「あっ、んううっ・・・!」
三橋の色っぽい声が夜の静けさの中、艶やかに響く。ボロい宿屋だから他に泊まりの客はいないし、声なんか気にしなくていい。
つっても、三橋とのセックスはここの合法サービスだから客がいようがいなかろうがはばかる必要なんかこれっぽっちも無いんですけど!
「んっ・・うぅー・・・」
うはっ!たまらんwwタダでこんなサービス受けられるなんて、この荒れ果てた世の中も捨てたもんじゃねえな!
ま、さっきから野獣の遠吠えとか、野鳥の雄たけびとか、ひっきりなしに聞こえてくるのが現実なんですけど。
「ん・・・勇者君・・・あさ・・・はやい?」
「えっ、そうだな・・・別に急いでるわけじゃないしな・・・まぁ、ぼちぼちかな」
「そ・・か」
冒険者なんてやってるわけだけど、儲かるわけでもなく、目的があるわけでもない。
この町に来たんだって偶然で食いもんを探してふらふらたどり着いただけなのだ。
つーか俺昨日まで結構ヤバかった。マジ腹減って死にそうだった。
実は数日前、砂漠で行き倒れてからこの村に着くまで俺は意識を失っていた。
村人によると、俺は何やらでかい鳥に運ばれてここまで来たらしい。
「多分・・エサ に しよーと してたんじゃない かな?」
おいおい、怖いこと言うなよ三橋。でも実際そのとおりだった。俺は怪鳥の巣に運ばれる途中で落とされたのだった。
鳥の不注意か、はたまた俺がマズそうだから雛鳥のエサには悪いと思い直して捨てたのか。
理由は踏めだが、とにかく俺は助かったのだった。
「お 落ちたとき、怪我 なくて よ かった・・・」
「おう!このお守りのおかげだよなー」
砂漠横断の途中、立ち寄ったオアシスでデブ商人にボッタクられて買ったものだったが
効果は確かだったみたいだな・・・。あの時は葉ぶりよかったからな、俺。
砂漠の途中で盗賊にスられさえしなきゃ今頃・・・クソッ。
「ダ イジョブ!勇者くん 強い・・・カラ お・・カネ、すぐ貯まるよ!」
「おまえ、俺が戦ってるとこ見たことねーくせに!」
「あうっ・・」
ゴツンと小突いてやったら存外痛そうにしたので、ごめんごめんと謝った。
つい照れ隠しで手が出てしまったけど、三橋のやさしい言葉に俺は内心涙していた。
「ありがとな、三橋」
「フ ヒヒ・・・」
会って半日くらいしか一緒にいないが、どーにもムカつく笑顔だ。可愛いんだか、ブサイクなんだか・・・。
「俺、もー少しこの町に居るわ」