進路指導「三橋は将来アナリストになりたいのか」

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618偽りの螺旋・沖の場合 ◆Kxeo/gKK7Y
>291 おやすみはし。
チヨが筆を構えた姿は案外、決まっていた。
静かに硯に筆を浸ける。筆先を整えつつ余計な墨汁を落とす。スッと、腕を上げた。
真白な半紙に勢いよく筆を叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。
俺がハラハラしながら見る横で、沖さんは身を乗り出して見ていた。
「出来た!」
チヨが書き上げた物は、さっきの沖さんの作品に比べるとかなり見劣るがする物の、素人としてはそこそこの物だった。
「へえ、良いね!」
褒められて、チヨは誇らしげに微笑む。書道具を丁寧に置いて、レンをチラッと見る。
「おっさきー」
「うん」
何やら難しい顔をしながら、チヨがどいた場所にレンが座りこみ、モゾモゾと準備をする。
筆を手にしたレンの姿もなかなか堂に入り、先程のチヨのそれに見劣りがしない。
「ではっ!」
同じ様に白い半紙に墨が黒く模様を描きだした。

「でき、ました」
しかし、書きあがった物は姿勢とは裏腹に下手糞としか言い様が無かった。
「あらあら」
沖さんもレンの書き上げた物を見て苦笑いする。
戦った訳でもない俺なのに、勝負が終わった事で安堵の溜め息を吐く。
うううと、唸るレンの肩をポンポンと叩いて労った、のに、レンは俺を押し退けるように立ち上がった。
「ちょ、と、待って、くだ、さいっ!」
ドタドタと五月蝿く、奥の部屋に行ったと思ったら戻ってきた。その手にはチューブが握られている。
「も、も一度、やらせて、くだっしゃい!」
言うなり、レンはスッポンポンになった。
「え?」
「駄目、ですか?」
下手に見せ掛けながらも、詰め寄るレンに目を白黒させた沖さんはモゴモゴとまあ良いけど、と答えた。
沖さんの言葉でレンはチューブの蓋を取った。あれは、直腸とかの触診用のジェルじゃないか!
「こっちでなら、うまいと、思う!です」
言うなり、レンは筆を肛門に突き立てた。