何かの続編のような‥
東京に雪が降った。今年は暖かいと思ってたのでこれは予想ガイの展開だ。
傘を持ってくるのは忘れてしまった。ボタン大の雪が容赦なく吹き荒ぶ。おお、寒い。なんて寒さだ。
モッズコートのフードがせめてもの救いだ。手をポケットに突っ込み足早に帰路を急ぐ。
角を曲がり、顔をわずかに上げると街灯の明かりの下に白く輝く丸いモノが見えた。
(なんだ‥?‥あれは、雪だるまか?)
雪は降ってはいるが道に落ちると溶けて地面を濡らすだけで積もる程ではないが、目の前のアレは、雪だるまで間違いないようだ。
これは不思議な雪だるまではないか?と俺は思い出した。
昨年、大雪が降った時も同じ場所で俺は雪だるま達と出合った。
俺はその時酔っ払っていて、売れ残った自社製品を笠地蔵よろしく俺は雪だるま達の前にお供えしたのだ。
すると不思議なことにその自社製品は爆発的な大ヒットをとばしたのだ。
俺はあの雪だるまのご利益だと思った。‥多分。
いや、それくらい不思議な理由のわからないラッキーな出来事だったのだ。
これは、俺の思い込みで何か馬鹿馬鹿しい「逃げ」だとも思ったが、俺は藁をも縋る思いで一体の雪だるまの前にひざまづいた。
「お前さん、去年は1人だけか」
去年は十体あったのに。これも温暖化のせいだろうか。
「早く他の仲間も来るといいな」
一人ぼっちの雪だるまは、会社で針のむしろに立たされている俺の立場とどこか似ているように感じた。
鞄の中から売れない自社製品を取り出し、雪だるまに装着させた。
俺は、新しい自社製品の在庫を抱えこみまた途方にくれていたのだ。
「すげえ‥似合います」
両手を合わせて熱心なムスリム教徒のように祈った。
「売れますように‥売れますように」
ひとしきり頭を下げ、唯一の防寒だったモッズコートを雪だるまに着せる。
自社製品と俺のコートを身に付けた雪だるまはどこまでも滑稽だったが、俺は大真面目だった。
笑いたい奴は笑えばいい。こんなことで商品が売れれば安いものだ。