1 :
名無しさん@ピンキー:
のエロパロ、キャラ絵とかってある?
自分的にはメルルたん萌えー
2 :
名無しさん@ピンキー:02/09/07 01:38 ID:iAKNuxfo
>1
スレを立てるのが5年遅い罠。
あぼーん
4 :
名無しさん@ピンキー:02/09/07 08:37 ID:rUNU72a+
ようやく映画版を観た。
序盤、瞳が意味なく人生に後ろ向きで単なるイヤな奴に成り下がってたのには落胆。
いきなり楽観主義に転じたがその根拠が乏しく激しくゲンナリ。
作画が素晴らしいだけに残念だったよ。
5 :
名無しさん@ピンキー:02/09/07 14:43 ID:jJp2IB8G
6 :
名無しさん@ピンキー:02/09/07 21:25 ID:drmMEIV9
誰か画像とかきぼーん
7 :
名無しさん@ピンキー:02/09/07 21:29 ID:YjrUCptr
やだ!
メルルはまだありそうだがな。
9 :
名無しさん@ピンキー:02/09/08 17:43 ID:XrL8cTr6
10 :
名無しさん@ピンキー:02/09/09 00:28 ID:G7u8X8VI
age~
今の克・亜樹がやったらそうとうエロくなりそうな予感。
12 :
名無しさん@ピンキー:02/09/10 01:01 ID:EBs0WcMd
>>11 同意。
アニメの絵柄でエロく描いていただきたいものだ
13 :
名無しさん@ピンキー:02/09/10 20:43 ID:GaWhMXio
age
14 :
名無しさん@ピンキー:02/09/11 22:02 ID:bDJPayGW
2
15 :
:02/09/26 00:21 ID:fQ5CIvb4
16 :
名無しさん@ピンキー:02/09/27 12:24 ID:37o15WPG
アレ〜ンとミラーナの死んだ方の姉との逢瀬
だれか書いてくんないかなぁ。
誰もいない。来ないんだね。
勝手になんか書いちゃおうかな。「雨のキッス・運命改変装置」とか。
映画・90分は詰めすぎ。せめて120分はいると思う。両親殺しも止絵だったし。
金・銀娘も歌姫でしか出てこない。
なによりも、別物と言っといて、基本プロットはテレビと同じってのは
どうかと思った。TV・LDで持ってるけど、ハード壊れて困った。
rain-1
その部屋はとても薄暗く、時折、蒸気だけが静寂を破る。何人かの男たちは
機器の点検に余念なく動いている。その中で、一人の男だけは白髪の老人を
じっと見ていた。
「見えぬ!見えぬではないか!このままでは……」
球形の映像転送装置の中、竜と月の少女のふれあいに苛立ちを隠せない。
「ご安心くださりませ。あやつに男女の一線を越える術などありませぬ」
「ほほおぅ……おもしろいのぉ、フォルケン」
そう言うと老人は、再び運命の観察に戻っていく。
竜神を隠匿した風車小屋に、竜と月の少女はいた。
(藁の匂いがやさしい。こうして、こいつと話すのって何度目だろ。最初はただの
刺々しいだけの奴だと思ってたけれど、そういう緊張を強いられてきたんだものね。
しょうがないよね)
ミラーナの占いの申し出を断った棘が、すこしだけやわらぐ。けれど、すぐに想いが駆ける。
(わたしって、なんてイヤな女だったんだろう……ミラーナさん、ごめんなさい)
不意にバァンが声をかけてくる。
「落ち込んだ顔のお前なんて……らしくないぞ……ひとみ」
「へっ?」
(な、なんて失礼な奴!わたしは、メルルじゃ……えっ!こいつ……わたしをなぐさめてるんだ)
竜神を手入れするのを止め、バァンは少し俯き、絞りだすように声を発した。
「ひとみ……月になんか……還るな。ずっと俺のそばにいて欲しい」
rain-2
「ちょ、ちょっと……」
(こ、これってプロポーズじゃない……ひえーっ!)
ひとみの頬が火照る。
「お、おまえが欲しい!」
(げっ!い、いっちゃったぁ……どうしょう、おかあさん……)
「お前のちからを貸して欲しい!いっしょに闘ってくれ……ひとみ!」
(げげっ!こ、こいつは……ぼ、朴念仁のまんまだぁ)
ひとみの中にメラメラと怒りが込み上げてくる。
「ば、ばかぁ……バァンの大バカァ!」
ひとみは風車小屋をいたたまれなくなって、逃げ出す。竜は月の少女の
瞳が潤んでいたのを見ても……なにも言えなかった。
「ひとみ……すまん……」
バァンはちぢに乱れながらも、休めていた手をまた動かし始める。
rain-3
「兄弟とは不思議なものよのぉ、フォルケン。竜は我々の手中にあるということか」
「御意にございます」
「くれぐれも、竜には食われるなよ」
「……はっ、ドルンカーク様!」
男は、うやうやしく老人に頭を垂れる。
海を頂くその丘に、気持ちいい潮風が吹く。空はどこまでも蒼く、雲がたなびいている。
そこには、ひとりの金色の長髪の青年が佇んでいる。
「ア、アレン……」
墓石と対話していた、青年が振り返る。
「珍しいですね。神とさえ語ろうとしなかった……あなたが……」
軽く会釈をして去ろうとした時に、エリーズと肩がふれる。
「まって……アレン。もう妹にはかまわないでいて……ミラーナなりに幸せをつかもうとしているのよ」
「それを聞いて安心いたしました。それではエリーズ姫、失礼いたします」
エリーズの手にしている献花の花びらが、風に舞ってアレンの肩にとまる。
彼女はアレンの姿が見えなくなるまで見送ってから、彼が立っていた場所にそっと花を置く。
その花はアレンの母が愛したもの。失踪した父を想い、愛した花だった。
その……花言葉は、忘れえぬ人のために。
rain-4
「ほんとうに可能なのだな、フォルケンよ」
「はっ!外因としての別の気を送り込みさえすれば、かく乱は必ずや」
フォルケンの右腕の機械化された手には毛髪が絡んでいる。
「ここに彼らの写し身、触媒を用意しております」
「抜かるでないぞ」
「はっ!ドルンカーク様」
男の側には、金と銀の髪をした、しなやかな肢体をした女性が膝まづいている。人に忌み嫌われる
獣人。
「作戦とはいえ、そなたたちの気持ちも考えずに決行したこと、許して欲しい」
「もったいなきお言葉。痛み入ります」ふたりの女獣が声を揃える。
「わたしたちは、フォルケン様に捧げた身。後悔などいたしましょうや」銀色の髪の姉ナリヤ。
ひとりの魔導師がふたりを連れに来る。
「頼んだぞ、ナリヤにエリヤ。わたしもすぐに行く」
「はっ!フォルケン様」
ふたりは別室に連れて行かれた。
「選ばれし者は、この胴衣に着替えてから来てください」
「わかった、すぐに行く」とナリヤ。
rain-5
「じゃあ、始めよう。ナリヤ、恨みっこなしだよ」金色の髪の妹エリヤがコインを差し出す。
「望むところだ」
エリヤがコインを握ると、親指で弾く。 ピキィーン! 乾いた音が響き、回転し空中に舞う。
エリヤが後に手をまわして、ナリヤも手伝い戦闘服を下ろす。
「ごめん……姉さん」
「エリヤが姉さんって言うと、こそばいねぇ。わたしたちは対等で、それ以上でもなきゃ以下
でもないさ」
服が床に落ちてエリヤの肢体が現れる。しなやかでいて、無駄のない筋肉美。
エリヤの金の産毛がぼうっと光を放つ。その乳房は彼女たちの生き様のままに、気高く
ツンと上を向いて。
「さぁ、これを着て」
手を掲げ、白い胴衣を通していく。エリヤがじっと白い胴衣を見つめている。
「エリヤ、緊張するな。これは作戦だ……お前は綺麗だ、心配するな。フォルケン様に
可愛がってもらえ」
ナリヤは、そっと妹のエリヤの背中を押す。
「姉さん……ありがとう」
「さぁ、行こう!フォルケン様がお待ちだ」
rain-6
さきほどまでの空が嘘のように、黒い雲で覆われていく。ひとみは、街に出てきた
ところで雨にたたられた。
「あっ、いやだ……ついてないんだ……」
天を見上げたあとに、ふと街中に目を移せば、恋人たちの雨宿り。
「あっ……」くちづけに思わず息を呑み、逃げるように雨の中を駆け出していた。
「エリヤ、準備はいいか」
「はい、フォルケンさま」
「わたしたちは、アレン・シェザールと月の少女・神崎ひとみ。心せよ」
「かしこまりました……」
ふたりは、橋に模した両のたもとに立った。遠くからナリヤが見守る。
大部屋には、時折蒸気の音だけが響いていたが、そこに歯車が動く金属音が加わる。
「運命改変!」フォルケンが厳かに始動合図を発令す。配置についた魔導師たちの声の
合唱となって時は動き出す。
雨脚はさらにひどくなっていた。墓地から街に向かう途中に、雨に濡れるアレン。
(俺は、女に振り回されているだけなのか……想いだけが儚く、いつも壊れていく……)
かたや、逃げ出してしまったひとみには、還る場所はない。あてもなく歩いて躰が
凍えていく。
「わたしがなにしたっていうの……なんで、こんなとこにいなくちゃなんないのよ!
誰か教えてぇぇぇぇぇッ!」
rain-7
「メルル、ひとみを迎えにいってくる!」
「わたしも行きます!」
「メルルは、此処にいろ。風邪をひくだろ」
メルルは思わず、バァンの赤いシャツを掴んでいた。
「バァンさまぁ……そんなに、あの女のとこがいいんですかぁ……」
「メルル……すまん……」
メルルが、ハッとなって手を離すと、バァンは激しい雨の中に飛び出していく。
「バァンさまだって風邪ひいちゃうのにぃぃッ!ばかぁぁぁぁぁぁッ!」
メルルはその場に崩れて泣いていたが、雨の中にバァンを追って飛び出した。
橋のたもとでは、愛にはぐれた男と女が出会っていた。
「おおっ!運命が回り出す……さぁ、引き合う愛の力とやらを見せておくれ!」
フォルケンとエリヤは中央に近づいて、手を差し伸べ絡めていく。募る想い……昂ぶる気持ち。
アレンがひとみの凍える肩をぐっと引き寄せる。
「アレンさん……温かい」(ミラーナさん……ごめんなさい……)
「素粒子・密度低下!」
「エリヤ、わたしをアレンとして強く想っておくれ」
エリヤは朱に染まった顔で、懸命にフォルケンを見上げる。
「はい……フォ……アレン」
「ひとみ……わたしには、もう君しかいない……」
「アレンさん……本当に私なんかでいいんですか……?」
(天野先輩、好きです……)
ふたりが唇を寄せていく。 フォルケンとエリヤもまた、くちびるを寄せて……。
「おおおッ!運命が動く、運命が動いて行くぞッ!」老人のしわがれた歓喜の声が響いていた。
rain-8
「アレンさん……このまま、わたしをここで抱いて……ください」
金のエリヤがフォルケンに顔を埋めて呟く。
「エリヤ……!」人前で妹が抱かれる……分かっていた事なのに、思わず真っ赤になって
口に両手をあてる銀のナリヤ。
「本当にいいんだね……ひとみ」
「はい……アレンさん。わたしを抱いてください」
躰の顫えを埋めるように、ぴったりと擦り寄りよって、手でまさぐり合う。制服の上から
膨らみを揉まれた。
「あうッ!」ひとみの右乳房に激しい痛みが走る。それを塞ぐように、アレンはひとみの
くちびるを奪い、舌をねっとりと絡めていく。
(どうして……こんなのって……わたしじゃないみたい……しかも、こんなところで)
ひとみの腰がアレンを挑発して妖しく蠢く。
(天野先輩、せんぱい……ア、アレンさん……スキ……)
アレンは、ひとみのスカートに手を入れて、ショーツを下ろす。ひとみは背を欄干にあずけて
右脚を抜き取った。
「ひとみが欲しい……いいね」
雨の中で凍えていた躰が、どんどん火照って。
「はい、アレンさん」ひとみは後に手をまわして、欄干をひしっと握って、その時を待つ。
昂ぶったペニスが、愛液で濡れそぼる秘孔を捉える。
「ああッ!」(こ、こんなの……わたしじゃない……壊れていく……)
アレンはゆっくりと律動を開始する。 雨に打たれながら……ふたりは愛し合う。
rain-9
「あうッ、うあああッ!あっ、あっ、あっ……!」
フォルケンの激しい抉るような突き上げに、堪えきれずに呻きが洩れるエリヤ……。
白衣だけをまとった二人が牡と牝となって貪り合っている。
「ひいいッ!」
フォルケンの爪が布地を裂き、右の膨らみを搾る。食い込んだ場所からは血が噴出していた。
(エリヤ!エリヤ!私の声に耳を澄ませ!運命改変装置は暴走している、この作戦は失敗だ!逃げるんだ!)
心配そうに見ていたナリヤが異変に気づく。
「おい!様子がおかしいぞ!」
側にいた魔導師へと詰め寄った。
「アレン!」
エリヤはそう叫ぶと、両脚をフォルケンの腰に絡めて、しがみついてくる。
(よすんだ、エリヤ!逃げろ、逃げてくれ!エリヤ!)
「いやぁ!いやッ!いやぁぁぁぁぁぁぁッ!」
戦士から、ただの女となったエリヤの哀しい叫びが上がり、さらにしがみついてくる。
「ああっ……も、もう、二度と……離れるのは……いやぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「おおおっ!素晴らしい!想像以上じゃ!」
魔導師が老人に進言する。
「少々危険かと……」
「かまわん!!」
即座に魔導師の口を封じた。
(あのエロじじい!チンポおっ立ってたら、ただじゃおかないよ!喉笛噛み切ってやる)
ナリヤは低く唸っていた。それはエリヤへの嫉妬の矛だったのかもしれない。
rain-10
(エリヤ、ここでは危険だ。移動する、私にしがみつくのだ!)
エリヤはフォルケンの首に両手をまわしてしがみつく。フォルケンはエリヤを抱えて
中央から動き出した。
「ひいいいッ!」
歩く度に、烈しい突き上げで、口から臓物が飛び出しそうな感覚がエリヤを襲う。
「うあああッ!」
しっかりと抱きとめていても躰が弓状に反って、頭が仰け反って喉が曝ける。
金の髪が快美に揺れ乱れる。
(もう少しだ、エリヤ、我慢しろ!)
「いいの……いいのッ! 愛してるうぅぅぅぅッ!」
フォルケンに語りかけているのか、女となって悦楽に溺れているのか……エリヤには
もはや、どちらでもよかった。
バァンは唖然として橋の上の二人を見ていた。雨が彼を打ちのめした。
「バァンさまぁ! 見つけ……ああっ! あの女ッ!」
「見るなぁッ!メルル!」
バァンの手を振り払って、メルルはすがりつくような瞳を向ける。
「だって、だって……バァンさまがぁ……!」
「もう、いいんだ。いくぞ、メルル」
バァンが踵を反して、その場を去ろうとしたその時、
「ダメですぅ!バァンさまは……バァンさまは、ひとみのことが好きなんでしょ!だったら
止めにいかなきゃ……止めにいってくださいッ!」
メルルはバァンの背中にしがみついた。
ハッキリ言って感想書くのが難しい…
この先がどうなるのか気になって仕方無いのも事実ではあるが、
状況の把握不能になってしまった…
マルチ・スクリーンまがいを文章に起こすと
散漫以外の何者でもない罠、スマソ。
30 :
名無しさん@ピンキー:02/11/05 18:54 ID:/zfJXsfU
hage
神の降臨に感謝。完璧に読み込んでないのでちゃんとした
感想は言えないけど、面白いです。もし続きを書く余力が
あるのでしたら是非、お願いいたします。
rain-11
「もう、いいんだ。メルル、行くぞ!おい、メルル!メルル、しっかりしろッ!」
バアンの赤いシャツにしっかりと捉まっていた手がふっと弛緩すると、その場に
崩れてガクガクと顫えていた。
「おい、メルル!しっかりしろ!」
バアンがメルルの額に手をあてると、ものすごい熱を孕んでいました。
「すごい熱じゃないか!だから来るなといったろ!さあ、俺に負ぶされ」
「でもう、ひとみがぁ……」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
不承不承バアンの背へと負ぶさって、メルルは呟く。
「ごめんなさい、バアンさま……ごめんなさい……」
「なんでお前が謝るんだよ」
「だ、だってぇ……」
メルルはバアンの背で眠りに落ちました。
一方、橋の上で雨に打たれながらも交わっていた二人は、ようやく渡りきって民家の
軒先に身を寄せています。アレンは左脚だけを降ろして、さらに抉るような突きあげを
繰り出していました。
「うあああっ、ア、アレンさんんんッ!わ、私こわいッ!」
ひとみの仰け反っていた頭が今度は結合部位を眺めるようにガクッと折って、情欲の
想いを吐露したのでした。短めの髪はたっぷりと水を含み、頬にべったりと絡みついていました。
「かはッ!ア、アレンさんッ!」
口から溢れる唾液が咽喉を詰まらせます。ひとみの絶頂はすぐそばまで来ています。
「あうっ、あああああッ!あっ、うあああッ!」
ザイバッハ帝国の一角の或るフロアにエリアの嬌声があがり、フォルケンの目の前に無防備に
咽喉が伸びきって曝け出されていました。ふたりはひとみとアレンを操り、またその恋の波動に
よって狂わされていたのでした。
(ゆ、許せ、エリア……許してくれ……)
獣人・エリアのなかにフォルケンの思念が流れ込んで来るのです。フォルケンは恋の波動によって
乱された改変装置により自制できず呑まれて、欲望のままにエリアを犯していたのでした。
16
ホントはマレーネとフレイド、アレンとの不義密通なんてのをやりたかった
訳ですが、試しにラインをなぞろうとやってみたら、場面切り替えが雑に
なってしまいました。すまんです。一応、オチみたいのはあるにはあるんですけど
オチにもなってないかも。
マレーネあたりのほうが、話としては露骨にエロですよね。華燭の典のその陰で
白いドレスに包まれたマレーネと近衛のアレンがねっとりと熱い口吻の抱擁。
それを偶然みてしまうフレイド公王……。
エリーズも気になってはいますが、なんも情報がない。
状況に圧倒されました。「よく分からんけどすげえ」といった
感じです。エロさを眼中に入れていない演出というか、怒涛の
テンションでした。
rain-12
「はあッ……はっ、はっ、はッ……うああああああああッ!」
(いいんです、フォルケン様……わたしは人として、いいえ……女としてしあわせです)
エリヤの膣が烈しく痙攣して、フォルケンの放出を促す。その灼熱の迸りを深く
受けてエリヤは歓喜に歔いて白眼を剥き、ふたりは絡み合ったまま床へと崩れ落ちた。
ザイバッハの策略によって運命を改変されて、ひとみとアレンは恋人となっていた。
「ひとみ……大丈夫か?」
「は、羞ずかしい……み、見ないで!アレンさん……」
アレンは背を向けると、ひとみの身支度を待った。
「ずいぶんと濡れてしまった。ひとみ、帰ろう!」
「で、でも、わたしに還るところなんて……」
「わたしじゃ駄目か、ひとみ」
「ア、アレンさん……そ、そんなこと……ないです!」
「さあ、帰ろう」
雨上がりの雲の合間から陽が射している。ひとみは雨宿りしていた恋人たちの
行くへを自分に写していた。
作戦は成功したが、改変装置の暴走によって、フォルケンはエリヤの女を踏みにじって
しまっていた。しかしエリアは兵士としてより、フォルケンに准じたことに、女として扱って
貰えたことにしあわせを躰に感じている。
「エリヤ、エリヤ!しっかりしろ!」
エリヤの正体を無くしてぐったりしている頬をフォルケンは軽く叩いていた。
「あ……あッ!も、申し訳ありません、フォルケン様!」
慌てて起き上がろうとするも躰が縺れてよろけてしまい、フォルケンがそれを受け止める。
「いや、いいんだ。よくやったぞ、エリヤ」
機械の手の人差し指ではあったが、エリヤの涙をそっと拭ってから彼女を抱き上げる。
あぼーん
続き期待してます。
rain-13
「フォ、フォルケン様……わたしは歩けます」
「このぐらいのことは、わたしにさせておくれ。 エリヤ」
「ありがとうございます、フォルケン様……」
エリアは顔を赤らめ、フォルケンの胸にそっと顔を埋める。フォルケンは優しく光輝く金髪に
唇をそっと寄せていた。エリアはそのやさしさを感じて瞑っていた瞳を見開き、ふたたび
ゆっくりとしあわせを噛みしめるように閉じるのだった。
「素晴らしい! これで竜と月の少女は、たもとを分かった!」
老人がしわがれ声で叫んだ。
(いつまで、ほざいてやがる! くそ爺ッ!)
ナリヤはモニターの老人に毒づきながら、ふたりのもとに駆け寄った。エリヤを見て
ハッとする。右乳房には、フォルケンの機械の義手が残した爪痕が印されていて、そこから
血が滴っていた。
「すまぬ、ナリア。エリヤを傷つけてしまった……」
フォルケンが哀しみの瞳をナリアへと向ける。一瞬、ナリアは言葉が詰まった、それは
女の業ともいうべき……悋気だった。
(フォルケン様が付けた印だ……エ、エリヤにあって、わたしには無い……ものだ)
「どうした、ナリア?」
「い、いえ、なんでも……ございません……エリヤ大丈夫か!」
銀の姉・ナリアは腰を下ろすと、フォルケンに労わる様に抱かれている金の妹・エリヤを
気付ける為に軽く揺さぶった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……お姉さん……」
「おい、エリヤ! しっかりしろ!」
すっかり要領を得ていないエリヤの肩を今度は強く揺すって気つけようとする。
「少し混乱しているのだ、そっとしておいてやってくれ。エリヤを部屋に連れて行く」
「はい、よろしくお願いいたします。 フォルケン様」
フォルケンは傷つき裂けて肌蹴た胴着のナリヤを抱いたまま、すくっと立ち上がる。
rain
13の最後の行、ナリア→エリヤが正解。ただでさえややこしい名前なのに
何度も間違えてスマソ。
ナリアが銀髪の姉、エリヤが金髪の妹……姉と妹、アとヤがもうゴチャゴチャ。w
rain-14
暫らくしてから、ナリアは薬と水を持って部屋の扉の前に躊躇いがちに立っていた。
傷ついたエリヤを抱いて安息室に消えた時、扉が閉まる瞬間まで烈しい悋気を感じて
いた。薬を持ってくるのさえ、ザイバッハの魔導師に頼むことさえ考えていた。
(女としても見ていて欲しい……けれど、わたしは戦士、フォルケン様に使える戦士だ!)
自分の女心をフォルケンに気取られはしまいか、エリヤに感ずかれはしまいかと
不安で仕方なかった……。
(わ、わたしは……くだらない女になど……わたしは戦士……だ)
ナリアは安息室の扉をノックした。
「フォルケン様、お薬をお持ちいたしました。 入ってもよろしいでしょうか?」
「ナリアごくろう、入ってくれ」
エリヤはベッドに横たわり、安らかに寝息を立てている。 フォルケンは左手でエリヤの
金の髪を恋人を愛でるように撫でていた。ナリアの心がちりちりと掻き乱れる。
「ナリア、どうした? 本当に大丈夫か?」
フォルケンのバリトン・ボイスがナリアの躰をやさしく包みこむ。
「も、申し訳ありません……わ、わたしは……」
ナリアの深く蒼い瞳から雫がこぼれ落ちた。 それは、どんどん溢れて彼女の頬を濡らす。
「さぁ、ナリア……ここへおいで」
フォルケンがエリヤの頭を撫でていた手を差し伸べる。機械の手ではない、生身の躰
の温かい手が差し伸べられる、しかしその指にエリヤの金の髪が絡むのを見てしまった。
「フォルケン様……わたしはあなたさまに使える戦士です……卑しい女などでは……」
エリヤが姉の声に目覚めて、ぴくっ!と躰を慄かせる。
「エリヤは醜かったかい?」
「いえ、そのような……と、とても……美しゅうございました……」
ナリヤは悟られたことを羞じて、俯いてしまい床に雫を落としていた。
rain-15
エリヤが静かに瞼を開け紅い瞳を覗かせる。 フォルケンがやさしい目でエリヤを見た。
「フォルケン様……お姉さまをお願いいたします……」
「エ、エリヤ……な、なんてことを言う!」
羞を晒して俯いた顔をあげる。再びフォルケンはナリアを見つめ返した。
「ナリアは嫌か、わたしに女として愛されるのは……」
「め、めっそうもございません……わたしになど、勿体のうございます!」
「なら、ここに来てくれ、わたしはナリアも等しく愛したい」
「お姉さま……ナリアお姉さま……」
「う、嬉しゅうございます、フォルケン様……!」
ナリアは机に薬と水を置くと、ベッドに腰掛けるフォルケンの前に立つ。
(フォルケン様がわたしを見上げてくれている……それだけで、しあわせだ)
今度はエリヤがナリアの後に立って、しなやかな肢体をあけすけに見せる、いたって
シンプルな戦闘服にそっと手を掛けると、あっさりと床に落とした。ナリアの肢体は
美しかった。エリヤを守って盾となって、フォルケンの為に女を捨ててまでも戦士として
生きてきた。フォルケンの背中を守る為に存在する美としてナリアを鼓舞し続けて
来た肉体なのだ。
戦闘服の拘束が肉体の美を解き放つ。極限までに鍛えられた肉体に、幸運強化兵として
の哀しみも宿る。筋肉質ではあるが、あくまでもしなやかで首筋から下りる腰までの
スロープが美しい。豊かな乳房も解放されるが、女性のような脂肪のやわらかさは
ない、戦士の証としてそこに存在している。
その肢体を金の妹エリヤと違う、姉ナリアの産毛が、銀の輝きをぼうっと灯して裸体を
やさしく包み込んでいるのだった。
rain-16
「ナリア、すまなかった」
フォルケンがナリアの潤う秘所に唇を寄せる。
「フォルケンさまが、謝ることなんて……ご、ございません……ああっ……」
エリヤは姉の顫える背から離れて、遠くの場所からふたりの姿を見守っている。
「あっ……ああ……ひっ……!」
フォルケンの両手が女としての快美に慄く腰を挟む。そして機械の手の爪が
ナリアの素肌へと喰い込んだ。
「すまぬ、ナリア……力が入ってしまった……」
見上げるフォルケンの唇が自分の愛液で濡れ光るのをナリアは見てしまった。
自然と両手でフォルケンの顔を撫でていた。戦闘服のグローブ越しでない素の手
で愛しい人の顔を撫でている、恐れ多いことと知りながらも気持ちが昂ぶって
どうしょうもなかった。
「す、好きにしてくださいまし……わたしは引き裂かれて……あっ、申し訳ございません……」
引こうとするナリアの褐色の手を生身のフォルケンの手が引きとめ、頬に擦る。
「もっと撫でておくれ、ナリアのやさしい手で」
そして、快美にひくついているナリアの秘所へと顔を埋めて、機械の手で尻朶を掴んで
ぐっと引き寄せた。ナリアの引き締まった尻肉に針の刺戟が走る。
「あああ……う、嬉しゅうございます……フォルケン様……」
ナリアは離し掛けていた左手をフォルケンの左の頬に戻して愛撫する。あえて自分を
引き寄せようと尻に立てた機械の爪の味が甘く躰に拡がっていく。ナリアのヴァギナは
発情して膨らみ切って、フォルケンのペニスを欲して妖しく蠢いた。
rain-17
ナリアのひくつく秘孔にフォルケン舌先がぬるっと侵入した。ナリアの肩に掛かる
銀の髪が官能にざわっとなる。
「ああうっ……フォ、フォルケンさまああああああッ!」
頭が仰け反り、胸を張るカタチとなった。両手はフォルケンの熱い舌を奥に導こうとして
しとどに濡れる秘所に力強く押し付けてしまう。フォルケンはナリアに抗うことなく顔を
押し付ける。蒼い瞳に歓喜の涙が溢れていた。
「ナ、ナリアお姉さま……」
膝を抱えて、姉の戦士でない女としての姿を見まいとして顔を埋めていた。姉のフォルケン
によって引き出される女の熱い吐息、喘ぎに呻きにエリヤの膝や腰が顫えている。
膝に埋めた顔を目だけをふたりに向けた。目元がカッと熱くなるのが分かる。
エリヤは不思議と安らいだ気持ちに浸っていた。いままで、自分の盾として母となって生きて
くれた姉・ナリアがフォルケン様に愛されて戦士の仮面を剥がされて、自らも脱ぎ捨て
女として生きていることが嬉しかった。
「あっ……」
恋の黄金律作戦の裂かれたままの白い胴着の下、何も覆われていない秘芯が熱を
帯びてくるのが感じられた。ツーッと女の蜜が溢れてくる。エリヤは膝を抱えていた右手を
そっと秘所へと持っていくと、髪の毛と同じ金糸の茂りがしっとりと濡れていた。
「あ、熱い……」
エリヤは右手を自分の目の前へと持ってこさせ、女の蜜べっとりと濡れ輝く指を
じっと見つめた。そして揃えた人差し指と中指をゆっくりと拡げて見る。
蜜が糸を引いて切れた、ぬちゃっと蜜の音が聞こえたような気がした。
(わたしはなんという女だ……ナリア姉さんを見て発情するだなんて……けものだ……)
エリヤは膝に顔を埋めて羞恥に咽び泣く。
rain-18
「さあ、ナリア」
フォルケンはすっと立つとナリアをベッドへと促す。
「待ってください、フォルケン様……お顔を……」
ナリアは両手をフォルケンの肩に添え、爪先立ちになると、自分の分泌物に濡れる
唇を綺麗に舐め取った。フォルケンはナリアのいじらしさに極まって頭を抱き寄せる。
「あっ……フォルケン……さま……」
ナリアの右頬とフォルケンの左頬が擦れ合う。そのまま二人はベッドへと崩れた。
ナリアをベッドに組み敷いて、フォルケンが怒張に手を添え、いざ挿入という段になった時
彼女は背を向けてしまった。
「どうした、ナリア……?」
「も、申し訳ございません……は、羞ずかしいのです……」
獣としての主人への絶対の服従としての下腹を見せる行為と、極限まで鍛えられた
肉体を見られて女として嫌われることの不安がナリアのなかで鬩ぐ。フォルケンは
ナリアの乙女心を見透かした。強いることなく、ナリアを追って覆いかぶさる。
フォルケンの怒張がナリアの引き締まった臀部のクラックに乗る。
「あううっ……フォルケンさまが熱い……」
ナリアの頭が大きく仰け反ると、フォルケンの生身の手が細い顎を捉えて伸びきった
咽喉へと滑る。ナリアは四つん這いの獣のカタチをとって肩をベッドへと沈める。
そして、両手は機械の右手へとしがみついていった。
「フォ、フォルケン様……わたしにも……エリヤと同じ傷を乳房に印してくださいまし……!」
ナリアはフォルケンに女となった顔を捻じると哀訴した。
rain-19
フォルケンは腰を引くと、ナリアの掲げられた女の園へとやさしく突き入れた。
幸運強化兵という触媒があったにせよ、ナリア自身の手によって極限までに鍛えられた
肉体に、肉襞の締め付けは痛いほどに熱く絡んでくる。
ゆっくりではあったが、腰の回転が狭穴に捻じ込むように挿入されてくる。ナリアの
膣内は引き摺りこねくり廻されていく。ナリアも快美の絶対者にひれ伏して腰を廻して
いった。
「あああ……フォルケン様が奥まで来てる……」
亀頭をナリアの子宮口に擦り付けると一気に引いた。
「うあああああっ!」
ペニスに熱く絡みつく肉襞が引き剥がされていく。亀頭は秘孔の入り口近くまで下がり
小刻みに浅く律動していたかと思うと、また一気に子宮口を叩くのだった。
「ひっ、ひぃーっ……あっ、ああっ……ああ……」
フォルケンの生身の手が肉の結合へと伸びて、膨らみきったクリトリスを愛撫する。
悦楽の波に呑まれまいとして、機械の右手にしがみつき濡れる頬も擦り付けている
ナリアだった。
エリヤの耳に女が男に屈服する声音が響いて来る。ベッドが軋む音も心をまどわせる。
涙に潤う赫い瞳をあげて、ふたりの肉の絡み合いをただ見ていた。座った場所は彼女
の流した愛液で濡れて……。
「ああ……あううううううッ……!」
ナリアの紫の唇が大きく開いて、白く鋭い犬歯までも覗かせる。フォルケンはナリアの
腰をぐっと引き寄せると躰を起こして胡坐にナリアの腰を落とさせた。ペニスが咽喉を
突き破るかのような感覚が彼女の躰を襲う。
rain-20
律動は小さくなったが、ヴァギナへの挿入感は深まった。ナリアはフォルケンのペニス
を貪ろうと尻を回して膣壁に執拗に擦り付けていた。
その一体感は深く、弓なりに躰が反って口から叫びがあがるまでになった。そして、
フォルケンの左手がナリアの二の腕を掴んで、機械の右手ががっしりと乳房を握った。
「うわああああああああああああッ!」
口が極限にまで開き、眉間にも鼻にも皺が寄るまでに叫びがあがり、白く尖った犬歯
が剥き出しになる。烈しい膣の収縮が射精を促して、ナリアはフォルケンの熱い精を子宮に
浴びたのだった。躰が前に突っ伏しそうにはなったが、フォルケンの手がナリアをしっかりと
支えている。ただ頭だけが力なくがっくりとうな垂れた。
荒く息継ぎをしているとナリアの耳に妹の咽び泣く声が聞えて来た。うな垂れた汗だくの
顔をゆっくりとあげると、膝を抱え小さくなっているエリヤがいる。
「フォルケン様……エリヤが、妹が泣いています……」
「ううっ……!」
首に両腕を巻かれて、躰を起こされ挿入感がまた深くなった。
「ナリア、エリヤを呼んでおあげ……」
「は、はい……ありが……とうございます……エリヤ……エリヤ、此処へおいでなさい……」
エリヤは姉の声に気づいて、もう一度顔をあげる。淋しさに堪えられなく、猫のように
四つん這いで二人に近づいていく。潤んでいた赫い瞳には、自分と同じ傷を負った
姉の乳房が映っていた。血の滴りが乳房に赫い華を咲かせている。エリヤはベッドに
あがると、ナリアとフォルケンの恥毛の絡む肉の結合へと舌を妖しく這わしていった。
♥
?
rain-21
エリヤが、肉の交わりに近づいて行くと、柔肉は女の蜜で溢れかえり、ナリアの総身に
痙攣が走って、ペニスをきゅっと締め付ける。妹エリヤの顔がセックスに徐々に近づく
昂ぶに極まってのことだった。
いつもは清楚に息づくはずの女の飾り毛が、男をいっぱいに頬張る唾液によって、
ぐしょぐしょに濡れて姉の喘ぐ下腹にべっとりとへばりつく様は衝撃以外のなにもの
でもなかった……初めて見ることだったから。
自分のセックスでさえもまじまじと見ることなどなかった。女を捨てて生きて来たからだ。
しかし自分は姉の男を咥え込んでいる姿態を食い入る様に眺めている。ナリアの銀の
恥毛が濡れて輝き、エリヤのルビィの瞳を更に赧く染めあげていった。
今だフォルケンの怒張を頬張りしゃぶりつくそうとするヴァギナからは、放たれた
白い子種がナリアの白い粘液と交じり合って、とろりっと下りてくる。
もちろんそんな眺めもエリヤは見たことがない。その目に入る光景もさることながら、
放つ性臭に彼女の獣性を目覚めさせて、獣として完全に発情させてしまっていた。
獣人としての哀しき性……否、むしろこの場合、女として羞を捨てきれないことより
幸せなのかもしれない。
けれどもエリヤのなかには女としての羞恥は確かに存在する。姉・ナリアと主人で
愛しき人・フォルケンが愛し合う間に入って、恋の黄金律作戦の駒としてはなく、
女としての愛を単純に欲して蕩け合いたいだけだった。獣と女が微妙な匙加減を
与えていたのだった。
潤んだエリヤの瞳が瞑られ、赫く塗られた唇が愛の残滓を啜り褐色の肌の咽喉を
鳴らさせる。暫らくしてエリヤは瞳を開く……彼女によって愛の残滓は取り除かれて
はっきりと晒された肉棒を頬張る姉・ナリアのヴァギナの姿態が目に焼きく。
rain-22
長い舌を小刻みにナリアを責め貫いている先刻は自分の膣内に納まっていた
肉棒にやさしくねっとりと這わしていった。エリヤの伏せられた長い睫毛がふるふると
官能に喘いで顫えている。ゆっくりと愛でてから、あがると今度は姉・ナリアの血をいっぱい
に吸って腫れあがっている紅玉を感謝を込めて含もうとするも捉えることができない。
ナリアはペニスが与える快美をなるだけ取り込むべく、腰を回して膣壁に擦り付けて
いたから……。やっとのことでエリヤの赫い唇がはち切れんばかりの姉・ナリアの
核(さね)を挟んだ。
「はあ、はあ、はあ、はあうううううううううううーっ……!」
「ナ、ナリア……お前の美しい顔を見せてくれないか……」
幸運強化兵としての施された戦化粧で、ひときわきつく毒々しく彩られている。
女として男を誘って愛される為のものでないことぐらいナリアもフォルケンも充分
承知している。
「はっ、はっ……はうっ……こ、このような……ああっ……お顔を晒すのは……
どうか……お、お許しを……はっ、はうううっ……」
ナリアの大きな耳が羞恥にぴくぴくと可愛らしく顫える。フォルケンによって戦士の
仮面をやさしく剥がされ、自らも捨て去ったことがかえって戦士の自尊心を呼び起こす。
「もっと見たいのだ、お前のすべてを……頼む……」
ナリアは生娘のように左右に顔を振る。埒がないと細い顎を捉えると無理に自分の
方へと向けさせる。唇が合わさってフォルケンの舌が入り込んできた。舌は戦士の
牙をなぞってナリアをじらす。彼女は私を奪ってとばかりに強引に舌を絡めてナリアの
硬さがまたひとつ蕩けた。
(エリヤのおかげ……フォルケン様のおかげで女になれる……)
ナリアを濡らす雫は人を憎んでの悔し涙ではなく悦びに捧げられたもの。
rain-23
エリヤはクリトリスから唇を離すと情交で波打つ下腹を這い上がり、流れ落ちた赫い血
を舐めると、その根源へと向かう。
姉・ナリアの戦闘服の拘束の取れた豊かな褐色の肌の乳房、今までの生き様を示す
かのようにツンと上品に上を向いて佇んでいる。快楽に喘いでいるその乳房、自分と
同じく脂肪を削ぎ落とされ女としてのやわらかさを奪われた極限にまで鍛えられたもの。
そこには痛々しい自分と同じ爪の刻印が印されている。姉・ナリアが望んだことなのだ。
エリヤはそれを美しいと思っている。女としての美は極められなくとも、フォルケンの為
だけにあるのなら、それは美しいと思った。なによりもフォルケンが戦士としての躰を
美しいと誉め称え、愛してくれたことが幸せだ。
いつまでも姉妹でこうして寄り添って生きたい、命尽きるまで……儚き夢と知りつつもエリヤ
はそう願わずにはいられない。
エリヤはまだ血が滲み出るナリアの乳房の爪の痕を舌で舐めてやさしく癒す。
「うううっ……うああああ……」
フォルケンの唇を振りほどいて、傷を癒される甘い疼きに、突かれ続けるナリアの嬌声が
あがる。
(私たちはこの刻印で女にもなれる……そしてまた戦士としてフォルケン様の為に生きて
行くことができる!)
銀の姉・ナリアと金の妹・エリヤの等しい叫びだった。ナリアは躰を快美感に顫わす。
フォルケンのペニスが膣内で膨らむのが分かった。自分が後から愛してくれることを
望んだとはいえ、しがみついて逝きたい。後に手を廻そうとするがうまくいかないまま
頭のなかが真っ白になっていく。最後の記憶はエリヤが尖り切った乳首を唇に含んだ
処で途切れてしまう。ナリアは性的絶頂感を得て失神した。
rain-24
「うっ……」
傷ついた乳房に痛みが走ってナリアは烈しかった情交の倦怠から醒まされる。フォルケンが
いたわって舌で傷口を舐めていた。もう一方の膨らみをエリヤが。
「すまぬ、わたしの所為だ」
乳房から顔をあげてナリアの蒼い瞳をみつめる。
「わたしが欲したのです、フォルケン様……それに、先ほどはエリアがしたこと……」
エリアも乳房の愛撫から顔をあげ、フォルケンを見て言う。
「さようでございます、ナリア姉様に嫉妬して歯を立ててしまったのです……
申し訳ありません……お姉様も……」
戦化粧の紫のルージュに赫のルージュが重なる。
「痛っ……」
ナリアの唇をエリヤが噛む。フォルケンが舐めていた乳房がぴくんと揺れた。
ナリアの瞳がひらいて咽喉が低く唸った。許してとばかりにナリアの口腔に妹・エリヤ
の熱い舌が下りてくる。フォルケンは姉妹の睦まじい口吻をチラッと横目で見ながら
唇で啄ばむ。
エリヤも乳房への責めは中断しない、手の平で張り詰めているナリアの乳首を
転がしていて、今は親指と人差し指で捏ね繰り回していた。
「んんっ……んあああっ……」
昂まりがふたたび起り、切なげに脾腹に肋骨が浮き出てくるナリア。エリヤはようやく
唇を解放した。
「あの時、テイリングの前に立ちふさがった猫、可愛かったね」
(弟君もわたしたちのような者を愛してくれているのね、お姉さま……)
エリヤの瞳が嬉しそうに微笑んでいる。悦楽に浸るナリアの想いもまたおなじ。
rain-25
「おじゃまするよ」
「ド、ドライデン……!」
「お嬢ちゃんが綺麗なおべべを着ているのに悪いな」
「い、いえ……そんな、どうぞ……」
ミラーナの許しを得るまでもなく、ずけずけと入って彼女へと近づく。
「普段着のはつらつとしたあんたが好きだな……いや、憂いを纏ったお姫様も
ぐっとくるねえ」
「お、おたわむれを……」
自分のドライデンへの迷いを指摘されたようで、羞ずかしくなってミラーナは俯いてしまう。
すかさずミラーナの顎を受けて、顔をあげさせるとキスをした。一瞬だったが瞳を見開いたものの
静かに瞼を閉じる。ドライデンのやわらかい唇の感触がミラーナの唇へと伝わってくる。
(殿方の唇がこんなにも柔らかいなんて……)
軽くミラーナの唇に擦り付ける様にするとそれ以上は求めずに唇を離した。
「あっ……」
「今の嬢ちゃんには、ちょっと強引な方が良かったかな?」
「そんなことは……あっ……わ、わたしったら……!」
我に返って真っ赤になるミラーナだった。
「それじゃあな、続きは婚礼の儀が済んでからっていうことで」
ドライデンはくるっと背を向けると、右手を掲げると手のひらを軽く振って消えていった。
(心配して来てくれたんだ……)
まだ目元が朱に染まる顔をあげてドライデンの後姿を見送ってから、雨上がりの晴れ
上がった青い空に目を戻して、ふふっと微笑む。
「た、たいへんでゲスよ!王様が……」
モグラ男が慌てて駆け込んできた。
「バァンがどうしたの!」
ミラーナはドレスのまま颯爽と立ち上がると部屋を出て行った。
面白いっす。なんかいい感じです。
男女のエロ話以外の要素も存分に取り入れているようなので、
欲を言えば、一度俯瞰した視点で状況を纏めるシーンがあると
分かりやすいとは思いましたが。
続きを期待しています。
感想ありがとうございます。
登場人物も多いし迷惑かけました。ひとみが戻ってくるまでを
一区切りと考えているのですが、ストーリーラインにエロ乗っけている
だけでたいした山場なくてゴメンです。でも、ナリアとエリヤが書けて
自己満足してます。w
まだ、落ちてなかったら本命だったマレーネを書けたらなあと・・・。
rain-26
惑星ガイアの運命の鍵を握っていたのは、ドルンカークという老人だった。竜の仔と月の少女の出会い
は弾かれた時をもとに修正させるものでしかない。
それを阻止する為にザイバッハは、ふたりの写し身を得て幻術を仕掛けたのだった。フォルケンと
エリヤは恋人を装い神崎ひとみとアレン・シェザールを雨の王都・アストリアの橋の袂で引き合わせる
ことに成功する。
だが運命改変装置の暴走によりフォルケンとエリヤは烈しく交わり、現身のひとみとアレンを急接近
させ、濡れる王都の橋の上で慰め合うのだった。
そしてバアン・ファーネル、ザイバッハ帝国に滅ぼされたファーネリア国王こと、竜の仔は月の少女
が雨のなかでアレンと愛し合う姿に自分を見失いつつあった。バアンを心配して雨のなか彼を追ってきた
メルルはひとみのことを想ってと主人に哀訴するのだったが、躰の変調に崩れてしまう。
バアンはメルルを助ける為にひとみに背を向け、還る場所のないひとみはアレンのなかにかりそめの
安らぎを求めたのだった。かくして一時は暴走で失敗と思われた恋の黄金律作戦によって惑星ガイア
の運命はドルンカークが望んだものへと改変・修正されつつあった。
雨はあがり、王都・アストリアに雨雲の切れ々から陽の光が射していた。ほんとうに運命は改変
されてしまったのだろうか。
雨に打たれながらアレンに烈しく突きあげられ、ひとみのなかに去来するものがあった。
「ひとみ……あなたの好きなひとを信じなさい……」
お、おばあちゃん……わ、わたしの所為なの……ガイアの人たちが苦しんでいるのは……?
「想いのちからを使ってはなりません……あなたのは不安が源なのです。あなたの心にひそむ不安
が蠱惑を現世に呼び込んでいるのです」
バアンのおかあさん……わたしはどうしたらいいんですか!教えてください、ヴァリエさん!
答えてください!わたしにどうしろというのですか……ただ家に還りたいだけなのに……。
「ひとみ、後悔するなよな」
天野先輩!天野先輩!……ア、アレンさん……の唇がやさしい……バアン……もっとわたしを
しっかりと掴まえていて……バアン!聞えないの!これがわたしたちの運命なの!バアン、
答えてよおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!
rain-27
「ミラーナ!ミラーナ!ミラーナはいないかぁッ!」
アストリアの城の回廊、ずぶ濡れのままの格好で大声をあげて、バアンは医術の心得のある
ミラーナを探していた。
「モグラッ!ミラーナを知らないか!」
バアンはモグラの胸倉を掴んで詰問する。
「見つけて来ましたから、す、すぐに来るでゲスよ……」
「騒がしいわね。あなたも、王様ならもっと毅然としてなさいよ」
「俺には還るべき国はない……そ、それより、メルルが大変なんだ!早く診てくれ、頼む!」
「だから、大声ださないでってば!」
「そんなこと言ってないで、早く診てくれ!メルルはひとみの部屋にいる!」
「わ、わかったわよ」
ドレス姿のミラーナとずぶ濡れのバアン、そしてモグラ男がひとみの部屋へと向う。
メルルはひとみが使っているベッドに、顔を赧くして躰を胎児のようにして小刻みに顫えている。
ミラーナが二の腕までの手袋を外して、メルルの額にそっと手をやる。
「熱が少しあるわね。この娘のご主人さまなら、濡れた躰ぐらい拭いてあげなさいよね」
ミラーナにはバアンは初心だから羞ずかしくて出来ないことぐらい分かっていた。しかし、
これではあんまりだ、ひとこと言わずにはおれなかった。
「モグラ、タオル」
「へい、お姫様」
「もう、だいじょうぶだからね」
ミラーナはメルルの濡れた顔をやさしく拭いてやる。
「う、ううん……」
「だ、だいじょうぶなのか、メルルは!」
一向にメルルの様態を説明してくれないミラーナに業を煮やして、また声を張りあげてしまう。
いい感じです。
rain-28
「モグラ!こいつを外に出して!」
「わかりやしたでゲスよ。王様、ごめんなさいよ」
「こ、こら!離せッ!離さないか!」
バアンを部屋から引き摺りだそうとしていたとき。
「まって!モグラ!」
「なんでゲしょ、姫様?」
ベッドで躰を縮込ませて顫えているメルルから、騒いでいるバアンを見て、物凄い形相で
彼に近寄ってくる。
「こらっ!いいかげん、離せッ!モグラッ!」
「そのままでいいわよ!」
「な、なに怒ってるんだ……」
躰をがんじがらめにされているバアンの頬を思いっきり抓って言う。
「何を怒っているもないもんだわ!あなた、あの娘に何したのよ!」
「いっ、痛いだろ!離せッ!俺は何もしてないッ!」
「何もしてないで、なんでメルルが発情するのよ!」
ミラーナは怒りに任せてぎゅっと抓った。バアンの顔が赧く染まっていく。
「王様は溜まってたんで、ゲスよ。そうでやんすよね?」
「あんたまで、調子に乗るんじゃないの!」
「お、俺はメルルに……何もしちゃいない……」
バアンはミラーナにそれだけ言うと俯いて大人しくなってしまった。橋の上でアレンとひとみを
見たなどと口が裂けてもミラーナに言えるはずがない。
「ふーん。じゃあ、責任とんなさいよね」
ミラーナが思わせぶりにニャリと悪戯っぽく微笑む。
「せ、責任だと!」
バアンの声が裏返った。
rain-29
「そっ、あなたの所為でああなっちゃったんだから、責任取らなくちゃ男じゃないでしょ?」
「だから、俺は何もしてないと、さっきからいってるだろ!」
「さっきから声が裏返っているわよ、図星なんでしょ。だったら訳を言いなさいよ、ほら」
ミラーナの方が上手だった。男女の機微に疎いバアンはミラーナに掛かれば、赤子の
手を捻るも同然だ。
ミラーナはアレンとドライデンとの間で揺れる想いの息抜きとばかりに、初心なバアンを
からかって楽しんでいた。楽しまれている方は堪ったもんではない。
「やっぱり、喋れないじゃない」
何か訳ありのことぐらい察しがついていたが、ミラーナにはどうでもよくなっていた。
「メルルといっしょに寝ることね」
「ね、寝るだと!」
「そっ、いっしょに寝てあげるのよ」
「よかったでゲスね、王様」
「う、うるさい!おまえは黙ってろ!」
「どう?寝るの、寝ないの?」
さすがにからかわれているバアンの姿を見て、可哀相になって本当のことを切り出す。
「別にメルルを手篭めにしろとは言ってないでしょ。裸になって冷えた躰を温めてあげてと
言っているのよ」
「わかった……おまえ、さっきから俺をからかって楽しんでたろ」
「えっ?なわけないでしょ……ほら、モグラ、行くわよ!」
(勘がいいんだか、鈍感なんだか……)
バアンの押し殺したバリトンに、ミラーナは旗色が悪くなったと感じてさっさと部屋を出て行く。
「ま、まってくださいよ!姫様!王様、これを噛み砕いて口移しに嬢ちゃんに呑まして
やんなさいな。少しは治まるでゲスよ」
「あ、ありがとう……モグラ」
「それじゃ、王様。くれぐれも、ご自愛くださいね」
バアンに丸薬を幾つか渡してから、モグラも部屋を出て行った。
rain-30
モグラに貰った丸薬を口に投げて咀嚼してポットの水を含む。バアンはメルルの熱にうなされ
ている顔に近づいて、彼女の元気でいつも小生意気なことばかり言ってる唇を見つめる。
(メルルはいつも俺を心配してくれた。金と銀のガイメレフの襲撃の時も躰を張って……
なのに、すまない……)
いつもは元気溌剌の唇は、いまは熱にうなされて紫色に変って顫えている。バアンが
メルルの唇に口移しに薬を呑まそうとした時だった。
「バアンさま、ひとみを助けてあげて……バアンさま、ひとみを……」
メルルの可愛らしい唇にバアンはくちづけしてやると、咽喉をこくんと鳴らして薬を無意識
に嚥下した。バアンはずぶ濡れの赤いシャツを脱ぐと、顫えているメルルに添い寝する。
背中から躰を丸くしているメルルを抱きしめた。
「いつも心配してくれてありがとう、メルル……」
やさしく囁く感謝の気持ちが届いたのか、メルルの大きな耳がぴくぴくと動く。
「バアンさま……?バアンさまなのですか?」
メルルは背中のバアンを振り向こうとしていた。
「メルルは雨に打たれて風邪を引いたんだ……寒くないか?」
「ちょっとだけです。でも、バアンさまのお躰が温かいです……」
瞳を見たものの結局は、羞ずかしくて顔を元に戻してしまう。メルルはバアンの胸元で
組まれている手にそっと触れてみる。
「メルル、こっちを向け。寒いだろ?」
「い、いいです……バアンさま……メルルはこのままで……」
「ほら、こっちを向けって」
rain-31
「きゃっ!バ、バアンさま……羞ずかしいです……」
「だったら、もっと俺にしがみつけばいいだろ……」
そう言ってメルルの顫える躰をぎゅっと抱き寄せる。
「まだ寒いのか、メルル……?」
メルルはバアンのたくましい肩に顎をのせて、瞼を閉じて涙を流していた。
「ち、違います……嬉しいんです……メルルにでなく、ひとみにしてあげてください……バアンさま……」
「ひとみのことは言うなッ!あれをメルルも見ただろッ!」
バアンがメルルを低い声で恫喝した。
「ご、ごめんなさい、バアンさま……でも、ひとみはバアンさまを待ってます……きっとです……」
「いいんだ、メルル。もう、寝ろ……」
腕を折りたたんで、胸に顔を埋めているメルルの髪をやさしくバアンは撫でている。
「バアンさま……」
メルルの大きな耳がぴくぴくっと回った。次の瞬間、メルルはバアンに抱かれていた胸を飛び出して
駆けていた。
「メルルどうしたんだッ!」
バアンもベッドを跳ね起きて、メルルを追いかける。
「まってぇ!ひとみぃッ!まってぇッ!」
廊下を逃げて行く、ひとみの後ろ姿を四つ脚で病をおしながら転びながらも追いついていった。
「ひとみぃッ!き、聞いて!わたしとバアンさまは何でもないの!だから逃げたりしないでッ!」
ずぶ濡れのスカートにメルルはしがみついている。
「な、何言ってるのよ!あんた裸じゃないのッ!離してよ!離してったらぁッ!」
「ひ、ひとみ……」
バアンは上半身は裸のままだった。
「離してよ!離してってったら!け、けだものッ!離してよ!」
バアンの平手がひとみの頬を捉えた。ひとみの左頬がかあっと熱くなっていく。
「ふ、ふたりして、わたしを馬鹿にしてッ!」
メルルの掴んでいた手を振り解いて駆けて行く。
「だから、違うって言ってるじゃないのッ!どうしてわかんないのよッ!」
sage
s
Misty1
星が夜空に瞬いて、とても静かでやさしい気分にさせる夜。戦乱の中に身を置いているとは
思えない静かな夜だった。
それはミラーナがかつて姉・マレーネが住まっていた後宮を訪れていた所為なのかも
しれない。建物からは灯かりが外に洩れてきていて、その空間がまだ生きているような気を
させ、ミラーナの足をなつかしき此処に運ばせていた。
その建物はアストリア王国のアストン王の第一王女・マレーネが使っていたものを
フレイド公国に輿入れの際、移築させたもので、祖国を遠く離れた王妃・マレーネへの
フレイド公王の心遣いだった。
ミラーナが開かれていた扉をくぐると、フレイド公王が暖炉の前に佇んでいて、
マレーネの面影を偲ぶように部屋を眺めている。そのすぐ上にはドレスに艶やかな
赫い胴衣を着付けたアストリア時代のマレーネの大きな肖像画が掲げられていた。
「なにもかもが昔のままなのですね。まるでお姉さまが生きていらっしゃるみたい…
…出すぎた物言い、お許し下さい」
「構わん。ここを自由にしてもらってもよいぞ」
フレイド公王は肖像画のマレーネを見てから後宮を後にした。ミラーナは公王の
去った気疲れからか調度品の鏡台に腰掛けていた。
ミラーナは頬杖を付いて、溜息を付くと鏡に映った自分の姿を眺める。自分が日に日に
姉に近づいていることがそれとはなしにわかる。なれば、生き方もそうありたいと思わずに
いられない。
「お姉さまは愛されていた……愛に殉じられたのですね。私もそう肖りたい」
天空の騎士の剣を捧げる隊列の中を婚礼の衣装を纏ったマレーネが多くの侍女たちを
連れて厳かに浮き舟に入場していく様子を昨日のことのように思い出す。
「幸せか……」
鏡台に仕組まれているオルゴールの奏でている綺麗な曲がミラーナを感傷に浸らせていた。
Misty2
「お姉さま、とてもお綺麗……か」
ミラーナは鏡に映った姿を見ながら深く溜息をついていた。
(なにも不安のなかったといっていい子供時代の自分の言葉をお姉さまは、どう受け止めて
いらっしゃってらしたのかしら)
オルゴールの兵隊の頭をちょんとミラーナは小突いた。すると、別の箇所からもうひとつの
曲が演奏され、からくりの台座がゆっくりと回ると、一冊の本が現れた。
ミラーナは隠し扉から現れた本を台座から取って手にする。
「お姉さまの日記……」
ミラーナは一度、日記を戻して納めようとしたが再度、手にして躊躇いがちにマレーネの
日記を開いた。
私は何のために生きているのだろう。侍女たちは恋を囀っているというのに、私には
恋することすら許されない。国の明日の為、民の命の為……私はもう嫌だ。ただひとりの
女として真の愛に殉じたい。女として生まれたのなら、愛しい人に包まれて、その御方の
子を身籠ると思うことが罪なのでしょうか。
一昨日、伯父様に武術大会に誘われました。私の塞ぎがちな気持ちを察しての
ことだったと思いますが、私は戦はキライ……・。
だのに、騎士に恋をした……。彼は天才騎士と誉れも高きアレン・シェザール。舞うような可憐
な剣技に、迷いのない澄んだ瞳。私は一目で恋に堕ちた。
愚かだとか浅ましいと言われようが構わなかった。私は初めてお父様に娘らしいおねだりをした。
アレン・シェザールを天空の騎士団のひとりとして名を連ねて欲しいと。
彼の才能をもってすれば、なんら問題は無いと思っていたが若輩の身が登用を枷としていたらしい。
私は何度も何度も、お父様にお願いした。そして私の想い人は天空の騎士に任命されて、やっと
王宮へとやって来た……私は慎みないおんな、でも愛に生きてみたい。生を実感したかっただけ。
Misty3
天空の騎士・アレン・シェザール、私は彼の名を何度も呼んでいた。その君の名を口に
するだけで躰の奥が熱くなっていた。
お父様は私を変ったとおっしゃってくれた。以前よりも華やいで良き方向にとのこと。
けれど私はアレンにどうすれば告白できるのかとか、本当に彼は私のことを好いて
くれるのだろうかと不安でしかたがなかった。これも夢の中のことなのかしら。
夢ならば醒めないでほしい。夢ならずっとこのまま……でも苦しむのはもう嫌。
私はドレスをそっと捲くって、秘所に触れてみる。なんて浅ましく卑しいのだろうと
思ってはいても躰の奥の疼きは鎮まることはない。私の膣内は熱く雫を溢れ返らせている。
アレンの指であることを願いつつ、私は赫く膨れ上がった紅玉をそっと撫でてみた。
『あ……アレン……やさしくして……そう、たまらないわ…… 』
想いが募り、私は手淫に耽ることを覚えてしまった。彼の逞しいペニスを想像しては、
女の尖りを愛撫しては、いつしか秘孔に指を挿入することも覚えては浅く抽送してみる。
はやく彼のペニスで私の乙女のベールを押し拡げて破って貰いたいとガイア神に
祈りながら躰を椅子の背に委ねていく。
私の寝所に忍び込んでドレスを裂いて、アレンに荒々しく突き立てて欲しい。宮殿の
虚無な日々を彼に裂いてもらいたい。
『私の秘所のいやらしい音が聞こえて?こんなにもあなたを愛して待っているのよ。
早く私の想いに気づいて頂戴、アレン……ううっ、ア、アレン……あ、ああッ!』
こんなにも淫蕩になってしまった私をアレンは愛してくれるのだろうか。女としての慎みを
捨ててしまったような私を。
でも、もし彼が私の破廉恥な欲求までも包んでくれるとしたら、どんなに幸せだろうか。
明日こそは、アレンの前に立って愛を告白しよう。王家の女としてではなく、ただひとりの
女として彼を愛し愛されていたいから。
Misty4
『わたくしをあなたのものにしてください』
そう言えたとしたらどんなに気が楽だろうか。私はすべてを捨てる覚悟で彼を、今は
天空の騎士となったアレン・シェザールをパラスの百花庭園へと呼びつけた……。
王家の威厳、そして女としてのプライドも捨てて彼に告白の刻を静かにひとり待つ。
私はどんな顔をして彼が来るのを待っていたのだろう。ひとり花々の匂うやさしさに包まれ
天上の藍を眺めながら、もう迷いなく、何故か涙が溢れそうにもなって。
「マレーネ姫、御用の向き、なんでござりましょうや」
アレンの慇懃な言葉にハッとして、マレーネは憂いを振り切り彼の方を振り向いた。華の
笑顔がアレンの心を捉えていた。妖精のような色香に彼の心は虜となってゆく。愛し合い、
睦見合い、与え合い、奪い合って……性愛へと溺れてゆく、マレーネは王家の禁忌の扉
を自ら開き、アレンはその愛の魔術の瞬間に立っている。
彼はマレーネが差し出した白いグローブをつけた手の甲に恭しく口吻をする。
「アレン、わたくしの前では固くならないで。傅かないで、御立ちになって」
「ご無理を言われませんよう、マレーネ姫。それに、そのような物言い、聞かれでもしたら
ご迷惑がかかります」
「誉れ高き天空の騎士さまにですか?」
「な、なにを申されますか……!」
「わたくしなら、一向に構いませんから。さあ、立って下さらない、アレン」
「お戯れを申されませんよう、お願いいたします」
「そんなつまらなきことをおっしゃらないで」
アレンはすっと立ち上がると踵を返す。
「わたくしめの御用向きがございませんのでしたら、これにて」
「待ってッ、アレン!このままで、このままでわたしの気持ちを聞いてくださらない!」
マレーネは踵を返したアレンの背中にしがみついていた。
hosyu
Mistyの感想をば。
ぐっじょぶ。物語を創りあげようという気迫には毎回感心
させられる。批判は沢山できるのかもしれないが、時々言葉の
艶を見せつけられる。
作者に聞きたいのですが、やはり批判的な意見も欲しいですか?
感想、ありがとうございます。
批判は欲しいです。こわい気もしますが、よろしくお願いします。
73 :
75:03/01/08 02:07 ID:6huJ9aZO
では、レインについての所感を述べます。二度ほど通読しただけでの
所感ですので、誤解もあるかもしれません。ご了承くださいませ。
レインはエロパロ板において、「抜かせる文章でなくては駄目だ」と
いう前提を良い意味で越えた作品だったと思っています。
性交シーンの、あまりの気迫のこもった展開がエロを越えていて、
「どこでヌけと」という疑問さえ忘れさせてくれました。
もちろん、これは私の嗜好の問題かもしれません。エロテキストでは
ないと思ったのは私だけかもしれないので、エロいかどうかは他者の
判断に任せます。
読んでいてしばしば疑問に思ったのは、この作品の方向性でした。
エンターテインメントを目指している構成ではなさそうだし、恋愛の
もつれからハッピーエンドを導き出す気も……なさそうだし、エロは
適宜入っているけどあれ? おや? といった感じで。
では文章が下手なのかというとそうではないし。
74 :
続き:03/01/08 02:15 ID:6huJ9aZO
物語はどう進んでいくのか? 彼女たちの恋愛のもつれはどうなる
のか? いまいち共感できていないのは、作品に一本の筋が見えない
からなのだろうな、と。
「ここが見せ場で、こうやって楽しませて、こうエンディングにつなげるんだ!」
そういった芯が見えないからこそ、(完結もしていませんしね)感想が
言いにくいのだなと。
ここまでくると自分の好み、感受性の問題なのでしょうが、バアンとか
には笑って欲しい、と思っているのですな。エスカフローネはエンター
テインメントだと思っているので、青春ものであったりしてほしいと心では
願っているのでしょう。
この作品に対して「良い面はある。あるが…」としか言えないのは、
そういうことを思うからです。
なお、この所感は再読すれば多少変更されるかもしれません。
自分の読解力に全面的に信頼を寄せられないのが悲しい。
ただ、現時点ではそんな事を思っています。
75 :
訂正71:03/01/08 02:31 ID:6huJ9aZO
75って……。ああ、多分自分が75さ!
えっへん。
関係ないですが、一度サルベージしたほうがいいでしょうか?
このスレ。最下層ですし
恥ずかしいです。こんな絵が描きたいという動機で始めてしまいましたから、
オリジンストーリーをなぞっているだけで明確なオチというものがありません。
前者ならナリアとエリヤの関係、後者ならマレーネの公王の何に振り向かせ
られたのかを探って見たかったわけですが、ドラマをこさえるというのでない
絵を描く方向に回ってしまったことが、不明瞭な印象を与えているのだと思っています。
ただ続けててもどうにかなるとはあまり思えませんので、もっと構成を考えて
次のものへ繋げたいと思う次第です。このままでいいかと。我儘で引っ張って、
本当に申し訳ないです。
「公王さま……わたくしを許してくれているのですね……もっと、もっといっしょに
生きていたかった……マレーネはあなたさまを愛してしまったから……」
フレイドのうえに載せられている儚い命が弱々しく小さくなっていった。
「わ、わたしは……なにもおまえを許してなどおらん……許しを請いたくば我のため
強く生きよ……な、なにもいらん、俺のために生きていてくれ……」
「フレイド……」
マレーネが最期の雫をこぼし、眠るように瞼をそっと閉じる。
三角関係のどろどろの挙句がテレビで語られているオチしかなく、
アレンジぐらいだものでインパクトに欠けると思いはたと止まっていました。
それとエスカの私見ですが、全篇これ映画的クライマックスの連続だったような気がします。
だのに映画になって、つまらなくなるなんて本末・・・。
中途半端で終えてしまい申し訳ありません。読んでくれて、ありがとうございました。
78 :
71:03/01/10 23:54 ID:T7wwIQdc
現金な奴だと思われるかもしれませんが、ミスティには
ちょっと期待しています。
もしよろしければ、このまま続けていただけたら幸いです。
我侭な読者ですみません。
♥
80 :
山崎渉:03/01/12 07:51 ID:8hPfyb/R
(^^)
こんなスレがあるとは知らなかった。
(;´Д`) ハァハァさせて頂きました。
個人的にはナリアエリヤが激しくツボった。
Misty5
「な、なにをなされますか、マレーネ姫!おやめください!」
マレーネの腕がアレンの躰に絡み付いていた。
「はしたない女と嗤って頂いても構いません。ですがアレン、わたくしの話しをどうか聞いて
ください!」
アレンの頬にマレーネの想いが熱い吐息となって掛かっていた。
「武術大会であなたを見たときから好きになってしまっていたのです。わたくしは恋に恋をして
いるのかもしれません、アレン。ですが……」
マレーネの絡みしがみつく腕にアレンの手がやさしく触れる。
「ならばもうおわかりでしょう。おやめくださりませ、マレーネ姫。王家の名に傷がつくことでしょう」
刹那、マレーネの腕がアレンを強く抱きしめる。そしてアレンに涙声で訴えていた。
「どうしてわかってくださらないのです。あなたに愛される為ならひとりの女にもなれます。
国を捨てることも出来ましょう!あなたが好きなの、アレン!アレン、愛してしまったのよ!」
アレンは全身全霊を持って賭ける姫に惹かれはじめ、また自身の身分の違いに苦渋の色をも
滲ませていた。その一線を飛び越えてきたのは女の方だった。
パレスの百花庭園に風が吹いて花びらが舞い、マレーネの輝かんばかりの艶やかな金髪も
ひらめいて流れた。マレーネのグローブの両の手がアレンの顔を捉えてその唇を甘く奪う。
アレンの唇にマレーネの儚いまでの柔らかな感触が伝わり、一瞬目を見開いて高貴な女の
瞼を閉じてなにもかもを捨てたその御身に、愛というものをもういちど信じてみたくなるのだった。
そしてアレンもゆっくりと瞼を閉じて口吻を、天上の藍の午後、パレス百花庭園の芳しき香りに
酔いながら魅惑の逢瀬へと溺れてゆく。
マレーネの薄桃色の唇が長い睫毛も微かに顫え、アレンはその不安を打ち消すように
マレーネ姫をただの愛しい女として強く求め、マレーネは女の悦びを前にして畏れるものは何も
無くなって生きようとしていた……初めて強く生きていた。
最下層age。sageるけど。
ほんとなつかしいな〜
アニメん中で一番好きだ。
映画は素直にTVシリーズに沿ったものにしてくれりゃーなぁ。
職人さんガンバレ
84 :
71:03/01/15 09:18 ID:ATROEJSq
まじ面白いです。まったり期待sage
Misty6
しかし、マレーネの心の片隅には、どこか物悲しいそれでいて心地いい旋律が流れていた。
アレンの手が赫い胴着越しに乳房をしだき始めたことで、いつしか忘れて彼に躰を開いていった。
アレンの顔を捉えていた両の手が赫い胴着の紐を自らほといてドレスから肩を晒しその豊満な
白き乳房までも彼の前に曝け出していた。その可憐で愛らしい頂は、硬くしこり楚々としていた
姫は淫らになろうとしている自分を御することが出来なくなっていた。ドレスの下は簡単な腰布
が巻かれているだけで、その心もとなさも今や彼女にとっては火に油の如く。
「アレン、ああ……アレン、ゆるして……たまらないの……どこまでもみだらになっていく自分が
ゆるせないのに……だのにあなたに許しを請うだなんて……嗚呼……ゆるして、ゆるして……」
マレーネの言葉はほとんど意味を成していなかったけれど、その可愛らしさがアレンを動かした。
「私もなのです。マレーネ姫、わたくしめをお許し下さい。あなたが、欲しくて堪りませぬ!」
アレンはそう言い放つと、マレーネの悦びに顫える白い乳房にむしゃぶりついていった。
「あっ、ああ……マ、マレーネと呼んでください!わたしは姫などではありません!ただ恋する
だけの淫らな女なのです……あっ、ああッ……はあッ!」
マレーネの腕を隠す白いグローブが直に彼に触れることの出来ないもどかしさからか、
乳房に抱きついているアレンの柔らかな金髪を掻き乱していた。
アレンの唇が乳房から首筋を這って耳元へと辿り着き、甘く耳朶に歯を立てる。徐々に秘奥から
欲望の滴りが溢れ出てくることがマレーネには歓喜となっていた。自分でアレンを想い慰めて
しとどに濡らしていたのとは訳が違う、確かな愛の証なのだから……。
乳房から肩に、マレーネの白く透き通るような儚き色をアレンの赫い唇がゆっくりと這い
上がってくる。マレーネは唇から熱い吐息を噴きこぼしながら、小刻みに高貴なその美貌を
振りアレンの目の前に細い首を晒していった。
「ひっ……」
「そ、そのようなこと申されないで下さりませ、マレーネ。あなたは清楚でいつもお綺麗で
いらっしゃる。お慕い申し上げております」
「は、羞ずかしい……ア、アレン……た、たまらないッ……たまらないの!」
いい感じです。まったりsage
Misty7
マレーネはこれほど自分が女を実感した瞬間はなかった。大胆さが王家の禁忌を破り去って
なにものにも代え難い自由を味わっていた。恋し焦がれることで娼婦にでもなったような罪悪感
にあれほど苛まれていたのに、今は天上を飛翔する思いに快感を追い求めようとしている。
「はあ、はあ……わ、わたくしを……突いてください……アレン、お願いいたします……」
アレンの蒼い瞳からは涙が溢れ、彼はマレーネの薔薇のように紅潮している頬に自分の頬を
擦り付けていた。
「よ、よろしいのですか……わたくしめが、姫様の御大事を頂いたりなどしても……」
アレンはマレーネの胸元や首筋から漂ってくる芳香を胸いっぱいに吸い酔うのだった。
「か、かまいません!わ、わたくしを愛してくれるのですね、アレン・シェザール!」
マレーネの普段なら心地よい女神の声が切羽詰って野太い力強い声に変化した。アレンの
ペニスはズボンの下で熱くマレーネの鞘を欲して滾っている。
アレンはマレーネの躰を百花庭園に植えられている樹へと導いて、彼女の背をもたれ掛け
させた。マレーネの曝け出された上半身に、風にそよぐ梢をぬって陽の煌きが、白く透き通った
素肌に妖しく降り注いでいる。
アレンがグローブを脱いでズボンを下ろして、腰布を解く。屹立したアレンのペニスにマレーネ
の視線が釘付けになる。マレーネの腰布の奥の秘所は娘を女に変える刻をいまかと濡れて
待っていた。
アレンの手がドレスのスカートに入り込んで、いとも簡単にいままで守ってきたものを彼の
前に晒して捧げよとしていた。彼はマレーネの白くむっちりとした太腿を抱きかかえると、切先
が還るべき場所、鞘へと一気に刺し貫いていた。
いつ人が来るかわからない緊張と熱情とが、ふたりを男と女から牡と牝に変えていた。
マレーネは苦痛に仰け反って頭を木にぶつけてもなお、くぐっと細く白い首を伸ばしていった。
「ひぃぃぃッ……ああ……い、いやぁ……あううッ……ア、アレン!」
「ひ、姫様……大丈夫ですか……」
マレーネの手がアレンの背に廻されてしっかりと抱きしめられた、それが答えだった。
凡庸なうえに、スローで申し訳ないです。
いや、職人さんの文章は凡庸とはちょっと違う気がしますね。
先ほども言いましたが、言葉に華があります。いい感じです。
これをしてスローというのなら、私が某板で書いている二次
創作のペースは……自己嫌悪。
頑張ってください。私もな。
92 :
山崎渉:03/01/17 07:37 ID:LBoDEE1T
(^^;
93 :
名無しさん@ピンキー:03/01/17 09:44 ID:m2OUbXRf
a
Misty8
ひしっと抱き返してくるマレーネの重みがアレンには嬉しかった。母をあれほど愛していたはずの
父が家族をも捨て流浪の旅に行き着いたことへの愛の疑念が嘘のように氷解していく。
「はああっ……はうっ……いやあ……ゆるして……こ、こないで……」
アレンの肩から覗かせているマレーネの顔は、薄桃色に刷いた唇がそっと悩ましく開かれていて
白い歯が見えて彼女の官能の波に揺れるさまを物語っていた。そして、背に廻された白い
グローブの腕が更にアレンをきつく抱きしめる。
アレンには躊躇っている時間などなかった。もちろんマレーネ姫が拒絶を示しているのでは
ないことは承知しているが、どのように扱ってよいものか迷いが生じていた。
「ああっ、いっ、痛いいいッ……!」
マレーネの乙女のベールはアレンの熱情の剣により裂かれて、その量感に一気に押し拡げられ
ていった。マレーネもその点は重々承知してはいたが、この性急だった愛の交合が二人になにを
もたらすかまでは、考えが及ばないでいた。
もっとやさしく、そっと愛して愛されたいという願いと、熱情にまかせての交合が二人をやさしく
愛の狂い咲きにのせていく……。
「んあっ……はああ……ああ……んんっ!」
マレーネはアレンの烈しいストロークを全身で受け止めようと、堪えて息を吐き躰のちからを弛緩
させようとするのだが、うまくいかないでいた。
「ひ、姫……おゆるしを……マ、マレーネ姫……嗚呼、マレーネ!マレーネ!」
「う、うれしいのです!アレン!アレン!アレン!」
アレンの白く美しい顔が騎士の仮面を外して素顔を曝け出しては仄かに紅潮させ、玉のような
汗が噴出しては滴り落ちていた。そしてマレーネは仰け反っていた性愛に揺さぶられて溺れるその
顔をアレンの逞しい肩に預けると、彼の頬にその高貴な美貌を迷子の仔猫がご主人にやっと巡り
会えたかのような仕草でくなくなと擦り付ける。
Misty9
「あううっ……はあっ、はあ、はあ……ああ……」
アレンの烈しい律動に、躰ごとマレーネは揺さぶられている。その清楚な唇は苦痛に開かれて
白く透き通る前歯を覗かせて喘いでいた。瞼はきつく閉じられ細く綺麗な眉は苦悶に吊り上がって
眉間に縦皺を深く刻んでいる。
マレーネのなかにアレンを想い自慰に耽溺していたはずの甘い快楽はなにもなかった。
あるとすれば愛の試練としての痛みでしかない。私はこのようなことを欲していたのかという思い
が明滅しては消えていった。マレーネの唇から洩れるのは、アレン・シェザールへの愛の言葉だけ。
「アレン!愛してます!あうっ……あ、ああ……ッ」
呪文のように何度もマレーネは口にして、己が気持ちを強めて嵐を遠ざけようとしていた。
アレンの手がマレーネの柔らかな双臀を強く揉みしだいてマレーネの躰を引き付けると彼は放出の時を
向かえた。マレーネには愛という名の永遠のはじまりだったのかもしれない。
右太腿を抱きかかえられ躰を支えていた左脚ももはや折れてしまっていて、アレンに全身を委ねて
マレーネはしがみついていた。ともすれば、支えている左脚もアレンの腰に廻して抱きつきたいという
衝動を嵐のなかでも燃やし隠し持っていた。
「ひぃーッ!」
マレーネのか細い悲鳴があがる。
「マ、マレーネ……!」
マレーネの崩れかかる躰を抱え静かに樹木の下に、樹皮に手をつきながら彼女を下ろしていった。
ドレスは乱れて肩は肌蹴、マレーネの白く透き通る素肌に豊満な乳房は晒され、金髪は汗で顔に貼り
付いて喘いでいた。アレンも腰を下ろして息を整えようとするが、マレーネのしどけない姿に鼓動は
治まることを知らない。
「マレーネ、マレーネ」
アレンは顔を傾けて荒い息を吐いている、マレーネの紅潮している頬にそっと手を添える。その感触を
もっと強く確かめようと、グローブをつけた手がアレンへと重なった。しかし、そんな他愛もない行為でさえ
マレーネには勇気がいった。言うまでもなく今まさにセックスをしましたという顔を愛しい人にじっと
見つめられているのだから。
Misty10
想いの叶ったマレーネではあったが、その鼓動もまた早鐘のように速まっていた。パレス
庭園の花々に包まれての木陰での営みという特異な状況もさることながら、王家のしがらみ
からの解放という意味合いにこそ悦びを感じていただけなのかもしれない。
アレンはマレーネの乱れたドレスを直して、自分もマレーネを切り裂いたペニスを身繕うと
すると、マレーネはそれを見て白いグローブを脱ぐ仕草をしたが、アレンは手でそれを制した。
赫いペニスを穢れなき純白で拭き取ることをよしとしなかった。マレーネの顔が一瞬曇も、
アレンはそのかわり暫らくの間じっと彼女に寄り添って青い空を見ていた。
こんなことをする為に、ここへ来たのかという思いが、アレンにはない訳ではなかった。王家の
姫君とののっぴきならない関係に身を置いていしまったことへの後悔。そして確かに安らぎすらも
感じていた。
だがその存在はあまりにも儚かった。口でどう言おうとも埋められる間柄ではなかった。
ことはどうあれ、アレンは自分を欲する高貴な女を愛し愛され、彼の今までの孤独が一瞬では
あったが癒されたのも誠だった。
(バルガス殿に笑われてしまう。騎士の孤独が性愛によって癒されてしまうなどと。なんて未熟
なんだ……俺は!)
どこまでも青いガイアの空を飛翔する鳥を眺めるアレンの肩に、マレーネの芳しい髪の香りと
その重みが載ってくる。マレーネはアレンの横顔をそっと盗み見ていた。
「わたくしはきっと、天空の騎士さまを困らせてしまったのでしょうね。」
アレンは返事の代わりに、マレーネの肩をそっと抱き寄せる。抱き寄せられてマレーネはこの
関係が、どうか始まりであって欲しいと願わずにはいられなかった。
しかし、アレンはマレーネが誘いを掛けても、一向に乗って来なかった。彼はマレーネとの
関係に一線を引いてしまっていた。パレスの百花庭園の情事から三日過ぎ、一週間経ち、
二週間が経とうとしていた。
GOOD JOB!
Misty11
マレーネは日記を書き終えると鏡台のからくりの楽隊のひとりの頭を叩いた。ギィッと音を立て
反転して隠し場所が現れる。そこに日記を収めて元に戻すと、すっと立ち上がり鏡に映る自分の
姿をじっと見つめる。そこには、恋にはぐれたみじめな女の姿があった。
「言葉ではどうとでも言えるわ……わたしはプライドを捨て切れなかった、アレンはそれを見抜いて
いたのね、きっと……わたしは面倒な女でしかない……のね」
マレーネは鏡の前で部屋着を床に落として白く透き通った裸身を晒した。右手で乳房を鷲掴みに
して乳房に爪を立て掻き毟るように揉みしだいて、左手で潤い始めている女陰を乱暴に弄って秘孔を
一気に指で貫く。
「ううっ、んふっ……んっ!」
自分を責めるかのように抽送を繰り出し、苦悶に細い眉が寄って眉間に皺を刻んだ。マレーネは
指を抜いて、濡れ煌く愛液を眺めて、涙をぽろぽろと流し鏡台に両手を付いて頭を垂れる。それでも
マレーネはベッドに倒れると疼く躰を慰めないではいられなかった。
翌日、マレーネは一切の公務を放り出して、お忍びで城を抜け出し遠乗りに出かけて、海辺を
ひたすら白馬で疾走する。アストリアの潮風がマレーネのささくれ立った心にやさしく吹いていた。
青い空に棚引く白い雲、海鳥の泣き声や陽射しまでがやさしく感じることができ、王家のしがらみ
など忘れられそうな気がしていた。
「マレーネ姫!マレーネ!ご無理はおやめ下さいッ!」
遠くから黒馬を駆ってアレンが白馬を追ってやってくる。
「なぜわたしを追ってきたのですか!あなたには関係のないことでしょうに!」
「愛馬に無茶をされては危険です!」
「馬のことなど……」
アレンは馬を寄せて、マレーネの頭を掻き抱いて口吻をした。
「我儘はおやめ下さい!」
「わたしは子供です。あなたに恋した少女のようなもの、そうでしょう!」
マレーネは手綱を握り締めてぽろぽろと涙を流して、アレンはそんな彼女の素顔を見ながら
思いつめたような顔になっていた。
感想ありがとうございます。さらにスローになってる・・・ごめんなさい。
マレーネは俯いてとするのを忘れました。ああ・・・。
ううむ。しみじみといい。
マレーネの持つ情熱、アレンの行動力がいい感じです。
これから1ヶ月近く簡素書けなくなりますが、よろしくです。(他の住人が殆ど
いないので)感想がつかなくても気にしないでください。
亀レスですが>73-74に同意。
>性交シーンの、あまりの気迫のこもった展開がエロを越えていて、
>「どこでヌけと」という疑問さえ忘れさせてくれました。
最近見つけてROMってたんですが他スレのSSとはまた違った趣を感じます。
何か「表現したい!」という衝動が迸ってるように感じて、
エロパロ板なのに厳粛な気分にさえなります(w
余裕というか「間」が少し足りないので、エロい気分に浸れないような
気がするのですが。
個人的にはすごく好きな雰囲気を醸し出しているので
このまま突っ走ってもらいたいと思っています。
>100さんがいない間、感想など書ければ書きます。
応援していますのでがんばってください。ちゃんと読んでますから。
Misty12
「本当にそうでいらっしゃる」
アレンの口吻の感触が残る下唇をきつく噛みしめて、涙顔のマレーネは黒馬の上の彼を睨み
付けた。そしてまた羞じらいに目元に朱を刷いて俯く。アレンはやさしい眼差しが諦めたような、
それでいて包み込むような視線を送っていた。マレーネは躰中が火照るような心持に陥った。
「お願いです……」
「なんでしょうか、マレーネ姫?」
マレーネは再び手綱をきつく握り締めていた。
「あなたの本気を聞かせてください」
「聞かなくともお分かりでしょう」
「言っていただけなければ、わたくしには判らないのです!」
怒気の混じった声がアレンを責めていた。アレンを誘い込んだのは彼女の方からなのに、彼は
マレーネをなだめるように右手を差し伸べて頬に触れた。白いグローブを通してのふれあいだったが
それだけでも充分にマレーネは嬉しかった。
「一時の戯れかと思っていました。それでよいと今でも思っています」
その言葉と裏腹に声音のなかのアレンの気持ちが白い右手を通して、全身にゆっくりと拡がって
いくようだった。
「いじわる」
マレーネは静かに瞼を閉じて、その長い睫毛を顫わせて雫をこぼす。
「わたしとあなたの隔たりは埋めようがないのです。ならば、戯れにあって、あなたを……」
「抱いてください……わたしを抱きしめて、アレン」
マレーネが儚く微笑むとアレンの手からすり抜けて、潮風にプラチナブロンドの髪が煌いて
舞わせて、彼女の足が白馬の腹を蹴付ける。
いいねえ!
104 :
1:03/02/03 13:57 ID:b9rcFx/8
ま・・まさかここまでのびるとはな。
この後、メルルたんはバァンとなのですか?…ハアハア
Misty13
マレーネは右手で手綱を操りながら、左手を後ろに廻して髪を束ねていたリボンをほどいて
捨て去る。アレンも黒馬を駆って、陽の光りに煌いて金髪を棚引かせて走る白馬の女を追い
かけていった。マレーネは何もかもが美しかった。アレンはマレーネの風に靡くプラチナブロンドに
引き摺られて堕ちて行く感覚に捉われていた。アレンにとってマレーネは面倒な女でしかない。
それは紛れもない事実として厳然としてあった。なによりも、男である前に彼はアストリアの誉れ
高い天空の騎士なのだ。女を相手にするのなら娼婦の方が後腐れないと不埒なことが頭を
過ぎりつつもマレーネを追った。
「マレーネ!無茶をするな!」
始まりが、姫の気まぐれであったとしても、それでよいと思ってアレンは心の底から笑っていた。
「なら、早くわたくしを掴まえてごらんなさいな!アレーン!」
振り向いたマレーネも笑って彼を誘いながら樹木のなかへと白馬を走らせて行った。暫らく走らせて
彼女は目的の場所へとアレンを導いていて、すでに馬をゆっくりと歩かせている。マレーネは天を
仰いで梢の間からの木漏れ日を、目を細めて眺めていた。
「あまり、遠くに行かれなきよう」
「やっと掴まえた」
マレーネがアレンにそう言った。
「わたしが姫を捕まえたのですよ」
アレンがマレーネにそう言っては笑う。
「ほんとうにそうかしら。ふふっ」
マレーネは馬を降りて、光射す場所へと駆けて行く。
「マレーネ!」
アレンは彼女の馬の手綱を手繰り寄せてから馬を降りて、手近な樹木に手綱を結わえてマレーネ
の後を追うと、膝ぐらいまでの草が生い茂った陽の当たる場所へと出た。
「ほら、アレーン!あなたを掴まえたのは、やはりわたくしよ!」
マレーネは両腕をいっぱいに拡げ、くるりと回転すると草の上へと仰向けにとさっと寝転がった。
Misty14
アレンは慌ててマレーネへと駆け寄った。
「ここは、パレスのような芝ではありませんよ。さあ」
アレンがマレーネに手を差し出して起きるように促す。
「落馬したとでも言います」
マレーネは後ろに片手をついて、アレンの差し出した手を握り締めると、力いっぱいに自分の方へ
引っ張る。アレンの躰はバランスを失ってというよりも、マレーネの子供じみた誘いに承知の上で
乗っていた。しかし予想外だったのは、マレーネの額の飾りの宝石に彼の額を打ち付けたこと。
小鳥の囀りに二人の笑い声が溶け合っていた。いつしか笑いも消えてアレンはマレーネの躰に覆い
かぶさり、肘を立てて両手で彼女の美貌を挟むようにして眺めている。
「ほんとうに後悔しませんか?」
マレーネの目元が仄かに赤らんでアレンの金髪が顔に真直ぐに垂れてくるのを撫であげながら
彼女の方からそのことを尋ねた。むろん彼女の決意の表れでもあった。アレンはマレーネの
問い掛けに間を置かずに答える。
「それは判りません」
マレーネの瞳が心なし曇った。
「でも姫と同じように、この気持ちは抑える術は、もはやありません」
「もう!」
上体が僅かに浮いて、マレーネの腕が脇の下からアレンの肩に絡み付いて唇を熱く掠め取る。
いつ侍女が来るやも知れぬ、パレスの百花庭園の抱擁よりもマレーネの心は安らいでいて、抑圧
されていた気持ちまでもが解放されていた。緑の草に寝そべるマレーネの可憐な金髪がゆるやかに
拡がってアレンの網膜に焼きつき、彼女の蠱惑に呑まれて瞼をゆっくりと閉じる。
二人の互いに擦り付けられる唇の感触が躰を熱くさせ、顔はくなくなと揺れて唇が開いて舌を絡め
吸い合い、下肢は局部を擦り付けて蠢いて、マレーネのピチッとした乗馬のズボンの下肢はゆっくり
彼へと開かれていった。
よいよい
Misty15
アレンの唇がマレーネから離れると唾液が銀に輝く細く糸を引いて、彼女の赫いルージュを刷いた
唇からはせつない吐息が洩れた。
「はあ……。あぁああっ、ああッ!」
肌に密着する乗馬用のズボンの下には、簡素な腰布しか巻かれていなく、マレーネの開脚された
そのあわいにはアレンの腰が動いていて、欲望に膨れ上がった意志を擦り付けられる歓びと羞恥に
濡れた喘ぎを迸らせる。想いの叶った歓喜で女の芯を中心に、得もいえぬ快美がマレーネを捉え
始めていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。アレン、あなたを困らせたりなんかしたりして……。ああ……。
いっ、いいッ!」
「マレーネ、もう何も考えないで。ここには誰も来ないのだから」
「ゆるして。ゆるして。死んでしまいそうなくらいに、あなたを愛してしまったの。ああ、もうどうにも
ならなかったの」
はばかりのないマレーネの告白の叫びが上がってアレンを強く抱きしめる。アレンはマレーネの
上着をはちきらんばかりに見せていた豊満な乳房を揉みしだいていて、その快感に耐え切れず
密着させたのだが、より敏感になっていた躰を圧迫したことで更なる焔が上がる。
アレンの手はマレーネの快美に顫える太腿を愛撫し出すことで、ペニスを感じて腰が待ちきれなく
なって揺すってしまっていた。
「あうぅううん!ああっ、好き、好き、好き!ゆるして!ゆるして!」
まだ、彼との交合は二度目だというのに、浅ましい女とは見て欲しくなかった。しかし、王家の縛り
に身を置いて永く、己の意志を貫き通せることは稀有に等しいことと諦めていた。パレスの庭園での
情交からの孤独な時を経て、今一度永遠を夢見て瞬間に彼と成就されることを願い気持ちは
どんどんと昂ぶっていく。アレンはグローブを取り去ると交合を果たそうとマレーネを脱がしに
掛かり始める。
Misty書かれている方の文章には華がありますね。
これからも楽しみにしています。
これが終わったら是非バアンとひとみの話をお願いします。
えと、100です。携帯で読めたと気付いた今日このごろ。作者さん、書くのは
めっちゃ大変でしょうが、楽しみにしておりますので頑張ってください。
あぼーん
Misty16
「よいのか。あれほどまでに娘を色恋に深入りをさせて」
コロセウムで武闘大会が催された折、むずかるマレーネを連れ出した者が、彼に耳打ちをする。
マレーネにアレンを橋渡ししたのは、彼女の父・アストン王だった。
「相手はフレイドぞ。少女を嫁がせてなんになるか。なんの駒にもならん」
「生娘を己が色に染めてこそ、男子の誉れぞ」
「い、言うな!」
アストンは低く唸った。
「す、すまなかった。言い過ぎていた。だが愛人をつくるのとは訳が違うでな。一国の后ぞ」
「時が流れ過ぎたのだ。ザイバッハがこれほどまでにガイアを脅かすまでになるとは
思わなんだからな。それを繋ぎおくだけの確証が欲しいのだよ。そのあかしをな」
「深入りは禁物ぞ。あらぬ、土産まで授けることになるやもしれぬ。男女の機微のさじ加減など、
わしには戦よりも難儀じゃよ」
「少しだけ、背中を押してやればいいのだよ。少しだけな」
「母親似なのだろう。主は辛ろうないのか?」
「……なんども、おなじことをぬけぬけと言いよるわ」
「聞くだけ野暮ということは存じておるがの」
「なら、口を慎め!」
「しかしだ。嬢ちゃんが正面切って、彼との仲を認めさせてくれと嘆願してきたらなんとする。それは
ままならぬことぞ。恋を知って愛に生きようとする女子(おなご)は手ごわいぞ」
「それが嫁ぐ娘に託した小刀なんだよ」
「お、織り込み済みなのか……!」
「だが、日に日にただの父親になっていくようだよ……」
アストンは弱々しく吐くと策士の剥がれ掛けていた仮面を落としてしまい、父親の顔となってより濃く
苦渋を滲ませていた。
ガんバれ
あぼーん
あぼーん
Misty17
「お姉さまはとてもお綺麗になられました」
次女のエリーズが姉の離宮に訪ねてきていた。そして手にした銀色のトレイにはゴブレットが載せてある。
「お姉さまいかがですか、よく冷えていますよ」
それは、アストリアの果汁のジュース。熟した果実の豊熟な甘味ととろみに加えて、柑橘系の
ものでブレンドして、そのこってりとした甘味を抑えた独特の嗜好品である。食前酒としての
果実酒よりも、その甘みにはマレーネは密かに好感を持っていた。それは恋するヴィジョンに等しいもの。
「いま、わたしは……」
マレーネはどうしてか断ろうという気が起きていたのだが、おとなしいエリーズの淋しそうな顔を
見たくないという思いから、冷えたゴブレットを手にする。
「ごめんなさい、いただくわ」
「よかった。ご迷惑かと思いました」
エリーズが心から安心したように微笑んでいた。
「うーん、そうじゃないのよ。ただ、いまはね」
「いまは……?」
姉らしくない砕けた物言いと、心から愉しそうに喋っているその様子と謎掛けにエリーズは訝る。
「お姉さま、あの天空の騎士さまは……」
「わたしはお酒のほうが好き」
「ヴィノのことね」
エリーズの後ろから付いてきていた三女のミラーナが顔を覗かせると杯をもったマレーネの膝に
じゃれつく。エリーズはきっかけを失ってしまい、もやっとしていた想いを呑み込んでしまっていた。
「そう。舐めるようにして飲んでいたらね、お胸がカアッとしてどきどきしてきたのよ」
「まあ、この娘ったら」
マレーネは好きだった果物のジュースがいまはさほど欲しくない。それはアレンに恋焦がれたこと、
自信が甘き世界の住人になっていたからだということに気が付いていたから。
アレンに抱かれながら瞼を薄く開けると、彼の肩越しにアストリアの蒼い空がどこまでも拡がっていた。
Misty18
天の青に想いを託して、マレーネはゆっくりと瞼を閉じると、紅潮した頬をアレンに二、三度擦り
付けて頬にそっと口吻をする。歓びの涙が止めどなく溢れ出てくる。その気持ちはアレンにも
伝わって、やさしい気持ちと攻撃的な自分とが交互に現れて息を荒くしていた。
アレンはマレーネの白い柔らかい着物をたくし上げると、黒いズボンのレザーベルトに左手を掛け
ほどきはじめた。マレーネがアレンの首にしがみ付いていて思うようにうまくいかない。アレンは右手
でマレーネの額に手をあてて頭へと撫でる。
「わたしとあなただけ、なのだから……」
「で、でも……羞ずかしい」
その下には簡単な腰布が巻かれているだけだった。それに加えて馬を走らせたことでかなりの
汗も掻いている。そしてなによりも、彼を恋焦がれて芯が濡れてしまって、たぶん蒸れている。
いや、間違いなく……。
マレーネは待ち望んだことを目の前にして、羞恥に身悶え太腿に力が入ってアレンの割り入った腰を
微かに締め上げる。アレンは細い革の腰紐をほどくと、右腿を外して左膝で彼女の秘部をかるく擦って
上体をあげて白い着物を肌蹴させ肩から外させる。喘ぐ鎖骨に下唇をアレンはそっと這わして熱い
吐息を拭き掛けた。
「あ、あまり強く吸わないで……!」 マレーネの躰がぐんっと美しいアーチを描き出す。
「心得ていますよ、マレーネ」 そっとアレンは素肌に下唇を滑らすだけ。
「お綺麗ですよ。どんなアストリアの美術品よりも」
「いやぁ、芸術品だなんてつまらない……。ただ、いっしょにいたいだけ」 (生きていたいだけ)
汗ばんでしっとりとする、透き通るような白い素肌は緑の草に栄えて、アレンを熱くさせていた。
その熱き吐息がマレーネを疼かせる。ゆるゆるとアレンの唇が揺れる豊満な乳房へと降りていった。
柔らかい素肌の乳房をのぼって、張り詰めて硬くなった乳首へと近づいて止まる。
「じっ、じらさないで、アレン!」 乳房が期待に喘ぐ。
「マレーネの味がするよ」 その言葉に、朱を刷いたマレーネの目元が堪らなく愛しい。
「どんな……?」 「しょっぱい」 一瞬ハッとするマレーネ。
「意地悪なのね、天空の騎士さまは」 少し拗ねてからマレーネは目を細めて幸せそうにアレンへ微笑む。
いい
Misty19
アレンのやさしい唇が閉じてマレーネのしっとりと汗ばんでいる乳房をそっとふれるかふれない
ようにしながら、くるっと廻って降りていった。
「ああ……。いやよ、アレーン!」
乳首を唇に含まなかったことで性感がさらに揺さぶられて女を開いてゆく。しなやかな肢体がまた
アーチを描くと、マレーネはアレンの長く女性のような陽に煌く金髪に細くて長い白い指を埋める。
生まれたばかりの赤子を愛しむかのように彼の頭を掻き抱くようにして。マレーネに抱かれながら
アレンの躰のなかにペニスへの滾りと別なやさしい何かが拡がって行った。エレンシア、アレンの
母のヴィジョンがアレンの凍結していた心を溶かして。
「エレンシアはどうしている?」
寒く霧が立ち込める蒼いガイアの夜。邸宅のテラスに設置された椅子に腰を下ろすコートを着た男と
天空の騎士がその男を見下ろして対峙していた。
「また旅に行かれるのですか。あなたは母上を愛してなどいない!」
「荒ぶるな。気づかれてしまう」 「御心配なく。母上はあなたを憎んで神に召されました」
男がめがねをとって目頭を抑えていた。
「わたしは現世のしがらみを忌み嫌っていた。幻の月には可憐な花があるそうだ。多くの時を費やしてゆっくりと花弁を開いて芳醇な香りを放つまでになる」
「きっ、貴様!なにが言いたい!」 「朝にはぐったりとなる月下美人」
「ふざけたことを言うな!貴様は母上を愚弄するのかッ!」
アレンは彼の父・レオンの胸倉を掴み上げると壁に押し付けていた。天空の騎士の瞳には狂気が
宿って肉親といえども殺傷しかねない勢いだった。
「わたしは男、そしてエレンシアは女。いつも愛していたよ。いつもだ」
丸眼鏡が床に落ちて尚、涙を止めどなく流している父の貌が、アレンをしっかりと見据える。
「想いとは尊きものだ、アレン」
いつも書斎でひとり佇んでいた母・エレンシアのヴィジョンが、いま抱きしめているマレーネに
静かに降り立った。
読んでくれてありがとうございます。
明日、NECOで一挙放映なんですね。見れない。
ビデオデッキもLDも壊れてる、資料集ぐらい買っておけばよかったと後悔。
角川のフィルムコミックが五巻まであるにはあるのだけれど
心もとないです。
今までそんな状態で書かれていたのですか。泣けますね。
そういえば自分、映画版のサントラは持っています。映画はあまりいい評価をききませんが、サントラはかなりいい出来です。多分にインスパイアされるのではないかと。
いいね
Misty20
アレンの乳房への愛撫にマレーネは彼の滾るペニスが、秘孔を押し拡げる一瞬の
歓喜を思い描いて躰の芯が疼いてしかたがない。
「ああ……」
赤子を抱くように、アレンの髪を愛撫していた手に、幾分かの力が加わっていた。
躰が火照って熱い吐息が溢れてくる。マレーネの薄く開かれていた、濡れた
ローズピンクの唇が大きく開かれる。アレンの唇が乳飲み子のようにマレーネの
白い乳房に吸い付いていた。むろん、そのなかではマレーネを歓ばせる為の彼の
暗闘が繰広げられている。マレーネの綺麗な唇とおなじ色をした乳首をアレンの舌で
転がされ、彼に抵抗する術もなく呑まれている。乳房は快美感に喘いで鼓動が
速まっていく。マレーネの貌は仰け反って、一声吼えて透き通る白い歯を覗かせた。
(堪らない、堪らない、たまらない……。狂ってしまいそう……)
人の目を気にせずに自分を解放できるこの場所で、マレーネは牝になろうと決心
していた。しかしそれも気ばかりで、羞ずかしくてままならない。大声を上げては
人差し指を唇に挟んでは、声を殺して歯でコリッと噛んでもみたり。また、堪えきれずに
嬌声を上げる。
「んっ、くっ、あぁあああッ!はあ、はあ、はあ……いや、いや、いや」
アレンはマレーネの美脚にぴたっと吸い付くように履かれている黒い乗馬用のズボンを
摺りした。アレンはマレーネの女の芳香を吸い込む。白くやわらかい腹部にアレンの唇が
降りて滑っていく。マレーネの女を隠す巻かれた腰布は、愛液で滲んで濡れていた。
「あぁああッ!いや、いや、いや!」
矛盾していた。アレンを此処に誘ったのは自分であって彼ではない。はばかりのない
声を上げて彼に縋りつきたかったからなのに、羞恥にどうしょうもなくその身を焦がしていた。
Misty21
いくら堪えようとしても声がこぼれてしまい、浅ましい女と思われはしないかと不安に駆られる。
それでも、アレンのペニスがどうしょうもなく恋しくて、躰をいっぱいにして埋めて欲しいと切に
願っている。マレーネはアレンが欲しくて堪らなかった。母のようになっていたかと思うと、女にも
なって彼を深く愛し、そしていまは少女に戻っていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
湿り気を帯びた、か細い声が腕で貌を隠しているマレーネの赫い唇からこぼれる。しっとりと
汗ばんでいた乳房を愛撫していたのとは違う反応にアレンのペニスが熱くなる。
王族の生活での抑圧された性へのモラルが根底にあるのか、パーソナルなものなのかは
アレンにも当のマレーネにさえも分かってはいなかった。アレンの手がマレーネの腰に巻かれた
布きれを外しに掛かる。その昂ぶりにマレーネは腕で隠した顔を左右に振っていた。
「ああ……。羞ずかしい」
マレーネの白い太腿がにじり寄る。
「マレーネ姫、これでは外せませんよ」
「姫だなんていわないで……アレン、おねがいだから。おねがいだから」
腕で隠した美貌が緑の上で揺れると、散っていた金髪もそれにともなって乱れていく。
腰も揺れてマレーネの息づく命がアレンの目の前についに晒されて。叢はしとどに濡れてはいたが
淫靡さはアレンには関係なかった。マレーネの容貌の如くに楚々とした佇まいを見せている、という
訳にはいかない。そのぐらいのことはアレンはわきまえていた。マレーネの女の命を自分だけが
見ていられるのだという思いに、烈しく昂ぶっていた。アレンはマレーネの秘所にむしゃぶりつきたい
衝動をかろうじて抑えると下腹を性器に向って、上唇と下唇を交互に使って上下運動をやさしく
ふれるかふれないようなタッチから段々と力を入れるようにして愛撫し、その頃にはマレーネを恥戯で
新たに歔かせるまでに至っていた。マレーネの腰が跳ね上がる。細い腕の下の貌は快美に
泣いている。ここで、最も敏感な尖りを唇に咥えられでもしたらと考えるだけで、女が濡れてくるのが
たまらなかった。
「もう、わからない、アレン。どうにか、なってしまいそう!」
Misty22
甘い疼きがマレーネを捉え躰の芯を中心に総身への拡がりを感じていた。
「はあ、はあ、はあ、ああっ……あうっ!」
愛するアレンに太腿を拡げて、その付け根に口吻を受けている。躰は何度となく仰け反って
白い咽喉を伸ばしても、光景が網膜に見ていなくとも鮮明に焼きついていた。マレーネは白い
鳥となって飛翔して天空からふたりを見ていた。風がマレーネの火照った頬をやさしく撫でる。
マレーネの躰がアレンの熱いもので満たされていく。彼の汗に濡れる躰を弄る手が、
さざなみのように官能を誘い打ち寄せ砕け散り、これが男なのだという確信にマレーネは悦びに
顫えた。
マレーネはこの時、アレンの精で子宮を灼かれることの赦されぬ夢を描く。愛する夫に、
身籠った我が子を慈しみ撫で擦るそのやさしき手を。それが、マレーネの快楽への引き金になって
温かな波がゆるやかに拡がってゆく。
まだ、二度目の交わりで、女として開花していない躰であっても、気持ちが感情を昂ぶらせ快楽
を導いてくれていた。しかし、マレーネはここで、わたしはあなたの子供が欲しいという愚行はしない。
ブリッジを描くように大地を両手で突っ張って烈しく仰け反る。しかし、それも長くは続かない。
そのアンバランスさを払拭するかのように、揺さぶられる躰をマレーネはアレンに密着させて
背中に腕を廻して抱きついていた。
「マレーネ姫、これではあまり動くことはできませんよ」
アレンはやさしく言う。しかし、パレスの人の目を盗んで交わっていたあの時よりも、限りなく
やさしい律動でマレーネを衝きあげ、より昂ぶらせてくれていた。
「置いていかれそう……。置いていかないで……アレン、アレン!」
うわ言のように呟くマレーネは、跳ばされそうな感覚が総身を包み込んで、啜り泣く。ゆるやかな
アレンの腰の動きが止まって、暫らくしてまた動き始めた。その瞬間にマレーネは王族ではない、
ただの女に生まれ変わって孵化したばかりの羽をゆっくりと拡げてゆく。アレンの女、そんな言葉が
マレーネの頭の中で呪文のようにリフレンしていた。
堅実な更新ペースイイ!!
ほしゅ
愛のある情交ってそんなにも気持ちがいいんだ、と
思わせる描写ですね。さすが!
がんばってください、楽しんで読んでます。
Misty23
アレンの揺れる肩越しにマレーネの細い眉は吊りあがって眉間に縦皺を刻んだ歪んだ貌から、
やわらかなジェチアとなって愛するもののなかで揺さぶられながら真っ白な翼を拡げて飛翔した。
ふたりの吐息が暫らくの時、重なり合って溶けていた。ふたりが同じ時を蕩けあい共有できたことは
尊きことであれ、次の愛までを待たなければならない焦燥感にマレーネはいつしか泣いていた。
しかし、その切なさを自分はこれからも本当に制御できるのか不安でならなかった。この
甘美さを静かに眠りについて過せるのか、その時を耐える事が出来るのだろうかと幾度心の中で
反芻したことか。
アレンは十分のやさしさの時を経て、マレーネの膣内からペニスを抜去しょうとしていた。それでも
マレーネはアレンを躰のなかに引き留めようとする。自分の女の躰に滲み込んだ彼のやさしき
匂いや心を手放したくないと切に願っている。永遠を願うのにはあまりにも少女じみていて、我儘
だと判っていても行かないで欲しかったのだ。マレーネはなんともいえない微笑でアレンを引き
止めに出ていた。目元には新たに涙を溜めて。
「なぜ、泣かれているのですか、マレーネ姫」「アレン。行かないで、行かないで……ください」
小さく甘えるような頼りない少女の声がアレンをくすぐっていた。アストリアのどんな女よりも
最高の教育を受けた高貴な人が、個として自分を引き止めようとしているのだ。男として
これほどの本懐があろうか。
アレンはマレーネの乱れた金髪を手で後ろに梳いて、彼女の広い額をあらわして、飾りの
宝石の少しうえのところにそっと口吻る。
「マレーネ姫、よろしいのですか?わたしの躰は重くて御負担でしょう」
マレーネはてっきり、それがアレン流のユーモアでもあり、自分を傷つけないようにして丁重に
断りを入れたものとばかり思っていて、せいいっぱいの微笑も曇ってしまう。
「早とちりしてはいけませんよ。わたしだって、あなたをまだまだ離したくはありませんから」
「あっ、あぁあ……ん!」
マレーネは細い両肩を抱かれて草に横たわり、回転してアレンの躰のうえになってしまう。
鼓動は速まり、アレンの胸からマレーネはいつまでたっても顔を上げられないでいた。
Misty24
アレンの手がマレーネの艶やかなプラチナブロンドの髪をやさしく撫でる。アレンに抱かれていた
マレーネの躰がびくんと顫えて、閉じられていた眼が開かれる。見開かれた先にはアレンの顔が。
「アレン、わたしはあなたのためにひとりの女になりましょう」
(わたしはずるいのかもしれない……)
パレスの百花庭園でアレンに言った言葉に嘘偽りはなかった。この愛に生きたいと思う一方で
わだかまりがまた生じてくる。国を捨ててまでわたしはアレンに付いて行けるのだろうかと。
「もうなにも考えないで、マレーネ姫。このひと時を愉しみましょう」
「マレーネ。わたしはただのマレーネ」
アレンがマレーネの唇にやさしくキスを仕掛けて、マレーネはかりそめのしあわせに身を委ねてゆく。
アレンの脚に載せられていたマレーネの太腿は拡げられて跨ぐ形になった。そして彼の肩の傍に
両手を付いて躰をゆっくりと起こそうとする。泣いていた貌がアレンから遠ざかって。
「マレーネ……!」
アレンはマレーネの肩と細いウエストをやさしく撫でながら引き止める。
「羞ずかしい、羞ずかしくてしかたないけれど」
「無理せずともよいのですよ」
長い髪がアレンの顔に掛かっていた。マレーネは大地の緑から恋人の胸にそっと手を
移して躰を起こしに掛かる。その意志を尊重して華奢な肩から腕へ滑って、そして縺れ絡み合う
恋人たちのやさしき手と手。アレンはマレーネの心の不安が鎮まるまでの間、ただ抱きしめているだけで
もよかった。そこまでは、求めていなかった。
「羞ずかしい、わたしを見て、アレン。すべてを見ていて!うれしくてたまらないの!」
マレーネの貌が揺れて髪が妖しく舞う。アレンは膝を曲げて彼女の腰つかいをやさしく支えていた。
アレンに悦んでもらいたいと躰が揺れた。いつしかそれもわからなくなるほどにマレーネの躰は
蕩けて、アレンの手をきつく握り締めて往ったのだった。ふたたび、緑の草のうえで交わったふたり
だったが、燃えあがるほどに蕩けあっていても、いつかは個に還らねばならないのは理として
承知せねばならないことだった。
Misty25
恋、それに自然体として流れに委ねるには、マレーネはまだまだ経験が浅かった。同様にアレンにも
言えたことでもあり、それにもましてふたりの愛にはおのずと限界があったからだ。姫と騎士という
壁が厳然としてそこにある。マレーネは思う。
ふたりでいるときは肌のぬくもりで心を通わせることで無限の力を感じさせ、何者も寄せ付けない
かのようなパワーを実感できていても、ひとりの夜には不安で押しつぶされそうな迷いに苛まれる。
「どうしました、マレーネ姫」
「なんだか、羞ずかしくて……」
アレンはやさしく微笑んでくれていたが、マレーネはアレンにささやかなうそをついていた。アレンは
それと知らずマレーネが愛しくなって顔を寄せて擦り付ける。マレーネも彼の顔に頬を摺り合わせた。
闘技場の出会いから、アレンを見初めて惹かれた事に後悔はなかったが、 いまだけは忘れようと
心の奥底にそっと迷いを仕舞い込んで、身繕いをマレーネはする。すべて整えられた頃に、アレンが
また後ろからそっと彼女の腰に腕を廻して抱きとめられて女のしあわせに包まれていた。
「さあ、行きましょう」
「はい、アレン」
いけないことと知りつつも、どこへとマレーネは思う。そして、今度はまたいつ会ってくれるのと言葉が
突いて出そうだった。まだ、マレーネの躰の奥には、アレンが残した火照りが残っていて、そう思うと
また哀しくて沈みそうな気持ちになる。表向きのアレン・シェザールは天空の騎士であってマレーネの
恋人ではない。暫らくの抱擁のときを過して、馬を繋いだ場所へと赴き、アレンの助けを得て白馬に跨って
手綱をしっかりと握り締め、彼を見つめる。
(熱情とは一瞬にして燃え上がって灰塵と化すものよ。なら、それも理なのかしら。アレン、こたえて)
アレンが黒馬に乗るのを眺めていると下腹に湿り気を帯びてくるのをマレーネはせつなく感じていた。
131 :
山崎渉:03/03/13 18:19 ID:30NJMGzf
(^^)
いい。不満はいくつも言えるけど、それは言いたい事ではないから言わない。
アレンとマレーネはそこにいる。たとえ今後、二人の仲が割かれたとしても、今だけはここにいる。
アレンがとびきりのサービス精神でもって、マレーネを驚かせて楽しませてくれたらいいな。そう思います。
続き期待しています。
あぼーん
Misty26
マレーネがアレンに恋しているのか、それとも恋に恋しているかは後になれば自ずと判ること。
初めて熟した果実の甘味を知ったものにどうこうできるものではない。問題はアレンの方だった。
気品、美貌、そして家柄とどれをとっても申し分のない女性であることは確固たる事実だった。
二度目の逢瀬もなかば引き摺られるように関係をもってしまうに至って、自分の感情に疑問を
持ち始めていた。
支配欲が満たされることは言うまでも無いことだが、心から愛してしまったとき本当に行為に
及ぶことが出来るのかと、考えてしまうのだった。宮廷内で着飾るマレーネ姫は美しさを更に
際立たせる。しかし今のマレーネの美しさはなにものにも変えがたい煌きをもってそこにいた。
シンプルな出で立ちでありながら、改めてその美しさに溜息が出る。あきらめてほしいと告げた
ときの手綱を掴んで拗ねて泣いた仕草に、自分を抱きしめた母の感覚にも似た温かさにアレンの
心は翻弄されていた。誰にも言わずに遠乗りに出かけてしまったマレーネの白馬を追って、
見つけたときにはハッとしたのだった。あきらかに、宮廷内の着飾ったマレーネを遥かに凌駕して
いたからだ。自分だけに向けられた美しさにアレンは惹かれていた。
陽のひかりに海の煌きといった自然の演出といった趣や、マレーネの純心なその一途さが表情に
反映したものだろうことは後にわかったが、それは別人といってもいい美しさだった。自然に
抱かれての恋人との開放感がより美しく魅せるのだろうと思う。そう思うと、パレスの百花庭園の情事の
居た堪れないマレーネの表情が哀れでならなかった。しかし、今は心の底から幸せそうに笑うその
女性を支配して、また自分も支配されようとしていたことは歓びだ。遊びと割り切っては女と
付き合っていたアレンにとっては劇的な変化の表れであった。母、妹……そこに恋人としての女性の
存在が加わったのだ。
「マレーネ姫をわたしは愛しすぎてもよいのですか……?」 「なに、アレン?なにか言いましたか!」
「舌を噛みますよ、マレーネ!」 「もう、意地悪なひとね!」
「意地悪ですか!それは手厳しい!」
父が去って、妹が去り、母がアレンのもとを去っていった。天空の騎士の瞳には哀しみの翳りが
宿っていた。
実は待ってました。GOOD!
あぼーん
Misty 27
パレスでは幾ばくの変化が訪れていた。マレーネのフレイド公国の輿入れが本格的に
進められることと相成っていた。そのことはまだ、恋の味を知り始めたばかりのマレーネと
アレンの与かり知らぬこと。そしていまひとつは、マレーネに長年使えていた侍女は暇を
いいつかり、新たにアミリエ・デューケンなる女性がその任に就くことになった。
「アミリエ、そちに折り入っての頼みごとがある」 パレスの寝室、天蓋のあるベッドでマレーネ
の叔父のヌエバは胡坐を掻いて、貌を傅かせ湿った淫らな音を部屋に響かせながら頬を
窪ませ奉仕している彼女にいった。アミリエはなかなか勃起しないペニスを吐き出して色に
染まった瞳、淡い緑をあげて恭しく 「ご主人様、何でございましょう」 と尋ねる。
「そちはもうわしのものではない」 「い、いやにございます!ご、御無礼がありましたのなら
悔い改めます。お捨てにならないで下さいまし……!」 アミリエは半立ちの老人の唾液に
濡れたペニスにしがみつくように頬を擦り付ける。 「そちを捨てるのではないのだよ」
「な、ならばなにゆえにございますか!わたしは辛ろうございます!」 ヌエバはアミリエの
解け乱れた赤毛を鷲掴みにして自分の顔へとぐいっと引き寄せた。 「あっ、ああ……」
ヌエバのペニスはアミリエの手のなかで若き日の硬度を取り戻していた。
「そちは明日より、マレーネ付きの侍女となる。この意味わかるな」 強く引っ張られた髪の
痛みにアミリエの熱い吐息が洩れる。 「い、命に代えましてもお守りいたします」
「それはまだ先の話しだ」 「と、もうされますと」 「周囲に気をくばるのだ。よいな」
「は、はい。肝に銘じます。あっ、んんっ……」 ヌエバは熱い吐息の洩れるアミリエの
ぽってりとした赫い唇にむしゃぶりつき、彼女の手の中にあったペニスはひときわ烈しく
びくんびくんと痙攣していた。 「それまでは、まだわしの物といいたいが、マレーネ付きの
侍女ともなればそうもいかん。今宵が最後と思え」 「た、たっぷりかわいがってくださいまし、
ご主人さま……あぁああっ!」
Misty 28
「アミリエ、そちはマレーネを抱き愛せ」 「な、なにを申されますか……はあっ!」
「わしが仕込んだ愛戯、そちのおんなの性でマレーネを愛せ。そして、躰の変化に気をくばれ」
「そうだ。わしの教え込んだ快楽と男の前での所作をマレーネに伝えよ。よいな」
「ほんとうによろしいのですか」 「ここも男を悦ばす為の道具になることもな」 「ひいっ……」
「無垢なまでの躰に教えるのだから、加減せよ。そして真摯にな」
「御主人さま、このアミリエ胆に命じます」
髪を引っ掴まれて惚けていた顔を曳き付けられていたアミリエはヌエバの毛深い胸に
しな垂れる格好で屹立を扱き立てて硬度を高めてから、自ら躰を開いてそこへと跨っていった。
獣の口が棒を咥えるように涎を垂らしてアミリエの柔肉に埋まっていった。
「お尽くしいたします、御主人さま。ああ……ヌエバさまッ!」 マレーネに使えると言ったのか、
今宵の夜伽の官能に使えると言ったのか、そのアミリエのかわいい返答に膣内の蕩けるような
熱さと締め付けにヌエバは小刻みに痙攣していた。アミリエは胡坐を掻いて座っているヌエバ
に腰を落とす体位を取って、腕は彼の背中に廻されて爪を立てて引っ掻くのだった。
アミリエはマレーネよりも三つ年上の女性、マレーネはその侍女を見て息を呑んでいた。
卵形の貌に病的なまでの蒼白い肌。スッと通った鼻筋に涼しい切れ長の瞳に淡い緑の
彩りを輝かせていた。長めの赤毛はアップに結わえられていた。そしてアミリエはにっこりと
微笑んでマレーネに傅いていた。それから受けた印象は表情が読めない冷たさみたいな
ものをマレーネは感じ、与かり知らぬところで婚礼が進められていることをなんとはなしに
察知した。しかし、マレーネは長年使えた侍女を忘れるような勢いでアミリエに惹かれて
いっていた。所作、その身のこなしにおいて申し分なく影のように使えてくれる。なによりも
歳が近しいということが打ち解けるきっかけとなっていた。
139 :
山崎渉:03/04/17 12:28 ID:Ac1CXwMS
(^^)
140 :
山崎 渉:03/04/20 04:27 ID:IxIHzNin
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
劇場版冒頭の無気力で怠惰なひとみタンにハァハァなのは漏れだけでつヵ?
>>職人サン
とてもイイです。グッジョブ!
人が少ないので他スレに比べると反応薄いかもですが頑張って下さいね。
つか、
>>141を見て劇場版久々に見ようとDVD探してるんだけど見つからneeeeee
Misty 29
「アミリエは恋をしたことがあるの?」
長く仕えた侍女にかえて若いアミリエを持ってきたということは婚礼の話しが
進んでいる証なのではないだろうかとマレーネは思っていた。マレーネ付きの
侍女はむろん他にもいる。しかしこうも深く入り込んでくる者はいなかった。
「与え合って奪い合う、恋にございますか?」
つい最近に知ったばかりの恋の本質らしきものをこの娘はマレーネに返してきた。
「えっ、ええ。そう、恋よ」
「はじめての殿方をお慕いしております」
頬杖をついていたマレーネは秘所が潤み始めるのがわかった。あわててアミリエ
から視線を外して鏡のなかの自分の貌と鉢合わせをする。思わず淫蕩な姿を見た
気がして下を向いてしまい躰ごとアミリエの方へ向く。
「そのお方を愛していらっしゃるのね」
「いえ、城にあがる前のお話しにございます」
アミリエの笑みが少しだけの翳りを見せる。
「ご、ごめんなさい。気が利かなくて」
「構いません。もう、昔のことですから」
マレーネはアミリエの恋の終わりを聞かされて自分も心の中に翳りを作りそうになっていた。
「マレーネさま。マレーネさま?いかがされましたか?」
「えっ、ええ……。なんでもないから」
「そうでございますか?マレーネさま」
「なにかしら?」
「最初の殿方の想い出は尊きものなのですよ。女の六分儀のようなものです」
マレーネはアミリエの言葉にまた驚いていた。
読んでいただいてありがとうございます。
のらりくらりで面目ないです。
Misty 30
「どういうことなのかしら?」
マレーネはアミリエに聞き返す。
「単純なことです。姫さま。その恋がよいものでしたなら、きっと女の生きて行く導となります」
「もしまちがっていたなら……?」
マレーネの疑問に対してアミリエは微笑みながら答えた。
「そのときは、そのとき。もっと恋をしてくださいまし」
マレーネはふうっと溜息をついた。少しだけどんな回答が出てくるのかと期待していたからだ。
「わたしは、自分から恋などできなくってよ、アミリエ」
「申し訳御座いませんでした」
アミリエはマレーネに恭しく頭を下げる。
「でもほんとうにそうなのかもしれませんね」
マレーネがぽつりと呟いた。アミリエは顔を上げて物憂げに遠くを見詰めるマレーネの横顔に
魅入っていた。
「姫さま。なにがでございましょう」
アミリエはマレーネの意志を推し量る為にわざと聞き返していた。
「何年立っても思い出すのは、あのときの眼差しと微笑み。そしてわたくしの想い。そうそう
忘れ得るものではないわね」
「さようでございます」
マレーネはまたハッとしてアミリエを見ると、彼女はニッコリと笑っていた。それとなく自分の
気持ちを後押ししてくれたような気がした。言葉にして改めて感じる、アレン・シェザールを
愛していると。
「ふふっ、ありがとう、アミリエ」
マレーネは婚礼の予兆の不安からふたたび、恋する少女の瞳に戻っていた。
Misty 31
「お姫さま。お果物は、召し上がられないのですか?ジュースの方がよろしかったでしょうか?」
アミリエは持ってきた果物にまったく手を付けないマレーネに訳を尋ねる。
エリーズとのやりとりをマレーネは思い出していた。そして鏡台のからくりのちいさな楽隊の
オルゴールを操作する。奏でられるやさしき調べの『人魚のささやき』に耳を傾けながら
アミリエの顔を見る。左手で白いグローブの右肘を持って、右人差し指をピンと立てる。
「アミリエは恋したことがないのかしら?わたしは、もう甘い世界の住人なのよ」
そう宣言して輝かんばかりの笑顔をアミリエへと向け、おどけてみせた。アミリエとしては
マレーネの情報は織り込み済みだったがマレーネ姫の人柄に虜になっていて、彼女に
尽くそうと心を決めていた。
「さようでございますね」
「あら、殿方のお名前は聞かないのですか?」
「アミリエに教えていただけるのですか?うれしゅうございます」
恭しくマレーネにアミリエは頭を下げる。
「ダメ。まだひ・み・つ」
「秘密にございますか……」
わざとではあったが、ありありと残念そうな表情をアミリエはつくってマレーネに見せた。
しかし、そこにはいくばくかの真実も存在していた。
「ご、ごめんなさい」
マレーネは立ち上がって、アミリエの細い肩に白いグローブの手を掛ける。
「だって、この恋はまだ始まったばかりだから、いつかきっと話すわ。だから、今は赦してね」
滅相も御座いません、と言う筈だったのに、アミリエの貌はパッと陽が射したように明るくなって
「は、はい。お待ちしております」 と答えていた。そして、もういちど 「ごめんね」 と言われて
額にかるく口吻されたのも嬉しく思っていた。唇を離したマレーネを思わず見てしまい、姫が
目元に朱を刷いて微笑んでいる。アミリエはマレーネを本当に好きになってしまっていた。
Misty 32
マレーネはアストリアの街並みを一望する窓の方へと歩いていって、腰掛ける。
「あぶのうございます。姫さま」
「いいの。気にしないで」
窓からの射す陽にきらめく長い金髪が風に靡き、マレーネは耳後ろに掻きあげる。
「ねえ、アミリエ。もうひとつだけ、聞いてもいいかしら?」
マレーネは悪戯っぽく微笑んでアミリエを見る。しかし、それはマレーネの偽装。
「なんでございましょうか。わたくしに答えられることでしたなら」
「わたしは娘の頃……そう、ミラーナだった頃にね……王子さまが来てくれてあの蒼い空へ
心ごと掠め取って往ってくれるものと信じていたわ」
その怜悧な容貌を横に向け頤(おとがい)を上げて、アストリアの空を眺めている。
「姫さま……わたしは……」
アミリエは思わず、今進められている婚礼のことと、なぜここにいるかを話そうかと思っていた。
「その想いは少しだけ叶えられた。でもそれは……いつかは終わりのあるもの」
マレーネの瞳が少しだけ潤んでいるのが見て取れる。
「姫さまだからなのですか……?」
「確かに、それもあるかもしれません。アレンがいったの。わたしを愛し過ぎてもよいのですかって」
「ひ、姫さま……」
「あら!」 マレーネは白いグローブで口を覆う。 「あ、あぶのうございます」
「いいの。誰かに聞いてもらいたくて仕方のなかったことだから。なにかスッキリしたわ」
「アレン様の御噂は……申し訳御座いません」 アミリエはマレーネに深く頭を下げる。
「妹君……母君、そして父君。アレンは真直ぐに見て言ったの。わたしは答えられなかった。
聞えなかった振りをしていたの。女でなく、姫になっていたの。アミリエ、わたしはアレンを愛し
過ぎてもよいのかしら?」 マレーネの真摯な瞳がアミリエを射抜いていた。
ageるべきか止めるべきか…
マジで悩んでおります。
取り敢えず結末まで見たいのでほっしゅ
Misty 33
姫さまが、アレン様の前から消えるというのですか、とはアミリエはマレーネには聞き返せない。
それは栓ないこと。
「愚問ね。アミリエ、わたくしはアレンに百花庭園で求愛したとき……」
「そ、そのようなことは、わたくしめなどにおっしゃらないでくださいまし」
アミリエはいったい自分がなんのためにここにいて、マレーネへ使えているのかわからなく
なっていた。主に忠実に仕える侍女として、そして……ただの女として、そこにいた。
「ごめんなさいね、アミリエ。やはり、こんな話しは、あなたには迷惑よね」
マレーネは淋しさを玲瓏の貌に落してアストリアの澄み切ったアトランティスからの
贈り物のようなディープ・シーブルーの空に魅入る。
「い、いえ……迷惑とかでなく……そ、それはマレーネさまのひめごとなのでございましょう?
差し出がましいことを申して、あいすいません!」
マレーネの玲瓏な美貌の翳りを陽光が退ける。
「ふふっ、そう。わたしの、わたしだけのひ・め・ご・となのね」
アミリエはマレーネの微笑みに貌が赧に染まっていた。
「御苛めにならないでくださいまし」
「あら、いじめてなんかいないわよ、アミリエ」
しかし、この侍女の反応に自分の恋情をネタにからかいをしたくなっていたのも事実。
「う、うそにございます……マレーネさまは」
(わたしは、なにをやっているのだろう……)
「ねえ、アミリエ、聞いてくれるでしょう?」 「は、はい……かしこまりました」
「そんなに、固くならないで。大したことではないから。わたしはアレンに求愛したとき、このアストリア
さえも捨てられますと申したの」
アミリエは眩暈がして卒倒しそうになる。イノセントなマレーネさまのことだからと、思考は
働いていても、現実と対峙するのとではイメージが違いすぎていた。ヌエバに言い含められた
マレーネの災いを退ける盾となれという任の重さを痛感していた。
Misty 34
「御本心なのでございますか……?」
マレーネはアミリエの問いに暫らく答えなかった。
「本心といえば、そうともいえるし、愛を語ってしまった女の戯言とも……わたし自信がよく
わからないのです……」
「それをお確かめになりたいのですね」
先ほどの卒倒しそうなほどの驚きとは逆に、冷静にアミリエは考えていた。恋の華を情欲に変貌
させ焔のなかへ投じればいい。朝には華は枯れている。熱情とは一瞬にして燃え盛ってこそのもの。
フレイド公国との婚礼が本決まりとなる前に……華を萎れさすのを早めるだけ。それは確信へと
変っていた。
「えっ……」
「このアミリエがアレン様と姫さまの橋渡しをいたします」
「本気で申しているのですか?」
「不躾を承知で申し上げます。マレーネさまからアレン様をお誘いになるには機会は少ないかと
存じます。ましてや、躊躇いもございましょう」
「あなたの好意に甘えてもよいのかしら」
「良いも何も、アミリエはマレーネさまの小間使いにごいます。マレーネさまの想い人の御名を
お聞きしたのも何かの縁にございましょう」
マレーネは思案していた。否、思案というよりは事の確認に近いものだった。アレンの恋情を
堪えて、彼からの誘いを待つだけが女の所作とわかっていても、とうてい堪えられるものではない。
遅かれ早かれ侍女の誰かを巻き込んで、アレンとの橋渡しとなってくれると申してくれる者を
望んでいた。結果的にはアミリエにアレンの名を明かしたのも、良しとすべしと。
「あとで文を認めておきます。よろしく頼みますよ、アミリエ」
「もったいなきお言葉にございます」
アミリエは恭しくマレーネに頭を下げる。
151 :
名無しさん@ピンキー:03/05/16 19:41 ID:Xu6RxOSF
dokidoki
152 :
山崎 渉:03/05/22 02:38 ID:xrMBzNXC
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
153 :
山崎 渉:03/05/28 13:44 ID:3MGJJ1xD
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
たまに見に来てるよ。
頑張って
ただ繋ぐだけだと恐ろしくテンポを削いでしまって、山場をどう
持っていくかに手詰まりになってます。結末は決定しているのに
トホホです。
それにブックオフで角川小説エスカCを見てしまったのも原因かも。
156 :
名無しさん@ピンキー:03/06/04 18:11 ID:y8uPweqO
アレンセレナみたいなあ…
高校のころかなりハマったんだが
157 :
名無しさん@ピンキー:03/06/14 20:37 ID:Utvdyf8H
はやくマレーネとアレンの続きがみたいよー。
名無しさん早く書いてー あ、エリーズってアレンの事好きなんじゃなかったっけ
マレーネって本当に美人ですよねー
あぼーん
159 :
名無しさん@ピンキー:03/06/23 21:51 ID:ylZdMVVF
マレーネ 俺の女になってー
あぼーん
あぼーん
あぼーん
163 :
名無しさん@ピンキー:03/06/23 22:39 ID:g2PcyB66
164 :
名無しさん@ピンキー:03/06/24 21:19 ID:kiIVL/5P
エスカフローネ のエロサイトを紹介してくれ
あぼーん
>>155 納得ゆくまで話を練り上げて下さいね。
>>164 裏ページならぐぐってもそれなりにヒットします。
あぼーん
168 :
山崎 渉:03/07/15 11:15 ID:vhmwz+RP
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ ∧_∧
ピュ.ー ( ・3・) ( ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
= ◎――――――◎ 山崎渉&ぼるじょあ
170 :
名無しさん@ピンキー:03/08/05 19:51 ID:ux+o2w74
ハヤク マレーネトアレンノツヅキカイテクレー
あぼーん
『35』
アミリエに想いを綴った文を託させて、アレンを誘った。女から男を誘うことに
躊躇いがないわけではなかった。娼婦とまではいかなくとも、慎みのない女と
アレンから見下されはしないだろうかと思いもした。
「で、どうだったの?ねえ、どうして笑っているのよ」
慎み。いったい、何に対するものなのだろうか。女の秘事に対するあけすけな
欲求は禁忌だろうか。
私は国の道具などではない。お人形でもなければ、生きている人間だ。アレンへの
愛と恋、セックスとがマレーネの中で、一緒くたになって蕩け合ってしまっていた。
「申し訳ございません。マレーネ様」
アミリエは深々とお辞儀をした。
「もう、わたしをからかっているのね。ひとり、馬鹿みたいだわ」
マレーネはそう言ってはいても、瞳は煌めいていた。フレイド公国との繋がりを前にして、
熱情に身を置いた女の一個人の感情は不要だった。アストン王とヌエバは、マレーネの
恋をそう見なしていた。
その熱は時とともに一気に高まって、鎮まることを知っている。永続的な関係とは<全くの
別物であることを知っていたからこそ、婚儀までのマレーネの気持ちを推し進めることに
したのだった。
それが、ヌエバとの橋渡しとして送り込まれた侍女のアミリエだったが、彼女自身が
マレーネの人柄に惹かれていて、事はうまく運んでいた。
「アレン様は最初は、訝られていましたけれども、口元は笑っておられましたよ」
「アレンは笑っていたの……」
マレーネの貌が曇ってしまう。
「いいえ、喜んでおいでになりました」
「ほんとなのね!」
「ええ、もちろんですとも」
173 :
名無しさん@ピンキー:03/08/06 20:23 ID:6/XjMKYB
もっとつづきがみたいよー、エリーズ姫だしてくれー
心地よい気だるさがマレーネの躰を支配していた。アレンをついに、自分の寝室に
引き込んだことに後悔はなかった。薄暗がりの中、アレンが疲れて眠っている傍で、
マレーネがパレスの離宮の窓より、幻の月を眺めながら唄を口ずさんでいる。
アレンはマレーネに気づかれぬようにそっと起きて、その歌声に聞き入っている。
唄がちょうど終わって、愛しい恋人の寝顔に願いを掛けようと目をやると、
マレーネはアレンを起こしていたことに気が付いた。
「ごめんなさい、アレン。あなたを起してしまっていたのですね」
気まずそうに、そして、少しだけ嬉しそうに微笑んでアレンを見た。
「いえ、心に染み入る響きでしたから、このまま眠りについていてもよかったのです」
「アレンもお上手を言うのね」
シーツに両手を付いて、アレンの瞳をマレーネが覗き込んだ。薄暗がりでも、
やわらかな光を放つ、マレーネの髪がアレンをやさしく撫でる。
「歌には疎いですが、世辞ではありませんよ」
「ただの、流行歌なのに?」
「マレーネさまの御声が美しいからでしょうね」
すぐに、アレンの答えが返ってきた。嬉しくもあり、不安が無いわけでもない。
青年といえども、これほどまでに凛としているのだから、女の影があっても
おかしくはない。
「ありがとう、アレン。でも、ほんとうにご存知ないのかしら?」
「いまのわたくしには、マレーネ様しか見えませんから」
アレンは苦笑しながらマレーネに答えていた。事実ではあったが、アレンの
真実ではなかった。母、エンシアの面影をマレーネに重ねていたことは、
否定できない。
「それに、マレーネでしょ」
少しだけ拗ねるように、悪戯っぽくアレンに笑った。
175 :
名無しさん@ピンキー:03/08/06 22:27 ID:6/XjMKYB
もっとつづきみてー マレーネっていい女だよなーほんと
でもエリーズも捨てがたいなー
176 :
名無しさん@ピンキー:03/08/06 22:29 ID:6/XjMKYB
マレーネがでてくるエスカフローネのサイトほかに無いかなー
エスカはもう古いから無いのかなーさがしてもないんだよー
『37』
「このアレン、マレーネさまに偽りなどは、申してはおりませぬ」
許されるだろう、ささやかな嘘。でも、ほんとうに嘘なのだろうかとアレンは思った。
「何が、でしょうか?」
「わたくしは……姫様もお人が悪い」
アレンに寄り添って、瞳から下腹を横目でチラッと見やって、ふたたび見つめていた。幻の
蒼月の夜にマレーネの朱に染まる、羞恥の貌をベールで包み、幾ばくかの勇気を与える。
「あら、そうかしら?ふふっ」
白く長い、二の腕までを隠す手袋を取って愛されたマレーネが、アレンの胸を愛撫していた。
その小さな乳首を弄んでは、また撫で回す。恋人が「あっ」という小さな喘ぎを洩らして、
マレーネは気持ちを昂ぶらせる。
「このアレン、剣に誓って、嘘、偽りは申してはおりません」
「天空の騎士が剣に誓うなら」
腰に掛かる白い布へマレーネの手は伸びて、指頭がアレンの下腹を弄った。愛と恋と
秘事の違いをわからなくさせてしまう躰の近くに、綺麗な指がそっと伸びてゆく。
「誓うなら?」
「私も誓いましょう」
微笑むと、肉茎に絡んだマレーネに反応してアレンが顫えた。アレンの手がマレーネの
火照る頬に触れ、かたちの良い頤を撫でる。肌のふれあいに、マレーネの胸が少しずつ
揺れ始める。先ほどまで、躰を熱くさせていたものが、今は手にあった。マレーネはアレンの
膨らみ始めたものを、剣の柄を握るようにして下腹から天上に向け、上下に扱いた。
しかし、アレンの腰には白い布が掛けられてあり、その所作をマレーネは実際に目にしている
わけではなかった。だから、思った以上に積極的にもなれた。
「ううっ」
アレンの腰が跳ね、頤を愛撫していた手が、マレーネの熱い吐息を洩らす唇にそっと触れて
シーツに堕ちる。そしてアレンは悶えながらも立て肘をついて、躰を起して腰に掛けられていた
白い布を一気に取り去る。
『38』
「あっ……!」
アレンの逸物に今更ながら驚き、それに絡めた自分の手に向けた視線を逸らそうとする。
それにともなって、アレンに込められていた、マレーネの力が緩んでしまう。
「マレーネ……わたくしは、剣に……いや、もっと強く握ってください。逸らさないで」
滑稽過ぎるほどの―――
「わたしは、剣にではなく……唄に。人魚のささやきに誓います」
(変らぬ想いをあなたに捧げます。口ずさんだ唄に、ささやかな女の願いを込めて)
―――言葉が行き交っているはずなのに、躰中が火照っているのがわかる。
アレンのペニスも灼つくようだ。マレーネはアレンが望んだとおりに、剣の柄を握るようにして
力を込め上下に扱いていると、アレンの呻きを耳にした。
「う、ううっ」
「こんなにも、つよく握ってしまわれて……だいじょうぶなのですか?」
マレーネのはにかんだ顔がアレンへと降りていった。
「ええ、このまま続けて……いただいてかまいません」
「わかったわ」
マレーネはアレンに軽くキッスをしてから、やわらかい髪でアレンの躰を掃き、性器を愛撫する
右手へと赴く。そして左手で陰嚢をそっと包み込んだ。マレーネは羞恥に染まった貌をアレンの
下腹に埋めた。まだ、先ほどの名残りがある場所だった。むっとする、性臭が漂うが苦には
ならないというより、これが男と女の姿なのだと怜悧なマレーネは頭で解していたからに他ならない。
「おかしいでしょ、アレン?たかが、流行の歌に誓うだなんて」
女は愛する男の言葉で変る。気持ちを男に躰を開くようにして、身をゆだねたことから舞台そのものを
変えてしまうこともある。良くも悪くも。マレーネは笑顔のまま、アレンの性器に頬摺りしながら語りかけた。
「いいえ、わたくしにはわかります、マレーネ」
「うそ」
マレーネが珍しく唇を尖らせていた。
179 :
名無しさん@ピンキー:03/08/12 21:58 ID:0mHQhehn
あぼーん
むう。相変わらずいい。乙です。
『39』
「また、そのような」
肘を付いて上体を起こして、困った貌でマレーネを見ると、アレンのものを握っていた手を上に
引っ張るようにしてから下腹部に密着させた。そしてマレーネは手の平で押し付けるように
転がしながら、アレンの勃起を高める動作を繰り返す。マレーネは性戯などというよりは、アレンの
性器で遊んでいるようにさえ見える。
「悪い子かしら?ねえ、ミラーナみたい……でしょ?」
アレンの手がペニスを弄んでいるマレーネに絡んで、細い手首を掴む。囚われた感じがして、
鼓動が速まってゆく。
「あっ……」
「それは、少しミラーナさまに悪いでしょう」
「ふふっ、そうね。でも、少しだけなのかしら?言い付けるかも」
「よしてください、マレーネ」
「なんだかそんな気分」
目元に朱を刷いて、口元をほころばせる。
「えっ……」 「ちがうわよ。こうしてアレンを可愛い、可愛いって、しているような……ことです」
アレンのペニスは下腹部に押さえつけられ、マレーネの手を跳ね除けそうなくらいビクンと
痙攣していた。
「はやりには疎いですが……その唄に込められた、祈りは聞き分けることが出来ます。
マレーネさまの祈りは、わたしにちゃんと届きました」
出奔した父には憎悪すら抱いていたが、その父に対してエンシアが変らぬ愛を貫いていたことは
良く知っていた。アレンはずっと見続けていた。だから、そのおんなの想いには、アレンは
近づくことが出来る。マレーネにすれば想いが叶って、ひとり恋人の寝顔の傍で愛の祈りを
捧げるのは、悦に入っているふしが少なからずあった。そんなマレーネだったから、
彼女は驚いて小さな声を上げた。ありがとう、とてもしあわせよと、それだけ言えたらどんなに
よかったろうと思うことがある。
「わかるのですか、アレン!」
183 :
山崎 渉:03/08/15 16:43 ID:4fmQeeOf
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
184 :
キラ ヤマト:03/08/15 21:38 ID:DjDtOsOU
はやく続きが見たいよー エリーズ姫っていい女だよねーでてこないのかなーマレーネいい女だよほんとに
アレンはマレーネの事は今でも心のどこかで愛しているんだと思う。
エリーズはその事にきずいているからアレンに自分の気持ちをいえないんだと思う。
185 :
キラ ヤマト:03/08/15 21:43 ID:DjDtOsOU
エリーズニハ幸せになってもらいたい ミラーナには婚約者がいて自分にはいないのはおかしいたぶんアレンが好きだからアストンが縁談すすめてもことわっているんだろうけど
某スレで叩かれてたけど…
煽り叩きは2chの華、みたいな事のたまってる香具師も多い。
へタレてはいけません。
つか、漏れはおまいの作品殆ど読んでるぞ。(゚ε゚)ガンガレ!!
>>186 そのスレは知らないが、気になる発言ですな。
自分は職人さんの文に刺激を受けている。そのスレでは物語の流れや修飾のされ方、ま
たはキャラそのものが批判されているのかもしれない。
それでも、職人さんには頑張ってと言ってきた。たとえ一回ごとの密度が薄く、荒らが
目立っても、自分は職人さんの文が嫌いになれないのだ。
頑張れ。
あぼーん
『40』
マレーネの躰が躍り出るようにして、アレンの胸に綺麗な乳房を押し付ける。アレンの滾りはマレーネの
やさしい手から波打つ柔らかな恥丘に押し付けられる。アレンはマレーネの想いそのもののように自分に
向ってくるマレーネの金髪を撫でて手櫛で梳いてやっていた。薄明かりの窓から射す、幻の月に照らされて、
アレンはマレーネの美しい瞳に魅入られていた。
「わたしを見くびらないでいただきたいものです、マレーネ」
マレーネもまた、若き天空の騎士の冗談のようでもあり、真摯さを併せ持つ青年の瞳に吸い込まれそうだった。
「では、多くのおんなをアレンは知っているのかしら?」
マレーネは悪戯っぽく、笑みを浮べながらアレンに踏み込んでゆく。青年でありながら、アレンは自分の乙女心を
見透かしている、そんな気がしないでもない。剣を構えたアレンを見れば、女ならだれもがそう思うだろう。だとすれば、
アレンに女の影があってもおかしくは無い。ましてや、それ専門の知識や会話にも秀でて、美貌を兼ね備えた
高級娼婦もいるのだから、マレーネは内心穏やかではなかった。だがアレンはあっさりとそれを認め、そして否定をもした。
「わたくしは、女性に母上の面影を追っているのやも知れません」
「母上の面影を、ですか……?」
アレンはマレーネの肩を抱くと、その躰をそっとベッドへと横たえる。
「お気を悪くなされたでしょうな、マレーネ様」
「わたしはマレーネですよ、アレン」
シェザール一族の噂の概要は、マレーネも聞き及んでいた。当主が出奔し、アレンの妹のセレナは失踪し、終には
母のエンシアが天に召されたこと。アレンにマレーネは慰めるかのように額を擦り付ける。
「変らぬ想い。つよき想いをわたしは母上から教わりました」
アレンの語りにマレーネは耳をすました。そして、その蒼い瞳は恋人の騎士から青年へ、そして子供の瞳へと
変っていった。アレンの強さの裏に何がしかの翳りをマレーネは感じとる。
「正確には、母上の祈りだったのでしょう」
その言葉とともに、アレンの瞳は天空の騎士のものへと戻ってしまう。アレンはそれに続く言葉を呑んで
しまっていた。
つか、この板本当に広告uzeeeeですが
頑張って下さい。
マターリ応援しております。
エスカも映画版がもうちょいボリュームあったらなぁ。
割と大手だったエスカ同人もWJ系に流れ、
エスカゲーム作ってたサイトも半凍結状態、
残念でならない。
191 :
キラ ヤマト:03/09/05 23:25 ID:SGjgk5+Z
はやく続きをかいてくれーまちきれないよー お願いエリーズとアレンのからみをかいて
192 :
キラ ヤマト:03/09/15 19:59 ID:sOVnyPfI
つづきを早く書いてクレー おねがいします。
エスか のどうじんしが欲しいよー
>>192 都心部に、たとえば東京に住んでるなら秋葉原や新宿など
同人誌を売る店がいくつもある。そこで買われたらどうだろう。
地方でも規模の大きいデパートであればコーナーがあったりする
196 :
キラ ヤマト:03/09/17 20:47 ID:ezdm3RR5
はやく続き書いてー たのしみにしているんですー
>>196 「‥‥困ったものだな」
豪奢な調度品に囲まれた一室で、ディランドゥは白磁の椅子に背
を凭れていた。
紅いワインの入ったグラスを右手で揺らし、目の前の黒服を見る。
「フォルケン。キラを殺せ」
ディランドゥはにべもなく宣告した。有無を言わせぬ口調であっ
た。
「‥‥しかしディランドゥ様。よく考えていただきたいのですが、
『{懐かしの}●●エスカフローネ●●』スレッドは末期的な状況
に陥っております。誰かが保守を行わなければ、その存在は海の藻
屑となりましょう」
「ほう」
ディランドゥは鋭い眼光をフォルケンに向ける。「という事は、
あのスレが奴の思うがままでいいというんだね。始終職人にものを
強請り、他の住人には見向きもしない──それでいいんだね?」
ディランドゥは努めて感情を抑制しようとしていた。人血の入っ
た地酒のせいか手が震え、頬が染まる。
「運命改変装置は、人界には使えませぬ」
「フォォルケン!!」
ディランドゥは憤怒の形相で立ち上がり、右手のワイングラスを
握りつぶした。
パリン、とグラスは割れ、ディランドゥの右手に破片が突き刺さ
る。
手元から、ワインがぽたり、ぽたりと垂れ、ディランドゥは手に
ついた赤い破片を振り落としていった。
「あのスレに作家が一人しかいないなんて分かってるさ。だけど何
だアイツ?!
──キラ ヤマトとかいって‥‥生意気なんだよ亜;所為gふぇrあふぉsdアwニ九度ロウ@エ坐イr:hごpf;ふぼあwgr@!!!」
ディランドゥが絶叫する。
「ディランドゥ様」
フォルケンは、ディランドゥが己が話を受け入れるのを待った。
「自ら職人になっては、いかがでしょう」
「それができれば苦労しないんだよ」
冷たい眼差しでフォルケンを見やる。先程までの憤慨が嘘のよう
に、落ち着いて低い声でいった。
‥‥そうなのだ、こういうお方だ。
どれほど激昂しておられても、奥底に氷の意思をお持ちだ。だか
らこの方は恐ろしい。
「分かりました。‥‥わたくしが投稿いたしましょう」
運命改変装置が人界で役に立たないのならば、それに変わる動き
を起こさなくてはいけない。
フォルケンはディランドゥに、そう宣言した。
<いろいろな意味で 糸冬 了 >
ディランドゥとフォルケンは俺あまり好きじゃないなー マレーネが好きだ
俺はディランドゥのイカレっぷりが一番好きだった
だからトッピングのジャジュカも好き
エリーズッテイイオンナダヨナー シンピテキッテイウノ
禁欲的な服装に、特殊な耳飾りが謎で確かにそそられるものがあるよね。
アレンをどのあたりから、慕っていたのかとか、たえず墓には行っている
みたいだし、ミラーナには手を出さないでと釘を刺す辺りでは
なにかあったんかなあとも。学研のファンブックにそのへんの推論が
いろいろとでてた。公式設定とかではどうなんかなあ。
額って広かったんだっけか。
テレビ版エスかの物語はまだ終むすばれてからおわってほしいわっていないんですよ、あのあとアレンはェリーズかみらーなと
保守
アレンは結局誰が好きなのかなー ひとみ マレーネ エリーズ ミラーナ
エリーズはアレンに好きとは言ってないけど、いい男を自称しているアレン
の事おそらくエリーズの気持ちにはきずいていたと思う。
みなさんはどう思う。
206 :
魔人ブウ:03/09/24 22:08 ID:U3snNZ9j
エリーズのイラストがでている。 サイトないですか紹介してー
207 :
名無しさん@ピンキー:03/09/26 21:30 ID:kDUhMQX6
マレーネとアレンの小説の続きはやく書いてください、楽しみにしているんです
208 :
名無しさん@ピンキー:03/10/01 18:55 ID:TPjWBmMC
お願い保守
209 :
名無しさん@ピンキー:03/10/16 00:48 ID:Z+CeXBwZ
>>206 保守がてら検索してみたが、……ないですな。当方リアルタイムで見て以来
記憶がないので、どんな顔かキャラ設定かもさっぱりです。
ネタ振りできず申し訳ない。
210 :
名無しさん@ピンキー:03/10/22 20:19 ID:1UMbfJPA
>>210 遅レスだが、サンクス。自分がまったくキャラの姿形を覚えていないと知ったよ。
こりゃビデオでも借りなくちゃな。
作者さん。乙です。今後どのような展開になるかはさっぱり不明ですが、
さりげなく応援してます。がんばって。
hosyu
-
-
215 :
名無しさん@ピンキー:03/12/10 03:01 ID:Q7PxFbT5
保守
保守
217 :
2ちゃんねらー:03/12/29 19:02 ID:h5OTVG1I
続き書いてクレー 楽しみにしているんです
218 :
名無しさん@ピンキー:04/01/18 21:43 ID:VjhL8zIn
マレーネとアレンの話 続き書いてほしい
マレーネ ミラ エリ っていい女だなー
みなさんは三人のなかでだれがいい
219 :
名無しさん@ピンキー:04/01/20 21:04 ID:OT1Myi7Z
だれも書き込まないさみしーよー
221 :
名無しさん@ピンキー:04/01/24 08:30 ID:yNse7mnr
アレンの事 好きなくせになぜ素直になれないんだろう
マレーネに対する劣等感か
>>221 ただ奥手なだけだと思った俺は、ダメでつか?
223 :
名無しさん@ピンキー:04/01/27 08:34 ID:XdDIRqpw
それもあるかもしれない、ミラーナとやりあうきがないのかも
それに王族だし立場があったから
224 :
名無しさん@ピンキー:04/01/27 23:04 ID:XdDIRqpw
マレーネはエリーズがアレンの事好きって知っていたのかなー
225 :
名無しさん@ピンキー:04/01/27 23:05 ID:XdDIRqpw
アストン王とエリはしど王子がアレンの子だってしっているんだよねー?
まあ、額に青筋浮かべて
「しーどーは私の子だあっ!!」とか力説してたしなあ。
227 :
名無しさん@ピンキー:04/01/31 18:23 ID:36UlaPqx
えすかはあれで完全におわっていないんですよねー
アレンはエリかミラとくっつくとおもっているんですけど
皆さんはどうおもいます
いや、ここは妹さんと。
229 :
名無しさん@ピンキー:04/02/01 18:14 ID:HNaFUgnL
でもエリには気になる相手がアレン以外にいないみたいだし
妹に取られたら一生独身だかわいそう
230 :
名無しさん@ピンキー:04/02/01 18:48 ID:q/C5dL1k
>>229 エリとアレンは二人で、一人で生きていけないセレナの世話を焼くと思う。
で、一緒に暮らす方が普通となり、そのまま結婚。
ミラは良い男を求めて世界中をさすらう強い女性になる、と思う。
ほしゅしときますね
保守
itiouhosyu
圧縮寸前保守
たまにはage
237 :
名無しさん@ピンキー:04/04/05 22:12 ID:uA7+OvHc
神さま来ないかな・・・
移転age
エスカのエロパロ。
同人誌なら小説から漫画まで、まだまだ良く見るけどね。
個人的には結構面白いのが多いと思う。
ただ、ほとんどはバァンとひとみのカップリングだけど。
240 :
名無しさん@ピンキー:04/04/29 07:36 ID:fcJQvVn5
バァンxひとみのカップリングは女性ファンが多い所為?
少数派な男ファンとして、他のキャラもキヴォンヌしたいところ。
同人漫画だとメルル本とかエリヤ/ナリア本とかならある。
あと、いまかy
>240
だろうね。圧倒的に女性ファンが多い。
でもエスカオンリー会場では男も結構いるぞ。
去年その会場でアレン&マレーネ本は買った。
242 :
名無しさん@ピンキー:04/04/30 09:17 ID:X05245CO
ゾンギ × アレン で何パターンか書いたのがMOに埋もれてるはずなんだが……
243 :
名無しさん@ピンキー:04/05/02 19:23 ID:TrhK9mO+
ゾンギ × アレン ?
どのような流れであの二人が?
244 :
名無しさん@ピンキー:04/06/11 05:27 ID:yO0TYKSf
ほしゅあげ
245 :
名無しさん@ピンキー:04/06/11 22:56 ID:rtUBIrie
エスカフローネ、大好きだった。最後がちょっと切なかったけど。
ニュートンが何考えてたのか、もう、忘れた。
バァンとひとみが再会して、また活躍する話、ないかなあ。
246 :
名無しさん@ピンキー:04/06/18 23:26 ID:WyJKfQid
結○氏は、続編は難しいって(T_T)
(;゚∀゚)=3続きキボン
248 :
名無しさん@ピンキー:04/07/04 21:33 ID:a0FMQWRY
スーパーバイザーのK氏がリメイク好きだから、そのへんに活路があるかもね。
長寿スレ発見
まだ残ってて嬉しいな
251 :
名無しさん@ピンキー:04/07/17 00:49 ID:fESkyhFh
確かに長寿スレだね。
でも夏コ○くれば、エスカのエロパロ本はけっこあるよ。
ご希望のカップリグか分からんが…
今度はバァン一筋なひとみを見てみたい。映画みたいな短編じゃなく続編で。
アニメの続編やってほしいよなぁ。
あの最終回あんまり納得いかなかったし。
Mistyさんどうしてるかな…
253 :
名無し:04/08/13 01:22 ID:EMIbPug8
保守
ほっしゅーーー
いいアニメだったよね
おっと俺も保守しとこ
最下層記念保守
いつのまにか最下層でありつつ二周年ですよ?
それにしても何かネタはないのか?
めるるノーパン疑惑とか何かあるだろ
メルルは疑惑つーかtv版ではモロノーパンだったよ。
お尻一瞬見えてるシーンあったし
たまに覗きに来てたけど自分ではエスカのエロネタは思いつかないな
260 :
名無しさん@ピンキー:04/09/30 01:00:23 ID:wUna/2AB
劇場版ではしっかりパンツはいてたな、メルル。
そういや、夏○ミでエスカのエロパロ本買った猛者はいる?
1カ月以上放置でも落ちませんな
>>261 同意。流石は我等がエスカといった所でしょうか
エスカは俺の中でも清純な作品だよ。
上の方で長編小説かいてる人のは面白かったんだが・・・
復活しないの?
264 :
名無しさん@ピンキー:04/11/09 23:47:47 ID:aeTRsnxE
保守
>>263 いつか戻って来てくれることを信じよう・・・
それまで我らが保守するのだ!
保守
ホッシュ
ほすり
保守っときますね・・・
いつかまた盛り上がる事を信じて・・・
保守
続編の続編は予定ないのかね
またストーリーが変わってしまったら
それはそれでイヤンだが
下がりすぎあげ。
いや上げる意味ないから
ネ申の降臨待ち。
神か。
懐かしい響きだな。
276 :
名無しさん@ピンキー:05/03/09 01:44:04 ID:gNIGjU6v
あげ
まだあったんだ。ネタもないのにたいしたもんだ・・・
根強い人気が…というわけでもなさそうだなw
1000になるまで保守をする
根強い人気は?だが、ケーブルで放送してるのがうれすぃ。。。
久しぶりに観たがヤパーリ(・∀・)イイ!!
メルルかわいい。。。
バァンとひとみの純愛エッチが読みたいよー!
エッチでなくてもキスまででもいいからぁ!
お願い(-人-)します。
282 :
名無しさん@ピンキー:2005/05/08(日) 07:55:15 ID:EMDwvsFg
age
どうせなら
・鬼畜アレンのハーレム話(含セレナ)
・ドライデンにやり込められるミラーナ
・ナリヤエリヤ
・肉奴隷ソラ
とか希望
映画は基本的に否定
占いとガイアは密接に関わってたと思うので。
それだけに不安定なんだけど、そこが魅力の世界だった筈だから
>>278 固定ファンとかいない訳でもないよ
バァンさま同盟みたいなのを見たことがある
(何でもアニマックス放映記念だそうだ。某○○屋神がバナー貼ってた)
公式サイトみたいなのとか無いのかなぁ……
ビデオとか持ってないし見逃してもうたから
キャラの特徴とかやり取りとかを殆ど忘れてしまった
保守がてらつまんない雑談。
今もし映画版とかリニューアルをやったら、
バアンがジャイアン(瞳)にふりまわされるスネ夫のポジションになりそうだ。
というか関さん、あの頃をピークにどんどん発生が甲高いものに……。
あと、フォルケンが主役で自分を捨てた王国に復讐する巌窟王子とかも
見てみたかったり。最後はヒロイン(バアン)のキスで昇天するんだ、きっと……。
>285
かなり自分の趣味と被っとる! 同 士 よε=(゚∀゚)
最近エスカDVDを1から集めだしますた
忘れるにはあまりにも惜しい物語だし、何度見てもせつねぇ…
バァン×ひとみの純愛SSキボンヌ。
287 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 20:44:11 ID:B8l+d6g8
保守
288 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 18:14:07 ID:65VvcC2Z
age
289 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 17:32:25 ID:M/nt6xXd
はぎとり御免
ゴメン
んが
291 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 19:12:52 ID:J9kv/vQX
正直クレクレ意見ばっかで萎える
それなりに組み合わせは出揃ってるが、事までに至るものがなんにも無きゃ
書けるもんも書けやしないと思うがな。
書きやすそうなネタとしては、
最初の方でSSになってるのを除くと
・ナリヤエリヤ
・肉奴隷ソラ
・ディランドゥ(セレナ?)人体実験
・メルルとかにハァハァするフェチ系小ネタ
陵辱系が多いのは情報があまり無いから、だと思う
懐かしいアニメのスレがあって、かなり嬉しい。
このアニメは永遠に私の中で一番です。
あの時こうなってりゃなーという思いをこめて、バァン×ひとみを投下します。
「オレは…っ、おまえが欲しいっ!」
馬小屋の中バァンとぽつぽつ会話をしていたときだった。
突然のバァンの言葉に、ひとみは真っ赤になった。
ざんばらとした前髪の間から、鋭く射抜く眼光が、はっきりとひとみを見据えていた。
心臓がどきどきして、息が詰まった。
「…そんな、あ、あたし…」
頬を染め、おろおろしていると、バァンがまっすぐにこちらへ向かってくる。
干草を踏み潰し、しっかりとした足取りで、ひとみの前に立った。
「あたし、アレンさんのことが…」
「アレンなんかどうでもいい! おまえは…オレが護る」
揺れる瞳は逡巡を現していた。バァンはそれでも、そんなひとみの揺るぎを抑えつけてしまうように、はっきりと言う。
赤くなりすぎて、きっと変に思われてる。
ひとみはそうどこかで思いながら、目を伏せた。
「ひとみ…オレを、オレを見てくれ…」
かすれた声で、やりきれないといった声が、そんなひとみの耳をついた。
おずおずと見上げれば、バァンの泣きそうな瞳とぶつかる。
細く長い指が伸びて、ひとみの縮こまる両肩をつかむ。
「オレじゃ、ダメか…?」
「…バァン…」
吐息なのか声なのか判断のつかない音が、ひとみの心を震わせる。
――アレンさんは素敵な人だけど、先輩にも似ているし、好きだと思うけど。
近づいてくるバァンの瞳に合わせて、まぶたを閉じる。
――あたしがこいつに対して思うこの心は、違う気がする。この好きは、切なくて苦しいこの気持ちは…
柔らかな唇が、どこか遠慮がちに重なった。
――もしかしたら、恋なのかもしれない。
「ひとみ、すまない、オレは…剣術しか…知らなくて」
「…大丈夫だよ、あたしも、だもん」
顔を離したバァンは、真っ赤になって、顔を背けた。
ひとみはそんなバァンを見て、愛しさで胸がいっぱいになる。
肩に乗るバァンの手に、そっと自分の手を重ねると、バァンが目に見えてびくりとした。
「バァン…あたしのこと、欲しいって思ってくれたの、本当…?」
「ああ…本当だ。オレは」
「じゃあ、どういう風に欲しいのか、教えて」
あれだけ大声で欲しいと言ったくせに、いざとなるとキス以上のことができないバァンが可愛くて、
ひとみは少しだけ、大人ぶって言ってみた。
しばらく唇を噛み締めていたバァンは、ひとみの顔が見ていられないのか、がばりとひとみを抱きしめる。
両腕に力をこめ、ひとみの耳元に唇を寄せた。
「オレは…ずっと、おまえを抱きしめたかった」
「うん…」
「おまえがさらわれると心穏やかではなかったし…アレンと、おまえが…一緒にいるだけで…」
ぎゅうと、さらに力をこめる。ひとみが小さく呻いた。
「バァン…! い…た!」
「! …すまない」
慌てて力を緩める。力をこめ続ければ、きっと腕の中の彼女はぽきりと折れてしまうのだ。
不思議な力で敵の居場所を見抜き、幾度も窮地を救ってくれたひとみ。
だけど、今こうして抱きしめているのは、ただの女の子に過ぎないのだ。
「お日様の…においがするね」
「お日様?」
ひとみはバァンの背中に腕を回し、うんとうなずく。
「バァンのにおいは、お日様のにおい。こうしてると、すごく、懐かしい」
きゅっと抱きつくひとみの身体。
どくんと心臓が鳴り、唇が乾いた。
服の下からでもはっきりとわかるひとみの身体。
陸上をやっていただけあって、他の女性より引き締まった四肢。それでも…ああ。
「ひとみ…」
唇を首筋に滑らせ、ぺろりとなめる。
「あ…っ」
ぞくりとひとみの肌が泡立った。
「おまえは、甘いんだな」
少年の殻がひび割れて、青年へとなろうとしているバァンの心。
欲に忠実で、どこまでも溺れていたいと暴れるケモノが、青年の心へと忍び寄っていた。
草のにおいが充満する小屋の中、さすがに裸にはなれなくて、ふたりは干草の上で向かいあって座っていた。
「おまえの部屋に行くか? それともオレの…」
「ううん…今のこの気持ちのまま、あたし、バァンのものになりたい」
ひとみはそう言って、制服の上を脱ぎ捨てた。
瑞々しく息づく少女の裸身。小屋から漏れる日の光が、ひとみを優しく包んでいる。
バァンはそれを、目を細めて見つめた。
「…どうしたの?」
「おまえは、美しいな」
正直に言うと、ひとみは真っ赤になって、両腕で自分を抱きしめた。
「ちょっと、やめてよ! き、緊張するでしょ?」
「大丈夫。…オレもだ」
バァンはふっと微笑んだ。
――もう、ずるいんだから。
ひとみはぷっと膨れてみせる。
やっぱりバァンには、かなわない。
ちゅく…
小屋の中で、ひそやかに交わす愛の儀式。
ふたりはねっとりと唇を重ねながら、互いの身体をまさぐっていた。
バァンがひとみの胸をつかんで動かせば、ひとみもバァンのズボンの上から、彼自身を刺激する。
「ふ…っ」
時折顔を離し、互いに訪れる快感に酔いしれながら、愛撫の手は緩めずに、唇を求めた。
「ひと…み…っ」
だんだん形がはっきりとわかるようになるほど膨れ上がった彼自身をつかんでいると、バァンが耐え切れないと声を出した。
ひとみも胸の突起が固くしこり出し、下半身に熱を感じている。
「ん……」
バァンがもどかしいとズボンの中から己を引きずり出し、ひとみの肩を押し、干草の上に押し倒す。
草の匂いがさっと立ち上り、ひとみは息をつきながらバァンを見た。
スカートの中に手を差し入れ、濡れたショーツを引き摺り下ろしたバァンは、
「ひとみ…」
囁いて、茂みの中に指を入れ、塗れそぼる秘所を探し始めた。
「んあっ…やっ、バァン…!」
違和感と恥ずかしさで身体をくねらせるが、バァンは強引にその身体を押さえつけ、指を這わせている。
茂みの中に眠る、ひとみ以外の誰も触れたことのない柔らかな肉。
花弁を指でこじ開けて、ぬるぬるとしたものが溢れるその場所へと到達すると、バァンは歓喜の吐息をついた。
くちゅっと中へ指を入れる。恐ろしいくらいに狭くて、ここに入るのだろうかと一瞬不安になった。
「は…あっ!」
ひとみが眉根を寄せて、歯をくいしばる。
「大丈夫か? …無理そうか…?」
「う、ううん、い…いの……」
ひとみは目に涙をためて、健気に首を振った。
「あたし、バァンのこと、好きだから…」
目の前がかすむ。
バァンはそっと、ひとみに口付けた。
「ぐ…あっ」
「あ……っ!」
入り口に己をあてがい、ゆっくりと挿入を開始する。
ひとみは苦しげに息を吐き、両手で顔を覆った。
めりめりと音がしそうなほど狭いひとみの中。
最後までは無理だろう。バァンはそう判断するも、吸い付くように己を拘束するひとみ自身が、バァンを解放しそうもない。
怖いくらいに熱くて、挿れた先から溶けてなくなってしまうような錯覚まで覚える。
「ひとみ…っ」
汗と涙で濡れたひとみの顔が見たくて、顔を覆う両腕をつかむと、うるんだ瞳が目に飛び込んできた。
「バァン…!」
「おまえは…オレが…」
「…うん…」
ひとみがうっすらと笑う。
バァンも微笑んだ。
――お日様は、オレじゃない。いつだって、おまえだった。
腰を動かし、更に奥へと侵入する。
ひとみが両手を伸ばし、バァンもそれに応えた。
ふたりの手が絡まって、もっと深くつながっていく。
「あ……あっ、あっ、んぅ……っ!」
ひとみの熱に溶かされて。
バァンはいつの間にか、一心不乱に腰を振っていた。
痛みと快感とが織り交ぜになって、ふたりの思考が飛んでいく。
「く……っ!」
「あ――っ…!」
頭の中で、意識がはじけた。
ぐったりと意識を手放すひとみを見ながら、
「…ひとみ…」
望みが叶ったことを知り、安堵の笑みを浮かべたバァンも、その隣に倒れこんだ。
一方ザイバッハでは、フォルケンがドルンカークに「運命改変装置」の提案をしていた。
「いかがでございましょう、ドルンカーク様」
「…フォルケンよ」
「はっ」
仰々しい機械に囲まれた半裸の老人は、いつものように幻の月の娘の様子をのぞき見ながら、ため息をついた。
「あと少し早ければのう」
「…!? まさか?」
「その通り。あのふたり、ヤりおったわい」
「なんと…!」
がくりと膝を折り、フォルケンは落胆した後、心中で弟へ賞賛の言葉を贈った。
――バァンよ、おまえもやっと、男になったか…!
終わり
いつの間にか投下キテター!
GJ!最後のフォルケンワラタ
二人が素直だ。しかもラブい…それだけで感動ひとしお。
最後のフォルケンが全体のライトさによく合う。
もう上手い下手は超越して愛を感じますな。
GJ、とはこういうSSに捧げるべき言葉だと開眼致した次第。
GJ!!!
フォルケンいいなw
300get!
301 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 08:20:35 ID:6aMp7BfK
投下した者です。レスくださった方ありがとうございます。
今度はドライデンとミラーナもいいかなと思っていますが、
記憶が曖昧な部分があるので、今度ビデオを見直そうかと思ってます。
エスカはOPがまずいいですよね。
(´Д`|||)
下げたつもりだったのに!
すいません、ageてしまいました…orz
最近のアニマクソ放送を見て、萌え再燃。
久々にここに来たら、新作キテタ―――(゚∀゚)―――― !!
萌えたよ。しかもオチ笑った。
ドライデンとミラーナも大好物です。楽しみにしてます。
ナリヤとエリヤの由梨がほしい
301です。
ドライデンとミラーナ、投下します。
性格が多少変わってるかもしれません。
あとミラーナがうじうじしてる部分があるので、苦手な方はスルーしてください。
ひとみが幻の月に帰ってから、3年の月日が流れようとしていた。
商業国家アストリア王国の第3王女にして第1王位継承者・ミラーナ・アストン。
彼女はドライデン・ファッサとの婚約を解消した後も、独り身でいる。
時に怪我人のために自ら足を運んだり、下町へ出て人々と触れ合ったりと、国民からも絶大な支持を受ける彼女だったが、
それでも、誰とも結婚しようとしない。
「待ってるの?」
ミラーナの姉、エリーズが、そんな妹に声をかけたとき、窓を大きく開け放した部屋で、紅茶を飲んでいたミラーナはふふっと笑うのだ。
「いいえ、お姉様。わたくしは、待ってなどいないのよ」
「では、何故? 先日も、あなたにお話を持ってきた方を、笑顔で追い返したと聞いているけれど」
「だって、心に決めた方がいるのに、他の殿方と会うなんて、できやしないわ」
「やっぱり、待ってるんじゃないの」
「いいえ」
ミラーナは立ち上がり、金の髪を日に輝かせながら、歌うように、寂しそうに言う。
「あの人は言ったわ。わたくしにふさわしい男になるって。
わたくし、待ってるとは限らないと言い返したの。だから、待ってなどいないのよ」
「でも…」
「わたくしもね、あの人にふさわしい女性になりたいと思っているのよ」
「ミラーナ…」
振り返った妹の、なんと美しくも儚げな笑顔であったことだろう。
実の妹のまぶしい笑顔に、エリーズは目を細める。
「誰かがわたくしを幸せにしてくれる…ふふ、いつもそうだった。だから皆、わたくしから去ってしまうのよ。
だからね、もうそんなことは思わないようにしたの。
あの人にふさわしい自分になれるように。
わたくしには、もう身を飾る宝石など必要ないのよ。わたくし自身が、あの人を輝かす宝石になればいいのだと、
…ようやく気づいたの」
身につける装飾品は、胸元に光る大粒のロケット。それだけでいい。
人の心は変わる物だ。
保身しか考えなかった、彼の心を考えなかった自分に、彼はまた「愛してる」と言ってくれるだろうか。
いいや、もうそんなことを思うのはやめにする。
ひたむきに自分を思ってくれた彼への思いに気づくには、あまりにも遅すぎた。
彼は今も、商人としてガイアを駆け回り、一段と素敵な人になっているに違いない。
その彼にふさわしい自分になるために、もう過去を振り返ることはしない。
そんなある日、ドライデンの乗る飛空挺が近々王宮に立ち寄るという情報が舞い込んできた。
彼は戦争で家や家族を失った民たちを率いて街の再建に努めており、滅亡したザイバッハの知識を吸収し、
商人としての力をますます広めているのだということは、ガイア中に広まっていた。
「ドライデンが…!」
ミラーナの脳裏にありありと蘇る彼の姿。
長髪に、わずかに残ったあごひげに、丸めがね。
口調も相変わらずだろうか。自分以外の美しい女性に、またあの気障な台詞で囁いているのだろうか。
ミラーナはそれを思うと小さく吐息をついた。
ガイアは広い。きっと色んな見目麗しい女性が、彼の前で魅惑的に微笑んでいたに違いない。
そんな彼女らに、今の自分は対抗できるだろうか?
王女としてではなく、ひとりの女として、彼女らに劣らぬ自分でいられるだろうか…?
ドライデンが到着する当日。
ミラーナは念入りに化粧をし、服選びに没頭し、久しく使っていなかった宝石箱に手をかけた。
「……」
しばらく黙り、わずかに首を振る。
ありのままの自分を見てもらおう。
あなたの隣で充分に輝ける女であるには、もう宝石なんか、いらないのだ。
「ミラーナ!」
応接間に着くと、待ちかねたといわんばかりの勢いで、男が飛び出してきた。
あまりにも唐突過ぎて、彼の腕の中にいるのだということを理解するのに少し時間がかかる。
日のにおいと、わずかに鼻につく酒のにおい。力強い腕の太さ。頬から感じる胸の鼓動。
「なあ、ドキドキしてるだろ…?」
最初に会ったとき、手をつかまれて、胸に押し付けながら、言われた言葉を思い出す。
ミラーナは目頭が熱くなるのを何とか抑えながら、彼が変わらないでいてくれてよかったと、どこかで安堵していた。
「ああ、感極まって抱きしめちまった」
男はそう言って、笑いながらミラーナから身体を離す。両肩に手を乗せぐっとつかみ、まじまじとミラーナの顔を眺めた。
ドライデン・ファッサ。
ミラーナも彼の顔をじっと見つめる。
少し頬がこけた気がする。浅黒い肌はそのままだ。伸びた髪も、あごのひげも…丸めがねから覗く少し垂れ目の瞳。
3年前と変わらない。だけどどこかが確実に変わっている。
そうだ、彼には溢れんばかりの自信が、身体から漲っている。
王ではなく、商人として生きることを選んだ彼の選択が正しかったことを、彼はその身ひとつで、ミラーナに証明しているのだ。
「どうだ? ますます、いい男になっただろ?」
低く囁くように、ドライデンはウインクしながら言う。
この声とマスクで、今までたくさんの女たちを虜にしてきたのだろうことは容易に想像がつくが、悔しいから、自分だけははまってやらない。
ミラーナは首を傾げた。
「どうかしら? あなた、ちっとも変わっていないのですもの。わたくし、ちょっぴり安心しましたわ」
「お姫様も相変わらず、きっついねえ」
ドライデンは笑って、ミラーナの肩から手を放した。
「ドライデン…あなたの活躍は、王宮にも届いていますわ。わたくしも、自分のことのように、嬉しく感じています」
「そうか? あんたがそう思ってくれているなら、俺も嬉しいよ」
「街は今、どんな感じになっていますか?」
「着々と、復興に向けて進んでるよ。いいねえ、民たちが自分たちで街を生き返らせていく姿を見るのってのはさ!
俺の売り出す品々や、俺の持つ知識が彼らの動きを高めていく。これだから商人ってのはやめられねえ。
金を稼ぐことなんかより、俺にはよっぽど貴重なもんよ」
「…そうですか」
ミラーナはまつげを伏せた。
エリーズが、かつてもらした言葉を思い出す。
「夢を追う男を愛するということは、女にとって惨めなもの。
男は前ばかりを見て、隣の女を見ようともしない。
女の悲しい所は、それでも男を愛さずにはいられないということよ。
わたくしはね、ミラーナ。政略結婚が、女にとって必ずしも悪いことだとは思わないの。
王族という鎖で縛り付けておけば、少なくとも愛する人は高く飛ぶことはできない。
たとえ愛してくれなくても、ただそばにいてくれるだけでいいと思えるなら、それが一番いいことなのよ。
だってそうでしょう? 泣くのはいつも、女なのだから」
アレン・シェザール。
天空の騎士と誉れ高い美貌の青年。
彼に恋をした女は数知れず、その中にミラーナ三姉妹も含まれていた。
アレンの心を射止めたのは今は亡き長女マレーネ。
アレンの心が未だマレーネの元にあることを知っていて、それでも妹たちは彼を愛した。
その心を手放した今のミラーナには、エリーズの心が痛いほど見えてしまう。
エリーズは今も、アレンを愛しているのだ。
だが天空の騎士は今やセレナという失くした家族を得てしまい、恐らく他の女性を愛するということは、当分出来ないだろう。
彼を天空の騎士という地位で縛り付けておくことは、最早叶わないのだ。
それと同じように、ドライデンを、自分につなぎとめておくことは、不可能なことなのだと、ミラーナは悟った。
彼もまた、自由人だった。
ひとつの所に留まれず、生涯かけて、自分のために生きていく。
そんな彼から、かつて惜しみない愛を一身に受けていたなんて、今では信じられないことだ。
彼はミラーナを愛する心を手放して、本当に自由となった。
彼を愛しているのなら、彼のしたいようにさせるべきだ。自分のわがままで、今の彼を束縛することはできない。
誰かが幸せにしてくれる。
そんな幻想にしがみついていた報いだ。
「そなたにいつも、海龍神ジェチアのご加護があらんことを」
ミラーナは微笑んだ。心からの言葉を贈る。
「…ミラーナ?」
「会えて嬉しかったわ、ドライデン」
自分の感情を表に出さない訓練は、幼少時からしてきた。
けれど、今の自分には、これが精一杯だった。
彼の中に、もう自分がいないことを知った。
醜い感情を知られるわけにはいかなかった。
彼のためにと施した化粧も、ドレスも、何も意味をなさなかった。
彼は簡単な事務処理などをして、すぐにまたどこかへ行くのだろう。
せめて見送れるまでには立ち直らなければ。
自分を磨いてきたつもりだった。
彼にふさわしい女になりたかった。
…どうしてそんな、滑稽じみたことを思っていたのだろう。
ようやく会えたというのに、立派になってしまったドライデンに比べて見劣りしてしまう自分が恥ずかしくて、
ミラーナは自室に逃げ込んだ。
どうしてこんなに惨めな思いになっているのか、自分自身がわからなかった。
こんなとき、ひとみがいれば、占ってもらえただろうか。
…いや、あの時もそうだった。
ひとみの気持ちも考えないで、無理を言って占ってもらって、結果、ひとみは自分を酷く責めることになった。
もう誰をも頼ってはならない。
ドアにカギをかけ、ベッドに身を投げ出して、ミラーナは泣いた。
…悔しかった。
本当は、本当は抱きしめてもらってから、言ってほしかった。
あのときよりずっと綺麗になったって。
変わらず愛していると、言ってほしかった。
おこがましいにも程がある。
わかっているのに、止められない。
彼の愛は自分だけのものだと、ずっとうぬぼれていた。
彼の愛は、仕事へ向いている。
それに自分の入る余地はないのだと気づいて、ミラーナは声をあげて泣いた。
しばらく泣いて、そのまま眠ってしまったらしい。
まぶたに感じる闇が濃くなったことに気づいて、泣きはらしたまぶたを持ち上げる。
窓からは星明りが見えて、ミラーナはいけないと声に出しながら起き上がった。
「ようやく起きたか、お姫さん」
「きゃあっ!?」
暗がりの中、突然声がして、ミラーナは飛び上がって驚いた。
明かりもつけない部屋の中、見覚えのあるシルエットが、じっと自分を見ていることに気づく。
「…誰?」
「やれやれ。あんたの心に残るには、もっといい男にならないといけないようだな?」
「ドライデン!? …どうして」
まさかと思って聞いたのだが、やはりドライデンだったことに気づいて、ミラーナはかあっと真っ赤になった。
「あんたがいきなり出て行っちまうから…心配したんだよ」
「それは…ごめんなさい。わたくし、混乱してしまって…」
ベッドの上で、縮こまる。考えてみれば、非礼にも程がある態度を取ってしまったのだ。何を言われても弁解できない。
「混乱? どうして」
「いえ…つまらないことです。わたくしは、もう大丈夫」
「…大丈夫なもんかよ…」
影が伸び上がり、覆いかぶさってきた。身構えることなく、抱きしめられる。
ぎしっとベッドが軋み、視界が反転した。
「この3年…俺がどんな思いで、毎晩あんたを思い出していたか、わかるか…?」
「ドライデン!?」
「あんたが他の男を見つめていたときも、俺は何もしなかった。
国のために結婚を承諾してくれたことも知ってたさ。それでも、あんたが俺のものになるなら、俺は全然かまわなかった」
押し倒され、顔の両脇に大きな手がベッドの中に沈んでいる。
丸めがねが星の明かりをうけて、ちらちらと輝いている。…いや、この輝きは、彼の瞳のものだ。
「だけど、あんたにふさわしい男になるには、今のままじゃダメだって気づいた。
こんなに綺麗なあんたを…俺がどんな気持ちで手放したか…」
すっと、頬に手が添えられる。決して綺麗な手ではなかった。商人として生きてきた男の手。様々なものをその手につかんできた彼の手が、
壊れ物に触るように、ミラーナの頬を撫ぜている。
「ようやく手に入れにきたのに、まさか逃げられるなんてな…」
「ち、違うのっ! わたくしは」
「言ったろ、俺は、ほしいもんは、絶対…」
言いながら、瞳が近づいてくる。
ミラーナは慌てて口を開く。違う。逃げたのは、あなたの前にいる自分が。
言葉を発する前に、ふさがれる。
「ん…っ!」
婚約の儀で交わした軽い口付けとは違っていた。
食べつくされる――そう思わせるほど、激しく奪われる。
息苦しくて、ドライデンの肩に手を置き、押しのけようとする。そのわずかな抵抗が、彼の行動に拍車をかけた。
挿れていた舌を深くする。柔らかなミラーナの舌に絡ませて、唾液をすする。淫らな水音が、室内に響く。
「んは…っ、は、はあっ」
存分に味わいつくしてから、ようやくドライデンは顔を離す。ミラーナは慌てて酸素を求めた。
「俺はまだ、あんたにふさわしい男じゃないのか?」
「ドライ…デ」
大きく上下する胸の膨らみが、ドライデンを誘っている。そこに手を這わせると、びくんとミラーナが反応した。
「まだ…あの男が気にかかるのか」
「ち…っ、違うわ、ドライデン、聞いて…!」
か細い声で叫ぶミラーナの背に手を回し、ホックに手をかける。髪が引っかからないよう注意して、一気に下に下げた。
「俺にしては、待った方だ。だけどもう、あんたをものにするのに躊躇はしねえよ」
抵抗する四肢をやんわりと押さえ、ドレスをするりと脱がす。途端に目に飛び込んでくる、真っ白なミラーナの身体が、
明かりもないのに白く発光しているように思えた。
「全く…俺が美しいものに目がないってことを、神様はよくご存知だ」
「ドライデン…!」
「どうしてこんなに綺麗なんだ? あんたがこんなに綺麗じゃなきゃ…俺は…」
舌を出し、頬をなめる。女神でも天使でもなんでもいい。目の前の綺麗なひと。
耳たぶを甘噛みし、首筋にキスを。
「あ…っ」
甲高い声をあげるのは、そう、ミラーナだ。この世でこんなに美しいのは、この女しかいない。
ちゃらりと音がして、舌に何かが触れた。
「…?」
手に取ると、それはペンダントの鎖だった。ロケットが鎖の上をわずかに移動する。
「…大切な人の写真でも入れてるのか?」
自嘲気味に言い、ミラーナの制止の声も聞かずに開く。
途端にそこから転がり落ちたのは、何であろう、ふたつのリングだった。
ミラーナの腹の上に音もなく落ち、鈍い光を放つそれには、見覚えがあった。
「…こいつは…」
つまみあげる。
ふさわしい男になると言い残し、彼女に預けたもの。…もう二度と、見ることはないかもしれないと思っていたものだった。
豊かな胸を揺らして、ミラーナが起き上がった。
「ずっと、持ってたのか…?」
「ええ、そうよ」
ミラーナは、大きな瞳を涙でいっぱいにした。
「待つなんて、言わなかった。ええ、待つものですか。今度はわたくしが、あなたを追うのだと、ずっと思ってきたんだもの。
でもあなたに会って思ったわ。あなたは商人として生きていく人だから、もうわたくしは必要ないんだって。
あなたの中に、わたくしはもういないんだって…!」
そう言って肩を震わせるミラーナを、ドライデンはじっと見ていた。
「忘れたか…?」
そう言って、ミラーナの左手を取る。薬指を持ち上げて、そこに熱く唇を乗せた。
「俺はあんたを愛してるって」
「ドライデン…だけど…」
「待った」
ドライデンは、リングをベッドの端にことりと置き、手早く自分の衣服を脱ぎ捨てた。
「あんたにゃわからんかもしれんけど、俺ぁ今、あんたがほしくて仕方ない。色々なことを話すのは、もう少し後にしようぜ」
わずかに震える肩を抱き寄せた。
暗くてよかったとつぶやく唇が愛しくて、ついばむようにキスをする。
肩から背へと手を這わすと、ミラーナは身体をくねらせて、その手から逃れようとする。
背に回した手に力を入れ、またゆっくりと押し倒す。カチリとめがねを外して、そのまま放り捨てた。
金の髪を散らせて、目の前に息づく女神の顔が、緊張のあまりどこか引きつって見える。
「本当に、綺麗だ」
「…それは、あなたの本心?」
ミラーナがわずかに眉をひそめた。
「当たり前だろ?」
「でも、真っ先に言っては下さらなかったわ」
唇をとがらせて、横を向く。
何のことだろうと思い、ようやく気づいた。
仕事の話ばかりして、より美しくなったミラーナのことには一言も触れずに居たことを、彼女は気にしているのだ。
ドライデンは盛大に笑い出し、目を丸くしているミラーナに顔を近づけた。
「女ってのは、どうして言葉がないと、不安がるのかねえ」
「わ、笑うことないでしょう!?」
むっとして向き直るミラーナに口付ける。手におさめても入りきらない豊満な胸を、片手でつかんだ。
「んっ」
くぐもった声をあげるミラーナの悲鳴ごと封じ込め、手の中の肉を弄ぶ。
手のひらに吸い付いて、その中心である頂を親指で弾くようにしてやると、ほどなくして固くしこりだした。
「しつこいくらいに言ってやるぜ。あんたは綺麗だって…」
「やっ、何も、こんな時…に、ぁあっ」
わざと音を立てて、頂を口に含む。そのまま引っ張るようにして、むしゃぶりついた。
濃厚な土のような、男のかおりに、甘い蜜のような女のかおり。
ふたりは互いのにおいに酔いしれ、溶け合うように互いの身体をまさぐった。
浅黒い肌に、真白な身体が絡みつく。
執拗に胸に吸い付きながら、ドライデンの手が湿り気を帯び始めたミラーナの秘所へと伸びた。
「やぁっ……あ、あ、ん…っ」
否定とも肯定とも取れる嬌声が耳を打つ。
「あんたは声も綺麗だ…」
「ふ……っ」
耳元で囁けば、羞恥に身をそめるミラーナは声を殺そうと、ドライデンの肩に唇を寄せる。
そのわずかな刺激も、ドライデンの雄には充分すぎるものだった。
花弁を広げ、指でこすりあげる。
「ふあ…っ、あっ」
それに反応して、ミラーナが声をあげ、腰を摺り寄せる。
ドライデンはミラーナの太ももを手で押さえ、膝をつかんだ。
そのまま押すようにして、ミラーナの誰にも見られたことのない場所を外気にさらけ出す。
「ああっ、だめ、見ないで、見ないで、ドライデン!」
黙ってそこを眺めるドライデンを見るなり、ミラーナは取り乱して両手で顔を覆った。
「なんでだ? …こんなに綺麗なのに…」
そうつぶやいて、ドライデンはそこに顔を寄せた。
「んああああっ! あっ、だめぇ…!」
熱い舌が、花弁の中に入ろうとしているのを感じ、ミラーナは混乱する。
やがてじゅるじゅると信じられないくらいに卑猥な音が聞こえてくる。頭がどうにかなりそうなくらいの快感がミラーナに襲い掛かった。
「ドライデン…! だ、だめ…!」
舌がうまく回らない。今何がどうなっているかもわからない。
与えられる刺激が強すぎて、ミラーナの意識が拡散しようとしていた。
「っと…まだだ、まだだめだ…」
口元をぬぐいながら、ドライデンが身を起こす。
充分に濡れそぼる花弁の奥を確認し、己の雄を手に持った。早く彼女に入りたいと、とっくに準備はできている。
「自分を手放したあんたがどれくらい綺麗なのか、よく俺に見せてくれよ…」
そう囁き、ゆっくりとミラーナの中に押し入った。
「あんっ…あ、あああっ!」
朦朧としていたミラーナが、中に入ってきたドライデンに反応し、我に返る。
「くっ…」
中の熱さと狭さに、ドライデンが息を吐く。
ミラーナを見ると、目じりにたまった涙が、ぽろんと水晶のように落ちていくところだった。
「綺麗だ……ほんとに」
思わず前のめりになると、ミラーナがその目を見開いた。
「あ…っ」
「俺しか見られないようにして…そうだな、俺の宝箱に、閉じ込めちまいたいな…」
夢うつつでつぶやくと、ミラーナは息を切らせながら、手を伸ばした。
「そうなさりたいなら…あなたの望むままに…」
「馬鹿言うなよ…」
ドライデンは笑って、ミラーナの額に唇を寄せる。
「あんたの美しさは、皆に見られてこそ輝くんだぜ。そして…」
腰を動かす。肉の壁がつられて、愛液を蓄えだした。
「俺が閉じ込めちまいたいのは、今のあんただ。誰にも見せたりしない…」
「んぅっ…ん、あ、あ…っ」
その言葉は、ミラーナに届いていたのだろうか。
ドライデンはそろそろ限界を感じて、腰の動きを速めていく。
その動きに戸惑いながら、自分の中から生み出される初めての波を受け入れようと、ミラーナも必死でドライデンにすがりついた。
「ミラーナ…!」
歯を食いしばるように搾り出された声に、ミラーナもうなずき、その時を待つ。
「あ、あ、あ…!」
「……あぁっ!」
ドライデンが低く呻き、腰を大きく突き出した。
外に出す気はさらさらなかった。
息を整えながら、ふたりでベッドに寝転んで、ぼんやりと天井を見上げる。
「…すごく綺麗だったぜ」
「ドライデン…」
ミラーナは赤面しながら首を振る。
「いくらなんでも、言い過ぎですわ」
「だって、言って欲しかったんだろう?」
「……わざと、言ってらしたのね」
「ははっ」
ドライデンは笑いながら髪をかきあげて、端に置いたふたつの指輪を手に取った。
「あんたを手に入れるのに、3年もかかっちまったよ」
「…あなたに指輪を渡すのに、3年かかりました」
「――もう絶対、返したりしない」
ミラーナの手を取り、左手の薬指に、すっとはめてやる。
「本当に?」
ミラーナもドライデンの左手を取り、ぎゅっと握ってから、指輪をはめる。
「俺たちの間で、約束に意味があると思うか?」
ふたりで左手をかざして、指に収まるリングを見た。
「…そうですわね」
ミラーナは微笑んだ。
「わたくしたちに、約束はいらない」
ドライデンは商人だ。
その彼が自分の生き方を曲げずにミラーナを手に入れるというのなら。
恐らくミラーナは国を捨てることになるのだろう。
王位継承権を、姉のエリーズに譲り、ドライデンの元に行く。
周囲の反応を考えると、ミラーナは心が痛む思いがした。
だがもう、片時も彼のそばを離れるつもりはない。
誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分の幸せは、自分でつかむ。
そう決めた。己の誓いを、覆すことはできない。
ドライデンが、ミラーナの肩を抱き寄せる。
「俺は、多くの民から恨まれるだろうな。国の宝を奪いに来たんだから」
わずかに眉をひそめ、だが意思のある瞳がまっすぐにミラーナを見つめている。
ミラーナはこくんと息を呑んだ。
「わたくしを宝とおっしゃるなら、どうか、あなたの隣で、輝かせてください、ドライデン」
「…本当に、どこまで綺麗になるつもりだ、俺の姫さんは」
その夜、商人は、国の宝を手に入れた。
宝は喜んで商人のものになり、生涯その商人は、宝を手放すことはなかったという。
終わり
GJです!
もし構想がおありでしたら、その頃のバァンたちの様子とかも
見てみたいです。
久々に来てみたらドライデンがーーーーーーー!
GJ!またお待ちしとります!
うひょ!GJ!
ドライデンとミラーナ、放映時から一押しだったのに
周りには異端視扱いされたけど…。
こんな幸せがここにあったーーーーーー!!
ひとみとバァンパロイイ!
本編でもこうなってれば・・OTL
GJ! 惚れ惚れします。
保守
投下した者です。
リクエストがありました、ドラ&ミラの頃のバァンたちを書いてみました。
無理やりバァン×ひとみにしたので、エロに行くまでの過程がかなりあります。
苦手な方は、スルーしてください。
「バァン様ぁ〜!」
天気は快晴。目に鮮やかな真っ青な空と、綿をちぎって放ったような雲がゆっくりと移動する。
太陽はじりじりと山や谷、家々や人の上に降り注ぎ、時に激しく、時に優しく、その光を誇示している。
脅威の軍事力と科学力を誇ったザイバッハ帝国に国を滅ぼされたファーネリアの若き王、バァン・ファーネルは、
屋根の上に背を乗せて、ぼんやりと幻の月と、そこから来た少女から託されたペンダントを眺めていた。
耳に届く自分を呼ぶ声に、横たえていた身体を持ち上げ、見下ろせば、良く知った妹のような存在の猫耳の少女が、軽やかに駆けてくる。
「メルル!」
呼び声に応じると、メルルは目に見えて満面の笑みを浮かべ、スカートの下から覗く尻尾をぴょこんと立てた。
「ルムさんがぁ、お食事にしましょうって、言ってますぅ〜!」
「…ああ、もうそんな時間か…」
バァンは立ち上がり、もう一度空を見上げた。空に浮かぶふたつの月。かつて「不幸を呼ぶ」とガイアで忌み嫌われていた月。
バァンは何も言わずに、手にしていたペンダントを首にかける。恐らくドラグエナジストから作られたのであろう石が、太陽の光を受けてきらりと輝いた。
――想いの力が、ガイアを創った。
屋根から降り立ち、腕にからみつくメルルを微笑ましく見つめながら、ガイアはまた幻の月を見やる。
おぼろげな輪郭を空に浮かべたあの月に帰って行った少女を思う。
――想いの力が、俺たちを引き合わせた…?
それがドルンカークの操る手綱だったのだとしても。
「運命…か」
「バァン様?」
「…いや、なんでもない」
怪訝そうに見上げるメルルに向かって首を振り、バァンは歩き出した。
メルルは不安そうな瞳で、バァンの首元で揺れるペンダントの輝きを見つめていた。
ひとみが幻の月に帰った後、バァンとメルルは旧知の間柄であるルムの村、アーザスに滞在していた。
ファーネリアの領土内に位置する場でもあったし、身寄りのないふたりには、頼るところがここしかなかったのだ。
狼人が住む村であるために、人間のバァンが居つくことを内心良く思わない者もいるようであったが、そこは族長であるルムが諌めた。
メルルは猫人であったゆえに、割とすぐに彼らと溶け込んでいるように見えた。
だが、無口で愛想もないバァンは、彼らとなかなか打ち解けられないでいる。
ルムとメルルはそんなバァンに気兼ねなく話し掛け、時に話の輪の中に引っ張ってくれるのだが、バァンにはそれが耐えられない。
こんなことをする暇があるなら、弓や剣の稽古に励んだほうがいいという心がわきあがり、ますます彼を無口にさせる。
ルムの家に入り、ルムとルムの奥方から温かい言葉をかけられ、食事をご馳走になりながら、バァンの心は晴れないでいた。
――憎しみが争いを生む。それがわかったから、俺はエスカフローネを封印した。そのことに後悔はない。
だがこの先、この村が襲われることがあったとき、果たして俺一人で、この村を護りきれるだろうか。
俺はファーネリアの王だ。国は滅ぼされたが、俺の中の血は、そのことを俺に訴え続ける…
スープを機械的に口に運びながら、バァンの眉間が寄る。
「バァン? お口に合わなかったかしら?」
ルムの奥方、サリが、心配そうに声をかける。バァンははっと我に返り、サリを見つめ、首を振った。
「いいえ、とてもうまい。いつもすまないと思っています」
「それなら、いいのだけど…バァン、あなたもこの村に来てもう長いのだから、下手に遠慮なんかしないでちょうだいね。
あなたもメルルも、私たちの家族なのだから」
「…ありがとうございます」
わずかに口元を緩める。これがバァンの精一杯の笑顔だった。
それがわからぬ彼らではなかったので、ほっとした空気があたりに満ちる。
ルムは豪快に笑って、パンを両手でちぎりながら言った。
「お嬢さんを帰しちまったの、後悔してるんだろ!」
「なっ!」
スープが気管に入った。身体が驚き、咳き込み始める。
「バァン様!」
隣に座っていたメルルが、慌ててバァンの背を小さな拳でトントンと叩いた。
「ははは! 図星か!」
反論したいが、気管に入ったスープを出すのが先だと身体に怒られた。バァンは涙目になりながら咳き込んで、とうとうルムへかける言葉を失ってしまった。
村人たちは、バァンが畑仕事を手伝うことに、いい顔をしなかった。
メルルはくるくると踊るように動きながら、村人たちへ食べ物や飲み物を配給するのに役立っているが、バァンは畑仕事にまるで向いていなかった。
ここに来た当初、バァンなりに張り切って畑で野菜を収穫する彼らの間に混じったが、何をどうすればいいのかまるでわからないバァンは、
村人が教える前に乱暴に野菜を引きちぎり、野菜を台無しにした。それも一度や二度ではなかった。
はじめは笑って見逃していた彼らも、力加減の下手なバァンを見ているうち、もう笑えないと、バァンを畑仕事から遠ざけた。
あの時は相当落ち込んで、バァンは一日村に戻らなかった。メルルが探しに来るまで、戻らないつもりだったかもしれない。
バァンがいたのは、廃墟と化したファーネリアの跡地だった。
朽ちた石垣。原型を留めない家々の中、バァンはぼんやりと空を見上げていた。
メルルがバァンの名を呼ぶと、バァンは小さな声で言った。
「…メルル」
「はい」
「今、ひとみに会ってきた」
「えっ!?」
メルルが耳と尻尾をぴんと立てて驚いている前で、バァンは空を眺めながら、ふっと微笑んだ。
「ひとみは俺を見て、自分は元気だと、言ってくれた…」
「…バァン、様…?」
メルルは何故だかぞっとした。呆けた顔で幻の月を見上げるバァンが、霞のように消えてしまいそうに見えたのだ。
「まだ、俺たちはつながっている」
「バァン様…」
「俺は、まだ、やれる」
そう言ってメルルをしっかりと見つめたバァンの瞳。
メルルは涙をぼろぼろこぼして、バァンの胸に飛び込んだ。
「バァン様、バァン様」
「どうした、メルル」
「メルルを置いて行かないでください」
「……メルル」
「いつまでも、ここにいてください」
すがりつくメルルを見下ろして、バァンはその華奢な背をゆっくりと撫でた。
「どこにも行かないさ。おまえを置いて、俺はどこにも行きはしない」
嘘です。
メルルは思った。
――メルルにはわかります。バァン様はいつか、メルルを置いて、どこかへ行ってしまうんでしょう?
ひとみの所に、行きたいんでしょう?
それを口に出すことはできなかった。
言葉が力を持ってしまう。
もしかしたら、バァン自身、本当の気持ちに気づいていないかもしれないのに。
――お願い、ひとみ。
あたしは、このままでいいの。何も望まない。ただバァン様のお傍にいさせてほしいの。
ひとみ、バァン様を、幻の月に連れていかないで。
優しく撫でてくれる手の感触が心地よく、メルルの目がとろんとなる。
うつらうつらとなりながら、メルルは知らずにつぶやいていた。
「ひとみ…バァン様を………」
あたしから奪わないで。
かろうじて封じた言葉の最後をバァンが聞くことはなかったが、それでもメルルの言わんとすることはわかった。
「すまない、メルル」
目を伏せて、メルルを抱きしめる。猫の血が入っているメルルは、とても温かく、こうして抱いていると、こちらも眠りそうになってしまう。
「俺は、ここで俺ができることをしたい」
またひとみに会えた時、胸を張って言えるように。
その日からバァンは、畑仕事ではなく、己の鍛錬に力を入れるようになった。
外敵から村を護るためや、狩りなどをするときに、自分の力が役立つようにとのためだった。
野菜が荒らされるよりはと、村人たちも納得し、ルムもうなずいてくれた。
だが大きな狩りがある以外、バァンの力はそれほど必要とされなかった。
人間より狼人が劣るはずがないという村人たちの驕りもあったかもしれない。
それでもバァンは、時間があると木を相手に木刀を振るい、汗を流した。
そんな生活を、3年は送っている。
昼食が終わって少し休憩すると、バァンはいつも、森の奥深くまで入り、一心不乱に木刀を振るう。
メルルは孤独な王の姿を見つめながら、いつもこっそり涙するのだ。
――不器用なバァン様。言いたいことが言えないで、いつもああやって独りで耐えていらっしゃる。
そんな想い人を見ている自分が、メルルは実は好きだった。
孤独という剣を己の中に隠し持っている彼の姿を見られること。
幼い頃から一緒にいた特権で、自分だけは何をやっても許されるという立場と。
自分だけがあの人の心のうちが手に取るようにわかること。
メルルにとって、このことは寂しくもあり、喜ばしいことだった。
自分がいなければ、きっと彼はもっと孤独だった。
その孤独を救っているのは、この世界で自分だけ。
ひとみのいない今、村と自分、どちらを取るかと問われたら、彼が迷わず自分を選ぶことも知っている。
だからといって、自分の望みが叶うわけではないのだ。それでも、この甘くて曖昧な足場にいられるだけで、満足している。
この涙は彼の孤独を思って。
この笑顔は自分の幸せをかみしめて。
メルルはなんともいえない顔で、バァンの姿を見つめ続けるのだった。
「地竜だっ! 地竜が出たぞぉーっ!」
互いの世界に入り込んでいた二人の耳をつんざく悲鳴が聞こえてきたのはすぐだった。
メルルがびくりと身体を震わせるのと、バァンが木刀を捨て、腰に挿してあるファーネリアの紋章が彫られた剣を取り、声のするほうへ駆け出していくのが同時だった。
「バァン様っ!」
「メルルはそこにいろ!!」
メルルの声に怒鳴り声で応じ、バァンは振り向きもせず去っていく。
追いすがりたいのに、地竜の恐ろしさを知っているメルルの身体は縮こまって動かない。
「このおー…! 動け! 動けぇえー…! バァン様…バァン様ああーっ!」
へたりこみ、メルルは大声をあげて泣いた。
――バァン、剣を捨てろ!
心の中で、ペンダントが揺れている。
バァンはその方向に向かいながら、亡き兄の言葉を思い出していた。
あの時。呼び出されたファーネリアの跡地で地竜に襲われていた自分に、兄は叫んだ。
「憎しみが、地竜を呼び寄せる」
剣を捨て、ただ怯えるしかなかった自分の目を見た地竜は立ち去った。
地竜を戦わせていたのは、人間の心だったのだ。
ならば、今まで自分たちがしてきたことは、なんだったのか。
竜は恐れる対象ではなかった。
――俺は…!
バァンが駆けつけたとき、哀れな地竜は物言わぬ肉の塊になっていた。
村人たちが大声で悦びを称えあっている。
バァンは息を切らせながら叫んだ。
「おまえたち! なんということをしたんだ!」
「なんだぁ?」
両手を地竜の血で汚しながら、ひとりの村人がうさんくさげにバァンを見る。
「へへ、自分の手柄にならなかったんで、怒ってやがんだ」
別の村人が笑う。バァンは怒鳴った。
「違う! …こちらが敵意を見せなければ、地竜は戦意を失って、立ち去るものなんだ!」
「はっ! んなことあるわけねえだろうが!」
両手の汚れた村人が吼えた。
「本当だ! 地竜は…!」
「王様よぉ、あんたの国は、竜殺して度胸試ししてたよなあ? あんたも殺したことがあるだろう! そのあんたがそんなこと言ったって、
説得力なんかねえっつーの!」
竜を殺した高揚感で、狼人たちはげらげらと大声で笑っていた。
元来狩りを好む種族なのだ。それは当然のことだったのかもしれない。
だが今のバァンにはそれが酷く癪に障った。
ぎりりと奥歯を噛み締め、剣を握る拳が震える。
その間、竜の腹を大降りのナイフで割いていた村人が、緑に光るエナジストを取り出すと、バァンの首元でペンダントが光った。
「わわっ!?」
村人たちが空を見る。
「!」
光の柱だった。
太陽ほどまぶしくなく、熱くもない不思議な光。
それが空から、バァンの周りを覆っていた。
「バァン様あーっ!」
呆気に取られていたバァンの背後から、悲鳴がする。
ぼんやりと振り返れば、メルルが走ってくるところだった。
「…メルル…!」
「いやああーっ! バァン様、バァン様ああーっ!」
こちらに向かって伸ばしてくるメルルの手。いつでも自分を支えてくれた小さな手。
バァンは、うっすらと微笑んだ。
「ごめんな、メルル…」
メルルの声は届かなかった。
バァンの足が宙に浮く。メルルも一緒に飛び込んだけれど。
柱はバァンしか選ばなかった。
光の中、メルルがどれだけ手を伸ばしても、バァンをつかまえようと跳躍しても。
幻の月へ通じる柱は、運命の人しか選ばなかった。
自分の恋は、なんと幼稚だったのだろう。
ひとみは、ガイアにいた頃のことを忘れない。
天野先輩にあれほど恋していたのに、不思議な力でガイアに行ってからの自分は、あまりにも勝手すぎた。
多感な頃だったからという理由だけで、片付けてはいけない気がする。
似ているから、素敵だったからというだけで、アレンさんに恋をした。
だけど本当は、バァンが好きだったなんて。
――バァン様かアレンか、あんたはどっちが好きなのよ!
「…メルルに叱られるのも、当然だよね」
今は決して揺らがない心を常に秘めながらも、ひとみは時折あの頃を思い出しては、苦笑する。
ひとみは大学生になっていた。
薄情な家族が自分を残して旅行に行ったのをいいことに、友達と夜遅くまで遊びすぎて、帰りは終電に飛び乗った。
クラブで飲んでいたら、からかい半分のナンパもされた。コンパでは真剣に告白をされたこともあるのだけれど。
「……だめだな、私」
街頭が灯る寂しい夜道を、少々の酒が入っているせいかふらつきながら、ゆっくりと、歩く。
夜空にはぽつぽつと星が光り、ひときわ目立つ満月があった。
「バァン……」
決して人には言えぬ想い人の名をつぶやく。
誰と会っても、告白されても、どうしても忘れられない。約束したのだから。
おばあちゃんになっても、忘れないと。
「どうして、出会っちゃったのかな」
元気だよって、言ったのに。
これ以上、嘘つきたくないのに。
「会いたいよ、バァン」
涙が頬を伝う。すっと流れた後に、夜風が冷たく熱を奪った。
ぐすぐすとべそをかいていると、歪んだ視界に、突如光が飛び込んできた。
「えっ、何!?」
慌てて目をこすり、光に戸惑う。これは、この空から落ちる光の柱は!?
どきどきと、うるさいくらいに心臓が高鳴る。…あれは、夢? …それとも、幻…?
「…ひとみ……っ!」
声が耳に飛び込んでくるのと、足が勝手に駆け出すのが同時だった。
ミュールを甲高く鳴らせて、ひとみはつまずきながらも光と声の主に向かって走る。
忘れるわけがない。だって約束したのだから…!
懐かしい黒髪。細身の身体。腰に挿した剣。首元に光る…
「バァン!!」
こんなに大きな声を出したのは、何年ぶりだろうか?
ひとみは夢中で飛びついた。
どうか夢なら覚めないように。
いつまでも夢の中にいられますように。
ふたりは、ひとみの自宅前まで来ていた。
ガイアで何かあったのかと言ったのだが、バァンは首を振り、しばらくガイアへは帰りたくないと言った。
訳がわからなかったが、この世界でバァンの服装は少々目立つ。腰の剣を巡回中の警官が見つけたら厄介なことになる。
ひとみはバァンの手を引いて、ここまで来たというわけだ。
バァンは興味深そうにじろじろと無遠慮にひとみの家を眺め、ひとみは恥ずかしくなって、鍵をドアノブに差し込んだ。
玄関にあがり、電気をつける。バァンが後ろで息を呑んだ。
「ほら、あがって! あ! 靴は脱いでね!」
靴を脱ぎながら、思い出したようにひとみは言い、まさにそのままあがろうとしていたバァンは、ひとみの真似をして、脱ぎづらそうにブーツを脱いだ。
「まるでザイバッハみたいだな。電気って、言うんだろ」
「もー、嫌な言い方しないでよ。だってアイザックさん、こっちの世界の人だったんだもん。同じのがあって当然だよ」
壁のスイッチをカチカチさせて、玄関の明かりをつけたり消したりするバァンを、ひとみは苦笑して見つめた。
まだ胸が高鳴っている。わくわくしている。
バァンが、私の家に来ている。夢じゃ、ない。
足先が痺れる感じがして、おぼつかない。酒の力もあるかもしれない。
ひとみは頬を紅潮させながら、リビングへバァンを案内した。
きょろきょろしっぱなしのバァンを椅子に座らせ、ひとみはにこにこしながら、冷蔵庫を開けた。
「ね、バァン。何か飲む?」
「…いいのか?」
「当たり前じゃん! バァンはお酒は…だめなんだよね」
「別になんでもいい」
そわそわと落ち着かない様子のバァンを見ながら、ひとみは冷蔵庫の中を見てがっかりした。
「お母さん…旅行に行くなら、娘のために、何か気の効いたもの買っておいてくれたらいいのに…」
空と言ってもいいほど、何もない中を見て、ひとみははあと息をついた。
「ひとみ?」
「あ! ああ、じゃあ、こっちの世界でポピュラーな飲み物出してあげる!」
裏返った声で言いながら、ひとみは心の中で何度もバァンにあやまりながら、麦茶を取り出した。
「変わった味だな」
ガラスのコップに注いだそれを、一口含み、しばらく舌の上で転がしてから流し込み、バァンは不思議そうな顔で言った。
「これをね、暑い時にかーっと飲むの! 日本人の定番みたいな飲み物だよ!」
大げさな言葉で飾り立てて、ひとみは冷や汗を流しながら熱弁した。
「…そうなのか」
「そうそう!」
バァンがしみじみとした顔で言うので、バァンの前に座っていたひとみは、だんだん縮こまり、頭を下げた。
「ごめん」
「なにがだ?」
「ほんとは、もっとおいしいの、出したかったんだけど…そ、それしかなくて…」
赤くなって頭を下げるひとみがおかしくて、バァンは吹き出した。
「別に気にしないさ。悪くない味だ」
「ほんと!?」
暖かい声に、ひとみはばっと顔をあげる。
「ああ」
「良かったー! ごめんね、明日は…」
言いかけて、ひとみはあっと口を開けた。
明日?
明日も、バァンはここにいるのだろうか?
そもそも、どうしてここに…?
バァンはコップを置くと、テーブルの上に置いたひとみの手の上に、そっと自分の手を重ねた。
コップを触った手が触れたので、ひんやりとした感触が、ひとみをぞくりとさせた。
「明日もあさっても、ずっと、ここにいたい」
「バァン…」
「俺は」
ぎゅっと、ひとみの手を握る。ひとみがわずかに目を細めた。
「おまえに会いに来た」
「え…?」
「もうおまえと、離れたくないんだ」
会いに来てくれた。
でもそれは、純粋にひとみに会いたかったからではないことは、なんとなくわかった。
いつもまっすぐに向けられるバァンの瞳が、たよりなくつま先を見ていたから。
気まずくなると、バァンはそうやって、誤魔化す。アレンとキスしていたのを見た後も、こんな調子で自分を避けていた。
ひとみは、それでもいいと思った。
一番会いたいときに、こうしてきてくれた。今はそれが大事だ。余計なことは何も言わないでいい。
ふたりは手を繋いだまま、ひとみの部屋へと入っていく。パタンとドアが閉まった瞬間、バァンがひとみを背後から強く抱きしめてきた。
「バァン…!」
ひとみは予想していた抱擁に、戸惑いと喜びの声をあげる。バァンはぐっとひとみを抱く腕に力をこめ、ひとみの肩に顔を埋め、しばらく何かに耐えているようだった。
骨が軋むくらい抱きしめられて、ひとみは苦悶の声をあげるが、バァンの耳には届いていない。ひとみは目を閉じて、バァンの気の済むようにさせた。
「…俺は…」
「バァン」
「俺は、誰も殺さず、戦わず、穏やかに日々を生きていくことを、望んでいた」
「…うん」
「だが俺が戦人として人を殺めてきた過去は、消すことはできない。俺はそれを受け入れた上で、戦っているつもりだった」
「うん」
「おまえがいなくても、俺は生きていけると思っていたが、違っていた…
俺は、おまえがいないと、だめなんだ」
バァンは静かに言った。ひとみがバァンの腕の中で、身じろぎする。
「帰すのではなかった。心がいくら通じていても、どれだけ会いたいと望んでも、俺は」
抱きしめる腕を緩め、肩を抱き、ひとみをこちらに向けさせる。
綺麗な瞳だと、見つめあうたびに思っていた。
「俺は、おまえがそばにいないと、生きていても、死んでいるようなものだ」
「…あたしも」
ひとみはまつげを伏せたあと、きっぱりとバァンを見上げた。
「ほんとはね、あたし、元気じゃなかった。バァンがいなくてずっと、寂しかった…」
「なら、ふたりで生き返ろう」
「うん…」
心が通じ合っているということは、ふたりはひとつということなのかもしれない。
心がひとつで、体が離れている。それゆえふたりが生きる目的を失くしかけ、互いをこれほど渇望しているなら。
潤そう。心も身体も。
…永遠に刻み付けておくために。
抱きしめあったまま、ベッドへと倒れこむ。ぎしっとベッドが鳴り、ふたり分の重さを伝える。
「ん…」
ひとみの上に覆いかぶさるバァンが、押し付けるように唇を重ねてきた。たまらず声をあげようとすると、温かいものが前歯をなぞり、口を開けたら入ってきた。
かすかに麦茶の味がして、ひとみは笑わないようにと、バァンの首に回した腕をぎゅっとする。
「は…っ、ひとみ…すまない、乱暴に…するかもしれない」
息継ぎの合間に、熱情を含んだバァンの瞳が、そう言いながらも、決して抗うことは許さないと伝えていた。
ぞくぞくと下腹部から湧き上がる快感が、ひとみの目を潤ませる。
首に回していた腕を緩め、自らの服に手をかけながら、何も言わずにうなずいた。
バァンは笑った。
その笑顔に魅了されながら、ひとみは思う。
敵を倒したとき、バァンはいつも、こんな顔をしたのだろうか。
なんとうらやましいことだろう。
人を傷つけたくないと思いながらも、止められない殺戮への興奮が飾り立てる彼の美貌。
天空の騎士など霞むほどの輝きを放つこの青年になら、誰だって喜んで殺されるに決まっている。
願わくば最後のひとりが。
「バァン…」
――自分であればよいのだけれど。
夜空には満月。
月光も、夜目に慣れたふたりには、充分なものだった。
最後に別れてから3年が経った。
ひとみは瑞々しい生命力溢れる身体から、女性らしい柔らかな肉を蓄えた、色気のある身体へと変化を遂げた姿を、惜しげもなく恋人に差し出す。
バァンはこくんと唾を飲み込むと、紅潮するひとみの頬をゆっくりとなで、顔を近づけた。
唾液を含んだ舌を差し入れ、淫らな水音をさせながら、片方の手は熟した果実を弄ぶ。
嬉しさと緊張のあまり粟立つ肌のざらつきを手の平に充分感じながら、頂の周りをゆっくりと這わせ、そっと指に力を入れた。
「んぅ…っ」
ひとみがびくんと身体を揺らす。バァンは深く舌を差し入れながら、頂を親指で押しつぶした。
背中をしならせ、逃れようとするひとみの肩をつかみ、顔を放すと、舌を出し、すっと首筋をなめとる。
「ふあああっ!」
触れたくても触れられない恋人が、もう会えないと思っていた彼が触れる。そのことが、ひとみの感度を上げていた。
湿った唇が首筋に吸い付き、赤い痕を残していく。
両手で果実を揉み解し、固くしこり出した頂を確認すると、バァンは交互にそれにむしゃぶりついた。
「バ、バァン、や…っ! あ、ん……!」
わざと音を立てて吸い付いて、時折唇で挟んで軽く引っ張る。ちくっとした痛みが快感となって体中に広がって、ひとみは両手で顔を覆う。
バァンは執拗に胸への愛撫を続ける。力強く押してみたり、左右同時に肉をつかんで中央に寄せて、ひとみが高く鳴くと、すかさず唇を奪って声を封じた。
「む……う、ふぁ…っ」
糸を引きながらぷつんと離れた唇と唇。
熱を孕んだ瞳で見上げる女の顔は、早くひとつになりたいとさかんに男に訴えていた。
片手で胸をつかんだまま、女のにおいがたちこめる場所へ指をしのばせる。茂みが露をたっぷりと含んで指に絡み付いてきた。
「あ…っ」
ひとみが眉根を寄せる。バァンは構わず、濡れた指先を柔らかな花弁の元へと到達させ、開ききっていないそこを押し広げるようにこじ開けた。
ぱっくりと糸を引きながら花弁が中身を見せる。バァンは胸から手を離し、
両手でひとみの太ももの付け根に手を這わせると、ぐっとそこに力を入れ、秘所がよく見えるようにする。
「や…っ、やだ、バァン!」
ひとみが声をあげるが、バァンは赤く充血したその箇所に目を奪われて、ひとみの声は届いていない。
なぞるように花弁の上に指を置き、慎重に中へと侵入する。柔らかな肉が、愛液にまみれた指を優しく誘ってくれた。
肉の壁に指の腹をこすりつけ、愛液をしぼりとるようにわずかに力をこめて出し入れする。ひとみの身体がその度に嬌声と共にベッドの上で跳ね上がるが、
しっかりと足を押さえているので、大した苦にはならない。
どろりと指と共に吐き出される愛液を眺め、バァンは指を舐め取りながら、そろそろいいかと腰を浮かせた。
血管が浮き出て膨張しきった己自身の先からは、すでに透明なものが滴り落ち、彼の我慢の限界を現している。
「……!」
息を呑み、バァンの身体から飛び出ているそれを目にしたひとみは、以前に見たときよりも少し大きい気がして、不安になった。
経験も少ない自分に、これほどのものが受け入れられるのだろうかと。
バァンは二、三回己をしごいて更にそれを奮い立たせると、先を持ったまま、ゆっくりと蜜壷へ近づいていく。
ひとみは咄嗟にシーツを握り締め、これからくるであろう衝撃に備えた。
充分に濡れそぼるそこに先端を入れたとき、バァンは切なげに吐息を漏らし、ひとみは唇を噛み締めて息を殺す。
隙間もないほどぴったりと収るその中は、まるで自分のためだけに用意された場所のようで、
バァンは身を乗り出して、ひとみのほっそりとした腰を両手でつかんだ。
ふよふよと頼りない女の肉は、指に力を入れればどこまでも沈んでいく。
骨盤がわずかに浮き出る少し上をつかみ、苦しげに息を吐くひとみの顔を見て、バァンは早く動きたい気持ちを抑えて、じわじわと腰を進めた。
「ん……っ、あ、は……っ!」
ひとみにしてみれば、肉が裂かれる感じなのかもしれない。
これだけ苦しそうにしているということは、ひとみもこの3年、自分以外の誰かとこうなっていないということなのだ。
「ひとみ……」
掠れた声で呼びかけると、ひとみはわずかに微笑んで見せた。
男のバァンにはわからないが、恐らく痛い上に苦しいに違いない。自分は締め付けが多少きついものの、またこの感触を得られて感動すら覚えているのに。
ひとみはどうすれば気持ちよくなってくれるだろうかと熱っぽい頭で考えて、バァンはひとみのへそ辺りから胸まで、
触れるか触れないかという距離を保ちながら手の平を滑らせた。
「あ…っ」
ひとみが顔をのけぞらせ、白い喉を見せる。
今のひとみは、どこに触れても感じるに違いない。
産毛を撫でる気持ちで手の平を泳がせ、胸の頂に到達すると、そこを人差し指と中指でそっと挟み込む。
「んあ…っ」
息を吐き出すひとみに合わせて、バァンは腰を突き上げた。
ぐちゅっと音がして、ふたりの結合部分から、愛液が零れ落ちる。ひとみが目を見開いてバァンを見ると、バァンは前髪から覗く瞳を細めて見せた。
「早く、おまえの中に…全部、入りたい」
息を吐きながら紡がれるその言葉にすら感じてしまい、ひとみは吐息をつく。
懸命に足を広げ、バァンを受け入れようとするその姿がいじらしくも愛らしく、バァンはひとみの胸をつかんだまま、ぐいと更に奥深く突き進む。
「ああっ! やっ、バァン…!」
「ひと…み…!」
愛液が絶え間なく流れ落ち、バァンは顎から伝う汗が、ひとみの肌の上ではじけ飛ぶのをぼんやりと見下ろした。熱い。溶けそうなくらいに、熱い…
根元までしっかりとくわえこんだ蜜壷を確認すると、ふたりは同時に息を吐き、目を合わせて笑った。
一仕事終えたような達成感がふたりを包み込もうとしていたが、男の方が、まだ満足いかないようだった。
「ん、んっ、う、あ、あ…っ!」
腰を打ち付けるたびに、抑え切れない声が喉からほとばしる。
ぐっと腰をつかみ、バァンはパンパンと肉と肉がたたき出す音を心地よい思いで聞いていた。
充分に解れたひとみの中は、バァンの疲れた心を癒し、この上なく気持ちいい思いにさせてくれる。
それをもっと味わいたくて、夢中で腰を突き出した。
ねじるように腰を回し、肉の壁の襞に当たるようにしてやると、ひとみは明らかに先ほどとは違う声で鳴き始める。
ぎりぎりまで抜き、ひとみがほっと息を吐いた瞬間に一気に最奥まで貫いてやれば、ひとみは大声をあげてシーツを破れるほど握り締めた。
「バァン、すご…、すごい…! だめっ、あたし…!」
首を振り、与えられる快感の大きさに戸惑うひとみ。
自分の快感を追及するあまり、バァンはその懇願さえも活力として、容赦なく突き上げた。
深く、もっと深くつながりたくて、バァンは身を乗り出し、ひとみを抱き上げる。
ぐったりとしながらも反応は返すひとみは、何もわからないまま両足をバァンの腰にからめ、しっかりと抱きしめられた。
「バァン……気持ちいい…いいよぉ…怖い…!」
狂ったように互いの唇を貪りあいながら、ひとみは飛びそうな意識の中で、バァンに訴える。
「ひとみ……ひとみっ!」
抱きしめあい、ふらふらのひとみを抱えたまま、バァンは最後の一突きとばかりに、ひとみを勢いよく押し倒し、
加減を知らぬ速さと力強さで、子宮に到達するほど深く、腰を打ちつけた。
「あああああああああああっ! イッ………!!」
最後まで言い終えることができないほどの波がひとみを襲う。
「く………っ」
バァンは腰を何度か震えさせて、射精した。
息を吐きながらずるりと引き抜くと、ひとみの蜜壷から、白濁した液がごぼりと流れ落ち、ひとみは四肢を伸ばして、がくりと首を横たえた。
「はあ…っ、はあ…っ」
涙が零れていた。何に泣いたのだろう。
意識を手放したひとみのまぶたから流れるものを指でぬぐい、口に含む。
その味は、バァンの心そのものだった。
会いたくてたまらない。
心のつながりだけじゃ、我慢できない。
ようやく会えたのに、また離れなくてはならないかもしれない不安。
その全てが詰まった味がした。
いつまでも、ここにいたい。
だけどお互い、それはできない。
だからこんなに求めるのだ。つかの間の逢瀬だとわかっているから。
心はこんなに、結びついているのだから。
それからバァンはひとみが目覚めるのを待って、心の内を話した。
アーザス村にいるが、村人たちと打ち解けられないこと。
エスカフローネも封印してしまった今、自分が何の役に立つかわからないこと。
地竜の本質を知っていながら、救えなかったこと。
「ルムさんに、地竜のことは言わなかったの?」
ふたりでベッドに横たわり、バァンの胸に頬を預けながら、ひとみは不思議そうに聞いた。
「話したさ。半信半疑だったがな。無理もない。竜が襲ってきたら、皆殺気立ち、武器を取る。今までそうしてきたんだ。
竜を前に、武器を手放すことなど、普通の感覚では到底できないことだ」
「そうだよね…」
「だが兄上は、竜に片腕を奪われ、武器を手放したとき、初めて知ることができた…」
――武器を捨てろ、バァン!!
地竜に囲まれた自分に向かって叫んだあの言葉。
自分と国を裏切った、憎んでも憎みきれない兄の言葉。
従ったのは、心の中に、まだ兄を慕う気持ちが残っていたからだった。
「兄上は、最後まで俺を思い、国を思っていた…人々の平穏を」
「バァン」
ひとみは、バァンの胸に顔を埋め、くぐもった声で言った。
「今度はバァンが、フォルケンさんの遺志を、引き継がなくちゃ」
「ひとみ…」
複雑な顔で、バァンはひとみを見下ろす。ひとみはバァンの顔を見なかった。見たらお互い、離れがたくなってしまうから。
「どんなに苦しくても、寂しくても、あたしたちはつながってる。いつだって、会える。それが、こうやって証明されたんだよ。
だからバァン、頑張ろう? あたしも頑張るから。お互いの世界を逃げ場所にしないで、頑張っていこうよ」
涙声なのはすぐわかる。ひとみが顔を埋めた箇所が熱くて、涙が零れているのもわかる。
バァンは震えるひとみの肩を抱きしめた。
「そうだな…俺たちはいつだって会えるんだ。心がこうして、つながっている限り…」
純粋に、ひとみに会いたいがためにこの世界へ来たわけじゃない。
俺は、この世界に逃げ込んだ。
ひとみのいる世界なら、自分の居場所があると思って、そのために来たんだ。
ひとみはそれをわかった上で、俺にこう言ってくれている。
「すまない、ひとみ」
「いいの。会いたかったから」
「…俺もだ」
泣き言はらしくない。
フォルケン・ファーネルの弟として、ファーネリアの王として、俺は俺がなすべきことをする。
陽がまたあがる頃、ふたりは外に出ていた。
朝の風は水を含み、草花の寝起きのかおりを清清しく運んでくる。
白い空に隠れるようにして現れた太陽が、遠慮がちにふたりを照らしていた。
人目につくのを避ける為、ふたりがこの世界でガイアに飛ばされた神社へと向かう。
互いに口数は少なかったが、満たされていた。
長い階段を上り、森林がざわめきの拍手を以ってふたりを出迎える。赤い鳥居の下で、ひとみは3年前のあの日のように、バァンにペンダントを差し出した。
「あたしたち、ずっと一緒だからね」
「ああ」
「また、会いに来てね」
「ああ」
「あたしも、会いに、行けるかな」
声が詰まる。
――涙が あとから あふれだして
「行けるさ、ひとみが望むなら」
バァンは優しく微笑んでいる。
――最後の 笑顔が にじんで 見えないの
柔らかな風がふたりの周辺で巻き上がり、ゆっくりと光の柱が落ちてきた。
「バァン…!」
「ひとみ…」
――行かないで 行かないで ここにいて 宙へ 光駆け抜けていく…
ゆっくりと浮かび上がるバァンの顔は、いつまでもひとみを見つめていた。
ひとみは叫ぶ。
「あたし、忘れないから…っ!」
光の帯が収縮して、粒子となるまで、ひとみは空を見つめていた。
それにいち早く気づいたのは、メルルだった。
幻の月から一直線に現れた光の柱を発見できたのは、バァンが光の柱へと吸い込まれてからというもの、片時も目を離さず、幻の月を見上げていたからだった。
粒子の粒が柱となって、近くへと架け橋を結んだとき、メルルは歓声と共に駆けだしたのである。
「バァン様、バァン様ぁーっ!」
柱によってガイアへと帰還したバァンは、叫びながら飛び込んでくるメルルを受け止めた。
「心配かけたな、メルル」
「いえ…、いいえ…っ!」
泣きじゃくるメルルの頭を撫でていると、ルムを筆頭に、昨日地竜を殺した村人たちも駆けつけた。
「バァン! 無事で良かった!」
「すまない。…会いたくなって、会いに行ってきた」
困ったように笑うバァンを見て、ルムは笑った。
「すごいな、想いの力ってのは。あんたとあのお嬢さんは、相当想い合っているんだろうな」
「ああ」
きっぱりと言い切ったバァンの胸で、メルルは小刻みに震えた。
どうあっても妹以上に見てくれないことはわかっていたけれど、それでも、痛んでしまうこの心は、どうすればいいのか。
だけどいい。こうしてそばにいられるのだ。ひとみよりも、遙かにずっと…
「話は聞いたよ、俺ももっと言っておけばよかったな。地竜のことは」
ルムは真面目な顔になって、ちらりと背後に立っている村人たちを見ながら言う。
後ろでそっぽを向いている彼らは、バァンを見て小さく舌打ちした。
バァンは首を振り、ゆっくりとメルルから身体を離すと、一歩前へ出て、言った。
「地竜から取れるエナジストは、俺たちの生活に欠かせないものだ。だが地竜は、俺たちを理由もなく襲う化け物ではない。
彼らにも心がある。それを知った俺は、もう以前のように、地竜を殺すことは出来ない。
幻の月では、エナジストなしで、夜にも明かりが灯る。それはザイバッハにもある技術だ。
ザイバッハは確かに軍事力に長け、俺たちの国を滅ぼした敵国だが…今やアイザックは死に、衰退していくばかりの国。
俺もドライデンを見習って、ザイバッハが培ってきた技術を学び、ファーネリアの再建を考えようと思う…
人間も獣人も、分け隔てなく暮らしていける国だ。時間はかかるだろう。俺の代では無理かもしれない。だが俺は、やり遂げて見せる。
そのために、おまえたちの力を貸してほしい」
ぺこりと頭を下げるバァンに戸惑ったのは、ルムを含めた村人たちだった。
「な…、何言ってんだ、おまえ!」
「エナジストなしで、どうやって生活していけって!?」
「あのザイバッハの薄気味悪い技術を学びたいなんて、頭どうかしたか!?」
口々に非難する彼らを、バァンはまっすぐに見つめた。
「俺の決意を証明するために、おまえたちにも見せておきたい。地竜がどういう生き物なのかを」
「まさか!?」
「メルル!」
バァンは振り返り、腰に挿した剣をベルトごと取ると、メルルに放った。
メルルは慌ててそれを両手で受け取る。
「バァン様!?」
「竜の巣へ向かう。おまえたちは気配をなるべく消して、見ていてくれ。決して手は出すな」
そう言い残し、振り返らずに歩き出すバァンを、ルムたちが血相を変えて追いかけた。
「おい! 死にに行く気か!」
「俺は死なん」
バァンは朗らかに笑う。
空に浮かぶ幻の月を見上げながら。
「おまえにまた会うまでは、絶対に死ねない」
あの月から、ひとみが見守っていてくれることを信じて。
――明日咲く 未来を 生きる
終わり
エロが軽めですいません。すごく長くなってしまいました orz
ルムの奥さんは勝手に作りました。キャラクターの性格が多少違ってると思います。
最後、遊び心でこっそり混ぜたものがあります。気を悪くされたらすみません。
かなり自分勝手に書いたので、原作と世界観が違っていると思いますが、お許しください。
前回レスを下さった方、ありがとうございました。それでは失礼します!
うおー
ほぼリアルタイムで投下に遭遇できましたよ 感動ー。
GJ!
リクしたものですが、GJ!
二人の再会をこうも綺麗に纏められる文才が羨ましい限りです。
でもバァン、思いっきり中田氏してたみたいだし、
次に会いに行ったら子供が出来てて腰抜かしたりしてw
うおううおう
すげえよ。すごすぎるよ。
前回と今回で勢いついちゃってなんかもうDVDとか買っちゃいそう。
あんたのせいだよ。アタイのハートに火をつけちゃった憎い人……
341 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/06(火) 21:20:45 ID:iesio5LR
下がりすぎage
思わず隣駅までチャリ爆走
DVD借りてキターヨ
GJ!
地竜を引っ張ってきたのが(・∀・)イイ!!
このバァンだったら漢になれる事間違い無かろう。
私が保証してやる。ぐっじょぶ
あんたすごいよ、あんたすごいよーーーーーー!グッジョブ!
しかも『指輪』も絡めてくるとはかなり憎い!
真綾タンディーバな漏れとしてはかなり嬉しかった!
言うてはならんかも知れないが言わせてもらう!
一方その頃アレンさんはどうしているんでしょうか。
妹とどうにかなったりしてるんでしょうか。なさそうだけど。
ポケットを空にしてと絡めてとか言ったらぶたれるかなあ
GJ!!
萌え復活でDVD購入しそうだよ!!
すごいよ!!
投下した者です。
リクエストがありました、その頃のアレンさんを書いてみました。
近親相姦があります。苦手な方はスルーしてください。エロ低めかもです。
――結婚が、決まったわ。
おめでとうございます。
――アレン、わたくしは…!
フレイド公王はご立派な方です。あなたを、幸せにしてくださるはずです。
――そんな言葉を、わたくしが望んでいると思って?
どうかお幸せに、マレーネ姫。
――アレン…
あなたの幸せを、いつでも祈っております。
――あなたは、それでいいのね?
……はい。
――アレン、愛していたわ。あなたは、わたくしの全てだった。
…お幸せに。
――あなたも。
あなたは幸せになれた。
その短い生涯の中、シド王子をフレイド公王のお子とし、託された。
私の選択は間違っていなかった。
あなたはフレイド公王と天の国でシド王子を見守っておられるはず。
私は真実を胸に秘め、今日もあなたの幸せを祈りましょう。
決して口にしてはならない、あの日の思いと共に。
アストリア王国の騎士。辺境守備隊隊長。
名誉な称号「天空の騎士」を与えられたアレン・シェザール。
容貌は見目麗しく、腰に届くほどある金髪をたなびかせながら華麗に剣を扱い、
敵を倒すその姿に、人々は賞賛と羨望の眼差しを向けた。
その彼は今、国境付近に屋敷をかまえ、行方不明だった妹とふたり、静かに暮らしている。
「お兄様、守備隊に戻らなくてよろしいのですか? 今、アストリアが必要としているのは、お兄様のような立派な騎士のはずです」
亡き母の面影を、年々濃くしている。
淡い髪、吸い込まれそうな瞳の色。肌の白さ。全てが、母エンシアにそっくりだ。
朝食をふたりでとりながら、そんな妹セレナの言葉に、アレンは穏やかに微笑んで見せた。
「私にとっては、アストリアの未来より、おまえが大事だ」
「お兄様…」
息を呑み、それから目を細め、セレナは少し苦しげに息をついた。
「覚えているよ。幼いおまえの手を離したあの夕暮れの日を。
何度悔やんだかしれない。母上がどれだけ涙したか。
もう、あんな思いはしたくないんだ」
「私は、戻ったわ。お兄様。だから、もう私のために、お兄様の時間を割いて欲しくない」
「セレナ」
アレンはゆっくりと首を振った。
「全然足りない。おまえとの時間を取り戻すためには、3年なんかじゃ足りない。
私は、大切な女性を失いすぎた。これ以上失ったら、私は壊れてしまうだろう」
心労で倒れた母も、幸せを祈って手放したあの人も。
ああ、どうすればわかってもらえるだろう。
愛する者を失うたびに心に亀裂が走る音を。
心の穴は、修復がきかない。
あと一度でも空いてしまったら、どうなるかなど、考えたくないのだ。
「ミラーナ姫にも、皆にも話はしてある。私は納得のいくまで、おまえの傍を離れたりしない」
「お兄様…」
セレナは瞳を閉じた。
ザイバッハの手のものに誘拐された後のことは、恐ろしくて思い出したくもない。
その中で、たったひとつだけ、目頭を熱くさせるものがある。
ふわふわの毛並みをした、優しい獣人。
どれほど心の支えになってくれたか。
髪を切られたことを悲しんでくれた。色々なことを教えてくれた。
実験に連れて行かれる自分の小さな手を引いて、逃げようとしてくれた。
…最期まで、自分を護ってくれた。
そうだ。
私こそ、もうこれ以上失うわけにはいかない。
「彼」だったあの頃に散々味わったのであろう喪失感。
言えなかった言葉の全てを、後悔しないよう、目の前の人に伝えたい。
セレナは顔をあげ、アレンを見た。
「愛しているわ、お兄様」
「…私もだ、セレナ」
互いを慈しみあいながら、ふたりはどこかで恐れている。
目の前の人を失ったとき、一体どうなってしまうのか。
愛してる。愛してる。愛してる。愛してる…
言葉にすればするほど、不安が募っていくのは何故なのか。
ふたり過ごせなかった時間の差は、どうあがいても埋められない。
その不安を表に出したくなくて、今日もふたりは、静かに時を過ごしている。
アストリアに長い夏が訪れようとしていた。
地球で言えば、夜の10時ほどになっても暗くならない国には、大規模な空港と港があり、
ガイア中の人々が、商人として、客人として訪れる。
首都バラスには市が建ち並び、人間も獣人も行きかう、活気ある都である。
アレンはセレナを伴って、バラスへと買出しに出かけていた。
通りすがりの親子連れを見て、知らず顔をほころばせるセレナ。
息抜きに連れ出してよかったと思いながら、アレンは道端で売られる品々をじっくりと眺めていた。
「アレン隊長! 隊長じゃないですか!」
人々がせわしなく流れる中、聞きなれた声がまっすぐに飛んできた。
アレンが地面から目をあげれば、そこにはアレン率いるクレゼート隊の一員である男が、喜びに顔を紅潮させながら、
人々の間を縫って駆けてくるところだった。
「……ギメル! お前か!」
「お久しぶりです、隊長! お変わりないようで!」
ギメルと呼ばれた若き隊員は、はきはきとしゃべり、金の巻き毛を風に揺らせる。
「隊の方はどうだ?」
「はい、大きな暴動もなく、たまにいざこざがあるくらいで――」
「ギ…メル?」
その時、アレンの隣で行儀良くふたりの会話を聞いていたと思われたセレナは、蒼白になってつぶやいた。
「セレナ、どうした? …セレナ!?」
「妹君も、ますますお美しくなられましたね。…どうされましたか? お顔の色が――」
ガタガタと身を震わせるセレナに気づいたふたりは、ぎょっとしてセレナの顔色を覗き込む。
セレナは虚ろな目で何度かギメルの名を口にすると、ばっと顔をあげ、ギメルに飛びついた。
「ぅわ…っ!?」
「セレナ!!」
目を潤ませた若く美しい女性に抱きつかれて、動揺しない男はいない。
隊長の手前ということもあり、ギメルは顔を更に真っ赤にさせ、胸の中のセレナをどうするべきかと混乱する。
アレンが血相を変えてセレナの肩をつかんで引き剥がそうとする。
その周りを、人々が好奇の目で見ながら通り過ぎていった。
「ギメル、ギメル…! ああ、生きていたのね。ガァティはどこ? ダレットは…!」
ギメルの首に両腕を絡ませ、セレナは涙ながらに早口にまくしたてた。
「セレナ様っ! どうかお気を確かに!」
「セレナ、やめるんだ、セレナ!!」
「ギメル…!」
きつくギメルを抱きしめるセレナの肩をいくら引こうが、離れなかった。
アレンは奥歯を噛み締めて、セレナの腰に腕を回し、強引に引き剥がす。
泣きながらギメルを求めるセレナの腕を、アレンは片腕でまとめてつかんだ。
「た、隊長…」
「すまないが、ふたりにしてほしい。…それと」
「はいっ、誰にも話しません!」
ギメルはまだ頬を染めたまま、敬礼した。
アレンはそれに目礼を返し、セレナを強引に連れて行く。
人の多いバラスでは、いくらギメルが誰にも言わずとも、いずれ人々の間に知れ渡るだろう。
泣き叫ぶセレナを腕の中に抱きかかえ、アレンは妹を苦々しく見下ろした。
屋敷の前に戻る頃には、セレナも大分落ち着きを取り戻していた。
時折しゃくりあげながら、アレンを見上げている。
アレンは無言でセレナを下ろすと、扉を開け、セレナを中に入れた。
「…ごめんなさい、お兄様」
「セレナ…」
アレンは吐息と共に、妹を抱きしめる。
ふたり以外誰もいない屋敷の中、セレナがわずかに身じろぎする衣擦れの音が、やけに大きく耳に届いた。
「ギメルという名を聞いたとき、頭の中に、映像が流れたの。
顔も、髪も、よく似ていた…
みんな、いなくなってしまったのに。でも、どうしようもなくて…」
くぐもった声で、セレナはまた涙ぐむ。胸に熱く、妹の涙がしみこんだ。
「辛い思いをさせて、すまなかった」
「違うのっ!」
顔をあげたセレナの表情に、アレンはぎくりと硬直する。
母エンシアが好んで付けていた香水のにおいが、鼻腔をくすぐった。
透明な、ガラス玉のようにきらめく瞳。涙で濡れて、一片の穢れもない。
透き通る白い肌。小刻みに震えるつるりと光る唇。
「辛いのは、お兄様だわ。私のせいで、お兄様はいつも、そんな顔をされるのよ」
「…私…が?」
「…そうよ。私を見ては、いつも辛そうに瞳を伏せる。
私はお兄様に、そんな顔をさせたくて、一緒にいるんじゃない。
お兄様には自由になってほしいのに…私の存在が、お兄様を縛り付けて、お兄様は」
「違う」
アレンは、セレナの後頭部を押さえつけて、言葉を封じる。
「違うんだ、セレナ…
私は、おまえといられて、この上なく幸せだ。
だが、幸福はいつも、私の手の中から抜け出してしまう…」
――愛していたわ。あなたは、わたくしの全てだった。
……もです、マレーネ姫。でもどうか、私にも同じ答えを求めないでください。
言ったら私は、あなたを不幸にするでしょう。
あなたを連れて、遠い地の果てまでどこまでも行くでしょう。
天空の騎士の称号など、あなたの前ではガラクタ同然。
この思いを言葉にすれば、あなたは喜んで私の胸に飛び込んでくる。
それでも私は、言うことができないのです。
あなたを大切に思うから。
あなたに幸せになってほしいから。
だからどうか、そんな顔をなさらないで。
愛しい人よ、私の前から去りなさい。
もう二度と、振り返ってはなりません。
唇に熱いものが触れていた。
「っ!?」
驚いたのは、ふたり同時だった。
上を仰いで唐突に押し付けられた兄の口付けに驚く妹。
こちらを見上げる女の唇に、吸い寄せられるように自覚なく口付けていた兄。
ふたり目を見開いて、数秒の後、慌てて離れた。
「セ、セレナ、その…っ、すまないっ」
呆然と見上げるセレナの顔が見られずに、アレンは自室へと駆け込む。
遠くでばたんと扉が閉まる音がして、セレナはおずおずと触れた唇に指を当てた。
「お兄様…」
夏のアストリアを、これほど疎ましく思ったことはない。
夕暮れにでもなればいいものを、窓の外はいつまでも明るい。
自室にこもるアレンの耳に、遠慮がちなノックが響く。
「セレナ…悪いが、今はひとりにしておくれ。私は」
「…だめよ、お兄様」
がちゃりと扉が開き、コツコツと足音が近づいてくる。
アレンは長椅子に深く腰掛け、両手で顔を覆っていた。
「来るんじゃない…! どうかしていたんだ。許して欲しい…」
長い髪が覆う手の中に入り込み、まるで乙女が罪深き自分を恥じて泣いているように見える。
神よ。私は罪を犯しました。
愛してはならない者を愛し、幸せを願うと誓ったのに、未だに心が荒れるのです。
自分には誰も救えない。護れない。愛してはいけない。
わかりきっていることなのに、愚かな私はそれでも愛してしまうのです。
神よいっそのこと。
私に心など与えてくださらなければよかったのに。
海龍神ジェチアよ。我が願いを聞き届けよ。
一切の心を、私からなくしてしまえ。
「お兄様…」
誰も知らない、天空の騎士のこの姿。
いかな敵に出会おうとも、決してその身を屈することなく、
いつか騎士の名の元美しく散るのであろう体躯が、なんと矮小に震えることだろう。
罪の深さにおののき打ちのめされるこの小さな男の姿を見ることができるのは、同じ血を分けた妹だけなのだ。
「あの日…」
兄の前にひざまずき、兄の腕にほっそりとした指をかける妹のぬくもりを感じながら、アレンは静かに囁いた。
「私の前からいなくなったおまえ。十にも満たなかったおまえが、こんなに美しくなって私の前に現れた…」
「お兄様はいつだって、私を優しく包んでくれた。次に見たお兄様は、誰もが惹かれる天空の騎士になっていた…」
頑なにまぶたを覆っていた指をどかし、瞳を開ければ、優しく笑む女神がいる。
アレンは震える手を、妹の、セレナの手の上に重ねた。
「どうしてなんだろう…」
その手をゆっくりと持ち上げ、甲に唇を乗せた。
「愛している。セレナ、私はおまえを愛している」
涙を浮かべ、優しく微笑む目の前のひと。
アレンは自ら手を伸ばした。
一度口にすれば、二度と元には戻れない。
「誰か教えて欲しい。どうすればおまえを、ひとりの女性ではなく、妹として見られるようになるのか」
「…見なくていいわ、お兄様」
頬に伸ばされた手の感触を、セレナはゆっくりと確かめる。
「ここには誰もいない。わたしたちだけなのだもの」
――君は私を、赦してくれるだろうか。
それは誰に向けて放った言葉だったか。
幻の月の少女がこの場にいたら、全力で止めてくれただろうか。運命を導く少女なら。
…いいや。
これが運命だったのだ。
セレナの唇を舌で潤す。
兄の仮面を脱ぎ捨てた男の顔で、愛する女を味わいつくす。
窓の外は未だに明るい。
カーテンを閉めた部屋の中、床に散乱する衣服の傍らのベッドで、アレンはセレナを背後から抱きしめていた。
「…セレナ…」
耳たぶを甘噛みし、耳の付け根から首筋まで一気に舌を滑り落とす。
「は…ぁ、ああ…っ」
切なげに震えるセレナが、小さく鳴いた。
「怖がることはない…おまえには、いつだって私がいるのだから…」
囁いて、腰のくびれを両手でなで上げると、ゆっくりと乳房に手をかける。
「あ…、あ、お兄様…っ」
びくんとして、セレナが背後の男を見る。
「セレナ…名前で呼びなさい」
下から持ち上げるように柔らかな肉をつかみ、強弱をつけながら、アレンは低く囁く。
「え…あ、アレン…?」
「いい子だ…」
戸惑うように呼ばれた自分の名を噛み締めて、アレンはセレナに唐突に口付ける。
「ん……っ、んっ、あっ」
「もう一度…」
ついばむようにセレナの唇を吸いながら、アレンは静かに言う。
セレナはキスの余韻に浸るまま、アレンの名を繰り返す。
「アレン…、ん、あ、アレ…、アレン…っ、あぁっ!」
きゅっと乳房の頂を指でつまんでひねりあげる。セレナは目を丸くして息を呑んだ。
「セレナ……、ああ…、おまえを…愛してる…」
甘く痺れるセレナの唇を堪能しながら、アレンは熱に浮かされたように愛を紡ぐ。
ギメルの胸に飛び込んでいったセレナを見たときに感じた思いを、おまえは知らない。
兄としてではなく、男としておまえの肩をつかんだ。
おまえの幸せを願うなら、あのひとにしたように、いつかは身を引くべきなのに。
考えたくもない。おまえが誰かの元へ嫁ぐなど!
「いた…い、痛いわ、アレン…!」
「っ!」
激情のまま、手の中の肉を握りつぶそうとしていた。セレナの声に我に返る。
「すまない…」
「どう、したの…?」
甘い吐息をつきながら、セレナの瞳が濡れていた。
「おまえは、誰にも渡さない」
「…え…?」
唐突に宣言されたその言葉の意味もわからぬセレナをうつぶせに寝かせる。
「神が赦さなくても構わない。セレナ、ずっと一緒にいよう」
「…ええ、アレン…」
シーツに半分顔を埋めたまま、セレナが小さく答えた。
アレンは安心したように微笑むと、セレナの背骨に指を這わせ、穏やかなカーブを描く肉の割れ目に滑り込ませる。
「ひ…あっ、いやっ、なにを!?」
身を起こそうとするセレナの背中をやんわりと片手で押さえ、割れ目に忍ばせた指をじわじわと進めていく。
「ん…くっ、い……や…!」
「私に感じてくれるんだね、セレナ」
「あ…!」
ぬるりとしたものを指先に確認すると、アレンは幼子を誉めるように穏やかに言う。
羞恥に真っ赤に染まるセレナは、その言葉に完全にシーツの中に顔を隠してしまう。
それを見てふっと笑うと、アレンはセレナの腰を浮かせ、両手で左右の肉をこじ開ける。
「んんん…!」
くぐもったセレナの声に、アレンの熱情が高ぶっていく。
真っ赤に充血したセレナの秘所が、愛液を滴らせながら、アレンが来るのを待ちわびていた。
淡い色の茂みをかきわけ、アレンは悩ましげに息をつき、そこに接吻した。
「あぁ、ん…!」
セレナの嬌声と共に、アレンの唇に雫が落ちる。
それをすすりあげて、アレンはしつこく唇をつけながら、そそり立つ自身を数度しごいた。
充分な強度になった所で、溢れる蜜壷の中、舌と指を交互に挿しいれる。
がくがくと痙攣するように震えるセレナを安心させるように、太ももを撫でさする。
「…愛してるよ、セレナ。共に堕ちよう、どこまでも…」
入り口に自身をあてがう。
「うぅ…っ!」
セレナが低く呻いた。アレンは構わず進めようとする。
「う……っ!」
セレナの声が変わる。手の中の肉の柔らかさがなくなってゆく。
「…セレナ!?」
「セレナぁ!?」
ばっと振り向く、頬に刀傷のあるその顔。
「おまえは…っ!」
「くくく…っ、久しぶりだね、アレン・シェザール…! とんだ兄上様だ…!」
「あああああああああああああああああっ!?」
アレンの絶叫が、室内に響いた。
「兄上…、見損なったよ…く、ふ、はぁはははははははっ! 実の妹に何をしようとしてたんだい…?」
おのれ…!!
すっかり萎えてしまったものはそのままに、アレンはなんとも情けない格好で、ベッドの上でふんぞり返る、裸の男をにらみつけた。
ディランドゥ・アルバタウ。
ザイバッハの人体実験の名の下「神かくし」にあったと思われたセレナは、性別と性格を変えられ、軍人となっていた。
セレナとして生きた記憶もなく、ただただ殺戮を好み、高笑いと共に何度も剣を打ち合った相手。
よもや実の妹の成れの果てだとも気づかず、憎み続けてきた男だ。
ドルンカークも死に、ディランドゥの呪いも解けたはずだったのに!
「僕の部下が死んだんだ…そう、ダレット…シェスタ…ガァティ…ギメル……そう、ギメル…とても…よく似ていた…ああ…馬鹿なやつだよギメル…
生きているなら、最初に僕の所に報告に来るのが道理だろうに……ジャジュカ…ねえ兄上…ジャジュカはどこだい…?」
「ディランドゥ…! 皆死んだんだ! わかっているだろう!」
「…死んだ…? し…ん、し……死んだぁああっ!? あぁっ!?」
美しい顔を原型もとどめぬほど歪ませたままで、ディランドゥはアレンにつかみかかる。その両手首をつかみながら、アレンは眉根を寄せた。
「どういうことだ…! 何故、おまえが…!」
「ふ…ふふ、酷いな兄上…ふふふ…何も知らないくせに…」
ディランドゥはがっくりと首を垂れ、次第にくつくつと肩を揺らし始める。
「あなたの知らない所で、セレナがどんな目に遭っていたか…」
「…!」
「絶望と恐怖からかけ離れた人格と性別を与えられ、セレナが生きたはずの時を、僕が過ごした…」
「…ディランドゥ…」
荒れた室内で、裸の男がふたりで向き合っている異様な状況。
だがアレンは、セレナとは全く違う身体をはっきりと目の当たりにし、次第に理性を取り戻していた。
「僕を…僕の存在を、否定しないでくれよ、兄上…」
「…おまえ…」
「セレナは僕の分身…僕はセレナの分身…僕はね兄上…僕なりにセレナを、護りたいんだ…」
「……」
「あなたにもわかるだろう…! 大切な者を失った悲しみと苦しみがっ! セレナに十字架を背負わせて、
これからふたりでどこまでも堕ちるだなんて…、く、僕が許すと思うのかい!?」
顔をあげ、恨めしげに見上げるディランドゥ…弟の顔を見下ろして、アレンは唇を震わせながら、ディランドゥから手を放す。
「僕たちはひとつの身体にふたつの心を持った人間だ…あなたは、そんな僕らの兄だ…」
「…ああ」
「身体のつながりなんかで、安易に時間を埋めようだなんて、しないでほしいね…」
そこまで僕の兄上は愚かなんだと、思いたくないからさ…
ディランドゥはそうつぶやくと、ふぅっと後ろへ倒れこむ。ベッドがきしりと彼を受け止めた。
「ディランドゥ!」
慌てて駆け寄る。初めて目にする男の寝顔は、あまりにも無垢で、天使のゆりかごに揺られる赤子のようであった。
「…私は…なんということをしようとしていたんだ…」
沸き起こる理性の洪水が、アレンを苛む。
永遠の眠りにつくと思われた……弟が、力を振り絞って、止めに来てくれた。
「手のかかる弟を、持ったものだな…」
刀傷の残る頬に、包み込むように手を置いた。
おまえを忘れていて、すまない。
たったふたりだけだと思っていた屋敷の中が、突然にぎやかになったようだよ。
翌朝、セレナはゆっくりと目覚めた。
「…いつの間に、眠っていたのかしら」
記憶を探ろうと目を閉じると、暗闇の中、知らない少年が立っている。
「やあ、姉上」
「…誰?」
「手のかかる兄上が、眠っていた僕を起こしたのさ」
「え…?」
「姉上の嫌な記憶は、全て僕がもらってあげるよ」
「あなたは…」
「姉上、だから時々、あなたの身体を借りるからね」
「どういうこと…?」
「これからよろしく。……ふふっ」
目を開けたとき、セレナは今のやり取りすら忘れていた。
身支度を終え、階下に向かうと、アレンが待っていた。
「お兄様!」
「…おはよう」
「どうなさったの、お兄様…?」
アレンの顔色が悪い気がして、セレナは慌てる。
「いいや…ゆうべ、眠れなくてね」
「まあ…私、昨日のことを、よく思い出せなくて」
「…それでいい。おまえは、何も心配しなくていい」
「お兄様…?」
「それよりもセレナ、今日は出かけようか」
打って変わって明るい笑顔になったアレンは、手にしたバスケットを持ち上げた。
「どこへ行くの?」
「墓参りもかねて、少し歩こう」
戸惑う妹の手を引いて、アレンは外へ通じる扉に手をかける。
「でも、急にどうして?」
「旅に出たくなったんだ。…でも、それはおまえがもう少し落ち着いたらでいい。だから今日は、墓参りに行こう。
報告したいことができてしまったからね」
「え…?」
訳が分からないと困惑する妹の手を引いて、アレンはひたすら前を向く。
いつか全てを捨て去って、何も持たないまま、三人で旅をしよう。
目当ても何もないままで、いつか私たちという名の旗を、このガイアの地に掲げよう。
セレナは必ず守り抜く。
しかし私自身がおまえの脅威となったとき、必ずや止めてくれるだろう。
私の新しい弟が、きっと。
「愛しているよ、セレナ」
セレナは兄の言葉に、顔をほころばせた。
「私もよ、お兄様!」
兄の言葉にこめられた真意に気づくことなく、無邪気に答える妹の顔を、アレンは優しく見つめていた。
終わり
リクエスト通りにならなかった…かも。最後苦しかったですね。すいませんorz
アレンさんはセレナと暮らしても絶対苦労するんじゃないかと思い、こんな感じにしてみました。
前回レス下さった方、嬉しくて転げまわりました。皆さんありがとうございます。
それでは失礼します。
358 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/09(日) 23:07:34 ID:JQlAd5w6
キタコレ!
面白いっす。してやられた。
ギメルがずっと気になってて、エロに入ってからもずっと
復活か?ていうか何処で?…と警戒していたんだけど、
いざ本当に出て来られると
本当に出た━―━―━(゚∀゚)━―━―━― !!
みたいな感じで驚きました。ド肝抜かれた。ホラー映画かと(ry
いきなりバックにした辺りで感じた違和感、アレも伏線なんだろうか…
でもエロはちゃんとエロかったです。
>>352ではアレンに同情してしまったw
うっひょーその頃のアレンさんホンマにキタ――――――――!!
あえてムチャなリクエストしちゃったけど
まさかマジでやってくれるとは。うおおぉおおおおおおおおおおおおおお
海千山千のモテモテガイを実妹相手にどう絡めるのかドキドキしました。
プレイがヤツらしくてなんだか笑えました。
しかもデカダンライフで落ちないところがスゲエ!
アニメでは毎回「クソ、羨ましいなコンチクショウ」と思って見てたけど
彼もいろいろ大変なんやなあ。ゴチでした!!うおおおお
ディランドゥ〜〜〜!まさかああいう感じで出てくるとは。
あなたは凄い方です。これからも良きエスカ職人であって下さい。
・・・・・ディランドゥ(ちょっと弱り気味)とひとみのssキボンいたしますぅ・・・・・
ああんもう!!ありがとう!神様ありがとう。
このスレにめぐり合わせてくれた全てにありがとう!!
素晴しいです。ゆっくりでいいのでまた次の作品楽しみにしてます!
保守
364 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 23:02:10 ID:eV3KOgBO
投下した者です。リクエストがありました、ディランドゥ×ひとみをちょっとずつ投下します。
スレが下に落ちすぎているので、一旦あげます。
ゾンギが殺された後、ひとみがディランドゥに囚われたら話はどうなっていたのかを、
自分なりに考えて書いてみました。
エロへの過程がまた長いです。このカプが苦手な方は、スルーしてください。
「こんな所で命を落とすなんて、バカなやつらだ…」
ザイバッハの所有する浮遊要塞ヴィワンから、一輪のバラが空を舞った。
「何の手柄にもなりはしないんだぞ、おまえたち…」
雲間へと吸い込まれていくバラを見ることもなく、ディランドゥは、しばし肩を震わせた。
――ひとりにしないで…
「っ!」
突如脳裏に、泣きじゃくる女の子の姿が現れる。
――ひとりに、しないでぇ…っ!
「ぐ…っ」
口を押さえ、身を屈める。
「ひと…りに…っ」
「大丈夫!?」
倒れそうになるディランドゥを支えたのは。
「お…ん、な…っ」
ディランドゥが赤銅の瞳を向ける先、ドラグエナジストの結晶で作られたペンダントが揺れた。
「大丈夫だよ、あたし、ここにいるから!」
ステルスマントに覆われた、「視えないガイメレフ」の位置を見抜き、ディランドゥの頬に生涯消えぬ傷跡をつける原因を作った女。
ドルンカーク様が注目していた、幻の月の女。
薄れゆく意識の中、部下を全て殺され、精神の均衡を保てなくなったディランドゥの傍にいたのは、ここにいるはずのない少女だった。
話はフレイド公国との戦前まで遡る。
まやかし人ゾンギの報告を聞き、ゾンギが部下を殺したことへの報復を済ませた後に現れた白き竜、エスカフローネ。
それに乗っていたのは、堕ちたファーネリアの若き王バァン・ファーネルと、あの女だった。
ディランドゥは嬉々としてその女、神崎ひとみを狙ったが、忌々しいバァンが邪魔をして、
なかなか女に届かない。ディランドゥはアルセイデスの腕を伸ばし、クリーマの爪から流体金属を噴射。
四方八方に流れるしなやかな銀色の爪を、エスカフローネに向けて放った。
「おまえさえ、いなければぁっ!」
ディランドゥの雄たけびと同時に、エスカフローネは器用に流体金属の襲撃を抜けていく。
――ぬ、許さぬぞ、ディランドゥ…
ふと、ディランドゥの耳元で声がした。
「なにっ」
エスカフローネから目を離すことなく、アルセイデスの中からディランドゥは気配を探る。
――我が主、フォルケン様に命を捧げるつもりだった私を、このような形で…!
「ゾ…ゾンギ!?」
クリーマの爪から流出している流体金属は、先ほどゾンギをミンチにしたもの。まさかその思念が、このような形で残っていたとは!
「だから僕は、まやかし人は嫌いなんだよ! 亡霊はおとなしくしていろ!」
ディランドゥは恐怖を覚えながらも、戦闘への高揚感でそれを無理やり封じ込めた。エスカフローネは相変わらず逃げ回っている。
ここから逃げるつもりだ。させるものか!
――おまえも許せぬが、私の正体を見破ったあの女も許せぬ…!
ゾンギの声が、怒りに震えていた。
――フォルケン様のため、最後に…!
「ゾンギ!」
クリーマの爪から噴出している流体金属のうちの一本が、どす黒く色を変え、ディランドゥの意思とは無関係な方向へ動く。
「馬鹿な…! どういうことだ!?」
――フォルケン様ぁあああっ!!!
ゾンギの最後の言葉と共に、エスカフローネから悲鳴が上がった。
「きゃあああああーっ!」
「ひとみ―――っ!」
黒い爪が、エスカフローネに乗る女を絡め、こちらへと戻ってきたのだ!
急いでエスカフローネを動かし、こちらに迫ってくるバァンの顔は、月明かりの下でもはっきりと青ざめていた。
「くははははははっ!」
黒い爪が近づいてくる。悲鳴をあげながら、幻の月の女が運ばれてくる。
ディランドゥは残りの爪もクリーマの中に回収し、飛行体勢へアルセイデスの形態を変えた。
「待て、ディランドゥ! ひとみを返せっ!」
バァンの声が、ひどく愉快にさせる。
「こんなところにのこのこ来るから悪いんだよ!」
ディランドゥはステルスマントでアルセイデスを覆い、バァンの前から姿を消す。
「くくく…! 全くまやかし人ってやつは、便利じゃないか、フォルケン!」
黒い爪が色を失いつつある。ひとみは必死にそれにしがみつきながら、黒い爪を見て顔色を失った。
「この人…この人、まだここにいる! 消えちゃうっ!」
「これでアデルファス将軍も、僕に生意気な書面を送りつけてくることもないだろうさ…
はしゃぎすぎるなだって…? はははははっ! 僕を誰だと思ってるんだ! あはははははっ!」
ディランドゥは笑いながら、ヴィワンに向かって夜空を飛んだ。
「ディランドゥ…ゾンギはどうした?」
ヴィワンに戻ると、フォルケンが待っていた。ディランドゥはひとみを開放し、その腕をつかみながらその前まで歩く。
「この女を手土産に、死んじゃったよ」
「放してっ! 痛い!」
ディランドゥはそう言いながら、乱暴にひとみをフォルケンに見せる。
「! その娘は…!」
「そうさ、すごいだろ? ゾンギに感謝するといいさ。視えないガイメルフを見抜く力を持った、幻の月の女だ!」
ディランドゥは歯を剥いて笑い、ぎりりとひとみの腕をつかむ手に力を入れる。
ひとみが痛がって目に涙を滲ませているのを見て、フォルケンは止めた。
「よさないか、ディランドゥ。その娘は運命を変える力を持っている」
「運命? …そうか、運命…」
ディランドゥは目を細めると、突き飛ばすようにひとみを放す。ひとみは声をあげて床に倒れた。
「未来あるザイバッハのために、せいぜい働いてもらおうじゃないか? それに、この娘がここにいた方が、戦もこちらに有利になるしね…」
「…フレイドへ攻め入るのは三日後だ。それまで休んでおけ…」
「わかったよフォルケン。…ああそれと、もう僕の前にまやかし人は金輪際見せないで欲しいね。嫌いなんだよ、ああいう気味悪い人種はさ」
ディランドゥはそう言って、ツカツカと歩き去った。ひとみが立ち上がると、フォルケンは眉をひそめながら謝罪する。
「すまないな、ああいう男なのだ、ディランドゥは」
「あの…」
ひとみは一度だけ見たバァンの兄であるというフォルケンと、こんな形で再会することになって、戸惑っていた。
バァンが憎んでいるという兄。
国を滅ぼしたという兄。
バァンを見つめる、寂しげな瞳。
「バァンの、お兄さん…?」
改めて、聞いてみる。フォルケンは悲しそうに微笑んだ。
「そうだ。私はファーネリアを捨てた身だが、バァンの兄であると言う事実は捨てていない」
「…」
バァンは捨てている。フォルケンの弟であるという事実を、捨てている。
ひとみも一緒に悲しくなったが、最期までフォルケンに忠義を誓っていたまやかし人のことを報告した。
「あの人…ディランドゥが…」
「ゾンギか」
フォルケンの瞳が細められる。ひとみは、ゾンギと出会ってみてしまった、彼の凄惨な過去を思い出し、うつむいた。
「あの人、フォルケンさんに助けられて、すごく救われていました。最期まで、フォルケンさんのことを、思っていました」
「…そうか、君はその力で、彼と私のことを、知っているんだね」
「はい…」
フォルケンは、義手を差し出した。骨のような形をした、不気味な手だった。
「バァンの元へ、帰りたいだろうが…それは叶えてやれそうにない。私はドルンカーク様に仕える身。
今までも、逃げ出したくなるような命令を受け、全て従ってきた…君だけ例外というわけには、いかないのだ」
「フォルケンさん」
ひとみは、その義手を両手で握り締めた。血の通っていない冷たい手だったが、フォルケンの瞳から暖かい気持ちが流れ込んでくる。同時に、深い悲しみも。
「いつかバァンたちが、あたしを助けてくれるはずです。その時、フォルケンさんも、バァンの所へ、帰りませんか」
「それは…」
フォルケンは息を呑んだような顔でひとみを見下ろす。ひとみの真剣な眼差しをしばらく見つめ、ふっと笑った。
「それは、できないな…私は、バァンをこちら側に引き込みたいのだ。あれもわかってくれる。ガイア界には、ドルンカーク様のお力が必要なのだと」
「そのために、たくさんの人たちが犠牲になっても? バァンは、国が滅んだことを、すごく悲しんでる」
「人間とはね」
フォルケンは、義手の関節を曲げ、ひとみの両手を包み込む。おとぎ話を聞かせるように、ゆっくりと言った。
「人間とは、失わねば、幸福に気づけない、愚かな生き物なのだ」
「それって…」
「君にも、残してきた家族がいるだろう。ここへ来て、その大切さに気づきはしないか?」
「!」
ひとみは、暖かなフォルケンの瞳に吸い込まれたようになって、両親や弟のことを思い出した。
口うるさい母に、ちょっぴり頑固な父、生意気な弟。…天野先輩。ゆかり。
弟と喧嘩しても、怒られるのはいつもひとみで、それが納得いかないと、弟を嫌いになったこともある。
憧れの天野先輩を見ているだけで、幸せだった。ゆかりとおしゃべりするのが楽しかった。
あの毎日が、突然失われた。
みんな、今頃どうしてるだろう?
「人は犠牲の上に成り立っている。何故なら犠牲がなければ気づけないからだ。これは必要な犠牲なのだ」
目に涙を浮かべ始めたひとみを見つめながら、フォルケンは己に言い聞かせるように説く。
「でも、やっぱり間違ってると思います」
ひとみは涙を指で拭いながら、懸命にフォルケンを見上げた。
「だって、フォルケンさんは、自分の国を滅ぼして、幸せになれるんですか?」
「…」
「幸せって、人それぞれだけど、誰かと分かち合うことだってあるでしょう?
バァンと幸せになりたいはずなのに、国を滅ぼしたらできないじゃないですか!」
「私は、幸せになれずともよいのだ」
「え…」
フォルケンは微笑みながら言う。それが当たり前のように。
「元より…国を捨てた時より、私は幸福とは無縁となった。だがバァンには生きていて欲しい。幸福となって欲しい。
バァンと幸せを分かち合うのは、私ではない。他の誰かだ」
「フォルケンさん…」
「さて、私はドルンカーク様に君のことを報告せねばならない。君の部屋を用意するから、しばらく待っていなさい」
フォルケンはそう言うと、ひとみに背を向ける。ひとみはフォルケンの名を呼ぶが、フォルケンは振り返らなかった。
途方に暮れていると、ディランドゥの部下だというひとりがやってきて、ひとみを案内する。
薄暗い部屋に閉じ込められるのかと思っていると、そこにはディランドゥが待っていた。
「一杯やるかい? 幻の月の女」
「…ひとみよ、神崎ひとみ!」
明かりもない部屋の中、ここはディランドゥの部屋だろうか?ぽつんとテーブルと椅子がある。
ディランドゥは真っ赤なワインを、瓶ごと振って見せた。
「ひとみ? …変わった名だ。幻の月のことを聞かせておくれよ。
呪われた星の民は、みんなおまえのように、不思議な力を持っているのかい?」
くつくつと笑いながら、グラスに瓶を傾ける。とくとくと真っ赤なワインが注がれていくのを、ディランドゥは面白そうに見つめていた。
「これはっ! …なんていうか、あたしは元々、占いが得意ってだけで、特に不思議な力なんか持ってなかったの。
でも、ここに来てから、視えないものが、視えるようになったっていうか」
上目遣いになりながら、もじもじと言っていると、ディランドゥは一気にグラスをあおり、ふうんとつぶやいた。
「ステルスマントで姿を消した我々竜撃隊は、とんだ赤っ恥だったよ。おまえの力のせいで…僕の傷も、ご覧の通りさ」
ディランドゥはそう言って、頬につけられた刀傷を指でなぞる。
「あんたがっ! バァンを殺そうとするからでしょ!」
「とんでもない話だね。やつはフォルケンが可愛がってる弟君だ。腕の一本でも、斬り落としてやろうと思っただけさ…」
「あんたねえ!」
バンとテーブルを両手で叩く。瓶が一瞬宙に浮いた。
「これだから、女は嫌いさ」
ディランドゥはグラスを床にするりと落とす。あっけなく粉々になるそれには見向きもせず、近づいたひとみの顎を、ぐいっとつかんだ。
「いた…っ」
「口の利き方には気をつけろよ? 何しろ僕は手が早いって言われてるんだ。捕虜もすぐ殺しちゃうからってさ…」
至近距離で、ディランドゥの狂気の瞳が爛々と輝いていた。その赤銅色の瞳には、近々起こるフレイドの戦のことしか映っていない。
ひとみはディランドゥの腕をつかみ、はっとした。心の中で、ペンダントが大きく揺れる。
――ひとりにしないで…!
(何…?)
流れてくるビジョン。夕暮れ。たくさんの大人。髪。女の子。泣き声…
ひとみは驚いたように、痛みも忘れてディランドゥを見つめた。
てっきり怯えて泣き出すものと思ってそれを見ていたディランドゥも、さすがに真顔になり、ひとみから手を放す。
「…不気味な女だ。近づいただけで、何もかも見透かされているみたいだ!」
そう吐き捨てる。
ひとみは顎に手を当てて痛みを抑えながら、ディランドゥから目が離せない。
今のビジョンは? あの女の子は?
「ディランドゥ様、捕虜を部屋に連れて行くよう、フォルケン殿から指示が」
そう言って、先ほどの部下が入ってくる。ディランドゥは嫌そうな顔で、ひとみを睨んだ。
「さっさと連れて行け。こんな女と一緒にいるのは不愉快だ!」
「はっ」
部下は一礼すると、ひとみの腕を引く。それにつられながら、ひとみは尚もディランドゥを見つめていた。
「ディランドゥ様に何をした?」
部下と廊下を歩きながら、そう聞かれる。ひとみはおずおずとその男を見上げ、首を振った。
「何も。…ねえ、あの人、お姉さんか、妹さんでもいるの?」
「なんだと?」
途端に男の顔が険しくなった。立ち止まり、ひとみに剣を突きつける。
「きゃっ!? ちょっと、何よ?」
驚いて後退するひとみの鼻先に、男は切っ先をぐいと向けた。
「ディランドゥ様に、姉妹などいらっしゃらない! 何故、そんなことを訊く!」
「あ、じゃあいいの。…あの人に触れたとき、女の子が…視えたから」
こくんと息を呑み、ひとみはあわてて言った。男はしばらく剣を収めずひとみを睨みつけていたが、やがてそれを下に向ける。
「殺されたくなければ、妙な詮索はしないことだな」
「はあ…」
「我々には、親も兄弟もいない。最初から、存在などしないのだ…!」
そう言い捨てると、剣を鞘に収める。
「存在しない? そんなわけないでしょう?」
好奇心が抑えられずに、思わずひとみは聞いてしまう。男はじろりとひとみを睨んだが、口を開いた。
「我ら竜撃隊は、そういった孤児の集まりだ。記憶は消されている。ディランドゥ様も、恐らく」
そこまで言って、男は口を押さえた。ひとみの腕をつかみ、早足で廊下を進む。
「痛いっ! 逃げ出さないから、放してよっ!」
「しゃべりすぎた…! なんという失態! 貴様のせいだ!」
やがてひとつの部屋の前まで着くと、男は乱暴にひとみを中へ突き飛ばした。
ばたんと倒れるひとみを確認すると、扉を閉めようとする。
ひとみはその瞬間、心の中のペンダントが揺れるのを感じた。
「ねえ!」
「…なんだ!」
顔をゆがめながら男は忌々しいものを見るようにひとみを見下ろす。
ひとみは一瞬迷ったが、言った。
「水に気をつけて」
「…なに?」
「床に水が溜まってる」
「本当に不気味な女だ!」
「あっ!」
男は扉を閉め、しっかりと鍵をかける。ひとみが何か言いたそうに自分を見ていたが、無視した。
元来た道を戻り、仲間のいる部屋へ向かうと、途中、清掃員が床を磨いているのを見かけた。
「ガァティ様、申し訳ございませんが、今床を清掃中でございますゆえ、お足元には――」
男を見た清掃員が、遠慮がちに声をかける。
「ああ、そうか―――うわぁっ!?」
「ああっ!」
すまして答えたガァティの足が、もろに滑った。わずかに床に溜まっていた水にかかとをつけ、足がありえないほど前に伸びる。
けたたましい音と共に、ガァティは尻餅をつき、清掃員が青ざめて駆け寄った。
「ガァティ様!」
「うう…、今日は厄日か……ハッ」
――水に気をつけて。床に水が溜まってる。
先ほど言われた言葉を思い出し、ガァティはぞっとした。
「あの女…!」
「が、ガァティ様?」
ガァティは清掃員の言葉に耳を向けず、ざっと立ち上がると、尻の痛みを感じながら、慎重に歩き出した。
視えないものを見る女。
とんでもないやつを捕虜にした!
「さすがはディランドゥ様! ザイバッハに栄光あれだ!」
翌日、竜撃隊のひとり、シェスタがひとみのいる部屋の前を通りかかると、
扉の前で、竜撃隊の面々が押し合いへしあいしながら、中の様子を見ているのを目撃した。
「…何やってるんだ、おまえら」
顔をしかめて声をかければ、ガァティが満面の笑みを浮かべて振り返る。
「占いだよ、占い!」
「はぁ?」
「昨日ディランドゥ様が連れて来た捕虜の占いが、すっげぇ当たるんだ!」
「おまえら…」
シェスタはこめかみに指をあて、大きく息を吸い込む。
「フレイドへ攻め込む前に、そんなことで――」
「すげええええっ!」
中から歓声がした。ガァティを含めた他の隊員も一斉に注目する。
「なあ、なんでだ? なんでわかるんだよ!?」
「たまに視えちゃうだけ。あたしにもわかんないよ」
中で困ったようなひとみの声がする。
隊員を押しのけシェスタが中に踏み込めば、そこには興奮しきっているギメルと、肩をすぼめているひとみがいた。
「ギメル、おまえは…」
シェスタが苦虫を噛み潰したような顔でギメルに歩み寄る。ギメルはシェスタを見ながらひとみを指差した。
「すげぇんだって、この女! おまえも占ってもらえよ!」
「あ、あの…タロットカードがないと、正確には占えないし…」
「ギメル…捕虜だぞ、この女は! 遊んでいる暇が我々にあると思っているのか!?」
シェスタが怒鳴りつけても、ギメルはひるまない。
「ステルスマントでやつらを襲撃したときも、この女の力で見抜かれてたんだよ! はっきり視えたってさ! なぁ!?」
「は、はぁ…」
ギメルに見つめられ、ひとみは居心地が悪そうに肩を揺する。
シェスタは無言でギメルの頭をぽかんと殴ると、たたき出すようにして部屋から追い出した。
「ガァティ…おまえか? 皆に女の話をしたのは!」
「だってよぉ…」
ガァティはバツの悪そうな顔でそっぽを向く。
「全く…!」
シェスタはため息をつくと、所在なげにそわそわしているひとみの前に立った。
ひとみのいる部屋は格子もはめられていない客室で、捕虜にしては異例の扱いとも言えた。
フォルケンいわく「大事な客人」ということらしい。
質素なテーブルと椅子が二脚。ギメルを追い出し、
シェスタは咳払いをしながらひとみの前に座り、両指を組んでテーブルの上に乗せた。
「視えないものを見る。おまえはギメルに、今なんと言ったんだ?」
「結局おまえも知りたいんじゃないか!」
「うるさい! おまえらのような好奇心で聞いてるんじゃない!」
野次を飛ばすギメルに吼え、シェスタは改めてひとみを見る。
ひとみはこわごわと口を開いた。
「えと…言っていいのかな。正式な占いじゃないし、守秘義務というものがあって」
「いいから答えろ」
きっぱりと言われ、ひとみはちらりとギメルを見た後、苦笑して言った。
「あの、ギメルさんがこっそり隠していた夕食の残りは、別の人が見つけて食べちゃったって」
「すごいだろ!? な!?」
ギメルは状況を理解しないままそう叫んでいる。シェスタは脂汗を滲ませて、そうかとうなずいた。
「で、でな!? 今そいつが誰なのか聞いてるところだったんだよ!」
「あー、ごほん。それは、別にいいだろう。もう食べられたんだし」
「何言ってんだよ! 俺の大好きなチコリの実が入ったパンだぜ!? 絶対見つけ出して一発ぶん殴らねえと俺の気が」
「そんな些細なことはどうでもいいだろう!」
「些細じゃない! 断じて些細じゃないぞ! 俺が苦労して隠しておいたのに――」
ギメルが半べそになって反論してくるので、シェスタはうっかりこう言った。
「何が苦労しただ! おまえのブーツから匂いが漂ってたぞ!
あんな臭い所に食べ物をよくも隠せたもんだ………―――あっ」
「ほーう」
ギメルが半眼になって、ひとみを見る。人差し指でシェスタを指し、こいつ? と目が言っていた。
ひとみが無言で首を縦に何度も振ると、途端にギメルとシェスタの立場が逆転する。
「待て、今はそんな話をしているのでは――」
「あーん? 俺は今までその話をしていたんだがなあ…」
がたっと椅子から立ち上がり、シェスタは両手を前に突き出し、ギメルをなだめようとした。
371 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 23:45:28 ID:UYqu6Fkf
期待アゲ!
「だ、大体な! おまえもグースカ寝てたし、脱ぎ捨てたブーツからうまそうな匂いがしてりゃ、
夜勤明けで空腹の俺には充分な誘惑わけで――」
「そこになおれ、盗人が!」
すらりと腰から剣を抜き、ギメルは据わった目でシェスタに剣を向けた。
「わわっ!? ちょっと、ふたりともこんな所で――」
「随分仲良くやってるようじゃないか?」
ひとみが慌てて立ち上がるのと、竜撃隊隊長が入ってくるのが同時だった。
「ディ、ディランドゥ様!」
さすがのギメルとシェスタも青ざめ、剣を収めると、びしりと直立不動になる。
ディランドゥはつまらなそうな顔をしてふたりの前に立つと、
「捕虜の前ではしたない…僕はそんな風におまえたちを躾けたつもりはないよ…?」
「申し訳ございませんっ!」
ふたりは顔面蒼白のままで答える。ディランドゥはにっこりと微笑むと、ふたりの頬を拳で打った。
ふたりは半歩ほど足をずらすが、すぐに踵をくっつける。
「僕の部下たちを手なずけたようだね、女」
ディランドゥは腫れた頬もそのままに、まっすぐに立つふたりに背を向け、
入り口の廊下にずらりと並ぶ竜撃隊の面々をちらりと見てから、顔をゆがめてひとみを見た。
ひとみは一瞬言葉に詰まるが、
「手なずけてなんかいないわよっ! 何の用?」
と虚勢を張る。隊員たちが「バカ、そんな口を利くな!」と無言でオーラを発しているが、ひとみには届かなかった。
「フォルケンに引き渡す前に、僕も視てもらおうと思ってね…おまえも昨日までいた、フレイドとの戦のことさ…
アトランティスのパワースポットがあるというあの国を、ザイバッハはなんとしてでも手に入れなくてはならない…負けられないんだよ」
「…そんなこと! 大体、視たいと思って視えるものじゃないし! 視えたって、あんたなんかには教えない!」
「ははっ、僕はフレイドがザイバッハにどんな戦いを挑んでくるのかなんてものには興味はない…
ただ知りたいのは、僕たちは勝つのか? ってことさ。分かりきってることだけどね。おまえの口からそれが出れば、僕の隊も士気が上がる…」
「だから…!」
ひとみが声を荒げようとしたとき、ペンダントが揺れた。
――何…!?
ひとみは戦場に立っていた。赤い空がいっぱいにひろがって、色はそれだけ。他はモノクロの世界。
人が死んでる。たくさん死んでる。フレイドの戦士も、ザイバッハの戦士も…あれは?
――フレイド公王!?
こちらを見つめながら、矢を身体に受け、ゆっくりと沈んでいく王の姿。
雨が降る。両手に受ける。それは――
「血の雨…」
いやだ。いやだいやだ。視たくない。そんなもの、見たくなんかない!!
「どうした?」
「あっ!」
ディランドゥの声に、ひとみは我に返った。目を見開き、汗が流れる。
「何を視た?」
「いや…」
ひとみは首を振る。ディランドゥはいらついて、だんとテーブルを叩いた。
「質問に答えろ!」
「お願い、戦争なんかしないで! 王様が死んじゃうっ!」
金切り声で叫ばれたその言葉を聞いて、ひとみに同情するものはこの場に誰ひとりとしていなかった。
「いい答えだね。――聞いたかいおまえたち? 幻の月の女のお墨付きだ…フレイドはザイバッハの手中に堕ちる!」
「はっ!」
ディランドゥは立ち上がり、竜撃隊にそう宣言する。隊員たちは敬礼で喜びを表した。
「さて、これからもそうやって、僕たちの役に立ってもらうからね。助けなんか、期待するんじゃないよ」
ディランドゥは高らかに笑い、茫然としているひとみの腕をつかんだ。抵抗できないひとみを、物のように引きずってフォルケンの元へ歩き出す。
フォルケンは運命についてひとみに語った。ひとみが我慢できずに戦争のことを言っても無駄だった。
やがてフレイドとザイバッハの戦が始まり、ひとみが視たように、ザイバッハは勝利した。
フレイド公王は矢に射抜かれて死に、幼き王シドが王位を継承した。
フォルケンがザイバッハとの友好の証として提示したものをシドは受け入れ、シドはその際ひとみを返すこともほのめかしたが、
フォルケンはシラを切り、それがますますバァンとの溝を深める結果となった。
そして――
「だめだってば! ディランドゥ! 皆もっ!」
ディランドゥの運命を決めるあの日。ひとみの運命が変わった日。
鬼神となったバァンに殺されるとも知らないで、竜撃隊は今、エスカフローネを狩りに行く。
「今のバァンは、おかしくなってる! 戦いを楽しんでる! あんなのバァンじゃない! 皆、殺されちゃうよ!」
ひとみは、ガイメレフに乗り込む彼らの後ろで、懸命に叫んでいた。
「うるさいよ、女」
真っ赤に染まったアルセイデスの前に立ち、追ってきたひとみに向かって、ディランドゥは嫌そうに言った。
「ねえ、今まで、あたしの占いが外れたことはないって皆言ってたじゃない! あたし視えたの!
皆が、バァンに殺されちゃう所を! お願いだから聞いてよ!」
「僕はね、自分に都合のいい占いは信じるけど、そうじゃないものに関しては、信じないことにしてるんだよ」
「そんな!」
ディランドゥは必死なひとみを、一瞬不思議そうに見下ろした。
「大体捕虜の分際で、僕たちの心配をするなんておかしいじゃないか?
おまえが何か企んでいると考えたほうが、僕には納得がいくんだけどね」
「それは…っ」
ひとみは唇を噛み締める。
ゾンギの時もそうだった。
ひとみは幻の月――地球からこの世界に来ている身だから、ガイア界のことはよくわからない。
ただザイバッハが悪い国だという認識だけはあった。だが。
シェスタと、ガァティと、ギメルと話した。ディランドゥの過去のようなものも視た。
ゾンギの過去は、悲しかった。
人に疎まれていながら、その力だけは買われて、戦争の道具にされ、兄の見分けもつけられず、その手で殺したゾンギ。
彼を救ったのはフォルケンだった。
人にはそれぞれ過去がある。
生きてきた人生がある。それを、戦争なんかで失って欲しくない。
国は悪いかもしれない。けれど、ザイバッハの人たちにだって、家族はある。
ガァティはないと言ったけど、少なくとも仲間の絆はある。
ディランドゥにだって、あるはずだ。だから!
ディランドゥには、そんなひとみの心を読み取ることは出来ない。戦いに魅入られた男と仲間内からも言われている男だ。
目の前に戦がぶら下がっているのに、飛びつかないわけがない。
「用心すればいいんだろ? やつは僕たちが視えない。おまえはこちらの手中にあるんだからさ」
ディランドゥは笑うと、アルセイデスに乗り込んで、竜撃隊とヴィワンから飛び立った。
「――なあ!」
「えっ?」
最後に降り立つガイメレフの中には、ギメルが乗っていた。ギメルはこっそりとひとみに言った。
「帰って来たら、また視てくれよな!」
命からがら戻ってきたディランドゥを、ひとみは泣きながら待っていた。
まぶたを閉じ、耳を塞ぎ、うずくまっても、ひとみには全てが視えていた。
エスカフローネが、アルセイデス以外のガイメレフを叩き潰していく様を、ひとつ残らず視ていた。
ふらりとアルセイデスから降り立ったディランドゥは、ひとみが見えていないのか、すっと横を通り過ぎ、また戻ってきた。
その手に一輪のバラを持って。
「バカだよ…」
気を失えればまだましだったかもしれない。
だがディランドゥをそうさせない存在が、目の前の少女だった。
「あたし、ここにいるよ」
「…嘘だ…」
「ほんとだよ、あたし、ここにいる」
「…う…っ」
息が詰まり、ディランドゥは藁にすがるようにひとみを抱きしめた。
加減を知らないその抱擁を、ひとみは何も言わずに受け入れた。
「僕をひとりにするな…」
「うん」
「僕を…っ!」
「…うん」
ペンダントが揺れなくても、ひとみにはディランドゥの心がわかる。
…でも。
――フレイド王の仇…!
――バルガスの仇…!
――ファーネリアの仇いいいいっ!
バァンの声が蘇る。
戦いの輪廻はこうやって作られていく。誰かが止めないと、戦争はなくならない。
運命を機械で変えなくては、人は救われないのだろうか?
(意味ないよ。そんなの、間違ってるよ)
ディランドゥを支えながら、ひとみは思う。
…できるだろうか。この人に。
戦いを楽しむことしかできないこの人に、ひとみの言葉は届くだろうか。
(バァンには、皆がついてる。アレンさんも、ミラーナさんも、メルルもついてる)
だけど、この人には?
ひとみがいなくなったら、この人には誰が残る?
――帰って来たら、また――
ギメル。
ひとみはぎゅっと目をつぶった。
(さよなら、皆)
あたしは自分の運命を、ここで決める。
「竜撃隊は、ディランドゥを残して壊滅か…」
呆けているディランドゥと、それに肩を貸しながら歩いてきたひとみを見て、フォルケンは痛ましそうに言った。
「フォルケンさん。運命がどうのって言ってるドルンカークさんには、会えないんですか」
ひとみはまっすぐにフォルケンを見据えて言った。フォルケンは黙って首を振る。
「ムダだ。ドルンカーク様に、君の言葉は届かない」
「だけど! もうこんな悲しいこと、止める様に頼めば!」
「この悲しみを乗り越えた先にこそ、真の平和が来る。…我らはそう信じている」
「フォルケンさん」
ひとみは、声を震わせた。
「悲しみを乗り越えられなかったら、人はどうなるんですか」
「それは」
「ディランドゥはどうなるんですか! 家族を全て失った人が、幸せになれるんですか!?」
「ひとみ」
フォルケンは、刃のように飛んでくるひとみの言葉に、顔を背けた。
「彼には、君がいる」
「そういうことじゃありません! フォルケンさん、バァンは、戦のせいでおかしくなっちゃった。
仇だって言って、皆を殺しちゃったんです!
バァンは、それでいいと思ってる。本当は戦いなんかしたくないのに、エスカフローネのせいで狂わされてる!
そんなバァンが、幸せになれるんですか!?」
「バァンは、王だ。強くなくては…」
「フォルケンさん!」
「……」
ひとみは耐え切れなくて叫ぶ。フォルケンは黙り、ディランドゥを見た。
「例え、私の選んだ道が間違っていようとも」
骨の形をした義手を取り出し、握り締める。
「私はもう、戻れないのだ」
そう言って、フォルケンは歩き去る。ひとみはその後姿を見つめ、肩を貸しているディランドゥを見上げた。
「ディランドゥ。あなたは、このままでいいの? バァンのこと、憎い?」
「……」
「そうだよね、憎いよね…
あのね、バァンも、ファーネリアを滅ぼされて、たくさん親しかった人を失って…ザイバッハを憎んだんだよ。お兄さんのことまで…
ディランドゥ、戦争って、こういうことなんだよ。誰かを失えば、誰かが悲しむんだよ。
あたしはもう、皆が悲しんでる所を見たくないの。ディランドゥがそうやって消えそうになっちゃうのを見るのが辛いの。
ディランドゥ、あたし、ずっとそばに居る。ふたりで一緒に生きていこう?
そのために、ドルンカークさんを説得して、戦争をやめさせようよ」
たどたどしい言葉で、うまく言えなかったかもしれない。
喉にこみあげてくるものを何度も飲み込んで、ひとみは懸命にそう言った。
ディランドゥは虚ろな目をひとみに向けた。その赤銅色の瞳が、ゆらゆらと煌いた。
「戦争が…また起こったら…おまえも、僕の前からいなくなるのか…?」
「わからない…でも、そうならない保証はないよ」
ディランドゥはしばらくひとみを見つめた。本当にこの場所にひとみがいるのを確認するように。
やがてまぶたを閉じ、口を緩ませる。
「おまえとふたりで生きていくとして…僕はアルセイデスに乗って敵を殺すことしかできないけど?」
ひとみは、ぱっと顔を輝かせた。
「殺すんじゃなくて、剣術を教えたら? ディランドゥ、隊長やるくらい強いんだし!」
「僕が?」
「そうだよ! 皆から親しまれるの、嫌いじゃないでしょう!?」
「…そうだね」
ディランドゥは、静かに笑った。
「僕ほど人を使うことがうまい人間はいないさ」
「…うん!」
涙を滲ませて微笑むひとみをまぶしそうに見つめると、ディランドゥはその閉じたまぶたに唇を落とした。
「えっ?」
驚いて身を堅くするひとみを見下ろし、ディランドゥは笑う。
「何を緊張するんだい? …これからもずっと一緒にいるんだ。深い関係になるのは当たり前じゃないか」
「え、えと、ちょっと待ってよ!?」
「あははははっ」
ディランドゥはおかしそうに笑うと、ひとみから肩を貸してもらうのをやめ、自分の足で立った。
「さて、それじゃあ行こうか? 考えてみれば、僕もドルンカーク様には、色々言いたいことがあるんだよね」
「ディランドゥ…!」
「まあ、その前に」
ディランドゥはちらりとひとみを見た。
「色々、やることはあるけどさ」
「?」
ひとみはきょとんと、首を傾げた。
つづく
すいません、夜遅くなってしまったので、残りは今日中に仕上げます。
ディランドゥ難しすぎてちょっとご都合的な展開になりますが、お許しください。
うおおおおお、期待してます!!!
続き待ってます!ガンがって下さい!!
続きです。
自分の悪い癖が出てしまい、エロパロと呼べるのかわからない後半になってしまいました…
鬱バァンが苦手な方は、読まれないことをオススメします。
>>371さん、支援ありがとうございました。
>>377さん、ありがとうございます。
その夜、ひとみが客室に戻ろうとすると、ディランドゥが引き止めた。
「ひとりにしないと言ったのに、早速これかい?」
「う…」
正直に言えば、そういう予感はあった。
(い、いいのかな…)
戸惑いがないわけではない。
そもそも、お互いがお互いに抱いている感情が恋という甘い響きに彩られたものだという明確なものがないのだ。
ひとみはディランドゥの孤独を癒したいと思い、ここへ踏みとどまる決意をした。
だがディランドゥは?
彼がそれを知り、孤独から解放されたいがためにひとみを求めているのだとして、それは恋と呼べるものなのだろうか。
ふたりがそれを育んでいくには、時間が足りなさすぎた。
ひとみはディランドゥをどう見ているのか、ディランドゥがひとみをどう見ているのか、ふたりにだってわからないに違いない。
頬を染め、ディランドゥを見上げるだけのひとみを見て、ディランドゥは肩をそびやかした。
どこか悪戯っ子がするような目をして、ディランドゥはひとみの耳元に唇を寄せる。
「今夜は、どこへも行くんじゃないよ」
「う、うん…」
いいのだろうか。
本当に、自分の気持ちもわからないまま、彼とひとつになってもいいのだろうか。
地球にいる天野先輩、フレイドにいるアレンさん、それに…あいつ。
一方通行でしかなかったし、叶う望みのない恋だったけれど、ひとみは彼らの顔を不意に思い出し、きゅっと拳を握った。
「ディランドゥ」
「…なんだい」
探るようにひとみの身体に触れるディランドゥは、素っ気無く答える。
「あたしのことが好きだから、こうするの?」
「…」
スカートの中に手を差し入れようとしていたディランドゥの動きが、ぴくりと止まった。
「それとも、あたしを繋ぎとめておきたいだけ?」
「それで、おまえは何て答えて欲しいんだ?」
「あたしは…」
「僕は嫌いな相手には近づかない。したいことをする。おまえはどうだ? 僕が好きだから、ここにいるんだろう?」
ディランドゥは両膝をつき、ひとみのスカートを器用に下に落とした。
「あっ!」
慌てて後ろに下がろうとするも、ディランドゥはしっかりとひとみの引き締まった両足を固定している。
「つまらないことを言うもんじゃないよ」
ぼそりと言い、太ももから付け根へねっとりと舌を這わせる。熱い呼吸と濡れた舌が、ひとみの身体の奥を疼かせる。
「ん、や、ちょっと…!」
時折強く吸い付きながら、ディランドゥの舌は意思を持ったほかの生き物のように、ひとみの皮膚をぬらしていく。
立つ快感に、下腹部が熱く、中から湧き上がるものを感じた。
執拗にひとみの足に吸い付いているディランドゥの手が、ひとみの質素な下着にかかる。
布の上からでもわかる茂みの感触と、その奥でかすかに湿る場所。皮膚と布の境界線をなぞりながら、
ひとみが限界を訴えるのを待っているように、優しく行き来する。
「あ、いや…、やだ…っ」
布越しから割れ目を人指し指と中指で挟み、親指をその奥へとしのばせる。
親指が濡れたように熱い。ディランドゥは更に親指に力をこめた。
「あう…っ」
つきん、と痛みが走った。でもすぐにそれを忘れさせてくれる感情の波が襲う。
「…へぇ。まだ直接入れてるわけでもないのに、すごい締め付けだね」
親指を割れ目から外すと、すぐに愛液が滲み出した。しっとりと重みを増し、
顔を近づけるディランドゥの鼻先に、雌の色香が鼻腔をくすぐる。
「はぁ、ん……っ」
ひとみは頬を上気させ、立っているのがやっとだ。自分の身体じゃないみたいに、やけに熱い。
こんな風に感じてしまうのは、この人だからなのだろうか。
ディランドゥは邪魔な下着を両手でゆっくりと下におろす。とろりと愛液が糸を引き、ひとみは恥ずかしさのあまり膝を閉じた。
「おまえは男にこうされれば、誰にでもそうなるのか?」
ディランドゥは立ち上がり、ひとみの身体を片手で支えると、もう片方の手でひとみの片足を持ち上げた。
まるでバレエのレッスンのような格好をさせられて、ひとみはディランドゥの首にすがりつく。
片足から下着を抜き取ると、ディランドゥは服を着たままで、腰をぐいと摺り寄せた。
「ああんっ!」
とんでもない声を出して、ひとみはそのことに自分で驚く。なんて声。こんな声を出すなんて!
「僕は感じない。おまえにだけ、感じる」
ズボン越しからそそり立つものを、ディランドゥは狂ったようにひとみの秘所へ何度も押し出す。
そのたびにひとみは嬌声をあげ、とうとう言った。
「もうだめ…お願い、ディランドゥ。あたし…!」
「ふん…」
ディランドゥは満足げに笑うと、唐突にひとみを放した。ひとみは床にへたりこみ、ディランドゥが椅子に腰掛けるのをぼんやりと見る。
「つまらないことを言った罰だよ。自分でやるんだね」
「そんな…!」
「おまえは僕だけに感じていればいい。自分で覚えろ」
赤銅色の瞳が冷酷に光る。ひとみは犬のように四つんばいになって、ディランドゥの両膝をつかんだ。
「僕に触れて、口で奉仕しろ」
「え…!?」
容赦のない命令に、ひとみがぎくりとディランドゥを見上げる。ディランドゥはにやにやと笑って、それ以上は言わない。
疼きが止まらないひとみは、ディランドゥの足の間に割って入り、震えた手でファスナーをおろした。
途端に飛び出してくるディランドゥの昂ぶりを見て、涙の滲んだ目でディランドゥを見上げた。
ディランドゥが顎をしゃくれば、ひとみは諦めたように、それを両手で包み込む。
「いいね…すごくいい…」
地球でマセた友達に借りた、女の子向けのえっちな雑誌のことを思い出して、ひとみは恐る恐る、両手を上下させる。
漫画ではゆで卵みたいにつるつるしているから、てっきり本物もそうなのだと思っていた。
とんでもない。血管は浮き出てるわ、裏側はざらざらしているわ…
(こ、これ、入るのかな…)
ひとみはまじまじとそれを見つめながら、亀頭の部分を親指でこねるように触ってみた。
「んあ…っ、バカ、力をいれすぎだ…っ、あ…っ」
ディランドゥがそう言いながら、ひとみの頭を鷲づかむ。くしゃくしゃになった頭で、ひとみは我に返った。
(そうだ、これディランドゥの…)
集中しすぎて、これがディランドゥとは別の生き物のように思う所だった。
(男の子って、面白いな…)
そんな呑気なことを思っていると、ディランドゥは突如前かがみになり、ひとみの鼻をつまみあげた。
「んああっ!?」
自然と口を開けたひとみの中に、今までぎこちなく愛撫していたものをぐいと突っ込む。
「む…!? んんんんーっ!」
「もういいっ、口でしろ!」
目を白黒させているひとみに、ディランドゥは慌てたように言った。
青臭い味がいっぱいに広がって、むせそうになるひとみの頭を乱暴に動かし、ディランドゥは眉根を寄せ、息を吐く。
「熱い…!」
「んむぅーっ! んっ、ん、んん、ん――!」
乱暴に頭を前後され、ひとみは何も考えられない。口でする愛撫とは、こうも苦しいものだったのか。
いきなりこんなものを突っ込まれて、喜ぶ女はいるのだろうか?
「ん…、ふむ…、ん…!」
ひとみはうっすらと目を開ける。ぼろっと涙が零れたおかげで、
ディランドゥが喉をそらしながら喘いでいる様を見ることが出来た。
(そうか…)
ひとみは涎を後から後から垂らしながら、うっすらと思った。
じゅぶじゅぶと口の中で動いているものを、愛しいと思う。
(好きな人相手だから、女の人は、何をされてもいいと思うんだ…)
やがてディランドゥが小さく呻きながら、ひとみの頭をしっかりと固定する。
熱いものが噴射され、ずるりと唾液と白濁液が混ざったものが糸を引きながら、それがひとみの口内から出て行く。
口の中の違和感と、出されたものの苦さに咳き込んでいると、息を乱したディランドゥは、乱暴に衣服を脱ぎ捨てた。
「はぁ…っ、さあ、来い…!」
そう言って、闇の中へと消えていく。衣擦れの音がする。向こうにディランドゥが使っているベッドがあるのだ。
ひとみは制服を脱ぎ、椅子にかけると、ディランドゥの闇を追いかけた。
「貧相な身体だな」
ひとみを一瞥し、ベッドの上でディランドゥはずばりと言った。ひとみが両腕で身体を抱きしめうつむいてしまうと、乱暴に腕を引き、ベッドの上へ押し倒す。
ぎしっと大きくスプリングが揺れ、ふたりはぐらついた。
「別にいい。肉の塊は気持ち悪くて嫌いだからね。おまえくらいが丁度いい…」
「あ…」
ひとみの左胸の上に頬を置き、右胸を手で包み込む。
「…脈が速いね。緊張してる?」
心臓の部分に耳を当て、ディランドゥは愉快そうに笑った。
「してるわよ、そりゃぁ…」
ひとみが泣きそうな声で答えると、ディランドゥはまつげを伏せた。
「僕は、アルセイデスに乗ってるとき、いつもどきどきしてるよ。おまえを感じるときも、どきどきする…」
ディランドゥは起き上がり、ひとみを見下ろした。真っ赤になったひとみを見て、首を傾げる。
ランプの明かりは、ディランドゥの銀髪を美しく浮かび上がらせている。
「もっと感じさせておくれよ、おまえの奥底まで…」
愛撫の名残で充分に湿ったそこを、ディランドゥの指が無遠慮に入る。
ぐちゅっと卑猥な音がやけに大きく響いて、ひとみは両腕で顔を覆った。
「あぁ…!」
「おまえの声が好きだ。おまえの身体の感触が好きだ…」
ディランドゥは夢うつつで中をかき回す。第一関節を曲げ、肉の壁を引っかいてやると、ひとみはひときわ高く鳴いた。
「い、いた、あ、ああああっ!」
「もっと鳴いてごらん、僕のためにさ…!」
とめどなく愛液は流れ続ける。ディランドゥの手をぬらし続ける。
「いやっ、だめぇっ…」
「ホラホラ、もっと鳴かないと、ご褒美はあげないよ?」
「んあああああっ!」
「いい子だね…」
ディランドゥは最後に、真っ赤に熟した花芽を秘所の中から探し出すと、そこを思い切りつねりあげ、ひとみを絶叫させた。
ひとみの意識が朦朧となった頃、ようやく自身をあてがう。
「あく…っ」
その圧迫感に、ひとみは意識を取り戻した。ディランドゥの指で散々弄られても、まだ足りなかった。
「う…っ、きついな、おまえの中は…!」
乱暴にされるかと思っていたが、ディランドゥは慎重に腰を進めている。息を潜め、
額に汗の浮かび始めたディランドゥの顔を見上げ、ひとみは胸がいっぱいになった。
両手を伸ばし、ディランドゥの顔を挟むようにして触れる。肉体の痛みはあるが、それに勝ったのは「想い」だった。
痛みをこらえて足を精一杯広げた。蝶の標本のように。自分を見て欲しい。自分をずっと見ていて欲しい。その「想い」が自然にそうさせる。
「来て…もっと…!」
ディランドゥの頬に刻まれた刀傷を指でなぞる。ディランドゥはその手の平に唇をつけ、腰の動きを速めた。
「んっ、んっ、あぅっ、あんっ、あ…っ!」
腰の動きに合わせて声が漏れる。身体が軋んで悲鳴をあげる。痛みしか訴えない行為だが、ひとみはやめろとは言わなかった。
根元まで受け入れたときのディランドゥの安堵の表情が、ひとみを楽にしたのだ。
「ぁあ…っ!」
腰を震わせ、長い息をつきながら、ディランドゥはひとみの中で、全てを放出する。
やっと終わったのだとひとみがぼんやりと天井を眺めていると、不意に視界がゆらめいて、ひとみは夕暮れの草原の中、制服を着て立っていた。
「…あれ…?」
きょろきょろしていると、いつの間にか目の前に、どこかで見たことがあるような少女が手を後ろに組んで、面白そうにひとみを見上げている。
「あなたは…?」
両膝に手をついて屈んで見ると、少女はにっこりと微笑んだ。
「あのね、お姉ちゃんのおかげでね、あたしもう、ここから出て行くことになったの」
「…え…?」
金色の巻き毛に、薔薇色の頬。まるで天使のようだった。愛らしい唇を動かして、天使は朗らかに言った。
「だからね、お別れを言いにきたの」
「あの…」
「もうひとりのあたしを、お願いね」
少女はわずかに下を向き、靴の踵を地面で掘るような仕草をすると、寂しそうに微笑んだ。
「あとね、兄様に会ったら…セレナはお父様とお母様の所へ行ったと伝えて」
「セレナ…」
「ありがとう、お姉ちゃん」
セレナが駆け出していく。
「セレナ!」
慌ててその背に声をかける。蜃気楼のように、セレナは消えては現れ、遠ざかっていく。
「セレ…!」
「ひとみ!」
天井に向かって伸ばす手を、力強い手がつかんだ。
「…あ…っ」
「どうした!?」
不安げに覗き込むその顔。ひとみの両目から涙が流れる。
「女の子が…」
「なに?」
「…あなたの中の女の子が…消えちゃったの…」
ひとみはディランドゥにそう言うと、両手で顔を覆って泣いた。
「おまえは…目の前にいるのに、時折どこかへいなくなる…」
ディランドゥは息をついて、寝転がった。
「そうだね…確かに、僕の中から何かが出て行った気はするよ」
「その子…お父さんとお母さんの所へ行くって言ってた」
セレナがアレンの妹だという事実を、ひとみは知らない。だが、ディランドゥがかつてセレナと呼ばれていた女の子だということは理解した。
それを伝えると、ディランドゥは微笑んだ。
「それなら良かった。その子はきっと、幸せになれるんだろうさ」
「ディランドゥ…」
ひとみは黙ってディランドゥの顔を見つめる。セレナがいなくなり、いつも何かに怯えていたような余裕のない表情が和らいでいる。それに――
しばらくすると、ひとみの顔がみるみる真っ赤になった。ディランドゥは面白そうにその変化を眺め、頬をつついてやる。
「まだ足りないのかな、思い出したかい? 僕がおまえの中に」
「違う! さ、さっき、あたしの名前、よよ、呼んだ? よね?」
両手で口元を押さえ、上目遣いに尋ねれば、ディランドゥはにっこりと微笑んだ。
「おかしいかい?」
「う、ううん…! すごく、嬉しい…!」
「ひとみは泣き虫だね。でもひとみだから、許すよ」
ディランドゥはひとみの肩を抱き寄せ、額と額をくっつけた。
その晩、ひとみが眠るまで、ディランドゥはひとみの名を囁き続けた。
明け方、ふたりはアルセイデスの前に立っていた。
「さて…これからドルンカーク様の元へ行くよ。運命がどうのと下らないことを言い続けて二百年も生きてる化け物だ。わくわくするだろ?」
「ディランドゥ! いいの!? そんなこと言って!?」
周りには誰もいなかったが、ひとみは思わず周囲を確認する。
「別にいいさ。竜撃隊のいないヴィワンに、僕の居場所はない」
「…」
ディランドゥはアルセイデスに乗り込み、クリーマの爪を一本だけ放出し、ひとみを柔らかく拘束する。
「どうせ僕たちのことも、あの禍々しい機械で見ているんだ。悪趣味だよ。堂々と乗り込んでやろう。さ、行くよ!」
「うわ…っ!」
爪にしっかりとしがみつき、ひとみはアルセイデスと共に、陽の出かけた薄暗い空を飛んだ。
バタバタと髪と制服が風に煽られ、ひとみは目をつぶる。
「ひとみ、目を開けてご覧よ! 綺麗な朝日だ!」
「う、うん…! わぁ…っ!」
ディランドゥの声に、ひとみはこわごわと目を開けて、息を呑んだ。
眼下に広がるのは、自然とは無縁の機械都市だった。
排気ガスと無機質な建物が所狭しと並ぶそこは、暖かさをこれっぽっちも感じない寂しい国のように写る。だが前方から射す太陽の輝きはどうだろう。
真っ白な輝きが、全てを覆い尽くしていく。アルセイデスの赤い身体を美しく反射させ、暖かく出迎えている。
「綺麗…」
思わずつぶやくと、ディランドゥは笑った。
「勝利の光だよ、目に焼き付けておくんだね」
そう言って、ひときわ高い建物の中へ入っていく。
「ドルンカーク様! ディランドゥが!」
一方、生命維持装置につながれ、運命改変装置を見ているドルンカークの下へ、部下たちが血相を変えて参上した。
「慌てるでない。少々手違いはあったが、運命は予測通りに動いておる」
老人は淡々と言う。
地球からガイア界へ来た、ひとみと同じ境遇の男は、運命に異様に固執した。
機械によって人の運命を変え、その手をガイア界そのものにまで伸ばそうとしている。
その段階で運命を狂わされたひとり、ディランドゥが、もうすぐこちらへやってこようとしていた。
「客人をこちらへ。運命は我が手に――」
流体金属で周囲をなぎ払いながら、アルセイデスは我が物顔で城の中を進んでいく。
それを遠巻きに眺めているのは、ザイバッハ帝国四将軍の面々であった。
「アデルファス。…よいのか」
白鉄の軍を率いるゲティン将軍が言った。部下のこの不始末を黙ってみているだけでよいのかと。
「致し方あるまいよ。ドルンカーク様のご命令なのだから」
青銅の軍を率いるへリオ将軍が、重々しく言った。
「ああも滅茶苦茶に壊されると腹も立つが、何しろ手は出すなとおっしゃるのだからな――
わしらにはどうしようもない。青二才め、調子に乗りよって!」
黒鉄の軍を率いるゾディア将軍が、アルセイデスを睨みつけながら吐き捨てた。
「貴殿らも気づいているのだろう」
ずっと黙っていた、赤銅の軍を率いるアデルフォス将軍は、三人を見回した。
「ドルンカーク様にとって、民は使い捨てにすぎんのだ。
あのお方は、ガイア界の行く末を見守りながら、人が戦によってのみでしか救われないと結論付けた。
だからディランドゥがああやって民を傷つけ、蹂躙していっても、何もおっしゃらない。恐らくご自身が殺されるようなことになってもいいと思っているに違いない…」
「なんと」
ゲティンは目を開くが、すぐに息をつく。
「あのお方の目は、遠すぎる未来を常に見据えている。だからわしらに気づかれないのだ。
…ザイバッハは――」
ゾディアの言葉を、ヘリオが引き継いだ。
「もう、終わりなのかもしれんな」
「全ては運命の御心のままに…」
アデルファスの言葉が、虚しく空に広がった。
「ははははははははっ!」
ディランドゥの哄笑と共に、因果率検出装置と呼ばれるガラス管が、次々と破壊され、中からグリーンの液体がごぼごぼと流れ出した。
ひとみは必死に流体金属につかまりながら、その液体の雨にさらされる。
「ディランドゥ! もっと静かに移動してよ!」
「馬鹿だね! ザイバッハの未来のためさ! こんなもののために運命を狂わされたやつらの仇だよ!」
「でも、城が壊れちゃうよっ!」
「セレナがいなくなってから、色々と思い出したよ。子供を誘拐して、散々実験体として命を、運命を弄び、性別すら変えた…!」
ディランドゥは笑いながら泣いているような声を出しながら、全てを破壊しながら進んでいく。
「さぞ神の気分だったろうさ! 老いぼれジジィめ、姿を現せ!」
「――ようやく来たか、運命の子らよ」
厳かな声が響いた。アルセイデスの面の部分を開け、ディランドゥが顔を出して、声の主を見上げる。自然に爪の力が抜け、ひとみもすとんと床に降り立った。
ふたりの前には、巨大な装置に囲まれた、ひとりの老人の姿があった。
「――ドルンカーク…!」
「この人が?」
ディランドゥの声を聞き、ひとみも改めて老人を見上げる。
「複雑な運命の糸に手繰り寄せられこの地へ来たそなたらを、わたしは歓迎する…」
「あいにくと、歓迎されに来たんじゃないよ! もうそんな機械で僕たちを縛り付けるのをやめてくれといいに来たのさ!」
ディランドゥはそう言うと、アルセイデスを飛行体勢に変え、ドルンカークの元へ飛び上がる!
「わたしを殺すか。――ならばもうひとりの運命の子に、おまえの相手をしてもらおうか」
「なに…っ」
ドルンカークとディランドゥの間に、光の柱が立つ。
「――エスカフローネ!?」
ひとみが悲鳴を上げた。
「ディランドゥ――!」
戦闘体型に姿を変えた白き竜、エスカフローネが、バァンを乗せ、ディランドゥに刃を向けた。
「バァン…! 何故、おまえがっ!」
突如現れたエスカフローネに、ディランドゥは驚きを隠せない。だが身体は無意識に動く。
エスカフローネの剣をよけ、クリーマの爪から流体金属を噴射した。
「俺の国を滅ぼし、バルガスを殺し、フレイド王を殺し、ひとみを奪い――…!
これ以上おまえは、俺から何を奪う気だ!」
「バァン! やめて、バァン!」
バァンの怒りに震える声は、ディランドゥに注がれている。生身のひとみが小さな身体を懸命に動かして叫んでも、バァンには届かない。
「娘よ、わたしと共にガイアの未来を視るがよい…」
エスカフローネとアルセイデスが火花を散らして戦うその後ろで、ドルンカークの濁った目が、ひとみを見つめている。
「あなたがこうさせているんでしょう!? やめさせて!」
「これはわたしの意思ではない。彼らが望んでいることなのだ」
「でも、こうなる原因を作ったのは、あなたとその変な機械のせいなんでしょう!?」
「わたしはきっかけを与えただけ。従ったのは彼らだ」
「そんな…!」
ひとみが尚も言おうとすると、
「バァン!!」
ヴィワンで急遽駆けつけた、フォルケンが現れた。
「フォルケンさん!」
「やめろ、バァン! おまえには何故わからんのだ!」
フォルケンはマントを脱ぎ捨て、その背に黒き翼を出現させる。黒い羽毛がバサバサと舞い散った。
その翼を羽ばたかせ、フォルケンはエスカフローネの元へ飛ぶ。
「あに……フォルケン……!」
バァンは血走った目を兄に向けた。
「おまえは誇り高きファーネリアの王だ。憎しみに囚われ、無意味な戦をするな!」
「俺を憎しみの虜にさせたのは、誰だ!!」
バァンは吼える。
「父上も死に、兄も母上もいなくなり――それでも幸せになろうとしていた俺から未来を奪ったのは誰だ!!」
「バァン…!」
「貴様だ、フォルケン! ディランドゥ! ――そして…!」
バァンはようやく、真の敵に気がついた。
「ザイバッハ皇帝、ドルンカーク!」
「獣の目をしておる」
ドルンカークはエスカフローネを透かして中にいる鬼を視た。
「それがおまえの本質なのだ、運命の子よ」
「黙れ…!!」
エスカフローネが、剣を握りなおした。
生命維持装置の管が外れ、中の液体が次々に流れ出していく。
かつて軍事力と科学力でガイア界を震撼させた脅威の皇帝ドルンカークの末路は、あまりにもあっけないものだった。
「人はわたしを後世まで語り継ぐだろう、運命に囚われた悪魔の皇帝と――」
無力な老人はどこか恍惚とした表情で言葉を紡いでゆく。
「だがザイバッハは、わたしが一からこの手で作り上げた国…わたしがいてこその国…」
液体が流れ落ちる。老人の身体が沈んでいく。
「フォルケンよ…」
「…はっ」
義手の軍師は、跪いた。
「後のことは、そなたに任せる…」
「――承りました、ドルンカーク様…!」
「あに…うえ…!」
バァンが信じられないと、跪く兄を見下ろした。
「ふんっ、蓋を開ければこれかい。散々人の運命を弄んでおいて、さっさと責任から逃げるなんてね――」
黙って事の成り行きを見ていたディランドゥは、鼻で笑った。
「バァン…おまえの倒すべき敵は最早いない。私と共に――」
「ふざけるな!」
エスカフローネは大きく横に剣をなぎ払った。
「ふざけるな!」
エスカフローネは大きく横に剣をなぎ払った。
その先には、遙か昔、アトランティスと呼ばれていた高度な科学技術を持った国が遺した
アトランティスマシーンを元にドルンカークが作った、運命改変装置があった。
フレイドを滅ぼしてまでドルンカークが欲しがっていたものは、パワースポットと呼ばれるエネルギー源で、
運命改変装置を動かすために必要とされていたものだったのだ。
今それが、粉々に砕け散る。
きらきらと光の粒子がこの場にいた者の上に降り注ぐ――
ひとみが呆然とそれを見上げていると、
――これでよい…
「えっ?」
ドルンカークの声が聞こえた気がして、ひとみはばっと振り向いた。
そこには、杖をついた老人が、砕け散った運命改変装置をひとみと共に見上げている。
――想いの力でガイア界は生まれた…わたしの作った運命改変装置は、人の想いや願いで、運命を変える機械…
砕けた粒子のかけらがガイア中に広がれば…人は自身で運命を変えることができるのだ…
ひとみは首を振る。
「ドルンカークさん、そんな機械がなくたって、皆今までそうしてきたんだよ」
――それはどうかな、娘よ…
「人は、想いがあるから、自分の力で動くことが出来るんだよ。
あなたもそうだったでしょう? 運命を知りたいという想いで、ここまできた。
あなたの行動は、あなた自身が起こしたことだよ。それを機械のせいにして、いいの?
あなたの今までの努力は、あんな機械に命令されてやってきたことなの?」
―― …
老人はひとみを見て、口ひげを撫でた。
「皆自分を信じて、仲間を信じてここまで来た。あんな機械なんかなくても、ディランドゥも、バァンも、フォルケンさんも、
あなたの所へ来て、同じ事をしたはずだよ」
――いいや、娘よ。おまえにもわかる時がくる…
老人はわずかに目を細め、光の粒子と溶け込んでいく。
――運命は、自在に操ることが出来るのだ、運命改変装置によってな…
「じゃあ、見守っててよ。あたしたちが、自分の力で運命を切り開いていく所を」
老人は最後までひとみに言わなかった。
竜の子と運命を共にするはずだったひとみの運命が変わったのは、想定外のことであったと。
皇帝ドルンカークが死に、後を継いだフォルケンは、ドルンカークの遺志を忠実に引き継ぐものだと思われていた。
だがフォルケンを知る大半の者が想像した通り、フォルケンは各国と同盟を結び、無用な争いを避ける働きをし始めたのである。
神かくしと呼ばれ、子供がいなくなることもない、運命に頼ることもない、新しいザイバッハの道を、フォルケンは示そうとしていた。
「ガイア界はこれから、つまんない世界になりそうだよ」
ディランドゥはまんざらでもない顔でそう言って、ひとみを笑わせた。
ひとみはあれから、心配していた皆の元へ行き、今までの事情を話した。
ミラーナもメルルもひとみの無事を喜び、アレンも笑顔でうなずいてくれた。ひとみはアレンの顔を見て、
何か言わなくてはならないことがあった気がしたのだが、それを思い出すことはできなかった。
「あんたのことだから、向こうでも無事でいるって思ってたわよ」
そんな憎まれ口を叩きながら、メルルはひとみを抱きしめる。ひとみも懐かしい巻き毛をゆっくりと撫でた。
メルルはそのままで、ひとみがいない間のバァンのことを話した。
フレイドからの誤解は解けたものの、ひとみを連れ去られてしまったことを、バァンは深く後悔し、
夜な夜なエスカフローネで辺りを飛び回っていたそうだ。
人が変わったようになり、戦にも進んで出向くようになった。その頃から、バァンはエスカフローネの痛みを感じ出し、
エスカフローネが傷ついた箇所に傷を負うようになった。メルルがいくら止めても、バァンはエスカフローネを手放さなかったのだという。
竜撃隊を壊滅させた後は酷く荒れて、殺した男たちの亡霊が見えるとよくうなされるようになった。
「でもあの日、いつものようにエスカフローネで飛んでいたバァン様を、光の柱が…」
メルルはそう言って、泣きじゃくる。
ひとみも責任を感じて、唇を噛んだ。
バァンは、行方をくらましていた。
ドルンカークを手にかけ、フォルケンがザイバッハの皇帝になったことを目の当たりにし、バァンは耐えられないと、その場を去ったのだ。
ひとみはタロットカードでバァンの行方を探してみたが、今は探さないほうがいいという結果しか出ず、メルルは毎日バァンの帰りを待っている。
「バァンのこと、信じてあげて」
ひとみは自分に言い聞かせるように、メルルの背中を撫でる。
「信じる想いは力となる。ずっと想っていれば…星が力を貸してくれるの」
「うん…うん…!」
ひとみは空を見上げた。雲ひとつない空の上、幻の月が浮かんでいる。
――帰還の時が、迫っていた。
(一緒にいるって、約束したのにな)
ひとみはそう思いながら、ザイバッハのディランドゥの部屋を訪ねていた。
ひとみはディランドゥとの関係をミラーナたちに話し、滞在先を変えていたのだ。
アレンは酷くショックを受けていたようだったが、こうなってしまったものは仕方がない。
扉をノックし中に入ると、ディランドゥはくつろいだ格好で、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
「ディランドゥ」
「…なんだい」
今のディランドゥは、半ば抜け殻のようであった。
ドルンカークも殺せなかった彼の中では、決着がついていないのだろう。意欲をそがれてしまったようで、覇気がない。
そんなディランドゥに別れを告げるのは辛かった。だが、時が満ちようとしている。
「もうすぐあたしね、帰ることになる」
「……」
ディランドゥは無言で窓から目を離し、ひとみを見た。
虚ろな赤銅色の瞳が、悲しく揺らぐ。
「おまえも、僕をひとりにするのか…?」
「…ごめん」
ひとみは目を伏せた。その言葉は言われる前から想像が付いたが、実際に言われると身を切られるように痛い。
「……」
ディランドゥはしばらく黙ると、また窓に目を向けた。
「…いいよ、帰っても」
「え…」
突き放された言葉に、ひとみは顔をあげる。ディランドゥはもう振り向かなかった。
「元気でね」
感情のない言葉だった。涙が出た。ひとみは泣くものかとぎゅっと目を閉じ、口を開く。
「あなたのこと、大好きだったよ」
「早くお帰り。…見送りはしないよ」
「うん…」
ひとみは、ディランドゥが見ていないのに、笑顔を作る。
「ありがとう、ディランドゥ」
そう言って、部屋を出て行く。
ディランドゥは振り向かなかった。
ひとみが泣くのを我慢しているのに、自分がこれでは、情けない。
ひとみは、なんとなくファーネリアの跡地に赴いていた。
見送りはいらなかった。
色々な人に迷惑をかけて、たくさんの人を傷つけた自分に、見送りなどとんでもないと思った。
だからせめて、一番迷惑をかけてしまった人が過ごした国の土を踏んで、帰りたかった。
「バァン、あたし、帰るね」
朽ちた玉座を見つけた。背もたれは半壊だったし、少しでも触れたら崩れてしまいそうなそれに向かって、ひとみはひとりごちる。
「みんな待ってるよ。だから、早く帰ってあげてね…」
ひとみはそれから、本人にどうしても伝えたかった言葉を告げた。
「あたし、バァンの傍にいるべきだったのかもしれないね…」
風が吹き、玉座の上に散らばっていた小石が音を立てて落ちた。
「ごめんね、バァンが辛いとき、一緒にいてあげられなくて…」
でも、と唇が形作る。
「でもあたしは、あの人を選んだの。運命が変わってしまったのかもしれないけど、それでもいい。
あたしは、あの人を選んだ…最後は、あっさりしてたけど」
自業自得だよねと笑って、ひとみは朽ちた玉座に笑いかける。
「バァン、ファーネリアを復興させて、いつかフォルケンさんと、仲直りできるといいね。バァンなら、やれるはずだよ。
…もう行くね。それじゃあ」
ひとみはくるりと玉座に背を向け、軽快なステップを踏んで、瓦礫の上を進み、森へと入っていく。
朽ちた玉座の裏に、バァン本人がいたとも知らず、ひとみは幻の月へと帰る。
「お別れだ、ひとみ」
森の中から光の柱が現れるのを見上げ、バァンは傷心の瞳でそうつぶやく。
「俺にはまだ時間がかかりそうだ。だが最後のおまえの頼み、成し遂げてみせる」
――光の柱がガイアのあちこちで見られ、ひとみを知る者はそれに手を振り、別れの言葉を告げ、手を合わせた。
だがひとみと一番心を通わせている男の姿だけは、見当たらなかった。
地球へと帰り、ひとみにいつもの日常が戻ってきた。
不思議なことに、時間はあの時、バァンとガイア界へ行ったその日まで巻き戻され、ひとみが地球にいなかった時間はなかったようになっている。
ひとみは、天野先輩に告白しなかった。ふとしたことで、ゆかりも先輩を思っていることに気づいたからだ。何故気づけたか。
「不毛な片思いってやつをしてるから」
ひとみはひとりでつぶやいて、わざと悲劇のヒロインを演じてみせる。観客もいないのに。
ゆかりはひとみに後押しされて、留学直前の天野先輩に告白し、ふたりはつきあうようになった。陸上部の後輩たちも、ふたりはお似合いだとはやしてている。
今日の放課後も、ひとみはひとりだ。恋人同士の邪魔はしたくない。野暮というものである。
駅のホームで電車を待っていると、後輩たちがひとみを見つけ、声をかけた。
「先輩! 占いやってくださいよ!」
ひとみは後輩たちを振り返り、にっこりと微笑んでみせる。
「ごめんね、占い、やめちゃったんだ」
タロットカードの占いが当たると、ひとみは学校でちょっとした有名人だった。
人に頼りにされ、占いが当たれば驚かれ、喜ばれた。そんなこそばゆい優越感を抱いていた自分に起こった出来事は、ひとみを占いから遠ざけた。
「ええー!? どうしてですか?」
不満そうな後輩たちに、ひとみはなんと答えたらよいものかと、苦笑する。
「だって、運命って――」
「自分で切り開いていくものだからねえ」
その声にかぶさるものがあった。
えっと後輩たちは振り返り、そこにいる人を見て、その美しい顔に目を奪われ言葉もない。
それはひとみも同じだった。
その人が、ここにいるはずのない人間だったからだ。
そんなことが、あるはずがない。
「ディ…」
「おいおい、僕がそんな変な名前を、ここで名乗っていると思うのかい?」
その人は後輩たちの脇を通り過ぎ、ゆっくりとひとみの前に立った。
「…どうして…?」
「運命だからだよ」
もう銀の髪じゃない。
「運命…?」
頬に傷はない。
「願いが人の運命を変えるんだろう?」
髪も瞳も、真っ黒だ。
「でも――」
その人は、見たこともないような優しい笑顔で微笑んだ。
「僕の想いは星を越え…君と巡り会わせた」
ただ、学校は違っちゃったみたいだけど…これくらいのミスは仕方ないよね。
そう言って笑う、その人は、抱きついてくるひとみを腕の中に閉じ込めた。
「もう二度と、離れるんじゃないよ」
どこに行っても見つけるからねと冗談めかして言った言葉は冗談でもなんでもなく――
ひとみは後輩たちに冷やかされるのを覚悟の上で、踵を上げたのだった。
終わり
以上です。こんなに長くなるとは思っていませんでした。気合入れすぎました。
次回があれば、もっと短く、エロを濃くするべく頑張ります。
この終わり方はアニメ版を見たときからあったらいいなとは思っていたのですが、
バァンには背負っている色々なものがあるし、あの終わり方でよかったのだと思う反面、
ひとみがぽつんとホームにいる姿が寂しそうだったので(バァンのフォローはありましたが)、
こちらの話で使わせてもらいました。
長々とお付き合いくださりまして、ありがとうございました。
エロパロじゃないと不愉快に思われた方がおりましたら、心からお詫びします。
前回レスを下さった方、ありがとうございます。
今回の反省を踏まえ、短編を書けるよう精進します。
それでは失礼します。
映画版のラストの彼を見た時「えー……」と色々消化不良起こしながら、
気付くとその笑顔が一番印象に残ってた事を思い出した。
ディランドゥはあくまで"あっちゃいけない"もので、
作られてしまった時点でもう戻れないと、すっかり信じきってたから。
でもこの話だと、獣なのはバァンだけじゃなく、ディランドゥも同じなんだよね。
前半のあっさりテイストから想像出来なかった考え深いラストでした。
まぁ後でヤバいんじゃないかという所は幾つかあるけど、
これはこれでちょっとイイかも。ゴチです。
凄い!!十分楽しませてもらいました!!!GJGJGJ!!!
今更改めて、「ディランドゥ」自体がかわいそうな人格だったのかもなーと思いました。
ディランドゥのあの執拗な性格wwwなら確かにこっちまでひとみを追いかけてきそうだ!
とも思いましたし。本当にお見事です。こんな終わりも自分的にはありだなと思いました。
読みながら色々思い出して、楽しかったです本当に有難う。
次回作も楽しみにしてます!
ディランドゥ×ひとみをリクエストした者です。
本当に書いて頂けるなんて・・・感動しました。
そしてそのストーリーにビックリ・・・・。
私が望んでいた『幸せな結末』がディランドゥに贈られていた。
彼が幸せになって良かった。セレナとしての幸せでなく、彼自身の幸せをつかめて本当に良かった。
まさかエロパロで泣くとは思っていなかったよ。
良いストーリーを創って下さって本当に有り難う。
心から感謝します。これからも応援しています。
あいかわらず過疎してるんだろうな・・・とおもいつつ、たまに見に来てみると
秀逸な、しかも読んだことのないタイプの作品が投下されていて嬉しい。
職人さん本当に乙です!
次回作があったら楽しみにしてます!
取り急ぎ、祝福の言葉を捧げます。読み終えてない段階ですが、
ディランドゥが前面に出ていてたまらないものがあります。
お疲れ様でした。
397 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/29(火) 20:04:33 ID:+3DAWgCT
保守age
398 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 00:09:14 ID:vBNznzuB
エロは少なくとも、内容は最高です。
エスカフローネのアナザーストーリーとして、とても秀逸だと思います。
エロの量に拘らす、ご自身の個性・感性でもって、これからも良い作品の投下を期待します。
続けて2回読み返してしまいました。
ラストシーンは3回も。
この凄くよかったです!心理描写、文章力、ともに非凡なモノを感じますヨ。
特にディランドゥの個性を押さえたセリフ回しに感激しました。
投下して下さって本当に嬉しいです。感謝します。
ありがとう。。。お疲れ様でした。。
401 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/31(土) 19:37:20 ID:0r2QI+ts
ここらで保守age
久しぶりに来たら7月からすごいことになってた!
こんなところで神の降臨と出会えるなんて・・・!
最高だー!
新年そうそうすごい幸せをありがとうございました。
今年もよろしくお願いいたします
403 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 19:49:29 ID:wcTzS+rZ
保守
保守。
405 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 23:16:43 ID:fzCiuxH+
投下した者です。
ナリア×エリヤ×フォルケン投下します。3人です。
苦手な方は、スルーしてください。
夜。
誰もがその男を形容する際に思い描くのは、たった一言。
夜のように暗く、夜のように静かで、夜のように寂しい男。
ザイバッハの軍師としてひっそりと、そこにある男。
魔道士たちは同士であるはずの男を見て眉をひそめ、敬遠する。
男が彼らより優れた頭脳を持っているということと、何より不気味だからだろう。
下等生物である獣人、まやかし人まで手なずけて、絶対の忠誠を自ら誓わせている。
ドルンカークの右腕でありながら、その心はどこか遠い場所にあるような雰囲気を漂わせる
その男を、皆が遠巻きにしてみている。
だから男は夜。
誰の前にも現れるが、闇ゆえに先まで見通すことを許さない。
彼は密かに、そんなように言われていた。
その男、軍師フォルケンは今や夜そのものとなり、
どこか恍惚とした表情で、虚ろな目を虚空に投げかけていた。
長椅子に深く腰掛け、両手は金と銀の髪をした艶かしい四肢をくねらせる獣人の上にある。
「んん……ちゅ、んく、あ、ふ……」
金の髪をした獣人は、長い舌を伸ばし、
熱い吐息を混じらせながら、フォルケンの肉棒の先をなぞっている。
すぐ隣には銀の髪をした獣人が、同じように舌を滑らせていた。
「ああ…エリヤ、もう、いいよ…ナリアも……、疲れたろう…」
フォルケンがふたりの頭を撫でると、ふたりは揃って首を横に振り、
エリヤは肉棒の先端を丸呑みするかのように喉の奥に含ませ、顔を大きく上下に振り出した。
ナリアは立ち上がり、フォルケンの膝に腰掛け、甘えるように首に腕を回す。
「疲れなどしましょうか…愛しい愛しいフォルケン様…
お会いできなかった間、我らがどれだけ寂しかったか…」
「すまなかったな…」
フォルケンはナリアを引き寄せ、口付けた。ナリアは背に回ったフォルケンの手を取り、
乳房へといざなう。むきだしのそれは信じられないほど柔らかく、暖かく、
血の通った左手で充分にそれを堪能した後、優しく指を曲げてやった。
「あ…ああ、フォルケン様…っ」
つかまれた乳房の先端を、人差し指と中指で刺激され、ナリアは嬌声をあげる。
フォルケンは乳房から手を離し、ナリアの尻からするりと指を滑らせて、充血した花びらの奥へ忍ばせた。
腰を浮かしたナリアの乳房がふるりと揺れる。引き寄せられるように、フォルケンはふたつの塊の間に顔を埋めた。
すると肉棒を含んでいたエリヤが立ち上がり、フォルケンの右手、右腕から義手になっている冷たいそれを取り、
おもむろに自分の中へ突き立てるようにして入れる。
「ひあああっ、あんっ、冷たい…!」
電気ショックのような痺れと体の真ん中から引き裂かれてしまいそうな冷たさが一気に駆け抜け、エリヤは絶叫した。
「エリヤ…大丈夫か?」
ナリアの胸から顔を離し、フォルケンはエリヤを気遣うようにして振り返った。
エリヤは涙を流しながらはいと答え、フォルケンに顔を寄せる。
「フォルケン様…フォルケン様…っ、ちゅ…む、ん…」
舌を絡めながら、何度も何度も名を呼ぶエリヤがいじらしく愛しく思えた。
フォルケンはエリヤの中に収まっている義手をわずかに進める。感触など得られないが、
エリヤの身もだえする様子だけ眺められれば充分だった。
「ああ…フォルケン様、もう我慢が……っお願いです、フォルケン様を、我らの中…に…っ!」
フォルケンの左手を自由に動かし、準備を整えたエリヤが震えながら懇願した。
「フォルケン様…遠慮などなさらず…我らを…あなた様の自由にして…!」
エリヤはぐちゅぐちゅと淫らな水音をさせ、フォルケンの義手を汚し、耳元で囁く。
フォルケンの答えを聞かぬまま、双子は立ち上がり、互いの体をまさぐり、
舌を交わらせ、そのまま床に倒れた。姉が妹の上に乗り、妹は姉を支え、
フォルケンにふたりの秘部がよく見えるよう、腰を浮かす。
ふたつの花の間からは蜜が滴り、フォルケンを待ちわびていた。
フォルケンはゆらりと立ち上がり、双子にしごかれてそそりたつものを手に、誘われるまま花に近づく。
双子は豊満な胸をこすりあい、期待に声をあげながら、その時が来るのを今か今かと待っていた。
「あああああああっ! ああ――っ!」
先に声をあげたのは、上になっているナリアだった。
尻を左右でつかまれ、わずかに広げられたかと思うと、一気に奥まで突き立てられる。
妹は姉の表情に興奮し、夢中で両足を姉にからめ、少しでも快感を共有しようと腰をくねらせた。
「嬉しゅうございます、フォルケン様、もっと、もっとぉおおっ!
あ、あんっ、あうっ、いい、フォルケン様が、わたしの、中に、んああああっ! いい――…っ!」
正気を失ったナリアの叫びに、フォルケンも、エリヤも理性を捨てる。
フォルケンはぐっと腰をそらすと、肉と肉が打ち合わされる音も聞こえないくらいの速さでナリアの中に押し入った。
ナリアが悦びに更に嬌声をあげると、エリヤは早く代わって欲しいと、ナリアの下半身に手を伸ばし、
茂みをかきわけ、フォルケンの肉棒がおさまる上を指でなぞり、
ナリアの花弁の中に隠れている芽を見つけ、少々きつくつまみあげた。
「ひあああああ―――っ! イ、イく……っ!」
狼の遠吠えのような姿でナリアは喉をそらし、絶叫した。フォルケンも最後の一突きとばかりに大きく腰を引き、
容赦のない一撃をくらわせる。
ナリアは口を大きく開けたまま、そのままくたりと妹の上に倒れこんだ。エリヤは姉を横にどけ、
両足を大きく横に広げると、真っ赤に充血し、ひくひくと痙攣している花の奥をフォルケンに見せ、微笑んだ。
「ナリアより激しくして…!」
雄となったフォルケンは、言われるがままエリヤの上に覆いかぶさる。
エリヤの両腕を押さえつけ、むさぼるように唇を奪い合う。
舌をいれ、絡ませ、唾液を流し込み、熱い吐息を何度も何度も味わいつくし、歓喜に震える乳房に噛み付いた。
「あは、ああんっ、もっと、もっとして、フォルケン様ぁああっ!」
手の中に収まりきらない程豊満な乳房を痛いくらいにこねくり回し、交互に乳房にしゃぶりつく。
エリヤはもっとと叫びながら自由になった両手でぐいぐいとフォルケンの頭を押さえつける。
やがてエリヤがフォルケンを解放し、更に両足を開いてみせた。
フォルケンはびちゃびちゃと愛液の流れるそこへ難なく押し入り、一心不乱に腰を打ちつけた。
「あんっ、あ、ああ、これえ、これなの、これなのぉ…!」
左右に首を振り、金髪を顔にまとわりつかせながらエリヤは快感に何もかもをゆだねる。
フォルケン様はわたしたちだけのもの。
だけどこうしてフォルケン様が私の中にいるときは、この人はわたしだけのもの…!
「フォルケン様ぁ…」
ただひたすら同じ動きを繰り返していたフォルケンの背に、復活したナリアがにじりより、抱きついた。
硬くなった胸の先端を、フォルケンの裸の胸に押し付けて、上下に動く。
胸に回した両手は、フォルケンの乳首にたどり着き、下から押し上げるようにして何度も指を行き来した。
フォルケンが吐息を漏らすと、ナリアは立ち上がり、こちらを向いたフォルケンの唇に強引に舌をねじこむ。
がっちりと耳の後ろを押さえつけ、呼吸すら許さない勢いでフォルケンの口内で舌を暴れさせる。
フォルケンが苦しげな息を吐くと、ナリアの目が残酷に細くなった。
そうよ、今は私だけを見て。あなたをこのまま殺せば、最期にあなたが見た女は、私だけになる…!
ふたりの雌は、容赦なく雄を喰らいつくす。永遠に刻みつけ、二度と離れぬように。
下にいたエリヤは後ろ手をついて起き上がり、
動きが緩慢になっていたフォルケンに、つながったまま抱きついた。
首を絡ませ、自ら腰を浮かせ、フォルケンを更なる高みにいざなう準備をする。
ナリアはフォルケンの唇から舌を引き抜くと、立ち上がり、太ももをフォルケンの顔に押し当て、
上下に動くエリヤの肩に手を置き、片方の手で足を持ち上げた。
フォルケンの眼前に、グロテスクな花が淫乱な臭いを放ち、押し付けられる。
フォルケンはそこに惜しげもなく顔を埋め、存分に蜜をすすりあげた。
「ああんっ! あ、ああ、フォルケン様、すごい、ああ、舌が、私の…んっ、なか…にっ、はあんっ!」
ナリアは感極まって涙を流しながら叫んだ。
「ん、ん、あ、ふあっ、フォルケン様、イキます、一緒、一緒に、あ、あ、あ…!」
激しく動いていたエリヤが涎を流しながら喘いだ。
フォルケンは右腕でエリヤを抱き、左腕でナリアの腰をつかむと、両方の腕に力をこめる。
「ああああああ―――っ!」
三匹の獣は、同時に果てた。
浮遊要塞ヴィワンの一室。
滅多に人が立ち寄らぬその部屋で存分に交わった3人は、フォルケンを真ん中に、眠りこけていた。
衣服は散乱し、引き裂かれ、暗幕は柔らかく床に落ちている。その上で寝返りを打ったエリヤは、闇の中で起き上がる姉の姿を見た。
「ナリア…?」
髪はほつれ、美しい肢体は情事の痕がくっきりとところどころに残っている。夜なのに、どうしてここまで見えるのかと思っていると、姉はぽつんと言った。
「朝だよ…」
少し枯れた声で、寂しそうに言う声色に、エリヤは朝日が差し込んだから、姉の姿が見えるのだとようやくわかった。
「フォルケン様は、眠っている?」
静かなトーンでそう言われ、エリヤは慌ててフォルケンを見た。大丈夫。よく眠っている。
それを告げると、姉はほっと息を吐いた。
「よかった。…朝が来ると、何もかも夢だったんじゃないかって思っちまうねえ…体にこれだけ残ってるのに…不思議だ…」
そう言って愛しげにフォルケンにつけられた赤い痕を指でなぞる。エリヤはその姿を純粋に美しいと思った。
双子だけど、あたしたちはどこか違う。それを感じるのは、こんなときだ。
「おまえもわかってるんだろう。フォルケン様があたしたちのこんな淫らなお願いを聞いてくださるのは、優しさだけってこと…」
「…知ってるさ」
エリヤはうつむく。どれだけ愛を注ごうが、フォルケンの心はどこか遠くにあって、どれだけ望もうが、届かない。
「愛なんて大それたものは望んじゃいないさ。ただ傍にいてくれるだけでいい。
あたしたちの幸運の始まりは、フォルケン様に命を助けてもらったこと。この名前を頂いたときからさ」
ナリアはそう言うと、力なく首を振った。
「でも、なんでだろうねえ。朝が来ると、どうして悲しくなるんだろう…」
「姉貴」
エリヤは床に落ちていたコインを手に取った。
「かりそめの愛なら、もうすぐ受けられる。…どちらかがね」
「幻の月の娘と、竜の子を引き離すための、例の作戦かい?」
「そうだよ! あたしたちのどちらかが幻の月の娘として、フォルケン様に愛を与えられるんだ」
コインを指ではじき、落ちてきた所をぱっと手で押さえたエリヤは、にやっと笑った。
「まずは、練習!」
ナリアもくすりと笑い、眠るフォルケンの両脇で、双子はコインを覗き込む。
「あっちゃぁ、あたしの負けだ」
「ふふっ、どうやら幸運は、あたしにあるようだね」
「待った! これは練習だっつったろ? 本番は、後で!」
「わかってるよ、エリヤ」
「あたしたちは幸運さ。この幸運に、賭けてみようよ。フォルケン様が、あたしたちを愛してくれることを」
エリヤは悲しげに微笑んだ。姉が、同じ顔をしているから。
「あたしたちの全ては、フォルケン様のために」
その後の双子の行く末は、とても辛く悲しいものだったが、ふたりは幸せだっただろう。
愛しい人に、全てを捧げたのだから。
終わり
以上です。すみません、最初間違えてあげてしまいましたorz
もうちょっとエロを巧く書ければと思います。
前回レス下さった方、本当にありがとうございます。励みになりました。
今年もひとりのエスカ好きとして、作品を投下できたらと思っております。
それでは失礼致します。
>>411 うほっ、充分エロエロですぜ。
エロがドライな感じの時程キャラに汁気を感じますよ。お世辞じゃなくうまいです。
自分の中でかなり影薄かった3人がえらい気になりだしました。
次回も楽しみに待っとりますのでよろしくです。ごっつぁんでした!
GJ
うあああ〜
最高です、神!
415 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/08(水) 01:18:57 ID:241Cwe35
うわあああああああああんんんんまたアップされてるよママ〜〜ン!
あんたほんとネ甲ですよ。何モンなんだよ。
エロとか関係なくすごいよ。
>>411 この二人にフェラされたらさぞや幸せだろうと思ってたが
予想を上回って濃かった。えがった
夜が明けてからの二人もエロ美しかったハァハァ
ほしゅ
ほしゅほしゅ
419 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 00:49:58 ID:fhNpbpA6
ほしゅ
3月32日記念保守
良スレほしゅ
ほっしゅ。CATVまた再放送やってくれないかなー
全力で保守。
ほしゅ
うわああああああーーものすごい久しぶりに来たら
神きてたあああああーー!
レンタル屋行ってくる!
426 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 00:19:53 ID:UOHOOUY4
ほしゅ
428 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 20:28:54 ID:WPHAs778
保守age
hosh
保守で
431 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 13:55:00 ID:hE/gqGda
hosyu
ほす
433 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 08:49:07 ID:DOk9ovkO
ほしゅほしゅ
ほ
age
ディランドゥもの、今になって見たよ。
これならいい!!
この続きで学園ものとか期待。