阿部「三橋、うりぼうって知ってる?」

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90サクラサク ◆68Xghr40fw
※エロ皆無注意



高校受験は三橋廉にとって大げさではなく一生を賭けた勝負だった。
たった15年と10ヶ月しか生きていなくたって一生は一生だ。
祖父に猛反対されようが進路指導でダメ出しされようが、どうしてもあそこから逃げたかった。
自分さえあそこからいなくなればいい。
三橋はただその一心で超がつくほど苦手な勉強を目が腫れあがるくらいたくさんした。
そして三橋は一世一代の大勝負に勝つことができたのだ。
──野球部ではダメピッチャーと呼ばれて試合にまったく勝てなかったが…。


(今日はあったかいな…)
暇を持て余していた三橋は裏庭でずっと投球練習を続けていたが、さすがに疲れてきて池に落
ちたり庭のあちこちに転がっていったボールを片付けだした。
中学の3年間を過ごした群馬の三星学園での進学を拒否して埼玉の公立高校に合格した彼は、
3年ぶりに埼玉の自宅に帰ってきてのんびりと入学式を待つ日々を過ごしていた。
正直なところ、知り合いがまったくいない高校に行くのは不安だったけれど、何もかも一から
やり直したい気持ちだってある。
野球をやるのはもう諦めているのに、気が付くといつの間にか三橋はグローブとボールを持っ
て庭につくったマウンドに立って、18.44メートル先の的を狙っていたりする。
実力のなさは身に沁みてわかっているけど、ピッチャーができないなら野球部に入る意味もな
いと考えてしまう自分は本当にわがままで自己中心的な奴だと思う。
後片付けをして軽くストレッチをするともう何もやることがなかった。
投球練習の他に有意義な時間の使い方を知らない三橋は、誰もいない家の中に入って買い置き
してあるおやつを食べながらぼんやりしていた。
そういえば、と三橋は朝の母親との会話を思い出した。