三橋「あ、あ、溶けちゃううう…じゅぷ」

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518fusianasan
三毛ミハ愛好会に捧ぐ

ミハックシュ!
鼻がむずむずするのが止まらなくて、大きなくしゃみをした。
「ふう」
すん、とすすり上げて一つため息をつく。ここはオレがお世話になっているうちの、広い庭の中。
周りの木々が次々と芽吹き始めていて、もうすぐ春なんだとオレに教えてくれる。
毎年この季節、風が暖かくなって来ると、くしゃみの回数が多くなる。そこまではいつもと変わらない。
だけどいつもと違うのは、オレのからだ・・・・正確に言えば・・・・おちんちんの周りなんだ。
「にゃ、にゃあぁ・・」
お腹の奥があつい、おちんちんのところが痛痒い。体全体が脈打つみたいに感じる。
そわそわしてとてもじっとなんてしていられない。
そう、去年まではこんな事なかったのに。
こんなオレの様子を見て、飼い主の修ちゃんが「発情期なのかな」って言っていた。
ハツジョウキってなんなんだろう。病気のことかな。
修ちゃんは、オスなのに三毛っていう味噌っかすのオレを、とっても大事にしてくれる
優しいヒトなんだ。このおうちにオレを拾ってくれたのも修ちゃん。「三橋」って名前をつけてくれたのも。
病気になったらオレ、捨てられちゃうのかな。
優しい修ちゃんの手のひらと、暖かい膝の上。どれもオレの大好きなもの。
オレは、その大好きな人たちに、お別れをしなきゃいけないときがくるんだろうか・・
暗澹たる思いで、じわりと目じりに涙が浮かぶ。
だけれど体の熱は冷めることも無くて、それが苦しくて身じろいだときのことだった。

「よう」
上のほうから声がする。聞いたこと無い声。

「だ だれ?!」
「お前の頭の上のほう」
野太い声に誘われて顔を上げてみると、塀の上から一匹の大きな黒いねこがオレのほうをじっと見下ろしていた。
全身真っ黒で、金色の垂れ目がぴかぴかと光っている。

「お前、あんま見ない顔だな」