ルシアはヒューゴから短剣を受け取ると、クリスの胸元に突きつけた。
触れるほどに近い刃の輝きに、クリスは息を呑んだ。
「ぅ」
ほとんど間を置かず、ルシアがあっさりと短剣を振り下ろす。
刃はクリスの肌をかすめて、その衣服を断ち切っていた。
あらわになったクリスの双丘に、室内の湿った冷気がまとわりつく。
「これが戦士に対するカラヤの流儀かっ!」
羞恥よりも憤りから、クリスは叫んだ。
ルシアは涼しい顔で、半裸のクリスを見つめている。背後でヒューゴが
何事か言いたそうに母とクリスを見比べていたが、ルシアはわざと
それを無視したようだった。
「いいや。私の流儀さ」
言って、無防備なクリスの胸を掴んだ。乱暴にではなく、そっと。
「は、離せ!」
「ふふっ、綺麗な乳房だね。鉄頭の連中は皆これを想像してヌイてるんだろう?」
言って、クリスの胸を優しく撫でまわす。
さらに、耳元に顔を近づけ囁いた。
「男に抱かれたことはあるのかい?」
「な、なにを……」
クリスは顔を赤らめ、悲鳴のような声を上げた。
「愚問だったね。銀の乙女%a」
ルシアは片手でクリスの胸を弄びながら、もう片方の手でクリスの内股を撫でた。
彼女の手業は巧みで、いつしかクリスから嫌悪は消え、くすぐったいような
心地よさを感じるようになっていた。
「処女にしては感度がいいようだね。感じているんだろう?」
「ば、馬鹿を…言うな……」
体が感じている快楽を必死に否定しようとする。が、
「無理をする必要は、ないんだよ。どうせ耐え切れるはずがないんだから」
言葉が終わると同時に耳に息を吹きかけられると、体から力が抜けてしまう。
「ぁぁ……」
「おや、耳が感じるようだね」
「ちが――」
首を振ろうとするが、もう一度息を吹きかけられると、また体中が弛緩したように
なってしまう。それを快感でないと、否定することはもうできなかった。
ルシアは、愉悦を含ませて笑っている。
(私は…どうかしている……耳で感じるなんて……)
初めて体験する感覚に、クリスは戸惑った。
「おぼこ娘のあんたには理解できないかもしれないが、別におかしなことじゃないさ。
もっとも、あんたの場合は特別感じるようだけどね」
ルシアは、クリスの耳たぶを甘噛みした。
「うぅぅ」
クリスの意思とは関係なく、その口から声が漏れる。抑えてはいたが、
まちがいなく嬌声だった。
ルシアは耳たぶを噛んだまま、さらに舌で撫でる。
(もっと……もっと…強く……)
噛んで欲しい。胸中でそう願っている自分に気づいて、クリスは愕然とした。
だがその理性も快楽の波に流されてゆく。
弄ばれていたクリスの耳たぶが、突然開放された。
(えっ……)
クリスは一瞬いぶかったが、次の瞬間には再び嬌声を上げていた。
ルシアの舌が、耳の入り口に差し入れられている。それがクリスに先ほど以上の
快感を与えていた。
「あぁあぁぁ……」
「気持ちいいかい?」
ルシアが悪魔のような淫靡さで、問うてくる。
「あぁぁくぅっ」
言ってしまいたかった。けれどそれを自らの意思で言ってしまえば、
もう後戻りできないような気がする。
「認めるんだよ。そうすれば、もっと気持ちよくなれる」
ルシアの言葉は、抗うことができないほどに魅力的だった。
「…………ぃぃ……」
「聞こえないねぇ」
「……気持ち…いい……」
消え入るような声だったが、クリスははっきりと自分の意思でそう口にした。
ルシアの言葉通り、そうすると心地よい満ち足りた気持ちになる。
不意にルシアが、クリスから離れた。
「あっ……」
快楽に浸っていたクリスは、名残惜しくルシアを見つめた。
「気持ちよかったかい?」
ルシアは改めてクリスに聞いた。
「…………」
クリスは答えることができなかったが、先ほど夢中で口にしてしまったことを
意識させられ、羞恥で顔を伏せた。
下を見ていたクリスの視界にルシアの腕が映り、それはクリスの股間に向かって
伸びた。クリスはさすがに慌てたが、拘束されている身では何もできない。
ルシアの手がクリスのショーツに触れる。
「本当に耳が、良かったみたいだね。こんなに濡れているじゃないか。
そのうち耳だけでイケルようになるかもしれないよ」
ルシアにショーツの濡れている部分を押し付けられ、クリスはいやおう無く
その湿りを感じさせられた。
ルシアは、そのままクリスのショーツを引き下ろした。薄い翳りと、
きっちりと閉じられた性器が晒される。
クリスは次は何をされるのかと覚悟したが、ルシアはじっくりとクリスを
見つめるばかりで動かない。
その間にも高まったクリスの体の疼きは、行き場を求めて彼女自身を責めた。
懇願するようにクリスは、ルシアを見つめた。
「切ないかい? 安心おしよ。後は私の息子が可愛がってくれるさ」
言われて、クリスはヒューゴに目を向けた。クリスの裸体に見入っていたらしい
少年は、彼女の視線に気づくと、慌てて目を逸らした。
「か、母さん、俺は……」
ヒューゴは戸惑った視線で、母を見た。
「憎いんだろう? 仇を討ちたいんだろう?」
「うん……」
少年は母の問いに躊躇いがちに頷いた。
「だったら、やっておあげよ。女にとってこれ以上の復讐はないよ」
「で、でも、どうしたら……」
「何も難しいことはないよ。それに――」
ルシアは手馴れた手つきで、ヒューゴの下半身の衣服を脱がせた。
「ここはもう、準備ができてるじゃないか」
ヒューゴのそれ≠ヘ、けっして長大では無かったが、抑えるものを取り払われ
腹に当たるほど勢い良く反り返っていた。
ルシアがヒューゴの背中を押して、クリスの眼前に近づけた。
やはり戸惑いを隠しきれない少年と、恥辱と期待とが入り混じった美女は
暫しの間見つめあった。