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「うん、遅い、はずっ」
三橋と台所に入ると、既にコップに麦茶が用意されていた。
「はい、どうぞ」
「さんきゅー」
差し出されたコップを手に取るとき、手と手が触れ合って、俺達は見詰め合う。
スッと三橋が目を閉じる。
俺は顔を寄せて口付けた。
すぐに離す。
お楽しみは後に取っておこう。
俺は名残惜しげな三橋からコップを受け取り、飲み干す。
「お、おやつ、食べるっ?」
勝手知ったるなんちゃらで、ヤカンから麦茶を注ぎながら、俺は首を振った。
「三橋の部屋、行こうぜ」
これはけして、食べないと言う意味でなく、三橋の部屋で食べる、と言うだけだ。
「わかった」
麦茶を一気して、もう一度注ぐと、三橋の後について二階へと階段を登る。
三橋の部屋は広い。
広いけど散らかっている。
相変わらず汚いなあ、と思いつつも、自分の部屋も汚いから何も言わない。
座布団に座ると正面に三橋が座る。
他愛ないことを喋りながら、間に置いた菓子鉢に競争のように手を伸ばして食い尽くす。
なくなると、三橋はそわそわする。
もうセックスするって決まってんだから、脱ぐか誘うかすりゃいいのに、いつまで経っても三橋はウブな反応を見せる。
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ひとまず、今日はこれでおやすみはし。