俺ら「えっ」

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323文化祭 ◆EqoQb.bHVg
>>321-322

「た 助けて下さい」 小さく震える声が塊から聞こえてきた。
「え?」
「助けて下さい」
声は擦れていて男性のものか女性のものかよく分らない。
「あの・・・兵隊さん です か」
「へ? 俺ここの生徒だけど 兵隊さんって何」
しまった、これ、演出だろ、真面目に答えちゃったよ 花井は手のひらにジワリと汗が出てくるのを感じた。
「へ 兵隊さんじゃないんですか? どどうしよう さっきの人達と同じ?」
影は小刻みに震えている。
暗くてよく見えないが濃い色の大きな襟・・・セーラー服だ。
下はスカートじゃなくてモンペか?これは。3組の研究発表であった様な出で立ちだな。
解説内容と内容と合致している。
やっぱり変装オバケだよな、少々みすぼらしい感じがするのは高校生ならではだよな。
それにしても、どうも様子がおかしい。オバケなら、もっとオバケらしくしていてもいいだろう。
「さっきの人達って何?オバケが震えててどーすんの、暗がりで何かやな事されたのか?」
花井は後で笑われるの覚悟で切り出した。相手の様子が余りにも合点がいかないからだ。
「あ、よ 良かった! た 助けて下さい、さっきの人達が戻ってくる前に」
すいと立ち上がった影は花井の服の裾を掴んだ。暗くて判然としないが見知った顔だった。
「何だよ、三橋じゃねー、びびったじゃねーか」
暗がりに有ったその顔は確かにチームのピッチャー三橋の顔だった。花井は安心して力が抜けるのを感じた。
「み 三橋じゃ ないで す」
「あー、そーだよな オバケしているんだもんな」
「お オバケでもない です」
いつもよりも上ずって擦れた声に風邪でもひいたかな、喋り方はいつもの通りなんだけどな
風邪だとしたら小うるさいキャッチャーに怒られんぞ、花井はそう思いながらオバケに扮した三橋をまじまじと見た。
「でさ、助けてって台詞?兵隊さんってどんな設定・・・」花井が言い終らない内に遠くからサイレンの音が鳴り出した。
「な 何だ?」
「た 大変 警報が ここじゃ駄目、こっち、こっちに」
立ち上がった中庭の女学生は花井の腕をぎゅっと掴んで外へと誘う。
                                              今日はここまで