>69 おやすみはし。
目がシパシパする。時計を見たらもう夕方と言っていい時間だった。
夕飯までまだ少しあるし、いっちょ昼寝をするか。いや夕寝か?
俺は眠るレンの隣に潜り込む。
広くないベッドだ。レンと密着する。
レンの甘い匂いがする。こんなにまじまじとレンを見るのも久し振りな気がする。
つ、と手の平で撫でる。吸い付くような肌。
至近距離で見ても、レンの肌は滑らかだ。
まだ1歳になってないんだもんな。
でも、もう終わりだ。
俺は天井を向いて目を閉じた。
少し間遠だが規則正しいレンの寝息に合わせて俺も呼吸すると、すぐ眠りに落ちた。
夢を見てた。とても優しい、夢。
目を開けるとすぐにその微かな記憶は霧散してしまう。
だが、夢の優しい気持ちは胸の中に残っている。
視線を感じて横を見ると、レンが俺を見ていた。
「レン……」
「……すず、き」
俺はレンに手を伸ばす。レンを俺は胸の中へ抱き締めた。
さっき、この部屋に連れてきた時は重いと思った体は軽かった。
何か言おうとして開いた口は、扉の開く音に閉ざされた。
「ご飯持ってきたよ!」
マリアが電気を点けて、俺は慌てて灯りから薄闇に慣れきった目を逸らす。
「ああ、ありがとう」
半眼のまま俺は起き上がった。レンの手が服の裾を掴んでいるのを感じる。
マリアが折り畳み机を開いて、チヨがそこに食事を並べるのをベッドの上で眺めた。
後ろから親方もやってきた。
「珍しいっすね」
「言うな」
柔らかい肉団子の入ったスープが配られる。
チヨがベッドに入ったレンに人匙ずつ食べさせている。