>>280>>281 そんなに態度に出てしまっていたのかとおれはバツが悪くなった。
決して三橋さんが嫌とかそんな感情ではなくてもっと複雑なものだったが、自分でもよく
わからなかった。
「お前、見たんだよな?もうゼッタイすんなよ」
ガキが見るモンじゃねえからな、と親父はひとり言みたいに続けた。
浴槽の縁にアゴを乗せていたおれは、肩越しに親父の股間をチラッと見た。
大人になったらあんな風におっきくなって色も黒くなるんだろうか。
あんなものが三橋さんの尻に……。
思い出すとちんこがムズムズするような熱いような変な感じがしてきた。
この頃おれはまだ精通していなかったので、そんな風になるのは病気かもしれないと恐ろ
しくなったが、すぐに治まってほっとした。
風呂から出るとすぐに台所に行って冷蔵庫を開け、冷たい牛乳をゴクゴク飲んだ。
やっぱり三橋さんには悪いことをしたかなと思ったので、なにか手伝いでもしようかと居
間を覗くと、先に上がっていた親父と三橋さんが抱き合っていた。
いつものふざけてるみたいな雰囲気じゃなくて、おれはその場から動けなくなった。
棒立ちになったおれに気づいたのか、三橋さんは親父を突き飛ばすようにして離れると走
って表に出ていってしまった。
すぐに後を追った親父についておれも外に出た。
親父は三橋さんの肩に手を置き、もう片方の手で小さい子にするみたいに頭を撫でていた。
おれなんかの入り込めない世界がそこにはあった。
ずいぶん経ってから、親父が三橋さんにしていた過剰とも思えるスキンシップの理由を知
った。
だが、当時のおれがそれを知っていてもできることは何もなかっただろう。
ここまで