三橋「も、もうちょっと待っててね・・・」

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96fusianasan
似非オカルト

三橋廉が異変に気がついたのは、残暑がまだ厳しい夏の終わり頃であった
部活の朝練の為に朝早い時間に起きるのが彼の日常ではあったが
目が覚めた時に着衣が異様に乱れている事が続いていた
もともと寝相はそれほど悪くは無いと自分では思っていたのだが
夏の暑さで寝返りが酷かったのだろう、と始めは気にも留めなかった
しかし、パジャマ代わりのシャツが胸の上までめくり上げられ
穿いていたスウェットが下着ごと膝下まで下がった状態で目覚めた時にこれは寝相のせいではないと確信した
家族、とはいえ両親がこのような悪戯をするとは思えず、はたまたセキュリティがそれなりに設置されている
彼の家に、毎夜の様に外からの侵入者が自室に忍んでくるという事も考えられなかった
念のためにと寝る前に自室のドア、窓、その他侵入経路になりえると思われる箇所に施錠等を施し
絶対に外から人が入らないようにして寝たが、朝になるといつものような状態で目覚めるのであった
これはもしや夢遊病とやらで自分が無自覚でやっている事だろうか、もしや病気では、と悶々とした日々を送る三橋であった

「おい、三橋・・・」
部活前の更衣室で着替えていると、仲間の田島に呼ばれた
「お前、これ・・・どうしたんだよ?」
「えっ?な、なにが・・・」
「これだよこれ、ほらわき腹の小さい痣がいっぱいあるぞ」
見ると確かに自分のわき腹に小さな青い痣がいくつもある
こんなところを打った覚えもいなしさわっても痛くもない
田島に言われるまで自分でも気がつかなかったくらいだ
97fusianasan:2011/10/23(日) 23:43:43.53
「あっ、こんな所にもある でもこれなんだかアレみたいだな、まさかお前・・・」と田島がグフフと笑った
「アレって・・・」
背中側の腰の辺りにあったそれを田島が押しながら言った
「キスマーク、みたいだな 彼女でも出来たのか三橋?」
まったく心当たりはないし、朝早くから夜遅くまで部活に勉強に忙しいのに彼女を作る時間なんてはっきり言って無い
それに例の異変のせいでずっと張りつめていたものが切れてしまった
突然泣き出した三橋を見て田島は驚いた
ゴメン、冗談だよと田島は謝るが三橋は田島君のせいじゃない、と言うばかりだった
何か事情があるなら俺に話してくれと田島から言われて三橋は例の件を言いかけたが
もしかしたら本当にただの寝相の悪さが原因なのかもしれないと思い、言葉を飲み込んだ

その夜三橋は、寝相が原因ならばとタオルで両足を縛り、着衣は乱れにくいものにして就寝した
これで何もなければやっぱり寝相が悪いだけなのだと、それだけでもわかれば心も軽くなって部活に専念できる
そう思いながら彼は就寝した

暑い・・・
今夜は涼しいはずなのになんでこんなに暑いんだろう・・・
三橋は夜中に暑さで目を覚ました
喉の渇きを覚えて台所に行こうと思い、足の枷を外そうとベッドサイドのライトをつけようとした
・・・何かがおかしい
部屋の空気が異様に重く、暗い
どんよりとしてまるでスライムの様だ それに自分以外の得体の知れないもののの気配を感じる
闇が、自分を取り囲んでいる
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突然その闇は一つの固まりになって三橋の身体に覆いかぶさり、三橋は恐怖のあまり意識を失った

続く