三橋「キャ、キャ、キャラット・キャキャキャラット♪」
不自然だった。
とかく浜田と言えば西浦高校ではちょっとした有名人で、水木しげるのイメージである。
本人も「俺がイケメンすぎるから貧乏神が離れたがらない」と冗談めいた愚痴をこぼすように貧乏っぷりを認めている。
そんな奴がある日突然羽振りが良くなって、代わりに薄暗くなったとなれば噂になる。
ただ、それ自体は泉にとって何の問題もなかった。
スネ毛が濃くなったとかいう捕手の愚痴だの、
「モモカンのバストが3センチアップしたんだが何故だ誰かに揉まれたのか」
と顔面蒼白になるキャプテンだのと同じで至極どうでもいい事だったのだ。
それよりも我らがピッチャーに元気がない方が泉にはよほど重要な問題に思えたし、
何より浜田のタクシー通学と三橋の周辺域に漂うジメッとした湿度が上昇し始めた時期が同じだったとなれば、それはもう十二分に不自然が過ぎた。