俺「三橋!かけおちしよう!」

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610fusianasan
子三橋細腕繁盛記その2

仕事の後でラーメンでも食うか、という流れになり
同僚に連れて行かれたのは住宅街にある一軒の小さな店だった
こんなところにあるとは知る人ぞ知る名店なんだろう
どこぞの奥様が腕をふるって旨いものを出してくれるようなところかな、と店に入った
カウンター席の椅子が5脚くらいしかない狭い店内
奥からいらっしゃいませ、の声とともに現れたのは子供だった
「あ、俺山さんお久しぶりです・・・ いつものでいいです、か?」
「ああ、頼む 二人前な」
子供はここの店長で三橋という名らしい
というか、子供が飲食店の店長ってのは無いだろう、普通は
しばらくして俺の前には二つのおにぎりと漬物と味噌汁が置かれた
「きょ、今日は、蕪ときゅうりの浅漬けです・・・ それとお味噌汁は豆腐わかめにしました」
なんだこりゃ?子供のおままごと料理かよ
訝しがっている俺に俺山は、まあ食ってみろよと勧める
仕方がない、まずは味噌汁を一口・・・旨い
化学調味料ではない、鰹節と昆布の出し それにこれは味噌も凄く旨いものを使っている
豆腐もわかめも実によい仕事をしている
おにぎりはと・・・握り加減は強くなく弱くなく、口に入れると米の粒が良い具合にほろりと崩れるのが実に快感だ
具は入っていないが塩加減が絶妙で、巻かれた海苔の風味もまたたまらん
漬物も調度良い漬かり具合だ、これは飯が進む
あっという間に平らげた俺はおにぎりの追加をする
三橋がおひつからご飯を取り、小さな手で握ってくれる姿は実に健気だ
一生懸命に美味しくなれおいしくなれとつぶやきながら握ったそれを
俺は味わって食す・・・ああ・・・うまい・・・
食い終わって店を出る
三橋が「あ、ありがとうございました お気をつけて・・・」と送り出してくれる
俺山が「どうだ、いい店だろ」と聞いてきたので俺は「ああ、いい店だな」と答える
またこよう、次は俺一人で