「蜜柑を食べ過ぎると爪が黄色くなるんだって ねー」
ハンパもので安くで買った半纏を羽織り直して三橋はスイと火燵に入って来た。
白い筋を綺麗に取らずに房ごと口に放り込むのが気に入らないらしく、この前から何かと俺に文句を垂れて来る。
始めはふんふん頷いていたものの、あからさまに嫌な顔をする俺を持て余しか最近は遠回りにその事を持ち出す様になった。
大きい籠に盛られた蜜柑を一つ三橋に強引に押し付ける。触れた指先は蜜柑の皮よりも冷たい。
「冷蔵庫みたいにヒンヤリしているな、お前」俺の言葉に三橋は蜜柑を持ったまま押し黙った。
残った蜜柑の房を一つポカンと開いている三橋の口に押し込んだ。
来年もコイツとこうしていられたら良いなとふと思う。そして掌で蜜柑を掴んだままの三橋の手を蜜柑ごと包む。
「ば ばか、お 俺君のばか」蜜柑を口に詰めたまま呟くもんだから何言っているかわかんねえよ。
明日、晴れるといいな。晴れたら蜜柑を一緒に買いに行こうな。