俺「うつだしのう」

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448偽りの螺旋・沖の場合 ◆Kxeo/gKK7Y
原作読み返したが、今ひとつ沖の性格が判らない。どうしたものか。
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松飾も見なくなったある日の昼下がり、カランカランとベルの音をさせて店のドアが開く。
「いらっしゃいませ!」
予約の時刻ピッタリだから、皆で声を合わせられた。
今日は珍しく親方も店の方に出ているから、6人勢揃いだ。
「あ、ははは。こんにちは。寒いね」
全員揃っての迫力にたじたじとなる客に、チヨが近寄って、上着を受け取りハンガーに掛ける。
「ああ、ありがとう」
優しげな感じの男性だ。目に付くのは着物姿だってこと。
鼠色と色は渋いが、民族衣装はやっぱり目立つ。
それもその筈、今日の客は新鋭の書道家だ。
この間、そこそこ有名なコンクールで入賞したらしい。
もっとも俺は彼の作品をよく知らないのだが、予約が入った時、親方がテレビで見たと大騒ぎしていた。
相変わらずミーハーなおっさんだ。
「いらっしゃいませ、沖さん」
ソファへ誘導する。すぐに熱い日本茶が運ばれてきた。
沖さんはそれを啜って、ふうーと腹のそこからの息を出した。
「本当に今日は寒いですね」
「この季節はどうしてもねえ」
ニコニコしながら、お茶受けの煎餅をぽりぽり齧る。
初対面の挨拶もそこそこに、うちの工房の愛玩人を一人一人紹介していく。
名前を呼ばれるとににっこり微笑む愛玩人達はは見慣れていても、目の保養になる。
まあ若干一名、「微妙だなあ」と生暖かい気持ちになる者もいるけどな。
それが俺が弄ったせいだと思うと余計微妙な気持ちになる。

「一応、他にも個体(工房所有遺伝子を使用した愛玩人のこと)はあるんですがね」
造っていない未個体のカタログを見せようとしたのを、沖さんが断る。
「ここにいる子達で、十分です」
「左様ですか」
そして、沖さんと愛玩人の交流会が始まる。
親方がさり気無くもしっかりとそれぞれの個体のアピールポイントを口にしている。