「・・・」
「・・・」
すぐにそれとわかる臭い。
撒き散らされた赤と白。
三橋は体中の痛みに耐えながら脱がされた服を着る。
教室にはいつの間にかオレンジの光がほとんど横から降注いでいた。
少しでも臭いを、と開けた窓から入ってくる未だ温い風が心地よくて三橋は目を細める。
「・・・わりい」
しばらくの静寂の後に泉が口を開いた。
「悪かった。謝ってすむとかそういうんじゃないことくらいわかってる
だけどなんか三橋見てたら三橋の近くにいたら三橋の匂いかいだらなんか我慢できなくなって・・・」
「・・・へ、平気だよ!」
三橋の声に泉が驚いてこちらを見た。
「平気ってお前こんなこと平気なわけ無いだろ!」
「だいじょう、ぶ!」
あんなことがあったのに三橋の様子が相変わらずで泉は苦笑してしまう。
「・・・我慢しなくていいんだぞ」
(我慢なんかじゃないんだ・・・あの日も夏の夕方で風が入ってきて・・・た)
「初めてじゃない・・・から」
だから、大丈夫。
思わず俯いてしまった顔を上げて笑おうとして・・・
「泉君!」
どうしてそれまでその気配に気がつかなかったのか。
泉が後ろから何かで殴られてこちらに倒れこむ。
慌てて抱きしめようとするも強いられた体では耐えることが出来ず一緒に倒れこんでしまった。
受身が取れず頭を打つ。
霞む意識で見たそれは・・・
「な、かむら・・・く・・・」