KOF2001/Another Case 『記憶の持続性』
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KOF優勝者たちがエアシップに搭乗し、優勝式典会場へと向かう予定の時間。
地上の海辺。その暗がりで1人の女の身体が切り裂かれた。
「許さない…絶対に許さない!」
成す術も無く倒れ、もはや息を失ったフォクシーを見てクーラは怒りに身を震わせる。
「出来損ないが1人で何ができる?」
K9999は嘲笑う。傍らのアンヘルは相変わらず人を小馬鹿にした不適な態度のままだ。
……誰も助けには来ない。波の音だけが静かに虚空に響く。
勝負は一時で終わった。所詮怒りに我を失った少女が2人を相手に勝てようはずもない。
「なっさけないねぇ〜。もう降参?」
「ざまぁねぇなあ。……おい、これで終わりだと思ってんじゃねえだろうなぁ?」
無傷の2人は嗜虐的な眼でクーラを見下ろす。
クーラも睨み返すが、体に力が入らない。四肢が痙攣する。
――フォクシーの敵どころか、一矢報いることすらできない自分がもどかしい。
「おいアンヘル…確かこの近くにネスツの施設があったなぁ?」
「飛行場のところね。ここからすぐだけど…うふふ、相変わらず悪シュミだね〜」
「言ってろ。……おら立てよ。お仲間のところに行く前に地獄見せてやるからよ」
立て、と言いながら、K9999はクーラの髪を掴みそのまま引きずって行く。
そして、もはや彼女には抵抗する体力も、気力すらも残ってはいなかった。
第94ネスツ末端偽装施設の一室。
そこになかば病的に引き攣った笑いを浮かべるK9999、
子供のようにへらへらと薄笑うアンヘル、そしてその横に炸薬ギミック処理の施された
首輪と鎖につながれ、行動の自由を奪われたクーラがいた。
「くはははは…いいカッコだなオイ。じゃまず服脱げ。全部な」
「あんたなんかのいう通りに…誰がっ…」
「――アンヘル」
「ほーい♪」
ごきん、と嫌な音を立て、一瞬でクーラの左肘が砕ける。
「あうッ……!んっ…」
「次は眼を抉る…もう一度言うぞ?服を、脱げ」
「あー、ダメだよぉ。カオは可愛いままにしとかなきゃつまんないじゃない♪」
「テメェも妙な趣味だな…いいだろ。顔には傷つけないでおいてやる。…顔だけはな」
苦笑しながら、K9999は無言で再度クーラを促す。
悔しさと怒りに涙を浮かべ、頬を紅潮させながらクーラは右手一本でぎこちなく服を脱ぐ。
年齢に比して成長の良い胸が、白い肌そして細い肢体とアンバランスで一層儚げに揺れる。
しかしその身体には無数の痣や切り傷が目立つ。中でも、先ほどへし折られた左腕は
赤く醜く腫れ上がり始め、少女の可憐さを打ち壊す。
「どうした?喜べよ。テメェみてぇな屑が俺に抱いてもらえるんだぜ。
泣いて喜ぶのがスジってもんだろ、ああん?」
クーラは顔を背けるが、K9999は強引に彼女の耳を掴み、顔を向き直らせる。
「役にたたねえ耳だなあ…なら、いらねえか」
みしり。
「うああああああっっ!ッつぅ…!ううっ…」
肉の引き裂かれる音が響き、K9999は右手で千切ったクーラの耳を弄ぶ。
「『カオ』は傷つけてねーよなあ?ほれ、やるよ」
K9999はそれをアンヘルの方へ放り投げる。受け取りながらも、彼女は呆れて言う。
「つくづく変態…まぁイイでしょ。ぎりぎりセーフね」
「そろそろその無い頭でもわかっただろぉ?おらケツこっちに向けろよ」
クーラは痛みと屈辱に耐えながら、緩慢に彼の命に従う。
確かに、自分が今いかに無力なのかが身に染みてわかった。
――絶望だけが身を包む。
「…にしてもいいモンじゃねぇか、ガキってのもよ。上の連中がコイツ造った気持ちも
わかるぜ。しかし初モンとは意外だが…」
既に三度クーラを犯し、今また彼女の内奥を荒々しく貫きながらK9999はアンヘルに向けて言う。
「さーねぇ。イグっち達もアンタと違ってロリじゃなかったってことじゃん?」
「ロリねぇ。ははははは、そうかもな。しかし嬲るにゃちょうどいい具合だぜコイツはよぉ」
K9999が性器を出し入れするたびに、ニチャニチャと粘った音を立てて
彼が吐き出した精液がクーラの膣から溢れ出し泡立つ。
とうに生気を失い虚ろな眼をしたクーラは、それでも精一杯の侮蔑を込めて吐き捨てる。
「あんただって…どうせ使い捨てなんだから…うッ…いい気になってられるのも…」
それに耳ざとく反応し、K9999が逆上する。
「うるせぇ!まだわかんねぇのかこの出来損ないが!」
彼は右腕を変質させ、その硬く鋭い鉤爪で四つん這いのままのクーラの背中を
一息に切り裂く。生皮が剥がれ、脂肪の薄い彼女の肉があらわになる。
「ひぃぃッ…!う、く……こんな…こと…で…」
「だな?こんなんで済むと思うんじゃねえよ。ほれ」
K9999はそのまま右腕の炎を発し、クーラの背中の傷へ押し付ける。
「きゃああああああっっっ!」
耐え難く、気も触れんばかりの苦痛、屈辱、衝撃がクーラの背中と子宮から頭蓋へと走る。
「ふふぅん。あんたも心底サドだね〜。でもさ、もっと責めたくなるトコがあると思わない?」
相も変わらず楽しげに高みの見物を気取るアンヘルが口を挟む。
「責めたくなるとこだぁ?」
「だからぁ〜もういっこ穴があるじゃん。ほれ、これでも入れてあげなよ」
アンヘルは傍らに落ちていた鉄パイプを掴み、K9999の方へと放る。
クーラの虚ろだった眼がそこに焦点を合わせ、意味を飲み込むとともに顔が引き攣る。
「い…イヤ、イヤぁ……やめてっ…!」
「穴…か。なるほどなぁ。グハッ、けどそれならもっといいモンがあるぜ」
アンヘルの意図に気づき、クーラの反応にそそられたK9999が鉄パイプを無視して言う。
「いいモノ?」
「俺の能力…知ってんだろ?……コレだよ」
彼は右腕を鉤爪からドリル状へと再び変化させる。
「なる♥」
「お願いっ…いやぁ…それだけは、お願いだから……やめ――」
「イッちまえよ」
「いやあああああああああああああッッッッッッ!!!!!!」
壁に響くは少女の悲鳴。
聞こえる音は肉の断裂。
――そして、人並みの幸せを知らず育った造り物の少女の精神は、瓦解した。
「いるとしたら…間違いなくここね」
ダイアナはネスツ施設を見上げる。勝手はわかる。
先刻、海辺で争いの跡とフォクシーの屍体を見つけた彼女は、
クーラの姿が無いことからこの場所を想起し、全速力で駆けて来たのだった。
「無事では済まないだろうけど…出来れば…生きていて、クーラ」
そう呟きながら各部屋を探す。無論警戒は怠らず、右手にフォクシーの形見として
携えてきた剣――クリティッカーを構える。
数分後、有事以外使用されることの無い地下の倉庫で、ダイアナは目的の人物を見つけた。
……そして、彼女の願いは、無残な形で叶えられた。
「……!」
そこにクーラはいた。
床一面に血溜まりができ、彼女はその中心で放心したままぺたんと座り込んでいる。
身体は無残に引き裂かれ、もはや治療の施し様も無い。
それでも彼女は苦痛に顔を歪めるわけでもない。
ただ、焦点のあっていない眼を虚空に向け、右手で股間をがりがりと掻き毟っている。
何時からかずっとそうしていたらしく、膣から漏れた精液が血と混じって斑になる。
どうやら直腸を破られているらしく、一見して気づきづらいが、
性器からも相当に出血しているようだ。
ダイアナは絶句する。ここまで。これほどまでとは思わなかった。
「汚したら…怒られちゃう…今日の晩御飯、なにかなぁ…」
口の端から涎を垂らし、ぶつぶつと呟きながら、なおもクーラは掻き毟る。
……完全に心が壊れている。
ダイアナは胸を詰まらせ、目を閉じて一呼吸する。
そして右手の剣を、とん、とクーラの左胸に突き刺す。
それっきりクーラの瞳は拡散し、五体からは力が失われて自らの血の泥濘に伏す。
……一瞬の黙祷を捧げ、ダイアナはもはや振り返らずにK9999達を求めて走り去った。
そして匣には静寂が満ちた。
完