目が覚めると、三橋は見知らぬ部屋にいた。
確かに自分の部屋で寝たはず。
ここはどこだろうか?
何故、自分はここにいるのか?
様々に疑問が三橋の頭を駆け巡る。
それに、この部屋もおかしい。
窓一つないし、床はコンクリート、四方の壁は金属が剥き出しになっている。
もっとも異様なのは、三橋の正面の壁に人間の鼻のようなものが付いているのだ。
他の部分は無機質なのに、そこだけ有機的なものが感じられて違和感がある。
三橋は好奇心から近付いてみる。
鼻は三橋の腰の高さにあり、近くで見るとどうやら壁に付いてあるのではなく壁の向こうから突き出ているようだ。
しかも、プラスチックとかゴムとかそういう素材とは明らかに違うリアルさをもっていた。
まさか、本物の人間の鼻?
確かめようと手を伸ばす。
「やあ、お目覚めかな、三橋くん」
その瞬間、部屋に声が響き渡った。
映画等によくあるような変声機による重低音の声だった。
「だ、だれ?こ、こ、どこ、ですか?」
「当然の質問だな。私は君を誘拐した者さ。ここはどこかは言えない」
「ゆ、ゆ、うかい?」
ショッキングな言葉に三橋は混乱した。