん……えっ、今日も?」
電話は美佐子からで、やはり今日も帰れないらしい、と唯の言葉から竜之介も察した。
「うん……それは、仕方ないけど……でも、店のこともあるし……うん。
 だから、おかあさんだけでも帰ってこれないかって……」
そうだよなあ、と竜之介も唯の言い分に賛同した。
その友人が、どの程度の状態なのかはわからないが。場所は旅館なのだし、
どうにでもなるだろうと。美佐子とて、仕事と家庭を持っているわけだから、
何日も拘束されるのは理不尽であろうと。
「うん……わかるけど……え、ちょっ、おかあさん?」
憮然たる顔で受話器を戻した唯。
「切っちゃった。話の途中なのに」
口を尖らせて、傍らの竜之介を見上げて、
「……昨日は注意したけど。唯も、ちょっと、おにいちゃんに賛成したい気分だよ」
「え? ああ、まあ、仕方ないよ」
「でも。わざわざ、旅先で調子を崩さなくてもいいのに」
どうにも、面倒見のいい母が振りまわされているように思えて、唯は面白くないらしい。
まあまあ、と宥めながら。竜之介は、ふと思い至った。
618職人志望:02/12/16 05:14 ID:hTcOSgWy
「そういえばさ。その美佐子さんの知り合いって、どんなひとなんだ?」
これまで、あまり気にしたことがなかったなと気づいて、唯に尋ねた。
「学生時代の友達だって言ってたよ」
「唯は知ってるひと?」
「ううん、知らない。とにかく、はた迷惑なひとだよ。おにいちゃんの言うとおり」
いや、俺はそこまでは言ってないんだけど……とか思ったが。
いつになく怒りを露わにしている唯に、いらぬ反駁は避ける竜之介であった。
「ま、まあ。とにかく連絡があって事情もハッキリしたんだからさ」
「そうだけど……」
確かに、心配する必要はなくなったわけだった。
「いくらなんでも、明日は帰ってくるだろうから。な?」
「……うん」
まあ、これで今夜も、おにいちゃんとふたりきりで過ごせるわけだし、と思い直して、
機嫌を直す唯。ここまでの“ふたりきり”の間に、なにがあったわけでもないのだが。
「フフ♪ おにいちゃん、コーヒーでも淹れようか?」
「うん? ああ……(?)」
……ともあれ、美佐子のいない四日目の夜は更けていったのである。
平穏な日常の、最後の夜。
619職人志望:02/12/16 05:15 ID:hTcOSgWy
翌日。八十八学園。
三年B組の教室は、久しぶりの賑わいに包まれていた。
卒業式の予行演習のため、休んでいた生徒も登校してきたからだった。
そこかしこで、しばらくぶりの対面を喜びあい、話に花をさかせる光景。
「竜之介っ! しばらくだな」
相変わらずの柔道着姿で現れたのは、竜之介の親友、川尻あきら。
「よう、あきら。久しぶり」
「おはよう、あきら君」
「おお、唯ちゃん。おはよう」
「あきら、学校へも来ないで、毎日なにをやってたんだよ?」
「俺か? いやあ、なにかと忙しくてなあ」
そう答えながら、何故か照れくさそうにする、あきら。
「……ああ、そうか」
竜之介は、冬休みの終わり頃に、あきらが電話で報告してきたことを思い出した。
「さては、あきら、洋…」
「わあああーーーっ」
洋子とデートばかりしてたのだろう、と言いかけた竜之介の口を慌てて塞ぐあきら。
「あは、はははっ、唯ちゃん、ちょっと竜之介と男同士の話があるんで……」
驚く唯には、そう断って、そのまま竜之介を廊下へと引き摺っていった。
人目がないのを確認して、ようやく竜之介の口を押さえた手を離す。
「ぷあっ! いきなり、なにをする?」
620職人志望:02/12/16 05:15 ID:hTcOSgWy
「困るよ、竜之介。唯ちゃんの前で、洋子の話をされちゃあ」
「なんで? おまえら、つきあってるんだろう? 俺に教えてくれたじゃないか。
 あの、やたらハイ・テンションな電話で」
「しーーーっ! 声が大きい。……あれは、親友のおまえだから話したんだ。
 竜之介には、いろいろと相談にも乗ってもらったからな」
「なんだ? おまえら、秘密の交際をしようっていうのか?」
「いや、秘密なんて言われると大袈裟だがな。ことさら吹聴する必要もないだろうって、
 洋子が言うし……」
「ふうん……洋子がねえ」
「な、なんだよ? そのイヤらしい笑いは」
「いやいや。睦まじくやってるんだなと思ってさ。憎いよ、この!」
「か、からかうなよ」
と、口では言いながら、満更でもなさそうな、あきら。
「グフフ。で、あきら、どうなんだよ?」
「なにが?」
「洋子とは、どこまでいったんだよ? チューくらいしたんだろう? チューチュー」
「す、すぼめた口を近づけるなっ」
「教えろよ、俺とあきらの仲じゃないか」
「う、うむ、そう言われるとなあ……」
あきらは、あらためて周囲をうかがうと、竜之介に顔を寄せた。
621職人志望:02/12/16 05:16 ID:hTcOSgWy
「じ、実はな」
「ふんふん?」
「その、なんだよ、俺たちも、もう卒業じゃないか」
「ああ。それが?」
「だ、だから、高校時代の最後の思い出を作りたいと思ってな。思い切って、
 洋子を旅行に誘ったんだ」
「おお、やるなあ。当然、泊まりだろ?」
「う、うん、そういうことだ。そうしたら、意外とアッサリOKが出てな。
 昨日まで行ってたんだ、うん」
「おお! どうだ、ちゃんと出来たか?」
「そ、そういうストレートな言いかたはヤメろ……ま、まあ、なんとか無事にな」
「そうかあ……あきらも男になったか」
感慨深げに述懐する竜之介。バシバシとあきらのゴツイ肩を叩いた。
「おめでとう!」
「イタタ……あ、ああ、ありがとうな」
顔を真っ赤にしながらも、誇らしげなあきらであった。
「いや、正直心配してたんだよ。こいつは、一生テレビと柔道だけを友として生きていくのかってな」
「えらい言われようだな……ああ、そういえば」
「うん?」
「向こうで、美佐子さんを見かけたぞ」
「えっ? なんだ、あきらたちの旅行先って冬至温泉だったのか?」
「言ってなかったか。そうだよ」
「ふうん……温泉旅館で初体験か。アダルトというかオヤジくさいというか」
「ほっとけ。とにかくだ。美佐子さんも同じ宿に泊まってたようだな」
622職人志望:02/12/16 05:17 ID:hTcOSgWy
「ふうん、偶然だな。そうだよ、丁度、美佐子さんも行ってるんだ。
 話をしたのか?」
「いや、見かけただけだよ。洋子と一緒だったから、バツが悪くてな。
 美佐子さんの方では、気づいてないはずだ」
「フフ、別に隠れなくてもいいじゃないか。紹介すればよかったのに。
 これがボクの恋人ですってな」
「よせやい。それに、美佐子さんにも気を遣ったんだぞ」
「はあ?」
「そりゃあ、おまえや唯ちゃんにも、ちゃんと断って出掛けてるんだから、
 秘密ってことじゃないだろうが。それでも、バツの悪いものがあるだろう?」
「なにを言ってるんだ? あきら」
「いや、俺もちょっと驚いたけどな。……美佐子さん、再婚するのか?」
「はあっ?」
あまりに唐突なあきらの問いかけに仰天する竜之介。
咄嗟によぎった思考は、自分と美佐子の関係をあきらに知られたのか? というもので。
「な、どうして……あきら、そのこと……」
「ああ、やっぱり、そうか」
納得したように、うなずくあきら。
「や、やっぱりって、なんで、あきらが知ってるんだよ!?
 そ、それに結婚って、いや、いずれはそういう…」
「なにを、そんなにうろたえてるんだ? 竜之介」
「そ、そりゃあっ」
623職人志望:02/12/16 05:17 ID:hTcOSgWy
待て、ちょっと待て、とパニくる心を静める竜之介。
どう考えても、あきらが知っているわけがないと、やっとまともな判断をきかせて。
「な、なにをいきなり言い出すんだよ?」
そう、これが正しいリアクションだと。
「え? 違うのか?」
「違うもなにも……だいたい、美佐子さんが誰と再婚するっていうんだ?」
訊き返しながら、ちょっとだけビビる。
“そりゃあ、おまえとだろ。竜之介”などと答えられたら、どうしようかと。
しかし、あきらの返答は。
「いや、だから、あの一緒に温泉に行ってた男の人とさ」
「…………なんだって?」
「美佐子さんって、物堅いイメージがあるからな。ふたりきりで旅行に行くってことは
 真剣に交際してる相手なんだろうと思ってな。それで再婚…」
「待て、ちょっと待ってくれ」
片手を上げて、あきらを制した竜之介。
深く息をついて、一瞬胸を撫でていった冷たい感覚を消す。
「な、なにか勘違いしてるぞ、あきら」
そう、これはあきらが見誤っているに違いないのだ。
「美佐子さんは、友達と出掛けたんだよ。もちろん女のひとだ」
そうだ、美佐子の同伴者は学生時代の友人だ。最近まで入院していて、美佐子が介護に出向いていた。
その御礼といって、美佐子を誘い出しておきながら、旅先で体調を崩して、
美佐子を足止めさせることになっている。ちょっと、人騒がせな……。
だが。自分も唯も、その人物を実際には知らない。美佐子から聞かされた情報だけ。
624職人志望:02/12/16 05:18 ID:hTcOSgWy
「え? そうなのか?」
「そうだよ。間違いない」
間違いないはずだ。だって……美佐子さんが嘘をつくわけがないから。
なのに、何故、あきらはそんなに意外そうな顔をする?
「うーん……」
「あきらも、遠くから見かけただけなんだろ? 
 たまたま、他の客がそばにいるところを見間違えたんじゃないか?」
「あ、いや、そうなのかな」
そうなんだって。まったく、驚かせてくれるぜ……。
そう笑い飛ばして、終わることのはずなのに。
「……どうして、そんなふうに思ったんだ? 美佐子さんが、その男の客と一緒だって」
訊いてしまう竜之介。
……あまりにも急な出発。
……予定の日数が過ぎても帰ってこない美佐子。
「どうしてって、まあ、親密そうに見えたんでな」
「……親密そうに?」
「ああ。旅館だから、ふたりとも浴衣姿で。それで、ピッタリ寄り添うように
 歩いてところを見かけたんでな」
「……寄り添うように、か」
「こう、男が美佐子さんの腰を抱くようにして。美佐子さんも、凭れかかるみたいに」
「………………」
別に、あきらは殊更に竜之介の不安を煽ろうとしているわけではない。
訊かれたことを律儀に思い出そうとしているだけだった。
ただ、記憶を辿るのに懸命になってしまって、
「……それは、あきらが誤解するのも無理ないかな」
竜之介の声が硬くひび割れているのに気づかなかった。
625職人志望:02/12/16 05:19 ID:hTcOSgWy
「そうだろう? それに……」
「それに?」
「うん、ふたりで同じ部屋に向かってたようなんだが……」
「ふうん……」
「その旅館にはな、離れになってる部屋があるんだよ。宿のひとに聞いたら、一番高級な部屋で、
 滅多に客が入らないらしいんだけどな。ふたりが歩いていった方向には、その部屋しか……」
そこまで言って。ちょっと下世話すぎたかと気づいたあきら。
「あ、いや本当に部屋に入るところまで、見たわけじゃないしな。
 そもそもが、俺の勘違いだっていうわけだし」
「そうだよ。美佐子さんと一緒に行ったのは、友人の女のひとだ」
竜之介の口調は平坦になっている。
「……竜之介…?」
「………………」
「ああ、すまん。思いこみで、おかしなことを言っちまったな。許してくれ」
「……あ? いや」
頭を下げるあきらに、我にかえる竜之介。
「謝るなよ。あきらは……見たとおりのことを言っただけだろ?」
「あ、ああ、そうだが……」
「もしかすると、美佐子さん、向こうでナンパされたのかもな」
冗談のように、そう言ってみる。
美佐子が旅先で見知らぬ男からの誘いを受けるのと。
美佐子が自分たちに嘘をついて男と旅行に出掛けるのと。
どちらの方が、まだ受け入れやすいだろうか? などと思いつつ。
626職人志望:02/12/16 05:20 ID:hTcOSgWy
「うーん。確かに美佐子さんは美人だからなあ。ナンパされてもおかしくないし。
 それで、旅先でつい気持ちがゆるんで……あ、いや」
あきらが、つい納得したように頷いて、竜之介の言葉に乗ってしまったのは、
やはり、自分の目で見た光景のせいなのだろう。
「…………」
「す、すまん、竜之介」
母親代わりの女性の、そんな話を聞かされては、竜之介が険しい表情を見せるのも
無理はない、と。自分のうかつさを恥じて、また謝るあきらだったが。
「……あきら」
「いや、悪かった。このとおりだ。どうか、この話は唯ちゃんや美佐子さんには…」
「俺、帰るわ」
「なにっ?」
と、驚いた時には、すでに竜之介は歩き出している。
「お、おいっ!? 竜之介っ!」
「唯には、腹が痛いんで早退したとでも、言っといてくれ」
「早退って、登校したばかりじゃ……おいっ!」
引き止めるあきらの声にも耳を貸さず、足早に遠ざかる竜之介。
627職人志望:02/12/16 05:21 ID:hTcOSgWy
通学路を、ほとんど駆け通した。全速力で。
そうすることに意味があるとかないとか、考えられなかった。
走破タイムは、間違いなく自己ベストだ。といって、帰宅時にこれほど急いだことなど
一度もなかったけれども。
家が見えてくる。『憩』は閉まったままだ。
家の玄関にも鍵がかかっている。竜之介は自分の鍵で、それを開ける。
靴を脱ぎ捨てて、静まりかえった家の中へと飛びこんだ。
無人。無音。唯と竜之介が学校へ出てから、ひとの踏み入った形跡は、どこにもない。
「……そりゃ、そうだ」
今朝、自分たちが家を出てから、まだ一時間と経っていないのだから。
「なにを、うろたえてるんだ、俺は」
ゾファに座りこんで。背を倒して、天井を仰ぎ見た。
「……疑っているのか、俺は……? 美佐子さんを」
もう揺るがないと確信したはずなのに。
あきらに、あんなことを言われただけで、簡単に疑心暗鬼に陥ってしまうとは。
でも。
あきらは、いい加減なヤツではない。ひとの行動を色眼鏡で見て、
針小棒大に騒ぎたてるタイプの人間ではない。
あきらは、見たままのことを口にしたのだと思う……。
「でも、違う」
違うはずなのだ。そこに、なにか大きな食い違いがあって。
あきらを誤解させたような場面にも、なにか理由があるはずなのだ。
それは、本当の事情を知れば、笑ってしまうような他愛もないことで……。
628職人志望:02/12/16 05:21 ID:hTcOSgWy
「そうだよ。そうに決まってる」
あんなに熱く求めあったのは、わずか数日前のことじゃないか。
あの夜に、自分と美佐子は心も体も深く結ばれたじゃないか。
そう思えば、暖かい安堵がわいて。
しかし。
帰ってこない美佐子に、あきらから聞かされた情景を重ねれば、どうしようもなく
暗く冷たい不安がわき起こって。
疑心と信頼の間で、心の針が揺れる。揺れてしまう自分を、もう誤魔化せなくなっている。
「ちくしょう」
待つしかない状況が歯痒い。いくら心を乱しても、いまは美佐子の帰りを待つしかないのだ。
「……美佐子さんさえ、帰ってくれば……」
すべてがハッキリとするはずだ。白か黒か。
いや、違う。全部が、馬鹿げた杞憂であったとわかるのだ。
問い質す必要などない。美佐子の顔を見れば、その声を聞けば、わかることだ。
その時。扉の開く音。
弾かれたように立ち上がって、玄関口へと向かう竜之介。
「美佐子さんっ」
姿を確認するより先に、叫んでしまったが。
「………………」
「……なんだ、唯か……」
その言いぐさも、ガックリと気落ちする態度も、失礼なものだったが。
それに非を鳴らすこともなく。唯は、蒼ざめた顔でその場に立ち竦んでいる。
フウ、と嘆息して壁に背をもたれた竜之介は、唯の異状には気づかない。
629職人志望:02/12/16 05:23 ID:hTcOSgWy
「どうしたんだよ? こんなに早く帰ってきて」
先に帰った自分のことは棚に上げて、そんなことを訊いた。気のない調子で。
唯はなにも答えず、放心したていで佇んでいる。
「……唯?」
「…………おにいちゃんが、具合が悪くて早退したって……あきらくんから聞いたから」
伏し目になって、ボソボソと呟くように答えた唯。
「それで、唯まで早退してきちゃったのか?」
「……うん」
「ああ……ちょっと腹が痛かっただけでさ。もう治った」
ぞんざいな説明で、あっさりと済ませる竜之介。だが、いつもなら、
こんな場合には、大騒ぎして心配するはずの唯は、
「……そうなんだ」
こちらも簡単に納得して、靴を脱いだ。
「………………」
足を引き摺るようにして居間へと戻っていく竜之介の背を見つめる瞳は暗く、
複雑な翳りを刷いていた。
630職人志望:02/12/16 05:23 ID:hTcOSgWy
……重く息苦しいような沈黙が閉ざしている。
ゆっくりと、ゆっくりと時間は流れて。ようやく午後になった。
美佐子は帰らず、連絡もない。
竜之介はソファに腰を下ろして、沈鬱な表情で考えこんでいる。
いまだ制服姿のままだった。
時折、時計を確認し、電話を見やって。苛立たしげに息を吐いて。
そして、また沈思の中へ戻っていく。
そんなことを短いサイクルでエンドレスに繰り返している。
唯は、リビングの隅のほうで。床に座っている。
こちらは着替えを済ませて、膝の上には申し訳のように雑誌を開いているが。
そのページは、ほとんどめくられることはなかった。
ただ視線の置き場として使っているだけだった。
時折、目を上げて竜之介の横顔を見つめる。
そのたびに、なにか物言いたげな表情が浮かび、口が開きかけるのだが。
そばにいる唯のことなど意識にないような竜之介の態度に挫かれて、
また視線を誌面へと戻す。
631職人志望:02/12/16 05:24 ID:hTcOSgWy
唯は、竜之介が帰宅した本当の理由を知っていた。あきらから、なにを聞かされたかを。
竜之介がひとりで帰ってしまったことをあきらから知らされた。
『腹が痛い』という口実を、唯は本気にはしなかった。たった今まで、
ピンピンしていた竜之介の姿を見ていたのだから。
いかにも済まなそうな顔をしているあきらに、彼との会話になにかがあったのだと察して。
唯は、あきらを問い質した。言葉を濁そうとするあきらに、しつこく食い下がって。
そして、聞き出したのだ。竜之介が聞いたのと同じ内容を。
唯は、急ぎ竜之介のあとを追って、家へと帰った。
足早に家路を辿りながら、唯の心は混乱していた。
あきらから聞かされた母の行状は、信じがたいものがあった。
あきらも、勘違いだったと繰り返して、唯に平謝りしていたが。
唯も、そうに違いないと思った。
母は、美佐子は、そんなひとではない。家族である自分たちに嘘をついて、
男と旅行に出掛けたりはしない。旅先で、気軽に男の誘いに乗ったりもしない。
唯は、そう信じているし、竜之介とて同様であろうと思う。
だが。あきらから話を聞いて、竜之介は学校を飛び出した。
何故、そこまで過剰な反応を示すのだろうか?
その疑問が、唯の胸に凝り固まって。いいようのない不安をかきたてた。
そして。
家へと帰り着いた時。
血相を変えて駆けつけ、美佐子の名を呼んだ竜之介の姿に。
唯は、直感的に悟るものがあって。呆然としてしまったのだった。
632職人志望:02/12/16 05:25 ID:hTcOSgWy
それからの長い時間のうちに。
唯は、何度も確かめたいと思いながら、結局果たせなかった。
どんどん殺気だっていくような竜之介の雰囲気が、そんな問いかけを拒絶していたし。
どんな言葉で訊けばよいのかも解らなかった。
答えを聞くのも怖かったし。どうしようもないほどに。
ただ、無言のうちに過ぎ行く時間が。
その中で、唯に隠そうともせず懊悩する竜之介の態度が。
唯の恐怖を裏付けして、確たるものに変えていくように思われた。
(……私って、ひどい娘だな)
煩悶の中で、そんな自責の思いもわいた。
美佐子の旅先での行動や、いまなにをしているのかということには、
ほとんど不安を感じていない自分に気づいて。
心配するどころか……不審な行動で、竜之介に苦衷を味あわせている母に、
怒りを感じている。
いや。それも本心ではない。
……自分の辛い推測のとおりに、竜之介と美佐子との間に、想いが交わされていたとして。
その上で、美佐子が本当に竜之介への裏切りを働いたのならば。
むしろ、それを喜ぶ感情が、自分の中にはあるのではないか、と……。
(……醜い……)
なんて、醜悪な心だろうかと。泣きたいような嫌悪を感じる。
(……おにいちゃん、こんなに苦しんでるのに……)
取り繕う余裕さえ失って、苦衷を露わにする竜之介の姿には、
心痛とともに、切ない憐れみを感じるのに、と。
それでも……だからこそ、だろうか。
美佐子の帰宅を待ち侘びるべきか、恐れるべきなのか。
唯は、どちらとも心を決めかねるのだった。
633職人志望:02/12/16 05:26 ID:hTcOSgWy
……夕方になった。
美佐子は戻らず、電話も鳴らない。
唯は、立ち上がってリビングに灯りを点した。
そして、夕食の用意をするためにキッチンへと向かいかける。
「……唯」
ふいに呼ばれて、思わずビクリと震えてしまった。
「な、なに?」
「美佐子さんの宿泊先、わかるか? 電話番号とか」
思いつめた表情で尋ねる竜之介。
いま、思い至ったことではないだろう。あるいは、それを決意するために、
長い時間を費やしていたのかもしれない。
そうすることは、美佐子への疑心を認めることになるわけだから。
「……ごめん。聞いてない……」
「……美佐子さん、メモかなにか置いて行かなかったのか?」
「……うん」
唯や竜之介も、うかつと言えるだろうが。
美佐子にしても、らしくないことであった。またしても。
「………………」
それでも、竜之介は受話器をとって。諳んじている番号を押していった。
「……ああ、あきら? 俺だよ。うん……それは、もういいよ……聞きたいことが
 あって。あきらたちが泊まった旅館、なんていうとこ? ……ナガシマ旅館だな。
 電話番号、わかるか? うん、すまん」
番号をメモして、あきらに礼を言って電話を切る。続けて、控えた番号にかける。
「……ああ、ナガシマ旅館ですか? そちらに…」
「…………」
緊張した声で話しはじめる竜之介をあとに、唯はキッチンへと向かった。
634職人志望:02/12/16 05:26 ID:hTcOSgWy
五日続けての、ふたりきりの夕食。
会話はなかった。
旅館への電話でわかったのは。
鳴沢美佐子という客は、今日の午前中にチェック・アウトしたということ。
同伴の客については、一切教えてもらえなかった。男か女かも。
それが、常識的な対応なのか、なにか作為が働いているのかは、竜之介には判断できない。
だから、強張った表情は変わらずに。
ただ機械的に箸を動かして、詰めこむように食事を続ける。
「……なんにしても」
やがて、ポツリと独り言のように呟いた。
「……宿は出てるんだから、今日は間違いなく帰ってくるよな」
言ってから、ふと顔をしかめた竜之介。“なんにしても”という言い方に、
さまざまな意味をこめてしまった自分に気づいて。
「……うん」
唯は、小さくうなずいた。
竜之介の言うとおり、“なんにしても”美佐子は帰ってくるだろう。
ここは、美佐子の家なのだから。
こうして帰りを待っている家族がいるのだから。
美佐子が帰るべき場所は、この家だ。この場所しかない。
……ないはずなのだが。
635職人志望:02/12/16 05:29 ID:9b2gQXZO
……もうすぐ、日付が変わる。
竜之介は、リビングにいた。
唯に言われて、夕食のあとに、制服から着替えはしたが。
ソファに、片膝を抱えるように座っている。
日中のように、時間を確認したり鳴らない電話を見やったりということもせず。
ただ、待っている。
テレビが点けられている。音声は低くしてあった。
万が一のことを考えて、いくつものニュース番組を観たのだが。
事故や、通行止めの情報はなかった。
いまは深夜番組が流れていて、竜之介の視線も画面へと向けられてはいるが。
内容を追っているわけではなさそうだった。
パジャマ姿の唯が、リビングに入ってくる。風呂上りのようだった。
「……おにいちゃん。唯、もう寝るね」
「……ん」
曖昧に返答して。竜之介は、振りかえりもしない。
おにいちゃんも、と休息を勧める言葉を、唯は呑みこんだ。
言っても無駄だと、解っているから。
「……おやすみ」
いたたまれずに、唯は逃げ出した。
636職人志望:02/12/16 05:30 ID:9b2gQXZO
本当に……母は、どこでなにをしているのだろうか?
自室で、ベッドに横たわって、唯は考える。
心配だった。どれほどの拘泥があっても、帰らず連絡すらしてこない
美佐子を案じずにはいられない。
帰ってきてほしい、と思った。切実に。
そして……願わくば、すべてが馬鹿げた行き違いだったと証明してほしい、と。
竜之介のためだけに、そう願うのではなかった。
もし……すべてが事実だとしたら。
いま、この時にも……自分や竜之介が苦しんでいる時間を、
母が、どこかで男と共に過ごしているとしたら。
自分は母を失うことになる、という恐怖があった。
そんなことには耐えられない。
だから、一刻でも早く美佐子が帰ってきて。そして、魔法のように、
この暗黒を打ち払ってくれることを、唯は望んだ。
そうなれば……自分は別の悲しみに直面することになるだろうが。
そのほうが良いと思った。ずっと良いと思った。
それでも、家族でいられるから。
……しかし、現実的には、この深更になって、美佐子が帰宅する可能性は薄い。
唯は時計を見て、朝までの時間をはかった。その長さを思った。
眠れるとは、思っていない。
ましてや……階下で、竜之介が過ごす夜の長さを慮れば。
唯は、愛情や憐憫や悔しさや怒りや悲しみが渾然となった、
あまりにも複雑な感情に胸をしめつけられて。
頬に涙をこぼした。
637職人志望:02/12/16 05:31 ID:9b2gQXZO
長い、長い夜。
ドス黒い猜疑が襲い、胸の軋む音が聞こえる気がする。
絶望が、すべてを黒く塗りこめようとする。
それでも、竜之介は歯を食いしばって、踏みとどまるための足場を探した。
どんな夜も、明ける。
朝になれば、すべての暗いものは霧消して。笑うことが出来ると信じて。
朝になれば。美佐子さえ帰ってくれば。

……だが、竜之介の悲壮な戦いは、夜とともに終わるわけでもなかったのだ。

美佐子が帰宅したのは、翌日の夕刻だった。
638職人志望:02/12/16 05:32 ID:9b2gQXZO
……以上です。
どーでもいいことですが、あきらが書きにくかったです。
作者的には、いよいよ終局に来たなあという感じなんすが。
次の一回で終わるかどうかは、まだわかりません。
ムチをいれて、ガンガリたいと思いますので、よろしくお願いします。
639名無しさん@ピンキー:02/12/16 10:42 ID:wfkqvwJM
美佐子をおもってじりじりする竜之介の感情が、
読んでるこっちにも伝わってきていいですねぇ。続きも楽しみっす。
友美が若きドミナって、美佐子を責めるタチって事っスか?
彼女のキャラとはギャップがあるんで、想像つかないです。
面白くなりそうなら是非読みたいです。

あと、昼間の唯イイ!

やっぱり嫉妬や欲望、
好きな人を独り占めしたいというエゴがあってこそ、
人間らしいし、そーゆー感情はそりゃ醜いんかもしれんけど、
だからこそそーゆートコも含めて惚れたり可愛いと思えるんだと思うなぁ。

けど、夜になっての彼女の心情は奇麗事っつーっか建前が入ってて
ちょっと人間的には薄っぺらいような・・・

美佐子編が終わったら、唯編も読んでみたいっす。
可愛い・純真なだけだった女の子が、女の情念に染まっていく話とか
面白そう・・・
640名無しさん@ピンキー :02/12/16 14:45 ID:pP1NJJV5
美佐子はいったいどう変貌してるのか・・激しく(;゚∀゚)=3ハァハァ
641名無しさん@ピンキー:02/12/16 15:22 ID:Si4czYGn
美佐子も唯もエロエロになったら、「憩」がノーパン喫茶になりそう…
642名無しさん@ピンキー:02/12/16 15:45 ID:nXdfddbC
ああっ、美佐子タンが大変な事に・・・

早く温泉篇読みたいです。
643名無しさん@ピンキー:02/12/16 22:25 ID:ntYmfKGO
でも実際のカエル男は・・・
芳樹成人版って感じなんだろうなぁ・・・
644名無しさん@ピンキー :02/12/19 02:59 ID:dOu4Sbe/
唯は美佐子さんの手引きでカエル親父の手によって女になります
そして竜之介は・・・・
645名無しさん@ピンキー:02/12/19 03:41 ID:dPxwd8E9
↑最高のシナリアオだぁー!
646名無しさん@ピンキー:02/12/19 07:36 ID:yaxqVgur
竜之介もカエル親父の手によって後ろの処女を散らされます
三人揃って肉奴隷
647名無しさん@ピンキー:02/12/19 08:00 ID:z/eKdgi0
>644
それヤラレちゃうと、チョット…
どんなに堕ちても美佐子さんにはココロの最低ラインを
持って貰いたい。
それ失っちゃうと‘美佐子さん’て言う、キャラとしての
魅力まで無くなりそう。
648 :02/12/19 17:36 ID:63DcvyQJ
美佐子さん、カエル親父の子供を妊娠、出産してほしい。
649名無しさん@ピンキー:02/12/19 19:04 ID:mhgz7wsk
↑いいなそれ
650名無しさん@ピンキー:02/12/19 19:39 ID:ZvtiiR6x
>>648
それだけは、絶対容認できないよ
651名無しさん@ピンキー:02/12/19 20:12 ID:Ghp0Zo32
>650
オレも容認できない派だけど、
激しく欝になりつつも間違いなく興奮するだらう(藁&鬱
652名無しさん@ピンキー:02/12/20 02:34 ID:bDrw7IBi
唯が堕ちても、美佐子さんが妊娠しても別に構わないけど、
巨根とセックスが上手だからだけが理由だと興奮しねえな。

只の色基地のバカ女になっちまうと興醒め。
653名無しさん@ピンキー:02/12/20 03:01 ID:t5FJ2Ccc
>>652
バカだなぁ。巨根とセックス上手なだけの男なのに離れられなくなるのがいいんじゃないか。
654名無しさん@ピンキー:02/12/20 04:29 ID:IZa/v82f
おまえら要は抜けりゃいいんだろ?
655名無しさん@ピンキー:02/12/20 10:39 ID:5ybq4/fZ
>652
だな。
でもって竜之介は女のと言うものの浅ましさ――つなぎ止めておくには
魅力をorではなくandで備えていなければならないことを思い知ってしまうわけですな。

かくて少年は男になる(かっこつけんなコラ)
656名無しさん@ピンキー :02/12/20 11:47 ID:tO1sag2u
>>653
禿道
657名無しさん@ピンキー:02/12/20 15:24 ID:W3EPiXUZ
美佐子妊娠→ぼて→母乳→(゚Д゚)ウマー
658名無しさん@ピンキー:02/12/20 23:04 ID:iYaCcUoh
明日ぐらい1さまの書き込みがあるような気がするので
焦って上げて広告を入れないで落ち着いて待ちましょう。じー。
659名無しさん@ピンキー :02/12/21 14:13 ID:6nAIuXQl
今日あたり、1さんと職人志望さんのダブル書き込みがありそうな予感
660名無しさん@ピンキー:02/12/21 14:38 ID:NjYhgHo9
>>658-659
おまいら!そりゃ予感つーより願望だろ
661名無しさん@ピンキー:02/12/21 14:41 ID:/c982TJo
>>660

『求めよ! されば与えられん!』
         (マタイ伝だったっけw)
662名無しさん@ピンキー:02/12/21 15:26 ID:VptYhroK
>>660
スレの伝統です。
663旧1:02/12/21 17:09 ID:ydUDK/hO
(>_<)ごめん!今日は無理ッす!!

(-_-;;たぶん、来週にはうぷ出来るかと・・・。
664名無しさん@ピンキー:02/12/21 20:16 ID:01TRZ/6k
来週クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
665職人志望:02/12/22 02:55 ID:4xHxogKE
スミマセン。ちょっと難航してますが、もう一、二日でうpできるかと。
それでですね。
カエル氏の名前を、蛙田にしてもいいでつか? とマジに問いかける私は、
なにかが狂ってますか?
いや、普通の名前をつけても、どうもシックリこないもので……。
んなこたあ、どーでもいい or それだけはヤメとけ等、
御意見を聞かせていただけるとありがたいです。もしくはピッタリの名前を急募。
666名無しさん@ピンキー:02/12/22 04:33 ID:YWgqRHYX
>>665
フルネームは蛙田ピョン吉でw

冗談はともかく、蛙田で良いと思います。
真面目に考えるなら蛙→ゲコゲコ→下戸あたり。
667名無しさん@ピンキー:02/12/22 07:29 ID:bHM3olnw
蛙杖って何のキャラだっけ
668名無しさん@ピンキー:02/12/22 08:41 ID:Fve8zXuA
カエル→蛙→川津て言うのは普通すぎ?
いや、俺もカエルおやじの名前考えた事があってw
669名無しさん@ピンキー:02/12/22 14:09 ID:kU2FWiDW
エルフに聞けよというつぶやき
670名無しさん@ピンキー:02/12/23 01:52 ID:jYufJY01
蛙田ゲーロ。
671名無しさん@ピンキー :02/12/23 13:33 ID:wHIUK8ZH
蛙田剛彦
672職人志望:02/12/23 23:10 ID:Fin9m0Xk
竜之介が立ち上がった気配で、唯は目を覚ました。
目覚めたことで、居眠りしていた自分に気づく。リビングの低いテーブルに上体を突っ伏して。
この日も前日同様に、ふたりはリビングで時間を過ごしていた。
長い午前と午後を。重苦しい沈黙の中に。
竜之介は憔悴した面に、ますます悲痛の色を強めて。
唯は、そんな竜之介の横顔を、見張るような気持ちで見つめていたのだったが。
午後も遅い時間になって、心身の疲労に耐えきれず、うたたねをしてしまったらしい。
「……おにいちゃん?」
眼をしばたきながら、唯は竜之介を見上げた。
竜之介は応えず、ジッと耳をすませている。
眠っていた唯は聞かなかったが、家の外に車の止まる音がしたのだった。
そして。
カチャリ、と。小さく聞こえたドアの開く音に、竜之介は弾かれたように玄関へと向かった。
慌てて唯も立ち上がったが。踏み出そうとする足が竦んだ。
少なくとも、これで、あてどもなく待ち続ける苦行からは解放されるとしても。
この先には、とても恐ろしいことが待ち受けている気がして……。
それでも、竜之介だけを、そこに向かわせることは出来ないから。
唯は、自分を励まして、竜之介のあとへと続いた。
673職人志望:02/12/23 23:11 ID:Fin9m0Xk
「美佐子さんっ!」
果たして、そこに立っていたのは美佐子だった。五日ぶりの帰宅である。
大声でその名を呼んだ竜之介は、数歩の距離を置いて足を止めた。
昂ぶる感情に肩をあえがせながら、なにを言っていいのか、
なにから訊けばいいのか解らないといったふうだった。
唯は、その背後から、竜之介よりは冷静に美佐子を見て。
母のまとう雰囲気が、出発前とは明らかに変わっていることに気づいた。
美佐子は黒のロング・コートを着ていた。唯には、見覚えのない衣装だ。
だが、唯の感じた違和感は、母の見なれぬ装いのせいではない。
旅からの帰りだというのに、手荷物ひとつ持っていないという不自然さの為でもなかった。
高級そうなコートの漆黒の色は、美佐子の白い肌によく映えて。
特に、キッチリと合わせた襟元からのぞく細い首のあたりなどは、
唯でさえゾクリとするような艶めきを漂わせている。
片手でコートの胸元をおさえて、ただ佇んでいるだけの姿から、
どうしようもなく滲むものは……色香。まさに匂いたつような。
これまでも、母の美しさは認め自慢にも思ってきたけれども。
こんなにも……女を感じさせられたことはないと思った。
だから、そんな母をひとめ見た瞬間に、唯は悟ってしまった。
この二日間、竜之介を懊悩させた疑いが、事実のとおりであったことを。
(……おにいちゃん……)
674職人志望:02/12/23 23:12 ID:Fin9m0Xk
「ごめんなさい、遅くなって」
それが、美佐子の第一声だった。
まるで、ほんの一、二時間帰着が遅れたような言いかた。
「なっ…」
言葉を探しあぐねていた竜之介が、逆上しかかる。
しかし、目の前に立つ竜之介の激情に、美佐子は気づかなかいのか、
気づかぬふりをするものか。
「表にタクシーを待たせてあるの」
勝手に話をすすめた。
唯は、ほんのりと上気した美佐子の顔を見つめた。
美佐子の眼は、竜之介と唯の方へと向けられてはいるけれども。
その潤みを湛えた瞳には自分たちは映っていないような気がした。
「タクシー?」
「夕食は外で食べましょう。ふたりとも、そのままでいいから、すぐに出て」
「ちょっ、美佐子さん!」
一方的に告げると、美佐子は踵をかえして、再び外へと出てしまった。
一瞬、呆然とした竜之介だったが。すぐに、靴をつっかけるようにして、
美佐子のあとを追った。
唯も、自分と竜之介の上着を手に、家を出る。
すでに悲しい諦めを、胸にわかせながら。
675職人志望:02/12/23 23:13 ID:Fin9m0Xk
……夕暮れの街を走る車は、八十八町を出た。
如月町の方角に向かっているようだ。
助手席に美佐子が座っている。唯と竜之介は後部席に。
会話はない。
竜之介は、前席の美佐子に刺すような視線を送り続けているが。
美佐子は窓の外を向いたままだった。
竜之介は、何度も口を開きかけては、懸命に自制しているようだった。
美佐子に問い質したいことは、他人のいる場所で口に出来る内容ではない。
苛立ちに軽く膝を揺すりながら、竜之介は美佐子を凝視している。
……そんな車内の光景を、唯は眺めていた。
(……みんなで、外で食事、か……)
あまり、そういう機会はなかったなあ、などと思い返している。
美佐子は―おかしくなる前の美佐子は、家事をおろそかにすることを嫌うひとだったから。
外食や出前で食事を済ませるということが、ほとんどなかった。
滅多にない機会……でも、楽しくないだろうなあ、と思った。
そして、多分これが。
(……『最後の晩餐』、か……)
まだ、事態の進む先は見えない。どのような決着が待っているのかは、
唯にもわかるはずはなかったが。
それでも、自分たちが以前のような家族でいられなくなることだけは確かだった。
676職人志望:02/12/23 23:14 ID:Fin9m0Xk
エレベーターの中には三人だけ。
美佐子は扉の前に立って、視線を下へと向けている。
竜之介はその隣りに立って、階数表示を見上げている。
唯は横の壁に背をもたれて、宙を睨んでいる。
バラバラだな、と唯は内心に呟く。
広くもないスペースに家族だけであっても。会話もなく、てんでに違うほうを向いて。
(こんなに……簡単に壊れちゃうものなんだ……)
達観にも似た諦めの底には、いまだ冷めぬ怒りがあった。
その感情は、美佐子だけではなくて竜之介にも向けられていた。
だいたい竜之介は、美佐子との間にあったことを、いまだ唯には告げていないのだ。
なんら説明も弁解もないまま、それが既定の事実であるかのようになってしまっている。
どういうつもりなのか……などと問うまでもないことも、唯には解ってはいた。
昨日から、自分のことなど、竜之介の意識からは追い出されてしまっているのだと。
惨めな思いがこみあげてくる。
唯とて、この先へと進みたくて進むわけではない。そこで、愛する母を失うことになるのでは、
という不吉すぎる予感があるのだから。
ただ、竜之介のことが心配だから、こうして着いてきたというのに。
その竜之介が、そばに自分がいることさえ忘れているのならば、と。
泣きたいような惨めさ悔しさを噛みしめて。それでも、どうしても竜之介を残して帰る気には
なれない自分に、唯が自嘲のため息を洩らした時。
チン、と軽やかな音が鳴って。エレベーターは目的の階に到着した。
677職人志望:02/12/23 23:15 ID:Fin9m0Xk
美佐子から先にフロアに降りて。正面のレストランの入り口へと向かう。
その後に続きながら、竜之介の手が固く握りしめられるのを唯は横目に見ていた。
店内に入った美佐子に、スーツ姿の支配人らしき男が歩みよる。
何事か美佐子が告げると、心得顔で頷いて先導した。
落ち着いた雰囲気の店の中へ足を踏み入れた唯は、窓からの眺望に一瞬だけ目を奪われた。
宵の紫色の空が綺麗だと思った。
支配人と美佐子は、店の奥へと進んでいく。
半ばほど埋まったテーブルから、男性客たちが美佐子へと視線を投げるのに唯は気づいた。
やがて、案内役の男は店の最奥のテーブルに辿りついて、恭しく頭を下げた。
「……なっ!?」
唯の隣りで、竜之介が驚愕に声を詰まらせる。
その席には、男がひとり座っていた。
やはり、男だった……と、いまさらに思いながら、唯もその人物を観察した。
(……え?)
テーブルの横に立った美佐子と言葉を交わす、男の横顔に見覚えがあった。
男が、こちらを見た。
(やっぱり。カエルのおぢさん……?)
以前は連日『憩』に通いつめて、美佐子にちょっかいをかけていた、その客のことは、
唯も知っていた。最初にその男をカエルに擬したのは、唯である。
(このひとが……おかあさんの……?)
678職人志望:02/12/23 23:16 ID:Fin9m0Xk
この期に及んで、これほどの驚きに見まわれるとは、思いもしなかった。
タチの悪い客だと、辟易としていた母を知っているから。
呆然とする唯の横から、竜之介が動いた。足早に、そのテーブルへと近づいて、
「なんで、おまえがここにいるんだ!?」
大きな声に、店内の注視が集まる。
男は平然と竜之介を見上げていた。
おろおろとしているのは、美佐子だった。
「りゅ、竜之介くん……」
「美佐子さん、これはどういうことだよ? どうして、こいつがっ」
「おねがい、落ち着いて……」
と、薄ら笑いを浮かべて、激昂する竜之介とうろたえる美佐子を眺めていた男が口を開いた。
「いや、美佐子さんには、長いこと家を空けさせてしまったからね。
 それに対してのお詫びと、君たちとの親睦を深めるために招待させてもらったんだよ」
「……美佐子さん」
わざとらしく丁重な口をきく男のことは無視して、竜之介は美佐子に質した。
「本当に、こいつと旅行に?」
「…………」
美佐子は無言のまま。しかし、コクリと頷きを返した。
「……貴様ァっ!」
竜之介が両手で男の襟首を掴んで、吊るし上げる。
店内にどよめきがわき、案内を終えて離れようとしていた支配人が慌てて戻ってくる。
「竜之介くん! やめてっ!」
美佐子が悲鳴のような声を上げて、竜之介の腕にすがりつき、
「おにいちゃん!」
唯も咄嗟に竜之介の背中に抱きついて、引き剥がそうとする。
679職人志望:02/12/23 23:17 ID:Fin9m0Xk
しかし、そんなことでは猛り狂う竜之介を止めること出来なかった。
「美佐子さんになにをしたっ!? どんな卑怯な手を使ったんだよ!?」
「どんなってねえ……」
騒ぎの渦中で、ひとり男だけが冷静だった。
「一緒に温泉でもどうかと誘ったら、ふたつ返事でOKをもらっただけだが。
 これは、卑怯な手になるのかい?」
「ふざけるなっ!」
竜之介が拳を振りかざした。
「やめてっ!」
美佐子がその腕に両手でしがみつく。
「殴るのか?」
ふてぶてしく男が訊いた。
「気にいらないことは、腕ずくで排除しようってか?」
「なんだと?」
「事実を認めたくないから、ここで俺を殴り飛ばして、美佐子を連れ帰ろうってか?
 それで満足か?」
「…………」
男の言葉が、竜之介の気勢をそぐ。
なによりも。
「やめて……竜之介くん……やめて……」
竜之介の腕を抱いて必死に訴える美佐子から伝わる感情が。
「……美佐子さん……」
違う、と気づかされて、愕然とする竜之介。
以前にも同じ場面があって。あの時も美佐子は懸命に竜之介を止めようとした。
それは竜之介の身を案じてのことだった。
だが、いまは。
680職人志望:02/12/23 23:17 ID:Fin9m0Xk
「お客さま、トラブルは……」
割り入る暇を見つけた支配人が声をかける。
「ああ、悪かったな」
男が力の抜けた竜之介の手を払って、襟元を直しながら軽く言った。
「ちょっとした行き違いだ。この後は、平和な話し合いにするさ」
な? と、皮肉な目を眼を竜之介に向ける。
また、表情を険しくした竜之介だったが。
とにかくも事実を知ることが先決だと感情をこらえて、男に促されるまま、席についた。
男が手をふって、まだ心配そうな支配人をさがらせる。男が、かなりの上客であることを
匂わせる遣り取りだった。
「さあ」
男が唯にも席をすすめた。何事もなかったかのような態度で。
「…………」
唯は、黙って竜之介の隣りの椅子に座った。
四人がけのテーブル席。
竜之介の対面に男、唯の向かいが美佐子。
そういうことなのだなと、わけもなく唯は納得した。
テーブルを挟んで、あちらとこちら。
母は……あちら側にいる。男の隣りで、身を竦めるようにして座っている。
681職人志望:02/12/23 23:18 ID:Fin9m0Xk
「じきに料理がくるから。まあ、ゆっくり食べながら、話をしようじゃないか」
男が、悠然たる調子で口火を切った。口ぶりは、また似非紳士に戻っている。
「まずは、乾杯といこうか」
卓上のワインを持ち上げて、それぞれの前に置かれたグラスに注ごうとする。
「美佐子さん」
竜之介は男を無視して、美佐子を睨みつけた。
「本当のことを言ってくれ。こいつに、なにか脅されてるのか?」
「おいおい、人聞きが悪い…」
「本当のことを言ってよ、美佐子さん。大丈夫だよ。俺が絶対に美佐子さんを守ってみせるから」
俺を信じて、すべてを明かしてくれ、と熱をこめて訴える竜之介。
しかし。
おずおずと顔を上げた美佐子は、かぶりを横にふって。
「……そんなことはないわ」
「嘘だっ! そんな理由でもなきゃ、こんな男と」
「おねがい、竜之介くん。それ以上、失礼なことを言わないで」
「本当のことを話してくれよ、美佐子さん」
「やれやれ……」
大袈裟に男は嘆息して。結局自分のグラスだけにワインを注ぎながら。
「ずいぶんと誤解されているようだな」
言葉とは裏腹に、男がこの状況を楽しんでいことを、唯は見てとった。
「それに、さっきから、“こいつ”だの“この男”だのと。どうにも聞こえが悪い」
美佐子へと向いて、
「紹介してくれないか、美佐子さん」
682職人志望:02/12/23 23:19 ID:Fin9m0Xk
美佐子がうなずいて。
「……唯、竜之介くん……」
隣りで竜之介が息をつめるのを感じながら、唯もジッと美佐子を見つめた。
「こちら、蛙田さんとおっしゃるの。ご自身で事業をなさってる方で。
 それで……私が、いま、おつきあいしてるひとなの……」
ついに。その言葉は美佐子自身の口から紡がれた。
言いきってしまって。かすかにホッとしたような美佐子は、
うかがうように隣りの男―蛙田を見た。
「よろしく」
蛙田は、にこかやに唯と竜之介に目礼する。
しかし、唯と竜之介の視線は美佐子に刺さったままだった。
「……どうして、本当のことを言ってくれないんだ? 美佐子さん」
うめくように、竜之介が言ったが。
(……ダメだよ、おにいちゃん)
唯は、心中に、そう呟いていた。
母が男へと向ける眼の色に。
いきさつは知らないが、少なくともいまの美佐子は、この男に依存している、
心まで委ねてしまっていると、悟らされて。
気丈な母の、こんな姿は見たことがない。
母は本当に変わってしまった、この男に変えられてしまったのだと。
683職人志望:02/12/23 23:20 ID:Fin9m0Xk
「どうしても、認めてもらえないようだな」
男が苦笑する。
そういう態度の逐一がわざとらしいと、唯は思った。
「まあ、無理もないか。君とは、因縁があるからな」
「…………」
「まあ、あれも誤解の上の不幸な行き違いだったと思うんだよ。
 私としては、水に流したつもりだから、君もあまり気にしないでくれ」
「ふざけるなっ」
竜之介が激昂に肩を震わせる。それを見る男が、愉悦の色を強める。
そういうことか、と唯は納得した。
男は、竜之介に意趣返しをしたいのだと。
こんな場を設けたことも、逆撫でするような態度も、すべては竜之介を嬲るためのものなのだと。
(……もう、帰ろうよ、おにいちゃん……)
もう諦めて。事実を受け入れて。
美佐子が、自分たちと共には帰らないというなら、それも仕方がないから。
自分は、そばにいるから。離れないから。一緒に家に帰ろうと。
……言って聞き届けてもらえるものなら、言葉にもしたけれど。
いまの唯に出来ることは、竜之介が傷つけられていくさまを見続けることだけだった。
684職人志望:02/12/23 23:21 ID:Fin9m0Xk
「やれやれ……」
また男が嘆息する。そうしながら、眼には喜悦の光があった。
「ようするに、あれだろ? 惚れた女に心変わりされたことが納得できないってんだろ?」
「なんだと……?」
「そう驚くなよ。それくらいは美佐子から聞いてるさ」
地を露わにしてきた男は、美佐子のことも呼び捨てにする。
「けど、そんなこたあ、ザラにある話じゃないか? 女なんてのは、したたかなもんだからな。
 少しでもイイ男が現れりゃあ、とっとと乗り換えちまうもんさ」
しゃあしゃあとヌカした男の勝ち誇った顔が、どうにも面憎くて。
唯は、思わず口を開いていた。
「おじさんの方が、竜之介くんよりイイ男だっていうの?」
突然の発言に、皆が唯へと眼を向ける。
男も一瞬虚をつかれたような顔をしたが、すぐに楽しげに笑って、
「……その前に。唯ちゃんは、お母さんと竜之介くんが、そういう仲だったことについては、
 なんとも思わないのかい?」
逆に、そう聞き返した。
竜之介と美佐子が反応するのを、なにをいまさらと受け流して、
「それは、いまは関係ない。ただ、竜之介くんよりおじさんの方がいいなんてことは、信じられない」
唯は、キッパリと言い放った。
「こりゃあ参ったな。じゃあ、唯ちゃんも、美佐子が嘘をついてるって思うのかい?」
685職人志望:02/12/23 23:22 ID:Fin9m0Xk
「嘘って? この頃のおかあさんは、嘘ばかりだから。どれのことだかわからない」
冷淡に言い捨てて。美佐子が悲しげに目を伏せるのも、視界の隅で受け流して。
唯は男を睨みつける。
「美佐子が、おじさんのことを好きだってことさ。それも嘘だと思う?」
「それは……本当だと思う」
「唯っ!?」
竜之介が責めるような声を上げるのも、唯は聞き流す。
誰もかれも……自分勝手なんだから。私も思ったままのことを言ってやるのだと。
「でも、それが、おじさんが竜之介くんより上だっていう根拠にはならない。
 おかあさんは、頭がおかしくなっちゃたんだと思うから」
「……唯…」
美佐子が哀切な声で呼んでも、唯の心は痛まない。むしろ、かすかな快味さえ感じていた。
「なるほどねえ……」
ふんふんと、男は頷いて。
「確かに、おじさんは、このとおり面も良くないしね。竜之介くんみたいに格好よくないわな」
「見かけだけじゃないよ。中身だって…」
「そう、そこだよ」
我が意をえたりと、男が笑う。唯の言葉を捻じ曲げて、
「男の魅力ってのは、見てくればかりじゃないんだなあ。だから、美佐子も竜之介くんより
 おじさんを選んだんだよ」
「そんなの、おかしい」
「まあまあ。唯ちゃんみたいな若い娘には、まだわからないかもしれないけどね。
 男と女が付き合うのに、一番肝心なことがあるんだよ」
「………………」
686職人志望:02/12/23 23:23 ID:Fin9m0Xk
「まあ、ズバリ言っちゃうと、セックスだよ。
 肌が合う合わないってのが、とても重要な問題なんだなあ。
 その点で、おじさんと唯ちゃんのお母さんは相性バッチリでね」
「黒木さん……」
それ以上はと懇願の目を向ける美佐子を黙殺して、男は続けた。
「唯ちゃんは知ってたかな? 美佐子は、もう竜之介くんともセックスをしてるんだよ」
「おいっ!?」
竜之介が慌てて止めようとするのに、男は皮肉な目を向けて。
「事実だろうが?」
「そんなことは、いまは」
「関係あるから話してるのさ」
唯は、数瞬、ギュッと眼をつぶって。それで精神の再建を果たすと、
「……それがどうしたの?」
再び男を睨んで、冷たい声で問いかけた。
男は、感心したように唯を眺めて、
「ああ、つまりだ。美佐子は、俺と竜之介くんのセックスを比べた上で、
 俺を選んだってこと。そもそも、先に関係を持ったのは俺の方だったんだけどね」
「美佐子さん……!?」
愕然として美佐子を見る竜之介。眼を伏せる美佐子。
「ところが事情があって、しばらく逢えなくなってね。すっかり、おじさんとのセックスに
 味をしめてた美佐子は、我慢ができなくなって、竜之介くんを誘ってしまったらしいんだ」
口調はソフトなままだったが、表現は露骨になっていく。
「だが、残念ながら若い竜之介くんじゃあ、美佐子を満足させることは出来なかったんだな。
 そのすぐ後に、おじさんと逢ったときには、もうタイヘンだったよ」
唯に向かって語りながら、無論のこと、男は竜之介の耳を意識している。
687職人志望:02/12/23 23:23 ID:Fin9m0Xk
「でもね。お母さんのこと、あまり責めないでほしいんだな。
 美佐子の旦那さん、つまり唯ちゃんのお父さんは、十年も前に亡くなってるだろ?
 それから、美佐子はずっと独り身で過ごしてきたわけだけど。
 美佐子くらいの年齢は女の欲求が一番強くなる時期なんだよ。
 そんなところへ、おじさんと知り合って。
 それで、溜めてたものが一気に爆発しちゃったんだなあ。
 おじさんは、これでも、そっちの方はちょっとしたもんなんだ。
 美佐子は、この年ではじめて女の悦びを知ったわけさ。
 だから、おじさんに夢中になるのも無理はないんだよ」
厚顔な長広舌をひと区切りさせて。男はワインで喉を湿らせる。
竜之介は引き攣った顔で、ただ美佐子を凝視している。
美佐子は項垂れて、消え入りたいような風情を見せている。
でも、否定はしないのだな、と唯は思った。男の薄汚い言上に、美佐子は口を挟みもせず、
ただ恥じ入っている。
「……つまり、お母さんがおじさんを好きになったのは、セックスだけが理由ってこと?」
「いやあ、いまじゃあ、それだけでもなかろうと自惚れてるんだけどねえ」
もっとも、と含み笑って、
「唯ちゃんのお母さんは、見かけによらず、かなりのスキモノだからね。
 おじさんくらいに強い男じゃないと太刀打ちできないかもしれないな」
チラリと、竜之介を横目に見る。
「しばらく、おじさんと逢えなかったって言ったろう? 悶々としちゃってたんだなあ。
 久しぶりに逢った美佐子が、あんまりトチ狂うもんで、それじゃあ温泉にでも行って、
 ジックリ愉しもうかって提案したら、大喜びで乗ってきてね。
 向こうでは、それこそ朝から晩まで、そればっかりでさ。ついつい滞在が延びちゃったんだよ」
「……………」
688職人志望:02/12/23 23:24 ID:Fin9m0Xk
「ようやく昨日の朝に宿を出てね。さすがにおじさんも疲れちゃってたんだけど。
 ところが、美佐子ときたら、まだ帰りたくないなんて言うもんでね。
 結局、昨夜はおじさんの家に泊まったんだ」
昨日か……と、唯は思いおこす。
自分と竜之介が、苦悶のうちに過ごした長い昼と夜。
帰らぬ母は、この男のところにいたのだ。連絡すら、誤魔化すための電話一本すらよこさずに。
「実は、おじさんの家に美佐子を入れたのは、昨日がはじめてでね。そのことに感激したらしくて、
 またエライ乱れっぷりでさ。おじさんにしがみついて、捨てないでくれって泣いてすがるもんで。
 それなら、ちゃんとふたりの関係を、唯ちゃんや竜之介くんにも話すように言ったんだ。
 これまで、唯ちゃんたちに隠してきたこと、おじさんも心苦しく感じてたんでね」
明らかに嘘だとわかる一節で、暴露をしめくくって。
男は、ゆっくりと竜之介に向いた。
「……とまあ、そういうことなんだが」
「……嘘だ」
しぼり出すような声で、抵抗する竜之介。
「美佐子さんは……そんなひとじゃない……」
「…………竜之介くん……」
俯いたまま、美佐子が悲しげに眉を寄せた。
そんな言葉を繰り返すしかないのだろうな、と唯は竜之介を悲しんだ。
そして、そんな竜之介の頑迷なまでの抵抗こそが、いまは美佐子を苦しめるのだろうな、
と理解した。辛そうな母に同情は感じなかったけれど。
689職人志望:02/12/23 23:33 ID:Fin9m0Xk
……警告が出たんで中断しますね。続きは次スレってことでいいすかね。
スンマセン、スレ立てはしたことないんで、どなたかお願いできれば……
ホント、申し訳ないすが。
690名無しさん@ピンキー :02/12/23 23:37 ID:cDRYxqE/
とりあえず、惜しみない賞賛の拍手を送らせていただきます。
でも、次立てるはまだ早いかとも・・・。
6911様代理:02/12/23 23:38 ID:kkdiGGVC
692職人志望:02/12/23 23:58 ID:Fin9m0Xk
>691
迅速な対応、ありがとうございます。つーか、あまりの早さに驚きまいた。
半端になった↑の続きを、次スレの方にうpしてきました。

>690
容量がパンク寸前らしいのですが、ちょっと焦りすぎでしたかね?
いや、食いつぶしたのも私なんすけど……申し訳ないっす。
693名無しさん@ピンキー:02/12/24 02:36 ID:OdyF73Jv
糞だな。
694名無しさん@ピンキー:02/12/25 02:33 ID:wbG8mfaP
唯寝取られのフラグが立ったような気がしてるのは俺だけかな?
695名無しさん@ピンキー:03/01/03 10:42 ID:ehFMsD8G
保守。
696名無しさん@ピンキー:03/01/08 14:54 ID:vReTw6nY
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697山崎渉:03/01/12 07:48 ID:8hPfyb/R
(^^)
698山崎渉:03/01/17 07:35 ID:C4ctH7ZP
(^^;
699名無しさん@ピンキー:03/01/19 04:17 ID:H0b9Uqqa
静岡県の富士山麓に広がる広大な林の奥に、鉄条網で囲まれた
広大な一角がある。
そんな、人里離れた森林の中に建つ、コンクリート作りの一軒
の小屋が、絵里の住処だ。
小屋の中は8畳くらいの部屋になっていて、部屋の中にあるのは、
何処までも深く、暗い正方形の穴。
壁には分厚い防弾ガラスの窓が埋め込まれている他は、厳重な金
属製の、大きさ30cmくらいの、外界と小屋の中を繋ぐ穴がある
だけだ。
 その穴から毎日1回投げ込まれる、1日5kgあまりの食物を
むさぼり食い、暗い穴に止めどもなく脱糞をする。
 それが、今の絵里の人生の全てだった。

 食費や維持費といった、この小屋の運営費は全て、IOCの経費
で賄われている。でも、そんなのは当然の事だ。
 奴らが、商業主義と歪んだ超大国の愛国心にまみれたオリンピッ
クの奴らが、絵里をここまで追いつめたのだから。

 月に一度、自衛隊のトラックに揺られて、俺は絵里に会いに行く。
 防弾ガラスの窓越しに顔を見せ、絵里がこちらに気づいてくれるの
を辛抱強く待つ。
 その日は3時間ほど待っただろうか?
700名無しさん@ピンキー
脱糞に疲れて、ふと窓の景色に目をやった絵里は、俺の存在に気が
つくと、困ったような、はにかんだような曖昧な笑みを見せた。
 といっても、絵里には実際、俺が誰なのかすら既に分かってはいな
いだろう。
 ただ、窓の外に写る珍しい景色の1つとして、俺を見ているに
過ぎない。
 沈黙の中で、俺は絵里を、俺が愛した女を見つめ続ける。
 狭い部屋の中で毎日、5kgもの食物を食っているというのに、
絵里のスタイルはおよそ、崩れるということを知らない。
 可愛い絵里。美しい、俺だけの絵里。
 俺も笑みを返して、10分ばかり見つめ合ったのち、絵里は俺に
飽きたのか、また食物と糞便の山の中に引き返す。

 絵里が元に戻る可能性は、万に一つも無いだろう。
 でも、俺は絵里を一生、愛し続けていくつもりだ。
 例えIOCが見捨てても、俺が人生の全てをかけて、
彼女を守っていく。

 あの木の伝説が永遠であるように、俺達の関係も
永遠なのだから。

  *  *  *  *F I N*  *  *  *