泌尿器科医 三橋廉 その三
12月は師走ともいい、三橋先生もご多分に漏れず
朝から晩まで忙しい日々を送っていました
「三橋、今日も予約が沢山入っているぞ
午後からの手術は三件、その後抜糸が二件・・・お前、働きすぎじゃないか?」
看護士の阿部も心配するほど三橋先生の疲労はピークに達しているようです
「うん・・・でも仕事だから」
「無理すんなよ・・・おっと、電話だ
はい、三橋クリニック・・・包茎手術ですか・・・クリスマスまでに?」
この時期、クリスマスで恋人と甘い夜を過ごしたいとかなんとかで
包茎手術を希望する患者さんが増えます
「はあ・・・申し訳ございませんが、はい、失礼します」
「阿部くん、また?」
「ああ、まただ 包茎手術だって立派な手術だ
切って4、5日で抜糸、その後はクリスマスで彼女と・・・なんて都合の良い妄想だっての
そうだろ、三橋」
三橋クリニックでは手術後約一週間で抜糸、その後経過をみて完治までにまた約一ヶ月
もちろんその間はセクロスは禁止です
「せ、せめて10月くらいに来院してくれれば間に合うのに」
三橋先生と阿部はハァ・・・と深いため息をつきました
「三橋先生、助けてください!!」
包茎手術を受けて先日完治した患者の俺尾さんから電話が来ました
「ど、どうしました?俺尾さん」
「うっ・・・ぐすっ・・・た、勃たなくなったんです・・・このままだと彼女に嫌われてしまう・・・」
俺尾さんは彼女に仮性包茎を指摘されて、クリスマスまでに完治させようと
前々から準備を始めていた患者さんでした
「あ、あの・・・この間は・・・できましたよね」
三橋先生は患者の完治の見極めを自らの身体で確認するのです
「は、はい・・・その節はありがとうございました・・・
あの後から彼女としようとしても、ウンともスンとも言わなくなって・・・
彼女は手術の後だから仕方ないよね、と今は言ってはくれているのですが・・・」
三橋先生は困ってしまいました
完治の見極めの時の俺尾さんはそれはたくましくて立派で太くて
三橋先生は仕事を忘れてしまいそうになったほどです
「あ、あの俺尾さん、少しお聞きしますが彼女さんの裸を見ると興奮しますか?」
それが・・・と俺尾さんは言い渋ります
「彼女の裸とか色事とかを見ても考えてもあまり興奮しなくなっというか
むしろこの間の三橋先生との方が滾るというかなんというか・・・」
ふむ・・・これは深刻ですね
三橋先生は少し考えて俺尾さんにこう言いました
「なら、彼女と性交をする前のこの間のことを思い出して
その性的興奮を持続させるようにがんばってください
恐らく一時的なものでそのうち元に戻ると思いますから」
また何かあったら連絡ください、と三橋先生は電話を切りました
その後、俺尾さんからなんとかなったとの連絡を聞いた三橋先生は
痛む腰を擦りながらこの仕事についてよかったと実感するのでありました