仝ω仝)<1000と三橋の穴隠し

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303影法師
出遅れたが1000スレおめでとう!!
抱き枕画像が見れない・・・

http://set.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1239895638/133

駅前の狭いスペースにぎゅうぎゅう詰めになっている自転車の間になんとか自分たちの分
も割り込ませる。
「え、いが…?」
駅構内に入って券売機の方に歩きながら、ようやく三橋に映画を観に行かないかと今日誘
った目的を言うことができた。
「ヤだったらゲーセンでも何でもお前の行きたいところでいーぞ」
「あ、ううん、映画 行くよ」
やっぱり唐突だったかなと三橋の戸惑ったような顔を見て思ったが、今さら取り消しても
もっと困惑させるだけだ。
「そう、お前英語苦手だろ?俺思うんだけど、お前って字幕付いた映画見ないんじゃねえ
 のか?」
「え、あ み、見ない…」
「そうだろ?だから英語にちょっと慣れよーぜ」
「阿部君、オレ オレの…」
「あ?もちろんお前のためだよ。それがどーかしたのか?」
三橋は大好きな剛速球投手に会った時みたいに湯気が出そうなくらい赤くなっていたけど、
俺は照れ隠しで「当然ワリカンだかんな!」とぞんざいに言い放った。
304影法師:2009/04/19(日) 05:05:34
コインロッカーに2人分の邪魔な持ち物を突っ込んでから切符を買い電車に乗り込むと、
俺たちと同じように試験が終わったばかりの学生が大勢いるようだった。
何人かで固まってあの問題はどうのこうのと声高に話しているからすぐにわかる。
「今日のデキはどうだった?」
三橋にこそっと話しかけるとしばらく考えてから「…わるい」と返事が戻ってきた。
「どれが?」
「…ゼンブ…」
「40点は取れてるんだろーな…」
低めた声がドスをきかせたようにでも聞こえたのか、三橋は小さくなってビクつきながら
俺の顔を窺った。
「…別に怒ってねぇよ」
俺は三橋の顔から視線を外して、電車の外の流れる風景を眺める振りをした。

5つ先の大きな駅で降りた俺と三橋はショッピングセンターに併設された映画館に入った。
昔来た時は普通の映画館だったが、最近の流れで会社の名前を冠したシネコンになったの
は2年くらい前になるだろうか。
一応下調べで選んでおいたのは面白いと評判のアクション映画だけど、三橋が観たいもの
にしようと俺は決めていた。
時間が空いてもヒマを潰す場所はたくさんあるから構わない。
ずらりと並んだ上映中の映画のポスターを一つ一つ見ていた三橋は、記憶喪失ものに興味
を引かれたらしかった。
「それにする?」
「えっ、あ、あの…」
「チケットまだ買ってねーから大丈夫」
その映画も派手ではないが、二転三転する先の読めないストーリーと俳優の演技が高く評
価されていたのを思い出す。
「観たいんだろ?俺もその映画気になってたんだ。メシ食ったら時間もちょうどいいしそ
 れにしようぜ」
「い、いいの?」
「いーよ」
三橋と外でメシ食って映画とは本格的にデートコースだなあと思いつつも、学校から離れ
た開放感とクリスマスを控えたまわりの賑わいに心を浮き立たせていたのも事実だった。
305影法師:2009/04/19(日) 05:08:27
>>302>>303

──上映が始まっておよそ30分が経過した頃。
俺はスクリーンと三橋の横顔をかわるがわる見ながらひどく焦っていた。
映画の紹介文には書いてなかったのだが、主人公の女性が過去に暴力を受けてそれを大人
になった今も夢に見ては、泣いたりふさぎこんだりする場面が度々出てくるのだ。
(…やべえ、どうしよう…)
三橋から直接聞いたことはないし、憶測ではあるけど同じように苦しんでいる可能性は充
分あった。
こんな話だったら最初に決めていたノンストップアクション映画の方が100倍マシだっ
たと後悔するも、今さらどうフォローしたらいいのか見当がつかない。
三橋を引っ張って出ていくべきか、あるいは三橋から「やめよう」と言ってくれないもの
かとまた隣を見た俺はドキリとした。
三橋は真剣なまなざしで食い入るように前を見つめていた。
それこそ祈るような表情で。
大きな瞳とつるんとしたなめらかな横顔にスクリーンからの光がほの白く反射して、三橋
じゃない見知らぬ人間みたいだった。
俺は三橋の顔から目が離せなくなっているのに気が付いて、さっきまでとは違う意味であ
わてた。
体を低くして立ち上がると、他の人の邪魔をしないように注意しながら通路に出てトイレ
に向かった。
少し頭を冷やさなければならない。
306影法師:2009/04/19(日) 05:12:02
>>303-305

冷たい水で手を洗いそのまま両頬をばしばし叩いてふーっと息を吐き出す。
何やってんだかなあ、俺は。
事前のリサーチ不足というか間が悪いというかとにかく参った。
しかもあんなに思いつめた顔の三橋に見とれたりして本当にどうかしている。
手洗いの前の鏡を覗き込むと、蛍光灯のせいか顔色も人相も悪く見える自分の姿にうんざ
りした。
その時、いきなり鏡の左端に見えている入口のドアが開いたと思ったら、入ってきた三橋
と鏡越しに目が合った。
「えっ、三橋…なんで?」
「あ、阿部君、よかった…帰っちゃったのかと、思った」
「一人で帰るワケねーだろ」
さっきちらりと考えたことをおくびにも出さず俺はそううそぶいた。
「…阿部君、あんまり見てないみたい だったから、つまんないなら オレも、もういい
 よ…」
映画に集中していると思ってたら案外しっかり観察されていた。
「つまんねーとかじゃなくってさ、お前が…」
気になっていることを聞いてもいいのだろうかと自制心がグラつく。
俺は迷いを振り切り鏡に背を向けて実体の三橋に問いかけた。
「あのさ、お前も夢に見たりすんのか…?」
空気がぴんと張りつめたような錯覚に手のひらがじっとり汗ばむ。
三橋は一度俺の方を見たが、何かを探すように鏡の中を覗き込んだ。
さっきの俺のように。
「…夢は、たくさん見た。でもオレは、全部…阿部君に、押しつけた」
そう言ってゆっくり振り向いた三橋の目は淀んだ沼みたいに暗く、そのくせ妙に熱っぽか
った。
「だから、オレはすごく ラクで、その代り阿部君は……あっ」
307影法師:2009/04/19(日) 05:21:16
>>303-306
乱暴に抱き寄せたせいで三橋の言葉は途切れた。
そのまま引きずる勢いで奥の個室に連れ込み貪るように唇を重ねた。
何度も角度を変えては舌を絡ませ唾液を味わう。
くちゅくちゅという断続的な水音にお互いの吐息が混じり合い、狭い個室に満ちて溢れそ
うになる。
俺は抱きしめている三橋の体に半ば感動していた。
なんでこいつの体はこんなにも俺の手にしっくり馴染むんだろう。
どうしたらいいんだ?今すぐにでも三橋と素っ裸になって抱き合いたいくらいの強烈な欲
望で理性が飛びそうになる。
俺は熱を帯びた下腹を三橋に押しつけた。
ジーンズの厚い生地に阻まれてわかりにくいが、三橋の方も興奮しているようだ。
だけどこんなところでお互い出し合って終わりなんていう即物的な行為をしたいとは思わ
なかった。
「…外、出ないか?」
「あ、阿部君 でもオレ…」
「いいから。あっちに置いてきたものないだろ?」
「あっ、ジュース」
「それはいいさ、あとは?」
「ない、よ」
「じゃあ行こう」
「え、ど、どこ?」
「どこだと思う?」
俺は三橋と自分の服装チェックをしてからそっと個室のドアを開け、誰もいないのを確か
めた。
俺の顔をちらちら見て質問の答えを考えているらしい三橋を促してトイレから出る。
「ホテル行ってみないか?」
三橋の顔を見ずに早口で言った俺を三橋がどう思ったかはわからない。
「…いや、やっぱりいい」
時間潰しをしている人たちがロビーにちらほらいるのを見て、突然一般常識が戻ってきた
俺は急に恥ずかしくなってきた。
ヤルためにホテルに行こうなんて発想がもう恥ずかしすぎる。
308影法師:2009/04/19(日) 05:25:10
>>303-307

「…2人だけになったら、続き する?」
「あ?」
こんな時に限ってストレートに通じてしまうなんておかしなものだ。
三橋は確かに欲情していた。俺が焚きつけたせいに違いなく、頬はピンク色に上気して体
全体から発散する熱がこちらにまで伝わってくる。
一度は鎮まりかけたものがまた刺激されて腰に重くまとわりつくようだ。
たまには羽目を外したっていいんじゃないかともう1人の俺が囁いた。
映画館を出ると俺は辺りを見回して駅の方に向かった。
「阿部君、か、帰るの?」
「大体駅ウラの細い通りにあると思うんだよな」
「えっ?」
「そういうホテル」
「あっ、そ、そっか」

駅前はきれいに整備されていても、1本道路を挟むと定番の飲み屋やカラオケの他に何の
商売をしているのかわからない怪しげな店が混じって雑然とした雰囲気だ。
さすがに街中では目立つ外観のホテルはない。
日暮れの早い時期なので映画館を出た時すでに薄暗かったが、たかだか10分足らずのう
ちに完全な夕暮れへと変わり、裏通りには色とりどりの人工の光があふれ始めた。
しかしなかなか俺が探しているようなホテルは見つからない。
駅から離れすぎてしまったので、もう一本通りを渡って今度は逆方向から探してみる。
一軒の落ち着いた雰囲気の建物を通り過ぎた時、一瞬「休憩」という小さな文字が見えた
ような気がして、少し歩いてから戻ってみた。
あまり目立たない場所に料金設定が洒落た字体で書かれている。
俺は三橋に目くばせした。
「…俺が先に入るから、お前は後から来い。もし補導されそうになったら走って逃げろよ」
「…わ かった」
309影法師:2009/04/19(日) 05:30:42
>>303-308

三橋は頷き、俺の行動を待った。
さりげない風を装ってまわりにこっちを見ている人間がいないか確かめる。
「じゃな、あせらなくていいぞ」
三橋に一声かけてから俺はゆっくり歩いてホテルの自動ドアの前に立ち、鈍い動作音と共
にガラス扉が開くのを待った。
外からは見えなかった薄暗いエントランスに気遅れしても、ここは行くしかない。
ふと後ろを振り返ると心細そうな三橋の顔がちらりと見えた。
俺は逃げ帰りたい誘惑と戦いながら中に足を踏み入れた。


「タカ、ごはん済んだら片付けなさいよ」
母の声で我に返った俺はあわてて目の前の食器を重ねてシンクに持って行った。
2時間ほど前に三橋を送ってから自分の家に帰ってきたが、今日のフォローをしておくべ
きかどうかまだ迷っている。
誰が悪いということもないのだけど、電話くらいはしておいた方がいいかもしれない。
俺は母親に明日からまた朝早く出ることを伝えて自分の部屋に上がった。

着信があったのに気付いて携帯を開くと、登録していない番号が間を置かずに何度もかか
ってきていた。
変な電話だったら困ると思ったが、何か引っかかるものがあったのでリダイヤルしてみた。
『…阿部くんなの!?』
ワンコールで繋がって、しかもいきなり自分の名前を呼ばれたので俺はびっくりした。
焦ったような女性の高い声。一体誰だ?
「はい…」
『あっ、あの、三橋廉の母です。あのね、あなた今日の4時頃どこにいたのか教えてくれ
 る?』
「えっ…」
嫌な予感に血の気が引く。
それはまさに俺と三橋が一緒にいた時間だった。