9月最初の登校、朝。
高校生最後の夏休みが終わり、校内に活気が戻る。日焼けしてる奴、髪型が変わった奴、何も変わらない奴、色々だ。
はて俺は、と思い返せば、課外やってオールナイトニッポン聴いてアイス食いまくって課外やって、ああそうそう、三橋が近所ってことを知ったっけ。
夏の思い出と言える経験はなかった。所詮こんなもんだ。来年は悠々自適な夏休みを過ごしてやるからよ!
「俺川ー、久し振り」
右手をその肩の高さで振りながら中村が声を掛けてきた。久し振りって、最近会ったばっかだろ、と言うと、フフフと軽く笑った。
「悪いんだけど」
中村は、申し訳なさそうな顔になると、
「俺、しばらく彼女と帰るから」
……彼女? 何それ悪口?
「お前、いつの間に」
「夏休み前からメールしてんだけどさ」
中村が目配せした先には、同じクラスの、直毛の美少女田辺さん。
ええええ、よりによって俺が前から気になってた田辺さん? 何で中村なんだ、こいつの何が良いんだよ!
中村に彼女ができたこと。相手が田辺さんなこと。二重の衝撃、エアバッグ無意味。
「ごめんな」
「いいよ、仲良くやりなさいや」
笑顔で返すも、頬が引きつってたのが自分でわかった。
俺の夏とは一体何だったのか。
続く