三橋「足をあげてチンチン♪」

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284fusianasan
三日前の夜のことだった。
三橋と別れて――といっても分かれ道で別れただけなのだけど、
なぜかふと不安が過ぎったのだ。
何だかわけの分からない焦りを感じて、俺は元来た道を駆け戻った。
心臓が痛いほど脈打ち、ほんの少し走っただけなのに息が乱れる。
辺りは仄暗い街灯が点々と灯っていたけれど、歩く道を照らすだけに過ぎない。
三橋になにかよくないことが起きているのだと、なぜだか確信に近いものを感じていた。
自転車が転がり三日月の下を走り、角を曲がった俺が見たものは、
街灯脇の路地に三橋が引きずり込まれるところだった。

犯人の姿は路地の奥にあるようで、そこからでは見えなかった。
一人で行くのは無謀だったが、そのときの俺はそんなことを思いつきもせず、
ただはやく三橋のところへ行かなければと飛び込んでしまった。
それは、悪夢のような光景だった。
いまでも俺は、あれは夢だったんじゃないかと思っている。
あれは嘘だ。夢、幻。いっそ俺の妄想でもいい。
三橋とは恋愛の話もしたことがない。
三橋からは決して言い出さないだろうし、俺もそんな話は振らなかった。
だから三橋とはてんで関係のない、程遠いシチュエーションだったのだ。
暗い路地裏で嫌がる三橋の上に、誰かが覆いかぶさっている。
俺は目に映る光景がよく分からなかった。
夜の路地で友人が――三橋が、口をふさがれて押し倒されて、
服をまくりあげられ白い三橋の腹が見えていて――
そこまできてようやく、ヤバイ!と我に返ったのだった。



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