「なに・・・?民フルが効かん、だと・・・?」
「はい。院長。ウイルスが耐性を付けたようです」
「むう、くそっ・・・!担当医くん!仕方ない、アレを出すしかないか・・・」
「そうですね院長。アレを・・・」
「あの、俺、大丈夫なんすかね?死にます?もしかして」
患者の俺を他所に、病床の横で勝手にピンチ状態になっている
院長と担当医に横槍を入れてみた。
「なんだ君は。黙っていたまえ。」
「いえ、院長。こちらはウイルスに感染した患者さんです。」
俺のベッドの横に立っているのは、見た感じ50代の院長らしきオヤジと、若い担当医。
二人ともN95マスクをしている。
「あのさぁ。患者そっちのけで盛り上がらんでくれる?」
「・・・なんだ君。ウイルスに感染している割に元気じゃないか?」
「元気じゃネーヨ!!」
・・・・とにかく、俺は今巷で流行しているウイルスに感染し、入院している。
民フルを投与されたが、まったく回復しないのだ。
元気そうに見えるかもしれんが、結構ツライんだぞ。
「で、なんなのオッサン。アレって」
「ん?なんだねアレとは?」
「さっきアンタが言ってたろ。民フルが効かなくなったから、アレを出すとかなんとか・・・」
「ああ、院長がおっしゃったのは、『ミレンザ』のことですね。」
「うむ。説明しよう。『ミレンザ』とは、ミハシビル水和物として、
テラクソ・スミスクラインポ社により商品名「ミレンザ」として販売されている
インフルエンザ治療薬のことだ。」
「ミハシビル・・・良くわからんけど、とにかく治療薬なわけね?」
「うむ。ウイルスに感染している割に物分りがいいじゃないか。」
「いや、ウイルス関係なくね?で、その治療薬って安全なの?
それを投与されたことによってアイキャンフライしたりしないよね?」
俺が質問したとたん、なぜか二人は口をおさえ振るえだした。