前スレ
>>959の続き
八月の甲子園初日、西浦のマウンドには幽霊が出るって。
オレ達一年生は顔を見合わせる。
「まさかな。」
その中の一人が言う。
でもオレ達は気づいていた。
ミーティングに出ていた二年と三年の先輩達がグラウンドに向かって歩いていってる事に。
オレ達は誰からともなくその後を追った。
グラウンドに着いて驚いた。
誰もいない筈のグラウンドに人がいる!
人は全部で九人、全員オレ達と同じ西浦のユニフォームを着ている。
その姿かたちでその人たちはどうやら男で、全員オレ達より年上なのがわかった。
そしてその九人の中に花井コーチがいるのに気づき、オレ達の中にざわめきが起こった。
花井コーチはその九人の中に混ざって念入りに準備運動をしている。
時々、体が硬くなったとか前より太ったとかいう声が上がって、
その度に笑いが起こった。
「本当は居合わせられないのが一番なんだけどねぇ。」
気づけばモモカンがオレ達の一番前を陣取り、フェンス越しにその風景を眺めていた。
その横顔には苦笑と、何か懐かしい大事なものを見るような表情が浮かんでいた。
九人は準備運動を終わらせ、キャッチボールに入った。
誰からともなく気づきざわめきが上がる。
あれは西浦高校硬式野球部初代の選手達だ!