俺ら「負けませんですことよー!」

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248思い出 ◆hf2h1o.4Ko
>>237>>240       ここまで

オヤツの約束を取り付けて、おれは気分よく学校に走って行った。
子供の浅知恵だが、そうすれば家にいてもらえると考えた上でお願いしたのだ。
親父と三橋さんが仲良くしていてくれるなら、おれはずっとこのままでいたかった。
男しかいない家族だっていいじゃないか。
おれが三橋さんを好ましく思ったのは、あの人が親父のことをとても大事に思っているの
が伝わってきたからだ。
だけど、人の想いというのは「好き」だけですべて解決するような簡単なものじゃないん
だってこともわかっておいた方がいい。


「ただいまー、あれ?父さん、どうしたの?三橋さんは?」
「…早退してきた。やっぱり見送りはしてやりたかったからな…」
見送り?見送りってなんのことだ?
「…そうだ、あいつから頼まれてたんだっけ。上手にできなくてごめん、て言ってたぞ」
親父はそう言って、冷蔵庫からプラスチックのフタを被せた大きな皿を出してきた。
「…ほらよ。もうあいつの手料理食えねーんだからよく味わって食え」
親父の言葉がバラバラに耳に入ってくるが、それらがまとまって意味をなすのを頭が拒否
している。
おそるおそる皿のフタを取ると、3枚重ねの少々いびつだが巨大なホットケーキがのって
いた。
一番上にはたっぷりと生クリームが盛られている。
親父はどこからかメープルシロップのボトルを出してきて、おれの前にトン、と置いた。
「…なんだよ、なんで三橋さんいないんだよ!?こんな……」
「まず食えよ、話は後でゆっくりしてやる。つーか俺もまだ考えたくねえ…」

いつも自信ありげな親父が今日は本当に凹んで、体も小さくなったように見えた。
おれは添えられていたフォークでホットケーキを食べはじめたが、味はほとんどわからな
かった。