微笑4
カケルは私の前で鎧を解いて鎖帷子を脱ぎ藁の上に落としました。そして黒の胴衣も脱いで私
に近づいてきます。カケルの胸には私の作った人形がぶら下がっていて、それを両手でそっと持つと
カケルをじっと見つめました。
「ずっと持っていてくれてたのですね。ありがとう、カケル」
「ナターシャがくれた大切なお守りだからな」
「わかってたのね……」
カケルは私をぐいっと引き寄せてぎゅっと力強く抱きしめてくれました。人形を持っていた手は力なく
下に垂れて、人形は手から離れてゆらゆらと揺れていました。
「ナターシャ、また目にごみが入ったか?」
「カケルのばか……」
「きみの瞳を哀しみの涙でなんか、濡らせはしない。俺を、カケルを信じて付いて行ってやって欲しい」
カケルはそう言って、私の涙にキッスをしました。小屋で睦み合うふたりに永遠に時が止まって
しまえばと祈っていました。カケルは私の胸を揉みしだき、お尻をゆっくりと愛撫し始めます。
「あっ……カ、カケル、あなたについてゆきます……やさしくして……ください」
「ナターシャ、こわがらなくていい。私のなかでゆったりと身を任せていればいい。それだけでいい」
「は、はい、カケル、あっ、ああ……んんっ!」
カケルのやわらかい唇が言葉を呑み込み、私は身を委ねます。カケルのお尻を愛撫していた手
がスカートを捲って腰布から覗いている双臀の片側を愛撫してから、後ろから内腿をじんわりと
撫でてきました。
口の中は、カケルの舌が唇を舐め回してから、口腔へ押し入って舌を熱情のままに絡めてきました。
「んぐうっ、んんッ、んんーッ!」
私は今までの想いと熱情の快美のが交じり蕩けあい、叫びをカケルの口のなかにあげていました。
微笑5
想いと快美が蕩けあって、私の素肌は赧くそまってゆき、私はカケルとともに今を生きているんだと
実感し涙が溢れてくるのです。
カケルはやさしく、ゆっくりと戦士の衣を脱ぎ捨ててくれました。私の心もカケルに蕩けてゆくようです。
私は下着も脱がされて、カケルも腰布を落として、ふたりは生まれたままの姿になりカケルの物は
太く逞しくなっていて天上をさしています。
私は促されて腰を下ろして、カケルに抱かれるようにして藁のうえに仰向けに寝ました。私は昂ぶって
いて荒い息を吐き、乳房は期待と不安で喘いでいたことでしょう。
私は藁のうえに躰を真直ぐに伸ばして顫えていました。カケルもいっしょに寝そべって、私の乳房を
揺らし、左の太腿で私の濡れる秘所を擦るのです。カケルの熱く滾るペニスの感触が私の左太腿
のうえを行ったり来たりしていました。
「はあ、はあ、カケル……」
私はカケルの顔を両手で挟んで長い髪を撫でていましたが、正体無く藁のベッドへと落ちて
しまいます。
「ナターシャ、とても綺麗だよ。ずっとこうしたいと思っていた、ナターシャ……愛してる」
「わ、わたしもです……愛しています……カ、カケル……あうううッ!」
カケルは耳元で囁き、首筋から舌を這って降りて行き、乳房そして乳首を辿って秘所を目指して
ゆくのです。
「いやあ……羞ずかしい、カケル……見ないでぇ……あっ、あううッ!あッ、あッ!」
カケルの舌が私の最も羞ずかしい部分を舌で舐め、そこから溢れ出る泉を呑み干そうとする
のです。私の耳にも、厭らしい音が聞こえて来ました。
「や、やめてください……はずかしいの、カケル……うううんッ、いっ、いじわるううぅぅッ!」
「私は昔から意地悪だったろ、ナターシャ」
「も、もう……はあ、はあ、はあ……カ、カケルったら……」
私は快美の波に呑まれてしまいそうでした。
微笑6
「今は私とナターシャだけなんだ。羞ずかしがることなんか何もない」
「あっ、あああ……あうううんッ!」
カケルは私の秘孔から溢れ出る泉を呑んで、舌先をそっと挿入して来ました。
そして指で私の膨らんでいるクリトリスをやさしく摘んでは指で擦るのです。
「あう……い、いやあ……ゆるして……カケル……もう、ゆるしてぇ!」
「ナターシャ、きみが欲しい」
カケルは顔をあげて、今にも官能の嵐で気がくるいそうになっていた私に呼び掛けます。
「はあ、はあ……カケル、来てください……」
カケルは私の腰を掻き寄せた藁のうえにのせると、先端を秘孔にあてがいました。ゆっくりと
灼熱の棒は私の奥へと入ってきました。
「ああッ!あああああッ!」
私は女のベールが押し拡げられて行く度、声を張り上げて叫びます。カケルは私の投げ
出されていた手をしっかりと握ってくれて、強く握り返しました。
「ナターシャ、動くよ」
カケルの太く逞しいものが、私の狭穴をいっぱいに拡げて咥え込ませています。その肉棒
が私を引き摺って動き出します。抉るような感覚に私は苦痛の呻きをあげていました。
カケルの動きが止んで、私は薄目を開けました。彼の汗まみれの顔が私を心配そうに
見つめていました。
「ご、ごめんなさい……カケル……嫌いにならないで……」
「私がナターシャを嫌いになるわけがないだろ」
微笑7
「カケル、痛いけれどこのまま続けてください。わたし後悔はしたくありません」
私はカケルにお願いしました。
「本当にいいのかい、ナターシャ?」
私はカケルに頷きました。カケルが律動を開始すると、再び激痛が総身を顫わせるのです。
私は下唇を噛んで苦しみに耐えていました。ただ泣くばかりだったのです。しかしその苦痛の
なかにも、カケルとひとつになれたという歓びは何物にも代えられない私の宝物です。
けれども私は苦痛に汗まみれの顔を左右に振って耐えて、ことが終わると下唇を噛み切って
いて血を滴らせていたのでした。
カケルは私の流した唇の血を舐めとって、やさしく口吻をしてくれた時、私は年端もいかぬ
少女のようにカケルの躰にしがみついてわっと泣き出していました。
「ありがとう、ナターシャ。カケルをいつも信じてやってくれ。我儘で子供みたいな奴だがな」
私はカケル……エトの躰にしがみ付いて大声で泣きながらも、何度も何度も頷くだけでした。
カケル、私はずっとあなたに付いてゆきます。じゃまだと言われてもずっと、ずっとどこまでも。
「ナターシャ!あきらめるなッ!たのむ!一度きりでいいから俺を信じてくれえぇぇぇぇッ!」
カケルの涙が私の顔に雨のように降り注いでいました。私も泣いていたことでしょう。
カケルにはわかったでしょうか。私は笑っていたのです、カケルにせいいっぱい微笑んで
いました。カケルにしてあげられる最後のことです。
「わたしカケルを信じているから、きっとルシフォンに勝って生き抜いてちょうだい」
「いやだ……いやだッ!いやだッ!ナターシャがいなければ意味が無い!俺を捨てて逝く
ナターシャなんか絶対に許さないぞ!だから這い上がって来い、ナターシャ、頼むから!」
微笑8
「カケル、泣かないで。わたしまで哀しくなっちゃうから……」
「あああッ!神様!ナターシャの手が、手が……滑っていく……いやだ、いやだああぁぁぁぁッ!」
「ごめんね、がんばれなくて、カケル。わたしカケルを信じているから……ありがとう……」
カケルの握っていた私の手が離れました。
「ナターシャああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!どうして、どうして!微笑んでなんか
いられるんだああぁぁぁぁぁぁッ!」
私の躰が闇に包まれる瞬間、聞えてきたのはカケルの号泣でした。
「ふん、とんだ茶番だったな。くだらん生き物だ」
「ルシフォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!」
カケルは剣を握り締めるとルシフォンへと挑ん行った。ガシィーン!
「だ、誰だああぁぁッ!貴様ッ!そこをどけええぇぇぇぇッ!」
「私はリディアだッ!三魔将のひとりリディアだああああぁぁッ!」
「ええいッ!どけええッ、この鴉女ッ!」
「ふん、小僧ごときルシフォン様の手を煩わせるまでもないわッ!」
鴉の衣を纏った妖艶の女、その魔将軍・リディアの持つ灼の杖から閃光が走った。
「ぐははッ!か、躰が!」
「殺すな、リディア。こいつには我が妻・マノの苦しみを永劫に味わって貰わんとな」
「ハハッ、ルシフォン様!」
「くそっ、くそうッ!くそおおおおおおおぉぉぉッ!」
カケルの絶望の絶叫がルシフォンにはことさら愉快でしかたがなかった。
945
一応、ノベライズ二巻のラストのパロディということで。
リディア1
両手両足首に鉄輪が嵌められ、鎖によって四肢をいっぱいに拡げられて、冷たい石壁に
磔にされていたのは光の天使・リディア。
神に仕える白き鎧の戦士の軍はルシフォンというたったひとりの魔族の前に完膚なきまでに
制圧された。リディアは術中に堕ち金縛りに遭って、ルシフォンに手足も出ずにタナトスの
大鎌によって皆殺しに晒されて逝った仲間たちをどうすることもできずに、屈辱にまみれ
慟哭しながら見ているしかなかった。
気がついてみればルシフォンの魔城、奥深くの薄暗いじめじめとした地下牢に幽閉されていて、
ひとり虜囚となって生きていることが呪わしかった。リディアは天使長の中でも男顔負けの
手だれの戦士だったが、ルシフォンとの格があまりにも違い過ぎていた。
無残に吊るされているリディアへと、ルシフォンの気配がひしひしと近づいてくる。それだけで
場の空気がぴりぴりと凍てつき、リディアは戦士であることも忘れて恐怖に慄き、吊るされている
鎖をシャリンシャリンと音を立てては揺らして顫えて、全身から血の気が失せてゆくのだった。
そしてルシフォンの手が恐怖に引き攣る天使の顔を拝もうと、戦意すら失せ少女のように怯えて
うな垂れているリディアの豊かに波打つような輝くばかりの綺麗な金髪を鷲掴みにすると、
強引に晒し上げる。
「あうっ!」
「ほう、見てくれはマノに劣らず美しいな。それに恐怖に怯える光の子らの顔こそ魔族の愉しみ。
暇つぶしぐらいになってもらわねば困る」
ルシフォンが流れるような豊かな輝くばかりの金髪を離すと、何本かの長いリディアの金糸が
彼の鍵爪に絡め取られていて、リディアの運命の如く儚く、はらっと床石に堕ちてゆく。
リディア2
リディアはルシフォンの顔を初めて間近に見ていた。細面な美しい女性のような顔立ちに、
唇には血を刷いたような赫を呈している。そして切れ長の瞳、その鋭き眼光はリディアの白き鎧の
下に守られている裸身をあからさまに嬲って愉しんでいた。リディアの胸が喘いで微かに揺れている。
「こ、殺してくれ……し、死んでしまいたい……」
「ほほう、魔族に哀訴とはまいったな。せっかく、女としてではなく戦士として弄んでやろうと思って
いたが」
「わ、私は戦士の価値すらない、もはやただの小娘だ。殺してくれ。頼む……から」
リディアはルシフォンへの絶対的恐怖から、もはや碌な考えも纏まらず、魔族に死を願い出る
ほか道は残されていなかった。
「小娘か。ならそのように扱うまでのこと」
ルシフォンはリディアの顎をもう一度、掴んで引き上げると、彼女の抗う力で柔らかな頬の肉が寄り、
戦士の仮面を脱いだ女としての恥辱に染まり、細く美しい眉が吊りあがって眉間に苦痛の皺を
刻んで彼女の美貌は歪む。
「お前の顔は見れば見るほど美しい。物言いも素直で飽きないよ、まったく」
「そ、そんな……こと」
「私の力を見ても、粋がっているとすればただの阿呆よ。光の戦士にしておくのは勿体無いかもしれん」
「戯言を!」
「別に貴様を惑わしているのではない。本心からだ、おんなよ」
ルシフォンは手に乗せている、僅かばかりの勇気を振り絞って抗おうとし始めたリディアの顔
に赫い唇を寄せていった。唇をゆっくりと開き彼女にルシフォンの吐息が掛かり、蛇のような長く
邪悪な舌を頬へとねっとりと這わしてから、怯えるリディアの瞳をぞろっと舐めた。
「ひぃーッ!」
リディア3
きつく瞼をとじて顔を振り切ろうとしても、ルシフォンの力で押さえつけられて瞳は邪悪な
赫い舌によって瞼を捲られ、その内側でさえも愉しむかのように這っていき舐め回されてから
眼球を蹂躙される。
彼女がいくら視線を逸らそうとしても、舌がリディアの怯える瞳を追ってくるのだった。
「あうっ……あああ……」
リディアの絶望と恐怖の呻きとブレスが、唇から洩れてくる。
「どれ、もうひとつの天使の涙でも賞味するとするかな」
伏した長く美しい睫毛を顫わして濡らすのは恥辱からなのか、ルシフォンの絶対的な恐怖からなのか
を考えることは虜の身になったリディアにとっては意味の成さないことだったが、さりとて何かに気を
逸らさない限り彼への恐怖に到底堪えられない。むしろ硝子のように壊れろと願うものの儘ならない。
「殺して欲しくば、我に願え」
ルシフォンは慄く顔を両手で強固に挟むと、リディアの唇に擦り付けて口を大きく開くのだった。
固く閉じられた瞳からはリディアの天使の涙がぽろぽろとこぼれて、凌辱者の頬をも濡らしている。
リディアは何もせずにいた。これは本当に取引なのかという疑念がふつふつと湧いてくるからだ。
だからといって今のリディアに何があろうか。躰がくなくなと揺れて、吊るされている両腕の鎖
がまたシャリンシャリンと音を立て総身を揺らす。
ルシフォンはただじっと待っていた。それによってリディアの小鼻が大きく膨らんで呼吸するしか
ない。躊躇いと嫌悪が交錯して、リディアの美しい細い眉を歪ませ苦悶を滲ませる。
リディアは心を決めると、唇を開いてルシフォンの口腔へとゆっくりと入っていった。鼻孔が
拡がって自分の限りなく惨めで浅ましい姿が見えるようで堪らない。涙が後から途切れなく
噴きこぼれている。ルシフォンの舌へとそろりと触れるた時、リディアのなかに快美のような
ものが瞬きをした。それはルシフォンとて同じだった。
「んんっ」
リディアは小さなくぐもった呻きを唇から洩らし、ルシフォンは彼女の感覚にその瞳を
見開いていて苦悶を滲ませる美貌を眺める。