三橋「お、オレのお菓子 食べちゃった…」

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713名探偵ジロウ
「じ、次郎先生 質問 いい ですか」

俺の名前は次郎。S玉県のとある市で塾講師をしている。
「ああ、なんだい?三橋君。」
おずおずとプリントを差し出すのは、おれの生徒の三橋廉、高校3年生だ。
授業は先程終わったばかりだが、解らないところがあったようだ。

「あの、この英文の 訳が 難しく て」
「ああ、これな。これは現在進行形だから・・・」
俺が懇切丁寧に解説してやるのを、三橋は何度も頷きながら真剣に聞き入っている。
「あり がとう ございました! 次郎先生 いつも ごめんなさい・・・」
「すぐメモれよ、三橋。受験までもう何日もないんだかんな」
横から口を出してくるのは、三橋と同じ高校の阿部だ。
二人は野球部でバッテリーを組んでいたらしく、塾内ではいつも行動をともにしている。
三橋は身長173センチの俺と同じくらいの背丈しかなく、横幅にいたっては俺よりうんと細っこいのだが、これでも甲子園出場経験投手なのだ。
横に並ぶ阿部は、昔ながらの野球漫画にでてくるような、どっしりとした体格だ。身長は180は超えているだろう。体重も、下手したら3桁の大台かもしれない。

「ありがとうございました。ほら三橋、今日さみーから、さっさと帰るぞ」
「う、うん。 先生 さよーなら」
「おう、風邪ひかないように。また明日な」
阿部が促すと三橋はあわてて後をついて行く。仲がいいというよりも三橋が阿部に従っているように見えるのは自分だけではないだろう。
明日も受験生はこの塾へやってくる。学校はすでに自由登校になっていて授業のない日でもこの塾に自習しに通っているのだ。