三橋「1001だ!」

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50fusianasan
「三橋ー!」「お 俺君!」「待ったか?」「ううん・・・今 来たとこ・・・」「じゃあ行くか!」春うららかな今日、俺と三橋は久々のデートだ。デートつっても普段は一緒に登下校してるし
暇さえあれば会ってるんだがここのところ三橋は部活が忙しいし俺も三橋との交際費を稼ぐバイトで忙しくなかなか遠出のデートが出来ずじまいだった。そんなこんなで今日は久々にデートで
俺も三橋もウキウキだぜ。いつも見てるが、いつもと違う場所で会うとまた違った感じがしていい。普段着の三橋・・・スニーカーに半ズボン、ラフなシャツ姿だ。今日の行き先はオレラ牧場。
高校生の俺たちからしたら結構な遠出だが、そこは俺のバイト代でお茶の子さいさいよ。「俺、君、いいよ、俺出すから・・・」「いいっていいって。久々なんだし俺が払うよ」健気に電車賃を
払おうとする三橋を振り切る。「あ、ありがと・・・」そこいらの生意気女子ならこっちが払って当然だろ的だが、三橋はそういうやつじゃねえからな。顔真っ赤にして俺から切符を受け取る三橋。
「で、電車も滅多に乗らないから た、楽しみ」「そうかそうか、ちょっとした小旅行だな」三橋と知らない町まで小旅行、なんという素晴しい響き。俺たちは電車に乗り込むと、ボックス席に
向かい合って座った。外をキラキラとした目で見つめる三橋。様々に移り行く景色を楽しむ。しばらくすると三橋が顔を赤くし、モジモジしている。「お、俺くん・・・」「なんだ?三橋。」
「えっと・・えっとね・・・」やけに恥ずかしそうに下を向いている。何だ?ションベンでもちびったか?・・・み・・・三橋のしょんべん・・・ゴクリ・・・。しばらくの間、電車のガタゴトという音のみが包む。
「なんだよ、どうした?」「へ、変に思わないでね」「思わねーから言ってみな」俺がそう言うと、三橋は意を決したようにガバッと顔を上げた。「あ、の、と・・隣に座ってもいい・・・かな」
よほどの決意がいったのか、耳まで真っ赤にして目も少し潤んでいる。何かと思ったらそんなことか・・・チクショウ、これじゃまるで観覧車にのる付き合いたての恋人同士じゃねえか!
いや、俺たちは恋人同士で間違いないんだが、いつまでたってもこの程度のことでビクビクしてたらほんとに俺たち付き合ってんのかって感じじゃねえか。少なくとも、俺たちは付き合ってもう
3ヶ月は経ってるんだぜ。それなのに隣に座るくらいでこんなに時間がかかるなんて・・・これはもうちょい先に進まなきゃならねえな。別に奥手で攻めようってわけじゃねえんだがどうも三橋とは
少し時間がかかっちまう。俺たちまだ手しか握ったことねえんだぜ。おかしいよな。キスまでしようと思うんだがなかなかタイミングがねえっつうか・・・ここんとこ忙しくて登下校とか
遊んで終りってのしかなかったからな。よし・・今日こそ、今日こそはなんとかしてキスまで持ち込みてえ。ここじゃ周りは誰も知らないやつばっかりだし、少々人に見られたって俺たちの噂が
たつことはねえだろ。そうだなぁ・・・夕方に夕陽を見ながら・・・と考え込んでいると三橋が俺の顔を覗きこんできた。「俺 くん・・・?」「ああ、ごめんごめん。遠慮なんかせずにこっち座れよ」
「う、うん!」はにかんだ笑顔で俺のとなりにいそいそと座る三橋。隣に来るだけでこんな調子じゃキスなんて到底無理じゃねえか・・・いや、今日は違う。旅ってのは人を酔わすからな。