>>295 田島は無難な所でピンタックとりぼんが大量に付着した花柄のワンピースを着る事にした。
ウエストの所は友布でこさえた紐を引っ張ることで調整するようになっている。
成る程、これなら凹凸が無くても調整して着られる。そういえばアニキの嫁さんも妊娠中こういう紐付きの着ていたっけ。
鏡の前でくるりと回ってみせる。うんうん、結構いいじゃん。これならソックスも違和感ねーし。
田島が勢いをつけてカーテンを開けたは多少の照れが有ったからかも知れない。
周りが一斉に引いたら直ぐにカーテンを引けばいいし、笑いが起きれば自分も笑い飛ばしてしまえばいい。
じゃん、と言ってスカートをヒラヒラさせて見せた。ただ三橋だけがニコニコと手を叩いて笑っていた。
周りが女装しているのばっかりだから、目立たないのだという事を田島は失念していた。少々ばつが悪くなって苦笑いをした。
三橋が不意に立ち上がり田島の後ろに回った。
「背中のファスナー上がりきってない です あ、上げます このまま」
「おあ、上げ足りなかったか?さんきゅーっ」
ファスナーを上げ、後ろの鍵ホックを閉めると前に回って、もう大丈夫と、三橋は前に手を合わせた。
三橋の手が掠り傷だらけで指に絆創膏が貼られているのが目に入った。
「なんだよ、その指の絆創膏、怪我したのかよ エースが怪我したら怒られんぞー」
三橋ははっとすると田島の腕を掴んで教室の外に出た。
廊下を走りながらきょろきょろと辺りを見回す。田島が制してもどこ吹く風といった感じだ。
「ど、どうしたよ、衣装着たまま外に出ると怒られんぞ・・・って、気付かれずに出てきちゃったけど」
「えっと 背の高い坊主頭の人、探してマス お礼が言いたくて」
「沢山いんだろー、坊主頭」
田島の腕を引っ張ったまま、三橋は人の溢れた文化祭会場の校舎の廊下を進んでいく。
あれ?三橋、俺より背ぇ縮んだか?手も何か小っちぇえし?あれれ??田島が疑問に思うも三橋の歩みは止らない。
「こ こんなに人が多いと思わなかった どうしよう、余り時間が無い のに」
「時間?ちょっと遅れたくらいなら泉に怒られる位で済むだろ
そんなに焦る事はねえよ」
「あ、そ それは駄目ですっ 時間はちゃんと守らないと」
「俺も一緒に怒られてやるって で、どこで会ったんだ?背の高い坊主って」
「さっき会ったんです ここの生徒だって言っていて・・・高女なのに男の人って変だなって思ったんだけ ど
ここ、男の人も女の人も 沢山」
「文化祭の最中だから余計に人が多いんだよ」
“こうじょ”って何だろう?と田島は疑問に思うも、その時は何故か聞いちゃいけない気がして敢えて聞こうとはしなかった。