みんなが今日はやけに優しい。お昼にパンや牛乳ををおごってくれたり、そんなことだ。
はっとして、教室にかかっているカレンダーを見上げる。
染みの着いたカレンダーの今日の日付に丸がついていて、小さく『三橋』 と書いてある。
た、誕生日、だ…今日はオレの、誕生日、だっ!
『ん!やっと気付いたか〜忘れてんだろうとは思ってた!』
飲みかけのブリックパックのストローからぱっと口を放して、田島くんが笑いかけてくれる。
『お、おお、オレ、今、気付い た…あ、ありがとう、みんな…』
しばらく感激で、上手く話せない。いや、それは、いつものことなんだけ ど。
つらいことも、悲しいことも、苦しいことも、
こんな風に日々が巡ってくれるなら、きっと些細なことであると思えた。
『でもさー、俺らよりも三橋のこと祝いたいやつがいるみたいだぞ。』
田島くんがガツンと頭突きをしてきて、その後こそっと耳打ちしてきた。
痛む頭に滲んだ涙が目の端に浮かぶ。
ごほん、と咳払いが後ろから聞こえてきて、振り向くと阿部くんが立って いた。
はわ、阿部くん…!『おぉ、阿部、来たのか』田島くんがニヤりと笑う。 阿部くんも、お祝い、しにきて、くれた のか、な?
『ん…と、三橋、ちょっと、時間あるか?』『う、へ』
がタッと椅子を鳴らしてオレは立ち上がった。『あ、ある、よっ!』阿部くんが、わざわざオレのところに来て、誘ってくれるなんて!
『食べ終わってからでいいぞ?ゆっくり食え。』『大丈夫、いま、行 く!』
鯛の尾頭付きを『ほら、おめでとう』と屋上で手渡されたオレは、阿部くんと一歩親しくなれた気がして、幸せだった。
三橋誕生日おめでとう!!!