>>277 三橋の指とオレの袖と、三橋の顔を見る。カオスだ。オレの頭に何故かドグラマグラという単語が回っている。
思い出した、西広が読んでた本のタイトルだ。田島が喜んでチャカポコ言って踊ってた。どんな本だ。
「オレ、何かっ、巣山くん、ぷ プレッッゼント」
「いやいいって、な、三橋帰ろーぜ」
「うう、う…ぐ、ぐじゅ」
泣くのか。プレゼントしたくて泣くのかお前。ならジュースでもおくれ。満面の笑みでゴクゴク飲むともさ。
「んじゃ、お言葉に甘えて、えーと」
多少考えるフリをして、喉が乾いたなとでも言っとこう。泣くとさらにエグいことになる。
「ふひ、な 何かな」
三橋は目をキラキラさせて言葉を待っている。
涙が一筋ほっぺたを滑った。瞳孔が開いている。すごくきれいな瞳孔だ。
「…き」
「き、き のつく、もの?」
「…………」
「き、き…フヒッ」
キモいよう。
オレは意識が飛びかけたが、持ち直した。
三橋は落ち着きなくキョドキョドビクビクすっからキモいんだ。
阿部が怒鳴ってる時なんかひどい。阿部セットでキモさ相乗効果、珍獣VS珍獣のショーがグラウンドで見放題。
マウンドにもベンチにも危険がいっぱいだ。
そんな時、水谷はふらっと逃げていく。泉の舌打ちがいい音で鳴って、栄口が宥めに入る。
沖は太陽の光の下にいる。
そうだ、三橋と仲良くなろう。
三橋がビクビクしないように、すごく親しくなればいいんじゃないのかオレ。
何で気づかなかったんだ、田島と三橋のセットは多少ウザくてもキモさは半減じゃねーか。
あんな風に体当たりしてぐしゃぐしゃ、わしゃわしゃすりゃいいんだ、
ヨーシヨシヨシヨシヨシヨシ、そうだ珍獣にはムツゴロウさんだ。