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695『犬が機械化犬になった理由』1/6
 ――えっと、ペペの紹介をします。

 先月、天使の攻撃に晒された街に降りた時、そこで瀕死の仔犬を拾ってきたんです。
 何とか助けられないかって軍医の人に相談したら、どこかから天使核を持ってきて、何だかアレな交換条件と引き換えに移植してくれたんです。
 それでペペって名前を付けて、プシナと一緒にこっそり隠れて飼ってたんですけど……
 このあいだ、とうとう基地司令さんに見つかっちゃいました。
 大佐や隊長は、「お前の所は犬も隊員も放し飼いか! さすがG3はこんな状況でも余裕だな!」なんて基地司令さんにネチられてすっかり怒っちゃって、「天使核抜き出しとけ」とか「いいから早く捨ててこい」なんて怒鳴られちゃったんです。
 中島さんにも「一刻を争う整備作業中に、そんなのに走り回られちゃ堪らねェ」って睨まれちゃったし、航空隊の中隊長さんには「お前のやった事は、そいつの苦しみを無駄に引き延ばしただけだ」なんて怒られちゃいました……
 でも、先輩が「それでリュンマのやる気が出るなら、別にいーんじゃねーの?」って言って、みんなを説得してくれたんです。
 それでみんな、ちょっと考えこんでくれたので――かなり大人気ないかな、と思いはしたんですけど――プシナと二人で泣き落としにかかってみたら、最後は大佐も隊長も「ちゃんと自分で面倒見るのよ」って許可してくれました。へへへ。

 そういう訳で、ペペは今、あたしと一緒に瑞穂でお世話になってます。
 小屋は(中島さんには内緒で)茜さんが作ってくれましたし、出撃の時はちゃんとニナさんが面倒見てくれてます。それにあたしが訓練で忙しい時には、夜間警備のついでにリメッツェさんが一緒に散歩してくれるのです。
 ここでは辛い事とか哀しい事とかも沢山あるけど、今ではペペと一緒にいられるので、なんだか毎日が楽しくて仕方ありません。
 ……こんな時間がいつまで続いてくれるかは分からないけど――それでも精一杯、あたしはあたしに出来る事をやっていきたいと思います。

 これからもよろしくね、ペペ。
696『犬が機械化犬になった理由』2/6:03/07/10 19:19 ID:61SpwFM0

「……リュンマ、どうしてる?」
「先刻まではわんわん泣いてたけど、今はかなり落ち着いているみたいだね。ツバサちゃんが一緒についてて、寝かしつけてるよ」
「そう…… あの子、ああ見えても他の子への面倒見はいいからね――アタシなんかが一緒にいるよりは、大分マシでしょうね」
「へぇ、さすがに気にしてるみたいだね? あれだけ捨てろ捨てろって騒いでたのに」
「…………」
「いいじゃないか、元々死ぬ筈の命だったんだ――もうちょいプラス志向で考えなよ」
「……ッ……! ……そういう事を言うの、アンタが……!」
「戦果は戦果だしね。しかも相手は基地史上最悪の主天使――犠牲は犬一匹、ってね」
「…………アンタは……ッ!」

  ……カツッ……

「……そこまでにしておけ、大尉」
「……っ、大佐……」
「天使反応が皆無とはいえ“マスカレード”による歪みは未だ修復されていない……軍医には、私から言っておく――貴官は待機任務に戻れ」
「……ヤー」
697『犬が機械化犬になった理由』3/6:03/07/10 19:20 ID:61SpwFM0
「やれやれ、また嫌われちゃいましたよ――って、大佐、何で銃構えてるんです?」
「貴様に聞きたい事があるからだ――ヤシマ陸軍情報二課の羽村総司特務中尉」
「……は……そう呼ばれると、此方も色々喋り辛くなりますね」
「――例の犬への天使核移植手術と引き換えに……サカモトに何をさせた?」
「や、ソイツは企業秘密ですよ。仮に大佐が俺の立場だったら――」
「コイツは――」

  ――バサッ――

「コイツは“S.Q.U.I.D.”の量子演算処理機構のデジタル変換装置の規格説明書だ。……正確には、その“写し”――貴様が、ヤシマに宛てて送ったものの、な」
「あれ、もうバレてるんですか……じゃあ、最初から“銃殺”のおつもりで?」
「……ヤシマ側のお偉方は知らんだろうが……こいつは既に、此方からの技術提供予定リストに載っていた代物だ。
 どうせこれが無ければ、マサムネの開発も進まんだろうからな……つまり最初から、ヤシマ側に渡る筈だった技術なのさ」
「ありゃりゃ……つまり自分は働き損だった、という事ですかね」
「――私が聞きたいのは、貴様が“それを知っていて敢えてその情報を選んだ理由”だ」
「…………」
「他に魂胆があるのだろう? ……どうせヤシマに知れれば、あちらでも反逆の身だ――言え」
「…………」
「…………」
「…………ふぅ……仕方ありませんね」
698『犬が機械化犬になった理由』4/6:03/07/10 19:20 ID:61SpwFM0
「……コイツは、リュンマちゃんの検査記録です――先月のね」
「…………これは……!?」
「超過重ストレスによる潜在的意識下障害、及び個体天使核反応比率の測定値――」
「!! ……馬鹿な……これでは殆ど……」
「――そう。“いつ天使化してもおかしくない”状態だったって訳で――」
「私は全検査内容を把握しているが、こんなデータは知らない――何故隠していた!?」
「教えてたら、リュンマちゃん“処理”してたでしょ?」
「――っ…………」
「……彼女、普段は明るく振舞ってますけど、ああ見えても結構寂しがり屋なんですよ。なんだかんだ言っても13歳ですからね――実際、精神的にはとても不安定でして、自立できるまでは身近な所に依存できる存在が無いと、用意に精神の糸が切れちゃうんですよ」
「…………」
「ま、自分も最初は報告しようかと思ったんですけど――たまたまその時に、リュンマちゃんが仔犬連れてやってきちゃいましてね」
「…………」
「……本音を言うと、助ける気なんか全然無かったんですけど……なんか断ったら、その場で天使化起こしちゃいそうなぐらいテンパってたもんで――」
「……それで犬の延命措置に、天使核移植による機械化手術を?」
「こんな方法で……とも思いましたけど、他に手段が思い浮かばなくてね。……術後の測定値は、報告の通りですよ――犬も、そしてリュンマちゃんも、ね」
「……サカモトは仔犬を助けながら、その実、仔犬に依存していた、という訳か」
「――ま、そういった事情から貴重な預かり物を浪費する訳ですから、“上”にもそれ相応の言い訳が必要でしてね。
 本当は、それなりに“仕事”をしなければならんのでしょうが……残念ながら、お痛をするには大佐の目が怖かったのでね」
「ふん――つまり、手近な所で仕事を“デッチ上げた”訳か! ……呆れた話だ」
699『犬が機械化犬になった理由』5/6:03/07/10 19:21 ID:61SpwFM0
「で――これからどうする気だ?」
「どうもしませんよ」
「……ほう?」
「正直な所――リュンマちゃんについては、実はもう手の打ち様がありません。
 ただ可愛い仔犬をあてがえばいいという訳ではありませんからね。彼女らに必要なのは、純粋に、心を通じ合える相手との触れ合いなんです」
「…………」
「まあ酷な話ですが、それでも彼女はペペを通じて、精神的に大きく成長しています。ま、当分は大丈夫でしょう――今度は色気づいて、男の子でも探してくれれば――」
「違うよ、羽村総司――どうすると聞いたのは、“キミの話”だ」
「――――」
「キミが、我々のドライバーの為に尽くしてくれた誠意には、個人的に感謝する。
 だが……キミは祖国すら裏切った信用ならないスパイであり、ボクはG3の司令官だ。キミは――この状況から、どう逃れるつもりだ?」
「それこそ、どうもしませんよ――どうにもできませんしね。元々、死ぬ筈だった命は二つ……勘定としては、トントンなんじゃないですか?」
「…………」
「自分に関する処遇は全て大佐にお任せします――煮るなり焼くなり、お好きにどうぞ」
「……それはボクに言わせれば、“銃殺してくれ”と言ってるのと同義なんだよ?」
「……自分はそうは思っていませんよ。少なくとも自分は――貴女が“キミ”と呼ぶ相手を殺せる女性だとは思えません」
「…………なッ……!!? キ、キミは……い、いや貴様は……!!」
「――――」
「…………」
「――――」
700『犬が機械化犬になった理由』6/6:03/07/10 19:21 ID:61SpwFM0
「…………も、もういい、分かった。今回の事には……私は、目を瞑っておく」
「ありがとうございます」
「だが――次に何かあった時は、容赦はしない……それだけは、覚えておけ」
「……請け賜っておきましょう。ま、せいぜい大人しくしてますよ」

  ……カッ……カカッ……カッ……

「(……やれやれ、あの音は焦ってるな)……司令も、案外可愛い所あるじゃないの。
 ――――ん、ニナくん? ああ、入っていいよ」
「…………」
「ん? どうしたんだい?」
「……ヴィヴリオ司令、ちょっと怒ってたみたいですけど――羽村さん、もしかして司令まで口説いてたんですか?」
「いやぁ……本命はニナくんだけだよ」
「やっぱり……! もうっ、それが信用ならないんですよ!」
「そうかな? 結構本気なんだけどねぇ……」
「もうっ、知りません!」
「ははは……」
                     ―了―
701『犬が機械化犬になった理由』+/6:03/07/10 19:23 ID:61SpwFM0


「…………」
「ん? どうしたの?」
「…………ペペちゃん、いっちゃいましたね……」
「――――」
「……あんなに可愛かったのに、ね……」
「ああ……」

「なんで……あんなに小っちゃい身体で、天使なんかに立ち向かえたんでしょうね」
「それはね――多分、欲が深かったから、なんじゃないかな……」
「…………? 欲、ですか……?」
「犬は、ね……人間以外の動物の中で唯一、“欲情”を知っている動物なんだ」
「……よく解りません……ペペちゃんは、そんな欲の張った子じゃなかったと思います」
「そう悪い意味じゃないよ――ま、言うなれば“純愛”もまた欲情の一つ、って所かな」
「…………」

「犬はね、イエズスの血を舐めて神の祝福を受けながら、人との共存を選んだ愚かな生き物……

 そして世界に数ある神話に語られる動物の中で唯一、神の寵愛に背を向け、人に最も重い欲望“愛(パトス)”を抱き、神の喉笛に噛み付いた動物なのさ――」