ガールズサイドでエロ萌え

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829先生萌え:前編1/9
「次の連休、少し遠出をしようと思う」
私がいつものように先生の背中にじゃれ付いていると、分厚い本のページをめくっていた先生が
急に口を開いた。
「遠出、ですか?」
「ああ。知人の別荘へ行く。……君を、連れて行きたい」
構わないだろうかと私の方を見るので、私も笑顔で頷いた。
大きくて奇麗な湖のあるところ。……らしい。
「すっごく楽しみです! 母にも先生と一緒だって言えば平気です」
「いや、私から直接連絡しておこう」
次の連休。来週の土曜日から3日間。
いつも一緒にいられるのは金曜の夜とたまの日曜だけだから、私はとても嬉しい。
先生も嬉しいのかな。目元が優しくなってる。ご機嫌で“結構”とか“よろしい”とか言う時の顔。
左の耳に軽く口付けたら、先生は全身をビクッとさせて慌てた。



土曜日の早朝、家の前で待っていた私の前に、先生の車がとまった。
「おはようございます」
830先生萌え:前編2/9:02/07/07 22:46 ID:Mld4B/4g
ドアを開けた先生に頭を下げると、先生も
「おはよう」
と微笑んだ。それだけで、なんだかとても幸せな気分になれる。
今日も、先生の好きそうなガーリーっぽい服装。卒業してもしばらくは癖だったみたいで、
会うたびに“氷室学級の生徒に相応しい服装”とか言っていたっけ。
「乗りなさい」
そういって助手席のドアを開ける先生は、やっぱり私を教会に迎えに来た王子様。
「先生、天之橋理事長みたい」
くすくすと笑みがこぼれる。先生が呆れ顔で溜息をついた。
住宅地を抜け、繁華街を抜け、車はやがて高速に乗る。
先生は上手にほかの車の間をぬって行くけれと、やっぱり渋滞に引っかかってしまった。
前も後ろも右も左も車、車、車。
これを抜けるには、当分かかりそう。
先生もしかめっ面で、苛立たしげに髪を掻き混ぜた。
「先生、先生、疲れちゃったんじゃないですか? もう3時間以上運転してるし、今朝は
 早かったでしょう?」
「いや、心配ない。朝早いのはいつものことだし、これぐらいで疲れはしない」
でも先生、明らかに参ってる声ですよ、それ。
私は持ってきたバスケットを膝の上にどさっと出した。
831先生萌え:前編3/9:02/07/07 22:46 ID:Mld4B/4g
「じゃあ先生、私せっかくお弁当作ってきたんで、次のサービスエリアで休憩しましょう。
 コーヒーもありますから」
ついでに魔法瓶も出して見せる。
そうしたら彼は観念したという顔で溜息をついた後、少し笑って私の頭に手を伸ばした。
軽く撫でられる。
「分かった。味に期待している」
「はい! 任せて下さいっ」
車が、少し前に進んだ。

正午にさしかかった頃、ようやく車の行列を抜けてサービスエリアに入れた。
駐車場の隅に停車したのを確認して、私はバスケットと魔法瓶片手に車のドアを勢いよく開く。
「どうした、外に出るのか?」
きょとんとして尋ねる先生に、首を振った。
「後ろで食べるんです! 前だと、先生と距離があるんですもの。
 ほらっ、先生も移動、移動」
「なっ! ……コホン。わ、分かったから少し静かにしなさい」
さっさと後部座席に座ってはしゃぐ私に、先生は渋々と言った感じで席を移った。すぐにドアが
開いて、先生の体が隣に滑り込む。
お弁当のメニューはサンドイッチとポテトサラダ、チキンナゲット。それからデザートには
リンゴとブドウ。
832先生萌え:前編4/9:02/07/07 22:46 ID:Mld4B/4g
「……では、いただこう」
律儀にそんなことを口にしてから、卵のサンドイッチを一つ手に取る。
私が見ている前でそれを口に含み、何度も咀嚼して飲み込むまで、言葉は一切発さなかった。
黙っている先生に不安がよぎる。
「……もしかして、摂取量過多ですか? あ、美味しくなかったとかっ!?」
「問題ない」
慌てた私の声は、先生の一言で遮られた。
「大変結構。手が込んでいるな。……苦労したろう」
よかった、大丈夫だったみたい。にっこりと笑みまで浮かべて、おかずにも手を伸ばしている。
カップにコーヒーを注ぎながら、私も嬉しくて微笑んだ。
「もう、失敗しちゃったかと思いましたよ」
「いや……。その、君の料理の腕前は合宿のときに拝見している。
 はじめから心配などしていなかった。……期待通りだ」
こんなに褒められるとは思ってなかったので、顔がカッと熱くなる。
「あ、ありがとうございますっ」
照れながら言うと、彼は
「いや……」
と黙り込んでしまった。先生の噛むリンゴがシャキリと音を立てる。
私も幸せを感じながら、ハムサンドを口にした。
833先生萌え:前編5/9:02/07/07 22:46 ID:Mld4B/4g
「では、今から15分間トイレ休憩にする」
先生の言葉で二人とも車から降りる。
私はトイレに行って用を足し、お化粧を少し直した。先生あんまりつけすぎるのは好きじゃ
ないから、淡いピンクのリップだけ。
髪の毛もチョコチョコと弄ってから、小走りに車に戻る。
と、戻ってみたら、先生は居心地が良いのかまた後部座席に座っていた。やっぱり疲れてる
みたいで、目を伏せてじっとしている。
(寝てる……のかな?)
私が右後部のドアを開けたら、彼は目を開けてしまった。
「あっ……すみません、寝てました?」
「問題ない、起きていた。そろそろ出発しよう」
言うなり、運転席に行こうとする。私は慌てて先生の腕を掴んで引き止めた。
「先生っ、もう少し休んでいきましょう」
「君は……。しかし、もう出ないと予定通りには着かないぞ」
「構いません! まだ2日あるんですよ? あのっあの……わ、私っ、膝枕……しますから」
ああ……私、何言ってるんだろう。自分で自分に呆れてしまう。
でも先生にちゃんと休んでほしいと思ったら、つい。
彼の方を見てみたら、案の定目を見張って顔を赤くしていた。
「君は、何……をっ」
「ごっ、ごめんなさい! あ、あのでもっ、多分……寝心地は良いかと……」
834先生萌え:前編6/9:02/07/07 22:47 ID:Mld4B/4g
なんだか2人して真っ赤になってる。
でもどうしても引きたくなくなってしまって、先生の腕を掴んだ手に力を込めた。
「……コホンっ。で、では……10分だけだ」
折れたのは先生だった。声まで裏返しちゃって……なんだか、すみません。
先生は背が高いから仰向けに寝ることはできない。だから座ったまま私の方にコテンと倒れて、
膝の上に先生の頭が乗るカタチ。
「えっと、どうですか?」
「どう、とは……?」
「あの……その、寝心地というか、こう……色々と」
すでに目を閉じていた先生は頬を赤くしたまま眉間に皺を寄せて、ボソリと呟くように答えた。
「悪くない……―――」
それだけで、もう幸せ。
5分ほどそうしていたら、いつの間にか先生の方から規則的な寝息が聞こえてきた。
(ホントに寝ちゃったんだ……)
サラサラの前髪が私の膝に時折触れる。少し、くすぐったい。
「先生、眼鏡かけたまんまですよ」
起こさないように囁いて、そっとフレームに手をかける。ゆっくりと、外す。
それを勝手に彼のワイシャツのポケットに引っ掛けて、私は先生の顔を見つめた。綺麗な、顔。
ふわりと、そのスミレ色の髪に指を絡ませる。
835先生萌え:前編7/9:02/07/07 22:47 ID:Mld4B/4g
すべてが愛しい……先生……。
指先がひとりでに彼の頬の輪郭を辿り始める。先生の瞼が、動く。
私はこめかみにキスを一つ落とした。
「……ん……―――」
先生は小さく身動ぎするだけ。まだ、起きない……。
私は先生の寝顔をあまり見たことがない。高校1年のとき、赤点の補習授業でちらりと見ただけ。
先生は、否定していたけれど。
好きな人の寝顔って、どうしてこんなに見ているだけで愛しくなるんだろう。
長い睫毛の目元にそっと口付けると、先生はようやく目を覚ました。
それでも私は、頬にキスをする。
「な……っ! や、やめなさいっ」
起き上がろうとする先生を無理矢理に押しとどめた。
「先生、もうちょっとだけ……。キス、させてください」
「ダメだ」
一応抵抗はしないでくれるけれど、冷たい返事。
どうして……どうして……。そんなに予定が大事? 私よりも?
ちょっと、哀しい。名残惜しくて、体を起こす先生の背中を指先でなぞった。
と、急に先生の顔から一切の表情が消える。それから強い力で腕を掴まれ、あっという間に
座席に押し倒された。
836先生萌え:前編8/9:02/07/07 22:47 ID:Mld4B/4g
「せ……先生っ!?」
「…………」
何も言わないまま、荒々しい口付け。噛み付くように激しいキスは、相手が先生だということさえ
忘れさせようとする。
「んっ、嫌……っ!!」
Tシャツの裾から大きな手が侵入してくる。肌をすべる。
怖くて、先生の顔が見られない。
うそ。うそ。初めてのときはあんなに優しくしてくれたのに。
先生じゃない。どうして。どうして……。
「やっ……先生、せんせ……離してっ」
こんな所で。まだ明るい駐車場で。車の中で。嫌だ。嫌です。
先生。先生。先生……―――!!
力いっぱい先生の体を押しやったら、細い糸を引いて彼の唇が離れた。体の上から重さが消える。
恐る恐る目を開くと、はっとしたような先生の顔が、私を見下ろしていた。
私の目尻から冷たい感触。やっと、自分が泣いていることに気付いた。
「先生……ひどい……――――――。ど、して……っ」
あとから、あとから、嗚咽が溢れる。
「ひどいのは、君の方だ」
降ってくる、声。苦しそうな表情。
私は、ただ言われた言葉に驚いて何も言えなかった。
837先生萌え:前編9/9:02/07/07 22:48 ID:Mld4B/4g
先生が運転席に戻り、まっすぐ前を見ながら呟くように言った。
「君はそのままそこに座っていなさい。それから……―――」
車は発進し、再び高速に乗る。
「私も、君の前ではただの男になる……。覚えていてほしい」
景色はやがて、コンクリートの壁に遮られた。

《続》