一レスだけ投下
キモオタ注意
――今日も月明かりの下鼻歌を歌いながら自転車をこぐ少年がいた。
淡い蜂蜜のような色の髪はこの暗闇でもよく映え、少々距離が離れていても、それが彼であるということが分かる。
彼の場合、独特のイントネーションで奏でられる鼻歌も相まっているのだが。
――少年の帰路に古い木造アパートが有る。その一室から少年の姿を覗く男がいた。
男の部屋はカーテンが二重にかかっており、中からも外からも姿形さえ見えないようになっている。
そのカーテンに僅かな隙間を作り、腫れぼったくどこか淀んだ瞳を細め、夜風を切りながら制服のシャツを膨らませている姿を追っている。
(今日も三橋たんはブサイクな俺の天使だ……――)
男はヤニとコーヒーで黄ばんだ歯を覗かせながら下卑た笑みを浮かべる。
何日も剃っていないであろう無精髭の生えた顎を撫でながら、少年の姿が見えなくなるまでじっとたたずんでいた。
「三橋たんは、か、可愛いなぁ……」
ぼそぼそと聞き取りづらく、口の中に籠もったような声だった。
男はハァハァと荒い息遣いをしながらカーテンをぴちりと閉じ、パソコンの前へ腰かけた。
使い古された椅子がぎしりと鈍い音を立てる。
スタンバイ状態のパソコンを起こし、マイピクチャ内の「my sweet angel」と名付けられたフォルダをダブルクリックする。
中には先程の少年(男の発言からするに名は三橋というらしい)の写真がずらりと並んだ。