俺ら「三橋譚乃忍死ッ虎出汰板御飯雅食部隊」

ボーナスを奮発して中古のカーナビを買った。
4種類の音声タイプが選べる代物で、俺は いつも初心者向けの【ver.HANAI】を使っていたが、
飽きたので そろそろ中級者向けという【ABE】を使ってみようと思う。


『ハァ・・・・で、どちらへ行かれますか?』
カーナビをONにした途端、やる気の無い男の声で尋ねられた。
なんか今、溜め息吐かれた気がしたが気の所為だろうか? いや、まさかな。
「んー・・・、どうすっかなぁ〜。」
とりあえず遠出して一人旅をしたい気分だ。
『・・・決まり次第、お呼びください。』
目的地をなかなか決められずに迷っていると、勝手に電源がOFFになってしまった。
故障かと思い再度ボタンを押してみると普通に
『お決まりですか?』
と、覇気の無い声が返ってくる。さっきのは何だったんだろうか。
「じゃあ高速入って横浜でおりるかなー。」
『○○高速　料金所　3キロ先。』
自宅の駐車場で迷っていても仕方がないので、適当に目的地を入力しようと手を伸ばしかけた所で
カーナビが反応した。中古品だというのに どうやらコイツは音声認識するらしい。
しかし、頼もしいものの声に愛想がないのが無いのは頂けない。

出鼻を挫かれたような釈然としない気分で漸く車を発進させると、またすぐにABEから声が掛かった。
『横浜まで約2時間かかるんで、着いたらお呼びくださ・・・―――――』
俺はABEが電源をOFFにするより先に自らプッシュして、上級者向けの【ver.TAJIMA】を
選択し直したのだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-続く-